(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-25
(45)【発行日】2023-02-02
(54)【発明の名称】吸水性シート、吸水性シートの製造方法および吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/53 20060101AFI20230126BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20230126BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
A61F13/53 300
A61F13/534 110
A61F13/535 100
(21)【出願番号】P 2020513464
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 JP2019015991
(87)【国際公開番号】W WO2019198821
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018077952
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018235117
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 一司
(72)【発明者】
【氏名】北野 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】野田 ゆいか
(72)【発明者】
【氏名】平岡 隆一
(72)【発明者】
【氏名】堀本 裕一朗
(72)【発明者】
【氏名】和田 英訓
(72)【発明者】
【氏名】平内 達史
(72)【発明者】
【氏名】和田 舞
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-059039(JP,U)
【文献】特開2014-068813(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170605(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のシートと第2のシートとの間に、粒子状吸水剤が挟持されている吸水性シートであって、
上記第1のシートおよび上記第2のシートの少なくとも一方は、透水性シートであり、
上記粒子状吸水剤には、
(1)上記第1のシート近傍に局在している、第1の粒子状吸水剤と、
(2)上記第2のシート近傍に局在している、第2の粒子状吸水剤と、
が含まれており、
上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)より高いものであり、
上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)と、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)との差は、
15以上であり、
上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、50以下である、吸水性シート。
【請求項2】
上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)と、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)との差は、20以上である、請求項1に記載の吸水性シート。
【請求項3】
上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)と、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)との差は、30以上である、請求項1に記載の吸水性シート。
【請求項4】
上記第1の粒子状吸水剤および上記第2の粒子状吸水剤の少なくとも一方は、表面張力が65mN/m以上の粒子状吸水剤を含んでいる、請求項
1~3のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項5】
上記第1の粒子状吸水剤および上記第2の粒子状吸水剤の少なくとも一方は、不定形破砕状の粒子状吸水剤を含んでいる、請求項
1~4のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項6】
上記第1のシートと上記第2のシートとの間に、さらに1枚以上の中間シートが挟持されている、請求項
1~5のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項7】
上記第1のシートが、上記透水性シートである、請求項
1~6のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項8】
上記透水性シートは、親水性不織布である、請求項
1~7のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項9】
上記吸水性シートの長手方向に、上記第1の粒子状吸水剤および上記第2の粒子状吸水剤の少なくとも一方が存在しない領域が設けられている、請求項
1~8のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項10】
上記吸水性シートの厚さは、乾燥状態において5mm以下である、請求項
1~9のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項11】
上記第1のシートと上記第2のシートとは、異なる分離したシートである、請求項1~10のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項12】
上記吸水性シートの幅方向において、上記第1の粒子状吸水剤が分布している領域の幅と、上記第2の粒子状吸水剤が分布している領域の幅とは、実質的に同じである、請求項1~11のいずれか1項に記載の吸水性シート。
【請求項13】
(1)第1のシートに、第1の粒子状吸水剤を散布する工程、
(2)第2のシートに、第2の粒子状吸水剤を散布する工程、ならびに
(3)中間シートに、第1の粒子状吸水剤および/または第2の粒子状吸水剤を散布する工程、
の、少なくとも1つを含む吸水性シートの製造方法であって、
上記第1のシートおよび上記第2のシートの少なくとも一方は、透水性シートであり、
上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)より高いものであり、
上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)と、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)との差は、
15以上であり、
上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、50以下である、吸水性シートの製造方法。
【請求項14】
請求項
1~12のいずれか1項に記載の吸水性シートが、液体透過性シートおよび液体不透過性シートによりさらに挟持されている、吸収性物品。
【請求項15】
上記第1のシートが、上記透水性シートであり、
上記第1のシートが、上記液体透過性シート側に配置されている、請求項
14に記載の吸収性物品。
【請求項16】
2枚のシートの間に粒子状吸水剤が挟持されている吸水性シートであって、
上記2枚のシートのうち少なくとも一方は、透水性シートであり、
上記2枚のシートを剥離させたときに、当該2枚のシートのそれぞれに付着している粒子状吸水剤のうち、ゲル透過速度(GPR)がより高い方を粒子状吸水剤A、ゲル透過速度(GPR)がより低い方を粒子状吸水剤Bとすると、
上記粒子状吸水剤Aが付着しているシートは、使用者の体に近い側に配置されるシートであり、
上記粒子状吸水剤Bが付着しているシートは、使用者の体から遠い側に配置されるシートであり、
上記粒子状吸水剤Aのゲル透過速度(GPR)と、上記粒子状吸水剤Bのゲル透過速度(GPR)との差は、
15以上であり、
上記粒子状吸水剤Bのゲル透過速度(GPR)は、50以下である、吸水性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性シート、吸水性シートの製造方法および吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer:SAP)は、水膨潤性かつ水不溶性の高分子ゲル化剤であり、主な用途は使い捨てオムツ用の吸収性物品である。従来の使い捨てオムツには、吸水性樹脂と繊維材料(例えば、パルプ)とを混合した吸収性物品が使用されている。しかしながら、粒子状である吸水性樹脂と、嵩高い繊維材料とを適切に混合し、かつ所望の吸収体性能を実現するためには、高度な技術やノウハウを必要とする。また、嵩高い繊維材料を用いることは、使い捨てオムツ製品の薄型化を阻む要因となり得る。
【0003】
そのため、最近は、使い捨てオムツ用の吸収性物品として、第1のシートと第2のシートとの間に吸水性樹脂が挟持された構造を有する吸水性シートを採用するケースが登場している。吸水性シートは、薄型化を阻害し得る繊維材料を用いることなく製造することができるため、使い捨てオムツ製造の簡便化や、使い捨てオムツの薄型化に寄与するものとして注目を集めている。
【0004】
例えば、特許文献1は、吸水性樹脂を含有する吸水層が、1次吸収層と2次吸収層とに分画されている吸水性シートを開示する。上記1次吸収層と上記2次吸収層とのそれぞれには、生理食塩水吸収速度が互いに異なる2種類の吸水性樹脂が用いられている。また、特許文献2は、粒径速度指数が0.12秒/μm以下の吸水速度の速い吸水性樹脂を用いた吸水性シートを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2010/082373号パンフレット
【文献】国際公開第2011/086843号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した吸水性シートにおいて、0を含む広範囲な塩濃度(質量%)の尿に対して液吸収速度および逆戻り量の両方の点で優れ、体調の変化により尿中の塩濃度が変化しやすい乳幼児を含むユーザーにとって使用感の良い薄型吸水性シートが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る吸水性シートは、第1のシートと第2のシートとの間に、粒子状吸水剤が挟持されている吸水性シートであって;上記第1のシートおよび上記第2のシートの少なくとも一方は、透水性シートであり;上記粒子状吸水剤には、(1)上記第1のシート近傍に局在している、第1の粒子状吸水剤と、(2)上記第2のシート近傍に局在している、第2の粒子状吸水剤と、が含まれており;上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)より高いものであり、上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)と、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)との差は、10以上であり;上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、50以下である。
【0008】
また、本発明の他の態様に係る吸水性シートは、2枚のシートの間に粒子状吸水剤が挟持されている吸水性シートであって;上記2枚のシートのうち少なくとも一方は、透水性シートであり;上記2枚のシートを剥離させたときに、当該2枚のシートのそれぞれに付着している粒子状吸水剤のうち、ゲル透過速度(GPR)がより高い方を粒子状吸水剤A、ゲル透過速度(GPR)がより低い方を粒子状吸水剤Bとすると、(i)上記粒子状吸水剤Aが付着しているシートは、使用者の体に近い側に配置されるシートであり、(ii)上記粒子状吸水剤Bが付着しているシートは、使用者の体から遠い側に配置されるシートであり、(iii)上記粒子状吸水剤Aのゲル透過速度(GPR)と、上記粒子状吸水剤Bのゲル透過速度(GPR)との差は、10以上であり、(iv)上記粒子状吸水剤Bのゲル透過速度(GPR)は、50以下である。
【0009】
本発明の一態様に係る吸水性シートの製造方法は、(1)第1のシートに、第1の粒子状吸水剤を散布する工程、(2)第2のシートに、第2の粒子状吸水剤を散布する工程、ならびに、(3)中間シートに、第1の粒子状吸水剤および/または第2の粒子状吸水剤を散布する工程、の少なくとも1つを含む吸水性シートの製造方法であって;上記第1のシートおよび上記第2のシートの少なくとも一方は、透水性シートであり;上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)より高いものであり、上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)と、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)との差は、10以上であり;上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、50以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、0を含む広範囲な塩濃度(質量%)の尿に対して液吸収速度および逆戻り量の点で優れ、体調の変化により尿中の塩濃度が変化しやすい乳幼児を含むユーザーにとって使用感の良い吸水性シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る吸水性シートの、断面を表す模式図である。
【
図2】本発明の他の実施形態に係る吸水性シートの、断面を表す模式図である。
【
図3】平面状態における吸水性シート評価に用いる容器の、寸法を表す二面図である。
【
図4】ゲル透過速度(GPR)の測定に用いる装置400の概要を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔1.用語の定義〕
[1-1.吸水性シート]
本明細書において「吸水性シート」とは、2枚のシートの間に粒子状吸水剤が挟持された構造物をいう。上記吸水性シートは、シート同士の接着、および/または、シートと粒子状吸水剤との接着に、接着剤を用いていてもよく、ホットメルト接着剤を用いていてもよい。上記吸水性シートは、粒子状吸水剤に加えて、他の成分(繊維成分、抗菌剤、消臭剤など)を含んでいてもよい。また、上記吸水性シートは、粒子状吸水剤などを挟持する2枚のシート以外にも、他のシートを含んでもよい。
【0013】
通常、吸水性シートは、連続シート状、または、当該連続シートを巻き取ったロール状である。上記吸水性シートを使用する際には、連続シートを適当な形状(長方形など)に裁断した後に、使い捨てオムツなどの吸収体として使用する。一方、従来の高濃度吸水性樹脂の使い捨てオムツ(例えば、パルプレスの使い捨てオムツ)は、使い捨てオムツ一枚ごとに、個々に型取りされた吸収体を使用する。したがって、このような吸収体は、本発明の吸水性シートとは技術の性質を異にする。
【0014】
[1-2.吸水性樹脂]
