(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ゴルフ練習具
(51)【国際特許分類】
A63B 53/00 20150101AFI20230126BHJP
A63B 69/36 20060101ALI20230126BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20230126BHJP
【FI】
A63B53/00 E
A63B53/00 H
A63B69/36 502Z
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2020199940
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2022-07-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520475609
【氏名又は名称】井上 真
(74)【代理人】
【識別番号】100220733
【氏名又は名称】宮▲崎▼ 拓規
(72)【発明者】
【氏名】井上 真
【審査官】池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3174076(JP,U)
【文献】米国特許第05178394(US,A)
【文献】特開平07-194754(JP,A)
【文献】米国特許第04789158(US,A)
【文献】実開昭61-065974(JP,U)
【文献】米国特許第06238299(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00-69/40
A63B 53/00-53/14
A63B 60/00-60/64
A63B102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブのシャフト上にあるゴルフクラブ全体の重心位置に装着するゴルフ練習具であって、
前記シャフトに装着する固定部と、前記固定部の軸受け部に嵌合する軸部のみからなり、
前記固定部は前記シャフトを弾性挟持する挟持部と、前記挟持部の反対側に軸受け部を有し、前記軸受け部に前記軸部の長手方向の端部が押し込み嵌合されており、
前記シャフトに装着した状態で、前記軸部の長手方向の前記軸受け部とは反対側の一端が前記ゴルフクラブの芯におよそ位置することを特徴とするゴルフ練習具。
【請求項2】
前記軸部は棒状の一部品からなり、前記挟持部は前記シャフトに押し込み嵌着できる略C字形状であることを特徴とする請求項
1に記載のゴルフ練習具。
【請求項3】
ゴルフクラブのシャフト上にあるゴルフクラブ全体の重心位置に装着するゴルフ練習具であって、
前記シャフトに装着する固定部と、前記固定部の軸受け部に嵌合する複数の軸部のみからなり、
前記複数の軸部の中心にある軸部は前記シャフトの長手方向に対して垂直に設けられ、
前記複数の軸部は同一平面上にあり、隣り合う前記複数の軸部の中心線からの角度差はそれぞれ一定の所定の角度ずつとなるように設けられており、
前記シャフトに装着した状態で、前記複数の軸部の中心にある軸部の長手方向の前記軸受け部とは反対側の一端が前記ゴルフクラブの芯におよそ位置することを特徴とするゴルフ練習具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばゴルフに関わる製品等に係り、特にゴルフ練習具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴルフは止まっているボールを打って飛ばすゲームであり、一見、簡単そうに見えるが、止まっているボールを打つこと自体は勿論、真っ直ぐ意のままに飛ばすとなれば至難の技を要するスポーツである。そのため、多くのゴルファーは、ゴルフボールの飛ぶ方向がバラつき、ショット回数が多くなり、それを改善しようと練習場に通ったり、教則本を読んだり、ティーチングプロについたりして上達するための努力を行っている。
【0003】
しかしながら、どんなに努力しても本当に体得することは非常に難しく、一時、上達したと思っても、また元に戻ったり、その繰り返しで長年かけても上手くいかないのが一般ゴルファーの実態である。一般的には、18ホールでパープレー72のところ、相当の努力をしてスコアー100を切るのが精一杯といったところであり、そこからさらにスコアー90を切る、またさらに80を切るとなれば、膨大な練習量と時間を費やすことが必要となるのが現実である。
【0004】
