(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】グラファイト複合体および半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 23/373 20060101AFI20230120BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H01L23/36 D
(21)【出願番号】P 2018185366
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(73)【特許権者】
【識別番号】509204286
【氏名又は名称】株式会社サーモグラフィティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】沓水 真琴
(72)【発明者】
【氏名】村島 健介
(72)【発明者】
【氏名】竹馬 克洋
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-238733(JP,A)
【文献】特開昭64-017455(JP,A)
【文献】特開平01-201941(JP,A)
【文献】特開2011-023670(JP,A)
【文献】特開平11-054669(JP,A)
【文献】特開2000-133755(JP,A)
【文献】特開平01-017455(JP,A)
【文献】特開2017-130494(JP,A)
【文献】特開2014-183058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/373
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方性グラファイトおよび第1の無機材質層を備えるグラファイト複合体であって、
X軸、X軸と直交するY軸、X軸とY軸とによって規定される平面に垂直なZ軸において、
前記異方性グラファイトの結晶配向面は、X軸とZ軸とによって規定される平面と平行であり、
前記第1の無機材質層は、前記異方性グラファイトとZ軸方向に接合しており、
前記第1の無機材質層が1以上の固着部を有
し、
前記固着部は凹構造の貫通孔であり、
当該凹構造において、前記異方性グラファイトと接する側の開口部の直径が、前記異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径よりも大きい、グラファイト複合体。
【請求項2】
異方性グラファイト、第1の無機材質層および第2の無機材質層を備えるグラファイト複合体であって、
X軸、X軸と直交するY軸、X軸とY軸とによって規定される平面に垂直なZ軸において、
前記異方性グラファイトの結晶配向面は、X軸とZ軸とによって規定される表面と平行であり、
前記第1の無機材質層は、前記異方性グラファイトとZ軸方向に接合しており、
前記第2の無機材質層は、
(i)X軸とZ軸とによって規定される平面と平行に設けられ、かつ前記異方性グラファイト
とY軸方向に接合しており、
および/または、Y軸とZ軸とによって規定される平面と平行に設けられ、かつ前記異方性グラファイトとX軸方向に接合しており、
前記第2の無機材質層が1以上の固着部を有
し、
前記固着部は凹構造の貫通孔であり、
当該凹構造において、前記異方性グラファイトと接する側の開口部の直径が、前記異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径よりも大きい、グラファイト複合体。
【請求項3】
前記固着部は凹構造であり、
当該凹構造において、前記異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径が、0.1mm以上3.0mm未満である、請求項
1または2に記載のグラファイト複合体。
【請求項4】
前記固着部は、前記異方性グラファイトの外縁部から前記第1の無機材質層の中心部に向かって、3mm以内に設けられている、請求項1に記載のグラファイト複合体。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のグラファイト複合体、半導体チップおよび封止材料を備える、半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグラファイト複合体および半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
異方性グラファイトは、グラファイトの結晶配向面に対して平行な方向への熱伝導率は高いが、垂直な方向への熱伝導率が低いという性質を有する。異方性グラファイトとしては、例えばグラファイトの積層体が知られている。
【0003】
異方性グラファイトは、その優れた熱伝導性のため、半導体パッケージにおいて、上部に配置している半導体素子から発生する熱が集中しないように、熱を半導体素子から冷却器に効果的に移動させて、放熱する材料として利用される。
【0004】
例えば、特許文献1には、グラファイト、またはグラファイトと金属との複合材料である熱伝導性板材が、板厚方向に複数積層された積層体として形成された熱拡散体と、発熱体と、絶縁板と、冷却器とを備え、さらに、熱拡散体と発熱体との界面に金属板が配置されている、発熱体の冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
異方性グラファイトを半導体パッケージの放熱板として用いる場合、層状構造物である異方性グラファイトの層間または異方性グラファイトと封止材料との接合面から、酸素および水分が侵入し、半導体パッケージに欠陥が発生する可能性があるとの技術的課題につき、本願発明者らは独自に見出した。例えば、特許文献1のように、熱拡散体と発熱体との界面に平滑な金属層を形成した場合、封止材料との接合性が保てず、気密性を十分に確保することができないことが、本願発明者らの検討の結果、明らかとなった。
