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特許7221508集合住宅における床支持構造及びその施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】集合住宅における床支持構造及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20230207BHJP
   E04B 5/04 20060101ALI20230207BHJP
   E04B 5/10 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
E04B5/02 M
E04B5/04
E04B5/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022165845
(22)【出願日】2022-10-14
【審査請求日】2022-10-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】396015046
【氏名又は名称】株式会社エス・アイ・ルネス
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 貴之
(72)【発明者】
【氏名】八田 徹也
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-081891(JP,A)
【文献】特開2003-166332(JP,A)
【文献】特開2003-193528(JP,A)
【文献】特開2004-052504(JP,A)
【文献】特開2002-227338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00 - 5/48
E04B 1/62 - 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体(F)が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体(F)の床スラブ(FS)上に逆梁(1)が上向きに突設され、その逆梁(1)の側部に段状に形成したふかし壁部(1s)の上面に、床板(4)の下面を載置支持する大引ビーム(B)の端部(Be)下面が緩衝体(S)を介して支持される、集合住宅における床支持構造において、
前記緩衝体(S)は、前記ふかし壁部(1s)の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシート(Sa)と、その敷きゴムシート(Sa)の上面に載置されるビーム受けゴム(Sb)とを備え、
前記ビーム受けゴム(Sb)は、前記大引ビーム(B)の端部(Be)を係合、載置させる係合凹部(Sbo)を有し、
前記敷きゴムシート(Sa)の上面には、一側面が前記大引ビーム(B)の端面(Bef)と対面し且つ他側面が前記逆梁(1)の、前記ふかし壁部(1s)より上方側の上部側面(1uf)に接着される背板ゴム(Sc1)の下部が固定され、前記背板ゴム(Sc1)に設けた左右両端開放の横孔(Sc1h)に断熱材(D)が充填、発泡されることを特徴とする、集合住宅における床支持構造。
【請求項2】
躯体(F)が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体(F)の床スラブ(FS)上に逆梁(1)が上向きに突設され、その逆梁(1)の側部に段状に形成したふかし壁部(1s)の上面に、床板(4)の下面を載置支持する大引ビーム(B)の端部(Be)下面が緩衝体(S)を介して支持される、集合住宅における床支持構造において、
前記緩衝体(S)は、前記ふかし壁部(1s)の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシート(Sa)と、その敷きゴムシート(Sa)の上面に載置されるビーム受けゴム(Sb)とを備え、
前記ビーム受けゴム(Sb)は、前記大引ビーム(B)の端部(Be)を係合、載置させる係合凹部(Sbo)を有し、
前記敷きゴムシート(Sa)の上面には、一側面が前記大引ビーム(B)の端面(Bef)と対面し且つ他側面に断熱材シート(Ds)を接合した背板ゴム(Sc2)の下部が固定され、その断熱材シート(Ds)は、これの前記背板ゴム(Sc2)とは反対側の側面が前記逆梁(1)の、前記ふかし壁部(1s)より上方側の上部側面(1uf)に接着されることを特徴とする、集合住宅における床支持構造。
【請求項3】
躯体(F)が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体(F)の床スラブ(FS)上に逆梁(1)が上向きに突設され、その逆梁(1)の側部に段状に形成したふかし壁部(1s)の上面に、床板(4)の下面を載置支持する大引ビーム(B)の端部(Be)下面が緩衝体(S)を介して支持される、集合住宅における床支持構造において、
前記緩衝体(S)は、前記ふかし壁部(1s)の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシート(Sa)と、その敷きゴムシート(Sa)の上面に載置されるビーム受けゴム(Sb)とを備え、
前記ビーム受けゴム(Sb)は、前記大引ビーム(B)の端部(Be)を係合、載置させる係合凹部(Sbo)を有し、
前記敷きゴムシート(Sa)の上面には、一側面が前記大引ビーム(B)の端面(Bef)と対面し且つ他側面が前記逆梁(1)の、前記ふかし壁部(1s)より上方側の上部側面(1uf)に対面する背板ゴム(Sc3)の下部が固定され、前記背板ゴム(Sc3)と前記逆梁(1)の前記上部側面(1uf)とにより左右両端開放の間隙(20)が画成されていて、その間隙(20)に断熱材(D)が充填、発泡されることを特徴とする、集合住宅における床支持構造。
【請求項4】
前記敷きゴムシート(Sa)は、ベースゴムシート(10)と、これに必要に応じ重合接着される少なくとも1個の厚み調整ゴムシート(11,12)とを含むことを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の集合住宅における床支持構造。
【請求項5】
前記敷きゴムシート(Sa)は、前記ビーム受けゴム(Sb)を上面に載置支持するベースゴムシート(10)と、そのベースゴムシート(10)の下面に必要に応じ重合接着される少なくとも1個の厚み調整ゴムシート(11,12)とを含むと共に、最下層の厚み調整ゴムシート(11)の下面が前記ふかし壁部(1s)の上面に直接接着され、
前記ベースゴムシート(10)の上面には、前記背板ゴム(Sc1~Sc3)の下部を係合させて前記上部側面(1uf)との間で挟む係合段部(10k)が設けられることを特徴とする、請求項の何れか1項に記載の集合住宅における床支持構造。