なぜ、ゴルフがこれほどまでに難儀なスポーツかと考えたとき、その難しくしている根本的な原因は、ゴルフクラブの形態そのものにあると考えられる。野球のバットとの比較でみた場合、野球のバットは、芯と呼ばれる位置がバットという物体の内部に位置するのに対し、ゴルフクラブの場合は、野球のバットの芯に当たる部分がゴルフクラブの物体内にはなく、ゴルフクラブのシャフトの長手方向を水平にした時のシャフト上にあるゴルフクラブ全体の重心位置からの鉛直上下方向の線と、ゴルフクラブのシャフトの長手方向を地面に対して略垂直にした時のクラブヘッド上にあるゴルフクラブ全体の重心位置からの鉛直上下方向の線との重なるあたりの空間に芯があるからである(
図14参照)。
【0005】
しかも、上下から見た場合、野球のバットは同心円で対称的であるところ、ゴルフクラブは全く不均一な構造であるため、動くボールを野球のバットで打てるのに、止まっているボールをゴルフクラブで打てないといったことが起こりうるのである。
【0006】
ここで、ゴルフ練習具に関わる技術が各種提案されている。ゴルフ練習具に関わる技術としては、重心を意識したシャフトへの取付具がある。ゴルフ練習具に関わる技術を開示した文献として、例えば、特許文献1及び2がある。
【0007】
すなわち、特許文献1の記載の発明は、ゴルフクラブのヘッドの重心を重視し、本来のゴルフクラブのシャフトの先端がクラブヘッドの重心を指す位置にないので、ゴルフクラブのシャフトに仮想シャフトと称するもう一本のシャフトを付け加えて、その先端がクラブヘッドのフェースの重心付近の位置まで手元から伸びているゴルフクラブを発明の基本としている。
【0008】
一方、特許文献2の記載の発明は、基本的に上記特許文献1と同様の仮想シャフトに関するもので、上記特許文献1との違いは、ゴルフクラブには、クラブヘッドの重心とゴルフクラブ全体の重心の2つの重心があるとして、上記特許文献1で仮想シャフトの先端がクラブヘッドのフェースの重心付近の位置まで伸びていたものをゴルフクラブ全体の重心付近にとどめて、その延長線上が上記特許文献1同様にクラブヘッドの重心付近を指すとしたものである。そして、そのゴルフクラブ全体の重心はどこかと言えば、同文献の段落0002に記載のクラブシャフトの中心よりクラブヘッド側、同文献の
図1に示されたクラブシャフトの一部位にあるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2006-326269号公報
【文献】特開2008-188410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ゴルフというスポーツは、非常に繊細なスポーツであり、本来のゴルフクラブの重量に明らかに影響を及ぼすであろう仮想シャフトのような装置を取り付けてスイングすれば、それだけでバランスが狂い、本来のゴルフクラブで実際にボールを打つのとは異なる違和感を覚えてしまう。よって、実際には、本来のシャフトにこのような仮想シャフトを一体化して仮想シャフトとクラブヘッドの重心を重視、意識してスイングの練習を行った後に、上記特許文献1又は上記特許文献2記載の発明を外して、本来のシャフトのみのゴルフクラブで、ボールを打ってみても、ミート率を上げられる実効性には乏しいと考えられる。
【0011】
さらに言えば、ゴルフクラブは、すべての番手で、重量、長さ、形状、それらによる重量バランスに違いがあるので、実際のゴルフクラブにこのような仮想シャフトを取り付けた場合には、各番手ごとに違う重量バランスがますます違うことになり、違和感を増幅させる結果になり得る。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、実際のゴルフ場に行かなくとも、ゴルフクラブを振れる空間さえあれば、膨大な練習時間・練習量をかけずに、ゴルフクラブの適切な構え方(アドレス)やスイングフォームを身に着けることができる練習を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るゴルフ練習具は、クラブヘッドを備えたゴルフクラブのシャフトに装着するゴルフ練習具であって、前記シャフトに装着するもので、一部に軸受け部が形成されている固定部と、前記軸受け部に嵌合する軸部とを備え、前記シャフトの長手方向が水平にされ、前記クラブヘッドのトウ側が地面側に位置するようにされた状態で、前記固定部は前記シャフト上にあるゴルフクラブ全体の重心位置に装着され、前記軸部の長手方向の前記軸受け部とは反対側の一端は、前記シャフトの長手方向に対して鉛直下方向を向き、ゴルフクラブの芯を指し示すことを特徴としている。好ましくは、ゴルフクラブのシャフト上にあるゴルフクラブ全体の重心位置に装着するゴルフ練習具であって、前記シャフトに装着する固定部と、前記固定部の軸受け部に嵌合する軸部のみからなり、前記シャフトに装着した状態で、前記軸部の長手方向の前記軸受け部とは反対側の一端が前記ゴルフクラブの芯におよそ位置することを特徴とするものである。
