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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230207BHJP
   G03F 1/82 20120101ALI20230207BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20230207BHJP
【FI】
H01L21/304 643C
G03F1/82
H01L21/30 502D
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018212198
(22)【出願日】2018-11-12
(65)【公開番号】P2020080350
(43)【公開日】2020-05-28
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高居 康介
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-199261(JP,A)
【文献】特開2014-179490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0153550(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
G03F 1/82
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の第1面に対向して配置されるノズルと、
前記第1面と前記ノズルとの間に配置され、前記ノズルに対して所定の距離を置いて前記基板を支持する支持部と、
前記基板の前記第1面と対向する第2面に処理液を供給する処理液供給部と、
前記ノズルに設けられる第1供給口から前記ノズルと前記基板の第1面との間の空間に第1媒体を供給する第1媒体供給部と、
前記ノズルの前記第1供給口よりも周縁部に設けられる第2供給口から前記空間に前記第1媒体よりも温度が高い第2媒体を供給する第2媒体供給部と、
を備え
前記ノズルは、中央付近が突出した凸部を有し、
前記支持部は、前記ノズルの上面から所定の距離を置いて配置され、前記凸部に対応する領域に前記凸部の面積よりも大きく前記基板の面積よりも小さい開口を有し、
前記支持部には、前記開口を塞ぐように前記基板が載置される基板処理装置。
【請求項2】
前記第1媒体を前記空間の外へと吸引する媒体吸引部をさらに備える請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記媒体吸引部は、前記ノズルの前記第1供給口と前記第2供給口との間の領域に設けられる請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記支持部と前記基板との間に樹脂が設けられる請求項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
少なくとも前記樹脂を加熱する加熱部をさらに備える請求項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記加熱部は、
前記ノズルの前記樹脂の配置位置に対応して設けられる一次コイルと、
前記一次コイルに接続される高周波電源と、
前記支持部の前記樹脂の配置位置に対応して設けられる二次コイルと、
を有する請求項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記加熱部は、光加熱式の加熱部である請求項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板の第1面に対向して配置されるノズルと、
前記第1面と前記ノズルとの間に配置され、前記ノズルに対して所定の距離を置いて前記基板を支持する支持部と、
前記基板の前記第1面と対向する第2面に処理液を供給する処理液供給部と、
前記ノズルに設けられる第1供給口から前記ノズルと前記基板の第1面との間の空間に第1媒体を供給する第1媒体供給部と、
を備え、
前記ノズルは、中央付近が突出した凸部を有し、
前記支持部は、前記ノズルの上面から所定の距離を置いて配置され、前記凸部に対応する領域に前記凸部の面積よりも大きく前記基板の面積よりも小さい開口を有し、
前記支持部には、前記開口を塞ぐように前記基板が載置される基板処理装置。
【請求項9】
前記支持部と前記基板との間に樹脂が設けられる請求項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記樹脂は、弾性を有する樹脂によって構成される請求項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記樹脂を加熱する加熱部をさらに備える請求項または10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記加熱部は、
前記ノズルの前記樹脂の配置位置に対応して設けられる一次コイルと、
前記一次コイルに接続される高周波電源と、
