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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-23
(45)【発行日】2023-01-31
(54)【発明の名称】二重殻タンクの設置構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/51 20190101AFI20230124BHJP
   F17C 1/06 20060101ALI20230124BHJP
   B65D 90/04 20060101ALI20230124BHJP
   B65D 90/501 20190101ALI20230124BHJP
   B65D 88/76 20060101ALI20230124BHJP
【FI】
B65D90/51
F17C1/06
B65D90/04 B
B65D90/501
B65D88/76
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021182119
(22)【出願日】2021-11-08
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】517043284
【氏名又は名称】株式会社技研
(73)【特許権者】
【識別番号】512077295
【氏名又は名称】株式会社サンテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 正美
(72)【発明者】
【氏名】山本 光信
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-232794(JP,A)
【文献】登録実用新案第3022356(JP,U)
【文献】実開昭55-061582(JP,U)
【文献】特開2020-142824(JP,A)
【文献】特開2008-296945(JP,A)
【文献】特開平09-314667(JP,A)
【文献】特開平09-058790(JP,A)
【文献】特開2021-062909(JP,A)
【文献】特開2009-113859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/51
F17C 1/06
B65D 90/04
B65D 90/501
B65D 88/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重殻タンクを床面上に設置する構造であって、
前記二重殻タンクは、内部に液体が貯留される金属製の内殻と、この内殻の外周に隙間を作るように被覆される合成樹脂製の外殻と、前記内殻から前記隙間への液体漏れを検知するための液漏れ検知装置と、を有し、
前記液漏れ検知装置は、前記内殻の上部から下部に向けて鉛直方向に沿って挿入されるとともに上端が前記内殻の上部から外側に突出され、かつ下側開口が前記内殻および前記外殻の底部の前記隙間に露呈するように配置される液漏れ検知管と、この液漏れ検知管内に挿入されて前記隙間から前記液漏れ検知管内に流入する液体を検知するセンサと、を備え、
前記内殻の外周には網目状織物が覆い被されており、前記外殻の内周には前記隙間から外側への液漏れを防止するための樹脂フィルムが設けられており、
前記二重殻タンクと前記床面との間には、緩衝シートが介装されており、
前記緩衝シートの上面における所定領域には、前記液漏れ検知管の下端を覆う大きさの液体回収促進用の凹部と、内端がそれぞれ前記凹部に直接的または間接的に連なるように接続されかつ外端がそれぞれ前記緩衝シートの外周面から外側へ開放される複数の溝と、が設けられており、
前記二重殻タンクの一側面の下端から上面を経て他側面の下端に至るまでにベルトが巻き掛けられており、
前記床面には、前記ベルトの一端側と他端側とが個別に締結される留め部が設けられていることを特徴とする二重殻タンクの設置構造
【請求項2】
請求項1に記載の二重殻タンクの設置構造において、
前記二重殻タンクは、
直方体でかつ角部が丸められた形状とされていることを特徴とする二重殻タンクの設置構造
【請求項3】
請求項2に記載の二重殻タンクの設置構造において、
前記二重殻タンクは、
長手方向が水平方向に沿うような横置き姿勢で床面上に設置されることを特徴とする二重殻タンクの設置構造
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の二重殻タンクの設置構造において、
前記外殻は、前記内殻において液体貯留量の上限位置よりも上側領域に接着されていて、前記内殻において前記上側領域以外の領域に非接着とされていることを特徴とする二重殻タンクの設置構造