【請求項6】
前記敷きゴムシート(Sa)は、前記ビーム受けゴム(Sb)を上面に載置支持するベースゴムシート(10)と、そのベースゴムシート(10)の下面に必要に応じ重合接着される少なくとも1個の厚み調整ゴムシート(11,12)とを含むと共に、最下層の厚み調整ゴムシート(11)の下面が前記ふかし壁部(1s)の上面に直接接着され、
前記背板ゴム(Sc1~Sc3)が前記ベースゴムシート(10)に一体成形されることを特徴とする、請求項の何れか1項に記載の集合住宅における床支持構造。
【請求項7】
躯体(F)が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体(F)の床スラブ(FS)上に逆梁(1)が上向きに突設され、その逆梁(1)の側部に段状に形成したふかし壁部(1s)の上面に、床板(4)の下面を載置支持する大引ビーム(B)の端部(Be)下面が緩衝体(S)を介して支持される、集合住宅における床支持構造において、
前記緩衝体(S)は、前記ふかし壁部(1s)の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシート(Sa)と、その敷きゴムシート(Sa)の上面に載置されるビーム受けゴム(Sb)とを備え、
前記ビーム受けゴム(Sb)は、前記大引ビーム(B)の端部(Be)を係合、載置させる係合凹部(Sbo)を有し、
前記敷きゴムシート(Sa)は、前記ビーム受けゴム(Sb)を上面に載置支持するベースゴムシート(10)と、そのベースゴムシート(10)の下面に必要に応じ重合接着される少なくとも1個の厚み調整ゴムシート(11,12)とを含むと共に、最下層の厚み調整ゴムシート(11)の下面が前記ふかし壁部(1s)の上面に直接接着され、
前記ベースゴムシート(10)の上面には、一側面が前記大引ビーム(B)の端面(Bef)と対面し且つ他側面が前記逆梁(1)の、前記ふかし壁部(1s)より上方側の上部側面(1uf)に重合接着される中実の背板ゴム(Sc4)の下部が固定又は一体成形されることを特徴とする、集合住宅における床支持構造。
【請求項8】
躯体(F)が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体(F)の床スラブ(FS)上に逆梁(1)が上向きに突設され、その逆梁(1)の側部に段状に形成したふかし壁部(1s)の上面に、床板(4)の下面を載置支持する大引ビーム(B)の端部(Be)下面が緩衝体(S)を介して支持され、前記緩衝体(S)が、前記ふかし壁部(1s)の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシート(Sa)と、その敷きゴムシート(Sa)の上面に載置されるビーム受けゴム(Sb)とで構成される、集合住宅における床支持構造の施工方法であって、
前記逆梁(1)の側部に前記ふかし壁部(1s)を構築する第1工程と、
前記ふかし壁部(1s)の上面の所定位置に前記敷きゴムシート(Sa)を必要に応じて厚み調整しつつ接着する第2工程と、
前記敷きゴムシート(Sa)上に、一側面が前記大引ビーム(B)の端面(Bef)と対面可能な背板ゴム(Sc1,Sc3)の下部を固定すると共に、該背板ゴム(Sc1,Sc3)の他側面を前記逆梁(1)の、前記ふかし壁部(1s)より上方側の上部側面(1uf)に接着させる第3工程と、
前記逆梁(1)の上面及び側面、並びに該逆梁(1)に連なる壁体(FW)の内側面及び床スラブ(FS)の上面の少なくとも一部に対し発泡性の断熱材(D)を吹付け、その吹付けと並行して、前記背板ゴム(Sc1)に設けた横孔(Sc1h)、又は前記背板ゴム(Sc3)と前記上部側面(1uf)との対向面間に画成される左右両端開放の間隙(20)に該発泡性の断熱材(D)を充填、発泡させる第4工程と、
前記敷きゴムシート(Sa)上に、前記ビーム受けゴム(Sb)を介して前記大引ビーム(B)の端部(Be)を載置する第5工程とを少なくとも含むことを特徴とする、集合住宅における床支持構造の施工方法。
【請求項9】
躯体(F)が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体(F)の床スラブ(FS)上に逆梁(1)が上向きに突設され、その逆梁(1)の側部に段状に形成したふかし壁部(1s)の上面に、床板(4)の下面を載置支持する大引ビーム(B)の端部(Be)下面が緩衝体(S)を介して支持され、前記緩衝体(S)が、前記ふかし壁部(1s)の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシート(Sa)と、その敷きゴムシート(Sa)の上面に載置されるビーム受けゴム(Sb)とで構成される、集合住宅における床支持構造の施工方法であって、
前記逆梁(1)の側部に前記ふかし壁部(1s)を構築する第1工程と、
前記ふかし壁部(1s)の上面の所定位置に前記敷きゴムシート(Sa)を必要に応じて厚み調整しつつ接着する第2工程と、
前記敷きゴムシート(Sa)上に、一側面が前記大引ビーム(B)の端面(Bef)と対面し且つ他側面に断熱材シート(Ds)の一面を接合した背板ゴム(Sc2)の下部を固定すると共に、該断熱材シート(Ds)の他面を前記逆梁(1)の、前記ふかし壁部(1s)より上方側の上部側面(1uf)に接着させる第3工程と、
前記逆梁(1)の上面及び側面、並びに該逆梁(1)に連なる壁体(FW)の内側面及び床スラブ(FS)の上面の少なくとも一部に対し発泡性の断熱材(D)を吹付ける第4工程と、
前記敷きゴムシート(Sa)上に、前記ビーム受けゴム(Sb)を介して前記大引ビーム(B)の端部(Be)を載置する第5工程とを少なくとも含むことを特徴とする、集合住宅における床支持構造の施工方法。
【請求項10】
前記第4工程よりも前において、前記ふかし壁部(1s)上に前記敷きゴムシート(Sa)及び前記背板ゴム(Sc1,Sc2)をセットした状態にあるときに外方への露出面となる、該敷きゴムシート(Sa)の上面と該背板ゴム(Sc1,Sc2)の前記一側面とにそれぞれ養生シート(Ya,Yc)を予め貼着しておき、
