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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/60 20200101AFI20230208BHJP
   D06F 33/68 20200101ALI20230208BHJP
   D06F 33/70 20200101ALI20230208BHJP
   D06F 25/00 20060101ALI20230208BHJP
   D06F 58/02 20060101ALI20230208BHJP
   D06F 58/46 20200101ALI20230208BHJP
【FI】
D06F33/60
D06F33/68
D06F33/70
D06F25/00 A
D06F58/02 F
D06F58/02 Q
D06F58/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019072740
(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2020168275
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
(72)【発明者】
【氏名】金田 至功
(72)【発明者】
【氏名】本村 隆行
(72)【発明者】
【氏名】温 召航
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-037896(JP,A)
【文献】特開2005-261703(JP,A)
【文献】特開2012-254207(JP,A)
【文献】特開2006-204428(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0183319(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/30-34/34
D06F 25/00
D06F 58/02-58/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気口及び排気口を有する水槽と、
前記水槽内に横軸周りに回転可能に設けられ衣類が収容される回転ドラムと、
前記給気口と前記排気口との間を前記水槽の外側において連通させるように設けられた循環風路と、
前記回転ドラム内の空気を前記循環風路を通して循環させる送風ファンと、
圧縮機並びに前記循環風路内に配置された蒸発器及び凝縮器を含んで構成されるヒートポンプと、
前記回転ドラム、前記送風ファン、前記ヒートポンプを駆動する制御装置とを備え、
衣類に対する洗い、すすぎ、脱水、はがし、乾燥の行程を連続して行う洗濯乾燥運転の実行が可能であると共に、前記洗濯乾燥運転では、洗濯乾燥行程を標準的な時間で実行する標準コースと、洗濯乾燥行程の時間を短縮する短時間コースとを含んでおり、
前記制御装置は、前記短時間コースの洗濯乾燥運転の実行時に、脱水行程において前記回転ドラムの回転速度が所定値に達した場合に前記ヒートポンプの圧縮機を起動させると共に、
その後、前記回転ドラムの回転速度が設定されている最大値に達した時点から、所定時間経過後に、はがし行程を途中終了又は省略して乾燥行程を開始させる洗濯乾燥機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記短時間コースの洗濯乾燥運転の実行時における、脱水行程中に、前記回転ドラムの回転速度が設定されている最大値に達した後、前記圧縮機の吐出温度が所定値に達した時点で、はがし行程を途中終了又は省略して乾燥行程を開始させる請求項1記載の洗濯乾燥機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記短時間コースの洗濯乾燥運転の実行時における、脱水行程中に、前記回転ドラムの回転速度が設定されている最大値に達した後、前記凝縮器の温度が所定値に達した時点で、はがし行程を途中終了又は省略して乾燥行程を開始させる請求項1又は2記載の洗濯乾燥機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記短時間コースの洗濯乾燥運転の実行時における、脱水行程中に、前記回転ドラムの回転速度が設定されている最大値に達した後、前記給気口が設けられている部分の空気温度が所定値に達した時点で、はがし行程を途中終了又は省略して乾燥行程を開始させる請求項1から3のいずれか一項に記載の洗濯乾燥機。
