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特許7222811インプリント装置、インプリント方法、及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20230208BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019104681
(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2020198384
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176599
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100205095
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 啓一
(74)【代理人】
【識別番号】100208775
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 雅章
(72)【発明者】
【氏名】岡部 かすみ
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛和
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬
(72)【発明者】
【氏名】武藤 大蔵
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-161635(JP,A)
【文献】特表2009-503139(JP,A)
【文献】特表2009-508165(JP,A)
【文献】特開平10-294276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された膜の情報を取得する情報取得部と、
前記情報に基づいて決定されたプライマー形成条件を取得し、前記基板に対してプライ
マーの形成を行うプライマー形成部と、
前記プライマーが形成された前記基板にインプリントリソグラフィを行うインプリント
部と、
を備えるインプリント装置。
【請求項2】
前記プライマー形成部は、
前記情報に基づいて前記基板に対して前記プライマーの塗布を行うプライマー塗布部と

前記情報に基づいて前記プライマーが塗布された前記基板に対して加熱を行う温度調整
部と、
を有する請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記プライマー形成条件の決定を行う制御部を更に備え、
前記制御部は、決定された前記プライマー形成条件に基づいて前記プライマー塗布部お
よび前記温度調整部の少なくともいずれか一方の制御を行う、
請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記情報は、前記膜の種類及び膜厚に関する情報を含む請求項1から請求項3のいずれ
か1つに記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記プライマー形成条件は、前記基板に対して前記プライマーを塗布する際の回転数及
び前記基板を加熱する際の温度と時間を含む請求項2から請求項4のいずれか1つに記載
のインプリント装置。
【請求項6】
膜が形成された基板を準備し、
前記基板の前記膜の情報を取得し、
前記情報に基づいて決定されたプライマー形成条件を取得し、前記基板に対してプライ
マーの形成を行い、
前記プライマーが形成された前記基板にインプリントリソグラフィを行う、
インプリント方法。
【請求項7】
前記プライマーの形成は、
前記情報に基づいて前記基板に対して前記プライマーの塗布を行い、
前記情報に基づいて前記プライマーが塗布された前記基板に対して加熱を行う、
請求項6に記載のインプリント方法。
【請求項8】
前記情報に対応する前記プライマー形成条件の決定を行い、
決定された前記プライマー形成条件に基づいて前記基板に対する前記プライマーの塗布
および前記プライマーが塗布された前記基板に対する加熱の制御の少なくともいずれか一
方を行う、
請求項7に記載のインプリント方法。
【請求項9】
膜が形成された半導体基板を準備し、
前記半導体基板の前記膜の情報を取得し、
前記情報に基づいて前記膜上にプライマーの塗布を行い、
前記情報に基づいて前記プライマーの加熱を行い、
前記加熱後のプライマー上にレジストを供給し、前記レジストにインプリントリソグラ
フィを行うことでパターンを形成し、
前記パターンが形成されたレジストをマスクにして前記膜を加工する、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インプリント装置、インプリント方法、及び半導体装置の製造方
法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造技術としてインプリントリソグラフィ技術(特に、ナノインプリ
ントリソグラフィ)が知られている。インプリントリソグラフィ技術は、半導体集積回路
のパターンが形成されたテンプレートを半導体基板に塗布されたレジストにプレスするこ
