(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】イオン検出装置
(51)【国際特許分類】
H01J 49/06 20060101AFI20230126BHJP
H01J 43/06 20060101ALI20230126BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20230126BHJP
【FI】
H01J49/06
H01J43/06
G01N27/62 E
(21)【出願番号】P 2019062915
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】吉成 清美
(72)【発明者】
【氏名】杉山 益之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】今村 伸
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-154483(JP,A)
【文献】特開平01-304649(JP,A)
【文献】特開2012-049110(JP,A)
【文献】特開昭63-276862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0294654(US,A1)
【文献】国際公開第2008/025135(WO,A1)
【文献】特開昭60-143759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/06
H01J 43/06
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正イオン及び負イオンを検出するイオン検出装置であって、
前記正イオン及び前記負イオンを進入させるイオン進入口が形成された筐体と、
前記筐体内に配置され、負電位が印加される正イオン用コンバージョンダイノードと、
前記筐体内に配置され、前記正イオン用コンバージョンダイノードから放出された二次電子が入射する電子入射面を有するシンチレータと、
前記筐体内に、前記正イオン用コンバージョンダイノードよりも前記シンチレータに遠い位置に配置され、正電位乃至はグランド電位が印加される負イオン用コンバージョンダイノードと、
前記二次電子の入射に応じて前記シンチレータで発せられた光を検出する光検出器と、
前記シンチレータと前記イオン進入口との間に負電位ポテンシャル障壁を生成する負電位ポテンシャル障壁生成電極と、
を備えることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン検出装置において、
前記正イオン用コンバージョンダイノードは、前記負イオン用コンバージョンダイノードより、前記シンチレータに近い距離に設置され、
前記負電位ポテンシャル障壁生成電極は、前記正イオン用コンバージョンダイノードと対向し、前記正イオン用コンバージョンダイノードに印加される前記負電位と
同一の負電位が印加される対向電極であることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のイオン検出装置において、
前記イオン進入口から進入した前記正イオンは、前記正イオン用コンバージョンダイノードに衝突し、放出された二次電子が前記シンチレータに入射し、前記シンチレータで発せられた光が前記光検出器により検出され、
前記イオン進入口から進入した前記負イオンは、前記負イオン用コンバージョンダイノードに衝突し、前記負イオン用コンバージョンダイノードを構成する金属の正イオンが、前記正イオン用コンバージョンダイノードに衝突し、放出された前記二次電子が前記シンチレータに入射し、前記シンチレータで発せられた光が前記光検出器により検出されることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載のイオン検出装置において、
前記イオン進入口から進入した前記正イオンの大部分が前記正イオン用コンバージョンダイノードに衝突する位置は、前記負電位ポテンシャル障壁が生成される位置より、前記シンチレータに近い位置であり、
前記イオン進入口から進入した前記負イオンが、前記負イオン用コンバージョンダイノードに衝突して生成される前記金属の前記正イオンの大部分が前記正イオン用コンバージョンダイノードに衝突する位置は、前記負電位ポテンシャル障壁が生成される位置より、前記シンチレータに近い位置であることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載のイオン検出装置において、
制御部をさらに備え、
前記制御部は、
前記負イオン用コンバージョンダイノードに印加する正電圧を調整し、前記イオン進入口から進入した前記正イオンの軌道を偏向させ、前記正イオン用コンバージョンダイノードに衝突する位置を、前記負電位ポテンシャル障壁が生成される位置よりも前記シンチレータに近い位置とするとともに、
前記イオン進入口から進入した前記負イオンが前記負イオン用コンバージョンダイノードに衝突して生成される前記金属の前記正イオンの軌道を偏向させ、前記正イオン用コンバージョンダイノードに衝突する位置を、前記負電位ポテンシャル障壁が生成される位置よりも前記シンチレータに近い位置とすることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項6】