【請求項5】
前記制御装置は、はがし行程開始時に前記送風ファンの動作を開始させると共に、該送風ファンが最大回転速度に到達するタイミングに、前記圧縮機の動作周波数が最大値に到達するタイミングを一致させるよう制御する請求項1から4のいずれか一項に記載の洗濯乾燥機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記送風ファンが最大回転速度に到達する直前に、最大回転速度よりも低い所定速度で回転する期間を、一定時間設ける請求項5記載の洗濯乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯乾燥機として、ヒートポンプを採用したドラム式の洗濯乾燥機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このドラム式の洗濯乾燥機は、多数の孔を有し衣類が収容されるドラムを回転可能に備える水槽に、給気口と排気口とを設け、それら給気口及び排気口を水槽外で接続する循環風路を送風用のファン装置と共に設け、ヒートポンプの蒸発器及び凝縮器を前記循環風路内に配置して、乾燥風を水槽内に供給するように構成されている。そして、衣類に対する洗濯、乾燥を連続して行う洗濯乾燥運転にあっては、脱水行程中にヒートポンプの圧縮機を起動し、予熱運転を先行して開始するいわゆるプリヒート行程を行うことにより、乾燥行程に要する時間を短縮することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-350825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、脱水行程においては、衣類がドラムの内周面にへばり付くことがある。脱水行程の終了後、衣類がへばり付いたままで次の乾燥行程を開始すると、乾燥効果が低下する虞がある。そこで、脱水行程後に、ドラムを低速で間欠的に回転駆動することにより、衣類をドラム内面からはがすはがし行程を、一定時間例えば5分間程度実行した上で、乾燥行程に移行することが考えられている。
【0005】
しかし、上記のはがし行程を、実際にドラム内面への衣類のへばり付きがあるかどうかにかかわらず、一定時間実行してしまうと、洗濯乾燥運転に要する時間の短縮化が十分に図られなくなってしまう。特に、標準コースよりも時間を短くした短時間コースの洗濯乾燥運転を実行する場合において、無駄にはがし行程を行うことは好ましくなく、はがし行程の時間の短縮化が求められるのである。
そこで、短時間コースの洗濯乾燥運転を実行する場合の、運転に要する時間の短縮化を効果的に図ることができる洗濯乾燥機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の洗濯乾燥機は、給気口及び排気口を有する水槽と、前記水槽内に横軸周りに回転可能に設けられ衣類が収容される回転ドラムと、前記給気口と前記排気口との間を前記水槽の外側において連通させるように設けられた循環風路と、前記回転ドラム内の空気を前記循環風路を通して循環させる送風ファンと、圧縮機並びに前記循環風路内に配置された蒸発器及び凝縮器を含んで構成されるヒートポンプと、前記回転ドラム、前記送風ファン、前記ヒートポンプを駆動する制御装置とを備え、衣類に対する洗い、すすぎ、脱水、はがし、乾燥の行程を連続して行う洗濯乾燥運転の実行が可能であると共に、前記洗濯乾燥運転では、前記各行程を標準的な時間で実行する標準コースと、前記各行程の時間を短縮する短時間コースとを含んでおり、前記制御装置は、前記短時間コースの洗濯乾燥運転の実行時に、脱水行程において前記回転ドラムの回転速度が所定値に達した場合に前記ヒートポンプの圧縮機を起動させると共に、その後、前記回転ドラムの回転速度が設定されている最大値に達した時点から、所定時間経過後に、はがし行程を途中終了又は省略して乾燥行程を開始させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態を示すもので、洗濯乾燥機の内部構成を概略的に示す縦断右側面図