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の二重殻タンクの設置構造において、
前記床面は、地中に形成される凹状空間の内底面とされており、
前記留め部は、前記内底面に埋め込み設置されるアンカーボルトの上端に設けられていることを特徴とする二重殻タンクの設置構造。
【請求項6】
重殻タンクを床面上に設置する構造であって、
前記二重殻タンクは、請求項1から4のいずれか1項に記載の構成とされており、
前記二重殻タンクと前記床面との間において前記床面側には、台座が配置されており、
この台座と前記二重殻タンクの底面との間には、緩衝シートが介装されており、
前記緩衝シートの上面における所定領域には、前記液漏れ検知管の下端を覆う大きさの液体貯留用の凹部と、内端がそれぞれ前記凹部に直接的または間接的に連なるように接続されかつ外端がそれぞれ前記緩衝シートの外周面から外側へ開放される複数の溝と、が設けられており、
前記二重殻タンクの一側面の下端から上面を経て他側面の下端に至るまでにベルトが巻き掛けられており、
前記台座には、前記ベルトの一端側と他端側とが個別に締結される留め部が設けられていることを特徴とする二重殻タンクの設置構造。
【請求項7】
請求項6に記載の二重殻タンクの設置構造において、
前記床面は、地上面または地上の建物内の床面とされていることを特徴とする二重殻タンクの設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重殻タンクの設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、「金属製の内殻の外周に、樹脂フィルムを巻き付けてからFRP(繊維強化プラスチック)などを吹き付けるようにした複合(SF)の二重殻タンクにおいて、前記内殻内の液体が当該内殻の底部と、前記樹脂フィルムおよび前記FRPからなる強化プラスチック層(外殻に相当)との間の隙間に漏洩したときに、この液漏れを検知する液漏れ検知装置を装備しており、表面に微粒子を混合した塗料を塗布し、当該塗料の表面から前記微粒子の少なくとも一部を突出させた塗料層を形成することにより、前記樹脂フィルムが前記内殻の底部に密着することを防止する」ということが記載されている。
【0003】
例えば特許文献2には、「金属製の内殻の外周に、樹脂フィルムを巻き付けてからFRP(繊維強化プラスチック)などを吹き付けるようにした複合(SF)の二重殻タンクにおいて、前記内殻内の液体が、当該内殻の底部と前記樹脂フィルムおよび前記FRPからなる強化プラスチック層(外殻に相当)との間の隙間に漏洩したときに、この液漏れを検知する液漏れ検知装置を装備しており、前記内殻の表面に複数の樹脂テープなどからなる紐状部材を並列に巻き付けることにより、前記二重殻タンクの前記隙間を確保する」ということが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-1607号公報
【文献】特開2011-162205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1では、前記微粒子が前記塗料層の一部範囲に集まるおそれがあるので、前記微粒子を均等に配置するための管理が面倒で手間がかかることが懸念される。
【0006】
また、上記特許文献2では、前記複数の紐状部材を前記内殻に個別に並列に巻き付ける作業が面倒で手間がかかることが懸念される。
【0007】
このような事情に鑑み、本発明は、比較的簡易な構成でありながら、液漏れ検知の信頼性を向上可能とする二重殻タンク、ならびに二重殻タンクの設置構造の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る二重殻タンクの地下設置構造は、二重殻タンクを床面上に設置する構造で二重殻タンクを床面上に設置する構造であって、前記二重殻タンクは、内部に液体が貯留される金属製の内殻と、この内殻の外周に隙間を作るように被覆される合成樹脂製の外殻と、前記内殻から前記隙間への液体漏れを検知するための液漏れ検知装置と、を有し、前記液漏れ検知装置は、前記内殻の上部から下部に向けて鉛直方向に沿って挿入されるとともに上端が前記内殻の上部から外側に突出され、かつ下側開口が前記内殻および前記外殻の底部の前記隙間に露呈するように配置される液漏れ検知管と、この液漏れ検知管内に挿入されて前記隙間から前記液漏れ検知管内に流入する液体を検知するセンサと、を備え、前記内殻の外周には網目状織物が覆い被されており、前記外殻の内周には前記隙間から外側への液漏れを防止するための樹脂フィルムが設けられており、前記二重殻タンクと前記床面との間には、緩衝シートが介装されており、前記緩衝シートの上面における所定領域には、前記液漏れ検知管の下端を覆う大きさの液体回収促進用の凹部と、内端がそれぞれ前記凹部に直接的または間接的に連なるように接続されかつ外端がそれぞれ前記緩衝シートの外周面から外側へ開放される複数の溝と、が設けられており、前記二重殻タンクの一側面の下端から上面を経て他側面の下端に至るまでにベルトが巻き掛けられており、前記床面には、前記ベルトの一端側と他端側とが個別に締結される留め部が設けられていることを特徴としている。