【0007】
本発明の一態様は、気密性に優れた半導体パッケージを製造するためのグラファイト複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、異方性グラファイトおよび無機材質層を備えるグラファイト複合体において、当該無機材質層に1以上の固着部を形成することにより、そのグラファイト複合体を備える半導体パッケージは気密性が優れることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下を包含する。
〔1〕異方性グラファイトおよび第1の無機材質層を備えるグラファイト複合体であって、X軸、X軸と直交するY軸、X軸とY軸とによって規定される平面に垂直なZ軸において、前記異方性グラファイトの結晶配向面は、X軸とZ軸とによって規定される平面と平行であり、前記第1の無機材質層は、前記異方性グラファイトとZ軸方向に接合しており、前記第1の無機材質層が1以上の固着部を有する、グラファイト複合体。
〔2〕異方性グラファイト、第1の無機材質層および第2の無機材質層を備えるグラファイト複合体であって、X軸、X軸と直交するY軸、X軸とY軸とによって規定される平面に垂直なZ軸において、前記異方性グラファイトの結晶配向面は、X軸とZ軸とによって規定される表面と平行であり、前記第1の無機材質層は、前記異方性グラファイトとZ軸方向に接合しており、前記第2の無機材質層は、X軸とZ軸とによって規定される平面と平行に設けられ、かつ前記異方性グラファイトとX軸および/またはY軸方向に接合しており、前記第2の無機材質層が1以上の固着部を有する、グラファイト複合体。
〔3〕前記固着部が凹構造または凸構造である、〔1〕または〔2〕に記載のグラファイト複合体。
〔4〕前記固着部は凹構造であり、当該凹構造において、前記異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径が、0.1mm以上3.0mm未満である、〔3〕に記載のグラファイト複合体。
〔5〕前記固着部は凹構造の貫通孔であり、当該凹構造において、前記異方性グラファイトと接する側の開口部の直径が、前記異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径よりも大きい、〔3〕または〔4〕に記載のグラファイト複合体。
〔6〕前記固着部は、前記異方性グラファイトの外縁部から前記第1の無機材質層の中心部に向かって、3mm以内に設けられている、請求項1に記載のグラファイト複合体。
〔7〕〔1〕~〔6〕のいずれかに記載のグラファイト複合体、半導体チップおよび封止材料を備える、半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、気密性に優れた半導体パッケージを製造するためのグラファイト複合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体を模式的に示す分解図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体の斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体の断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体の断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体の断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体の断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体を第1の無機材質層の上面側から見た模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの断面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意図する。
【0012】
〔グラファイト複合体〕
本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体は、異方性グラファイトおよび第1の無機材質層を備えるグラファイト複合体であって、X軸、X軸と直交するY軸、X軸とY軸とによって規定される平面に垂直なZ軸において、前記異方性グラファイトの結晶配向面は、X軸とZ軸とによって規定される平面と平行であり、前記第1の無機材質層は、前記異方性グラファイトとZ軸方向に接合しており、前記第1の無機材質層が1以上の固着部を有する。なお、本明細書でいう「X軸、Y軸、Z軸」は、
図1に示すものを意図する。
【0013】
また、本発明の他の実施形態に係るグラファイト複合体は、異方性グラファイト、第1の無機材質層および第2の無機材質層を備えるグラファイト複合体であって、X軸、X軸と直交するY軸、X軸とY軸とによって規定される平面に垂直なZ軸において、前記異方性グラファイトの結晶配向面は、X軸とZ軸とによって規定される表面と平行であり、前記第1の無機材質層は、前記異方性グラファイトとZ軸方向に接合しており、前記第2の無機材質層は、X軸とZ軸とによって規定される平面と平行に設けられ、かつ前記異方性グラファイトとX軸および/またはY軸方向に接合しており、前記第2の無機材質層が1以上の固着部を有する。
【0014】
<異方性グラファイト>
