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特許7213257複合材料成形用粘着防止テープ及びその製造方法並びに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】複合材料成形用粘着防止テープ及びその製造方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20230119BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20230119BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20230119BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20230119BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20230119BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230119BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20230119BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B32B7/06
B32B17/10
C09J7/21
C09J7/29
C09J7/38
C09J183/04
C09J201/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020541353
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2019072782
(87)【国際公開番号】W WO2019149119
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】201810089532.5
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517045598
【氏名又は名称】日東電工(上海松江)有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100168273
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 昌稔
(72)【発明者】
【氏名】李 旭
(72)【発明者】
【氏名】渡▲辺▼ 義宣
(72)【発明者】
【氏名】田 松
(72)【発明者】
【氏名】柳 ▲紀▼峰
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-515374(JP,A)
【文献】特表2018-517000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0093451(US,A1)
【文献】特開平08-238718(JP,A)
【文献】特開2001-315248(JP,A)
【文献】特開2005-178302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/30
B32B 7/06
B32B 17/10
C09J 7/21
C09J 7/29
C09J 7/38
C09J 183/04
C09J 201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有樹脂層である第1の層、第1の粘着剤層である第2の層、補強材層である第3の層、および第2の粘着剤層である第4の層がこの順に積層されている構造を備え、
前記第1の層と複合材料成形用樹脂との間の結合力が前記第4の層の180度剥離粘着力より小さく、且つ前記第1の粘着剤層、前記第2の粘着剤層の分子間凝集力が前記第4の層の180度剥離粘着力より大きく、
前記補強材層がケイ素含有試薬で変性処理されたガラス繊維布層であることを特徴とする、複合材料成形用粘着防止テープ。
【請求項2】
前記フッ素含有樹脂層は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロエチレン-プロピレンコポリマー樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン樹脂及びエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂から選択される1種又は複数種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の粘着防止テープ。
【請求項3】
前記フッ素含有樹脂層の厚みが20~200μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粘着防止テープ。
【請求項4】
前記第4の層の180度剥離粘着力の、前記第1の層と複合材料成形用樹脂との間の結合力に対する比が、3~16の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粘着防止テープ。
【請求項5】
前記第1の粘着剤層及び前記第2の粘着剤層がシリコーン樹脂層であり、ゲル分率が3
0~60%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粘着防止テープ。
【請求項6】
前記第1の粘着剤層及び前記第2の粘着剤層の厚みがそれぞれ5μm~100μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粘着防止テープ。
【請求項7】
記ガラス繊維布の厚みが30μm~200μmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粘着防止テープ。
【請求項8】
前記ガラス繊維布は、前記ガラス繊維布の重量に対してケイ素含有試薬を0.01wt%~2wt%含有することを特徴とする、請求項7に記載の粘着防止テープ。
【請求項9】
前記ケイ素含有試薬の量がガラス繊維布の重量に対して0.05wt%~0.5wt%であることを特徴とする、請求項8に記載の粘着防止テープ。
【請求項10】
前記第1の粘着剤層の分子間凝集力と前記第4の層の180度剥離粘着力との比が1.05~3であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粘着防止テープ。
