(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-07
(45)【発行日】2023-02-15
(54)【発明の名称】水硬性材料用添加剤
(51)【国際特許分類】
C04B 24/12 20060101AFI20230208BHJP
C04B 28/04 20060101ALI20230208BHJP
C04B 24/18 20060101ALI20230208BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20230208BHJP
【FI】
C04B24/12 A
C04B28/04
C04B24/18 B
C04B24/26 B
C04B24/26 E
(21)【出願番号】P 2021553601
(86)(22)【出願日】2020-10-26
(86)【国際出願番号】 JP2020040098
(87)【国際公開番号】W WO2021085376
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2019197413
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】新井 太一朗
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175787(JP,A)
【文献】特開2008-094708(JP,A)
【文献】特表2015-536294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 24/12
C04B 28/04
C04B 24/18
C04B 24/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有化合物(A)を含む水硬性材料用添加剤であって、
該窒素含有化合物(A)は、窒素含有化合物(A)100質量%に対する窒素原子の含有割合が6.8質量%以上であり、
アルキレン基とアミノ基とを有する構造単位及び/又は窒素原子の含有割合が6.8質量%以上である窒素原子含有単量体(A1)由来の構造単位(a1)を有し、重量平均分子量が5万~500万である重合体であり、
該水硬性材料用添加剤は更にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びこれらの塩の基並びにリン酸エステル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する化合物(B)を含み、
該化合物(B)は、不飽和カルボン酸系単量体(B1)、スルホン酸系単量体(B2)及びリン酸系単量体(B3)からなる群より選択される少なくとも1種由来の構造単位と(ポリ)アルキレングリコール系単量体(C)由来の構造単位(c)とを有する重合体、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系化合物、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系化合物、芳香族アミノスルホン酸塩系化合物、リグニンスルホン酸塩系化合物、ポリスチレンスルホン酸塩系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
該水硬性材料用添加剤は吹付けコンクリート用途に用いられることを特徴とする水硬性材料用添加剤。
【請求項2】
前記化合物(B)は、不飽和カルボン酸系単量体(B1)由来の構造単位(b1)を有する重合体であることを特徴とする請求項
1に記載の水硬性材料用添加剤。
【請求項3】
前記化合物(B)は、重量平均分子量が1000~500万であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の水硬性材料用添加剤。
【請求項4】
前記窒素原子含有単量体(A1)は、下記式(3)~(6);
【化1】
(式(3)~(6)中、R
2~R
4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す。Xは、直接結合又は2価の連結基を表す。式(3)及び(4)中、R
5、R
6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を表す。式(5)及び(6)中、R
7~R
9は、同一又は異なって、炭素数1~12の炭化水素基を表す。Y
-は、陰イオンを表す。)のいずれかで表される単量体;含窒素複素環基含有単量体;N-ビニルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の水硬性材料用添加剤。
【請求項5】
前記窒素含有化合物(A)は、アルキレン基とアミノ基とを有する構造単位、アリルアミン系単量体由来の構造単位、及び、ジアルキルアミン由来の構造単位からなる群より選択される少なくとも1種を有する重合体であることを特徴とする請求項1~
4のいずれかに記載の水硬性材料用添加剤。
【請求項6】
前記窒素含有化合物(A)は、ポリエチレンイミン、アリルアミン系単量体由来の構造単位を有する重合体、及び、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物由来の構造単位を有する重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~
5のいずれかに記載の水硬性材料用添加剤。
【請求項7】
前記水硬性材料用添加剤は、化合物(B)100質量%に対する窒素含有化合物(A)の割合が、0.1~200質量%であることを特徴とする請求項1~
