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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】車両用フード
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/10 20060101AFI20230208BHJP
   B62D 25/12 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
B62D25/10 E
B62D25/12 N
B62D25/10 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019108612
(22)【出願日】2019-06-11
(65)【公開番号】P2020199904
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】加嶋 寛子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-210904(JP,A)
【文献】特開2018-167665(JP,A)
【文献】特開2002-096710(JP,A)
【文献】特開2016-022815(JP,A)
【文献】特開2017-185985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10-25/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルと、
車両上下方向において前記アウタパネルの下方に配置されたインナパネルと、
前記インナパネルに設けられ、車両左右方向において互いに離間して配置された一対のストライカと、を備え、
前記インナパネルは、当該インナパネルの外周において前記アウタパネルに接合された外側接合部と、前記外側接合部の内側において前記アウタパネルから離間した底部と、前記外側接合部の内側において前記底部から前記アウタパネルへ向かって突出し、前記アウタパネルに接合された内側接合部と、を含み、
前記内側接合部は、前記一対のストライカの後方に配置されて前記アウタパネルに接合された本体部と、前記本体部から前方に延出されて前記一対のストライカの間に配置され、前記アウタパネルに接合された延出部と、を有し、
前記本体部は、前記アウタパネルに沿うように配置されて前記アウタパネルと接合された本体部接合部と、車両左右方向において前記延出部の両側に分かれて配置されて前記本体部接合部の前端部と前記底部とを接続する一対の本体部前壁部と、を含み、
前記一対のストライカは、前記一対の本体部前壁部の前方にそれぞれ配置されている、車両用フード。
【請求項2】
前記本体部は、車両左右方向において前記本体部接合部の両側に分かれて配置されて車両左右方向における前記本体部接合部の両端部と前記底部とを接続する一対の本体部側壁部と、車両左右方向における前記一対の本体部前壁部のそれぞれの外側の端部と前記一対の本体部側壁部のそれぞれの対応する前端部とを接続する一対の前側コーナー部と、を更に含み、
前記一対の本体部前壁部には、開口部がそれぞれ設けられている、請求項1に記載の車両用フード。
【請求項3】
前記延出部は、前記アウタパネルに沿うように配置されて前記アウタパネルと接合された延出部接合部と、車両左右方向において前記延出部接合部の両側に分かれて配置されて車両左右方向における前記延出部接合部の両端部と前記底部とを接続する一対の延出部側壁部と、を含み、
前記一対の延出部側壁部は、車両左右方向における前記一対の本体部前壁部のそれぞれの内側の端部と接続される後端部をそれぞれ有し、
一方の前記延出部側壁部の前記後端部からそれに接続された一方の前記本体部前壁部の前記内側の端部にわたる部分と、他方の前記延出部側壁部の前記後端部からそれに接続された他方の前記本体部前壁部の前記内側の端部にわたる部分とは、それぞれ、湾曲した形状をなす、請求項1に記載の車両用フード。
【請求項4】
前記本体部は、車両左右方向において前記本体部接合部の両側に分かれて配置されて車両左右方向における前記本体部接合部の両端部と前記底部とを接続する一対の本体部側壁部と、車両左右方向における前記一対の本体部前壁部のそれぞれの外側の端部と前記一対の本体部側壁部のそれぞれの対応する前端部とを接続する一対の前側コーナー部と、を更に含み、
前記延出部は、前記アウタパネルに沿うように配置されて前記アウタパネルと接合された延出部接合部と、車両左右方向において前記延出部接合部の両側に分かれて配置されて車両左右方向における前記延出部接合部の両端部と前記底部とを接続する一対の延出部側壁部と、を含み、
前記一対の本体部前壁部には、開口部がそれぞれ設けられ、
前記一対の延出部側壁部は、車両左右方向における前記一対の本体部前壁部のそれぞれの内側の端部と接続される後端部をそれぞれ有し、
一方の前記延出部側壁部の前記後端部からそれに接続された一方の前記本体部前壁部の前記内側の端部にわたる部分と、他方の前記延出部側壁部の前記後端部からそれに接続された他方の前記本体部前壁部の前記内側の端部にわたる部分とは、それぞれ、湾曲した形状をなす、請求項1に記載の車両用フード。
【請求項5】
前記一対の本体部前壁部のそれぞれに設けられた前記開口部の下縁は、その開口部が設けられた前記本体部前壁部において前記底部よりも上側に位置する、請求項2又は4に記載の車両用フード。
【請求項6】
前記インナパネルは、前記一対の本体部前壁部のそれぞれから連続して設けられた一対の接合片であって前記一対の本体部前壁部に設けられた前記開口部の縁部からそれぞれ前記アウタパネルへ向かって延び、前記アウタパネルにそれぞれ接合されたもの、を有する、請求項2、4及び5のいずれか1項に記載の車両用フード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用フードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両を構成するとともに当該車両の前部に配置される車両用フードが知られている。車両本体の前部にはエンジン等の内蔵物が収められたエンジンルームが設けられ、車両用フードは、このエンジンルームを開閉するように車両本体に取り付けられ、エンジンルームを閉じた状態で車両の前部の上面を構成し且つエンジンルーム内の内蔵物の上方を覆う。車両用フードは、エンジンルームを閉じた状態で車両の前部の上面を構成するアウタパネルと、車両上下方向においてアウタパネルの下方に配置されて当該アウタパネルに接合されたインナパネルと、を有する。
【0003】
車両用フードには、張り剛性や耐デント性などの性能が要求される。張り剛性は、アウタパネルに外力が加えられたときにアウタパネルに一時的な変形(いわゆるべこつき)が生じるのを防ぐ性能である。耐デント性は、アウタパネルに自動的に復元しない凹み変形が生じるのを防ぐ性能である。
【0004】
下記特許文献1には、車両用フードの張り剛性及び耐デント性を向上するための技術が開示されている。具体的に、下記特許文献1に開示された技術では、アウタパネルとインナパネルとの間にアウタパネルを補強するためのデントリインフォースが設けられている。デントリインフォースは、車両本体に設けられたフードロック装置と係合して車両用フードの前端部を車両本体に固定するためのストライカから後方の領域に配置されてアウタパネルに接合されている。このデントリインフォースによるアウタパネルの補強により、車両用フードの張り剛性及び耐デント性が向上される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-97846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の車両用フードでは、ストライカが車両用フードの前端部近傍において車両左右方向(幅方向)における中央の一箇所にのみ設けられたシングルロックタイプのものが一般的であったが、近年では、車両用フードの薄型化や大型化に伴って、車両用フード全体の剛性を確保するために車両左右方向において互いに離間して配置された一対のストライカで車両用フードを車両本体に固定するダブルロックタイプのものが現れている。
