(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-06
(45)【発行日】2023-02-14
(54)【発明の名称】検体の電気泳動分離および分析のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/447 20060101AFI20230207BHJP
【FI】
G01N27/447 315D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021063545
(22)【出願日】2021-04-02
(62)【分割の表示】P 2017558412の分割
【原出願日】2016-05-20
【審査請求日】2021-04-28
(32)【優先日】2015-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507018768
【氏名又は名称】プロテインシンプル
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ローチ,デイビッド ジョン
(72)【発明者】
【氏名】モルホ,ジョシュア アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー,ケリー
(72)【発明者】
【氏名】トラン,ダイン シー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャバート,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ニルソン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】クシュニール,ユリ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューストン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ケネディー,コリン ビー.
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表平07-503065(JP,A)
【文献】特開昭64-080851(JP,A)
【文献】特開2006-162445(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0089607(US,A1)
【文献】米国特許第08562802(US,B1)
【文献】特開2011-209301(JP,A)
【文献】特表平05-503362(JP,A)
【文献】特開2003-185628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的なサンプルを分析するための装置であって、
前記生物学的なサンプルの中の検体を分離するように構成されたポリマー媒体を有するチップを含有するように構成された凹部エリアを画定する底部表面を有する電気泳動セルであって、前記凹部エリアは、前記チップの前記ポリマー媒体の表面が前記
電気泳動セルの前記底部表面の非凹部エリアと面一状態になるように、前記チップを含有するように構成された電気泳動セルと、
前記電気泳動セルに配置された電極であって、電源からの電流の流れに応じて、前記凹部エリアを横切って電界を作り出すように構成された電極と、
前記凹部エリアの上方かつ前記凹部エリアの少なくとも1つの側に配置された堰構造体と、備え、
前記堰構造体は、前記電極から離れて、かつ、当該電極と前記凹部エリアの前記少なくとも1つの側との間にあり、
前記堰構造体は、前記凹部エリアに前記チップが配置されているときに、前記堰構造体の下方の、前記チップを横切る溶液の流れを制御するように構成されている、
装置。
【請求項2】
前記電気泳動セルの本体部は、目標検体の存在に関して前記生物学的なサンプルを分析するために、分析デバイスの受容部の中に配置されるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記チップをさらに含み、
前記チップの前記ポリマー媒体は、前記生物学的なサンプルからの目標検体と共有結合するように構成された官能基を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電気泳動セル上の伝導性の接触パッドをさらに含み、
前記伝導性の接触パッドは、前記電極に電気的に連結されており、目標検体の存在に関して前記生物学的なサンプルを分析するために電気泳動セルが分析デバイスの受容部の中に配置されているときに、前記
分析デバイスの電源に電気的に連結されるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記電極は、前記凹部エリアの第1の側に配置されている第1の電極であり、
前記装置は、前記凹部エリアの第2の側に配置されている第2の電極をさらに含み、
前記第1の電極および前記第2の電極は、共同で前記凹部エリアを横切って前記電界を作り出すように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記ポリマー分離媒体は、内部に複数のマイクロウェルが形成されており、
前記複数のマイクロウェルのうちのそれぞれのマイクロウェルは、前記生物学的なサンプルからの単一細胞を収容するように構成されており、
前記複数のマイクロウェルのうちのそれぞれのマイクロウェルは、約100ミクロンよりも小さい直径を有している、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記堰構造体は、前記電気泳動セルが
分析デバイスの受容部の中にあるときに、前記チップの上部表面の上のバブルを捕捉するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記堰構造体は、前記電気泳動セルが
分析デバイスの受容部の中にあるときに、バブルが前記チップの上部表面の上に浮遊することを抑制するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記堰構造体は、前記電気泳動セルが
分析デバイスの受容部の中にあるときに、前記電界の中の摂動、活性化エネルギーの供給源によって発生させられる波長の遮断、および、バッファー溶液の流体運動のうちの少なくとも1つを低減させるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記電気泳動セルは、前記
電気泳動セルからの溶液の除去を可能にするように構成された注ぎフィーチャーまたは吐出フィーチャーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記電気泳動セルは、バッファーを含有するように構成された貯蔵部を画定し、
前記堰構造体は、前記凹部エリアと前記貯蔵部の出口との間に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記電気泳動セルは、バッファーを含有するように構成された貯蔵部を画定し、
前記装置は、前記貯蔵部の出口を通って前記凹部エリアに入るバッファーの流れを制御するように構成された弁をさらに含み、
前記堰構造体は、前記凹部エリアと前記貯蔵部の前記出口との間に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記堰構造体は、凹部エリアの
上方かつ当該凹部エリアの第1の側に配置された第1の堰構造体であり、
前記電極は、前記凹部エリアの
前記第1の側に配置された第1の電極であり、
前記第1の堰構造体は、前記第1の電極と前記凹部エリアの
前記第1の側との間に配置されており、
前記装置は、
前記凹部エリアの
上方かつ当該凹部エリアの第2の側に配置された第2の堰構造体と、
前記凹部エリアの
前記第2の側に配置された第2の電極と
をさらに含み、
前記第2の堰構造体は、
前記第2の電極から離れて、かつ、前記第2の電極と前記凹部エリア
の前記第2の側との間に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記堰構造体は、凹部エリアの
上方かつ当該凹部エリアの第1の側に配置された第1の堰構造体であり、
前記電極は、前記凹部エリアの
前記第1の側に配置された第1の電極であり、
前記第1の堰構造体は、前記第1の電極と前記凹部エリア
の前記第1の側との間に配置されており、
前記第1の堰構造体は、電気泳動中に前記第1の電極において形成されたバブルが前記チップに向かって浮遊することを妨げるように構成されており、
前記装置は、
前記凹部エリアの
上方かつ当該凹部エリアの第2の側に配置された第2の堰構造体と、
前記凹部エリアの
前記第2の側に配置された第2の電極と
をさらに含み、
前記第2の堰構造体は、
前記第2の電極から離れて、かつ、前記第2の電極と前記凹部エリア
の前記第2の側との間に配置されており、
前記第2の堰構造体は、電気泳動中に前記第2の電極において形成されたバブルが前記チップに向かって浮遊することを妨げるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって認可された認可番号R43GM112236の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において特定の権利を有している。
【0002】
[0002] 関連出願との相互参照
本出願は、2015年5月20日に出願された「Systems and Methods for Electrophoretic Separation and Analysis of Analytes」という標題の米国仮特許出願第62/164,495号の優先権および利益を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
[0003] 本開示は、目標タンパク質などのような1つまたは複数の目標検体の存在に関して生物学的なサンプルを分析する(assay)ためのデバイス、システム、および方法を提供する。
【0004】
[0004] タンパク質発現の細胞ごとの変化を理解することは、腫瘍の病因を理解すること、幹細胞の分化状態を特徴付けること、ならびに、薬物開発、ターゲットスクリーニング、および毒性研究のための、良く制御されて機能的に検証されたインビトロの人間の「シャーレの中の疾患(disease in a dish)」モデルを開発することの大きな部分である。単一細胞分析は、ますます重要性を増しているが、トランスクリプトーム(たとえば、RNA)技術およびゲノム(たとえば、DNA)技術に大きく制限されてきた。重要なことには、これらの測定は、常に、表現型を指定するタンパク質レベルと相関しているわけではない。単一細胞タンパク質測定は、幹細胞、癌、および免疫学研究において、乗り越えられないハードルを提示する。
【0005】
[0005] 生物学的なサンプルのタンパク質レベル発現を決定するための方法は、電気泳動を含み、その後にプローブ分析が続く。電気泳動は、典型的に、分離媒体の中の生物学的なサンプルに電界を印加する技法であり、生物学的なサンプルの個々の分子が、分子サイズおよび電荷に基づいて、分離媒体の全体にわたって分散することとなるようになっている。電気泳動の前の細胞溶解は、生物学的なサンプルを個々の分子のセットまで低減させることが可能であり、それは、分離媒体の全体にわたって効果的に分離していることが可能である。細胞溶解、電気泳動、および、その後のプローブ分析が、典型的に、広範なユーザー操作によって、別々のプラットフォームの上で実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006] したがって、単一の自己完結型のシステムを使用して、さまざまなタイプの検体の存在に関して分析するためのデバイス、システム、および方法に対する必要性が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007] 本開示の態様は、1つまたは複数の目標検体の存在に関して生物学的なサンプルを分析するためのシステムであって、システムは、ハウジングを含み、ハウジングは、(i)凹部エリアを有する電気泳動セルを受け入れるように構成されている受容部であって、凹部エリアは、チップを受け入れるように構成されており、チップは、活性化されたときに1つまたは複数の目標検体に共有結合する活性化可能な官能基を備えたポリマー分離媒体を含み、チップは、生物学的なサンプルを受け入れる、受容部と、(ii)活性化可能な官能基を活性化させるために活性化エネルギーを供給する活性化エネルギーの供給源とを含む、システムを提供する。システムは、活性化エネルギーの供給源に動作可能に連結されているコンピューターコントローラーであって、コンピューターコントローラーは、活性化エネルギーの供給源からポリマー分離媒体へ活性化エネルギーの適用を方向付けし、活性化可能な官能基を活性化させるようにプログラムされている、コンピューターコントローラーをさらに含む。
【0008】
[0008] いくつかの実施形態では、電気泳動セルは、除去可能である。いくつかの実施形態では、チップは、消耗品である。いくつかの実施形態では、ハウジングは、約50cmよりも小さい長さ、約50cmよりも小さい幅、および/または、約50cmよりも小さい高さを有している。いくつかの実施形態では、長さは、約40cmよりも小さく、幅は、約40cmよりも小さく、および/または、高さは、約40cmよりも小さい。
【0009】
[0009] いくつかの実施形態では、ポリマー分離媒体は、内部に複数のマイクロウェルが形成されている。いくつかの実施形態では、マイクロウェルは、複数のマイクロウェルの個々のマイクロウェルの中に、生物学的なサンプルからの単一細胞を収容するように寸法決めされており、個々のマイクロウェルは、100μm以下の寸法を有している。
【0010】
[0010] いくつかの実施形態では、ポリマー分離媒体は、架橋されている。いくつかの実施形態では、活性化可能な官能基は、ベンゾフェノン基である。いくつかの実施形態では、活性化可能な官能基は、電磁放射線によって活性化可能である。いくつかの実施形態では、電磁放射線は、可視光、紫外(UV)光、または赤外光である。
【0011】