【0014】
この態様において、前記ゴルフクラブの芯とは、前記シャフトの長手方向が水平にされた時の前記シャフト上にあるゴルフクラブ全体の重心位置からの鉛直上下方向の線と、ゴルフクラブの前記シャフトの長手方向を地面に対して略垂直にした時の前記クラブヘッド上にあるゴルフクラブ全体の重心位置からの鉛直上下方向の線との重なるあたりの空間であることを特徴としてもよい。
【0015】
また、前記固定部と軸部は弾性体であり、前記固定部は前記シャフトを弾性挟持する挟持部と、前記挟持部の反対側に軸受け部を有し、前記軸受け部に前記軸部の長手方向の端部が押し込み嵌合されていることを特徴としても良い。さらに好ましくは、前記軸部は棒状の一部品からなり、前記挟持部は前記シャフトに押し込み嵌着できる略C字形状であることを特徴としても良い。また、前記固定部と前記軸部が一体不可分に形成されていることを特徴としてもよい。
【0016】
また、前記軸部の太さが、前記シャフトの径と同程度または幅狭であることを特徴としてもよい。
【0017】
また、前記固定部は、前記シャフトの長手方向を軸に対して回動し得るように、シャフトに固定されていることを特徴としてもよい。
【0018】
また、前記軸部の長手方向の長さが、3cm以上かつ8cm以下であることを特徴としてもよい。
【0019】
また、ユーザのゴルフ技能の熟練度によって、前記軸部の太さを選択できることを特徴としてもよい。
【0020】
他の態様において、クラブヘッドを備えたゴルフクラブのシャフトに装着するゴルフ練習具であって、前記シャフトに装着するもので、一部に軸受け部が形成されている固定部と、前記軸受け部に嵌合する5つの軸部とを備え、前記5つの軸部の中心の軸部は、前記シャフトの長手方向に対して垂直に設けられ、前記5つの軸部は同一平面上にあり、隣り合う前記5つの軸部の中心線からの角度差は、それぞれ10度ずつとなるように設けられており、前記シャフトの長手方向が水平にされ、前記クラブヘッドのトウ側が地面側に位置するようにされた状態で、前記固定部は前記シャフト上にあるゴルフクラブ全体の重心位置に装着され、前記5つの軸部の中心にある軸部の長手方向の前記軸受け部とは反対側の一端は、前記シャフトの長手方向に対して鉛直下方向を向き、ゴルフクラブの芯を指し示すことを特徴としてもよい。
【0021】
この態様において、前記ゴルフクラブの芯とは、前記シャフトの長手方向が水平にされた時の前記シャフト上にあるゴルフクラブ全体の重心位置からの鉛直上下方向の線と、ゴルフクラブの前記シャフトの長手方向を地面に対して略垂直にした時の前記クラブヘッド上にあるゴルフクラブ全体の重心位置からの鉛直上下方向の線との重なるあたりの空間であることを特徴としてもよい。
【0022】
また、前記固定部と前記軸部が一体不可分に形成されていることを特徴としてもよい。
【0023】
このほか、ゴルフクラブと一体不可分に形成されているゴルフ練習具であっても良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、実際のゴルフ場に行かなくとも、ゴルフクラブを振れる空間さえあれば、膨大な練習時間・練習量をかけずに、ゴルフクラブの適切な構え方(アドレス)やスイングフォームを導き出すことができる。その結果、クラブヘッドのフェース面とゴルフボールが正確にあたり、その最適なショットの感覚が身に着くことにより、ショットの回数を少なくしてスコアアップを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るゴルフ練習具の全体斜視図である。
【
図6】同ゴルフ練習具の装着の様子を示す図である。
【
図7】同ゴルフ練習具を備えたクラブと重力方向を示す図である。
【
図8】クラブヘッド自身の重みでクラブヘッドが地面に向かって回動し、クラブヘッドのトウ側が地面側に位置する様子を示す図である。
【
図9】同ゴルフ練習具を備えたゴルフクラブを両足を閉じて構えた様子を示す図である。
【
図10】同ゴルフ練習具の軸部がシャフトの幅内に収まっていない様子を示す図である。
【
図11】ドライバー(A)またはウェッジ(B)の場合の体に対するグリップの位置を示す図である。
【
図12】同ゴルフ練習具を備えたゴルフクラブを構え、足を広げた様子を示す図である。
【
図13】同ゴルフ練習具を備えたゴルフクラブのテイクバックの様子を示す図である。
【
図14】ゴルフクラブの横にした場合の重心の線と、ゴルフクラブを縦にした場合の重心の線とが重なるあたりの空間である芯を示す図である。
【
