(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-01
(45)【発行日】2023-02-09
(54)【発明の名称】特性情報収集方法および特性情報収集装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/06 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
A61B3/06
A61B3/06 ZDM
(21)【出願番号】P 2022149096
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2022126262の分割
【原出願日】2022-08-08
【審査請求日】2022-09-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320012738
【氏名又は名称】株式会社薫化舎
(74)【代理人】
【識別番号】100122312
【氏名又は名称】堀内 正優
(72)【発明者】
【氏名】向井 義
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-102463(JP,A)
【文献】特開2012-035067(JP,A)
【文献】特表2007-526808(JP,A)
【文献】実開昭61-094013(JP,U)
【文献】特表2004-524067(JP,A)
【文献】特開2002-253509(JP,A)
【文献】BRANNAN, Julie R. et al.,Effect of luminance on visual evoked potential amplitudes in normal and disabled readers,Optometry and vision science,1998年04月,Vol.75, No.4,pp.279-283,<DOI: 10.1097/00006324-199804000-00025>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光が被検者の網膜に入射する白色光環境において所定視認性要素を含む被視体を前記被検者に一つ以上呈示する第一被視体呈示工程と、
前記白色光とは分光分布および輝度の少なくとも一方が異なる所定光が前記被検者の網膜に入射する所定光環境を作出する所定光環境作出工程と、
前記所定光環境において前記被視体を前記被検者に再度呈示する第二被視体呈示工程と、
前記第一被視体呈示工程と前記第二被視体呈示工程における前記被視体の見え方に関する特性情報を前記被検者から受け付ける情報受付工程と、
前記被検者から受け付けた前記特性情報を収集する収集工程と、
を有
し、
前記情報受付工程および前記収集工程において、多段階選択肢回答法におけるリッカート尺度を用いて前記特性情報を数値化する、特性情報収集方法。
【請求項2】
前記収集工程で得られた情報を集計する集計工程を有する、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項3】
前記集計工程で得られた情報
をグラフ化またはチャート化した分析表を作成する分析
表作成工程を有する、請求項2に記載の特性情報収集方法。
【請求項4】
前記所定光環境作出工程は、前記網膜の周辺視野領域に前記所定光を入射する、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項5】
前記多段階選択肢回答法において、心理統計学的手法におけるSD法を用いる、請求項4に記載の特性情報収集方法。
【請求項6】
前記所定光は、主波長570nm~590nmを有する黄色光である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項7】
前記所定光は、補色主波長500nm~570nmを有するマゼンタ色光である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項8】
前記所定光は、主波長470nm~530nmを有するシアン色光である、請求項1
に記載の特性情報収集方法。
【請求項9】
前記所定光は、主波長500nm~570nmを有する緑色光である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項10】
前記所定光は、輝度0.001~5cd/m
2である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項11】
前記被視体は、文字、数字または記号であり、
前記所定視認性要素は、前記文字、前記数字または前記記号におけるカウンター、アパーチャ、ジョイント、エイペックス、バーテックスおよびクロッチのいずれか一つ以上である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項12】
前記被視体は、曲面に表示された文字、数字または記号であり、
前記所定視認性要素は、前記文字、前記数字または前記記号における歪みである、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項13】
前記被視体は、デジタル表示の文字、数字または記号であり、
前記所定視認性要素は、前記文字、前記数字または前記記号における欠損部位である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項14】
前記被視体は、ドット表示の文字、数字または記号であり、
前記所定視認性要素は、前記文字、前記数字または前記記号における欠損部位である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項15】
前記被視体は、立体物であり、
前記所定視認性要素は、前記立体物の表面における凹凸である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項16】
前記被視体は、立体物であり、
前記所定視認性要素は、前記立体物の表面における質感である、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項17】
前記所定光の分光分布および輝度の少なくとも一方を変更して、前記所定光環境作出工程から前記収集工程を再び行う、請求項1に記載の特性情報収集方法。
【請求項18】
白色光が被検者の網膜に入射する白色光環境を作出する第一光学部と、
前記白色光とは分光分布および輝度の少なくとも一方が異なる所定光が前記被検者の網膜に入射する所定光環境を作出する第二光学部と、
前記白色光環境において所定視認性要素を含む被視体を前記被検者に一つ以上呈示した後に、前記所定光環境において前記被視体を前記被検者に再度呈示する被視体呈示部と、
前記白色光環境と前記所定光環境における前記被視体の見え方に関する特性情報を前記被検者から受け付ける情報受付部と、
前記情報受付部が受け付けた前記特性情報を収集する収集部と、
を備え
、
前記情報受付部および前記収集部は、前記特性情報を多段階選択肢回答法におけるリッカート尺度を用いて数値化した情報を処理する、特性情報収集装置。
【請求項19】
前記収集部から得た収集情報に基づいて各種演算処理を行う集計分析部を備える、請求項
18に記載の特性情報収集装置。
【請求項20】
前記
集計分析部から得た処理結果を出力する出力部を有する、請求項
19に記載の特性情報収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の見え方の特性情報を収集する特性情報収集方法および特性情報収集装置に関する。
【背景技術】
【0002】
学習障害(限局性学習症:Learning Disorders)は、全般的知能が正常範囲にあり、視覚(視力)や聴覚(聴力)には障害がなく、学習環境や本人の意欲にも問題がないにもかかわらず、特定分野の課題習得が苦手・困難な状態をいう。学習障害には、読字障害(Dyslexia)、書字表出障害(Dysgraphia)、算数障害(Dyscalculia)など、さまざまなタイプがある。また、視空間認知(物体の位置や形状・方向・大きさなどの形態や位置関係を正確に認識する能力)が苦手・困難な者もいる。
【0003】