請求項2に記載のイオン検出装置において、
前記対向電極は、前記正イオン用コンバージョンダイノードと一体化した電極であることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項7】
請求項1に記載のイオン検出装置において、
前記負電位ポテンシャル障壁生成電極は、前記正イオン用コンバージョンダイノードと対向し、前記正イオン用コンバージョンダイノードに印加される前記負電位とは異なる負電位が印加され、前記正イオン用コンバージョンダイノードとは別体となった対向電極であることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項8】
請求項2に記載のイオン検出装置において、
前記対向電極は、板状電極であることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項9】
請求項2に記載のイオン検出装置において、
前記対向電極は、環状の極乃至円筒状電極であることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項10】
請求項2に記載のイオン検出装置において、
前記正イオン用コンバージョンダイノードの正イオン衝突面の中心点と、前記対向電極の中心点と、前記シンチレータの二次電子衝突面の中心点とを結ぶ線は三角形を形成することを特徴とするイオン検出装置。
【請求項11】
請求項10に記載のイオン検出装置において、
前記正イオン用コンバージョンダイノードの正イオン衝突面の中心点と、前記対向電極の中心点とを結ぶ基準線を間にして、前記シンチレータの二次電子衝突面の中心点と、前記負イオン用コンバージョンダイノードの負イオン衝突面の中心点とは、互に対向する領域に位置することを特徴とするイオン検出装置。
【請求項12】
請求項1に記載のイオン検出装置において、
前記シンチレータはガリウムナイトライドを有することを特徴とするイオン検出装置。
【請求項13】
請求項1に記載のイオン検出装置において、
前記イオン進入口は質量分析装置に接続され、前記質量分析装置により分離されたイオンが、前記イオン進入口から進入することを特徴とするイオン検出装置。
【請求項14】
請求項13に記載のイオン検出装置において、
前記質量分析装置は四重極質量分析装置であることを特徴とするイオン検出装置。
【請求項15】
請求項1に記載のイオン検出装置において、
前記負電位ポテンシャル障壁生成電極は、前記正イオン用コンバージョンダイノードの近辺に配置されるメッシュ電極であることを特徴とするイオン検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正イオン及び負イオンを検出するイオン検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のイオン検出装置は、イオンの衝突により二次電子を放出するコンバージョンダイノードと、コンバージョンダイノードから放出された二次電子の入射により光を発するシンチレータと、シンチレータで発せられた光を検出する光検出器とを備えるものが知られている。
【0003】
通常は、正イオンを対象に検出する装置が多い。正イオンは、負電位が印加されたコンバージョンダイノード(CD)に衝突し、その際発生する二次電子をCDに対向する位置に設置されたシンチレータに入射・発光させ、ライトガイド、光電子増倍管により検出される。
【0004】
一方、負イオンを同じ検出装置で検出する場合、正電位が印加されるシンチレータの方にクーロン力が働き、負イオンが直接シンチレータに衝突する。このとき、シンチレータの表面のAl層からAl+イオン(正イオン)が生成され、それが負電位を印加されるCDに衝突し、その際に発生する二次電子がシンチレータに衝突し、発光することで検出される。
【0005】
特許文献1には、高感度でイオン入射方向寸法が小さいイオン検出器が記載されている。特許文献1に記載の技術は、負イオン検出用コンバージョンダイノードと、正イオン検出用コンバージョンダイノードが電子倍増部に対して非対称に配置され、正イオン検出用コンバージョンダイノードに対向してイオン偏向電極が配置され、近傍に支柱電極が配置されている。
【0006】
そして、イオン偏向電極及び支柱電極は共にグランド電位であり、入射した正イオンを正イオン検出用コンバージョンダイノードに向かわせ、正イオン検出用コンバージョンダイノードから放射された電子を電子増倍部の入射開孔に効率よく入射させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のイオン検出装置では、負イオンを検出する際に、負イオンが直接シンチレータに衝突する可能性が高い。
【0010】
図20に一般的なシンチレータの構造を示す。
図20において、負イオンが直接シンチレータに衝突すると、シンチレータの表面の導電層81を通過し、GaN等から成る発光層82に到達する可能性が高い。その場合、発光層82の結晶配列にダメージを与えて結晶が崩れる、または、負イオン元素が不純物として結晶に注入されてバンド構造が変化する、などの現象が発生し、本来の発光機構が阻害され、発光強度の低下や劣化の要因になりうる。
