(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-03
(45)【発行日】2023-02-13
(54)【発明の名称】光美容又は光治療用有機電界発光シート
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20230206BHJP
【FI】
A61N5/06
(21)【出願番号】P 2020552547
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2019032341
(87)【国際公開番号】W WO2020084876
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2018201840
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】呉屋 剛
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼田 健二
(72)【発明者】
【氏名】森井 克行
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-214588(JP,A)
【文献】特開2016-152831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/06
H10K50/10
H05B33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光美容又は光治療用途に使用される有機電界発光シートであって、
該有機電界発光シートは、シート状のフレキシブル基板上に形成された陰極と、陽極との間に複数の層が積層された構造を有
し、かつ金属酸化物層を有する有機電界発光素子を含んで構成され、厚みが10~100μmである
ことを特徴とする光美容又は光治療用有機電界発光シート。
【請求項2】
前記有機電界発光素子は、シート状のフレキシブル基板上に形成された陰極と、陽極との間に金属酸化物層を有することを特徴とする請求項1に記載の光美容又は光治療用有機電界発光シート。
【請求項3】
前記有機電界発光シートは、更に薄膜電池を含んで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の光美容又は光治療用有機電界発光シート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の光美容又は光治療用有機電界発光シートを含んで構成される光美容器具。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の光美容又は光治療用有機電界発光シートを含んで構成される光治療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光美容又は光治療用有機電界発光シートに関する。より詳しくは、肌への光の照射による美容や怪我・疾患の治療に利用される有機電界発光シートに関する。
【背景技術】
【0002】
肌への光の照射を美容や怪我・疾患の治療に利用する試みがなされており、例えば、光による細胞への作用を利用してシミやしわを除去すること等を目的として肌に光を照射する美容器具が開示されている(特許文献1、2参照)。このような美容器具としては、特許文献1のように、光を照射する器具を肌に近づけて使用するものや、特許文献2のように発光ダイオードを配置したマスクを顔に装着して使用するもの等が知られているが、肌には凹凸があり、また、肌の状態は部位によって異なるため、これらの器具では肌に均一に光を照射することや、肌の状態に合わせて照射する光を調整することが難しいという課題があった。
【0003】
このような課題に対し、光による治療を受ける領域の表面に沿うように適合される、有機発光半導体を用いた光を放射する携帯用機器や、患者の体の非平面状部分に従うようになっている光治療用パッチ、フレキシブル基板と有機半導体又は量子ドットを含む発光素子とを有する生体適用光照射デバイスを保護袋内に有する生体適用光照射デバイスの封止体等が提案されている(特許文献3~5参照)。また、有機電界発光素子を含むシートを肌に発布して光を照射し、肌を活性化することで美容効果や治療効果を得る方法が提案されている(特許文献6、非特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-154229号公報
【文献】特開2005-27702号公報
【文献】特許第4651281号公報
【文献】国際公開第00/015296号公報
【文献】国際公開第17/038655号公報
【文献】特開2015-142717号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】ヨンミン ジェオン(Yongmin Jeon)外7名「アドバンスト マテリアルズ テクノロジーズ(Advanced Materials Technologies)」、2018年、1700391
【文献】トモユキ ヨコタ(Tomoyuki Yokota)外9名「サイエンス アドバンシス(Science Advances)」、2016年、第2号、e1501856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、光美容や光治療用途に使用するための様々な光照射装置が提案されているが、いずれも凹凸のある肌への追従性や装着感の点で充分とはいえず、改善の余地のあるものであった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、肌への追従性や装着感に優れた光美容又は光治療用の光照射シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、肌への追従性や装着感に優れた光照射シートについて検討し、光源としてシート状のフレキシブル基板上に複数の層が積層された構造を有し、厚みが10~100μmの有機電界発光素子を用いることで、肌への追従性や装着感に優れた光照射シートとなることを見出した。更に本発明者は、有機電界発光素子として、シート状のフレキシブル基板上に形成された陰極と陽極との間に複数の層が積層された構造を有する、いわゆる逆構造の有機電界発光素子を用いると、素子寿命にも優れた有機電界発光素子を含むシートとなることも見出し、本発明に到達したものである。
【0009】
すなわち本発明は、光美容又は光治療用途に使用される有機電界発光シートであって、該有機電界発光シートは、シート状のフレキシブル基板上に複数の層が積層された構造を有し、厚みが10~100μmの有機電界発光素子を含んで構成されることを特徴とする光美容又は光治療用有機電界発光シートである。
【0010】
上記有機電界発光素子は、シート状のフレキシブル基板上に形成された陰極と陽極との間に複数の層が積層された構造を有することが好ましい。
【0011】
上記有機電界発光素子は、シート状のフレキシブル基板上に形成された陰極と陽極との間に金属酸化物層を有することが好ましい。
【0012】
上記有機電界発光シートは、更に薄膜電池を含んで構成されることが好ましい。
【0013】