[0011] いくつかの実施形態では、コンピューターコントローラーは、ハウジングの中に含まれている。いくつかの実施形態では、コンピューターコントローラーは、電子デバイスの中に含まれており、電子デバイスは、ハウジングに対してリモートに位置している。いくつかの実施形態では、システムは、電力供給源をさらに含み、電力供給源は、コンピューターコントローラーに電力を提供し、1つまたは複数の目標検体の存在に関して生物学的なサンプルを分析する。
【0012】
[0012] いくつかの実施形態では、活性化エネルギーの供給源は、紫外線放射線の供給源である。いくつかの実施形態では、活性化エネルギーの供給源の外部面は、光学フィルターを含む。いくつかの実施形態では、光学フィルターは、光学フィルターを通して、分析に適合する波長のサブセットを通過させるように構成されている。いくつかの実施形態では、光学フィルターは、バッファー溶液の凝縮を低減させるように構成されている。
【0013】
[0013] いくつかの実施形態では、システムは、コンピューターコントローラーに動作可能に連結されている電子的なディスプレイをさらに含み、電子的なディスプレイは、ユーザーインターフェースを有しており、ユーザーインターフェースは、ユーザーが生物学的なサンプルを分析するようにコンピューターコントローラーに指示することを可能にする。
【0014】
[0014] いくつかの実施形態では、電気泳動セルは、凹部エリアの両側に1つまたは複数の電極を含む。いくつかの実施形態では、システムは、電力供給源をさらに含み、電力供給源は、1つまたは複数の電極に電力を提供し、凹部エリアを横切って電界を発生させる。いくつかの実施形態では、コンピューターコントローラーは、一定時間にわたって電界の電界強度を方向付けするようにプログラムされている。いくつかの実施形態では、システムは、1つまたは複数のピンを収容するように構成されている、ハウジングの中に形成された複数のスロットをさらに含み、1つまたは複数のピンが電気泳動セルの1つまたは複数の伝導性の接触パッドに隣接しているときに、電気的な接続が形成される。いくつかの実施形態では、コンピューターコントローラーは、1つまたは複数のピンのそれぞれの電圧極性を方向付けし、電界の方向を制御するようにプログラムされている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のピンは、スプリング荷重式のピンである。いくつかの実施形態では、複数のスロットは、複数の電気泳動セルフォームファクターおよび/または複数の電極構成を収容するように構成されている。いくつかの実施形態では、システムは、1つまたは複数のレベリングセンサーをさらに含み、1つまたは複数のレベリングセンサーは、凹部エリアの中の溶液がレベリングされることを可能にし、電界の中の空間的な摂動を低減させる。いくつかの実施形態では、システムは、1つまたは複数のレベリングインジケーターをさらに含み、1つまたは複数のレベリングインジケーターは、凹部エリアの中の溶液のレベリングの程度に関する指示を提供する。
【0015】
[0015] いくつかの実施形態では、システムは、コンピューターコントローラーに動作可能に連結されているセンサーをさらに含み、センサーは、受容部の中へ挿入されるチップの上の1つまたは複数の識別部材の識別を可能にする。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の識別部材は、1次元のまたは2次元の識別バーコードを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の識別部材は、無線周波数識別(RFID)ユニットを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の識別部材のそれぞれは、一意的である。いくつかの実施形態では、システムは、コンピューターコントローラーに連結されているメモリーをさらに含み、メモリーは、1つまたは複数の識別部材の識別を記憶する。いくつかの実施形態では、コンピューターコントローラーは、1つまたは複数の識別部材の識別を、リモートコンピューターシステムのメモリーから送信または読み出すようにプログラムされている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の識別部材の第1の識別部材は、分析するために分析パラメーターの第1のセットを決定する。いくつかの実施形態では、コンピューターコントローラーは、所与の識別部材および/または分析パラメーターのセットをアップロードするようにプログラムされている。いくつかの実施形態では、センサーは、1つまたは複数の識別部材を光学的に識別する光学的なセンサーである。
【0016】
[0016] いくつかの実施形態では、ハウジングは、溶液の供給源をさらに含む。いくつかの実施形態では、コンピューターコントローラーは、溶液の供給源からチップへ溶液の流れを方向付けるようにプログラムされている。いくつかの実施形態では、システムは、バッファー溶液の供給源の貯蔵部に動作可能に連結された1つまたは複数の弁をさらに含み、コンピューターコントローラーは、1つまたは複数の弁を開閉させ、貯蔵部からチップへの溶液の流れを方向付けるようにプログラムされている。いくつかの実施形態では、溶液は、バッファー溶液である。いくつかの実施形態では、コンピュータープロセッサーは、少なくとも第1の溶液および第2の溶液を溶液の供給源からチップへ別々に導入するようにプログラムされている。いくつかの実施形態では、コンピュータープロセッサーは、2つ以上の溶液を溶液の供給源からチップへ連続して別々に導入するようにプログラムされている。
【0017】
[0017] いくつかの実施形態では、システムは、1つまたは複数のインターロッキングスイッチをさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のインターロッキングスイッチをロックすることは、活性化エネルギーの供給源の活性化を可能にする。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のインターロッキングスイッチをロックすることは、電力供給源の活性化を可能にする。
【0018】
[0018] いくつかの実施形態では、システムは、電気泳動セルの中に形成された1つまたは複数の堰構造体をさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の堰構造体は、チップの上部表面の上のバブルを捕捉する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の堰構造体は、バブルがチップの上部表面の上に浮遊することを防止する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の堰構造体は、電界の中の摂動を低減させ、活性化エネルギーの供給源によって発生させられる波長の遮断を低減させ、バッファー溶液の流体運動を減衰させ、または、それらの組み合わせである。
【0019】
[0019] いくつかの実施形態では、システムは、リンシングフィクスチャーをさらに含み、リンシングフィクスチャーの角度は、チップに対するバッファー溶液の流量を制御する。いくつかの実施形態では、システムは、チップに隣接するプロービングフィクスチャーをさらに含む。いくつかの実施形態では、システムは、電気泳動セルを空にすることを支援するために電気泳動セルの中に形成された1つまたは複数の注ぎフィーチャーまたは吐出フィーチャーをさらに含む。
【0020】
[0020] 本開示の追加的な態様および利点は、以下の詳細な説明から容易に当業者に明らかになることとなり、本開示の例示目的の実施形態だけが、示されて説明されている。認識されることとなるように、本開示は、他の実施形態および異なる実施形態も可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて本開示から逸脱することなく、さまざまな観点において修正例が可能である。したがって、図面および説明は、事実上例示目的のものとしてみなされるべきであり、制限するものとしてみなされるべきではない。
【0021】
[0021] いくつかの実施形態では、目標検体の存在に関して生物学的なサンプルを分析するためのシステムは、分析デバイスおよびコンピューターコントローラーを含む。分析デバイスは、ハウジングと、ハウジングの中に配置された受容部と、活性化エネルギーの供給源とを含む。受容部は、電気泳動セルを受け入れるように構成されている。電気泳動セルは、生物学的なサンプルを受け入れるように構成されたチップを受け入れるように構成された凹部エリアを有している。チップは、活性化されたときに目標検体に共有結合する活性化可能な官能基を備えたポリマー分離媒体を含む。活性化エネルギーの供給源は、活性化可能な官能基を活性化させるために活性化エネルギーを供給するように構成されている。コンピューターコントローラーは、活性化エネルギーの供給源に操作可能に連結されており、また、活性化エネルギーの供給源を活性化させるように構成されており、活性化エネルギーの適用をポリマー分離媒体へ方向付けし、活性化可能な官能基を活性化させる。
【0022】
[0022] いくつかの実施形態では、装置は、ハウジングと、受容部と、放射線エネルギー供給源と、電力供給源と、コンピューターコントローラーとを含む。ハウジングは、ベースおよび蓋部を含む。受容部は、ベースの内部表面によって画定されており、電気泳動セルを受け入れるように構成されている。電気泳動セルは、チップに連結されるように構成されており、チップは、活性化されていることに応じて、チップの上に配置された生物学的なサンプルの中の目標検体と共有結合するように構成されている官能基を備えたポリマー分離媒体を含む。放射線エネルギー供給源が、蓋部の内部表面に連結されており、また、官能基を活性化させるように動作可能な活性化エネルギーを供給するように構成されている。電力供給源は、ハウジングの中に配置されており、受容部から流体的に隔離されている。電力供給源は、電気泳動セルが受容部の中に配置されているときに、電気泳動セルに電気的に連結されるように構成されている。コンピューターコントローラーは、ハウジングに連結されており、受容部から流体的に隔離されている。コンピューターコントローラーは、電気泳動セルが生物学的なサンプルを分析するために受容部の中に配置されているときに、放射線エネルギー供給源および電気エネルギー供給源を活性化させるように動作可能である。
【0023】
[0023] いくつかの実施形態では、電気泳動セルは、目標検体の存在に関して生物学的なサンプルを分析するために、分析デバイスの受容部の中に配置されるように構成されている。電気泳動セルは、本体部と、チップと、伝導性の接触パッドと、電極と、堰構造体とを含む。本体部は、凹部エリアを画定しており、凹部エリアは、チップの表面が本体部の表面と実質的に面一状態になるように、チップを受け入れるように構成されている。チップは、活性化されていることに応じて、チップの上に配置された生物学的なサンプルの中の目標検体と共有結合するように構成されている官能基を備えたポリマー分離媒体を含む。伝導性の接触パッドは、本体部に連結されており、また、電気泳動セルが受容部の中に配置されているときに、分析デバイスの電源に電気的に接続されるように構成されている。電極は、本体部の中に配置されており、伝導性の接触パッドに電気的に接続されている。電極は、電気泳動セルが受容部の中に配置されているときに、電源からの電流の流れに応じて、凹部エリアを横切って電界を作り出すように構成されている。堰構造体は、凹部エリアの少なくとも1つの側において本体部の中に配置されている。堰構造体は、凹部エリアを横切る溶液の流れを制御するように構成されている。
【0024】
[0024] 本開示の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲の中に特異性とともに述べられている。本開示の特徴および利点のより良好な理解は、例示目的の実施形態を述べる以下の詳細な説明、ならびに、添付の図面(本明細書で「図(figure)」および「図(FIG.)」とも呼ばれる)を参照することによって得られることとなり、例示目的の実施形態の中には、本開示の原理が利用されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】[0025]実施形態による、単一細胞ウェスタンブロッティング(scWB)アレイイメージおよび分析ワークフロー概略図である。
【
図2】[0026]実施形態による、scWB装置のメインユニットを図示する図である。
【
図3】[0027]それ自身は除去可能なチップを含有することができるモジュラー式電気泳動セルを保持する、
図2のメインユニット100の受容部を図示する図である。
【
図4】[0028]
図2のscWB装置のメインユニット100の中で使用するように構成されたモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの1つの実施形態を図示する図である。
【
図5A】[0029]除去可能なチップを含有する、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの断面図である。
【
図5B】除去可能なチップを含有する、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの断面図である。
【
図6A】[0030]貯蔵部、および、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの貯蔵部の中への1つまたは複数のバッファー溶液の追加のための弁フィーチャーに流体連通している、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの断面図である。
【
図6B】貯蔵部、および、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの貯蔵部の中への1つまたは複数のバッファー溶液の追加のための弁フィーチャーに流体連通している、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの断面図である。
【
図6C】貯蔵部、および、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの貯蔵部の中への1つまたは複数のバッファー溶液の追加のための弁フィーチャーに流体連通している、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの断面図である。
