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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】強化繊維用サイジング剤及びその用途
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/507 20060101AFI20230123BHJP
   B29B 15/12 20060101ALI20230123BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20230123BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20230123BHJP
【FI】
D06M15/507
B29B15/12
D06M13/17
B29K105:08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022564127
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2022025426
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2021138705
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 吉彦
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/042367(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/146024(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/024451(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/026991(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 15/507
B29B 15/12
B29K 105/08
D06M 13/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(A)及び下記一般式(1)で示される化合物(B)を含有する強化繊維用サイジング剤であって、
前記化合物(A)が、芳香族系ポリエステル樹脂(A1)及びエチレン性不飽和基を有する化合物(A2)から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記芳香族系ポリエステル樹脂(A1)が、構成単位として、下記構成単位(I)及び(II)を含むポリエステル樹脂であり、
前記エチレン性不飽和基が、ビニルエステル基、アクリレート基及びメタクリレート基から選ばれる少なくとも1種であり、
前記強化繊維用サイジング剤の不揮発分に占める前記化合物(A)の重量割合が10重量%以上である、強化繊維用サイジング剤。
構成単位(I):イソフタル酸、イソフタル酸のエステル形成性誘導体、テレフタル酸、テレフタル酸のエステル形成性誘導体、スルホイソフタル酸、スルホイソフタル酸のエステル形成性誘導体及びスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種から形成された構成単位
構成単位(II):ポリアルキレングリコールから形成された構成単位
【化1】
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。AOはオキシエチレン基である。m及びnは、それぞれ独立して、1以上の数である。)
【請求項2】
前記構成単位(I)が、スルホイソフタル酸、スルホイソフタル酸のエステル形成性誘導体及びスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の強化繊維用サイジング剤。
【請求項3】
化合物(A)及び下記一般式(1)で示される化合物(B)を含有する強化繊維用サイジング剤であって、
前記化合物(A)が、芳香族系ポリエステル樹脂(A1)及びエチレン性不飽和基を有する化合物(A2)から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記芳香族系ポリエステル樹脂(A1)が、構成単位として、下記構成単位(I)及び(II)を含むポリエステル樹脂であり、
前記エチレン性不飽和基が、ビニルエステル基、アクリレート基及びメタクリレート基から選ばれる少なくとも1種であり、
前記強化繊維用サイジング剤の不揮発分に占める前記化合物(A)の重量割合が10重量%以上である、強化繊維用サイジング剤。
構成単位(I):イソフタル酸、イソフタル酸のエステル形成性誘導体、テレフタル酸、テレフタル酸のエステル形成性誘導体、スルホイソフタル酸、スルホイソフタル酸のエステル形成性誘導体及びスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種から形成され、かつ、スルホイソフタル酸、スルホイソフタル酸のエステル形成性誘導体及びスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種を含む構成単位
構成単位(II):ポリアルキレングリコールから形成された構成単位
【化1】
(式(1)中、R 及びR は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基である。m及びnは、それぞれ独立して、1以上の数である。)
【請求項4】
前記式(1)中、AOがオキシエチレン基である、請求項3に記載の強化繊維用サイジング剤。
【請求項5】
前記化合物(A)及び前記化合物(B)の重量割合の比率(A/B)が0.1~9.0である、請求項1~4のいずれかに記載の強化繊維用サイジング剤。
【請求項6】
前記化合物(A)及び前記化合物(B)の重量割合の比率(A/B)が0.1~5.0である、請求項1~4のいずれかに記載の強化繊維用サイジング剤。
【請求項7】
前記m及び前記nの和(m+n)が8~60である、請求項1~4のいずれかに記載の強化繊維用サイジング剤。
【請求項8】
原料強化繊維ストランドに対して、請求項1~のいずれかに記載の強化繊維用サイジング剤を付着させた、強化繊維ストランド。
【請求項9】
マトリックス樹脂と、請求項に記載の強化繊維ストランドとを含む、繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維用サイジング剤及びその用途に関する。詳細には、マトリックス樹脂を補強するために用いられる強化繊維用サイジング剤、これを用いた強化繊維ストランド及び繊維強化複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用途、航空・宇宙用途、スポーツ・レジャー用途、一般産業用途等に、プラスチック材料(マトリックス樹脂と称される)を各種合成繊維で補強した繊維強化複合材料が幅広く利用されている。これらの複合材料に使用される繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの各種無機繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維などの各種有機繊維が挙げられる。これら各種合成繊維は通常、フィラメント形状で製造され、その後ホットメルト法やドラムワインディング法等により一方向プリプレグと呼ばれるシート状の中間材料に加工されたり、フィラメントワインディング法によって加工されたり、場合によっては織物又はチョップドファイバー形状に加工されたりする等、各種高次加工工程を経て、強化繊維として使用されている。
【0003】
強化繊維複合材料のマトリックス樹脂としてはエポキシ樹脂が広く使用されている。エポキシ樹脂以外にもラジカル重合系のマトリックス樹脂として不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂等が使用されている。
強化繊維複合材料の機械強度を向上させるためには、マトリックス樹脂と強化繊維の濡れ性や接着性が重要となり、上記のエポキシ樹脂、ラジカル重合系のマトリックス樹脂に対して、強化繊維の濡れ性や接着性が向上するサイジング剤(例えば、特許文献1、2等)が提案されている。
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2に記載のサイジング剤は、経時的に濡れ性や接着性等のサイジング剤性能が低下する現象が見られていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開昭53-52796号公報
【文献】日本国特開平06-173170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経時的にサイジング剤性能が低下する原因を調査した結果、高温下ではサイジング剤の性能が経時的に低下することが判明した。また、高温地域への輸送や、高温にならざるを得ない場所での保管など、高温下で長期間曝されると、サイジング剤が不安定化を起こし、変質、分離することが判明した。