本明細書において「吸水性樹脂」とは、ERT441.2-02により規定される水膨潤性(CRC)が5g/g以上であり、およびERT441.2-02により規定される水不溶性(Ext)が50質量%以下である高分子ゲル化剤をいう。
【0015】
好ましくは、上記吸水性樹脂は、カルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させた、親水性架橋重合体である。上記吸水性樹脂の形状は、シート状、繊維状、フィルム状、粒子状、ゲル状などである。本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、好ましくは粒子状の吸水性樹脂を用いる。
【0016】
本明細書において「吸水性樹脂」とは、全量(100質量%)が当該吸水性樹脂のみである態様に限定されない。そうではなく、上述のCRCおよびExtを満足するならば、添加剤などを含んでいる吸水性樹脂組成物であってもよい。また、本明細書において「吸水性樹脂」とは、吸水性樹脂の製造工程における中間体をも包含する概念である。例えば、重合工程で生じる含水ゲル状架橋重合体、乾燥工程で生じる乾燥重合体、表面架橋を施す前の吸水性樹脂粉末なども、「吸水性樹脂」と表記する場合がある。
【0017】
このように、本明細書においては、吸水性樹脂そのものに加えて、吸水性樹脂組成物および中間体をも総称して「吸水性樹脂」と表記する場合がある。
【0018】
[1-3.吸水剤、粒子状吸水剤]
本明細書において「吸水剤」とは、吸水性樹脂を主成分として含む、水性液を吸収するための吸収ゲル化剤を意味する。ここで、上記水性液とは水のみならず、水を含む液体であれば特に限定されない。本発明の一実施形態に係る吸水性シートが吸収する水性液は、尿、経血、汗、その他の体液である。特に、尿としては、健康状態によって塩濃度が広範囲に変化する乳幼児などの尿を含む。
【0019】
本明細書において「粒子状吸水剤」とは、粒子状(粉末状)の吸水剤を意味する。「粒子状吸収剤」の概念には、一粒の粒子状吸水剤と、複数個の粒子状吸水剤の集合体との、いずれもが包含される。本明細書において「粒子状」とは、粒子の形態を有することを意味する。ここで、「粒子」とは、物質の比較的小さな分割体を指し、数Å~数mmの大きさを有している(「粒子」、マグローヒル科学技術用語大辞典編集委員会 編『マグローヒル科学技術用語大辞典 第3版』、日刊工業新聞社、1996年、1929頁を参照)。なお、本明細書では、「粒子状吸水剤」を単に「吸水剤」と表記することがある。
【0020】
粒子状吸水剤は、重合体である吸水性樹脂を主成分として含む。上記粒子状吸水剤は、重合体である吸水性樹脂を、60~100質量%、好ましくは70~100質量%、より好ましくは80~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%含む。上記粒子状吸水剤の残部は、水、添加剤(無機微粒子、多価金属カチオンなど)などを任意に含んでもよい。
【0021】
すなわち、粒子状吸水剤中の吸水性樹脂の上限は、例えば、100質量%、99質量%、97質量%、95質量%、90質量%である。そして、好ましくは、吸水性樹脂以外に0~10質量%の成分、特に水、添加剤(無機微粒子、多価金属カチオンなど)などをさらに含む。
【0022】
なお、粒子状吸水剤の好ましい含水率は、0.2~30質量%である。上記に説明した通り、水や添加剤などの成分が吸水性樹脂と一体化している吸水性樹脂組成物も、「粒子状吸水剤」に包含される。
【0023】
粒子状吸水剤の主成分となる吸水性樹脂の例としては、ポリアクリル酸(塩)系樹脂、ポリスルホン酸(塩)系樹脂、無水マレイン酸(塩)系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリアスパラギン酸(塩)系樹脂、ポリグルタミン酸(塩)系樹脂、ポリアルギン酸(塩)系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂が挙げられる。このうち、好ましくは、ポリアクリル酸(塩)系樹脂が吸水性樹脂として使用される。
【0024】
[1-4.ポリアクリル酸(塩)]
本明細書において「ポリアクリル酸(塩)」とは、ポリアクリル酸および/またはその塩を指す。上記ポリアクリル酸(塩)は、主成分として、アクリル酸および/またはその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と称する)の繰り返し単位を含み、任意成分としてグラフト成分をさらに含む、重合体である。上記ポリアクリル酸(塩)は、アクリル酸(塩)の重合、ポリアクリルアミドやポリアクリニトリルなどの加水分解、などによって得られる。好ましくは、上記ポリアクリル酸は、アクリル酸(塩)の重合によって得られる。
【0025】
ここで、「主成分として含む」とは、ポリアクリル酸(塩)を重合する際のアクリル酸(塩)の使用量が、重合に用いられる単量体(ただし、内部架橋剤を除く)全体に対して、通常50~100モル%、好ましくは70~100モル%、より好ましくは90~100モル%、さらに好ましくは実質的に100モル%であることをいう。これに加えて、重合体に含まれる繰り返し単位のうち、通常50~100モル%、好ましくは70~100モル%、より好ましくは90~100モル%、さらに好ましくは実質的に100モル%がアクリル酸(塩)に由来するブロックであることも、「主成分として含む」と称する。
【0026】
[1-5.EDANAおよびERT]
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称である。「ERT」は、EDANAが制定している、欧州標準(実質的な世界標準)の吸水性樹脂の測定法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本明細書では、特に断りのない限り、2002年版のERTに準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0027】
[1-6.その他]
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上、Y以下」を意味する。
【0028】
本明細書において、特に注釈のない限り、質量の単位である「t(トン)」は「メートルトン(Metric ton)」を意味する。「ppm」は、「質量ppm」を意味する。「質量」と「重量」、「質量部」と「重量部」、「質量%」と「重量%」、「質量ppm」と「重量ppm」は、それぞれ同じ意味として扱う。
【0029】
本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸および/またはその塩」を意味する。「(メタ)アクリル」は「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。
【0030】
本明細書においては、体積の単位「リットル」を「l」または「L」と表記する場合がある。「質量%」を「wt%」と表記することがある。微量成分の測定を行う場合において、検出限界以下をN.D.(Non Detected)と表記することがある。
【0031】
〔2.吸水性シート〕
本項目では、まず本発明の一実施形態に係る吸水性シートの概要について、
図1、2に基づいて説明する。次いで、上記吸水性シートを構成する各要素などについて説明する。
【0032】
図1は、本発明の一実施形態に係る吸水性シート10の、断面を表す模式図である。吸水性シート10は、第1のシート11aと第2のシート11bとの間に、粒子状吸水剤12を挟持するように構成される。粒子状吸水剤12には、第1のシート11a近傍に局在している第1の粒子状吸水剤12aと、第2のシート11b近傍に局在している第2の粒子状吸水剤12bとが含まれている。
【0033】
本明細書において「第1のシート11a近傍に局在している」とは、第1のシート11aの近傍により多く分布していることを意図する。すなわち、第1の粒子状吸水剤12aは、第1のシート11a近傍(例えば、「第1のシート11aから、吸水性シート10の厚み方向中央までの空間」など)に、より多く分布している。換言すると、「吸水性シート10の全体に含まれている粒子状吸水剤12のうち、第1の粒子状吸水剤12aが占める割合」と、「第1のシート11a近傍に分布する粒子状吸水剤のうち、第1の粒子状吸水剤12aが占める割合」とを比較すると、後者の割合の方が大きくなっている。
【0034】
それゆえ、第1の粒子状吸水剤12aの一部が、第2のシート11bの近傍に分布していたとしても、直ちに本発明の範囲外とはなるわけではない。つまり、第1の粒子状吸水剤12aと第2の粒子状吸水剤12bとは、吸水性シート10の内部において、完全に分離されている必要はない。これは、例えば、吸水性シート10の製造時において第1のシート11aの近傍に分布するように散布された第1の粒子状吸水剤12aの一部が、中間シート13(嵩高の不織布など)の空隙を抜けて、第2のシート11bの近傍にまで移動する場合に発生しうる事態である。
【0035】
上記の説明は、第2のシート11bおよび第2の粒子状吸水剤12bについても、同様である。
【0036】
第1の粒子状吸水剤12aと第2の粒子状吸水剤12bとは、通液性(ゲル透過速度(GPR))が互いに異なっており、第1の粒子状吸水剤12aのゲル透過速度(GPR)は第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)よりも高い。このような構成とすることにより、第1の粒子状吸水剤12aは液体の拡散を、第2の粒子状吸水剤12bは液体の保持を、それぞれ担うことができる。
【0037】
なお、吸水性シート製品においては、第1の粒子状吸水剤および第2の粒子状吸水剤を、以下のように識別することができる。まず、吸水性シート製品において粒子状吸水剤を挟持している2枚のシート(一例として、吸水性シート製品の最外面を構成している2枚のシート)のうち、任意の一方を第1のシート、他方を第2のシートとする。ここで、上記吸水性シート製品から上記第1のシートを剥離したときに、当該第1のシートに付着している粒子状吸水剤を、第1の粒子状吸水剤と識別する。同様に、上記吸水性シート製品から上記第2のシートを剥離したときに、当該第2のシートに付着している粒子状吸水剤を、第2の粒子状吸水剤と識別する。
【0038】
上述の識別方法によれば、仮に製造段階において複数の粒子状吸水剤が混合されても、第1のシートおよび第2のシートに付着している粒子状吸水剤の集合体のそれぞれが、第1の粒子状吸水剤および第2の粒子状吸水剤として識別される。そして、第1の粒子状吸水剤および第2の粒子状吸水剤の物性(通液性など)も、それぞれ第1のシートおよび第2のシートに付着している粒子状吸水剤の集合体の物性として、測定することができる。
【0039】
以上に説明した通り、吸水性シートの構成に関して、「第1のシート近傍に局在している、第1の粒子状吸水剤」の条件を充足するか否かを判定する場合には、当該吸水性シート製品から当該第1のシートを剥離したときに、当該第1のシートに付着している粒子状吸水剤が、第1の粒子状吸水剤としての物性を充足するか否かを判定すればよい。「第2のシート近傍に局在している、第2の粒子状吸水剤」の条件を充足するか否かを判定する場合も、同様である。
【0040】
[粒子状吸水剤Aおよび粒子状吸水剤B]
本発明の一態様に係る吸水性シートは、以下のように規定することもできる:2枚のシートの間に粒子状吸水剤が挟持されている吸水性シートであって;上記2枚のシートのうち少なくとも一方は、透水性シートであり;上記2枚のシートを剥離させたときに、当該2枚のシートのそれぞれに付着している粒子状吸水剤のうち、ゲル透過速度(GPR)がより高い方を粒子状吸水剤A、ゲル透過速度(GPR)がより低い方を粒子状吸水剤Bとすると、(i)上記粒子状吸水剤Aが付着しているシートは、使用者の体に近い側に配置されるシートであり、(ii)上記粒子状吸水剤Bが付着しているシートは、使用者の体から遠い側に配置されるシートであり、(iii)上記粒子状吸水剤Aのゲル透過速度(GPR)と、上記粒子状吸水剤Bのゲル透過速度(GPR)との差は、10以上であり、(iv)上記粒子状吸水剤Bのゲル透過速度(GPR)は、50以下である。
【0041】
ここで、「使用者の体に近い側に配置されるシート」とは、例えば吸水性シートを使い捨てオムツの吸収体に使用した場合においては、オムツの装着者の身体により近い側に配置されているシートのことである。これは、「先に液体と接触することが想定されているシート」と換言することもできる。「使用者の体に遠い側に配置されるシート」とは、上述した「使用者の体に近い側に配置されるシート」に該当しないシートのことである。
【0042】
なお、「使用者の体に近い側に配置されるシート」および「使用者の体から遠い側に配置されるシート」の前後に、または両シート間に、他のシート(例えば、粒子状吸収剤に接していないシートなど)が存在していてもよい。
【0043】
上記の態様において、粒子状吸水剤Aとは、本明細書に記載の「第1の粒子状吸水剤」に対応している。また、粒子状吸水剤Bとは、本明細書に記載の「第2の粒子状吸水剤」に対応している。さらに、2枚のシートのうち、粒子状吸水剤Aが付着している方のシートは本明細書に記載の「第1のシート」に該当し、粒子状吸水剤Bが付着している方のシートは本明細書に記載の「第2のシート」に該当する。
【0044】
したがって、本明細書の記載は、以下のように用語を置き換えて読むことができる。
第1の粒子状吸水剤:粒子状吸水剤A
第2の粒子状吸水剤:粒子状吸水剤B
第1のシート:2枚のシートのうち、粒子状吸水剤Aが付着している方のシート
第2のシート:2枚のシートのうち、粒子状吸水剤Bが付着している方のシート。
【0045】
第1のシート11aおよび第2のシート11bの少なくとも一方は、透水性シートである。ここで、吸水性シート10を用いるときに液体が接触する側(例えば、使い捨てオムツの吸収体として使用する場合は、使用者の身体に近い側)のシートを、透水性シートとすることが好ましい。さらに、上述した第1の粒子状吸水剤12aと第2の粒子状吸水剤12bとのゲル透過速度(GPR)の違いも考慮すると、第1のシートが透水性シートであることが好ましく、第1のシートのみが透水性シートであることがより好ましい。
【0046】
このような構成にすることにより、吸水性シート10の性能(液吸収速度、逆戻り量など)を充分に発揮することができる。これは、以下の機構が働くことによる。すなわち、第1のシート11aを透水性シートとすることにより、吸水性シート10に接触した液体が、速やかに粒子状吸水剤12の層へ移動する。粒子状吸水剤12の層に移動した液体は、まず、第1の粒子状吸水剤12aの層を、速やかに拡散する。これは、第1の粒子状吸水剤12aが、高いゲル透過速度(GPR)を有するためである。次に、拡散した液体は、第2の粒子状吸水剤12bに保持され、吸水性シート10の内部に封じ込められる。これは、第2の粒子状吸水剤12bが、低いゲル透過速度(GPR)を有するためである。
【0047】
0を含む広範囲な塩濃度の尿に対して、吸水性シート10が上述の機能を発揮するためには、(1)第1の粒子状吸水剤12aのゲル透過速度(GPR)と、第2の粒子状吸水剤12bのゲル透過速度(GPR)との差を10以上とし、かつ、(2)第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)を50以下とすればよい。