前記第4工程の実行後で前記第5工程の実行前に、前記養生シート(Ya,Yc)を剥がすことを特徴とする、請求項又はに記載の集合住宅における床支持構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅における床支持構造、特に躯体が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体の床スラブ上に逆梁が上向きに突設され、その逆梁の側部に段状に形成したふかし壁部の上面に、床板の下面を載置支持する大引ビームの端部下面が緩衝体を介して支持される、集合住宅における床支持構造、並びにその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数階の集合住宅において、床スラブ上に逆梁を上向きに突設した床支持構造は、例えば特許文献1にも示されるように従来公知である。この公知の床支持構造では、上記した緩衝材に加え、これをレベル調整可能に支持する複数の支持金物の基台を逆梁側部のふかし壁部の上面に直接載置することで、その支持金物及び緩衝材を介して大引ビーム端部をふかし壁部上に高さ調節可能に支持させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-52504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の床支持構造では、上記支持金物をふかし壁部上に安定よく載置させるために、ふかし壁部を、これの上面幅が幅広(例えば120ミリ以上)となるよう構築する必要があり、それに伴い、幅広のふかし壁部には鉄筋を配筋する必要もあって、躯体のコスト増や重量増を来たす問題がある。また、ふかし壁部の上面に吹付けた発泡性断熱材の一部を切欠いて、その切欠き部を通して支持金物の基台をふかし壁部上面に直接載せる構造であるため、この切欠き部に断熱欠損が生じる問題もある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、従来構造の上記課題を簡単な構造で解決可能な集合住宅における床支持構造、及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、躯体が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体の床スラブ上に逆梁が上向きに突設され、その逆梁の側部に段状に形成したふかし壁部の上面に、床板の下面を載置支持する大引ビームの端部下面が緩衝体を介して支持される、集合住宅における床支持構造において、前記緩衝体は、前記ふかし壁部の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシートと、その敷きゴムシートの上面に載置されるビーム受けゴムとを備え、前記ビーム受けゴムは、前記大引ビームの端部を係合、載置させる係合凹部を有し、前記敷きゴムシートの上面には、一側面が前記大引ビームの端面と対面し且つ他側面が前記逆梁の、前記ふかし壁部より上方側の上部側面に接着される背板ゴムの下部が固定され、前記背板ゴムに設けた左右両端開放の横孔に断熱材が充填、発泡されることを第1の特徴とする
【0007】
た本発明は、躯体が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体の床スラブ上に逆梁が上向きに突設され、その逆梁の側部に段状に形成したふかし壁部の上面に、床板の下面を載置支持する大引ビームの端部下面が緩衝体を介して支持される、集合住宅における床支持構造において、前記緩衝体は、前記ふかし壁部の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシートと、その敷きゴムシートの上面に載置されるビーム受けゴムとを備え、前記ビーム受けゴムは、前記大引ビームの端部を係合、載置させる係合凹部を有し、前記敷きゴムシートの上面には、一側面が前記大引ビームの端面と対面し且つ他側面に断熱材シートを接合した背板ゴムの下部が固定され、その断熱材シートは、これの前記背板ゴムとは反対側の側面が前記逆梁の、前記ふかし壁部より上方側の上部側面に接着されることを第の特徴とする。
【0008】
また本発明は、躯体が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体の床スラブ上に逆梁が上向きに突設され、その逆梁の側部に段状に形成したふかし壁部の上面に、床板の下面を載置支持する大引ビームの端部下面が緩衝体を介して支持される、集合住宅における床支持構造において、前記緩衝体は、前記ふかし壁部の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシートと、その敷きゴムシートの上面に載置されるビーム受けゴムとを備え、前記ビーム受けゴムは、前記大引ビームの端部を係合、載置させる係合凹部を有し、前記敷きゴムシートの上面には、一側面が前記大引ビームの端面と対面し且つ他側面が前記逆梁の、前記ふかし壁部より上方側の上部側面に対面する背板ゴムの下部が固定され、前記背板ゴムと前記逆梁の前記上部側面とにより左右両端開放の間隙が画成されていて、その間隙に断熱材が充填、発泡されることを第の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1~第3の何れかの特徴に加えて、前記敷きゴムシートは、ベースゴムシートと、これに必要に応じ重合接着される少なくとも1個の厚み調整ゴムシートとを含むことを第4の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第~第の何れかの特徴に加えて、前記敷きゴムシートは、前記ビーム受けゴムシートを上面に載置支持するベースゴムシートと、そのベースゴムシートの下面に必要に応じ重合接着される少なくとも1個の厚み調整ゴムシートとを含むと共に、最下層の厚み調整ゴムシートの下面が前記ふかし壁部の上面に直接接着され、前記ベースゴムシートの上面には、前記背板ゴムの下部を係合させて前記上部側面との間で挟む係合段部が設けられることを第の特徴とする。
【0011】
また本発明は、第~第の何れかの特徴に加えて、前記敷きゴムシートは、前記ビーム受けゴムシートを上面に載置支持するベースゴムシートと、そのベースゴムシートの下面に必要に応じ重合接着される少なくとも1個の厚み調整ゴムシートとを含むと共に、最下層の厚み調整ゴムシートの下面が前記ふかし壁部の上面に直接接着され、前記背板ゴムが前記ベースゴムシートに一体成形されることを第の特徴とする。
【0012】
また本発明は、躯体が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体の床スラブ上に逆梁が上向きに突設され、その逆梁の側部に段状に形成したふかし壁部の上面に、床板の下面を載置支持する大引ビームの端部下面が緩衝体を介して支持される、集合住宅における床支持構造において、前記緩衝体は、前記ふかし壁部の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシートと、その敷きゴムシートの上面に載置されるビーム受けゴムとを備え、前記ビーム受けゴムは、前記大引ビームの端部を係合、載置させる係合凹部を有し、前記敷きゴムシートは、前記ビーム受けゴムシートを上面に載置支持するベースゴムシートと、そのベースゴムシートの下面に必要に応じ重合接着される少なくとも1個の厚み調整ゴムシートとを含むと共に、最下層の厚み調整ゴムシートの下面が前記ふかし壁部の上面に直接接着され、前記ベースゴムシートの上面には、一側面が前記大引ビームの端面と対面し且つ他側面が前記逆梁の、前記ふかし壁部より上方側の上部側面に重合接着される中実の背板ゴムの下部が固定又は一体成形されることを第の特徴とする。
