(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】直流遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 33/59 20060101AFI20230123BHJP
H01H 9/54 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
H01H33/59 F
H01H9/54 A
H01H33/59 B
(21)【出願番号】P 2021561103
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2019046772
(87)【国際公開番号】W WO2021106191
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 優平
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健作
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-197114(JP,A)
【文献】特開2009-181908(JP,A)
【文献】特開昭56-152125(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056274(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/28-33/59
H01H 9/54- 9/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端が第1直流送電線路に接続され、第2端が第2直流送電線路に接続される機械式遮断器と、
避雷器と、
第1スイッチと、第2スイッチと、リアクトルと、コンデンサと、抵抗とを有する転流回路とを備え、
前記転流回路と、前記避雷器と、前記機械式遮断器とは、前記第1直流送電線路と、前記第2直流送電線路との間に互いに並列に接続されており、
前記第1スイッチと、前記コンデンサと、前記リアクトルとは、前記第1直流送電線路と、前記第2直流送電線路との間に直列に接続されており、
前記第2スイッチと前記抵抗とが直列に接続されたものが、前記第1スイッチと並列に設けられている、
直流遮断器。
【請求項2】
前記第1スイッチの開閉状態を制御する制御部を更に備え、
前記第1スイッチは、固定された一対の電極を有する非接触方式スイッチであり、
前記制御部は、前記電極間の絶縁性能を開状態に比して下げて絶縁破壊させることで前記非接触方式スイッチを閉状態に制御する、
請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項3】
前記第1スイッチの開閉状態を制御する制御部を更に備え、
前記第1スイッチは、一対の電極を有する接触方式スイッチであり、
前記制御部は、前記電極のうち少なくとも一方を移動させて前記電極間の距離を近づけ、前記電極間の絶縁性能を開状態よりも下げて絶縁破壊させることで前記接触方式スイッチを閉状態に制御する、
請求項1に記載の直流遮断器。
【請求項4】
前記制御部は、前記電極のうち少なくとも一方を移動させたときに前記電極間を接触させず、所定の距離だけ離れた位置まで移動させる、
請求項3に記載の直流遮断器。
【請求項5】
前記コンデンサは、前記第1直流送電線路、又は前記第2直流送電線路に供給される直流系統の系統電圧が印加されることで充電される、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の直流遮断器。
【請求項6】
前記コンデンサは、他の装置から供給される電圧であって、前記第1直流送電線路、又は前記第2直流送電線路に供給される直流系統の系統電圧と同等の電圧が印加されることで充電される、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の直流遮断器。
【請求項7】
前記第1スイッチの開閉状態を制御する制御部を更に備え、
前記リアクトルと、前記コンデンサとは、前記制御部によって前記第1スイッチが閉状態に制御されることに伴い、前記第1直流送電線路、又は前記第2直流送電線路に供給される直流系統の系統電流を共振周波数によって共振させて前記系統電流にゼロ点を生成する、
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の直流遮断器。
【請求項8】
前記機械式遮断器、前記第1スイッチ、及び前記第2スイッチの開閉状態を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、
前記機械式遮断器を開状態にして前記第1端と前記第2端とを電気的に遮断する制御を開始し、
前記機械式遮断器を開状態にする制御を開始した後、前記第2スイッチを閉状態に制御し、
前記第2スイッチを閉状態に制御した後、前記第1スイッチを閉状態に制御し、
前記第1スイッチを閉状態に制御した後に、前記第1直流送電線路、又は前記第2直流送電線路に供給される直流系統の系統電流を、前記リアクトルと前記コンデンサとが共振周波数によって共振させることに伴い生じたゼロ点において、前記機械式遮断器の前記第1端と前記第2端とを電気的に遮断し、
前記コンデンサの電圧が、前記直流系統の系統電圧と同等の電圧となった場合に、前記第2スイッチを開状態に制御し、