【0048】
ここで、吸水性シート10は、第1のシート11aおよび第2のシート11b以外にも、シートを備えていてよい。例えば、
図2のように、第1のシート11aと第2のシート11bとの間に、中間シート13を備えていてもよい。同図に示されているように、中間シート13によって、第1の粒子状吸水剤12aおよび第2の粒子状吸水剤12bを、それぞれ第1のシート11aおよび第2のシート11bの近傍に、より容易に局在化できる。さらに、中間シート13として嵩高の素材(例えば、無荷重時の厚み:3~7mm、目付量:40~60g/m
2のポリプロピレン性不織布などが、好ましい)を使用すれば、中間シート13が粒子状吸水剤12を絡めて固定できるようになる。そのため、第1の粒子状吸水剤12aと第2の粒子状吸水剤12bとを、それぞれ第1のシート11aおよび第2のシート11bの近傍に、好ましく局在化できる。
【0049】
第1の粒子状吸水剤12aおよび第2の粒子状吸水剤12bを、それぞれ第1のシート11aおよび第2のシート11bの近傍に局在化させるためには、接着剤14を使用することが好ましい。すなわち、吸水性シート10の製造過程において、吸水性シート10に備わっているシート(第1のシート11a、第2のシート11bおよび/または中間シート13)上に粒子状吸水剤を散布する際に、接着剤14の層を設けることにより、粒子状吸水剤を当該シートに固着させることができる(
図1、2を参照)。これにより、第1の粒子状吸水剤12aを第1のシート11a近傍に、第2の粒子状吸水剤12bを第2のシート11bの近傍に、それぞれより好ましく局在化させることができる。接着剤を用いて吸水性シートを製造する方法については、[2-5]にて詳述する。
【0050】
また、吸水性シート10は、長手方向に、第1の粒子状吸水剤12aおよび第2の粒子状吸水剤12bの少なくとも一方が存在しない領域を設けてもよい(詳細は[2-4]を参照)。
【0051】
[2-1.シート]
第1のシートおよび第2のシートは、粒子状吸水剤を挟持して固定化できればよく、形状および材質は特に限定されない。同様に、中間シートも、形状および材質は特に限定されない。
【0052】
上記シートの引張強度は、通常は20kgf/5cm(200N/5cm)以上、好ましくは30kgf/5cm(300N/5cm)以上、より好ましくは50kgf/5cm(500N/5cm)以上である。このような引張強度を有するシートを、少なくとも1枚、好ましくは第1のシートおよび第2のシートの少なくとも一方、より好ましくは第1のシートおよび第2のシートの両方に使用する。
【0053】
上記シートの厚さは、上記の引張強度を有する範囲で薄いほどよい。シート1枚あたりの厚さは、通常は0.01~2mm、好ましくは0.02~1mm、より好ましくは0.03~0.6mm、さらに好ましくは0.05~0.5mmである。
【0054】
上記シートの目付量は、シート1枚あたり、通常は5~300g/m2、好ましくは8~200g/m2、よりに好ましくは10~100g/m2、さらに好ましくは11~50g/m2である。
【0055】
(透水性シート)
本発明の一実施形態に係る吸水性シートに使用される第1のシート、第2のシートおよび中間シートは、透水性を有する透水性シートであってもよく、それぞれ同じ種類でもよく、異なった種類でもよい。透水性シートの透水係数(JIS A 1218:2009)は、通常は1×10-5cm/sec以上、好ましくは1×10-4cm/sec以上、より好ましくは1×10-3cm/sec以上、さらに好ましくは1×10-2cm/sec以上、最も好ましくは1×10-1cm/sec以上である。
【0056】
(シートの材質)
本発明の一実施形態に係る吸水性シートに用いられる第1のシート、第2のシートおよび中間シートの材質は、不織布が好ましい。不織布の素材は、特に限定されないが、液体浸透性、柔軟性、および吸水性シートの強度の観点からは、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)など)、ポリアミド繊維(ナイロンなど)、レーヨン繊維、パルプ(セルロース)繊維などが、好ましい。また、その他の合成繊維の不織布、合成繊維と綿、絹、麻、パルプ(セルロース)繊維などとを混合して製造した不織布も、同様に好ましい。
【0057】
上記に説明した不織布は、上述の繊維を1種類のみ含んでいる不織布でも、2種以上の繊維を組み合わせた不織布でもよい。
【0058】
中間シート用に用いる不織布は、エアースルー不織布が好ましい。また、中間シート用に用いる不織布は、かさ高いものが好ましく、具体的には、目付量30g/m2以上かつ厚み1mm以上の不織布が好ましい。
【0059】
上記に説明した不織布は、吸水性シートの厚みを増大させない程度に、少量のパルプ繊維を含んでもよい。
【0060】
(不織布の親水度)
本明細書において「不織布の親水度」は、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.68「紙及び板紙-はっ水性試験方法」に記載の方法によって測定される(詳細は[紙パルプ技術協会 編『JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法 2000年版』紙パルプ技術協会、2001年]を参照)。
【0061】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートに用いられる不織布の親水度は、通常は5~200であり、好ましくは8~150であり、より好ましくは10~100であり、さらに好ましくは12~80である。
【0062】
不織布の親水度が低すぎると、吸水性シートの液体吸収性能が悪化する。逆に、不織布の親水度が高すぎても、液体吸収性能はそれに見合うほど向上しない。このため、不織布の親水度は、上述の範囲とすることが好ましい。
【0063】
このような親水度を有する不織布の材料の例としては、上記した繊維の中では、レーヨン繊維が挙げられる。また、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維のような疎水性の化学繊維を、公知の方法により親水化処理を施し適度な親水度を付与したものを、不織布の材料としてもよい。
【0064】
(親水化処理)
上述したように、本発明の一実施形態に係る吸水性シートに用いられる不織布は、透水性を高めるために親水性不織布であることが好ましいが、親水化剤(界面活性剤など)を用いて、不織布または不織布の材料である繊維を親水化してもよい。
【0065】
親水化剤の例としては、アニオン系界面活性剤(脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩など)、カチオン系界面活性剤(第4級アンモニウム塩など)、ノニオン系界面活性剤(ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、シリコーン系界面活性剤(ポリオキシアルキレン変性シリコーンなど)、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ウレタン系の樹脂を含むステイン・リリース剤などが挙げられる。
【0066】
[2-2.粒子状吸水剤]
(ゲル透過速度(Gel Permeation Rate:GPR);通液性)
本明細書において、粒子状吸水剤または吸水性樹脂の「通液性」とは、荷重下において膨潤ゲル粒子間を通過する液体の流れ性のことを言う。この指標として、ゲル透過速度(GPR)が用いられる。
【0067】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、第1のシート近傍に局在している第1の粒子状吸水剤と、第2のシート近傍に局在している第2の粒子状吸水剤と、を含んでいる。第1の粒子状吸水剤と第2の粒子状吸水剤とは、通液性(ゲル透過速度(GPR))が互いに異なっており、第1の粒子状吸水剤がよりゲル透過速度(GPR)が高く、第2の粒子状吸水剤がよりゲル透過速度(GPR)が低い。
【0068】
本発明の効果である、0を含む広範囲な塩濃度(質量%)の尿に対して液吸収速度および逆戻り量の点で優れ、体調の変化により尿中の塩濃度が変化しやすい乳幼児を含むユーザーにとって使用感の良い吸水性シートを提供するために、第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)と第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は以下の通りであることが必要であるか、または好ましい。
【0069】
第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)と第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)との差は、10以上であり、15以上が好ましく、20以上がより好ましく、30以上がさらに好ましく、40以上がよりさらに好ましく、50以上が特に好ましい。第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)と第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)との差の上限値は、拡散性が高すぎることによる漏れの発生を防ぐために、上記上限値を1000程度、好ましくは500程度、より好ましくは300程度とすればよい。
【0070】
第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、50以下であり、40以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下がさらに好ましく、10以下がよりさらに好ましい。第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)の下限値は、0である。
【0071】
第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、上述の条件(第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)と第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)との差、および、第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR))を満たす限り、特に限定されない。したがって、第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)の下限値は、10以上であり、20以上が好ましく、30以上がより好ましい。一方、第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)の上限値は、ゲル透過速度(GPR)の測定限界があるため、通常は1000以下であり、好ましくは800以下であり、より好ましくは600以下であり、さらに好ましくは400以下であり、特に好ましくは300以下である。
【0072】
以上に説明した通液性は、1種類の粒子状吸水剤によって達成してもよいし、2種類以上の粒子状吸水剤の混合物により達成してもよい。つまり、第1の粒子状吸水剤および/または第2の粒子状吸水剤は、単一種類の粒子状吸水剤に限定されることはなく、複数種類の粒子状吸水剤を混合したものであってもよい。
【0073】
上述したように、本発明の一実施形態に係る吸水性シートが含んでいる粒子状吸水剤(特に、第1の粒子状吸水剤)は、比較的高いゲル透過速度(GPR)を有する。このように高いゲル透過速度(GPR)を有する粒子状吸水剤は、水溶液重合により容易に得ることができ、逆相懸濁重合によっては通常得られない。したがって、逆相懸濁重合によって得られる粒子状吸水剤を、本発明の一実施形態に係る吸水性シートに含まれている粒子状吸水剤(特に、第1の粒子状吸水剤)に過剰に含ませると、所望のゲル透過速度(GPR)が得られない恐れがある。このため、逆相懸濁重合によって得られる粒子状吸水剤を用いる場合は、所望のゲル透過速度(GPR)を得られる程度の分量を、ゲル透過速度(GPR)以外の物性を改善する目的で、用いることが好ましい。
【0074】
(粒子状吸水剤の使用量)
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおける、粒子状吸水剤の単位面積あたりの含有量は、通常は80~1200g/m2、好ましくは100~1000g/m2、より好ましくは150~900g/m2、さらに好ましくは200~800g/m2、よりさらに好ましくは220~700g/m2である。
【0075】
粒子状吸水剤の含有量を上記の範囲とすることにより、上記吸水性シートは本発明の効果を発揮する。粒子状吸水剤の使用量が少なすぎると、吸水性シートの吸水能が不足する恐れがある。逆に、粒子状吸水剤が多すぎると、吸水性シートを用いる吸収性物品についての衛生面、通気性面で問題が生じる恐れもある。
【0076】
(粒子状吸水剤の配置)
本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、少なくとも2層以上の粒子状吸水剤の層を有する。
【0077】
上記粒子状吸水剤の層は、第1のシートおよび第2のシートの間に、さらに1枚以上の中間シートを備えることにより、互いに分画されてもよい。このとき、中間シートの両面に、第1の粒子状吸水剤および第2の粒子状吸水剤が、それぞれ配置されることになる。
【0078】
さらに、第1の粒子状吸水剤および第2の粒子状吸水剤に加えて、さらに1つ以上の粒子状吸水剤の層を設けてもよい。また、粒子状吸水剤以外に、その他第3成分(抗菌剤、消臭剤など)を配置してもよい。
【0079】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートを、2層構造(すなわち、第1の粒子状吸水剤の層および第2の粒子状吸水剤の層)とする場合、第1の粒子状吸水剤/第2の粒子状吸水剤の質量比は、5/95~50/50が好ましく、5/95~40/60がより好ましく、5/95~30/70がさらに好ましく、5/95~20/80がよりさらに好ましい。第1の粒子状吸水剤/第2の粒子状吸水剤の質量比を、5/95~50/50の範囲とすることにより、本発明の効果である、0を含む広範囲な塩濃度(質量%)の尿に対して液吸収速度および逆戻り量の点で優れ、体調の変化により尿中の塩濃度が変化しやすい乳幼児を含むユーザーにとって使用感の良い吸水性シートを提供することができる。
【0080】
[2-3.接着剤]
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおいて、各シート間、および、シートと粒子状吸水剤との間を固着させる方法は、特に限定されない。圧着により固着させる方法、各種のバインダーを用いる方法、シート自体の材料を融解させてヒートシールする方法などが挙げられるが、接着剤を用いて固着させる方法が好ましい。
【0081】
固着に用いる接着剤は、特に限定されない。しかし、溶液型の接着剤よりも、ホットメルト接着剤の方が好ましい。これは、ホットメルト接着剤は溶媒を使用しないため、溶媒を除去する手間がかからず生産性が高くなり、かつ、溶媒が残存する恐れがないからである。
【0082】