図15】本発明の第1実施形態に係るゴルフ練習具と異なり、5つの軸部を有する場合の正面図である。
【
図16】本発明の第1実施形態に係るゴルフ練習具と異なり、5つの軸部を有する場合の分解斜視図である。
【
図17】
図8記載のゴルフクラブとゴルフ練習具1を図14に重ね合わせた図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態について説明する。
【0027】
<第1実施形態>
【0028】
図1には本発明の第1実施形態に係るゴルフ練習具の全体斜視図、
図2には同ゴルフ練習具の正面図、
図3には同ゴルフ練習具の側面図、
図4には同ゴルフ練習具の平面図、
図5には同ゴルフ練習具の分解斜視図を示し、説明する。
【0029】
これらの図に示されるように、ゴルフ練習具1は、ゴルフクラブのシャフト22に固定するための固定部11、及び軸部12からなる。固定部11は、
図5に示されるように、挟持部111、及び軸受け部112からなる。挟持部111は、
図2に示されるように、略C字形状である。
【0030】
固定部11の挟持部111の形成側とは反対側の他端面の中央には、軸部12を装着するための溝である軸受け部112が形成されている。
【0031】
軸部12は、
図1~5に示すように四角柱形状
の一部品からなっている。軸部12の長手方向の一端を軸受け部112に押し込み、押し込む面に対して垂直に嵌め込めて、一体化させることができる。
【0032】
シャフト22は、一般的なものであり、例えば、スチール製である。
【0033】
図4を参考に、固定部11の縦横は、例えば、1.0cm~3.0cmである。
図3を参考に、固定部11の高さは、例えば、1.0cm~3.0cmである。軸部12の軸の長手方向の長さは、例えば、3cm~8cmである。軸部12の太さ(幅)は、シャフト22の径と同じか、またはそれよりも小さくなっている。挟持部111のC字形状の内面の開口の径は、例えば、0.7cm~1.5cmである。
【0034】
固定部11、及び軸部12は、弾性体(例えば、合成ゴム)である。そのため、挟持部111のC字形状の間にシャフト22を通すように押し当てることで、挟持部111が弾性変形し、挟持部111のC字形状が内側から外側に押し出され、シャフト22が挟持部111のC字形状の間を通り、弾性変形が戻ることで、シャフト22が挟持され固定される。また、固定部11をシャフト22に一度嵌着した後、指で挟持部111のC字形状の間を内側から外側に押し出すか、または、ある程度の力を回転方向に加えることで、ゴルフ練習具1をシャフト22の長手方向を軸にして回動させることができる。さらに、同様にして、ゴルフ練習具1をシャフト22の長手方向に沿って前後に摺動させることができる。
【0035】
ゴルフ練習具1の重さは、例えば、合成ゴムを成型して製造した場合には、例えば、10g~30gである。
【0036】
本実施形態では、軸部12を軸受け部112に嵌合して一体化させ、
図6に示されるようにシャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27にゴルフ練習具1を装着するが、
図8に示されるように、シャフト22の長手方向を水平にした時に、シャフト22に対してクラブヘッド21のトウ側が、地面側に位置するようにし、軸部12の長手方向の軸受け部112側とは反対側の一端が、シャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27から、シャフト22の長手方向に対して鉛直下方向を指し示すようにゴルフ練習具1を取り付ける。
【0037】
シャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27にゴルフ練習具1を装着することで、ゴルフ練習具1をつけない時とつけた時とでシャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置が変わらずにすむことから、ゴルフクラブ全体のバランス、及びスイング感覚に影響を与えにくい。よって、ゴルフ練習具1を用いて、正しい構えやスイングフォームが定まった後、ゴルフ練習具1を外しても、同じ構えで同じスイング感覚でスイングすることができ、的確にショットすることができる。
【0038】
以下、より具体的に、右利きのゴルファーが使用する場合を例に挙げて、シャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27への装着方法を説明する。
【0039】
