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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】樹脂発泡体及び樹脂発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20230123BHJP
   C08F 287/00 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CET
C08J9/04 CEY
C08F287/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018245857
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105373
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼原 進悟
(72)【発明者】
【氏名】大西 隆司
(72)【発明者】
【氏名】井本 慎也
(72)【発明者】
【氏名】河野 晃丈
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-302906(JP,A)
【文献】特開2011-057826(JP,A)
【文献】特開平02-289632(JP,A)
【文献】特開平03-277638(JP,A)
【文献】特開昭58-015551(JP,A)
【文献】特開平08-301643(JP,A)
【文献】特表2013-528673(JP,A)
【文献】特開昭63-161047(JP,A)
【文献】特開2011-052192(JP,A)
【文献】特開2006-096988(JP,A)
【文献】特開2014-080575(JP,A)
【文献】特開平11-269292(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131670(WO,A1)
【文献】特開2004-271635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
C08F 251/00-283/00
C08F 283/02-289/00
C08F 291/00-297/08
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B29C 44/00-44/60;67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0℃以下の第1ガラス転移温度及び130℃以上の第2ガラス転移温度を有する重合体を含み、
前記重合体は、ジエン単量体に由来する構造単位及びオレフィン単量体に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位を含む第1ポリマー鎖を有し、
前記第1ポリマー鎖における前記少なくとも1つの構造単位の含有率が5~50質量%であり、
前記第1ポリマー鎖は、芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位を含み、
前記第1ポリマー鎖における前記芳香族ビニル化合物単量体に由来する前記構造単位の含有率が10~70質量%であり、
前記重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を含む第2ポリマー鎖を有し、
前記第2ポリマー鎖における前記(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する前記構造単位の含有率が25~90質量%であり、
前記第2ポリマー鎖は、環構造を有する構造単位を含み、
前記第2ポリマー鎖における前記環構造を有する前記構造単位の含有率が5~50質量%である、樹脂発泡体。
【請求項2】
前記樹脂発泡体における前記少なくとも1つの構造単位の含有率が0.5~40質量%である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項3】
前記樹脂発泡体における前記芳香族ビニル化合物単量体に由来する前記構造単位の含有率が0.5~35質量%である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項4】
前記樹脂発泡体における前記(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する前記構造単位の含有率が10~90質量%である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項5】
前記樹脂発泡体における前記環構造を有する前記構造単位の含有率が1~50質量%である、請求項1に記載の樹脂発泡体。
【請求項6】
前記環構造を有する前記構造単位は、N-置換マレイミド単量体に由来する構造単位である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂発泡体。
【請求項7】
前記重合体が、前記樹脂発泡体の内部を連続して広がるマトリックス相を構成している、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂発泡体。
【請求項8】
20℃以下のガラス転移温度を有し、かつ20℃よりも高いガラス転移温度を有さない重合体の含有率が25質量%よりも低い、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂発泡体。
【請求項9】
みかけ密度が1.1g/cm3以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂発泡体。
【請求項10】
シートの形状を有するとともに、全光線透過率が50%以下であり、かつヘイズが70%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂発泡体。
【請求項11】
ジエン単量体に由来する構造単位及びオレフィン単量体に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位を5~50質量%の含有率で含み、かつ芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位を10~70質量%の含有率で含む原料重合体に、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群を重合させ、当該単量体群に由来するポリマー鎖における前記(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が25~90質量%であると共に、環構造を有する構造単位の含有率が5~50質量%であり、0℃以下の第1ガラス転移温度及び130℃以上の第2ガラス転移温度を有する重合体を得ることと、
前記重合体を含む樹脂組成物を発泡させることと、
を含む、樹脂発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂発泡体及び樹脂発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂発泡体は、樹脂自体を射出成形又は押出成形することによって得られる成形体に比べて、軽量であるとともに断熱性及び緩衝性に優れている。
【0003】
近年では、高温条件下で使用可能な樹脂発泡体が求められている。このような樹脂発泡体として、例えば、特許文献1には、ポリアミドの発泡体が開示されている。特許文献2には、メタクリル酸メチル単量体に由来する構造単位及び無水グルタル酸構造を有する構造単位を含む共重合体の樹脂発泡体が開示されている。特許文献3には、メタクリル酸メチル及び無水マレイン酸を含む重合性溶液から得られた重合体の樹脂発泡体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-126545号公報
【文献】特開昭60-152533号公報
【文献】特開2006-45256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によると、高い耐熱性を有する樹脂発泡体は、機械的強度に劣ることがある。
【0006】
本発明は、耐熱性及び機械的強度の両立に適した樹脂発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、0℃以下の第1ガラス転移温度及び120℃以上の第2ガラス転移温度を有する、樹脂発泡体を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐熱性及び機械的強度の両立に適した樹脂発泡体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一形態では、樹脂発泡体は、第1ガラス転移温度及び第2ガラス転移温度を有する重合体を含む。
【0010】
本発明の一形態では、重合体は、ジエン単量体に由来する構造単位及びオレフィン単量体に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位を含む。
【0011】
本発明の一形態では、重合体は、芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位を含む。
【0012】
本発明の一形態では、重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を含む。
【0013】
本発明の一形態では、重合体は、環構造を有する構造単位を含む。
【0014】
本発明の一形態では、環構造を有する構造単位は、N-置換マレイミド単量体に由来する構造単位である。
【0015】
本発明の一形態では、重合体は、ジエン単量体に由来する構造単位及びオレフィン単量体に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位を含む第1ポリマー鎖を有し、
第1ポリマー鎖における当該少なくとも1つの構造単位の含有率が5~50質量%である。
【0016】
本発明の一形態では、第1ポリマー鎖は、芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位を含み、
第1ポリマー鎖における芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位の含有率が10~70質量%である。
【0017】
本発明の一形態では、重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を含む第2ポリマー鎖を有し、
第2ポリマー鎖における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率が25~90質量%である。
【0018】
本発明の一形態では、第2ポリマー鎖は、環構造を有する構造単位を含み、
第2ポリマー鎖における環構造を有する構造単位の含有率が5~50質量%である。
【0019】
本発明の一形態では、重合体が、樹脂発泡体の内部を連続して広がるマトリックス相を構成している。
【0020】
本発明の一形態では、樹脂発泡体において、20℃以下のガラス転移温度を有し、かつ20℃よりも高いガラス転移温度を有さない重合体の含有率が25質量%よりも低い。
【0021】
本発明の一形態では、樹脂発泡体のみかけ密度が1.1g/cm3以下である。
【0022】
本発明の一形態では、樹脂発泡体は、シートの形状を有するとともに、全光線透過率が50%以下であり、かつヘイズが70%以上である。
【0023】
さらに、本発明は、
ジエン単量体に由来する構造単位及びオレフィン単量体に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位を含む原料重合体に、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群を重合させ、0℃以下の第1ガラス転移温度及び120℃以上の第2ガラス転移温度を有する重合体を得ることと、
当該重合体を含む樹脂組成物を発泡させることと、
を含む、樹脂発泡体の製造方法を提供する。
【0024】
以下、本発明の詳細を説明するが、以下の説明は、本発明を特定の実施形態に制限する趣旨ではない。
【0025】
本実施形態の樹脂発泡体は、0℃以下の第1ガラス転移温度及び120℃以上の第2ガラス転移温度を有する。第1ガラス転移温度及び第2ガラス転移温度は、JIS K7121:1987の規定に準拠して求められる値である。詳細には、第1ガラス転移温度及び第2ガラス転移温度は、樹脂発泡体を示差走査熱量測定することによって得られるDSC曲線に基づいて、始点法により求められる値(補外ガラス転移開始温度(Tig))である。
【0026】
第1ガラス転移温度は、0℃以下であれば特に限定されず、好ましくは0℃未満であり、より好ましくは-20℃未満であり、さらに好ましくは-40℃未満であり、特に好ましくは-60℃未満である。第1ガラス転移温度は、場合によっては、0℃より高くてもよい。第1ガラス転移温度は、50℃未満であってもよく、20℃未満であってもよい。第1ガラス転移温度の下限値は、特に限定されないが、例えば-100℃である。本実施形態の樹脂発泡体は、複数の第1ガラス転移温度を有していてもよい。
【0027】
第2ガラス転移温度は、120℃以上であれば特に限定されず、好ましくは130℃以上であり、より好ましくは135℃以上であり、さらに好ましくは140℃以上であり、特に好ましくは150℃以上である。第2ガラス転移温度の上限値は、特に限定されないが、180℃であってもよく、170℃であってもよく、160℃であってもよい。本実施形態の樹脂発泡体は、複数の第2ガラス転移温度を有していてもよい。
【0028】
本実施形態の樹脂発泡体は、例えば、第1ガラス転移温度及び第2ガラス転移温度を有する重合体(P)を含む。本実施形態の樹脂発泡体は、重合体(P)に代えて、又は、重合体(P)と共に、第1ガラス転移温度を有する重合体(Q1)と第2ガラス転移温度を有する重合体(Q2)とを含んでいてもよい。
【0029】
本明細書において、「樹脂」の語は、重合体よりも広い概念を示す。樹脂は、1種又は2種以上の重合体を含んでいてもよく、必要に応じて、重合体以外の材料をさらに含んでいてもよい。重合体以外の材料としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、フィラー、可塑剤、難燃剤、色素などの添加剤が挙げられる。すなわち、本実施形態の樹脂発泡体は、必要に応じて、重合体(P)以外の他の重合体(R)及び添加剤(S)をさらに含んでいてもよい。ただし、他の重合体(R)は、重合体(P)以外の重合体であれば特に限定されず、重合体(Q1)及び重合体(Q2)を含みうる。
【0030】
[重合体(P)]
重合体(P)は、例えば、第1ガラス転移温度を示す第1ポリマー鎖と、第2ガラス転移温度を示す第2ポリマー鎖とを有する。本明細書では、「第1ポリマー鎖」及び「第2ポリマー鎖」をそれぞれ「ポリマー鎖(A)」及び「ポリマー鎖(B)」と呼ぶことがある。重合体(P)は、例えば、ポリマー鎖(A)及びポリマー鎖(B)を含む共重合体であり、好ましくはポリマー鎖(A)及びポリマー鎖(B)から構成された共重合体である。重合体(P)は、好ましくは、ポリマー鎖(A)を幹部分として含み、かつポリマー鎖(B)を枝部分として含むグラフト共重合体である。本発明は、その別の側面から、0℃以下の第1ガラス転移温度及び100℃以上の第2ガラス転移温度を有するグラフト共重合体を含む、樹脂発泡体を提供する。
【0031】
(ポリマー鎖(A))
重合体(P)に含まれるポリマー鎖(A)について説明する。ポリマー鎖(A)に含まれる構造単位は、ポリマー鎖(A)が第1ガラス転移温度を示す限り、特に限定されない。ポリマー鎖(A)は、例えば、ジエン単量体に由来する構造単位及びオレフィン単量体に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位を含む。本明細書では、「ジエン単量体に由来する構造単位及びオレフィン単量体に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位」を「ジエン及び/又はオレフィン由来の単位」と表現することがある。ジエン及び/又はオレフィン由来の単位は、重合体(P)中でソフト成分として機能する。ジエン及び/又はオレフィン由来の単位が含まれることにより、重合体(P)の機械的強度(例えば衝撃強度、靭性等)を高め、硬脆さを低減することができる。本明細書において、「ジエン」は、炭素-炭素二重結合を2つ有する鎖状炭化水素を意味する。「オレフィン」は、炭素-炭素二重結合を1つ有する鎖状炭化水素を意味する。
【0032】
ジエンは、例えば、以下の式(1)で表される共役ジエンである。
【0033】
【化1】
【0034】
式(1)において、R1~R6は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の鎖状炭化水素基である。R1~R6の鎖状炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。R1~R6の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基が挙げられる。R1~R6のそれぞれは、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0035】
共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン(ブタジエン)、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)及び1,3-ペンタジエンが挙げられる。
【0036】
ジエンは、共役ジエンでなくてもよい。ジエンは、以下の式(2)で表される化合物であってもよい。
【0037】
【化2】
【0038】
式(2)において、R7~R12は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の鎖状炭化水素基である。R7~R12の鎖状炭化水素基としては、R1~R6について上述したものが挙げられる。R13は、炭素数1~5のアルキレン基である。R13のアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。R13のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基及びペンタン-1,5-ジイル基が挙げられる。
【0039】
式(2)のジエンとしては、例えば、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン及び2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン(ジイソブテン)が挙げられる。
【0040】
ジエンの炭素数は、例えば2以上であり、3以上が好ましく、また20以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。ジエン単量体に由来する構造単位は、ジエンが重合することによって形成される。ジエン単量体に由来する構造単位には、炭素-炭素二重結合が残存していることがある。ただし、ジエン単量体に由来する構造単位には、ジエンが重合したときに残存した炭素-炭素二重結合が水添された構造単位も含まれる。
【0041】
ジエン単量体に由来する構造単位としては、例えば、以下の構造単位(U1)~(U6)が挙げられる。
【0042】
【化3】
【0043】
構造単位(U1)~(U4)において、R1~R6は、式(1)と同じである。構造単位(U5)及び(U6)において、R7~R13は、式(2)と同じである。第1ポリマー鎖(A)は、構造単位(U2)及び構造単位(U4)からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。このとき、重合体(P)は、耐候性に優れている。
【0044】
オレフィンは、例えば、以下の式(3)で表される。
【0045】
【化4】
【0046】
