(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-17
(45)【発行日】2023-01-25
(54)【発明の名称】自律型電気掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 11/03 20060101AFI20230118BHJP
A47L 9/28 20060101ALI20230118BHJP
A47L 11/292 20060101ALI20230118BHJP
A47L 11/30 20060101ALI20230118BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20230118BHJP
【FI】
A47L11/03
A47L9/28 E
A47L11/292
A47L11/30
C02F1/461 Z
(21)【出願番号】P 2019030145
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】室崎 貴大
(72)【発明者】
【氏名】笹木 宏格
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169613(JP,A)
【文献】特表2009-525821(JP,A)
【文献】特開2012-029802(JP,A)
【文献】特開2013-148246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 11/03
A47L 9/28
A47L 11/292
A47L 11/30
C02F 1/461
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に設けられる電池と、
前記本体を移動させる移動部と、
前記本体に設けられて水を貯留する貯槽と、
前記移動部が前記本体を移動させている間に、前記貯槽に蓄えられている前記水を電気分解して前記電解水を生成する電解水生成部と、
生成された前記電解水を前記本体外へ供給する供給部と、を備え
、
前記電解水生成部は、前記移動部が前記本体を移動させる以前に前記電解水の生成を開始し、かつ前記移動部が前記本体を移動させている間に、正極と負極との間に電圧を印加し続け、少なくとも前記移動部が前記本体を移動させ始めてから所定の時間が経過するまで、前記正極と前記負極との間に印加する電圧値を、他の場合よりも大きくする自律型電気掃除機。
【請求項2】
前記供給部は、前記電解水に含まれる次亜塩素酸の濃度が5ppm(質量百万分率)に達した後に、前記電解水の供給を開始する請求項
1に記載の自律型電気掃除機。
【請求項3】
前記電解水生成部
は、前記貯槽に蓄えられている前記水の量が第一閾値よりも多い場合には、正極と負極との間に印加する電圧値を、他の場合よりも大きくする請求項1
または2に記載の自律型電気掃除機。
【請求項4】
前記電解水生成部は、前記貯槽に蓄えられている前記水の量が第二閾値よりも少ない場合には、正極と負極との間に印加する電圧値を、他の場合よりも小さくする請求項1から
3のいずれか1項に記載の自律型電気掃除機。
【請求項5】
前記電解水生成部は、前記貯槽に蓄えられている前記水の全量を電気分解し終えた場合には、正極と負極との間に電圧を印加しない請求項1から
4のいずれか1項に記載の自律型電気掃除機。
【請求項6】
前記電解水生成部は、正極と負極との間に流れる電流値から前記貯槽に蓄えられている前記水の量を推定する請求項1から
5のいずれか1項に記載の自律型電気掃除機。
【請求項7】
前記貯槽に設けられて前記貯槽に蓄えられている前記水の量を検知する水位計を備える請求項1から
6のいずれか1項に記載の自律型電気掃除機。
【請求項8】
前記電解水生成部は、前記電池の残量が所定より少ない場合には、正極と負極との間に電圧を印加しない請求項1から
7のいずれか1項に記載の自律型電気掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、自律型電気掃除機に関する。
【背景技術】
【0002】
スプレーノズルから洗浄液を清掃表面に塗布するとともに、清掃表面と接触するように保持されたパッドを用いて清掃表面を拭き掃除または磨き掃除する清掃ロボットが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、洗浄液を用いた拭き掃除または磨き掃除では掃除場所の除菌効果に検討の余地が残されていた。
【0005】
そこで、本発明は、掃除場所を動き回って掃除を行うとともに、掃除場所を除菌することが可能な自律型電気掃除機を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機は、本体と、前記本体に設けられる電池と、前記本体を移動させる移動部と、前記本体に設けられて水を貯留する貯槽と、前記移動部が前記本体を移動させている間に、前記貯槽に蓄えられている前記水を電気分解して前記電解水を生成する電解水生成部と、生成された前記電解水を前記本体外へ供給する供給部と、を備え、前記電解水生成部は、前記移動部が前記本体を移動させる以前に前記電解水の生成を開始し、かつ前記移動部が前記本体を移動させている間に、正極と負極との間に電圧を印加し続け、少なくとも前記移動部が前記本体を移動させ始めてから所定の時間が経過するまで、前記正極と前記負極との間に印加する電圧値を、他の場合よりも大きくする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の右側面図。
【
図3】本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の底面図。
【
図4】本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の第一例の貯槽の平面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の第一例の貯槽の側面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の第二例の貯槽の平面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の第二例の貯槽の側面図。
【
図8】本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機のブロック図。
【
図9】本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機における、貯槽の水量と電極に印加される電圧との関係の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る自律型電気掃除機の実施形態について
図1から
図9を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号が付されている。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の斜視図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る自律型電気掃除機1、いわゆるロボットクリーナーは、本体5に搭載される二次電池6の電力を消費して自律で移動する。自律型電気掃除機1は、掃除場所(以下、「被掃除領域A」と言う。)の床面(以下、「被掃除面f」と言う。)を動き回り、被掃除領域Aを網羅的に移動して掃除を行う。自律型電気掃除機1は、掃除運転の後、ステーション8へ自律で帰巣して次の掃除運転を待機する。
【0011】
ステーション8は、被掃除領域Aの被掃除面fに設置することができる。ステーション8は、自律型電気掃除機1を所定位置に案内することで電気的に接続する。ステーション8は、いわゆる充電台の機能を有している。ステーション8は、自律型電気掃除機1に接続された状態で、商用交流電源から二次電池6へ電力を導く電源コード9を備えている。電源コード9は、二次電池6へ送電する電路である。
【0012】
ステーション8に帰巣した自律型電気掃除機1は、例えば、次の掃除運転を待機している最中に二次電池6を充電する。この場合、自律型電気掃除機1は、使用者による充電の手間を省き、かつ使用者の求めによる突発的な掃除運転に対応できる。
【0013】
図2は、本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の右側面図である。
【0014】
図3は、本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の底面図である。
【0015】
なお、
図2および
図3の実線矢印Fは、自律型電気掃除機1の前進方向を示している。
【0016】
図1に加えて、
図2および