そこで、本発明の目的は、高濃度でも高温安定性に優れたサイジング剤、それを用いた強化繊維ストランド及び繊維強化複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の樹脂、特定の化合物を含む強化繊維用サイジング剤であれば、上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明の強化繊維用サイジング剤は、化合物(A)及び下記一般式(1)で示される化合物(B)を含有し、前記化合物(A)が、芳香族系ポリエステル樹脂(A1)及びエチレン性不飽和基を有する化合物(A2)から選ばれる少なくとも1種を含み、前記芳香族系ポリエステル樹脂(A1)が、構成単位として、下記構成単位(I)及び(II)を含むポリエステル樹脂であり、前記エチレン性不飽和基が、ビニルエステル基、アクリレート基及びメタクリレート基から選ばれる少なくとも1種であり、前記強化繊維用サイジング剤の不揮発分に占める前記化合物(A)の重量割合が10重量%以上である。
構成単位(I):イソフタル酸、イソフタル酸のエステル形成性誘導体、テレフタル酸、テレフタル酸のエステル形成性誘導体、スルホイソフタル酸、スルホイソフタル酸のエステル形成性誘導体及びスルホイソフタル酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種から形成された構成単位
構成単位(II):ポリアルキレングリコールから形成された構成単位
【0008】
【化1】
【0009】
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基である。m及びnは、それぞれ独立して、1以上の数である。)
【0010】
前記化合物(A)及び前記化合物(B)の重量割合の比率(A/B)が0.1~9.0であると好ましい。
前記m及び前記nの和(m+n)が8~60であると好ましい。
【0011】
本発明の強化繊維ストランドは、原料強化繊維ストランドに対して、上記強化繊維用サイジング剤を付着させてなる。
本発明の繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂と、上記強化繊維ストランドとを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の強化繊維用サイジング剤は、高濃度でも高温安定性に優れる。本発明の強化繊維用サイジング剤は、強化繊維に対して優れた集束性を付与し、さらにマトリックス樹脂との優れた接着性を付与できる。
本発明の強化繊維ストランドは、サイジング剤の経時的な変化がない又は少ないため、高温で長期間保管しても擦過毛羽性及びマトリックス樹脂との接着性の低下を抑制できる。本発明の強化繊維ストランドを使用することにより、優れた物性を有する強化繊維複合材料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の強化繊維用サイジング剤の各成分について詳細に説明する。
〔化合物(A)〕
化合物(A)は後述する芳香族系ポリエステル樹脂(A1)及び後述するエチレン性不飽和基を有する化合物(A2)から選ばれる少なくとも1種を含む。化合物(A)は後述する化合物(B)と併用することにより、本発明の強化繊維用サイジング剤の高濃度での高温安定性に寄与する成分である。また、集束性、接着性向上成分としても機能する。
化合物(A)は、芳香族系ポリエステル樹脂(A1)を含むと本願効果を奏する点で好ましい。
【0014】
本発明の強化繊維用サイジング剤が高濃度でも高温安定性に優れる要因は定かではないが、化合物(A)と化合物(B)を同時に使用することで、互いに相溶し合い、乳化性が高まるために高濃度でも高温安定性に優れると考えている。化合物(B)を含まない場合、乳化性不足になりやすいため、高濃度での高温安定性が劣ると考えている。
〔芳香族系ポリエステル樹脂(A1)〕
芳香族系ポリエステル樹脂(A1)は、後述する化合物(B)と併用することにより、本発明の強化繊維用サイジング剤の高濃度での高温安定性に寄与する成分である。また、集束性、接着性向上成分としても機能する。
芳香族系ポリエステル樹脂(A1)は、ポリカルボン酸またはその無水物と、ポリオールとの共重合体で、前記ポリカルボン酸またはその無水物、およびポリオールの中の少なくとも1種が芳香族化合物を含むポリマーであり、分子内にビニルエステル基、アクリレート基及びメタクリレート基を有さないポリマーである。芳香族系ポリエステル樹脂(A1)の製造方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。芳香族系ポリエステル樹脂(A1)は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0015】
芳香族系ポリエステル樹脂(A1)は、構成単位として、下記構成単位(I)及び(II)を含む。
構成単位(I):イソフタル酸、イソフタル酸のエステル形成性誘導体、テレフタル酸、テレフタル酸のエステル形成性誘導体、スルホイソフタル酸、スルホイソフタル酸のエステル形成性誘導体、スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩から選ばれる一つ又は二つ以上から形成された構成単位
構成単位(II):ポリアルキレングリコールから形成された構成単位
【0016】
〈構成単位(I)〉
イソフタル酸のエステル形成性誘導体とは、イソフタル酸の誘導体であって、イソフタル酸エステルをエステル化反応またはエステル交換反応によって形成できる誘導体である。イソフタル酸のエステル形成性誘導体の具体例としては、イソフタル酸のエステル、酸無水物、アミドが挙げられる。
テレフタル酸のエステル形成性誘導体とは、テレフタル酸の誘導体であって、テレフタル酸エステルをエステル化反応またはエステル交換反応によって形成できる誘導体である。テレフタル酸のエステル形成性誘導体の具体例としては、テレフタル酸のエステル、酸無水物、アミドが挙げられる。
スルホイソフタル酸のエステル形成性誘導体とは、スルホイソフタル酸の誘導体であって、スルホイソフタル酸エステルをエステル化反応またはエステル交換反応によって形成できる誘導体である。スルホイソフタル酸のエステル形成性誘導体の具体例としては、スルホイソフタル酸のエステル、酸無水物、アミドが挙げられる。
【0017】
スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩としては、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩、5-スルホイソフタル酸カリウム塩、5-スルホイソフタル酸リチウム塩、1,3-ジメチル-5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩、1,3-ジメチル-5-スルホイソフタル酸カリウム塩、1,3-ジメチル-5-スルホイソフタル酸リチウム塩が挙げられる。
【0018】
構成単位(I)は、イソフタル酸及びスルホイソフタル酸ナトリウム塩を含むと好ましく、イソフタル酸及びスルホイソフタル酸ナトリウム塩のみから構成されるとより好ましい。
【0019】
〈構成単位(II)〉
構成単位(II)は、ポリアルキレングリコールから形成される構成単位である。
ポリアルキレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール等が挙げられる。構成単位(II)は、ジエチレングリコールを含むと好ましく、ジエチレングリコールのみから構成されるとより好ましい。
【0020】
芳香族系ポリエステル樹脂(A1)は、構成単位として、構成単位(I)及び(II)を含むものであれば限定はないが、構成単位(I)及び(II)以外の構成単位として、脂肪族ジカルボン酸から形成される構成単位を含んでいてもよい。
【0021】
芳香族系ポリエステル樹脂(A1)を製造するにあたり、前記ポリカルボン酸またはその無水物(全ポリカルボン酸成分ということがある)、およびポリオールの中の少なくとも1種が芳香族化合物を含めばよいが、その中でも、全ポリカルボン酸成分の40~100モル%が芳香族ジカルボン酸であることが好ましく、80~99モル%であることがさらに好ましい。
また、芳香族系ポリエステル樹脂(A1)を水性液とする場合の乳化安定性の観点から、全ポリカルボン酸成分の1~10モル%がスルホン酸塩含有芳香族ジカルボン酸であることが好ましい。よって、上記に例示したポリカルボン酸およびポリオールの中でも、ポリカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、無水フタル酸、スルホテレフタル酸塩、5-スルホイソフタル酸塩が好ましく、ポリオールとしては、脂肪族系ジオールが好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールが特に好ましい。
【0022】
芳香族系ポリエステル樹脂(A1)の重量平均分子量としては、本願効果を奏する観点から、3,000~100,000が好ましく、5,000~30,000がより好ましい。
【0023】
〔エチレン性不飽和基を有する化合物(A2)〕
エチレン性不飽和基を有する化合物(A2)(以下、化合物(A2)という場合がある。)は、後述する化合物(B)と併用することにより、本発明の強化繊維用サイジング剤の高濃度での高温安定性に寄与する成分である。また、集束性、接着性向上成分としても機能する。