式(3)において、R14~R17は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~16の鎖状炭化水素基である。R14~R17の鎖状炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。R14~R17の鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ドデシル基、テトラデシル基及びヘキサデシル基が挙げられる。R14及びR15のそれぞれは、好ましくは水素原子である。
【0047】
オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-テトラデセン及び1-オクタデセンが挙げられる。オレフィンは、α位に炭素-炭素二重結合を有するα-オレフィンであることが好ましい。
【0048】
オレフィンの炭素数は、例えば2以上であり、3以上がより好ましく、また20以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。オレフィン単量体に由来する構造単位は、オレフィンが重合することによって形成される。
【0049】
オレフィン単量体に由来する構造単位は、例えば、以下の式(4)で表される。
【0050】
【化5】
【0051】
式(4)において、R14~R17は、式(3)と同じである。
【0052】
ポリマー鎖(A)は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体等のオレフィン(共)重合体;ポリイソプレン、ポリブタジエン、イソプレン-ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体;エチレン-プロピレン-ジエン共重合体、イソブテン-イソプレン共重合体等のオレフィンとジエンとの共重合体を主鎖の構造中に含む。オレフィン(共)重合体としてはα-オレフィン(共)重合体が好ましい。ジエン(共)重合体としては共役ジエン(共)重合体が好ましい。オレフィンとジエンの共重合体としてはα-オレフィンと共役ジエンの共重合体が好ましい。これらの中でもポリイソプレン、α-オレフィンと共役ジエンとの共重合体(イソブテン-イソプレン共重合体等)、ポリエチレン、ポリプロピレンがより好ましい。
【0053】
ポリマー鎖(A)は、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位に加え、さらに他の不飽和単量体由来の単位を有していてもよい。他の不飽和単量体は、重合性二重結合を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸及びそのエステル;スチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、α-メチルスチレン、2-ビニルピリジン等の芳香族ビニル化合物;ビニルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメトキシシラン等のビニルシラン;炭素-炭素二重結合を3つ以上有する鎖状炭化水素等が挙げられる。ポリマー鎖(A)は、これら他の不飽和単量体とジエン及び/又はオレフィンとの共重合体であってもよい。ポリマー鎖(A)中のジエン及び/又はオレフィン由来の単位の含有率は、例えば、5質量%以上であり、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上がさらにより好ましく、また90質量%以下が好ましく、86質量%以下がより好ましく、83質量%以下がさらに好ましい。ポリマー鎖(A)中のジエン及び/又はオレフィン由来の単位の含有率は、5~50質量%であってもよい。
【0054】
ポリマー鎖(A)が他の不飽和単量体由来の単位を有する場合、ポリマー鎖(A)は、ジエン及び/又はオレフィンと他の不飽和単量体とのランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。これらの中でも、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位のソフト成分としての機能が好適に発現する点から、ブロック共重合体であることが好ましい。この場合、ポリマー鎖(A)は、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有する重合体ブロック(a1)と、他の不飽和単量体由来の単位を有する重合体ブロック(a2)とを有する。
【0055】
ポリマー鎖(A)が他の不飽和単量体由来の単位を有する重合体ブロック(a2)を有する場合、重合体(P)の機械的強度を確保することが容易な点から、重合体ブロック(a2)は芳香族ビニル単量体に由来する構造単位(以下、「芳香族ビニル単量体由来の単位」と称する場合がある)から構成されることが好ましい。この場合、ポリマー鎖(A)において、重合体ブロック(a1)がソフト成分として機能し、重合体ブロック(a2)がハード成分として機能する。
【0056】
重合体ブロック(a2)を与える芳香族ビニル単量体は、芳香環にビニル基が結合した化合物であれば特に限定されず、例えば、以下の式(5)で表わされる。
【0057】
【化6】
【0058】
式(5)において、R18及びR19は、互いに独立して、水素原子又はメチル基である。R20は、水素原子、メチル基又はヒドロキシル基である。R21は、芳香族基である。R21の芳香族基としては、例えば、炭素数6~14のアリール基、及び、炭素数3~12の複素芳香族基が挙げられる。R21のアリール基及び複素芳香族基は、置換基を有していてもよい。R21のアリール基及び複素芳香族基が有する置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基及びスルホ基が挙げられる。R21のアリール基及び複素芳香族基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子によって置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。置換基としてのアルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。置換基としてのアルキル基及びアルコキシ基に含まれる水素原子の少なくとも1つは、ヒドロキシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。R21のアリール基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基及びナフチル基が挙げられる。R21の複素芳香族基としては、例えば、カルバゾリル基、ピリジル基、イミダゾリル基及びチエニル基が挙げられる。
【0059】
芳香族ビニル化合物単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、α-メチルスチレン、α-ヒドロキシメチルスチレン、α-ヒドロキシエチルスチレン等のスチレン系単量体;2-ビニルナフタレン等の多環芳香族炭化水素環ビニル単量体;N-ビニルカルバゾール、2-ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルチオフェン等の芳香族複素環ビニル単量体等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系単量体が好ましい。
【0060】
芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位は、例えば、以下の式(6)で表される。
【0061】
【化7】
【0062】
式(6)において、R18~R21は、式(5)と同じである。
【0063】
ポリマー鎖(A)における芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位の含有率は、例えば10質量%以上であり、好ましくは15質量%以上である。ポリマー鎖(A)における構造単位の含有率は、例えば70質量%以下であり、好ましくは60質量%以下である。ポリマー鎖(A)における芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位の含有率は、10~70質量%であることが好ましい。
【0064】
ジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有する重合体ブロック(a1)と、芳香族ビニル単量体由来の単位を有する重合体ブロック(a2)とを有するポリマー鎖(A)としては、例えば、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水添物(例えば、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン/ブチレン-スチレンブロック共重合体)、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水添物(例えば、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロック共重合体)等が挙げられる。
【0065】
ポリマー鎖(A)が、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有する重合体ブロック(a1)と、芳香族ビニル単量体由来の単位を有する重合体ブロック(a2)とを有する場合、ポリマー鎖(A)において、重合体ブロック(a1)の両側に重合体ブロック(a2)が結合していることが好ましい。このようにポリマー鎖(A)を構成することにより、ポリマー鎖(A)がエラストマーとして機能し、重合体(P)の機械的強度をより高めることができる。この場合、ポリマー鎖(A)は、トリブロック共重合体であってもよく、マルチブロック共重合体であってもよく、ラジアルブロック共重合体であってもよいが、ポリマー鎖(A)の特性制御が容易であり、またポリマー鎖(A)を有する原料重合体へポリマー鎖(B)を導入することが容易な点から、トリブロック共重合体であることが好ましい。
【0066】
ポリマー鎖(A)が、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有する重合体ブロック(a1)と、芳香族ビニル単量体由来の単位を有する重合体ブロック(a2)とを有する場合、重合体ブロック(a1)は、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位に加え、さらに他の不飽和単量体由来の単位を有していてもよい。この場合の他の不飽和単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸及びそのエステル;スチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、α-メチルスチレン、2-ビニルピリジン等の芳香族ビニル化合物;ビニルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメトキシシラン等のビニルシラン等が挙げられる。重合体ブロック(a1)は、これら他の不飽和単量体とジエン及び/又はオレフィンとの共重合体であってもよい。なお、重合体ブロック(a1)はジエン及び/又はオレフィン由来の単位を主成分として含むことが好ましく、重合体ブロック(a1)におけるジエン及び/又はオレフィン由来の単位の含有率が50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。本明細書において、「主成分」は、重合体ブロックに重量基準で最も多く含まれる構造単位を意味する。重合体ブロック(a1)は、実質的にジエン及び/又はオレフィン由来の単位のみから構成されていてもよく、例えばジエン及び/又はオレフィン由来の単位が99質量%以上であってもよい。
【0067】
ポリマー鎖(A)が、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有する重合体ブロック(a1)と、芳香族ビニル単量体由来の単位を有する重合体ブロック(a2)とを有する場合、重合体ブロック(a2)は、芳香族ビニル単量体由来の単位に加え、さらに他の不飽和単量体由来の単位を有していてもよい。この場合の他の不飽和単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸及びそのエステル;スチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、α-メチルスチレン、2-ビニルピリジン等の芳香族ビニル化合物;ビニルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメトキシシラン等のビニルシラン等が挙げられる。重合体ブロック(a2)は、これら他の不飽和単量体と芳香族ビニル単量体との共重合体であってもよい。なお、重合体ブロック(a2)は芳香族ビニル単量体由来の単位を主成分として含むことが好ましく、重合体ブロック(a2)における芳香族ビニル単量体由来の単位の含有率が70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。重合体ブロック(a2)は、実質的に芳香族ビニル単量体由来の単位のみから構成されていてもよく、例えば芳香族ビニル単量体由来の単位が99質量%以上であってもよい。
【0068】
ポリマー鎖(A)中、重合体ブロック(a2)の含有率は10質量%以上であることが好ましく、14質量%以上がより好ましく、17質量%以上がさらに好ましく、また55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。これにより、ポリマー鎖(A)がソフト成分とハード成分をバランス良く有するため、重合体(P)の機械的強度を確保することが容易になる。同様の観点から、ポリマー鎖(A)中、重合体ブロック(a1)の含有率は45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましく、また90質量%以下が好ましく、86質量%以下がより好ましく、83質量%以下がさらに好ましい。
【0069】
ポリマー鎖(A)の重量平均分子量は、0.1万以上が好ましく、0.5万以上がより好ましく、1万以上がさらに好ましく、3万以上がさらにより好ましく、また50万以下が好ましく、30万以下がより好ましく、20万以下がさらに好ましく、10万以下がさらにより好ましい。ポリマー鎖(A)の重量平均分子量をこのような範囲とすることで、重合体(P)の強度を確保しやすくなる。
【0070】
(ポリマー鎖(B))
重合体(P)に含まれるポリマー鎖(B)について説明する。ポリマー鎖(B)に含まれる構造単位は、ポリマー鎖(B)が第2ガラス転移温度を示す限り、特に限定されない。ポリマー鎖(B)は、例えば、(メタ)アクリル系単量体由来の単位(以下、「(メタ)アクリル単位」と称する場合がある)を含む。(メタ)アクリル単位は、(メタ)アクリル系単量体を重合することによりポリマー鎖(B)に導入することができる。(メタ)アクリル系単量体には、(メタ)アクリル酸及びその誘導体が含まれ、(メタ)アクリル系単量体のα位又はβ位にはアルキル基(好ましくは、炭素数1~4のアルキル基)が結合していてもよく、当該アルキル基は、水素原子の少なくとも一部が、ヒドロキシル基又はハロゲン基で置換されていてもよい。(メタ)アクリル系単量体の形態は特に限定されず、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の遊離酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸アミド等の形態が挙げられる。
【0071】
ポリマー鎖(B)は、(メタ)アクリル単位として、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位(以下、「(メタ)アクリル酸エステル由来の単位」と称する場合がある)を有していてもよい。(メタ)アクリル酸エステル由来の単位を与える(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸エステルにおけるエステル結合の酸素原子に直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基が結合した(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。本発明は、別の側面から、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を含むポリマー鎖(B)を有し、かつ、0℃以下の第1ガラス転移温度及び100℃以上の第2ガラス転移温度を有する共重合体を含む、樹脂発泡体を提供する。
【0072】
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、例えば、以下の式(7)で表される。
【0073】
【化8】
【0074】
式(7)において、R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。R22及びR23のアルキル基に含まれる水素原子の少なくとも1つは、ヒドロキシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。R22及びR23は、好ましくは水素原子である。R24は、水素原子又はメチル基である。
【0075】
25は、炭素数1~20の炭化水素基である。R25の炭化水素基の炭素数は、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下が特に好ましい。R25の炭化水素基は、直鎖状、環状、分岐鎖状のいずれであってもよい。R25の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ニトロ基、ニトリル基、スルホン基及びエポキシ基が挙げられる。R25の炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子によって置換されていてもよい。R25の炭化水素基は、例えば、直鎖状の脂肪族炭化水素基、分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、環状の脂肪族炭化水素基、又は、芳香族炭化水素基を含む。R25の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリールオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、エポキシアルキル基及びアルコキシアルキル基が挙げられる。
【0076】
直鎖状又は分岐状の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルのアルキル基は、C1-18アルキル基が好ましく、C1-12アルキル基がより好ましい。なお、本明細書において、「C1-18」や「C1-12」の記載は、それぞれ「炭素数1~18」、「炭素数1~12」を意味する。
【0077】
環状の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸シクロプロピル、(メタ)アクリル酸シクロブチル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキル;(メタ)アクリル酸イソボルニル等の架橋環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルのシクロアルキル基は、C3-20シクロアルキル基が好ましく、C3-12シクロアルキル基がより好ましい。
【0078】
芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸キシリル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸ビナフチル、(メタ)アクリル酸アントリル等の(メタ)アクリル酸アリール;(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキル;(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の(メタ)アクリル酸アリールオキシアルキル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールのアリール基は、C6-20アリール基が好ましく、C6-14アリール基がより好ましい。(メタ)アクリル酸アラルキルのアラルキル基は、C6-10アリールC1-4アルキル基が好ましい。(メタ)アクリル酸アリールオキシアルキルのアリールオキシアルキル基は、C6-10アリールオキシC1-4アルキル基が好ましく、フェノキシC1-4アルキル基がより好ましい。
