(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-27
(45)【発行日】2023-02-06
(54)【発明の名称】空気調和装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20230130BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20230130BHJP
F24F 11/30 20180101ALI20230130BHJP
【FI】
F25B1/00 387Z
F25B13/00 J
F24F11/30
F25B1/00 387B
F25B1/00 387K
F25B1/00 341L
F25B1/00 341V
F25B1/00 351S
F25B1/00 383
(21)【出願番号】P 2020547545
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2018034823
(87)【国際公開番号】W WO2020059079
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今任 尚希
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
(72)【発明者】
【氏名】パクサン アティデジ
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-004106(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107218741(CN,A)
【文献】国際公開第2013/099047(WO,A1)
【文献】特開平10-132406(JP,A)
【文献】特開平08-200851(JP,A)
【文献】特開2009-150368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00- 1/10
F25B 13/00
F24F 11/30-11/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内熱交換器と、室内膨張弁と、を有する1又は複数の室内機と、
室外熱交換器と、室外膨張弁と、四方弁と、圧縮機と、
前記圧縮機に冷凍機油を供給可能な給油部と、を有する1又は複数の室外機と、
前記室内機及び前記室外機が暖房運転を行っているときに前記圧縮機における冷凍機油の油面低下の発生有無を検知する油面低下検知部と、
前記油面低下検知部により前記圧縮機における前記油面低下の発生が検知された場合
、かつ前記給油部において前記圧縮機に供給可能な冷凍機油が残っていない場合に、前記四方弁を冷房運転時の状態に切り替える制御部と、
を備え、
自空気調和装置が複数の室外機を有する場合、
前記制御部は、前記油面低下の発生に応じて前記四方弁を冷房運転時の状態に切り替える際に、油面低下が発生していない室外機の動作を停止させる、
空気調和装置。
【請求項2】
前記室内機は冷媒と室内気との熱交換を促進する送風機をさらに備え、
前記制御部は、前記油面低下の発生に応じて前記四方弁を冷房運転時の状態に切り替える際に、前記室内機の送風機の動作を停止させる、
請求項
1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記四方弁の切り替えから所定時間が経過した場合に、前記四方弁を暖房運転時の状態に切り替える、
請求項1
または2に記載の空気調和装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記油面低下の発生に応じて前記四方弁を冷房運転時の状態に切り替えた後、前記室内機から供給される冷媒の一部又は全部がガス冷媒から液冷媒に変化した場合に、前記四方弁を暖房運転時の状態に切り替える、
請求項1から
3のいずれか一項に記載の空気調和装置。
【請求項5】
室内熱交換器と、室内膨張弁と、を有する1又は複数の室内機と、
室外熱交換器と、室外膨張弁と、四方弁と、圧縮機と、
前記圧縮機に冷凍機油を供給可能な給油部と、を有する1又は複数の室外機と、
を備える空気調和装置の制御方法であって、