図3に示すように、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、本体5と、本体5を移動させる移動部11と、本体5の下方の被掃除面fを掃除する掃除部12と、本体5の周囲の被検知物を検知する検知部13と、自律型電気掃除機1の運転を制御する制御部15と、自律型電気掃除機1の各部へ電力を供給する二次電池6と、を備えている。
【0017】
また、自律型電気掃除機1は、本体5に設けられて水を貯留する貯槽16と、貯槽16に蓄えられている水を電気分解して電解水を生成する電解水生成部17と、生成された電解水を本体5外へ供給する供給部18と、を備えている。
【0018】
本体5は、例えば合成樹脂製の本体ケース21と、本体ケース21の側面に設けられるバンパー22と、を備えている。本体ケース21は、本体5の外殻である。バンパー22は、本体ケース21の側面に設けられている。
【0019】
本体5は、扁平な円柱形状、換言すると円盤形状を有している。平面視で実質的に円形の本体5は、他の形状に比べて旋回時の旋回半径を小さく抑制できる。なお、平面視において、本体5は、正方形のような形状であっても良いし、差渡しの幅が常に一定の定幅図形、例えばルーローの三角形(Reuleaux Triangle)であっても良い。
【0020】
本体ケース21と貯槽16とは、協働して平面視における本体5の外形線を画定している。本実施形態では、本体ケース21および貯槽16は、平面視において、弦で切り取られた円弧形の外形線を有している。本体ケース21の円弧形の外形線と、貯槽16の円弧形の外形線とが、それぞれの弦で組み合わさって本体5の円形の外形線を描く。本体5が円形以外の形状であっても同様に、本体ケース21の外形線と貯槽16の外形線とが組み合わさって本体5の外形線を描く。なお、貯槽16は、本体5を超信地旋回(spin turn、neutral turn、counter-rotation turn)させた際に本体ケース21の外形線が描く軌跡の内側に納まっていることが好ましい。
【0021】
本体ケース21の高さと貯槽16の高さとは、実質的に同じである。なお、本体ケース21の高さと貯槽16の高さとは、異なっていても良い。例えば、貯槽16の高さが本体ケース21の高さよりも高く、貯槽16が上方へ突出していても良い。また、貯槽16の高さが本体ケース21の高さよりも低く、貯槽16が凹没していても良い。さらに、貯槽16の高さが本体ケース21の高さよりも低く、貯槽16が本体ケース21の上面に搭載されていても良い。このような場合には、本体ケース21の上面は、貯槽16を搭載する部位と、その他の部位とで階段状に段差があっても良い。そして、貯槽16を本体ケース21に搭載した状態で、貯槽16の上面と本体ケース21の上面との高さが実質的に一致することが好ましい。
【0022】
移動部11は、複数の駆動輪26と、それぞれの駆動輪26を個別に駆動させる複数の電動機27と、駆動輪26とともに被掃除面f上の本体5を支える従動輪28と、を備えている。
【0023】
それぞれの駆動輪26は、本体5を移動させる力を被掃除面fへ伝える。それぞれの駆動輪26は、本体5の幅方向(左右幅方向)に延びる軸を回転中心として回転する。複数の駆動輪26は、少なくとも一対の駆動輪26を含んでいる。一対の駆動輪26の車軸は、実質的に同一線上に配置されている。自律型電気掃除機1は、一対の駆動輪26により直進および旋回することができる。駆動輪26は、懸架装置(いわゆるサスペンション)によって被掃除面fに押さえつけられている。自律型電気掃除機1は、駆動輪26に代えて、無限軌道を備えていても良い。
【0024】
それぞれの電動機27は、それぞれの駆動輪26を独立して駆動させる。自律型電気掃除機1は、左右の駆動輪26を同じ方向へ回転させることによって直進(前進、または後退)し、左右の駆動輪26を異なる方向へ回転させることによって旋回(右旋回、または左旋回)する。また、自律型電気掃除機1は、左右の駆動輪26の出力を上下させて前進、または後退の速度を調整したり、左右の駆動輪26の出力を相違させて旋回半径の大小を調整したりすることができる。
【0025】
従動輪28は、本体5の下部の幅方向の略中央部、かつ前部に配置されている。従動輪28は、円形の回転体であり、例えばキャスターである。従動輪28は、自律型電気掃除機1の前進、後退、および旋回に追従して向きを変え、自律型電気掃除機1の移動を安定させる。なお、駆動輪26および従動輪28に支えられる自律型電気掃除機1の重心は、一対の駆動輪26と従動輪28とがなす三角形の内側に配置されていることが好ましい。これにより、自律型電気掃除機1を安定して移動させることができる。
【0026】
掃除部12は、本体5の真下、およびその周囲の被掃除面fの塵埃を掃除する。掃除部12は、負圧を生じさせて被掃除面fの塵埃を吸引する吸込掃除部31と、本体5の下方の被掃除面fを拭き掃除もしくは磨き掃除する拭き掃除部32と、を含んでいる。
【0027】
吸込掃除部31は、本体5の底面に設けられる吸込口34と、吸込口34に配置される回転ブラシ35と、回転ブラシ35を回転駆動させるブラシ用電動機36と、本体5に設けられる塵埃容器37と、本体5内に収容されて塵埃容器37に流体的に接続される電動送風機38と、を備えている。
【0028】
なお、吸込口34から塵埃容器37を経て電動送風機38の吸込側に達する風路は、電動送風機38の吸込側に流体的に接続される吸込風路39である。吸込風路39は、吸込口34から塵埃容器37へ至る上流側風路39uと、塵埃容器37から電動送風機38へ至る下流側風路39dと、を備えている。
【0029】
また、電動送風機38の排気側から本体5の排気口に至る風路は、電動送風機38の吐出側に流体的に接続される排気風路41である。電動送風機38からの排気風は、排気風路41を経て本体5の外へ排気される。
【0030】
吸込口34は、電動送風機38が発生させる負圧によって空気とともに塵埃を吸い込む。吸込口34は、拭き掃除部32よりも前進方向Fの前側に配置されている。吸込口34は、本体5の幅方向に延びている。換言すると、吸込口34の左右方向の開口幅は、吸込口34の前後方向の開口幅よりも大きい。本体5の底面が自律移動時に被掃除面fに対向し、対面しているため、吸込口34は、被掃除面f上の塵埃、または回転ブラシ35が被掃除面fから掻き上げた塵埃を容易に吸い込むことができる。
【0031】
回転ブラシ35の回転中心線は、自律型電気掃除機1の幅方向に向けられている。回転ブラシ35は、自律型電気掃除機1を被掃除面f上に移動可能な状態で置いたとき、被掃除面fに接触する。そのため、回転駆動する回転ブラシ35は、被掃除面f上の塵埃を掻き上げる。掻き上げられた塵埃は、吸込口34へ効率的に吸い込まれる。
【0032】
ブラシ用電動機36は、回転ブラシ35を正転、または逆転させる。回転ブラシ35の正転方向は、前進時に自律型電気掃除機1の推進力を補助する回転方向である。回転ブラシ35の逆転方向は、後退時に自律型電気掃除機1の推進力を補助する回転方向である。
【0033】
塵埃容器37は、電動送風機38が発生させる吸込負圧によって吸込口34から吸い込まれる塵埃を蓄積する。塵埃容器37は、塵埃を濾過捕集するフィルターや、遠心分離(サイクロン分離)や直進分離(直進する空気と塵埃との慣性力の差で塵埃と空気とを分離する分離方式)などの慣性分離によって塵埃を蓄積する分離装置である。塵埃容器37は、本体5へ着脱可能である。塵埃容器37は、開閉可能な蓋を有している。使用者は、本体5から塵埃容器37を取り外し、塵埃容器37の蓋を開いて塵埃容器37に蓄積された塵埃を容易に廃棄したり、塵埃容器37を清掃したり、洗浄したりすることができる。
【0034】
電動送風機38は、二次電池6の電力を消費して駆動する。電動送風機38は、塵埃容器37から空気を吸い込んで吸込負圧を生じさせる。塵埃容器37に発生した負圧は、吸込口34に作用する。本体5は、電動送風機38の排気を、本体5の外側へ流出させる排気口を有している。
【0035】
拭き掃除部32は、本体5の底部であって、吸込口34よりも後方に配置されている。
【0036】
自律型電気掃除機1の前進方向(
図2中の実線矢印F)において、吸込口34と拭き掃除部材43とは前後に並び、かつ吸込口34は拭き掃除部材43より前側に配置されている。したがって、自律型電気掃除機1が前進すると、吸込口34は拭き掃除部材43よりも先行して移動する。そのため、拭き掃除部32は、吸込掃除部31によって塵埃が除去された後の被掃除面を拭き掃除する。
【0037】
拭き掃除部32は、例えば、本体5の下方の被掃除面fを拭き掃除または磨き掃除する。拭き掃除部32は、拭き掃除部材43を着脱可能な拭掃除部材取付部45と、拭き掃除部材43と、を備えている。
【0038】