学習障害のある者の中に、「文字が揺れて見える」や「文章が波打って見える」、または「紙面が光って見える」等と訴える人がいる。このような症状は、アーレンシンドローム(Irlen syndrome)、ミアーズ・アーレンシンドローム(Meares-Irlen syndrome)あるいは視覚ストレス(Visual Stress)と呼ばれる。そして、このような症状(見え方:Vision)は、有色フィルムやレンズを使用することで改善が見られる場合があることが知られている。特にアーレンシンドロームには、カラーレンズやカラーフィルムの使用が有効とされている(非特許文献1,2参照)。
このため、アーレンシンドローム等は、視知覚に関連した障害(視覚認知機能の偏り)、特に光感受性に偏りを有する可能性があると考えられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Sandra Irlen et al., “A controlled field study of the use of coloured overlays on reading achievement”, Australian Journal of Learning Disabilities, Volume 9, 2004 - Issue 2, Pages 14-22
【文献】Keiko Kumagai et al., “The Research of Visual Characteristics of the Clients with Irlen Syndrome”, Japanese Journal of Learning Disabilities, 2021 Volume 30 Issue 2, Pages 126-137
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、視覚認知機能(光感受性)に偏りがある者は、健常者とは異なる「見え方」を有している場合がある。しかし、その「見え方」は、生まれつきであるため、健常でないことを本人が自覚することは難しい。このため、健常者と呼ばれる者であっても、視覚認知機能に偏りがある者は少なくない。
それにもかかわらず、視覚認知機能の偏りは病院では対応できず、一部の限られた研究施設においてアセスメントがされているに過ぎない。また、視覚認知機能の偏りは、症状が様々であり、個人差も大きい。このため、専門的な知識や経験を有する者でなければ、視覚認知機能の偏りのアセスメントを行うことができない。
【0006】
視覚認知機能の偏りを早期に発見するために、各種セルフチェックテストが公開されている[アーレンセルフテスト:https://irlen.com/get-tested/]。
しかし、セルフチェックテストは、本人の主観(先入観や虚栄心)に強く影響されてしまう。また、視覚認知機能の偏りは、本人に自覚がない場合が多いため、セルフチェックテストのみで診断等するのは非常に困難である。
【0007】
このため、専門的な知識等を有する者によらずに、また被検者の主観をできるだけ排除しつつ、被検者の視覚認知機能(光感受性)の偏りを早期発見できる手法の確立が切望されている。そして、このような手法を確立するための前提(前段階)の一つとして、被検者の見え方の特性情報を収集する手法の開発が必要とされている。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、被検者の見え方の特性情報を収集できる特性情報収集方法および特性情報収集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施態様に係る特性情報収集方法の第一態様は、白色光が被検者の網膜に入射する白色光環境において所定視認性要素を含む被視体を前記被検者に一つ以上呈示する第一被視体呈示工程と、前記白色光とは分光分布および輝度の少なくとも一方が異なる所定光が前記被検者の網膜に入射する所定光環境を作出する所定光環境作出工程と、前記所定光環境において前記被視体を前記被検者に再度呈示する第二被視体呈示工程と、前記第一被視体呈示工程と前記第二被視体呈示工程における前記被視体の見え方に関する特性情報を前記被検者から受け付ける情報受付工程と、前記被検者から受け付けた前記特性情報を収集する収集工程と、を有する。
【0010】
特性情報収集方法の第二態様は、第一態様において、前記収集工程で得られた情報を集計する集計工程を有する。
特性情報収集方法の第三態様は、第二態様において、前記集計工程で得られた情報に基づいて分析表を作成する分析工程を有する。
特性情報収集方法の第四態様は、第二態様において、前記情報受付工程および前記収集工程において、多段階選択肢回答法におけるリッカート尺度を用いて、前記特性情報を数値化する。
特性情報収集方法の第五態様は、第四態様において、前記多段階選択肢回答法において、心理統計学的手法におけるSD法を用いる。
【0011】
特性情報収集方法の第六態様は、第一から第五態様において、前記所定光は、主波長570nm~590nmを有する黄色光である。
特性情報収集方法の第七態様は、第一から第六態様において、前記所定光は、補色主波長500nm~570nmを有するマゼンタ色光である。
特性情報収集方法の第八態様は、第一から第七態様において、前記所定光は、主波長470nm~530nmを有するシアン色光である。
特性情報収集方法の第九態様は、第一から第八態様において、前記所定光は、主波長500nm~570nmを有する緑色光である。
特性情報収集方法の第十態様は、第一から第九態様において、前記所定光は、輝度0.001~5cd/m2である。
特性情報収集方法の第十一態様は、第一から第十態様において、前記所定光環境作出工程は、前記網膜の周辺視野領域に前記所定光を入射する。
【0012】
特性情報収集方法の第十二態様は、第一から第十一態様において、前記被視体は、文字、数字または記号であり、前記所定視認性要素は、前記文字、前記数字または前記記号におけるカウンター、アパーチャ、ジョイント、エイペックス、バーテックスおよびクロッチのいずれか一つ以上である。
特性情報収集方法の第十三態様は、第一から第十二態様において、前記被視体は、曲面に表示された文字、数字または記号であり、前記所定視認性要素は、前記文字、前記数字または前記記号における歪みである。
特性情報収集方法の第十四態様は、第一から第十三態様において、前記被視体は、デジタル表示の文字、数字または記号であり、前記所定視認性要素は、前記文字、前記数字または前記記号における欠損部位である。
特性情報収集方法の第十五態様は、第一から第十四態様において、前記被視体は、ドット表示の文字、数字または記号であり、前記所定視認性要素は、前記文字、前記数字または前記記号における欠損部位である。
特性情報収集方法の第十六態様は、第一から第十五態様において、前記被視体は、立体物であり、前記所定視認性要素は、前記立体物の表面における凹凸である。
特性情報収集方法の第十七態様は、第一から第十六態様において、前記被視体は、立体物であり、前記所定視認性要素は、前記立体物の表面における質感である。
特性情報収集方法の第十八態様は、第一から第十七態様において、前記所定光の分光分布および輝度の少なくとも一方を変更して、前記所定光環境作出工程から前記収集工程を再び行う。
【0013】
本発明の実施態様に係る特性情報収集装置の第一態様は、白色光が被検者の網膜に入射する白色光環境を作出する第一光学部と、前記白色光とは分光分布および輝度の少なくとも一方が異なる所定光が前記被検者の網膜に入射する所定光環境を作出する第二光学部と、前記白色光環境において所定視認性要素を含む被視体を前記被検者に一つ以上呈示した後に、前記所定光環境において前記被視体を前記被検者に再度呈示する被視体呈示部と、前記白色光環境と前記所定光環境における前記被視体の見え方に関する特性情報を前記被検者から受け付ける情報受付部と、前記情報受付部が受け付けた前記特性情報を収集する収集部と、を備える。
【0014】
特性情報収集装置の第二態様は、第一態様において、前記収集部から得た収集情報に基づいて各種演算処理を行う集計分析部を備える。
特性情報収集装置の第三態様は、第二態様において、前記各種演算処理の結果を出力する出力部を有する。
特性情報収集装置の第四態様は、第一から第三態様において、前記被視体呈示部は、ディスプレイである。