図2】洗濯乾燥機のヒートポンプを含む内部構成を概略的に示す縦断背面図
図3】洗濯乾燥機の電気的構成を概略的に示すブロック図
図4】実施形態における脱水行程から乾燥行程にかけての時間経過に伴う回転ドラムの回転速度及び圧縮機の駆動周波数の変動の様子を示す図
図5】参考例における脱水行程から乾燥行程にかけての時間経過に伴う回転ドラムの回転速度及び圧縮機の駆動周波数の変動の様子を示す図
図6】回転ドラムの設定最大回転速度を示す図
図7】第2の実施形態を示すもので、プリヒート行程における圧縮機の吐出温度、凝縮器温度、給気口温度の変動の様子を示す図
図8】第3の実施形態を示すもので、はがし行程及び乾燥行程における圧縮機の駆動周波数と送風ファンの回転速度との関係を示す図
図9】第4の実施形態を示すもので、圧縮機の駆動周波数と送風ファンの回転速度との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)第1の実施形態
以下、ヒートポンプを備え洗濯運転及び乾燥運転が可能なドラム式洗濯乾燥機に適用した第1の実施形態について、図1から図6を参照しながら説明する。まず、図1から図3を参照して、本実施形態に係る洗濯乾燥機1の全体構成について述べる。図1等に示すように、洗濯乾燥機1の本体を構成する外箱2は、ほぼ矩形箱状をなし、外箱2内には、円筒状の水槽3が後下がりに傾斜した状態で、図示しない弾性支持機構を介して支持されている。前記水槽3内には、洗濯物である衣類が収容される円筒状の回転ドラム4が回転可能に支持されている。この回転ドラム4は、前後方向に延び且つ水平からやや後下がりに傾斜した傾斜軸を中心に回転するように構成されている。
【0009】
図1に示すように、この回転ドラム4の周壁部及び後壁部には通水、通気用の多数の孔4aが形成され、また、回転ドラム4の周壁部の内面には、洗濯物撹拌用の図示しない複数個のバッフル(図示せず)が設けられている。詳しく図示はしないが、この回転ドラム4の前面部には、衣類が出し入れされる円形の開口部が設けられており、前記水槽3の前面部には、前記開口部に連なる投入口3aが形成されている。外箱2の前面には、その投入口3aを開閉する扉5が設けられている。外箱2の前面部の上部には、操作パネル6が設けられている。図3にのみ示すように、この操作パネル6には、表示部9や操作部10が設けられている。
【0010】
図1図2に示すように、前記水槽3の後部には、駆動機構を構成する例えばアウタロータ形のブラシレスモータからなるドラムモータ8が配置されている。図1に示すように、このドラムモータ8の回転軸の先端は、水槽3の背面を貫通して水槽3内に突出し、前記回転ドラム4の後部中心部に連結固定されている。このような構成により、回転ドラム4はドラムモータ8により直接的に回転駆動される。この場合、回転ドラム4は、脱水行程においては、正転方向つまり正面から見て時計回り方向に連続回転されるようになっている。洗い行程やすすぎ行程、後述するはがし行程や乾燥行程等においては、回転ドラム4は正転、反転が繰り返される。
【0011】
詳しく図示はしないが、前記外箱2内の上部には、給水源としての水道からの水を前記水槽3内等に給水するための給水機構が設けられている。この給水機構は、給水弁11(図3にのみ図示)を含んでいる。一方、図1に示すように、水槽3の下部には、排水管路12が接続され、この排水管路12の途中部には排水弁13設けられている。排水弁13が閉鎖された状態で給水機構11により水槽3内に水が供給された場合には、その水は水槽3内に貯留される。このとき、水槽3内の水位は、水位センサ7(図3参照)により検出される。前記排水弁13が開放されることに伴い、水槽3内に貯留されていた水は、排水管路12を通して機外へ排出される。
【0012】
図1に示すように、前記水槽3には、前部の上部右寄り部位に、空気を排出する排気口17が設けられていると共に、背面部の上部左寄り部位に乾燥風を供給するための給気口18が設けられている。そして、図1図2に示すように、外箱2内部には、回転ドラム4内に乾燥風(温風)を循環供給して衣類の乾燥運転を実行するための温風供給機構19が設けられている。