とによって、当該テンプレートに形成されているパターンをレジストに転写する技術であ
る。インプリント処理においては、テンプレートの凹部へレジスト材料を欠陥なく、短時
間で充填することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017ー55108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書に記載の実施形態の課題は、テンプレートの凹部に対するレジスト材料の充填
時間を短縮し、未充填欠陥の発生を抑えることで、生産性を向上したインプリント装置、
インプリント方法、及び半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るインプリント装置は、基板上に形成された膜の情報を取得する情報取得
部を備える。また、情報に基づいて決定されたプライマー形成条件を取得し、基板に対し
てプライマーの形成を行うプライマー形成部を備える。さらに、プライマーが形成された
基板にインプリントリソグラフィを行うインプリント部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態に係るインプリント装置の構成例を示す図である。
図2】本実施形態に係るレシピテーブルの一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る搬送部の構成例を示す図である。
図4】本実施形態に係るプライマー塗布部の構成例を示す図である。
図5】本実施形態に係る温度調整部の構成例を示す図である。
図6】本実施形態に係るインプリント部の構成例を示す図である。
図7】本実施形態に係るウェハの構成例を示す図である。
図8】本実施形態に係るプライマーの役割を説明する模式図である。
図9】本実施形態に係るプライマーの役割を説明する模式図である。
図10】本実施形態に係るインプリント方法の手順の一例を示すフロー図である。
図11】本実施形態に係る半導体装置の製造方法において、ウェハ上にインプリントリソグラフィを行う工程の手順の一例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のインプリント装置について、図面を参照して説明する。なお、図面は
模式的なものであり、例えば厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のもの
とは異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符
号を付し、説明を省略する。
【0008】
図1は、本実施形態に係るインプリント装置1000の構成例を示す図である。インプ
リント装置1000は、ロードポート100、制御部200、搬送部300、プライマー
塗布部400、温度調整部500、インプリント部600を備える。制御部200は、ロ
ードポート100、搬送部300、プライマー塗布部400、温度調整部500、インプ
リント部600の各々と通信を行っている。ロードポート100、プライマー塗布部40
0、温度調整部500、インプリント部600との間は搬送部300により接続されてい
る。
本実施形態のインプリント装置1000はロードポート100とより近い位置にプライ
マー塗布部400を有する。プライマー塗布部400は温度調整部500と隣接する。温
度調整部500はインプリント部600と隣接する。
なお、プライマー塗布部400と温度調整部500、温度調整部500とインプリント
部600がそれぞれ隣接する、又は搬送部300を挟んで向かい合うように設けられてい
れば、図1の構成例に特に限定されない。
【0009】
ロードポート100には、後述する下層膜624及び密着膜626が形成されたウェハ
Wを収容したフープ又はカセットが載置される。なお、下層膜624及び密着膜626に
ついては、後述する図7を参照し説明を行う。ロードポート100には、情報取得部11
0が搭載されている。情報取得部110は、下層膜624が形成されたウェハWの下層膜
情報を読み取り、制御部200に下層膜情報を送信する。下層膜情報は、例えば、下層膜
624の種類や膜厚等を示す情報であり、ウェハWに記載されたIDナンバーやバーコー
ド等を読み取ることによって得ることができる。情報取得部110は、例えば、センサ等
である。そして、下層膜情報の読み取りが完了したウェハWは、搬送部300に配設され
た搬送ロボットによって、フープ又はカセットから取り出され、まず、プライマー塗布部
400に搬入される。
【0010】
制御部200には、CPU(Central Processing Unit)を備
えインプリント装置1000のロードポート100、搬送部300、プライマー塗布部4
00、温度調整部500、インプリント部600の各部を制御するプロセスコントローラ
220と、ユーザインターフェース部210と、記憶部230とが設けられている。制御
部200は、ロードポート100の情報取得部110により読み出された下層膜情報を受
信し、記憶部230から対応するレシピを選定し、プライマー塗布部400及び温度調整
部500にレシピを送信する。なお、制御部200は、インプリント装置1000の外部
に存在していてもよい。また、レシピとは、ウェハWを処理する際の一連の処理パラメー