ホットメルト接着剤を固着に用いる場合は、ホットメルト接着剤を予め表面に含有させた、シートまたは粒子状吸水剤を準備してもよい。あるいは、吸水性シートの製造工程において、ホットメルト接着剤を使用してもよい。
【0083】
ホットメルト接着剤の形状、融点は適宜選択できる。ホットメルト接着剤の形状は、粒子状、繊維状、ネット状、またはフィルム状でもよく、また、加熱によって溶融させた液状でもよい。粒子状のホットメルト接着剤を使用する場合、その粒子径は、粒子状吸水剤の平均粒子径の0.01~2倍程度であり、好ましくは0.02~1倍程度であり、より好ましくは0.05~0.5倍程度である。ホットメルト接着剤の融点(または軟化点)は、通常50~200℃であり、好ましくは60~180℃である。
【0084】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートに用いられるホットメルト接着剤の種類は、特に限定されない。好ましくは、エチレン-酢酸ビニル共重合体接着剤、スチレン系エラストマー接着剤、ポリオレフィン系接着剤およびポリエステル系接着剤などを用いることができる。ホットメルト接着剤は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0085】
エチレン-酢酸ビニル共重合体接着剤の例としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)接着剤、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体(EBA)が挙げられる。スチレン系エラストマー接着剤の例としては、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIS)接着剤、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBS)接着剤、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIBS)接着剤、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)接着剤が挙げられる。ポリオレフィン系接着剤の例としては、ポリエチレン接着剤、ポリプロピレン接着剤、アタクチックポリプロピレン接着剤が挙げられる。ポリエステル系接着剤(共重合ポリオレフィン接着剤など)の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)接着剤、ポリブチレンテレフタレート(PBT)接着剤、共重合ポリエステル接着剤が挙げられる。
【0086】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートにおける、接着剤(ホットメルト接着剤)の含有量(質量)は、吸水性樹脂の含有量(質量)を基準として、0を超えて1.0倍であり、好ましくは0.1~1.0倍であり、より好ましくは0.11~0.50倍であり、さらに好ましくは0.12~0.30倍であり、さらにより好ましくは0.14~0.25倍である。接着剤の含有量が多すぎると、製造コストの増加や、吸水性シートの質量増加につながるため、不利となる。また、粒子状吸水剤の膨潤が制限されるため、吸水性シートの吸水能を低下させる恐れもある。
【0087】
[2-4.吸水性シートの形状・性能]
本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、従来型の吸収性物品に用いられる吸収体よりも、薄型化が可能である。上記吸水性シートを、使い捨てオムツに使用する場合、その厚さは、乾燥状態において5mm以下、好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下、さらに好ましくは2mm以下である。一方、厚さの下限は、吸水性シートの強度および粒子状吸水剤の直径を鑑みると、0.2mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上である。
【0088】
吸水性シートにさらに通液性、拡散性、柔軟性などを付与するために、吸水性シートの表面(すなわち、第1のシートおよび/または第2のシートの外面側)に適宜エンボス加工を施してもよい。エンボス加工を施す領域は、吸水性シート表面の全面でもよく、一部でもよい。連続したエンボス加工領域を、吸水性シートの長手方向に設けることにより、液を長手方向に容易に拡散させることができる。
【0089】
また、粒子状吸水剤は吸水性シートの全面(すなわち、第1のシートおよび/または第2のシートの内面側の全面)に散布されていてもよく、一部に粒子状吸水剤の非存在領域が設けられていてもよい。粒子状吸水剤の非存在領域を設ける場合は、吸水性シートの長手方向に、チャネル状(筋状)に設けることが好ましい。
【0090】
このように、エンボス加工領域および/または粒状吸水剤の不存在領域を、長手方向に連続して設けることにより、当該領域が、大量の液を流すための通路(液体搬送通路)の役割を果たす。エンボス加工領域および/または粒状吸水剤の不存在領域は、直線状に設けても、曲線状に設けても、波型に設けてもよい。
【0091】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートの剥離強度は、通常は0.05~3.0N/7cmであり、好ましくは0.1~2.5N/7cmであり、より好ましくは0.15~2.0N/7cmであり、さらに好ましくは0.2~1.5N/7cmである。吸水性シート剥離強度が3.0N/7cmを超える場合、接着力が強すぎるため、使用している粒子状吸水剤が十分な吸水性能を発揮できないことがある。
【0092】
[2-5.吸水性シートの製造方法]
本発明の一実施形態に係る吸水性シートの製造方法は、(1)第1のシートに第1の粒子状吸水剤を散布する工程、(2)第2のシートに第2の粒子状吸水剤を散布する工程、ならびに、(3)中間シートに、第1の粒子状吸水剤および/または第2の粒子状吸水剤を散布する工程、の少なくとも1つを含む。第1の粒子状吸水剤および第2の粒子状吸水剤が満たす条件は、上述の通りである。より具体的な製造方法の一例として、下記(a)~(c)の製造方法が挙げられる。
【0093】
(a)第1のシートの上に、第1の粒子状吸水剤(および、好ましくは接着剤)を均一に散布する。第2のシートおよび第2の粒子状吸水剤についても、同様の操作を施す。第1のシートおよび第2のシートを、粒子状吸水剤が散布されている面が対合するように重ねて、圧着する。圧着は、接着剤の溶融温度付近における加熱圧着が好ましい。
【0094】
(b)第1のシートの上に、第1の粒子状吸水剤(および、好ましくは接着剤)を散布し、加熱炉を通過させて、第1の粒子状吸水剤が散逸しない程度に固着させる。第2のシートおよび第2の粒子状吸水剤についても、同様の操作を施す。第1のシートおよび第2のシートを、粒子状吸水剤が散布されている面が対合するように重ねて、加熱圧着する。
【0095】
(c)第1のシートの上に、接着剤を溶融塗布した後、粒状吸水剤を均一に散布して層を形成させる。第2のシートおよび第2の粒子状吸水剤についても、同様の操作を施す。さらに、第1のシートおよび第2のシートを、粒子状吸水剤が散布されている面が対合するように重ねて、ロールプレスなどを用いて圧着する。
【0096】
これらの方法のなかでは、製造方法の簡便さと製造効率の高さの観点から、(a)および(c)の方法が好ましい。なお、(a)~(c)の方法を併用して、吸水性シートを製造することもできる。
【0097】
また、中間シートを備えている吸水性シートの製造方法の一例として、下記(d)~(g)の製造方法がある。
【0098】
(d)第1のシートの上に、第1の粒子状吸水剤(および、好ましくは接着剤)を均一に散布する。その上に中間シートを重ねて、圧着する。さらに、上記中間シートの第1の粒子状吸水剤に面していない側の表面に、第2の粒子状吸水剤(および、好ましくは接着剤)を均一に散布する。その上に第2のシートを重ねて、(好ましくはホットメルトが溶融する加熱条件下、またはホットメルトが溶融している状態下で)圧着する。
【0099】
(e)中間シートの上に、第2の粒子状吸水剤を均一に散布する。また、第2のシートの上に接着剤を散布する。そして、上記中間シートの第2の粒子状吸水剤を散布した面と、上記第2のシートの接着剤を散布した面とを圧着する。次に、圧着後の中間シートにおいて、上記第2の粒子状吸水剤を散布した面と反対側の面に、第1の粒子状吸水剤を均一に散布する。また、第1のシートの上に接着剤を散布する。そして、上記中間シートの第1の粒子状吸水剤を散布した面と、上記第1のシートの接着剤を散布した面を圧着する。上記圧着は、ホットメルトが溶融する加熱条件下、またはホットメルトが溶融している状態下で行うことが好ましい。
【0100】
(f)第2のシートの上に接着剤を散布する。次に、その上に第2の粒子状吸水剤を均一に散布する。次に、その上に中間シートを載せて圧着する。次に、上記中間シートの第2の粒子状吸水剤と面していない方の面に、接着剤を散布する。次に、その上に第1の粒子状吸水剤を均一に散布する。次に、その上に第1のシートを載せて圧着する。上記圧着はホットメルトが溶融する加熱条件下、またはホットメルトが溶融している状態下で行うことが好ましい。
【0101】
(g)第2のシートの上に接着剤を散布する。次に、その上に第2の粒子状吸水剤を均一に散布する。次に、その上に中間シートを載せて圧着する。次に、上記中間シートの第2の粒子状吸水剤と面していない方の面に、第1の粒子状吸水剤を均一に散布する。また、第1のシートの上に接着剤を散布する。そして、上記中間シートの第1の粒子状吸水剤を散布した面と、上記第1のシートの接着剤を散布した面を圧着する。上記圧着はホットメルトが溶融する加熱条件下、またはホットメルトが溶融している状態下で行うことが好ましい。
【0102】
以上に説明した以外の工程として、吸水性シートの触感を改善し、液体吸収性能を向上させる目的で、吸水性シートにエンボス加工を施す工程を設けてもよい。エンボス加工は、第1のシートおよび第2のシートを圧着する際に同時に施してもよいし、吸水性シートの製造後に施してもよい。
【0103】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートの製造方法においては、添加剤(消臭剤、繊維、抗菌剤、ゲル安定剤など)適宜配合してもよい。添加剤の配合量は、粒子状吸水剤の質量に対して0~100質量%であり、好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは0~10質量%である。上記製造方法においては、予め添加剤を混合した粒子状吸水剤を用いてもよいし、製造工程の途中で添加剤を添加してもよい。
【0104】
製造される吸水性シートの寸法は、適宜設計されうる。通常は、横幅が3~10m、長さが数10m~数1000m(連続シートまたはロールの状態において)である。製造された吸水性シートは、目的(使用される吸収体の大きさ)に応じて裁断して用いられる。
【0105】
上記に例示した以外にも、吸水性シートの製造方法は、例えば以下の特許文献に開示されている:国際公開第2012/174026号、国際公開第2013/078109号、国際公開第2015/041784号、国際公開第2011/117187号、国際公開第2012/001117号、国際公開第2012/024445号、国際公開第2010/004894号、国際公開第2010/004895号、国際公開第2010/076857号、国際公開第2010/082373号、国際公開第2010/113754号、国際公開第2010/143635号、国際公開第2011/043256号、国際公開第2011/086841号、国際公開第2011/086842号、国際公開第2011/086843号、国際公開第2011/086844号、国際公開第2011/117997号、国際公開第2011/118409号、国際公開第2011/136087号、国際公開第2012/043546号、国際公開第2013/099634号、国際公開第2013/099635号、特開2010-115406号、特開2002-345883号、特開平6-315501号、特開平6-190003号、特開平6-190002号、特開平6-190001号、特開平2-252558号、特開平2-252560号、特開平2-252561号。これらの文献に開示されている吸水性シートの製造方法も、適宜参照される。
【0106】
〔3.吸収性物品〕
本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、〔2〕で説明されている吸水性シートを、液体透過性シートおよび液体不透過性シートによって挟持した構造を有している。吸収性物品の具体例としては、使い捨てオムツ、失禁パッド、生理用ナプキン、ペットシート、食品用ドリップシート、電力ケーブルの止水剤などが挙げられる。
【0107】
液体透過性シートおよび液体不透過性シートとしては、吸収性物品の技術分野で公知のものを、特に制限なく用いることができる。また、吸収性物品は、公知の方法によって製造することができる。
【0108】
本発明の一実施形態に係る吸収性物品は、(1)第1のシートが透水性シートであり、かつ、(2)第1のシートが液体透過性シート側に配置されている、ことが好ましい。
【0109】
このような構成によれば、先に第1の粒子状吸水性樹脂(ゲル透過速度(GPR)が高い)、次いで第2の粒子状吸水性樹脂(ゲル透過速度(GPR)が低い)の順に、液体が接触することになる。このため、〔2〕において説明した機構が働き、本発明の効果である吸水性シートの性能(液吸収速度、逆戻り量など)を充分に発揮することができる。
【0110】
〔4.粒子状吸水剤の物性〕
本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、第1の粒子状吸水剤および第2の粒子状吸水剤を含んでいる。これらの粒子状吸水剤は、以下の物性を有していることが好ましい。なお、別途記載のない限り、第1の粒子状吸水剤および/または第2の粒子状吸水剤が複数種類の粒子状吸水剤の混合物である場合は、以下の記載は、当該混合物の物性に関する説明である。
【0111】
[4-1.ゲル透過速度(GPR);通液性]
(ゲル透過速度(GPR)の測定方法)
本発明の一実施形態に係る吸水性シートに含まれている粒子状吸水剤(第1の粒子状吸水剤および第2の粒子状吸水剤)のゲル透過速度(GPR)は、米国特許第5849405号明細書記載の食塩水流れ誘導性(SFC)試験を参考に、測定条件を変更し、以下の手順で測定することができる。
【0112】
測定のための装置として、
図4に示す装置400を用いる。装置400は、大きく分けて、容器410とタンク420とから構成されている。
【0113】
容器410にはセル411(内径6cm)が設けられており、セル411の内部に膨潤ゲル414(粒子状吸水剤を吸水させたもの)を収納することができ、さらに液体423を導入できる。また、セル411にピストン412を嵌合させることにより、膨潤ゲル414に対して圧力を負荷することができる。セル411の底面およびピストン412の底面には、金網413a、413b(No.400ステンレス製金網、目開き38μm)が張られており、膨潤ゲル414(および粒子状吸水剤)が通過できないようになっている。ここで、液体423は、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液を用いる。
【0114】