上記有機電界発光シートは、厚みが650μm以下であることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートを含んで構成される光美容器具でもある。
【0015】
本発明はまた、本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートを含んで構成される光治療器具でもある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートは、肌への追従性が高く、装着感にも優れたものであることから、光照射による美容用途や怪我・疾患の治療等のために肌に発布する等して使用するシートとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1で作製した有機電界発光素子1の積層構造を示した図である。
【
図2】実施例1で作製した有機電界発光素子1に、アルゴン雰囲気下で0V~5Vまでの直流電圧を印加した時の電圧-輝度特性を示した図である。
【
図3】実施例1で作製した有機電界発光素子1に、アルゴン雰囲気下で0V~5Vまでの直流電圧を印加した時の電流密度-電流効率特性を示した図である。
【
図4】実施例1で作製した有機電界発光素子1に、アルゴン雰囲気下で0V~5Vまでの直流電圧を印加した時の発行スペクトルを示した図である。
【
図5】実施例1で作製した有機電界発光素子1に、放射照度10mW/cm
2相当の5,000cd/m
2で定輝度連続駆動させながら表面温度測定を行った結果を示した図である。
【
図6】実施例、比較例で作製した有機電界発光素子のシートに外部取出し用電極を取り付けたものの写真である。
【
図7】実施例、比較例で作製した有機電界発光素子のシートに外部取出し用電極を取り付けたものを被験者の皮膚へ直接装着した様子を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0019】
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートは、シート状のフレキシブル基板上に複数の層が積層された構造を有し、厚みが10~100μmの有機電界発光素子を含んで構成されることを特徴とする。
光美容又は光治療用シートの光源として、厚みが薄く、フレキシブルであるという特徴を有する有機電界発光素子を用いることで肌への追従性が高く、装着感にも優れた発光シートとすることができる。
光美容又は光治療用有機電界発光シートが含む有機電界発光素子の厚みは10~100μmであることが好ましい。より好ましくは、10~80μmであり、さらに好ましくは10~50μmであり、特に好ましくは、10~30μmである。
有機電界発光素子の厚みはデジタルノギスにより測定することができる。
【0020】
<有機電界発光素子>
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートを構成する有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に複数の有機化合物層が積層された構造を有することが好ましい。本発明の有機電界発光素子の構成は特に制限されないが、陰極、電子注入層及び/又は電子輸送層、発光層、正孔輸送層及び/又は正孔注入層、陽極の各層をこの順に隣接して有する素子であることが好ましい。なお、これらの各層は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよい。
上記構成の有機電界素子において、素子が電子注入層、電子輸送層のいずれか一方のみを有する場合には、当該一方の層が陰極と発光層とに隣接して積層されることになり、素子が電子注入層と電子輸送層の両方を有する場合には、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層の順にこれらの層が隣接して積層されることになる。また、素子が正孔輸送層、正孔注入層のいずれか一方のみを有する場合には、当該一方の層が発光層と陽極とに隣接して積層されることになり、素子が正孔輸送層と正孔注入層の両方を有する場合には、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順にこれらの層が隣接して積層されることになる。
【0021】
上記有機電界発光素子は、シート状のフレキシブル基板上に陽極が形成された順構造の素子であってもよく、基板上に陰極が形成された逆構造の素子であってもよいが、シート状のフレキシブル基板上に形成された陰極と陽極との間に複数の層が積層された構造を有する逆構造の素子であることが好ましい。
光美容又は光治療用有機電界発光シートを直接肌に発布して使用する場合、素子は肌から放出される水蒸気の影響を受けやすくなる。基板上に陰極が形成され、その上に複数の層が積層された、いわゆる逆構造の有機電界発光素子は、基板上に陽極が形成され、その上に複数の層が積層された順構造の有機電界発光素子に比べて水蒸気に対する耐性が高いため、順構造の素子に比べて層の数がより少ない積層構造やより厚みの薄い封止でも人体に発布して使用される際に要求される素子寿命を達成できる。このため、逆構造の有機電界発光素子を用いることで、必要な素子寿命を有しながらよりフレキシブル性に優れ、肌への追従性がより高い有機電界発光シートとすることができる。
【0022】
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートを構成する有機電界発光素子は、更に陰極と陽極との間に金属酸化物層を有する有機無機ハイブリッド型の有機電界発光素子であることが好ましい。金属酸化物を素子の材料として用いることで、より水蒸気への耐性の高い有機電界発光素子とすることができる。
本発明における有機電界発光素子は、基板上に隣接して陰極が形成され、陽極と陰極との間に金属酸化物層を有する有機無機ハイブリッド型の有機電界発光素子であって、発光層と陽極とを有し、陰極と発光層との間に、電子注入層と、必要に応じて電子輸送層とを有し、陽極と発光層との間に正孔輸送層及び/又は正孔注入層を有する構成の素子であることが好ましい。本発明における有機電界発光素子は、これらの各層の間に他の層を有していてもよいが、これらの各層のみから構成される素子であることが好ましい。すなわち、陰極、電子注入層、必要に応じて電子輸送層、発光層、正孔輸送層及び/又は正孔注入層、陽極の各層がこの順に隣接して積層された素子であることが好ましい。なお、これらの各層は、1層からなるものであってもよく、2層以上からなるものであってもよい。
【0023】
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートを構成する有機電界発光素子において、発光層を形成する材料としては、発光層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いることができ、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよく、これらを混合して用いてもよい。
なお、本発明において低分子材料とは、高分子材料(重合体)ではない材料を意味し、分子量が低い有機化合物を必ずしも意味するものではない。