【0011】
従って、シンチレータの長寿命化・省メンテナンス性のためには、負イオンのシンチレータ直接衝突を回避することが不可欠である。
【0012】
特許文献1に記載の技術においては、負イオンがシンチレータに衝突することを回避することを目的としていない為、入射した負イオンのうち、負イオン検出用コンバージョンダイノードに向かわず、電子増倍部の入射開孔に向かう可能性がある。
【0013】
本発明の目的は、正負両イオンを検出するイオン検出装置であって、負イオンがシンチレータに直接衝突することを回避可能であり、シンチレータの劣化を防止し、シンチレータの長寿命化、省メンテナンス化、正負両イオンの高感度検出が可能なイオン検出装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、本発明は、以下のように構成される。
【0015】
正イオン及び負イオンを検出するイオン検出装置であって、前記正イオン及び前記負イオンを進入させるイオン進入口が形成された筐体と、前記筐体内に配置され、負電位が印加される正イオン用コンバージョンダイノードと、前記筐体内に配置され、前記正イオン用コンバージョンダイノードから放出された二次電子が入射する電子入射面を有するシンチレータと、前記筐体内に、前記正イオン用コンバージョンダイノードよりも前記シンチレータに遠い位置に配置され、正電位乃至はグランド電位が印加される負イオン用コンバージョンダイノードと、前記二次電子の入射に応じて前記シンチレータで発せられた光を検出する光検出器と、前記シンチレータと前記イオン進入口との間に負電位ポテンシャル障壁を生成する負電位ポテンシャル障壁生成電極と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、正負両イオンを検出するイオン検出装置であって、負イオンがシンチレータに直接衝突することを回避可能であり、シンチレータの劣化を防止し、シンチレータの長寿命化、省メンテナンス化、正負両イオンの高感度検出が可能なイオン検出装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1の正負両イオン検出装置の概略図である。
【
図2A】本発明と異なる原理の特許文献2によるイオン検出装置における正イオン検出時の動作説明図である。
【
図2B】本発明と異なる原理の特許文献2によるイオン検出装置における負イオン検出時の動作説明図である。
【
図3A】本発明の原理のイオン検出装置における正イオン検出時の動作説明図である。
【
図3B】本発明の原理のイオン検出装置における負イオン検出時の動作説明図である。
【
図4】本発明の実施例1における正イオン検出モード及び負イオン検出モードの電位分布図である。
【
図5A】本発明の実施例1による正イオン検出モードのイオン軌道を示す図である。
【
図5B】本発明の実施例1による負イオン検出モードのイオン軌道を示す図である。
【
図6】本発明の実施例1による正イオン用のCDに対向する対向電極の形状の3次元断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例2による正イオン用のCDに対向する対向電極の形状の3次元断面図である。
【
図8A】本発明の実施例1による電位分布解析結果を示す等電位線図である。
【
図8B】本発明の実施例2による電位分布解析結果を示す等電位線図である。
【
図9】本発明の実施例1及び実施例2による基準線上の負電位ポテンシャル障壁の解析結果を示すグラフである。
【
図10】公知技術における負電位ポテンシャル障壁の説明図である。
【
図11】本発明の実施例3による質量分析装置の全体概略構成図である。
【
図12】本発明の実施例3における質量分析部の概略説明図である。
【
図13】四重極質量分析装置におけるイオン透過時の安定・不安定性を示す、安定透過領域図である。
【
図14】質量分析結果であるマススペクトルの概略図である。
【
図15】本発明の実施例4による正負両イオン検出装置の概略図である。
【
図16】本発明の実施例4による正負両イオン検出装置の変形例の概略図である。
【
図17】本発明の実施例5による正負両イオン検出装置の説明図である。
【
図18】本発明の実施例5による正負両イオン検出装置の概略図である。
【
図19】本発明の実施例5による正負両イオン検出装置の変形例の概略図である。
【
図20】一般的なシンチレータの構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
まず、本発明の概要について説明する。
【0020】
図2A及び
図2Bは、本発明と異なる原理の特許文献2のイオン検出装置の動作説明である。
【0021】
図2Aにおいて、イオンの衝突により二次電子を放出するコンバージョンダイノード80と、コンバージョンダイノード80から放出された二次電子の入射により光を発するシンチレータ81と、シンチレータ81で発せられた光を、ライトガイド82を介して検出する光電子増倍管(光検出器)83とを備える。