6のいずれかに記載の水硬性材料用添加剤。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれかに記載の水硬性材料用添加剤と水硬性材料とを含むことを特徴とする水硬性材料組成物。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれかに記載の水硬性材料用添加剤を水硬性材料とともに施工面に吹き付けて使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性材料用添加剤に関する。より詳しくは、吹付モルタル・コンクリート等の用途に有用な水硬性材料用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの一次覆工や、岩盤斜面・法面の保護・補強、コンクリート構造物の補修・補強等の土木・建築工事では、コンクリート(モルタル)を施工面に吹付ける吹付工法が広く用いられている。吹付工法の中でも、例えば湿式法では、急結剤以外の材料(水硬性材料、骨材、水、水硬性材料用添加剤等)を混合した後、圧縮空気又はポンプでノズル(吐出口)まで圧送し、ノズルの直前で別のポンプで送られた急結剤と混合して施工面に吹付ける。吹付工法では、施工時に発生する粉塵が作業環境上問題となっており、従来、粉塵を低減する技術が開発されている。例えば特許文献1には、ポリ(メタ)アクリレート4級化物からなる粉塵低減剤が開示されている。特許文献2、3には、四級アンモニウム塩化合物を含有するセメントコンクリートを含む吹付け材料が開示されている。
特許文献4には、セメント重量比0.02%~0.5%の水溶液のカチオン性ポリマーを水に溶解し、これを吹付けに際しコンクリートに混合するコンクリート吹付け工法が開示されている。特許文献5には、所定の構造で表されるアクリル系単量体を重合させて得られる水溶性高分子化合物または所定の構造で表わされるアクリル系単量体とこれと共重合し得る他の単量体とを共重合させて得られる水溶性高分子化合物からなる吹付けコンクリート用粉塵低減剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-292359号公報
【文献】特開2011-46574号公報
【文献】特開2011-84440号公報
【文献】特開昭59-109663号公報
【文献】特開昭62-17057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のとおり、粉塵低減剤等の吹付工法に用いられる種々の水硬性材料用添加剤が開示されている。吹付工法では、粉塵を低減させることに加えて、施工面に吹付けた際のはね返りによるロス分(リバウンド量)を低減させるために、モルタル・コンクリート等におけるペースト分の骨材への高い粘着性が求められる。しかしながら従来の吹付工法に用いられる水硬性材料用添加剤は、水硬性材料組成物に用いた際のペースト分の骨材への粘着性と水硬性材料組成物の分散性の両立の点において充分ではなかった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、水硬性材料組成物に用いた際のペースト分の骨材への粘着性と水硬性材料組成物の分散性とをともに充分に発揮させることができる水硬性材料用添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、吹付工法に用いられる水硬性材料用添加剤について種々検討したところ、窒素原子の含有割合が特定の割合である窒素含有化合物とカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びこれらの塩の基並びにリン酸エステル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する化合物とを併用することにより、水硬性材料組成物に分散性を付与しつつ、ペースト分の骨材への粘着性を向上させることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、窒素含有化合物(A)を含む水硬性材料用添加剤であって、上記窒素含有化合物(A)は、窒素含有化合物(A)100質量%に対する窒素原子の含有割合が6.8質量%以上であり、上記水硬性材料用添加剤は更にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びこれらの塩の基並びにリン酸エステル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する化合物(B)を含み、吹付けコンクリート用途に用いられる水硬性材料用添加剤である。
【0008】
上記化合物(B)は、不飽和カルボン酸系単量体(B1)、スルホン酸系単量体(B2)及びリン酸系単量体(B3)からなる群より選択される少なくとも1種由来の構造単位を有する重合体であることが好ましい。
【0009】
上記不飽和カルボン酸系単量体(B1)は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、2-メチル-2-ペンテン酸、α-ヒドロキシアクリル酸、及び、これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、及び、これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩、これらの無水物、これらの不飽和ジカルボン酸と炭素数1~22のアルコール又は炭素数2~4のグリコールとのハーフエステル、これらの不飽和ジカルボン酸と炭素数1~22のアミンとのハーフアミドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
上記化合物(B)は、不飽和カルボン酸系単量体(B1)由来の構造単位(b1)を有する重合体であることが好ましい。
【0011】
上記化合物(B)は、更に(ポリ)アルキレングリコール系単量体(C)由来の構造単位(c)を有することが好ましい。
【0012】
上記化合物(B)は、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系化合物、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系化合物、芳香族アミノスルホン酸塩系化合物、リグニンスルホン酸塩系化合物、ポリスチレンスルホン酸塩系化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