前記室内機及び前記室外機が暖房運転を行っているときに前記圧縮機における冷凍機油の油面低下の発生有無を検知する油面低下検知ステップと、
前記油面低下検知ステップにおいて、前記圧縮機における前記油面低下の発生が検知された場合
、かつ前記給油部において前記圧縮機に供給可能な冷凍機油が残っていない場合に、前記四方弁を冷房運転時の状態に切り替える制御ステップと、
自空気調和装置が複数の室外機を有する場合、
前記油面低下の発生に応じて前記四方弁を冷房運転時の状態に切り替える際に、油面低下が発生していない室外機の動作を停止させるステップと、
を有する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置(以下「空調機」ともいう。)は一般に室外ユニット(以下「室外機」ともいう。)と室内ユニット(以下「室内機」ともいう。)とに分けられる。また、空調機には、これらの室外ユニット及び室内ユニットを複数備えたものもあり、そのような空調機はマルチ形空調機と呼ばれている。
【0003】
このマルチ形空調機では、暖房運転時に圧縮機から吐出された冷凍機油(以下単に「油」ともいう。)が、ガス管(渡り配管)、各室内ユニット、液管(渡り配管)、各室外ユニットを順に経由して圧縮機に戻ってくることになるため、圧縮機が吐出した油が再び圧縮機に戻るまでに長い時間がかかる。そのため、従来のマルチ形空調機では、圧縮機が十分な油を供給されない状況で長時間動作し、圧縮機の信頼性が低下してしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、渡り配管に留まっている油をより短い時間で回収することができる空気調和装置及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の空気調和装置は、1又は複数の室内機と、1又は複数の室外機と、油面低下検知部と、制御部と、を持つ。前記室内機は、室内熱交換器と、室内膨張弁と、を有する。前記室外機は、室外熱交換器と、室外膨張弁と、四方弁と、圧縮機と、を有する。前記油面低下検知部は、前記室内機及び前記室外機が暖房運転を行っているときに前記圧縮機における冷凍機油の油面低下の発生有無を検知する。前記制御部は、前記油面低下検知部により前記圧縮機における前記油面低下の発生が検知された場合に、前記四方弁を冷房運転時の状態に切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の空気調和装置の構成の具体例を示す図。
【
図2】実施形態の空気調和装置における室外機の構成の具体例を示す図。
【
図3】実施形態において、冷房運転時における四方弁の状態を示す図。
【
図4】実施形態において、暖房運転時における四方弁の状態を示す図。
【
図5】実施形態の空気調和装置における室内機の構成の具体例を示す図。
【
図6】実施形態の空気調和装置における制御部の機能構成の具体例を示す図。
【
図7】実施形態の空気調和装置が油回収運転に関して実行する処理の具体例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の空気調和装置及び制御方法を、図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、実施形態の空気調和装置の構成の具体例を示す図である。
図1に示す空気調和装置1は実施形態の空気調和装置の一例であり、1つ以上の室外機2と複数の室内機3とを備えるマルチ形空調機である。
図1は、2つの室外機2A及び2Bと、4つの室内機3A、3B、3C及び3Dと、を備える空気調和装置1の例を示す。各室外機2と各室内機3とは液体状態の冷媒(以下「液冷媒」という。)が循環する液管と、気体状態の冷媒(以下「ガス冷媒」という。)が循環するガス管と、の2つの渡り配管で接続される。空気調和装置1は、1つ以上の室外機2と複数の室内機3との間で冷媒を循環させることにより、1箇所以上の室外気と、複数箇所の室内気との間での熱交換を実現することができる。なお、複数箇所の室外気又は室内気は、一部又は全部の箇所で熱のやり取りのない空間同士であってもよいし、熱のやり取りがある空間同士であってもよい。
【0010】