【請求項11】
さらに前記第4の層の上に離型フィルムを含み、離型フィルムを除く総厚みが0.06~0.6mmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粘着防止テープ。
【請求項12】
前記複合材料成形用樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粘着防止テープ。
【請求項13】
(1)フッ素含有樹脂の表面に第1の粘着剤を塗布する工程と、
(2)乾燥後、補強材を貼り合わせる工程と、
(3)次に、前記補強材の表面に第2の粘着剤を塗布する工程と、
を備えることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の粘着防止テープの製造方法。
【請求項14】
前記貼り合わせ工程において、圧力を0.05MPa~0.5MPaとし、温度を30℃~150℃とすることを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の粘着防止テープの、複合材料成形における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテープに関し、より具体的には、複合材料成形用粘着防止テープに関する。本発明はまた、上記粘着防止テープの製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料とは、一般にポリマー複合材料を指し、マトリックス材と補強材から複合してなる多相系固体材料であり、各構成材料の特性を十分に発揮し、本来の単一材料にはない優れた性能を示すことができる。このような複合材料に用いられる補強材として、炭素繊維、アラミド(Kevlar)繊維及びガラス繊維が挙げられ、マトリックス材は通常、例えばエポキシ樹脂、シアネート樹脂、フェノール樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂から選択される。そのうち、熱硬化性樹脂系複合材料は現在、最も研究され、最も広く利用されている複合材料であり、軽量で高強度、高弾性率、耐食性を有し、加工成形が容易等の特徴を有し、工業上広く利用されている。例えば、風力発電分野では、回転翼の材料として一般的に使われているのは、不飽和ポリエステル樹脂/ガラス繊維、エポキシ樹脂/ガラス繊維、及びエポキシ樹脂/炭素繊維である。
【0003】
現在、複合材料製品を製造するために、通常、補強材層を適切な構造を有する金型に導入し、次に樹脂を補強材を含む金型に注入し、且つ硬化させるために一定の時間で置き、最後に金型を開き、製品を取り出し、金型を洗浄し、その後に新たなサイクルを開始することができる。例えば不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂等の複合材料用樹脂は、一定の粘着性を有するため、注入された後に金型と接触してブロキングが生じ、高温で硬化された後に離型が難しくなり、金型が壊れやすい。簡単且つ非破壊的な剥離を確保するために、通常、金型の使用前にその表面にポリビニルアルコールやシリコーンワックスなどの離型剤をスプレーする必要はあるが、以下の問題があった。1)一部の慣用離型剤は有機溶媒系であるため、匂いがあり、毒性が高く、乾燥蒸発時に環境を汚染しやすい。2)溶媒が存在するため、離型剤には比較的長い乾燥及び硬化時間が必要であり、且つ各製造サイクルの前に離型剤を再度スプレーする必要があるため、各サイクルの前に、長いダウンタイムが発生し、生産性に大きな影響を与える。3)離型剤を均一に塗布するために、金型には高い表面平滑性が求められている。金型の表面が十分に平滑でないと、離型剤が均一に塗布されず、樹脂が金型の一部において堆積しやすくなる。4)離型剤の一部が部品に転移され、その結果、その後の表面コーティング等の加工が困難となり、離型剤を除去する必要があるため、同様に生産性に影響を与える。
【0004】
離型剤の代わりに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で塗布されたガラス織物を使用してテープの形態で金型に適用する試みもあった。しかし、PTFEで処理されたガラス織物キャリアの剛性及び不良な柔軟性によりテープの下部に気泡などが発生しやすく、且つ金型に通常のPTFEで塗布されたガラス織物を使用すると、テープ中心に液状樹脂が浸透しやすく、サイクル寿命が短くなる。また、使用される感圧粘着剤は粘着強度が急激に上昇する場合があり、剥離時に大きな力が発生し、糊残りがないまま金型からテープを外すことが困難である。
【0005】
上記の問題は、大型部品(例えば、自動車、船舶、飛行機、人工衛星、宇宙船等の構造体、風力発電用大型ブレード)の製造で特に著しくなり、離型の問題は生産性に深刻な影響を与える。このため、材料層と金型の間に使用されるテープについて、型開き時に複合材料成形用樹脂と容易に分離できながら、テープの交換時に金型から完全に剥離できるように設計し、テープのサイクル寿命を向上させ、全体的な生産性を向上させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、型開き時に複合材料成形用樹脂と容易に分離でき、また、テープの交換時に金型から完全に剥離できるため、金型の使用寿命を延長できる複合材料成形用粘着防止テープを提供することにある。本発明のもう1つの目的は、操作が簡単で経済性が高く、且つ環境にやさしい複合材料成形用粘着防止テープの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フッ素含有樹脂層である第1の層、第1の粘着剤層である第2の層、補強材層である第3の層、および第2の粘着剤層である第4の層がこの順に積層されている構造を備え、前記第1の層と複合材料成形用樹脂との間の結合力が前記第4の層の180度剥離粘着力より小さく、且つ前記第1の粘着剤層、前記第2の粘着剤層の分子間凝集力が前記第4の層の180度剥離粘着力より大きい複合材料成形用粘着防止テープを提供する。
【0008】
本発明に記載の粘着防止テープにおいて、前記フッ素含有樹脂層は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、パーフルオロエチレン-プロピレンコポリマー樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン樹脂及びエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー樹脂から選択される1種又は複数種を含む。