拭掃除部材取付部45は、面ファスナーを利用してシート状の拭き掃除部材43を貼り付けたり、シート状の拭き掃除部材43を巻き付けたり、拭き掃除部材43の一部を差込口に差し込んだりして固定する基台である。拭掃除部材取付部45は、自律型電気掃除機1を被掃除面fに置いた状態で拭き掃除部材43を被掃除面fに接触させる。拭掃除部材取付部45自体も、自律型電気掃除機1から着脱可能であっても良い。
【0039】
拭き掃除部材43は、例えば織布、または不織布等の繊維材料製の拭き掃除シートである。拭き掃除部材43は、例えばワイパーシートや、ダスタークロス、雑巾、モップ(柄の部分を除いた先端の繊維の塊)など、吸湿性を有する種々の掃除用具である。拭き掃除部材43の材料は、綿などの天然繊維、セルロースなどの再生繊維、ポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46などのポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維などの合成繊維である。拭き掃除部材43は、スポンジであっても良い。また、拭き掃除部材43は、高吸水性高分子(Superabsorbent polymer、SAP、いわゆる吸収性ポリマー、高吸水性樹脂、高分子吸収体)製の部材を一体に有していても良い。高吸水性高分子製の部材を一体に有する拭き掃除部材43は、より多量の電解水を保水できる。
【0040】
拭き掃除部材43は、拭掃除部材取付部45の底面に着脱することができる。自律型電気掃除機1を被掃除面f上に移動可能な状態で置いたとき、拭き掃除部32は、被掃除面fに接触する。拭き掃除部32は、駆動輪26が被掃除面fで空転しない程度の圧力で、被掃除面fに押し当てられていることが好ましい。拭き掃除部32と本体5の底面との間には、発泡樹脂などの弾性部材が設けられている。この弾性部材は、拭き掃除部32を被掃除面fに均一の圧力で押し当てる。
【0041】
また、拭き掃除部材43は、電解水生成部17で生成された電解水を本体5外へ供給する供給部18の一態様でもある。拭き掃除部材43は、電解水生成部17から供給される電解水で湿った状態で、被掃除面fを水拭きする。
【0042】
さらに、電解水生成部17で生成された電解水を、拭き掃除部材43を介さずに被掃除面fへ供給する場合には、拭き掃除部材43は、被掃除面fに撒布された電解水を拭き取ることもできる。
【0043】
つまり、拭き掃除部材43は、電解水を含んで湿り、被掃除面fに電解水を塗布する、いわゆる水拭きの用途で用いることも可能であり、被掃除面fに撒布された電解水を拭き取る、いわゆる乾拭きの用途で用いることも可能である。換言すると、自律型電気掃除機1は、移動にともなって次亜塩素酸を含む電解水を被掃除面fに撒布または塗布し、被掃除面fを除菌する。
【0044】
拭き掃除部材43による拭き掃除が乾拭きになるか、水拭きになるかは、電解水生成部17から被掃除面fへ撒布される電解水の量、および電解水生成部17から拭き掃除部材43へ供給される電解水の量に依存する。例えば床面に撒布される電解水の供給量が微量であれば、電解水は拭き掃除部材43を湿らせる以前に蒸発してしまう。このような場合には、拭き掃除部材43による乾拭きが継続する。床面に撒布される電解水の供給量が多量であれば、電解水は蒸発しきらずに拭き掃除部材43を湿らせる。このような場合には、拭き掃除部材43による乾拭きは、いずれ乾拭きから水拭きへ移行する。
【0045】
検知部13は、本体5の移動にともなって本体5に近づく被検知物、または本体5に接触する被検知物を検知する。検知部13は、本体5に設けられて自律型電気掃除機1の周囲の画像を撮影するカメラ部51と、本体5に設けられて本体5が自律型電気掃除機1以外の物体、つまり被検知物に接近したことを検知する近接検知部52と、本体5に設けられて本体5が自律型電気掃除機1以外の物体、つまり被検知物に接触したことを検知する接触検知部53と、を含んでいる。
【0046】
カメラ部51は、本体5の正面に設けられて、自律型電気掃除機1の前方、つまり前進時の走行方向を撮影する。
【0047】
自律型電気掃除機1は、カメラ部51に代えて、または加えて、ステレオカメラとは異なる原理によって撮影範囲における奥行きの情報を得る距離測定装置55を備えていても良い。
【0048】
近接検知部52は、例えば赤外線センサーや、超音波センサーである。赤外線センサーを利用する近接検知部52は、赤外線を発する発光素子と、光を受けとって電気信号に変換する受光素子と、を備えている。近接検知部52は、発光素子から赤外線を放ち、被検知物で反射される赤外線を受光素子で受光して電力に変換し、変換された電力が一定以上になると、被検知物が一定距離内に近づいたことを、本体5が被検知物に接触する以前に検知する。超音波センサーを利用する近接検知部52は、赤外線に代えて超音波を利用して被検知物を検知する。
【0049】
接触検知部53は、いわゆるバンパーセンサーである。接触検知部53は、移動する本体5が被検知物に接触した際に、本体5への衝撃を緩和するバンパー22に連動している。バンパー22は、被検知物に接触した際に、本体5の内側へ向かって押し込まれるように変位する。接触検知部53は、このバンパー22の変位を検知して本体5が被検知物に接触したことを検知する。接触検知部53は、例えばバンパー22の変位によって入り、切りされるマイクロスイッチ、またはバンパー22の変位量を非接触で測定する赤外線センサーや、超音波センサーを含んでいる。
【0050】
二次電池6は、移動部11、掃除部12、検知部13、制御部15、および電解水生成部17の電源回路を含む自律型電気掃除機1の各部で消費される電力を蓄えている。二次電池6は、移動部11、掃除部12、検知部13、および制御部15を含む自律型電気掃除機1の各部へ電力を供給する。二次電池6は、例えばリチウムイオン電池であり、充放電を制御する制御回路を有している。この制御回路は、二次電池6の充放電に関する情報を制御部15へ出力している。
【0051】
貯槽16は、水や塩水を貯留する容器である。貯槽16に貯留される水は、水道水でよい。貯槽16は、給水の利便性を高めるために、本体5に着脱可能であることが好ましい。貯槽16は、開閉可能な蓋を備えている。貯槽16は、蓋を開いて水や塩水を容易に給水できる。
【0052】
電解水生成部17は、例えば、水を電気分解してオゾンが溶解された電解水を生成したり、塩水を電気分解して次亜塩素酸(HClO、Hypochlorous Acid)が溶解された電解水を生成したりする。日本では水道法の定めにより、家庭で容易に入手可能な水道水には、塩素が含まれている。日本の水道法では、水道水の塩素の濃度は、10分の1ppm(質量百万分率、ミリグラム毎リットル)以上に定められている(水道法第22条に基づく水道法施行規則(厚生労働省令)第17条第3号)。電解水生成部17は、日本の水道水を電気分解することで次亜塩素酸を含む電解水を容易に生成できる。電解水生成部17は、正極および負極を含む電極61と、二次電池6から供給される電力で電極61に電圧をかける電源回路と、を備えている。
【0053】
電解水生成部17の電極61には、水に溶け出しにくい材料、例えばチタンや白金が用いられる。電気分解を促進するために、電極61には、イリジウム、白金、ルテニウムなどの白金族の金属、またはその酸化物が担持されていても良い。電解水には、過酸化水素、活性酸素、OHラジカルなどの化学種が生成される。電極61は、貯槽16内に設けられている。
【0054】
電解水生成部17は、正極と負極との間に仕切のない1室型であっても良いし、正極と負極との間に仕切を有する2室型、および3室型を含む多室型であっても良い。1室型の電解水生成部17は、正極側に生成される酸性イオン水と負極側に生成されるアルカリ性イオン水とを中和して、適宜の濃度の次亜塩素酸を含む電解水を生成する。他方、多室型の電解水生成部17は、正極を収容する部屋に酸性イオン水を生成し、負極を収容する部屋にアルカリ性イオン水を生成する。
【0055】
なお、酸性イオン水とアルカリ性イオン水との使用量が不均一になって、いずれか残留した方のイオン水を処分する負担が生じる場合のある多室型に比べて、1室型は使用者の利便に適う場合がある。
【0056】
ところで、発明者らは、被掃除面fへ10分の1マイクロリットル毎平方センチメートル以上の供給量で、次亜塩素酸の濃度が5ppm以上の電解水を拡散、あるいは散布することで、被掃除面fを除菌できることを見出した。そこで、電解水生成部17は、塩素の濃度が10分の1ppm以上の水、つまり日本の水道法において水道水に適合する水を電気分解して次亜塩素酸の濃度が5ppm以上の電解水を生成する。
【0057】
供給部18は、被掃除面fへ10分の1マイクロリットル毎平方センチメートル以上の供給量で電解水を拡散可能なよう、あるいは散布可能なように電解水を供給する。供給部18は、拭き掃除部材43および被掃除面fの少なくともいずれか一方へ電解水を供給する。供給部18は、貯槽16から電解水を導く配管と、貯槽16から拭き掃除部材43へ電解水を供給する第一供給機構部63と、貯槽16から被掃除面fへ電解水を供給する第二供給機構部65と、を備えている。供給部18は、第一供給機構部63および第二供給機構部65のいずれか一方を有していれば良い。