ここで、純水とは超純水を含んだ概念である。本明細書においては、純水として、導電率(25℃)が1.0~0.0548S/cm(好ましくは1.0~0.1μS/cm)の水が使用される。より具体的には、上記の導電率を示す、イオン交換水、逆浸透水、蒸留水が使用され、とりわけイオン交換水が使用される。このような導電率を有する純水の例示的な製造方法としては、(i)水道水などの水に、必要により、フィルター濾過または活性炭濾過を施し、(ii)脱炭酸または脱気させ、その後、(iii)イオン交換膜もしくは逆浸透膜により処理する、または蒸留する、方法が挙げられる。
【0115】
タンク420は、内部に液体423を蓄えている。液体423は、コック付きL字管422を通じてセル411に導入される。また、タンク420にはガラス管421が挿入されており、ガラス管421の内部は空気で満たされている。これによって、ガラス管421の下端とセル411内の液面を同じとすることができる。すなわち、タンク420内の液体423の液面がガラス管421の下端よりも上部にある間は、セル411内の液面を一定に保持することが可能となる。今回の測定では、タンク420内の液体423の下部液面(すなわち、ガラス管421の下端)と、膨潤ゲル414の底面との高低差を、4cmとした。
【0116】
このように、装置400によれば、セル411に一定の静水圧の液体423を導入することができる。ピストン412には孔415が空けられているので、液体423は孔415を流通し、さらに膨潤ゲル414の層も流通して、セル411の外部へと流出する。容器410は、液体423の通過を妨げないステンレス製の金網431の上に載せられている。そのため、セル411から流出した液体422は、最終的に捕集容器432に集められる。そして、捕集容器432に集められた液体422の量は、上皿天秤433によって秤量できる。
【0117】
具体的なゲル通過速度(GPR)の測定方法は以下の通りである。なお、以下の操作は室温(20~25℃)にておこなう。
(1)セル411に、粒子状吸水剤(0.900g)を均一に入れる。
(2)上記粒子状吸水剤を、無加圧下にて、液体(0.90質量%の塩化ナトリウム水溶液)を60分間吸水させ、膨潤ゲル414とする。
(3)膨潤ゲル414の上にピストンを載置して、0.3psi(2.07kPa)の加圧状態にする。
(4)静水圧を3923dyne/cm2の一定値に保ちながら、液体423をセル411に導入し、膨潤ゲル414層を通液させる。
(5)膨潤ゲル414層を通液する液体423の量を、5秒間隔で3分間記録して、膨潤ゲル414層を通過する液体423の流速を測定する。測定には、上皿天秤433およびコンピュータ(図示せず)を使用する。
(6)液体423の流通を開始してから1分後~3分後の流速を平均し、ゲル透過速度(GPR)[g/min]を算出する。
【0118】
(ゲル透過速度(GPR)の調整方法)
ゲル透過速度(GPR)は、例えば、後述する粒子状吸水剤の製造方法の粉砕工程および分級工程による粒度分布の調整(例えば、平均粒子径が大きいほどGPRはより高い数値を示す傾向がある)、表面架橋工程(例えば、表面架橋剤の量などを調整することでGPRを調整できる)、その他の添加剤添加工程(GPRを向上させる添加剤の添加など)によって調整することができる。具体的には、ゲル透過速度(GPR)を低くするためには、粒子状吸水剤の平均粒子径を小さくしたり、表面架橋剤の添加量を少なくしたりすればよい。逆に、ゲル透過速度(GPR)を高くするためには、粒子状吸水剤の平均粒子径を大きくしたり、表面架橋剤の添加量を多くしたりすればよい。また、ゲル透過速度(GPR)の異なる2種類以上の粒子状吸水剤を混合して、所望のゲル透過速度の粒子状吸水剤を得てもよい。
【0119】
[4-2.表面張力]
表面張力とは、固体または液体の表面積を増加させるために必要な仕事(自由エネルギー)を、単位面積あたりで表したものである。本発明の一実施形態に係る吸水性シートに含まれている粒子状吸水剤(第1の粒子状吸水剤および第2の粒子状吸水剤)の表面張力は、粒子状吸水剤または吸水性樹脂を液体(0.90質量%の塩化ナトリウム水溶液)中に分散させた際の、液体の表面張力をいう。本願実施例における表面張力の具体的な測定方法は以下に記載の通りである。
【0120】
まず、充分に洗浄された100mLのビーカーに、20℃に調整された液体(0.90質量%の塩化ナトリウム水溶液)50mLを入れ、表面張力計(K11自動表面張力計、KRUSS製)を用いて表面張力を測定する。この測定における表面張力の値が71~75[mN/m]の範囲にあることを確認し、測定の正確さを担保する。
【0121】
次に、上記液体(20℃、表面張力測定後)を入れたビーカーに、充分に洗浄された25mm長のフッ素樹脂製回転子、および、粒子状吸水剤または吸水性樹脂0.5gを加え、500rpmにて4分間攪拌する。4分後、攪拌を止め、含水した粒子状吸水剤または吸水性樹脂が沈降した後に、上澄み液の表面張力を測定する。なお、後述する実施例では、白金プレートを用いるプレート法を採用する。白金プレートは各測定に先立って、脱イオン水にて充分に洗浄し、さらにガスバーナーにて加熱洗浄してから、測定に使用する。
【0122】
本発明の効果である、0を含む広範囲な塩濃度(質量%)の尿に対して液吸収速度および逆戻り量の点で優れ、体調の変化により尿中の塩濃度が変化しやすい乳幼児を含むユーザーにとって使用感の良い吸水性シートを提供するためには、第1の粒子状吸水剤の表面張力と第2の粒子状吸水剤の表面張力は以下の通りであることが好ましい。
【0123】
第1の粒子状吸水剤および/または第2の粒子状吸水剤の表面張力は、好ましくは65mN/m以上であり、以下、66mN/m以上、67mN/m以上、69mN/m以上、70mN/m以上、71mN/m以上、72mN/m以上の順に好ましくなる。吸水性シートは、従来の使い捨てオムツよりも粒子状吸水剤の表面張力の影響が表れやすいため、表面張力の値は特に重要である。
【0124】
[4-3.粒子形状(不定形破砕状)]
第1の粒子状吸水剤および/または第2の粒子状吸水剤は、不定形破砕状の粒子状吸水剤を含んでいることが好ましい。不定形破砕状の粒子は、球状粒子(逆相懸濁重合や気相重合により得られる)に比べて、比表面積が大きいため、液吸収速度が大きく、さらにシートへの固定も容易になる。
【0125】
不定形破砕状とは、粒子の形状が、一定でない破砕状であることをいう。本明細書においては、重合中または重合後の架橋重合体の含水ゲル(またはその乾燥物)を粉砕することによって得られる粉砕物の形状を表現している。一方、粉砕工程を含まない吸水性樹脂の製造方法(代表的には、逆相懸濁重合、噴霧液滴重合など)によって得られる、球状の粒子または球状粒子の造粒物は、不定形破砕状ではない。
【0126】
本発明の効果である、0を含む広範囲な塩濃度(質量%)の尿に対して液吸収速度および逆戻り量の点で優れ、体調の変化により尿中の塩濃度が変化しやすい乳幼児を含むユーザーにとって使用感の良い吸水性シートを提供するために、第1の粒子状吸水剤の不定形破砕状の粒子状吸水剤の含有率と、第2の粒子状吸水剤の不定形破砕状の粒子状吸水剤の含有率は以下の通りであることが好ましい。
【0127】
第1の粒子状吸水剤に含まれる不定形破砕状の粒子状吸水剤の含有率は、それぞれの粒子状吸水剤の全量に対して、50質量%以上であることが好ましく、以下、60質量%、70質量%、80質量%、90質量%、100質量%の順に好ましくなる。第2の粒子状吸水剤に含まれる不定形破砕状の粒子状吸水剤の含有率も、上記と同じ数値範囲が好適である。
【0128】
なお、本発明の一実施形態に係る吸水性シートに用いる場合、架橋重合体の含水ゲルの乾燥物を粉砕して、不定形破砕状の粒子を得ることが好ましい。同様に、本発明の一実施形態に係る吸水性シートに用いる場合、水溶液重合により得た架橋重合体を粉砕して、不定形破砕状の粒子を得ることが好ましい。
【0129】
[4-4.PSD(ERT420.2-02)]
「PSD」は、Particle Size Distributionの略称であり、篩分級により測定される、粒子状吸水剤または吸水性樹脂の粒度分布を意味する。
【0130】
これに関連して、質量平均粒子径(D50)、および粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許第7638570号明細書に記載されたものと同様の方法で測定する(同明細書の"(3)Mass-Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution"を参照)。
【0131】
粒子状吸水剤の粒度分布(PSD)および粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許出願公開第2006/204755号に開示されている測定方法に準じて測定する。
【0132】
具体的には、まず、目開きがそれぞれ850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μmであるJIS標準篩(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm;JIS Z 8801-1(2000))、またはJIS標準篩に相当する篩を用いて、粒子状吸水剤10.00gを分級する。分級後、各篩の質量を測定し、粒子径150μm未満の粒子の質量百分率(質量%)を算出する。ここで、「粒子径150μm未満の粒子の質量百分率」とは、目開き150μmのJIS標準篩を通過する粒子の、粒子状吸水剤全体に対する質量割合(%)である。
【0133】
質量平均粒子径(D50)は、上記各粒度の残留百分率Rを対数確率紙にプロットし、得られたグラフから、R=50質量%に相当する粒子径を質量平均粒子径(D50)として読み取る。つまり、質量平均粒子径(D50)は、粒子状吸水剤全体の粒度分布において、50質量%に対応する粒子径のことである。
【0134】
粒度分布の対数標準偏差(σζ)は下記式(1)によって得られる。σζの値が小さいほど、粒度分布が狭いことを意味する。
σζ=0.5×ln(X2/X1) ・・・式(1)
式(1)中、X1はR=84.1質量%、X2はR=15.9質量%となるときの、それぞれの粒径である。
【0135】
[4-4-1.粒度(質量平均粒子径(D50)、粒度分布、および粒度分布の対数標準偏差(σζ))]
第1の粒子状吸水剤および/または第2の粒子状吸水剤の質量平均粒子径(D50)は、好ましくは200μm~600μmであり、以下、200μm~550μm、250μm~500μm、350μm~450μmの順に好ましくなる。
【0136】
第1の粒子状吸水剤および/または第2の粒子状吸水剤は、粒子径150μm未満の粒子の割合が、好ましくは10質量%以下であり、以下、5質量%以下、1質量%以下の順に好ましくなる。一方、上記粒子状吸水剤は、粒子径850μm以上の粒子の割合が、好ましくは5質量%以下であり、以下、3質量%以下、1質量%以下の順に好ましくなる。これらの粒子の割合の下限値は、いずれも少ないほど好ましく、0質量%が望ましい。ただし、0.1質量%程度を下限値としても、特に問題はない。
【0137】
第1の粒子状吸水剤および/または第2の粒子状吸水剤の粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20~0.50であり、以下、0.25~0.40、0.27~0.35の順に好ましくなる。
【0138】
以上に説明した粒度に関する性質は、米国特許第7638570号やEDANA ERT420.2-02に開示されている測定方法に準じて、標準篩を用いて測定することができる。
【0139】
[4-5.無加圧下吊り下げ吸水倍率(FSCw)]
FSCw(無加圧下吊り下げ吸水倍率)の測定は、ERT440.2-02に準じて、以下の条件で行う。
(1)粒子状吸水剤0.200gを秤量し、不織布製の袋(60×85mm)に均一に入れてヒートシールする。その後、23±1℃に調温した純水500mL中に袋を浸漬させる。
(2)20秒経過後、袋を引き上げ、袋を1分間吊り下げることによって水切りを行う。その後、袋の質量W3[g]を測定する。
(3)(1)(2)と同じ操作を、不織布製の袋に粒子状吸水剤を入れずに行い、そのときの袋の質量W4[g]を測定する。W3およびW4の値から、以下の式(2)にしたがってFSCw(無加圧下吸水倍率)を算出する。
FSCw(g/g)={(W3-W4)/(粒子状吸水剤の質量(0.200g))}-1 ・・・式(2)。
【0140】
[4-6.遠心分離機保持容量(CRC)]
CRCとは、Centrifuge Retention Capacityの略称であり、遠心分離機保持容量を意味する(無加圧下吸収倍率と同義)。CRCは、EDANA法(ERT441.2-02)に準拠して測定することができる。
【0141】
〔5.粒子状吸水剤の製造方法〕
以下、本発明の一実施形態に係る吸水性シートに用いることができる粒子状吸水剤の製造方法の一例を説明する。
[5-1.単量体水溶液の調製工程]
本工程は、単量体(たとえばアクリル酸(塩))を主成分として含んでいる水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)を、調製する工程である。なお、得られる吸水性樹脂の吸水性能が低下しない限りは、単量体のスラリー液を使用することもできる。しかし、本項では便宜上、単量体水溶液について説明する。
【0142】
ここで、「主成分として含む」とは、ポリアクリル酸(塩)を重合する際のアクリル酸(塩)の使用量が、重合に用いられる単量体(ただし、内部架橋剤を除く)全体に対して、通常50~100モル%、好ましくは70~100モル%、より好ましくは90~100モル%、さらに好ましくは実質的に100モル%であることをいう。
【0143】
(アクリル酸およびアクリル酸塩)
本工程では、得られる粒子状吸水剤の物性および生産性の観点から、単量体としてアクリル酸および/またはその塩(以下「アクリル酸(塩)」と称する)を用いることが好ましい。
【0144】
上記アクリル酸塩は、上記アクリル酸を塩基性組成物で中和したものである。上記アクリル酸塩は、市販のアクリル酸塩(例えば、アクリル酸ナトリウム)でもよいし、粒子状吸水剤の製造工程中に得られたものでもよい。
【0145】
本工程における「塩基性組成物」は、塩基性化合物を含有する組成物を指す。塩基性化合物の例としては、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩または水酸化物;アンモニア;有機アミンなどが挙げられる。これらの中でも、得られる粒子状吸水剤の物性の観点から、強塩基性の塩基性組成物が好ましい。したがって、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0146】
アクリル酸を中和してアクリル酸(塩)を得るためには、重合前にアクリル酸を中和してもよいし、アクリル酸を架橋重合して得られる含水ゲル状架橋重合体を中和してもよい(以下、後者のことを「後中和」と称する)。重合前の中和と後中和とを併用してもよい。中和の工程は、連続式でもバッチ式でもよく特に限定されない。ただし、生産効率などを考慮すると、連続式が好ましい。
【0147】
なお、中和を行う装置、中和温度、滞留時間などの条件については、国際公開第2009/123197号および米国特許出願公開第2008/0194863号に開示されている条件を、適用することができる。
【0148】