タを含むデータをいう。
【0011】
ユーザインターフェース部210は、工程管理者がインプリント装置1000を管理す
るためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、インプリント装置1000の稼働状況
を可視化して表示するディスプレイ等を有する。
【0012】
記憶部230には、各々の下層膜624の種類及び膜厚に最適化されたプライマー層を
形成するための、処理パラメータがそれぞれ異なる複数のレシピを含むレシピテーブルが
あらかじめ履歴として格納されている。なお、以降の説明においては、プライマー層をプ
ライマーと称することもある。記憶部230は、ROM(Read Only Memo
ry)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置である。
【0013】
図2は、本実施形態に係るレシピテーブルの一例である。図2に示すように、レシピに
は、プライマー塗布部400において設定すべき回転数や、温度調整部500において設
定すべき温度及び時間等の各部における設定条件が記載されている。例えば、膜厚が10
0nmの下層膜種Aの場合は、プライマー塗布部400において1500rpmの回転数
を設定し、温度調整部500において、温度60℃、時間60secで加熱するように設
定すると、最適化されたプライマー層を形成することができる。
なお、プライマー塗布部400における回転数を固定し、温度調整部500における温
度と時間のみを下層膜624に応じて変動させたレシピテーブルでもよい。なお、下層膜
情報から得られたレシピは、下層膜624上に形成された密着膜626の影響を予め考慮
して設定されていてもよい。
【0014】
ユーザインターフェース部210からの指示等にて任意のレシピを必要に応じて記憶部
230から呼び出し、プロセスコントローラ220に実行させることで、プロセスコント
ローラ220の制御下で、インプリント装置1000での所望の処理が行われる。
【0015】
レシピは、コンピュータで読取り可能な記憶媒体(例えば、ハードディスク、CD、フ
レキシブルディスク、半導体メモリ)等に格納された状態のものを利用したり、或いは、
他の装置から専用回線等を介して、随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可
能である。
【0016】
搬送部300は、ロードポート100、プライマー塗布部400、温度調整部500、
インプリント部600の各々との間でウェハWを搬送する。
図3は、本実施形態に係る搬送部300の構成例を示す図である。
図3に示す搬送部300では、レール又は走行ガイドである搬送路310と、搬送路3
10に沿って走行する搬送ロボット320とを含む。搬送ロボット320は、ウェハWを
把持するハンド330と、ハンド330を支持するアーム340とを含む。アーム340
は、多関節構造により伸縮動作及び回転動作が可能である。搬送部300は、移動ステー
ジ等であってもよい。搬送ロボット320は、プロセスコントローラ220からの動作指
令信号によって、ロードポート100、プライマー塗布部400、温度調整部500、イ
ンプリント部600の各部にウェハWを搬入する。また、搬送ロボット320は、プロセ
スコントローラ220からの動作指令信号によって、ロードポート100、プライマー塗
布部400、温度調整部500、インプリント部600の各部からウェハWを搬出する。
【0017】
プライマー塗布部400は、搬送部300の搬送ロボット320によって搬入された下
層膜624及び密着膜626を形成後のウェハWに、レシピ通りの最適な膜厚になるよう
プライマーを回転塗布する。
図4は、本実施形態に係るプライマー塗布部400の構成例を示す図である。
図4に示すプライマー塗布部400では、チャンバー420内に、下層膜624及び密
着膜626が形成されたウェハWを載置して回転可能とされた回転ステージ440と、プ
ライマーPの液滴を供給するためのノズル460とが配設されている。なお、図4から図
6においてウェハWの下層膜624、密着膜626及びプライマー628の図示は省略し
てある。下層膜624、密着膜626及びプライマー628については、後述する図7
参照し説明を行う。そして、回転ステージ440上に載置されたウェハWの略中心上に、
ノズル460からプライマーPの液滴を滴下し、回転ステージ440によってウェハWを
回転させることによって、ウェハW上に滴下したプライマーPの液滴を遠心力によって拡
散させ、ウェハWの全面にプライマーを塗布する。プロセスコントローラ220によって
、レシピ通りの回転数となるように、回転ステージ440は制御される。なお、上述のプ
ライマーの供給方法は一例であり、ノズル以外の手段で供給してもよい。また、縦型にプ
ライマー塗布部400を複数積むことで、異なる塗布条件にて複数枚のウェハWを同時に
処理してもよい。
【0018】
温度調整部500は、搬送部300の搬送ロボット320によって搬入されたプライマ
ー塗布後のウェハWを加熱することで、レシピ通りの最適な膜厚にする。なお、ウェハW
に塗布されたプライマー層の膜厚の変化は、プライマーに含まれる溶媒の揮発(気化)及
び溶質の熱架橋等に因るものである。