【0013】
また本発明は、躯体が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体の床スラブ上に逆梁が上向きに突設され、その逆梁の側部に段状に形成したふかし壁部の上面に、床板の下面を載置支持する大引ビームの端部下面が緩衝体を介して支持され、前記緩衝体が、前記ふかし壁部の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシートと、その敷きゴムシートの上面に載置されるビーム受けゴムとで構成される、集合住宅における床支持構造の施工方法であって、前記逆梁の側部に前記ふかし壁部を構築する第1工程と、前記ふかし壁部の上面の所定位置に前記敷きゴムシートを必要に応じて厚み調整しつつ接着する第2工程と、前記敷きゴムシート上に、一側面が前記大引ビームの端面と対面可能な背板ゴムの下部を固定すると共に、該背板ゴムの他側面を前記逆梁の、前記ふかし壁部より上方側の上部側面に接着させる第3工程と、前記逆梁の上面及び側面、並びに該逆梁に連なる壁体の内側面及び床スラブの上面の少なくとも一部に対し発泡性の断熱材を吹付け、その吹付けと並行して、前記背板ゴムに設けた横孔、又は該背板ゴムと前記上部側面との対向面間に画成される左右両端開放の間隙に該発泡性の断熱材を充填、発泡させる第4工程と、前記敷きゴムシート上に、前記ビーム受けゴムを介して前記大引ビームの端部を載置する第5工程とを少なくとも含むことを第の特徴とする。
【0014】
また本発明は、躯体が鉄筋入りのコンクリートで構成され、その躯体の床スラブ上に逆梁が上向きに突設され、その逆梁の側部に段状に形成したふかし壁部の上面に、床板の下面を載置支持する大引ビームの端部下面が緩衝体を介して支持され、前記緩衝体が、前記ふかし壁部の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシートと、その敷きゴムシートの上面に載置されるビーム受けゴムとで構成される、集合住宅における床支持構造の施工方法であって、前記逆梁の側部に前記ふかし壁部を構築する第1工程と、前記ふかし壁部の上面の所定位置に前記敷きゴムシートを必要に応じて厚み調整しつつ接着する第2工程と、前記敷きゴムシート上に、一側面が前記大引ビームの端面と対面し且つ他側面に断熱材シートの一面を接合した背板ゴムの下部を固定すると共に、該断熱材シートの他面を前記逆梁の、前記ふかし壁部より上方側の上部側面に接着させる第3工程と、前記逆梁の上面及び側面、並びに該逆梁に連なる壁体の内側面及び床スラブの上面の少なくとも一部に対し発泡性の断熱材を吹付ける第4工程と、前記敷きゴムシート上に、前記ビーム受けゴムを介して前記大引ビームの端部を載置する第5工程とを少なくとも含むことを第の特徴とする。
【0015】
また本発明は、第又は第の特徴に加えて、前記第4工程よりも前において、前記ふかし壁部上に前記敷きゴムシート及び前記背板ゴムをセットした状態にあるときに外方への露出面となる、該敷きゴムシートの上面と該背板ゴムの前記一側面とにそれぞれ養生シートを貼着しておき、前記第4工程の実行後で前記第5工程の実行前に、前記養生シートを剥がすことを第1の特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1~第3,第7の特徴によれば、床スラブ上の逆梁の側部に段状に形成したふかし壁部の上面に、床板支持用の大引ビームの端部下面が緩衝体を介して支持される床支持構造において、緩衝体は、ふかし壁部の上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシートと、その敷きゴムシートの上面に載置されるビーム受けゴムとを備え、ビーム受けゴムは、大引ビームの端部を係合、載置させる係合凹部を有する。これにより、敷きゴムシート自体がレベル調整手段を兼ねることとなって、従来構造のようなレベル調整可能な支持金物を緩衝材と併用する必要はなくなるため、レベル調整構造の簡素化が図られる。その上、ふかし壁部の上面に敷きゴムシートを安定よく載置可能としつつ、ふかし壁部の上面幅(即ち、ふかし壁部の逆梁からの張出幅)を、従来のような支持金物を用いる支持構造と比べ小幅化できるため、ふかし壁部に鉄筋を配筋する必要も無くなり、躯体のコスト節減や軽量化に寄与することができる。しかも敷きゴムシートは、金属材(支持金物)と比べ断熱性が良好であるため、この敷きゴムシートをふかし壁部上面に敷設しても、断熱欠損を生じる心配がない
【0017】
しかもの特徴によれば、敷きゴムシートの上面には、一側面が大引ビームの端面と対面し且つ他側面が逆梁の、ふかし壁部より上方側の上部側面に接着される背板ゴムの下部が固定され、背板ゴムに設けた左右両端開放の横孔に断熱材が充填、発泡されるので、地震発生時等の衝撃で大引ビームが多少位置ずれした場合でも、ビーム端部が背板ゴムを介して断熱材が押す形となり、従って、ビーム端部が断熱材を直接接触して不快な床鳴りを生じさせる不具合を未然に効果的に抑制できる。また背板ゴムの横孔には、逆梁の上面や側面に発泡性の断熱材を吹き付けるのと略同時に、断熱材を充填、発泡させることができるから、現場作業性が良好である。
【0018】
また第の特徴によれば、敷きゴムシートの上面には、一側面が大引ビームの端面と対面し且つ他側面に断熱材シートを接合した背板ゴムの下部が固定され、その断熱材シートは、これの背板ゴムとは反対側の側面が逆梁の、ふかし壁部より上方側の上部側面に接着されるので、背板ゴムが断熱材シートと大引ビーム間に介在することで、第の特徴による上記床鳴り抑制効果と同等の効果が達成可能である。また背板ゴムの他側面に断熱材シートを予め接合しておけば、施工現場で背板ゴム内、或いは背板ゴムと逆梁の上部側面との間の間隙に断熱材を装入する手間が省け、現場作業性が良好である。
【0019】
また第の特徴によれば、敷きゴムシートの上面には、一側面が大引ビームの端面と対面し且つ他側面が逆梁の、ふかし壁部より上方側の上部側面に対面する背板ゴムの下部が固定され、背板ゴムと逆梁の上部側面とにより左右両端開放の間隙が画成されていて、その間隙に断熱材が充填、発泡されるので、背板ゴムが断熱材と大引ビーム間に介在することで、第の特徴による上記床鳴り抑制効果と同等の効果が達成可能である。また背板ゴムと逆梁の上部側面との間に画成した間隙には、逆梁の上面や側面に発泡性の断熱材を吹き付けるのと略同時に、断熱材を充填、発泡させることができるから、現場作業性が良好である。