【0009】
本発明に記載の粘着防止テープにおいて、前記フッ素含有樹脂層の厚みが20~200μmである。
【0010】
本発明に記載の粘着防止テープにおいて、前記第4の層の180度剥離粘着力の、前記第1の層と複合材料成形用樹脂との間の結合力に対する比が、3~16である。
【0011】
本発明に記載の粘着防止テープにおいて、前記第1の粘着剤層及び前記第2の粘着剤層がシリコーン樹脂層であり、ゲル分率が30~60%である。
【0012】
本発明に記載の粘着防止テープにおいて、前記第1の粘着剤層及び前記第2の粘着剤層の厚みがそれぞれ5μm~100μmである。
【0013】
本発明に記載の粘着防止テープにおいて、前記補強材層がケイ素含有試薬で変性処理されたガラス繊維布層であり、前記ガラス繊維布の厚みが30μm~200μmである。
【0014】
本発明に記載の粘着防止テープにおいて、前記ガラス繊維布は、前記ガラス繊維布の重量に対してケイ素含有試薬を0.01wt%~2wt%含有する。
【0015】
本発明に記載の粘着防止テープにおいて、前記ケイ素含有試薬の量は、ガラス繊維布の重量に対して0.05wt%~0.5wt%である。
【0016】
本発明に記載の粘着防止テープにおいて、前記第1の粘着剤層の分子間凝集力と前記第4の層の180度剥離粘着力との比が1.05~3である。
【0017】
本発明に記載の粘着防止テープにおいて、さらに、前記第4の層上に離型フィルムを含み、離型フィルムを除く総厚みが0.06~0.6mmである。
【0018】
本発明に記載の粘着防止テープにおいて、前記複合材料成形用樹脂は不飽和ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂である。
【0019】
本発明はまた、
(1)フッ素含有樹脂の表面に第1の粘着剤を塗布する工程と、
(2)乾燥後に補強材を貼り合わせる工程と、
(3)次に、前記補強材の表面に第2の粘着剤を塗布する工程と、
を備える、本発明に記載の粘着防止テープの製造方法を提供する。
【0020】
本発明に記載の粘着防止テープの製造方法は、前記貼り合わせ工程において、圧力を0.05MPa~0.5MPaとし、温度を30℃~150℃とする。
【0021】
また、本発明はさらに、本発明に記載の粘着防止テープの、複合材料成形における使用を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のテープは、上記特定の構造を採用し、テープにおける各層の種類及びパラメータを調整することにより、柔軟性に優れ、薄型化され、粘着性及び容易剥離性に優れ、複合成形材料の製造時に粘着防止テープとして適用できる。そして、型開き時に複合材料成形用樹脂と容易に分離でき、また、テープの交換時に金型から完全に剥離できるため、耐磨耗性に優れ、サイクル寿命が長く、約100回以上の成形、型開きを行うことができ、コストを削減し、時間を節約し、生産性を大幅に向上させることができ、特に大型の複合材料部品(例えば、自動車、船舶、飛行機、人工衛星、宇宙船等の構造体、風力発電用大型ブレード)の製造に適する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は本発明の複合材料成形用粘着防止テープの一例の断面構造の模式図である。
図2図2は本発明の複合材料成形用粘着防止テープを使用した一例の断面構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の適切な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面はあくまでも例示であり、本明細書において特に言及している事項以外の適切な事項であって本発明の実施に必要な事項は、この分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に公開されている内容及びこの分野における技術常識に基づいて実施されることができる。
【0025】
本発明において、「テープ」という用語は、例えば2次元に延在するフィルム又はフィルムのセグメント、延びた長さ及び限られた幅を有するテープ、テープのセグメント等、さらにはダイカット部品又はラベルを含むすべての面状構造を含む。テープは、シート状物から積層されてなる形態、即ちフィルムであってもよく、ロール状に巻かれた形態、即ちアルキメデス螺旋状でそれ自体がロールに巻かれてもよく、又は、必要ではないが、必要に応じてシリコンで処理された紙やシリコンで処理されたフィルム等の分離材料で粘着剤側を覆うことで製造されることができる。
【0026】
[複合材料成形用粘着防止テープ]
【0027】
<粘着防止テープ>
図1、2から明らかなように、本発明に記載の粘着防止テープ10は、フッ素含有樹脂層1である第1の層と、フッ素含有樹脂層1に形成された第1の粘着剤層2である第2の層と、第1の粘着剤層2の他方の面に粘着されている補強材層3である第3の層と、補強材層3の他方の面に粘着されている第2の粘着剤層4である第4の層とがこの順に積層されている構造を備える。粘着防止テープ10は必要に応じて、前記第4の層(第2の粘着剤層4)の外側に離型フィルムをさらに備えてもよい。
【0028】
使用時に、前記第1の層(フッ素含有樹脂層1)と複合材料成形用樹脂5との間の結合力が前記第4の層(第2の粘着剤層4)とSUS304ステンレス鋼板6の180度剥離粘着力より小さく、且つ前記第1の粘着剤層2、前記第2の粘着剤層4の分子間凝集力が、いずれも前記第4の層(第2の粘着剤層4)とSUS304ステンレス鋼板6の180度剥離粘着力より大きい。
【0029】
前記粘着防止テープの離型フィルムを除く総厚みが0.06mm~0.6mmであり、好ましくは0.1mm~0.4mmである。上記の厚み範囲にある粘着防止テープは、薄型化の要求を満たし、また複雑な金型の曲面にも貼り合わせやすく、金型のコーナー部にも一度のみで貼り合わせることができる。
【0030】
<フッ素含有樹脂層>