本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体は、異方性グラファイトを備え、当該異方性グラファイトの結晶配向面は、X軸とZ軸とによって規定される平面と平行である。異方性グラファイトは、結晶配向面に優れた熱伝導性を有しているため、異方性グラファイトの結晶配向面が、X軸とZ軸とによって規定される平面と平行であることにより、異方性グラファイトの厚み方向(Z軸方向)に熱を拡散させることができる。
【0015】
異方性グラファイトの立体形状は、当該異方性グラファイトの結晶配向面が、X軸とZ軸とによって規定される平面と平行である限りにおいて、特に限定されない。異方性グラファイトの側面の形状としては、正方形、長方形、台形、階段状等が挙げられる。優れた熱伝導率を示すという観点からは、異方性グラファイトの立体形状は、直方体が好ましい。
【0016】
異方性グラファイトのX軸方向に向かって伸びる複数の辺のうち最も長い辺の長さは、5mm以上300mm未満であることが好ましい。
【0017】
異方性グラファイトのY軸方向に向かって伸びる複数の辺のうち最も長い辺の長さは、5mm以上300mm未満であることが好ましい。
【0018】
異方性グラファイトのZ軸方向に向かって伸びる複数の辺のうち最も長い辺の長さは、0.1mm以上10mm未満であることが好ましい。
【0019】
<異方性グラファイトの製造方法>
異方性グラファイトは、炭素原子の六員環が共有結合で繋がったグラフェン構造が面方向に高熱伝導性を有するグラファイトブロックを所定の形状に切断することで製造可能である。
【0020】
グラファイトブロックの製造方法としては、炭素原子の六員環が共有結合で繋がったグラフェン構造の結晶配向面に高熱伝導性を有するものであれば特に制限はされず、高分子分解グラファイトブロック、熱分解グラファイトブロック、押出成形グラファイトブロック、モールド成形グラファイトブロックなどを用いることが可能である。中でも、グラファイトブロックは、六員環が共有結合で繋がったグラフェン構造の結晶配向面に1500W/mK以上の高熱伝導率を有し、異方性グラファイトの熱伝達性が優れる観点から、高分子分解グラファイトブロック、または、熱分解グラファイトブロックを使用することが好ましい。
【0021】
グラファイトブロックの第一の製造方法では、メタンなどの炭素質ガスを炉内に導入し、ヒーターで2000℃程度まで加熱し、微細な炭素核を形成する。形成された炭素核は、基板上に堆積して層状に堆積し、熱分解グラファイトブロックを得ることができる。また、得られた熱分解グラファイトブロックを2800℃以上まで熱処理することで、配向性を向上させることもできる。
【0022】
グラファイトブロックの第二の製造方法では、ポリイミド樹脂などの高分子フィルムを多層に積層した後、プレス加圧しながら熱処理する。具体的には、まず、出発物質である高分子フィルムを多層に積層したものを、減圧下または不活性ガス中で、1000℃程度の温度まで予備加熱処理して炭素化し、炭素化ブロックとする。その後、この炭素化ブロックを不活性ガス雰囲気下、プレス加圧しながら、2800℃以上の温度まで熱処理することによりグラファイト化させることで、良好なグラファイト結晶構造を形成することができ、熱伝導性に優れたグラファイトブロックを得ることができる。ポリイミドフィルムを1枚ずつ焼成し、炭素化フィルムを作製し、得られた炭素化フィルムを多層に積層した後、2800℃以上の温度まで熱処理することによっても、優れたグラファイトブロックを得ることができる。
【0023】
グラファイトブロックを切断する方法としては、ダイヤモンドカッター、ワイヤーソー、マシニングなど公知の技術を適宜選択することが可能であるが、略直方体形状に容易に加工できる観点で、ワイヤーソーが好ましい。
【0024】
また、切断されたグラファイトブロックの表面を研磨または粗面化してもよく、やすり研磨、バフ研磨、ブラスト処理など公知の技術を適宜用いることも可能である。
【0025】
<無機材質層>
本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体は、第1の無機材質層を備え、当該第1の無機材質層は、前記異方性グラファイトとZ軸方向に接合しており、前記第1の無機材質層が1以上の固着部を有する。異方性グラファイトとZ軸方向に接合しているとは、例えば、異方性グラファイトの上面に接合している態様が挙げられる。
【0026】
また、本発明の他の実施形態に係るグラファイト複合体は、第1の無機材質層および第2の無機材質層を備え、前記第1の無機材質層は、前記異方性グラファイトとZ軸方向に接合しており、前記第2の無機材質層は、X軸とZ軸とによって規定される平面と平行に設けられ、かつ前記異方性グラファイトとX軸および/またはY軸方向に接合しており、前記第2の無機材質層が1以上の固着部を有する。異方性グラファイトとX軸および/またはY軸方向に接合しているとは、異方性グラファイトの側面のうち少なくとも一面に接合していることを意図する。
【0027】
無機材質層を備えるグラファイト複合体は、異方性グラファイトのみからなるグラファイト複合体よりも強度および放熱性に優れる。また、異方性グラファイトよりも無機材質層の方が、半導体チップなどの放熱体と接合しやすい。
【0028】
無機材質層としては、金属層およびセラミックス層が挙げられる。異方性グラファイトの結晶配向面に垂直な方向(Y軸方向)へは、熱が相対的に伝わりにくい。そのため、熱伝導率が比較的高く、等方性の材料と接合することで、異方性グラファイトのY軸方向の熱伝導性を補うことができ、より高い放熱効果を発現することができる。
【0029】
金属層を形成する金属の種類としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、モリブデン、タングステン、およびこれらを含む合金など公知の材料を適宜用いることができる。
【0030】