特性情報収集装置の第五態様は、第一から第四態様において、前記第二光学部は、眼鏡、ゴーグル、ライトまたは照明装置である。
特性情報収集装置の第六態様は、第一から第五態様において、前記第二光学部は、ディスプレイである。
特性情報収集装置の第七態様は、第一から第六態様において、前記第一光学部は、ライトまたは照明装置である。
特性情報収集装置の第八態様は、第一から第七態様において、前記第一光学部は、ディスプレイである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の特性情報収集方法および特性情報収集装置は、専門的な知識等を有する者によらずに、また被検者の主観をできるだけ排除して、被検者の見え方の特性情報を収集できる。さらに、被検者の見え方の特性情報を集計し、分析することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る特性情報収集装置1を示す図である。
【
図2】特性情報収集装置1の概略構成を示すシステムブロック図である。
【
図3】(a)人の目の構造を示す縦断面図、(b)人の視細胞を示す模式図である。
【
図6】所定視認性要素を含む被視体30を示す図である。
【
図7】所定視認性要素を含む被視体40を示す図である。
【
図8】所定視認性要素を含む被視体50を示す図である。
【
図9】所定視認性要素を含む被視体60を示す図である。
【
図10】所定視認性要素を含む被視体70,80を示す説明図である。
【
図11】実施形態に係る特性情報収集方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る特性情報収集方法および特性情報収集装置について、図面を参照しつつ説明する。
特性情報収集方法および特性情報収集装置1は、視覚認知機能(光感受性)に偏りがある者にとって、「見え方」が変化しやすい環境を作出し、順応時間経過後に「見え方」の変化を感じやすい被視体を呈示する。そして、被検者から「見え方」の変化の態様・程度に係る「見え方の特性情報」を収集する。
【0018】
〔特性情報収集装置1〕
図1は、実施形態に係る特性情報収集装置1を示す図である。
図2は、特性情報収集装置1の概略構成を示すシステムブロック図である。
【0019】
特性情報収集装置1は、パソコン10とカラーライト20、室内照明装置25を備える。
パソコン10は、演算処理部11、記憶部12、ディスプレイ13、キーボード14a、I/O15等を備える。
【0020】
演算処理部(収集部、集計分析部)11は、CPU等であり、パソコン10における各種処理を実行する。演算処理部11は、後述する特性情報収集方法を主導する。
記憶部12は、ROMやRAM、HDD、SSD等であり、各種プログラムやデータベースが格納される。具体的には、特性情報収集プログラム17と被視体データベース18が記憶部12に格納される。
【0021】
ディスプレイ(被視体呈示部、出力部、(第一光学部、第二光学部))13は、演算処理部11からの指令に応じて、文字や画像等を表示する。ディスプレイ13は、後述する被視体30等を被検者(視覚認知機能に偏りがある者)に向けて表示(呈示)する。
また、ディスプレイ13は、後述する特性情報受付・収集工程S5の回答フォームQや集計・分析工程S6の結果(集計情報、分析情報)も表示する。
ディスプレイ13は、複数の画素を有し、その画素密度は150ppi以上、特に200ppi以上が好ましい。
ディスプレイ13は、演算処理部11からの指令に応じて、輝度(照度)、発光の色(波長)等が制御される。ディスプレイ13は、可視光を輝度0.001~1000000cd/m2で照射(発光)する。特に、輝度5cd/m2以上での発光と輝度5cd/m2未満での発光を切り替えできる。
【0022】
キーボード(情報受付部)14aは、文字や数値等の情報をパソコン10に入力する操作入力部である。キーボード14aに加えて、またはキーボード14aに代えて、マウス(情報受付部)14bやポインティングデバイス、タッチパネル(ディスプレイ13)等を用いてもよい。
【0023】
I/O15は、パソコン10に接続された外部機器との情報の入出力を行うインタフェースである。このI/O15には、カラーライト20と室内照明装置25が接続される。I/O15に印刷プリンタ16等を接続してもよい。
パソコン10は、カメラ、マイク、スピーカ等も備える。
【0024】
(カラーライト20)
カラーライト(第二光学部、(第一光学部))20は、所定光L1を照射する照明器具である。カラーライト20は、電球、蛍光灯、LED、OLED等のランプを有する照明器具であり、例えばデスクライト、ハンディライト等である。
カラーライト20は、パソコン10の演算処理部11からの指令に応じて、点灯、消灯、輝度(照度)、照明光の色(波長)、照射方向等が制御される。
カラーライト20は、可視光を輝度0.001~1000000cd/m2で照射する。特に、輝度5cd/m2以上での発光と輝度5cd/m2未満での発光を切り替えできる。
【0025】
カラーライト20は、パソコン10の正面でディスプレイ13を注視する被検者の顔面に向けて、所定光L1を照射する。被検者がディスプレイ13に表示された画像(被視体30等)を注視するときに、被検者の網膜Rに所定光L1が入射する。
被検者の網膜Rに所定光L1が入射する環境を所定光環境と呼ぶ。カラーライト20は、後述する所定光環境作出工程S3の光源として機能する。所定光環境では、被検者がディスプレイ13に表示された画像(被視体30等)を支障なく注視できる。
【0026】
カラーライト20は、ディスプレイ13から離れた位置に配置することが好ましい。所定光L1を網膜Rの周辺視野領域R2に入射させるためである。被検者がディスプレイ13に表示された画像(被視体30等)を注視するときに、所定光L1がその注視の支障にならないことが好ましい。例えば、網膜Rの中心視野領域R1にはディスプレイ13に表示された画像(被視体30等)の光が入射し、網膜Rの周辺視野領域R2には所定光L1が入射するようにする。
【0027】
(室内照明装置25)
室内照明装置(第一光学部、(第二光学部))25は、パソコン10が置かれた部屋(室内H)の天井に配置されたシーリングライトである。パソコン10は、自然光(太陽光)が遮断された室内Hに置かれ、室内照明装置25を点灯させることにより、白色光L0が室内Hの全域に照射される。
室内照明装置25は、パソコン10の演算処理部11からの指令に応じて、点灯、消灯、輝度(照度)等が制御される。室内照明装置25とパソコン10の接続は、有線接続に限らず、無線接続でもよい。
室内照明装置25は、白色光L0を輝度0.001~1000000cd/m2で照射する。特に、輝度5cd/m2以上での発光と輝度5cd/m2未満での発光を切り替えできる。
【0028】
ディスプレイ13に表示された画像(被視体30等)を被検者が注視するときに、被検者の網膜R(中心視野領域R1および周辺視野領域R2)に白色光L0が入射する。
被検者の網膜Rに白色光L0が入射する環境を白色光環境と呼ぶ。室内照明装置25は、白色光環境作出工程S1の光源として機能する。白色光環境では、被検者がディスプレイ13に表示された画像(被視体30等)を支障なく注視できる。
【0029】
演算処理部11は、記憶部12に格納されているプログラムを実行し、必要に応じて記憶部12に記憶されている各種データを読み取って、パソコン10を動作させる。
具体的には、演算処理部11は、特性情報収集プログラム17を実行し、被視体データベース18から被視体30等のデータを読み取って、ディスプレイ13に被視体30等を表示する。このとき、演算処理部11は、室内照明装置25やカラーライト20を点灯・消灯させて、白色光L0や所定光L1を被検者の網膜Rに入射させる。
演算処理部11は、被検者からの回答の受け付けるために、ディスプレイ13に被視体30等の見え方の変化に関する回答フォームQを表示する。そして、演算処理部11は、キーボード14a等から入力された情報(見え方の特性情報の生データ(収集情報))を記憶部12に記憶保存(収集)させる。さらに、演算処理部11は、この収集情報を各種演算処理(集計・分析)して、その結果(見え方の特性情報の集計情報や分析情報)をディスプレイ13や印刷プリンタ16に表示・出力する。
【0030】
〔視細胞〕
図3(a)は、人の目の構造を示す縦断面図である。
図3(b)は、人の視細胞を示す模式図である。