【0013】
本実施形態では、温風供給機構19は、水槽3の外部に位置して、循環風路20を備えている。この循環風路20の入口は、水槽3の前記排気口17に接続され、循環風路20の出口が前記給気口18に接続されている。温風供給機構19は、循環風の除湿及び加熱を行って乾燥風を生成するヒートポンプ21を備えている。これと共に、前記排気口17から排出された空気を、循環風路20内を矢印A方向に循環させながら前記給気口18から水槽3ひいては回転ドラム4内に供給する送風ファン22を備えている。
【0014】
具体的には、前記循環風路20は、図1図2に示すように、排気ダクト14と、ユニット化されたフィルタダクト15と、後部排気ダクト23と、ヒートポンプダクト24と、給気ダクト25とを備えている。図1に示すように、そのうち排気ダクト14は、ゴム等の可撓性を有する材料から蛇腹状の円筒状に構成され、その下端部が前記排気口17に接続され、上端部が前記フィルタダクト15の入口部に接続されている。フィルタダクト15は、外箱2内の右側上部を後方に延びて設けられ、その後端部に、後部排気ダクト23の上端部が接続されている。フィルタダクト15内には、乾燥風から糸くずを捕獲するための周知のリントフィルタ26が設けられている。
【0015】
図2に示すように、後部排気ダクト23は、水槽3の後方を下方に延び、その下端がヒートポンプダクト24の基端部である右端部に接続されている。ヒートポンプダクト24は、外箱2内の底部後寄り部位を右左方向に延び、その先端側(図2で右端側)に前記送風ファン22が設けられている。この送風ファン22は、例えばファンケーシング32内に遠心ファン33及びそれを駆動するファンモータ34を備えて構成されている。前記ファンケーシング32の出口部に、前記給気ダクト25の基端部である下端部が接続されている。給気ダクト25は、外箱2内の左側の水槽3の後方を上方に延び、その先端部である上端部が前記給気口18に接続されている。
【0016】
図2に示すように、前記ヒートポンプダクト24内には、ヒートポンプ21を構成する蒸発器27及び凝縮器28が、右左(図2で左右)に順に位置して配置されている。前記ヒートポンプ21は、圧縮機29と、前記凝縮器28と、減圧手段である絞り弁30と、前記蒸発器27とを、冷媒配管31により閉ループ状に接続して構成されている。ヒートポンプ21の内部には、所要量の冷媒が封入され、冷媒配管31を循環する。このとき、凝縮器28が乾燥風を加熱する加熱手段として機能し、また、蒸発器27が乾燥風から湿気を除去する除湿手段として機能する。
【0017】
このヒートポンプ21は、、図2に冷媒の流れを矢印Bで示すように、圧縮機29が駆動されることにより圧縮機29から吐出された気体冷媒が、凝縮器28に流入し、該凝縮器28における熱交換により凝縮されて液体冷媒とされる。凝縮器28から流出した液体冷媒が絞り弁30によって膨張されて霧状とされ、その霧状の冷媒が、蒸発器27に流入される。そして、蒸発器27において、外気との熱交換により冷媒が気化され、その気体冷媒が圧縮機29に戻される。更に圧縮機29にて冷媒が圧縮されて高温、高圧とされて吐出されるという循環が行われる。
【0018】
このヒートポンプ21の駆動と共に、送風ファン22が駆動されることにより、図1図2に風の流れを矢印Aで示すように、水槽3つまり回転ドラム4内の空気が、排気口17から排気ダクト14、フィルタダクト15、後部排気ダクト23を通ってヒートポンプダクト24に至る。このとき、空気がフィルタダクト15内を通る際に、リントフィルタ26等により、空気に含まれていたリント即ち糸くずが捕獲される。
【0019】
そして、後部排気ダクト23を通った空気は、ヒートポンプダクト24内を流れて蒸発器27及び凝縮器28を順に通った後、給気ダクト25に流れ、給気口18及び孔4aを通って回転ドラム4内に供給されるという循環が行われる。この空気の循環により、水槽3即ち回転ドラム4内の衣類から湿気を奪って多量の蒸気を含んだ空気が、ヒートポンプダクト24内の蒸発器27部分を通って冷却されることにより、蒸気が凝縮あるいは昇華されて除湿され、その除湿空気が凝縮器28部分を通ることにより加熱されて乾いた温風となり、再び回転ドラム4内に供給され、衣類の乾燥に供される。