フッ素含有樹脂層は、主にフッ素含有樹脂の低い表面エネルギーを利用し、テープ表面と複合材料成形用樹脂との間の結合力を低減させるものであって、離型性及び耐磨耗性を有する。フッ素含有樹脂層は主にフッ素含有樹脂から構成され、フッ素含有樹脂としては特に制限されないが、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、パーフルオロエチレン-プロピレンコポリマー(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)から選択される1種又は複数種を含む。フッ素含有樹脂層はまた、ほかのポリマーを含んでもよいが、フッ素含有樹脂はほかのポリマーとの良好な相溶性を示す必要がある。適切なポリマーとして、オレフィン系ポリマー、ポリエステル等が挙げられる。本発明において、フッ素含有樹脂層としてPTFEフィルムを使用することが好ましい。PTFEは摩擦係数が極めて低く、テープ表面と例えばエポキシ樹脂等の複合材料成形用樹脂との間の結合力を大幅に低減することができる。成形初期の粘質樹脂でも高温硬化後の樹脂でも、PTFEフィルムを使用することで型開き時に樹脂と金型が分離しやすくなる。また、PTFEフィルムは耐候性にも優れるため、テープの長期信頼性を確保することができる。このようなフィルムは、例えば日本バルカー工業社製No.7991、日東電工株式会社製No.900として入手することができる。
【0031】
なお、フッ素含有樹脂層の表面エネルギーが低いと、テープのほかの層との粘着性において問題が生じることもある。フッ素含有樹脂層とテープのほかの層との投錨力を向上させるために、通常、フッ素含有樹脂層のテープ表面から離れた他方の表面に対して変性処理を行うことでその粘着性を向上させることができる。フッ素含有樹脂層の表面を変性するための方法として、主にナトリウム処理、コロナ放電処理、スパッタリングエッチング処理、スプレー処理、放射線グラフト法、イオン注入法、レーザー処理法等が挙げられる。ナトリウム処理とは、フッ素樹脂フィルムの本体を金属ナトリウムの液化アンモニア又はナフタレン溶液に浸漬する処理である。C-F結合を切断し、表面上の一部のフッ素原子を脱離させ、表面において炭化層を残し且つ一部の極性基を導入することで、ポリマーの表面エネルギーが増加し、濡れ性が向上する。コロナ放電処理とは、針状又は刃状の電極と対極との間で放電し、電極間にフッ素樹脂フィルムの本体を入れることで、フッ素樹脂フィルムの本体の表面にアルデヒド、酸、アルコール、過酸化物、ケトン、エーテル等の酸素含有官能基を生成する処理である。作業性、コストなどを考慮すれば、本発明の1つの実施の形態において、金属ナトリウム/ナフタレン溶液を用いてナトリウム処理を実施することが好ましく、この処理の実施には-50℃程度の低温を必要としない。前記フッ素含有樹脂層の処理後の表面張力は好ましくは45mN/m以上である。表面張力を上記の範囲とすることにより、第1の粘着剤層との粘着性を向上させることができる。表面張力は、規格GB/T14216-2008又はISO8296:2003に準じる測定方法により測定される。
【0032】
フッ素含有樹脂層と複合材料成形用樹脂とが直接的に接触するため、その厚みはテープのサイクル寿命に緊密に関係している。フッ素含有樹脂層の厚みは、20~200μmであることが好ましい。20μm未満であると、フッ素含有樹脂層の厚みが薄すぎるため、摩耗された後に、内部のガラス繊維が露出し、液状樹脂が浸透され、サイクル寿命が低下しやすくなる。200μmより大きいと、フッ素含有樹脂層の厚みが厚すぎるため、使用時のテープの加工性が悪くなり、使用コストも高くなる。コスト及びテープのサイクル寿命への要求を総合的に考慮すれば、フッ素含有樹脂層の厚みは25~200μmであることがより好ましく、50~100μmであることがさらに好ましい。
【0033】
<第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層>
本発明の第1の粘着剤層は主に、フッ素含有樹脂層と補強材層とを粘着する役割を果たし、第2の粘着剤層は主に、補強材層と被着体とを粘着する役割を果たす。使用時に、本発明に記載の粘着防止テープの第4の層(つまり、第2の粘着剤層)は被着体に貼り付けられる。
【0034】
粘着剤を具体的に選択する際に、下記の条件を満たす必要がある。1)フッ素含有樹脂層と複合材料成形用樹脂との間の結合力が、前記第2の粘着剤層の180度剥離粘着力より小さい。2)前記第1の粘着剤層、前記第2の粘着剤層の分子間凝集力が、共に前記第2の粘着剤層の180度剥離粘着力より大きい。これらの条件を満たしないと、テープは型開き時に複合材料成形用樹脂と容易に分離し、交換が必要される際に金型から完全に剥離することができない。
【0035】
第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の粘着剤は、公知の粘着剤から選択され、上記の条件を満たす粘着剤であればよい。第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の粘着剤は同一でも異なっていてもよい。粘着剤として、具体的には、ポリウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤等の従来公知の粘着剤が挙げられる。粘着剤は単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記粘着剤は、例えばエマルジョン型粘着剤、溶剤型粘着剤、ホットメルト型粘着剤等のいずれの形態であってもよい。
【0036】
複合材料の成形反応条件が複雑であるため、本発明において、良好な耐熱性、耐候性、耐薬品性を有するシリコーン系粘着剤が好ましい。さらに、本発明の第1の粘着剤層及び前記第2の粘着剤層は共にシリコーン樹脂層であることが好ましい。高温下での粘着力を維持する特性を向上させるために、シリコーン樹脂層は、主に過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤を含むことがさらに好ましい。過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤の組成としては、過酸化物硬化型シリコーンゴム及び/又はその部分縮合物を含むものであれば、特に制限されない。例えば、ジメチルシロキサンを主な構成単位とするオルガノポリシロキサンが挙げられる。オルガノポリシロキサンには、必要に応じてヒドロキシル基又はほかの官能基を導入することができる。オルガノポリシロキサンとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン又はポリメチルフェニルシロキサン、ジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンとの共重合物、ジメチルシロキサンとメチルフェニルシロキサンとの共重合物、ジメチルシロキサンと、メチルビニルシロキサンとジフェニルシロキサンとの三元共重合物等が挙げられる。