【
図7A】貯蔵部、および、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの貯蔵部の中への1つまたは複数のバッファー溶液の追加のための弁フィーチャーに流体連通している、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの断面図である。
【
図7B】貯蔵部、および、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの貯蔵部の中への1つまたは複数のバッファー溶液の追加のための弁フィーチャーに流体連通している、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの断面図である。
【
図7C】貯蔵部、および、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの貯蔵部の中への1つまたは複数のバッファー溶液の追加のための弁フィーチャーに流体連通している、
図4のモジュラー式の除去可能な電気泳動セルの断面図である。
【
図8A】[0031]実施形態による、除去可能なチップの抗体プロービングを実施するためのデバイスを図示する図である。
【
図8B】実施形態による、除去可能なチップの抗体プロービングを実施するためのデバイスを図示する図である。
【
図8C】実施形態による、除去可能なチップの抗体プロービングを実施するためのデバイスを図示する図である。
【
図9】[0032]実施形態による、抗体インキュベーションフィクスチャーのための代替的な構築体の断面図である。
【
図10】[0033]実施形態による、リンシングフィクスチャーを図示する図である。
【
図11】[0034]本明細書で提供される方法のいずれかを実装するようにプログラムされ、または、その他の方法で構成されている、コンピューター制御システムを示す図である。
【
図12A】[0035]実施形態による、除去可能な電気泳動セルを図示する図である。
【
図12B】実施形態による、除去可能な電気泳動セルを図示する図である。
【
図13】[0036]実施形態による、除去可能な電気泳動セルを図示する図である。
【
図14A】[0037]実施形態による、除去可能な電気泳動セルを示す、蓋部が開いた状態のscWB装置を図示する図である。
【
図14B】[0038]タッチスクリーンフィーチャーを示す、
図14AのscWB装置の外部の図である。
【
図14C】タッチスクリーンフィーチャーを示す、
図14AのscWB装置の外部の図である。
【
図14D】[0039]
図14AのscWB装置とともに使用するように構成されたscWB除去可能なチップを図示する図である。
【
図15A】[0040]たとえば、
図14A~
図14DのscWB装置を介してscWB分析を実施するCHO細胞の中のベータ-チューブリンの測定を図示する図である。
【
図15B】たとえば、
図14A~
図14DのscWB装置を介してscWB分析を実施するCHO細胞の中のベータ-チューブリンの測定を図示する図である。
【
図15C】たとえば、
図14A~
図14DのscWB装置を介してscWB分析を実施するCHO細胞の中のベータ-チューブリンの測定を図示する図である。
【
図16A】[0041]8%Tゲルについての分子量サイジングを図示する図である。
【
図16B】10%Tゲルについての分子量サイジングを図示する図である。
【
図16C】12%Tゲルについての分子量サイジングを図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[0042] 本開示のさまざまな実施形態が、本明細書で示されて説明されてきたが、そのような実施形態は単に例として提供されているということが当業者に明らかであろう。多数の変形例、変化例、および代替例が、本開示から逸脱することなく、当業者に考え付くことが可能である。本明細書で説明されている本発明の実施形態に対するさまざまな代替例が用いられ得るということが理解されるべきである。
【0027】
[0043] この明細書において使用されているように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確にそうでないことを指定していなければ、複数の指示対象を含む。したがって、たとえば、「部材」という用語は、単一の部材または部材の組み合わせを意味することが意図されており、「材料」は、1つまたは複数の材料、または、それらの組み合わせを意味することが意図されている。
【0028】
[0044] 本明細書で使用されているように、「タンパク質」という用語は、タンパク質、オリゴペプチド、ペプチド、および類似物を表しており、それは、非自然的に生じるアミノ酸およびアミノ酸類似物を含有するタンパク質、ならびに、ペプチド模倣構造体を含む。
【0029】
[0045] 本明細書で使用されているように、「検体」という用語は、本明細書で説明されているように、検出されることとなる任意の分子または化合物を表している。適切な検体は、それに限定されないが、小さい化学分子、たとえば、環境分子、臨床分子、化学物質、汚染物質、および/または生体分子などを含むことが可能である。より具体的には、そのような化学分子は、それに限定されないが、農薬、殺虫剤、毒素、治療薬物および/または乱用された薬物、ホルモン、抗生物質、抗体、有機材料、タンパク質(たとえば、酵素、免疫グロブリン、および/または糖タンパク質)、核酸(たとえば、DNAおよび/またはRNA)、脂質、レクチン、炭水化物、全細胞(たとえば、病原菌バクテリアなどのような原核細胞、および/または、哺乳類腫瘍細胞などのような真核細胞)、ウィルス、芽胞、ポリサッカリド、糖タンパク質、代謝物、補因子、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、遷移状態類似物、抑制剤、栄養素、電解質、成長因子、および、他の生体分子および/または非生体分子、ならびに、それらの破片および組み合わせを含むことが可能である。本明細書で説明されているいくつかの検体は、酵素、薬物、細胞、抗体、抗原、細胞膜抗原、および/または、レセプターもしくはそれらのリガンド(たとえば、神経レセプターもしくはそれらのリガンド、ホルモンレセプターもしくはそれらのリガンド、栄養素レセプターもしくはそれらのリガンド、および/または、細胞表面レセプターもしくはそれらのリガンド)などのような、タンパク質であることが可能である。
【0030】
[0046] 本明細書で使用されているように、「サンプル」という用語は、検出されることとなる1つまたは複数の検体を含有する組成を表している。サンプルは、異種であることが可能であり、さまざまな成分(たとえば、異なるタンパク質)を含有し、または、同種であることが可能であり、1つの成分を含有する。いくつかの場合には、サンプルは、自然的に生じる生物学的な材料であり、および/または、人工の材料であることが可能である。そのうえ、サンプルは、天然形態または変性形態であることが可能である。いくつかの場合には、サンプルは、単一細胞(もしくは、単一細胞の内容物)または複数の細胞(もしくは、複数の細胞の内容物)、血液サンプル、組織サンプル、皮膚サンプル、尿サンプル、水サンプル、および/または土サンプルであることが可能である。いくつかの場合には、サンプルは、真核生物、原核生物、哺乳類、人間、イースト、および/またはバクテリアなどのような、生命有機体からくることが可能であり、または、サンプルは、ウィルスからくることが可能である。いくつかの場合には、サンプルは、1つまたは複数の幹細胞(たとえば、限定されていない期間にわたって分割する能力、および、特殊化した細胞を生じさせる能力を有する任意の細胞)であることが可能である。幹細胞の適切な例は、それに限定されないが、胚性幹細胞(たとえば、ヒト胚性幹細胞(hES))、および非胚性幹細胞(たとえば、間葉系、造血、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、または成体幹細胞(MSC))を含むことが可能である。
【0031】
[0047] 本明細書で使用されているように、「レベル」という用語は、一般的に、重力加速度ベクトルに直交する平面からの変化を表している。
【0032】
[0048] 本開示は、ウェスタンブロッティングなどのような検体検出を実施するための自動化されたシステムに関する。本明細書で提供されているシステムは、単一細胞分析などのような、実質的に低い体積のサンプルの中の検体を検出するために使用され得る。いくつかの例では、そのような分析は、単一細胞ウェスタンブロッティング(scWB)を使用して実施されてもよく、それは、マイクロ流体の設計を用い、実証済みのマイクロアレイフォーマットを導入し、それは、(i)電気泳動を介するタンパク質分子量決定と、(ii)分解されたタンパク質バンドのその後の抗体ベースのプロービングを介するタンパク質の正体決定を組み合わせる。この2段階の分析は、ウェスタンブロッティングを含むことが可能である。この2段階の分析は、コストのかかるインフラストラクチャーまたはコア設備に対する必要なしに、ベンチにおいて極めて高い特異度性能を提供することが可能である。scWBは、高い特異度のタンパク質分析を単一細胞にもたらすが、従来のウェスタンブロッティングに関してすでに利用可能な巨大な試薬インフラストラクチャーを利用する。
【0033】
[0049] 広く普及したscWBの実装形態は、a)腫瘍内の細胞ごとの異質性を解明し、したがって、癌薬物の治療効果を前進させること;b)目標とされた治療薬物カクテルに対するコンパニオン診断に関して患者特有の細胞レベルの反応を評価すること;c)移植の前に細胞ベースの治療の純度および安全を定量化すること(それは、規制当局の承認を加速させることが可能であり、より安全でより効果的な細胞ベースの治療の生成につながる);d)目標とされた治療に関して、患者からの希少な細胞母集団の分析を可能にすること(たとえば、腫瘍細胞、CTCを循環させる);ならびに、e)iPSC由来の体細胞などのような、希少な細胞治療の特徴付けを可能にし、薬物開発のための機能的な組織およびインビトロの疾患モデルの生成を加速させること、を通して、生体臨床医学に影響を与えることが可能である。単一細胞ウェスタンブベースのタンパク質レベル情報は、個人化された再生医療を実現することに向けて、変革的な跳躍を提供することが可能である。
【0034】
[0050] 単一細胞分解能ウェスタンブロットのマイクロアレイ状の密度を実現するために、scWBは、約100ミクロン以下の直径を有する数千のマイクロウェルによって点状に配置された薄い光活性ポリマーによってコーティングされた顕微鏡スライドを使用することが可能である。いくつかの実施形態では、それぞれのマイクロウェルは、直径が約15ミクロン~約45ミクロンの範囲にある直径を有することが可能である(たとえば、
図1を参照)。チップは、ソフトリソグラフィーを使用して製作され得る。チップは、除去可能であり、消耗品であり、使い捨てであり、または、それらの組み合わせであることが可能である。チップは、scWBチップであることが可能である。scWBワークフローは、細胞懸濁液がゲルを有するマイクロウェルアレイの上にディスペンスされるときに開始させられてもよく、単一細胞が、重力の作用の下で個々のマイクロウェルの中へ受動的に定着する。マイクロウェルの占有は、希釈およびマイクロウェル設計を限定することによって制御され得る(たとえば、単一細胞を収容するようにサイズ決めされたマイクロウェル)。細胞溶解およびゲルを横切る電界の適用の後に、光活性ゲル(それは、ベンゾフェノン-メタクリルアミドを含むことが可能である)は、ふるい分けマトリックスとして作用することが可能であり、それは、短い分離距離(<1mm)にわたるそれらの分子量にしたがって、分子(たとえば、タンパク質など)を分離する。短時間のUV露出によって、ベンゾフェノン-メタクリルアミドコモノマーは、水素引き抜きを介して、タンパク質を供給結合固定することが可能であり、それは、100%に接近する捕獲効率を生み出すことが可能である。したがって、タンパク質バンドは、サイズベースの分離の後に、ゲルの中の適切な位置に固定されてもよく、その後に、ゲルは、抗体によってプロービングされてもよく、それは、従来のウェスタンブロッティングアプローチにおいて典型的に使用される転写およびブロッキング工程を防ぐことが可能である。いくつかの場合には、scWBは、ポンプ、弁、正確なアライメント、または、scWBシステムにおいて典型的に見出される複雑な電気式のまたは空気圧式のインターフェース(たとえば、マススペクトロメーター、マスサイトメトリー、フローサイトメーターなど)なしに、実施され得る。目標の多重化は、サイズ分離、マルチスペクトルの検出、および/または、捕獲されたタンパク質の繰り返されるストリッピングおよび再プロービングによって実現され得る。
【0035】
[0051] 1つの顕微鏡スライドの上に、単一細胞の数千以上が、並列に分析されてもよく、また、細胞当たり約1~10フェムトグラム以下程度の目標タンパク質が検出される場合があり、それは、いくつかの場合には、マススペクロトメトリーよりも高いスループットおよび分析感度を付与することが可能である。広く普及した従来のウェスタンブロッティングの使用、および、厳しくない抗体特異性要件を前提として、フローサイトメトリーと比較して、約10倍多い市販の抗体が、ウェスタンブロッティングに関して検証され得る。細胞溶解は、細胞内タンパク質、タンパク質複合体、および、フローサイトメトリーを使用してアクセスすることができない翻訳後の修正などのような、多様な目標の測定を可能にすることが可能である。
【0036】
[0052] フローサイトメトリーは、高いスループットを伴う確立された単一細胞プロテオームツールである。しかし、フローサイトメトリーは、高い抗体特異性を必要とする可能性があり、および、細胞内タンパク質は、検出することがより挑戦的である可能性がある。マスサイトメトリーは、単一細胞プロテオーム測定行うことが可能であるが、カスタム重金属タグ付きの抗体、高価な器具類(たとえば、インスツルメント当たり$600,000)、および、高い抗体特異性を使用する可能性がある。マススペクロトメトリーは、単一細胞分析ツールとして登場しているが、それは、専門的なスペクトル解釈を必要とする可能性があり、低いスループットおよび低い分析感度を有する可能性がある。自動化されたウェスタンブロッティング器具類が存在しているが、単一細胞分解能に到達することができていない。いくつかの場合には、これは、scWBに関する約100%に対して、約0.01%の捕獲効率に部分的に起因する。