前記第2スイッチを開状態に制御した後、前記第1スイッチを開状態に制御し、
前記避雷器は、前記機械式遮断器が電気的に遮断されたことに伴い前記第1端と前記第2端との間に生じる電圧を制限する、
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の直流遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、直流遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の直流送電線が格子状に構成された直流送電網による電力の送電が行われている。直流送電網においては事故が発生した場合、特定の送電線のみを遮断し、残りの送電線によって電力の送電を継続する場合がある。これに関して、直流送電線路に流れる電流を遮断する直流遮断装器に関する技術が知られている。
【0003】
ところで、直流遮断装器には、半導体遮断器を用いる半導体遮断方式と、機械遮断器を用いる機械遮断方式と、半導体遮断器と機械遮断器との両方を用いるハイブリッド遮断方式とが存在する。機械遮断方式の直流遮断装器は、転流スイッチと転流コンデンサと転流リアクトルとを備える転流回路を閉回路にし、直流送電線路に流れる電流に共振電流を発生させてゼロ点を生成することにより、機械遮断器を遮断させ、直流送電線路に流れる電流を遮断する。
【0004】
また、転流スイッチには、電極の片方または両方を機械的に動かすことにより、電極間を電気的、機械的に導通状態にする機械方式と、サイリスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子を用いて導通状態にする半導体方式と、固定された電極間に外的要因を加えることにより、絶縁性能を下げることで電気的に導通状態にする放電方式とが存在する。更に、機械方式の転流スイッチには、一対の電極を有し、電極のうち少なくとも一方を移動させて電極間の距離を近づけ、電極間の絶縁性能を開状態よりも下げて絶縁破壊させることで閉状態にさせる接触方式と、固定された一対の電極を有し、電極間の絶縁性能を開状態よりも下げて絶縁破壊させることで閉状態にさせる非接触方式とが存在する。
【0005】
ここで、機械方式の転流スイッチは、閉状態において、電極間の絶縁破壊によってアークが発生し、電気的な導通状態になる。したがって、機械方式の転流スイッチは、絶縁破壊によってサージを発生させて周辺回路素子や他の周辺機器が誤動作、又は故障する可能性があるという課題があった。
【0006】
また、直流遮断装器は、再閉路の責務が求められる場合がある。ハイブリッド遮断方式や半導体遮断方式の直流遮断装器では、事故電流を遮断した際の回復電圧にて転流コンデンサが充電されるので、再閉路が行われた以降も、機械遮断器を遮断させ、直流送電線路に流れる電流を遮断することが可能であった。
【0007】
これに対して、機械方式の転流スイッチを用いる直流遮断装器は、転流スイッチの電極間の絶縁性能が回復することによって電極間を流れる電流が遮断され、または電流ゼロ点にて消弧されるため、転流コンデンサの充電状態が適切でないまま、電気的な導通状態を終えてしまう場合があった。この場合、転流コンデンサは、十分に充電されない、又は所定の電圧以上に充電され、適切に再閉路ができないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、サージを抑制しつつ、適切に再閉路を行うことができる直流遮断器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の直流遮断器は、機械式遮断器と、避雷器と、転流回路とを持つ。機械式遮断器は、第1端が第1直流送電線路に接続され、第2端が第2直流送電線路に接続される。転流回路は、第1スイッチと、第2スイッチと、リアクトルと、コンデンサと、抵抗とを有する。前記転流回路と、前記避雷器と、前記機械式遮断器とは、前記第1直流送電線路と、前記第2直流送電線路との間に互いに並列に接続される。前記第1スイッチと、前記コンデンサと、前記リアクトルとは、前記第1直流送電線路と、前記第2直流送電線路との間に直列に接続される。前記第2スイッチと前記抵抗とが直列に接続されたものが、前記第1スイッチと並列に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の直流遮断器1の構成の一例を示す図である。
【
図2】直流系統に発生した異常を模式的に示す図である。
【
図3】機械式遮断器10が機械的開状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。
【
図4】サージスイッチ80が閉状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。
【
図5】転流スイッチ50が閉状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。
【
図6】機械式遮断器10が電気的に開状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。
【
図7】避雷器15が動作した直流遮断器1の状態を示す図である。
【
図8】転流コンデンサ60を充電する状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。
【
図9】転流スイッチ50が開状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。