【0020】
また、図2に示すように、ヒートポンプ21の要部には、冷媒の温度を検出するための、例えばサーミスタからなる複数個の温度センサが設けられている。即ち、前記圧縮機29の吐出口付近には、吐出温度センサ35が設けられている。前記凝縮器28部分には、凝縮器温度センサ36が設けられている。前記蒸発器27部分には、蒸発器温度センサ37が設けられている。圧縮機29の入口付近には、入口温度センサ38が設けられている。
【0021】
更に、図1に示すように、循環風路12においても、乾燥風の温度を検出するための、例えばサーミスタからなる複数個の乾燥風用温度センサが設けられている。具体的には、前記給気口18付近には、給気口温度センサ39が設けられ、前記後部排気ダクト23部分には、排気温度センサ40が設けられている。次に述べる制御装置41は、ヒートポンプ21及び送風ファン22を駆動すると共に、前記回転ドラム4を回転駆動することにより、乾燥運転を実行する。このとき、制御装置41は、各温度センサ35~40の検出温度に基づいて、ヒートポンプ21の圧縮機29や送風ファン22等を駆動制御する。
【0022】
前記外箱2内には、例えばマイクロコンピュータを主体に構成され、洗濯乾燥機1全体の制御を行う制御装置41が設けられている。図3は、制御装置41を中心とした、洗濯乾燥機1の電気的構成を概略的に示している。即ち、制御装置41には、操作パネル6の操作部10からの操作信号が入力されると共に、制御装置41が操作パネル6の表示部9の表示を制御する。また、制御装置41には、前記水位センサ7、前記各温度センサ35~40からの検知信号が入力される。
【0023】
制御装置41は、前記給水弁11、排水弁13、ドラムモータ8、送風ファン22のファンモータ34、ヒートポンプ21の圧縮機29及び絞り弁30等を制御する。以上の構成により、制御装置41は、操作部10にてユーザにより設定される運転コースに応じて、各センサからの入力信号や予め記憶された制御プログラムに基づいて、洗濯乾燥機1の各機構を制御し、洗い行程、すすぎ行程、脱水行程からなる洗濯運転や、乾燥運転を自動で実行する。
【0024】
このとき、洗濯運転に引続き乾燥運転を連続して実行する洗濯乾燥運転では、洗い、すすぎ、脱水、はがし、乾燥の行程が連続して実行される。そのうち、はがし行程とは、脱水行程で回転ドラム4の内周面にへばり付いた衣類を、回転ドラム4からはがした上で乾燥行程に移行しようとするものであり、回転ドラム4を、正、逆方向に間欠的に低速回転させることにより行われる。それ以外の、洗いや、すすぎ、脱水、乾燥の各行程の詳細については、周知であるのでここでの説明を省略する。
【0025】
さて、本実施形態では、洗濯乾燥運転においては、標準的な時間で乾燥行程を含む各行程を進めていく標準コースに加えて、標準コースに比べて乾燥行程を含む各行程の運転時間を短縮する短時間コースの実行が可能とされている。制御装置41は、短時間コースの洗濯乾燥運転を実行するにあたり、脱水行程の途中において回転ドラム4の回転速度が所定値に達した場合に、ヒートポンプ21の圧縮機29を先行して起動させる、いわゆるプリヒート行程を並行して実行する。これにより、圧縮機29の予熱運転が脱水行程中に行われ、その分、乾燥行程に要する時間を短く済ませることができる。
【0026】
そして、次の作用説明でも述べるように、制御装置41は、短時間コースの洗濯乾燥運転の実行時に、脱水行程において回転ドラム4の回転速度が所定値(例えば1200rpm)に達した場合に、ヒートポンプ21の圧縮機29を起動させ、プリヒート行程を実行させる。これと共に、制御装置41は、その後、回転ドラム4の回転速度が設定されている最大値(例えば1500rpm)に達した時点から、所定時間(例えば17分)経過後に、はがし行程を途中終了又は省略して乾燥行程を開始させる。尚、上記プリヒート行程では、凝縮器28と蒸発器27との温度差が低下するのを避けるために送風ファンは駆動されない。また、洗濯乾燥運転の標準コースにおいては、はがし行程は、一定時間例えば5分間実行される。標準コースにおいても、前記プリヒート行程を実行するようにしても良い。