ほかのポリマーとしては、ポリエチルメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、ポリエチルフェニルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、又はこれらの共重合物が挙げられる。オルガノポリシロキサンは、末端が例えばトリオルガノシロキシ単位(例えば、トリメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキサン、ジメチルフェニルシロキサン等)により封止されてもよい。末端基はさらに、ヒドロキシル基で封止されたポリジオルガノシロキシを含んでもよい。オルガノポリシロキサンの分子構造として、直鎖状、部分分岐を有する直鎖状、環状、分岐状等が挙げられる。オルガノポリシロキサンの具体例としては、信越化学工業株式会社(Shin-Etsu Chemical Co.,Ltd.)製KR-3006A/BT、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社(Toray Dow Corning Corporation Silicone)製SH 4280PSA等が挙げられる。上記のオルガノポリシロキサンを使用する場合、重量平均分子量は特に制限されないが、通常18万以上であり、好ましくは28万~100万であり、より好ましくは50万~90万である。重量平均分子量が18万未満であると、粘着剤に必要とされる粘着力を発揮できないことがある。一方、100万より大きいと、粘着剤の粘度が上昇するため、塗布性不良等が生じることがある。粘着剤層には、さらに、有機過酸化物硬化剤が含まれる。分解して遊離酸素ラジカルを生成する化合物であれば、特に制限されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert-ブチル(α-クミル)ペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチルー2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物硬化剤の量は、過酸化物硬化型シリコーン樹脂100重量部に対して1.5~3重量部である。硬化剤の量が下限値未満の場合、粘着剤組合物の凝集力が不十分となり、上限値を超えると、凝集力が過剰となり、且つ高温環境下での耐久性が低下する。
【0037】
ゲル分率の大きさはテープの結合力に影響を与える。本発明では、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層のゲル分率(gel fraction)は好ましくは30~60%であり、より好ましくは40~50%である。第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層はゲル分率が同一でも異なっていてもよい。ゲル分率を上記の範囲に制御することで、粘着剤に適切な凝集強度を付与し、テープの繰り返し使用に対する耐性を向上させることができる。本発明では、第1の粘着剤層及び前記第2の粘着剤層の厚みは特に制限されないが、例えばそれぞれ5μm~100μmであることができ、8μm~70μmであることがより好ましく、10μm~45μmであることが特に好ましい。粘着剤層の厚みが上記の範囲にある場合、適切な粘着力を発揮することができる。
【0038】
<補強材層>
補強材層は、主にテープに十分な機械的強度を付与するためのものであり、好ましくは変性又は未変性のガラス繊維布である。ガラス繊維布とは、ガラス繊維の糸を織り上げて得られた織物であり、耐高温性及び高強度を有する。ガラス繊維織物として使用するガラス繊維の糸は通常、約数ミクロンの直径を有するガラス繊維を数百本単位で集束して形成されるものである。ガラス繊維布の特性は、繊維の性能、経緯密度、糸構造及び織り方により決められる。経緯密度はまた、糸構造及び織り方により決められる。経緯密度と糸構造は、例えば重量、厚み及び破断強度等の織物の物理的特性を決める。基本的な織り方としては、平織り、綾織り、朱子織り、畝織り及びマット織りが挙げられる。ガラス繊維布の種類及び構成は特に制限されないが、例えば目付けが15~110g/m2であり、経緯密度が経糸及び緯糸ともに10~100本/25mmであるガラス繊維の平織生地を好ましく使用することができる。使用前に、その後のケイ素含有処理工程の効果を向上させるように、ガラス繊維布に開繊処理を実施することができる。ガラス繊維布の厚みは好ましくは30μm~200μmであり、より好ましくは50μm~130μmである。厚みが上記の範囲にあると、テープの機械的特性と加工性をバランスよくすることができる。
【0039】
本発明を実施するための1つの形態において、補強材層は、ケイ素含有試薬で変性処理されたガラス繊維生地層であることが好ましい。ケイ素含有試薬は、フッ素含有樹脂材料のガラス繊維布表面における湿展性及び内部浸透性に大きな影響を与える。ケイ素含有試薬処理とは、ケイ素含有試薬でガラス繊維布を処理することである。ケイ素含有試薬としては、分子中に化学的性質の異なる2つの基を同時に含み、且つ構造式としてYSiX3(式中、Yは、アルケニル基(主に、ビニル基)、および末端にCl、NH2、-SH、エポキシ基、N3、(メタ)アクリロイルオキシ基、イソシアネート基等の官能基を持つ炭化水素基、即ち炭素官能基を含む非加水分解基が挙げられ、Xは、Cl、OCH3、OCH2CH3、OC24OCH3、OSi(CH33等を含む加水分解性基である。)で表される1種のシリコーン化合物が挙げられる。本発明では、ケイ素含有試薬の量は、テープの内部結合力を向上させる点から、ガラス繊維布の合計重量に対して0.01wt%~2wt%であり、好ましくは0.05wt%~0.5wt%である。この範囲の使用量のケイ素含有試薬でガラス繊維布を処理する場合、ガラス繊維布と第1、第2の粘着剤層との間の粘着を向上させることができる。
【0040】
<結合力、180度剥離粘着力、分子間凝集力>
JISC2107に準じて結合力、180度剥離粘着力、分子間凝集力を測定する。具体的には、本発明を実施するための1つの形態において、延伸機を用い、300mm/分の延伸速度条件下で異なる層の180度剥離強度(N/19mm)を測定する。
【0041】
本発明では、フッ素含有樹脂層と複合材料成形用樹脂との間の結合力が第2の粘着剤層の180度剥離粘着力より小さく、且つ前記第1の粘着剤層、前記第2の粘着剤層の分子間凝集力が第2の粘着剤層の180度剥離粘着力より大きい。
【0042】