【0007】
ダブルロックタイプの車両用フードでは、その前端部近傍の領域のうち一対のストライカの間の中央部付近の変形抵抗が小さくなる。このため、前記中央部付近において張り剛性及び耐デント性が低下するという問題、及び、前記中央部付近に上方からの衝突があったときにその中央部付近の領域がすぐに下方へ変形してエンジン等の内蔵物に当たり、歩行者保護性能が低下するという問題がある。これらの問題は、一般的に、前記デントリインフォースを大型化して前記中央部付近の補強を強化することによって解決されるが、この場合には、車両用フードの製造コストが増大するとともに車両の重量が増大するという別の問題が生じる。
【0008】
本発明の目的は、製造コスト及び重量の増大を抑制しつつ、一対のストライカの間の中央部付近における張り剛性、耐デント性及び歩行者保護性能を十分に確保することが可能なダブルロックタイプの車両用フードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により提供される車両用フードは、アウタパネルと、車両上下方向において前記アウタパネルの下方に配置されたインナパネルと、前記インナパネルに設けられ、車両左右方向において互いに離間して配置された一対のストライカと、を備える。前記インナパネルは、当該インナパネルの外周において前記アウタパネルに接合された外側接合部と、前記外側接合部の内側において前記アウタパネルから離間した底部と、前記外側接合部の内側において前記底部から前記アウタパネルへ向かって突出し、前記アウタパネルに接合された内側接合部と、を含む。前記内側接合部は、前記一対のストライカの後方に配置されて前記アウタパネルに接合された本体部と、前記本体部から前方に延出されて前記一対のストライカの間に配置され、前記アウタパネルに接合された延出部と、を有する。
【0010】
この車両用フードでは、インナパネルの一部である内側接合部の延出部により一対のストライカの間の領域を補強してその領域の変形抵抗を高めることができるので、製造コスト及び重量の増大を抑制しつつ、一対のストライカの間の中央部付近における張り剛性、耐デント性及び歩行者保護性能を十分に確保できる。
【0011】
具体的に、車両用フードにおいて一対のストライカから後方の領域を補強するためには一般的にアウタパネルとインナパネルの間にデントリインフォースが設けられるが、本発明により提供される車両用フードでは、インナパネルの一部であってその底部からアウタパネルへ向かって突出した内側接合部が、一対のストライカの後方に配置されてアウタパネルに接合された本体部と、一対のストライカの間で本体部から前方に延出されてアウタパネルに接合された延出部とを有するため、デントリインフォースの代わりにインナパネルの一部である内側接合部の本体部及び延出部を用いて一対のストライカの後方の領域及び一対のストライカの間の領域を補強できる。このため、デントリインフォースを省略できるので、車両用フードの製造コスト及び重量の増大を抑制できる。
【0012】
そして、延出部により一対のストライカの間の領域が補強されることによって、その領域の変形抵抗を高めることができる。その結果、一対のストライカの間の中央部付近における張り剛性及び耐デント性を十分に確保できる。
【0013】
また、仮に車両用フードの一対のストライカの間の領域の変形抵抗が小さい場合には、一対のストライカの間の中央部付近に上方からの衝突があったときに、前記中央部付近の領域が、すぐに下方へ変形してエンジン等の内蔵物に当たり、それ以上下方へ変形できなくなり、その結果、衝突の衝撃を十分に吸収できなくなる。これに対し、本発明により提供される車両用フードでは、前記のように一対のストライカの間の領域の変形抵抗を高めることができるので、一対のストライカの間の中央部付近に衝突による衝撃が付与されても、その中央部付近の領域がエンジン等の内蔵物に当たるところまですぐには変形せず、衝撃を十分に吸収できる。よって、本発明により提供される車両用フードでは、前記中央部付近における歩行者保護性能、つまり、前記中央部付近における衝撃の吸収性能を十分に確保できる。
【0014】
前記本体部は、前記アウタパネルに沿うように配置されて前記アウタパネルと接合された本体部接合部と、車両左右方向において前記本体部接合部の両側に分かれて配置されて車両左右方向における前記本体部接合部の両端部と前記底部とを接続する一対の本体部側壁部と、車両左右方向において前記延出部の両側に分かれて配置されて前記本体部接合部の前端部と前記底部とを接続する一対の本体部前壁部と、車両左右方向における前記一対の本体部前壁部のそれぞれの外側の端部と前記一対の本体部側壁部のそれぞれの対応する前端部とを接続する一対の前側コーナー部と、を含み、前記一対の本体部前壁部には、開口部がそれぞれ設けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、変形抵抗が高くなりすぎる内側接合部の本体部の一対の前側コーナー部付近の変形抵抗を緩和して、一対の前側コーナー部付近における車両用フードの歩行者保護性能を確保することができる。
【0016】
具体的に、本体部の一対の前側コーナー部付近の変形抵抗は、ストライカの配置にかかわらず元々高いが、一対のストライカの後方に本体部前壁部が配置されることにより、一対の前側コーナー部付近の変形抵抗が高くなりすぎ、その一対の前側コーナー部付近において歩行者保護性能を確保できなくなる虞がある。これに対し、本構成では、一対の本体部前壁部に開口部がそれぞれ設けられているため、その一対の本体部前壁部の外側の端部に接続される一対の前側コーナー部付近の変形抵抗を緩和することができる。その結果、一対の前側コーナー部付近における車両用フードの歩行者保護性能を確保することができる。
【0017】
前記本体部は、前記アウタパネルに沿うように配置されて前記アウタパネルと接合された本体部接合部と、車両左右方向において前記延出部の両側に分かれて配置されて前記本体部接合部の前端部と前記底部とを接続する一対の本体部前壁部と、を含み、前記延出部は、前記アウタパネルに沿うように配置されて前記アウタパネルと接合された延出部接合部と、車両左右方向において前記延出部接合部の両側に分かれて配置されて車両左右方向における前記延出部接合部の両端部と前記底部とを接続する一対の延出部側壁部と、を含み、前記一対の延出部側壁部は、車両左右方向における前記一対の本体部前壁部のそれぞれの内側の端部と接続される後端部をそれぞれ有し、一方の前記延出部側壁部の前記後端部からそれに接続された一方の前記本体部前壁部の前記内側の端部にわたる部分と、他方の前記延出部側壁部の前記後端部からそれに接続された他方の前記本体部前壁部の前記内側の端部にわたる部分とは、それぞれ、湾曲した形状をなすことが好ましい。
【0018】