【0027】
次に、上記構成の洗濯乾燥機1の作用について、図4図6も参照して説明する。図4は、本実施形態における、短時間コースの洗濯乾燥運転が実行された場合の、制御装置41が実行する脱水行程から乾燥行程初期までの、時間経過に伴う、回転ドラム4の回転速度、及び圧縮機29の周波数の制御の様子を示している。また、併せて、時間経過に伴う、圧縮機29の吐出口部分の温度の変化の様子も示している。これに対し、図5は、比較のための参考例として、従来において実行されていた、脱水行程後に一定時間のはがし行程を行う場合の脱水行程から乾燥行程初期までの時間経過に伴う、回転ドラム4の回転速度、及び圧縮機29の周波数の制御の様子を、圧縮機29の吐出口部分の温度の変化の様子と共に示している。
【0028】
図示はしないが、洗濯乾燥運転が開始されると、洗い、すすぎの行程が実行され、すすぎ行程が終了して、水槽3からの排水がなされると、脱水の行程が開始される。図4において、時刻T0から脱水行程が開始される。この脱水行程では、開始初期に回転ドラム4を所定回転速度まで回転させ、アンバランス状態が確認され、図6に示すモードが決定される。回転ドラム4を一旦停止させた後、回転速度を段階的に上げながら、回転ドラム4の回転速度を最大回転速度まで上昇させていき、最大回転速度に達した後、その回転速度が維持される。
【0029】
このとき、回転ドラム4の最大回転速度は、図6に示すように、モード毎に設定され、例えば、アンバランスのない「モード1」では、1500rpmに設定される。アンバランス状態が発生したモードでは、それより低く設定され、例えば「モード2」では、最大回転速度が、1200rpmに設定される。また、圧縮機動作準備時間、即ちプリヒート行程の実行時間は、モード1では15分に設定され、モード2の方がそれよりやや長く設定される。
【0030】
本実施形態では、図4に示すように、脱水行程実行時に、回転ドラム4の回転速度が所定回転速度例えば1200rpmに達した時点(時刻T1)から、ヒートポンプ21の圧縮機29を起動させるプリヒート行程が開始され、脱水行程と並行して実行される。このプリヒート行程は、圧縮機29を、最大周波数例えば100Hzよりも低い所定周波数例えば40Hzで駆動することにより行われる。この時点から、圧縮機29の吐出温度即ち吐出温度センサ35の検出温度が常温から次第に上昇していく。これにより、乾燥行程に先立って、ヒートポンプ21の予熱運転が実行されて冷媒温度が上昇し、後の乾燥行程に進んだ際に、回転ドラム4内に速やかに高温の乾燥風を供給することができるようになる。
【0031】
そして本実施形態では、この脱水行程及びプリヒート行程の実行中に、回転ドラム4の回転速度が、設定されている最大値、この場合1500rpmに達した時点(時刻T2)から、はがし行程が終了するまで、言い換えると乾燥行程が開始されるまでの所定時間、例えば17分のカウントが開始される。一方、プリヒート行程が開始されてから(時刻T1)、圧縮機準備動作時間この場合15分が経過すると(時刻T3)、脱水行程及びプリヒート行程が終了し、はがし行程に移行する。
【0032】
このはがし行程では、回転ドラム4を、低速この場合乾燥行程時よりも更に低速で間欠的に正逆回転させることが行われる。これにより、脱水行程において回転ドラム4の内周面に衣類がへばり付いていたとしても、その衣類がはがされて落下するようになる。また、このはがし行程では、圧縮機29を所定周波数例えば40Hzで駆動することが継続され、圧縮機29の吐出温度即ち吐出温度センサ35の検出温度は、引続き上昇していく。
【0033】
ここで、上記したように、はがし行程は、回転ドラム4の回転速度が最大値に達した時点(時刻T2)から、所定時間例えば17分経過後に終了される(時刻T4)。はがし行程が終了すると、乾燥行程に移行し、ヒートポンプ21の圧縮機29が、最大周波数、例えば100Hzで駆動されると共に、図4では図示していないが、送風ファン22の駆動も開始される。圧縮機29の吐出温度即ち吐出温度センサ35の検出温度は、はがし行程が終了時点で例えば90℃となり、更に上昇していく。また、この乾燥行程では、回転ドラム4を、比較的低速この場合はがし行程時よりもやや高い速度で正逆回転させることが行われる。