図5は、本実施形態に係る温度調整部500の構成例を示す図である。
図5に示す温度調整部500は、チャンバー520内に、ウェハWを載置するステージ
540と、電熱ヒータ、ランプヒータ、液体若しくは気体を熱源とする温調装置等を有す
る発熱体560とを備える。プロセスコントローラ220によって、レシピ通りの温度と
加熱時間となるように、発熱体560は制御される。なお、発熱体560は、ステージ5
40に載置されたウェハWの上方に備えられていてもよいし、ステージ540に付属して
備えられていてもよい。もしくは、温度調整部500の異なる場所に発熱体560が複数
備えられていてもよい。温度調整部500は、冷却機能を備えていてもよい。また、縦型
に温度調整部500を複数積むことで、異なる加熱条件にて複数枚のウェハWを同時に処
理してもよい。
【0019】
次にインプリント部600の構成について説明する。
図6は、本実施形態に係るインプリント部600の構成例を示す図である。
インプリント部600は、例えば、チャンバー610を有し、このチャンバー610内
に転写材としてのレジスト(樹脂材料)RをウェハW表面に滴下する液滴下部630と、
テンプレート640を支持し、滴下されたレジストRの液滴にテンプレート640を押印
させテンプレート640のパターンを転写させるテンプレート保持部660と、テンプレ
ート640を介して光をウェハW側に照射する光発生部670、ウェハWを移動させるス
テージ680を有する。
【0020】
なお、ここでは一例として、紫外線照射によりレジスト(光硬化性樹脂材料)を硬化さ
せる光ナノインプリントについて説明するが、本実施形態は加熱によりレジスト(熱硬化
性樹脂材料)を硬化させる熱ナノインプリントにも適用できる。
【0021】
液滴下部630は、ウェハW上にレジストRをドット状に滴下する装置である。液滴下
部630は、例えば、インクジェットノズルを搭載し、レジストRはインクジェット塗布
方法によってウェハW上に塗布される。ただし、塗布方法はこれに限定されない。
【0022】
テンプレート640は、ウェハWとの対向面に凹凸状のパターンが形成されている。テ
ンプレート640は、ガラス又は合成石英等の透明部材で構成されるが、これに限定され
ない。
【0023】
テンプレート保持部660は、テンプレート640を支持し、テンプレート640のテ
ンプレートパターンをウェハW上のレジストRに押し当てる。テンプレート保持部660
は、主に上下方向に移動することにより、テンプレート640のレジストRへの押し当て
と、テンプレート640のレジストRからの引き離しを行う。本実施形態のインプリント
に用いられるレジストRは、例えば、光硬化性樹脂材料を用いるが、これに限定されない
【0024】
テンプレート保持部660には、図示しない接触センサが設けられている。テンプレー
ト640とレジストRが接すると、接触センサがテンプレート640とレジストRの接触
を検知し、テンプレート保持部660とウェハWとの接触を回避する。
【0025】
テンプレート保持部660の上方には、光発生部670が位置する。この場合、テンプ
レート640をレジストRに押し当てた状態で光発生部670から露光光を発することに
よりレジストRが硬化される。なお、レジストRが光硬化性樹脂材料以外の例えば熱硬化
性樹脂材料等の場合、レジストRはホットプレート等の熱発生部によって硬化されるが、
レジストRの硬化方法はこれに限定されない。
【0026】
ステージ680は、ウェハWを載置するとともに、ウェハWを載置した状態で水平方向
に移動する。レジストRをウェハWに滴下する際には、ステージ680は液滴下部630
の下方側に移動する。また、テンプレート640をウェハW上のレジストRに押印する際
には、ステージ680はテンプレート保持部660の下方側に移動する。
【0027】
なお、本実施形態において、液滴下部630とテンプレート保持部660とが分離して
いるように記載したが、液滴下部630とテンプレート保持部660とは一体化していて
も良い。また、テンプレート保持部660が下方側に移動することを示したが、ステージ
680が上方側に移動してもよい。
【0028】
次に図6に示したインプリント処理時におけるウェハWの構成について説明する。
図7は、本実施形態に係るウェハWの構成例を示す模式図である。
ウェハWは、基板622、下層膜624、密着膜626、プライマー628で形成され
ている。基板622は、例えば、シリコン基板等の半導体基板である。又は、基板622
は、ガラス基板や金属基板等であってもよい。レジストRの液滴はプライマー628上に
滴下される。
【0029】
基板622上にはエッチング耐性を目的とした下層膜624が形成されている。下層膜
624はインプリント処理の後の工程であるエッチングを行うために必要な有機材料であ
る。下層膜624は、例えば、SOC(Spin On Carbon)膜やSOG(S
pin On Glass)膜である。下層膜624の膜厚は、50~300nm程度が
好ましい。
【0030】
下層膜624上には平坦化を目的とした密着膜626が形成されている。密着膜626
には、下層膜624とレジストRとの間の密着性を高める役割がある。具体的には、イン
プリント処理において、ウェハWに押し当てたテンプレート640を引き離す際に、ウェ