前記支持部の前記樹脂の配置位置に対応して設けられる二次コイルと、
を有する請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記加熱部は、光加熱式の加熱部である請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記ノズルと前記支持部との間に形成される空間に前記第1媒体よりも温度が高い第2媒体を供給する第2媒体供給部をさらに備える請求項から13のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記第2媒体供給部は、前記凸部の周縁部付近に設けられる第2供給口から前記第2媒体を供給する請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記第2媒体供給部は、前記ノズルの側方から、前記ノズルと前記支持部との間の空間に向かって前記第2媒体を供給する請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記第1媒体を前記空間の外へと吸引する媒体吸引部をさらに備える請求項から16のいずれか1つに記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却媒体を基板の下面に接触させ、基板のおもて面に供給した液膜を凍結させて凍結層を形成し、凍結層を除去することによって、基板のおもて面の異物を除去する凍結洗浄が知られている。
【0003】
しかしながら、従来の凍結洗浄では、基板のおもて面を洗浄中に下面に薬液を供給して洗浄することができない。また、基板の下面に供給された冷却媒体が、基板の周縁部の下面または側面で洗浄液および大気と接触することで、基板の周縁部に凍結物が形成され、下面が汚染される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-26436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの実施形態は、凍結洗浄中に基板の下面の汚染を抑制することができる基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態によれば、ノズルと、支持部と、処理液供給部と、第1媒体供給部と、第2媒体供給部と、を備える基板処理装置が提供される。前記ノズルは、基板の第1面に対向して配置される。前記支持部は、前記第1面と前記ノズルとの間に配置され、前記ノズルに対して所定の距離を置いて前記基板を支持する。前記処理液供給部は、前記基板の前記第1面と対向する第2面に処理液を供給する。前記第1媒体供給部は、前記ノズルに設けられる第1供給口から前記ノズルと前記基板の第1面との間の空間に第1媒体を供給する。前記第2媒体供給部は、前記ノズルの前記第1供給口よりも周縁部に設けられる第2供給口から前記空間に前記第1媒体よりも温度が高い第2媒体を供給する。また、前記ノズルは、中央付近が突出した凸部を有する。前記支持部は、前記ノズルの上面から所定の距離を置いて配置され、前記凸部に対応する領域に前記凸部の面積よりも大きく前記基板の面積よりも小さい開口を有する。また、前記支持部には、前記開口を塞ぐように前記基板が載置される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、ノズルの構成の一例を示す上面図である。
図3図3は、第1の実施形態による基板処理方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、第2の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図5図5は、ノズルの構成の一例を示す上面図である。
図6図6は、第3の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図7図7は、基板を載置した状態の支持部の構成の一例を示す上面図である。
図8図8は、第3の実施形態による支持部の構成の他の例を模式的に示す断面図である。
図9図9は、第3の実施形態による支持部の構成の他の例を模式的に示す断面図である。
図10図10は、第4の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図11図11は、ノズルの構成の一例を示す上面図である。
図12図12は、第5の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図13図13は、第5の実施形態による基板処理装置の構成の他の例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる基板処理装置を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図であり、図2は、ノズルの構成の一例を示す上面図である。第1の実施形態による基板処理装置10は、ノズル11と、処理液供給部12と、第1媒体供給部である冷却媒体供給部13と、第2媒体供給部である加熱媒体供給部14と、を備える。
【0010】