【0034】
このとき、図5に示すように、はがし行程を一定時間(例えば5分間)実行するようにしていた従来例では、はがし行程に要する時間が長くなり、図4に示した時刻T4に比べ、乾燥運転の開始時刻(T5)が遅くなる。また、この場合には、はがし行程において、圧縮機29の吐出温度即ち吐出温度センサ35の検出温度に関して、一時的に温度低下が起こり、乾燥風の加熱効率がやや劣るものとなる。
【0035】
このように本実施形態の洗濯乾燥機1によれば、次のような効果を得ることができる。即ち、制御装置41は、短時間コースの洗濯乾燥運転の実行時において、脱水行程において回転ドラム4の回転速度が所定値例えば1200rpmに達した際に(時刻T1)、ヒートポンプ21の圧縮機29を起動させる。これにより、いわゆるプリヒート行程即ち予熱運転が先行して実行され、その分、乾燥行程に要する時間を短く済ませることが可能となる。そして、脱水行程後(時刻T3)に、はがし行程が実行されることにより、脱水時に回転ドラム4の内周面にへばり付いた衣類を回転ドラム4からはがすことができ、次の乾燥行程に進んだ際の、乾燥効果を高めることができる。
【0036】
ここで、脱水行程においては、回転ドラム4の回転速度が設定されている最大値に達したならば、衣類の脱水率は十分に高くなっており、回転ドラム4の内面に対する衣類のへばり付きがさほどない状態であると推測できる。従って、所定時間例えば17分経過後(時刻T4)に、はがし行程を途中終了して乾燥行程を開始させても、衣類の乾燥に支障が生ずることはない。この結果、本実施形態によれば、はがし行程を短時間で済ませることが可能となり、その分、洗濯乾燥運転全体に要する時間の短縮化を図ることができるという優れた効果を奏する。
【0037】
尚、上記実施形態では、はがし行程を終了する所定時間(17分)が、圧縮機動作準備時間(15分)よりも長いため、はがし行程が省略されることはないが、それらの時間の設定によっては、はがし行程が省略されることも考えられる。これによっても、洗濯乾燥運転全体に要する時間の短縮化を図ることができる。また、上記実施形態では説明しなかったが、脱水行程中に、例えば回転ドラム4の内周面に衣類がへばり付いてアンバランス状態が生じている場合には、回転ドラム4の回転速度が設定されている最大値に達しないことも考えられる。その場合には、従来通り所定時間のはがし行程を実行することが好ましい。
【0038】
(2)第2の実施形態
次に、図7を参照して第2の実施形態について述べる。尚、以下述べる各実施形態においては、上記第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して詳しい説明や新たな図示を省略し、異なる点を中心に説明する。この第2の実施形態が上記第1の実施形態と異なる点は、次の構成にある。
【0039】
即ち、上記第1の実施形態では、短時間コースの洗濯乾燥運転の実行時において、脱水行程中に、回転ドラム4の回転速度が最大値に達した後(時刻T2)、所定時間経過後(時刻T4)にはがし行程を途中終了して乾燥行程を開始させるように構成した。これに対し、この第2の実施形態では、制御装置41は、短時間コースの洗濯乾燥運転の実行時において、脱水行程中に、回転ドラム4の回転速度が設定されている最大値例えば1500rpmに達した後、圧縮機29の吐出温度即ち吐出温度センサ35の検出温度が第1の所定値、例えば90℃に達した時点で、はがし行程を途中終了又は省略して乾燥行程を開始させるように構成されている。
【0040】
ここで、上記第1の実施形態でも述べたように、プリヒート行程の実行により、圧縮機29の吐出温度は次第に上昇し、はがし行程の終了時における、圧縮機29の吐出温度即ち吐出温度センサ35の検出温度は、例えば90℃まで上昇している。プリヒート行程開始から圧縮機29の吐出温度は、図7に示すように上昇する。プリヒート行程において圧縮機29の吐出温度が第1の所定値、例えば90℃に達することは、言い換えればヒートポンプ21の乾燥行程に進む準備が完了したことであり、そのまま乾燥行程に進むことができる。
【0041】