【0009】
この構成では、前記網目状織物の存在により前記樹脂フィルムが前記内殻に密着して張り付くことを防止することができる。
【0010】
特に、二重殻タンクを適宜の床面上に設置した場合、前記二重殻タンクの底面が前記緩衝シートの上面に接触するが、この二重殻タンクの自重により当該二重殻タンクの底面において前記樹脂フィルムが前記網目状織物に圧接して当該底面に前記内殻と前記外殻との間の隙間が潰れると考えられるが、当該網目状織物の繊維それぞれの間に微小隙間が残存することになる。しかも、上記構成によれば、前記緩衝シートの凹部および前記複数の溝の上に位置する前記隙間が潰れなくなる。
【0011】
これらの相乗作用により、仮に、前記内殻に収容される液体が前記内殻の側部から前記隙間に漏洩した場合、当該液体が毛細管現象により前記二重殻タンクの底部に向けて移動するとともに、当該底部における前記微小隙間や前記複数の溝の上に位置する前記隙間を通じて前記凹部つまり前記液漏れ検知管の下側開口に移動しやすくなる。
【0012】
これにより、前記網目状織物を用いるだけの簡易な構成で、前記微小隙間を通じて前記液漏れ検知管の下側開口に集められることになるので、前記液漏れ検知装置により液漏れ発生の有無を確実に検知することが可能になるなど、液漏れ検知の信頼性が向上する。
【0013】
ところで、上記二重殻タンクは、直方体でかつ角部が丸められた形状とされている構成とすることができる。
【0014】
この構成では、円筒形で軸方向両端が閉塞された形状の二重殻タンクに比べると、内容積が大きくなる。しかも、前記角部が丸められているので、前記角部を丸めていない場合に比べると、前記角部への応力集中を緩和できるなど、前記二重殻タンクの耐荷重性が向上する。
【0015】
また、上記二重殻タンクは、長手方向が水平方向に沿うような横置き姿勢で床面上に設置される構成とすることができる。
【0016】
このような設置形態でも、前記二重殻タンクの底部の前記隙間においては、前記網目状織物の繊維それぞれの間に微小隙間が残存することが可能になる。
【0017】
また、上記二重殻タンクにおいて、前記外殻は、前記内殻において液体貯留量の上限位置よりも上側領域に接着されていて、前記内殻において前記上側領域以外の領域に非接着とされている構成とすることができる。
【0018】
この構成によれば、前記内殻から液体が漏れ出る可能性のある領域に前記隙間を確保することが可能になる。
【0019】
また、本発明に係る二重殻タンクの設置構造において、前記床面は、地中に形成される凹状空間の内底面とされており、前記留め部は、前記内底面に埋め込み設置されるアンカーボルトの上端に設けられていることを特徴としている。
【0025】
この構成では、前記二重殻タンクを地中の凹状空間の内底面上に設置する際、当該内底面上に前記緩衝シートを配置してから、この緩衝シート上に二重殻タンクを載置するだけの作業で事足りる。
【0026】
これにより、前記凹状空間の内底面上に例えば台座を設置して前記二重殻タンクを設置するような場合に比べると、比較的簡易かつ低コストで安定して設置することが可能になる。
【0027】
また、上記二重殻タンクを床面上に設置する構造であって、前記二重殻タンクは、請求項1から4のいずれか1項に記載の構成とされており、前記二重殻タンクと前記床面との間において前記床面側には、台座が配置されており、この台座と前記二重殻タンクの底面との間には、緩衝シートが介装されており、前記緩衝シートの上面における所定領域には、前記液漏れ検知管の下端を覆う大きさの液体貯留用の凹部と、内端がそれぞれ前記凹部に直接的または間接的に連なるように接続されかつ外端がそれぞれ前記緩衝シートの外周面から外側へ開放される複数の溝と、が設けられており、前記二重殻タンクの一側面の下端から上面を経て他側面の下端に至るまでにベルトが巻き掛けられており、前記台座には、前記ベルトの一端側と他端側とが個別に締結される留め部が設けられている構成とすることができる。
【0028】