ハWからレジストRが剥離するのを防ぐために密着膜626を塗布する必要がある。
【0031】
密着膜626上にはプライマー628が形成されている。プライマー628は、密着膜
626の表面の濡れ性を改善する膜である。具体的には、ウェハWに滴下された複数のレ
ジストRの液滴を拡張させて、レジストRの液滴同士の空隙を埋める役割を果たす。その
結果、レジストRに気泡が閉じ込められる状況を回避する。プライマー628は、例えば
、1-メトキシ-2-プロパノール アセテート及びアクリル系樹脂の混合物等であるが
、これに限定されない。なお、プライマー628は、液体と固体の混合物であってもよい
し、液体のみで構成されていてもよい。
【0032】
図8及び図9は、本実施形態に係るプライマー628の役割を説明する模式図である。
図8は、基板622上にプライマー628が存在しない場合のレジストRの液滴の拡張を
示す。図9は、基板622上にプライマー628が存在する場合のレジストRの液滴の拡
張を示す。説明の簡略化のために、下層膜624や密着膜626は省略し、基板622上
にはプライマー628のみを備えるものとして示している。図8ではレジストRの液滴は
テンプレート640に押圧されて拡張していき、レジスト充填時間を充分に取らないと内
部に気泡が残る虞がある。図9ではプライマー628の存在によりテンプレート640の
押圧前からレジストRの液滴がある程度の広がりを見せている。そのため、レジスト充填
時間を短縮し、気泡の発生による欠陥を抑えることが可能である。
【0033】
プライマーはスピン塗布法で形成される超薄膜(10nm以下)の液膜であるため、形
成状態は塗布条件に敏感である。例えば、下層膜の種類や膜厚によって適切なプライマー
塗布条件は異なる。本実施形態に係るインプリント装置では、各々の下層膜の種類及び膜
厚に最適化されたプライマーを形成することが可能である。そのため、レジスト充填時間
を短縮し、気泡の発生による欠陥を抑えることが可能である。
プライマー塗布部とインプリント部がそれぞれ独立した装置として分離した形態では、
プライマーが塗布されてからテンプレートが押印されるまでの時間(以降、「引き置き時
間」とも称する)が生じてしまうが、本実施形態に係るインプリント装置では、プライマ
ー塗布部とインプリント部は併設されているため、引き置き時間の短縮によるプライマー
の形成状態の制御が可能である。また、プライマー塗布後にウェハ装置外に搬出する必要
がないため、ウェハを所望の圧力、温度、塵埃度下に制御することも可能である。
さらには、プライマーに含まれる溶媒(揮発性物質)が時間の経過に伴い少なからず揮
発(気化)し、揮発した成分が装置内部に残留して汚染の原因となることが考えられる。
本実施形態に係るインプリント装置は、プライマー塗布部とインプリント部が併設する一
つの装置なので、プライマー塗布部とインプリント部がそれぞれ独立した装置として分離
した形態よりも、汚染管理すべき装置数を減らすことが可能である。
さらには、プライマー塗布部と温度調整部、温度調整部とインプリント部が、インプリ
ント装置内でそれぞれ隣接するため、より効率的にインプリント処理を行うことが可能と
なる。
本実施形態に係るインプリント装置では、密着膜上に塗布するプライマーの最適レシピ
を下層膜の種類と膜厚に応じて判別し、プライマー塗布からインプリント処理までを同一
インプリント装置内で一括して行うことが可能である。
【0034】
[本実施形態に係るインプリント方法]
次に、本実施形態に係るインプリント方法について説明する。
【0035】
図10は、本実施形態に係るインプリント方法の手順の一例を示すフロー図である。
【0036】
(ステップS101:ウェハの下層膜情報を取得する工程)
別装置により下層膜624及び密着膜626が形成されたウェハWは、フープ又はカセ
ットに収容された状態でロードポート100に載置される。続いて、ロードポート100
に搭載されている情報取得部110によって、下層膜624が形成されたウェハWの下層
膜情報が読み取られる。読み取られた下層膜情報は、制御部200に送信される。下層膜
情報の読み取りが完了したウェハWは、搬送部300に配設された搬送ロボット320に
よって、フープ又はカセットから取り出され、まず、プライマー塗布部400に搬入され
る。
【0037】
(ステップS102:下層膜に対応したレシピが選定される工程)
制御部200は、ロードポート100の情報取得部110により読み出された下層膜情
報を受信し、記憶部230から複数あるレシピのうち受信した下層膜情報に対応するレシ
ピを選定し、プライマー塗布部400及び温度調整部500にレシピを送信する。プロセ
スコントローラ220にて、プライマー塗布部400の回転数や温度調整部500の温度
及び時間等をレシピに基づいて制御する。
【0038】
(ステップS103:指定のレシピに基づいてプライマーの塗布を行う工程)
搬送部300の搬送ロボット320によって、プライマー塗布部400に搬入されたウ
ェハWに対して、制御部200から受信したレシピに基づいて、プライマーの回転塗布が
行われる。ウェハWが回転ステージ440上に載置された後、ウェハWの略中心上にノズ
ル460からプライマーPの液滴が滴下される。この時、制御部200から受信したレシ