この構成によれば、一方の延出部側壁部の後端部からそれに接続された一方の本体部前壁部の内側の端部にわたる部分と他方の延出部側壁部の後端部からそれに接続された他方の本体部前壁部の内側の端部にわたる部分の上方からの荷重に対する変形抵抗を高めることができ、車両用フードのそれらの部分付近の張り剛性、耐デント性及び歩行者保護性能を向上できる。また、一方の延出部側壁部の後端部からそれに接続された一方の本体部前壁部の内側の端部にわたる部分と他方の延出部側壁部の後端部からそれに接続された他方の本体部前壁部の内側の端部にわたる部分とが、それぞれ、接線方向が断続的に変化するように曲折されている場合には、その曲折箇所に応力が集中して破損する可能性があるが、本構成によれば、一方の延出部側壁部の後端部から一方の本体部前壁部の内側の端部にわたる部分と他方の延出部側壁部の後端部から他方の本体部前壁部の内側の端部にわたる部分の前記のような応力の集中による破損を防ぐことができる。
【0019】
前記本体部は、前記アウタパネルに沿うように配置されて前記アウタパネルと接合された本体部接合部と、車両左右方向において前記本体部接合部の両側に分かれて配置されて車両左右方向における前記本体部接合部の両端部と前記底部とを接続する一対の本体部側壁部と、車両左右方向において前記延出部の両側に分かれて配置されて前記本体部接合部の前端部と前記底部とを接続する一対の本体部前壁部と、車両左右方向における前記一対の本体部前壁部のそれぞれの外側の端部と前記一対の本体部側壁部のそれぞれの対応する前端部とを接続する一対の前側コーナー部と、を含み、前記延出部は、前記アウタパネルに沿うように配置されて前記アウタパネルと接合された延出部接合部と、車両左右方向において前記延出部接合部の両側に分かれて配置されて車両左右方向における前記延出部接合部の両端部と前記底部とを接続する一対の延出部側壁部と、を含み、前記一対の本体部前壁部には、開口部がそれぞれ設けられ、前記一対の延出部側壁部は、車両左右方向における前記一対の本体部前壁部のそれぞれの内側の端部と接続される後端部をそれぞれ有し、一方の前記延出部側壁部の前記後端部からそれに接続された一方の前記本体部前壁部の前記内側の端部にわたる部分と、他方の前記延出部側壁部の前記後端部からそれに接続された他方の前記本体部前壁部の前記内側の端部にわたる部分とは、それぞれ、湾曲した形状をなすことが好ましい。
【0020】
この構成によれば、前記の一対の本体部前壁部に開口部がそれぞれ設けられた構成による効果と同様の効果が得られるとともに、前記の一方の延出部側壁部の後端部から一方の本体部前壁部の内側の端部にわたる部分と他方の延出部側壁部の後端部から他方の本体部前壁部の内側の端部にわたる部分とがそれぞれ湾曲した形状をなしている構成による効果と同様の効果が得られる。すなわち、一対の前側コーナー部付近の変形抵抗を緩和してその一対の前側コーナー部付近における車両用フードの歩行者保護性能を確保することができるとともに、一方の延出部側壁部の後端部から一方の本体部前壁部の内側の端部にわたる部分付近と他方の延出部側壁部の後端部から他方の本体部前壁部の内側の端部にわたる部分付近の張り剛性、耐デント性及び歩行者保護性能を向上しつつそれらの部分における応力の集中による破損を防ぐことができる。
【0021】
前記一対の本体部前壁部のそれぞれに設けられた前記開口部の下縁は、その開口部が設けられた前記本体部前壁部において前記底部よりも上側に位置することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、開口部は本体部前壁部にのみ設けられて底部には達していないので、底部に開口が形成されることによる車両用フードの剛性の低下を防ぐことができる。
【0023】
前記インナパネルは、前記一対の本体部前壁部のそれぞれから連続して設けられた一対の接合片であって前記一対の本体部前壁部に設けられた前記開口部の縁部からそれぞれ前記アウタパネルへ向かって延び、前記アウタパネルにそれぞれ接合されたもの、を有することが好ましい。
【0024】
この構成によれば、製造コストの増大を防ぎつつ、一対の接合片付近での車両用フードの張り剛性及び耐デント性を向上できる。具体的には、この構成では、一対の本体部前壁部にそれぞれ設けられた開口部の縁部からそれぞれアウタパネルへ向かって延びてアウタパネルに接合された一対の接合片によりアウタパネルが下方から支えられるため、その一対の接合片付近での車両用フードの張り剛性及び耐デント性を向上できる。しかも、一対の接合片は一対の本体部前壁部のそれぞれから連続して設けられて開口部の縁部から延びているため、板材を加工してインナパネルを形成する時に前記板材のうち本体部前壁部の開口部の内側に位置する部分をその一端が開口部の縁部に繋がった状態で周囲を切り欠き、その部分を開口部の縁部の位置で曲げ起こすことによって各接合片を形成できる。よって、別途部材を追加せずに一対の接合片を設けることができる。このため、車両用フードの製造コストの増大を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、製造コスト及び重量の増大を抑制しつつ、一対のストライカの間の中央部付近における張り剛性、耐デント性及び歩行者保護性能を確保することが可能なダブルロックタイプの車両用フードが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態による車両用フードの分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による車両用フードのインナパネルの平面図である。
図3図2中のIII-III位置における車両用フードの断面図である。
図4図2中のIV-IV位置における車両用フードの断面図である。
図5】本発明の一実施形態の第1変形例による車両用フードのインナパネルの平面図である。
図6】本発明の一実施形態の第2変形例による車両用フードのインナパネルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態による車両用フード1について図面を参照しつつ説明する。
【0028】
本実施形態による車両用フード1は、自動車等の車両を構成する部材であり、車両の前部に設けられたエンジンルームを開閉可能に車両本体に取り付けられる。当該車両用フード1は、エンジンルームを閉じた状態でエンジンルーム上を覆う。以下の車両用フード1の構成の説明において、前後左右は、車両用フード1が設置された車両において当該車両用フード1がエンジンルームを閉じた状態での車両の前後左右を意味する。左右方向は、車両の幅方向(車幅方向)に相当する。また、車両用フード1についての上下は、車両用フード1がエンジンルームを閉じた状態での上下を言うものとする。各図面には、前後、左右及び上下の各方向が示されている。
【0029】
車両用フード1は、図1に示されるように、アウタパネル10と、インナパネル20と、左ロックリインフォース25aと、左ストライカ25bと、右ロックリインフォース27aと、右ストライカ27bと、を有する。
【0030】
アウタパネル10は、車両用フード1がエンジンルームを閉じた状態で車両用フード1の上面(外面)を構成するものである。アウタパネル10は、例えばアルミニウム系材料からなる板材をプレス成形することにより形成される。
【0031】
アウタパネル10は、ヘム加工(折り返し加工)されることによってインナパネル20の後述の外側接合部32に強固に固着されるヘム部10a(図3及び図4参照)を当該アウタパネル10の外周部全体に亘って有する。ヘム部10aは、インナパネル20の外側接合部32をその厚み方向の両側(上下両側)から挟み込む圧着力と、当該ヘム部10aの内面と外側接合部32の外面との間に施された接着剤111の接着力とにより、インナパネル20の外側接合部32に固着される。また、アウタパネル10は、車両用フード1がエンジンルームを閉じた状態で車両用フード1の上面(外面)を構成する表面10bと、その反対の裏面10cと、を有する。