セラミックス層を形成するセラミックスの種類としては、アルミナ、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化アルミなど公知の材料を適宜用いることができる。
【0031】
熱伝導性をより高める観点からは、無機材質層としては、金属層が好ましく、金属層を形成する金属としては、銅が好ましい。
【0032】
第1の無機材質層の厚さは、50μm以上500μm以下が好ましく、100μm以上300μm以下がより好ましい。
【0033】
第2の無機材質層の厚さは、50μm以上5mm以下が好ましく、100μm以上300μm以下がより好ましい。
【0034】
無機材質層の厚さが上記構成であれば、異方性グラファイトの熱が相対的に伝わりにくい方向の熱伝導性を補うことができ、さらに、異方性グラファイトの高い熱伝導率を阻害することがない。
【0035】
本発明の一実施形態では、前記無機材質層により、前記異方性グラファイトのすべての側面が覆われていることが好ましい。グラファイト複合体がこの構成を備えることにより、当該グラファイト複合体を備える半導体パッケージにおいて、ガス透過性をより低減することができ、半導体パッケージの気密性を向上することができる。
【0036】
前記無機材質層により、前記異方性グラファイトの全面が覆われている構成としては、例えば、枠方式および有底枠方式が挙げられる。枠方式および有底枠方式については、〔グラファイト複合体の製造方法〕において詳述する。枠方式または有底枠方式を採用することにより、無機材質層の界面をより減らす構成とすることができる。これにより、半導体パッケージのガス透過性をより軽減することができ、半導体パッケージの気密性を向上することができる。すなわち、異方性グラファイトの各面に無機材質層を別々に形成するよりも、すべての側面が一体となっている中空枠または、すべての側面および底面が一体となっている有底枠の方が気密性に優れる。
【0037】
<固着部>
本発明の一実施形態において、無機材質層は1以上の固着部を有する。当該固着部は、後述するように、半導体パッケージを構成する封止材料と接合することにより、当該封止材料とグラファイト複合体との密着性を向上させるためのものである。本構成により、本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体を備える半導体パッケージの気密性が向上する。
【0038】
前記固着部は、凹構造または凸構造であることが好ましい。例えば、固着部が凹構造である場合、半導体パッケージを構成する封止材料が当該固着部の凹部の内部に入り込むことで封止材料とグラファイト複合体との密着性が向上する。また、固着部が凸構造である場合、当該凸構造の周りに封止材料が絡みつく構成となり、封止材料とグラファイト複合体との密着性が向上する。
【0039】
以下、図面を用いて、本願発明の一実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0040】
第1の無機材質層に形成されている前記固着部が、凹構造である場合のグラファイト複合体の一例を
図1~3を用いて説明する。
図1は、グラファイト複合体3を構成する異方性グラファイト1と第1の無機材質層2’とを模式的に示す分解図である。
図2は、本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体3の斜視図であり、
図3は、本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体3の断面図である。
【0041】
図1~3に示すように、グラファイト複合体3は、上面を構成する第1の無機材質層2’、側面および底面を構成する第2の無機材質層2”、異方性グラファイト1を備える。
図1に示すように、X軸、X軸と直交するY軸、X軸とY軸とによって規定される平面に垂直なZ軸において、異方性グラファイト1の結晶配向面は、X軸とZ軸とによって規定される平面と平行である。第1の無機材質層2’は、X軸とY軸とによって規定される平面と平行に設けられ、異方性グラファイト1とZ軸方向に接合している。
【0042】
図2,3に示すように、異方性グラファイト1は、第1の無機材質層2’および第2の無機材質層2”により周囲を覆われている。
図1でいうX軸、X軸と直交するY軸、X軸とY軸とによって規定される平面に垂直なZ軸を用いて説明すると、第2の無機材質層2”は、X軸とZ軸とによって規定される平面と平行に設けられ、かつ異方性グラファイト1とX軸および/またはY軸方向に接合している。第1の無機材質層2’には、固着部4が形成されており、当該固着部4は、凹構造の貫通孔である。
【0043】
凹構造は、
図1~3に示すような貫通孔に限定されず、
図4に示すように、非貫通の穴であってもよい。
【0044】
固着部4が凹構造である場合、当該凹構造において、異方性グラファイト1と接する側の裏面側の開口部4Aの直径が、0.1mm以上3.0mm未満であることが好ましく、0.5mm以上1.0mm以下であることがより好ましい。異方性グラファイト1と接する側の裏面側の開口部4Aの直径が当該構成であることにより、凹構造の内部に封止材料が入り込むことで封止材料との密着性が向上し、半導体パッケージの気密性が向上する。
【0045】
また、前記固着部が、凹構造の貫通孔である場合、当該凹構造において、異方性グラファイトと接する側の開口部の直径が、前記異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径よりも大きいことが好ましい。
図5に、固着部4において、異方性グラファイト1と接する側の開口部4Bの直径が、異方性グラファイト1と接する側の裏面側の開口部4Aの直径よりも大きい、グラファイト複合体3の断面図を示す。
