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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】高周波電力合成器
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/12 20060101AFI20230123BHJP
   H01P 3/08 20060101ALI20230123BHJP
   H01P 1/30 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
H01P5/12 A
H01P3/08 200
H01P1/30 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018172719
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2019057912
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】P 2017180274
(32)【優先日】2017-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大朏 俊弥
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-508510(JP,A)
【文献】特開平05-029812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/12
H01P 3/08
H01P 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を形成する外導体と、
出力側線路と前記出力側線路から分岐する複数の入力側線路とを有し、前記外導体の内部空間に設けられた内導体と、を備え、
前記外導体は、底板と、前記底板の一方および他方の側縁にそれぞれ立設された側板と、前記底板の一方および他方の端縁にそれぞれ立設された端板と、前記側板および前記端板の上縁に設けられた天板と、を備え、
前記出力側線路および前記入力側線路に、それぞれ端部導体が接続され、
前記端板に、前記端部導体が挿通する挿通孔が形成され、
前記内部空間は、前記底板と前記側板と前記端板と前記天板とに囲まれた空間であって、前記内導体と接触した状態の液体を貯留可能であり、
前記内導体は、前記底板、前記側板、前記端板および前記天板から、前記液体が流通可能な空間を隔てて配置されている、
高周波電力合成器。
【請求項2】
前記挿通孔は、閉止部材により液密に閉止されている、請求項1に記載の高周波電力合成器。
【請求項3】
前記外導体に、前記液体を前記内部空間に導入する導入路と、前記液体を前記外導体から導出する導出路とが設けられている、請求項1または2に記載の高周波電力合成器。
【請求項4】
前記外導体は、密閉構造である、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の高周波電力合成器。
【請求項5】
内部空間に液体を貯留可能な外導体と、
出力側線路と前記出力側線路から分岐する複数の入力側線路とを有し、前記外導体の内部空間に設けられた内導体と、
前記外導体の内部空間に、前記内導体に接触可能に充てんされた絶縁性の液体である熱媒体と、を備え
前記外導体は、底板と、前記底板の一方および他方の側縁にそれぞれ立設された側板と、前記底板の一方および他方の端縁にそれぞれ立設された端板と、前記側板および前記端板の上縁に設けられた天板と、を備え、
前記出力側線路および前記入力側線路に、それぞれ端部導体が接続され、
前記端板に、前記端部導体が挿通する挿通孔が形成され、
前記内部空間は、前記底板と前記側板と前記端板と前記天板とに囲まれた空間であって、前記熱媒体を貯留可能であり、
前記内導体は、前記底板、前記側板、前記端板および前記天板から、前記液体が流通可能な空間を隔てて配置されている、
高周波電力合成器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波電力合成器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばテレビ放送用送信機などでは、大電力を出力するため、高周波出力を合成するための高周波電力合成器が用いられている。高周波電力合成器は、内導体(高周波線路)が発熱しやすいため、小型化が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-528836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、小型化が可能な高周波電力合成器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の高周波電力合成器は、外導体と、内導体とを持つ。