図4は、人の視細胞の分光感度曲線を示す図である。
図5は、国際照明委員会(CIE1931)の色空間のxy色度図(Chromaticity diagram)を示す図である。
【0031】
人の網膜Rに存在する視細胞には、錐体細胞(Cone cell)と桿体細胞(Rod cell)がある。錐体細胞は、網膜Rの中心窩付近に存在し、色を検知する円錐型の視細胞である。錐体細胞は明所で機能する。桿体細胞は、中心窩の周辺部に存在し、明かりを検知する棒状型の視細胞である。桿体細胞は、主に暗所で機能する。
【0032】
錐体細胞が働く状況(光量が充分にある状況)の視覚を明所視(Photopic vision)という。明所視は、輝度5~1000000cd/m2(照度10~100000lx)の光量下で生じる。
桿体細胞が働く状況(光量が小さい状況)の視覚を暗所視(Scotopic vision)という。暗所視は、輝度0.01~0.000001cd/m2(照度0.001~0.01lx)の光量下で生じる。
錐体細胞と桿体細胞がともに働く状況(光量が少ないが完全な暗黒ではない状況)の視覚を薄明視(Mesopic vision)という。薄明視は、明所視と暗所視が重なる視覚である。薄明視は、輝度0.001~5cd/m2(照度0.01~10lx)の光量下で生じる。国際照明委員会(CIE)は輝度0.005~5cd/m2を、北米照明学会(IES)は輝度0.001~3cd/m2を薄明視と定めている。
【0033】
錐体細胞は、光の三原色に対応して三種類に分類される。具体的には、長波長域の光(黄色周辺)に反応するLong錐体細胞、中波長域の光(黄緑色周辺)に反応するMiddle錐体細胞、短波長域の光(青色周辺)に反応するShort錐体細胞がある。
Long錐体細胞は、赤錐体細胞とも呼ばれる。Middle錐体細胞は、緑錐体細胞とも呼ばれる。Short錐体細胞は、青錐体細胞とも呼ばれる。
この三種類の錐体細胞のそれぞれが受けた刺激の強さの組み合わせ(三種類の錐体細胞の興奮の相対比)によって、特定の色が知感(知覚)される。
【0034】
以下、Long錐体細胞をL視細胞VL、Middle錐体細胞をM視細胞VM、Short錐体細胞をS視細胞VS、桿体細胞をR視細胞VRともいう。
【0035】
〔可視光〕
可視光は、波長380~780nmの光である。可視光の波長と色との関係(分光スペクトル)は、概ね以下の通りである。波長380~430nm:青紫、430~460nm:青、460~500nm:青緑、500~570nm:緑、570~590nm:黄、590~610nm:橙、610~780nm:赤
【0036】
可視光に対する視細胞の感受性には波長依存性がある。具体的には、L視細胞VLの吸収極大波長は558nm付近、M視細胞VMの吸収極大波長は531nm付近、S視細胞VSの吸収極大波長は419nm付近、R視細胞VRの吸収極大波長は500nm付近である。
【0037】
可視光の発光強度が最大になるピーク波長と、実際に目で感じる波長とは異なる。目で感じる色の波長を主波長またはドミナント波長(dominant wavelength)という。
青紫色に感じる光は、主波長400nm付近(380nm~430nm)である。
青色に感じる光は、主波長450nm付近(430nm~470nm)である。
シアン色に感じる光は、主波長490nm付近(470nm~530nm)である。
緑色に感じる光は、主波長550nm付近(530nm~570nm)である。
黄色に感じる光は、主波長580nm付近(570nm~590nm)である。
赤色に感じる光は、主波長610nm付近(590nm~780nm)である。
マゼンタ色に感じる光は、補色主波長(complementary dominant wavelength)550nm付近(530nm~570nm)である。
【0038】
(白色光L0)
白色光L0は、可視光線のすべての波長の光(色)がほぼ均等に混ざった光で、色合いの感覚を与えない光をいう。白色光L0は、平均昼光の色として定義されることもある。
白色光L0は、輝度5~1000000cd/m2の光であり、被検者の網膜Rに入射することにより明所視を実現させる。白色光L0は、網膜Rに存在する三種類の錐体細胞(S視細胞VS、M視細胞VM、L視細胞VL)の全てが反応(興奮)する光である。
【0039】
(所定光L1)
所定光L1は、白色光L0とは分光分布および輝度の少なくとも一方が異なる可視光である。所定光L1には、白色光L0とは分光分布が異なる光LA、輝度が異なる光LB、分光分布と輝度がそれぞれ異なる光LBAがある。
分光分布が異なるとは、所定光L1(光LA,LBA)が有色光であることを意味する。輝度が異なるとは、所定光L1(光LB,LBA)が輝度0.001~5cd/m2の光であることを意味する。
【0040】
光LAは、可視光線の一部の波長の光(色)を有する、輝度5~1000000cd/m2の光(有色光)である。
光LAは、三種類の錐体細胞のうちの一種類または二種類が主に反応する光である。LAは、主波長570nm~590nmの黄色光LAY、補色主波長500nm~570nmのマゼンタ色光LAM、主波長470nm~530nmのシアン色光LAC、主波長500nm~570nmの緑色光LAGのいずれかである。
【0041】
黄色光LAYは、L視細胞VLとM視細胞VMを興奮させ、S視細胞VSを抑制(鎮静)させる可視光である。
黄色光LAYには、波長580nm付近にピーク波長を有する光の他、波長450nm付近にボトム波長を有する光(青の補色)、波長550nm付近と波長610nm付近にピーク波長を有する光(緑と赤の混色)も含まれる。
黄色光LAYは、網膜Rに入射すると、L視細胞VLとM視細胞VMを興奮させ、S視細胞VSを抑制させる。
【0042】
マゼンタ色光LAMは、L視細胞VLとS視細胞VSを興奮させ、M視細胞VMを抑制させる可視光である。
マゼンタ色光LAMには、波長550nm付近にボトム波長を有する光(緑の補色)の他、波長450nm付近と波長610nm付近にピーク波長を有する光(青と赤の混色)も含まれる。
【0043】
シアン色光LACは、M視細胞VMとS視細胞VSを興奮させ、L視細胞VLを抑制させる可視光である。
シアン色光LACには、波長490nm付近にピーク波長を有する光の他、波長610nm付近にボトム波長を有する光(赤の補色)、波長450nm付近と波長550nm付近にピーク波長を有する光(青と緑の混色)も含まれる。
【0044】
緑色光LAGは、M視細胞VMを興奮させ、L視細胞VLとS視細胞VSを抑制させる可視光である。つまり、カラーライト20は、緑色光LAG(主波長550nm付近)を網膜Rに入射させる。
緑色光LAGには、波長550nm付近にピーク波長を有する光の他、波長450nm付近と波長610nm付近にボトム波長を有する光(黄とシアン色の混色)も含まれる。
【0045】
光LBは、可視光線のすべての波長の光(色)がほぼ均等に混ざった、輝度0.001~5cd/m2の光(グレイ光)である。グレイ光LBは、白色光L0の輝度を低下させた光であり、色味が感じづらい光である。
グレイ光LBは、被検者の網膜Rに入射することにより薄明視を実現させる。つまり、グレイ光LBは、網膜Rに存在する桿体細胞が反応し始める光である。
桿体細胞は、光の強弱に対応する明暗を高感度に検知する。桿体細胞は、色の検知には関与しない。輝度5cd/m2以下の光は、網膜Rに入射したときに、桿体細胞を興奮させて、明暗を知感させる。
グレイ光LBは、錐体細胞(L視細胞VL、M視細胞VM、S視細胞VS)と桿体細胞(R視細胞VR)の両方を興奮させる(薄明視)。
【0046】
光LBAは、可視光線の一部の波長の光(色)を有する、輝度0.001~5cd/m2の光(グレイ有色光)である。光LBAには、グレイ黄色光LBY、グレイマゼンタ色光LBM、グレイシアン色光LBC、グレイ緑色光LBGがある。
黄色光LBYは、黄色光LAYの輝度を低下させた光である。マゼンタ色光LBMは、マゼンタ色光LAMの輝度を低下させた光である。シアン色光LBCは、シアン色光LACの輝度を低下させた光である。緑色光LBGは、緑色光LAGの輝度を低下させた光である。
【0047】
〔被視体30~80〕
図6は、所定視認性要素31等を含む被視体30を示す図である。
図7は、所定視認性要素41を含む被視体40を示す図である。
図8は、所定視認性要素51を含む被視体50を示す図である。