まずは、シャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27を把握するため、左手でグリップ23を持ち、右手は、例えば、右手の人差し指の腹でシャフト22を下から支えるようにして、シャフト22の長手方向を水平にする。次に、左手からグリップ23を放し、右手の人差し指の腹を支点にして、天秤の要領でシャフト22が水平にバランスが取れる位置を確認する。左手からグリップ23を放した時、仮にシャフト22に対してクラブヘッド21のトウ側が、地面側に位置していない場合は、クラブヘッド21自身の重みでクラブヘッド21がシャフト22の長手方向を軸に回動し、クラブヘッド21のトウ側が地面側に位置することになる。シャフト22が水平にバランスが取れて、シャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27が分かれば、その重心の位置に、軸部12を軸受け部112に嵌合して一体化させたゴルフ練習具1を嵌着させる。
【0040】
ここで、トウ側とは、
図7、及び
図8に示されるように、クラブヘッド21の長手方向のシャフト22側とは反対側の一端部を指し、逆にヒールとは、クラブヘッド21の長手方向のシャフト22側の他端部を指す。
【0041】
上述した説明では、シャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27を把握するため、左手でグリップ23を持ち、右手の人差し指の腹でシャフト22を下から支えるようにして、シャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27を確認したが、一般的にはグリップ側よりもヘッド側の方が重いため、シャフト22の長手方向の中心よりもヘッド側寄りの任意の位置に、ゴルフ練習具1を嵌着させておいて、左手でグリップ23を持ち、もう一点は右手の人差し指の腹の代わりに、装着したゴルフ練習具1を持って行うこともできる。そして、左手からグリップ23を放し、ゴルフ練習具1を支点にして、天秤の要領でシャフト22が水平にバランスが取れる位置を確認する。
【0042】
バランスが取れた場合、ゴルフ練習具1がシャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27に装着されたことになる。ここで、上述した右手の人差し指の腹の場合と同様に、左手からグリップ23を放した時、仮に、
図7に示されるように、シャフト22に対してクラブヘッド21のトウ側が、地面側に位置していない場合は、ゴルフ練習具1は、シャフト22の長手方向を軸に対して回動し得るようにシャフト22に装着されているため、左手からグリップ23を放し、右手だけでゴルフ練習具1を持ち、挟持部111のC字形状の間を内側から外側に押し出すように、左の指で少し広げると、
図8に示されるように、クラブヘッド21自身の重みでクラブヘッド21がシャフト22の長手方向を軸に回動し、クラブヘッド21のトウ側が地面側に位置することになる。
【0043】
右手の人差し指の腹を用いた場合、及びゴルフ練習具1を用いた場合のどちらの場合も、ゴルフ練習具1の軸部12の長手方向の軸受け部112側とは反対側の方向は、シャフト22に対して鉛直下方向を指す。よって、ゴルフ練習具1はゴルフクラブの芯33を指すことになる。
【0044】
ここで、ゴルフクラブの芯33とは、
図14に示されるように、ゴルフクラブのシャフト22の長手方向を水平にした時のシャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27からの鉛直上下方向の線31と、ゴルフクラブのシャフト22の長手方向を地面に対して略垂直にした時のクラブヘッド21上にあるゴルフクラブ全体の重心位置28からの鉛直上下方向の線32との交わる、または、交わらずに交差する(すれ違う)、すなわち重なるあたりの空間をいう。
図17に示すように、シャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27にゴルフ練習具1を装着すると、その軸部12の長手方向の軸受け部112とは反対側の一端が、このゴルフクラブの芯33におよそ位置する。なお、図17は図8記載のゴルフクラブとゴルフ練習具1を図14に重ね合わせた図である。
【0045】
一方、バランスが取れなかった場合は、ゴルフ練習具1をシャフト22の長手方向に沿ってある程度の力を加えることで前後に摺動させ、バランスが取れる位置に装着させる。
【0046】
図9には本発明の第1実施形態に係るゴルフ練習具1を備えたゴルフクラブを構えた様子を示し、説明する。
【0047】