ピに基づいた回転数で回転ステージ440を回転させることで、ウェハW上に滴下された
プライマーPの液滴が、遠心力によってウェハWの全面に拡散する。このようにして、ウ
ェハWの全面にプライマーを最適な膜厚となるように塗布する。プライマー塗布が完了し
たウェハWは、搬送部300に配設された搬送ロボット320によって、プライマー塗布
部400から取り出され、続いて温度調整部500に搬入される。
【0039】
(ステップS104:指定のレシピに基づいて加熱を行う工程)
搬送部300の搬送ロボット320によって、温度調整部500に搬入されたプライマ
ー塗布後のウェハWに対して、制御部200から受信したレシピに基づいて、加熱処理が
行われる。制御部200から受信したレシピに基づいた温度及び時間にて加熱することで
、プライマーを揮発(気化)させて、最適な膜厚にする。加熱処理が完了したウェハWは
、常温まで冷却を行った後、搬送部300に配設された搬送ロボットによって、温度調整
部500から取り出され、続いてインプリント部600に搬入される。
ここで、S103のプライマーの滴下(塗布)工程およびS104の加熱の工程を合わ
せてプライマー形成工程とする。
【0040】
(ステップS105:ウェハ上にインプリントリソグラフィを行う工程)
図11は、ウェハW上にインプリントリソグラフィを行う工程の手順の一例を説明する
模式図である。
搬送部300の搬送ロボット320によって、インプリント部600に搬入されたプラ
イマー塗布後のウェハWに対して、インプリントリソグラフィが行われる。
まず、プライマー塗布後のウェハWは、ステージ680に載置される。ステージ680
はウェハWを載置した状態で、液滴下部630の下方側まで水平方向に移動する。続いて
、液滴下部630は所望の膜厚に制御されたプライマー層の上にレジストRの液滴を滴下
する。この時、滴下されたレジストRの液滴はプライマーとの相互作用によってウェハW
の全面に拡散(拡張)していく。次に、ステージ680はウェハWを載置した状態で、テ
ンプレート保持部660の下方側まで水平方向に移動する。そして、テンプレート保持部
660が下方向に移動することにより、テンプレート640のレジストRへの押し当てを
行う。テンプレート640をレジストRに押し当てた状態で光発生部670から露光光を
発することによりレジストRが硬化されてレジストR´となる。最後に、テンプレート保
持部660が上方向に移動することにより、テンプレート640のレジストR´からの引
き離しを行う。これにより、テンプレートの凹凸パターンがレジストR´に転写され、イ
ンプリント処理が完了する。
その後、図11に示すように、パターンが形成された硬化後のレジストR´をマスクに
し、下層膜624をエッチングする。これにより、所望のパターンを有する下層膜624
を備えた半導体装置を製造することができる。なお、図11においては、インプリント後
もウェハW上にプライマー628が残る場合を示しているが、これに限られない。例えば
、パターンが形成されたレジストR´にプライマー628が拡散する場合等がある。
【0041】
プライマーはスピン塗布法で形成される超薄膜(10nm以下)の液膜であるため、形
成状態は塗布条件に敏感である。例えば、下層膜の種類や膜厚によって適切なプライマー
塗布条件は異なる。本実施形態に係るインプリント方法では、各々の下層膜の種類及び膜
厚に最適化されたプライマーを形成することが可能である。そのため、レジスト充填時間
を短縮し、気泡の発生による欠陥を抑えることが可能である。
本実施形態に係るインプリント方法では、密着膜上に塗布するプライマーの最適レシピ
を下層膜の種類と膜厚に応じて判別し、プライマー塗布からインプリント処理までを同一
インプリント装置内で一括して行うことが可能である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したも
のであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その
他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の
省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や
要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる
【符号の説明】
【0043】
1000 インプリント装置
100 ロードポート
110 情報取得部
200 制御部
210 ユーザインターフェース部
220 プロセスコントローラ
230 記憶部
300 搬送部
310 搬送路
320 搬送ロボット
330 ハンド
340 アーム
400 プライマー塗布部
420 チャンバー
440 回転ステージ
460 ノズル
500 温度調整部
520 チャンバー
540 ステージ
560 発熱体
600 インプリント部
610 チャンバー
622 基板
624 下層膜
626 密着膜
628 プライマー
630 液滴下部
640 テンプレート
660 テンプレート保持部
670 光発生部
680 ステージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11