【0079】
(メタ)アクリル酸エステルは、ヒドロキシル基、ハロゲン基、アルコキシ基、エポキシ基等の置換基を有していてもよい。このような(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2-クロロエチル等の(メタ)アクリル酸ハロゲン化アルキル;(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エポキシアルキル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルと(メタ)アクリル酸エポキシアルキルのアルキル基は、C1-12アルキル基が好ましい。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルのアルコキシアルキル基は、C1-12アルコキシC1-12アルキル基が好ましい。
【0080】
(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位は、例えば、以下の式(8)で表される。
【0081】
【化9】
【0082】
式(8)において、R22~R25は、式(7)と同じである。
【0083】
ポリマー鎖(B)における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は、例えば25質量%以上であり、45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましく、60質量%以上が特に好ましく、また98質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらにこのましい。ポリマー鎖(B)における(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は、例えば、25~90質量%である。
【0084】
ポリマー鎖(B)は、(メタ)アクリル単位に加えて、主鎖に環構造を有する構造単位(以下、「環構造単位」と称する場合がある)を有していてもよい。ポリマー鎖(B)が主鎖に環構造を有することで、重合体(P)の耐熱性を高めることができる。耐溶剤性、表面硬度、接着性、酸素や水蒸気のバリヤ性の向上も期待できる。さらに、重合体(P)やこれを含む樹脂組成物を発泡させた場合に、高温高湿度条件下での寸法安定性や形状安定性を高めることができる。
【0085】
ポリマー鎖(B)の主鎖の環構造は、(メタ)アクリル系単量体の一部又は全部を環構造内に含んでいてもよく、(メタ)アクリル系単量体とは別に導入された環構造であってもよい。(メタ)アクリル系単量体の一部又は全部を環構造内に含ませる場合には、例えば、隣接する(メタ)アクリル系単量体由来の単位の2個のカルボン酸基を酸無水物化、イミド化などによって連結すればよい。隣接する(メタ)アクリル系単量体由来の単位のうち一方がヒドロキシル基やアミノ基などのプロトン性水素原子含有基を有する場合には、この一方の(メタ)アクリル系単量体由来の単位のプロトン性水素原子含有基と他方の(メタ)アクリル系単量体由来の単位のカルボン酸基とが縮合することでも、環構造を形成できる。環構造を(メタ)アクリル系単量体由来の単位とは別に導入する場合は、例えば、(メタ)アクリル系単量体と、環構造内に重合性二重結合を有する単量体とを共重合すればよい。
【0086】
環構造は、4員環構造、5員環構造、6員環構造、7員環構造、8員環構造等のいずれでもよく、好ましくは5員環構造又は6員環構造である。
【0087】
環構造としては、重合体(P)の耐熱性の観点から、ラクトン環構造、環状イミド構造(例えば、マレイミド単量体に由来する構造、グルタルイミド構造等)、環状無水物構造(例えば、無水マレイン酸単量体に由来する構造、無水グルタル酸構造等)等が好ましく挙げられる。これらの環構造は、ポリマー鎖(B)の主鎖に1種のみ含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。これらの中でも、ラクトン環構造、マレイミド単量体に由来する構造、無水マレイン酸単量体に由来する構造、グルタルイミド構造及び無水グルタル酸構造からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、耐湿性の観点からラクトン環構造、マレイミド単量体に由来する構造及びグルタルイミド構造からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、発泡性の観点からマレイミド単量体に由来する構造がさらに好ましい。ポリマー鎖(B)において、環構造を有する構造単位は、N-置換マレイミド単量体に由来する構造単位であることが特に好ましい。
【0088】
ポリマー鎖(B)が主鎖の環構造としてラクトン環構造を有する場合、ラクトン環構造の環員数は特に限定されず、例えば4員環から8員環のいずれかであればよい。なお、環構造の安定性に優れる点から、ラクトン環構造は5員環又は6員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
【0089】
ラクトン環構造としては、例えば特開2004-168882号公報に開示される構造等が挙げられるが、ラクトン環構造の導入が容易であること、具体的には、前駆体(ラクトン環化前の重合体)の重合収率が高いこと、前駆体の環化縮合反応におけるラクトン環含有率を高めることができること、(メタ)アクリレート由来の単位を有する重合体を前駆体にできることなどの理由から、下記式(9)で表される構造が好ましく示される。下記式(9)において、R26、R27及びR28は、それぞれ独立して水素原子又は置換基を表す。
【0090】
【化10】
【0091】
式(9)のR26、R27及びR28の置換基としては、炭化水素基等の有機残基が挙げられ、例えば、酸素原子を含んでいてもよいC1-20の炭化水素基等が挙げられる。当該炭化水素基としては、飽和又は不飽和の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等のC1-20アルキル基;エテニル基、プロペニル基等のC2-20アルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のC3-20シクロアルキル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等のC6-20アリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のC7-20アラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基は、酸素原子を含んでいてもよく、具体的には、炭化水素基の有する水素原子の1つ以上が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基及びエステル基からなる群より選ばれる少なくとも1種類の基により置換されていてもよい。
【0092】
ラクトン環構造は、例えば、隣接している(メタ)アクリル酸エステル由来の単位のエステル基と、ヒドロキシル基やアミノ基などのプロトン性水素原子含有基を有する(メタ)アクリル系単量体由来の単位のプロトン性水素原子含有基とを環化縮合することにより、ポリマー鎖(B)に導入することができる。
【0093】
式(9)のラクトン環構造において、耐熱性に優れる重合体(P)を得ることが容易な点から、R26及びR27がそれぞれ独立して、水素原子又はC1-20アルキル基であり、かつR28が水素原子又はメチル基であることが好ましく、R26及びR27がそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、かつR28が水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0094】
ラクトン環構造は、例えば、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体Aと、(メタ)アクリル系単量体Bとを重合(好ましくは共重合)して分子鎖にヒドロキシ基と、エステル基又はカルボキシル基とを導入した後、これらヒドロキシ基と、エステル基又はカルボキシル基との間で脱アルコール又は脱水環化縮合を生じさせることにより形成できる。重合成分として、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体Aは必須であり、(メタ)アクリル系単量体Bは、上記の単量体Aを包含しうる。単量体Bは、単量体Aと一致していてもよいし、一致しなくてもよい。単量体Bが単量体Aと一致するときには、単量体Aの単独重合となる。
【0095】
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体Aとしては、例えば、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2-(ヒドロキシエチル)アクリル酸、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル(例えば、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸n-ブチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸t-ブチル)、2-(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル(例えば、2-(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシエチル)アクリル酸エチル)等が挙げられ、好ましくは、ヒドロキシアリル部位を有する単量体である2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸や2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキルが挙げられる。特に好ましくは2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが示される。
【0096】
(メタ)アクリル系単量体Bとしては、ビニル基と、エステル基又はカルボキシル基とを有する単量体が好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等)、(メタ)アクリル酸アリール(例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等)、2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸アルキル(例えば、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル等の2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸アルキル、2-(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチル等の2-(ヒドロキシエチル)アクリル酸アルキル)等が挙げられる。
【0097】
ポリマー鎖(B)は、式(9)で表されるラクトン環構造を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0098】
ポリマー鎖(B)が主鎖の環構造として無水マレイン酸単量体に由来する構造又はマレイミド単量体に由来する構造を有する場合、無水マレイン酸単量体に由来する構造又はマレイミド単量体に由来する構造としては、下記式(10)で表される構造が好ましく示される。下記式(10)において、R29及びR30は、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、R31は水素原子又は置換基を表し、X1は酸素原子又は窒素原子を表す。X1が酸素原子のときn1=0であり、X1が窒素原子のときn1=1である。
【0099】
【化11】
【0100】
式(10)のR31の置換基としては、炭化水素基等が挙げられ、例えばハロゲン等の置換基を有していてもよいC1-20の炭化水素基が挙げられる。当該炭化水素基としては、飽和又は不飽和の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等のC1-6アルキル基;エテニル基、プロペニル基等のC2-6アルケニル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のC3-20シクロアルキル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等のC6-20アリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のC7-20アラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基は、ハロゲン等の置換基を有していてもよい。
【0101】
1が酸素原子のとき、式(10)により示される環構造は無水マレイン酸単量体に由来する構造である。無水マレイン酸単量体に由来する構造は、例えば、無水マレイン酸と(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸エステル等)とを共重合することによって、ポリマー鎖(B)に導入することができる。
【0102】
1が窒素原子のとき、式(10)により示される環構造はマレイミド単量体に由来する構造である。マレイミド単量体に由来する構造は、例えば、マレイミドと(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸エステル)とを共重合することによって、ポリマー鎖(B)に導入することができる。マレイミド単量体に由来する構造としては、例えば、N位が無置換のマレイミド単量体に由来する構造、N-メチルマレイミド単量体に由来する構造、N-エチルマレイミド単量体に由来する構造、N-シクロヘキシルマレイミド単量体に由来する構造、N-フェニルマレイミド単量体に由来する構造、N-ナフチルマレイミド単量体に由来する構造、N-ベンジルマレイミド単量体に由来する構造等が挙げられる。マレイミド単量体としては、N位が無置換のマレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-ベンジルマレイミド等を用いることができる。重合体(P)の耐熱性及び耐湿熱性の観点から、マレイミド単量体は、N-置換マレイミドであることが好ましく、N-フェニルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミドからなる群より選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。重合体(P)がN-シクロヘキシルマレイミド単量体に由来する構造を有するとき、重合体(P)の着色が抑制されるとともに、重合体(P)の耐候性を向上できる。
【0103】
ポリマー鎖(B)が、X1が窒素原子であるマレイミド単量体に由来する構造を有する場合、耐熱性に優れる重合体(P)を得ることが容易な点から、R29及びR30が水素原子であり、かつR31がC3-20シクロアルキル基又はC6-20芳香族基(アリール基、アラルキル基等)であることが好ましく、R29及びR30が水素原子であり、かつR31がシクロヘキシル基又はフェニル基であることがより好ましい。
【0104】
ポリマー鎖(B)は、式(10)で表される環構造を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0105】
ポリマー鎖(B)が主鎖の環構造としてグルタルイミド構造又は無水グルタル酸構造を有する場合、グルタルイミド構造又は無水グルタル酸構造としては、下記式(11)で表される構造が好ましく示される。下記式(11)において、R32及びR33は、それぞれ独立して水素原子又はアルキル基を表し、R34は水素原子又は置換基を表し、X2は酸素原子又は窒素原子を表す。X2が酸素原子のときn2=0であり、X2が窒素原子のときn2=1である。
【0106】
【化12】
【0107】
式(11)中、R32及びR33のアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソへキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等のC1-8アルキル基等が挙げられる。なお、耐熱性に優れる重合体(P)を得ることが容易な点から、R32及びR33は、それぞれ独立して水素原子又はC1-4アルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0108】
式(11)のR34の置換基としては、炭化水素基等が挙げられ、例えばハロゲン等の置換基を有していてもよいC1-20の炭化水素基が挙げられる。当該炭化水素基としては、飽和又は不飽和の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族炭化水素基や芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソへキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル等のC1-10アルキル基;エテニル基、プロペニル基等のC2-10アルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のC3-12シクロアルキル基等が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、ビナフチル基、アントリル基等のC6-20アリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のC7-20アラルキル基等が挙げられる。これらの炭化水素基は、ハロゲン等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、耐熱性に優れる重合体(P)を得ることが容易な点から、R34は、C1-4アルキル基、C3-7シクロアルキル基、C6-20アリール基又はC7-20アラルキル基であることが好ましく、メチル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はトリル基がより好ましい。
【0109】
2が酸素原子のとき、式(11)により示される環構造は無水グルタル酸構造である。無水グルタル酸構造は、例えば、隣接する(メタ)アクリル系単量体由来の単位に含まれる2つのカルボン酸基を酸無水物化することにより、ポリマー鎖(B)に導入することができる。
【0110】
2が窒素原子のとき、式(11)により示される環構造はグルタルイミド構造となる。グルタルイミド構造は、例えば、隣接する(メタ)アクリル系単量体由来の単位に含まれる2つのカルボン酸基をイミド化したり、隣接する(メタ)アクリル酸アミド由来の単位に含まれるアミド基と(メタ)アクリル酸エステル由来の単位に含まれるエステル基とを環化縮合することにより、ポリマー鎖(B)に導入することができる。
【0111】
式(11)の環構造において、耐熱性に優れる重合体(P)を得ることが容易な点から、R32及びR33がそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、かつR34がC1-10アルキル基、C3-12シクロアルキル基又はC6-20芳香族基であることが好ましく、R32及びR33がそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、かつR34はC1-4アルキル基、C3-7シクロアルキル基、C6-20アリール基又はC7-20アラルキル基であることがより好ましく、R32及びR33がそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、かつR34がメチル基、シクロヘキシル基、フェニル基又はトリル基であることがさらに好ましく、R32及びR33がそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、かつR34がシクロヘキシル基又はフェニル基であることが特に好ましい。