【0032】
インナパネル20は、車両上下方向においてアウタパネル10の下方に配置されてアウタパネル10に接合されている。換言すれば、インナパネル20は、アウタパネル10の裏面10cに対向するように配置されてアウタパネル10に接合されている。インナパネル20は、車両用フード1がエンジンルームを閉じた状態で車両用フード1の下面を構成する。インナパネル20は、例えばアルミニウム系材料からなる板材をプレス成形することにより形成される。
【0033】
インナパネル20は、図2に示すように、外側接合部32と、底部34と、接続壁部35と、内側接合部36と、左接合片37と、右接合片38と、を有する。これらの外側接合部32、底部34、接続壁部35、内側接合部36、左接合片37及び右接合片38は、一体的に形成される。
【0034】
外側接合部32は、インナパネル20の外周においてアウタパネル10に接合されている。換言すれば、外側接合部32は、インナパネル20の外周部(外縁)を構成し、アウタパネル10に接合される部分である。この外側接合部32は、平面視で環状をなす。外側接合部32は、アウタパネル10の裏面10cに沿うように配置され、前記のようにアウタパネル10の外周のヘム部10aに接合される。外側接合部32は、接合前端部52と、接合後端部54と、接合左端部56と、接合右端部58と、を有する。
【0035】
接合前端部52は、インナパネル20の前端を構成しており、車両の左右方向に延びている。接合後端部54は、インナパネル20の後端を構成しており、車両の左右方向に延びている。接合左端部56は、インナパネル20の左端を構成しており、車両の前後方向に延びている。接合右端部58は、インナパネル20の右端を構成しており、車両の前後方向に延びている。
【0036】
底部34は、インナパネル20の底面を構成する部分である。底部34は、環状の外側接合部32の内側において外側接合部32に沿って設けられ、アウタパネル10の裏面10cから離間している。底部34は、外側接合部32に沿う環状をなし、外側接合部32と略平行に配置されている。底部34は、前側底部62と、後側底部64と、左側底部66と、右側底部68と、を有する。
【0037】
前側底部62は、接合前端部52の後方に隣接して配置された部分である。前側底部62は、左ストライカ設置部62aと、右ストライカ設置部62bと、延出部前方底部62cと、を有する。
【0038】
左ストライカ設置部62aは左ストライカ25bが設置される部分であり、右ストライカ設置部62bは右ストライカ27bが設置される部分である。左ストライカ設置部62aと右ストライカ設置部62bは、左右方向におけるインナパネル20の中心に対して左右対称で且つ左右方向において互いに離間して配置されている。左ストライカ設置部62aは、後述する本体部82の前側左コーナー部91に隣接している。また、右ストライカ設置部62bは、後述する本体部82の前側右コーナー部92に隣接している。
【0039】
延出部前方底部62cは、底部34のうち左ストライカ設置部62aと右ストライカ設置部62bとの間で後述の延出部84の前方に位置する部分である。延出部前方底部62cの前端から後端までの幅β(図3参照)は、後述の延出部84が前方に延出されていることにより左ストライカ設置部62a及び右ストライカ設置部62bのそれぞれの前端から後端までの幅よりも小さい。また、この延出部前方底部62cの幅βは、10mm以上であることが望ましい。
【0040】
後側底部64(図2参照)は、前記接合後端部54の前方に隣接して配置された部分である。左側底部66は、前記接合左端部56の右方に隣接して配置された部分である。右側底部68は、前記接合右端部58の左方に隣接して配置された部分である。
【0041】
接続壁部35は、外側接合部32と底部34との間でそれらを相互に繋ぐ部分であり、外側接合部32に沿う環状をなしている。接続壁部35は、前側接続壁部72と、後側接続壁部74と、左側接続壁部76と、右側接続壁部78と、を有する。
【0042】
前側接続壁部72は、接合前端部52と前側底部62との間でその接合前端部52の後端と前側底部62の前端とを繋いでいる。前側接続壁部72は、接合前端部52の後端から下方へ向かうにつれて後方へ向かうように傾斜している。
【0043】
後側接続壁部74は、前記接合後端部54と前記後側底部64との間でその接合後端部54の前端と後側底部64の後端とを繋いでいる。後側接続壁部74は、接合後端部54の前端から下方へ向かうにつれて前方へ向かうように傾斜している。
【0044】
左側接続壁部76は、前記接合左端部56と前記左側底部66との間でその接合左端部56の右端と左側底部66の左端とを繋いでいる。左側接続壁部76は、接合左端部56の右端から下方へ向かうにつれて右方へ向かうように傾斜している。左側接続壁部76の前端部は、前側接続壁部72の左端部に繋がっている。
【0045】
右側接続壁部78は、前記接合右端部58と前記右側底部68との間でその接合右端部58の左端と右側底部68の右端とを繋いでいる。右側接続壁部78は、接合右端部58の左端から下方へ向かうにつれて左方へ向かうように傾斜している。右側接続壁部78の前端部は、前側接続壁部72の右端部に繋がっている。
【0046】
内側接合部36は、環状の外側接合部32の内側、より具体的には環状の底部34の内側において底部34からアウタパネル10の裏面10cへ向かって突出し、アウタパネル10の裏面10cに接合されている。内側接合部36は、平面視で略矩形状をなす本体部82と、その本体部82の前端部から前方へ延出された延出部84と、を有する。
【0047】
本体部82は、左ストライカ25b及び右ストライカ27bの後方に配置され、アウタパネル10を裏側(下側)から支えるようにそのアウタパネル10の裏面10cに接合される。本体部82は、本体部左前壁部86と、本体部右前壁部87と、本体部後壁部88と、本体部左側壁部89と、本体部右側壁部90と、前側左コーナー部91と、前側右コーナー部92と、後側左コーナー部93と、後側右コーナー部94と、本体部天壁部95と、を有する。
【0048】
本体部左前壁部86及び本体部右前壁部87は、車両左右方向において延出部84の両側に分かれて配置されている。この本体部左前壁部86及び本体部右前壁部87は、本発明における一対の本体部前壁部の一例である。
【0049】
本体部左前壁部86(図2及び図4参照)は、本体部82の前端面を構成する縦壁である。本体部左前壁部86は、延出部84の左側に配置され、左ストライカ25bの後方、換言すれば前側底部62の左ストライカ設置部62aの後方に隣接して配置されている。本体部左前壁部86は、本体部天壁部95の後述する本体部接合部97の前端と前側底部62の左ストライカ設置部62aの後端とをそれらの間で接続している。本体部左前壁部86は、前側底部62の左ストライカ設置部62aの後端からアウタパネル10の裏面10cへ向かって立ち上がるとともに車両の左右方向に延びている。本体部左前壁部86の下端が左ストライカ設置部62aの後端と繋がっている。本体部左前壁部86は、上方へ向かうにつれて後方へ向かうように傾斜している。
【0050】
本体部左前壁部86には、当該本体部左前壁部86を貫通する左開口部86aが設けられている。左開口部86aは、本体部左前壁部86のうち湾曲した左端部や右端部ではなく、本体部左前壁部86の左端部と右端部との間で直線的に延びる部分に設けられている。具体的には、左開口部86aは、左ストライカ25bの後方の位置に設けられている。左開口部86aは、矩形状をなしている。左開口部86aの下縁は、本体部左前壁部86において前側底部62よりも上側に位置する。すなわち、左開口部86aの下縁は、本体部左前壁部86の下端よりも上側に設けられている。また、左開口部86aの上縁は、本体部左前壁部86の上端よりも下側に設けられている。