以下、室外機2及び室内機3の構成の詳細について説明する。なお、以下の説明では、各室外機2が備える各構成を、対応する室外機2の符号に付したアルファベット「A」又は「B」によって識別することにする。同様に、各室内機3が備える各構成を、対応する室内機3の符号に付したアルファベット「A」、「B」、「C」又は「D」によって識別することにする。例えば、
図1に示す符号21Aは、室外機2Aにおける液管の接続部を表し、符号22Aは、室外機2Aにおけるガス管の接続部を表す。同様に、符号31Bは、室内機3Bにおける液管の接続部を表し、符号32Bは、室内機3Bにおけるガス管の接続部を表す。
【0011】
図2は、実施形態の空気調和装置における室外機の構成の具体例を示す図である。実施形態の室外機2は、第1圧縮機23-1及び第2圧縮機23-2と、室外熱交換器24と、室外膨張弁25と、オイルセパレータ26と、アキュムレータ27と、四方弁28と、制御部4と、を備える。
【0012】
第1圧縮機23-1は、吸入口231-1から供給される冷媒を自身の内部に吸入し、吸入した冷媒を圧縮する。第1圧縮機23-1は、圧縮した冷媒を吐出口232-1から自身の外部に吐出する。第2圧縮機23-2も同様に、吸入口231-2から吸入した冷媒を圧縮して吐出口232-2から吐出する。第1圧縮機23-1及び第2圧縮機23-2から吐出された冷媒はオイルセパレータ26を介して四方弁28に送られる。
【0013】
なお、冷媒中には、第1圧縮機23-1及び第2圧縮機23-2の潤滑をする冷凍機油(潤滑油、以下単に「油」ともいう。)が含まれる。また、冷媒としては例えばR410AやR32等を用いることができる。以下では特に区別する必要が無い場合には、第1圧縮機23-1及び第2圧縮機23-2を単に圧縮機23という場合もある。
【0014】
室外熱交換器24は、冷媒と室外気と間での熱交換を実現する装置である。例えば、室外熱交換器24はフィンチューブ式の熱交換器である。具体的には、室外熱交換器24は、冷房運転時には圧縮機23によって圧縮された高温高圧の冷媒の熱を室外気に吸収させ、暖房運転時には室外気の熱を低温の冷媒に吸収させる。なお、室外熱交換器24には、冷媒と室外気との間の熱交換を促進する手段として室外送風機241が備えられる。例えば、室外送風機241は遠心式のファンを有している。室外送風機241のファンは、室外熱交換器24に対向するように配置される。
【0015】
室外膨張弁25は、供給される冷媒を急激に膨張させて低温低圧化する装置である。例えば、室外膨張弁25は、電子膨張弁(PMV:Pulse Motor Valve)である。具体的には、室外膨張弁25は、冷房運転時には室外熱交換器24によって放熱した冷媒の過冷却度を制御し、暖房運転時には室内機3から供給される液冷媒を低温低圧化する。
【0016】
オイルセパレータ26は、圧縮機23から供給されるガス冷媒中の油分を分離して回収するとともに、回収した油を圧縮機23に再供給することが可能な装置である。この油の供給のため、オイルセパレータ26は、油の減圧及び流量制御を行うためのキャピラリチューブ261を介して電磁弁262に接続される。一方、オイルセパレータ26によって油分が分離されたガス冷媒は四方弁28に送られる。
【0017】
アキュムレータ27は、四方弁28を介して供給されるガス冷媒と液冷媒が混ざった二相状態の冷媒から液冷媒を分離して回収するとともに、ガス冷媒を圧縮機23に供給する装置である。具体的には、アキュムレータ27は、冷房運転時には室内機3から供給される二相状態の冷媒から液冷媒を分離して回収し、暖房運転時には室外熱交換器24で蒸発し切れなかった液冷媒をガス冷媒から分離して回収する。
【0018】
四方弁28は、空気調和装置1内を流れる冷媒の向きを、暖房運転時の向きと、冷房運転時の向き(除霜運転時も同じ)と、に切り替える装置である。例えば、
図3は、冷房運転時における四方弁28の状態を示す図である。この場合、四方弁28は、圧縮機23によって圧縮された高温高圧のガス冷媒が室外熱交換器24に供給されるように、かつ、室外機2からガス管を介して送られてくるガス冷媒が圧縮機23に供給されるように冷媒の流路を構成する。以下、このような冷房運転時の流路を構成する四方弁28の状態を「冷房状態」という。
【0019】
これに対して、
図4は、暖房運転時における四方弁28の状態を示す図である。この場合、四方弁28は、圧縮機23によって圧縮された高温高圧のガス冷媒が室内機3に供給されるように、かつ、室外機2から液管を介して送られてくる液冷媒が室外膨張弁25、室外熱交換器28を介して圧縮機23に供給されるように冷媒の流路を構成する。以下、このような暖房運転時の流路を構成する四方弁28の状態を「暖房状態」という。