本実施形態では、回転ドラム4の回転速度が最大値に達した後(時刻T2)、所定時間(例えば17分)経過する(時刻T4)前であっても、吐出温度センサ35の検出温度が90℃に達した時点で、つまり、所定時間が経過するか、吐出温度センサ35の検出温度が90℃に達するかのいずれか早い時点で、はがし行程を終了して、乾燥行程に移行される。このような第2の実施形態によれば、ヒートポンプ21における乾燥行程の準備が整い次第、はがし行程を早めに切り上げて、乾燥行程に進むことができるので、洗濯乾燥運転全体に要する時間の短縮化を効果的に図ることができる。
【0042】
ところで、図7に示したように、プリヒート行程においては、圧縮機29の吐出温度の上昇に併せて、凝縮器28の温度、及び、給気口18部分の空気温度も同様に上昇していく。圧縮機29の吐出温度が第1の所定値(90℃)に達した時点で、凝縮器28の温度即ち凝縮器温度センサ36の検出温度は、第2の所定値例えば70℃に達する。また、圧縮機29の吐出温度が第1の所定値(90℃)に達した時点で、給気口18部分の空気温度即ち給気口温度センサ39の検出温度は、第3の所定値例えば60℃に達する。
【0043】
従って、上記したように圧縮機29の吐出温度が第1の所定値に達した時点で、はがし行程を途中終了又は省略して乾燥行程を開始させることに代えて、或いは加えて、凝縮器28の温度即ち凝縮器温度センサ36の検出温度が、第2の所定値例えば70℃に達した時点で、はがし行程を途中終了又は省略して乾燥行程を開始させることができる。更には、給気口18部分の空気温度即ち給気口温度センサ39の検出温度が、第3の所定値例えば60℃に達した時点で、はがし行程を途中終了又は省略して乾燥行程を開始させることができる。これらによっても、乾燥行程の準備が整い次第、はがし行程を早めに切り上げて、乾燥行程に進むことができる。
【0044】
(3)第3の実施形態
図8は、第3の実施形態を示すものである。この第3の実施形態が、上記第1の実施形態と異なるところは、制御装置41による送風ファン22及び圧縮機29の制御の態様にある。即ち、図8に示すように、制御装置41は、はがし行程開始時に送風ファン22の動作を開始させると共に、該送風ファン22が最大回転速度、例えば5500rpmに到達するタイミング(時刻T6)と、圧縮機29の動作周波数が最大値、例えば100Hzに到達するタイミング(時刻T6)とを一致させるよう制御する。
【0045】
ここで、もし圧縮機29の動作周波数が最大値に到達する前に、送風ファン22が最大回転速度に到達してしまうと、一時的に乾燥風の温度が低下する虞がある。これに対し、この第3の実施形態においては、それらのタイミングを一致させるよう制御することにより、乾燥風の温度を高めた状態で、プリヒート行程から乾燥行程に移行することができ、乾燥効果をより高めることができる。
【0046】
(4)第4の実施形態、その他の実施形態
図9は、第4の実施形態を示すものである。この第4の実施形態が、上記第3の実施形態と異なる点は、制御装置41は、送風ファン22が最大回転速度に到達する直前に、最大回転速度よりも低い所定速度で回転する期間を、一定時間、例えば30秒~1分間程度設けるようにした構成にある。これによれば、乾燥風の温度を十分に高めた上で、乾燥行程に移行することができ、乾燥効果をより高めることができる。
【0047】
尚、上記各実施形態で開示した、設定された時間や温度、回転ドラムの回転速度、圧縮機の駆動周波数などの具体的数値については、あくまで一例を示したに過ぎず、適宜変更して実施することができる。その他、例えば外箱内の上部にヒートポンプダクトを配置する等、ヒートポンプや循環風路の構成、その他の洗濯乾燥機の各部のハードウエア構成についても、様々な変更が可能である。
【0048】
上記各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
図面中、1は洗濯乾燥機、2は外箱、3は水槽、4は回転ドラム、18は給気口、19は温風供給機構、20は循環風路、21はヒートポンプ、22は送風ファン、27は蒸発器、28は凝縮器、29は圧縮機、35は吐出温度センサ、36は凝縮器温度センサ、39は給気口温度センサ、41は制御装置を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9