前記外導体は、内部空間を形成する。前記内導体は、出力側線路と前記出力側線路から分岐する複数の入力側線路とを有する。前記内導体は、前記外導体の内部空間に設けられている。前記外導体は、底板と、側板と、端板と、天板と、を持つ。前記側板は、前記底板の一方および他方の側縁にそれぞれ立設されている。前記端板は、前記底板の一方および他方の端縁にそれぞれ立設されている。前記天板は、前記側板および前記端板の上縁に設けられている。前記出力側線路および前記入力側線路に、それぞれ端部導体が接続されている。前記端板に、前記端部導体が挿通する挿通孔が形成されている。前記内部空間は、前記底板と前記側板と前記端板と前記天板とに囲まれた空間である。前記内部空間は、前記内導体と接触した状態の液体を貯留可能である。前記内導体は、前記底板、前記側板、前記端板および前記天板から、前記液体が流通可能な空間を隔てて配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の高周波電力合成器の構成の概略を示す平面図。
図2】実施形態の高周波電力合成器の構成の概略を示す側断面図。
図3】実施形態の高周波電力合成器の出力側端子の断面図。
図4】実施形態の高周波電力合成器の入力側端子の断面図。
図5】実施形態の高周波電力合成器の変形例の概略を示す平面図。
図6】出力側端子の変形例の断面図。
図7】入力側端子の変形例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の高周波電力合成器を、図面を参照して説明する。
【0008】
図1は、実施形態の高周波電力合成器10の構成の概略を示す平面図である。図2は、高周波電力合成器10の構成の概略を示す断面図である。図2は、図1のI-I断面を示す。図1および図2において、X方向は、外導体1の底板11の長さ方向である。Y方向は、底板11に沿う面内でX方向に直交する方向であり、底板11の幅方向である。Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向であり、底板11の厚さ方向である。以下の説明において、Z方向を上下方向または高さ方向ともいう。平面視とはZ方向から見ることをいう。なお、図1では天板14を図示しない。
【0009】
以下、高周波電力合成器10は、底板11に対して天板14が上側に位置する姿勢をとると仮定して、高周波電力合成器10の各部の位置関係を説明する。なお、この高周波電力合成器10の姿勢は説明の便宜のために仮に定められているに過ぎない。よって、ここで定めた高周波電力合成器10の姿勢は、高周波電力合成器の使用時の姿勢を限定しない。
【0010】
X方向の一方をA方向といい、その反対の方向をB方向という。Y方向の一方をC方向といい、その反対の方向をD方向という。Z方向の一方をE方向といい、その反対の方向をF方向という。E方向は上方である。X方向とY方向とによって形成される平面をXY平面という。X方向とZ方向とによって形成される平面をXZ平面という。Y方向とZ方向とによって形成される平面をYZ平面という。
【0011】
図1および図2に示すように、高周波電力合成器10は、外導体1と、内導体2と、出力側端子3と、入力側端子4,4とを備えている。
外導体1は、底板11と、側板12,12と、端板13,13と、天板14(図2参照)とを備えており、容器状に形成されている。
【0012】
図1に示すように、底板11は、平面視において矩形状、例えば長方形状とされている。側板12,12は、底板11の側縁11a,11aに立設されている。側板12,12はXZ平面に沿って形成されている。端板13,13は、底板11の端縁11b,11bに立設されている。端板13,13はYZ平面に沿って形成されている。
【0013】
図2に示すように、天板14は、側板12および端板13の上縁に設けられている。天板14はXY平面に沿って形成されている。底板11と、側板12,12と、端板13,13と、天板14とにより囲まれた空間を内部空間15という。外導体1は、内部空間15を形成している。
【0014】
側板12の下縁および端板13の下縁と、底板11の周縁とは液密に接合されている。側板12の上縁および端板13の上縁と、天板14の周縁とは液密に接合されている。側板12の端縁と端板13の側縁とは液密に接合されている。そのため、外導体1は、内部空間15に液体5(熱媒体)を貯留可能である。
底板11、側板12,12、端板13,13、および天板14は、これらのうち隣り合う2以上が一体形成されていてもよい。例えば、底板11、側板12,12および端板13,13は、一体形成されていてもよい。外導体1は、後述のように、内導体2と接触した状態の液体5を貯留可能である。
【0015】
外導体1は、密閉構造であってもよい。外導体1が密閉構造であると、液体5の漏れおよび蒸散を防ぐことができる。また、外導体1内の圧力を一定に保つことができる。
【0016】