化合物(A2)はビニルエステル基、アクリレート基及びメタクリレート基から選ばれる少なくとも1種を有する化合物である。化合物(A2)は、1種又は2種以上を使用してもよい。なお、ビニルエステル基は「CH2=CHOCO-」で表される基を示し、アクリレート基は「CH2=CHCOO-」で表される基を示し、メタクリレート基は「CH2=CCH3COO-」で表される基を示すものとする。
【0024】
化合物(A2)としては、たとえば、アルキル(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、ベンジル(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メタクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、2-ヒドロキシ-3フェノキシプロパノール(メタ)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールノニルフェニルエーテル(メタ)アクリル酸エステル、2-(メタ)アクリロイルキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、アルキレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどが挙げられる。
【0025】
これらの中でも、化合物(A2)としては、マトリックス樹脂との接着性が優れる点で、オキシアルキレン基及びアリール基から選ばれる少なくとも1種を有すると好ましく、アリール基を含むとより好ましい。具体的には、2-メタクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物が好ましく、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物がさらに好ましく、ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールA(メタ)アクリル酸エステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、アルキレンオキサイド付加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物が特に好ましい。
【0026】
〔化合物(B)〕
本発明の強化繊維用サイジング剤に用いられる化合物(B)は、上記一般式(1)で示されるものであって、ビスフェノール型骨格からなる中心部の両端にアルキレンオキサイドが付加した構造を有するものである。
このように、化合物(B)を前述の化合物(A)と併用することにより、高濃度での高温安定性を向上させることができる。
【0027】
上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。アルキル基の炭素数は1~2が好ましく、1がさらに好ましい。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基であり、炭素数2~3のオキシアルキレン基(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)が好ましく、炭素数2のオキシエチレン基がさらに好ましい。m及びnは、それぞれ独立して、1以上の数であり、4~20が好ましく、4~15がより好ましく、4~10がさらに好ましい。さらに、本発明の効果をより発揮させる点から、m及びnは、m+n=8~60を満たす数であることが好ましい。m+nは、8~40がより好ましく、8~30がさらに好ましく、8~20が特に好ましく、10~20が最も好ましい。
【0028】
化合物(B)は、本願効果を奏する観点から、分子量分布(Mw/Mn)は、1.01~1.50が好ましく、1.01~1.30がより好ましく、1.02~1.20がさらに好ましい。
化合物(B)の分子量分布は、化合物(B)を試験試料としてGPC法により求められる。化合物(B)は、単分散のものではなく、所定の分子量分布を有するブロード状態のものを使用することにより、高濃度でも高温安定性に優れる。なお、本明細書における高濃度とは、好ましくは、30重量%濃度以上を意味し、30重量%超、35重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上の順に、本願効果を発揮する(濃度が高い方がより本願効果を発揮する。)。
【0029】
化合物(B)において、ビスフェノール型骨格からなる中心部の両端に付加しているアルキレンオキサイドの付加量は、中心部の左、右で一致している必要はないが、上記の化合物(B)が、一般的にビスフェノール化合物にアルキレンオキサイドを付加して得られるものであるために、ビスフェノール型骨格からなる中心部の両端に付加しているアルキレンオキサイドの付加量は、中心部の左、右での付加量があまり相違するものではなくなることが多い。
【0030】
〔アセチレン系界面活性剤(C)〕
本発明の強化繊維用サイジング剤は、本願効果を奏する観点から、アセチレン系界面活性剤(C)を含有すると好ましい。化合物(A)及びアセチレン系界面活性剤(C)を併用することにより、表面張力を下げ、強化繊維束への均一付着性を向上させることができるという効果もある。
なお、アセチレン系界面活性剤とは、分子構造中にアセチレン基と水酸基等の親水基を有する化合物をいう。アセチレン系界面活性剤(C)は一種単独でもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
アセチレン系界面活性剤(C)は、アセチレンアルコール(C1)、アセチレンジオール(C2)、アセチレンアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(C3)及びアセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(C4)から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、アセチレンアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(C3)及びアセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(C4)が好ましく、アセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(C4)がさらに好ましい。
【0032】
アセチレンアルコール(C1)とは、分子構造中にアセチレン基と、1つの水酸基を有する化合物である。
アセチレンアルコール(C1)は、下記一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0033】
アセチレンジオール(C2)とは、分子構造中にアセチレン基と、2つの水酸基を有する化合物である。
アセチレンジオール(C2)は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0034】
アセチレンアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(C3)とは、アセチレンアルコールの水酸基にアルキレンオキサイドを付加させた化合物である。
アセチレンアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(C3)とは、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0035】
アセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(C4)とは、アセチレンジオールの水酸基の少なくとも1つにアルキレンオキサイドを付加させた化合物である。
アセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(C4)は、下記一般式(5)で表される化合物であることが好ましい。
【0036】
【化2】
(式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基である。)
【0037】
【化3】
(式(3)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基である。)
【0038】
【化4】
(式(4)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基である。Rは水素原子、または炭素数1~5のアルキル基である。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を示す。pは1~50の数である。)
【0039】
【化5】
(式(5)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基である。Rは水素原子、または炭素数1~5のアルキル基である。なお、式(5)における複数のRは、同一であってもよく異なっていてもよい。AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を示す。p、qはそれぞれ独立して1~50の数である。)
【0040】