【0037】
[0053] いくつかの実施形態では、scWBのためのシステムは、電気泳動工程およびUV捕獲工程を一体化することができる器具類を含むことが可能である。また、ここで説明されている本開示は、安全インターロッキング(有害な高電圧およびUV光へのユーザー露出を防止するため)を提供し、顕微鏡スライドフォーマットの上の一体型の電気泳動およびUV露出を可能にする。インスツルメントの初期の適用は、scWB分析を実施することが可能であるが、同じ本開示は、小さい体積の(しかし、単一細胞ではない)ウェスタンブロッティングまたは小さい体積の並列の電気泳動分析などのような、関連の分析を可能にし得る。
【0038】
[0054] 本開示は、平面的な基板に取り付けられている薄いゲルの中の分離された分子の電気泳動分離およびフォトキャプチャーを実施するためのシステムを提供する。システムは、顕微鏡スライドの上の薄い(<100ミクロンの厚さ)ゲル層の中で単一細胞分解能ウェスタンブロッティング(scWB)を実施することが可能である。いくつかの実施形態では、システムは、たとえば、2014年3月6日に出願された「Electrophoretic Separation Devices and Methods for Using the Same」という標題のPCT特許公開第WO2014/138475号に説明されているような分析を実施することが可能であり、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。本開示は、インスツルメント、ソフトウェア、関連のアクセサリー、および分析方法を含む、システムであることが可能である。
【0039】
[0055] システムが、
図2に示されている。メインユニット100(本明細書で「インスツルメント」および/または「デバイス」とも称される)は、ベース101、蓋部102、一体型コンピューター(たとえば、タッチスクリーンを備えたタブレットコンピューター110など)、高電圧電源(それは、コンパートメント105の中に含有され得る)、および、紫外線(UV)光源108などのような、活性化エネルギー(たとえば、放射線エネルギー)の供給源から構成され得る。メインユニット100は、電気泳動セル120を受け入れるように構成されており、また、さらに詳細に本明細書で説明されているように、電気泳動セル120の中に含まれている、および/または、そうでなければ、電気泳動セル120によって含有されている、生物学的なサンプルについての分析を実施するために使用され得る。システムは、コンピューター、マイクロプロセッサー、またはマイクロコントローラーによって制御可能であり、それは、メインユニット100に一体化され得るか、またはメインインスツルメント本体部もしくはハウジングから分離され得るが、(たとえば、有線接続または無線データ接続を通して)それと通信され得る。コンピューターとインスツルメント本体部の一体化は、インスツルメント制御およびデータ管理のフレキシブルな一体化をコンパクトな形態で可能にすることができる。たとえば、タブレットコンピューター110は、内臓式のセンサー(たとえば、カメラ)を有することが可能であり、それは、たとえば、scWB消耗チップなどのチップの上にプリントされたバーコードを読むために使用され得る。チップは、scWBにおいて使用するように適合されてもよく、構成されてもよく、または、そうでなければ、scWBにおいて使用するのに適切であってもよい。センサーは、除去可能な電気泳動セルの上の1つまたは複数の識別部材、たとえば、識別番号などを読むまたは識別するために使用され得る。1つまたは複数の識別部材のそれぞれは、一意的であることが可能である。1つまたは複数の識別部材は、1次元のまたは2次元の識別バーコードを含むことが可能である。1つまたは複数の識別部材は、無線周波数識別(RFID)ユニットを含むことが可能である。センサーは、コンピュータープロセッサーに連結されているメモリーの中に、識別番号などのような1つまたは複数の識別部材を記憶することが可能である。メモリーは、システムと通信するネットワークの中のリモートサーバー(たとえば、「クラウド」)などのような、システムまたはリモートコンピューターシステムの一部であることが可能である。1つまたは複数の識別部材の第1の識別部材は、分析するための分析パラメーターの第1のセットを決定することが可能である。コンピュータープロセッサーは、第1の一意的な識別部材、分析パラメーターの第1のセット、または、それらの組み合わせを、コンピューターネットワークにアップロードするようにプログラムされ得る。いくつかのケースでは、インスツルメントは、1つまたは複数の目標検体の存在の検出を含むことが可能であり、コンピュータープロセッサーは、1つまたは複数の目標検体の存在をアップロードするようにプログラムされ得る。次いで、バーコードは、バーコード付きのチップをランするために使用されることとなる分析パラメーターのセットを決定するために使用され得る。ランが完了すると、タブレットは、ラン情報をバーコードとともにネットワークサーバーなどのようなコンピューターネットワークアップロードすることが可能である。サーバーは、後に、別々のリーダーインスツルメントによってアクセス可能であり、イメージングデータおよび電気泳動ランデータが、バーコードを通して同じチップと関連付けられ得るようになっている。
【0040】
[0056] メインユニット100は、フレーム109を含むことが可能であり、フレーム109は、タッチスクリーンまたはタブレットコンピューター110を位置決めおよび保持することが可能であり、また、タブレットコンピューターまたはスクリーンへの任意のケーブル接続を隠すことが可能である。UV光源108などのような、活性化エネルギーの供給源は、蛍光灯、LED、Hg-Xe供給源、または、他の一般的な供給源であることが可能である。インスツルメント本体部は、湾曲した表面112を含み、コンパクトで見た目に美しいプロファイルを維持しながら、円筒形状のUV供給源(たとえば、蛍光ランプなど)を収容することが可能である。UV光源108の外部面は、光学フィルターまたはウィンドウであることが可能であり、それは、光強度を低減させることが可能であり(たとえば、減光フィルター)、または、通過する光の波長を制御することが可能であり、最適な波長がscWB消耗チップに到達することができるようになっている。フィルターまたはウィンドウは、コーティングによって加熱または処理され、電気泳動の間のバッファーの凝縮を低減させることが可能である。
【0041】
[0057] いくつかの実施形態では、高感度および高電圧コンポーネントが、別々のコンパートメント105の中にシールされてもよく、インスツルメント100の内側にこぼれる任意の液体(たとえば、バッファー溶液)が電子機器に接触できないようになっている。そのような例では、空気冷却およびベンティングは、インスツルメントの底部から起こることが可能である。蓋部102は、軸線103の周りに回転することが可能であり、摩擦ヒンジ104によって支持されてもよく、摩擦ヒンジ104は、蓋部102がさまざまな角度で開いた状態を保つことを可能にすることができる。蓋部102は、閾値角度(たとえば、10度、または、任意の他の適切な角度)よりも小さく開けられた場合には閉じることが可能である。蓋部102は、ダンピングメカニズムを含み、蓋部102が閉じることを遅くすることが可能であり、また、当業者に公知のさまざまな方法(たとえば、磁気的なラッチまたは機械的なラッチ)のうちの1つを使用して、ラッチ式に閉じられ得る。レベリングフィート111が、インスツルメントベース101をレベリングするために使用されてもよく、電気泳動セル120の中の液体(たとえば、バッファー溶液)が水平になることができるようになっている。レベリングは、レベリングフィート111を調節しながら、電気泳動セル120の中に標準的なバブルレベルを設置することによって達成されてもよく、または、インスツルメント100は、恒久的に装着されたバブルレベルまたは電子的なレベラーを含むことが可能であり、それは、コンピューター110にインターフェース接続することが可能であり、そして、コンピューター110は、インスツルメント100が水平になったかどうかをユーザーに知らせることが可能である。いくつかの実施形態では、インスツルメント100は、自動的にまたは少なくとも半自動的にインスツルメントをレベリングするように構成された任意の適切なデバイスおよび/またはメカニズムを含むことが可能である。
【0042】
[0058] ある例では、1度の「オフレベル」になっている長さ75mmの使い捨てチップまたは消耗チップなどのような、チップ140(
図5)は、チップの上部にわたって1.3mmだけ変化し得る流体高さを有することが可能である。流体404(
図5)の公称高さが3mmだけである場合には、オフレベルであることは、約40%の流体高さの変化を結果として生じさせる可能性があり、それは、40%の電界の変化を結果として生じさせる可能性がある。
【0043】
[0059] インターロックスイッチ107は、有害なUVおよび高電圧(HV)が有効化される前に、蓋部102が閉じられていることを確実にすることが可能である。インスツルメント100は、蓋部102が開けられているときに、ポゴピン114からHV電源を切り離すように構成可能であり、および/または、HV電源が無効化され、残留電荷をグランドに消散させることができる。インスツルメント100のメイン本体部は、ベントを含むことが可能であり、ベントは、インスツルメント本体部の内側の爆発性の電解ガスの蓄積を防止することが可能である。ライトブロッキングフィーチャー(たとえば、インスツルメント100のベース101の周りの上昇したリムなど)が含まれてもよく、それは、蓋部102が閉じられているときに、UV光の任意のリーケージを最小化することが可能である。
【0044】
[0060]
図3に示されているように、メインインスツルメント本体部またはハウジングは、受容部106を含むことが可能であり、受容部106は、電気泳動セル120を保持することが可能である。いくつかの場合には、電気泳動セル120は、モジュラー式であり、除去可能であり、または、それらの組み合わせであることが可能である。ある例では、モジュラー式の除去可能な電気泳動セル120などのような電気泳動セルは、1つまたは複数のアライメントピン113を使用して整合可能であり、1つまたは複数のアライメントピン113は、モジュラー式の除去可能な電気泳動セル120の上の対応するスロットおよび/または孔部にインターフェース接続することが可能である。このモジュラー式設計は、任意の数の除去可能な電気泳動セル設計がメインインスツルメントユニット100の中で使用されることを可能にし得る。いくつかのそのような設計は、電気泳動セル120の凹部エリア121の中にフィットし得る異なるチップ、異なる電極構成、または電気抵抗を収容することが可能であり、それは、充填された除去可能な電気泳動セルをシミュレートすることが可能であり、便利なシステムのドライテストを可能にする。いくつかの実施形態では、任意の数のスロットが、メインインスツルメント本体部またはハウジングの中に形成され、1つまたは複数のピンを収容することが可能である。1つまたは複数のピンが、除去可能な電気泳動セル120の1つまたは複数の伝導性パッドに隣接しているときに、電気的な接続が形成され得る。ある例では、スロットは、さまざまな除去可能な電気泳動セルフォームファクターおよび/またはさまざまな電極構成を収容するように構成され得る。ある例では、スロットは、空間的に固定されたままであることが可能であり、ピン構成は、モジュラー式であることが可能である。別の例では、スロットおよびハウジングのピン構成は、空間的に固定されたままであることが可能であり、また、モジュラー式の除去可能な電気泳動セルの接触パッドの構成も、空間的に固定されたままであることが可能である。この例では、モジュラー式電気泳動セルの中の電気的な接続および機械的なフィーチャーは、複数の除去可能な電気泳動セル設計などのような、異なる機能のために再構成され得る。
【0045】
[0061] スプリング荷重式のピン、すなわち、「ポゴピン」114を介して、除去可能な電気泳動セル120との電気的な接続が作製されてもよく、「ポゴピン」114は、電気泳動セル120の上の伝導性の接触パッド122に接続することが可能である。このインターフェースは、HVポゴピン114とのドライ接触を可能にすることができる。電気接触パッド122は、導体(たとえば、プラチナまたは炭素導体)に接続されてもよく、導体は、除去可能な電気泳動セル120の中の液体(たとえば、バッファー溶液)に接触することが可能である。インスツルメント100は、ポゴピン114同士の間の電圧差を制御することが可能であり、除去可能な電気泳動セルの中の電界強度が、プログラム可能に制御され得るようになっている。ある例では、インスツルメント100は、ポゴピン電圧の極性をプログラム可能に変化させることが可能であり、除去可能な電気泳動セルの中の電界の方向もソフトウェアを介して制御され得るようになっている。3つ以上の電圧が必要とされる場合には、追加的なピンおよび接触パッドが、異なる除去可能な電気泳動セル設計を収容するために追加され得る。示されてはいないが、いくつかの実施形態では、受容部106は、接地リングによって取り囲まれており、動作の間に電気泳動セル120の外側にこぼれる任意の流体が、接地リングを乗り越えると、電気的に接地させられることとなるようになっている。接地リングは、任意の適切な形状、サイズ、および/または構成であることが可能であり、また、任意の適切な接地材料から形成され得る。
【0046】