この構成では、前記二重殻タンクの底面が前記緩衝シートの上面に接触するが、この二重殻タンクの自重により当該二重殻タンクの底部において前記樹脂フィルムが前記網目状織物に圧接して当該底部において前記内殻と前記外殻との間の隙間が潰れると考えられるが、当該網目状織物の繊維それぞれの間に微小隙間が残存することになる。
【0029】
しかも、上記構成によれば、前記緩衝シートの凹部および前記複数の溝の存在により、当該凹部および溝上に位置する前記二重殻タンクの前記隙間が潰れなくなる。
【0030】
これらの相乗作用により、仮に、前記内殻に収容される液体が前記内殻の側部から前記隙間に漏洩した場合、当該液体が毛細管現象により前記二重殻タンクの底部に向けて移動するとともに、当該底部における前記微小隙間や前記複数の溝の上に位置する前記隙間を通じて前記凹部つまり前記液漏れ検知管の下側開口に移動しやすくなる。
【0031】
これにより、前記網目状織物を用いるだけの簡易な構成で、前記微小隙間を通じて前記液漏れ検知管の下側開口に集められることになるので、前記液漏れ検知装置により液漏れ発生の有無を確実に検知することが可能になるなど、液漏れ検知の信頼性が向上する。
【0032】
また、上記二重殻タンクの設置構造において、前記床面は、地上面または地上の建物内の床面とされている構成とすることができる。
【0033】
この構成では、前記二重殻タンクを地上面または地上の建物内の床面上に設置する際、当該床面上に前記台座ならびに前記緩衝シートを配置してから、この緩衝シート上に二重殻タンクを載置するだけの作業で事足りる。
【0034】
これにより、例えば前記地上面または地上の建物内の床面上に前記二重殻タンクを比較的簡易かつ低コストで安定して設置することが可能になる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る二重殻タンクは、比較的簡易な構成でありながら、液漏れ検知の信頼性を向上することが可能になる。
【0036】
また、本発明に係る二重殻タンクの設置構造は、比較的簡易な構成でありながら、液漏れ検知の信頼性を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明に係る二重殻タンクおよび二重殻タンクの設置構造の一実施形態を示す端面図である。
図2図1の二重殻タンクとそれの設置に関連する要素とを分離した状態を示す端面図である。
図3図1の二重殻タンクの設置構造を側面から見た図である。
図4図1の二重殻タンクの設置構造を上面から見た図である。
図5図3の矢印(5)-(5)断面図で、二重殻タンクの単体を示している。
図6図1の緩衝シートの平面図である。
図7】本発明に係る二重殻タンクの設置構造の他の実施形態を示す端面図である。
図8図7の二重殻タンクとそれの設置に関連する要素とを分離した状態を示す端面図である。
図9図7の二重殻タンクの設置構造を側面から見た図である。
図10図7の二重殻タンクの設置構造を上面から見た図である。
図11図9の矢印(11)-(11)断面図で、二重殻タンクの単体を示している。
図12図7の緩衝シートの平面図である。
図13図7の緩衝シートおよび台座を分離した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0039】
図1から図6に、本発明の一実施形態を示している。図中、1は二重殻タンクを示している。
【0040】
この実施形態で例示する二重殻タンク1は、直方体に形成されているとともに、そのすべての角部が丸められた形状とされている。
【0041】
この直方体からなる二重殻タンク1のすべての面は長方形とされている。そして、二重殻タンク1のすべての角部が丸められることにより、角楕円(角形に近い楕円)形状などとされている。
【0042】
このような角楕円形状の二重殻タンク1の場合、円筒形で軸方向両端が閉塞されたような二重殻タンクに比べると、内容積の増加、ならびに埋設面積の減少を図ることが可能になる。
【0043】
次に、二重殻タンク1の構造を詳細に説明する。
【0044】
二重殻タンク1は、内殻2と、外殻3と、を有する複合(SF)二重殻構造になっていて、その内部には液漏れ検知装置4が装備されている。
【0045】
内殻2は、例えば鋼材などの金属で形成されていて、その内容物には例えば各種の燃料などの液体が貯留される。
【0046】
外殻3は、内殻2の外側に被覆されるような比較的柔軟な多層構造のシート状の部材とされている。これら内殻2および外殻3の詳細は後で説明する。
【0047】
液漏れ検知装置4は、二重殻タンク1の内殻2からの液体の漏れを検知するものであって、主として液漏れ検知管4a、センサ4b、不図示の検知部などを備えた構成になっている。
【0048】