【0022】
通常は、正イオンを対象に検出する装置が多い。正イオン(m
+)は、
図2Aに示すように、負電位が印加されたコンバージョンダイノード(CD)80に衝突し、その際発生する二次電子がCD80に対向する位置に設置されたシンチレータ81に入射し発光して、ライトガイド82、光電子増倍管83により検出される。
【0023】
一方、負イオンを検出する場合、
図2Bに示すように、正電位が印加されるシンチレータ81の方にクーロン力が働き、負イオン(m
-)が直接シンチレータ81に衝突する。このとき、シンチレータ81の表面のAl層からAl+イオン(正イオン)が生成され、負電位が印加されるCD80に衝突し、その際に発生する二次電子がシンチレータ81に衝突し、発光することで検出される。
【0024】
図2Bに示すように、負イオン(m
-)が直接シンチレータ81に衝突することは、シンチレータ81に与えるダメージが大きい。
【0025】
図3A及び
図3Bは、本発明の原理のイオン検出装置を説明する図である。
【0026】
図3A及び
図3Bにおいて、イオン検出装置は、負電位が与えられ正イオンの衝突により二次電子を放出する正イオン用コンバージョンダイノード52と、正イオン用コンバージョンダイノード52と対向し、負電位が与えられた対向電極54と、正イオン用コンバージョンダイノード52の中心点と対向電極54の中心点とを結ぶ基準線より、イオン侵入口側に配置され、正電位が与えられた負イオン用コンバージョンダイノード53と、上記基準線を間にして、イオン進入口の位置する領域とは反対側の領域に位置するシンチレータ56と、ライトガイド59と、光電子増倍管(光検出器)58とを備えている。
【0027】
図3Aにおいて、イオン進入口から進入した正イオン(m
+)は、負電位が印加された正イオン用コンバージョンダイノード52に衝突し、その際発生する二次電子がシンチレータ56に入射し、発光して、ライトガイド59、光電子増倍管58により検出される。
【0028】
一方、負イオンを検出する場合、
図3Bに示すように、イオン進入口から進入した負イオン(m
-)は、正電位が印加された負イオン用コンバージョンダイノード53に衝突し、Al+イオン(正イオン)が生成され、負電位が印加された正イオン用コンバージョンダイノード52に衝突し、その際発生する二次電子がシンチレータ56に入射し発光して、ライトガイド59、光電子増倍管58により検出される。
【0029】
図3Bに示すように、正イオン用コンバージョンダイノード52の中心点と対向電極54の中心点とを結ぶ基準線により負電位ポテンシャル障壁が形成されているため、イオン進入口から進入した負イオン(m
-)は、直接にはシンチレータ56に向かって移動せず、負イオン用コンバージョンダイノード53に向かって移動し、衝突する。
【0030】
よって、負イオンのシンチレータ56への直接衝突を回避することが可能となる。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
図1は本発明による実施例1の正負両イオンを検出するイオン検出装置の概略構成図である。
【0032】
図1において、イオン検出装置5は、SUS(ステンレス鋼)等から成る筐体(チャンバ)51に囲まれ、筐体51の一部にイオンが進入する開口(イオン進入口)62が形成されている。イオン開口62は絶縁材61を介して、筐体51に形成されている。
【0033】
イオン進入口62の手前には、イオン進入口62と同等サイズの開口がある入口電極系である入口電極60-1、60-2、60-3があり、それぞれイオンの極性(正イオンまたは負イオン)に応じて、印加する電圧の極性も変更する。
【0034】
例えば、各入口電極60-1、60-2、60-3に印加する電圧は、正イオンのとき、-60V、-80V、-100V、負イオンのとき、+60V、+80V、+100Vなどのように印加電圧の極性を変更する。
【0035】
また、各入口電極60-1、60-2、60-3に印加する電圧は、同じ電圧を印加しても良い。また、筐体51内には、正イオンと負イオンを衝突させるコンバージョンダイノード(CD)を別々に設けてある。負イオン用CD53には正電圧或いはグランド電圧を印加し、正イオン用CD52には負電圧を印加する。正イオン用CD52及び負イオン用CD53は絶縁材61を介して、筐体51に設けられている。
【0036】
また、
図6に3次元的に示すように、正イオン用CD52の対向位置には、板状の対向電極54を設置し、対向電極54の上方にはシンチレータ56が設置されている。シンチレータ56、ライトガイド59及び光電子増倍管58はライトガイド外壁57内に配置され、ライトガイド外壁57は絶縁材61を介して、筐体51に設けられている。シンチレータ56は、例えば、ガリウムナイトライド(GaN)を有する。
【0037】
負イオン用CD53、正イオン用CD52、正イオン用CD52の対向電極54、シンチレータ56に関しては、次のように配置されている。
【0038】
正イオン用CD52の衝突面の中心点63と対向電極54のCD52側対向面の中心点64とを結んだ線を基準線65(或いは基準線を含んだ面を基準面)として、基準線65又は基準面に対して、負イオン用CD53の衝突面の中心点66が、シンチレータ56の衝突面の中心点67のある側の領域とは逆側の領域に位置するように配置する。