上記化合物(B)は、重量平均分子量が1000~500万であることが好ましい。
【0014】
上記窒素含有化合物(A)は、アルキレン基とアミノ基とを有する構造単位及び/又は窒素原子の含有割合が6.8質量%以上である窒素原子含有単量体(A1)由来の構造単位(a1)を有する重合体であることが好ましい。
【0015】
上記窒素原子含有単量体(A1)は、下記式(3)~(6);
【0016】
【0017】
(式(3)~(6)中、R2~R4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す。Xは、直接結合又は2価の連結基を表す。式(3)及び(4)中、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を表す。式(5)及び(6)中、R7~R9は、同一又は異なって、炭素数1~12の炭化水素基を表す。Y-は、陰イオンを表す。)のいずれかで表される単量体;含窒素複素環基含有単量体;N-ビニルホルムアミドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
上記窒素含有化合物(A)は、アルキレン基とアミノ基とを有する構造単位、アリルアミン系単量体由来の構造単位、及び、ジアルキルアミン由来の構造単位からなる群より選択される少なくとも1種を有する重合体であることが好ましい。
【0019】
上記窒素含有化合物(A)は、ポリエチレンイミン、アリルアミン系単量体由来の構造単位を有する重合体、及び、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物由来の構造単位を有する重合体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
上記窒素含有化合物(A)は、重量平均分子量が1000~500万であることが好ましい。
【0021】
上記水硬性材料用添加剤は、化合物(B)100質量%に対する窒素含有化合物(A)の割合が、0.1~200質量%であることが好ましい。
【0022】
本発明はまた、上記水硬性材料用添加剤と水硬性材料とを含む水硬性材料組成物でもある。
【0023】
本発明は更に、上記水硬性材料用添加剤を水硬性材料とともに施工面に吹き付けて使用する方法でもある。
【発明の効果】
【0024】
本発明の水硬性材料用添加剤は、上述の構成よりなり、水硬性材料組成物に分散性を付与しつつ、ペースト分の骨材への粘着性を向上させることができるため、吹付モルタル・コンクリート等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0026】
本発明の水硬性材料用添加剤は、窒素含有化合物(A)とカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びこれらの塩の基並びにリン酸エステル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する化合物(B)(以下、化合物(B)ともいう。)とを含む。化合物(B)におけるアニオン性(酸性)基とカチオン性(塩基性)の窒素含有化合物(A)とが静電的に相互作用することによりセメント粒子を弱く凝集させ、水硬性材料組成物に粘着性を付与することができると推定される。また、上記アニオン性基を有する化合物(B)がセメント粒子の分散性に寄与するため、水硬性材料組成物は分散性に優れたものとなる。更に、上記窒素含有化合物(A)は、水硬性材料組成物に粘着性を付与しつつ、水硬性材料組成物の塑性粘度の増加を抑制することができるため、水硬性材料組成物は吹き付けの際のポンプ圧送性(水硬性材料組成物の配管通過性)への影響も充分に抑制することができる。
【0027】
<窒素含有化合物(A)>
窒素含有化合物(A)は、窒素含有化合物(A)100質量%に対する窒素原子の含有割合が6.8質量%以上である。好ましくは7~70質量%であり、より好ましくは8~50質量%であり、更に好ましくは8.5~35質量%である。窒素原子の含有割合が上記好ましい範囲であれば水硬性材料組成物の粘着性をより向上させることができる。
窒素含有化合物(A)における窒素原子の含有割合は、化合物の組成式から算出することができるが、組成式が不明である等の場合には元素分析により測定することもできる。
【0028】
上記窒素含有化合物(A)の重量平均分子量として1000~500万が好適であり、好ましくは1000~100万である。
これにより、水硬性材料組成物の粘着性をより向上させることができる。
より好ましくは3000~80万であり、更に好ましくは5000~70万であり、一層好ましくは1万~60万であり、更に一層好ましくは5万~50万であり、特に好ましくは10万~40万である。
また、コストパフォーマンスの観点から、重量平均分子量が5000~500万であることも好ましい。より好ましくは5万~300万であり、更に好ましくは10万~300万であり、特に好ましくは20万~200万であり、最も好ましくは30万~100万である。
窒素含有化合物(A)の重量平均分子量は、下記の方法により測定した値である。
<分子量測定法>
本発明における重量平均分子量および数平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にてプルランを標準物質とした公知の方法で測定できる。GPCの測定条件として、本発明では、以下の条件を採用するものとする。
測定装置;島津製作所社製
使用カラム;昭和電工社製 SHODEX OHpak SB-807HQ(2本)+SB-806M/HQ(2本)
溶離液;0.5モル%-硝酸ナトリウム、0.5モル%-酢酸に調製したもの
標準物質;プルランP-82(和光純薬社製)
検出器;示唆屈折計(島津製作所社製)
流速;0.4ml/min.