ノズル11は、凍結洗浄の処理対象である基板200の第1面である下面に冷却媒体または/および加熱媒体を吹き付ける部材である。ノズル11には、ノズル11の上面よりも高い位置で基板200を支持する支持部16が設けられる。支持部16は、基板200の下面に冷却媒体が接触するように、ノズル11の上面から距離を開けて基板200を支持するものである。基板200は、半導体ウェハなどの半導体基板、ガラス基板、インプリント処理で使用されるテンプレート、露光処理で使用されるフォトマスク、パターン形成前のフォトマスクブランク、EUV(Extreme UltraViolet)マスクブランクなどである。テンプレートには、半導体基板上にパターンを形成する時に使用されるレプリカテンプレートと、レプリカテンプレートにパターンを形成する時に使用されるマスタテンプレートと、を含む。なお、ノズル11の上面は、略水平となっており、支持部16に基板200を支持した時に、上側になる面を上面といい、下側になる面、すなわちノズル11と対向する面を下面という。
【0011】
ノズル11の水平方向の中心付近には、鉛直方向に貫通する貫通孔112が設けられている。貫通孔112がノズル11の上面と交わる部分は、後述する冷却媒体の供給口112aとなる。この例では、供給口112aの径は、貫通孔112よりも大きくされている。
【0012】
ノズル11の水平方向の周縁部付近には、鉛直方向に貫通する複数の貫通孔113が設けられている。ここでは、図2に示されるように、ノズル11の中心から所定の半径の円周上に等間隔に8個の貫通孔113が設けられている。貫通孔113がノズル11の上面と交わる部分は、後述する加熱媒体の供給口113aとなる。
【0013】
なお、ノズル11は、基板載置面の中心を通る基板載置面に垂直な軸を中心に回転可能な構成としてもよい。この場合には、支持部16には、ノズル11の回転によって基板200の水平方向への移動を抑制するストッパが設けられる。
【0014】
処理液供給部12は、凍結洗浄に使用される処理液を供給する。処理液供給部12は、処理液を貯蔵する処理液貯蔵部121と、処理液を基板200の第2面である上面に滴下するノズル122と、ノズル122と処理液貯蔵部121との間を接続する配管123と、配管123を介して処理液を処理液貯蔵部121からノズル122まで送るポンプ124と、処理液貯蔵部121からノズル122への処理液の供給の切り替えを行うバルブ125と、を備える。処理液は、例えば純水、脱イオン水、オゾン水などである。処理液供給部12から基板200上に処理液が滴下されると、基板200上には、処理液膜201が形成される。
【0015】
冷却媒体供給部13は、凍結洗浄時に基板200を処理液の凝固点以下に冷却する第1媒体である冷却媒体を供給する。冷却媒体供給部13は、冷却媒体を貯蔵する冷却媒体貯蔵部131と、冷却媒体貯蔵部131をノズル11の貫通孔112に接続する配管132と、冷却媒体の供給の切り替えを行うバルブ133と、を備える。冷却媒体として、処理液の凝固点よりも低い温度に冷やした窒素ガスなどの気体、あるいは液体窒素、液体フロンなどの液体を使用することができる。
【0016】
加熱媒体供給部14は、凍結洗浄時に基板200の下面の周縁部を0℃よりも高い温度に加熱する第2媒体である加熱媒体を供給する。加熱媒体供給部14は、加熱媒体を貯蔵する加熱媒体貯蔵部141と、加熱媒体貯蔵部141をノズル11の貫通孔113に接続する配管142と、加熱媒体の供給の切り替えを行うバルブ143と、を備える。加熱媒体として、ノズル11周辺空気の露点よりも高い温度に加熱した窒素ガスなどの気体を使用することができる。加熱媒体として、例えば、常温の窒素ガスを用いることができる。また、ここで、加熱とは、冷却媒体によって冷却される基板200、処理液膜201の温度を常温付近に戻すことを意味するものである。
【0017】
凍結洗浄処理時には、冷却媒体がノズル11の供給口112aから供給されるとともに、加熱媒体が供給口113aから供給される。供給口112aから供給される冷却媒体は、ノズル11の上面と基板200の下面との間の空間をノズル11の中心から周縁部に向かって流れる。そして、周縁部付近に設けられた供給口113aから供給される加熱媒体と混合される。この時、ノズル11の水平方向の端部から排出される冷却媒体と加熱媒体との混合物の温度が、処理液の凝固点およびノズル11周辺空気の露点よりも高くなるように、冷却媒体の温度および流量と、加熱媒体の温度および流量と、が調整される。これによって、ノズル11周辺空気に含まれる水分がノズル11の周縁部および基板200の下面の周縁部で凝固した霜、あるいは処理液が基板200の側面および下面に垂れて凝固した凍結層を含む凝固物が形成されることがない。
【0018】
つぎに、このような基板処理装置における処理方法について説明する。図3は、第1の実施形態による基板処理方法の手順の一例を示すフローチャートである。まず、凍結洗浄の前に処理対象の基板200の表面を親水化処理する(ステップS11)。親水化処理は、例えば基板200の表面にUV(ultraviolet)光を照射することによって行われる。これによって、凍結洗浄で使用される処理液が基板200の表面に濡れやすくなる。そして、親水化処理した基板200を支持部16に支持させる。