好ましくは、本発明では、第2の粘着剤層の180度剥離粘着力の、前記第1の層と複合材料成形用樹脂との間の結合力に対する比が、3~16であり、好ましくは5~14である。複合材料成形用樹脂によって、この比の好ましい範囲は異なるが、複合材料成形用樹脂がエポキシ樹脂である場合、この比の範囲は9~13であることが好ましく、複合材料成形用樹脂が不飽和ポリエステル樹脂である場合、この比の範囲は5.5~9であることが好ましい。本発明者は、この比を上記の範囲とすることにより、テープは型開き時に複合材料成形用樹脂と容易に分離でき、交換が必要される際に金型から完全に剥離することができることを見出した。この比が3未満であると、テープと金型との粘着力が低く、型開き時に樹脂を分離しようとすると、テープが破れ、サイクル寿命に悪影響を与えることがある。この比が16より高いと、テープと金型との粘着力が高すぎて、交換が必要される際にテープに糊残りが生じやすい。
【0043】
前記第1の粘着剤層、前記第2の粘着剤層の分子間凝集力が共に前記第2の粘着剤層の180度剥離粘着力より大きいことが好ましい。ここで、前記第1の粘着剤層の分子間凝集力と前記第2の粘着剤層の180度剥離粘着力の結合力との比が1.05~3であり、好ましくは1.1~2である。この比の範囲により、テープの第1、第2の層の結合力が適切であり、十分に粘着しており、明らかに過剰な凝集力が生じないことを確保できる。
【0044】
本発明を実施するための形態において、フッ素含有樹脂層と複合材料成形用樹脂との間の結合力が0.5N/19mm~1N/19mmであり、第2の粘着剤層の180度剥離粘着力が好ましくは5N/19mm~7N/19mmであり、第1の粘着剤層の分子間凝集力が6N/19mm以上である。
【0045】
<複合材料の成形>
簡単且つ非破壊的な離型を確保するために、複合材料の成形においては、被成形体の構造を示すための雌型及び任意の雄型を有する金型に本発明の粘着防止テープを使用することができる。本発明の粘着防止テープは、異なる複合材料の成形方法に適用することができる。これら方法の実例としては、RTM(樹脂トランスファー成形)及びVRTM(真空補助樹脂注入成形)が挙げられる。本発明の粘着防止テープは、不飽和ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂との粘着力が低く、離型性がよいため、本発明に記載の複合材料成形用樹脂は、不飽和ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂であることが好ましい。その具体的な種類、分子量等は特に制限されることなく、当業界で成形材料として使用される公知の樹脂を使用することができる。不飽和ポリエステル樹脂は、通常、多価アルコールと不飽和多塩基酸又は飽和多塩基酸とが重縮合しエステル化して得られた化合物を架橋剤に溶解し、得られた樹脂である。エポキシ樹脂の実例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及び全フッ素化エポキシ樹脂が挙げられる。これら化合物は単独でも組み合わせて使用してもよい。
【0046】
本発明を実施するための1つの形態においては、被着体は複合材料成形用金型である。本発明では、金型の材質は特に制限されないが、硬質、軟質又は混合型の金型はいずれもよく、例えばステンレス鋼、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0047】
[複合材料成形用粘着防止テープの製造方法]
本発明の複合材料成形用粘着防止テープの製造方法は、
(1)フッ素含有樹脂の表面に第1の粘着剤を塗布する工程と、
(2)乾燥後に補強材を貼り合わせる工程と、
(3)次に、前記補強材の表面に第2の粘着剤を塗布する工程と、
を備える。
【0048】
<工程1:フッ素含有樹脂の表面に第1の粘着剤を塗布する工程>
本発明の1つの実施の形態において、まず、フッ素含有樹脂の表面を変性させ、処理面に第1の粘着剤を塗布し、塗布終了後に高温架橋反応を行い、反応終了後に乾燥処理を行うことが好ましい。
【0049】
好ましくは、第1の粘着剤は過酸化物硬化型シリコーン樹脂であり、高温架橋反応の温度は150~240℃である。本発明では、フッ素含有樹脂の表面へ塗布する方法は特に制限されることなく、例えばグラビアロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、ブレードコーター等によるコーティング、スクリーンコーティング、ディップコーティング及びキャストコーティング等公知のコーティング方法であれば、いずれも採用できる。特に制限されることはないが、粘着剤を塗布する場合の厚みは、乾燥後に形成された粘着剤層の厚みが5μm~100μmとなるような厚みであってもよい。フッ素含有樹脂フィルムに塗布される第1の粘着剤の質量が15~100g/m2であり、好ましくは40~70g/m2である。上記の粘着剤の使用量では、本発明のテープにおけるフッ素含有樹脂層と補強材層との間の良好な粘着力を確保することができる。乾燥は室温下で行われてもよいが、架橋反応を促進する点から、好ましくは加熱下で行われ、約40~120℃の乾燥温度で行われることができる。
【0050】
<工程2:乾燥後に補強材を貼り合わせる工程>
好ましくは、まず、ガラス繊維布をケイ素含有試薬で処理し、次にそれを工程1で得られた製品の第1の粘着剤層に貼り合わせ、昇温してホットプレスにより貼り合わせる。
【0051】
好ましくは、上記の貼り合わせにおいては、圧力を0.05MPa~0.5MPaとし、温度を30℃~150℃とし、より好ましくは、ホットプレスによる貼り合わせるの温度を60℃~150℃とする。加熱時間は、例えば0.5秒~1分であり、好ましくは1秒~20秒である。
【0052】
<工程3:補強材の表面に第2の粘着剤を塗布する工程>
工程2で得られた製品のガラス繊維布の表面に第2の粘着剤を塗布する。塗布方法は工程1と同じであり、塗布終了後に高温架橋反応を行い、反応終了後に乾燥処理を行う。
好ましくは、第2の粘着剤は過酸化物硬化型シリコーン樹脂であり、高温架橋反応の温度は150~240℃である。テープがシート状である場合、テープの表面を保護し、ブロッキングを防止する点から、第2の粘着剤層の表面に離型フィルムを1層設けることができ、係る離型フィルムは、本発明の粘着防止テープを被着体に貼り合わせた後に剥離される。離型フィルムは、選択的に設ければよい。離型フィルムは特に制限されることなく、公知慣用の剥離紙等を使用できる。公知の離型フィルムから適切に選択することができ、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系又は硫化モリブデン系等の剥離剤で表面処理されたプラスチックフィルムや紙等の剥離層を有する基材、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、クロロフルオロエチレン-塩化ビニリデンコポリマー等のフッ素系ポリマーから形成された低粘着性基材、オレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン)等の非極性ポリマーから形成された低粘着性基材、又は、粘着剤との接触面積を減らすために表面に凹凸を付与する等の処理がされた離型フィルム(ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等の材質)等を使用することができる。