【0029】
上記窒素含有化合物(A)としては、窒素原子の含有割合が上記範囲を満たすものであれば特に制限されないが、例えば、ポリアルキレンイミン及びその誘導体;窒素原子の含有割合が6.8質量%以上である窒素原子含有単量体(A1)由来の構造単位(a1)を有する重合体(α1)(以下、重合体(α1)ともいう。)、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物由来の構造単位を有する重合体等が挙げられる。
【0030】
上記ポリアルキレンイミンは、アルキレン基とアミノ基とを有する構造単位を有していればよく、下記式(1)及び/又は(2);
【0031】
【0032】
(式中、R1は、同一又は異なって、炭素原子数2~6のアルキレン基を表す。)で表される構造単位を有するものであればよい。
上記アルキレン基として具体的にはエチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、n-ヘキシレン基等が挙げられる。
上記アルキレン基の炭素数として好ましくは2~4であり、更に好ましくは2~3であり、最も好ましくは2である。
【0033】
上記ポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリブチレンイミン等が挙げられ、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2-ブチレンイミン、2,3-ブチレンイミン、1,1-ジメチルエチレンイミン等の炭素原子数2~6のアルキレンイミンの1種又は2種以上を通常用いられる方法により重合して得ることができる。
【0034】
上記ポリアルキレンイミン誘導体は、窒素原子の含有割合及び重量平均分子量が上記範囲を満たすものであれば特に制限されず、例えば、ポリアルキレンイミンのアミノ基を4級化した化合物やポリアルキレンイミンが有するアミノ基やアルキレン基に置換基を導入した化合物等が挙げられる。
上記アミノ基の4級化に用いられる4級化剤としては特に制限されないが、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ-n-プロピル等のアルキル硫酸等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
上記置換基としては、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アシル基、スルホン酸基、リン酸基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基等が挙げられる。
【0035】
上記窒素原子含有単量体(A1)としては窒素原子の含有割合が窒素含有化合物(A)100質量%に対して6.8質量%以上となるものであれば特に制限されないが、単量体(A1)100質量%に対する窒素原子の含有割合が6.8質量%以上であることが好ましい。窒素原子含有単量体(A1)としては具体的には例えば下記式(3)~(6);
【0036】
【0037】
(式(3)~(6)中、R2~R4は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す。Xは、直接結合又は2価の連結基を表す。式(3)及び(4)中、R5、R6は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基を表す。式(5)及び(6)中、R7~R9は、同一又は異なって、炭素数1~12の炭化水素基を表す。Y-は、陰イオンを表す。)のいずれかで表される単量体;イミダゾール基、ピラゾール基、イミダゾリン基、トリアゾール基、テトラゾール基、ピリダジン基、ピリミジン基、ピラジン基、プリン基、ベンゾトリアゾール基、プテリジン基等の含窒素複素環基含有単量体;N-ビニルホルムアミド等が挙げられる。
【0038】
上記式(3)~(6)におけるR2~R4は、水素原子又はメチル基を表すが、R2、R3は、水素原子であることが好ましい。上記式(3)~(5)において、R4は水素原子又はメチル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましく、上記式(6)において、R4は水素原子が好ましい。
【0039】
上記R5~R9における炭化水素基は、鎖状構造であっても、環構造を有していてもよいが、鎖状構造であることが好ましい。炭化水素基が鎖状構造である場合、直鎖状であっても分岐を有していてもよい。
上記炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基が好ましく、より好ましくはアルキル基、アルケニル基であり、更に好ましくはアルキル基である。
また、上記炭化水素基の炭素数としては、1~10が好ましく、より好ましくは1~8であり、特に好ましくは1~5であり、最も好ましくは1~2である。
上記式(3)及び(4)において、R5及びR6のうち少なくともいずれか一方は、炭素数1~12の炭化水素基であることが好ましく、R5及びR6の両方が炭素数1~12の炭化水素基であることがより好ましい。すなわち、第1~3級アミノ基の中でも、第3級アミノ基が好ましい。
【0040】
上記式(4)~(6)におけるY-は、特に制限されないが、例えば、水酸化物イオン;塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲン化物イオン;硫酸ジメチルイオン、硫酸ジエチルイオン、硫酸ジ-n-プロピルイオン等の硫酸アルキルイオン;酢酸イオン等の有機酸のイオン等が挙げられる。
上記式(4)におけるY-は、有機酸のイオンが好ましい。
上記式(5)又は(6)におけるY-は、水酸化物イオン;ハロゲン化物イオン、硫酸アルキルイオンが好ましい。