図5に示すように、第1の無機材質層2’は、異方性グラファイト1と接する側の開口部4Bの直径が、前記異方性グラファイト1と接する側の裏面側の開口部4Aの直径よりも大きい固着部4を備えている。当該構成により、凹構造の貫通孔内部に入り込んだ封止材料が脱け難くなるため、封止材料とグラファイト複合体との密着性が一層向上し、半導体パッケージの気密性が向上する。
【0046】
第1の無機材質層において固着部の形成箇所は、封止材料と接する場所である限りにおいて、特に限定されない。例えば、
図1~5に示すように、図中、Z軸方向である、第1の無機材質層2’の上面に設けられることが好ましい。
【0047】
また、第1の無機材質層2’に形成される固着部4は、
図2,3に示すように、異方性グラファイト1の外縁部1Aから第1の無機材質層2’の中心部2’Aに向かって、一定距離の間に設けられていることが好ましい。前記一定距離は、特に限定されないが、好ましくは異方性グラファイト1の外縁部1Aから第1の無機材質層2’の中心部2’Aに向かって、3mm以内であることが好ましい。
【0048】
また、
図6および
図7に示すように、固着部4は、第1の無機材質層2’の外縁部に接して設けられていてもよい。本構成により、簡便に固着部4を形成することができる。固着部4が、第1の無機材質層2’の外縁部に接して設けられている場合、第1の無機材質層2’に形成される固着部4は、異方性グラファイト1の外縁部1Aから第1の無機材質層2’の中心部2’Aに向かって3mm以内である場合に包含される。なお、
図6は、本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体3の断面図であり、
図7は、当該グラファイト複合体3を第1の無機材質層2’の上面側から見た模式図である。
【0049】
〔グラファイト複合体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体は、異方性グラファイトに無機材質層を形成することで製造することができる。
【0050】
無機材質層の形成方法としては、例えば、めっき、スパッタあるいは無機材質層の板を異方性グラファイトに接合する方法が挙げられる。
【0051】
接合材としては、金属層、樹脂層等が挙げられる。金属層の種類としては、特に限定されないが、めっき、金属系ろう材を含む金属層を用いることが好ましい。めっきを用いる場合には、金属層と無機材質層とが一体となる場合もある。
【0052】
金属層として金属系ろう材を用いる場合、金属系ろう材は、異方性グラファイトとの拡散接合が可能である。また、金属系ろう材自体の熱伝導率が比較的高いため、得られるグラファイト複合体が高い熱伝導性を維持することができる。
【0053】
金属系ろう材の種類については、特に制限されないが、同様の観点で銀、銅および/またはチタンを含むことが好ましい。
【0054】
金属系ろう材を用いた場合の接合方法として、公知の材料並びに公知の技術を用いることが出来る。例えば、接合剤として活性銀ろうを用いた場合、1×10-3Paの真空環境、および700~1000℃の温度範囲で10分から1時間加熱し、これを常温まで冷却することにより接合することが可能である。また、接合状態を良好にするために、加熱時に加重をかけても良い。
【0055】
金属系ろう材を用いて、無機材質層を異方性グラファイトの全面に接合する場合、無機材質層として中空枠または有底枠を用いた方式が好ましい。異方性グラファイトの各面にそれぞれ無機材質層を接合する場合に比べ、無機材質層同士の界面が減るため、効率的に熱を拡散することができる。
【0056】
無機材質層として中空枠を用いた方式(本明細書中、「枠方式」とも記載される)では、中空枠(第2の無機材質層)、異方性グラファイト、ふたするように配する第1の無機材質層、および接合材である金属系ろう材または半田を配置し、加熱接合することで作製することができる。このとき金属系ろう材は、予め無機材質層に予備接着されているとより効率的に接合することができる。
【0057】
有底枠の作製方法は特に制限されないが、金属板またはセラミックプレートから削り出す方法、箱曲げ加工、絞り加工など適宜選択することができる。このようにして作製された有底枠は、有底枠(第2の無機材質層)、異方性グラファイト、ふたするように配する第1の無機材質層、および接合材である金属系ろう材または半田を配置し、加熱接合することで作製することができる。このとき金属系ろう材は、予め無機材質層および有底枠に予備接着されているとより効率的に接合することができる。また、有底枠の底面またはふた(第1の無機材質層)に固着部を設けた後、異方性グラファイトと接合することで、効率的に本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体を得ることができる。
【0058】
接合剤からなる接合層の厚さは、特に制限されないが、接合材としての良好な界面接着性を有する観点と、熱抵抗の増加を抑制する観点から、5μm以上30μm以下が好ましく、8μm以上17μm以下であることがより好ましい。
【0059】
〔半導体パッケージ〕
本発明の一実施形態に係る半導体パッケージは、本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体、半導体チップおよび封止材料を備えている。本発明の一実施形態に係る半導体パッケージは、本発明の一実施形態に係るグラファイト複合体を備えているため、気密性に優れる。
【0060】
本発明の一実施形態に係る半導体パッケージの構成を
図8に基づいて説明する。
図8は、本発明の一実施形態に係る半導体パッケージ9の断面図である。
【0061】