【0020】
また第4の特徴によれば、第1~第3の何れかの特徴において、敷きゴムシートは、ベースゴムシートと、これに必要に応じ重合接着される少なくとも1個の厚み調整ゴムシートとを含むので、ふかし壁部の上面レベルにバラツキが生じても、ベースゴムシートに重合接着させる厚み調整ゴムシートの選択使用によりビーム受けゴムシート、延いては大引ビームを適正レベルで支持することができ、しかもそのレベル調整の現場作業性は良好である。
【0021】
また第の特徴によれば、第~第の何れかの特徴において、敷きゴムシートのベースゴムシート上面には、背板ゴムの下部を係合させて逆梁の上部側面との間で挟む係合段部が設けられるので、ベースゴムシート上面の係合段部と逆梁の上部側面との間で背板ゴムの下部を的確に位置決め、挟持することができ、これにより、背板ゴムの支持強度を高め得ると共に、現場作業性も高められる。
【0022】
また第の特徴によれば、第~第の何れかの特徴において、敷きゴムシートのベースゴムシート上に背板ゴムが一体成形されるので、床鳴り抑制用の背板ゴムとベースゴムシートとを一体化、即ち単一部品化することで、コストが節減されると共に、取り扱いが簡便化されて現場作業性が更に良好となる。
【0023】
また第の特徴によれば、ベースゴムシートの上面には、一側面が大引ビームの端面と対面し且つ他側面が逆梁の、ふかし壁部より上方側の上部側面に重合接着される中実の背板ゴムの下部が固定又は一体成形されるので、この中実の背板ゴムを厚めに形成して断熱機能を発揮させることで、背板ゴム対応位置に断熱材を配備する必要もなくなり、現場作業性が良好である。
【0024】
また第の特徴によれば、逆梁の側部にふかし壁部を構築する第1工程と、ふかし壁部の上面の所定位置に敷きゴムシートを必要に応じて厚み調整しつつ接着する第2工程と、敷きゴムシート上に、一側面が大引ビームの端面と対面可能な背板ゴムの下部を固定すると共に、背板ゴムの他側面を逆梁の上部側面に接着させる第3工程と、逆梁の上面及び側面、並びに逆梁に連なる壁体の内側面及び床スラブの上面の少なくとも一部に対し発泡性の断熱材を吹付け、その吹付けと並行して、背板ゴムに設けた横孔、又は背板ゴムと前記上部側面との対向面間の間隙に発泡性の断熱材を充填、発泡させる第4工程と、敷きゴムシート上に、ビーム受けゴムを介して大引ビームの端部を載置する第5工程とを少なくとも含むので、第又は第の特徴を有した床支持構造の施工作業を能率よく容易に行うことができる。
【0025】
また第の特徴によれば、第の特徴の第3工程に代えて、敷きゴムシート上に、一側面が大引ビームの端面と対面し且つ他側面に断熱材シートの一面を接合した背板ゴムの下部を固定すると共に、断熱材シートの他面を逆梁の上部側面に接着させ、続く第4工程では単に逆梁の上面及び側面、並びに壁体の内側面及び床スラブの上面に対し単に発泡性の断熱材を吹付ければ足りるため、第の特徴を有した床支持構造の施工作業を能率よく容易に行うことができる。
【0026】
また第1の特徴によれば、第4工程よりも前において、ふかし壁部上に敷きゴムシート及び背板ゴムをセットした状態にあるときに外方への露出面となる、敷きゴムシートの上面と該背板ゴムの前記一側面とにそれぞれ養生シートを貼着しておき、第4工程の実行後で第5工程の実行前に、養生シートを剥がすので、第又は第の特徴を有した床支持構造の施工作業において、特に逆梁の上面及び側面等に対し発泡性の断熱材を吹付ける際に、吹付けた断熱材が上記露出面に付着することが回避され、従って、その付着した余分の断熱材を吹付け作業後に除去する作業を省略できて、現場作業性が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係る床支持構造を含む集合住宅の要部断面図
図2図1の2X矢視部の拡大断面図
図3】第1実施形態に係る床支持構造の要部である緩衝体の分解斜視図
図4】第1実施形態に係る床支持構造の施工手順の一例を示す工程図
図5】ベースゴムシート及び背板ゴムに養生シートを貼着した、第1実施形態の変形例を示す図3対応分解斜視図
図6】第2実施形態に係る床支持構造の要部断面図(図2対応図)
図7】第3実施形態に係る床支持構造の要部断面図(図2対応図)
図8】第4実施形態に係る床支持構造の要部断面図(図2対応図)
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1~第4実施形態を、添付図面に示す本発明の好適な実施例に基づいて以下に順次説明する。先ず、図1図5により第1実施形態及びその変形例を示す。
【0029】
集合住宅の骨格を構成する躯体Fは、鉄筋入りのコンクリートで構成され、図1で明らかなように、各階を区画すべく水平方向に延びる複数の床スラブFSと、上下に隣り合う床スラブFS間を一体に接続すべく鉛直方向に延びる複数の壁体FWと、壁体FWに一体に形成されて鉛直方向に延び且つ上下の床スラブFS間を一体に接続する不図示の躯体柱とを備える。
【0030】
床スラブFS上には、平面視で縦横に延び且つ壁体FW及び上記躯体柱と一体に連続する逆梁1が上向きに一体に突設されており、各階の壁体FWは、下層の床スラブFS上に突設した逆梁1より上方に延びて上層の床スラブFSに一体に連続する。而して、各階の下層の床スラブFS上には、縦横に延びる逆梁1の相互間に平面視矩形状の扁平な床下空間2が画成される。
【0031】
また図2を併せて参照して、躯体Fの外側壁となる壁体FWに一体に連続する逆梁1の、床下空間2に臨む側部には、段状に形成され且つ逆梁1の上端高さよりは低いふかし壁部1sが、逆梁1の構築工程とは同一工程又は別工程で構築される。尚、ふかし壁部1sは、実施形態では無筋のコンクリートで構成されるが、必要に応じて鉄筋を埋設したコンクリートで構成してもよい。
【0032】
上記床下空間2を挟んで並列する一対のふかし壁部1sの上面には、床板4の下面を載置支持すべく互いに平行に延びる複数条の大引ビームBの一対の端部Beの下面が、緩衝体Sを介して支持されており、床板4の上面は、前記壁体FWで区画された室内空間9に臨んでいる。そして、複数条の大引ビームB上には、それらと直交して互いに平行する複数条の根太3が敷設され、それら根太3を介して各部屋の平面視略矩形状の床板4が大引ビームB上に支持される。
【0033】
各逆梁1の上面及び側面(従ってふかし壁部1sの上面及び側面も)、並びに逆梁1に連なる壁体FWの内側面、及び床スラブFSの少なくとも一部領域(例えば、逆梁1から比較的近い領域)の上面には、発泡性の断熱材D(例えば発泡ポリウレタン等)が施工現場において所定厚さに吹付けて被覆、固定される。
【0034】