【0041】
上記式(3)~(6)における2価の連結基としては、特に制限されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1~12のアルキレン基、下記式(7);
【0042】
【0043】
(式中、hは、0又は1である。iは、0~12の整数を表す。)、下記式(8);
【化5】
【0044】
(式中、jは、0~4の整数を表す。)及び下記式(9);
【0045】
【0046】
(式中、kは、1~10の整数を表す。)で表される構造等が挙げられる。
上記式(7)におけるhは1であることが好ましく、iは、1~6であることが好ましく、より好ましくは1~4である。
上記式(8)におけるjは、1~4であることが好ましく、より好ましくは1~2である。
上記式(9)におけるkは、1~8であることが好ましく、より好ましくは1~5である。
【0047】
上記式(3)~(5)におけるXとしては、炭素数1~12のアルキレン基、上記式(7)又は(9)で表される構造が好ましい。
上記式(6)におけるXとして好ましくは炭素数1~12のアルキレン基又は上記式(7)においてhが1である構造である。
上記アルキレン基の炭素数として好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4であり、更に好ましくは1又は2である。上記Xがメチレン基であって、R2及びR3が水素原子、R4が水素原子又はメチル基である場合、上記式(3)~(6)のいずれかで表される単量体は、(メタ)アリル基とアミノ基とを有するアリルアミン系単量体となる。
一方、上記Xが上記式(7)においてhが1である構造であって、R2及びR3が水素原子、R4が水素原子又はメチル基である場合、上記式(3)~(6)のいずれかで表される単量体は、(メタ)アクリレート基とアミノ基とを有するアミノ基含有(メタ)アクリレート系単量体となる。窒素原子含有単量体(A1)がアリルアミン系単量体及び/又はアミノ基含有(メタ)アクリレート系単量体である形態は本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0048】
上記式(3)~(6)のいずれかで表される単量体として具体的には、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のN,N-ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及び上記モノマーに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物;アクリルアミド及びその誘導体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及び上記モノマーに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物;モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-(tert-ブチルアミノ)エチル等のモノアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物;モノメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、モノエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、モノメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、モノエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のモノアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物;(メタ)アクリル酸-2-アミノエチル等の(メタ)アクリル酸とアルカノールアミンとのエステル類及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物;N,N-ジアリルアルキルアミン、及び、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド等の、これに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸、酢酸等の酸による中和物;1-アリルオキシ-3-ジブチルアミノ-2-オール、1-アリルオキシ-3-ジエタノールアミノ-2-オール等の炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体と炭素数1~24のアミン化合物との付加反応物及びこれに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸、酢酸等の酸による中和物等;ビニルアミン、アリルアミン、N-メチルビニルアミン、1-プロペン-2-アミン及びこれらに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸、酢酸等の酸による中和物等が挙げられる。
【0049】
上記炭素数1~24のアミン化合物は、アミノ基を有し、炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体の環状エーテル構造と反応することができる限り特に制限されない。炭素数1~24のアミン化合物の炭素数は、1~20が好ましく、1~16がより好ましい。炭素数1~24のアミン化合物としては、第1級アミン、第2級アミンが挙げられ、例えば、炭素数1~24の(モノ、ジ)アルキルアミン、炭素数1~24の(モノ、ジ)アルカノールアミン、炭素数1~24のアルキルアルカノールアミン等が挙げられる。