【0024】
上記発光層を形成する高分子材料としては、例えば、トランス型ポリアセチレン、シス型ポリアセチレン、ポリ(ジ-フェニルアセチレン)(PDPA)、ポリ(アルキル,フェニルアセチレン)(PAPA)のようなポリアセチレン系化合物;ポリ(パラ-フェンビニレン)(PPV)、ポリ(2,5-ジアルコキシ-パラ-フェニレンビニレン)(RO-PPV)、シアノ-置換-ポリ(パラ-フェンビニレン)(CN-PPV)、ポリ(2-ジメチルオクチルシリル-パラ-フェニレンビニレン)(DMOS-PPV)、ポリ(2-メトキシ,5-(2’-エチルヘキソキシ)-パラ-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)のようなポリパラフェニレンビニレン系化合物;ポリ(3-アルキルチオフェン)(PAT)、ポリ(オキシプロピレン)トリオール(POPT)のようなポリチオフェン系化合物;ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)、ポリ(ジオクチルフルオレン-アルト-ベンゾチアジアゾール)(F8BT)、α,ω-ビス[N,N’-ジ(メチルフェニル)アミノフェニル]-ポリ[9,9-ビス(2-エチルヘキシル)フルオレン-2,7-ジル](PF2/6am4)、ポリ(9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレニル-オルト-コ(アントラセン-9,10-ジイル)のようなポリフルオレン系化合物;ポリ(パラ-フェニレン)(PPP)、ポリ(1,5-ジアルコキシ-パラ-フェニレン)(RO-PPP)のようなポリパラフェニレン系化合物;ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)のようなポリカルバゾール系化合物;ポリ(メチルフェニルシラン)(PMPS)、ポリ(ナフチルフェニルシラン)(PNPS)、ポリ(ビフェニリルフェニルシラン)(PBPS)のようなポリシラン系化合物;更には特願2010-230995号、特願2011-6457号に記載のホウ素化合物系高分子材料等が挙げられる。
【0025】
上記発光層を形成する低分子材料としては、例えば、配位子に2,2’-ビピリジン-4,4’-ジカルボン酸を持つ、3配位のイリジウム錯体、ファクトリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、8-ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq3)、トリス(4-メチル-8キノリノレート) アルミニウム(III)(Almq3)、8-ヒドロキシキノリン 亜鉛(Znq2)、(1,10-フェナントロリン)-トリス-(4,4,4-トリフルオロ-1-(2-チエニル)-ブタン-1,3-ジオネート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)3(phen))、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィン プラチナム(II)のような各種金属錯体;ジスチリルベンゼン(DSB)、ジアミノジスチリルベンゼン(DADSB)のようなベンゼン系化合物;ナフタレン、ナイルレッドのようなナフタレン系化合物;フェナントレンのようなフェナントレン系化合物;クリセン、6-ニトロクリセンのようなクリセン系化合物;ペリレン、N,N’-ビス(2,5-ジ-t-ブチルフェニル)-3,4,9,10-ペリレン-ジ-カルボキシイミド(BPPC)のようなペリレン系化合物;コロネンのようなコロネン系化合物;アントラセン、ビススチリルアントラセンのようなアントラセン系化合物;ピレンのようなピレン系化合物;4-(ジ-シアノメチレン)-2-メチル-6-(パラ-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)のようなピラン系化合物;アクリジンのようなアクリジン系化合物;スチルベンのようなスチルベン系化合物;2,5-ジベンゾオキサゾールチオフェンのようなチオフェン系化合物;ベンゾオキサゾールのようなベンゾオキサゾール系化合物;ベンゾイミダゾールのようなベンゾイミダゾール系化合物;2,2’-(パラ-フェニレンジビニレン)-ビスベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール系化合物;ビスチリル(1,4-ジフェニル-1,3-ブタジエン)、テトラフェニルブタジエンのようなブタジエン系化合物;ナフタルイミドのようなナフタルイミド系化合物;クマリンのようなクマリン系化合物;ペリノンのようなペリノン系化合物;オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物;アルダジン系化合物;1,2,3,4,5-ペンタフェニル-1,3-シクロペンタジエン(PPCP)のようなシクロペンタジエン系化合物;キナクリドン、キナクリドンレッドのようなキナクリドン系化合物;ピロロピリジン、チアジアゾロピリジンのようなピリジン系化合物;2,2’,7,7’-テトラフェニル-9,9’-スピロビフルオレンのようなスピロ化合物;フタロシアニン(H2Pc)、銅フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物;更には特開2009-155325号公報および特願2010-230995号、特願2011-6458号に記載のホウ素化合物材料等が挙げられる。また、ケミプロ化成社の製品であるKHLHS-04、KHLDR-03等も用いることができる。
【0026】
上記発光層の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましい。より好ましくは、20~100nmであり、更に好ましくは、40~100nmである。
発光層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
【0027】
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートを構成する有機電界発光素子が、電子輸送層を有する場合、その材料としては、電子輸送層の材料として通常用いることができるいずれの化合物も用いるができ、これらを混合して用いてもよい。