アクリル酸(塩)の中和率は、単量体の酸基に対して、好ましくは10~90モル%、より好ましくは40~85モル%、さらに好ましくは50~80モル%、特に好ましくは60~75モル%である。中和率が10モル%未満の場合、吸水倍率が著しく低下することがある。一方、中和率が90モル%を超える場合、加圧下吸水倍率の高い吸水性樹脂が得られないことがある。
【0149】
(他の単量体)
本工程における「他の単量体」とは、上記アクリル酸(塩)以外の単量体を指す。アクリル酸(塩)と他の単量体とを併用して、粒子状吸水剤を製造することができる。
【0150】
他の単量体の例としては、水溶性または疎水性の不飽和単量体が挙げられる。より具体的な例としては、米国特許出願公開第2005/0215734に開示されている化合物(ただし、アクリル酸は除く)を適用することができる。
【0151】
(内部架橋剤)
粒子状吸水剤の製造に用いられる内部架橋剤としては、米国特許第6241928号に開示されている化合物を、適用することができる。上記化合物の中から、反応性を考慮して、1種または2種以上の化合物が選択される。
【0152】
内部架橋剤の使用量は、単量体全体に対して、好ましくは0.0001~10モル%、より好ましくは0.001~1モル%である。使用量を上記範囲内とすることにより、所望の吸水性樹脂が得られる。使用量が少なすぎる場合、ゲル強度が低下し水可溶分が増加する傾向にあり、好ましくない。逆に、使用量が多すぎる場合、吸水倍率が低下する傾向にあり、好ましくない。内部架橋剤の使用量を調節することによって、GPRを調節することができる。具体的には、内部架橋剤の使用量を増加させると、GPRが上昇する傾向にある。逆に、内部架橋剤の使用量を減少させると、GPRは低下する傾向にある。
【0153】
内部架橋剤の使用方法は、所定量の内部架橋剤を予め単量体水溶液に添加し、重合と同時に架橋反応も進行させる方法が好ましい。上記の方法以外にも、(1)重合中や重合後に内部架橋剤を添加して後架橋する方法、(2)ラジカル重合開始剤を用いてラジカル架橋する方法、(3)電子線、紫外線などの活性エネルギー線を用いて放射線架橋する方法などを採用してもよい。また、これらの方法を併用してもよい。
【0154】
(その他、単量体水溶液に添加される物質)
本工程においては、得られる吸水性樹脂の物性を向上させるために、単量体水溶液の調製工程においてその他の物質を添加することもできる。
【0155】
その他の物質の例としては、親水性高分子(澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)架橋体など)が挙げられる。
【0156】
なお、親水性高分子として水溶性樹脂または吸水性樹脂を使用する場合には、グラフト重合体または吸水性樹脂組成物(例えば、澱粉-アクリル酸重合体、PVA-アクリル酸重合体など)が得られる。本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、これらのグラフト重合体または吸水性樹脂組成物を用いてもよい。
【0157】
(単量体成分の濃度)
本工程は、上述の各物質を水に加えることによって、単量体水溶液を調製する。単量体水溶液中の単量体成分の濃度は、特に限定されない。ただし、得られる吸水性樹脂の物性を考慮すると、好ましくは10~80質量%、より好ましくは20~75質量%、さらに好ましくは30~70質量%である。
【0158】
ここで、「単量体成分の濃度」とは、下記式(3)で求められる値である。なお、式中の「単量体水溶液の質量」には、グラフト成分および吸水性樹脂、ならびに逆相懸濁重合における水以外の溶媒の質量は含めない。
単量体成分の濃度[質量%]=(単量体成分の質量/単量体水溶液の質量)×100 ・・・式(3)。
【0159】
重合の方法として水溶液重合または逆相懸濁重合を採用する場合は、水以外の溶媒を併用することもできる。上記溶媒の種類は特に限定されない。
【0160】
[5-2.重合工程]
本工程は、単量体水溶液の調製工程で得られたアクリル酸(塩)系単量体水溶液を重合させて、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)を得る工程である。
【0161】
(重合開始剤)
本工程で使用される重合開始剤は、重合方法などによって適宜選択され、特に限定されない。例えば、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、またはレドックス系重合開始剤(熱分解型重合開始剤および/または光分解型重合開始剤の分解を促進する、還元剤を併用した重合開始剤)などが挙げられる。より具体的には、米国特許第7265190号に開示されている重合開始剤のうち、1種または2種以上が用いられる。重合開始剤の取扱性、および得られる粒子状吸水剤または吸水性樹脂の物性の観点から、重合開始剤としては、過酸化物またはアゾ化合物が好ましく、過酸化物がより好ましく、過硫酸塩がさらに好ましい。
【0162】
(重合形態)
本工程に適用される重合方法は、噴霧液滴重合、水溶液重合または逆相懸濁重合を適用でき、水溶液重合または逆相懸濁重合が好ましく、水溶液重合がより好ましい。水溶液重合は、連続水溶液重合が好ましく、連続ベルト重合および連続ニーダー重合のいずれで重合してもよい。
【0163】
[5-3.ゲル粉砕工程]
本工程は、重合工程で得られた含水ゲルを、例えば、スクリュー押出し機(ニーダー、ミートチョッパーなど)、ゲル粉砕機(カッターミルなど)でゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と称する)を得る工程である。なお、重合工程においてニーダー重合を採用する場合、重合工程とゲル粉砕工程とが同時に進行している。また、粒子状含水ゲルが重合過程で直接得られる重合方法(気相重合、逆相懸濁重合など)を採用する場合には、ゲル粉砕工程を行わないこともある。
【0164】
[5-3-1.含水率]
含水ゲルの含水率は、50質量%以上であり、好ましくは52質量%以上である。含水率を上記範囲とすることによって、優れた物性の粒子状吸水剤を得ることができる。含水率は、EDANA法(ERT430.2-02)に準拠して測定する。なお、後述する実施例においては、試料量を1.0g、乾燥温度を180℃、乾燥時間を24時間にそれぞれ変更して測定する。
【0165】
[5-4.乾燥工程]
本工程は、重合工程および/またはゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲルを、所望する樹脂固形分まで乾燥させて、乾燥重合体を得る工程である。樹脂固形分は、吸水性樹脂の乾燥減量(吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱した際の質量変化)から求められる。吸水性樹脂(粒子状吸水剤)の乾燥固形分は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85~99質量%、さらに好ましくは90~98質量%、特に好ましくは92~97質量%である。
【0166】
粒子状含水ゲルの乾燥方法は、特に限定されない。例えば、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥などを採用することができる。上記した中でも、乾燥効率の観点から、熱風乾燥が好ましく、バンド乾燥(通気ベルト上で行う熱風乾燥)がより好ましい。
【0167】
バンド乾燥を行う場合は、国際公開第2006/100300号、同第2011/025012号、同第2011/025013号、同第2011/111657号などに開示されている諸条件を適宜適用しうる。
【0168】
[5-5.粉砕工程および分級工程]
粉砕工程は、乾燥工程で得られた乾燥重合体を粉砕する工程である。分級工程は、粉砕工程で得られた粉砕物を、所定範囲の粒度に調整して、吸水性樹脂粉末を得る工程である。なお、本明細書では、表面架橋を施す前の粉末状の吸水性樹脂を、便宜上「吸水性樹脂粉末」と称する。
【0169】
粉砕工程で使用される機器の例としては、高速回転式粉砕機(ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミルなど)、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサーなどが挙げられる。これらの機器は、必要により併用してもよい。
【0170】
分級工程における粒度調整方法は、特に限定されない。例えば、JIS標準篩(JIS Z 8801-1(2000))を用いた篩分級、気流分級などが挙げられる。
【0171】
なお、吸水性樹脂の粒度調整は、粉砕工程および分級工程以外にも、重合工程(特に逆相懸濁重合または噴霧液滴重合を採用する場合)およびその他の工程(例えば、造粒工程、微粉回収工程)にて、行うことができる。
【0172】
本工程で得られる吸水性樹脂粉末は、好ましくは、[4-4]において説明されている粒子状吸水剤の粒度に調整される。吸水性樹脂粉末の粒度を調節することによって、GPRを調節することができる。具体的には、吸水性樹脂粉末の平均粒径を大きくすれば、GPRは上昇する傾向にある。逆に、吸水性樹脂粉末の平均粒径を小さくすれば、GPRは低下する傾向にある。
【0173】
[4-4]において好ましいとされる粒度は、表面架橋前の吸水性樹脂粉末および表面架橋後の吸水性樹脂(以下、便宜上「吸水性樹脂粒子」と称する場合がある)においても、好ましい粒度である。そのため、架橋後の吸水性樹脂粒子が上記の粒度なるように、表面架橋工程を行うことが好ましい。さらに、表面架橋工程以降に整粒工程を設けて、粒度を再調整することがより好ましい。
【0174】
[5-6.表面架橋工程]
本工程は、上述した工程を経て得られる吸水性樹脂粉末の表面層(吸水性樹脂粉末の表面から数10μmの部分)に、さらに架橋密度の高い部分を設ける工程である。本工程は、混合工程、加熱処理工程および冷却工程(任意)から構成される。
【0175】
本工程では、ラジカル架橋、表面重合、表面架橋剤との架橋反応などによって、吸水性樹脂粉末表面を表面架橋させる。これにより、表面架橋された吸水性樹脂(吸水性樹脂粒子)を得る。
【0176】
(表面架橋剤)
本工程で使用される表面架橋剤は、特に限定されない。一例として、有機表面架橋剤または無機表面架橋剤が挙げられる。得られる吸水性樹脂の物性、および表面架橋剤の取扱性の観点から、カルボキシル基と反応する有機表面架橋剤が好ましい。このような架橋剤としては、例えば、米国特許7183456号に開示されている1種または2種以上の表面架橋剤が挙げられる。より具体的な例としては、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、ハロエポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、オキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物、環状尿素化合物などが挙げられる。表面架橋剤の添加量を調節するによって、GPRを調節することができる。具体的には、表面架橋剤の添加量を増加させれば、GPRは上昇する傾向にある。逆に、表面架橋剤の添加量を減少させれば、GPRは低下する傾向にある。
【0177】
(混合工程)
本工程は、吸水性樹脂粉末と表面架橋剤とを混合する工程である。表面架橋剤の混合方法は、特に限定されない。一例として、予め表面架橋剤溶液を調製し、当該溶液を吸水性樹脂粉末に加える方法が挙げられる。この場合、上記表面架橋剤溶液は、吸水性樹脂粉末に対して、噴霧または滴下されることが好ましく、噴霧されることがより好ましい。
【0178】
混合工程において用いる装置は、特に限定されない。好ましくは高速撹拌型混合機、より好ましくは高速撹拌型連続混合機が用いられる。
【0179】
(加熱処理工程)
本工程は、混合工程を経た混合物に熱を加えて、吸水性樹脂粉末の表面上で架橋反応を起させる工程である。
【0180】
混合物の加熱に用いられる装置は、特に限定されない。好ましくはパドルドライヤーが用いられる。
【0181】
(冷却工程)
本工程は、加熱処理工程後に必要に応じて設置される、任意の工程である。
【0182】
冷却に用いられる装置は、特に限定されない。好ましくは加熱処理工程で使用される装置と同じ装置であり、より好ましくはパドルドライヤーである。
【0183】
[5-7.再加湿工程(添加剤の添加工程)]
再加湿工程は、表面架橋後の吸水性樹脂粒子に、少量の水(吸水性樹脂粒子を100質量%として、0.1~20質量%程度)を添加する工程である。本工程では、上記表面架橋工程で得られた吸水性樹脂粒子に、必要により多価金属塩化合物、ポリカチオン性ポリマー、キレート剤、無機還元剤、ヒドロキシカルボン酸化合物、吸湿流動性改善剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を添加してもよい。
【0184】
[5-8.その他の添加剤添加工程]
本項目で説明されている粒子状吸水剤の製造方法においては、上述した添加剤以外の添加剤を添加して、吸水性樹脂に種々の機能を付加させてもよい。このような添加剤の例としては、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、有機還元剤、水不溶性無機微粒子、有機粉末(金属石鹸など)、消臭剤、抗菌剤、パルプ、熱可塑性繊維などが挙げられる。このような添加剤を添加することによって、GPRを上昇させることができる場合がある。したがって、本工程においてGPRを調整することも可能である。
【0185】
[5-9.その他の工程]
本項目で説明されている粒子状吸水剤の製造方法は、上述した工程以外に、造粒工程、整粒工程、微粉除去工程、微粉の再利用工程などを、必要に応じて設けることができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程などの1種または2種以上の工程をさらに含んでもよい。
【0186】
なお、上記に例示した工程のうち、「整粒工程」は、表面架橋工程以降に行う微粉除去工程、ならびに、吸水性樹脂が凝集し所望の大きさを超えた場合に分級および粉砕を行う工程を含む。また、「微粉の再利用工程」は、(i)微粉をそのまま、吸水性樹脂の製造工程の何れかの工程に加える工程、および、(ii)微粉を大きな含水ゲルにして、吸水性樹脂の製造工程の何れかの工程に加える工程を含む。
【0187】
〔本発明の構成〕
本発明は、以下の構成を包含している。
【0188】
<1>第1のシートと第2のシートとの間に、粒子状吸水剤が挟持されている吸水性シートであって、
上記第1のシートおよび上記第2のシートの少なくとも一方は、透水性シートであり、
上記粒子状吸水剤には、(1)上記第1のシート近傍に局在している、第1の粒子状吸水剤と、(2)上記第2のシート近傍に局在している、第2の粒子状吸水剤と、が含まれており、
上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)より高いものであり、
上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)と、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)との差は、10以上であり、
上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、50以下である、吸水性シート。