【
図10】サージスイッチ80が開状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。
【
図11】第1断路器20、及び第2断路器30が開状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。
【
図12】直流遮断器1に係る経時変化の一例を示すグラフである。
【
図13】直流遮断器1の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の直流遮断器を、図面を参照して説明する。
【0013】
(実施形態)
[直流遮断器1の構成]
図1は、実施形態の直流遮断器1の構成の一例を示す図である。直流遮断器1は、直流系統を構成する直流送電線路のうち、第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とを電気的に導通させ、または遮断する装置である。以降の説明において、第1直流送電線路LN1における直流電圧を第1電圧VDC1と記載し、第2直流送電線路LN2における直流電圧を第2電圧VDC2と記載する。第1電圧VDC1や第2電圧VDC2は、例えば、数十~数百[kV]程度の電圧である。例えば、第1直流送電線路LN1側には、送電設備が存在し、第2直流送電線路LN2側には、需要家が存在する。この場合、通常、第1電圧VDC1が第2電圧VDC2よりも大きい電圧となる。したがって、通常であれば第1直流送電線路LN1から第2直流送電線路LN2の方向に直流系統電流が流れる。
【0014】
直流遮断器1は、例えば、一以上の機械式遮断器10と、一以上の断路器と、避雷器15と、転流回路40と、制御部100を備える。本実施形態では、直流遮断器1が、第1断路器20と第2断路器30との2つの断路器を備える場合について説明する。以降の説明において、第1断路器20と、第2断路器30とを区別しない場合、単に「断路器」と記載する。転流回路40は、例えば、転流スイッチ50と、転流コンデンサ60と、転流リアクトル70と、サージスイッチ80と、サージ抵抗90とを備える。
【0015】
制御部100は、例えば、直流系統の異常を検出する検出装置(不図示)から第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とを電気的に遮断させることを示す信号(以下、遮断指示信号)を受信する。制御部100は、遮断指示信号を受信した場合、第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とを電気的に遮断するように、機械式遮断器10、第1断路器20、第2断路器30、転流スイッチ50、及びサージスイッチ80の開閉状態を制御する。直流系統の異常とは、例えば、直流送電線路に生じる地絡や短絡等の事故によって生じる異常である。
【0016】
機械式遮断器10は、第1端子10aと、第2端子10bとを備える。第1断路器20は、第1端子20aと、第2端子20bとを備える。第2断路器30は、第1端子30aと、第2端子30bとを備える。転流回路40は、第1端子40aと、第2端子40bとを備える。転流スイッチ50は、第1端子50aと、第2端子50bとを備える。サージスイッチ80は、第1端子80aと、第2端子80bとを備える。
【0017】
第1断路器20と、機械式遮断器10と、第2断路器30とは、第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2との間に、記載の順に直列に接続される。具体的には、第1断路器20の第1端子10aは、第1直流送電線路LN1に接続され、第1断路器20の第2端子20bと、機械式遮断器10の第1端子10aとが接続され、機械式遮断器10の第2端子10bと第2断路器30の第1端子30aとが接続され、第2断路器30の第2端子30bは、第2直流送電線路LN2に接続される。
【0018】
避雷器15と、転流回路40とは、機械式遮断器10に互いに並列に接続される。具体的には、機械式遮断器10の第1端子10aと、避雷器15の一端と、転流回路40の第1端子40aとが互いに接続され、機械式遮断器10の第2端子10bと、避雷器15の他端と、転流回路40の第2端子40bとが互いに接続される。
【0019】
転流回路40において、転流スイッチ50と、転流コンデンサ60と、転流リアクトル70とは、記載の順に第1端子40aと、第2端子40bとの間に直列に接続される。具体的には、第1端子40aと、転流スイッチ50の第1端子50aとが接続され、転流スイッチ50の第2端子50bと、転流コンデンサ60の一端(図示では、正極端子)とが接続され、転流コンデンサ60の他端(図示では、負極端子)と、転流リアクトル70の一端とが接続され、転流リアクトル70の他端と第2端子40bとが接続される。また、転流回路40において、サージスイッチ80と、サージ抵抗90とは、記載の順に直列に接続され、且つ転流スイッチ50に並列に接続される。具体的には、サージスイッチ80の第1端子80aは、転流スイッチ50の第1端子50aと接続され、サージスイッチ80の第2端子80bは、サージ抵抗90の一端に接続され、サージ抵抗90の他端は、転流スイッチ50の第2端子50bに接続される。
【0020】