【0053】
乾燥処理は室温下で行われてもよいが、架橋反応を促進する点から、好ましくは加熱下で行われ、約40~120℃の乾燥温度で行われることができる。
【0054】
[複合材料成形用粘着防止テープの使用]
本発明の粘着防止テープは、複合材料、特に不飽和ポリエステル樹脂又はエポキシ樹脂との粘着力が低く、離型性がよいため、複合材料成形時に使用することができ、例えば自動車部品、回転翼等の比較的複雑な幾何学的構造を有する大型部品の製造に適する。本発明の粘着防止テープはシート状又はロール状であってもよい。
【0055】
本発明の粘着防止テープは、金型の離型剤の代わりに金型に直接的に貼り合わせて使用することができ、粘着強度と糊残りのない分離性をバランスよくすることができる。不飽和ポリエステル又はエポキシ樹脂複合材料の成形プロセスにおいては、硬化温度が50~100℃であり、0.01MPaの真空又は常圧下で固形化してから成形を行う。本発明のテープは、複合材料成形プロセスの1つ目の製造サイクルでは、樹脂の離型時にテープが破れないように十分な結合力を示し、そのサイクルでは、テープが十分に粘着するように結合力が少し増加され、且つ金型での使用寿命が尽きたときに、糊残りが一切ないように金型から簡単に剥離することができる。
【実施例
【0056】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、当業者であれば、これらの例は例示的なものに過ぎず、網羅的なものではないと理解される。
【0057】
実施例は以下のとおりである。
【0058】
(1)第1の層と複合材料成形用樹脂との間の結合力、第4の層又は第2の粘着剤層の180度剥離粘着力、第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の分子間凝集力の測定
第1の層と複合材料成形用樹脂との間の結合力は、次の方法で測定される。粘質で半硬化され、硬化剤が添加された樹脂(エポキシ樹脂又は不飽和ポリエステル)をテープ(幅19mm)の表面に塗布し、常圧下で100℃で加熱し、硬化したテープを製造した。次に、延伸試験機(Minebea Co.,Ltd.製、TG-1KN型)を用い、延伸速度が300mm/分である条件下でテープの第1の層と樹脂との間の剥離強度を測定し、結合力を得た。
【0059】
また、テープ(幅19mm)を適切な長さにカットし、23℃、50%RHの環境下で、2kgのロールを1往復させてSUS304ステンレス鋼板に圧着した。これを23℃、50%RHの環境下で30分置き、次に、JIS C2107に準じて、延伸試験機(Minebea Co.,Ltd.製、TG-1KN型)を用い、延伸速度が300mm/分である条件下で、異なる層の180度剥離強度(N/19mm)、分子間凝集力を測定した。
【0060】
ここで、第2の粘着剤層の180度剥離粘着力は、第2の粘着剤層とSUS304ステンレス鋼板を180度剥離することにより得られた。
【0061】
第1の粘着剤層の分子間凝集力の測定
フッ素含有樹脂層と第1の粘着剤層を剥離し、フッ素含有樹脂層と第1の粘着剤層との間の粘着力を測定し、第1の粘着剤層の分子間凝集力とした。
【0062】
第2の粘着剤層の分子間凝集力を定性的に測定した。つまり、テープの第4の層(つまり、第2の粘着剤層)の180度剥離粘着力を測定した後に、目視でSUS304ステンレス鋼板からのテープの剥離状態を評価した。SUS304ステンレス鋼板にテープの糊残りがなく、テープの粘着剤層の表面に欠陥点がない場合、第2の粘着剤層の分子間凝集力がその180度剥離粘着力より大きいと判定できる。
【0063】
(2)粘着剤層のゲル分率は以下の方法により測定する。
硬化した粘着剤組合物、例えばテープから取り出した粘着層約0.1gを、平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚み85μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートに包み、次にタコラインで梱包し、測定サンプルとした。次いで、作製された測定サンプルの重量を測定し、この重量を浸漬前の重量Cとした。浸漬前の重量Cは、粘着層とポリテトラフルオロエチレンシート及びタコラインとの合計重量である。また、PTFEシートとタコラインとの合計重量を事前に測定してパッケージ重量Bとした。次いで、測定サンプルをトルエンで満たされている容積50mLの容器に収納し、23℃で7日間静置した。次いで、トルエンで測定サンプルを含めて容器内部を洗浄し、次に容器から測定サンプルを取り出してアルミニウム製カップに移し、130℃で2時間乾燥してトルエンを除去した。次に、トルエンが除去された測定サンプルの重量を測定し、この重量を浸漬後の重量Aとした。ゲル分率は下式により求めることができる。
ゲル分率(重量%)=(A-B)/(C-B)×100
【0064】
(3)金型の糊残り性
製品をSUS304ステンレス鋼板に貼り合わせ、平らの面に5kgの重りを置き、200℃の環境下に置き、5時間処理し、冷却後にテープを剥がし、SUS304ステンレス鋼板に糊残りがあるかどうかを確認する。目視で糊残りが認められた場合、不良と判断される。
【0065】
(4)離型耐久性の評価
耐磨耗性試験方法及び離型性測定により評価する。具体的には、テーバー摩耗試験機により本発明のテープを連続的に磨耗させ(条件:荷重500g、72rpm)、その後、最表面であるフッ素含有樹脂層がなくなるか否か、および第1の粘着剤層が露出しているか否かについて、顕微鏡で150倍で観察する。時間が長いほど、耐久性に優れると意味する。150分以内で露出が生じたものは耐久性が悪く、150分~300分のものは耐久性が良好、300分を超えるものは耐久性に優れると判断される。
【0066】
(5)総合的効果の評価
(3)及び(4)の結果に基づいて総合的効果を評価し、総合的効果の優れたものを◎、総合的効果の良いものを○、総合的効果の悪いものを×とする。