【0058】
第一供給機構部63は、拭き掃除部材43の裏面へ電解水を供給する第一供給口71と、配管の途中に設けられて第一供給口71への電解水の供給と供給の遮断とを行う第一開閉弁72と、を備えている。
【0059】
第一供給口71は、複数あっても良い。例えば、第一供給口71は、本体5の幅方向、つまり拭き掃除部材43の幅方向に列をなして並んでいることが好ましい。このように並ぶ第一供給口71は、拭き掃除部材43の広い範囲を電解水で湿らせることができる。また、第一供給口71は、本体5の幅方向に延びる長辺を有する細長く扁平な開口であっても良い。
【0060】
第一開閉弁72は、いわゆる電磁弁である。第一供給機構部63は、第一開閉弁72を開くことで貯槽16内の電解水の水位と第一供給口71との高低差、つまり水頭差で電解水を供給する。第一供給機構部63は、第一開閉弁72に代えて、貯槽16内の電解水を汲み上げるポンプを備えていても良い。また、第一供給機構部63は、単に貯槽16内の電解水を流出させる流路、例えば細管やオリフィスであっても良い。このような場合には、細管の内径、あるいはオリフィス径は、電解水の所要の供給量(単位時間あたりの供給量)を得るために、適宜、好適に設定される。
【0061】
第二供給機構部65は、被掃除面fへ電解水を撒布する第二供給口73と、配管の途中に設けられて第二供給口73への電解水の供給と供給の遮断とを行う第二開閉弁74と、を備えている。
【0062】
第二供給口73は、例えば電解水を撒布可能なノズルである。吸込口34と拭き掃除部材43との間に挟まれる被掃除面fへ電解水を供給する。換言すると、供給部18は、第二供給口73から吸込口34と拭き掃除部材43との間に挟まれる被掃除面fへ電解水を供給する。
【0063】
第二供給口73は、複数あっても良い。例えば、第二供給口73は、本体5の幅方向、つまり拭き掃除部材43の幅方向に列をなして並んでいることが好ましい。このように並ぶ第二供給口73は、本体5の進行にともなって、より広い範囲に電解水を撒布する。また、第二供給口73は、本体5の幅方向に延びる長辺を有する細長く扁平なノズルであっても良い。
【0064】
第二開閉弁74は、いわゆる電磁弁である。第二供給機構部65は、第二開閉弁74を開くことで貯槽16内の電解水の水位と第二供給口73との高低差、つまり水頭差で電解水を供給する。第二供給機構部65は、第二開閉弁74に代えて、貯槽16内の電解水を汲み上げるポンプを備えていても良い。また、第二供給機構部65は、単に貯槽16内の電解水を流出させる流路、例えば細管やオリフィスであっても良い。このような場合には、細管の内径、あるいはオリフィス径は、電解水の所要の供給量(単位時間あたりの供給量)を得るために、適宜、好適に設定される。
【0065】
また、供給部18は、貯槽16から本体5の周囲の雰囲気へ電解水を供給する第三供給機構部66を備えている。第三供給機構部66は、電解水を霧状にして本体5の周囲の雰囲気へ供給する霧化装置76と、電解水を霧化装置76へ導く導水経路77と、を備えている。
【0066】
霧化装置76は、貯槽16の頂部に設けられている。霧化装置76は、貯槽16の頂部から、本体5の周囲の雰囲気へ霧化した電解水を拡散、あるいは撒布する。
【0067】
霧化装置76は、電解水生成部17で生成された電解水を加熱して霧化させる加熱式、電解水生成部17で生成された電解水を超音波で振動させて霧化させる超音波式、電解水生成部17で生成された電解水を、ベンチュリー効果を用いたスプレー、例えば霧吹きで霧化させる方式、コロナ放電を利用して電解水生成部17で生成された電解水を霧化させる静電霧化、高速回転させたプロペラなどによって電解水を拡散させて水分子を破砕する水破砕式など、種々の霧化方式を利用する。いずれの方式においても、霧化装置76は、直径100マイクロメートル以下の微粒子を含むように電解水を霧化し、より好ましくは直径10マイクロメートル以下の微粒子を含むように電解水を霧化する。
【0068】
導水経路77は、貯槽16内の電解水を、例えば毛細管現象で吸い上げる縄や索である。
【0069】
自律型電気掃除機1は、吸込風路39に設けられて、吸込負圧で吸込風路39に吸い込まれた電解水(水分)を吸収する吸湿部79を備えている。吸湿部79は、電解水が吸込風路39に吸い込まれた場合には、電動送風機38に達する前に、電解水を吸収して、電動送風機38へ電解水が達することを防ぐ。吸湿部79は、例えば織布、または不織布である。吸湿部79の材料は、綿などの天然繊維、セルロースなどの再生繊維、ポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46などのポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維などの合成繊維である。吸湿部79は、スポンジであっても良い。また、吸湿部79は、高吸水性高分子(Superabsorbent polymer、SAP、いわゆる吸収性ポリマー、高吸水性樹脂、高分子吸収体)製の部材を一体に有していても良い。高吸水性高分子製の部材を一体に有する吸湿部79は、より多量の電解水を保水できる。
【0070】
吸湿部79は、吸込風路39の上流側風路39uに設けられていても良いし、下流側風路39dに設けられていても良い。吸湿部79は、塵埃容器37内に設けられていても良い。吸湿部79は、吸込風路39に吸い込まれた含塵空気から塵埃を分離する塵埃容器37のフィルターを兼ねていても良い。
【0071】
次いで、貯槽16について詳細に説明する。なお、第一例の貯槽16A(以下、単に「貯槽16A」と言う。)、および第二例の貯槽16B(以下、単に「貯槽16B」と言う。)において、同じ構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0072】
図4は、本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の第一例の貯槽の平面図である。
【0073】
図5は、本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の第一例の貯槽の側面図である。
【0074】
図4および
図5に示すように、本実施形態に係る第一例の貯槽16Aは、平面視において円盤形の本体5の一部を切り欠いたD形の外観を有し、側面視において本体5と実質的に同じ高さを有している。貯槽16Aは、本体5の側面に連なる円弧と、この円弧の両端を結ぶ弦とで囲まれている。貯槽16Aの弦部は、本体5の外面の一部に向かい合っている。
【0075】
貯槽16Aは、分離と連結とが可能な複数の容器81を含んでいる。複数の容器81は、電気分解前の水を貯留する第一容器部82Aと、電解水生成部17の電極61を収容する第二容器部83Aと、を含んでいる。
【0076】
そして、貯槽16Aの第一容器部82Aと第二容器部83Aとは、水平方向へ分断されて隣り合っている。第一容器部82Aと第二容器部83Aとは、水平方向へ分離し、水平方向へ連結するものであっても良いし、垂直方向へ分離し、垂直方向へ連結するものであっても良い。水平方向へ分離、連結の可能な貯槽16Aは、第一容器部82Aと第二容器部83Aとを水平方向へ遠ざけて分離され、水平方向へ近づけて連結される。垂直方向へ分離、連結の可能な貯槽16Aは、第一容器部82Aと第二容器部83Aとを上下方向へスライドさせて分離され、連結される。
【0077】
第二容器部83Aの高さは、第一容器部82Aの高さと実質的に同じである。第二容器部83Aの容積は、第一容器部82Aの容積よりも小さい。第二容器部83Aは、貯槽16Aの弦部の一部を含む矩形の容器であり、第一容器部82Aは、貯槽16Aの円弧部と弦部の残部とを含み、弦部の一部を含む矩形が切り取られた形状の容器である。第一容器部82Aは第二容器部83Aの左右の側面および背面を覆い隠すように、第二容器部83Aに連結されている。
【0078】
また、貯槽16Aは、本体5に着脱可能である。換言すると、第一容器部82Aおよび第二容器部83Aは、一体の状態で本体5に着脱可能である。第一容器部82Aおよび第二容器部83Aは、個別に着脱可能であっても良い。第一容器部82Aおよび第二容器部83Aのいずれか一方が本体5に着脱可能であって、いずれか他方が本体5に一体であっても良い。
【0079】
着脱可能な第一容器部82Aは、本体5から取り外すことによって、容易に給水可能である。また、給水時に、本体5内の電気部品、例えば電動送風機38や、電子部品、例えば制御部15に水が掛かって、これらが故障することを防ぐことができる。
【0080】