式(2)及び式(4)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基である。当該アルキル基は直鎖でもよく、分岐構造を有していてもよい。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~7、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~5である。
式(3)及び(5)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~8のアルキル基である。当該アルキル基は直鎖でもよく、分岐構造を有していてもよい。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~7、より好ましくは1~6、さらに好ましくは1~5である。
【0041】
式(4)及び式(5)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、または炭素数1~5のアルキル基である。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~4、より好ましくは1~3、さらに好ましくは1~2である。
式(4)及び式(5)中、AOはそれぞれ独立して炭素数2~4のオキシアルキレン基を示す。つまり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシブチレン基を示す。オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基がさらに好ましい。(AO)又は(AO)を構成するAOは、1種でもよく、2種以上であってもよい。2種以上の場合、ブロック付加体、交互付加体、ランダム付加体のいずれであってもよい。
【0042】
式(4)中、pは1~50の数である。pは1~45が好ましく、1~40がより好ましく、1~35がさらに好ましい。
式(5)中、p、qはそれぞれ独立して1~50の数である。p、qは、それぞれ独立して、1~45が好ましく、1~40がより好ましく、1~35がさらに好ましい。
【0043】
アセチレン系界面活性剤(C)のHLBは、本願効果を奏する観点から、4~25が好ましく、5~20がより好ましく、6~18がさらに好ましい。本発明におけるHLBは、Griffinらが提唱したアトラス法により、実験的に求めることができる。
【0044】
アセチレン系界面活性剤(C)は、公知の化合物であり、公知の方法により容易に製造することができる。例えば、このような化合物は、レッペ反応と呼ばれる、加圧下で、アセチレンにケトン又はアルデヒドを、アルカリや金属化合物などの触媒の存在下で反応させる方法により得ることができる。
また、上記の化合物(C3)又は化合物(C4)は、それぞれ、アセチレンアルコール(C1)又はアセチレンジオール(C2)にアルキレンオキサイド(例えばエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド)をアルカリや金属化合物などの触媒の存在下で付加重合させることにより得ることができる。
【0045】
〔化合物(A)以外の樹脂(D)〕
化合物(A)以外の樹脂(D)としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、およびフェノール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0046】
ポリウレタン樹脂としては、公知のポリイソシアネートと公知のポリオールを主成分とした反応生成物であれば特に限定されない。
ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネート化合物でも脂肪族ポリイソシアネート化合物でもよい。
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、たとえば、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、モノまたはジクロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メタフェニレン-ジイソシアネート、パラフェニレン-ジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
また、脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、たとえば、1,6-ヘキサメチレン-ジイソシアネート、プロピルジイソシアネート、ブチルジイソシアネート等を挙げることができる。ポリイソシアネート化合物として、上記で例示したポリイソシアネート化合物を1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリオールとしては、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物等のポリエーテルポリオール、ポリオールとコハク酸、アジピン酸、フタル酸等の多塩基酸の縮合物であるポリエステルポリオール、2,2-ジメチロールプロピオン酸、1,4-ブタンジオール-2-スルホン酸等のカルボキシル基やスルホン酸基を有するポリオール、ポリエステル樹脂の構成成分として例示したポリオール化合物等を挙げることができる。
【0047】
エポキシ樹脂とは、分子構造内に反応性のエポキシ基を2個以上有する化合物である。エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンと活性水素化合物から得られるグリシジルエーテル型が代表的であり、その他にグリシジルエステル型、グリシジルアミン型、脂環型等が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
エポキシ樹脂としては、水酸基を持つものであれば特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂や、アミン変性芳香族エポキシ樹脂のような各種変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0049】
ポリアミド樹脂としては、アミド結合の繰り返しによって主鎖を形成する樹脂であれば特に限定されず、ポリアミド6(ε-カプロラクタムの開環重合による)、ポリアミド66(ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合による)、その他主鎖に親水基を導入して水溶性としたポリアミド樹脂等を挙げることができる。
【0050】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン-1)などのオレフィンの単独又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)等を挙げることができる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。ポリオレフィン系樹脂には、プロピレン含量が50重量%以上(特に75~100重量%)のポリプロピレン系樹脂、例えば、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体等が含まれる。
【0051】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、t-ブチルフェノール、ノニルフェノール、カシュー油、リグニン、レゾルシン、カテコール等のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類との縮合により得られる樹脂を挙げることができ、ノボラック樹脂やレゾール樹脂等を挙げることができる。ノボラック樹脂は、シュウ酸等の酸触媒存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量又はフェノール過剰の条件で反応させることで得られる。レゾール樹脂は、水酸化ナトリウム、アンモニア又は有機アミン等の塩基触媒の存在下で、フェノールとホルムアルデヒドとを同量又はホルムアルデヒド過剰の条件で反応させることにより得られる。
【0052】
本発明の強化繊維用サイジング剤は、前記アセチレン系界面活性剤(C)以外の界面活性剤(以下、単にその他の界面活性剤という。)を含んでもよい。
その他の界面活性剤は、サイジング剤中に水不溶性又は難溶性である樹脂を含有する場合、乳化剤として使用することによって、水系乳化を効率よく実施することができる。
その他の界面活性剤としては、特に限定されず、前記アセチレン系界面活性剤(C)以外の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から、公知のものを適宜選択して使用することができる。界面活性剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0053】
非イオン性界面活性剤としては、たとえば、アルキレンオキサイド付加非イオン性界面活性剤(高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルフェノール、スチレン化フェノール、ベンジルフェノール、グリセリン、ペンタエリスリット、ソルビット、ソルビタン、ソルビタンエステル、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、高級脂肪族アミン、脂肪酸アミド、油脂等にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド(2種以上の併用可)を付加させたもの)、ポリアルキレングリコールに高級脂肪酸等を付加させたもの、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、多価アルコールと脂肪酸のエステル、脂肪族アルカノールアミド等を挙げることができる。