【0067】
実施例1
フッ素含有樹脂PTFEフィルム(日東電工株式会社製No.900、厚み:50μm)を金属ナトリウム含有処理液(株式会社潤工社製、フッ素樹脂エッチング剤(Tetra-Etch))に5秒間浸漬し、その一面に対して化学的表面変性処理を施し、その後に処理液から当該フィルムを取り出してアセトン及び水で洗浄した。
【0068】
処理面に第1の粘着剤である過酸化物硬化型シリコーン樹脂(ダウコーニング社製No.7355)を塗布した。この過酸化物硬化型シリコーン樹脂は、過酸化ベンゾイルを硬化剤として使用して得られたシリコーン含有樹脂である。塗布後、220℃の条件下で2分間高温架橋反応させ、塗布された粘着剤を硬化させ、乾燥後のシリコーン含有樹脂層のゲル分率が40%、厚みが50μmであった。
【0069】
次に、ケイ素含有試薬で処理されたガラス繊維の平織り生地(厚み:50μm)を、80℃でシリコーン含有樹脂層にホットプレスして貼り合わせた。圧力を0.1MPaとした。ケイ素含有試薬の量は、ガラス繊維の平織り生地の合計重量に対して0.05wt%であった。
【0070】
次に、ガラス繊維の平織り生地の表面に第2の粘着剤層(つまり、過酸化物硬化型シリコーン樹脂、ダウコーニング社製No.7355)をさらに塗布し、220℃で3分間加熱して塗布された粘着剤を硬化させ、その後に60℃で乾燥させた。得られたシリコーン含有樹脂層のゲル分率が50%、厚みが50μmであった。最後に、保護のためにシリコーン含有樹脂層表面に離型フィルムを貼り合わせた。得られたテープ(離型フィルムを除く)の厚みが0.2mmであった。
【0071】
実施例2
厚み100μmのフッ素含有樹脂PTFEフィルムを使用した以外に、実施例1と同様に実施した。
【0072】
実施例3
ケイ素含有試薬の量はガラス繊維の平織り生地の合計重量に対して0.2wt%であった以外に、実施例1と同様に実施した。
【0073】
実施例4
第1の粘着剤の高温架橋反応の温度及び時間を(200℃、5分間に)変更し、ゲル分率が60%のシリコーン含有樹脂層を得た以外に、実施例1と同様に実施した。
【0074】
実施例5
第2の粘着剤の高温架橋反応の温度及び時間を(200℃、3分間に)変更し、ゲル分率が45%のシリコーン含有樹脂層を得た以外に、実施例1と同様に実施した。
【0075】
実施例6
厚み15μmのフッ素含有樹脂PTFEフィルムを使用した以外に、実施例1と同様に実施した。
【0076】
比較例1
ガラス繊維の平織り生地に対してケイ素含有試薬による処理を実施しなかった以外に、実施例1と同様に実施した。
【0077】
比較例2
ケイ素含有試薬の量はガラス繊維の平織り生地の合計重量に対して2.5wt%であった以外に、実施例1と同様に実施した。
【0078】
比較例3
第1の粘着剤の高温架橋反応の温度及び時間を(130℃、3分間に)変更し、ゲル分率が20%のシリコーン含有樹脂層を得た以外に、実施例1と同様に実施した。
【0079】
比較例4
第2の粘着剤の高温架橋反応の温度及び時間を(120℃、3分間に)変更し、ゲル分率が15%のシリコーン含有樹脂層を得た以外に、実施例1と同様に実施した。
【0080】
比較例5
第1の粘着剤層(シリコーン含有樹脂層)及び第2の粘着剤層のゲル分率がともに45%であった以外に、実施例1と同様に片面がナトリウム処理されたフッ素含有樹脂PTFEフィルム(厚み:50μm)を使用し、処理面に(メタ)アクリル系粘着剤を塗布し(CN104861889Aの実施例1を参照)、乾燥後にテープを得、テープの厚みが実施例1と同じであった。
【0081】
比較例6
片面がコロナ処理されたPETフィルム(厚み:25μm)を使用し、処理面に第1の粘着剤層を使用し、ほかの工程及びテープの厚みは実施例1と同じであった。
【0082】
性能評価
実施例及び比較例で製造されたテープについて、それぞれ、
テープの第1の層であるフッ素含有樹脂層とエポキシ樹脂との間の結合力(結合力Aとする)、
テープの第1の層であるフッ素含有樹脂層と不飽和ポリエステルとの間の結合力(結合力Bとする)、
テープの第4の層の180度剥離粘着力(結合力Cとする)、
テープの第1の粘着剤層の分子間凝集力(凝集力Aとする)、
を測定した。
【0083】
テープの第2の粘着剤層の分子間凝集力(凝集力Bとする)及びその180度剥離粘着力(つまり、結合力C)の大きさを定性的に判断した。
【0084】
さらに、金型の糊残り性及び離型耐久性の效果を測定し、総合的効果の評価を行い、結果を表1に示す(結合力及び凝集力の単位はともにN/19mmである。)。
【0085】
【表1】
【0086】
実験の結果から明らかなように、本発明に記載の要件を満たしている粘着防止テープは総合的評価が良好であり、実施例6ではフッ素含有樹脂層の厚みが比較的薄く、耐久性にある程度の影響を与えたが、比較例6で使用された処理済みのPETフィルムに比べ、フッ素含有樹脂PTFEフィルムを使用した場合、耐久性がPETフィルムよりも優れた。上記の実施例及び比較例によると、本発明では、フッ素含有樹脂層の厚み、補強材層のケイ素含有試薬の量、粘着剤のゲル分率等を変更することでテープの粘着剤層の分子間凝集力及びテープと樹脂や金型との結合力を調整した結果、結合力Cが結合力A及び結合力Bより大きく、且つ凝集力A及び凝集力Bが共に結合力Cより大きい場合、総合的評価が良好な粘着防止テープが得られると分かった。一方、本発明の上記の要件を満たしていないテープは、製品の層間剥離又は糊残りが生じた。
【0087】
応用例
RIM成形メーカーは、実施例1のテープを実際の成形用上下金型に貼り合わせ、約100回以上の成形と型開きに使用した結果、依然としてこのテープ表面上の余分なRIM成形樹脂を容易に除去することができ、離型効果は低下しておらず、このテープが金型の表面とよく貼り合わせたままであり、貼り合わせ面には浮きが生じなかった。このように、実際の利用では、このテープの離型性及び金型との貼り合わせはいずれも問題が生じなかった。
【0088】
以上は本発明を実施するための形態に過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。当業界に詳しい技術者が本発明に開示された範囲内で容易に想到しえる変更又は代替はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲を基準とすべきである。
【符号の説明】
【0089】
10 複合材料成形用粘着防止テープ
1 フッ素含有樹脂層
2 第1の粘着剤層
3 補強材層
4 第2の粘着剤層
5 複合材料成形用樹脂
6 SUS304ステンレス鋼板
図1
図2