着脱可能な第二容器部83Aは、本体5から取り外すことによって、電極61や、容器それ自体を容易に洗浄可能である。また、洗浄時に、本体5内の電気部品、例えば電動送風機38や、電子部品、例えば制御部15に水が掛かって、これらが故障することを防ぐことができる。
【0081】
一体の状態で着脱可能な貯槽16Aは、第一容器部82Aへの給水と第二容器部83Aの洗浄とを、容易に同時に実施可能である。
【0082】
第一容器部82Aの頂部には、水を容器内へ導入するための給水口85と、給水口85を開閉する蓋86と、が設けられている。使用者は、蓋86を開くことで第一容器部82Aへ容易に給水できる。また、使用者は、蓋86を閉ざすことで第一容器部82Aから水が漏れることを容易に防ぐことができる。
【0083】
第二容器部83Aの底部には、供給部18に繋がる電解水の供給口87が設けられている。第二容器部83Aの頂部には、容器内の空気を抜くための空気穴が設けられている。空気穴は第二容器部83A外に開放されていても良いし、第一容器部82Aに繋がれていても良い。第二容器部83Aの内部には、第二容器部83Aに蓄えられている水の量、つまり水位(電解水の液位)を検知する水位計88が設けられている。
【0084】
水位計88は、接触式、または非接触式のいずれであっても良い。接触式の水位計88は、例えば、第二容器部83A内に設けられるフロート(浮き)の垂直方向における位置に基づいて水位を計測するフロート式、一対の電極間の静電容量を検出して水位を計測する静電容量式、など既知の方式を採用できる。非接触式の水位計88は、例えば、電波、超音波、または光波を用いて水位を計測する既知の方式を採用できる。
【0085】
第一容器部82Aおよび第二容器部83Aの底部には、両容器を流体的に繋ぐ継手89が設けられている。継手89は、第一容器部82A側の半体と、第二容器部83A側の半体と、を連結することで水の通路を開通させる。第一容器部82A側の半体、および第二容器部83A側の半体は、非連結状態において通路を閉鎖し、容器内の水(電解水)が漏れ出ることを防ぐ。継手89は、第一容器部82Aおよび第二容器部83Aの連結にともなって、容易に連結され、かつ第一容器部82Aおよび第二容器部83Aの分離にともなって、容易に切り離れることが好ましい。例えば、水平方向へ分離、連結の可能な貯槽16Aでは、継手89は、第一容器部82Aの側壁の底部に設けられる半体と、第二容器部83Aの側壁の底部に設けられる半体と、を有している。垂直方向へ分離、連結の可能な貯槽16Aでは、継手89は、第一容器部82Aおよび第二容器部83Aのいずれか一方の底壁に設けられる半体と、第一容器部82Aおよび第二容器部83Aのいずれか他方から第一容器部82Aおよび第二容器部83Aのいずれか一方の下方へ延びる連結管に設けられる半体と、を有している。
【0086】
少なくとも、第一容器部82Aに貯留される水の水位が、第二容器部83Aに貯留される水または電解水の水位よりも高い場合には、第一容器部82Aの水は、第二容器部83Aに供給される。換言すると、貯槽16Aは、第一容器部82Aと第二容器部83Aとの水頭差で第一容器部82Aに貯留されている水を第二容器部83Aへ供給する。つまり、第二容器部83Aで生成された電解水が消費される都度、第一容器部82Aに貯留される水が第二容器部83Aへ供給される。そのため、第一容器部82Aの水位と第二容器部83Aの水位とは、釣り合う。
【0087】
電解水生成部17の電極61は、板状であって、垂直方向へ拡がり延びている。換言すると、電極61の法線は、水平方向を向いている。電極61は、少なくとも1つの正極と、少なくとも1つの負極と、を含んでいる。正極と負極とは、その法線の方向へ交互に並べられる。
【0088】
なお、電解水生成部17の電極61の正極と負極とを水位計88に兼用することができる。垂直方向に拡がる電極61は、第二容器部83Aの水位(電解水の液位)の変化にともなって、水中(電解水の液中)に没する部位と、第二容器部83A内の気体に晒される部位との割合が変化する。この割合の変化は、電極61の正極と負極との間に流れる電流値を変化させる。そこで、電解水生成部17は、電極61の正極と負極との間に流れる電流値の変化に基づいて貯槽16に蓄えられている水の量を推定する。
【0089】
供給部18、つまり第一供給機構部63、第二供給機構部65、および第三供給機構部66は、貯槽16Aに設けられているが、本体5に設けられていても良い。第一供給機構部63、および第二供給機構部65を貯槽16Aに設ける場合には、供給部18の配管は、貯槽16Aに一体化されて第一供給機構部63、および第二供給機構部65に達する。第一供給機構部63、および第二供給機構部65を本体5に設ける場合には、供給部18の配管は、貯槽16Aから本体5内を経て第一供給機構部63、および第二供給機構部65に達する。第三供給機構部66を貯槽16Aに設ける場合には、供給部18の導水経路77は、貯槽16A内に設けられて第三供給機構部66に達する。第三供給機構部66を本体5に設ける場合には、供給部18の導水経路77は、貯槽16Aから本体5内を経て第三供給機構部66に達する。
【0090】
図6は、本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の第二例の貯槽の平面図である。
【0091】
図7は、本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機の第二例の貯槽の側面図である。
【0092】
図6および
図7に示すように、本実施形態に係る第二例の貯槽16Bは、電気分解前の水を貯留する第一容器部82Bと、電解水生成部17の電極61を収容する第二容器部83Bと、を含んでいる。
【0093】
そして、貯槽16Bの第一容器部82Bと第二容器部83Bとは、垂直方向へ分断されて積み重なっている。第一容器部82Bと第二容器部83Bとは、水平方向へ分離し、水平方向へ連結するものであっても良いし、垂直方向へ分離し、垂直方向へ連結するものであっても良い。水平方向へ分離、連結の可能な貯槽16Bは、第一容器部82Bと第二容器部83Bとを水平方向へスライドさせて分離され、連結される。垂直方向へ分離、連結の可能な貯槽16Bは、第一容器部82Bと第二容器部83Bとを上下方向へ遠ざけて分離され、上下方向へ近づけて連結される。
【0094】
平面視において、第二容器部83Bの形状は、第一容器部82Bの形状と実質的に同じである。第二容器部83Bの高さは、第一容器部82Bの高さよりも低い。第二容器部83Bの容積は、第一容器部82Bの容積よりも小さい。第一容器部82Bは第二容器部83Bの天面を覆い隠すように第二容器部83Bに連結されている。
【0095】
また、貯槽16Bは、本体5に着脱可能である。換言すると、第一容器部82Bおよび第二容器部83Bは、一体の状態で本体5に着脱可能である。第一容器部82Bおよび第二容器部83Bは、個別に着脱可能であっても良い。第一容器部82Bおよび第二容器部83Bのいずれか一方が本体5に着脱可能であって、いずれか他方が本体5に一体であっても良い。
【0096】
着脱可能な第一容器部82Bは、本体5から取り外すことによって、容易に給水可能である。また、給水時に、本体5内の電気部品、例えば電動送風機38や、電子部品、例えば制御部15に水が掛かって、これらが故障することを防ぐことができる。
【0097】
着脱可能な第二容器部83Bは、本体5から取り外すことによって、電極61や、容器それ自体を容易に洗浄可能である。また、洗浄時に、本体5内の電気部品、例えば電動送風機38や、電子部品、例えば制御部15に水が掛かって、これらが故障することを防ぐことができる。
【0098】
一体の状態で着脱可能な貯槽16Bは、第一容器部82Bへの給水と第二容器部83Bの洗浄とを、容易に同時に実施可能である。
【0099】
第一容器部82Bの頂部には、水を容器内へ導入するための給水口85と、給水口85を開閉する蓋86と、が設けられている。使用者は、蓋86を開くことで第一容器部82Bへ容易に給水できる。また、使用者は、蓋86を閉ざすことで第一容器部82Bから水が漏れることを容易に防ぐことができる。
【0100】
第二容器部83Bの底部には、供給部18に繋がる電解水の供給口87が設けられている。第二容器部83Bの頂部には、容器内の空気を抜くための空気穴が設けられている。空気穴は第二容器部83B外に開放されていても良いし、第一容器部82Bに繋がれていても良い。第二容器部83Bの内部には、第二容器部83B内の水位(水量、電解水量)を測る水位計88が設けられている。
【0101】