【0039】
このように配置することで、
図4の(1)正イオン検出モード、(2)負イオン検出モードの例として示されているような電位分布が形成される。このときのイオン軌道を解析した結果の一例を
図5A及び
図5Bに示す。
【0040】
例えば、正イオンの場合、
図5Aに示すように、入口電極系60-1~60-33を通過し、イオン進入口62から入射してきた正イオンは、正電圧が印加されている負イオン用CD53と正イオン用CD52の間に生成された電界による、正イオン用CD52に向けた偏向力を受け、正イオン用CD52に衝突する。その際発生した二次電子は正イオン用CD52とシンチレータ56との間に生成される電界により、シンチレータ56方向に進行し、シンチレータ56に衝突する。その際、シンチレータ56から光が発生し、その光はライトガイド59を経て、光電子増倍管58により検出される。
【0041】
一方、負イオンの場合、
図5Bに示すように、正イオン用CD52と対向電極54との間の基準線65の周辺に基準線65に沿って負電位ポテンシャル障壁が生成されるため、イオン進入口62から入ってきた負イオンは、その負電位ポテンシャル障壁の向こう側にあるシンチレータ56の方向には進まない。基準線65の手前(イオン進入口62側)にある、正電圧が印加されている負イオン用CD53の方に引き寄せられ衝突する。
【0042】
このとき、二次電子も発生するが、二次電子は負イオンと同様、負イオン用CD53の方に引き寄せられるため、負イオン用CD53から出射されない。
【0043】
負イオン用CD53を構成する金属元素が、負イオン衝突の衝撃により反跳して生成された正イオンは、負イオン用CD53を出射し、正イオン用CD52に衝突する。
【0044】
その際発生した二次電子は正イオン用CD52とシンチレータ56との間に生成される電界により、シンチレータ56方向に進行し、シンチレータ56に衝突する。その際、シンチレータ56から光が発生し、その光はライトガイド59を経て、光電子増倍管58により検出される。
【0045】
図5A及び上記説明から理解できるように、イオン進入口62から進入してきた正イオンの大部分が正イオン用コンバージョンダイノード52に衝突する位置は、負電位ポテンシャル障壁が生成される基準線65の正イオンコンバージョンダイノード52の中心点63の位置よりも、シンチレータ56に近い位置となる。
【0046】
また、
図5B及び上記説明から理解できるように、イオン進入口62から進入してきた負イオンが、負イオン用コンバージョンダイノード53に衝突後に生成される金属の正イオンの大部分が、正イオン用コンバージョンダイノード52に衝突する位置は、負電位ポテンシャル障壁が生成される基準線65の正イオンコンバージョンダイノード52の中心点63の位置よりも、シンチレータ56に近い位置となる。
【0047】
対向電極54は、正イオン用コンバージョンダイノード52とは別体であり、正イオン用コンバージョンダイノード52に印加される負電位と同等程度の負電位、又は正イオン用コンバージョンダイノード52に印加される負電位と異なる負電位を印加することができる。
【0048】
以上のように、本実施例1によれば、正イオン、負イオンともに、直接シンチレータ67に衝突することなく、高効率に検出されるため、シンチレータ67の劣化を防ぐことができる。その結果、シンチレータ67の長超寿命化が可能となることで、省メンテナンス効果が期待できる。
【0049】
つまり、本発明の実施例1によれば、開口62から進入した負イオンがシンチレータ56に直接衝突することを回避可能であり、シンチレータ56の劣化を防止し、シンチレータ56の長寿命化、省メンテナンス化、正負両イオンの高感度検出が可能なイオン検出装置を実現することができる。
【0050】
なお、正イオン用ダイノード52の正イオン衝突面の中心点63と、対向電極54の中心点64と、シンチレータ56の二次電子衝突面の中心点67とを結ぶ線は、三角形を形成する。
【0051】
つまり、中心点63と、中心点64と、中心点67とを結ぶ線は、一直線となることなく、三角形を形成する。
【0052】
そして、正イオン用ダイノード52の正イオン衝突面の中心点63と、対向電極54の中心点64とを結ぶ基準線65を間にして、シンチレータ56の二次電子衝突面の中心点67と、負イオン用コンバージョンダイノード53の負イオン衝突面の中心点66とは、互に対向する領域に位置するように配置される(シンチレータ56の二次電子衝突面の中心点67が位置する側とは、反対側に、負イオン用コンバージョンダイノード53の負イオン衝突面の中心点66が位置する)。
【0053】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。
【0054】
実施例2は、
図7に3次元的に示すように、正イオン用CD52の対向電極54を環状或いは円筒状の電極とする。この環状或いは円筒状の対向電極54は、正イオン用CD52と一体化することもできる。実施例2のその他の構成は、実施例1と同様となっている。
【0055】
対向電極54の中心点64は、