[0062] 受容部106および除去可能な電気泳動セルは、透明であることが可能であり、追加的なUV光源が受容部106の下に含められ得るようになっている。透明な表面は、レンズエレメントを含み、UV供給源からの光の焦点を合わせることを助けることが可能である。イメージング器具類(たとえば、レンズ、カメラ、光検出器など)が、受容部106の下に含められ得る。イメージング器具類は、電気泳動の前、間、または後に、チップの明視野イメージングまたは蛍光イメージングを可能にすることができる。ある例では、受容部106の表面は、反射性であることが可能であり、UV供給源108からのUV光が反射されてチップに戻り、UVフラックスを増加させることができるようになっている。別の例では、受容部106の表面は、超音波トランスデューサー(または、それと同様のもの)を含むことが可能であり、超音波トランスデューサーは、凹部エリア121の中に着座させられたチップにエネルギーを送信することが可能であり、また、チップの中に含有されている細胞の溶解を支援することが可能である。さらなる例では、受容部106は、温度コントロール(加熱器および/または冷却器)を組み込み、溶解を支援し、電気泳動の間の加熱を制御し、または、所望の化学反応のための(たとえば、核酸タグ付きの検出プローブの溶融またはアニーリングのための)温度サイクリングもしくは温度制御を提供することが可能である。
【0047】
[0063]
図4は、除去可能な電気泳動セル120などのような電気泳動セルの例を示している。除去可能な電気泳動セル120は、本体部120Aを有することが可能であり、本体部120Aは、チップ140を収容するように設計された凹部エリア121を画定しており、チップ140の例は、標準的な顕微鏡スライドに等しい外側寸法を有するscWB消耗チップであることが可能である。伝導性の接触パッド122が、本体部120Aに連結されており、インスツルメントへの電気的なインターフェースを提供することが可能である。プラチナワイヤー127が、除去可能な電気泳動セル120の接触パッド122から本体部120Aの中へ接続することが可能である。プラチナワイヤー127は、非伝導性のチュービングの中へ挿入され、除去可能な電気泳動セル120の外側のワイヤー127の部分が、電気的に絶縁され得るようになっており、一方、チュービングの少なくとも一部分は除去され、除去可能な電気泳動セル120の内側のプラチナワイヤー127がバッファーとの接触を促進させるように露出され得るようになっている。scWB消耗チップ140の上の活性化エネルギーフラックスを最大化するために、除去可能な電気泳動セル120は、スライドの上部とUV供給源などのような活性化エネルギーの供給源との間の距離を最小化するように浅くなっていることが可能である。除去可能な電気泳動セル120は、浅い除去可能な電気泳動セル120の外側の電気泳動バッファーのウィッキング(wicking)を回避するためのフィーチャーを組み込むことが可能である。たとえば、内部角部123は、ウィッキングを低減させるような半径にすることが可能である。ある例では、除去可能な電気泳動セル120は、注ぎフィーチャーまたは吐出フィーチャーを含み、分析が完了したときに、除去可能な電気泳動セルを空にすることを支援することが可能である。
【0048】
[0064]
図5は、モジュラー式の除去可能な電気泳動セル120などのような電気泳動セルの断面図を示している。チップ140は、凹部エリア121の内側に面一状態で着座することが可能であり、チップ140の上部表面の上の薄いゲル層が、除去可能な電気泳動セル120の底部と水平になり得るようになっている。ある例では、チップ140は、凹部エリア121の中に面一状態で着座し、チップ140の縁部の近くに電界ひずみまたは摂動を引き起こし得る高さの変化を最小化または排除することが可能である。電界ひずみまたは摂動は、泳動距離の変化、および、チップ140の中で分離されるタンパク質バンドの方向の変化を引き起こす可能性がある。電界ひずみは、チップ140の縁部の近くのひずみなどのような、空間的なひずみまたは摂動であることが可能である。電界ひずみは、チップ140の上を通過するバブルなどのような、一時的なひずみまたは摂動であることが可能である。電流は、流体高さ131に比例することが可能であり、流体は、UV光源108からのUV光のいくらかを吸収することが可能である。いくつかの場合には、流体または液体の高さ(たとえば、バッファー溶液高さ)は、最小化され得る。電気泳動セル寸法の選択は、液体高さを最小化することが可能である。流体高さ131は、約50ミリメートル(mm)、20mm、30mm、10mm、8mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、または1mmよりも小さいことが可能である。いくつかの場合には、チップ140と除去可能な電気泳動セル120の上部との間の距離132が低減させられ、チップ140の上へのUV光源108からのUV光のフラックスを増加させることが可能である。電気泳動セル寸法は、流体高さ131を低減させるように、および、UV光のフラックスまたはパワーを増加させるように選択され得る。
【0049】
[0065] 距離132は、約25mm、20mm、15mm、14mm、13mm、12mm、11mm、10mm、5mm、4mm、3mm、2mm、または1mm以下であることが可能である。いくつかの場合には、距離132は、約1mm~50mmの間にあり、または、5mm~20mmの間にある。
【0050】
[0066] 除去可能な電気泳動セル120は、電気泳動バッファー130の深さが電極128の近くでより深くなるように設計されてもよく、チップ140の上方の流体高さ131をより小さくすることを可能にしながら、電極が電気泳動バッファーによってカバーされ得るようになっている。いくつかの場合には、液体(たとえば、バッファー溶液)高さ131がチップ140にわたって均一でない場合には、電界強度および泳動距離は、チップ140にわたって変化する可能性がある。
図5に示されている例では、均一な液体高さ131は、たとえば、インスツルメントフィート111を調節しながらバブルレベルまたは電子的なレベルを使用して、除去可能な電気泳動セル120をレベリングすることによって実現されてもよく、一方、流体高さ131は、除去可能な電気泳動セル120に加えられる電気泳動バッファー130の体積によって制御され得る。レベリングフィーチャーが、モジュラー式の除去可能な電気泳動セル120に取り付けられ得るか、または、受容部106の中へ組み込まれてもよく、除去可能な電気泳動セル120が、メインインスツルメント本体部またはハウジング100と独立してレベリングされ得るようになっている。
【0051】
[0067] ある例では、除去可能な電気泳動セル120は、蓋部102とチップ140の表面との間に固定距離を生成させることによって、蓋部102が流体高さ131を画定するように構成され得る。過剰な液体(たとえば、バッファー溶液)は、流体高さ131がもはや電気泳動バッファー130の体積の関数でないように、または、除去可能な電気泳動セル120が水平になっているかどうかに関わらず、変位させられ得る。流体高さ131は、スピルオーバーフィーチャーによって制御可能であり、目標流体レベルに到達すると、過剰なバッファーがスピルオーバーフィーチャーを越えて貯蔵部の中へ流入することができるようになっており、過剰なバッファーの追加が流体高さ131を変化させないようになっている。
【0052】
[0068] モジュラー式の除去可能な電気泳動セル120は、1つまたは複数の堰構造体124を組み込むことが可能である。これらの堰構造体124は、電極128において発生させられ得る電解バブルがチップ140の上を漂流することを防止することが可能である。チップ140の上のバブルは、電界を歪めるまたは摂動させることが可能であり、また、活性化エネルギーの供給源108(たとえば、UV光供給源)からの活性化エネルギー(たとえば、UV光)を遮断する可能性がある。電気泳動バッファーが、電極128の上方の領域において、除去可能な電気泳動セルの中へ注がれるときに、堰構造体124は、すでにバッファーの中に存在するバブルがチップ140を横切って流れることを防止することが可能である。堰構造体124は、注いだ後の流体運動を減衰させることを助けることが可能であり、1つまたは複数の堰構造体がないときの除去可能な電気泳動セル120よりも急速に、バッファー130が静止状態になることができるようになっている。いくつかの場合には、流体運動の減衰は、溶解の間のマイクロウェルからのタンパク質の喪失を低減させるために重要である可能性がある。除去可能な電気泳動セル120は、電気泳動バッファーの中にすでに存在しているかまたは電解によって発生させられるバブルを濾過する、ふるいまたは1つまたは複数の他のフィーチャーをさらに組み込むことが可能である。
【0053】
[0069] モジュラー式の除去可能な電気泳動セル120は、電極ワイヤー127を捕獲および拘束するための1つまたは複数の構造体(126A、126B)を含むことが可能である。除去可能な電気泳動セル120の壁部の中の孔部125は、電極ワイヤー127が壁部を通過し、接触パッド122に電気的に接続することを可能にすることができる。ワイヤー127は、非伝導性のチューブ(たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など)の中に収められ得る。ワイヤー127は、それが孔部125を通過するポイントにおいて、非伝導性のチューブの中に収められてもよく、ワイヤー127がセル120の外側で電気的に絶縁され得るようになっている。
【0054】
[0070] いくつかの場合には、使い捨てチップなどのようなチップ140をモジュラー式の除去可能な電気泳動セル120の中へロードするときに、空気がチップ140の下に捕捉され得る。空気は、電気泳動バッファーが除去可能な電気泳動セル120に加えられるときに捕捉されたままである可能性があり、チップ140が浮き上がること、または、電気泳動の間にチップ140の縁部に沿ってバブルが逃げることを結果として生じさせる可能性があり、それは、電界を歪めまたは摂動させる可能性がある。バッファーの液滴(たとえば、50~300マイクロリットル)が、凹部エリア121に加えられ得る。いくつかの場合には、バッファーの液滴は、凹部エリア121の一方の側に加えられることがあり、または、凹部エリア121の中へチップ140をロードする前に追加されることがあり、その後に、チップ140が凹部エリア121の中へ低下させられてもよく、液滴がチップ140の下に逃げて任意の捕捉された空気を除外することを可能にする。スライド(たとえば、チップ)の下の液体(たとえば、バッファー溶液)の表面張力は、電気泳動バッファーがセル120に加えられ得るまで、凹部エリア121の中のスライドを保持することが可能である。凹部エリア121は、不透明または暗色であることが可能であり、それは、チップ140の下の空気と液体との間の視覚コントラストを増加させることが可能である。
【0055】
[0071]
図6は、デュアルパーパスの電気泳動/溶解バッファーが、どのように、モジュラー式の除去可能な電気泳動セル120などのような電気泳動セルに加えられ得るかということを示している。いくつかの例では、デュアルパーパスのバッファー130は手動で加えられてもよく、その場合には、ユーザーは、電極128の上方の領域において、モジュラー式の除去可能な電気泳動セル120の中へバッファー130を注ぐことが可能であり、インスツルメント蓋部102を閉じることが可能であり、また、一体型コンピューター110を通して分析を開始させることが可能である。デュアルパーパスのバッファー130が除去可能な電気泳動セル120の中へ注がれるときに、細胞溶解が起こることが可能である。ユーザーは、デュアルパーパスのバッファー130を加えた後に、ランを開始させることが可能である。
【0056】
[0072] インスツルメント100は、貯蔵部135を含むことが可能であり、貯蔵部135は、デュアルパーパスのバッファー130を含有することが可能である(
図6A)。貯蔵部は、初期に閉じられた弁136を有することが可能であり、弁136は、バッファー130が貯蔵部から出ていくことを防止することが可能である。ソフトウェアは、弁136を開けることによって、バッファー130の解放をプログラム可能に制御することが可能であり、バッファー130がモジュラー式の除去可能な電気泳動セル120の中へドレン排出することを可能にする(
図6B)。コンピュータープロセッサーは、第1の溶液および第2の溶液を溶液の供給源からチップへ別々に導入することが可能である。第1および第2の溶液は、異なっていてもよく、たとえば、溶解バッファーおよび電気泳動バッファーなどである。代替的に、第1および第2の溶液は、同じであってもよく、たとえば、洗浄バッファーなどである。
【0057】
[0073] コンピュータープロセッサーは、2つ以上の逐次溶液を溶液の供給源からチップへ別々に導入するようにプログラムされ得る。2つ以上の逐次溶液は、同じであってもよい。代替例として、2つ以上の逐次溶液は、異なっていてもよい。いくつかの場合には、1つまたは複数の溶液が、手動でチップに導入される。代替例として、1つまたは複数の溶液が手動で導入され、また、コンピュータープロセッサーが貯蔵部弁136を開くときに、1つまたは複数の溶液がプログラム可能に導入される。
【0058】
[0074] バッファー解放のプログラム可能な制御は、一貫したタイミングの溶解工程を提供する。バッファー130は、急速に解放される場合があり、除去可能な電気泳動セル120を約1秒未満で充填することが可能である。いくつかの場合には、バッファー130は、除去可能な電気泳動セル120を約0.5秒未満で充填することが可能である。いくつかの場合には、バッファー130は、除去可能な電気泳動セル120を約0.1秒未満で充填することが可能である。インスツルメント100は、1つまたは複数のアクティブポンプを含むことが可能である。インスツルメント100は、バッファー130で貯蔵部135を充填するために、重力解放を利用することが可能である。貯蔵部135は、単一のアリコートのバッファー130を含有するように構成され得る。いくつかの場合には、単一のアリコートのバッファー130の体積全体が、弁136が開けられたときに解放され得る。いくつかの場合には、貯蔵部135は、より大きい体積のバッファー130を含有することが可能であり、より大きい体積のうちのサブ体積が、1つの分析に関して解放され得る。バッファー130のサブ体積の解放は、インスツルメント100によって制御され得る。いくつかの場合には、インスツルメント100は、複数の貯蔵部を含むことが可能であり、および/または、バッファー130は、複数の場所において、除去可能な電気泳動セル120の中へ導入され得る。
【0059】