【0054】
より詳細には、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシアルキレン直鎖アルキルエーテル;ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル等のポリオキシアルキレン分岐第一級アルキルエーテル;ポリオキシエチレン1-ヘキシルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン1-オクチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン1-ヘキシルオクチルエーテル、ポリオキシエチレン1-ペンチルへプチルエーテル、ポリオキシエチレン1-へプチルペンチルエーテル等のポリオキシアルキレン分岐第二級アルキルエーテル;ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアリールフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノミリスチレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンジミリスチレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレート等のソルビタンエステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンひまし油エーテル等のポリオキシアルキレンひまし油エーテル;ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル等のポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテル;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル;オキシエチレン-オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体;オキシエチレン-オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体の末端アルキルエーテル化物;オキシエチレン-オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体の末端ショ糖エーテル化物;等を挙げることができる。
【0055】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸(塩)、高級アルコール・高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、スルホン酸塩、高級アルコール・高級アルコールエーテルのリン酸エステル塩等を挙げることができる。
【0056】
より詳細には、アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸、パルミチン酸、オレイン酸ナトリウム塩、パルミチン酸カリウム塩、オレイン酸トリエタノールアミン塩等の脂肪酸(塩);ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ酢酸カリウム塩、乳酸、乳酸カリウム塩等のヒドロキシル基含有カルボン酸(塩);ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸(ナトリウム塩)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸(塩);トリメリット酸カリウム、ピロメリット酸カリウム等のカルボキシル基多置換芳香族化合物の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸(ナトリウム塩)等のアルキルベンゼンスルホン酸(塩);ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテルスルホン酸(カリウム塩)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸(塩);ステアロイルメチルタウリン(ナトリウム)、ラウロイルメチルタウリン(ナトリウム)、ミリストイルメチルタウリン(ナトリウム)、パルミトイルメチルタウリン(ナトリウム)等の高級脂肪酸アミドスルホン酸(塩);ラウロイルサルコシン酸(ナトリウム)等のN-アシルサルコシン酸(塩);オクチルホスホネート(カリウム塩)等のアルキルホスホン酸(塩);フェニルホスホネート(カリウム塩)等の芳香族ホスホン酸(塩);2-エチルヘキシルホスホネート(カリウム塩)等のアルキルホスホン酸(塩);アミノエチルホスホン酸(ジエタノールアミン塩)等の含窒素アルキルホスホン酸(塩);2-エチルヘキシルサルフェート(ナトリウム塩)等のアルキル硫酸エステル(塩);ポリオキシエチレン2-エチルヘキシルエーテルサルフェート(ナトリウム塩)等のポリオキシアルキレン硫酸エステル(塩);ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N-アシルグルタミン酸塩;等を挙げることができる。
【0057】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシ油アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヤシ油アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、オレイルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジエチルメチルアンモニウムサルフェート、等のアルキル第四級アンモニウム塩;(ポリオキシエチレン)ラウリルアミノエーテル乳酸塩、ステアリルアミノエーテル乳酸塩、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルメチルアミノエーテルジメチルホスフェート、オレイルメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルエチルアンモニウムエトサルフェート、ジ(ポリオキシエチレン)硬化牛脂アルキルエチルアミンエトサルフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルメチルアンモニウムジメチルホスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ステアリルアミン乳酸塩等の(ポリオキシアルキレン)アルキルアミノエーテル塩;N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-N-ステアロイルアミドプロピルアンモニウムナイトレート、ラノリン脂肪酸アミドプロピルエチルジメチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミドエチルメチルジエチルアンモニウムメトサルフェート等のアシルアミドアルキル第四級アンモニウム塩;ジパルミチルポリエテノキシエチルアンモニウムクロライド、ジステアリルポリエテノキシメチルアンモニウムクロライド等のアルキルエテノキシ第四級アンモニウム塩;ラウリルイソキノリニウムクロライド等のアルキルイソキノリニウム塩;ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のベンザルコニウム塩;ベンジルジメチル{2-[2-(p-1,1,3,3-テトラメチルブチルフェノオキシ)エトオキシ]エチル}アンモニウムクロライド等のベンゼトニウム塩;セチルピリジニウムクロライド等のピリジニウム塩;オレイルヒドロキシエチルイミダゾリニウムエトサルフェート、ラウリルヒドロキシエチルイミダゾリニウムエトサルフェート等のイミダゾリニウム塩;N-ココイルアルギニンエチルエステルピロリドンカルボン酸塩、N-ラウロイルリジンエチルエチルエステルクロライド等のアシル塩基性アミノ酸アルキルエステル塩;ラウリルアミンクロライド、ステアリルアミンブロマイド、硬化牛脂アルキルアミンクロライド、ロジンアミン酢酸塩等の第一級アミン塩;セチルメチルアミンサルフェート、ラウリルメチルアミンクロライド、ジラウリルアミン酢酸塩、ステアリルエチルアミンブロマイド、ラウリルプロピルアミン酢酸塩、ジオクチルアミンクロライド、オクタデシルエチルアミンハイドロオキサイド等の第二級アミン塩;ジラウリルメチルアミンサルフェート、ラウリルジエチルアミンクロライド、ラウリルエチルメチルアミンブロマイド、ジエタノールステアリルアミドエチルアミントリヒドロキシエチルホスフェート塩、ステアリルアミドエチルエタノールアミン尿素重縮合物酢酸塩等の第三級アミン塩;脂肪酸アミドグアニジニウム塩;ラウリルトリエチレングリコールアンモニウムハイドロオキサイド等のアルキルトリアルキレングリコールアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0058】