なお、上述では、転流回路40が、第1端子40a、及び第2端子40bを備える場合について説明したが、これに限られず、転流回路40は、第1端子40a、及び第2端子40bを備えていなくてもよい。この場合、上述した構成において、第1端子40a、及び第2端子40bを介して接続されている各部は、直接接続される。以下、説明の便宜上、転流回路40が、第1端子40a、及び第2端子40bを備えるものとして説明する。
【0021】
避雷器15は、機械式遮断器10が閉状態に制御されたことにより発生するサージ電圧を吸収する。避雷器15の制限電圧は、直流系統に事故等の異常が発生していない状態における第1電圧VDC1や第2電圧VDC2を基準とした場合、1.5[p.u]程度の大きさである。
【0022】
転流スイッチ50は、例えば、機械式スイッチである。具体的には、転流スイッチ50は、一対の電極を有し、制御部100の制御に基づいて電極のうち少なくとも一方を移動させて電極間の距離を近づけ、電極間の絶縁性能を開状態よりも下げて絶縁破壊させることで閉状態にさせる接触方式スイッチである。転流スイッチ50は、「第1スイッチ」の一例である。
【0023】
なお、転流スイッチ50は、非接触方式スイッチであってもよい。この場合、転流スイッチ50は、固定された一対の電極を有し、制御部100の制御に基づいて電極間の絶縁性能を開状態よりも下げて絶縁破壊させることで閉状態にさせる。
【0024】
転流コンデンサ60は、例えば、初期状態において不図示の充電装置によって、正極端子と負極端子との間に生じる電圧(以下、コンデンサ電圧)が、直流系統に事故等の異常が発生していない状態における第1電圧VDC1や第2電圧VDC2と一致、又は略一致するように充電される。初期状態とは、例えば、直流遮断器1の設置時や、直流遮断器1の運用開始時である。充電装置は、例えば、直流系統の系統電圧を印加することによって転流コンデンサ60を充電してもよく、直流系統の系統電圧以外の外部電源によって転流コンデンサ60を充電してもよい。転流コンデンサ60は、例えば、数~数十[μF]程度の充電容量を有するコンデンサである。
【0025】
転流コンデンサ60と、転流リアクトル70とは、転流スイッチ50が閉状態に制御されることに伴い、LC共振回路を構成し、転流コンデンサ60のコンデンサ成分と、転流リアクトル70のリアクトル成分とに応じた共振周波数によって直流系統電流を共振させ、直流系統電流が0[A]となるタイミングを生成する。以下、直流系統電流が0[A]となるタイミングを生成することを、「ゼロ点を生成する」とも記載する。転流リアクトル70は、後述する時刻tg~thまでの再閉路時間が、所定の再閉路時間を確保しつつ、予め定められた再閉路時間の最大値を超えない範囲となるように、転流コンデンサ60の容量に応じた値が設定される。
【0026】
サージスイッチ80は、例えば、機械式スイッチである。サージスイッチ80は、「第2スイッチ」の一例である。
【0027】
サージ抵抗90は、サージスイッチ80が閉状態に制御された状態において、転流スイッチ50が絶縁破壊によって閉状態に制御されることに伴い発生するサージを低減する。サージ抵抗90は、例えば、数百~数k[Ω]程度の抵抗値の抵抗である。
【0028】
以下、
図2~
図11を参照して、直流遮断器1の各状態を説明する。また、
図12を参照して、直流遮断器1の各部の開閉状態の経時的変化、又は各部の電気的な経時変化を説明する。
図12は、直流遮断器1に係る経時変化の一例を示すグラフである。
図12において、横軸は、時間を示す。波形W10は、機械式遮断器10の開閉状態を示し、波形W12は、サージスイッチ80の開閉状態を示し、波形W14は、転流スイッチ50の開閉状態を示し、波形W16は、断路器の開閉状態を示す。波形W10~W16において、「C」は、閉状態(Close)を表し、「O」は、開状態(Open)を表す。
【0029】
また、波形W20~W26は、直流遮断器1に係る電流の経時変化を示す波形であり、波形W20~W26の縦軸は、電流の大きさを示す。波形W20~W26において、第1直流送電線路LN1から第2直流送電線路LN2の方向に流れる直流系統電流の値を正の値で示し、第2直流送電線路LN2から第1直流送電線路LN1の方向に流れる直流系統電流の値を負の値で示すものとする。
【0030】
波形W20は、直流系電流の経時変化を示す波形である。波形W22は、機械式遮断器10に流れる電流の経時変化を示す波形である。波形W24は、転流コンデンサ60に流れる電流の経時変化を示す波形である。波形W26は、避雷器15に流れる電流の経時変化を示す波形である。
【0031】
波形W30,W32は、直流遮断器1に係る電圧の経時変化を示す波形であり、波形W30,W32の縦軸は、電圧の大きさを示す。波形W30は、機械式遮断器10の電極間にかかる電圧の経時変化を示す波形である。波形W34は、コンデンサ電圧の経時変化を示す波形である。
【0032】
[導通状態から異常発生まで]
図1に示す通り、直流遮断器1によって第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とが電気的に導通されている状態(以下、導通状態)において、制御部100は、各部を以下のような状態に制御する。
図12において導通状態とは、時刻t0~taの間である。
・機械式遮断器10:閉状態
・避雷器15:停止状態
・第1断路器20:閉状態
・第2断路器30:閉状態
・転流スイッチ50:開状態
・サージスイッチ80:開状態
・転流コンデンサ60:充電された状態
【0033】
図2は、直流系統に発生した異常を模式的に示す図である。