電子輸送層の材料として用いることができる化合物の例としては、トリス-1,3,5-(3’-(ピリジン-3’’-イル)フェニル)ベンゼン(TmPyPhB)のようなピリジン誘導体、(2-(3-(9-カルバゾリル)フェニル)キノリン(mCQ))のようなキノリン誘導体、2-フェニル-4,6-ビス(3,5-ジピリジルフェニル)ピリミジン(BPyPPM)のようなピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、バソフェナントロリン(BPhen)のようなフェナントロリン誘導体、2,4-ビス(4-ビフェニル)-6-(4’-(2-ピリジニル)-4-ビフェニル)-[1,3,5]トリアジン(MPT)のようなトリアジン誘導体、3-フェニル-4-(1’-ナフチル)-5-フェニル-1,2,4-トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル-1,3,4-オキサジアゾール)(PBD)のようなオキサジアゾール誘導体、2,2’,2’’-(1,3,5-ベントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)(TPBI)のようなイミダゾール誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、ビス[2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ)2)、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)などに代表される各種金属錯体、2,5-ビス(6’-(2’,2’’-ビピリジル))-1,1-ジメチル-3,4-ジフェニルシロール(PyPySPyPy)等のシロール誘導体に代表される有機シラン誘導体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、Alq3のような金属錯体、TmPyPhBのようなピリジン誘導体が好ましい。
【0028】
上記電子注入層としては、窒素含有化合物から形成される窒素含有膜からなる層を用いることができる。
窒素含有膜からなる層を形成する窒素含有化合物としては、例えば、ポリビニルピロリドンのようなピロリドン類、ポリピロールのようなピロール類又はポリアニリンのようなアニリン類、又はポリビニルピリジンのようなピリジン類、同様に、ピロリジン類、イミダゾール類、ピペリジン類、ピリミジン類、トリアジン類などの含窒素複素環を有する化合物や、アミン化合物が挙げられる。
【0029】
上記窒素含有化合物としてはまた、窒素含有率の高い化合物が好ましく、ポリアミン類が好ましい。ポリアミン類は、化合物を構成する全原子数に対する窒素原子数の比率が高いため、有機電界発光素子を高い電子注入性と駆動安定性を有するものとする点から適している。
ポリアミン類としては、塗布により層を形成することができるものが好ましく、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。低分子化合物としては、ジエチレントリアミン、ペンタメチルジエチレントリアミンのようなポリアルキレンポリアミンが好適に用いられ、高分子化合物では、ポリアルキレンイミン構造を有する重合体が好適に用いられる。特にポリエチレンイミンが好ましい。中でも、窒素含有化合物が、ポリエチレンイミン又はジエチレントリアミンであることは本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、ここで低分子化合物とは、高分子化合物(重合体)ではない化合物を意味し、分子量の低い化合物を必ずしも意味するものではない。
【0030】
上記窒素含有膜の平均厚さは、特に限定されないが、0.5~10nmであることが好ましい。より好ましくは、1~5nmであり、更に好ましくは、1~3nmである。
発光層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により測定することができる。
【0031】
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートを構成する有機電界発光素子が、正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層として用いる正孔輸送性有機材料には、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン-アリールアミン共重合体、フルオレン-ビチオフェン共重合体、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p-フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
またこれらの化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0032】
上記p型の低分子材料としては、例えば、1,1-ビス(4-ジ-パラ-トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’-ビス(4-ジ-パラ-トリルアミノフェニル)-4-フェニル-シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’-トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’-テトラフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD1)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(4-メトキシフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトキシフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(TPD3)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’-テトラフェニル-パラ-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(パラ-トリル)-パラ-フェニレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラ(メタ-トリル)-メタ-フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N-イソプロピルカルバゾール、N-フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4-ジ-パラ-トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OxZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、m-MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1-フェニル-3-(パラ-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4-オキサジアゾール、2,5-ジ(4-ジメチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9-(4-ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン、2,7-ビス(2-ヒドロキシ-3-(2-クロロフェニルカルバモイル)-1-ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4-ジチオケト-3,6-ジフェニル-ピロロ-(3,4-c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t-ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられる。
【0033】