【0189】
<2>上記第1の粒子状吸水剤および上記第2の粒子状吸水剤の少なくとも一方は、表面張力が65mN/m以上の粒子状吸水剤を含んでいる、<1>に記載の吸水性シート。
【0190】
<3>上記第1の粒子状吸水剤および上記第2の粒子状吸水剤の少なくとも一方は、不定形破砕状の粒子状吸水剤を含んでいる、<1>または<2>に記載の吸水性シート。
【0191】
<4>上記第1のシートと上記第2のシートとの間に、さらに1枚以上の中間シートが挟持されている、<1>~<3>のいずれか1つに記載の吸水性シート。
【0192】
<5>上記第1のシートが、上記透水性シートである、<1>~<4>のいずれか1つに記載の吸水性シート。
【0193】
<6>上記透水性シートは、親水性不織布である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の吸水性シート。
【0194】
<7>上記吸水性シートの長手方向に、上記第1の粒子状吸水剤および上記第2の粒子状吸水剤の少なくとも一方が存在しない領域が設けられている、<1>~<6>のいずれか1つに記載の吸水性シート。
【0195】
<8>上記吸水性シートの厚さは、乾燥状態において5mm以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の吸水性シート。
【0196】
<9>(1)第1のシートに、第1の粒子状吸水剤を散布する工程、(2)第2のシートに、第2の粒子状吸水剤を散布する工程、ならびに、(3)中間シートに、第1の粒子状吸水剤および/または第2の粒子状吸水剤を散布する工程、の、少なくとも1つを含む吸水性シートの製造方法であって、
上記第1のシートおよび上記第2のシートの少なくとも一方は、透水性シートであり、
上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)より高いものであり、
上記第1の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)と、上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)との差は、10以上であり、
上記第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)は、50以下である、吸水性シートの製造方法。
【0197】
<10><1>~<8>のいずれか1つに記載の吸水性シートが、液体透過性シートおよび液体不透過性シートによりさらに挟持されている、吸収性物品。
【0198】
<11>上記第1のシートが、上記透水性シートであり、
上記第1のシートが、上記液体透過性シート側に配置されている、<10>に記載の吸収性物品。
【0199】
〔本発明の他の構成〕
本発明は、以下の構成をも包含している。
【0200】
<12>
2枚のシートの間に粒子状吸水剤が挟持されている吸水性シートであって、
上記2枚のシートのうち少なくとも一方は、透水性シートであり、
上記2枚のシートを剥離させたときに、当該2枚のシートのそれぞれに付着している粒子状吸水剤のうち、ゲル透過速度(GPR)がより高い方を粒子状吸水剤A、ゲル透過速度(GPR)がより低い方を粒子状吸水剤Bとすると、
上記粒子状吸水剤Aが付着しているシートは、使用者の体に近い側に配置されるシートであり、
上記粒子状吸水剤Bが付着しているシートは、使用者の体から遠い側に配置されるシートであり、
上記粒子状吸水剤Aのゲル透過速度(GPR)と、上記粒子状吸水剤Bのゲル透過速度(GPR)との差は、10以上であり、
上記粒子状吸水剤Bのゲル透過速度(GPR)は、50以下である、吸水性シート。
【0201】
<13>
上記粒子状吸水剤Aおよび上記粒子状吸水剤Bの少なくとも一方は、表面張力が65mN/m以上の粒子状吸水剤を含んでいる、<12>に記載の吸水性シート。
【0202】
<14>
上記粒子状吸水剤Aおよび上記粒子状吸水剤Bの少なくとも一方は、不定形破砕状の粒子状吸水剤を含んでいる、<12>または<13>に記載の吸水性シート。
【0203】
<15>
上記2枚のシートの間に、さらに1枚以上の中間シートが挟持されている、<12>~<14>のいずれか1つに記載の吸水性シート。
【0204】
<16>
上記2枚のシートのうち上記粒子状吸水剤Aが付着している方のシートが、上記透水性シートである、<12>~<15>のいずれか1つに記載の吸水性シート。
【0205】
<17>
上記透水性シートは、親水性不織布である、<12>~<16>のいずれか1つに記載の吸水性シート。
【0206】
<18>
上記吸水性シートの長手方向に、上記粒子状吸水剤Aおよび上記粒子状吸水剤Bの少なくとも一方が存在しない領域が設けられている、<12>~<17>のいずれか1つに記載の吸水性シート。
【0207】
<19>
上記吸水性シートの厚さは、乾燥状態において5mm以下である、<12>~<18>のいずれか1つに記載の吸水性シート。
【0208】
<20>
<12>~<19>のいずれか1つに記載の吸水性シートが、液体透過性シートおよび液体不透過性シートによりさらに挟持されている、吸収性物品。
【0209】
<21>
上記2枚のシートのうち上記粒子状吸水剤Aが付着している方のシートが、上記透水性シートであり、
上記2枚のシートのうち上記粒子状吸水剤Aが付着している方のシートが、上記液体透過性シート側に配置されている、<20>に記載の吸収性物品。
【実施例】
【0210】
以下、製造例、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。各実施例において開示されている技術的手段を、適宜組み合わせて得られる実施例も、本発明の範囲に含まれる。
【0211】
なお、製造例、実施例および比較例で使用する電気機器(粒子状吸水剤の物性測定に用いる電気機器も含む)は、特に注釈のない限り、200Vまたは100Vの電源を使用した。また、粒子状吸水剤の諸物性は、特に注釈のない限り、室温(20~25℃)、相対湿度50%RHの条件下で測定した。
【0212】
〔粒子状吸水剤の物性測定〕
なお、粒子状吸水剤の物性の測定方法に関しては、上述の〔4.粒子状吸水剤の物性〕および〔5.粒子状吸水剤の製造方法〕の項目に記載の通りである。文中、測定対象が粒子状吸水剤以外である場合(例えば、粒子状含水ゲルの場合)は、下記説明文中の「粒子状吸水剤」を「粒子状含水ゲル」に読み替えて適用できるものとする。
【0213】
〔吸水性シート評価方法(液吸収速度および逆戻り量)〕
以下に、本願における吸水性シートの評価方法について述べる。
【0214】
(吸水性シート平面評価)
図3に示される容器(内径縦8cm、横16cm、高さ3.5cm、プラスチック製)を用いて、平面状態における吸水性シート評価を行った。
【0215】
まず、縦8cm、横16cmに切断した吸水性シートを、容器の底面と吸水性シートの底面とが、おおむね隙間なく一致するように敷いた。この状態で、23℃の純水250mLを素早く投入した。液を投入してから、吸水性シート表面から液がなくなるまでの時間を平面液吸収速度(秒)とした。
【0216】
液を投入してから3分後、予め質量を測定した濾紙(型式No.2、ADVANTEC製;縦7.9cm×横15.9cmのサイズにカットしたもの)30枚を、吸水性シートの上に載せ、濾紙と同じ大きさ(縦7.9cm×横15.9cm)の錘(6514g)をさらに載せて、10秒間保持した。10秒後、錘を除去し、濾紙の質量増分から平面逆戻り量(g)を測定した。
【0217】
なお、平面液吸収速度が50秒以下ならば、吸収速度が充分に速いと言える。平面液吸収速度は、好ましくは48秒以下であり、より好ましくは46秒以下である。また、平面逆戻り量が1.8g以下ならば、逆戻り量が充分に少ないと言える。平面逆戻り量は、好ましくは1.5g以下であり、より好ましくは1.2g以下である。さらに、平面液吸収速度と逆戻り量のバランスの観点からは、平面液吸収速度が48秒以下であり、かつ、平面逆戻り量が1.8g以下であることが好ましい。
【0218】
以下に粒子状吸水剤の製造例を示す。しかしこれらはあくまで例であり、公知の技術を適宜組み合わせることによっても、粒子状吸水剤を製造することができる。
【0219】
[製造例1]
アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数:9)0.94質量部、0.1質量%のジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム水溶液16.4質量部、および脱イオン水314.3質量部からなる、単量体水溶液(1)を調製した。
【0220】
次に、38℃に調温した上記単量体水溶液(1)に、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を混合した。
【0221】
次に、4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を混合した。その後、平面状の重合機に、厚さが10mmとなるように、単量体水溶液(1)を投入した。その後、重合を進行させて(重合時間3分間)、含水ゲル(1)を得た。
【0222】
得られた含水ゲル(1)は、含水率が50.5質量%であった。
【0223】
上記で得られた含水ゲル(1)を、スクリュー押出機を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル(1)を得た。
【0224】
上記ゲル粉砕後に得られた粒子状含水ゲル(1)は、含水率が50.9質量%、質量平均粒子径(D50)が994μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が1.01であった。
【0225】
上記ゲル粉砕の終了後1分以内に、上記粒子状含水ゲル(1)を、通気式乾燥機を用いて、185℃の熱風を30分間通気させることで乾燥させ、乾燥重合体(1)を得た。
【0226】
乾燥後に得られた乾燥重合体(1)を粉砕し、目開き710μmおよび175μmのJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(1)を得た。吸水性樹脂粉末(1)は、質量平均粒子径(D50)が348μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.32、CRCが42.1g/g、粒子径150μm未満の粒子の割合(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)が0.5質量%であった。
【0227】
吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4-ブタンジオール0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、および脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液(1)を添加して、均一になるまで混合した。その後、得られる吸水性樹脂粒子(1)のCRCが33g/gとなるように、190℃で45分間程度、加熱処理した。その後、60℃まで強制冷却した。
【0228】
次に、上記操作で得られた吸水性樹脂粒子(1)に、ペイントシェーカーテストを課し、製造プロセス相当のダメージを付与した。その後、吸水性樹脂粉末(1)100質量部に対して、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01質量部、および脱イオン水1質量部からなるキレート剤水溶液(1)1.01質量部を添加して、均一になるまで混合した。その後、60℃で1時間乾燥し、得られた結果物を目開き710μmのJIS標準篩に通過させた。その後、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4質量部を添加して、均一になるまで混合した。
【0229】
以上の操作によって、粒子状吸水剤(1)を得た。粒子状吸水剤(1)の物性を、表1に示した。
【0230】
[製造例1-2]
製造例1の表面架橋工程において、得られる吸水性樹脂粒子(1-2)のCRCが30g/gとなるように、190℃で60分間程度、加熱処理した。それ以外の工程は、製造例1と同様に操作を行い。粒子状吸水剤(1-2)を得た。粒子状吸水剤(1-2)の物性を、表1に示した。
【0231】
[製造例2]
アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数:9)0.61質量部、1.0質量%のエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5質量部、および脱イオン水346.1質量部からなる単量体水溶液(2)を調製した。
【0232】
次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)に、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液150.6質量部を混合した。
【0233】
次に、4質量%の過硫酸ナトリウム水溶液14.6質量部を混合した。その後、平面状の重合機に、厚さが10mmとなるように、単量体水溶液(2)を投入した。その後、重合を進行させて(重合時間3分間)、含水ゲル(2)を得た。
【0234】
含水ゲル(2)は、含水率が51.9質量%であった。
【0235】
上記で得られた含水ゲル(2)を、スクリュー押出機を用いてゲル粉砕し、粒子状含水ゲル(2)を得た。
【0236】
粒子状含水ゲル(2)は、含水率が52.5質量%、質量平均粒子径(D50)が860μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.95であった。
【0237】
製造例1と同様に、乾燥、粉砕および分級を行って、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)を得た。吸水性樹脂粉末(2)は、質量平均粒子径(D50)が355μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.32、CRCが48.2g/g、粒子径150μm未満の粒子の割合(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)が0.4質量%であった。
【0238】
吸水性樹脂粉末(2)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.02質量部、エチレンカーボネート0.4質量部、プロピレングリコール0.6質量部、および脱イオン水3.0質量部からなる表面架橋剤溶液(2)を添加して、均一になるまで混合した。その後、得られる吸水性樹脂粒子(2)のCRCが38g/gとなるように、190℃で30分間程度、加熱処理した。その後、60℃まで強制冷却した。
【0239】
その後、製造例1と同様の操作を行うことによって、粒子状吸水剤(2)を得た。粒子状吸水剤(2)の物性を、表1に示した。
【0240】
[製造例3]
アクリル酸300質量部、48質量%の水酸化ナトリウム水溶液100質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数:9)0.61質量部、1.0質量%のエチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5質量部、および脱イオン水371.6質量部からなる単量体水溶液(3)を作製した。