【0112】
ポリマー鎖(B)は、式(11)で表される環構造を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0113】
上記に説明した環構造のうち、重合体(P)を含む樹脂発泡体に、良好な耐熱性、表面硬度、耐溶剤性、接着性、バリヤ特性が付与される観点から、ポリマー鎖(B)の環構造単位は、ラクトン環構造及び/又はマレイミド単量体に由来する構造を含むことが好ましく、マレイミド単量体に由来する構造を含むことが特に好ましい。特に、ポリマー鎖(B)において、環構造を有する構造単位は、N-置換マレイミド単量体に由来する構造単位であることが好ましい。N-置換マレイミド単量体に由来する構造単位を含む重合体(P)は、高温多湿条件下での耐熱性にも優れている。
【0114】
ポリマー鎖(B)は、さらに他の不飽和単量体由来の単位を有していてもよい。他の不飽和単量体は、重合性二重結合を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;スチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、α-メチルスチレン、2-ビニルピリジン等の芳香族ビニル化合物;ビニルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメトキシシラン等のビニルシラン等が挙げられる。芳香族ビニル単量体の詳細は、ポリマー鎖(A)の芳香族ビニル単量体の説明が参照される。なお、ポリマー鎖(B)が2種以上の単量体成分から形成されるものである場合、ポリマー鎖(B)はランダム共重合体であることが好ましい。
【0115】
ポリマー鎖(B)中の環構造単位の含有率は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。ポリマー鎖(B)中の環構造単位の含有率は、例えば、5~50質量%である。このように環構造単位の含有率を調整することにより、重合体(P)の耐熱性と機械的強度の両方をバランス良く高めることが容易になる。なお、ここで説明した環構造単位の含有率は、ポリマー鎖(B)の主鎖に含まれる環構造を有する単位の含有率を意味し、例えば、上記式(9)~(11)で表される構造の含有率を意味する。
【0116】
ポリマー鎖(B)において、(メタ)アクリル単位と環構造単位の合計含有率は、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。これにより、重合体(P)の耐熱性を高めることが容易になる。(メタ)アクリル酸エステル由来の単位と環構造単位の合計含有率がこのような範囲にあることが好ましい。
【0117】
ポリマー鎖(B)は、ポリマー鎖(A)にグラフトしていることが好ましい。ポリマー鎖(B)は、ポリマー鎖(A)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位に結合していてもよく、またポリマー鎖(A)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位以外の単位に結合していてもよい。前者の場合、ポリマー鎖(B)は、ポリマー鎖(A)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位に直接結合していてもよく、連結基を介して結合していてもよい。
【0118】
ポリマー鎖(B)がポリマー鎖(A)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位に直接結合する場合、ポリマー鎖(B)における(メタ)アクリル単位又は環構造単位が、ポリマー鎖(A)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位に直接結合していることが好ましい。ポリマー鎖(B)は、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位の主鎖の炭素原子に結合していてもよく、当該主鎖に置換基(側鎖)として結合した炭化水素基の炭素原子に結合していてもよい。このようにポリマー鎖(B)がポリマー鎖(A)に結合していれば、ゲル化物の少ない重合体(P)を得やすくなる。
【0119】
ポリマー鎖(B)がポリマー鎖(A)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位に連結基を介して結合する場合、連結基は、エステル結合(-CO-O-)、ウレタン結合(-NH-CO-O-)及びエーテル結合(-O-)からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。当該連結基はさらにメチレン基やヒドロキシメチレン基などの2価の有機基を有していてもよい。
【0120】
ポリマー鎖(B)がポリマー鎖(A)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位以外の単位に結合する場合、例えば、ポリマー鎖(A)が重合性官能基(重合性二重結合)を有する単位を有し、当該単位の重合性官能基にポリマー鎖(B)が結合したり、ポリマー鎖(A)におけるジエン及び/又はオレフィン由来の単位以外の単位において、エステル結合(-CO-O-)、ウレタン結合(-NH-CO-O-)、エーテル結合(-O-)等の連結基を介してポリマー鎖(B)がポリマー鎖(A)に結合していてもよい。当該連結基は、さらにメチレン基やヒドロキシメチレン基などの2価の有機基を有していてもよい。
【0121】
上記に説明したポリマー鎖(B)がポリマー鎖(A)にグラフトする各態様については、下記の重合体(P)の製造方法の説明で詳しく説明する。
【0122】
重合体(P)中のジエン及び/又はオレフィン由来の単位の含有率は特に限定されず、例えば0.5質量%以上であり、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が特に好ましく、また45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0123】
重合体(P)中の芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位の含有率は特に限定されず、例えば0.5質量%以上であり、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0124】
重合体(P)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は特に限定されない。重合体(P)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を主成分として含むことが好ましい。このとき、重合体(P)を含む樹脂発泡体は、ポリスチレンの樹脂発泡体又はポリオレフィンの樹脂発泡体に比べて、良好な耐候性及び耐油性を有する。さらに、この樹脂発泡体の表面は、ポリオレフィンの樹脂発泡体に比べて硬度が高く、傷つきにくい。重合体(P)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は、例えば10質量%以上であり、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、また90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0125】
重合体(P)中の環構造単位の含有率は特に限定されない。重合体(P)中、環構造単位の含有率は、例えば、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。このように重合体(P)中の環構造単位の含有率を調整することにより、重合体(P)の耐熱性、成形性、機械的強度等をバランス良く高めることが容易になる。
【0126】
重合体(P)がポリマー鎖(B)の環構造単位としてラクトン環構造を有する場合、重合体(P)の耐熱性を高める観点から、重合体(P)中のラクトン環構造の含有率は、例えば1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。同様の観点から、重合体(P)がポリマー鎖(B)の環構造単位として無水マレイン酸単量体に由来する構造及び/又はマレイミド単量体に由来する構造を有する場合、重合体(P)中のこれらの環構造の含有率は、例えば1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。重合体(P)がポリマー鎖(B)の環構造単位としてグルタルイミド構造及び/又は無水グルタル酸構造を有する場合、重合体(P)中のこれらの環構造の含有率は、例えば1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0127】
重合体(P)におけるポリマー鎖(A)の含有率は、例えば5質量%以上であり、8質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、13質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上が特に好ましい。重合体(P)におけるポリマー鎖(A)の含有率は、例えば50質量%以下であり、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
【0128】
重合体(P)におけるポリマー鎖(B)の含有率は、例えば50質量%以上であり、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、75質量%以上が特に好ましい。重合体(P)におけるポリマー鎖(B)の含有率は、例えば95質量%以下であり、92質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、87質量%以下がさらに好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
【0129】
重合体(P)の重量平均分子量は、特に限定されない。重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求められる値である。重合体(P)の重量平均分子量は、0.2万以上が好ましく、0.5万以上がより好ましく、3万以上がさらに好ましく、5万以上がさらにより好ましく、7万以上が特に好ましく、また100万以下が好ましく、50万以下がより好ましく、40万以下がさらに好ましく、30万以下がさらにより好ましい。重合体(P)の重量平均分子量をこのような範囲とすることで、重合体(P)の成形加工性が向上するとともに、得られる成形品の強度を高めやすくなる。
【0130】
重合体(P)の重量平均分子量は、ポリマー鎖(A)の重量平均分子量の1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.3倍以上がより好ましく、また20倍以下が好ましく、12倍以下がより好ましく、10倍以下がさらに好ましく、7倍以下がさらにより好ましく、5倍以下が特に好ましい。これにより、重合体(P)に、機械的強度、耐熱性の各特性をバランス良く付与することが容易になる。
【0131】
重合体(P)の分子量分布(Mw/Mn)は、1~10であってもよい。分子量分布は、GPC測定法によって得られる。重合体(P)の分子量分布は、例えば、重合体(P)の組成によって調整できる。重合体(P)を含む樹脂の粘度を成形加工に適した範囲に調整する観点から、重合体(P)の分子量分布は、好ましくは1.1~7.0であり、より好ましくは1.2~5.0であり、さらに好ましくは1.5~4.0である。
【0132】
本実施形態の樹脂発泡体における重合体(P)の含有率は、特に限定されないが、耐熱性及び機械的強度の観点から、50質量%以上であることが好ましい。本実施形態の樹脂発泡体における重合体(P)の含有率は、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上又は99.9質量%以上であってもよい。本実施形態の樹脂発泡体は、実質的に重合体(P)からなっていてもよい。本実施形態の樹脂発泡体における重合体(P)の含有率は、50質量%以下であってもよい。
【0133】
重合体(P)は、ポリマー鎖(A)に、ポリマー鎖(B)を形成する単量体成分を付加重合することにより製造することができる。従って、重合体(P)の製造方法は、例えば、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有する重合体(以下、「原料重合体(P1)」と称する)の存在下で、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分(単量体群)を重合する工程(重合工程)を有することが好ましく、これにより、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分を原料重合体(P1)に付加重合することができる。この場合、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分は、例えば、(1)原料重合体(P1)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位に直接結合する方法、(2)原料重合体(P1)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位が側鎖に有する連結基の重合性官能基に結合する方法、及び、(3)原料重合体(P1)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位以外の単位が側鎖に有する重合性官能基に結合する方法のうちのいずれかの方法により原料重合体(P1)に付加重合することができる。この場合、得られる重合体(P)はグラフト共重合体となる。なお本明細書において、「原料重合体(P1)」を単に「重合体(P1)」と称する場合もある。
【0134】
原料重合体(P1)は、例えばジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有していればよく、さらに他の不飽和単量体由来の単位を有していてもよい。原料重合体(P1)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位と他の不飽和単量体由来の単位の詳細は、上記のポリマー鎖(A)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位と他の不飽和単量体由来の単位の説明が参照される。ジエン及び/又はオレフィン由来の単位は、水素原子の一部が塩素化されていてもよい。原料重合体(P1)は、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有する重合体ブロック(a1)と他の不飽和単量体由来の単位を有する重合体ブロック(a2)とを有するブロック共重合体であってもよく、重合体ブロック(a2)が芳香族ビニル単量体由来の単位から構成されていてもよい。これらの詳細も上記のポリマー鎖(A)の説明が参照される。なお上記(2)の方法では、原料重合体(P1)は、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位の側鎖に重合性官能基を有する連結基を有しており、上記(3)の方法では、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位以外の単位の側鎖に重合性官能基を有している。
【0135】
原料重合体(P1)は、重量平均分子量が0.1万以上であることが好ましく、0.5万以上がより好ましく、1万以上がさらに好ましく、3万以上がさらにより好ましく、また50万以下が好ましく、30万以下がより好ましく、20万以下がさらに好ましく、10万以下がさらにより好ましい。原料重合体(P1)の重量平均分子量をこのような範囲とすることで、重合体(P)の成形性が向上し、重合体(P)の強度を確保しやすくなる。(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分との重合反応の際に、架橋体やゲル化物の発生を抑えることもできる。
【0136】
重合工程において、原料重合体(P1)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。後者の場合、樹脂組成物としての平均分子量や二重結合量を調整することが容易となる。
【0137】
ポリマー鎖(B)の形成に用いられる単量体成分には、(メタ)アクリル系単量体に加え、環構造単位を与える単量体として、環構造内に重合性二重結合を有する単量体等を使用することもできる。例えば、主鎖にマレイミド単量体に由来する構造を有するポリマー鎖(B)を形成する場合は、環構造内に重合性二重結合を有する単量体を用いることが好ましい。あるいは、重合工程の後に環構造形成工程を行う場合は、当該工程で環構造を形成可能な単量体を単量体成分として用いることもできる。また、それ以外の他の不飽和単量体を用いることもできる。これらの単量体成分の詳細は、上記のポリマー鎖(B)を形成する(メタ)アクリル系単量体、ポリマー鎖(B)の環構造を与える単量体、ポリマー鎖(B)を形成する他の不飽和単量体の説明が参照される。
【0138】
以下、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分を原料重合体(P1)に付加重合する方法について、上記(1)~(3)の方法を詳しく説明する。
【0139】
上記(1)の、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分を原料重合体(P1)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位に直接結合する方法では、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分を、原料重合体(P1)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位に結合する。この場合、原料重合体(P1)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位は、ジエンに由来する二重結合を有することが好ましい。(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分は、原料重合体(P1)の主鎖のジエン由来の二重結合に結合してもよく、当該二重結合の隣接炭素原子に結合してもよい。あるいは、ポリマー鎖(B)は、原料重合体(P1)の主鎖に置換基(側鎖)として結合したジエン由来の二重結合に結合したり、当該二重結合の隣接炭素原子に結合していてもよい。いずれの場合も、得られる重合体(P)は、ポリマー鎖(B)がポリマー鎖(A)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位に直接結合したものとなる。当該方法では、原料重合体(P1)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位が有する二重結合(オレフィン性二重結合)のビニル位、アリル位等活性が高い水素が引き抜かれるようにすることが好ましく、これにより当該箇所でラジカルが生成し、ポリマー鎖(B)を形成する単量体成分を付加重合させることができる。
【0140】
上記(2)の、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分を、原料重合体(P1)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位が側鎖に有する連結基の重合性官能基に結合する方法では、当該連結基は、重合性官能基(重合性二重結合)を有し、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位の側鎖に結合するものとなる。得られる重合体(P)は、ポリマー鎖(B)がポリマー鎖(A)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位に連結基を介して結合したものとなる。