そして、各壁体FWの内側面を覆う断熱材Dの表面は、スペーサ5で規定された所定空隙6を挟んで内装用の仕上げ壁7で覆われ、その仕上げ壁7の表面下部には、床板4の端部上面に隣接配置されて縁取りと装飾を兼ねる幅木8が接合される。
【0035】
尚、図1,2では、躯体F外壁側の逆梁1の側部に設けたふかし壁部1s上に、大引ビームBの外端部(即ち躯体F外壁側の端部Be)が緩衝体Sを介して支持される構造例が図示されるが、大引ビームBの他方の端部Beに対しても、同様の支持構造(図示は省略)が採用される。但し、その他方の端部Beが躯体F外壁から遠い逆梁1側部のふかし壁部1s上に支持される場合には、その外壁から遠い逆梁1の側部等に対して、施工現場での発泡性断熱材Dの吹付け作業を省略してもよいし、或いは、隣接する室内空間9間の断熱効果を高めるべく、外壁側の逆梁1及び壁体FWと同様の発泡性断熱材Dの吹付け作業を必要に応じ実施してもよい。
【0036】
緩衝体Sは、全体がゴム材で構成されるものであって、図2図3で明らかなように、ふかし壁部1sの上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシートSaと、その敷きゴムシートSaの上面に当接、載置されるビーム受けゴムSbとを主要部とする。
【0037】
ビーム受けゴムSbは、大引ビームBの端部Beを係合、載置させる浅い溝状の係合凹部Sboを有しており、その係合凹部Sboに大引ビームBの端部Beを係合、載置させた状態では、ビーム受けゴムSbと大引ビームBとの横方向(即ち大引ビームBと直交して横切る方向)の相対移動が規制される。
【0038】
敷きゴムシートSaは、ビーム受けゴムSbの下面を直接、載置支持するベースゴムシート10と、そのベースゴムシート10の下面に必要に応じ重合、接着c1される少なくとも1個の厚み調整ゴムシート11,12とで構成される。即ち、図2で明らかなように、最上層の厚み調整ゴムシート12の上面はベースゴムシート10の下面に重合、接着c1され、また最下層の厚み調整ゴムシート11の下面は、ふかし壁部1sの上面に直接、接着c2され、また互いに重合する厚み調整ゴムシート11,12の相互間も接着c3される。
【0039】
そして、実施形態では、厚みの異なる複数種(図示例は4種)の厚み調整ゴムシート11~14が予め用意されており、これらの第1~第4厚み調整ゴムシート11~14のうちから少なくとも1個(図示例では第1,第2厚み調整ゴムシート11,12)を選択して、現場合わせで敷きゴムシートSaの厚さ調整(従ってビーム受けゴムSb、延いては大引ビームBの高さ調整)を任意に行えるようにしている。
【0040】
というのも、ふかし壁部1sの上面高さは、施工現場により多少のばらつきの発生が予想される。そこで、そのばらつきの発生によっても、ふかし壁部1s上の大引ビームBの設置高さを所定の最適高さに設定可能とするために、施工現場毎に敷きゴムシートSaの厚さ調整(従ってビーム受けゴムSbの高さ調整)を簡単且つ迅速に行えるようにしている。
【0041】
敷きゴムシートSaの上面(より具体的にはベースゴムシート10の上面)には、一側面(図2で右側面)が大引ビームBの端面Befと対面する背板ゴムSc1の下部が固定される。尚、背板ゴムSc1の前記一側面と大引ビームBの端面Befとは、図示例のように当接させてもよいし、或いは不図示の小空隙を挟んで対向させてもよい。
【0042】
背板ゴムSc1の他側面(図示例で左側面)は、逆梁1の、ふかし壁部1sより上方側の上部側面1ufに接着c4される。また特に実施形態のベースゴムシート10の上面には、背板ゴムSc1の下部を係合させる係合段部10kが一体に形成される。この係合段部10kは、これと逆梁1の前記上部側面1ufとの間で背板ゴムSc1の下部を挟着することで、接着剤無しで固定可能である。
【0043】
そして、背板ゴムSc1には、左右両端開放の複数の横孔Sc1hが上下に並列して形成される。その各々の横孔Sc1hには、逆梁1の上面・側面や壁体FWの側面に吹き付けられる発泡性断熱材Dと同じ断熱材Dがそれぞれ充填、発泡されて固化さる。
【0044】
次に第1実施形態の作用を説明する。
【0045】
第1実施形態に係る集合住宅の床支持構造の施工は、例えば、図4に例示した如く
[1]第1工程では、図4(A)で明らかなように、逆梁1の側部に無筋のふかし壁部1sを構築する。
[2]第2工程では、図4(B)で明らかなように、ふかし壁部1sの上面の所定位置に、ベースゴムシート10及び任意選択した厚み調整ゴムシート11,12よりなる敷きゴムシートSaの下面(具体的には最下層の第1厚み調整ゴムシート11の下面)を接着c2する。このとき、敷きゴムシートSaを必要に応じて厚み調整(換言すれば、厚さの異なる第1~第4厚み調整ゴムシート11~14のうちから適宜選択)して、互いに重なり合うベースゴムシート10及び選択した厚み調整ゴムシート11,12の各接合面間をそれぞれ接着c1,c3する。
[3]第3工程では、図4(C)で明らかなように、敷きゴムシートSa上の係合段部10kに、一側面が大引ビームBの端面Befと対面可能な背板ゴムSc1の下部を係合させると共に、背板ゴムSc1の他側面を逆梁1の、ふかし壁部1sより上方側の上部側面1ufに接着c4する。
[4]第4工程では、図4(D)で明らかなように、逆梁1の上面及び側面、並びに逆梁1に連なる壁体FWの内側面、及び床スラブFSの上面の少なくとも一部に対し発泡性の断熱材Dを吹付け、その吹付けと並行して、背板ゴムSc1に設けた横孔Sc1hに発泡性の断熱材Dを充填、発泡させる。
[5]第5工程では、図4(D)(E)で明らかなように、敷きゴムシートSa上に、ビーム受けゴムSbを介して大引ビームBの端部Beを載置する。この場合、(D)に示すように大引ビームBの端部Be下面にビーム受けゴムSbを予め係合、保持させた状態で、ビーム受けゴムSbを大引ビームBと共に敷きゴムシートSa上に載せてもよいが、或いは、先にビーム受けゴムSbを敷きゴムシートSa上に載せてから、その上に大引ビームBを載置させるようにしてもよい。
以上第1~第5工程を、この順序で順次実行することで実施される。
【0046】
而して、上記施工手順によれば、第1実施形態に係る床支持構造の施工作業を能率よく容易に行うことができる。
【0047】
ところで上記した施工手順において、第4工程よりも前において、ふかし壁部1s上に敷きゴムシートSa及び背板ゴムSc1をセットした状態にあるときに露出面となる、敷きゴムシートSaの上面と背板ゴムSc1の一側面とに対し、図5に例示した如く養生シートYa,Ycを予め(例えば工場出荷段階で)貼着しておくことが望ましい。
【0048】