同図に示されるように、本ゴルフ練習具1を装着したら、ゴルフボールの飛球方向に対してクラブヘッド21が正面を向くように(クラブヘッド21のソールの線24が飛球線と直交になるように)置き、両足を揃えて両手ではなく左か右のどちらか片方の手でグリップ23を握り、ユーザ視点において、同図に示されるようにゴルフ練習具1の軸部12全体とシャフト22が重なるように、即ちより具体的には、ゴルフ練習具1の軸部12がシャフト22の幅内に収まるように、手を動かしてグリップ23の位置を合わせる。その位置は、
図11(A)に示されるように、ロフト角の小さいドライバーの場合は、通常、グリップ23の位置が体に対して左寄りに来て、
図11(B)に示されるように、ロフト角の大きいウェッジの場合は、右寄りに来る。
【0048】
このとき、クラブヘッド21の置く位置とグリップ23の位置が適切かどうかを確かめるためには、両足を揃えたまま、もう一方の手を添えてグリップして、できるだけ頭を動かさないように体の軸を固定して、バックスイングを円軌道にクラブヘッド21が膝の高さに来るくらいまで行い、その間に目視でゴルフ練習具1の軸部12全体とシャフト22が重なるようになっていることが目安となる。
図10に示されるように、ユーザ視点において、もし重なっていなければ、クラブヘッド21の置く位置を左右、上下、前後にずらしたり、グリップ23の握り方を調節したりして、再度、バックスイングをクラブヘッド21が膝の高さに来るくらいまで行い、その間に目視でゴルフ練習具1の軸部12全体とシャフト22が重なっていることが確認できる位置であれば、その確認できる位置が、クラブヘッド21を置く適切な位置であって、グリップ23の適切な位置となる。微妙な調整が必要な場合は、ゴルフ練習具1をシャフト22の長手方向を軸にして回動させ、ゴルフ練習具1の軸部12全体とシャフト22が重なるように調整することもできる。
【0049】
クラブヘッド21の置く位置とグリップ23の位置が決まったら、
図12に示されるように、目視でゴルフ練習具1の軸部12全体とシャフト22が重なっていることを確認しながら、もう一方の手を添えてグリップして、閉じられていた両足を飛球線に平行になるように等間隔に広げてスタンスをとる。
【0050】
引き続き、ゴルフクラブをバックスイングして目視でゴルフ練習具1の軸部12全体とシャフト22が重なっていることを確認しながら、
図13に示されるように、右側に膝の高さあたりまで上げて行き、ゴルフ練習具1の軸部12全体とシャフト22がずれることがあれば、重なるように右足を飛球線より、所謂クローズドスタンスの形に引く、或いは、左足を所謂オープンスタンスの形に引いてスタンスをとる。
【0051】
クローズドスタンスになるのはドライバーを使用する場合が一般的で、オープンスタンスになるのはウェッジアイアンを使用する場合が一般的であり、その他のクラブについては、その間にあり、7番アイアンか8番アイアンのミドルアイアンあたりで飛球線方向と両足のつま先が平行になるスクウェアー、それよりもロフト角の小さいクラブは若干のクローズドスタンス、それによりもロフト角の大きいクラブは若干のオープンスタンスになるのが一般的である。
一般的というのは、ゴルフクラブは製造メーカーによって同じクラブの番手でもロフト角に違いがあるためで、違いがあっても、上記のようにゴルフ練習具1の軸部12全体とシャフト22が重なることを目視で確認すれば、おのずと両足のスタンスは決まって来るので、ゴルフクラブの製造メーカーを問わず、どのようなクラブでも対応できる点も本ゴルフ練習具の特徴である。
【0052】
構えやスタンスが決まったら、目視でゴルフ練習具1の軸部12全体とシャフト22が重なることを意識しながら、繰り返し膝のあたりまでの素振りを行い、その感覚をつかむことで、クラブヘッド21のフェース面とゴルフボールが正確にあたる精度が向上するように練習することができる。その際、ボールを打つ前に本ゴルフ練習具を取り外してもよい。
【0053】
以上説明した本発明の第1実施形態によれば、クラブヘッド21を備えたゴルフクラブのシャフト22に装着するゴルフ練習具であって、前記シャフト22を挟持する挟持部111と軸受け部112とからなる固定部11と、前記軸受け部112に嵌合され、前記シャフト22の長手方向に対して垂直に立設される軸部12と、を備え、前記固定部11は、アドレス時に、前記軸部12全体と前記シャフト22とがユーザ視点で重なって見えるような位置関係となるように前記シャフトの重心位置に装着されるゴルフ練習具も、その一態様として提供される。
【0054】
<第2実施形態>
【0055】
前述した第1実施形態では、ゴルフ練習具1は、固定部11と軸部12とで構成されていたが、固定部11と軸部12が一体に形成されている点で異なる。本実施形態では、固定部11と軸部12とが分離できない構成になっている。そのため、固定部11または軸部12が転がって紛失してしまうといったこと防止することができる。また、本実施形態では、部品の点数が第1実施形態よりも少なくて済むため、コスト面で有利となる。