【0019】
ついで、処理液がポンプ124によって配管123を介してノズル122から基板200上に供給され、基板200の上面上に処理液膜201が形成される(ステップS12)。このとき、基板載置面に垂直な軸を中心にノズル11を回転させると、基板200上に供給された処理液が基板200全面に略均一に広がった処理液膜201を形成することができる。
【0020】
その後、冷却媒体供給部13から配管132を介してノズル11の供給口112aへと冷却媒体を供給する。また、加熱媒体供給部14からノズル11の供給口113aを介してノズル11と基板200の下面との間の空間の周縁部に加熱媒体が供給される。ノズル11の中心の供給口113aから吐出される冷却媒体は、基板200の下面とノズル11の上面との間に設けられた隙間を、外周部に向かって流れる。このとき、基板200の下面が冷却媒体と接触するので、基板200は、下面側から冷却される。そして、基板200の上面側の温度が処理液の凝固点以下となり、さらに冷却されることにより処理液膜201は過冷却状態を経た後に凍結する(ステップS13)。処理液膜201は、基板200と接触している部分から順に凍る。
【0021】
また、基板200の下面とノズル11の上面との間の空間を周縁部に向かって流れる冷却媒体は、供給口113aからの加熱媒体と混合される。この時、上記したように、ノズル11と基板200の下面との隙間から排出される気体の温度が、ノズル11周辺空気の露点よりも十分に高くなるように、冷却媒体および加熱媒体の流量および温度が調整されているので、ノズル11の周縁部および基板200の下面の周縁部でノズル11周辺空気に含まれる水分が凝固することがない。また、基板200の側面および下面に垂れた処理液が凝固することがない。
【0022】
処理液膜201が凍った後、バルブ133を閉じて、冷却媒体供給部13からの冷却媒体の供給および加熱媒体供給部14からの加熱媒体の供給を止め、また、処理液供給部12からの処理液をノズル122を介して基板200の上面に供給し、リンス処理を行う(ステップS14)。これによって、処理液膜201が解凍され、基板200の上面の異物を含む処理液201が除去される。処理液膜201の解凍およびリンス処理は、処理液膜201が全膜厚にわたって凍結した後に実行されてもよいし、基板200との境界から所定の厚さ、たとえば100nm程度の厚さの処理液膜201が凍結した後に実行されてもよい。その後、基板200を乾燥させ(ステップS15)、基板200の凍結洗浄処理が終了する。
【0023】
なお、ステップS11~S15の工程を一度実施しただけでは、基板200の上面に付着した異物を除去することができない場合がある。そのような場合には、ステップS12~S14の処理を複数回繰り返して実行してもよい。
【0024】
また、図1では、ノズル11の面積は、基板200の面積よりも小さい場合を示したが、ノズル11の面積を基板200の面積とほぼ同じ大きさとしてもよい。
【0025】
第1の実施形態では、凍結洗浄処理中に、基板200を載置したノズル11の中心付近から冷却媒体を供給し、ノズル11の周縁部付近から加熱媒体を供給する。これによって、凍結洗浄処理中に、基板200の下面とノズル11の上面との間の空間から排出される冷却媒体および加熱媒体が混合した混合媒体の温度は、ノズル11周辺空気の露点および処理液の凝固点よりも十分に高くなる。その結果、ノズル11の周縁部および基板200の下面の周縁部でノズル11周辺空気中の水分が凝固することがなく、また、基板200の側面および下面に垂れた処理液が凝固することがない。このように、ノズル11の周縁部並びに基板200の下面および下面への凝固物の形成を抑制することができるので、基板200の下面の汚染を抑制することができる。
【0026】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図であり、図5は、ノズルの構成の一例を示す上面図である。第2の実施形態による基板処理装置10Aは、第1の実施形態の基板処理装置10に、媒体吸引部15をさらに備える。また、ノズル11の水平方向の中心と、貫通孔113が設けられる領域との間の領域には、鉛直方向に貫通する貫通孔114が設けられる。貫通孔114がノズル11の上面と交わる部分は、冷却媒体と加熱媒体との吸引口114aとなる。
【0027】
媒体吸引部15は、凍結洗浄時にノズル11の上面と基板200の下面との間の空間から、冷却媒体および加熱媒体を吸引する。媒体吸引部15は、冷却媒体および加熱媒体を吸引する吸引部151と、吸引部151をノズル11の貫通孔114に接続する配管152と、冷却媒体および加熱媒体の吸引の切り替えを行うバルブ153と、を備える。吸引部151として、例えば真空ポンプなどを用いることができる。なお、第1の実施形態と同一の構成要素には、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