そして、図4に示す前述の施工手順例では、敷きゴムシートSaの上面と背板ゴムSc1の一側面とにそれぞれ養生シートYa,Ycを予め貼着した緩衝材Sの使用例(図4(C)を参照)が示される。この場合は、第4工程の実行後で第5工程の実行前に、養生シートYa,Ycを剥がすように施工(図4(D)を参照)することが望ましい。
【0049】
そうすれば、逆梁1の上面及び側面等に対し発泡性の断熱材Dを吹付ける際に、吹付けた断熱材Dが上記露出面に付着することが、養生シートYa,Ycによる養生効果により回避されるため、吹付け作業時に上記露出面に付着した余分の断熱材Dを吹付け作業後に除去する作業を省略できて、現場作業性が良好である。
【0050】
以上説明した第1実施形態によれば、床スラブFS上の逆梁1の側部に段状に形成したふかし壁部1sの上面に、床板支持用の大引ビームBの端部Be下面が緩衝体Sを介して支持される床支持構造において、緩衝体Sは、ふかし壁部1sの上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシートSaと、その敷きゴムシートSaの上面に載置されるビーム受けゴムSbとを主要部とし、ビーム受けゴムSbは、大引ビームBの端部Beを係合、載置させる係合凹部Sboを有する。
【0051】
これにより、敷きゴムシートSa自体がレベル調整手段を兼ねることとなって、従来構造のようなレベル調整可能な支持金物を緩衝材と併用する必要はなくなるため、レベル調整構造の簡素化が図られる。その上、ふかし壁部1sの上面に敷きゴムシートSaを安定よく載置可能としつつ、ふかし壁部1sの上面幅(即ち、ふかし壁部1sの逆梁1からの張出幅)を、従来のような支持金物を用いる支持構造と比べ小幅化できるため、ふかし壁部1sに鉄筋を配筋する必要も無くなり、躯体のコスト節減や軽量化に寄与することができる。しかも敷きゴムシートSaは、金属材(支持金物)と比べ断熱性が良好であるため、この敷きゴムシートSaをふかし壁部1s上面に敷設しても、断熱欠損を生じる心配がない。
【0052】
また第1実施形態(後述する第2~第4実施形態も同様)によれば、敷きゴムシートSaは、ベースゴムシート10と、これに必要に応じ重合接着される少なくとも1個の厚み調整ゴムシート11,12とを含むので、ふかし壁部1sの上面レベルにバラツキが生じても、ベースゴムシート10に重合接着させる厚み調整ゴムシート11~14の適宜選択によりビーム受けゴムSb、延いては大引ビームBを適正レベルで支持することができ、しかもそのレベル調整の現場作業性は良好である。
【0053】
その上、敷きゴムシートSaの上面には、一側面が大引ビームBの端面Befと対面し且つ他側面が逆梁1の上部側面1ufに接着される背板ゴムSc1の下部が固定され、背板ゴムSc1に設けた左右両端開放の横孔Sc1hに断熱材Dが充填、発泡される。これにより、地震発生時等の衝撃で大引ビームBが多少位置ずれした場合でも、ビーム端部Beが背板ゴムSc1を介して断熱材Dが押す形となり、従って、ビーム端部Beが断熱材Dを直接接触して不快な床鳴りを生じさせる不具合を未然に効果的に抑制できる。
また背板ゴムSc1の横孔Sc1hには、逆梁1の上面や側面に発泡性の断熱材Dを吹き付けるのと略同時に、断熱材Dを充填、発泡させることができるから、現場作業性が良好である。
【0054】
しかも実施形態の敷きゴムシートSaは、ビーム受けゴムSbを上面に載置支持するベースゴムシート10と、そのベースゴムシート10の下面に必要に応じ重合接着される少なくとも1個の厚み調整ゴムシート11,12とを含むと共に、最下層の厚み調整ゴムシート11の下面がふかし壁部1sの上面に直接接着され、ベースゴムシート10の上面には、背板ゴムSc1の下部を係合させて逆梁1の上部側面1ufとの間で挟む係合段部10kが設けられる。これにより、ベースゴムシート10上面の係合段部10kと逆梁1の上部側面1ufとの間で背板ゴムSc1の下部を的確に位置決め、挟持して固定できるため、背板ゴムSc1の支持強度を高めながら、現場作業性も高められる。
【0055】
次に図6を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。この第2実施形態において、敷きゴムシートSaの上面には、一側面が大引ビームBの端面Befと対面し且つ他側面に帯板状の断熱材シートDsを接合(実施形態では重合、接着)した背板ゴムSc2の下部が固定される。そして、その断熱材シートDsは、これの背板ゴムSc2とは反対側の側面が逆梁1の上部側面1ufに接着される。
【0056】
この第2実施形態の施工手順は、第1実施形態の前記第1~第5工程と基本的に同様であるが、特に第3工程では第1実施形態の施工手順の前記第3工程に代えて、敷きゴムシートSa上に、一側面が大引ビームBの端面Befと対面し且つ他側面に断熱材シートDsの一面を接合した背板ゴムSc2の下部を固定すると共に、断熱材シートDsの他面を逆梁1の上部側面1ufに接着させ、続く第4工程では単に逆梁1の上面及び側面、並びに壁体の内側面及び床スラブFSの上面に対し単に発泡性の断熱材Dを吹付ければ足りる。このように第2実施形態の第4工程では、背板ゴムSc2の他側面に予め(即ち発泡性断熱材Dを吹付ける前に)断熱材シートDsが接合されているため、それだけ逆梁1側面等への発泡性断熱材Dの吹付作業が簡便となる。
【0057】
第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるため、第2実施形態の各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。
【0058】
而して、第2実施形態においても、第1実施形態の作用効果と基本的に同等の作用効果を達成可能であり、例えば、第2実施形態では、背板ゴムSc2が断熱材シートDsと大引ビームB間に介在することで、第1実施形態の前記した床鳴り抑制効果と同等の効果が達成可能である。また背板ゴムSc2の他側面に断熱材シートDsを予め接合しておけば、施工現場で背板ゴムSc2と逆梁1の上部側面1ufとの間に断熱材を装入(即ち吹付け)する手間が省け、現場作業性が良好である。
【0059】
次に図7を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。この第3実施形態では、第1実施形態と同様、敷きゴムシートSaの上面には、一側面が大引ビームBの端面Befと対面し且つ他側面が逆梁1の上部側面1ufに対面する背板ゴムSc3の下部が固定されるが、特に第3実施形態の背板ゴムSc3の前記一側面には、横方向に延びる複数の溝状凹部が上下に並列形成される。そのため、背板ゴムSc3と逆梁1の上部側面1ufとの相対向面間には、上記複数の溝状凹部の内部空間に対応して左右両端が開放した複数の間隙20が上下に並列して画成される。そして、それら間隙20には断熱材Dが充填、発泡される。