図8に示すように、半導体パッケージ9は、グラファイト複合体3、半導体チップ5、封止材料6、ボンディングワイヤ7、リードフレーム8を備えている。グラファイト複合体3は、異方性グラファイト1、第1の無機材質層2’、第2の無機材質層2”から構成される。半導体チップ5は、リードフレーム8とボンディングワイヤ7により接続されており、封止材料6により覆われる構成である。封止材料6としては、樹脂およびセラミックが挙げられる。封止材料6の形成方法としては、例えば、セラミックケースをろう材でろう付けする方法、樹脂ケースを接着材で接合する方法、樹脂をトランスファーモールドで形成する方法が挙げられる。
【0062】
半導体チップ5は、第1の無機材質層2’とZ軸方向に接合している。換言すれば、半導体チップ5は第1の無機材質層2’の上面に載置されている。半導体チップ5は、例えば、半田付けにより第1の無機材質層2’と接合している。グラファイト複合体3は、Z軸方向に優れた熱伝導性を有しているため、半導体チップ5により放散される熱を効率的に拡散させることができる。
【0063】
グラファイト複合体3は、第1の無機材質層2’を介して封止材料6と接合している。
図8に示すように、封止材料6は、第1の無機材質層2’の固着部4(凹構造の貫通孔)の内部に入り込んでいる。これにより、第1の無機材質層2’の固着部4と封止材料6との密着性が向上し、半導体パッケージ9の気密性が向上する。
【0064】
第1の無機材質層に形成されている前記固着部が、凸構造である場合を
図9に示す。
図9は、本発明の一実施形態に係る半導体パッケージ9の断面図であり、第1の無機材質層2’の側面側に固着部4が形成されており、当該固着部4は、凸構造である。本構成によれば、凸構造の固着部4の周りに封止材料6が回り込む構成となり、封止材料6とグラファイト複合体3との密着性が向上する。
【0065】
第1の無機材質層2’の側面側に凸構造である固着部4が形成されているとは、異方性グラファイト1の周縁部(第2の無機材質層2”が形成されている場合は、第2の無機材質層2”の周縁部)により囲まれる面積よりも、第1の無機材質層2’および固着部4により囲まれる面積が大きい態様を例示できる。すなわち、第1の無機材質層2’の側面に形成される固着部4の場合、凸構造には、第1の無機材質層2’の側面の一部が部分的に突き出ている構造(すなわち、突起構造)だけでなく、第1の無機材質層2’が異方性グラファイト1の周縁部(第2の無機材質層2”が形成されている場合は、第2の無機材質層2”の周縁部)により囲まれる面積よりも、大きい構造も包含される。
【0066】
第1の無機材質層2’の側面に凸構造である固着部4が形成されている場合、第1の無機材質層2’の側面のうち、少なくともいずれか一面に形成されていればよいが、すべての側面において形成されていることがより好ましい。当該構成により、封止材料6とグラファイト複合体3との密着性が向上し、半導体パッケージ9の気密性が向上する。
【0067】
凸構造である固着部4は、
図9に示すように第1の無機材質層2’の側面(すなわち、X軸方向および/またはY軸方向)に形成されていてもよく、第1の無機材質層2’の上面(すなわち、Z軸方向)に形成されていてもよい。第1の無機材質層2’の上面に固着部4が形成される場合、凸構造とは、第1の無機材質層2’の上面の一部が部分的に突き出ている構造(すなわち、突起構造)を例示できる。
【0068】
固着部4は、第2の無機材質層2”に形成されていてもよい。当該態様につき、
図10および
図11に示す。
図10および
図11はいずれも、第2の無機材質層2”が、固着部4を備える本発明の一実施形態に係る半導体パッケージ9の断面図である。
図10では固着部4は凸構造であり、
図11では固着部4は凹構造である例を示す。
【0069】
第2の無機材質層2”における固着部4の形成箇所は、封止材料6と接する場所である限りにおいて、特に限定されない。第2の無機材質層2”が固着部4を有する場合、第1の無機材質層2’は固着部4を有していても、有していなくてもよい。
【0070】
また、本発明の一実施形態は、以下のように表現される発明も包含し得る。
(A)異方性グラファイトと(B)無機材質層を備える異方性グラファイト複合体であり、X軸、X軸と直交したY軸、X軸とY軸を含む平面に垂直なZ軸において、(A)を形成するグラファイト層の結晶配向面がX軸とZ軸を含む平面に対して平行に位置し、(A)のX軸方向の複数の辺のうち最も長い辺の長さ(La)が、5mm以上300mm未満であり、(A)のY軸方向の複数の辺のうち最も長い辺の長さ(Lb)が、5mm以上300mm未満であり、(A)のZ軸方向の複数の辺のうち最も長い辺の長さ(Lc)が、0.1mm以上10mm未満であり、(B)が(A)の上面に接合しており、(B)が1以上の孔を有し、孔の開口部の直径が0.1mm以上3.0mm未満であるグラファイト複合体。
前記孔は、前記無機材質層の異方性グラファイト側の径が表面側の径よりも大きいことが好ましい。
前記無機材質層で異方性グラファイトの全面が覆われていることが好ましい。
前記無機材質層が有底枠もしくは中空枠とふたを備えることが好ましい。
異方性グラファイトの表面に形成された前記無機材質層の少なくともいずれかが異方性グラファイト複合体の直行する面よりも外側に延長されていることが好ましい。
上述したいずれかの異方性グラファイト複合体と半導体チップおよび封止材料からなる半導体パッケージ。
【0071】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0072】
〔気密性評価試験〕
125℃に加熱したフロリナートに液面した5cm以上の深さにおいて、グラファイト複合体を5秒間浸漬させた。このとき、浸漬させたグラファイト複合体から気泡が発生するかどうかを観察した。
【0073】
各実施例および比較例において、10個のグラファイト複合体サンプルについて上記観察を行い、気泡が発生しないサンプルの数を数えた。気泡が発生しないサンプルが10個すべての場合を「A」、10個中8~9個の場合を「B」、10個中6~7個の場合を「C」、10個中3~5個の場合を「D」、10個中2個以下を「E」と評価した。