[0075] 多くの溶解バッファーは、高い濃度の界面活性剤および塩を含有することが可能である。これらの添加剤は、細胞溶解を支援することが可能である。しかし、そのような添加剤は、また、バッファーの伝導性を増加させる可能性があり、過度の電流はジュール加熱および分離分解能の喪失につながる可能性があるからであるため、そのようなバッファーを電気泳動に適切でないものにする。したがって、デュアルパーパスの電気泳動/溶解バッファー130は、電気泳動のための低い伝導性と細胞を溶解させる能力との間のバランスを上手くとることが可能である。いくつかの場合には、別々に最適化された電気泳動バッファーおよび溶解バッファーが使用され得る。たとえば、
図7は、別々の電気泳動バッファー133および溶解バッファー134を使用するscWB分析を示している。おおよそ1mLの溶解バッファー134が、使い捨てチップ140などのようなチップの上部表面に直接的に加えられ、溶解を開始させることが可能である(
図7A)。溶解時間(たとえば、約5秒~約15秒の間など)の後に、所定の体積(たとえば、約15mLなど)の電気泳動バッファー133が、
図7Bと同様に、貯蔵部135から解放され得る。電気泳動バッファー133は、チップ140の表面の上を洗浄することが可能であり、また、溶解バッファー134を変位させることが可能であり、また、除去可能な電気泳動セル120の側部までそれを洗浄することが可能であり(
図7C)、そこで、それは、より大きい体積の電気泳動バッファー133によって希釈され得る。この希釈は、電気泳動の間に、より高い伝導性の溶解バッファー134の影響を著しく緩和することが可能である。それに加えて、除去可能な電気泳動セル120の電気抵抗は、チップ140の直接上方の流体の薄い層(液体高さ131を画定している)によって大きく決定されてもよく、したがって、チップ140の上方の領域から溶解バッファー134を除去することは、希釈の影響から独立して、電気泳動の間の電流を大きく低減させることが可能である。電極128の下に保持エリアが生成されてもよく、溶解バッファー134が保持領域の中へ洗浄するようになっており、それによって、それを電気回路から完全に除去する。
【0060】
[0076] また、システムは、scWB分析を伝導するためのツールおよびフィクスチャーを含むことが可能である。
図8A~
図8Cは、チップを使用して抗体プロービングを実施するためのデバイスおよび方法を示しており、チップは、scWBチップ140であることが可能である。チップ140は、消耗品であることが可能である。いくつかのケースでは、チップ140は、使い捨てまたは再使用可能であり得る。均一な抗体染色を確実にするために、および、一次抗体の回復および再使用を促進させるために、デバイスは、抗体プロービングフィクスチャー150などのような、インキュベーションチャンバーを含むことが可能である。プロービングフィクスチャー150は、
図8Aにあるように、所定の深さを有する長方形領域、または、チップ140よりもわずかに小さい長さおよび幅を有する凹部151を含有することが可能である。抗体プロービング工程の間に、固定化タンパク質(
図1を参照)を含有するゲル層142が、たとえば、a)ラベル付きの一次抗体、または、b)ラベルなしの一次抗体(ラベル付きの二次抗体によるインキュベーションがその後に続く)など、均一な濃度の検出抗体に露出され得る。不均一なギャップサイズ152は、インキュベーションの間に、チップ140にわたって、不均一な抗体の濃度を生成させる可能性がある。抗体フィクスチャーは、抗体溶液138で充填され得る均一なギャップを確実にすることが可能である。フィクスチャー150は、疎水性の材料(たとえば、PTFEなど)から構築されてもよく、または、疎水性のコーティングを組み込むことが可能であり、抗体溶液が、より親水性のゲル層142の下から広がることができないようになっている。抗体溶液138がチップ140の下に含有されている状態を維持することは、抗体溶液138の蒸発を低減させることが可能である。
【0061】
[0077] フィクスチャーのローディングが、
図8Bに示されている。小さい体積の抗体溶液138が、フィクスチャーの表面の上に設置され得る。いくつかの場合には、小さい体積は、約100マイクロリットルよりも小さいことが可能である。次いで、ゲル層142が下を向いているチップ140は、
図8Bに示されているように、フィクスチャー150の上に回転させられ得る。チップ140がフィクスチャー150の上に低下させられると、ゲル層142と長方形の窪み(凹部)151の底部との間のギャップが、抗体溶液138によって充填され得る。いくつかの場合には、ギャップサイズ152は、約50ミクロン以下であることが可能である。適切な場所になると、scWB消耗チップ140は、抗体溶液138によってインキュベートすることが許容され得る(たとえば、
図8Cを参照)。いくつかの場合には、インキュベーションは、約30分~約120分にわたる。延長したインキュベーション期間も可能であり得る。インキュベーションは、低減された温度において起こることが可能である。このインキュベーション期間の間に、フィクスチャー150全体がカバーされており、蒸発損失を低減させることが可能である。また、小さい部分の湿った布または紙が、フィクスチャー150に隣接して設置されてもよく、蒸発損失をさらに制限するようになっている。インキュベーション工程の終わりに、長方形の窪み151から離れるようにチップ140を回転させることによって、チップ140がフィクスチャー150から除去され得る。インキュベーションの間にチップ140の下に抗体溶液138を含有することを助けることに加えて、疎水性のフィクスチャーは、使用された抗体溶液138の回復を促進させることが可能である。その理由は、チップ140がフィクスチャー150から離れるように回転させられるときに、溶液が再成形して連続的な液滴になろうとすることが可能であるからである。したがって、一次抗体溶液138は、数回再使用され、コストを低減させることが可能である。
【0062】
[0078]
図8A~
図8Cに示されているフィクスチャー150は、機械加工、射出成形、または、熱間エンボス加工もしくは冷間エンボス加工などのような、多くの一般的な技法を使用して構築され得る。
図9は、抗体インキュベーションフィクスチャー155に関する1つの構築体の断面図を示している。この例示的な構築体では、長方形ギャップ157が、ラミネートされた層を使用して、フィクスチャー155の両側に形成され得る。フィクスチャー155のコア156は、たとえば、厚さ0.125インチのポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などのような、任意の適切な平坦な材料から構築され得る。次いで、厚さ0.001インチのPTFE層などのような薄い疎水性の層158が、コア層156に取り付けられる。最後に、長方形領域が除去された追加的な疎水性の層159が、第1の疎水性の層158に取り付けられ得る。ギャップサイズを画定するためにラミネートされた層を使用する利点は、ラミネートされた層が、チップのサイズに匹敵する距離にわたって非常に平坦であることが可能であるということである。そのようなラミネートされたデバイスのギャップサイズは、非常に均一であることが可能であり、また、層の厚さによって画定され得る。層は、熱結合、溶媒結合、または、中間圧力感圧型接着剤層の使用などのような、当業者に公知の多くの技法を使用して、互いに取り付けられ得る。
【0063】
[0079]
図1を参照して説明されているように、scWB分析の第1の工程は、ゲル層142の中に形成されたマイクロウェルのアレイの中へ細胞を定着させることであることが可能である。細胞がウェルの中へ定着させられると、ユーザーは、チップ140を優しくリンスすることが可能であり、実質的にマイクロウェルから細胞を洗浄することなく、ウェルの中へ定着させられなかった細胞を除去する。
図10は、別のフィクスチャー160を示しており、別のフィクスチャー160は、細胞定着の後のチップ140のリンシングを支援することができるシステムとともに含められる。リンシングフィクスチャー160は、浅い角度161でチップ140を設置することが可能であり、角度161は、おおよそ15度の典型的な値を有している。他の実施形態では、角度161は、15度よりも大きいことが可能であり、または、15度よりも小さいことが可能である。洗浄バッファー139は、ピペット先端部162からゆっくりと放出され得る。リンシングフィクスチャー160の角度161は、制御された速度で洗浄バッファー139がゲル層142を横切って流れることを可能にすることができ、それによって、ゲル層142の表面の上に残っている細胞をリンスしながら、マイクロウェルの内側に捕捉されている細胞の摂動を最小化する。
【0064】
[0080] また、本開示は、細胞の中に含有される内因性タンパク質の分子量サイジングを得るための方法を提供する。別々に最適化される溶解バッファーおよび電気泳動バッファーは、タンパク質標準の好都合な導入を可能にすることができる。オープンウェル対ゲルへのタンパク質の優先的なパーティショニングは、タンパク質マーカーの容易なローディングを可能にすることができ、それは、予期される線形のlog分子量(MW)-対-モビリティーの関係によって分離されている。したがって、チップの中に含有されている数千のマイクロウェルの中へ、別個のサブナノリットル体積のタンパク質マーカー溶液をロードすることは必要でない可能性がある。タンパク質マーカーは、別個の波長を使用して蛍光にタグ付けされてもよく、それらが、後の内因性タンパク質の検出と干渉しないようになっている。タンパク質マーカーは、開裂可能(cleavable)または消光可能(quenchable)なフルオロフォアによってタグ付けされてもよく、それは、内因性タンパク質の検出の前に検出され、次いで、除去または消去され得る。
図7を参照して説明されている2つのバッファー方法を使用して、タンパク質マーカーを溶解バッファーに加えることが可能であり、細胞溶解が起こるときに、それらが同時に導入され得るようになっている。代替的に、タンパク質マーカーは、リソソームもしくはアガロース(または、他のポリマー)ビーズの中へロードされ得る。次いで、リソソームおよびビーズは、同時に定着させられてもよく、それとともに、細胞が、マーカータンパク質を含有するいくつかのマイクロウェルを結果として生じさせる。電気泳動を開始させるために外部電界が供給されるときに、タンパク質は、リソソームまたはビーズを離れることが可能である。AC電界が印加され、細胞のエレクトロポレーションと同様の様式でタンパク質マーカーを解放することが可能である。溶解バッファーは、リソソームまたはビーズからタンパク質マーカーを解放するために修正され得る。
【0065】
[0081] タンパク質サイジング標準が、製造の間にさまざまな場所においてチップの上にスポットされ、チップの使用の間に再水和され得る。交互になっている別々の領域などのような、チップの上の別々の領域は、タンパク質サイジングラダーに関して指定されてもよく、サイジングラダーに関するウェルが、少なくとも1次元で増加させられ、より好都合なサイジングマーカーのローディングを可能にすることができる。
【0066】
[0082] 本開示の別の態様は、蛍光標準の導入を可能にし、検出された内因性タンパク質が公知の蛍光信号と比較され得るようになっており、測定は、より容易にチップ同士の間で比較され得る。ある例では、蛍光標準は、製造の間に目立たない場所においてチップの中へ導入され得る。標準は、たとえば、ゲルの全体を通して組み込まれてもよく、もしくは、ゲルの架橋が完了する前にチップの領域の上にスポットされてもよく、または、ゲル(たとえば、ベンゾフェノン)の中の反応基が、蛍光標準と共有結合するように活性化させられ得る。蛍光標準は、ビーズの中へ導入可能であり、それは、細胞とともにウェルの中へともに定着する。ビーズは、ウェルの中に残ることが可能であり、これらのビーズからの蛍光信号が、ウェルから分離するラベル付きの内因性タンパク質からの信号と比較され得る。ビーズは、市販のシリカビーズ(もしくは、同様のもの)であることが可能であり、または、それらは、ヒドロゲルから形成されたビーズであることが可能である。ヒドロゲルビーズの例は、ベンゾフェノン-メタクリルアミドコモノマーを含有するポリアクリルアミドビーズを含む。所望の染料によるインキュベーションによって、また、その後に続く、ヒドロゲルビーズの中に組み込まれたベンゾフェノン官能基への染料の光開始性の結合によって、蛍光染料が、ポリアクリルアミドビーズの中へ組み込まれ得る。ポリアクリルアミドビーズは、ユーザーが所望のマーカーをビーズに好都合に追加することを可能にすることができる。また、ビーズは、磁気的なナノ粒子を組み込むことが可能であり、ビーズの操作を支援する。
【0067】
[0083] 本開示は、本開示の方法を実装するようにプログラムされたコンピューター制御システムを提供する。
図11は、コンピューターシステム170を示しており、コンピューターシステム170は、本明細書で提供されているシステムおよび方法を実装するようにプログラムされ、または、その他の方法で構成されている。コンピューターシステム170は、たとえば、自動化された単一細胞ウェスタンブロッティングなどのような、本開示の検体検出のさまざまな態様を調整することが可能である。コンピューターシステム170は、ユーザーの電子デバイスであるか、または、電子デバイスに対してリモートに位置付けされているコンピューターシステムであることが可能である。電子デバイスは、モバイル電子デバイスであることが可能である。
【0068】