液漏れ検知管4aは、二重殻タンク1内に上下方向に沿うように挿入されており、その上部が二重殻タンク1の上部から外側に突出され、かつ下側開口が内殻2の底面と外殻3の底面との間の隙間5(図5参照)に露呈するように配置されている。なお、図5において、隙間5は、説明の都合上、誇張して大きく記載している。
【0049】
液漏れ検知管4aの下部は、内殻2の底面に設けられている貫通孔(符号省略)内に嵌め入れられた状態で固定されている。この固定は、液漏れ検知管4aを例えば金属製とする場合には、例えば溶接とされる。
【0050】
この液漏れ検知管4aの下側開口には、図5に示すように、多数の貫通孔を有する蓋4cが固定されている。この固定は、蓋4cを例えば金属製とする場合には、例えば溶接とされる。
【0051】
さらに、内殻2の内周面において前記貫通孔の周辺には、補強板4dが固定されている。この固定は、補強板4dを例えば金属製とする場合には溶接とされる。
【0052】
センサ4bは、液漏れ検知管4a内に収納されていて、詳細に図示していないが、例えば公知のフロート式スイッチが用いられる。
【0053】
このフロート式スイッチは、例えば液漏れ検知管4a内に流入する液体の量つまり液面高さが所定高さ以上になることによってオンになる構成である。但し、センサ4bは、前記フロート式スイッチの他に、公知のいろいろな種類の検出装置を適宜選択して用いることも可能である。
【0054】
前記不図示の検知部は、液漏れ検知管4a内に挿入されるセンサ4bからの出力に基づいて二重殻タンク1の内殻2からの液体漏れの有無を判定する判定処理を行うとともに、液体漏れが有ると判定したときに警報処理を行う。
【0055】
なお、前記判定処理は、センサ4bとしてのフロート式スイッチの出力がオンになったときに二重殻タンク1の内殻2からの液体漏れが有ると判定するようになっている。前記センサ4bの出力がオンになるときの液面高さ(液漏れの量)は、任意に設定される。
【0056】
また、前記警報処理としては、例えば図示していない表示パネルにメッセージを表示する形態、またはブザーを駆動して警報音を発生させる形態など、適宜の形態を採用することができる。
【0057】
次に、二重殻タンク1の構造について、図5を参照して詳細に説明する。
【0058】
内殻2の外表面には、網目状織物6が覆い被されている。外殻3は、例えば樹脂フィルム3aからなる最内層と、FRP(繊維強化プラスチック)3bからなる中間層と、トップコート(保護膜)3cからなる最外層と、を含んでいる。
【0059】
樹脂フィルム3aは、内殻2に対してFRP3bが直接接着されてしまうことを防止するとともに、隙間5(図5参照)から外側への液漏れを防止するために用いられる。
【0060】
この樹脂フィルム3aは、例えば二重殻タンク1に貯留する液体の種類にもよるが、難燃性,耐薬品性,耐候性に優れた合成樹脂(例えばPET、塩化ビニリデンなど)からなるフィルムとすることが好ましい。
【0061】
網目状織物6は、樹脂フィルム3aに圧接させられた状態でも下記する隙間5内に微小隙間を残存させるために用いられている。
【0062】
この網目状織物6は、複数の繊維を撚り合わせたものを網目状に編み込んだ生地のことである。
【0063】
前記繊維としては、例えば耐荷重性に優れた素材、あるいは耐荷重性ならびに耐薬品性に優れた素材、例えばカーボン、ふっ素系樹脂、ポリアミド樹脂(例えばデュポン社商品名ナイロンなど)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などとすることが好ましい。
【0064】
このような構造の二重殻タンク1の製造方法の一例としては、内殻2の外周に網目状織物6を覆い被せるとともに、この網目状織物6の外側に樹脂フィルム3aを覆い被せておいて、この樹脂フィルム3aの表面にFRP3bを層状に形成するとともに、その表面にトップコート3cをコーティングすることにより外殻3を形成することが挙げられる。
【0065】
なお、図5に示すように、外殻3は内殻2の天井部の平坦領域に対して接着されているが、内殻2の肩部から底部までの領域に対しては非接着とされている。
【0066】
前記接着領域は、二重殻タンク1内に貯留される液体の最高液面(任意に設定)よりも上に設定することが好ましい。
【0067】
ここで、前記接着領域は、内殻2の表面にFRP3bを直接形成してから、トップコート3cをコーティングすることにより外殻3を形成すると同時に内殻2の表面にFRP3bを接着させることができる。
【0068】
前記非接着領域には、前記した隙間5が存在することになる。この隙間5内においては、網目状織物6と樹脂フィルム3aとが重ね合わされることになるが、それらは非接着となる。
【0069】