両性界面活性剤としては、例えば、2-ウンデシル-N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N-ラウリルグリシン、N-ラウリルβ-アラニン、N-ステアリルβ-アラニン、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0059】
本発明の強化繊維用サイジング剤は、平滑剤(E)を含むことができる。平滑剤としては、高級脂肪酸と高級アルコールのエステル化物、天然油脂(ヤシ油、牛脂、オリーブ油及びナタネ油等)及び流動パラフィン、ワックス等が挙げられる。高級脂肪酸の例は、上記に記載されたとおりである。高級アルコールのアルキル基の例は、疎水基を構成するアルキル基として上記に記載されたとおりである。ワックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、みつろう等が挙げられる。
平滑剤は、強化繊維用サイジング剤の不揮発分に対して、0.1~20重量%であると好ましく、1~10重量%であるとより好ましい。
【0060】
平滑剤の中でも、耐擦過毛羽性の観点から、炭素数30以上の脂肪酸及び/またはアルコール、及びこれらのエステル化物を含むと好ましい。例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックスが挙げられる。
【0061】
〔強化繊維用サイジング剤〕
本発明の強化繊維用サイジング剤は、強化繊維用サイジング剤の不揮発分に占める化合物(A)の重量割合は10重量%以上であり、10~90重量%であると好ましい。該重量割合の上限は、85重量%がより好ましく、80重量%がさらに好ましく、75重量%が特に好ましく、70重量%が最も好ましい。一方、該重量割合の下限は、15重量%がより好ましく、20重量%がさらに好ましく、22重量%が特に好ましく、24重量%が最も好ましい。
【0062】
本発明の強化繊維用サイジング剤は、長期保管安定性の観点から、前記化合物(A)及び前記化合物(B)の重量割合の比率(A/B)は、0.1~9.0が好ましい。該比率の上限は、5.0がより好ましく、4.0がさらに好ましく、3.0が特に好ましく、2.5が最も好ましい。一方、該比率の下限は、0.5がより好ましく、1.0がさらに好ましく、1.5が特に好ましく、2.0が最も好ましい。
【0063】
化合物(A)が芳香族系ポリエステル樹脂(A1)を含む場合、長期保管安定性の観点から、前記芳香族系ポリエステル樹脂(A1)及び前記化合物(B)の重量割合の比率(A1/B)は、0.1~9.0が好ましい。該比率の上限は、5.0がより好ましく、4.0がさらに好ましく、3.0が特に好ましく、2.5が最も好ましい。一方、該比率の下限は、0.5がより好ましく、1.0がさらに好ましく、1.5が特に好ましく、2.0が最も好ましい。
【0064】
化合物(A)が化合物(A2)を含む場合、長期保管安定性の観点の観点から、前記化合物(A2)及び前記化合物(B)の重量割合の比率(A2/B)は、0.1~9.0が好ましい。該比率の上限は、5.0がより好ましく、4.0がさらに好ましく、3.0が特に好ましく、2.5が最も好ましい。一方、該比率の下限は、0.5がより好ましく、1.0がさらに好ましく、1.5が特に好ましく、2.0が最も好ましい。
【0065】
本発明の強化繊維用サイジング剤は、アセチレン系界面活性剤(C)を含む場合には、長期保管安定性の観点から、前記化合物(A)及び前記化合物(B)の合計に対するアセチレン系界面活性剤(C)の重量割合((C)/(A)+(B))が0.001~0.15であると好ましい。
【0066】
本発明のサイジング剤を製造する方法については、特に限定はなく、公知の手法が採用できる。サイジング剤を構成する各成分を攪拌下の水中に投入して水溶液、乳化物または水分散物とする方法、サイジング剤を構成する各成分を製造する際に水溶液、乳化物または水分散物とする方法、界面活性剤の入った水中に、サイジング剤を構成する各成分を攪拌下、投入して乳化または分散する方法、サイジング剤を構成する各成分を、予め乳化分散した乳化分散液に混合する方法、サイジング剤を構成する各成分を混合し、得られた混合物を軟化点以上に加温後、ホモジナイザー、ホモミキサー、ボールミル等を用いて機械せん断力を加えつつ、水を徐々に投入して転相乳化する方法、サイジング剤を付与する給油浴において、乳化分散した乳化分散液と水を混合する方法等が挙げられる。
【0067】
本発明のサイジング剤は、水に自己乳化及び/又は乳化分散してなると好ましい。サイジング剤が水に自己乳化及び/又は乳化分散してなる場合の平均粒子径は、特に限定はないが、保管安定性の観点から、10μm以下が好ましく、0.01~1μmがより好ましく、0.01~0.5μmがさらに好ましい。該平均粒子径が10μm超の場合、サイジング剤自体が数日で分離してしまうおそれがあり、保管安定性が悪く実用的でないとなることがある。なお、本発明でいう平均粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製LA-920)で測定された粒度分布より算出された平均値をいう。
【0068】
本発明のサイジング剤の不揮発分の濃度については、特に限定はない。高濃度における高温安定性に優れるという本願効果を奏する観点から、サイジング剤全体に占める不揮発分の重量割合の下限値は、次の順に好ましい。1)10重量%以上、2)30重量%以上、3)30重量%超、4)35重量%以上、5)40重量%以上、6)50重量%以上、7)60重量%以上。
サイジング剤全体に占める不揮発分の重量割合の上限値は、100重量%が好ましい。
【0069】
〔強化繊維ストランド〕
本発明の強化繊維ストランドは、原料合成繊維ストランドに対して、上記の強化繊維用サイジング剤を付着させたものであり、熱硬化性樹脂又は熱可塑性マトリックス樹脂を補強するための強化繊維である。
【0070】
本発明の強化繊維ストランドの製造方法は、前述した強化繊維用サイジング剤を原料合成繊維ストランドに付着させ、得られた付着物を乾燥するサイジング処理工程を含む製造方法である。
強化繊維用サイジング剤を原料合成繊維ストランドに付着させて付着物を得る方法については、特に限定はないが、強化繊維用サイジング剤をキスローラー法、ローラー浸漬法、スプレー法その他公知の方法で、原料合成繊維ストランドに付着させる方法であればよい。これらの方法のうちでも、ローラー浸漬法が、強化繊維用サイジング剤を原料合成繊維ストランドに均一付着できるので好ましい。
得られた付着物の乾燥方法については、特に限定はなく、例えば、加熱ローラー、熱風、熱板等で加熱乾燥することができる。
【0071】
なお、本発明の強化繊維用サイジング剤の原料合成繊維ストランドへの付着にあたっては、強化繊維用サイジング剤の構成成分全てを混合後に付着させてもよいし、構成成分を別々に二段階以上に分けて付着させてもよい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂および/または本発明のポリマー成分以外のポリオレフィン系樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂、フェノキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂などの熱可塑性樹脂を原料合成繊維ストランドに付着させてもよい。
【0072】
本発明の強化繊維ストランドは、各種熱硬化性樹脂又は各種熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料の強化繊維として使用され、使用させる形態としては、連続繊維の状態でも、所定の長さに切断された状態でもよい。
【0073】
原料合成繊維ストランドへの強化繊維用サイジング剤の不揮発分の付着量は適宜選択でき、合成繊維ストランドが所望の機能を有するための必要量とすればよいが、その付着量は原料合成繊維ストランドに対して0.1~20重量%であることが好ましい。連続繊維の状態の合成繊維ストランドにおいては、その付着量は原料合成繊維ストランドに対して0.1~10重量%がより好ましく、0.5~5重量%がさらに好ましい。また、所定の長さに切断された状態のストランドにおいては0.5~20重量%がより好ましく、1~10重量%がさらに好ましい。
【0074】
強化繊維用サイジング剤の付着量が少ないと、合成繊維ストランドの集束性が不足し、取扱い性が悪くなることがある。また、強化繊維用サイジング剤の付着量が多過ぎると、合成繊維ストランドが剛直になり過ぎて、コンポジット成型の際に樹脂含浸性が悪くなったりすることがあり好ましくない。
【0075】
本発明の強化繊維用サイジング剤を適用し得る(原料)合成繊維ストランドの合成繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの各種無機繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルフィド繊維、ポリケトン繊維などの各種有機繊維が挙げられる。得られる繊維強化複合材料としての物性の観点から、炭素繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルフィド繊維およびポリケトン繊維から選ばれる少なくとも1種が好ましい。さらに好ましくは炭素繊維である。
【0076】
〔繊維強化複合材料〕