炭素数1~24の(モノ、ジ)アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン等が好ましい。
炭素数1~24の(モノ、ジ)アルカノールアミンとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン、ヘキサノールアミン等が好ましい。
炭素数1~24のアルキルアルカノールアミンとしては、メチルエタノールアミン等が好ましい。
【0050】
上記式(3)~(6)のいずれかで表される単量体の中でも、好ましくは、N,N-ジアリルメチルアミン及びこれに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸、酢酸等の酸による中和物、N,N-ジアルキルアミノ基等のジアルキルアミン由来の構造単位を有する単量体(ジアルキルアミン含有単量体)、すなわち、N,N-ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物やこれらに4級化剤を付加させたモノマー、N,N-ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリルアミド類及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物やこれらに4級化剤を付加させたモノマーであり、より好ましくはN,N-ジアリルメチルアミン及びこれに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸、酢酸等の酸による中和物、N,N-ジアルキルアミノ基含有(メタ)アクリレート類及びこれらの塩酸、酢酸等の酸による中和物やこれらに4級化剤を付加させたモノマーである。
上記4級化剤としては、特に制限されるものではないが、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ-n-プロピル等のアルキル硫酸等の一般的なアルキル化剤が挙げられる。
【0051】
上記含窒素複素環基含有単量体としては、例えば、ビニルイミダゾール、ビニルピラゾール、ビニルイミダゾリン、ビニルトリアゾール、ビニルテトラゾール、ビニルピリダジン、ビニルピリミジン基、ビニルピラジン、ビニルプリン、ビニルベンゾトリアゾール、ビニルプテリジン等が挙げられる。
【0052】
上記N-ビニルホルムアミドとアクリロニトリルとを共重合後、加水分解することによってポリアミジン系重合体が得られ、上記窒素含有化合物(A)として用いることができる。
【0053】
上記窒素原子含有単量体(A1)由来の構造単位(a1)を有する重合体(α1)としては、窒素原子の含有割合及び重量平均分子量が上記範囲を満たすものであれば特に制限されず、窒素原子含有単量体(A1)の単独重合体であっても、2種以上の窒素原子含有単量体(A1)の共重合体や、窒素原子含有単量体(A1)以外のその他の単量体(E)との共重合体であってもよい。
【0054】
上記その他の単量体(E)としては特に制限されないが、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、2-メチレングルタル酸、及びこれらの塩等のカルボキシル基含有単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α-ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等の(メタ)アクリル酸の炭素数1~18のアルキル基のエステルである、アルキル(メタ)アクリレート類;
【0055】
酢酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;スチレン等の芳香族ビニル系単量体類;マレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体類;3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体及びこれらの塩;ビニルホスホン酸、(メタ)アリルホスホン酸等のホスホン酸基を有する単量体;(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール等のその他官能基含有単量体類;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、モノアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドが1~300モル付加した構造を有する単量体等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体;等が挙げられる。これらのその他の単量体についても、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
上記ジアルキルアミン由来の構造単位を有する重合体としては、ジアルキルアミン含有単量体由来の構造単位を有する重合体の他、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物が挙げられる。ジアルキルアミン由来の構造単位を有する重合体としては、エポキシ化合物とアミン化合物との反応物が好ましい。エポキシ化合物とアミン化合物との反応物の原料として用いられるエポキシ化合物としては、エピハロヒドリンが好ましく、エピハロヒドリンとしては、特に制限されないが、例えばエピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、2-メチルエピクロロヒドリン、2-メチルエピブロモヒドリン、2-エチルエピクロロヒドリン等が挙げられる。好ましくはエピクロロヒドリンである。