底板11および天板14は、一部または全部が導電性材料からなる。導電性材料としては、例えばアルミニウム(またはその合金)、銅(またはその合金)などの金属が好適である。底板11および天板14は、接続線路(図示略)を介して接地されるため、外導体1は接地導体である。
【0017】
一対の端板13,13のうち一方の端板13(13A)には、端部導体25が挿通する挿通孔13aが形成されている。挿通孔13aの内径は端部導体25の外形寸法より大きい。他方の端板13(13B)には、端部導体28,28がそれぞれ挿通する一対の挿通孔13b,13bが形成されている。挿通孔13bの内径は端部導体28の外形寸法より大きい。
【0018】
図3は、出力側端子3の断面図である。図3に示すように、出力側端子3は、概略、筒状(例えば円筒状)に形成されており、端板13(13A)の外面に設けられている。出力側端子3は、挿通孔13aと整合する位置に設けられている。出力側端子3には、端部導体25が挿通する。出力側端子3および挿通孔13aの内部には、円環状の介装部材17(17A)が設けられている。出力側端子3は、端板13(13A)の外面に当接することによって端板13(13A)と電気的に接続する。
【0019】
挿通孔13aの内周面と介装部材17(17A)の外周面との間には、円環状のパッキン18(18A1)(閉止部材)が設けられている。介装部材17(17A)の内周面と端部導体25の外周面との間には、円環状のパッキン18(18A2)(閉止部材)が設けられている。介装部材17(17A)およびパッキン18(18A1,18A2)は、挿通孔13aを液密に閉止する。そのため、外導体1内の液体5が挿通孔13aから外に漏出するのを抑制できる。
【0020】
図4は、入力側端子4の断面図である。図4に示すように、入力側端子4は、概略、筒状(例えば円筒状)に形成されており、端板13(13B)の外面に設けられている。入力側端子4は、挿通孔13bと整合する位置に設けられている。入力側端子4には、端部導体28が挿通する。挿通孔13bの内部には、円環状の介装部材17(17B)が設けられている。入力側端子4は、端板13(13B)の外面に当接することによって端板13(13B)と電気的に接続する。
【0021】
介装部材17(17A,17B)は、樹脂(例えばテフロン(登録商標)、ポリオレフィン系樹脂など)、ゴムなどからなる絶縁体である。パッキン18は、軟質樹脂(ポリオレフィン系樹脂など)、ゴムなどからなり、弾性変形可能である。
【0022】
挿通孔13bの内周面と介装部材17(17B)の外周面との間には、円環状のパッキン18(18B1)(閉止部材)が設けられている。介装部材17(17B)の内周面と端部導体28の外周面との間には、円環状のパッキン18(18B2)(閉止部材)が設けられている。介装部材17(17B)およびパッキン18(18B1,18B2)は、挿通孔13bを液密に閉止する。そのため、外導体1内の液体5が挿通孔13bから外に漏出するのを抑制できる。
【0023】
端板13は、例えばアルミニウム(またはその合金)、銅(またはその合金)などの金属からなる。
【0024】
図1および図2に示すように、内導体2は、出力側線路21と、一対の入力側線路22,22とを備えている。
出力側線路21は、第1線路23と、第2線路24とを備えている。第1線路23は、X方向に延在する。第1線路23は、例えば動作波長の4分の1に相当する電気長を有する。第2線路24は、第1線路23のB方向側の端部からB方向に延出する。第2線路24の幅(Y方向寸法)は、第1線路23の幅より小である。第1線路23および第2線路24は、XY平面に沿う板状に形成されている。
第2線路24のB方向側の端部には、端部導体25が接続されている。端部導体25は、第2線路24のB方向側の端部からB方向に延出し、端板13(13A)の挿通孔13aに挿通する。
【0025】
図1に示すように、入力側線路22,22は、出力側線路21のA方向側の端部21aを分岐点として2つに分岐して形成された分岐線路である。
入力側線路22,22のうち一方の入力側線路22(22A)は、第1線路26(26A)と、第2線路27(27A)とを備えている。第1線路26(26A)は、出力側線路21の端部21aを起点としてC方向に延出する。第2線路27(27A)は、第1線路26(26A)のC方向側の端部からA方向に延出する。第1線路26(26A)および第2線路27(27A)は、XY平面に沿う板状に形成されている。
第2線路27(27A)のA方向側の端部には、端部導体28(28A)が接続されている。端部導体28(28A)は、第2線路27(27A)のA方向側の端部からA方向に延出し、端板13(13B)の挿通孔13bに挿通する。
【0026】
入力側線路22,22のうち他方の入力側線路22(22B)は、第1線路26(26B)と、第2線路27(27B)とを備えている。第1線路26(26B)は、出力側線路21の端部21aを起点としてD方向に延出する。第2線路27(27B)は、第1線路26(26B)のD方向側の端部からA方向に延出する。第1線路26(26B)および第2線路27(27B)は、XY平面に沿う板状に形成されている。