【0020】
制御部4は、四方弁28の動作を制御する機能を有する。具体的には、本実施形態の制御部4は、運転モード(冷房運転又は暖房運転)の指示に応じて四方弁28を切り替える一般的な空調動作に加えて、圧縮機23内における油の液位(以下「油面」という。)の低下に応じて四方弁28を切り替えるように構成される。そのため、第1圧縮機23-1及び第2圧縮機23-2のそれぞれには、各圧縮機23内の油面の低下を検知するためのキャピラリチューブ233と、キャピラリチューブ233を通過した流体(油又は冷媒)の温度を測定する温度計234とが備えられる。
【0021】
油面低下を検知する具体的な方法については後述するが、制御部4は、暖房運転時において、いずれかの室外機2において油面低下が検知された場合、油面低下が検知された室外機2(以下「対象ユニット」という。)のみ四方弁28を一時的に冷房状態に切り替える。このような四方弁28の切り替えにより、空気調和装置1は室内機3から室外機2に液冷媒を戻す動きとなり、渡り配管に留まっている油を液冷媒とともに室外機2に戻すことができる。以下、油面低下時において四方弁28を一時的に冷房状態に切り替えて対象ユニットを運転する室外機2の運転モードを「暖房油回収運転」という。
【0022】
制御部4は、冷房運転時において、いずれかの室外機2において油面低下が検知された場合、油面低下が検知された室外機2の圧縮機23の運転周波数を所定周波数とし、他方の油面低下を検知していない室外機2の圧縮機23の運転周波数を油面低下が検知された室外機2より小さくなるようにする。室内機3では、室内膨張弁34の開度を通常の冷房運転時の開度よりも所定開度開くようにする。室内熱交換器33の入口側および出口側に設けられた温度センサの温度が略等しくなったことを検知すると、液バック状態であると判断し、液バック量が多量とならないように室内膨張弁34の開度を上記の所定開度から少しずつ閉じていく。これらの動作により空気調和装置1は室内機3から室外機2へ液冷媒を戻す動きとなり、室内機3、渡り配管(ガス管)に溜まっている油を室外機2に戻すことができる。以下、冷房運転時に所定周波数、所定膨張弁開度に切替えて室外機2、室内機3を運転する室外機2の運転モードを「冷房油回収運転」という。
【0023】
一方で、制御部4は、アキュムレータ27に流入する冷媒の温度と、アキュムレータ27から流出する冷媒の圧力とに基づいて油回収運転の終了条件を判定し、終了条件が満たされたタイミングで対象ユニットの運転モードを油回収運転から暖房運転に復帰させる。このような終了条件の判定のため、アキュムレータ27には流入する冷媒の温度を測定する温度計271と、流出する冷媒の圧力を測定する圧力計272とが備えられる。終了条件の具体的な判定方法は後述する。
【0024】
図5は、実施形態の空気調和装置における室内機の構成の具体例を示す図である。実施形態の室内機3は、室内熱交換器33と、室内膨張弁34とを備える。
【0025】
室内熱交換器33は、冷媒と室内気と間での熱交換を実現する装置である。例えば、室内熱交換器33は、室外熱交換器24と同様のフィンチューブ式の熱交換器である。具体的には、室内熱交換器33は、冷房運転時には室外機2から供給される低温の冷媒に室内気の熱を吸収させ、暖房運転時には室外機2から供給される高温高圧の冷媒の熱を室内気に吸収させる。なお、室内熱交換器33には、冷媒と室内気との間の熱交換を促進する手段として室内送風機331が備えられる。例えば、室内送風機331は、室外送風機241と同様に遠心式のファンを有し、室内熱交換器33に対向するように配置される。
【0026】
室内膨張弁34は、供給される冷媒を急激に膨張させて低温低圧化する装置である。例えば、室内膨張弁34は、室外膨張弁25と同様の電子膨張弁(PMV)である。具体的には、室内膨張弁34は、冷房運転時には室外機2から供給される冷媒を低温低圧化し、暖房運転時には室内熱交換器33によって放熱された冷媒の過冷却度を制御する。
【0027】