図7に示すように、正イオン用CD52の衝突面の中心点63と最短距離となる位置を、対向電極54の中心点64とする。このときの電位ポテンシャル分布の解析結果を
図8Bに示した。
【0056】
図8Aは、
図6に示した板状の対向電極54の場合の解析結果を示す図である。
図8Aに示した板状の対向電極54の場合と、
図8Bに示した円筒状対向電極54の場合とを比べて、正イオン用CD52と対向電極54との間で、等電位線の分布が異なっていることが分かる。
【0057】
更に詳細に調べるため、基準線65上に生成される負電位ポテンシャル障壁を求めた結果を
図9に示す。
【0058】
図9において、-8kVを印加した、正イオン用CD52と対向電極54の間で、基準線65の中央付近で負電位ポテンシャル障壁の高さが低くなる傾向があることが分かる。中央付近での障壁の高さの低下は、本実施例2である環状電極の方が実施例1の板状対向電極より軽減していることが分かる。
【0059】
従って、本実施例2によると、実施例1と同様な効果が得られる他、負電位ポテンシャル障壁の低減が抑制されるために、負イオンのシンチレータ56への直接衝突がより確実に回避可能となることがわかる。
【0060】
また、このとき、生成される電位分布が環状分布となるため、イオン軌道や二次電子軌道に対して、円の中心方向に力が働くため、イオンや二次電子の軌道の収束性が向上し、二次電子のシンチレータ56への収率はより高まると考える。
【0061】
ここで、公知技術(特許文献1)における電位分布について説明する。
図10は、公知技術における負電位ポテンシャル障壁を示すグラフである。
図10において、実線で示す丸1は、公知技術における電子増倍管入り口近辺の負電位ポテンシャル障壁であり、破線で示す丸2は、公知技術におけるコンバージョンダイノード周辺の負電位ポテンシャル障壁を示す。
【0062】
公知技術においては、イオン入射口と電子増倍管入口とが隣接され、GND電圧であるイオン入射口と電子増倍管入口との間には、高い負電位ポテンシャル障壁は生成されていない。
【0063】
これに対して、本発明は、イオン進入口と、シンチレータ56及び光る電子増倍管59との間に大きな負電位ポテンシャルを設けており、公知技術とは大きく異なっている。
【0064】
また、公知技術と本発明とにおける検出系全体の配置を比較すると、イオン入射口とコンバージョンダイノードまでの距離をL1とし、イオン入射口とシンチレータまでの距離をL2とすると、本発明は、L1よりL2の方が大となっている(L1<L2)。
【0065】
これに対して、公知技術において、イオン入射口とコンバージョンダイノードまでの距離をL1とし、イオン入射口と電子増倍管入口までの距離をL2とすると、L1よりL2の方が小となっている(L1>L2)。
【0066】
検出系全体の配置に関しても、公知技術と本発明とは大きく異なっている。
【0067】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例3は、実施例1又は実施例2のイオン検出装置5を質量分析装置11に適用する場合の例である。
【0068】
イオン検出装置5が検出対象とするイオンは、質量分析装置11の質量分析部4を通過してきたイオンである、
図11は、本実施例3による質量分析装置11のシステム全体構成図である。
【0069】
図11において、質量分析対象の試料は、ガスクロマトグラフィー(GC)又は液体クロマトグラフィー(LC)などの前処理系1にて、時間的に分離・分画され、イオン化部2に送られる。イオン化部2にて、イオン化された試料イオンは、イオン輸送部3を通って、質量分析部(質量分析装置)4に入射され、質量分離される。
【0070】
質量分離部4への電圧は、制御部8から制御されながら、電圧源9から印加される。イオン検出装置5のイオン進入口62は質量分析部(質量分析装置)4に接続され、質量分析部4により最終的に分離され通過してきたイオンは、イオン検出装置5のイオン進入口からイオン検出装置5に進入し、イオン検出装置5で検出される。
【0071】
そして、データ処理部(CPU)6でデータ整理・処理され、その分析結果である質量分析データは表示部7にて表示される。
【0072】
この一連の質量分析過程「試料のイオン化、試料イオンビームの質量分析部4への輸送及び入射、質量分離過程、及び、イオン検出、データ処理、ユーザ入力部10の指令処理」の全体を制御部8で制御している。
【0073】
制御部8は、正電位乃至はグランド電位が印加される負イオン用コンバージョンダイノード53に印加する正電圧を調整し最適化する。制御部8は、負イオン用コンバージョンダイノード53に印加する電圧を、デフォルト電圧からある範囲内で変動させ、感度が最も高くなった電圧を最適電圧として設定する(電圧チューニングを自動的に実施する)。
【0074】
制御部8が負イオン用コンバージョンダイノード53に印加する正電圧を調整し最適化することで、イオン進入口62から進入してきた正イオンの軌道を偏向させ、正イオン用コンバージョンダイノード52に衝突する位置を、負電位ポテンシャル障壁が生成される位置よりも、シンチレータ56に近い位置とする。
【0075】