本発明の繊維強化複合材料は、熱硬化性マトリックス樹脂又は熱可塑性マトリックス樹脂と前述の強化繊維ストランドを含むものである。強化繊維ストランドは本発明の強化繊維用サイジング剤により処理されているので、強化繊維ストランドおよび熱可塑性マトリックス樹脂との親和性が良好となり、接着性に優れた繊維強化複合材料となる。
本発明の繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂と前述の強化繊維ストランドを含むものである。強化繊維ストランドは本発明のサイジング剤により処理されて、サイジング剤が均一に付着しており、強化繊維ストランド及びマトリックス樹脂との親和性が良好となり、接着性に優れた繊維強化複合材料となる。さらに、高温処理時のサイジング剤の熱分解を抑制でき、熱分解に起因したマトリックス樹脂との接着阻害を抑制できる。ここで、マトリックス樹脂とは、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂からなるマトリックス樹脂をいい、1種又は2種以上含んでいてもよい。熱硬化性樹脂としては、特に制限はなく、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂、フェノキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂等が挙げられる。これらの中でも本発明のサイジング剤による接着性向上効果がより高い点から熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂がさらに好ましい。
【0077】
これらマトリックス樹脂は、強化繊維ストランドとの接着性をさらに向上させるなどの目的で、その一部又は全部が変性したものであっても差し支えない。
繊維強化複合材料の製造方法としては、特に限定はなく、チョップドファイバー、長繊維ペレットなどによるコンパウンド射出成型、UDシート、織物シートなどによるプレス成型、その他フィラメントワインディング成型など公知の方法を採用できる。
繊維強化複合材料中の合成繊維ストランドの含有量についても特に限定はなく、繊維の種類、形態、熱可塑性マトリックス樹脂の種類などにより適宜選択すればよいが、得られる繊維強化複合材料に対して、5~70重量%が好ましく、20~60重量%がより好ましい。
【実施例
【0078】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、ここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示されるパーセント(%)、部は特に限定しない限り、「重量%」、「重量部」を示す。各特性値の測定は以下に示す方法に基づいて行った。
下記表に示す不揮発分組成になるよう混合撹拌し、水で希釈して不揮発分濃度が20重量%のサイジング剤を調整した。さらに、得られたサイジング剤を水で希釈して不揮発分濃度が3重量%のサイジング剤希釈液を調製した。なお、表の数値はサイジング剤の不揮発分に占める各成分(水分散体の場合は、その不揮発分)の重量割合を示す。
次いで、サイジング剤未処理炭素繊維ストランド(繊度800tex、フィラメント数12000本)を調製したサイジング剤希釈液にDip Nip法により浸漬・含浸させた後、105℃で15分間熱風乾燥させて、サイジング剤処理炭素繊維ストランドを得た。得られたサイジング剤処理炭素繊維ストランドを用いて、以下に示す方法により、集束性、接着性、耐擦過性、保管安定性、均一付着性を評価した。
【0079】
<処理剤の付着率>
サイジング剤組成物を付与した繊維約10gをソックスレー抽出器に入れ、メチルエチルケトンで2時間抽出し、抽出前後の繊維の重量差から算出した。
【0080】
<集束性>
炭素繊維に各サイジング剤(水で3%に希釈、目標付着率1%)をサイジングしたものを、カッターナイフで5mmの長さで10本切りだした際にほぐれるかどうか目視で評価した。以下の評価基準で判断し、◎及び○を合格とした。
◎:2本以下ほぐれる
○:3~4本ほぐれる
△:5本~7本ほぐれる
×:8本以上ほぐれる
【0081】
<接着性>
複合材料界面特性評価装置HM410(東栄産業株式会社製)を使用し、マイクロドロップレット法により接着性を評価した。
実施例及び比較例で得られた炭素繊維ストランドより、炭素繊維フィラメントを取り出し、試料ホルダーにセッティングする。各マトリックス樹脂のドロップを炭素繊維フィラメント上に形成させ、測定用の試料を得た。測定試料を装置にセッティングし、ドロップを装置ブレードで挟み、炭素繊維フィラメントを装置上で0.06mm/分の速度で走行させ、炭素繊維フィラメントからドロップを引き抜く際の最大引き抜き荷重Fを測定した。
次式により界面剪断強度τを算出し、炭素繊維フィラメントと各マトリックス樹脂との接着性を評価した。マトリックス樹脂としては下記のエポキシ樹脂とビニルエステル樹脂を用いた。マトリックス樹脂の硬化方法は下記に示す。
界面剪断強度τ(単位:MPa)=F/πdl
(F:最大引き抜き荷重 d:炭素繊維フィラメント直径 l:ドロップの引き抜き方向の粒子径)
<マトリックス樹脂のドロップの硬化方法>
マトリックス樹脂は、エポキシ樹脂とビニルエステル樹脂を用いた。
エポキシ樹脂:エポキシ樹脂jER828(三菱ケミカル株式会社製)100重量部、DICY(三菱ケミカル株式会社製)3重量部に調整されたマトリックス樹脂のドロップを80℃×1時間、150℃×3時間加熱し硬化させた。
ビニルエステル樹脂:ビニルエステル樹脂リポキシR-806(昭和電工株式会社製)100重量部、パーキュアーO(日油株式会社製)2重量部に調整されたマトリックス樹脂のドロップを80℃×1時間、150℃×3時間加熱し硬化させた。
【0082】
<耐擦過性>
TM式摩擦抱合力試験機TM-200(大栄科学精器製作所(株)製)を用い、ジグザグに配置した鏡面クロムメッキステンレス針3本を介して50gの張力で、実施例及び比較例で得られた炭素繊維ストランドを1000回擦過させ(往復運動速度300回/分)、炭素繊維ストランドの毛羽たちの状態を下記基準で目視判定し、◎及び○を合格とした。
◎:擦過前と同じく毛羽発生が全く見られなかった。
○:数本の毛羽は見られたものの、実用上全く問題ないレベルであった。
△:毛羽立ちが多くみられ、糸切れも若干確認できた。
×:毛羽立ち及び単糸の糸切れが非常に多く確認できた。
【0083】
<高温安定性>
不揮発分濃度が20重量%となるように水で希釈した各サイジング剤希釈液を40℃に調節された恒温槽で保管し、溶液の外観を目視で確認し、下記の評価基準で溶液安定性を判定し、◎及び○を合格とした。
◎ :60日間分離無し。
○ :30日間分離無し、60日以内には分離。
△ :7日間分離無し、30日以内に分離。
× :7日間以内に分離。
【0084】
<均一付着性>
均一付着性の評価を次のフェルト沈降試験にて実施した。
2cm×2cmに切断したニッケ社製オリフェルトS20(No.103)を有効成分1%に水で希釈した各サイジング剤希釈液100mLに浮かべ、沈降するまでの時間(秒数)を計測し、均一付着性の評価を行った。温度:23℃。沈降するまでの時間が短い程均一付着性に優れることを意味する。
指標は次の通りで、◎及び○を合格とした。
非常に良好(◎):90秒以下
良好 (○):90秒超180秒以下
やや不良 (△):180秒超300秒以下
不良 (×):300秒超
【0085】
実施例に使用した化合物は次の通りである。
(A1-1):イソフタル酸、ジエチレングリコール、スルホイソフタル酸ナトリウム塩の共重合物
(A1-2):イソフタル酸、テレフタル酸、ジエチレングリコール、スルホイソフタル酸ナトリウム塩の共重合物
【0086】
[樹脂(A1)の合成]
(合成例 樹脂(A1-1))
反応器中に窒素ガスを封入下、ジメチルイソフタレート950部、ジエチレングリコール1000部、酢酸亜鉛0.5部および三酸化アンチモン0.5部を仕込み、140~220℃で3時間エステル交換反応を行った。次に、5-ナトリウムスルホイソフタル酸30部を添加し、220~260℃で1時間エステル化反応を行った後、240~270℃で減圧下2時間重縮合反応を行った。
続いて得られた芳香族系ポリエステル樹脂200部とエチレングリコールモノブチルエーテル100部を乳化器に仕込み、150~170℃で撹拌し、均一化した。続いて撹拌下で水700部を徐々に加え、不揮発分20重量%の水エマルジョンである芳香族系ポリエステル樹脂(A1-1)を得た。
【0087】
(合成例 樹脂(A1-2))
反応器中に窒素ガスを封入下、ジメチルイソフタレート475部、ジメチルテレフタレート475部、ジエチレングリコール1000部、酢酸亜鉛0.5部および三酸化アンチモン0.5部を仕込み、140~220℃で3時間エステル交換反応を行った。次に、5-ナトリウムスルホイソフタル酸30部を添加し、220~260℃で1時間エステル化反応を行った後、240~270℃で減圧下2時間重縮合反応を行った。
続いて得られた芳香族系ポリエステル樹脂200部とエチレングリコールモノブチルエーテル100部を乳化器に仕込み、150~170℃で撹拌し、均一化した。続いて撹拌下で水700部を徐々に加え、不揮発分20重量%の水エマルジョンである芳香族系ポリエステル樹脂(A1-2)を得た。
【0088】
比較例に使用した成分は次の通りである。
(A´3)脂肪族ポリエステル(ポリオキシエチレングリコールとアジピン酸の共重合物)の水分散体