【0241】
単量体水溶液(3)を製造例1と同様に重合させた後、ゲル粉砕を行った。
【0242】
得られた粒子状含水ゲル(3)は、含水率53.4質量%、質量平均粒子径(D50)627μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)1.02であった。
【0243】
粒子状含水ゲル(3)を製造例1と同様に乾燥させて、乾燥重合体(3)を得た。
【0244】
乾燥重合体(3)を粉砕し、目開き425μmのJIS標準篩を用いて分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(3)を得た。吸水性樹脂粒子(3)は、質量平均粒子径(D50)が175μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.56、CRCが48.9g/g、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)が39質量%であった。
【0245】
吸水性樹脂粒子(3)100質量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.04質量部、プロピレングリコール1.5質量部、および脱イオン水3.5質量部からなる共有結合性表面架橋剤溶液を均一に混合した。その後、得られる吸水性樹脂粉末(3)のCRCが35g/gとなるように加熱処理し、冷却した。
【0246】
上記操作で得られた吸水性樹脂粒子(3)に、ペイントシェーカーテストを課し、製造プロセス相当のダメージを付与した。その後、吸水性樹脂粒子100質量部に対して、水1質量部、およびジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01質量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させた。その後、上記標準篩の通過物に、ハイドロタルサイト(DHT-6、協和化学工業株式会社製)0.3質量部を、均一に混合した。こうして、粒子状吸水剤(3)を得た。粒子状吸水剤(3)の物性を、表1に示した。
【0247】
[製造例4]
アクリル酸ナトリウム水溶液(中和率75モル%、単量体濃度38質量%)5500gに、トリメチロールプロパントリアクリレート(分子量296)1.7gを溶解させて、反応液とした。上記反応液を、窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。その後、反応器(双腕型のジャケット付きステンレス製ニーダーに蓋を付けて形成したもの。シグマ型羽根を2本有する。内容積10L)に上記反応液を投入した。反応液温を30℃に保ちながら、上記反応器内に窒素ガスを吹き込み、系内の溶存酸素濃度が1ppm以下となるように窒素置換した。
【0248】
続いて、上記反応液を撹拌しながら、10質量%の過硫酸ナトリウム水溶液29.8g、および、0.2質量%のL-アスコルビン酸水溶液21.8gを添加した。その結果、およそ1分後に重合が開始された。系内の温度は、重合開始後17分で、重合ピーク温度となる86℃を示した。重合を開始してから60分後に、含水ゲルを取り出した。
【0249】
得られた含水ゲルは、約1~5mmの粒子状に細分化されていた。この細分化されている含水ゲルを、50メッシュ(目開き:300μm)の金網上に広げ、180℃で45分間熱風乾燥し、乾燥物とした。
【0250】
次いで、上記乾燥物をロールミルで粉砕した後、さらに目開き450μmの金網、および目開き106μmの金網を用いて、連続的に分級した。このとき、目開き450μmの金網上に残った粒子は、再度ロールミルで粉砕した。一方、目開き106μmの金網を通過した吸水性樹脂微粒子は、90℃に加熱された水を同量混合し、再度同条件で乾燥し、粉砕した(ちなみに、上記吸水性樹脂微粒子は、粉砕を行った乾燥物の全量に対して、13質量%を占めていた)。このようにして、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(4)を得た。吸水性樹脂粒子(4)のCRCは44.5g/gであった。
【0251】
吸水性樹脂粒子(4)100質量部に対して、グリセリン0.5質量部、イソプロピルアルコール0.5質量部、および脱イオン水2.5質量部からなる表面架橋剤水溶液3.5質量部を混合した。上記の混合物を、190℃で40分間加熱処理することにより、吸水性樹脂粉末(4)を得た。
【0252】
さらに、吸水性樹脂粉末(4)100質量部に、二酸化ケイ素(アエロジル200、日本アエロジル製)を0.3質量部加え、均一に混合した。このようにして、粒子状吸水剤(4)を得た。粒子状吸水剤(4)の物性を、表1に示した。
【0253】
[市販品使い捨てオムツからの吸水性樹脂の取出し1]
市販の使い捨てオムツ(ムーニーエアフィット(Lサイズ、Lot No.201512163072)、ユニ・チャーム製、2016年5月に購入)から、吸水性樹脂を取り出した。取出しの際には、綿状パルプなどが混じらないように、吸水性樹脂のみを取り出した。取出された吸水性樹脂は、球状粒子を造粒した粒子形状であった。この吸水性樹脂を、粒子状吸水剤(T1)とした。粒子状吸水剤(T1)の物性を、表1に示した。
【0254】
[市販品使い捨てオムツからの吸水性樹脂の取出し2]
市販の使い捨てオムツ(HUGGIES(4Maxiサイズ、Lot No.EXP30/04/19)、キンバリークラーク製、2016年6月にトルコにて購入)から、吸水性樹脂を取り出した。取出しの際には、綿状パルプなどが混じらないように、吸水性樹脂のみを取り出した。取出された吸水性樹脂は、破砕粒子形状であった。この吸水性樹脂を、粒子状吸水剤(T2)とした。粒子状吸水剤(T2)の物性を、表1に示した。
【0255】
[製造例5]
粒子状吸水剤(2)と粒子状吸水剤(T1)とを混合した。それぞれの混合比を変更することによって、GPRが38g/minの粒子状吸水剤(5-1)、GPRが27g/minの粒子状吸水剤(5-2)、GPRが19g/minの粒子状吸水剤(5-3)を作製した。
【0256】
[製造例6~8]
以下の特許に記載の製造例、実施例、比較例を参考に、内部架橋剤量によってCRCを適宜調整するなどして、ポリアクリル酸(塩)系樹脂の粒子状吸水剤(6)~(8)を得た。粒子状吸水剤(6)のFSCwは32g/gであった。粒子状吸水剤(7)のFSCwは44g/gであった。粒子状吸水剤(8)のFSCwは50g/gであった。また、得られた粒子状吸水剤の物性を表1に示した。
【0257】
国際公開第2014/034897号
国際公開第2017/170605号
国際公開第2016/204302号
国際公開第2014/054656号
国際公開第2015/152299号
国際公開第2018/062539号
国際公開第2012/043821号。
【0258】
[製造例9]
粒子状吸水剤(6)と粒子状吸水剤(T1)を混合した。それぞれの混合比を変更することによって、GPRが21g/minの粒子状吸水剤(9)を作製した。
【0259】
[製造例10]
粒子状吸水剤(7)と粒子状吸水剤(T1)を混合した。それぞれの混合比を変更することによって、GPRが5g/minの粒子状吸水剤(10)を作製した。
【0260】
[製造例11]
粒子状吸水剤(8)と粒子状吸水剤(T1)を混合した。それぞれの混合比を変更することによって、GPRが3g/minの粒子状吸水剤(11)を作製した。
【0261】
【0262】
[実施例1]
縦8cm、横16cmに切断したパルプ繊維製不織布(1)(第2のシートに相当する。目付量:42g/m2)の表面に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を、0.1~0.2g散布した(散布量:7.8~15.6g/m2)。
【0263】
次に、接着剤が散布されているパルプ繊維製不織布(1)の表面に、製造例3で得られた粒子状吸水剤(3)(第2の粒子状吸水剤に相当する)を、1.405g(散布量:110g/m2)均一に散布した。さらにその上に、ポリプロピレン製不織布(2)(中間シートに相当する。目付量:50.6g/m2。厚みのあるもの。厚みは無荷重下で約4~6mm程度)を重ね、加圧圧着した。
【0264】
次に、粒子状吸水剤(3)と面していない側のポリプロピレン製不織布(2)の表面に、スチレンブタジエンゴムを含む接着剤(スプレーのり77、スリーエムジャパン株式会社製)を、0.1~0.2g(散布量:7.8~15.6g/m2)散布した。さらにその上に、製造例1で得られた粒子状吸水剤(1)(第1の粒子状吸水剤に相当)を、1.405g(散布量:110g/m2)均一に散布した。
【0265】
最後に、粒子状吸水剤(1)の上にパルプ繊維製不織布(1)(第1のシートに相当する。目付量:15g/m2)を重ね、加圧圧着した。このようにして、吸水性シート(1)を得た。
【0266】
なお、本実施例で使用したパルプ繊維製不織布(1)およびポリプロピレン製不織布(2)は、いずれも透水性シートである。
【0267】
[実施例2]
実施例1において、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(4)を用いて、吸水性シート(2)を得た。
【0268】
[実施例3]
実施例1において、第1の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(2)を用いて、吸水性シート(3)を得た。
【0269】
[実施例4]
実施例1において、第1の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(1-2)を用いて、吸水性シート(4)を得た。
【0270】
[実施例5]
実施例1において、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(T1)を用いて、吸水性シート(5)を得た。
【0271】
[実施例6]
実施例1において、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(5-1)を用いて、吸水性シート(6)を得た。
【0272】
[実施例7]
実施例1において、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(5-2)を用いて、吸水性シート(7)を得た。
【0273】
[実施例8]
実施例1において、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(5-3)を用いて、吸水性シート(8)を得た。
【0274】
[実施例9]
実施例1において、第1の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(2)を用い、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(5-3)を用いて、吸水性シート(9)を得た。
【0275】
[実施例10]
実施例1において、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(9)を用いて、吸水性シート(10)を得た。
【0276】
[実施例11]
実施例1において、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(10)を用いて、吸水性シート(11)を得た。
【0277】
[実施例12]
実施例1において、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(11)を用いて、吸水性シート(12)を得た。
【0278】
[比較例1]
実施例1において、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(1)を用いて、比較吸水性シート(1)を得た。
【0279】
[比較例2]
実施例1において、粒子状吸水剤(1)および(3)の代わりに、いずれも粒子状吸水剤(2)を用いて(第1の粒子状吸水剤および第2の粒子状吸水剤を、いずれも粒子状吸水剤(2)として)、比較吸水性シート(2)を得た。
【0280】
[比較例3]
実施例1において、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(2)を用いて、比較吸水性シート(3)を得た。
【0281】
[比較例4]
実施例1において、第1の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(3)を用いて、比較吸水性シート(4)を得た。
【0282】
[比較例5]
実施例1において、第1の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(3)を用い、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(T1)を用いて、比較吸水性シート(5)を得た。
【0283】
[比較例6]
実施例1において、第1の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(1)の代わりに粒子状吸水剤(T2)を用い、第2の粒子状吸水剤として粒子状吸水剤(3)の代わりに粒子状吸水剤(T2)を用いて、比較吸水性シート(6)を得た。
【0284】
(結果)
吸水性シート(1)~(9)および比較吸水性シート(1)~(6)について、上述した方法で吸水性シートの平面評価を実施した。平面液吸収速度および平面逆戻り量を表2に示した。
【0285】
【0286】
表2に示されているように、実施例1~9で得られた吸水性シート(1)~(9)は、液吸収速度および逆戻り量に共に優れていた。とりわけ、両者のバランスを考慮すると、吸水性シート(1)、(3)、(4)、(5)が、より優れた性質を示しており、吸水性シート吸水性シート(1)、(4)、(5)がさらに優れた性質を示していた。
【0287】
実施例1、2と、比較例1、2とをそれぞれ比較すると、第1の粒子状吸水剤と第2の粒子状吸水剤との間にゲル透過速度(GPR)の差を与えた場合には、液吸収速度および逆戻り量に優れた吸水性シートが得られることが判る。ただし、ゲル透過速度(GPR)の差がある程度大きくないと、上記の効果が得られないことも、実施例1~9と比較例5とを比較することにより判る。
【0288】
また、実施例1、2と、比較例3とを比較すると、第2の粒子状吸水剤のゲル透過速度(GPR)が高過ぎる場合には、液吸収速度および逆戻り量に優れた吸水性シートを得られないことが判る。
【0289】
実施例6~12では、粒子状吸水剤(5-1)~(5-3)、(9)~(12)を用いた。これらは、複数種類の粒子状吸水剤の混合によってゲル透過速度(GPR)を調整した粒子状吸水剤である。このような粒子状吸水剤を用いた場合にも、本発明の効果を奏することが判る。
【産業上の利用可能性】
【0290】
本発明の一実施形態に係る吸水性シートは、衛生材料(使い捨てオムツ、生理用ナプキンなど)、ペット用シート、止水材など、種々の応用が可能である。
【符号の説明】
【0291】
10 吸水性シート
11a 第1のシート
11b 第2のシート
12 粒子状吸水剤
12a 第1の粒子状吸水剤(粒子状吸水剤A)
12b 第2の粒子状吸水剤(粒子状吸水剤B)
13 中間シート
14 接着剤