このような基板処理装置での動作について説明する。冷却媒体がノズル11の供給口112aから供給され、加熱媒体が供給口113aから供給されるとともに、冷却媒体および加熱媒体が吸引口114aから吸引される。なお、吸引口114aからは冷却媒体および加熱媒体が吸引されるが、吸引口114aは冷却媒体の通過領域に設けられているので、主に冷却媒体が吸引される。ここで、ノズル11の上面と基板200の下面との隙間から排出される気体の温度が、ノズル11周辺空気の露点よりも十分に高くなるように、冷却媒体および加熱媒体の温度および流量並びに吸引力が調整される。これによって、ノズル11周辺空気中の水分がノズル11の周縁部および基板200の下面の周縁部で凝固した霜、あるいは処理液が基板200の側面および下面に垂れて凝固した凍結層を含む凝固物が形成されることがない。なお、このような基板処理装置10Aでの凍結洗浄処理方法は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0029】
第2の実施形態では、凍結洗浄処理中に、基板200を載置したノズル11の中心付近から冷却媒体を供給し、ノズル11の周縁部付近から加熱媒体を供給する。また、冷却媒体の供給口112aと加熱媒体の供給口113aとの間の領域に設けた吸引口114aから主に冷却媒体を吸引する。この時、基板200の下面とノズル11の上面との間の空間から排出される混合媒体の温度が、ノズル11周辺空気の露点および処理液の凝固点よりも十分に高くなるように吸引量、冷却媒体の温度および流量、並びに加熱媒体の温度および流量が調節される。これによって、ノズル11の周縁部および基板200の下面の周縁部でノズル11周辺空気中の水分が凝固することがなく、また、基板の側面および下面に垂れた処理液が凝固することがない。このように、ノズル11の周縁部並びに基板200の下面および下面への凝固物の形成を抑制することができるので、基板200の下面の汚染を抑制することができる。
【0030】
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図であり、図7は、基板を載置した状態の支持部の構成の一例を示す上面図である。なお、以下では、第1の実施形態と同じ部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。第3の実施形態の基板処理装置10Bでは、ノズルおよび支持部の構成が第1の実施形態と異なる。ノズル11は、中央付近で上面111よりも突出した凸部117を有する。水平方向における凸部117の面積は、基板200の面積よりも小さい。ノズル11の中心付近には、鉛直方向に貫通する貫通孔112が設けられている。貫通孔112がノズル11の上面と交わる部分は、冷却媒体の供給口112aとなる。
【0031】
支持部16aは、ノズル11の凸部117の周囲を囲むように、中心付近に開口部162を有する円環状を有する。支持部16aは、セラミック材料、ポリテトラフルオロエチレンなどの樹脂材料などによって構成される。水平面内における開口部162の大きさは、ノズル11の凸部117の面積よりも大きく、基板200の面積よりも小さい。支持部16aの上面の内周側の基板200が載置される領域には、平坦部161が設けられる。開口部162を含む平坦部161は、矩形状を有している。この矩形状の周縁部に沿って、平坦部161上にシール部材17が設けられる。シール部材17は、弾性を有する樹脂によって構成され、例えばシリコーンゴムなどの樹脂ゴムによって構成される。
【0032】
また、平坦部161の4つの角部には、基板200の水平方向のずれを防止するストッパ163が設けられる。これによってシール部材17上に基板200が載置されると、基板200が載置された支持部16aの上面と下面との間での気体が通り抜けできなくなる。なお、シール部材17は、支持部16aの内周側に連続的に設けられることが望ましいが、一部が欠けていてもよい。支持部16aは、この例では、平坦部161の外側から外周側に向かって、支持部16aの上面の位置が低くなるテーパ形状を有している。
【0033】
支持部16aは、ノズル11の上面と接触しないように配置される。また、支持部16aの内周側の上面の位置は、ノズル11の凸部117の上面の位置よりも高くなるように配置される。これによって、ノズル11の周縁部の上面111と支持部16aの下面との間と、ノズル11の凸部117の上面と支持部16aに載置された基板200の下面との間と、には、連続した空間が設けられることになる。支持部16aは、ノズル11の下方に設けられる台座部18に、接続部19を介して配置される。台座部18は、図示しないモータなどによって水平面内で回転可能な構成を有する。
【0034】
このような基板処理装置10Bでは、ノズル11の中心から周縁部に向かって冷却媒体が流れるように、供給口112aからの冷却媒体の流量が設定される。これによって、冷却媒体は、基板200とノズル11の凸部117との間の空間を、凸部117の中心から周縁部に向かって流れる。基板200の下面を冷却しながら、ノズル11周辺空気がノズル11と支持部16aとの間の空間に入り込むことを抑制することができる。また、基板200が載置された支持部16aは、開口部162を介して上面と下面との間で気体が通り抜けることができない。そのため、基板200とノズル11との間の空間にノズル11周辺空気が入り込むことがない。その結果、基板200の下面の周縁部に霜が形成されることを抑制することができる。