【0051】
本体部右前壁部87(図2参照)は、本体部左前壁部86とともに本体部82の前端面を構成する縦壁である。本体部右前壁部87は、延出部84の右側に配置され、右ストライカ27bの後方、換言すれば前側底部62の右ストライカ設置部62bの後方に隣接して配置されている。本体部右前壁部87は、本体部天壁部95の後述する本体部接合部97の前端と前側底部62の右ストライカ設置部62bの後端とをそれらの間で接続している。本体部右前壁部87は、前側底部62の右ストライカ設置部62bの後端からアウタパネル10の裏面10cへ向かって立ち上がるとともに車両の左右方向に延びている。本体部右前壁部87の下端が右ストライカ設置部62bの後端と繋がっている。本体部右前壁部87は、上方へ向かうにつれて後方へ向かうように傾斜している。本体部右前壁部87は、車両の左右方向におけるインナパネル20の中心に対して本体部左前壁部86と左右対称となるように配置されるとともに、前記左右方向において本体部左前壁部86との間に間隔をあけて配置されている。
【0052】
本体部右前壁部87には、当該本体部右前壁部87を貫通する右開口部87aが設けられている。右開口部87aは、本体部右前壁部87のうち湾曲した右端部や左端部ではなく、本体部右前壁部87の右端部と左端部との間で直線的に延びる部分に設けられている。具体的には、右開口部87aは、右ストライカ27bの後方の位置に設けられている。右開口部87aは、矩形状をなしている。右開口部87aの下縁は、本体部右前壁部87において前側底部62よりも上側に位置する。すなわち、右開口部87aの下縁は、本体部右前壁部87の下端よりも上側に設けられている。また、右開口部87aの上縁は、本体部右前壁部87の上端よりも下側に設けられている。この右開口部87a及び前記左開口部86aは、本発明における開口部の一例である。
【0053】
本体部後壁部88は、本体部82の後端面を構成する縦壁である。本体部後壁部88は、後側底部64の前端からアウタパネル10の裏面10cへ向かって立ち上がるとともに車両の左右方向に延びている。本体部後壁部88の下端が後側底部64の前端と繋がっている。本体部後壁部88は、上方へ向かうにつれて前方へ向かうように傾斜している。
【0054】
本体部左側壁部89及び本体部右側壁部90は、車両左右方向において本体部天壁部95の後述する本体部接合部97の両側に分かれて配置されている。この本体部左側壁部89及び本体部右側壁部90は、本発明における一対の本体部側壁部の一例である。
【0055】
本体部左側壁部89は、本体部82の左側面を構成する縦壁である。本体部左側壁部89は、後述する本体部接合部97の左側に配置されるとともに、本体部左前壁部86の左側に配置されている。本体部左側壁部89は、後述する本体部接合部97の左端と左側底部66の右端とをそれらの間で接続している。本体部左側壁部89は、左側底部66の右端からアウタパネル10の裏面10cへ向かって立ち上がるとともに車両の前後方向に延びている。本体部左側壁部89の下端が左側底部66の右端と繋がっている。本体部左側壁部89は、上方へ向かうにつれて右方へ向かうように傾斜している。
【0056】
本体部右側壁部90は、本体部82の右側面を構成する縦壁である。本体部右側壁部90は、後述する本体部接合部97の右側に配置されるとともに、本体部右前壁部87の右側に配置されている。本体部右側壁部90は、後述する本体部接合部97の右端と右側底部68の左端とをそれらの間で接続している。本体部右側壁部90は、右側底部68の左端からアウタパネル10の裏面10cへ向かって立ち上がるとともに車両の前後方向に延びている。本体部右側壁部90の下端が右側底部68の左端と繋がっている。本体部右側壁部90は、上方へ向かうにつれて左方へ向かうように傾斜している。
【0057】
前側左コーナー部91は、本体部左前壁部86の左端と本体部左側壁部89の前端とを接続する丸みを帯びた角部である。
【0058】
前側右コーナー部92は、本体部右前壁部87の右端と本体部右側壁部90の前端とを接続する丸みを帯びた角部である。この前側右コーナー部92と前記前側左コーナー部91及び前側右コーナー部92は、本発明における一対の前側コーナー部の一例である。
【0059】
後側左コーナー部93は、本体部後壁部88の左端と本体部左側壁部89の後端とを接続する繋ぐ丸みを帯びた角部である。
【0060】
後側右コーナー部94は、本体部後壁部88の右端と本体部右側壁部90の後端とを接続する丸みを帯びた角部である。
【0061】
本体部天壁部95は、本体部82の天面(上面)を構成するものであり、図4に示すように、アウタパネル10の裏面10cに対して対向するように配置されるとともにそのアウタパネル10の裏面10cに対して接合されている。本体部天壁部95は、本体部左前壁部86、本体部右前壁部87、本体部後壁部88、本体部左側壁部89、本体部右側壁部90、前側左コーナー部91、前側右コーナー部92、後側左コーナー部93及び後側右コーナー部94のそれぞれの上端に接続されている。本体部天壁部95は、図1及び図2に示すように、複数のビード部96と、本体部接合部97と、を有する。
【0062】
複数のビード部96は、本体部天壁部95の剛性を高めるためのものである。複数のビード部96は、それぞれ、車両の左右方向に沿って延びるとともに、本体部天壁部95の一部が下方へ窪んだ形状をなす。複数のビード部96は、前後方向に間隔をおいて並んでいる。
【0063】
本体部接合部97は、アウタパネル10の裏面10cに沿うように配置されてアウタパネル10に接合されている。本体部接合部97は、本体部天壁部95のうち前記複数のビード部96を除いた部分である。具体的には、本体部接合部97は、前後方向に隣り合うビード部96同士の間の部分、最も前側のビード部96に対して前側に隣接する部分、最も後側のビード部96に対して後側に隣接する部分、複数のビード部96に対して左側に隣接する部分、及び、複数のビード部96に対して右側に隣接する部分からなる。本体部接合部97は、図4に示すように、アウタパネル10の裏面10cに対して対向するように配置され、マスチック接着剤からなる接合材112を介してアウタパネル10の裏面10cに接合されている。マスチック接着剤は、一般的に、合成ゴムを主成分とした弾性接着剤である。接合材112は、図2に示すように、本体部接合部97の上面上に所定間隔おきに点状に設けられる。
【0064】
延出部84は、本体部82から前方へ延出されて左ストライカ25bと右ストライカ27bとの間、換言すれば左ストライカ設置部62aと右ストライカ設置部62bとの間に配置されている。延出部84は、本体部82と同様にアウタパネル10を裏側(下側)から支えるようにそのアウタパネル10の裏面10cに接合されている。延出部84は、延出部前壁部100と、延出部左側壁部101と、延出部右側壁部102と、延出部接合部103と、を有する。
【0065】
延出部前壁部100は、延出部84の前端面を構成する縦壁である。延出部前壁部100は、前側底部62の延出部前方底部62cの後端からアウタパネル10の裏面10cへ向かって立ち上がるとともに車両の左右方向に延びている。延出部前壁部100の下端が延出部前方底部62cの後端と繋がっている。延出部前壁部100は、上方へ向かうにつれて後方へ向かうように傾斜している。延出部前壁部100の傾斜角度α(図3参照)は、40°以上60°以下の範囲内の所定の角度に設定されていることが望ましい。前記傾斜角度αは、側方から見て延出部前壁部100が延出部前方底部62cの後方への延長線に対してなす角度である。