図9は、所定視認性要素61を含む被視体60を示す図である。
図10は、所定視認性要素72,74を含む被視体70,80を示す図であり、(a)ゴルフボール71、(b)ブラインドカーテン73である。
【0048】
被視体データベース18には、複数の被視体30~80の画像データが格納される。こられの被視体30~80は、個別にディスプレイ13に表示される。
被視体30~80は、被検者に注視させる対象物である。特に、被視体30等は、所定視認性要素31等を含んだ対象物である。
被視体30~80は、平面物、立体物のいずれでもよく、静止しているもの(静止画像)が好ましい。
【0049】
所定視認性要素とは、視覚認知機能に偏りを有する者が視覚認知しづらい傾向または視覚認知が難しい傾向を有する要素(以下、低視認性要素)である。つまり、視覚認知機能に偏りを有する者にとって、被視体30等の文字の読み書きや視空間認知を困難・苦手にしてしまう要素である。このため、低視認性要素は、視認阻害要素または視認困難要素とも言える。
【0050】
被視体30は、アルファベット文字、ローマ数字または記号である。所定視認性要素は、これらの文字または数字における要素(エレメント)である。具体的には、カウンター(Counter)31、アパーチャ(Aperture)32、ジョイント(Joint)33、エイペックス(Apex)34、バーテックス(Vertex)35、クロッチ(Crotch)36等である。また、所定視認性要素は、ボウル(Bowl)、ループ(loop)、テール(tie)、ディセンダー(Descender)、アセンダー(Ascender)等であってもよい。
【0051】
カウンター31は、文字の中に含まれる閉じた空間を指す。「d」、「p」等がカウンター31を有する。完全に閉じていないものもカウンター31に含まれる。「c」、「n」等が有する完全に閉じていない空間は、アパーチャ32またはオープンカウンター(open counter)と呼ぶこともある。「a」、「e」は、カウンター31とアパーチャ32をそれぞれ有する。なお、「e」の閉じた空間は「eye」と呼ばれることがある。
【0052】
図6に示すように、視覚認知機能に偏りを有する者は、「a」や「e」のように、カウンター31やアパーチャ32を有する文字の視認(視覚認知)を苦手とする傾向がある。視覚認知機能に偏りを有する者は、カウンター31とアパーチャ32を正確に認識できなかったり、これらの区別が困難であったりする。
【0053】
視覚認知機能に偏りを有する者は、ジョイント33、エイペックス34、バーテックス35、クロッチ36のように、二本の線が繋がる部分の視認が困難であったり苦手であったりする。
また、視覚認知機能に偏りを有する者は、ボウル、ループ、テール、ディセンダー、アセンダーの有無や区別が困難であったり苦手であったりする。
【0054】
被視体40は、曲面に表示されたアルファベット文字、ローマ数字または記号である(湾曲字)。所定視認性要素は、歪み41である。つまり、高さや幅が異なったり変化したりしている文字等である。
図7に示すように、曲面に印刷や表示された文字は、文字幅がそれぞれ異なって見える。横方向の両端にある文は、横方向に潰れて(縮小して)文字幅が小さく見える。
視覚認知機能に偏りを有する者は、文字高や文字幅が異なったり変化したりしている文字(歪み41)等の視認を苦手とする傾向がある。
【0055】
被視体50は、デジタル表示されたアルファベット文字、ローマ数字または記号である(7セグメント)。所定視認性要素は、これらの文字または数字の欠損部位51である。
図8に示すように、デジタル表示されたアルファベット文字やローマ数字には、本来の文字や数字には存在しない欠損部位61がある。
視覚認知機能に偏りを有する者は、デジタル表示されたアルファベット文字等を見たときに、文字等と認知(視認)することができず、単なる模様(複数の線)と認知してしまう傾向がある。例えば、
図8に示すように、「1」のデジタル表示を、二本の縦棒と視認してしまい、数字として認知することが困難または苦手であったりする。
【0056】
被視体60は、ドット表示されたアルファベット文字、ローマ数字または記号である(ドット字)。所定視認性要素は、これらの文字または数字の欠損部位61である。
図9に示すように、ドット表示されたアルファベット文字やローマ数字には、本来の文字や数字には存在しない欠損部位61がある。
視覚認知機能に偏りを有する者は、ドット表示されたアルファベット文字等を見たときに、文字等と認知(視認)することができず、単なる模様(複数の点)と認知してしまう傾向がある。例えば、
図9に示すように、「0」のドット表示を、14個の黒丸の集まりと視認してしまい、数字として認知することが困難または苦手であったりする。
【0057】
被視体70は、立体物(3Dテクスチャを含む)である。所定視認性要素は、立体物の表面に形成された凹凸72や陰影74である。凹凸72は、例えば、ディンプルやエンボス等の微細構造(表面性状)である。陰影74は、立体物の表面の凹凸や傾斜に伴う光の反射の変化(表面性状)である。
視覚認知機能に偏りを有する者は、立体物の表面に存在する小さな凹凸72や陰影74の視認を苦手とする傾向がある。凹凸72や陰影74(反射した光の性質)を区別して認識することが困難であると思われる。
図10(a)に示すように、ゴルフボール71のディンプル(凹凸72)を見た時に、その陰影から立体感を得ることが困難または苦手であり、平面的な模様と視認してしまう傾向がある。または、凹と凸の区別が困難・苦手であったりする。
図10(b)に示す様に、ブラインドカーテン73のスラットを見た時に、その陰影74からスラットの向きや角度を判別することが困難・苦手であったりする。つまり、ブラインドカーテン73のスラットの陰影74から立体感を得ることが困難または苦手であり、平面的な模様と視認してしまう傾向がある。
【0058】
被視体70は、ゴルフボール71やブラインドカーテン73に限らない。例えば平面に敷き詰められた複数のタイルでもよい。視覚認知機能に偏りを有する者は、タイル同士の継ぎ目(凹凸72)の視認を苦手とする傾向がある。
【0059】
被視体80は、立体物(3Dテクスチャを含む)である(
図10参照)。所定視認性要素は、立体物が有するに質感81である。質感81は、立体物の表面性状(表面特性)に起因する。この表面性状は、立体物の表面の反射特性(反射率)や透過特性(透過率)に基づく。つまり、立体物の表面で反射したり透過したりした光の性質(光沢、透明感、陰影・濃淡等)により、人は立体物の質感81を視覚認知する。
視覚認知能力異常者は、立体物の表面の質感81の視認を苦手とする傾向がある。質感81(反射特性、透過特性)に基づく陰影等を区別して認識することが困難であると思われる。
【0060】
被視体80は、自然風景(雲や草木等)、建築物、内装品、インテリア(カーテン、階段等)である。被視体80は、ゴルフボール71やブラインドカーテン73であってもよい。
視覚認知能力異常者が、建築物や樹木、植物、雲等を見た時に、その表面の質感81(光沢、透明感、陰影・濃淡等)から立体感を得ることが困難または苦手であり、平面的な模様等と視認してしまう傾向がある。
【0061】
これら被視体30~80は、色、明暗(コントラスト)、大きさ、姿勢(角度)等を任意に調整して、ディスプレイ13等に表示される。
被視体30等の色は、単色が好ましい(特に被視体30~60)。被視体30等の色は、例えば、黒や白、灰色(クレイスケール)である。また、被視体30等の色は、赤、青、緑、黄、シアン、マゼンタに変更可能である。
ディスプレイ13は、被視体30等を表示するときに、被視体30等以外の背景部分(外周部13b)を被視体30等とは異なる色にする。背景部分(外周部13b)は、例えば、白や黒、灰色(クレイスケール)が好ましい。また、被視体30等の色は、赤、青、緑、黄、シアン、マゼンタに変更可能であることが好ましい。
【0062】
被視体30~60のアルファベット文字、ローマ数字または記号は、ディスプレイ13に一つずつ表示してもよいし、複数の文字等を同時に表示してもよい。ただし、複数の文字等を同時に表示する場合は、被検者の推論が働かないように、ランダムに並べたり配置したりすることが好ましい。
被視体30~60は、アルファベット文字やローマ数字に限らない。漢字、平仮名、片仮名等、他の言語の文字等であってもよい。
【0063】