図2において、第2直流送電線路LN2には、地絡事故が発生し、第2電圧VDC2が接地電位となっている。
図12に示す通り、地絡事故は、時刻taに発生する。このため、波形W20~W22が示す通り、直流系統電流、及び機械式遮断器10に流れる電流は、時刻t0から時刻taまでの間、所定の値を保持し、時刻taから転流回路40が動作するまで(後述する時刻tdまで)の間、上昇する。
【0034】
[異常発生後]
図3は、機械式遮断器10が機械的開状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。検出装置は、直流系統に異常が発生することに伴い、遮断指示信号を直流遮断器1に送信する。制御部100は、時刻tbにおいて検出装置から遮断指示信号を受信し、機械式遮断器10を開状態に制御する。この時の直流遮断器1の各部の状態は、以下のとおりである。
・機械式遮断器10:機械的開状態
・避雷器15:停止状態
・第1断路器20:閉状態
・第2断路器30:閉状態
・転流スイッチ50:開状態
・サージスイッチ80:開状態
・転流コンデンサ60:充電された状態
【0035】
図12の波形W10が示す通り、機械式遮断器10は、時刻tbにおいて閉状態に制御され、電極間が物理的に離される。ただし、機械式遮断器10は、電極間が物理的に離されても、電極間にアークが生じるため、電気的には遮断されない(つまり、機械的開状態となる)。したがって、波形W20~W22が示す通り、直流系統電流、及び機械式遮断器10に流れる電流が時刻tb~tcの間も、上昇する。
【0036】
[サージ抑制]
図4は、サージスイッチ80が閉状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。制御部100は、転流スイッチ50を閉状態にすることに伴うサージを低減させるため、時刻tcにおいて、サージスイッチ80を閉状態に制御する(
図12参照)。この時の直流遮断器1の各部の状態は、以下のとおりである。
・機械式遮断器10:機械的開状態
・避雷器15:停止状態
・第1断路器20:閉状態
・第2断路器30:閉状態
・転流スイッチ50:開状態
・サージスイッチ80:閉状態
・転流コンデンサ60:わずかに放電を開始する状態
【0037】
図4において、サージスイッチ80は、制御部100によって機械的に閉状態に制御されて電極間が接する以前に、電極間で絶縁破壊を起こすことによってアークが発生して、電気的に導通状態となる。したがって、サージスイッチ80が閉状態に制御されることによりサージが発生するが、このサージは、サージ抵抗90により抑制される。また、サージスイッチ80が閉状態に制御されることに伴い、直流遮断器1内では、機械式遮断器10、転流リアクトル70、転流コンデンサ60、サージ抵抗90、及びサージスイッチ80のループに、予め充電されていた転流コンデンサ60のコンデンサ電圧と、サージ抵抗90と、転流リアクトル70とが作用し、微小な転流電流L3が流れ始める。
【0038】
この微小の転流電流L3が流れることによって、転流コンデンサ60が放電されるため、
図12の波形W24が示す通り、時刻tcから転流回路40が動作するまでの間、転流コンデンサ60に流れる電流がわずかに上昇する。また、これに伴い、波形W32が示す通り、時刻tcから転流回路40が動作するまでの間、転流コンデンサ60のコンデンサ電圧がわずかに減少する。
【0039】
[転流回路動作]
図5は、転流スイッチ50が閉状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。制御部100は、時刻tdにおいて転流スイッチ50を閉状態にし、転流回路40を動作させる(
図12参照)。上述したように、サージ抵抗90によって既にサージが抑制されているため、転流スイッチ50が閉状態に制御された場合であっても、サージが発生しない、或いは周辺回路素子や他の周辺機器が誤動作や故障しない程度にサージが十分に抑制される。この時の各部の状態は、以下のとおりである。
・機械式遮断器10:機械的開状態
・避雷器15:停止状態
・第1断路器20:閉状態
・第2断路器30:閉状態
・転流スイッチ50:閉状態
・サージスイッチ80:閉状態
・転流コンデンサ60:放電状態
【0040】
転流スイッチ50が閉状態に制御されることに伴い、直流遮断器1内では、機械式遮断器10、転流リアクトル70、転流コンデンサ60、転流スイッチ50のループに、予め充電されていた転流コンデンサ60のコンデンサ電圧と、転流リアクトル70とが作用し、上述した
図4の場面において流れた微小な転流電流L3に比して大きな転流電流L3が流れ始める。転流電流L3の方向は、転流コンデンサ60の正極端子と負極端子の接続方向や直流系統に発生した事故の場所等によって異なる。転流電流L3の方向が、直流系統電流の流れる方向と同じ(つまり、同極性)の場合、転流電流L3には、時刻tdから共振周波数の1/2~3/4周期までの間にゼロ点が生成される。また、転流電流L3の方向が直流系統電流の流れる方向と違う(つまり、逆極性)の場合、転流電流L3には、時刻tdから共振周波数の1/4周期までの間にゼロ点が生成される。本実施形態では、転流電流L3は、直流系統電流と同極性の電流である場合について説明する。
【0041】
機械式遮断器10には、時刻td以降、転流コンデンサ60のコンデンサ成分と、転流リアクトル70のリアクトル成分とに応じた共振周波数によって共振した転流電流L3が流れる。具体的には、