なお、二重殻タンク1の天井部において長手方向の中央に液漏れ検知管4aが配置されており、この液漏れ検知管4aを挟んで二重殻タンク1の長手方向の一端側には第1点検口1aが設けられており、また、他端側には第2点検口1bが設けられている。
【0070】
第1点検口1aから内殻2内には、液体供給管口1c、液体送出管口1d、液体返送管口1e、計量口1fなどが挿入されている。第2点検口1bから内殻2内には、除水口1g、液面計口1h、通気口1iなどが挿入されている。
【0071】
次に、上述した構造の二重殻タンク1の設置形態を説明する。
【0072】
この実施形態では、不図示のクレーンなどによって二重殻タンク1を吊り上げた状態で例えば地中の凹状空間7の内底面7a上に横置きにして運び入れる。
【0073】
なお、二重殻タンク1の天井部と側壁部との連接部分には、図3および図4に示すように、不図示の吊り下げワイヤが引っ掛けられる係止部11が設けられている。この係止部11は、内殻2の外表面に直接固定されており、この係止部11が存在する領域には、外殻3が被覆されていない。
【0074】
前記横置きとは、前記直方体の二重殻タンク1の長手方向が水平方向に沿う姿勢にされている状態のことである。
【0075】
凹状空間7は、地中に掘られて形成されるものであって、この凹状空間7の内側壁部および内底部は、コンクリート構造物などの固形材料とされている。
【0076】
なお、図1および図3に示すように、凹状空間7の内側壁面7bは垂直とされており、また、内底面7aには、水平方向に平坦な隆起部7cが設けられている。
【0077】
この隆起部7c上に二重殻タンク1が緩衝シート8を介して載せられていて、複数のベルト9により二重殻タンク1が不動に固定されている。
【0078】
緩衝シート8は、凹状空間7の内底面7aと二重殻タンク1の底面との間の面圧を均一化するものである。
【0079】
この実施形態では、緩衝シート8の平面的な外形サイズを、二重殻タンク1の底部全体のうち平坦な面と同じに設定されている。
【0080】
これにより、緩衝シート8の平面的な外形サイズは、例えば図6に示すように、二重殻タンク1の底部の平面的な外形サイズよりも小さくなっている。
【0081】
そして、緩衝シート8の上面における所定領域には、凹部8aと、複数の溝8bとが設けられている。
【0082】
凹部8aは、緩衝シート8の上面の中央位置に平面視で円形状に形成されている。この凹部8aは、液漏れ検知管4aの下側開口が配置されるようになっていて、液漏れ検知管4aの下端を覆う大きさに形成されている。この凹部8aは、隙間5に漏洩する液体が液漏れ検知管4aの下側開口の近傍に移動するときに当該移動を促進させるために設けられている。
【0083】
複数の溝8bは、緩衝シート8の上面に格子状に設けられていて、すべての溝8bの内端が凹部8aに直接的または間接的に連なるように接続されており、また、それぞれの外端が緩衝シート8の外周面から外側へ開放されるように設けられている。
【0084】
具体的に、複数の溝8bは、緩衝シート8の長辺に沿う複数(三本)の長尺溝と、短辺に沿う複数(九本)の短尺溝とを含んでいる。
【0085】
なお、例えば図6に示すように、中央に位置する長尺溝および短尺溝の各内端のみが、凹部8aに直接的に接続されているが、他の長尺溝や短尺溝は、中央に位置する長尺溝および短尺溝を介して凹部8aに間接的に接続されるようになっている。
【0086】
ベルト9は、二重殻タンク1の長手方向の複数ヶ所に二重殻タンク1の一側面の下端から上面を経て他側面の下端に至るまでに巻き掛けられている。
【0087】
このベルト9の一端側および他端側が、凹状空間7の内底面に埋め込まれているアンカーボルト10(留め部に相当)の上端に締結部材(図示省略、例えばナット94など)により固定されている。
【0088】
なお、この実施形態では、ベルト9は、図2に示すように、三つのピース91,92,93を継ぎ足して一本にした構成である。
【0089】
三つのピース91~93のうちの中央ピース91が一端側ピース92および他端側ピース93にそれぞれ連結されている。
【0090】
具体的に、三つのピース91~93それぞれは、例えばゴムなどの弾性材料で形成されており、それらの両端には、それぞれ耐荷重性に優れた材料(例えば金属、または合成樹脂など)で形成される取付部91a,91b,92a,92b,93a,93bが設けられている。
【0091】
取付部91a,91b,92a,92b,93a,93bは、例えばL字形状に形成されている。
【0092】
中央ピース91と一端側ピース92および他端側ピース93とを締結する際、それぞれの取付部91a,91b,92a,92b,93a,93bを重ね合わせて、当該重ね合わせた部分を締結部材(例えば寸切りボルト95およびナット96など)により締結するようになっている。