【0056】
したがって、本発明の第1及び第2の実施形態によれば、以下の効果が奏される。
【0057】
第1に、ゴルフのスイングは、人それぞれの体型、体の向きや手首の角度、グリップの仕方、また実際のゴルフ場では地面のアンジュレーションなど様々な不特定要素が考えられるが、ゴルフ練習具1を唯一の指標として、構え及びスイングの調整をすることができる。具体的には、ゴルフ練習具1を装着して、打球したときに、ボールがフックまたはスライスして飛んでしまう場合は、シャフト22の長手方向の装着位置は変えずに、ゴルフ練習具1をシャフト22の長手方向を軸に時計回りまたは反時計回りに、例えば、角度を3度~5度回動させ、その状態で打球する。この時、改善されてまっすぐ打球することができたか、または、フックまたはスライスがどのくらいかかってしまったか分析することで、ゴルフ練習具1を次にどのように回動させ、それを基準に構えをどう調整すべきか、スイングを改善させるための判断要素とすることができる。
【0058】
第2に、ゴルフ練習具1は、シャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27に装着されている。よって、ゴルフ練習具1がシャフト22に装着されているかどうかに関わらず、シャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置は変わらないことから、ゴルフ練習具1を装着したことによるゴルフクラブ全体のバランス、及びスイング感覚に影響を与えにくい。従って、ゴルフ練習具1を用いて、正しい構えやスイングフォームが定まった後、ゴルフ練習具1を外しても、同じ構えで同じスイング感覚でスイングすることができ、的確にショットすることができる。
【0059】
さらに、ゴルフ練習具1がシャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27に装着され、ゴルフ練習具1の軸部12の長手方向の軸受け部112側とは反対側の方向は、シャフト22に対して鉛直下方向を指す。よって、ゴルフ練習具1はゴルフクラブの芯33を指すことになる。従って、ユーザはゴルフクラブの芯33を意識せずとも、単に軸部12全体とシャフト22の重なりを意識するだけで、構えとスイングフォームを正すことが出来る。なお、本願発明者は、様々なゴルフクラブで試して確認したところ、シャフト22の長手方向を水平にして、ゴルフ練習具1をシャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27に装着した直後のゴルフ練習具1の軸部12の指す方向は、特にアイアンについて、ゴルフクラブの芯33を指していることを確認した。また、ドライバーの場合は、シャフト22の長手方向を水平にして、ゴルフ練習具1をシャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27に装着した直後のゴルフ練習具1の軸部12の指している方向から、ドライバーヘッド単体の重心側に向けるために、軸部12をシャフト22の長手方向の軸を中心に反時計周りに回動させ、適切に位置を調節することで、軸部12がゴルフクラブの芯33を指し示し、その指し示した軸部12全体とシャフト22の重なりを指標とすることで、スイングが改善されることを確認した。その他、パターについても、同様にゴルフ練習具1の軸部12の方向を指標として、構えを調整することで効果を有することを確認した。
【0060】
第3に、ゴルフ練習具1は、シャフト22の長手方向の軸を中心にある程度の力を回転方向に加えることで回動し得るように嵌着されている。そのため、シャフト22の長手方向を水平にし、ゴルフ練習具1をシャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27に装着して、シャフト22に対してクラブヘッド21のトウ側が、地面側に位置していない場合は、ゴルフ練習具1は、挟持部111のC字形状の間を内側から外側に押し出すように、指で少し広げると、ゴルフクラブの製品仕様の差異を気にすることなく、クラブヘッド21自身の重みでクラブヘッド21がシャフト22の長手方向を軸に回動し、クラブヘッド21のトウ側が地面側に位置することができる。
【0061】
第4に、ゴルフ練習具1をゴルフクラブのシャフト22に装着した後、シャフト22の長手方向の軸を中心にゴルフ練習具1を回動でき得るため、ゴルフ練習具1を脱着しなくとも、ゴルフ練習具1の軸部12の指し示す方向を変更させることができる。従って、指し示す方向を簡単に微調整することができ、スイングの改善を図ることができる。