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートを構成する有機電界発光素子が、電子輸送層や正孔輸送層を有する場合、これらの層の平均厚さは、特に限定されないが、10~150nmであることが好ましい。より好ましくは、20~100nmであり、更に好ましくは、40~100nmである。
電子輸送層や正孔輸送層の平均厚さは、低分子化合物の場合は水晶振動子膜厚計により、高分子化合物の場合は接触式段差計により測定することができる。
【0034】
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートを構成する有機電界発光素子が金属酸化物層を有する場合、陰極から発光層までの間、陽極から発光層までの間のいずれか又は両方に金属酸化物層を有することになるが、陰極から発光層までの間との発光層から陽極までの間の両方に金属酸化物層を有することが好ましい。陰極から発光層までの間の金属酸化物層を第1の金属酸化物層、陽極から発光層までの間の金属酸化物層を第2の金属酸化物層とすると、第1の金属酸化物層は電子注入層、第2の金属酸化物層は正孔注入層として用いられることが好ましい。本発明における有機電界発光素子の好ましい素子の構成の一例を表すと、陰極、第1の金属酸化物層、窒素含有膜からなる層、発光層、正孔輸送層、第2の金属酸化物層、陽極がこの順に隣接して積層された構成である。なお、窒素含有膜からなる層と、発光層との間に必要に応じて電子輸送層を有していてもよい。金属酸化物層の重要性は、第1の金属酸化物層の方が高く、第2の金属酸化物層は、最低非占有分子軌道の極端に深い有機材料、例えば、HATCNでも置き換える事ができる。
【0035】
上記第1の金属酸化物層は、単体の金属酸化物膜の一層からなる層、もしくは、単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層である半導体もしくは絶縁体積層薄膜の層である。金属酸化物を構成する金属元素としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、インジウム、ガリウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ケイ素からなる群から選ばれる。これらのうち、積層又は混合金属酸化物層を構成する金属元素の少なくとも一つが、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、ハフニウム、ケイ素、チタン、亜鉛からなる層であることが好ましく、その中でも単体の金属酸化物ならば、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛からなる群から選ばれる金属酸化物を含むことが好ましい。
【0036】
上記単体又は二種類以上の金属酸化物を積層及び/又は混合した層の例としては、酸化チタン/酸化亜鉛、酸化チタン/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化ケイ素、酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化カルシウム/酸化アルミニウムなどの金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものや、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化マグネシウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ジルコニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化アルミニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ハフニウム、酸化チタン/酸化亜鉛/酸化ケイ素、酸化インジウム/酸化ガリウム/酸化亜鉛などの三種の金属酸化物の組合せを積層及び/又は混合したものなどが挙げられる。これらの中には、特殊な組成として良好な特性を示す酸化物半導体であるIGZOやエレクトライドである12CaO・7Al2O3も含まれる。
これら第1の金属酸化物層は、電子注入層ともいえ、また、電極(陰極)ともいえる。
なお、本発明においては、シート抵抗が100Ω/□より低い物は導電体、シート抵抗が100Ω/□より高い物は半導体または絶縁体として分類される。従って、透明電極として知られているITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)等の薄膜は、導電性が高く半導体または絶縁体の範疇に含まれないことから上記第1の金属酸化物層を構成する一層に該当しない。
【0037】
また上記第1の金属酸化物層は、金属酸化物の層を含む限り、金属酸化物の層と金属単体の層とが積層したものであってもよい。
金属酸化物を構成する元素は上記のとおりである。
金属単体の層の材料となる金属としては、銀、パラジウム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0038】
上記第1の金属酸化物層が、金属酸化物の層と金属単体の層とが積層したものである場合、金属酸化物の層と金属単体の層とが交互に積層したものであることが好ましい。この場合、金属酸化物の層と金属単体の層の数は、金属酸化物の層が2層であり、金属単体の層が1層であることが好ましい。すなわち、1つの金属単体の層が2つの金属酸化物の層に挟まれた構造が好ましい。
【0039】
上記第2の金属酸化物層を形成する金属酸化物としては、特に制限されないが、酸化バナジウム(V2O5)、酸化モリブテン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ルテニウム(RuO2)等の1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とするものが好ましい。第2の金属酸化物層が酸化バナジウム又は酸化モリブテンを主成分とするものにより構成されると、第2の金属酸化物層が陽極から正孔を注入して発光層又は正孔輸送層へ輸送するという正孔注入層としての機能により優れたものとなる。また、酸化バナジウム又は酸化モリブテンは、それ自体の正孔輸送性が高いため、陽極から発光層又は正孔輸送層への正孔の注入効率が低下するのを好適に防止することもできるという利点がある。より好ましくは、酸化バナジウム及び/又は酸化モリブテンから構成されるものである。
【0040】
上記第1の金属酸化物層の平均厚さは、1nmから数μm程度まで許容できるが、低電圧で駆動できる有機電界発光素子とする点から、1~1000nmであることが好ましい。より好ましくは、2~100nmである。
上記第2の金属酸化物層の平均厚さは、特に限定されないが、1~1000nmであることが好ましい。より好ましくは、5~50nmである。
第1の金属酸化物層の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
第2の金属酸化物層の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
【0041】