第一容器部82Bの底部および第二容器部83Bの頂部には、両容器を流体的に繋ぐ継手89が設けられている。継手89は、第一容器部82B側の半体と、第二容器部83B側の半体と、を連結することで水の通路を開通させる。第一容器部82B側の半体、および第二容器部83B側の半体は、非連結状態において通路を閉鎖し、容器内の水(電解水)が漏れ出ることを防ぐ。継手89は、第一容器部82Bおよび第二容器部83Bの連結にともなって、容易に連結され、かつ第一容器部82Bおよび第二容器部83Bの分離にともなって、容易に切り離れることが好ましい。例えば、垂直方向へ分離、連結の可能な貯槽16Bでは、継手89は、第一容器部82Bの底壁に設けられる半体と、第二容器部83Bの天井壁に設けられる半体と、を有している。水平方向へ分離、連結の可能な貯槽16Bでは、継手89は、第一容器部82Bの側壁の底部および第二容器部83Bの底壁の頂部のいずれか一方に設けられる半体と、第一容器部82Bおよび第二容器部83Bのいずれか他方から第一容器部82Bおよび第二容器部83Bのいずれか一方の側方へ延びる連結管に設けられる半体と、を有している。
【0102】
貯槽16Bは、第一容器部82Bと第二容器部83Bとの高低差、つまり水頭差で第一容器部82Bに貯留されている水を第二容器部83Bへ供給する。第二容器部83Bで生成された電解水が消費される都度、第一容器部82Bに貯留される水が第二容器部83Bへ供給される。第一例の貯槽16Aでは、第一容器部82Aの水位と第二容器部83Aの水位とが釣り合い続ける一方で、第二例の貯槽16Bでは、第一容器部82Bに水が残っている間、第二容器部83Aは満水に維持される。
【0103】
電解水生成部17の電極61は、板状であって、水平方向へ拡がり延びている。換言すると、電極61の法線は、垂直方向を向いている。電極61は、少なくとも1つの正極と、少なくとも1つの負極と、を含んでいる。正極と負極とは、その法線の方向へ交互に並べられる。
【0104】
供給部18、つまり第一供給機構部63、第二供給機構部65、および第三供給機構部66は、貯槽16Bに設けられていても良いし、本体5に設けられていても良い。第一供給機構部63、および第二供給機構部65を貯槽16Bに設ける場合には、供給部18の配管は、貯槽16Bに一体化されて第一供給機構部63、および第二供給機構部65に達する。第一供給機構部63、および第二供給機構部65を本体5に設ける場合には、供給部18の配管は、貯槽16Bから本体5内を経て第一供給機構部63、および第二供給機構部65に達する。第三供給機構部66を貯槽16Bに設ける場合には、供給部18の導水経路77は、貯槽16B内に設けられて第三供給機構部66に達する。第三供給機構部66を本体5に設ける場合には、供給部18の導水経路77は、貯槽16Bから本体5内を経て第三供給機構部66に達する。
【0105】
図8は、本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機のブロック図である。
【0106】
図2から
図3に加えて
図8に示すように、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、移動部11の電動機27、吸込掃除部31のブラシ用電動機36および電動送風機38、検知部13、制御部15、二次電池6、電解水生成部17、および供給部18に加えて通信部91を備えている。
【0107】
通信部91は、ステーション8に赤外線信号を送信する送信部91aと、ステーション8やリモートコントローラーが送信する赤外線信号を受信する受信部91bと、を備えている。送信部91aは、例えば赤外線発光素子を含んでいる。受信部91bは、例えばフォトトランジスタを含んでいる。
【0108】
検知部13のカメラ部51は、例えばデジタルカメラである。つまり、カメラ部51は、撮影した画像を電気信号に変換する撮像素子51a(イメージセンサー)と、撮像素子51aに像を結び、生じさせる光学系51bと、を備えている。撮像素子51aは、例えば、CCDイメージセンサー(Charge-Coupled Device image sensor)や、CMOSイメージセンサー(Complementary metal-oxide-semiconductor image sensor)である。そのため、自律型電気掃除機1は、カメラ部51で撮影した画像のデジタルデータを即座に取り扱うことができる。つまり、カメラ部51で撮影される画像は、例えば画像処理回路を利用することで所定のデータ形式に圧縮したり、二値画像に変換したり、グレースケールに変換したりすることができる。カメラ部51は、例えば可視光領域の画像を撮影する。可視光領域の画像は、例えば赤外領域の画像に比べて画質が良好であり、複雑な画像処理を施すことなく使用者に視認可能な情報を容易に提供できる。
【0109】
カメラ部51は、いわゆるステレオカメラである。カメラ部51は、撮影する画像が、自律型電気掃除機1の幅方向の中心線を延長した前方の位置を含む撮影範囲で重なり合っている。カメラ部51は、撮影範囲における奥行き(自律型電気掃除機1からみた離間距離)の情報を得ることができる。奥行きの情報を含む画像を「距離画像」と呼ぶ。
【0110】
カメラ部51には、LED(Light Emitting Diode)や電球などの照明装置が併設されていても良い。照明装置は、カメラ部51の撮影範囲の一部または全部を照らす。照明装置は、家具などの障害物の陰のような暗い場所や、夜間などの暗い環境下であっても、カメラ部51による適切な画像の取得を可能にする。
【0111】
撮像素子51aの受光面には、多数の画素が並べられている。受光面の各画素は、受けた光を電気信号に変換する。各画素が受けた光の情報を各画素の位置に応じて統合させることで、カメラ部51が撮影した景色を表す画像が得られる。一般的な撮像素子51aは、カラー画像を撮影する。カラー画像は、例えば赤、緑、および青の三つの色を混ぜて表現される。
【0112】
距離測定装置55は、奥行きの情報を得ようとする範囲に光を照射する発光部55aと、発光部55aから照射された光の反射光を受光する受光部55bと、を備えている。自律型電気掃除機1は、発光部55aの発光開始から受光部55bで反射光を受光するまでの時間差に基づいて自律型電気掃除機1から被検知物までの距離情報を取得できる。発光部55aは、例えば赤外線や、可視光を照射する。
【0113】
制御部15は、例えば中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)、中央処理装置で実行(処理)される各種演算プログラム、パラメータなどを記憶する補助記憶装置(例えば、Read Only Memory、ROM)、プログラムの作業領域が動的に確保される主記憶装置(例えば、Random access memory、RAM)を備えている。補助記憶装置は、例えば不揮発性メモリのように書き換え可能なものであることが好ましい。
【0114】
制御部15は、移動部11の電動機27、吸込掃除部31のブラシ用電動機36および電動送風機38、検知部13、二次電池6、および通信部91に電気的に接続されている。制御部15は、通信部91を介してステーション8、およびリモートコントローラーから受信する指令に応じて移動部11の電動機27、吸込掃除部31のブラシ用電動機36および電動送風機38、検知部13、二次電池6を制御し、自律型電気掃除機1の自律運転、自律移動を行う。
【0115】
制御部15は、自律型電気掃除機1の自律移動を制御する自律移動制御部101と、検知部13の動作を制御する検知制御部102と、を含んでいる。自律移動制御部101、および検知制御部102は、演算プログラムである。
【0116】
自律移動制御部101は、被掃除領域Aの環境地図情報(Environment Map)を記憶する地図情報記憶部103と、移動部11の電動機27の動作を制御する移動制御部105と、吸込掃除部31のブラシ用電動機36、および電動送風機38の動作を制御する吸込掃除制御部106と、を備えている。
【0117】
地図情報記憶部103は、補助記憶装置に確保される記憶領域に構築されたデータの集合であって、適宜のデータ構造を有している。地図情報記憶部103は、補助記憶装置から主記憶装置に読み込まれて利用され、適宜の更新を経て、補助記憶装置へ上書きされる。
【0118】
環境地図情報は、自律型電気掃除機1の自律移動に用いられる情報であり、少なくとも掃除対象となる場所において、自律型電気掃除機1が移動可能な領域の形状を含む情報である。環境地図情報は、例えば整然と配列された一辺10センチメートルの矩形の集合として構築されている。環境地図情報は、自律型電気掃除機1の使用に際して、事前に準備されるものであっても良いし、Simultaneous Localization and Mapping(SLAM)によって自己位置推定と同時に作成されるものであっても良い。環境地図情報は、掃除運転にともなう移動の過程で作成、および更新されても良い。SLAMで環境地図情報を作成する場合には、自律型電気掃除機1は、検知部13の他に、エンコーダーなどの種々のセンサーを備えていることが好ましい。移動制御部105は、これら検知部13および種々のセンサーから取得する情報に基づいて環境地図情報を作成する。
【0119】