【0057】
上記エポキシ化合物とアミン化合物との反応物の原料として用いられるアミン化合物としては、アルキル基含有アミン化合物が好ましく、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基を有するジアルキルアミンであり、特に好ましくは炭素数1~2のアルキル基を有するジアルキルアミンであり、最も好ましくはジメチルアミンである。
【0058】
上記重合体(α1)における構造単位(a1)の割合は、窒素原子の含有割合が重合体(α1)100質量%に対して6.8質量%以上であれば特に制限されないが、全構造単位100質量%に対して50~100質量%であることが好ましい。より好ましくは60~100質量%であり、更に好ましくは70~100質量%であり、特に好ましくは80~100質量%である。
【0059】
上記重合体(α1)におけるその他の単量体(E)由来の構造単位(e)の割合としては窒素原子の含有割合が重合体(α1)100質量%に対して6.8質量%以上となる範囲であれば特に制限されないが、全構造単位100質量%に対して0~50質量%であることが好ましい。より好ましくは0~40質量%であり、更に好ましくは0~30質量%であり、特に好ましくは0~20質量%である。
【0060】
上記窒素原子含有単量体(A1)由来の構造単位を有する重合体の製造方法は特に制限されないが、窒素原子含有単量体(A1)を含む単量体成分を通常用いられる方法により重合することにより得ることができる。
【0061】
上記窒素含有化合物(A)としては、アルキレン基とアミノ基とを有する構造単位を有する重合体、アリルアミン系単量体及び/又はアミノ基含有(メタ)アクリレート系単量体由来の構造単位を有する重合体、エピハロヒドリン等のエポキシ化合物とアミン化合物との反応物由来の構造単位を有する重合体が好ましい。より好ましくはポリアルキレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリエピクロロヒドリンジメチルアミン(ポリ-2ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロライド)であり、更に好ましくはポリエチレンイミンである。窒素含有化合物(A)がポリエチレンイミンである形態は本発明の好適な実施形態の1つである。
上記アミン化合物として好ましくは上述のアルキル基含有アミン化合物である。
【0062】
<化合物(B)>
上記化合物(B)は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びこれらの塩の基並びにリン酸エステル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する化合物である。上記官能基の中でも好ましくはカルボキシル基及びこの塩の基である。
上記塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属等の1価金属塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属等の2価金属塩;アンモニウム塩;有機アミン塩等が挙げられる。
【0063】
上記化合物(B)は、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びこれらの塩の基並びにリン酸エステル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する単量体由来の構造単位を有する重合体であることが好ましい。すなわち、上記化合物(B)は、不飽和カルボン酸系単量体(B1)、スルホン酸系単量体(B2)及びリン酸系単量体(B3)からなる群より選択される少なくとも1種由来の構造単位を有する重合体であることが好ましい。
【0064】
上記不飽和カルボン酸系単量体(B1)は、カルボキシル基及び/又はその塩の基とエチレン性不飽和炭化水素基(不飽和基)を有するものであれば、特に制限されないが、不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体等が挙げられる。
【0065】
不飽和モノカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基とカルボアニオンを形成しうる基とを1つずつ有する単量体であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、チグリン酸、3-メチルクロトン酸、2-メチル-2-ペンテン酸、α-ヒドロキシアクリル酸等;これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;下記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアルコール又は炭素数2~4のグリコールとのハーフエステル;不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1~22のアミンとのハーフアミド等が挙げられる。
【0066】
不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基を1つとカルボアニオンを形成しうる基を2つとを有する単量体であればよく、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、それらの無水物が挙げられる。
上記不飽和カルボン酸系単量体(B1)としては、(メタ)アクリル酸(塩)、マレイン酸(塩)又は無水マレイン酸が好ましい。より好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)であり、特に好ましくはメタクリル酸(塩)である。