【0035】
また、基板200上から垂れた処理液が側面から下面に回り込むことも防ぐことができる。つまり、基板200の側面に移動してしまった処理液による下面の汚染を防ぐこともできる。
【0036】
図6では、支持部の内周側の平坦部上にシール部材17を設ける場合を示したが、実施形態がこれに限定されるものではない。図8および図9は、第3の実施形態による支持部の構成の他の例を模式的に示す断面図である。図8(a)に示されるように、円環状の支持部16aの内周側に、開口部162を含めて矩形状となる凹部164を設け、この凹部164に基板200が載置されるようにしてもよい。この時、凹部164の側面164aに沿ってシール部材17を設けて、基板200を載置した支持部16aの上面と下面との間の気体の流れを遮断する構造としてもよい。
【0037】
また、図8(b)に示されるように、支持部16aの内周面に開口部162を含めた形状が矩形状となる凹部165を設け、この凹部165に基板200を載置してもよい。この時、凹部165の上面165aに沿ってシール部材17を設けて、基板200を載置した支持部16aの上面と下面との間の気体の流れを遮断する構造としてもよい。
【0038】
さらに、図9に示されるように、支持部16a上に、シール部材17を介さずに基板200を載置する面受け構造としてもよい。図9では、図8(a)と同様に、円環状の支持部16aの内周側に、開口部162を含めて矩形状となる凹部164を設け、この凹部164の底面164b上に直に基板200が載置されるようにしている。
【0039】
なお、このような基板処理装置10Bでの凍結洗浄処理方法は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0040】
第3の実施形態では、支持部16a上に開口部162を閉塞するように基板200を載置し、支持部16aをノズル11の上面と所定の距離を置いて配置した状態で、ノズル11の中心付近から冷却媒体を供給する。これによって、凍結洗浄処理中に、基板200の下面とノズル11の上面との間の空間から冷却媒体が排出される。ノズル11の周縁部では、ノズル11周辺空気中の水分が凍結して霜が形成される可能性があるが、霜が形成される位置は、基板200から離れているので、霜によって基板200の下面が汚染されることがない。
【0041】
また、基板200を載置した支持部16aの上面から下面へとノズル11周辺空気、および基板200上に滴下された処理液が通過し難い構造となっているので、基板200の下面とノズル11の凸部117の上面との間で水蒸気が凝固した霜または処理液が凍結した凍結層などを含む凝固物が基板200の下面に付着することが抑制される。その結果、基板200の下面の汚染を抑制することができる。
【0042】
(第4の実施形態)
図10は、第4の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図であり、図11は、ノズルの構成の一例を示す上面図である。なお、以下では、第1~第3の実施形態と同じ部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。第4の実施形態による基板処理装置10Cは、第3の実施形態と第2の実施形態とを組み合わせたものである。すなわち、基板処理装置10Cは、図6の構成に、加熱媒体供給部14と、媒体吸引部15と、をさらに設けたものである。
【0043】
ノズル11の凸部117の周縁部の領域には、鉛直方向に貫通する貫通孔114が設けられる。貫通孔114がノズル11の上面と交わる部分は、冷却媒体と加熱媒体との吸引口114aとなる。
【0044】
また、加熱媒体供給部14は、ノズル11の側面のノズル11の上面111と支持部16aの下面との間の空間に対向するように、吹き出し口142aが配置されるように設けられる。なお、吹き出し口142aは、ノズル11の周囲に複数か所設けてもよい。加熱媒体は、例えば常温の窒素、水蒸気を含まない空気などである。加熱媒体供給部14は、0℃よりも低い温度の冷却媒体がノズル11と支持部16aとの間の空間から外部に排出されないように加熱媒体を供給する。
【0045】
このような基板処理装置10Cでの動作について説明する。冷却媒体がノズル11の供給口112aから供給され、加熱媒体が吹き出し口142aから供給されるとともに、冷却媒体および加熱媒体が吸引口114aから吸引される。なお、吸引口114aからは冷却媒体および加熱媒体が吸引されるが、吸引口114aは冷却媒体の流路上にあるので、主に冷却媒体が吸引される。
【0046】
また、吸引口114aの位置は、シール部材17の位置よりもノズル11の中心側に配置されているので、シール部材17の位置に到達する冷却媒体の量を少なくすることができる。さらに、吹き出し口142aから供給される加熱媒体によって、ノズル11の凸部117の側面付近の空間では、冷却媒体と加熱媒体とが混合され、冷却媒体単体の場合よりも温度が高くなっている。これらによって、シール部材17の温度低下を抑制することができる。なお、このような基板処理装置10Cでの凍結洗浄処理方法は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0047】