移動制御部105は、環境地図情報に基づいて移動部11を制御して自律型電気掃除機1を自律で移動させる。移動制御部105は、電動機27に流れる電流の大きさ、および向きを制御して、電動機27を正転、または逆転させる。移動制御部105は、電動機27を正転、または逆転させることで、駆動輪26の駆動を制御している。
【0120】
吸込掃除制御部106は、ブラシ用電動機36、および電動送風機38を個別に制御する。
【0121】
検知制御部102は、カメラ部51の動作を制御する。検知制御部102は、所定の時間間隔毎にカメラ部51に画像を撮影させる。検知制御部102は、カメラ部51で撮影された画像を検知結果記憶部107に記憶する。カメラ部51で撮影された画像は、検知結果記憶部107は、主記憶装置に確保されている。検知結果記憶部107は、カメラ部51で撮影された画像を記憶する。検知結果記憶部107は、複数の画像を記憶可能な容量を有している。
【0122】
検知結果記憶部107は、カメラ部51で撮影された画像を表す画像情報を無加工で記憶しても良いし、画像の解析処理に必要な情報を残す限りにおいてデータサイズを減らすように加工した画像情報を記憶しても良い。検知結果記憶部107に記憶される画像情報は、例えば、カメラ部51で撮影された画像をグレースケールに変換した画像(以下、カメラ部51で撮影された元の画像と同じく「画像」と呼ぶ。)であっても良い。グレースケール画像の場合には、画像の画素値は輝度値と一致する。グレースケールに変換した画像を保存する場合には、制御部15は、元画像を記憶する場合に比べて、検知結果記憶部107に割り当てるメモリ領域の容量、つまりリソースを少量で済ませることが可能である。また、グレースケールに変換した画像を以後の解析処理に使用する場合には、制御部15は、元画像を処理する場合に比べて中央処理装置の負荷を軽減できる。画像のグレースケール化を含む画像処理は、カメラ部51で実行されても良い。カメラ部51で画像処理を実行することによって、中央処理装置の負荷が軽減される。
【0123】
また、検知制御部102は、照明装置の点灯と消灯とを制御する。照明装置は、画像を明るくして解析処理の容易化と精度向上とを容易にする。
【0124】
さらに、検知制御部102は、近接検知部52の検出結果、つまり被検知物が本体5に接近したこと、およびその時の被検知物と本体5との離間距離を検知結果記憶部107に記憶する。
【0125】
また、検知制御部102は、接触検知部53の検出結果、つまり被検知物が本体5に接触したことを検知結果記憶部107に記憶する。
【0126】
電解水生成部17は、移動部11が本体5を移動させている間に、電極61の正極と負極との間に電圧を印加して、貯槽16(貯槽16A、貯槽16B)に蓄えられている水を二次電池6の電力で電気分解して電解水を生成する。ここで、電解水生成部17は、移動部11が本体5を移動させている間中、電解水を生成するようにしても良いし、予め設定された、移動部11が本体5を移動させている間における所定の期間で電解水を生成するようにしても良い。所定の期間は特に限られるものではなく、適宜に設定可能である。所定の期間は、例えば、以下に詳細を説明するように、生成している電解水に含まれる次亜塩素酸の濃度や、貯槽16(貯槽16A、貯槽16B)に蓄えられている水の量や、二次電池6の残量などに応じて決められるものであっても良い。
【0127】
また、電解水生成部17は、移動部11が本体5を移動させていない間に、電極61の正極と負極との間に電圧を印加して、貯槽16(貯槽16A、貯槽16B)に蓄えられている水を二次電池6の電力で電気分解して電解水を生成しても良い。例えば、被掃除領域Aにおいて本体5が停止した状態である場合や、本体5がステーション8に接続された状態である場合において、電極61の正極と負極との間に電圧を印加して、電解水を生成しても良い。
【0128】
ところで、貯槽16Aは、第二容器部83Aの水位が第一容器部82Aの水位よりも低い場合には、第一容器部82Aの水が直ちに第二容器部83Aへ水頭差で供給される。貯槽16Bは、第二容器部83Bの水位が満水でない場合には、第一容器部82Aの水が直ちに第二容器部83Bへ水頭差で供給される。したがって、貯槽16内の水、または電解水が不足している場合に、第一容器部82A、82Bに水を補給すると、概ね、第二容器部83A、83Bに電気分解前の水が流れ込み、第二容器部83A、83B内の電解水の次亜塩素酸濃度が低下する。
【0129】
そこで、本体5の移動を開始させる以前に、所望の濃度の次亜塩素酸を含む電解水を得られるように、電解水生成部17は、移動部11が本体5を移動させる以前に電解水の生成を開始することが好ましい。例えば、第二容器部83A、83Bが電気分解前の水で満たされた状態で、所望の濃度、例えば5ppm以上の次亜塩素を含む電解水が得られる時間を確保できるよう、電解水生成部17は、移動部11が本体5を移動させる以前に電解水の生成を開始する。例えば、第二容器部83A、83Bの満水量の電気分解前の水に7.5ボルトの電圧を印加して、次亜塩素酸を5ppm含んだ電解水が得られる時間を確保できるよう、電解水生成部17は、移動部11が本体5を移動させる以前に電解水の生成を開始する。電解水生成部17は、水位計88で測定される第二容器部83A、83Bの水量に基づいて電解水が得られる時間を確保できるよう、移動部11が本体5を移動させる以前に電解水の生成を開始しても良い。
【0130】
また、本体5の移動を開始させた後に、所望の濃度の次亜塩素酸を含む電解水を早期に得られるように、電解水生成部17は、少なくとも移動部11が本体5を移動させ始めてから所定の時間が経過するまで、電極61の正極と負極との間に印加する電圧値を、他の場合よりも大きくする。このときの電圧値を、大電圧値と呼ぶ。例えば、第二容器部83A、83Bの満水量の電気分解前の水から次亜塩素酸を5ppm含んだ電解水が得られる時間が経過するまで、電解水生成部17は、電極61に大電圧値、例えば10ボルトの電圧を印加する。電解水生成部17は、水位計88で測定される第二容器部83A、83Bの水量に基づいて電解水が得られる時間が経過するまで、電極61に大電圧値の電圧を印加しても良い。
【0131】
さらに、電解水生成部17は、貯槽16、具体的には第二容器部83A、83Bに蓄えられている水の残量に基づいて、電極61の正極と負極との間に印加する電圧値を変更しても良い。
【0132】
図9は、本発明の実施形態に係る自律型電気掃除機における、貯槽の水量と電極に印加される電圧との関係の一例を示す図である。
【0133】
図9に示すように、貯槽16に蓄えられている水の量が所定の第一閾値、例えば満水量の80パーセントよりも多い場合には、所望の濃度の次亜塩素酸を含む電解水を早期に得られるように、電解水生成部17は、少なくとも移動部11が本体5を移動させ始めてから所定の時間が経過するまで、電極61の正極と負極との間に印加する電圧値を、他の場合よりも大きくする。例えば、第二容器部83A、83Bの満水量の80パーセントの電気分解前の水から次亜塩素酸を5ppm含んだ電解水が得られる時間が経過するまで、電解水生成部17は、電極61に大電圧値の電圧を印加する。電解水生成部17は、水位計88で測定される第二容器部83A、83Bの水量に基づいて電解水が得られる時間が経過するまで、電極61に大電圧値の電圧を印加しても良い。
【0134】
換言すると、電解水生成部17は、少なくとも移動部11が本体5を移動させ始めてから所定の時間が経過するまで、または貯槽16に蓄えられている水の量が所定の第一閾値よりも多い場合には、電極61の正極と負極との間に印加する電圧値を、他の場合よりも大きくする。
【0135】
なお、貯槽16に蓄えられている水の量が所定の第一閾値よりも多い領域において、電極61に印加される電圧は、
図9に示すように一定であっても良いし、貯槽16に蓄えられている水の量に応じて変化していても良い。貯槽16に蓄えられている水の量に応じて電圧を変化させる場合には、貯槽16に蓄えられている水の量が多いほど、電極61に印加される電圧は、増加する。
【0136】
また、貯槽16に蓄えられている水の量が所定の第二閾値、例えば満水量の20パーセントよりも少ない場合には、二次電池6の電力の消耗を抑えるために、電解水生成部17は、電極61の正極と負極との間に印加する電圧値を、他の場合よりも小さくする。このときの電圧値を、小電圧値と呼ぶ。例えば、電解水生成部17は、電極61の正極と負極との間に小電圧値、例えば5ボルトの電圧を印加する。電解水生成部17は、水位計88で測定される第二容器部83A、83Bの水量に基づいて電解水が得られる時間が経過するまで、電極61の正極と負極との間に小電圧値の電圧を印加しても良い。
【0137】
なお、貯槽16に蓄えられている水の量が所定の第二閾値よりも少ない領域において、電極61に印加される電圧は、
図9に示すように一定であっても良いし、貯槽16に蓄えられている水の量に応じて変化していても良い。貯槽16に蓄えられている水の量が所定の第二閾値以上、かつ第一閾値以下の領域においても、電極61に印加される電圧は、