【0074】
〔半導体パッケージの製造方法〕
<製造例>
サイズ100mm×100mm、厚さ25μmのカネカ製ポリイミドフィルムを1500枚積層した後、40kg/cm2の加圧力でプレス加圧しながら、不活性ガス雰囲気下、2900℃まで熱処理することにより異方性グラファイトブロック(サイズ90mm×90mm、厚さ15mm)を作製した。
【0075】
作製した異方性グラファイトブロック(90mm×90mm、厚さ15mm)を、グラファイトの結晶配向面がX-Z平面と平行になるように配置し、ワイヤーソーで切断し、X軸に平行な辺の長さが19.6mm、Y軸に平行な辺の長さが9.6mm、Z軸に平行な辺の長さが0.6mmである異方性グラファイトA1を得た。
【0076】
<参考例1>
20mm×10mm×0.2mmの無酸素銅に、開口部の直径0.5mm、深さ0.2mmの貫通孔を48個形成し、異方性グラファイトの上面に形成させる第1の無機材質層を作製した。また、第2の無機材質層として、20mm×10mm×0.2mmの無酸素銅1枚、外寸20mm×10mm、内寸19.6mm×9.6mm、高さ0.6mm、の無酸素銅製中空枠1つを用意した。
【0077】
異方性グラファイト1を無酸素銅性中空枠に入れた後、異方性グラファイト1の上面に第1の無機材質層2’を重ね、底面に第2の無機材質層2”を重ねた。このとき、異方性グラファイトと第1の無機材質層および第2の無機材質層の間に金属層としてチタン系活性銀ろうを重ねた。X軸方向とY軸方向から100kg/m2の加重を加えた状態で、1×10-3Paの真空環境下、800℃で30分加熱することにより、異方性グラファイトに第1の無機材質層2’および第2の無機材質層2”を接合し、グラファイト複合体3を得た。
【0078】
3mm×3mmの発熱源(半導体チップ5)をグラファイト複合体3の上面中央部に積載し、半田付けにより、第1の無機材質層2’と接合させた。エポキシからなり、リードフレーム8が形成されている樹脂ケースとグラファイト複合体3とをエポキシ接着剤で接合することにより、グラファイト複合体3に封止材料6を形成した。リードフレーム8と発熱源とをボンディングワイヤ7で繋いだ。これにより、
参考例1の半導体パッケージを製造した。
参考例1の半導体パッケージの断面図は
図8に対応する。
参考例1の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中8個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「B」であった。
【0079】
<参考例2>
開口部の直径0.5mm、深さ0.1mmの非貫通の穴を48個形成した第1の無機材質層を用いたこと以外は参考例1と同様にして、参考例2の半導体パッケージを製造した。なお、非貫通の穴の開口部は、異方性グラファイトと接する側の裏面側に形成されている。参考例2の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中6個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「C」であった。
【0080】
<参考例3>
開口部の直径0.05mm、深さ0.2mmの貫通孔を516個形成した第1の無機材質層を用いたこと以外は参考例1と同様にして、参考例3の半導体パッケージを製造した。参考例3の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中3個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「D」であった。
【0081】
<参考例4>
開口部の直径0.1mm、深さ0.2mmの貫通孔を256個形成した第1の無機材質層を用いたこと以外は参考例1と同様にして、参考例4の半導体パッケージを製造した。参考例4の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中6個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「C」であった。
【0082】
<参考例5>
開口部の直径1.0mm、深さ0.2mmの貫通孔を22個形成した第1の無機材質層を用いたこと以外は参考例1と同様にして、参考例5の半導体パッケージを製造した。参考例5の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中9個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「B」であった。
【0083】
<参考例6>
開口部の直径2.0mm、深さ0.2mmの貫通孔を8個形成した第1の無機材質層を用いたこと以外は参考例1と同様にして、参考例6の半導体パッケージを製造した。参考例6の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中7個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「C」であった。
【0084】
<参考例7>
開口部の直径3.0mm、深さ0.2mmの貫通孔を11個形成した第1の無機材質層を用いたこと以外は参考例1と同様にして、参考例7の半導体パッケージを製造した。参考例7の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中4個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「D」であった。
【0085】
<参考例8>