【0066】
延出部左側壁部101と延出部右側壁部102は、車両左右方向において延出部接合部103の両側に分かれて配置されている。この延出部左側壁部101及び延出部右側壁部102は、本発明における一対の延出部側壁部の一例である。
【0067】
延出部左側壁部101は、延出部84の左側面を構成する縦壁である。延出部左側壁部101は、延出部接合部103の左端と前側底部62の左ストライカ設置部62aの右端とをそれらの間で接続している。延出部左側壁部101は、前側底部62の左ストライカ設置部62aの右端からアウタパネル10の裏面10cへ向かって立ち上がっている。延出部左側壁部101の下端が左ストライカ設置部62aの右端と繋がっている。延出部左側壁部101は、後方へ向かうにつれて左方へ向かうように傾斜し、且つ、上方へ向かうにつれて右方へ向かうように傾斜している。
【0068】
延出部左側壁部101は、延出部前壁部100の左端部と丸みを帯びた角部を形成するように繋がる前端部を有する。また、延出部左側壁部101は、本体部82の本体部左前壁部86の右端部と繋がる後端部を有する。この延出部左側壁部101の後端部から本体部左前壁部86の右端部にわたる部分101aは、後方へ向かうにつれて左方へ向かい且つ接線方向が連続的に変化するように湾曲した形状をなす。
【0069】
延出部右側壁部102は、延出部84の右側面を構成する縦壁である。延出部右側壁部102は、延出部接合部103の右端と前側底部62の右ストライカ設置部62bの左端とをそれらの間で接続している。延出部右側壁部102は、前側底部62の右ストライカ設置部62bの左端からアウタパネル10の裏面10cへ向かって立ち上がっている。延出部右側壁部102の下端が右ストライカ設置部62bの左端と繋がっている。延出部右側壁部102は、後方へ向かうにつれて右方へ向かうように傾斜し、且つ、上方へ向かうにつれて左方へ向かうように傾斜している。
【0070】
延出部右側壁部102は、延出部前壁部100の右端部と丸みを帯びた角部を形成するように繋がる前端部を有する。また、延出部右側壁部102は、本体部82の本体部右前壁部87の左端部と繋がる後端部を有する。この延出部右側壁部102の後端部から本体部右前壁部87の左端部にわたる部分102aは、後方へ向かうにつれて左方へ向かい且つ接線方向が連続的に変化するように湾曲した形状をなす。
【0071】
延出部接合部103は、アウタパネル10の裏面10cに沿うように配置されてアウタパネル10と接合されている。延出部接合部103は延出部84の天壁を構成するものであり、当該延出部接合部103の上面が延出部84の天面となっている。延出部接合部103は、アウタパネル10の裏面10cに対して対向するように配置されるとともにそのアウタパネル10の裏面10cに対して接合されている。延出部接合部103は、本体部接合部97と連続した平板からなり、その本体部接合部97の前端から前方へ延びている。延出部接合部103は、延出部前壁部100、延出部左側壁部101及び延出部右側壁部102のそれぞれの上端に繋がっている。延出部接合部103は、アウタパネル10の裏面10cに沿うように配置され、マスチック接着剤からなる接合材112を介してアウタパネル10の裏面10cに接合されている。接合材112は、延出部接合部103上において所定間隔おきに点状に設けられる。
【0072】
左接合片37(図4参照)は、本体部左前壁部86のうち左開口部86aの上側の部分から連続して設けられ、その本体部左前壁部86に設けられた左開口部86aの上縁からアウタパネル10の裏面10cへ向かって延びている。この左接合片37は、アウタパネル10を裏側(下側)から支えるようにアウタパネル10の裏面10cに接合されている。左接合片37は、板材を加工してインナパネル20を形成する時にその板材のうち本体部左前壁部86の左開口部86aの内側に位置する部分をその上端が左開口部86aの上縁に繋がった状態で周囲を切り欠き、その部分が左開口部86aの上縁の位置で曲げ起こされるとともに、その曲げ起こされた部分の先端近傍の部位がさらに曲折されることによって形成される。
【0073】
左接合片37は、左開口部86aの上縁からアウタパネル10の裏面10cへ向かって延びる延設部37aと、その延設部37aの先端からアウタパネル10の裏面10cに沿って前方へ延び、アウタパネル10の裏面10cに接合される接合部37bとを有する。
【0074】
接合部37bはアウタパネル10の裏面10cに対して対向し且つそのアウタパネル10の裏面10cに沿うように配置される上面を有する。この接合部37bの上面が、マスチック接着剤からなる接合材112を介してアウタパネル10の裏面10cに接合されている。
【0075】
また、左接合片37は、当該左接合片37の形状を維持するための形状凍結ビード37cを有する。形状凍結ビード37cは、左接合片37の延設部37aの下端部と本体部左前壁部86のうち左開口部86aの上側に位置する部分とによって形成される屈曲部105に設けられている。具体的には、形状凍結ビード37cは、車両の左右方向における屈曲部105の中央の位置に設けられている。形状凍結ビード37cは、屈曲部105の前記中央の位置の部位が上向きに膨出された凸部からなる。形状凍結ビード37cは、屈曲部105の内側の角度が拡大するように左接合片37が変形するのを抑制し、本体部左前壁部86のうち左開口部86aの上側の部分に対して斜めに延びる左接合片37の形状を維持する。
【0076】
右接合片38(図1及び図2参照)は、本体部右前壁部87のうち右開口部87aの上側の部分から連続して設けられ、その本体部右前壁部87に設けられた右開口部87aの上縁からアウタパネル10の裏面10cへ向かって延びている。この右接合片38は、アウタパネル10を裏側(下側)から支えるようにそのアウタパネル10の裏面10cに接合されている。右接合片38は、板材を加工してインナパネル20を形成する時にその板材のうち本体部右前壁部87の右開口部87aの内側に位置する部分をその上端が右開口部87aの上縁に繋がった状態で周囲を切り欠き、その部分が右開口部87aの上縁の位置で曲げ起こされるとともに、その曲げ起こされた部分の先端近傍の部位がさらに曲折されることによって形成される。右接合片38は、左接合片37と同様に構成され、左接合片37と同様にマスチック接着剤からなる接合材112を介してアウタパネル10の裏面10cに接合される。また、右接合片38は、左接合片37の形状凍結ビード37cと同様のものを有する。
【0077】
左ロックリインフォース25a(図1参照)は左ストライカ25bの取り付け箇所を補強するものであり、右ロックリインフォース27a(図1参照)は右ストライカ27bの取り付け箇所を補強するものである。左ロックリインフォース25a及び右ロックリインフォース27aは、それぞれ、板状の部材である。左ロックリインフォース25aは左ストライカ設置部62a上に設置されてその左ストライカ設置部62aに固定されており、右ロックリインフォース27aは右ストライカ設置部62b上に設置されてその右ストライカ設置部62bに固定されている。
【0078】
左ストライカ25bと右ストライカ27bは、それぞれ、車両本体のエンジンルームの前方に設けられた対応するラッチと係合可能に構成されている。左ストライカ25bと右ストライカ27bは、車両用フード1が車両本体に取り付けられてエンジンルームを閉じた状態でそれぞれ対応するラッチと係合し、それによって車両用フード1をその状態で固定するものである。この左ストライカ25bと右ストライカ27bは、本発明における一対のストライカの一例である。
【0079】