〔特性情報収集方法〕
図11は、実施形態に係る特性情報収集方法を示すフローチャート図である。
特性情報収集方法は、白色光環境作出工程S1、被視体呈示工程S2、所定光環境作出工程S3、第二被視体呈示工程S4、特性情報受付・収集工程S5、集計・分析工程S6および出力工程S7を有する。また、再実施判断工程S8、所定光変更工程S9を有する。
【0064】
(白色光環境作出工程S1)
特性情報収集方法は、被検者がパソコン10の正面に座って、ディスプレイ13を注視できる状況で行われる。パソコン10は、被検者の網膜Rに白色光L0が入射する白色光環境に置かれる。パソコン10が置かれた室内Hの天井に配置された室内照明装置25を点灯させることで、白色光環境が作出される。
特性情報収集プログラム17を実行して、特性情報収集方法を開始する。室内照明装置25の点灯(白色光環境作出)は、特性情報収集プログラム17の実行により行う。室内照明装置25を予め点灯した状態で、特性情報収集プログラム17を実行してもよい。
パソコン10の操作は、被検者が行ってもよいし、補助者(施験者)等が行ってもよい。
【0065】
被検者が白色光環境に順応(明順応)するように、室内照明装置25が点灯する室内Hに被検者を約1分以上滞在させる(明順応時間経過後)。
白色光L0は、室内Hの壁や床、ディスプレイ13等で吸収・反射(乱反射)・透過し、その反射光または透過光が被検者の網膜Rに入射する。白色光L0は、室内照明装置25から直接、被検者の網膜Rに入射してもよい。
【0066】
(被視体呈示工程S2)
被視体呈示工程S2では、白色光環境下において、被検者の面前に被視体30~80を少なくとも一つ以上呈示する。被視体30等の見え方の変化を被検者が忘れないように、3~5種類程度の被視体30等を提示するのが好ましい。
被視体30等をディスプレイ13の中央部13aに表示する。複数の被視体30をディスプレイ13に表示(呈示)する際には、被視体30等をひとつずつ順次に表示する。同種類の被視体(被視体30,50,60)は、2~3個ずつ表示してもよい。
被検者が被視体30等をリラックスして注視できるように、それぞれの被視体30を短くても10秒間程度、ディスプレイ13に表示することが好ましい。被検者がフリッカー刺激を受けないように、ディスプレイ13に表示される画像を10秒以上保持する。
【0067】
(所定光環境作出工程S3)
所定光環境作出工程S3では、被検者の網膜に所定光L1が入射する所定光環境を作出する。室内照明装置25を消灯し、カラーライト20を点灯して、所定光L1を被検者の網膜Rに入射させる。
カラーライト20から照射される所定光L1は、最初は有色光である光LAが選択される。つまり、黄色光LAY、マゼンタ色光LAM、シアン色光LAC、緑色光LAGのいずれか一つである。所定光L1(光LA)は、黄色光LAYが最も好ましい。
被検者の網膜Rに所定光L1(光LA)が入射すると、三種類の錐体細胞(L視細胞VL、M視細胞VM、S視細胞VS)のうちの二種類または一種類が主に反応する。
【0068】
所定光L1は、カラーライト20から直接、被検者の網膜Rに入射する。所定光L1は、反射光や透過光として被検者の網膜Rに入射してもよい。
カラーライト20を点灯したときに、室内照明装置25を点灯したままにしてもよい。
白色光環境作出工程S1(白色光環境)と所定光環境作出工程S3(所定光環境)は、網膜Rに入射する光の輝度(照度)がほぼ同一同になるように設定される。例えば、読書や作業等をするのに適した輝度200~3000cd/m2(照度100~1000lx)が好ましい。
被検者が所定光環境に順応(明順応)するように、カラーライト20が点灯するパソコン10の正面に被検者を約1分以上滞在させる(明順応時間経過)。
【0069】
(第二被視体呈示工程S4)
次いで、所定光環境下において、再び被視体30等の呈示を行う。この第二被視体呈示工程S4では、第一被視体呈示工程S2において呈示した被視体30等を変更することなく、被検者の面前に再度呈示する。被視体30等の色や大きさ、表示順序、表示時間を変えず、またディスプレイ13の輝度等も変えずに再表示する。
被検者がフリッカー刺激を受けないように、ディスプレイ13に表示される画像を10秒以上保持する。
【0070】
(特性情報受付・収集工程S5)
特性情報収集工程S5では、白色光環境(第一被視体呈示工程S2)と所定光環境(第二被視体呈示工程S4)における被視体30等の見え方に変化(差異)が生じたか否かを被検者に回答させて(回答を受け付けて)、この情報を収集する。
特性情報収集工程S5は、白色光環境と所定光環境のいずれで行ってもよい。白色光環境に戻す場合は、カラーライト20を消灯し、室内照明装置25は点灯する。
被検者が白色光環境に順応するように、室内照明装置25が点灯する室内Hに被検者を約1分以上滞在させてから(明順応時間経過後)、回答の受け付け(特性情報受付工程S5a)を開始する。
【0071】
視覚認知機能(光感受性)に偏りを有する者は、網膜Rに所定光L1(黄色光LAY等)が入射されると、被視体30等の見え方が白色光環境とは異なるように感じることがある。
例えば、視覚認知機能に偏りを有する者は、所定光環境作出工程S3において、被視体30等の色の濃さが増したように感じたり、被視体70の立体感が増したように感じたりする。視野が広がったように感じたり、眩しさが抑えられたように感じたりする場合もある。
被視体30等の見え方の変化は、それぞれの視覚認知機能に偏りを有する者によって異なる。例えば被視体30の見え方のみが変化する者や、被視体30と被視体70の見え方が変化する者、全ての被視体30等の見え方が変化する者等もいる。
【0072】
図12は、回答フォームQを示す図である。
まず、被視体30等の見え方に変化に関する回答フォームQをディスプレイ13に表示する(特性情報受付工程S5a)。
回答フォームQとして、多段階選択肢を用いる(多段階選択肢回答法)。多段階選択肢の各評価尺度段階を得点とするリッカート尺度(Likert scale)を用いて、被検者からの回答が数値化される。例えば5段階選択肢の場合は、「非常に良い」は5点、「やや良い」は4点、「変化なし」は3点、「やや悪い」は2点、「非常に悪い」は1点に設定される。
【0073】
多段階選択肢の評価尺度は、心理統計学的手法(心理学的測定法)におけるSD法(Semantic Differential Method)に基づいて設定される。
被視体30~80のそれぞれに対して、下記に示す質問項目が設定され、ディスプレイ13に表示される。各質問項目の内容(形容詞対、評価尺度点数等)は、予め記憶部12に記憶されている。
【0074】
被視体30~80に対して、以下の質問項目、形容詞対が設定される。
質問項目1:全体的な見え方の変化、形容詞対:「見え方がよくなった」-「見え方が悪くなった」
質問項目1は、被視体30を文字や数字として認識できたか否か、被視体30が揺れ動かずに止まっていたか否か、に関わる質問である。また、被視体40,50,60を文字や数字として認識できたか否か、つまり歪41や欠損51,61があっても文字等をイメージできたか否か、に関わる質問である。さらに、被視体70,80の位置や形状・方向・大きさなどの形態や位置関係が認識しやすくなったか否か、に関わる質問でもある。
【0075】
被視体30~80に対して、さらに以下の質問項目、形容詞対が設定される。
質問項目2:視野の変化、形容詞対:「周りが見やすくなった」-「周りが見えづらくなった」
質問項目3:輝度の変化、形容詞対:「全体が明るくなった」-「全体が暗くなった」
質問項目4:眩しさの変化、形容詞対:「眩しさが弱くなった」-「眩しさが強くなった」
質問項目5:コントラストの変化、形容詞対:クッキリした」-「ぼんやりした」
【0076】
被視体30~80が有色の場合は、さらに以下の質問項目、形容詞対が設定される。
質問項目6:明度の変化、形容詞対:「色が濃くなった」‐「色が薄くなった」
質問項目7:彩度の変化、形容詞対:「色が鮮やかになった」‐「色がくすんだ」
【0077】
被視体70,80に対して、さらに以下の質問項目、形容詞対が設定される。
質問項目8:立体感の変化、形容詞対:「凹凸が深くなった」‐「凹凸が浅くなった」
質問項目9:質感の変化、形容詞対:「光沢・陰影が強くなった」‐「光沢・陰影が弱くなった」
【0078】