図12の波形W22と波形W24が示すように、機械式遮断器10と転流コンデンサ60には、時刻tdから共振周波数の3/4周期が経過する時刻teまでの間、共振周波数の3/4波未満の転流電流L3が流れ、時刻teにおいてゼロ点が生成される。また、波形W32が示すように、転流コンデンサ60が作用して転流電流L3が流れるため、時刻tdから時刻teまでの間、コンデンサ電圧が減少する。
【0042】
[機械式遮断器10の電気的遮断]
図6は、機械式遮断器10が電気的に開状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。制御部100は、時刻teにおいて機械式遮断器10に流れる転流電流L3にゼロ点が生成されたことに伴い、機械式遮断器10を電気的に開状態に制御する。制御部100は、例えば、ゼロ点が生成されたことに伴い、ガス遮断や真空遮断によってアークを消弧して、機械式遮断器10を電気的に開状態に制御する。また、
図6に示すように、機械式遮断器10が電気的に開状態に制御されることに伴い、直流系統電流は、第1直流送電線路LN1から、第1断路器20、転流スイッチ50、転流コンデンサ60、転流リアクトル70、及び第2断路器30の経路を介して第2直流送電線路LN2に流れる。この時の各部の状態は、以下のとおりである。
・機械式遮断器10:機械的にも電気的にも開状態
・避雷器15:停止状態
・第1断路器20:閉状態
・第2断路器30:閉状態
・転流スイッチ50:閉状態
・サージスイッチ80:閉状態
・転流コンデンサ60:放電状態
【0043】
図12の波形W10が示すように、機械式遮断器10は、時刻teにおいてアークが消弧され、時刻te以降、機械的にも電気的にも開状態に制御される。また、波形W30が示すように、機械的にも電気的にも開状態に制御された機械式遮断器10の電極間には、過渡的な回復電圧が発生するため、時刻teから避雷器15が動作するまで(後述する時刻tfまで)の間、機械式遮断器10の電極間に係る電圧が上昇する。また、波形W24が示すように、時刻teから避雷器15が動作するまでの間、転流コンデンサ60には、充電方向に直流系統電流が流れる。このため、波形W32が示すように、時刻teから避雷器15が動作するまでの間、コンデンサ電圧が上昇する。
【0044】
[避雷器15の動作]
図7は、避雷器15が動作した直流遮断器1の状態を示す図である。上述したように、時刻te以降、機械式遮断器10の電極間には、過渡的な回復電圧が発生するため、機械式遮断器10の電極間にかかる電圧(つまり、避雷器15の両端にかかる電圧)が上昇する。そして、機械式遮断器10の電極間に係る電圧は、避雷器15の動作電圧に到達し、避雷器15が動作する。避雷器15が動作することに伴い、直流系統電流は、第1直流送電線路LN1から、第1断路器20、避雷器15、第2断路器30の経路を介して第2直流送電線路LN2に流れる。この時の各部の状態は、以下のとおりである。
・機械式遮断器10:機械的にも電気的にも開状態
・避雷器15:動作状態
・第1断路器20:閉状態
・第2断路器30:閉状態
・転流スイッチ50:閉状態
・サージスイッチ80:閉状態
・転流コンデンサ60:ほぼ充放電をしていない状態
【0045】
図12の波形W30が示すように、時刻tfにおいて機械式遮断器10の電極間に係る電圧は、避雷器15の動作電圧に到達する。そして、波形W26が示すように、時刻tfにおいて避雷器15が動作を開始し、回復電圧を吸収する。このため、波形W26が示すように、時刻tfにおいて急峻に増加した避雷器15に流れる電流が、時刻tfから時刻tgまでの間徐々に減少し、時刻tgにおいて0[A]となる。これに伴い、波形W20が示すように、時刻tfから時刻tgまでの間、直流系統電流が徐々に減少する。
【0046】
また、この時、第1直流送電線路LN1から転流回路40の方向には、直流系統電流がほとんど流れない。そのため、波形W30が示す機械式遮断器10の電極間に係る電圧と、波形W32が示すコンデンサ電圧とは、時刻tfから時刻tgまでの間、時刻tfのタイミングにおける値を保持する。波形W16が示すように、時刻tfから時刻tgまでの間、転流スイッチ50の電極間に生じるアークが消弧する。
【0047】
[転流コンデンサ60の充電]
図8は、転流コンデンサ60を充電する状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。避雷器15が回復電圧を抑制し終えると、直流系統電流は、第1直流送電線路LN1から第1断路器20、転流スイッチ50、転流コンデンサ60、転流リアクトル70、及び第2断路器30の経路を介して第2直流送電線路LN2に流れる。この時の各部の状態は、以下のとおりである。
・機械式遮断器10:機械的にも電気的にも開状態
・避雷器15:停止状態
・第1断路器20:閉状態
・第2断路器30:閉状態
・転流スイッチ50:閉状態
・サージスイッチ80:閉状態
・転流コンデンサ60:充電状態
【0048】
図12の波形W20が示すように、直流系統電流は、時刻tgから転流コンデンサ60が過渡振動を終える時刻thまでの間、振動する。直流系統電流の振動は、過渡振動が落ち着くにつれて減衰する。このため、直流系統電流は、時刻tgから時刻thにかけて徐々に収束する。また、波形W24が示すように、転流コンデンサ60には、過渡振動により振動する直流系統電が流れる。このため、波形W32が示すように、コンデンサ電圧は、時刻tgから時刻thまでの間、過渡振動により振動しつつも、徐々に所定の電圧に収束する。所定の電圧とは、第1電圧VDC1と一致、又は略一致する電圧である。