【0141】
連結基は、重合性官能基(重合性二重結合)に加え、エステル結合、ウレタン結合及びエーテル結合からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましく、さらにメチレン基やヒドロキシメチレン基などの2価の有機基を有していてもよい。このような連結基を有する原料重合体(P1)は、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有し、エステル結合、ウレタン結合又はエーテル結合を与える官能基を有する重合体(以下、「原料重合体(P2)」と称する)と、当該官能基との反応性を有する官能基を有し、重合性官能基を有する化合物(以下、「ラジカル重合性化合物」と称する)とを反応させることにより得ることができる。
【0142】
エステル結合、ウレタン結合又はエーテル結合を与える官能基は、ラジカル重合性化合物との反応によってこれらのいずれかの結合を形成する官能基を意味し、具体的には、カルボキシル基又はその無水物基、エポキシ基、ヒドロキシル基、イソシアネート基等が好ましく挙げられる。原料重合体(P2)にこれらの官能基を導入するためには、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有する重合体(例えば、上記(1)の製造方法で用いられる原料重合体(P1))にこれらの官能基を有する不飽和化合物を反応させればよく、当該反応は通常ラジカル開始剤を用いて行われる。
【0143】
カルボキシル基又はその無水物基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸及びその無水物、イタコン酸及びその無水物、クロトン酸及びその無水物、シトラコン酸及びその無水物等の不飽和カルボン酸及びその無水物等が挙げられる。
【0144】
エポキシ基を有する不飽和化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸のモノ及びジグリシジルエステル、イタコン酸のモノ及びジグリシジルエステル、アリルコハク酸のモノ及びジグリシジルエステル、p-スチレンカルボン酸のグリシジルエステル等の不飽和カルボン酸グリシジルエステル;アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;p-グリシジルスチレン;3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン等のエポキシオレフィン;ビニルシクロヘキセンモノオキシド等が挙げられる。
【0145】
ヒドロキシル基を有する不飽和化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N-メチロール(メタ)アクリルアミド;2-ヒドロキシエチルアクリレート-6-ヘキサノリド付加重合物;2-プロペン-1-オール等のアルケニルアルコール;2-プロピン-1-オール等のアルキニルアルコール;ヒドロキシビニルエーテル等が挙げられる。
【0146】
イソシアネート基を有する不飽和化合物としては、2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
【0147】
ラジカル重合性化合物は、重合性官能基(重合性二重結合)を有するとともに、カルボキシル基又はその無水物基、エポキシ基、ヒドロキシル基、又は、イソシアネート基との反応性を有する官能基を有する。反応性官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、エポキシ基、イソシアネート基及びカルボキシル基が挙げられる。
【0148】
反応性官能基としてヒドロキシル基を有するラジカル重合性化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N-メチロール(メタ)アクリルアミド;2-ヒドロキシエチルアクリレート-6-ヘキサノリド付加重合物;2-プロペン-1-オール等のアルケニルアルコール;2-プロピン-1-オール等のアルキニルアルコール;ヒドロキシビニルエーテル等が挙げられる。
【0149】
反応性官能基としてエポキシ基を有するラジカル重合性化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、マレイン酸のモノ及びジグリシジルエステル、イタコン酸のモノ及びジグリシジルエステル、アリルコハク酸のモノ及びジグリシジルエステル、p-スチレンカルボン酸のグリシジルエステル等の不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;p-グリシジルスチレン;3,4-エポキシ-1-ブテン、3,4-エポキシ-3-メチル-1-ブテン等のエポキシオレフィン;ビニルシクロヘキセンモノオキシド等が挙げられる。
【0150】
反応性官能基としてイソシアネート基を有するラジカル重合性化合物としては、2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
【0151】
反応性官能基としてカルボキシル基を有するラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸;カルボキシエチルビニルエーテル、カルボキシプロピルビニルエーテル等のカルボキシアルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0152】
原料重合体(P2)の有する官能基がカルボキシル基又はその無水物である場合、ラジカル重合性化合物の反応性官能基としてはヒドロキシル基、エポキシ基、及びイソシアネート基が好ましく示される。これらの中でも、ヒドロキシル基を有するラジカル重合性化合物が特に好ましい。この場合、原料重合体(P2)とラジカル重合性化合物との反応によって得られる原料重合体(P1)は、重合性官能基とエステル結合を有する連結基を側鎖に有するものとなる。
【0153】
原料重合体(P2)の有する官能基がエポキシ基である場合、ラジカル重合性化合物の反応性官能基としてはカルボキシル基及びヒドロキシル基が好ましく示される。これらの中でカルボキシル基を有するラジカル重合性化合物が特に好ましい。この場合、原料重合体(P2)とラジカル重合性化合物との反応によって得られる原料重合体(P1)は、重合性官能基とエステル結合(詳細には、-CH(OH)-CH2-OCO-で表される2価の有機基)を有する連結基を側鎖に有するものとなる。
【0154】
原料重合体(P2)の有する官能基がヒドロキシル基である場合、ラジカル重合性化合物の反応性官能基としてイソシアネート基、カルボキシル基及びエポキシ基が好ましく示される。これらの中でイソシアネート基を有するラジカル重合性単量体が特に好ましい。この場合、原料重合体(P2)とラジカル重合性化合物との反応によって得られる原料重合体(P1)は、重合性官能基とウレタン結合を有する連結基を側鎖に有するものとなる。
【0155】
原料重合体(P2)の有する官能基がイソシアネート基である場合、ラジカル重合性化合物の反応性官能基としてヒドロキシル基及びカルボキシル基が好ましく示される。これらの中でヒドロキシル基を有するラジカル重合性単量体が特に好ましい。この場合、原料重合体(P2)とラジカル重合性化合物との反応によって得られる原料重合体(P1)は、重合性官能基とウレタン結合を有する連結基を側鎖に有するものとなる。
【0156】
(2)の製造方法に使用可能な原料重合体(P1)としては、例えば、側鎖にメタクリロイル基とエステル結合を有するポリイソプレンであるLIR UC-102MやUC-203(いずれもクラレ社製)等が挙げられる。
【0157】
重合体(P)の上記(3)の製造方法について説明する。上記(3)の、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分を、原料重合体(P1)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位以外の単位が側鎖に有する重合性官能基に結合する方法では、ジエン及び/又はオレフィンと、重合性官能基(重合性二重結合)を有する不飽和単量体とを共重合したり、ジエン及び/又はオレフィンと、カルボキシル基又はその無水物基、エポキシ基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基を有する官能基を有する不飽和単量体とを共重合し、さらに上記で説明した反応性官能基を有するラジカル重合性化合物と反応させることにより、原料重合体(P1)を得ることができる。あるいは、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有する(共)重合体を、重合性官能基(重合性二重結合)を有する不飽和単量体と重合したり、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有する(共)重合体を、カルボキシル基又はその無水物基、エポキシ基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基を有する不飽和単量体と重合して、さらに上記で説明した反応性官能基を有するラジカル重合性化合物と反応させることにより、原料重合体(P1)を得てもよい。このようにして得られた原料重合体(P1)の存在下で、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分を重合させることにより、重合体(P)が得られる。得られる重合体(P)は、ポリマー鎖(B)がポリマー鎖(A)のジエン及び/又はオレフィン由来の単位以外の単位に結合したものとなる。
【0158】
ジエン及び/又はオレフィン、又はこれらに由来する単位を有する(共)重合体を、重合性官能基を有する不飽和単量体と重合させる場合、重合性官能基を有する不飽和単量体としては、多官能(メタ)アクリレート、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート、アリル基含有(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル系化合物、多官能ビニルエーテル、多官能アリル系化合物、多官能芳香族ビニルなどが挙げられる。
【0159】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビスアクリル酸、ジアルキル-2,2’-[オキシビス(メチレン)]ビス-2-プロペノエート等が挙げられる。
【0160】
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)エチル等が挙げられる。
【0161】
アリル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸メチル、α-アリルオキシメチルアクリル酸ステアリル、α-アリルオキシメチルアクリル酸2-デシルテトラデシル等が挙げられる。
【0162】
多官能ビニルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0163】
多官能アリル系化合物としては、例えば、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル等の多官能アリルエーテル;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート;フタル酸ジアリル、ジフェン酸ジアリル等の多官能アリルエステル;ビスアリルナジイミド化合物等;ビスアリルナジイミド化合物等が挙げられる。
【0164】
多官能芳香族ビニルとしては、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0165】
ジエン及び/又はオレフィン、又はこれらに由来する単位を有する(共)重合体を、カルボキシル基又はその無水物基、エポキシ基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基を有する官能基を有する不飽和単量体と重合させる場合、得られる重合体(以下、「原料重合体(P3)」と称する)は、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位を有するとともに、ジエン及び/又はオレフィン由来の単位以外の単位を有し、当該他の単位の側鎖にカルボキシル基又はその無水物基、エポキシ基、ヒドロキシル基、又はイソシアネート基を有する官能基が結合したものとなる。原料重合体(P3)としては、例えば、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル-ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物等が挙げられる。これらの中でも、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル-グリシジル(メタ)アクリレート共重合体が好ましい。
【0166】
原料重合体(P3)と上記で説明した反応性官能基を有するラジカル重合性化合物と反応させることにより、原料重合体(P1)が得られる。原料重合体(P3)の有する官能基とラジカル重合性化合物の反応性官能基の詳細は、上記の(2)の方法におけるこれらの説明が参照される。
【0167】
上記(2)の方法における原料重合体(P2)とラジカル重合性化合物との反応、あるいは上記(3)の方法における原料重合体(P3)とラジカル重合性化合物との反応では、原料重合体(P2)又は原料重合体(P3)中の上記の官能基1当量に対し、ラジカル重合性化合物の反応性官能基を0.1~10当量になるように配合し反応させることが好ましい。これにより、最終的に得られる重合体(P)の収率を高めることができる。
【0168】
上記の反応は、適当な有機溶媒中で行うことが好ましく、有機溶媒としては、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等が挙げられる。反応温度は、通常20℃~150℃、好ましくは50℃~120℃である。
【0169】
原料重合体(P2)又は原料重合体(P3)とラジカル重合性化合物との反応は触媒存在下で行うことが好ましい。触媒としては、エステル化反応では、酸あるいは塩基性化合物、例えば硫酸、パラトルエンスルホン酸、塩化亜鉛、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン等を用いることができ、ウレタン化反応では、例えばジブチル錫ラウレート等を用いることができる。
【0170】
反応に際し、ビニル単量体のホモポリマーの生成を防止するために、酸素又は空気雰囲気下で反応させ、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン等の重合禁止剤を適量反応系中に添加することも好ましい。
【0171】
上記(1)~(3)の方法では、上記のようにして得られた原料重合体(P1)の存在下、(メタ)アクリル系単量体を含む(必要に応じて環構造内に重合性二重結合を有する単量体をさらに含む)単量体成分を重合することにより、重合体(P)を得ることができる。好ましくは、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分を原料重合体(P1)にグラフト重合することにより、重合体(P)が得られる。(メタ)アクリル系単量体を含む各単量体成分の使用量は、最終的に得られるポリマー鎖(B)中の(メタ)アクリル酸エステル由来の単位の含有率が所望の範囲内となるように適宜調整する。重合工程においてゲル化物の生成を抑えることが容易な点からは、上記(1)の方法により、原料重合体(P1)の存在下、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体成分を重合することが好ましい。なお、上記(2)、(3)の方法でも、重合反応時間を短く設定するなど重合反応を制御することにより、ゲル化物の発生を抑えることができる。
【0172】
単量体成分の重合は、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等の公知の重合法を用いて行うことができるが、溶液重合法を用いることが好ましい。溶液重合法を用いれば、重合体(P)への微小な異物の混入を抑えることができる。
【0173】
重合形式としては、例えば、バッチ重合法、連続重合法のいずれも用いることができる。重合の際、単量体成分は一括で仕込んでもよく、分割添加してもよい。
【0174】
重合溶媒は、単量体成分の組成に応じて適宜選択でき、通常のラジカル重合反応で使用される有機溶媒を用いることができる。具体的には、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;クロロホルム;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0175】
原料重合体(P1)と単量体成分との重合反応は、重合触媒(重合開始剤)の存在下で行うことが好ましい。重合触媒としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)・二塩酸塩、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等のアゾ化合物;過硫酸カリウム等の過硫酸塩類;クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ2-エチルヘキシルカーボネート等の有機過酸化物等を用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上記(1)の方法では、水素引き抜き力が強い重合触媒を用いることが好ましく、そのような重合触媒として有機過酸化物を用いることが好ましい。重合触媒の使用量は、例えば、単量体成分100質量部に対して0.01~1質量部とすることが好ましい。
【0176】
原料重合体(P1)と単量体成分の各使用量については、原料重合体(P1)は、原料重合体(P1)と単量体成分の合計100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましく、また50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。単量体成分は、原料重合体(P1)と単量体成分の合計100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上がさらに好ましく、また99質量部以下が好ましく、98質量部以下がより好ましく、97質量部以下がさらに好ましい。
【0177】
反応液中の原料重合体(P1)の濃度は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がより好ましく、また50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。反応液中の単量体成分の濃度は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、また80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。反応液中の溶媒濃度は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、また97質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下がさらに好ましく、80質量%以下がさらにより好ましい。重合反応中に、原料重合体(P1)、単量体成分、重合触媒、反応溶媒等を適宜追加することも可能である。
【0178】
重合反応は、窒素ガス等の不活性ガスの雰囲気又は気流下で行うのが好ましい。残存単量体を少なくするために、重合開始剤としてアゾビス系化合物と過酸化物を併用してもよい。反応温度は、50℃~200℃が好ましい。反応時間は、共重合反応の進行度合や、ゲル化物の生成の程度を見ながら適宜調整すればよく、例えば1時間~20時間行うことが好ましい。
【0179】