[0084] コンピューターシステム170は、中央処理装置(CPU、本明細書では「プロセッサー」および「コンピュータープロセッサー」とも呼ばれる)171を含み、シングルコアプロセッサーもしくはマルチコアプロセッサー、または、並列処理のための複数のプロセッサーであることが可能である。また、コンピューターシステム170は、メモリーまたはメモリーロケーション172(たとえば、ランダム-アクセスメモリー、リードオンリーメモリー、フラッシュメモリー)、電子的なストレージユニット173(たとえば、ハードディスク)、1つまたは複数の他のシステムと通信するための通信インターフェース174(たとえば、ネットワークアダプター)、および周辺デバイス175、たとえば、キャッシュ、他のメモリー、データストレージおよび/または電子的なディスプレイアダプターなどを含む。メモリー172、ストレージユニット173、インターフェース174、および周辺デバイス175は、マザーボードなどのような通信バス(実線)を通して、CPU171と通信している。ストレージユニット173は、データを記憶するためのデータストレージユニット(または、データリポジトリ)であることが可能である。コンピューターシステム170は、有線接続または無線接続を介して、通信インターフェース174の支援を受けて、コンピューターネットワーク(「ネットワーク」)176に動作可能に連結され得る。ネットワーク176は、インターネット、インターネットおよび/もしくはエクストラネット、または、インターネットと通信しているイントラネットおよび/もしくはエクストラネットであることが可能である。ネットワーク176は、いくつかのケースでは、電気通信および/またはデータネットワークである。ネットワーク176は、1つまたは複数のコンピューターサーバーを含むことが可能であり、1つまたは複数のコンピューターサーバーは、クラウドコンピューティングなどのような分散コンピューティングを可能にすることができる。ネットワーク176は、いくつかのケースでは、コンピューターシステム170の支援を受けて、ピアツーピアのネットワークを実装することが可能であり、ピアツーピアのネットワークは、コンピューターシステム170に連結されているデバイスがクライアントまたはサーバーとして振舞うことを可能にし得る。
【0069】
[0085] CPU171は、機械可読指示のシーケンスを実行することが可能であり、機械可読指示は、プログラムまたはソフトウェアの中に具現化され得る。指示は、メモリー172などのようなメモリーロケーションの中に記憶され得る。指示は、CPU171に向けられてもよく、それは、その後に、CPU171が本開示の方法を実装するようにプログラムまたはそうでなければ構成することが可能である。CPU171によって実施される動作の例は、フェッチ、デコード、実行、およびライトバック、ならびに/または、任意の他の適切な動作を含むことが可能である。
【0070】
[0086] CPU171は、集積回路などのような回路の一部であることが可能である。コンピューターシステム170の1つまたは複数の他のコンポーネントが、回路の中に含められ得る。いくつかのケースでは、回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)である。いくつかの実施形態では、CPU171および/または集積回路は、本明細書で説明されているシステムを制御することに関連付けられた1つまたは複数のモジュールを含むことが可能であり、および/または、それを実行することが可能である。本明細書で使用されているように、「モジュール」という用語は、動作可能に連結された電気的なコンポーネントの任意の分析ンブリおよび/またはセットを表しており、それは、たとえば、メモリー、プロセッサー、電気的なトレース、光学的なコネクター、および/またはソフトウェア(ハードウェアの中で実行する)を含むことが可能である。たとえば、プロセッサーの中で実行されるモジュールは、そのモジュールに関連付けられた1つまたは複数の特定の機能を果たすことができる、ハードウェアベースのモジュール(たとえば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ASIC、デジタル信号プロセッサー(DSP))、および/または、ソフトウェアベースのモジュール(たとえば、メモリーの中に記憶され、および/または、プロセッサーにおいて実行される、コンピューターコードのモジュール)の任意の組み合わせであることが可能である。
【0071】
[0087] ストレージユニット173は、ドライバー、ライブラリー、プロファイル、セーブされたプログラムなどのような、ファイルを記憶することが可能である。ストレージユニット173は、たとえば、ユーザープリファレンスおよびユーザープログラムなどの、ユーザーデータを記憶することが可能である。コンピューターシステム170は、いくつかのケースでは、コンピューターシステム170の外部にある1つまたは複数の追加的なデータストレージユニットを含むことが可能であり、それは、たとえば、イントラネットまたはインターネットを通してコンピューターシステム170と通信しているリモートサーバーの上に位置付けされている(たとえば、ネットワークに取り付けられているストレージ(NAS)デバイス)。
【0072】
[0088] コンピューターシステム170は、ネットワーク176を通して1つまたは複数のリモートコンピューターシステムと通信することが可能である。たとえば、コンピューターシステム170は、ユーザーのリモートコンピューターシステム(たとえば、サービスプロバイダー)と通信することが可能である。リモートコンピューターシステムの例は、サーバー、ホストデバイス、パーソナルコンピューター(たとえば、ポータブルPC)、スレートPCまたはタブレットPC(たとえば、Apple(登録商標)iPad、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話、スマートフォン(たとえば、Apple(登録商標)iPhone、Android-enabledデバイス、Blackberry(登録商標))、またはパーソナルデジタルアシスタントを含む。ユーザーは、ネットワーク176を介してコンピューターシステム170にアクセスすることが可能である。
【0073】
[0089] 本明細書で説明されているような方法は、たとえば、メモリー172または電子的なストレージユニット173の上など、コンピューターシステム170の電子的な記憶場所の上に記憶されている、マシン(たとえば、コンピュータープロセッサー)実行可能コードによって実装され得る。マシン実行可能コードまたはマシン可読コードは、ソフトウェアの形態で提供され得る。使用の間に、コードは、プロセッサー171によって実行され得る。いくつかのケースでは、コードは、ストレージユニット173から読み出される場合があり、また、プロセッサー171によってすぐにアクセスできるようにメモリー172の上に記憶され得る。いくつかの状況では、電子的なストレージユニット173が除外される場合があり、マシン実行可能指示が、メモリー172の上に記憶される。
【0074】
[0090] コードは、コードを実行するように適合されているプロセッサーを有するマシンとともに使用するようにプリコンパイルおよび構成されてもよく、または、ランタイムの間にコンパイルされ得る。コードは、プリコンパイルされた方式でまたはコンパイルされたままの方式でコードが実行することを可能にするように選択され得るプログラミング言語で供給され得る。
【0075】
[0091] コンピューターシステム170などのような、本明細書で提供されているシステムおよび方法の態様は、プログラミングにおいて具現化され得る。さまざまな技術の態様が、典型的に、マシン(または、プロセッサー)実行可能コードの形態の、および/または、マシン可読媒体のタイプで実施または具現化された関連のデータの形態の、「製品」または「製造の物品」が考えられ得る。マシン実行可能コードは、メモリー(たとえば、リードオンリーメモリー、ランダム-アクセスメモリー、フラッシュメモリー)またはハードディスクなどのような、電子的なストレージユニットの上に記憶され得る。「ストレージ」タイプの媒体は、コンピューターもしくはプロセッサーのタンジブルメモリー、または、それらの関連のモジュール、たとえば、さまざまな半導体メモリー、テープドライブ、およびディスクドライブなどのうちのいずれかまたはすべてを含むことが可能であり、それは、いつでもソフトウェアプログラミングのための非一時的なストレージを提供することが可能である。ソフトウェアのうちのすべてまたは一部は、ときには、インターネットまたはさまざまな他のテレコミュニケーションネットワークを通して通信され得る。そのような通信は、たとえば、1つのコンピューターまたはプロセッサーから別のコンピューターまたはプロセッサーへの、たとえば、管理サーバーまたはホストコンピューターからアプリケーションサーバーのコンピュータープラットフォームの中への、ソフトウェアのローディングを可能にすることができる。したがって、ソフトウェアエレメントを担持することができる別のタイプの媒体は、光学的な波、電気的な波、および電磁波を含み、それは、たとえば、有線および光学的なランドラインネットワークを通して、ならびに、さまざまなエアリンクを通して、ローカルデバイス同士の間の物理的なインターフェースを横切って使用される。また、有線リンクもしくは無線リンク、または光学リンクなどのような、そのような波を搬送する物理的なエレメントが、ソフトウェアを担持する媒体として考慮され得る。本明細書で使用されているように、非一時的なタンジブル「ストレージ」媒体に制限されない場合には、コンピューターまたはマシン「可読媒体」などのような用語は、実行のためにプロセッサーに指示を提供することに参加する任意の媒体を表している。
【0076】
[0092] したがって、コンピューター実行可能コードなどのようなマシン可読媒体は、多くの形態をとることが可能であり、それは、タンジブルストレージ媒体、搬送波媒体、または物理的な伝送媒体を含むが、それに限定されない。不揮発性のストレージ媒体は、たとえば、光学ディスクまたは磁気ディスクを含み、それは、たとえば、任意のコンピューターなどの中のストレージデバイスのうちのいずれかなどであり、それは、たとえば、図面に示されているデータベースなどを実装するために使用され得る。揮発性のストレージ媒体は、そのようなコンピュータープラットフォームのメインメモリーなどのような、ダイナミックメモリーを含む。タンジブル伝送媒体は、同軸のケーブル、銅ワイヤー、およびファイバーオプティクスを含み、それは、コンピューターシステムの中にバスを含むワイヤーを含む。搬送波伝送媒体は、無線周波数(RF)および赤外線(IR)データ通信の間に発生させられるものなどのような、電気信号もしくは電磁信号、または音波もしくは光波の形態をとることが可能である。したがって、コンピューター可読の媒体の一般的な形態は、たとえば:フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気的な媒体、コンパクトディスク-リードオンリーメモリー(CD-ROM)、デジタルビデオディスク(DVD)もしくはデジタルビデオディスク-リードオンリーメモリーDVD-ROM、任意の他の光学的な媒体、パンチカード紙テープ、孔部のパターンを備えた任意の他の物理的なストレージ媒体、ランダム-アクセスメモリー(RAM)、リードオンリーメモリー(ROM)、プログラマブルリードオンリーメモリー(PROM)および消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリー(EPROM)、FLASH-EPROM、任意の他のメモリーチップもしくはカートリッジ、搬送波を輸送するデータもしくは指示、そのような搬送波を輸送するケーブルもしくはリンク、または、コンピューターがそこからプログラミングコードおよび/またはデータを読むことができる任意の他の媒体を含む。コンピューター可読の媒体のこれらの形態の多くは、実行のために、1つまたは複数の指示の1つまたは複数のシーケンスをプロセッサーに搬送することに関わる可能性がある。
【0077】
[0093] コンピューターシステム170は、電子的なディスプレイ177を含むことが可能であり、または、電子的なディスプレイ177と通信していることが可能であり、電子的なディスプレイ177は、たとえば、コンピュータープロセッサーに連結されているシステムの出力または読み出しなどを提供するためのユーザーインターフェース(UI)178を含む。UIの例は、それに限定されないが、グラフィッカルユーザーインターフェース(GUI)およびウェブベースのユーザーインターフェースを含む。
【0078】
[0094] 本開示の方法およびシステムは、1つまたは複数のアルゴリズムによって実装され得る。アルゴリズムが、中央処理装置171による実行のときに、ソフトウェアによって実装され得る。アルゴリズムは、たとえば、生物学的なサンプルの中の1つまたは複数の目標検体の存在などのような、結果を分析するために使用され得る。最終的なデータセットは、それぞれの生物学的なサンプルのそれぞれの分析から集められたデータの部分に基づいて構築され得る。
【0079】
[0095] 除去可能な電気泳動セル120は、とりわけ
図2~
図9を参照して上記に説明されているが、他の実施形態では、インスツルメント100などのようなscWBインスツルメントは、任意の適切な電気泳動セルを受け入れるように、および/または、その他の方法で使用するように構成され得る。たとえば、
図12Aおよび
図12Bは、実施形態による除去可能な電気泳動セル220を図示している。いくつかの実施形態では、除去可能な電気泳動セル220は、射出成形による製造のために設計されており、および/または、その他の方法で最適化されている。除去可能な電気泳動セル220の一部分は、形態および/または機能に関して、
図2~
図9を参照して上記に説明されている電気泳動セル120の対応する部分および/または特徴と同様であることが可能であり、したがって、そのような部分は、さらに詳細に本明細書で説明されていない。
【0080】
[0096] 示されているように、除去可能な電気泳動セル220は、ウィッキングブレーク229を含み、流体が1つまたは複数の接触パッドエリア222まで電極を上にウィッキングすることを防止する。また、電気泳動セル220は、一体型のチップリフター265を含み、チップリフター265は、セル220からのチップ(たとえば、チップ140)の除去を促進させる。
図12Aおよび
図12Bに示されている実施形態では、チップリフター265がダウン位置にあるときに、それは、電気泳動本体部と面一状態にフィットしており、空気バブルの捕捉、ならびに、(電気泳動セル120に関連して上記に詳細に説明されているように)チップの縁部の近くの流体高さの変化によって引き起こされ得る電界摂動を防止するようになっている。電気泳動セル220は、堰224を含み、堰224は、別々に挿入されており、電気泳動セル220が成形されることを可能にする。電極ワイヤー(図示せず)を取り付けるために、熱かしめフィーチャー267が含められている。ワイヤーは、熱かしめフィーチャー267同士の間に伸ばされてもよく、熱かしめフィーチャー267は、次いで溶融され、ワイヤーを適切な場所に恒久的に保持する。小さい(<3mm)円形凹部266は、先の尖ったプライングツールを使用して電気泳動セル220からチップを除去する代替的な方式を可能にする。小さいサイズの凹部266は、バブル捕捉および電界摂動を最小化する。