【0049】
時刻tgから時刻thまでの間は、再閉路時間の一例である。再閉路時間は、直流遮断器1が第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とを電気的に遮断させてから、再度電気的に導通させるまでの時間である。上述したように、転流コンデンサ60の容量や転流リアクトル70の値は、所定の再閉路時間を確保しつつ、予め定められた再閉路時間の最大値を超えない範囲で過渡振動が収束するように設定される。
【0050】
ここで、コンデンサ電圧が所定の電圧に収束するよりも前に、転流スイッチ50の電極間の絶縁性能が回復し、転流スイッチ50のアークが裁断され、又は電流のゼロ点によってアークが消弧し、開状態となってしまう場合がある。この場合、転流コンデンサ60は、第1直流送電線路LN1からサージスイッチ80、及びサージ抵抗90の経路を介して第2直流送電線路LN2に流れる直流系統電流によって、所定の電圧まで充電される。
【0051】
[転流スイッチ50の開状態]
図9は、転流スイッチ50が開状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。制御部100は、時刻tg以降、転流コンデンサ60のコンデンサ電圧が所定の電圧であるか否かを判定する。制御部100は、例えば、直流系統電流の過渡振動が収束している場合、転流コンデンサ60が所定の電圧まで充電されたと判定する。制御部100は、転流コンデンサ60が所定の電圧まで充電されたと判定した場合、転流スイッチ50を開状態に制御する。この時の各部の状態は、以下のとおりである。
・機械式遮断器10:機械的にも電気的にも開状態
・避雷器15:停止状態
・第1断路器20:閉状態
・第2断路器30:閉状態
・転流スイッチ50:開状態
・サージスイッチ80:閉状態
・転流コンデンサ60:充電された状態
【0052】
図12の波形W20が示すように、制御部100は、時刻thにおいて転流コンデンサ60が所定の電圧まで充電されたと判定し、転流スイッチ50を開状態に制御する。
【0053】
[直流系統遮断]
図10は、第1断路器20、及び第2断路器30が開状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。
図11は、サージスイッチ80が開状態に制御された直流遮断器1の状態を示す図である。制御部100は、転流スイッチ50を開状態に制御した後、第1断路器20、及び第2断路器30を開状態に制御する。そして、制御部100は、第1断路器20、及び第2断路器30を開状態に制御した後、サージスイッチ80を開状態に制御する。
図11の場面における各部の状態は、以下のとおりである。
・機械式遮断器10:機械的にも電気的にも開状態
・避雷器15:停止状態
・第1断路器20:開状態
・第2断路器30:開状態
・転流スイッチ50:開状態
・サージスイッチ80:開状態
・転流コンデンサ60:充電された状態
【0054】
図12の波形W12が示すように、制御部100は、時刻tiにおいて第1断路器20、及び第2断路器30を開状態に制御する。また、波形W12が示すように、制御部100は、時刻tjにおいてサージスイッチ80を開状態に制御する。
【0055】
なお、制御部100は、サージスイッチ80を開状態に制御した後、第1断路器20、及び第2断路器30を開状態に制御してもよく、第1断路器20、及び第2断路器30を順に開状態に制御してもよい。
【0056】
[動作フロー]
図13は、直流遮断器1の動作の一例を示すフローチャートである。まず、制御部100は、検出装置から第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とを電気的に遮断させることを示す遮断指示信号を受信したか否かを判定する(ステップS100)。制御部100は、検出装置から遮断指示信号を受信するまでの間、待機する。制御部100は、遮断指示信号を受信した場合、機械式遮断器10を開状態に制御する(ステップS102)。次に、制御部100は、サージスイッチ80を閉状態に制御する(ステップS104)。この時、サージスイッチ80を閉状態に制御することに伴い発生するサージは、サージ抵抗90によって抑制される。
【0057】
次に、制御部100は、転流スイッチ50を閉状態に制御する(ステップS106)。この時、サージ抵抗90によってサージが十分に抑制されているため、転流スイッチ50が閉状態となっても、サージが発生しない、或いは周辺回路素子や他の周辺機器が誤動作や故障しない程度にサージが十分に抑制される。また、転流スイッチ50が閉状態に制御されることに伴い、直流遮断器1内では、機械式遮断器10、転流リアクトル70、転流コンデンサ60、転流スイッチ50のループに、予め充電されていた転流コンデンサ60のコンデンサ電圧と、転流リアクトル70とが作用し、転流コンデンサ60のコンデンサ成分と、転流リアクトル70のリアクトル成分とに応じた共振周波数によって共振した転流電流L3が流れる。
【0058】
制御部100は、機械式遮断器10に流れる共振性の転流電流L3にゼロ点が生成されたことに伴い、機械式遮断器10を電気的に開状態に制御する(ステップS108)。機械式遮断器10が電気的に開状態に制御されることにより、機械式遮断器10の電極間には、過渡的な回復電圧が発生するため、機械式遮断器10の電極間にかかる電圧(つまり、避雷器15の両端にかかる電圧)が上昇する。そして、機械式遮断器10の電極間に係る電圧は、避雷器15の動作電圧に到達し、避雷器15が動作する(ステップS110)。