次いで、被検者等は、キーボード14aまたはマウス14bを操作して、被視体30等の見え方の変化に関する回答を行う。具体的には、各質問項目について、キーボード14aで数値を入力したり、マウス14bでチェックボタンをクリックしたりして、5段階選択肢から最も当てはまる肢を一つ選択する(単数回答法:Single Answer)。
【0079】
例えば、被検者は、所定光環境においてディスプレイ13に表示された被視体31(アルファベット「a」)を見た際の見え方の変化について回答(数値入力)する。
質問項目1の「全体的な見え方の変化」について、変化がなかったと感じたときは、「3」を入力する。
一方、「全体的な見え方の変化」が変化したと感じたときは、以下のように入力する。すなわち、見え方が非常に良よくなったときは「5」、見え方がやや良くなったときは「4」を入力する。見え方がやや悪くなったときは「2」、見え方が非常に悪くなったときは「1」をそれぞれ入力する。
つまり、数値「3」を基準にして、数値が大きい場合は見え方が良好になり、数字が小さい場合は見え方が劣悪になったことを意味する。
【0080】
被検者等は、それぞれの被視体30等に対して、最小5つ、最大9つの回答(数値)を行う。これにより、少なくとも1つ以上の被視体30等に対する複数の回答が得られる(特性情報収集工程S5b)。
被視体30等のそれぞれに対する回答(見え方の特性情報の生データ)は、記憶部12に記憶保存(収集)される。
【0081】
(集計・分析工程S6)
集計・分析工程S6では、まず、特性情報収集工程S5で得られた回答情報を集計して、被検者の見え方の変化の有無や程度(見え方の特性情報の集計情報)を求める(集計工程S6a)。
具体的には、演算処理部11が記憶部12に記憶された回答(数値)を演算処理し、例えば平均値、最頻値、最大値、最小値、分散値、偏差等の集計情報を算出する。また、各数値が入力(回答)された頻度を算出する。「3」以外の数値が入力(回答)された頻度や、「1」か「2」が入力された頻度、「4」か「5」が入力された頻度を算出する。
【0082】
図13は、SDチャート分析表Rを示す図である。
図13は、黄色光LAYを用いた際の被視体30,50,80の見え方の特性情報をチャート表示した一例である。
次いで、演算処理部11は、質問項目や回答(数値)をグラフ化・チャート化した分析表(見え方の特性情報の分析情報)を作成する(分析工程S6b)。具体的には、演算処理部11が集計情報を演算処理し、SDチャート分析表R等の分析情報(アウトプットイメージ)を作成する。
演算処理部11は、SDチャート分析表Rに加えて、円グラフ、レーザチャート、マトリックス等の分析表を作成してもよい。
【0083】
(出力工程S7)
最後に、出力工程S7では、集計・分析工程S6で得られた集計情報や分析情報(各種演算処理の結果)を外部出力する。演算処理部11は、被検者の見え方の変化の程度(見え方の特性情報)として、集計情報や分析情報をディスプレイ13に表示する。集計情報や分析情報を印刷プリンタ16で印刷出力してもよい。
具体的には、集計情報として、例えば平均値、最頻値、分散値等を出力する。また、分析情報として、SDチャート等の分析表を出力する。
【0084】
(再実施判断工程S8)
再実施判断工程S8では、上述した特性情報収集方法を再実施するか否かを判断する。
例えば、被検者の被視体30等に対する見え方が殆ど変わらなかった場合は、特性情報収集方法を再び実施する。つまり、集計・分析工程S6で求めた集計情報に基づいて、特性情報収集方法を再び実施するか否かを判断する。
具体的には、集計情報のうち、「3」以外の数値が入力された頻度に基づいて判断する。上記頻度が閾値(例えば10%)未満の場合は、特性情報収集方法を再び実施する。一方、上記頻度が閾値(例えば10%)以上の場合は、特性情報収集方法を終了する。この閾値は、任意に設定できる。
【0085】
例えば、所定光環境作出工程S3で使用された所定光L1の種類数に基づいて、特性情報収集方法を再び実施するか否かを判断する。
カラーライト20から照射可能な所定光L1の種類数を予め記憶し、所定光環境作出工程S3の実施回数が所定光L1の種類数と一致するまで、特性情報収集方法を再実施する。
具体的には、カラーライト20から照射可能な所定光L1が例えば5種類の場合は、所定光環境作出工程S3の実施回数が5回未満では、特性情報収集方法を再び実施する。一方、光環境作出工程S3の実施回数が5回になると、特性情報収集方法を終了する。カラーライト20から照射可能な所定光L1の種類数は、任意に設定できる。
【0086】
(所定光変更工程S9)
特性情報収集方法を再実施すると判断したときは、所定光変更工程S9において、カラーライト20の照射光(所定光L1、光LA)を黄色光LAYから例えばマゼンタ色光LAMに変更する。
そして、所定光環境作出工程S3において、カラーライト20から被検者に向けてマゼンタ色光LAM等を照射する。所定光環境作出工程S3において、被検者が変更後の所定光L1(新たな所定光環境)に順応するように、カラーライト20が点灯するパソコン10の正面に被検者を約1分以上滞在させる(明順応時間経過後)。
続けて、第二被視体呈示工程S4~出力工程S7を行う。
特性情報収集方法の再実施において、白色光環境作出工程S1と被視体呈示工程S2は省略してもよいし、再実施してもよい。
【0087】
所定光変更工程S9において、光LAを黄色光LAYからシアン色光LACや緑色光LAG等に変更してもよい。4つの光LA(黄色光LAY、マゼンタ色光LAM、シアン色光LAC、緑色光LAG)の順序(優先順位)は、任意に設定できる。
【0088】
被検者の障害の特性等に応じて、カラーライト20から照射される所定光L1として、有色光(光LA)に加えて、または有色光(光LA)に代えて、グレイ光(光LB)やグレイ有色光(光LBA)を用いてもよい。
光LB,LBAを用いるときは、所定光環境作出工程S3において、室内Hでカラーライト20のみを輝度0.001~5cd/m2で点灯させる。ディスプレイ13の輝度も0.001~5cd/m2に変更する。
光LB,LBAを用いるときは、被検者が所定光環境に順応(暗順応)するように、カラーライト20が点灯するパソコン10の正面に被検者を約10~30分程度滞在させる(暗順応時間経過)。
【0089】
視覚認知機能に偏りを有する者は、網膜Rにグレイ光(光LB)やグレイ有色光(光LBA)が入射されると、例えば眩しさが抑えられたように感じる場合がある。被検者によっては、被視体30等の見え方も変わる場合がある。網膜Rにグレイ有色光(光LBA)が入射された場合には、有色光(光LA)が入射されたときと同様の見え方の変化を感じる場合がある。
【0090】
以上の工程を経ることにより、専門的な知識等を有する者によらずに、また被検者の主観をできるだけ排除して、被検者の見え方の特性情報を収集することができる。さらに、被検者の見え方の特性情報を集計し、分析することもできる。
【0091】
被視体30等の見え方は、被検者の光感受性が強く影響している。光感受性に偏り(光や色に対する感覚の過敏・鈍麻の有無・強弱・ばらつき等)があると、文字や立体物等の見え方が健常者とは異なるものになってしまうと思われる。もっとも、見え方そのものは、本人の自覚がない場合が多い。しかし、見え方が変化すれば、被検者はそれを自覚(顕在化)することができる。
【0092】
そこで、本発明の実施形態に係る特性情報収集方法および特性情報収集装置1は、視覚認知機能(光感受性)に偏りがある者の「見え方」が変化しやすい環境を作出し、順応時間経過後に「見え方」が変化しやすい視認体30等を呈示する。
そして、被検者から「見え方」の変化の態様・程度に係る「見え方の特性情報」を収集する。このとき、見え方の変化の程度・態様を、心理統計学的手法(SD法等)を用いて数値化して収集する。
したがって、被検者の「見え方の特性情報」を客観的・定量的に収集できる。
【0093】
また、被検者の「見え方の特性情報」を集計・分析・出力する。これにより、被検者の視覚認知機能(光感受性)の偏りを早期発見等するための基礎資料を提供できる。したがって、視覚認知機能(光感受性)に偏りがある者の視覚認知機能の偏りを効果的に改善・矯正するトレーニング方法の作成・実施も可能になる。
よって、特性情報収集装置1およびこれを用いた特性情報収集方法は、各種産業や教育、交通安全などの幅広い分野において、安価で簡単に供給される。
【0094】