第2線路27(27B)のA方向側の端部には、端部導体28(28B)が接続されている。端部導体28(28B)は、第2線路27(27B)のA方向側の端部からA方向に延出し、端板13(13B)の挿通孔13bに挿通する。
【0027】
内導体2は、導電性材料からなる。導電性材料としては、例えば銅(またはその合金)、アルミニウム(またはその合金)などの金属が好適である。出力側線路21および入力側線路22,22は一体に形成されている。
【0028】
高周波電力合成器10は、伝送線路(出力側線路21、入力側線路22,22など)がストリップラインで形成された合成器である。
高周波電力合成器10は、例えば、内導体2によって出力インピーダンスと入力インピーダンスとを整合(インピーダンス整合)させるインピーダンス変換型の合成器であってよい。
【0029】
図2に示すように、内導体2は、内部空間15に配置されている。内導体2は、底板11および天板14から離間した高さ位置にある。すなわち、内導体2は、底板11より高く、かつ天板14より低い位置にある。
【0030】
外導体1の内部空間15には、液体5が貯留されている。
液体5としては、使用温度(例えば25℃)において絶縁性を有する熱媒体が好ましく、例えば、フッ素系不活性液体、炭化水素系絶縁油、シリコーン油などが使用できる。フッ素系不活性液体としては、3M社製のフロリナートFC-770(登録商標)などが使用できる。炭化水素系絶縁油の主成分は、例えばアルキルベンゼン、ポリブテン、アルキルナフタレン等である。
【0031】
液体5の絶縁耐力(2.54mm gap)は、25℃において例えば38kV~46kVである。液体5の沸点は、例えば50℃以上180℃以下である。周波数1kHzにおける誘電率は、25℃において例えば1.76~1.90である。
【0032】
液体5は、内導体2に接触可能に内部空間15に貯留されている。図1等では、液体5は、内部空間15の全体に満たされているが、液体5が内部空間15の容積より少量である場合には、液体5の液面は内部空間15の最上部より低く位置する。
【0033】
液体5は、内導体2の一部にのみ接触していてもよいが、内導体2の全体が液体5に浸漬することが好ましい。内導体2の全体が液体5に浸漬していると、内導体2の冷却効率を高めることができる。
【0034】
通電によって内導体2が発熱すると、液体5は温度上昇により比重が小さくなるため、液体5は内部空間15で自然対流(熱対流)する。液体5の対流によって、内導体2は効率よく冷却される。
【0035】
液体5が、内部空間15が形成する最大容積より少量である場合には、液体5の液面と、外導体1の一部(例えば側板12)との間に空間が確保される。そのため、液体5を沸騰させて潜熱により冷却効果を高める、いわゆる沸騰冷却が可能となる。
【0036】
高周波電力合成器10では、内部空間15に貯留された液体5によって内導体2を効率よく冷却することができる。そのため、過度の温度上昇を生じさせることなく、内導体2を小型化(例えば薄型化または幅狭化)できる。よって、高周波電力合成器10を小型化できる。例えば、高周波電力合成器10の厚さ(Z方向寸法)を小さくできる。
絶縁性の液体5として誘電体を用いることで、液体5を用いない場合に比べて、出力側線路21および入力側線路22,22の電気長は短くなる。そのため、内導体2のX方向の寸法を短くできる。よって、高周波電力合成器10の長さ(X方向寸法)を短くできる。したがって、高周波電力合成器10をさらに小型化できる。
【0037】
高周波電力合成器10は、外導体1として、汎用の高周波電力合成器における外導体を用いることができるため、製造コストを抑えることができる。
【0038】
外導体1の内部空間15に熱媒体5が充てんされた高周波電力合成器10は、外導体1と、内導体2と、出力側端子3と、入力側端子4,4と、熱媒体5とを備えて構成されている。
【0039】
図5は、他の実施形態の高周波電力合成器10Aの構成の概略を示す平面図である。なお、図5では天板14を図示しない。
【0040】
図5に示すように、高周波電力合成器10Aでは、一対の側板12,12のうち一方の側板12Aに、液体5の導入路31が設けられている。導入路31は、例えば筒状に形成されている。導入路31は、側板12Aの導入孔12aを通して、図示しない供給源からの液体5を外導体1の内部空間15に導入できる。
【0041】
側板12,12のうち他方の側板12Bには、液体5の導出路32が設けられている。導出路32は、例えば筒状に形成されている。導出路32は、側板12Bの導出孔12bを通して、外導体1の内部空間15の液体5を、外導体1の外に導出できる。
【0042】
高周波電力合成器10Aでは、外部から供給された液体5を外導体1の内部空間15に流通させ、液体5が内導体2を冷却する効率を高めることができる。
導出路32によって導出された熱媒体5は、熱交換器(図示略)によって冷却し、導入路31を通して再利用してもよい。
【0043】