図9に示すように一定であっても良いし、貯槽16に蓄えられている水の量に応じて変化していても良い。貯槽16に蓄えられている水の量に応じて電圧を変化させる場合には、貯槽16に蓄えられている水の量が多いほど、電極61に印加される電圧は、増加する。
【0138】
さらに、電解水生成部17は、貯槽16に蓄えられている水の全量を電気分解し終えた場合には、電極61の正極と負極との間に電圧を印加しなくても良い。例えば、第二容器部83A、83Bの満水量の電気分解前の水に7.5ボルトの電圧を印加して、次亜塩素酸を5ppm含んだ電解水が得られる時間が経過した後、電解水生成部17は、電極61の正極と負極との間に電圧を印加しない。
【0139】
また、電解水生成部17は、二次電池6に充電されている電力の残量が所定の残量より少ない場合には、電極61の正極と負極との間に電圧を印加しない。所定の残量は、二次電池6の放電容量に対する所定の比率、例えば20パーセントに設定される。また、所定の残量は、被掃除領域Aの環境地図情報に基づいて、充電台としてのステーション8へ帰巣するために要する電力を算出し、この算出した電力を賄うことが可能な残量の推定値、もしくはこの推定値に安全率を見込んだものであっても良い。
【0140】
供給部18は、貯槽16の電解水を本体5の下方の被掃除面f、または拭き掃除部32へ供給して、被掃除領域Aの除菌を行う。供給部18は、拭き掃除部32の第二開閉弁74、および第一開閉弁72を制御して貯槽16(貯槽16A、貯槽16B)から被掃除面f、または拭き掃除部材43へ供給される電解水の供給量を制御する。
【0141】
供給部18は、電解水に含まれる次亜塩素酸の濃度が例えば5ppmに達した後に、電解水の供給を開始する。電解水に含まれる次亜塩素酸の濃度は、第二容器部83A、83Bに貯留可能な水量と電解水生成部17の電極61に印加する電圧との関係から推測するものであっても良いし、次亜塩素酸の濃度を測定可能なセンサーを用いるものであっても良い。例えば、供給部18は、第二容器部83A、83Bの満水量の電気分解前の水に7.5ボルトの電圧を印加して、次亜塩素酸を5ppm含んだ電解水を生成するために要する時間が経過した後に、電解水の供給を開始する。また、供給部18は、水位計88で測定される第二容器部83A、83Bの水量に基づいて電解水を生成するために要する時間が経過した後に、電解水の供給を開始しても良い。
【0142】
以上のように、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、本体5に設けられて水を貯留する貯槽16と、移動部11が本体5を移動させている間に、貯槽16に蓄えられている水を二次電池6の電力で電気分解して電解水を生成する電解水生成部17と、生成された電解水を本体5外へ供給する供給部18と、を備えている。そのため、自律型電気掃除機1は、被掃除領域Aを動き回って掃除を行うとともに、被掃除領域Aを除菌することができる。
【0143】
また、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、移動部11が本体5を移動させる以前に電解水の生成を開始する電解水生成部17を備えている。そのため、自律型電気掃除機1は、移動を始める際に、電解水を用いた除菌機能を発揮することができる。
【0144】
さらに、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、電解水に含まれる次亜塩素酸の濃度が所定の濃度、例えば5ppmに達した後に、電解水の供給を開始する供給部18を備えている。そのため、自律型電気掃除機1は、電解水を所定量以上に供給することで、被掃除領域Aを確実に除菌することができる。
【0145】
また、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、移動部11が本体5を移動させている間に、電極61の正極と負極との間に電圧を印加し続ける。そのため、自律型電気掃除機1は、所定の濃度、例えば5ppmの次亜塩素酸を含む電解水を継続的に供給し続けることができる。
【0146】
さらに、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、移動部11が本体5を移動させ始めてから所定の時間が経過するまで、電解水生成部17の電極61の正極と負極との間に印加する電圧値を、他の場合よりも大きくする。そのため、自律型電気掃除機1は、本体5の移動を開始する際に、仮に電解水に含まれる次亜塩素酸が所定の濃度、例えば5ppmに達していない場合であっても、早急に電解水に含まれる次亜塩素酸の濃度を上昇させることができる。
【0147】
また、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、貯槽16に蓄えられている水の量が所定(第一閾値)よりも多い場合には、電解水生成部17の電極61の正極と負極との間に印加する電圧値を、他の場合よりも大きくする。そのため、自律型電気掃除機1は、貯槽16に水が大量に貯留されている場合であっても、早急に電解水に含まれる次亜塩素酸の濃度を上昇させることができる。
【0148】
さらに、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、貯槽16に蓄えられている水の量が所定(第二閾値)よりも少ない場合には、電解水生成部17の電極61の正極と負極との間に印加する電圧値を、他の場合よりも小さくする。そのため、自律型電気掃除機1は、貯槽16に貯留されている水が少量の場合には、消費電力を抑えつつ、電解水に含まれる次亜塩素酸の濃度を所要に上昇させることができる。
【0149】
また、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、貯槽16に蓄えられている水の全量を電気分解し終えた場合には、電解水生成部17の電極61の正極と負極との間に電圧を印加しない。そのため、自律型電気掃除機1は、貯槽16に貯留されている水を電気分解し終えると、電解水生成部17で必要以上に二次電池6の電力が消費されることを防ぐ。
【0150】
さらに、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、電解水生成部17の電極61の正極と負極との間に流れる電流値から貯槽16に蓄えられている水の量を推定する。そのため、自律型電気掃除機1は、貯槽16に蓄えられている水の量を検知するための最低限の構成で、水量に応じた電解水の生成制御を行うことができる。
【0151】
また、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、貯槽16に蓄えられている水の量を検知する水位計88を備えていても良い。そのため、自律型電気掃除機1は、貯槽16の水量に応じた電解水の生成制御を行うことができる。
【0152】
さらに、本実施形態に係る自律型電気掃除機1は、二次電池6の残量が所定より少ない場合には、電解水生成部17の電極61の正極と負極との間に電圧を印加しない。そのため、自律型電気掃除機1は、電解水の生成を要因としてステーション8へ帰巣困難になることを回避できる。
【0153】
したがって、本実施形態に係る自律型電気掃除機1によれば、被掃除領域Aを動き回って掃除を行うとともに、被掃除領域Aを除菌できる。
【0154】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0155】
1…自律型電気掃除機、5…本体、6…二次電池、8…ステーション、9…電源コード、11…移動部、12…掃除部、13…検知部、15…制御部、16、16A、16B…貯槽、17…電解水生成部、18…供給部、21…本体ケース、22…バンパー、26…駆動輪、27…電動機、28…従動輪、31…吸込掃除部、32…拭き掃除部、34…吸込口、35…回転ブラシ、36…ブラシ用電動機、37…塵埃容器、38…電動送風機、39…吸込風路、39u…上流側風路、39d…下流側風路、41…排気風路、43…拭き掃除部材、45…拭掃除部材取付部、51…カメラ部、51a…撮像素子、51b…光学系、52…近接検知部、53…接触検知部、55…距離測定装置、55a…発光部、55b…受光部、61…電極、63…第一供給機構部、65…第二供給機構部、66…第三供給機構部、71…第一供給口、72…第一開閉弁、73…第二供給口、74…第二開閉弁、76…霧化装置、76…霧化装置、77…導水経路、79…吸湿部、81…容器、82A、82B…第一容器部、83A、83B…第二容器部、85…給水口、86…蓋、87…供給口、88…水位計、89…継手、91…通信部、91a…送信部、91b…受信部、101…自律移動制御部、102…検知制御部、103…地図情報記憶部、105…移動制御部、106…吸込掃除制御部、107…検知結果記憶部。