【0062】
第5に、ゴルフ練習具1は、シャフト22の長手方向に沿ってある程度の力を加えることで前後に摺動し得るようにして嵌着されている。従って、ゴルフ練習具1を装着してシャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27を探すときに、ゴルフ練習具1をわざわざシャフト22から取り外すことなく、容易にシャフト22上にあるゴルフクラブ全体の重心位置27にゴルフ練習具1をセットすることができる。
【0063】
以上、本発明の第1及び第2の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能である。
【0064】
例えば、上記第1及び第2実施形態では、固定部11及び軸部12を弾性体(例えば、合成ゴム)としたが、シャフト22に固定され、かつ、着脱することなく、装着位置を変更できるのであれば、例えば、シリコン、合成樹脂製等であっても良い。
【0065】
本発明の第1及び第2実施形態の挟持部111は、例えば、洗濯バサミの鋏の部分と同様の構造を有するものであっても良い。
【0066】
本発明の第1及び第2実施形態の固定部11は、挟持するものでなくとも、シャフト22に固定できるものであれば良い。例えば、粘着テープを用いて固定するものであっても良い。
【0067】
軸部12は、長手方向の一端はテーバー状となっていても良い。また、軸部12は、四角柱に限らず、円柱状であっても良い。
【0068】
軸受け部112は、溝だけでなく、孔であっても良い。
【0069】
シャフト22と軸部12との一直線に重なり合う精度を高めるため、ユーザのゴルフ技能の熟練度によって、ゴルフ練習具1の軸部12の太さ(幅)を変えて、選択、交換可能であっても良い(例えば、1センチ程度を初級用、7ミリ程度を中級用、3-4ミリ程度を上級用)。
【0070】
挟持部111の形状は、略C字形状だけでなく、略コの字形状又はスリットが入った略O字形状であっても良い。
【0071】
前記略O字形状の挟持部について、さらに具体的には、挟持部の一端面にシャフトの長さ方向に延伸するスリットが形成されており、挟持部のスリットをシャフトに当ててシャフト側に押すことによりシャフトが挟持部のスリットを押し広げてシャフトを覆えるように構成されている。
【0072】
前述した第1実施形態、および第2実施形態では、1つの軸部で構成されていたが、複数の軸部(例えば、5つの軸部)を有したものであっても良い。具体的には、
図15に示されるように、前記5つの軸部の中心の軸部14aは、シャフトの長手方向に対して垂直に設けられ、前記5つの軸部は同一平面上にあり、隣り合う前記5つの軸部の中心線17aからの角度差は、それぞれ、例えばθ1(θ1=10度)ずつとなるように設けられているゴルフ練習具であっても良い。わざわざ固定部を回動させなくとも、指標としていた特定の軸部から別の軸部を新たな指標として、構え及びスイングの調整をすることができる。この場合、
図15に示されるように、前記5つの軸部の各中心線17aは、挟持部111aのC字形状の内面の開口の径の中心で交差しており、シャフトに練習具1aを装着した際のシャフトの重心位置と重なる。
図16に示されるように、固定部11aは、挟持部111a、及び軸受け部112aからなり、固定部11aの挟持部111aの形成側とは反対側の他端面の中央には、5つの軸部12a~16aを装着するための溝である軸受け部112aが形成されている。5つの軸部12a~16aの下部は四角柱形状となっており、軸受け部112aに押し込み、押し込む面に対して垂直に嵌め込めて、一体化させることができる。前記5つの軸部の太さ(幅)は、例えば、3mm程度であり、前記5つの軸部の形状は、例えば、四角柱形状である。
【0073】
このほか、ゴルフクラブと一体不可分に形成されているゴルフ練習具であっても良い。
【符号の説明】
【0074】
1,1a…ゴルフ練習具、11,11a…固定部、12,12a,13a,14a,15a,16a…軸部、17a…各軸部の中心線、111,111a…挟持部、112,112a…軸受け部、21…クラブヘッド、22…シャフト、23…グリップ、24…ソールの線、27…シャフト上にあるゴルフクラブ全体の重心位置、28…クラブヘッド上にあるゴルフクラブ全体の重心位置、29…地面、31…ゴルフクラブのシャフトの長手方向を水平にした時のシャフト上にあるゴルフクラブ全体の重心位置からの鉛直上下方向の線、32…ゴルフクラブのシャフトの長手方向を地面に対して略垂直にした時のクラブヘッド上にあるゴルフクラブ全体の重心位置からの鉛直上下方向の線、33…ゴルフクラブの芯。