また、制御部8が負イオン用コンバージョンダイノード53に印加する正電圧を調整し最適化することで、イオン進入口62から進入してきた負イオンが負イオン用コンバージョンダイノード53に衝突して生成される金属の正イオンの軌道を偏向させ、正イオン用コンバージョンダイノード52に衝突する位置を、負電位ポテンシャル障壁が生成される位置よりも、シンチレータ56に近い位置とする。
【0076】
ここで、質量分離部4は、
図12に示すように、4本の棒状電極4-1、4-2、4-3、4-4から成る四重極質量分析計(四重極質量分析装置(QMS))で構成されている。なお、4本以上の棒状電極から構成する多重極質量分析計としてもよい。
【0077】
また、イオン輸送部3が4本の棒状電極から成る四重極電極系の場合は、高周波電圧のみを印加して、イオンガイドとしてもよい。
【0078】
また、
図12に示すように、棒状電極4-1~4-4の長手方向をz方向、断面方向をx、y平面とすると、棒状電極4-1~4-4のx、y断面にて示すように、4本の棒状電極4-1~4-4は、円柱電極でも良く、また、点線で示したような双極面形状をした棒状電極でも良い。
【0079】
質量分析部4におけるQMSの4本の電極4-1~4-4には、互に向かい合う電極を1組として、電極4-1と4-3には、直流電圧と高周波電圧の重畳した電圧(+(U+VRFcos(ΩRF・t+ΦRF)))、電極4-2と4-4には、その逆位相の電圧(-(U+VRFcos(ΩRF・t+ΦRF)))が印加され、4本の棒状電極4-1~4-4間には、次式(1)に示す、高周波電界Ex、Eyが生成される。
【0080】
なお、電圧(U+V
RFcos(Ω
RF・t+Φ
RF))を符号14として
図12に示す。
【0081】
【0082】
イオン化された試料イオンは、棒状電極4-1~4-4間の中心軸(z方向)に沿って導入され、(1)式の高周波電界の中を通過する。このときのx、y方向のイオン軌道の安定性は棒状電極4-1~4-4間でのイオンの運動方程式(Mathieu方程式)から導かれる次式(2)、(3)に示す無次元パラメータa、qによって決まる。
【0083】
【0084】
【0085】
ここで、無次元パラメータa、qは、QMSにおける安定性パラメータである。また、(2)、(3)式中の、mはイオン質量、Zはイオンの帯電価数、r0は対向するロッド(棒状)電極間の距離の半値、eは素電荷、m/Zはイオンの質量対電荷比、Uはロッド電極に印加する直流電圧、VRF、ΩRFは高周波電圧の振幅及び角振動周波数である。
【0086】
r
0、U、V
RF、Ω
RFの値が決まると、各イオン種はその質量対電荷比m/Zに応じて、
図13に示すa-q平面上の異なる(a、q)点に対応する。このとき、(2)、(3)の式から、各イオン種の異なる(a、q)点は、次の(4)式の直線上に全て存在することになる。
【0087】
【0088】
x、y両方向のイオン軌道に対し、安定解を与えるa、qの定量的範囲(安定透過領域)を
図13に示す。ある特定の質量対電荷比m/Zを有するイオン種のみを棒状電極間に通過させ、その他のイオン種をQMSの外に不安定出射させて質量分離するためには、
図13示した安定透過領域の頂点付近と交わるようにU、V
RF比を調整する必要がある。
【0089】
安定透過するイオンが振動しながら、棒状電極間をz方向に通過するのに対して、不安定化イオンは振動が発散して、x、y方向に出射する。この点を利用して、四重極質量分析装置では、特定の質量対電荷比m/Zを持つイオン種のみが通過するようにさせるため、
図13に示すように、安定透過領域の頂点付近の点に操作点が来るように、電極への印加電圧を調整して、通過イオンが検出される。
【0090】
その結果、
図14に示すような質量スペクトルデータが得られる。
【0091】
質量分析装置で分析対象と成るイオンは、正負両イオンとなる。特に、生体由来試料などを分析対象とする場合、試料が微量なため、検出ロスを減らして安定で高感度分析することが求められる。
【0092】
そのため、シンチレータ56の劣化による検出感度の不安定性や、シンチレータ56の交換などのメンテナンスによる分析の中断による分析結果の不安定性は、可能な限り避けたい事項である。
【0093】
本実施例3によれば、正負両イオンとも、シンチレータ56への直接衝突が回避でき、シンチレータ56の劣化による検出感度の不安定性や、シンチレータ56の交換による分析の中断も無いため、安定で高感度分析が可能な質量分析装置を実現することができる。
【0094】
なお、本実施例3では、四重極質量分析計を採用したが、飛行時間型や、イオントラップ型、トリプルQMS型などの、他のタイプの質量分析計でも良い。
【0095】
また、制御部8のイオン検出装置5に対する制御機能を質量分析部4等の他の部の制御機能から独立させ、イオン検出装置5のみを制御する制御部とすることも可能である。このような制御部は、実施例1及び実施例2のイオン検出装置5の制御部として成立する。
【0096】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4について説明する。
【0097】
図15は、実施例4の正負両イオンを検出するイオン検出装置の概略構成図である。
【0098】