第1の無機材質層のみを形成したこと以外は参考例1と同様にして、参考例8の半導体パッケージを製造した。参考例8の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中6個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「C」であった。
【0086】
<参考例9>
異方性グラファイトの底面にのみ、20mm×10mm×0.2mmの無酸素銅である第2の無機材質層を形成したこと以外は参考例1と同様にして、参考例9の半導体パッケージを製造した。参考例9の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中7個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「C」であった。
【0087】
<実施例10>
異方性グラファイトと接する側の開口部の直径が0.6mm、異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径が0.5mm、深さ0.2mmの貫通孔を48個形成した第1の無機材質層を用いたこと以外は参考例1と同様にして、実施例10の半導体パッケージを製造した。実施例10の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中10個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「A」であった。
【0088】
<実施例11>
固着部を有さない第1の無機材質層を異方性グラファイトの上面に接合し、異方性グラファイトと接する側の開口部の直径が0.6mm、異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径が0.5mm、深さ0.2mmの貫通孔を48個形成した第2の無機材質層を異方性グラファイトのすべての側面に接合した以外は
参考例1と同様にして、実施例11の半導体パッケージを製造した。実施例11の半導体パッケージの断面図は、
図11に対応する。実施例11の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中10個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「A」であった。
【0089】
<実施例12>
第1の無機材質層として、無酸素銅の代わりに、窒化アルミを用いたこと以外は実施例10と同様にして、実施例12の半導体パッケージを製造した。実施例12の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中10個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「A」であった。
【0090】
<比較例1>
第1の無機材質層および第2の無機材質層のいずれにも固着部を形成しなかったこと以外は参考例1と同様にして、比較例1の半導体パッケージを製造した。比較例1の半導体パッケージについて気密性評価試験を行ったところ、10個中2個のサンプルでは気泡が発生せず、評価は「E」であった。
【0091】
参考例1~9、実施例10~12および比較例1の半導体パッケージについて、それぞれの構成および気密性評価試験の結果を表1に示す。なお、表1では、便宜上、「異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径」を「開口部直径」、「異方性グラファイトと接する側の開口部の直径」を「(A)側直径」と記載している。
【0092】
【0093】
参考例1と参考例2との比較により、固着部が凹構造である場合、非貫通の穴が形成されているよりも、貫通孔が形成されている方が、半導体パッケージの気密性が優れることがわかる。
【0094】
参考例1,参考例3~7を比較すると、異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径が、0.1mm以上3.0mm未満である場合において、特に半導体パッケージの気密性が優れ、異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径が、0.5mm以上1.0mm以下である場合において、さらに半導体パッケージの気密性が優れることがわかる。
【0095】
参考例1,参考例8および参考例9の比較により、無機材質層は、異方性グラファイトのより多い面数を覆っている方が、半導体パッケージの気密性が優れることがわかる。
【0096】
参考例1と実施例10の比較により、異方性グラファイトと接する側の開口部の直径が、異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径と等しい場合よりも、異方性グラファイトと接する側の開口部の直径が、異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部の直径よりも大きい方が、半導体パッケージの気密性が優れることがわかる。
【0097】
実施例10と実施例12との比較により、無機材質層の材料は銅だけでなく、窒化アルミを用いても、半導体パッケージの気密性が優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明で得られるグラファイト複合体は、例えば、良好な密着性を有するため電子機器の放熱部材として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 異方性グラファイト
1A 外縁部
2’ 第1の無機材質層
2’A 中心部
2” 第2の無機材質層
3 グラファイト複合体
4 固着部
4A 異方性グラファイトと接する側の裏面側の開口部
4B 異方性グラファイトと接する側の開口部
5 半導体チップ
6 封止材料
9 半導体パッケージ