【0093】
このように、二重殻タンク1を凹状空間7内に格納した後、この凹状空間7内に例えばモルタル、あるいは火災防止用の粒状部材(例えば乾燥砂、人口軽砂など)などの充填物(図示省略)が充填される。この充填物は、充填しない場合もある。
【0094】
そして、凹状空間7の上側開口を、図3に示すように、コンクリート構造物などの固形材料により閉塞する。この固形材料が凹状空間7の閉塞部7dになる。
【0095】
この閉塞部7dには、作業者の出入り通路として、三つのマンホール7e,7f,7gが設けられている。
【0096】
三つのマンホール7e,7f,7gは、それぞれ第1点検口1aと、第2点検口1bと、液漏れ検知管4aの上端を覆い囲むように設けられている。これらのマンホール7e,7f,7gには、それぞれ蓋(符号省略)が開閉可能に取り付けられる。
【0097】
このように、二重殻タンク1を地中の凹状空間7の内底面7a上に設置する際、当該内底面7a上に緩衝シート8を配置してから、この緩衝シート8上に二重殻タンク1を載置する作業を行うだけで事足りる。
【0098】
これにより、凹状空間7の内底面7a上に例えば図示していないが台座を設置して二重殻タンク1を設置するような場合に比べると、比較的簡易かつ低コストで安定して設置することが可能になる。
【0099】
しかも、二重殻タンク1を凹状空間7の内底面7a上に設置すると、この二重殻タンク1の自重により当該二重殻タンク1の底部において外殻3の樹脂フィルム3aが網目状織物6に圧接して前記底部の隙間5が潰れると考えられるが、網目状織物6の繊維それぞれの間に微小隙間が残存することになる。
【0100】
しかも、上記構成によれば、緩衝シート8の凹部8aおよび複数の溝8bの上に位置する前記隙間が潰れなくなる。
【0101】
これらの相乗作用により、仮に、内殻2に収容される液体が内殻2の側部から隙間5に漏洩した場合、当該液体が毛細管現象により二重殻タンク1の底部に向けて移動するとともに、当該底部における前記微小隙間や複数の溝8bの上に位置する隙間5を通じて凹部8aつまり液漏れ検知管4aの下側開口に移動しやすくなる。
【0102】
これにより、前記微小隙間を通じて液漏れ検知管4aの下側開口に集められることになるので、液漏れ検知装置4により液漏れ発生の有無を確実に検知することが可能になるなど、液漏れ検知の信頼性が向上する。
【0103】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態によれば、液漏れ検知装置4による液漏れ検知を確実に担保しながら、内容積が大きな直方体形状の複合二重殻構造の二重殻タンク1を地中に横置きに安定した状態で設置することが可能になる。
【0104】
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲内で適宜に変更することが可能である。
【0105】
(1)本発明に係る二重殻タンク1の設置場所については、特に限定されるものではない。
【0106】
例えば図7から図13に示すように、地上面または地上の建物内の床面20上に二重殻タンク1を横置きにして設置することが可能である。
【0107】
このような設置形態において、上記図1図6に示した設置形態との相違は、台座30を用いていることである。
【0108】
具体的に、この設置形態では、床面20上に台座30を配置するとともに、この台座30上に緩衝シート8を敷いた状態で、この緩衝シート8の上に二重殻タンク1を載置するようにしている。
【0109】
緩衝シート8の平面的な外形サイズは、上記実施形態と同様、図12に示すように、二重殻タンク1の底面の外形サイズよりも小さく設定されている。
【0110】
台座30は、図13に示すように、四角い外枠31の内部空間に格子部32を取り付けた構成になっている。
【0111】
この台座30の平面的な外形サイズは、緩衝シート8の平面的な外形サイズと同じに形成されている。
【0112】
外枠31は、二本のいわゆるC字形の鋼板からなる長尺バー31aと二本のいわゆるC字形の鋼板からなる短尺バー31bとをロ字形に組み合わせて溶接した構成とされている。
【0113】
この外枠31の長尺バー31aの長手方向複数ヶ所には、それぞれベルト9を固定するための留め部33が固定されている。この固定は、留め部33を金属製する場合だと、例えば溶接とされる。そして、ベルト9の取付部92b,93bと留め部33とを重ね合わせて、この重ね合わせ部分を締結部材(例えばボルト34、ナット35など)により結合する。
【0114】