図6は、実施形態の空気調和装置における制御部の機能構成の具体例を示す図である。制御部4は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、プログラムを実行する。制御部4は、プログラムの実行によって記憶部41、信号入出力部42、第1制御部43、第2制御部44、油面低下検知部45及び液バック検知部46を備える装置として機能する。なお、制御部4の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0028】
記憶部41は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。記憶部41は、制御部4の動作に必要な各種情報を記憶する。
【0029】
信号入出力部42は、空気調和装置1が備える各機能部との間で各種信号を入出力する機能を有する。例えば、信号入出力部42は、第1温度計234-1、第2温度計234-2、温度計271及び圧力計272と通信可能に接続され、これらの各測定装置から測定値を示す信号(以下「測定信号」という。)を入力する。信号入出力部42は、第1温度計234-1及び第2温度計234-2の測定信号を油面低下検知部45に出力し、温度計271及び圧力計272の測定信号を液バック検知部46に出力する。また例えば、信号入出力部42は、空気調和装置1が備える各機能部と、第1制御部43又は第2制御部44との間で制御信号の入出力を行う。
【0030】
第1制御部43は、空気調和装置1の空調動作を制御する機能(以下「第1制御機能」という。)を有する。第1制御機能には、運転モード(冷房運転又は暖房運転)を切り替える機能、各運転モードでの空調動作において設定温度を実現する機能などが含まれる。第1制御機能には、上述の機能のほか、従来の空気調和装置が一般的に備えている他の機能が含まれてもよい。第1制御部43は、第1制御機能の実現のために必要な信号を信号入出力部42から取得してもよいし、必要な情報を記憶部41から取得してもよい。また、第1制御部43は、第1制御機能の実現のために必要な制御信号を生成し、生成した制御信号で空気調和装置1が備える各機能部の動作を制御してもよい。
【0031】
第2制御部44は、空気調和装置1の油回収運転を制御する機能(以下「第2制御機能」という。)を有する。具体的には、第2制御部44は、油面低下検知部45により圧縮機23内の油面低下を検知する。第2制御部44は、暖房運転中に油面低下を検知した場合、各室外機2及び各室内機3に対して油回収運転を実行させる。また、第2制御部44は、液バック検知部46によりアキュムレータ27に液冷媒が回収されたこと(以下「液バック」という。)を検知する。第2制御部44は、油回収運転中に液バックを検知した場合、油回収運転を停止させる。
【0032】
油面低下検知部45は、信号入出力部42を介して第1温度計234-1及び第2温度計234-2の測定信号を取得し、取得した測定信号が示す温度に基づいて圧縮機23内の油面低下を検知する。具体的には、油面低下検知部45は、第1温度計234-1の測定信号が示す温度(以下「第1温度」という。)と、第2温度計234-2の測定信号が示す温度(以下「第2温度」という。)と、の少なくとも一方が所定の閾値以下となった場合に圧縮機23内で油面低下が発生したと判定する。このような判定により圧縮機23内の油面低下を検知できる原理は以下のとおりである。
【0033】
まず、本実施形態の室外機2は、圧縮機23の圧縮室内の物質の一部が、圧縮室壁面の所定の高さに設けられた流出口からキャピラリチューブ233に供給されるように構成される。この流出口は、油面低下が発生したと判定する油面の高さに設けられる。このような構成によれば、油面低下が発生していない状況ではキャピラリチューブ233には油が流通することになり、圧縮室から流出した油の温度が温度計234によって測定される。圧縮室内の油は圧縮機23の動作によって高温になっていることに加え、液体の油はキャピラリチューブ233によって減圧されても相変化しないため、温度が低下しない。そのため、油面低下が発生していない状況では、圧縮室内の温度に近い温度が温度計234によって測定される。
【0034】
一方、油面低下が発生している状況では、油面の高さが流出口の高さよりも低くなっているため、キャピラリチューブ233にはガス冷媒が流通することになり、圧縮室から流出したガス冷媒の温度が温度計234によって測定される。圧縮室内のガス冷媒は圧縮機23の動作によって高温になっていることに加え、気体のガス冷媒はキャピラリチューブ233によって減圧されて温度が低下する。そのため、油面低下が発生している状況では、圧縮室内の温度よりも低い温度が温度計234によって測定される。