上記の重合工程により、(メタ)アクリル系単量体由来の単位を含むポリマー鎖がポリマー鎖(A)に結合した共重合体が得られる。重合工程において、単量体成分として、(メタ)アクリル系単量体と環構造内に重合性二重結合を有する単量体(例えば、無水マレイン酸やマレイミド)を用いる場合は、(メタ)アクリル単位と環構造単位(無水マレイン酸単量体に由来する構造単位、マレイミド単量体に由来する構造単位)を有するポリマー鎖(B)がポリマー鎖(A)に結合した重合体(P)が得られる。
【0180】
一方、ポリマー鎖(B)の環構造単位として、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、又はグルタルイミド構造を有する重合体(P)を得る場合は、重合工程に続いて環構造形成工程を行うことが好ましい。環構造形成工程では、重合工程で形成された(メタ)アクリル単位を有するポリマー鎖の主鎖に環構造を形成する。具体的には、重合工程で形成された(メタ)アクリル単位を有するポリマー鎖において、隣接する(メタ)アクリル単位の置換基同士を縮合反応させて、ポリマー鎖の主鎖に環構造を形成する。縮合反応には、エステル化反応、酸無水物化反応、アミド化反応、イミド化反応等が含まれる。例えば、隣接する(メタ)アクリル単位の2個のカルボン酸基を酸無水物化することによって、無水グルタル酸構造を形成することができ、イミド化することによってグルタルイミド構造を形成することができる。隣接する(メタ)アクリル単位のうち一方がヒドロキシル基やアミノ基などのプロトン性水素原子含有基を有する場合には、この一方の(メタ)アクリル単位のプロトン性水素原子含有基と他方の(メタ)アクリル単位のカルボン酸基とを縮合することによって、ラクトン環構造を形成することができる。
【0181】
環構造形成工程において、隣接する(メタ)アクリル単位の縮合反応は、触媒(環化触媒)の存在下で行うことが好ましい。環化触媒としては、酸、塩基及びそれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。酸、塩基及びそれらの塩は有機物であっても無機物であってもよく、特に限定されない。なかでも、環化反応の触媒としては、有機リン化合物を用いることが好ましい。有機リン化合物を環化触媒として用いることにより、縮合反応を効率的に行うことができるとともに、得られる重合体(P)の着色を低減することができる。
【0182】
環化触媒として用いることができる有機リン化合物としては、例えば、アルキル(アリール)亜ホスホン酸及びこれらのモノエステル又はジエステル;ジアルキル(アリール)ホスフィン酸及びこれらのエステル;アルキル(アリール)ホスホン酸及びこれらのモノエステル又はジエステル;アルキル(アリール)亜ホスフィン酸及びこれらのエステル;亜リン酸モノエステル、ジエステル又はトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2-エチルヘキシル、リン酸オクチル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ-2-エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニル等のリン酸モノエステル、ジエステル又はトリエステル;モノ-、ジ-又はトリ-アルキル(アリール)ホスフィン;アルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化モノ-、ジ-又はトリ-アルキル(アリール)ホスフィン;ハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、触媒活性が高く、着色性が低いことから、リン酸モノエステル又はジエステルが特に好ましい。環化触媒の使用量は、例えば、重合工程で得られた共重合体100質量部に対して0.001~1質量部とすることが好ましい。
【0183】
環構造形成工程における反応温度は、50℃~300℃が好ましい。反応時間は、縮合反応の進行度合を見ながら適宜調整すればよく、例えば5分~6時間行うことが好ましい。
【0184】
上記のように重合工程、あるいは重合工程と環構造形成工程を行うことにより、重合体(P)を含有する樹脂溶液が得られる。このようにして得られた樹脂溶液をフィルタで濾過することで、異物を取り除いてもよい。従って、重合体(P)の製造方法は、重合工程又は環構造形成工程で得られた樹脂溶液を濾過する工程(濾過工程)をさらに有していてもよい。濾過工程を行うことにより、重合体(P)中の異物量を低減することができる。濾過工程は、重合工程又は環構造形成工程に引き続いて連続的に実施することができる。濾過に用いるフィルタとしては、従来公知のフィルタを使用することができ、特に制限されないが、例えば、リーフディスクフィルタ、キャンドルフィルタ、パックディスクフィルタ、円筒型フィルタ等を用いることができる。
【0185】
重合体(P)は、第1ガラス転移温度及び第2ガラス転移温度を有する。そのため、重合体(P)は、耐熱性及び機械的強度の両立に適している。重合体(P)は、発泡性にも優れている。
【0186】
重合体(P)の機械的強度は、例えば、引張試験によって評価することができる。引張試験は、JIS K7127:1999の規定に準拠して、次の方法で実施できる。まず、重合体(P)からフィルム形状(例えば、長さ80mm、幅20mm、厚さ40μm)の試験片を作製する。次に、試験片を引張試験機にセットし、引張試験を行う。試験片の引張速度は、例えば、1mm/分である。試験片の伸び量をビデオ式伸び計で測定する。試験片が破断したときの強度を重合体(P)の引張強度とみなす。試験前の試験片の長さに対する試験片が破断したときの試験片の長さの比率を重合体(P)の破断伸度とみなす。
【0187】
重合体(P)の引張強度は、例えば25MPa以上であり、好ましくは30MPa以上であり、より好ましくは35MPa以上である。重合体(P)の引張強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、100MPaである。
【0188】
重合体(P)の破断伸度は、例えば3%以上であり、好ましくは4%以上であり、より好ましくは5%以上であり、さらに好ましくは6%以上である。重合体(P)の破断伸度の上限値は、特に限定されないが、例えば、30%である。
【0189】
[重合体(Q1)及び重合体(Q2)]
上述のとおり、本実施形態の樹脂発泡体は、重合体(P)に代えて、又は、重合体(P)と共に、第1ガラス転移温度を有する重合体(Q1)と第2ガラス転移温度を有する重合体(Q2)とを含んでいてもよい。重合体(Q1)は、例えば、上述したポリマー鎖(A)を有する重合体であり、好ましくはポリマー鎖(A)で構成された重合体である。重合体(Q1)は、上述した原料重合体(P1)であってもよい。重合体(Q2)は、例えば、上述したポリマー鎖(B)を有する重合体であり、好ましくはポリマー鎖(B)で構成された重合体である。
【0190】
樹脂発泡体における重合体(Q1)の含有率は、例えば5質量%以上であり、8質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、13質量%以上がさらに好ましく、15質量%以上が特に好ましい。樹脂発泡体における重合体(Q1)の含有率は、例えば50質量%以下であり、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
【0191】
樹脂発泡体における重合体(Q2)の含有率は、例えば50質量%以上であり、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、75質量%以上が特に好ましい。樹脂発泡体における重合体(Q2)の含有率は、例えば95質量%以下であり、92質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、87質量%以下がさらに好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
【0192】
重合体(Q1)及び重合体(Q2)の両方を含む樹脂組成物は、容易に相分離することがある。相分離した樹脂組成物は、均一に発泡しないことがある。そのため、本実施形態の樹脂発泡体は、重合体(Q1)及び重合体(Q2)を含まなくてもよい。
【0193】
[他の重合体(R)]
上述のとおり、本実施形態の樹脂発泡体は、必要に応じて、重合体(P)以外の他の重合体(R)をさらに含んでいてもよい。他の重合体(R)は、重合体(P)以外の重合体であれば特に限定されず、重合体(Q1)及び重合体(Q2)を含みうる。
【0194】
他の重合体(R)は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)などのオレフィン系重合体;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などの含ハロゲン系重合体;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系重合体;ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体などのスチレン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム又はアクリル系ゴムを配合したABS樹脂、ASA樹脂などのゴム質重合体である。他の重合体(R)は、これらの重合体を1種又は2種以上含んでいてもよい。他の重合体(R)は、20℃以下のガラス転移温度を有し、かつ20℃よりも高いガラス転移温度を有さない重合体であってもよい。
【0195】
本実施形態の樹脂発泡体において、重合体(P)に対する他の重合体(R)の割合は、特に限定されない。本実施形態の樹脂発泡体において、重合体(P)の重量と他の重合体(R)の重量との合計に対する、他の重合体(R)の重量の割合は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下の順に好ましい。このとき、本実施形態の樹脂発泡体は、重合体(P)の特性を十分に有するとともに、他の重合体(R)の特性を有する。本実施形態の樹脂発泡体において、重合体(P)の割合は、必要とされる特性が確保されている限り、制限されていてもよい。具体的には、重合体(P)の重量と他の重合体(R)の重量との合計に対する重合体(P)の重量の割合は、50質量%以下であってもよい。
【0196】
本実施形態の樹脂発泡体における他の重合体(R)の含有率は、例えば、50質量%以下であることが好ましい。本実施形態の樹脂発泡体における他の重合体(R)の含有率は、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下又は0.1質量%以下であってもよい。他の重合体(R)が20℃以下のガラス転移温度を有し、かつ20℃よりも高いガラス転移温度を有さない重合体である場合、樹脂発泡体における他の重合体(R)の含有率は、25質量%よりも低くてもよく、好ましくは10質量%以下である。本実施形態の樹脂発泡体は、良好な表面状態を実現する観点から、20℃以下のガラス転移温度を有し、かつ20℃よりも高いガラス転移温度を有さない重合体を含まないことが好ましい。
【0197】
[添加剤(S)]
上述のとおり、本実施形態の樹脂発泡体は、必要に応じて、添加剤(S)をさらに含んでいてもよい。
【0198】
添加剤(S)としては、物理型発泡剤、化学型発泡剤などの発泡剤又はその発泡残渣;発泡助剤又はその残渣;造核剤;酸化防止剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系又はノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー;無機フィラー;樹脂改質剤;可塑剤;滑剤;吸水剤;輻射抑制剤;充填剤などである。添加剤(S)は、これらを1種又は2種以上含んでいてもよい。本実施形態の樹脂発泡体には、発泡することなく残存した発泡剤が含まれていてもよい。
【0199】
物理型発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素類;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノールなどのアルコール類;ジメチルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-イソプロピルケトン、メチル-ブチルケトン、メチル-アミルケトン、メチル-ヘキシルケトン、エチル-プロピルケトン、エチル-ブチルケトンなどのケトン類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテルなどのエーテル類;フラン、テトラヒドロフラン、オキセタン、ジオキサン、1,3-ジオキソランなどの環状エーテル類;1-メトキシ-エタノン、1-メトキシ-2-プロパノン、1-メトキシ-イソプロパノン、1-メトキシ-2-ブタノンなどのエーテルケトン化合物;ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのカルボン酸エステル類;液化天然ガス(LNG)などの揮発性の炭化水素化合物;フロン、代替フロン、塩化メチレン、塩化エチレン、塩化プロピレン、ジフルオロエタン、トリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素化合物;水;水蒸気、空気、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、アルゴンなどの気体が挙げられる。脱アルコール環化縮合によってラクトン環構造を形成した場合に発生するアルコールを物理型発泡剤として用いることもできる。化学型発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、p,p’-オキシビス-ベンゼンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、アミドグアニジン、トリメチレントリアミン、テレフタルアジド、5-フェニルテトラゾール、塩化アンモニウム、ジシアンジアミド、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、尿素、チオ尿素、尿素誘導体、抱水クロラール、クエン酸などが挙げられる。化学型発泡剤は、例えば、熱などによって化学的に分解し、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、アンモニアなどの気体を発生させる。なお、アクリル系重合体(A)におけるラクトン環構造を脱アルコール環化縮合によって形成した場合、発生したアルコールをそのまま発泡剤として使用してもよい。添加剤(S)は、これらの発泡剤又はその発泡残渣を1種又は2種以上含んでいてもよい。添加剤(S)は、物理型発泡剤又は化学型発泡剤のいずれかを含んでいてもよく、物理型発泡剤又は化学型発泡剤のいずれかの発泡残渣を含んでいてもよい。添加剤(S)は、物理型発泡剤及び化学型発泡剤の両方を含んでいてもよく、物理型発泡剤及び化学型発泡剤の両方の発泡残渣を含んでいてもよい。
【0200】
重合体(P)に対する添加剤(S)の割合は、特に限定されない。重合体(P)の重量、他の重合体(R)の重量及び添加剤(S)の重量の合計に対する添加剤(S)の重量の割合は、0質量%以上99質量%以下であればよく、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上又は30質量%以上であってもよい。重合体(P)の重量、他の重合体(R)の重量及び添加剤(S)の重量の合計に対する添加剤(S)の重量の割合は、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下又は40質量%以下であってもよい。
【0201】
本実施形態の樹脂発泡体における添加剤(S)の含有率は、0質量%以上99質量%以下であればよく、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上又は30質量%以上であってもよい。本実施形態の樹脂発泡体における添加剤(S)の含有率は、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下又は40質量%以下であってもよい。
【0202】
[樹脂発泡体の製造方法]
次に、本実施形態の樹脂発泡体の製造方法について説明する。本実施形態の樹脂発泡体の製造方法は、ジエン単量体に由来する構造単位及びオレフィン単量体に由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの構造単位を含む原料重合体(P1)に、(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む単量体群を重合させ、0℃以下の第1ガラス転移温度及び120℃以上の第2ガラス転移温度を有する重合体(P)を得ることと、重合体(P)を含む樹脂組成物を発泡させることと、を含む。本発明は、その別の側面から、0℃以下の第1ガラス転移温度及び120℃以上の第2ガラス転移温度を有する重合体(P)を含む樹脂組成物を発泡させることを含む樹脂発泡体の製造方法を提供する。本明細書において、発泡剤により発泡させて樹脂発泡体を得るための樹脂組成物のことを「樹脂発泡体前駆体」と呼ぶことがある。本発明は、その別の側面から、発泡剤により発泡させて樹脂発泡体を得るための樹脂発泡体前駆体としての、0℃以下の第1ガラス転移温度及び120℃以上の第2ガラス転移温度を有する重合体(P)を含む樹脂組成物の使用を提供する。
【0203】
以下では、重合体(P)を含む樹脂発泡体の製造方法について説明する。ただし、本実施形態の製造方法では、重合体(P)に代えて、又は、重合体(P)と共に、重合体(Q1)及び重合体(Q2)が用いられてもよい。
【0204】
樹脂組成物(樹脂発泡体前駆体)は、例えば、重合体(P)、他の重合体(R)及び添加剤(S)を混合することによって作製できる。樹脂発泡体前駆体において、添加剤(S)は、上述した発泡剤を含んでいる。混合方法は、特に限定されず、公知の混合方法を利用できる。例えば、重合体(P)に対して、他の重合体(R)及び添加剤(S)を同時に、又は、順番に添加してもよい。重合体(P)に対して、他の重合体(R)及び添加剤(S)を順番に添加する場合、他の重合体(R)を先に添加してもよく、添加剤(S)を先に添加してもよい。他の重合体(R)に対して、重合体(P)及び添加剤(S)を同時に、又は、順番に添加してもよい。他の重合体(R)に対して、重合体(P)及び添加剤(S)を順番に添加する場合、重合体(P)を先に添加してもよく、添加剤(S)を先に添加してもよい。重合体(P)と添加剤(S)とをあらかじめ混合したものを他の重合体(R)に添加してもよく、他の重合体(R)と添加剤(S)とをあらかじめ混合したものを重合体(P)に添加してもよい。重合体(P)、他の重合体(R)及び添加剤(S)をオムニミキサーなどの混合機でプレブレンドすることによって得られた混合物を混練機により混練することによってこれらの混合を行ってもよい。混練機は、特に限定されない。混練機としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機などの押出機及び加圧ニーダーが挙げられる。さらに、重合体(P)又は他の重合体(R)の重合前において、重合体(P)又は他の重合体(R)のモノマーに添加剤(S)を添加してもよい。重合体(P)又は他の重合体(R)の重合中において、反応系に添加剤(S)を添加してもよい。重合体(P)又は他の重合体(R)の輸送中において、重合体(P)又は他の重合体(R)に添加剤(S)を添加してもよい。
【0205】
樹脂発泡体前駆体の形状は、特に限定されない。必要に応じて、ペレタイザーなどによって、樹脂発泡体前駆体をペレット化してもよく、樹脂発泡体前駆体に対して、予備加工を行ってもよい。例えば、重合体(P)、他の重合体(R)、及び、発泡剤以外の添加剤(S)を混合した樹脂に、発泡剤を添加してから溶融成形加工を行ってもよく、発泡剤を添加しながら溶融成形加工を行ってもよい。
【0206】