格子部32は、二本のいわゆるC字形の鋼板からなる第1バー32aと三本のいわゆるC字形の鋼板からなる第2バー32bとを格子状に組み合わせた構成とされている。
【0115】
この格子部32の第1バー32aは、外枠31の二本の長尺バー31aの間に架け渡されるように例えば溶接により接合されている。
【0116】
格子部32の三本の第2バー32bのうち、両端に位置する第2バー32bは、第1バー32aと外枠31の短尺バー31bとの間に架け渡されるように例えば溶接により接合されている。
【0117】
また、格子部32の三本の第2バー32bのうち、中央に位置する第2バー32bは、二本の第1バー32aの間に架け渡されるように例えば溶接により接合されている。
【0118】
以上説明したように、台座30を用いて地上面または地上の建物内の床面20上に二重殻タンク1を設置する際、当該床面20上に台座30ならびに緩衝シート8を配置してから、この緩衝シート8上に二重殻タンク1を載置するだけの作業で事足りる。これにより、比較的簡易かつ低コストで安定して設置することが可能になる。
【0119】
しかも、二重殻タンク1を設置するような形態においても、上記地中の凹状空間7内に二重殻タンク1を設置する形態と同様、液漏れ検知装置4による液漏れ検知を確実に担保しながら、内容積が大きな直方体形状の複合二重殻構造の二重殻タンク1を地上面または地上の建物内の床面20上に横置きに安定した状態で設置することが可能になる。
【0120】
(2)本発明に係る二重殻タンク1の設置姿勢については、特に限定されるものではない。
【0121】
例えば図示していないが、二重殻タンク1を縦置きに設置することが可能である。この縦置きとは、直方体形状の二重殻タンク1の長手方向が鉛直方向に沿う姿勢とされることである。この場合、二重殻タンク1の底面を緩衝シート8を介して床面に設置する形態にすることができ、また、二重殻タンク1の底面を緩衝シート8および台座30を介して床面に設定する形態にすることが考えられる。
【0122】
このように二重殻タンク1を縦置きにした場合、狭小敷地の建物の床面上や地下に設置するうえで有利になる。
【0123】
(3)上記実施形態において、二重殻タンク1の天井部に設けられる第1、第2点検口1a,1b内への挿入対象の種類については特に限定されるものではなく、二重殻タンク1の使用用途などに応じて適宜に特定すればよい。
【0124】
(4)上記実施形態において、凹状空間7と二重殻タンク1との間に発生する空間に多量の充填物(図示省略)を充填する場合には、例えば図示していないが、前記充填物の中に外側液漏れ検知装置を設置することが可能である。
【0125】
この外側液漏れ検知装置は、二重殻タンク1の外殻3から液体が漏洩しているか否かを調べるものであって、公知の構成のものを使用することができる。
【0126】
(5)上記実施形態では、角楕円形状の二重殻タンク1を例に挙げているが、本発明は、図示していないが、例えば円筒形で軸方向両端が閉塞された形状の二重殻タンクならびに当該二重殻タンクの設置構造としたものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、二重殻タンクならびに二重殻タンクの設置構造に好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 二重殻タンク
2 内殻
3 外殻
3a 樹脂フィルム
3b FRP
3c トップコート
4 液漏れ検知装置
4a 液漏れ検知管
4b センサ
5 隙間
6 網目状織物
7 凹状空間
7a 内底面
7b 内側壁面
7c 隆起部
7d 閉塞部
8 緩衝シート
8a 凹部
8b 溝
9 ベルト
10 アンカーボルト
11 係止部
20 床面
30 台座
33 留め部
【要約】
【課題】比較的簡易な構成でありながら、液漏れ検知の信頼性を向上可能とする二重殻タンクの提供。
【解決手段】二重殻タンク1は、内部に液体が貯留される金属製の内殻2と、この内殻2の外周に隙間5を作るように被覆される合成樹脂製の外殻3と、内殻2から隙間5への液体漏れを検知するための液漏れ検知装置4と、を有する。液漏れ検知装置4は、内殻2の上部から下部に向けて鉛直方向に沿って挿入されるとともに上端が内殻2の上部から外側に突出され、かつ下側開口が内殻2および外殻3の底部の隙間5に露呈するように配置される液漏れ検知管4aと、この液漏れ検知管4a内に挿入されて隙間5から液漏れ検知管4a内に流入する液体を検知するセンサ4bと、を備える。内殻2の外周には網目状織物6が覆い被されており、外殻3の内周には隙間5から外側への液漏れを防止するための樹脂フィルム3aが設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13