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートを構成する有機電界発光素子において、陽極及び陰極としては、公知の導電性材料を適宜用いることができるが、光取り出しのために少なくともいずれか一方は透明であることが好ましい。公知の透明導電性材料の例としてはITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化インジウム)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化インジウム)などが上げられる。不透明な導電性材料の例としては、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、錫、インジウム、銅、銀、金、白金やこれらの合金などが挙げられる。
陰極としては、この中でも、ITO、IZO、FTOが好ましい。
陽極としては、これらの中でも、Au、Ag、Alが好ましい。
上記のように、一般に陽極に用いられる金属を陰極及び陽極に用いる事ができる事から、上部電極からの光の取り出しを想定する場合(トップエミッション構造の場合)も容易に実現でき、上記電極を種々選んでそれぞれの電極に用いる事ができる。例えば、下部電極としてAl、上部電極にITOなどである。
【0042】
上記陰極の平均厚さは、特に制限されないが、10~500nmであることが好ましい。より好ましくは、100~200nmである。陰極の平均厚さは、触針式段差計、分光エリプソメトリーにより測定することができる。
上記陽極の平均厚さは、特に限定されないが、10~1000nmであることが好ましい。より好ましくは、30~150nmである。また、不透過な材料を用いる場合でも、例えば平均厚さを10~30nm程度にすることで、トップエミッション型及び透明型の陽極として使用することができる。
陽極の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
【0043】
本発明における有機電界発光素子において、有機化合物から形成される層の成膜方法は特に限定されず、材料の特性に合わせて種々の方法を適宜用いることができるが、溶液にして塗布できる場合はスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いて成膜することができる。このうち、膜厚をより制御しやすいという点でスピンコート法やスリットコート法が好ましい。塗布しない場合や溶媒溶解性が低い場合は真空蒸着法や、ESDUS(Evaporative Spray Deposition from Ultra-dilute Solution)法などが好適な例として挙げられる。
【0044】
上記有機化合物から形成される層を、有機化合物溶液を塗布して形成する場合、有機化合物を溶解するために用いる溶媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン(DME)、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
これらの中でも、溶媒としては、非極性溶媒が好適であり、例えば、キシレン、トルエン、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
【0045】
上記陰極、陽極、及び、酸化物層は、スパッタ法、真空蒸着法、ゾルゲル法、スプレー熱分解(SPD)法、原子層堆積(ALD)法、気相成膜法、液相成膜法等により形成することができる。陽極、陰極の形成には、金属箔の接合も用いることができる。これらの方法は各層の材料の特性に応じて選択するのが好ましく、層ごとに作製方法が異なっていても良い。第2の金属酸化物層は、これらの中でも、気相製膜法を用いて形成するのがより好ましい。気相製膜法によれば、有機化合物層の表面を壊すことなく清浄にかつ陽極と接触よく形成することができ、その結果、上述したような第2の金属酸化物層を有することによる効果がより顕著なものとなる。
【0046】
上記有機電界発光素子の特性をさらに向上させる等の理由から、必要に応じて例えば正孔阻止層、電子阻止層などを有していてもよい。これらの層を形成するための材料としては、これらの層を形成するために通常用いられる材料を用い、また、これらの層を形成するために通常用いられる方法により層を形成することができる。
【0047】
また、積層構造の最後の電極を形成した後に、表面を保護するパッシベーション層をその上に形成してもよい。パッシベーション層の材料としてはこれらの層を形成するために通常用いられる材料を用いることができる。例えば、上述した正孔輸送層の材料及び/又は金属酸化物層の材料を用いることができるが、絶縁を保持できる組み合わせであればこれに限らない。
【0048】
上記パッシベーション層の平均厚さは、特に制限されないが、20~300nmであることが好ましい。より好ましくは、50~200nmである。
パッシベーション層の平均厚さは、水晶振動子膜厚計により成膜時に測定することができる。
【0049】
上記有機電界発光素子は、シート状のフレキシブル基板を使用する。
上記基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料が挙げられる。
また、上記樹脂材料の表面にエポキシ樹脂等のコーティングを施したものをフレキシブル基板として使用してもよい。
【0050】
上記基板の平均厚さは、10~150μmであることが好ましい。より好ましくは、10~50μmである。
基板の平均厚さはデジタルノギスにより測定することができる。
【0051】
上記有機電界発光素子は、パッシベーション層の上に更に封止層を有していてもよい。封止層を形成する材料としては上記シート状のフレキシブル基板の材料と同様のものを用いることができ、封止層の厚みも上記シート状のフレキシブル基板の厚みと同様であることが好ましい。
【0052】
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートを構成する有機電界発光素子に封止を施す場合、封止工程としては、通常の方法を適宜使用できる。例えば、不活性ガス中で封止容器を接着する方法や、有機電界発光素子の上に直接封止膜を形成する方法などが挙げられる。これらに加えて、水分吸収材を封入する方法を併用してもよい。
上述した逆構造の有機電界発光素子は、順構造の有機電界発光素子に比べると厳密な封止は必要ないが、必要であれば封止を施しても良い。
【0053】
上記有機電界発光素子は、基板がある側とは反対側に光を取り出すトップエミッション型のものであってもよく、基板がある側に光を取り出すボトムエミッション型のものであってもよい。
【0054】
<薄膜電池>
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートは、外部の電源と接続して使用されるものであってもよく、シート内に薄膜電池を含むものであってもよいが、シート内に薄膜電池を含むと外部の電源との接続なしで使用することができるため、携帯性等が向上し、より使用しやすいものとなる。
このように、有機電界発光シートが、更に薄膜電池とを含んで構成されることは本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートの好適な実施形態の1つである。