【0060】
この第3実施形態の施工手順は、第1実施形態の前記第1~第5工程と基本的に同様であるが、特に第4工程では、背板ゴムSc3と上部側面1ufとの対向面間に画成される左右両端開放の間隙20に発泡性の断熱材Dを充填、発泡させる。
【0061】
第3実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるため、第3実施形態の各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。
【0062】
而して、第3実施形態においても、第1実施形態の作用効果と基本的に同じ作用効果を達成可能であり、例えば、第3実施形態では、背板ゴムSc3と逆梁1の上部側面1ufとにより左右両端開放の間隙20が画成されていて、その間隙20に断熱材Dが充填、発泡されるので、背板ゴムSc3が断熱材Dと大引ビームB間に介在することで、第1実施形態による前記した床鳴り抑制効果と同等の効果が達成可能である。また背板ゴムSc3と逆梁1の上部側面1ufとの間に画成した間隙20には、逆梁1の上面や側面に発泡性の断熱材Dを吹き付けるのと略同時に断熱材Dを充填、発泡させることができるから、現場作業性が良好である。
【0063】
次に図8を参照して、本発明の第4実施形態を説明する。この第4実施形態では、敷きゴムシートSaの構造が第1実施形態と同様であって、最下層の厚み調整ゴムシート11の下面がふかし壁部1sの上面に直接接着されるが、特に第4実施形態で、ベースゴムシート10の上面には、一側面が大引ビームBの端面Befと対面し且つ他側面が逆梁1の上部側面1ufに重合接着される中実且つ帯板状の背板ゴムSc4の下部が固定される。その固定構造は、第1~第3実施形態と同様であり、背板ゴムSc4の下部が、ベースゴムシート10上面の係合段部10kと逆梁1の上部側面1ufとの間に挟持されることで固定される。
【0064】
第4実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるため、第4実施形態の各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。
【0065】
而して、第4実施形態においても、第1実施形態の作用効果と基本的に同じ作用効果を達成可能であるが、特に第4実施形態のベースゴムシート10の上面には、一側面が大引ビームBの端面Befと対面し且つ他側面が逆梁1の上部側面1ufに重合接着される中実の背板ゴムSc4の下部が固定されるので、この中実の背板ゴムSc4を厚めに形成して断熱機能を発揮させることで、背板ゴムSc4対応位置に断熱材Dを配備する必要もなくなり、現場作業性が良好である。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0067】
例えば、第1~第4実施形態では、敷きゴムシートSaのベースゴムシート10上に、これと別部品である背板ゴムSc1~Sc4が後付けで固定されるものを示したが、第1~第4実施形態の各変形例として、図示はしないが、ベースゴムシート10上に背板ゴムSc1~Sc4を一体成形して、ベースゴムシート10と背板ゴムSc1~Sc4とを単一部品化したものを、本発明の実施例として実施してもよい。これら変形例では、床鳴り抑制用の背板ゴムSc1~Sc4とベースゴムシート10とを一体化、即ち単一部品化することで、緩衝体Sの取り扱いが簡便化され、現場作業性が更に良好となる。
【0068】
また前記実施形態では、大引ビームBとして横断面Σ状の枠材を例示したが、枠材の形態は実施形態に限定されず、種々の横断面形状(例えばI字状の枠体、矩形状の枠体等)のものが実施可能である。
【0069】
また前記実施形態では、敷きゴムシートSaの上面(即ちベースゴムシート10の上面)にビーム受けゴムSbの下面が非接着で当接、載置されるものを示したが、敷きゴムシートSaの上面(即ちベースゴムシート10の上面)にビーム受けゴムSbの下面が接着されてもよい。
【0070】
また前記実施形態では、背板ゴムSc1~Sc3の下部を、これにベースゴムシート10の上面に設けた係合段部10kを係合させて逆梁1の上部側面1ufとの間で挟むことで、背板ゴムSc1~Sc3の下部をベースゴムシート10上に接着剤無しで固定するものを示したが、背板ゴムSc1~Sc3の下部をベースゴムシート10上に固定するに当たり係合段部10kは必須ではない。例えば、係合段部10kを省略して、背板ゴムSc1~Sc3の下部をベースゴムシート10上に接着により固定してもよい。
【0071】
尚、係合段部10kを上記のように省略した場合には、ベースゴムシート10の上面が凹凸や段差部の無い平面となるので、そのベースゴムシート10と調整ゴムシート11~14とを上下逆に重ねて接着してもよく、その場合には、最上層となった調整ゴムシート(例えば第2調整ゴムシート12)のフラットな上面にビーム受けゴムSbの下面が載置又は接着される。
【符号の説明】
【0072】
B・・・・・・大引ビーム
Be・・・・・端部としての一端部
Bef・・・・端面
D・・・・・・断熱材
Ds・・・・・断熱材シート
F・・・・・・躯体
FS・・・・・床スラブ
FW・・・・・壁体
S・・・・・・緩衝体
Sa・・・・・敷きゴムシート
Sb・・・・・ビーム受けゴム
Sbo・・・・係合凹部
Sc1~Sc4・・第1~第4実施形態における背板ゴム
Sc1h・・・横孔
Ya,Yc・・養生シート
1・・・・・・逆梁
1s・・・・・ふかし壁部
1uf・・・・逆梁の、ふかし壁部1sより上方側の上部側面
4・・・・・・床板
10・・・・・ベースゴムシート
10k・・・・係合段部
11~14・・調整ゴムシートとしての第1~第4調整ゴムシート
20・・・・・間隙

【要約】
【課題】ハウス本体と、これの一側壁開口を通して張出した使用位置とハウス本体内に没した格納位置との間を移動可能な可動小屋とを備えるミニハウスにおいて、可動小屋の格納時に使用されない可動支持台の格納スペースを、可動小屋の移動方向で可動小屋より外方側と床体外側端より内方側の扁平空間に確保して、ハウス本体の床体上に可動支持台の待機スペースを確保不要とし、床体を構造簡素化し小型化する。
【解決手段】逆梁1側部に突設したふかし壁部1sの上面に、床板下面を載置支持する大引ビームBの端部Be下面が緩衝体Sを介して支持される集合住宅における床支持構造において、緩衝体Sは、ふかし壁部1sの上面に直接敷設される厚み調整可能な敷きゴムシートSaと、その敷きゴムシートSaの上面に載置されるビーム受けゴムSbとを備え、ビーム受けゴムSbは、大引ビームBの端部Beを係合、載置させる係合凹部Sboを有する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8