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0095】
本発明の特性情報収集方法および特性情報収集方法は、特性情報収集装置1を用いる場合に限らない。所定視認性要素を含む被視体30~80を被検者の面前に直接呈示し、白色光環境と所定光環境における被視体30~80の見え方の変化の程度を収集等できればよい。
【0096】
特性情報収集装置1は、デスクトップ型のパソコン10に限らず、ラップトップパソコンやノートパソコンを用いてもよい。特性情報収集装置1は、タブレット端末やスマートフォン、携帯端末を用いてもよい。カラーライト20は、タブレット端末やスマートフォン等のフラッシュライト(カメラ撮影用ライト)であってもよい。
【0097】
室内照明装置(第一光学部)25は、シーリングライトに限らない。フロアライトやデスクライト、ハンディライト等であってもよい。
自然光が遮断された室内Hにおいて、カラーライト20から白色光L0を照射してもよい。つまり、室内照明装置25に代えて、カラーライト20を第一光学部(白色光環境作出工程S1の光源)としても機能させてもよい。
白色光L0は、各種照明器具から照射される人工光に限らず、自然光(太陽光)であってもよい。例えば、室内照明装置25等を用いずに、窓から室内に自然光が入射する環境にパソコン10を配置してもよい。つまり、特性情報収集装置1は、室内照明装置(第一光学部)25を備えないこともありえる。
白色光環境は、被検者がディスプレイ13に表示された画像を支障なく(眩しさ等を感じずに)注視できる環境であればよい。野外の自然光(太陽光)は輝度が高く、被検者にとって刺激が強すぎる場合が多いので、避けるのが好ましい。
【0098】
カラーライト20(第二光学部)は、デスクライトに限らない。シーリングライトやフロアライト等であってもよい。
室内照明装置25の点灯色を白色(白色光L0)から黄色等(所定光L1)に変化させて、白色光環境と所定光環境をそれぞれ作出してもよい。つまり、室内照明装置25を、第二光学部(所定光環境作出工程S3の光源)として機能させてもよい。
所定光L1は、各種照明器具から照射される人工光に限らず、自然光(太陽光)を利用してもよい。例えば、室内の窓ガラスを着色したり、窓ガラスにカラーフィルターを貼り付けたりして、室内Hを所定光環境にしてもよい。
【0099】
カラーライト20に代えて、カラーレンズ眼鏡等を用いてもよい。例えば、イエローレンズ眼鏡、ピンク(マゼンタ)レンズ眼鏡、スカイブルー(シアン)レンズ眼鏡、グリーンレンズ眼鏡、グレイレンズ眼鏡を用いることができる。各カラーレンズの濃度は、10%から50%(10F~50F)が好ましい。各カラーレンズの濃度は、50%から85%(50F~85F)であってもよい。
色が異なるカラーレンズを重ねて使用してもよい。カラーレンズ眼鏡に限らず、コンタクトレンズ、ゴーグル等であってもよい。
また、グレイレンズ眼鏡を装着した被検者に向けてカラーライト20から光Lを照射してもよい。これにより、グレイ有色光LBAを被検者の網膜Rに入射できる。
【0100】
第二光学部は、装着型光学機器(眼鏡等)、非装着型光学機器(ランプ、照明装置等)のいずれであってもよい。装着型光学機器と非装着型光学機器が混在してもよい。
【0101】
第一光学部および第二光学部として、パソコン10のディスプレイ13を用いてもよい。つまり、カラーライト20や室内照明装置25に代えて、またはカラーライト20や室内照明装置25に加えて、ディスプレイ13を第一光学部(白色光環境作出光学工程S1の光源)や第二光学部(所定光環境作出工程S3の光源)として機能させてもよい。
ディスプレイ13から白色光L0や所定光L1を照射する。例えば、ディスプレイ13に表示された被視体30等以外の全背景を白色(白色光L0)から黄色等(所定光L1)に変化させる。例えば、ディスプレイ13の中央部13aを白色(白色光L0)にし、外周部13bのみを白色から黄色等(所定光L1)に変化させる。
中央部13aは被視体30等が表示される表示領域(被視体30を中心とする領域)であり、外周部13bはディスプレイ13の枠に沿う表示領域である。外周部13bはディスプレイ13の左右両縁、上下両縁、四隅等であってもよい。
【0102】
所定光L1(光LA)は、黄色光LAY、マゼンタ色光LAM、シアン色光LAC、緑色光LAGに加えて、例えば赤色光や青色光を用いてもよい。
グレイ光LBやグレイ有色光LBAに加えて、500nm以下の波長光をカットした光や400nm以下の波長光をカットした光(遮光メガネ:Anti-glare eyeglasses)を用いてもよい。
【0103】
被検者の網膜Rの周辺視野領域R2のみに所定光L1を入射させる場合に限らない。網膜Rの全域(中心視野領域R1、周辺視野領域R2)に所定光L1を入射させたり、中心視野領域R1のみに所定光L1を入射させたりしてもよい。
【0104】
被視体呈示部は、ディスプレイ13に限らず、プロジェクタや印刷プリンタ16、3Dプリンタ等であってもよい。つまり、被視体30~80の実物を被検者の面前に呈示してもよい。
出力部は、ディスプレイ13に限らず、印刷プリンタ16であってもよい。
【0105】
所定光環境作出工程S3の後に、再び被視体30等の呈示を行う(第二被視体呈示工程S4)場合について説明したが、これに限らない。被視体呈示工程S2の工程中に、白色光環境から所定光環境に変化させてもよい。例えば、被検者が被視体70を注視している最中に、カラーライト20を点灯して、白色光環境から所定光環境に移行してもよい。
【0106】
出力工程S7は、集計・分析工程S6の後に必ず行う必要はない。複数の所定光L1を使用した特性情報収集方法においては、集計・分析工程S6を複数回行い、最後に出力工程S7を1回だけ行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 特性情報収集装置
10 パソコン
11 演算処理部(収集部、集計分析部)
12 記憶部
13 ディスプレイ(被視体呈示部、出力部、第一光学部、第二光学部)
13a 中心部
13b 外周部
14a キーボード(情報受付部)
14b マウス(情報受付部)
16 印刷プリンタ
17 特性情報収集プログラム
18 被視体データベース
20 カラーライト(第二光学部、第一光学部)
25 室内照明装置(第一光学部、第二光学部)
30 被視体
31 カウンター(所定視認性要素)
32 アパーチャ(所定視認性要素)
33 ジョイント(所定視認性要素)
34 エイペックス(所定視認性要素)
35 バーテックス(所定視認性要素)
36 クロッチ(所定視認性要素)
40 被視体
41 歪み(所定視認性要素)
50 被視体
51 欠損部位(所定視認性要素)
60 被視体
61 欠損部位(所定視認性要素)
70 被視体
71 ゴルフボール(被視体)
72 凹凸(所定視認性要素)
73 ブラインドカーテン(被視体)
74 陰影(所定視認性要素)
80 立体物(被視体)
81 質感(表面性状、所定視認性要素)
L0 白色光
L1 所定光
LA 有色光(所定光)
LAY 黄色光(所定光)
LAM マゼンタ色光(所定光)
LAC シアン色光(所定光)
LAG 緑色光(所定光)
LB グレイ光(所定光)
LBA グレイ有色光(所定光)
LBY グレイ黄色光(所定光)
LBM グレイマゼンタ色光(所定光)
LBC グレイシアン色光(所定光)
LBG グレイ緑色光(所定光)
R 網膜
R1 中心視野領域
R2 周辺視野領域
VL L視細胞(Long錐体細胞)
VM M視細胞(Middle錐体細胞)
VS S視細胞(Short錐体細胞)
VR R視細胞(桿体細胞)
H 室内
Q 回答フォーム
【要約】
【課題】被検者の見え方の特性情報を収集できる特性情報収集方法を提供する。
【解決手段】特性情報収集方法は、白色光が被検者の網膜に入射する白色光環境において所定視認性要素を含む被視体を前記被検者に一つ以上呈示する第一被視体呈示工程と、白色光とは分光分布および輝度の少なくとも一方が異なる所定光が被検者の網膜に入射する所定光環境を作出する所定光環境作出工程と、所定光環境において被視体を被検者に再度呈示する第二被視体呈示工程と、第一被視体呈示工程と第二被視体呈示工程における被視体の見え方に関する特性情報を被検者から受け付ける情報受付工程と、被検者から受け付けた特性情報を収集する収集工程と、を有する。
【選択図】
図11