【0055】
上記薄膜電池としては、薄膜状の一次電池、二次電池のいずれも用いることができ、固体電解質を用いた薄膜状のリチウムイオン電池等を用いることができる。
【0056】
上記薄膜電池の正極活物質としては特に制限されず、例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiFePO4、LiCoPO4等のリチウム複合酸化物;TiS、MoS2等のリチウムを含有しない金属硫化物;等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0057】
上記薄膜電池の負極活物質としては特に制限されず、例えば、グラファイト等の炭素材料;V2O5等の金属酸化物;SiやSnの単体、合金、化合物等のリチウムとの合金を形成できる材料;等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0058】
上記薄膜電池の固体電解質としては特に制限されず、例えば、Li3N、LiI、Li3PO4、LiPO4-xNx等のリチウムの窒化物、ハロゲン化物、リン酸塩;Li2S-SiS2、Li2S-P2S5、Li2S-B2S3等のリチウム含有硫化物ガラス状固体電解質等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0059】
上記薄膜電池は、厚みが450μm以下であるものが好ましい。このような厚みの薄膜電池を使用することで本発明の有機電界発光シートの厚みを薄くすることができ、有機電界発光シートを肌への追従性により優れたものとし、肌に発布した際の違和感もより少なくすることができる。薄膜電池の厚みは、より好ましくは、100~300μmであり、更に好ましくは、50~100μmである。
薄膜電池の厚みは、デジタルマルチメーター、ノギスにより測定することができる。
【0060】
上記薄膜電池の製造方法は特に制限されないが、例えば、基板上に正極、固体電解質、負極の層をスパッタ法により順に積層すること等で製造することができる。
【0061】
<それ以外の要素>
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートは、有機電界発光素子や薄膜電池以外の要素を含んでいてもよい。それ以外の要素としては、皮膚とシート間の粘着層や接着層または、波長制御の為のカラーフィルター層、光取り出し向上のためのバッファ層、各電子部材の電気的接続の為の配線及び電源スイッチ、外観の為のパッケージング等が挙げられる。本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートは、これらの要素を1つ又は2つ以上含むことができる。
【0062】
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートは、厚みが650μm以下であることが好ましい。上記のように、本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートは有機電界発光素子以外の要素も含み得るものであるが、その場合にシート全体の厚みが650μm以下であると、肌への追従性により優れたものとなり、肌に発布した際の違和感もより少なくなる。有機電界発光シートの厚みは、より好ましくは、10~600μmであり、更に好ましくは、50~100μmである。
有機電界発光シートの厚みは、デジタルマルチメーター、ノギスにより測定することができる。
【0063】
本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートは、肌への追従性が高く、かつ、素子寿命にも優れたシートであるため、肌のシミやシワの除去等を目的とした光美容用途や怪我や疾患の治療を目的とした医療用途に好適に用いることができる。
このような本発明の光美容又は光治療用有機電界発光シートを含んで構成される光美容器具や光治療器具もまた、本発明の1つである。
【実施例】
【0064】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0065】
1.有機電界発光素子の作製
(実施例1)
以下に示す方法により、有機電界発光素子1を製造した。
[工程1]
基板1として、尾池工業社から購入した厚さ25μmのバリア層付PETフィルム上に、日本化薬社製のSU-8をスピンコートにより塗布し、100℃に加熱されたホットプレート上でベークした。
[工程2]
基板1をスパッタリング装置にセットし、基板1上に、亜鉛金属をターゲットとし、反応ガスとして酸素をキャリアガスとしてアルゴンを用いたスパッタ法により、平均厚さ20nmの酸化亜鉛(ZnO)層を形成した。その後、真空蒸着装置にセットし、平均厚さ8nmの銀層を形成した。その後、再びスパッタリング装置にセットし、平均厚さ2nmの酸化亜鉛層を形成した。基板1を大気下に移し、ホットプレートにより100℃30分アニールを行うことで、透明電極2と酸化物層3を形成した。
[工程3]
次に、日本触媒社製ポリエチレンイミンを酸化物層3の上にスピンコートにより塗布し、電子注入層4を形成した。電子注入層4の平均厚さは、2nmであった。
[工程4]
次に、電子注入層4までの各層が形成された基板1を、真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。また、ケミプロ化成社より購入したKHLHS-04、KHLDR-03、下記式(1)で示されるN,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)をそれぞれアルミナルツボに入れて蒸着源にセットした。そして、真空蒸着装置内を約1×10-5Paの圧力となるまで減圧して、KHLHS-04を10nm蒸着し、電子輸送層5を形成した。次にKHLHS-04、α-NPDをホスト材料、KHLDR-03を発光ドーパントとして15nm共蒸着し、発光層6を成膜した。次に、α-NPDを40nm蒸着することにより、正孔輸送層7を成膜した。さらに、三酸化モリブデンMoO3を真空一貫で蒸着することにより成膜し、膜厚が10nmの正孔注入層8を形成した。
[工程5]
次に、正孔注入層8まで形成した基板1上に、アルミニウム(陽極9)を膜厚が70nmとなるように蒸着した。
[工程6]
次に、陽極9まで形成した基板1上にα-NPDを100nm蒸着し、続いてスパッタリング装置で酸化亜鉛を20nm成膜することで、パッシベーション層10を得た。
[工程7]
次にパッシベーション層10まで形成した基板1をグローブボックスに輸送し、基板1上にスリーボンド社製TB1655、尾池工業社から購入した厚さ25μmのバリア層付PETフィルムをそれぞれ積層し、90℃に加熱されたホットプレート上で1時間アニールすることにより、封止層11を形成し、本発明の実施例である「素子1」を得た。
ミツトヨ社製デジマチックインジケーター、ID-C112ABにより得られた素子1の厚みを測定したところ、総膜厚は72μmであった。
【0066】
【0067】
(実施例2)
実施例1の[工程7]を省略した有機電界発光素子を作製した。
【0068】
(実施例3)