左ストライカ25bは、前側底部62の左ストライカ設置部62aに設置されてその左ストライカ設置部62aに固定されている。具体的に、左ストライカ25bは、図4に示すようにU字状の部材からなる。この左ストライカ25bは、左ロックリインフォース25aの下面に固定されて、左ストライカ設置部62aに設けられた図略の貫通孔を通って左ストライカ設置部62aの下方に突出し、それによって左ストライカ設置部62aに固定されている。
【0080】
右ストライカ27bは、前側底部62の右ストライカ設置部62bに設置されてその右ストライカ設置部62bに固定されている。右ストライカ27bは、車両左右方向におけるインナパネル20の中心に対して左ストライカ25bと左右対称に配置及び構成されている。右ストライカ27bは、左ストライカ25bと同様の部材からなる。この右ストライカ27bは、右ロックリインフォース27aの下面に固定されて、右ストライカ設置部62bに設けられた図略の貫通孔を通って右ストライカ設置部62bの下方に突出し、それによって右ストライカ設置部62bに固定されている。
【0081】
本実施形態では、インナパネル20の一部である内側接合部36の延出部84により車両用フード1の左ストライカ25bと右ストライカ27bとの間の領域を補強してその領域の変形抵抗を高めることができる。このため、車両用フード1の製造コスト及び重量の増大を抑制しつつ、車両用フード1の左ストライカ25bと右ストライカ27bとの間の中央部付近における張り剛性、耐デント性及び歩行者保護性能を十分に確保できる。
【0082】
具体的に、車両用フードにおいてストライカから後方の領域を補強するためには一般的にはアウタパネルとインナパネルの間にデントリインフォースが設けられる。これに対し、本実施形態による車両用フード1では、インナパネル20の一部であってその底部34から突出した内側接合部36が、左ストライカ25b及び右ストライカ27bの後方に配置されてアウタパネル10の裏面10cに接合された本体部82と、本体部82から前方へ延出されて左ストライカ25bと右ストライカ27bとの間に配置され、アウタパネル10の裏面10cに接合された延出部84とを有する。このため、デントリインフォースの代わりにインナパネル20の一部である本体部82及び延出部84により左ストライカ25b及び右ストライカ27bの後方の領域及び左ストライカ25bと右ストライカ27bとの間の領域を補強できる。このため、デントリインフォースを省略できるので、車両用フード1の製造コスト及び重量の増大を抑制できる。
【0083】
そして、延出部84により左ストライカ25bと右ストライカ27bとの間の領域が補強されることによって、その領域の変形抵抗を高めることができる。その結果、車両用フード1の左ストライカ25bと右ストライカ27bの間の中央部付近における張り剛性及び耐デント性を十分に確保できる。
【0084】
また、仮に車両用フード1の左ストライカ25bと右ストライカ27bとの間の領域の変形抵抗が小さい場合には、左ストライカ25bと右ストライカ27bとの間の中央部付近に上方からの衝突があったときに、前記中央部付近の領域が、すぐに下方へ変形してエンジン等の内蔵物に当たってそれ以上下方へ変形できなくなり、その結果、衝突の衝撃を十分に吸収できなくなる。これに対し、本実施形態による車両用フード1では、前記のように左ストライカ25bと右ストライカ27bとの間の領域の変形抵抗を高めることができるので、左ストライカ25bと右ストライカ27bとの間の中央部付近に衝突による衝撃が付与されても、その中央部付近の領域がエンジン等の内蔵物に当たるところまですぐには変形せず、衝撃を十分に吸収できる。よって、本実施形態による車両用フード1では、前記中央部付近における歩行者保護性能、つまり、前記中央部付近における衝撃の吸収性能を十分に確保できる。
【0085】
また、本体部82から前方に延出された延出部84により左ストライカ25bと右ストライカ27bの間の領域の変形抵抗を高める本実施形態の技術は、本体部82の構造によらず、適用可能である。このため、本体部82が配置された、左ストライカ25b及び右ストライカ27bよりも後側(車両用フード1の前端部近傍よりも後側)の広い領域での車両用フード1の剛性や歩行者保護性能などの性能に対して何ら悪影響が及ぼされることはない。
【0086】
また、本実施形態では、変形抵抗が高くなりすぎる本体部82の前側左コーナー部91付近及び前側右コーナー部92付近の変形抵抗を緩和して、その前側左コーナー部91付近及び前側右コーナー部92付近における車両用フード1の歩行者保護性能を確保することができる。
【0087】
具体的に、本体部82の前側左コーナー部91付近の変形抵抗及び本体部82の前側右コーナー部92付近の変形抵抗は、ストライカの配置にかかわらず元々高いが、前側左コーナー部91に隣接した位置に車両本体と係合する左ストライカ25bが設けられるとともに前側右コーナー部92に隣接した位置に車両本体と係合する右ストライカ27bが設けられることにより、前側左コーナー部91付近の変形抵抗及び前側右コーナー部92付近の変形抵抗が高くなりすぎ、その前側左コーナー部91付近及び前側右コーナー部92付近において歩行者保護性能を確保できなくなる虞がある。これに対し、本実施形態では、本体部82のうち左ストライカ25bの後方に配置された本体部左前壁部86に当該本体部左前壁部86を貫通する左開口部86aが設けられるとともに、本体部82のうち右ストライカ27bの後方に配置された本体部右前壁部87に当該本体部右前壁部87を貫通する右開口部87aが設けられているため、前記のように高くなりすぎる前側左コーナー部91付近の変形抵抗及び前側右コーナー部92付近の変形抵抗を緩和することができる。その結果、前側左コーナー部91付近及び前側右コーナー部92付近における車両用フード1の歩行者保護性能を確保することができる。
【0088】
また、本実施形態では、本体部左前壁部86に設けられた左開口部86aの下縁がその本体部左前壁部86において前側底部62よりも上側に位置し、本体部右前壁部87に設けられた右開口部87aの下縁がその本体部右前壁部87において前側底部62よりも上側に位置している。すなわち、左開口部86aが本体部左前壁部86内にのみ設けられて前側底部62には達しておらず、また、右開口部87aが本体部右前壁部87内にのみ設けられて前側底部62には達していない。このため、本体部82の外側(前側)に位置し、車両用フード1の外周に近い前側底部62の剛性の低下を防ぐことができ、その結果、車両用フード1の剛性の低下を防ぐことができる。
【0089】
また、本実施形態では、本体部82の本体部左前壁部86に設けられた左開口部86aは、本体部左前壁部86のうち左右両端の湾曲した部分ではなく直線的に延びる部分に設けられているため、インナパネル20の成形時に左開口部86aを本体部左前壁部86に容易に形成できる。また、本体部82の本体部右前壁部87に設けられた右開口部87aは、本体部右前壁部87のうち左右両端の湾曲した部分ではなく直線的に延びる部分に設けられているため、インナパネル20の成形時に右開口部87aを本体部右前壁部87に容易に形成できる。
【0090】