【0059】
避雷器15が動作することに伴い、直流系統電流は、第1直流送電線路LN1から、第1断路器20、避雷器15、第2断路器30の経路を介して第2直流送電線路LN2に流れる。直流系統電流は、転流コンデンサ60が過渡振動を終えるまでの間、振動する。直流系統電流は、過渡振動が落ち着くにつれて減衰する。また、転流コンデンサ60には、充電方向に直流系統電流が流れるため、コンデンサ電圧は、過渡振動により振動しつつも、徐々に所定の電圧に収束する。所定の電圧とは、第1直流送電線路LN1や第2直流送電線路LN2等の直流系統が供給する直流電圧と一致、又は略一致する電圧である。
【0060】
制御部100は、転流コンデンサ60のコンデンサ電圧が所定の電圧であるか否かを判定する(ステップS112)。制御部100は、例えば、直流系統電流の過渡振動が収束している場合、転流コンデンサ60が所定の電圧まで充電されたと判定する。制御部100は、転流コンデンサ60が所定の電圧まで充電されるまでの間、待機する。制御部100は、転流コンデンサ60が所定の電圧まで充電されたと判定した場合、転流スイッチ50を開状態に制御する(ステップS114)。次に、制御部100は、断路器を開状態に制御する(ステップS116)。次に、制御部100は、サージスイッチ80を開状態に制御する(ステップS118)。これにより、直流遮断器1は、第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とを電気的に遮断させることができる。
【0061】
[実施形態のまとめ]
以上説明したように、実施形態の直流遮断器1は、機械式遮断器10と、避雷器15と、転流回路40とを持つ。機械式遮断器10は、第1端子10aが第1断路器20を介して第1直流送電線路LN1に接続され、第2端子10bが第2断路器30を介して第2直流送電線路LN2に接続される。転流回路40は、転流スイッチ50と、転流コンデンサ60と、転流リアクトル70と、サージスイッチ80と、サージ抵抗90とを有する。転流回路40と、避雷器15と、機械式遮断器10とは、第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2との間に互いに並列に接続される。転流スイッチ50と、転流コンデンサ60と、転流リアクトル70とは、第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2との間に直列に接続される。サージスイッチ80とサージスイッチ80とが直列に接続されたものが転流スイッチ50と並列に設けられている。
【0062】
ここで、転流スイッチ50に対して、サージスイッチ80とサージ抵抗90との直列回路が並列に設けられていない場合、コンデンサ電圧が所定の電圧に収束するよりも前に、転流スイッチ50の電極間の絶縁性能が回復し、転流スイッチ50が開状態となってしまう場合がある。コンデンサ電圧が所定の電圧に収束するよりも前に、転流スイッチ50が開状態となってしまうと、次回、第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2とを遮断する際に、十分な転流電流L3を流せるだけの電力が転流コンデンサ60に充電されない、又は余剰な転流電流L3を流すだけの電力が転流コンデンサ60に過充電されてしまう場合がある。
【0063】
コンデンサ電圧が直流系統の電圧に対して大きい(つまり、転流コンデンサ60が過充電)の場合、共振性の転流電流L3が大きくなり、時刻td~teの期間の機械式遮断器10に流れる電流ゼロ点の電流変化率(di/dt)が大きくなる可能性が有る。機械式遮断器10の性能によっては、電流変化率(di/dt)が大きい転流電流L3では、電気的に開状態にすることができず、第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2との遮断に失敗する可能性が有る。
【0064】
一方、コンデンサ電圧が直流系統の電圧に対して小さい(つまり、転流コンデンサ60が充電不足)の場合、再閉路を行う際の共振性の転流電流L3が小さくなり、機械式遮断器10に流れる転流電流L3によってゼロ点を生成できず、第1直流送電線路LN1と、第2直流送電線路LN2との遮断に失敗する可能性が有る。
【0065】
実施形態の直流遮断器1によれば、転流スイッチ50に対して、サージスイッチ80とサージ抵抗90との直列回路が並列に設けられていることにより、転流スイッチ50の電極間の電流が裁断または電流のゼロ点にて消弧しても、転流コンデンサ60には、サージスイッチ80とサージ抵抗90を介して直流系統電流が流れ続けるので、転流コンデンサ60を確実に所定の電圧まで充電することができる。したがって、本実施形態の直流遮断器1は、サージを抑制しつつ、適切に再閉路を行うことができる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
1…直流遮断器、10…機械式遮断器、10a、20a、30a、40a、50a、80a…第1端子、10b、20b、30b、40b、50b、80b…第2端子、15…避雷器、20…第1断路器、30…第2断路器、40…転流回路、50…転流スイッチ、60…転流コンデンサ、70…転流リアクトル、80…サージスイッチ、90…サージ抵抗、100…制御部、L3…転流電流、LN1…第1直流送電線路、LN2…第2直流送電線路