実施例1及び実施例2は、負電位ポテンシャル障壁を正イオン用コンバージョンダイノード52と、この正イオン用コンバージョンダイノード52と対向する対向電極54により生成したが、実施例4においては、対向電極54に代えて、正イオン用コンバージョンダイノード52の近辺に配置されるメッシュ電極70を用いる。他の構成は、実施例1と同様である。
【0099】
メッシュ電極70とは、微細な多数の開口が形成された電極である。
【0100】
図15に示すように、メッシュ電極70は、正イオン用コンバージョンダイノード52のうちの、開口62から近い位置の端部に接触し、開口62に向かって上述した基準線56と平行に延びている。
【0101】
正イオン用コンバージョンダイノード52とメッシュ電極70とによって生成される負電位ポテンシャル障壁によっても、開口62から進入した負イオンがシンチレータ56に直接衝突することを回避可能であり、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【0102】
【0103】
図15に示した例は、メッシュ電極70の一端が正イオン用コンバージョンダイノード52と接触しているが、
図16に示した例は、メッシュ電極70は、正イオン用コンバージョンダイノード52とは接触せず、開口62に向かって上述した基準線56と平行に延びている。
【0104】
その他の構成は、
図15に示した例と同様となっている。
【0105】
図16に示した例においても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【0106】
(実施例5)
次に、本発明の実施例5について説明する。
【0107】
実施例5は、実施例1や実施例2の対向電極54に加えて、補助電極71A及び71Bを配置する例である。
【0108】
図18は、
図17に示したA―A’線に沿った断面図である。なお、
図17及び
図18においては、対向電極54は図示を省略している。
【0109】
図18に示した互いに対向する補助電極71A及び71Bは、
図17の紙面に垂直な方向に互いに対向し、平行となるように配置されている。補助電極71A及び71Bに印加する電圧は、対向電極54に印加する電圧と同程度である。
【0110】
補助電極71A及び71Bを配置することにより、正イオン用コンバージョンダイノード52と対向電極54とにより生成される負電位ポテンシャル障壁に加えて、補助電極71A、71B及び正イオン用コンバージョンダイノード52により負電位ポテンシャル障壁が生成されことにより、開口62から進入した負イオンがシンチレータ56に直接衝突することを回避可能である。
【0111】
【0112】
図18に示した例においては、補助電極71A及び71Bは、互に平行となるように配置されているが、
図19に示した例における補助電極71A及び71Bは、正イオン用コンバージョンダイノード52に向かって傾斜し、ハの字形状となるように配置されている。
【0113】
図19に示すような構成であっても、
図18に示した例と同様な効果を得ることができる。
【0114】
なお、補助電極71A及び71Bを配置し、対向電極54を配置しないように構成することも可能である。
【0115】
以上説明したように、本発明は、正イオンと負イオンを衝突させるコンバージョンダイノード(CD)52、53を別々に設け、イオン検出装置5へのイオン進入口62とシンチレータ56までの間に負電位ポテンシャル障壁を形成することで、負イオンのシンチレータ56への直接衝突を回避可能となる。
【0116】
それにより、シンチレータ56の劣化を防ぎ、シンチレータ56の長寿命化・省メンテナンス性、さらには、正負両イオンの高感度検出の効果がある。
【0117】
よって、正負両イオンを検出するイオン検出装置であって、負イオンがシンチレータに直接衝突することを回避可能であり、シンチレータの劣化を防止し、シンチレータの長寿命化、省メンテナンス化、正負両イオンの高感度検出が可能なイオン検出装置を実現することができる。
【0118】
また、上記イオン検出装置を用いた質量分析装置を実現することができる。
【0119】
なお、対向電極54、メッシュ電極70、補助電極71A、71Bを総称して負電位ポテンシャル障壁生成電極と定義する。
【符号の説明】
【0120】
1・・・前処理系、 2・・・イオン化部、 3・・・イオン輸送部、4・・・質量分析部、 4-1、4-2、4-3、4-4・・・四重極電極系における4本の棒状電極、 5・・・イオン検出装置、 6・・・データ処理部、 7・・・表示部、 8・・・制御部、 9・・・電圧源、 10・・・ユーザ入力部、 11・・・質量分析装置、 51・・・筐体、 52・・・正イオン用コンバージョンダイノード(CD)、 53・・・負イオン用コンバージョンダイノード、 54・・・対向電極、 56・・・シンチレータ、 57・・・ライトガイド外壁、 58・・・光電子増倍管、 59・・・ライトガイド、 60-1、60-2、60-3・・・イオン入口電極系、 61・・・絶縁材、 62・・・イオン進入口、 63・・・正イオン用CDの衝突面の中心点、 64・・・対向電極の対向面の中心点、 65・・・基準線、 66・・・負イオン用CDの衝突面の中心点、 67・・・シンチレータ衝突面の中心点、 70・・・メッシュ電極、 71A、71B・・・補助電極、81・・・導電層、 82・・・発光層