図10では、加熱媒体供給部14をノズル11の側面の外側に設ける場合を示したが、図4のように、ノズル11の凸部117の周縁部に配置するようにしてもよい。この場合には、吸引口114aは、凸部117の上面上の冷却媒体の供給口112aと加熱媒体の供給口との間の領域に設けられる。
【0048】
第4の実施形態では、凍結洗浄処理中に、基板200を載置したノズル11の中心付近から冷却媒体を供給し、ノズル11の側面のノズル11と支持部16aとの間から加熱媒体を供給する。また、ノズル11の周縁部付近で冷却媒体を吸引する。吸引口114aは、シール部材17よりもノズルの中心側に位置しているので、シール部材17に到達する冷却媒体の量を減少させることができる。また、ノズル11と支持部16aとの間の空間に外部から加熱媒体を供給することで、0℃未満の冷却媒体がノズルの側面から流出することを抑制するとともに、シール部材17の設置位置付近での冷却媒体の温度を高めることができる。その結果、基板200の裏面の汚染を抑制しながら、シール部材17の劣化を抑制し、シール部材17の寿命を延ばすことができるという効果を有する。
【0049】
(第5の実施形態)
図12は、第5の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。なお、以下では、第1~第4の実施形態と同じ部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。第5の実施形態の基板処理装置10Dでは、シール部材17を加熱する加熱部である誘導加熱機構が設けられている。具体的には、シール部材17の配置位置に対応するノズル11の内部の位置には一次コイル21が設けられている。一次コイル21は、矩形の環状を有している。一次コイル21には、高周波電源23が接続されている。また、シール部材17の配置位置に対応する支持部16aの内部の位置には、二次コイル22が設けられている。二次コイル22も、一次コイル21と同様に矩形の環状を有している。二次コイル22は、シール部材17に近接して配置される。一次コイル21と二次コイル22とは、平面視上で略同じ位置に設けられる。
【0050】
高周波電源23が投入されると、一次コイル21に高周波電流が流れ、この高周波電流によって二次コイル22に誘導電流が流れる。この誘導電流によって、二次コイル22が加熱される。二次コイル22の加熱によって支持部16a上のシール部材17が加熱される。そのため、基板200が冷却されている状態でも、シール部材17の温度は基板200ほど低下しないので、シール部材17の冷却による劣化を抑制することができる。なお、このような基板処理装置10Dでの凍結洗浄処理方法は、第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0051】
図12では、二次コイル22を支持部16aに埋め込む場合を示したが、実施形態はこれに限定されない。たとえば、シール部材17自体が導電性を有し、一次コイル21に高周波電流を流した時に誘導加熱されるものであってもよい。
【0052】
また、図12では、誘導加熱機構によって、シール部材17を加熱する場合を示したが、実施形態はこれに限定されない。図13は、第5の実施形態による基板処理装置の構成の他の例を模式的に示す図である。図13の基板処理装置10Eでは、誘導加熱機構は設けられず、加熱部である光加熱機構が設けられている。光加熱機構は、光源25を有する。光源25からの光がシール部材17に照射されるように、光源25が配置される。図12の例では、光源25は、シール部材17の側方に配置されている。光源25は、凍結洗浄処理時に図示しない電源が投入され、シール部材17の温度の低下を抑制する。
【0053】
第5の実施形態では、シール部材17を加熱する加熱部を設けた。これによって、凍結洗浄時に、基板200の裏面の汚染を抑制しながら、シール部材17の温度低下を抑制することができ、シール部材17の寿命を第4の実施形態の場合に比して伸ばすことができるという効果を有する。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
10,10A~10E 基板処理装置、11 ノズル、12 処理液供給部、13 冷却媒体供給部、14 加熱媒体供給部、15 媒体吸引部、16,16a 支持部、17 シール部材、18 台座部、19 接続部、21 一次コイル、22 二次コイル、23 高周波電源、25 光源、112~114 貫通孔、112a,113a 供給口、114a 吸引口、117 凸部、121 処理液貯蔵部、122 ノズル、123,132,142,152 配管、124 ポンプ、125,133,143,153 バルブ、131 冷却媒体貯蔵部、141 加熱媒体貯蔵部、142a 吹き出し口、151 吸引部、161 平坦部、162 開口部、163 ストッパ、200 基板、201 処理液膜。
図1
図2
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図10
図11
図12
図13