次に、樹脂発泡体前駆体を発泡させる。これにより、本実施形態の樹脂発泡体が得られる。樹脂発泡体前駆体を発泡させる方法は、特に限定されない。樹脂発泡体前駆体を発泡させる方法としては、ビーズ状の樹脂発泡体前駆体を加熱して発泡させるビーズ発泡法;樹脂発泡体前駆体のエマルジョンを機械発泡させる方法;オートクレーブ内で超臨界流体の酸素、超臨界流体の二酸化炭素などの流体が含浸された樹脂発泡体前駆体について、樹脂発泡体前駆体の周囲の圧力を解放する、又は、樹脂発泡体前駆体を加熱することによって気泡を発生させる発泡成形(バッチ発泡)法;シート状の樹脂発泡体前駆体を加熱プレスの金型内で発泡させるプレス発泡法;押出成形機又は射出成形機を用いた液相発泡法;発泡ブロー法などの公知の方法が挙げられる。樹脂発泡体前駆体を発泡させる方法、及び、樹脂発泡体前駆体の組成によって、得られる樹脂発泡体の構造、みかけ密度、及び、樹脂発泡体が有する気泡の平均直径などを調節することができる。
【0207】
重合体(P)を含む樹脂発泡体前駆体は、優れた発泡性を有している。そのため、本実施形態の製造方法では、従来の樹脂発泡体の製造条件よりも温和な条件下で、樹脂発泡体前駆体を十分に発泡させることができる。例えば、加熱条件下で樹脂発泡体前駆体を発泡させる場合、重合体(P)の第2ガラス転移温度よりも20℃高い温度によって、10倍以上の発泡倍率で樹脂発泡体前駆体を発泡させることができる。本実施形態の製造方法では、従来の樹脂発泡体の製造条件に比べて、使用する発泡剤の量を低減できる可能性もある。
【0208】
樹脂発泡体前駆体は、耐熱性及び機械的強度の両立に適している。樹脂発泡体前駆体の機械的強度は、例えば、引張試験によって評価することができる。引張試験は、JIS K7127:1999の規定に準拠して、次の方法で実施できる。まず、樹脂発泡体前駆体からフィルム形状(例えば、長さ80mm、幅20mm、厚さ40μm)の試験片を作製する。次に、試験片を引張試験機にセットし、引張試験を行う。試験片の引張速度は、例えば、1mm/分である。試験片の伸び量をビデオ式伸び計で測定する。試験片が破断したときの強度を樹脂発泡体前駆体の引張強度とみなす。試験前の試験片の長さに対する試験片が破断したときの試験片の長さの比率を樹脂発泡体前駆体の破断伸度とみなす。
【0209】
樹脂発泡体前駆体の引張強度は、例えば25MPa以上であり、好ましくは30MPa以上であり、より好ましくは35MPa以上である。樹脂発泡体前駆体の引張強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、100MPaである。
【0210】
樹脂発泡体前駆体の破断伸度は、例えば3%以上であり、好ましくは4%以上であり、より好ましくは5%以上であり、さらに好ましくは6%以上である。樹脂発泡体前駆体の破断伸度の上限値は、特に限定されないが、例えば、30%である。
【0211】
[樹脂発泡体の組成、構造、みかけ密度、発泡倍率、及び、樹脂発泡体が有する気泡の平均直径]
本実施形態の樹脂発泡体の組成は、特に限定されない。樹脂発泡体中のジエン及び/又はオレフィン由来の単位の含有率は特に限定されず、例えば0.5質量%以上であり、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が特に好ましく、また45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0212】
樹脂発泡体中の芳香族ビニル化合物単量体に由来する構造単位の含有率は特に限定されず、例えば0.5質量%以上であり、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0213】
樹脂発泡体中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は特に限定されない。樹脂発泡体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を主成分として含むことが好ましい。このとき、樹脂発泡体は、ポリスチレンの樹脂発泡体又はポリオレフィンの樹脂発泡体に比べて、良好な耐候性及び耐油性を有する。さらに、この樹脂発泡体の表面は、ポリオレフィンの樹脂発泡体に比べて硬度が高く、傷つきにくい。樹脂発泡体中の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有率は、例えば10質量%以上であり、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、また90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0214】
樹脂発泡体中の環構造単位の含有率は特に限定されない。樹脂発泡体中、環構造単位の含有率は、例えば、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。このように樹脂発泡体中の環構造単位の含有率を調整することにより、樹脂発泡体の耐熱性、成形性、機械的強度等をバランス良く高めることが容易になる。
【0215】
樹脂発泡体がラクトン環構造を有する場合、樹脂発泡体の耐熱性を高める観点から、樹脂発泡体中のラクトン環構造の含有率は、例えば1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。同様の観点から、樹脂発泡体が無水マレイン酸単量体に由来する構造及び/又はマレイミド単量体に由来する構造を有する場合、樹脂発泡体中のこれらの環構造の含有率は、例えば1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。樹脂発泡体がグルタルイミド構造及び/又は無水グルタル酸構造を有する場合、樹脂発泡体中のこれらの環構造の含有率は、例えば1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、また60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0216】
本実施形態の樹脂発泡体の構造は、特に限定されず、求められる特性及び用途に応じて適宜調整される。求められる特性とは、例えば、良好な圧縮永久歪み、圧縮回復性、耐折強度、耐衝撃強度、引張強度、保温・断熱性、制振性、防音性、シール性などである。樹脂発泡体は、連続気泡構造を有していてもよく、独立気泡構造を有していてもよく、その両方の構造を有していてもよい。連続気泡構造は、液体又は気体の透過性を必要とする用途(例えば、フィルターなど)、又は、柔軟性、防音性などを必要とする用途に適している。独立気泡構造は、剛性、断熱性などを必要とする用途に適している。本実施形態の樹脂発泡体において、重合体(P)は、例えば、樹脂発泡体の内部を連続して広がるマトリックス相を構成している。言い換えると、重合体(P)は、例えば、樹脂発泡体の主骨格を構成している。
【0217】
本実施形態の樹脂発泡体のみかけ密度は、未発泡の樹脂発泡体前駆体(ソリッド成形品)の密度よりも小さければ、特に限定されず、求められる特性及び用途に応じて適宜調整される。一例として、未発泡のアクリル系重合体の密度は、約1.2g/cm3である。「アクリル系重合体」は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を主成分として含む重合体を意味する。みかけ密度は、例えば、JIS K7222:2005に記載の方法によって測定できる。本実施形態の樹脂発泡体のみかけ密度は、1.1g/cm3以下であることが好ましい。本実施形態の樹脂発泡体のみかけ密度は、例えば、0.01~1.1g/cm3である。一般的に、樹脂発泡体のみかけ密度が小さいほど、樹脂発泡体は、柔軟になり、所望の形状を維持しにくくなる傾向がある。樹脂発泡体のみかけ密度が大きいほど、樹脂発泡体の柔軟性が低下する。そのため、みかけ密度が大きい樹脂発泡体を作製するときに、樹脂発泡体前駆体が成形型の内面に沿って発泡しにくくなることがある。本実施形態の樹脂発泡体のみかけ密度は、例えば、断熱性の壁材として樹脂発泡体を用いる場合には、約0.05~0.8g/cm3の範囲にあり、制振性の金属シェルの芯材として樹脂発泡体を用いる場合には、約0.03~0.5g/cm3の範囲にあり、繊維によって強化された複合発泡体として樹脂発泡体を使用する場合には、約0.05~0.5g/cm3の範囲にあり、発泡粘着シートの基材として樹脂発泡体を使用する場合には、約0.01~1.0g/cm3の範囲にある。樹脂発泡体のみかけ密度は、樹脂発泡体全体において均一であってもよく、樹脂発泡体内部で偏りがあってもよい。例えば、樹脂発泡体の重心付近と樹脂発泡体の他の部分とで、みかけ密度が異なっていてもよい。すなわち、樹脂発泡体の重心付近と樹脂発泡体の他の部分とで、みかけ密度に分布を持たせてもよい。樹脂発泡体のみかけ密度は、例えば、1.0g/cm3以下、0.9g/cm3以下、0.8g/cm3以下、0.7g/cm3以下、0.6g/cm3以下、0.5g/cm3以下、0.4g/cm3以下、0.3g/cm3以下、0.2g/cm3以下、0.1g/cm3以下、0.05g/cm3以下、0.03g/cm3以下、0.02g/cm3以下又は0.01g/cm3以下であってもよい。樹脂発泡体のみかけ密度は、例えば、0.001g/cm3以上、0.005g/cm3以上、0.01g/cm3以上、0.05g/cm3以上、0.1g/cm3以上、0.2g/cm3以上、0.3g/cm3以上、0.4g/cm3以上、0.5g/cm3以上、0.6g/cm3以上、0.7g/cm3以上、0.8g/cm3以上又は0.9g/cm3以上であってもよい。
【0218】
本実施形態の樹脂発泡体の発泡倍率は、特に限定されないが、好ましくは1.5倍以上であり、より好ましくは2.0倍以上であり、さらに好ましくは2.5倍以上であり、特に好ましくは3.0倍以上である。このとき、本実施形態の樹脂発泡体は、実用上十分な耐衝撃性と軽量性とを両立できる。本実施形態の樹脂発泡体の発泡倍率は、例えば、30倍以下である。樹脂発泡体の発泡倍率は、以下の式に基づいて算出できる。
発泡倍率=樹脂発泡体前駆体の密度(g/cm3)/樹脂発泡体のみかけ密度(g/cm3
【0219】
本実施形態の樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、特に限定されず、求められる特性及び用途に応じて適宜調整される。気泡の平均直径は、例えば、次のように特定することができる。まず、樹脂発泡体を切断する。樹脂発泡体の切断面を電子顕微鏡で観察する。得られた電子顕微鏡像において、気泡の面積を画像処理によって算出する。算出された面積と同じ面積を有する円の直径をその特定の気泡の直径とみなす。任意の個数(少なくとも50個)の気泡の直径をそれぞれ算出し、算出値の平均値を気泡の平均直径とみなす。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、例えば、断熱性及び柔軟性の観点から、1000μm以下、900μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下又は50μm以下である。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、10μm以上、50μm以上、100μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、500μm以上、600μm以上、700μm以上、800μm以上又は900μm以上であってもよい。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、例えば、硬度の観点から、100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下又は1μm以下である。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、80μm以上又は90μm以上であってもよい。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、例えば、ガラスの代替品などとして樹脂発泡体を用いる場合には、透明性の観点から、100nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、10nm以下、5nm以下、4nm以下、3nm以下、2nm以下又は1nm以下である。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、0.5nm以上、1nm以上、2nm以上、3nm以上、4nm以上、5nm以上、10nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上又は50nm以上であってもよい。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、例えば、すりガラスのように、光線透過性を有するとともに、光を散乱させる性質が求められる用途に樹脂発泡体を用いる場合には、1μm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、200nm以下又は100nm以下である。樹脂発泡体に含まれる気泡の平均直径は、50nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、500nm以上、600nm以上、700nm以上、800nm以上又は900nm以上であってもよい。
【0220】
[樹脂発泡体の特性]
本実施形態の樹脂発泡体は、第1ガラス転移温度及び第2ガラス転移温度を有するため、耐熱性及び機械的強度(耐衝撃性、靭性など)の両立に適している。本実施形態の樹脂発泡体は、例えば、第1ガラス転移温度及び第2ガラス転移温度を有する重合体(P)を含む。本発明は、その別の側面から、樹脂発泡体の耐熱性及び機械的強度を向上させる成分としての、0℃以下の第1ガラス転移温度及び120℃以上の第2ガラス転移温度を有する重合体(P)の使用を提供する。
【0221】
本実施形態の樹脂発泡体は、例えば、高温条件下、場合によっては高温多湿条件下での寸法安定性に優れている。そのため、本実施形態の樹脂発泡体が炭素繊維又は金属のシェルと組み合わされ、軽量化された芯材として用いられる場合、本実施形態の樹脂発泡体は、高温条件下又は高温多湿条件下でも、炭素繊維又は金属のシェルに対して実用上十分な接着性を有する。
【0222】
樹脂発泡体の寸法安定性は、例えば、樹脂発泡体の寸法変化率によって評価できる。樹脂発泡体の寸法変化率は、例えば、以下の方法によって測定することができる。まず、樹脂発泡体から直方体形状(例えば、縦30mm、横30mm、厚さ1.5mm)のサンプルを3枚作製する。次に、それぞれのサンプルの主面(最も広い面積を有する面)における四辺の長さ(La1、La2、La3、La4)を測定する。次に、3枚のサンプルを所定の条件下で保管する。所定の条件下で保管したあとに、それぞれのサンプルの主面における四辺の長さ(Lb1、Lb2、Lb3、Lb4)を再度測定する。次に、それぞれのサンプルごとに、各辺における寸法変化率(X1、X2、X3、X4)を以下の式に基づいて求める。ただし、以下の式において、nは、1~4の整数である。3枚のサンプルのそれぞれから得られた寸法変化率X1~X4に基づいて、各辺の寸法変化率の平均値(Y1、Y2、Y3、Y4)を算出する。平均値Y1~Y4の合計値を4で除した値を樹脂発泡体の寸法変化率とみなすことができる。
[寸法変化率Xn(%)]=|(Lbn-Lan)/Lan|×100
【0223】
110℃の熱風乾燥器内で24時間の保管条件において、本実施形態の樹脂発泡体の寸法変化率は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下であり、とりわけ好ましくは1%以下である。120℃の熱風乾燥器内で24時間の保管条件において、本実施形態の樹脂発泡体の寸法変化率は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下であり、とりわけ好ましくは1%以下である。85℃、相対湿度85%の恒温恒湿器内で120時間の保管条件において、本実施形態の樹脂発泡体の寸法変化率は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは2%以下であり、とりわけ好ましくは1%以下である。
【0224】
本実施形態の樹脂発泡体の機械的強度は、例えば、3点曲げ試験によって評価することができる。3点曲げ試験は、JIS K7171:2016の規定に準拠して、次の方法で実施できる。まず、樹脂発泡体から直方体形状(例えば、長さ80mm、幅20mm、厚さ4mm)の試験片を作製する。次に、試験片を曲げ試験機にセットし、曲げ試験を行う。曲げ試験のスパンは、例えば、60mmである。曲げ試験の試験速度は、例えば、2mm/minである。試験片が破壊されたときの強度を樹脂発泡体の曲げ強度とみなす。
【0225】
樹脂発泡体の曲げ強度は、例えば1.65MPa以上であり、好ましくは1.70MPa以上であり、より好ましくは1.80MPa以上である。重合体(P)の引張強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、10MPaである。
【0226】
樹脂発泡体の曲げひずみは、例えば1.5%以上であり、好ましくは2.0%以上であり、より好ましくは3.0%以上である。樹脂発泡体の曲げひずみの上限値は、特に限定されないが、例えば、10%である。曲げひずみの算出方法は、JIS K7171:2016に規定されている。
【0227】
本実施形態の樹脂発泡体の酸価は、耐湿性の観点から、好ましくは0.5mmol/g以下であり、より好ましくは0.4mmol/g以下であり、さらに好ましくは0.3mmol/g以下であり、特に好ましくは0.1mmol/g以下である。
【0228】
本実施形態の樹脂発泡体のヘイズ、全光線透過率及び明度L*は、特に限定されず、求められる特性及び用途に応じて適宜調整される。樹脂発泡体のヘイズ及び全光線透過率は、例えば、市販の濁度計などで測定することができる。樹脂発泡体の明度L*は、市販の色差計などで測定することができる。樹脂発泡体の透明性が高い場合、樹脂発泡体の全光線透過率は、JIS K7361-1:1997の規定に準拠した方法で測定できる。樹脂発泡体のヘイズは、JIS K7136:2000の規定に準拠した方法で測定できる。ヘイズは、全光線透過率に対する拡散透過率の比率である。全光線透過率及びヘイズのそれぞれは、例えば、D65光源の波長域で測定される。樹脂発泡体の明度L*は、L***表色系に基づいている。なお、ヘイズ、全光線透過率及び明度L*は、例えば、樹脂発泡体が平滑な表面を備えたシートの形状を有するときの値である。例えば、平滑な表面を備えた樹脂発泡体のヘイズの値は、樹脂発泡体の表面ではなく、樹脂発泡体の内部の気泡の状態に応じて変化する。透明性が重視される用途に樹脂発泡体を用いる場合、樹脂発泡体のヘイズは、例えば、10%以下、5%以下、3%以下、2%以下又は1%以下である。柔軟性又は断熱性が重視される用途に樹脂発泡体を用いる場合、樹脂発泡体のヘイズは、例えば、10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、80%以上又は90%以上である。透明性が重視される用途に樹脂発泡体を用いる場合、樹脂発泡体の全光線透過率は、例えば、1%以上、10%以上、30%以上、50%以上、70%以上、80%以上又は90%以上である。柔軟性又は断熱性が重視される用途に樹脂発泡体を用いる場合、樹脂発泡体の全光線透過率は、例えば、50%以下、10%以下、5%以下、3%以下、2%以下又は1%以下である。樹脂発泡体の明度L*は、例えば、50以下、40以下、30以下、20以下又は10以下である。樹脂発泡体の明度L*は、例えば、5以上である。本実施形態の樹脂発泡体は、例えば、低い全光線透過率を有するとともに、高いヘイズを有する。本実施形態の樹脂発泡体は、例えば、50%以下の全光線透過率を有するとともに、70%以上のヘイズを有する。本実施形態の樹脂発泡体の全光線透過率の下限値は、例えば、1%である。
【0229】
さらに、本実施形態の樹脂発泡体は、従来の樹脂発泡体に比べて、反発弾性率、硬度、剛性、圧縮永久歪みなどの特性が良好でありうる。反発弾性率は、例えば、JIS K6400-3:2011の規定に準拠した方法で測定できる。本実施形態の樹脂発泡体の反発弾性率は、特に限定されないが、衝撃吸収性の観点から、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下であり、特に好ましくは20%以下である。