【0035】
油面低下検知部45は、このような原理に基づき、温度計234によって閾値より高い温度が測定されている状況では油面低下が発生していないと判定し、閾値以下の温度が測定されている状況では油面低下が発生していると判定することにより、圧縮機23における油面低下の発生有無を検知することができる。
【0036】
液バック検知部46は、信号入出力部42を介して温度計271及び圧力計272の測定信号を取得し、取得した測定信号が示す温度及び圧力に基づいて液バックを検知する。具体的には、液バック検知部46は、温度計271の測定信号が示す温度が、圧力計272の測定信号が示す圧力に応じた飽和温度にまで低下した場合に液バックが発生したと判定する。このような判定により液バックを検知できる原理は以下のとおりである。
【0037】
通常の冷房運転時には、ガス冷媒がガス管を介して室内機3から室外機2に戻されるが、ガス冷媒の流れでは渡り配管に留まっている油を室外機2側に送ることはできない。そのため、実施形態の空気調和装置1において、第2制御部44は、油回収運転時に各室内機3の室内送風機331を停止させるように構成される。これにより、室内機3側での冷媒の熱交換(吸熱)が抑制され、低温のままの冷媒がガス管を介して室外機2に戻されることになる。
【0038】
一方、暖房運転時には、高温高圧のガス冷媒がガス管を介して室内機3に送られるため、空気調和装置1の運転モードが暖房運転から油回収運転に切り替えられると、室内機3から室外機2に戻されるガス冷媒の温度は、上記の熱交換(吸熱)の抑制により、徐々に低下していくことになる。そして、ガス冷媒の温度が飽和温度にまで低下するとガス冷媒の一部が液化して液バックが生じ、渡り配管に留まっている油が液冷媒とともに室外機2側に送られることになる。
【0039】
液バック検知部46は、このような原理に基づき、温度計271によって飽和温度より高い温度が測定されている状況では液バックが発生していないと判定し、飽和温度以下の温度が測定されている状況では液バックが発生していると判定することにより、液バックの発生有無を検知することができる。
【0040】
図7は、実施形態の空気調和装置が油回収運転に関して実行する処理の具体例を示すフローチャートである。このフローチャートの開始時点において、空気調和装置1は暖房運転を行っているものとする。まず、第2制御部44は、油面低下検知部45の検知結果に基づき、第1圧縮機23-1又は第2圧縮機23-2において油面低下が発生しているか否かを判定する(ステップS101)。第1圧縮機23-1及び第2圧縮機23-2のいずれにおいても油面低下が発生していない場合(ステップS101-NO)、第2制御部44はステップS101を所定の待機時間の後に繰り返し実行する。
【0041】
一方、第1圧縮機23-1又は第2圧縮機23-2において油面低下が発生している場合(ステップS101-YES)、第2制御部44はオイルセパレータ26に貯えられている油を圧縮機23に供給すべく電磁弁262を開く(ステップS102)。第2制御部44は、電磁弁262を開いたことによって油面低下が解消したか否かを判定する(ステップS103)。具体的には、第2制御部44は、油面低下検知部45が油面低下を検知しなくなったことをもって油面低下が解消したと判定する。
【0042】
電磁弁262を開いたことによって油面低下が解消した場合(ステップS103-YES)、第2制御部44はステップS101に処理を戻すことにより新たな油面低下の発生を待機する。一方、電磁弁262を開いたことによっても油面低下が解消しない場合(ステップS103-NO)、第2制御部44は油面低下が検知されていない室外機2(以下「非対象ユニット」という。)の圧縮機23を停止させる(ステップS104)とともに、
全ての室内機3の室内送風機331を停止させる(ステップS105)。そして、第2制御部44は、油面低下が検知された対象ユニットの運転モードを油回収運転に切り替える(ステップS106)。
【0043】