実施例1の[工程1]で、厚さ25μmのバリア層付PETフィルムに代えて、厚さ50μmのバリア層付PETフィルムを用いた以外は同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【0069】
(比較例1)
実施例1の[工程1]及び[工程7]で、厚さ25μmのバリア層付PETフィルムに代えて、厚さ50μmのバリア層付PETフィルムを用いた以外は同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【0070】
(比較例2)
実施例1の[工程1]及び[工程7]で、厚さ25μmのバリア層付PETフィルムに代えて、厚さ75μmのバリア層付PETフィルムを用いた以外は同様にして、有機電界発光素子を作製した。
【0071】
(作製した有機電界発光素子)
実施例1~3及び比較例1、2で作製した有機電界発光素子の、ミツトヨ社製デジマチックインジケーター、ID-C112ABにより得られた総膜厚を纏めると、表1の通りである。
【0072】
【0073】
2.有機電界発光素子の発光特性測定
ケースレー社製の「2400型ソースメーター」により、素子への電圧印加と、電流測定を行った。トプコン社製の「BM-7」及び分光放射輝度計「SR-3」により、発光輝度、ELスペクトルを測定した。実施例1で作製した有機電界発光素子に対して、アルゴン雰囲気下で0V~5Vまでの直流電圧を印加した時の電圧-輝度特性、電流密度-電流効率特性及びELスペクトルを
図2、
図3、
図4にそれぞれ示す。また、実施例2、3及び比較例1、2の素子に関しても同様の測定を行ったところ、実施例1の素子と同様の特性であった。
【0074】
3.有機電界発光素子の定輝度連続駆動での表面温度変化測定
有機電界発光素子は発熱素子であるが故に、直接皮膚に接触させて用いる場合には低温火傷の懸念がある。実施例1~3及び比較例1、2で作製した素子の中では、実施例1で作製したものが最も皮膚までの距離が短く、低温火傷の懸念がある。そこで、実施例1で作製した有機電界発光素子を、実際に用いられると想定される放射照度10mW/cm
2相当の5,000cd/m
2で定輝度連続駆動させながら、皮膚に接触する表面温度の測定を実施した。測定は、日本アビオニクス社製の赤外線サーモグラフィカメラ(R300SR)を用いて実施した。
図5のようなデータが得られ、長時間に使用によっても表面温度が36℃を超えることはなく、低温火傷の懸念がないことがわかった。
【0075】
4.有機電界発光シートの評価試験
以下の方法により、有機電界発光シートの皮膚への追従性及び密着性を評価した。
【0076】
実施例1~3及び比較例1、2で作製した有機電界発光シートに対し、
図6の様に外部取出し用電極を取り付けたものを、
図7の様に被験者の皮膚へ直接装着し、外部取出し電極と外部電極を接続させることで、1時間の間発光させ続けた。なお被験者は性別、年齢ともにランダムに選定した。
【0077】
(皮膚への追従性試験(官能試験))
有機電界発光シート貼り付け後の追従性の指標として、貼り付け部位の違和感及び動かしやすさ(主に、当該箇所のツッパリ感や束縛感に由来)を以下の基準により評価した。被験者10名による評価結果の平均を表2に示す。
[評価基準]
5:全く装着違和感なく、動かしやすい
4:やや装着違和感があり、やや動かしやすい
3:どちらともいえない
2:装着違和感があり、やや動かしにくい
1:とても装着違和感があり、動かしにくい
【0078】
(皮膚への密着性試験)
有機電界発光シートを皮膚へ貼り付けて1時間内で、目視観察により浮き剥がれの有無と、その程度を確認し、追従性の指標として皮膚に対する密着性・剥がれにくさを以下の基準により評価した。被験者10名による評価結果平均を表2に示す。
[評価基準]
5:皮膚に密着し、浮き剥がれは目視観察できなかった
4:浮き剥がれが目視観測され、剥がれ部分の面積は5%未満であった
3:浮き剥がれが目視観測され、剥がれ部分の面積は5%以上10%未満であった
2:浮き剥がれが目視観測され、剥がれ部分の面積は10%以上20%未満であった
1:浮き剥がれが頻繁に目視観測され、密着性に乏しい
【0079】
【0080】
表2に示された通り、本実施形態の有機電界発光シートは皮膚への追従性及び密着性が良好であり、装着時の不快感が低減されており、例えば、長時間使用する態様にも好適である。
【0081】
5.有機電界発光素子による光照射の遺伝子発現に対する作用評価
実施例1で作製した素子1を用いて、素子の各種遺伝子発現に対する作用を、正常ヒト表皮細胞を用いたDNAマイクロアレイ法にて評価することを目的に、以下のin vitro有用性評価試験(表皮細胞を用いた遺伝子発現評価試験)を実施した。
各試験試料を処理した正常ヒト表皮細胞から回収したRNAの濃度とRIN値の結果を表3に、マイクロアレイの解析結果を、表4、5に示した。
<試験方法>
正常ヒト表皮細胞をHuMedia-KG2培地を用いて、2.5×105cells/wellの細胞密度にて12穴プレートに播種する。24時間培養後、すべての培地をHanks緩衝液(Ca2+,Mg2+未含有)に交換し、有機電界発光素子を用いて2.5mW/cm2の光を60分間、5mW/cm2の光を30分間、1mW/cm2の光を60分間、それぞれ照射する。未照射区はアルミホイルで遮光する。照射後、HuMedia-KB2培地に交換し、24時間培養する。24時間後に、細胞をQIAzol(R)reagentに浸漬し溶解する。溶解液からmiRNeasy(R)Mini Kit(QIAGEN)を用いて精製したRNAを回収する。回収したRNAは、mRNA発現解析チップ(DNAチップ ジェノパール(R)NDRカスタムチップ)を用いて、DNAマイクロアレイを実施する。得られた結果を解析し、各種遺伝子発現解析の結果は、試験試料未処理コントロールの補正値を1とした比で表し、有意差検定を行う。
[試験詳細]
・試験数はn=3とする。
・試験には12穴プレートを3枚用いる。各プレートに「未照射区」、「放射照度2.5mW/cm2,照射時間60分」、「放射照度5mW/cm2,照射時間30分」、「放射照度1mW/cm2,照射時間60分」の4群を設け、これらを3セット分繰り返して試験を実施する。
・細胞がHanks緩衝液に浸かっている時間を、未照射及び各照射区間で同じにする。
・照射は、12穴プレートの蓋の上に光源を設置して実施する。
【0082】
【0083】
表3から、回収したRNA濃度は、光線の照射有無によらず同等であり、RIN値(RNAの分解大:0~分解していない:10)は、高い値を維持していることが確認された。
【0084】
【0085】
【0086】
表4、5から、マイクロアレイの結果、光線を照射した3条件はいずれの条件においても、多くの遺伝子の発現を抑制することが確認された。
光線の照射により、RNAの回収量やRIN値に大きな変化が認められなかったことから、光線の照射はRNAの分解を伴う細胞傷害は誘発していないと考えられる。このことから、今回の条件における光線照射は、遺伝子発現を抑制する可能性が示唆された。
また、細胞傷害を誘発していないと考えられる条件下において、炎症因子や色素沈着を誘導する因子、マトリックス分解酵素など遺伝子発現は減少していることから、光線の照射が抗炎症作用を有する可能性が示唆された。