【0230】
硬度(デュロメータ硬度)は、例えば、ASTM D2240の規定に準拠した方法で測定できる。デュロメータ硬度は、市販のD型硬度計を用いて測定することができる。本実施形態の樹脂発泡体のデュロメータ硬度は、特に限定されないが、好ましくは20以上であり、より好ましくは25以上であり、さらに好ましくは30以上であり、特に好ましくは35以上である。このとき、本実施形態の樹脂発泡体は、適度な耐衝撃性を有する。本実施形態の樹脂発泡体のデュロメータ硬度の上限値は、特に限定されない。本実施形態の樹脂発泡体のデュロメータ硬度は、80以下であってもよい。このとき、樹脂発泡体は、実用上十分な緩衝性を有している。
【0231】
剛性は、例えば、ショアA硬度(デュロメータA硬度)又はショアD硬度(デュロメータD硬度)の値の変化ΔHSから判断することができる。ショアA硬度又はショアD硬度は、JIS K6253-3:2012の規定に準拠した方法で測定できる。硬度の値の変化ΔHSは、硬度計の押針が試料に接触した直後における試料の硬度と、硬度計の押針が試料に接触してから15秒後における試料の硬度との差である。本実施形態の樹脂発泡体の硬度の値の変化ΔHSは、特に限定されないが、樹脂発泡体の変形を抑制する観点から、好ましくは35以下であり、より好ましくは30以下であり、さらに好ましくは25以下であり、特に好ましくは20以下であり、とりわけ好ましくは2以下である。
【0232】
圧縮永久歪みは、例えば、JIS K6262:2013の規定に準拠した方法で測定できる。本実施形態の樹脂発泡体の圧縮永久歪みは、特に限定されないが、好ましくは80%以下であり、より好ましくは70%以下であり、さらに好ましくは60%以下であり、特に好ましくは50%以下である。このとき、樹脂発泡体は、適度な形状回復性を有する。そのため、樹脂発泡体を繰り返し使用しても、樹脂発泡体の変形を抑制できる。
【0233】
本実施形態の樹脂発泡体は、その発泡倍率によっては、従来の樹脂発泡体に比べて、圧縮強度などの特性も良好でありうる。圧縮強度は、例えば、ASTM D1621の規定に準拠した方法で測定できる。
【0234】
本実施形態の樹脂発泡体は、緩衝材、保温・断熱材、制振材、防音材、シール材、パッキング材、建築部材、車両部材、航空・宇宙機部材などの各種用途に使用できる。一例において、厚さ10mm以上の断熱材が、0℃以下の第1ガラス転移温度及び120℃以上の第2ガラス転移温度を有する樹脂発泡体を備えている。他の例において、車両の構造に沿うように成形された車両部材が、0℃以下の第1ガラス転移温度及び120℃以上の第2ガラス転移温度を有する樹脂発泡体を備えている。さらに他の例において、航空機の構造に沿うように成形された航空機部材が、0℃以下の第1ガラス転移温度及び120℃以上の第2ガラス転移温度を有する樹脂発泡体を備えている。本実施形態の樹脂発泡体は、炭素繊維又は金属のシェルと組み合わされ、軽量化された芯材、耐熱性の粘着剤と組み合わされ、耐熱性、耐候性及び耐衝撃性を有する接合用粘着材などの用途にも使用できる。本実施形態の樹脂発泡体は、アクリル系重合体の特長である透明性及び耐候性に基づいて、高い光線透過率と保温・断熱性とを両立できることがあるため、拡散フィルムの機能を有する偏光子保護フィルムとしても使用できる。樹脂発泡体に含まれる気泡がナノサイズの独立気泡である場合、本実施形態の樹脂発泡体は、保温・断熱性が向上した透明又は透光性断熱ガラスの用途にも使用できる。
【0235】
本実施形態の樹脂発泡体は、典型的には、発泡プラスチックである。発泡プラスチックは、JIS K6900:1994に定義されているように、その塊全体にわたって分散している連続又は不連続の多数の小さな空洞の存在によって密度が減少しているプラスチックである。本実施形態の樹脂発泡体は、平滑な表面を備えたシートの形状を有していてもよい。このとき、樹脂発泡体の厚さは、50μm~500mmであってもよい。
【実施例
【0236】
以下に、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下では、特にことわりのない場合、「%」は「質量%」を示し、「部」は「質量部」を示す。
【0237】
実施例における各種物性の測定及び評価は、以下の方法で行った。
【0238】
[重量平均分子量]
重合体の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置及び測定条件は以下の通りである。
システム:東ソー株式会社製GPCシステム HLC-8220
測定側カラム構成
・ガードカラム:東ソー株式会社製、TSKguardcolumn SuperHZ-L
・分離カラム:東ソー株式会社製、TSKgel SuperHZM-M 2本直列接続
リファレンス側カラム構成
・リファレンスカラム:東ソー株式会社製、TSKgel SuperH-RC
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業株式会社製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
【0239】
[モノマー転化率の算出]
転化率は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製、装置名:GC-2014)を用いて残存モノマー量を測定することで求めた。
【0240】
[ガラス転移温度]
重合体のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121:1987の規定に準拠して始点法により求めた。具体的には、40℃以上で観測されるTg(高温側のTg)は、示差走査熱量計(株式会社リガク製、DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを25℃から毎分10℃の昇温速度で200℃まで昇温する操作を複数回繰り返すことで得られた安定したDSC曲線から求めた。リファレンスにはα-アルミナを用いた。
【0241】
40℃未満で観測されるTg(低温側のTg)は、示差走査熱量計(NETZSCH社製、DSC3500A)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを-100℃から毎分20℃の昇温速度で100℃まで昇温する操作を複数回繰り返すことで得られた安定したDSC曲線から求めた。
【0242】
[フィルムの作製]
次の方法によって、後述する実施例1-3及び比較例1で得られた樹脂組成物のペレットからフィルムを作製した。まず、手動式加熱プレス機(井元製作所製、IMC-180C型)を用いて、樹脂組成物を溶融プレス成形し、160±10μmの未延伸フィルムを作製した。得られた未延伸フィルムについては、逐次二軸延伸機(東洋精機製作所社製、X6-S)を用いて、重合体の高温側のTg(第2ガラス転移温度)よりも20℃高い温度にて300%/分の延伸速度で縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)の順にそれぞれ延伸倍率が2.0倍となるように逐次二軸延伸を行った。成形体を冷却することにより、厚さ約40μmの延伸フィルムを得た。
【0243】
[フィルムの厚さ]
フィルムの厚さは、デジマチックマイクロメーター(ミツトヨ社製)を用いて測定した。
【0244】
[引張試験]
重合体の引張強度及び破断伸度は、JIS K7127:1999の規定に準拠して、引張試験機(島津製作所社製オートグラフ「AGS-X 1kN」)を用いて測定した。まず、上記の方法で得たフィルムを切り出すことによって、長さ80mm、幅20mm、厚さ40μmのフィルム形状の試験片を作製した。次に、試験片を引張試験機にセットし、引張試験を行った。試験片の引張方向は、フィルムのMD方向であった。試験片の引張速度は、1mm/分であった。試験片の伸び量は、ビデオ式伸び計により25mm間隔のマーク間で測定した。
【0245】
[樹脂発泡体の作製]
次の方法によって、後述する実施例1-3及び比較例1で得られた樹脂組成物のペレットから樹脂発泡体を作製した。まず、ペレットをオートクレーブに入れ、オートクレーブ内にCO2を供給した。これによって、CO2がペレットに含侵した。CO2の含浸は、20℃の温度で24時間、1.4MPaの圧力下で行った。次に、オートクレーブ内を急速に減圧し、ペレットを取り出した。次に、オイルバスによって、ペレットに含まれる重合体の高温側のTg(第2ガラス転移温度)よりも20℃高い温度で30秒間、ペレットを加熱した。これにより、ペレットが発泡した。ペレットを加熱した後に、1分間水中で冷却することによって樹脂発泡体を得た。
【0246】
[表面状態]
樹脂発泡体の表面状態は、樹脂発泡体の表面を目視で観察した結果、及び、当該表面の手触りの結果により、以下の基準に基づいて評価した。
良好:樹脂発泡体の表面に異常気泡又は破泡がほとんどなく、かつ、表面のざらつきがほとんど生じておらず、美麗なスキン層が形成されている。
不良:樹脂発泡体の表面に異常気泡又は破泡が目視で確認でき、粗悪なスキン層が形成されている。
【0247】
[みかけ密度]
樹脂発泡体のみかけ密度は、JIS K7222:2005の規定に準拠して求めた。詳細には、樹脂発泡体のみかけ密度は、以下の方法で算出した。まず、樹脂発泡体のセル構造を変えないように、直方体状にサンプルを切り出した。次に、切り出したサンプルについて、ノギスを用いて、各辺の長さを測定した。さらに、サンプルの重量(g)を精密天秤で測定した。得られた測定値に基づいて、以下の式により、樹脂発泡体のみかけ密度を算出した。
みかけ密度(g/cm3)=樹脂発泡体の重量(g)/樹脂発泡体の体積(cm3
【0248】
[発泡倍率]
樹脂発泡体の発泡倍率は、以下の式に基づいて算出した。一例として、樹脂発泡体前駆体がアクリル系重合体からなるとき、樹脂発泡体前駆体の密度は、約1.2g/cm3である。
発泡倍率=樹脂発泡体前駆体の密度(g/cm3)/樹脂発泡体のみかけ密度(g/c
3
【0249】
[3点曲げ試験]
3点曲げ試験は、JIS K7171:2016の規定に準拠して、次の方法で実施した。まず、後述する実施例1-3及び比較例1で得られた樹脂組成物のペレットから3点曲げ試験用の樹脂発泡体を作製した。CO2が含浸したペレット1.2gを金型内に充填し、オイルバスによって金型内のペレットを加熱した。金型のサイズは長さ80mm、幅20mm、厚さ4mmであった。このとき、3点曲げ試験用の樹脂発泡体の発泡倍率は約6.4倍であった。実施例1-3及び比較例1の樹脂組成物のそれぞれについて、適宜、発泡条件を調節し、長さ80mm、幅20mm、厚さ4mmの直方体形状の試験片を作製した。次に、試験片を曲げ試験機(インストロン万能試験機)にセットし、スパン60mm、試験速度2mm/minで曲げ試験を行った。
【0250】
[ヘイズ]
樹脂発泡体のヘイズ(全ヘイズ)は、JIS K7136の規定に準拠して、濁度計(日本電色工業製、NDH5000)を用いて、厚さ4mmの試験片を測定した。
【0251】
[全光線透過率]
樹脂発泡体の全光線透過率は、JIS K7361-1の規定に準拠して、濁度計(日本電色工業製、NDH5000)を用いて、厚さ4mmの試験片を測定した。
【0252】
[寸法安定性]
発泡成形体を作製した後、樹脂発泡体を23℃60%RHの恒温恒湿器内に24時間静置した。次に、樹脂発泡体から縦20mm、横20mm、厚さ4mmの直方体形状のサンプルを3枚作製した。それぞれのサンプルの主面における四辺の長さ(La1、La2、La3、La4)をデジタルノギスで測定した。次に、3枚のサンプルを所定の条件下で保管した。所定の条件は、以下の条件のうちのいずれか1つである。
110℃24HR:110℃の熱風乾燥器内に24時間保管
120℃24HR:120℃の熱風乾燥器内に24時間保管
85℃85%RH120HR:85℃、相対湿度85%の恒温恒湿器内に120時間保管
【0253】
次に、3枚のサンプルを23℃60%RHの恒温恒湿器内に24時間静置した。次に、それぞれのサンプルの主面における四辺の長さ(Lb1、Lb2、Lb3、Lb4)をデジタルノギスで再度測定した。それぞれのサンプルごとに、各辺における寸法変化率(X1、X2、X3、X4)を以下の式に基づいて求めた。ただし、以下の式において、nは、1~4の整数である。
[寸法変化率Xn(%)]=|(Lbn-Lan)/Lan|×100
【0254】
3枚のサンプルのそれぞれから得られた寸法変化率X1~X4に基づいて、各辺の寸法変化率の平均値(Y1、Y2、Y3、Y4)を算出した。平均値Y1~Y4の合計値を4で除した値を樹脂発泡体の寸法変化率とみなした。樹脂発泡体の寸法安定性を以下の基準により評価した。
○:樹脂発泡体の寸法変化率が2%以下である。
△:樹脂発泡体の寸法変化率が2%を超え5%以下である。
×:樹脂発泡体の寸法変化率が5%を超える。
【0255】
<実施例1>
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応器に、SEBSトリブロック共重合体(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体)25部、メタクリル酸メチル(MMA)40.5部、シクロヘキシルマレイミド(CMI)26.2部、n-ドデシルメルカプタン(nDM)0.03部、重合溶媒としてトルエン100部を仕込んだ。SEBSトリブロック共重合体としては、Kraton社製のA1536(オレフィン性二重結合量0.10mmol/g、屈折率1.519)25部を用いた。反応器内に窒素を通じつつ、内容物を105℃まで昇温させた。その後、開始剤としてt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ社製、カヤカルボン(登録商標)Bic75)0.04部を反応器内に加えた。次に、スチレン(St)8.3部を3時間かけて一定速度で反応器内に滴下するとともに、1部のトルエンに希釈した0.15部のt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを4時間かけて一定速度で反応器内に滴下しながら105~110℃で溶液重合を行った。スチレン及びt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートの滴下終了後、さらに3時間熟成を行った。これにより、MMAとCMIとStから重合形成されたアクリル系共重合体と、当該共重合体鎖がSEBSトリブロック共重合体鎖のジエン/オレフィン由来の単位に結合したグラフト共重合体とを含む樹脂組成物が得られた。重合反応液中の残存単量体量より算出したMMAの転化率は96.5%であった。CMIの転化率は99.5%であった。Stの転化率は100%であった。
【0256】
次に、得られた重合反応液を、リアベント数が1個、フォアベント数が2個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に樹脂換算で600g/hの処理速度で導入し、この押出機内で脱揮を行い、押し出すことにより、樹脂組成物のペレットを得た。なお、二軸押出機の運転条件は、バレル温度260℃、回転数300rpm、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)であった。
【0257】
<実施例2>
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応器に、SEBSトリブロック共重合体として旭化成社製のタフテックP1083を10部、MMA55.8部、フェニルマレイミド(PMI)29.7部、nDM0.05部、重合溶媒としてトルエン110部を仕込んだ。反応器内に窒素を通じつつ、内容物を100℃まで昇温させた。その後、開始剤としてBic75を0.07部加えた。次に、St4.5部を4時間かけて一定速度で反応器内に滴下するとともに、5部のトルエンに希釈した0.07部のBIC75を4時間かけて一定速度で滴下しながら100~110℃で溶液重合を行った。St及びBIC75の滴下終了後、さらに3時間熟成を行った。これにより、MMAとPMIとStから重合形成されたアクリル系共重合体と、当該共重合体鎖がSEBSトリブロック共重合体鎖のジエン/オレフィン由来の単位に結合したグラフト共重合体とを含む樹脂組成物が得られた。重合反応液中の残存単量体量より算出したMMAの転化率は96.4%であった。PMIの転化率は98.7%であった。Stの転化率は98.7%であった。
【0258】
次に、得られた重合反応液を、リアベント数が1個、フォアベント数が2個のベントタイプスクリュー二軸押出機(孔径:15mm、L/D:45)内に樹脂換算で600g/hの処理速度で導入し、この押出機内で脱揮を行い、押し出すことにより、樹脂組成物のペレットを得た。なお、二軸押出機の運転条件は、バレル温度300℃、回転数300rpm、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)であった。
【0259】
<実施例3>
タフテックP1083に代えて、旭化成社製のタフテックH1052を用いたこと以外は、実施例2と同様にして重合反応を行った。これにより、MMAとPMIとStから重合形成されたアクリル系共重合体と、当該共重合体鎖がSEBSトリブロック共重合体鎖のジエン/オレフィン由来の単位に結合したグラフト共重合体とを含む樹脂組成物が得られた。重合反応液中の残存単量体量より算出したMMAの転化率は95.5%であった。PMIの転化率は97.7%であった。Stの転化率は99.9%であった。樹脂組成物のペレットも実施例2と同様にして得た。
【0260】
<比較例1>
最初に反応器に仕込む原料として、MMA62部及びPMI33部を用いたこと、並びに、滴下により加えるStの量を5部としたこと以外は、実施例2と同様にして重合反応を行った。これにより、MMAとPMIとStから重合形成されたアクリル系共重合体を含む樹脂組成物が得られた。重合反応液中の残存単量体量より算出したMMAの転化率は96.4%であった。PMIの転化率は98.7%であった。Stの転化率は98.7%であった。樹脂組成物のペレットも実施例2と同様にして得た。なお、二軸押出機の運転条件は、バレル温度285℃、回転数300rpm、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)であった。
【0261】
<比較例2>
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を備えた反応器に、SEBSトリブロック共重合体として旭化成社製のタフテックH1052を10部、市販のメタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体(住友化学社製のスミペックスMM)を90部、重合溶媒としてトルエン100部を仕込んだ。内容物を100℃まで昇温させ、内容物が溶解するまで撹拌した。これにより、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体と、SEBSトリブロック共重合体を含む樹脂組成物が得られた。樹脂組成物のペレットも実施例2と同様にして得た。なお、二軸押出機の運転条件は、バレル温度240℃、回転数300rpm、減圧度13.3~400hPa(10~300mmHg)であった。
【0262】
【表1】
【0263】
実施例1-3の樹脂発泡体の発泡倍率は、比較例1の樹脂発泡体に比べて、2倍程度高かった。このことから、実施例1-3の樹脂発泡体に含まれる重合体は、発泡性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0264】
本実施形態の樹脂発泡体は、緩衝材、保温・断熱材、制振材、防音材、シール材、パッキング材、建築部材、車両部材、航空・宇宙機部材などの各種用途に使用できる。本実施形態の樹脂発泡体は、炭素繊維又は金属のシェルと組み合わされ、軽量化された芯材、耐熱性の粘着剤と組み合わされ、耐熱性、耐候性及び耐衝撃性を有する接合用粘着材などの用途にも使用できる。本実施形態の樹脂発泡体は、アクリル系重合体の特長である透明性及び耐候性に基づいて、高い光線透過率と保温・断熱性とを両立できることがあるため、拡散フィルムの機能を有する偏光子保護フィルムとしても使用できる。樹脂発泡体に含まれる気泡がナノサイズの独立気泡である場合、本実施形態の樹脂発泡体は、保温・断熱性が向上した透明断熱ガラスの用途にも使用できる。