また、本実施形態では、製造コストの増大を防ぎつつ、左接合片37付近及び右接合片38付近での車両用フード1の張り剛性及び耐デント性を向上できる。具体的には、本実施形態では、アウタパネル10の裏面10cに接合された左接合片37及び右接合片38がそれぞれアウタパネル10を下側から支えるため、その左接合片37付近及び右接合片38付近での車両用フード1の張り剛性及び耐デント性を向上できる。しかも、左接合片37は本体部左前壁部86のうち左開口部86aの上側に位置する部分から連続して設けられて左開口部86aの上縁からアウタパネル10へ向かって延び、右接合片38は本体部右前壁部87のうち右開口部87aの上側に位置する部分から連続して設けられて右開口部87aの上縁からアウタパネル10へ向かって延びている。このため、板材を加工してインナパネル20を形成する時に前記板材のうち本体部左前壁部86の左開口部86aの内側に位置する部分と本体部右前壁部87の右開口部87aの内側に位置する部分とをそれらの一端が左右の開口部86a,87aの上縁に繋がった状態でそれぞれの周囲を切り欠き、それらの部分を左右の開口部86a,87aの上縁の位置でそれぞれ曲げ起こすことによって左接合片37及び右接合片38を形成できる。このため、別途部材を追加せずに左接合片37及び右接合片38を設けることができるので、車両用フード1の製造コストの増大を防ぐことができる。
【0091】
また、本実施形態では、左接合片37と本体部左前壁部86のうち左開口部86aの上側の部分との間の屈曲部105に形状凍結ビード37cが設けられているため、アウタパネル10のうち左接合片37が接合された箇所付近に上方から外力が加えられた場合に屈曲部105の内側の角度が拡大するように左接合片37が変形するのを抑制できる。このため、左接合片37付近における車両用フード1の張り剛性を良好に維持できる。また、右接合片38についても左接合片37と同様に構成されているため、右接合片38付近における車両用フード1の張り剛性も良好に維持できる。
【0092】
また、本実施形態では、延出部左側壁部101の後端部から本体部左前壁部86の右端部にわたる部分101aが後方へ向かうにつれて左方へ向かい且つ接線方向が連続的に変化するように湾曲した形状をなし、また、延出部右側壁部102の後端部から本体部右前壁部87の左端部にわたる部分102aが後方へ向かうにつれて右方へ向かい且つ接線方向が連続的に変化するように湾曲した形状をなしている。このため、延出部左側壁部101の後端部から本体部左前壁部86の右端部にわたる部分101aの上方からの荷重に対する変形抵抗を高めることができるとともに、当該部分101aが、接線方向が断続的に変化するように曲折されている場合のように曲折箇所に応力が集中して破損するような事態を防ぐことができる。また、同様に、延出部右側壁部102の後端部から本体部右前壁部87の左端部にわたる部分102aの上方からの荷重に対する変形抵抗を高めることができるとともに、当該部分102aが応力の集中により破損するのを防ぐことができる。
【0093】
また、本実施形態において、延出部前壁部100の傾斜角度αが40°以上60°以下の範囲内の所定の角度に設定されている場合には、延出部84を比較的容易に成形可能であり、且つ、適度な張り剛性を確保可能である。延出部前壁部100の傾斜角度αが60°よりも大きい場合には、延出部84の成形時に不具合が生じる虞がある。また、延出部前壁部100の傾斜角度αが40°よりも小さい場合には、延出部前壁部100の上端に繋がる延出部接合部103の前端の位置が後側になりすぎてアウタパネル10の裏面10cに接合される延出部接合部103の上面の面積が小さくなりすぎる。その結果、延出部接合部103が裏面10cに接合されることにより延出部84によって補強されるアウタパネル10の張り剛性を十分に確保できない可能性がある。
【0094】
本発明による車両用フードは、前記のようなものに必ずしも限定されない。例えば、本発明による車両用フードに以下のような構成を採用可能である。
【0095】
インナパネルの内側接合部は、左右のストライカの間に本体部から前方へ延出された延出部に加えて、左右のストライカのさらに左右両外側においてそれぞれ本体部から前方へ延出された延出部を有していてもよい。図5には、このような構成が採用された第1変形例による車両用フードのインナパネル20が示されている。
【0096】
第1変形例によるインナパネル20の内側接合部36は、本体部82と、中央延出部115と、左側延出部116と、右側延出部118と、を有する。
【0097】
中央延出部115は、前記実施形態の延出部84と同様の構成を有し、アウタパネル10の裏面10c(図5では図示せず、図3及び図4参照)にマスチック接着剤からなる接合材112を介して接合される。当該第1変形例では、中央延出部115が本発明における延出部に相当する。
【0098】
左側延出部116は、左ストライカ25bの左側の位置で本体部82から前方に延出され、中央延出部115と同様にアウタパネル10の裏面10cに接合材112を介して接合される。
【0099】
右側延出部118は、右ストライカ27bの右側の位置で本体部82から前方に延出され、中央延出部115と同様にアウタパネル10の裏面10cに接合材112を介して接合される。
【0100】
第1変形例によるインナパネル20の以上の構成以外は、前記実施形態によるインナパネル20と同様である。
【0101】
この第1変形例では、左ストライカ25bと右ストライカ27bとの間の領域においてアウタパネル10が中央延出部115により補強されるのに加えて、左ストライカ25bの左外側の領域においてアウタパネル10が左側延出部116により補強されるとともに、右ストライカ27bの右外側の領域においてアウタパネル10が右側延出部118により補強される。このため、車両用フード1の前端部近傍の領域の張り剛性及び耐デント性を車両の左右方向(車幅方向)におけるより広い範囲で向上できる。
【0102】
また、前記実施形態では、インナパネル20の本体部82の本体部天壁部95の剛性を高めるために車両の左右方向に延びる窪みからなるビード部96が本体部天壁部95に設けられているが、本体部天壁部95の剛性を高めるためにビード部96とは異なる様々な形状のものを採用することが可能である。
【0103】
例えば、図6には、本体部天壁部95の剛性を高めるために逆円錐台状(すり鉢状)の複数の凹部122が本体部天壁部95に設けられた第2変形例による車両用フードのインナパネル20が示されている。この第2変形例によるインナパネル20では、6つの凹部122が間隔をあけて本体部天壁部95に設けられている。
【0104】
また、前記実施形態においてインナパネル20の本体部天壁部95に設けられた複数のビード部96の数や配置は種々変更可能であり、第2変形例においてインナパネル20の本体部天壁部95に設けられた複数の凹部122の数や配置も種々変更可能である。
【0105】
また、本体部天壁部95の剛性を高めるために、ビード部96や凹部122とは異なる既知の各種形状の窪みを本体部天壁部95に設けてもよい。
【0106】
また、前記実施形態、前記第1変形例及び前記第2変形例において、本体部82の本体部左前壁部86に設けられた左開口部86aの上縁から延びる左接合片37及び本体部82の本体部右前壁部87に設けられた右開口部87aの上縁から延びる右接合片38は省略してもよい。さらに、左開口部86a及び右開口部87aも省略してもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 車両用フード
10 アウタパネル
20 インナパネル
25b 左ストライカ
27b 右ストライカ
32 外側接合部
34 底部
36 内側接合部
37 左接合片
38 右接合片
82 本体部
84 延出部
86 本体部左前壁部
86a 左開口部
87 本体部右前壁部
87a 右開口部
89 本体部左側壁部
90 本体部右側壁部
91 前側左コーナー部
92 前側右コーナー部
97 本体部接合部
101 延出部左側壁部
102 延出部右側壁部
103 延出部接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6