(A´4)ビスフェノールA系のポリエステル(無水マレイン酸、ビスフェノールAのEO4モル付加物の共重合物)の水分散体
【0089】
(合成例A´3)
反応器中に窒素ガスを封入下、ポリオキシエチレン(10モル)グリコール1.0モル、アジピン酸2.0モルを仕込み、190℃で3時間脱水縮合反応させて、エステル化合物(A-3)を得た。重量平均分子量(Mw)は2840であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.7であった。
エステル化合物(A-3)、POE(150)硬化ヒマシ油エーテル、PO/EO(25/75)ポリエーテル(分子量16000)を乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、不揮発分濃度30重量%のサイジング剤水分散体を得た。
【0090】
(合成例A´4)
無水マレイン酸0.9モルとビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物1.0モルを140℃で5時間反応させて、酸価2.5の不飽和ポリエステル(A-4)を得た。重量平均分子量(Mw)は3051であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.6であった。
不飽和ポリエステル(A-4)、POE(150)硬化ヒマシ油エーテル、PO/EO(25/75)ポリエーテル(分子量16000)を乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、不揮発分濃度30重量%のサイジング剤水分散体を得た。
【0091】
[化合物(A2)の水分散体の製造]
(製造例A2-1)
ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物/エチレンオキサイド150mol付加硬化ヒマシ油エーテル=80/20(重量比)よりなる組成物を乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、均一なビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物の水分散体A2-1を得た。水分散体A2-1の不揮発分は40重量%であった。
水分散体A2-1の平均粒子径を測定したところ、0.19μmであった。また、水分散体A2-1は50℃で1ヶ月放置しても凝集分離や浮上分離は全く見られず、静置安定性に優れたものであった。
【0092】
(製造例A2-2)
製造例A2-1において、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物に代わり、エチレンオキサイド4mol付加ビスフェノールAアクリル酸付加物を使用した以外は製造例A2-1と同様にしてエチレンオキサイド4mol付加ビスフェノールAアクリル酸付加物の水分散体A2-2を得た。水分散体A2-2の不揮発分は40重量%であった。
水分散体A2-2の平均粒子径を測定したところ、0.25μmであった。また、水分散体A2-2は50℃で1ヶ月放置しても凝集分離や浮上分離は全く見られず、静置安定性に優れたものであった。
【0093】
(製造例A2-3)
2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸/エチレンオキサイド150mol付加硬化ヒマシ油エーテル/オキシエチレン-オキシプロピレンブロック重合体(重量平均分子量15,000、オキシプロピレン/オキシエチレン=20/80(重量比))=70/20/10(重量比)よりなる組成物を乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、均一な2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸の水分散体A2-3を得た。水分散体A2-3の不揮発分は40重量%であった。
水分散体A2-3の平均粒子径を測定したところ、0.29μmであった。また、水分散体A2-3は50℃で1ヶ月放置しても凝集分離や浮上分離は全く見られず、静置安定性に優れたものであった。
【0094】
(製造例A2-4)
トリメチロールプロパントリメタクリレート/オキシエチレン-オキシプロピレンブロック重合体(重量平均分子量15,000、オキシプロピレン/オキシエチレン=20/80(重量比))/オキシエチレン-オキシプロピレンブロック重合体(重量平均分子量2,000、オキシプロピレン/オキシエチレン=60/40(重量比))=70/15/15(重量比)よりなる組成物を乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、均一なトリメチロールプロパントリメタクリレートの水分散体A2-4を得た。水分散体A2-4の不揮発分は40重量%であった。
水分散体A2-4の平均粒子径を測定したところ、0.21μmであった。また、水分散体A2-4は50℃で1ヶ月放置しても凝集分離や浮上分離は全く見られず、静置安定性に優れたものであった。
【0095】
実施例又は比較例に使用した成分は次の通りである。
(B1):POE(8)ビスフェノールAエーテル(BA-8グリコール:日本乳化剤株式会社製)
(B2):POE(10)ビスフェノールAエーテル(BA-10グリコール:日本乳化剤株式会社製)
(B3):POE(17.5)ビスフェノールAエーテル(ブラウノン(登録商標)BEO-17.5:青木油脂工業株式会社製)
(B´4)POEジスチレン化フェニルエーテル(エマルゲン(登録商標)A-500)
【0096】
実施例又は比較例に使用した成分は次の通りである。
(C1):2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエチレンオキサイド20モル付加物
(C2):2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエチレンオキサイド5モル付加物
(C3):3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール
(C4):2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール
【0097】
実施例又は比較例に使用した成分は次の通りである。
(D1):エポキシ樹脂の水分散体
【0098】
(製造例D1)
jER1001(三菱ケミカル株式会社製、固状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量450~500)/jER828(三菱ケミカル株式会社製、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:184~194)/POE(150)硬化ヒマシ油エーテル=40/40/20(重量比)よりなる組成物を乳化装置に仕込み、撹拌下水を序々に加え転相乳化させ、不揮発分30重量%のエポキシ樹脂の水分散体(D1)を得た。
【0099】
(E1):酸化ポリエチレンワックス、蜜蝋、カルナバワックス、パラフィンワックスの混合ワックス乳化物(40%)
【0100】
【表1】
【0101】
【表2】
【0102】
【表3】
【0103】
【表4】
【0104】
【表5】
【0105】
表1~4から明らかなように、実施例のサイジング剤は、化合物(A)、及び上記一般式(1)で示される化合物(B)を含有し、前記化合物(A)が特定の芳香族系ポリエステル樹脂(A1)及び特定のエチレン性不飽和基を有する化合物(A2)から選ばれる少なくとも1種を含み、化合物(A)を特定量含有するため、本願課題が解決できている。
特に、アセチレン系界面活性剤(C)を含む実施例15~18では、均一付着性が特に優れる。
一方、表5に示すように、化合物(B)を含まない場合(比較例1、2、3、7、8)、芳香族系の界面活性剤ではあるが一般式(1)で示される化合物(B)ではない場合(比較例3)、脂肪族ポリエステルであり芳香族系ポリエステル樹脂(A1)ではない場合(比較例4)、芳香族系ポリエステル樹脂ではあるが構成単位が異なる場合(比較例5、6)、は、課題が解決できていない。
【産業上利用の可能性】
【0106】
マトリックス樹脂を強化繊維で補強した繊維強化複合材料は、自動車用途、航空・宇宙用途、スポーツ・レジャー用途、一般産業用途等に用いられる。強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの各種無機繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維などの各種有機繊維が挙げられる。
【要約】
高濃度でも高温安定性に優れたサイジング剤、それを用いた強化繊維ストランド及び繊維強化複合材料を提供する。
化合物(A)及び下記一般式(1)で示される化合物(B)を含有する強化繊維用サイジング剤であって、前記化合物(A)が、芳香族系ポリエステル樹脂(A1)及びエチレン性不飽和基を有する化合物(A2)から選ばれる少なくとも1種を含み、前記芳香族系ポリエステル樹脂(A1)が、構成単位として、下記構成単位(I)及び(II)を含むポリエステル樹脂であり、前記エチレン性不飽和基が、ビニルエステル基、アクリレート基及びメタクリレート基から選ばれる少なくとも1種であり、前記強化繊維用サイジング剤の不揮発分に占める前記化合物(A)の重量割合が10重量%以上である、強化繊維用サイジング剤。