図12Bに示されているように、電気泳動セル220の下側は、安定化ポスト269を含み、安定化ポスト269は、固定されたポイントにおいて、電気泳動セル220をインスツルメント(たとえば、インスツルメント100)の中の受容部に接触させる。示されているように、電気泳動セル220は、吐出フィーチャー268を含み、吐出フィーチャー268は、使用後に、使用されたバッファーを電気泳動セルから注ぐことを支援することが可能である。このように、電気泳動セル220は、本明細書で説明されているもののいずれかなどのような、任意の適切なscWBプロセスおよび/または手順において使用され得る。
【実施例】
【0081】
[0097]
すべての時限(timed)工程を正確に制御し、scWB分析の実行のために、電界およびUV照射の均一で反復可能で安全な適用を提供する、一体型のオプトエレクトロニクスインスツルメントが構築された。一体型のインスツルメントは、分離とUVフォトキャプチャーとの間の時間を最小化し、したがって、拡散性の分散および分離分解能の喪失を制限する。外部ユーザーへの安全な配備のために、高電圧およびUV光の機械的なインターロッキングが実装された。下記に、最適化されたシステムコンポーネントについての詳細、および、一体型のプロトタイプの実証された安全動作および許容可能な分析性能についての詳細が提示されている。
【0082】
[0098] 除去可能な電気泳動セル
反復式のプロトタイピングおよび設計プロセスが、最終的な一体型のscWBデバイスの中で使用するための除去可能な電気泳動セルを構築し、テストし、および最適化するために用いられた。除去可能な電気泳動セルの設計は、たとえば、電極の近くでの電解バブル形成を低減させるように構成され、電解バブル形成は、セルの中の液体表面をカバーするように広がり、電界を摂動させ、また、後続のUV露出工程の間に、UV光の一部分を遮断する。さらに、設計は、たとえば、信頼性の高いチップ接着および反復可能なバッファー追加を増加させるように構成された。
【0083】
[0099] いくつかの実施形態では、チップ凹部は、容易なチップ除去のためのフィンガーカットアウトを含むことが可能である。そのようなチップ凹部は、バッファー追加の間に、チップが取り外されないように保護するのに十分に深くなっており、ワセリン固定剤に対する必要性を防ぐことが可能である。さらに、バブルを捕捉する堰構造体が、メインセルコンパートメントからプラチナ電極を分離するために使用され、バブルがチップ表面の上に浮遊することを防止することが可能である。しかし、いくつかの場合には、そのようなフィンガーカットアウトは、たとえば、チップの縁部において観察される電界ひずみにつながる可能性がある(縁部の近くの8°-対-中心近くの<2°)。いくつかの場合には、この不均一性は、セルの底部表面と面一状態になっていないフィンガーカットアウトおよびチップに起因して、液体(たとえば、バッファー溶液)高さの不連続性によって引き起こされ得るということを、数値シミュレーションが確認する。チップの縁部における液体高さの変化は、電界ラインが分散することを引き起こす可能性があり、チップの縁部の近くの電界ひずみにつながる。
【0084】
[0100] 電界均一性を増加させるために、液体高さの変化が回避された。たとえば、いくつかの実施形態では、除去可能な電気泳動セル220は、チップ凹部221を含み、チップ凹部221は、チップを完全にへこませるように構成されており、チップ凹部221およびフィンガーカットアウトを越えて突出したゲル層が除去されるようになっていた(
図13を参照)。そのような除去可能な電気泳動セル220は、以下の設計を組み込むことが可能である。すなわち、それは、1)こぼれることなく溶解/電気泳動バッファーの追加を可能にする比較的に大きいバッファー貯蔵部、2)電解バブルがチップの表面の上を泳動することを防止し、また、チップの上の流体運動をさらに減衰しながら、フォトキャプチャーの間にUV光を遮断することを防止する、バブルトラップ(たとえば、堰224)、3)インスツルメント蓋部との一体化のためのポゴピン高電圧接触、および、4)チップの縁部の近くの電界ひずみを最小化するための、フィンガーカットアウトなしのチップ凹部221である。また、除去可能な電気泳動セル200は、上記に説明されているように、電気接触パッド222およびプラチナ電極227を含むことが可能である。
【0085】
[0101] 光源選択
いくつかの候補の光源がテストされた。ベンゾフェノン捕獲化学的性質は、330~360ナノメートル(nm)の範囲で活性化されることが知られており、ライトニング硬化ランプは、316nmおよび365nmにおいて、かなりのパワーを有する広範囲の出力を有する。310nmから365nm波長範囲において、いくつかのコンパクトな光源が評価された。高パワーの(1200マイクロワット(mW)/cm2)365nmLED(Hamamatsu)の下で、捕獲は観察されなかった。コンパクトなUV蛍光チューブランプが、UV Systems(Renton、WA)から得られ、バルブの性能は、それぞれ、365nmおよび312nmに中心を置く広範囲の出力と比較された。両方のバルブは、330~360nmの範囲において、かなりのパワー出力を有している。312nm波長バルブは、365nmバルブと比較して、捕獲効率のかなりの増加を生み出した(4分露出に関して、69%対10%)。312nmバルブに対する露出時間を1分まで低減させることは、(4分の露出時間に関して、69%と比較して)52%の測定された平均捕獲効率を生み出し、捕獲効率の適度な低減を伴って、露出時間が4分から低減され得るということを示唆する。
【0086】
[0102] 一体型のプロトタイプ.
一体型の高電圧電気泳動およびUV露出ユニットが使用され、すべての時限工程を正確に制御し、電界およびUV照射の均一で反復可能で安全な適用を提供する。一体型のオプトエレクトロニクスインスツルメント300が構築され、それは、カスタム設計された除去可能な電気泳動セル320、チップ340(たとえば、上記に説明されているものなど)、および、UVシステムからの312nmUVバルブを組み込み、電気泳動およびUV露出工程の安全で自動化された連続的な動作を可能にする(たとえば、
図14A~
図14Dを参照)。キー分析工程:溶解時間、電気泳動ランタイム、電圧、およびUV露出時間(
図14Bおよび
図14C)にわたって、ユーザーが制御することを可能にするために、グラフィッカルユーザーインターフェースを備えたタッチスクリーン310が開発された。
【0087】
[0103] 安全インターロッキングフィーチャーが上手く組み込まれ、また、蓋部が開いたときにUV光が停止することが視覚的に観察された。電流が、マルチメーターによって測定され、蓋部が開いたときに停止することが見出された。インスツルメントは、蓋部が開けられたときに、高電圧ピンから任意の残留電荷をドレン排出するためのドレン回路と追加的にフィットさせられた。ライトブロッキングフィーチャーは、UV光の任意のリーケージを無視できるレベルまで制限するために組み込まれた。
【0088】
[0104] 方法および分析
~1mLの溶解バッファーによって10~15秒にわたってチップをカバーし、次いで、迅速に溶解バッファーを電気泳動バッファーと交換することによって、scWBチップの中に定着させられている細胞を溶解させる能力が実証された。
図4、
図5、および
図7を参照して説明されている除去可能な電気泳動セルおよび器具類を使用して、過度の流体摂動なしに、チップの上方のバッファーを急速に交換することによって、マイクロウェルの内側の溶解させられたタンパク質の喪失が最小化され得る。
【0089】
[0105] オープンウェル対ゲルへのタンパク質の優先的なパーティショニングは、タンパク質マーカーの容易なローディングを可能にし、それは、予期される線形のlog MW-対-モビリティーの関係によって分離されている(
図16A~
図16Cを参照)。
【0090】
[0106] チップによってインキュベートされると、マーカーを含有するバッファーは、連続的な注入を回避するように除去され、分離の間のタンパク質マーカーの分解能を低減した。2つのバッファーワークフロー(たとえば、
図7を参照)を使用して、溶解バッファーの中に分子量サイジングタンパク質マーカーを導入する能力が示されている。表面張力は、ゲルの表面の上に、マーカーを含有する溶解バッファーを保持し、電気泳動バッファーが導入されてチップの上を流れるまで、ウェルを充填する。連続的な注入を回避する必要性とは別に、(電気泳動バッファーと比較して)より小さい体積の溶解バッファーの中のタンパク質マーカーの導入は、ラダータンパク質の必要とされる質量(および、コスト)を一桁低減させる。オボアルブミンおよび免疫グロブリンG(IgG)マーカーを使用して、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)細胞株の中の内因性ベータ-チューブリンのサイジングのための予備的な結果は、チップを横切る電界摂動からの変動性を低減させた(生の泳動距離は、7.9%CVを有していたが、一方、オボアルブミンおよびIgGを使用したサイジング補正は、CVを3.4%まで低減させた)(たとえば、
図15A~
図15Cを参照)。
図16A~
図16Cは、それぞれ、8%Tゲル、10%Tゲル、および12%Tゲルについての分子量サイジングを図示している。
【0091】
[0107] 上記に説明されているように、本明細書のいくつかの実施形態は、さまざまなコンピューター実装された動作を実施するために指示またはコンピューターコードをその上に有する非一時的なコンピューター可読の媒体(非一時的なプロセッサー可読媒体とも称され得る)を備えたコンピューターストレージ製品に関する。コンピューター可読の媒体(または、プロセッサー可読媒体)は、それが一時的な伝播信号自身を含まないという意味において非一時的である(たとえば、スペースまたはケーブルなどのような伝送媒体についての情報を搬送する伝播電磁波)。媒体およびコンピューターコード(コードとも称され得る)は、1つまたは複数の特定の目的のために設計および構築されたものであることが可能である。非一時的なコンピューター可読の媒体の例は、それに限定されないが、磁気的なストレージ媒体、たとえば、ハードディスク、フロッピーディスク、および磁気テープなど;光学的なストレージ媒体、たとえば、CD、DVD、CD-ROM、およびホログラフィックデバイス;光磁気ストレージ媒体、たとえば、光ディスクなど;搬送波信号処理モジュール;ならびに、プログラムコードを記憶および実行するように特別に構成されているハードウェアデバイス、たとえば、ASIC、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、リードオンリーメモリー(ROM)、およびランダム-アクセスメモリー(RAM)デバイスを含む。本明細書で説明されている他の実施形態は、コンピュータープログラム製品に関し、それは、たとえば、本明細書で議論されている指示および/またはコンピューターコードを含むことが可能である。
【0092】
[0108] 本明細書で説明されているいくつかの実施形態および/または方法は、ソフトウェア(ハードウェアの上で実行される)、ハードウェア、または、それらの組み合わせによって、実施され得る。ハードウェアモジュールは、たとえば、汎用プロセッサー、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/またはASICを含むことが可能である。ソフトウェアモジュール(ハードウェアの上で実行される)は、さまざまなソフトウェア言語(たとえば、コンピューターコード)によって表現されてもよく、それは、C、C++、Java(商標)、Ruby、VisualBasic(商標)、ならびに/または、他のオブジェクト指向の、手続き型の、もしくは他のプログラミング言語および開発ツールを含む。コンピューターコードの例は、それに限定されないが、マイクロコードもしくはマイクロ指示、マシン指示、たとえば、コンパイラーによって作り出されるものなど、ウェブサービスを作り出すために使用されるコード、および、インタープリターを使用するコンピューターによって実行される、より高いレベルの指示を含有するファイルを含む。たとえば、実施形態は、命令型プログラミング言語(たとえば、C、FORTRANなど)、関数型プログラミング言語(Haskell、Erlangなど)、論理型プログラミング言語(たとえば、Prolog)、オブジェクト指向型プログラミング言語(たとえば、Java、C++など)、または、他の適切なプログラミング言語および/もしくは開発ツールを使用して、実装され得る。コンピューターコードの追加的な例は、それに限定されないが、制御信号、暗号化されたコード、および、圧縮されたコードを含む。
【0093】
[0109] 本発明の好適な実施形態が、本明細書で示されて説明されてきたが、そのような実施形態は単に例として提供されているということが当業者に明らかであろう。本明細書の中に提供されている特定の例によって本発明が限定されることは意図されていない。本発明は、上述の明細書を参照して説明されてきたが、本明細書における実施形態の説明および図示は、限定する意味で解釈されることを意味していない。ここで、多数の変形例、変化例、および代替例が、本発明から逸脱することなく、当業者に考え付くこととなる。そのうえ、本発明のすべての態様は、さまざまな条件および変数に依存する、本明細書で述べられている特定の描写、構成、または相対的比率に限定されないということが理解されるべきである。本明細書で説明されている本発明の実施形態に対するさまざまな代替例が、本発明を実施する際に用いられ得るということが理解されるべきである。したがって、本発明は、任意のそのような代替例、修正例、変形例、または均等物をカバーするべきであるということが企図される。以下の特許請求の範囲が、本発明の範囲を画定しているということ、および、これらの特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲の中の方法および構造体がそれによってカバーされるということが意図されている。
【0094】
[0110] 上記に説明されている方法および/またはイベントは、特定の順序で起こる特定のイベントおよび/または手順を示しているが、特定のイベントおよび/または手順の順序は修正され得る。追加的に、特定のイベントおよび/または手順は、可能なときには、並列処理で同時に実施されてもよく、また、上記に説明されているように、連続して実施され得る。