続いて、第2制御部44は、液バック検知部46の検知結果に基づき、室内機3から室外機2への液バックが発生したか否かを判定する(ステップS107)。液バックが発生していない場合(ステップS107-NO)、第2制御部44は油回収運転の開始から所定の液バック待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS108)。この液バック待機時間は、油回収運転の実行時間を定める時間であり、油回収運転を開始してから液バックが発生するまでの想定時間や、油回収運転を継続することができる時間的制約等に応じて定められるとよい。ここでは、液バック待機時間を示す情報は予め記憶部41に記憶されているものとする。
【0044】
油回収運転の開始から液バック待機時間が経過していない場合(ステップS108-NO)、第2制御部44はステップS107に処理を戻すことにより液バックの発生を待機する。一方、液バックが発生している場合(ステップS107-YES)、又は油回収運転の開始から液バック待機時間が経過した場合(ステップS108-YES)、第2制御部44は、全ての室外機2の運転モードを暖房運転に戻す(ステップS109)。
【0045】
図8及び
図9は、実施形態の空気調和装置の動作例を示す図である。
図8は暖房運転時における空気調和装置1の動作例を示し、
図9は油回収運転時における空気調和装置1の動作例を示す。暖房運転時の空気調和装置1では、室外機2がガス管を介して高温高圧のガス冷媒を室内機3に供給し、室内機3が液管を介して放熱後の液冷媒を室外機2に戻す。これにより、空気調和装置1は室外気から奪った熱を室内気に供給することにより室内気の暖房を実現する。しかしながら、この暖房運転では、冷媒中の油の一部が渡り配管(特にガス管)に留まってしまうことにより、室外機2に必要な油の量が不足する場合がある。
【0046】
これに対して、実施形態の空気調和装置1は、圧縮機23の油面低下が発生した対象ユニットの運転モードを油回収運転に切り替える。これにより、空気調和装置1は、渡り配管に留まっている油をガス管を介して液冷媒とともに室外機2側に送り出し、アキュムレータ27に回収することができる。この際、空気調和装置1は、
図9に示すように、油を回収する必要のない非対象ユニットについては運転を停止させるとともに、ガス管に液冷媒を流通させるために室内送風機331を停止させて室内気との熱交換を抑制する。
【0047】
このように構成された実施形態の空気調和装置1は、暖房運転時において圧縮機23の油面低下が発生した場合、渡り配管に留まっている油をより短い時間で回収することができる。
【0048】
なお、空気調和装置1の油回収運転は、各室外機2の制御部4が互いに連携して動作することによって実現されてもよいし、対象ユニットの制御部4が非対象ユニット及び室内機3を制御することによって実現されてもよい。また、室外機2ごとの制御部4は1つの制御部に統合されてもよい。また、この場合、制御部4が備える各機能部のうち油回収運転に関する機能部のみ1つの制御に統合されてもよい。
【0049】
また、上述した空気調和装置1の制御方法は、1つ以上の室外機及び室内機を持つ空気調和装置に適用可能であり、その適用先はマルチ形空調機に限定されるものではない。なお、実施形態の制御方法を、室外機を1つだけ備える空気調和装置に適用する場合には、油回収運転時に関する処理のうち、他の非対称ユニットを停止させる処理は省略されてもよい。
【0050】
また、上述した空気調和装置1の制御方法は、1つ以上の圧縮機を持つ室外機を用いて構成された空気調和装置に適用可能であり、その適用先は2つの圧縮機を持つ室外機を用いて構成された空気調和装置に限定されるものではない。
【0051】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、室外機2及び室内機3が暖房運転を行っているときに圧縮機23における油の油面低下の発生有無を検知する油面低下検知部45と、油面低下検知部45により圧縮機23における油面低下の発生が検知された場合に、四方弁28を冷房運転時の状態(冷房状態)に切り替える第2制御部44と、を持つことにより、渡り配管に留まっている油をより短い時間で回収することができる。なお、実施形態のオイルセパレータ26は給油部の一例である。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。