実施形態の高周波電力合成器は、3dBカプラ型、ウィルキンソン型、ラットレース型などの構造を採用してもよい。
内導体において、1つの出力側線路から分岐する入力側線路の数は、2に限らず、3以上の任意の数であってもよい。
実施形態の高周波電力合成器10,10Aは、外導体1が液体5を貯留可能に構成されているが、高周波電力合成器の構成はこれに限定されない。例えば、実施形態の高周波電力合成器は、外導体以外に、内導体と接触した状態の液体を内部空間に貯留可能である構成要素(例えば外導体内に設けられた容器状の中間構造体)を備えていれば、外導体が液体を貯留可能な構造でなくてもよい。
【0044】
図6は、出力側端子3の変形例である出力側端子103の断面図である。図6に示すように、出力側端子103は、概略、筒状(例えば円筒状)に形成されており、端板13(13A)の外面に設けられている。出力側端子103は、挿通孔13aと整合する位置に設けられている。出力側端子103には、端部導体25が挿通する。出力側端子103は、円環状の介装部材117を介して端板13(13A)の外面に取り付けられている。出力側端子103は、図示しない接続箇所において端板13(13A)と電気的に接続する。
【0045】
出力側端子103内には、円環状のパッキン118(118A)(閉止部材)が設けられている。パッキン118は、軟質樹脂(ポリオレフィン系樹脂など)、ゴムなどからなり、弾性変形可能である。パッキン118は、端部導体25が挿通する挿通孔118aを有する。パッキン118の外周面は出力側端子103の内周面に隙間なく当接する。パッキン118の内周面は端部導体25の外周面に隙間なく当接する。パッキン118、出力側端子103および介装部材117によって挿通孔13aは液密に閉止されるため、外導体1内の液体5が挿通孔13aから外に漏出するのを防ぐことができる。
【0046】
図7は、入力側端子4の変形例である入力側端子104の断面図である。図7に示すように、入力側端子104は、概略、筒状(例えば円筒状)に形成されており、端板13(13B)の外面に設けられている。入力側端子104は、挿通孔13bと整合する位置に設けられている。入力側端子104には、端部導体28が挿通する。入力側端子104は、円環状の介装部材117を介して端板13(13B)の外面に取り付けられている。入力側端子104は、図示しない接続箇所において端板13(13B)と電気的に接続する。
【0047】
入力側端子104内には、円環状のパッキン118(118B)(閉止部材)が設けられている。パッキン118は、端部導体28が挿通する挿通孔118bを有する。パッキン118の外周面は入力側端子104の内周面に隙間なく当接する。パッキン118の内周面は端部導体28の外周面に隙間なく当接する。パッキン118、入力側端子104および介装部材117によって挿通孔13bは液密に閉止されるため、外導体1内の液体5が挿通孔13bから外に漏出するのを防ぐことができる。
【0048】
介装部材117は、樹脂(例えばテフロン(登録商標)、ポリオレフィン系樹脂など)、ゴムなどからなる。出力側端子103および入力側端子104は、介装部材117を介して端板13の外面に隙間なく当接するため、液体5の漏出を防ぐことができる。
【0049】
なお、パッキン118は、端板13の挿通孔13a,13b内に、挿通孔13a,13bの内周面に当接して設けられていてもよい。この場合でも挿通孔13a,13bは閉止され、外導体1内の液体5が外に漏出するのを防ぐことができる。
【0050】
実施形態の説明においては、高周波電力合成器10は、底板11に対して天板14が上側に位置する姿勢をとると仮定したが、高周波電力合成器10の姿勢は特に限定されない。例えば、高周波電力合成器10は、一方の側板12に対して他方の側板12が上側に位置する姿勢で使用してもよい。
【0051】
以上説明した実施形態によれば、内導体2と接触する液体5を貯留可能であるため、内部空間15に充てんされた液体5によって内導体2を効率よく冷却することができる。そのため、過度の温度上昇を生じさせることなく、内導体2を小型化(例えば薄型化または幅狭化)できる。よって、高周波電力合成器10を小型化できる。例えば、高周波電力合成器10の厚さ(Z方向寸法)を小さくできる。
絶縁性の液体5は誘電体とすることで、液体5を用いない場合に比べて、出力側線路21および入力側線路22,22の電気長は短くなる。そのため、内導体2のX方向の寸法を短くできる。よって、高周波電力合成器10の長さ(X方向寸法)を短くできる。したがって、高周波電力合成器10をさらに小型化できる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
1…外導体、2…内導体、5…液体(熱媒体)、13a,13b…挿通孔、18…パッキン(閉止部材)、15…内部空間、21…出力側線路、22…入力側線路、25,28…端部導体、31…導入路、32…導出路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7