【0067】
上記スルホン酸系単量体(B2)は、スルホン酸基及び/又はその塩の基を有するものであれば、特に制限されないが、スルホン酸基及び/又はその塩の基として、-SO3Z(Zは、水素原子、1価金属原子、2価金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。)で表される基を、1分子中に1個又は2個以上有するものが好ましい。
【0068】
スルホン酸系単量体(B2)としては、例えば、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、メタリルオキシベンゼンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2-メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホブチル(メタ)アクリレート等の不飽和スルホン酸系単量体(B2-1)、スルホン酸基を有するモノリグノール、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、アントラセンスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸、メラミンスルホン酸、アミノアリールスルホン酸、並びに、これらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0069】
リン酸系単量体(B3)は、リン酸(塩)基及び/又はリン酸エステル基を有するものであれば、特に制限されないが、下記式(10);
-OPO3M2 (10)
(式中、Mは、同一又は異なって、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、三価金属原子、有機アミン基、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。)で表される基を、1分子中に1個又は2個以上有するものが好ましい。置換基を有していてもよい炭化水素基としては特に制限されないが、例えば後述する芳香族アルコール類及びキノン類由来の基が挙げられる。
上記Mとしては、水素原子、一価金属原子又は二価金属原子が好ましく、より好ましくは一価金属原子であり、更に好ましくはナトリウムである。
【0070】
上記リン酸系単量体(B3)は、構造中に更に芳香族基及び/又は複素環式芳香族基を有することが好ましい。
上記芳香族基は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン等の芳香族化合物由来の芳香環を有する基(芳香族化合物から水素原子を引き抜いて得られる基)であればよく、置換基を有していてもよい。
上記複素環式芳香族基は、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の複素環式芳香族化合物由来の複素環式芳香環を有する基(複素環式芳香族化合物から水素原子を引き抜いて得られる基)であればよく、置換基を有していてもよい。
上記リン酸系単量体(B3)としては芳香族化合物由来の芳香環族基を有するリン酸系単量体(B3-1)が好ましく、より好ましくはアリール基を有するものである。
【0071】
上記リン酸系単量体(B3-1)としては、下記式(11);
【0072】
【0073】
(式中、Mは、同一又は異なって、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、三価金属原子、有機アミン基、又は、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。Q1は、直接結合又は2価の連結基を表す。R10は、水素原子、又は、リン酸塩基及びリン酸エステル基以外の置換基を表す。)で表される構造単位を有するものであることがより好ましい。
上記Q1-OPO3M2、R10の結合位置及び結合数は特に制限されず、これらを複数有していてもよい。
【0074】
上記Q1は、2価の連結基であれば特に制限されないが、ヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基であることが好ましい。より好ましくは(ポリ)オキシアルキレン基である。オキシアルキレン基の具体例及び好ましい例としては、後述する式(13)における炭素数2~18のオキシアルキレン基と同様のものが挙げられ、最も好ましくはオキシエチレン基である。(ポリ)オキシアルキレン基の平均付加モル数は、1~10が好ましく、より好ましくは1~5であり、更に好ましくは1~2であり、最も好ましくは1である。
【0075】
上記R10の置換基としては、炭素数1~10のアルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、アシル基、エーテル基、アミド基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、スルホン酸基、スルホン酸基の塩、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有基等が挙げられる。
【0076】
上記リン酸系単量体(B3-1)として具体的には、例えば、フェノキシエタノール、フェノキシジグリコール、(メトキシフェノキシ)エタノール、メチルフェノキシエタノール、ビス(β-ヒドロキシエチル)ヒドロキノンエーテル、ノニルフェノール、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ナフトール、及び、フルフリルアルコール等の芳香族アルコール類及びキノン類のリン酸化物が挙げられる。
上記リン酸化物として具体的にはフェノキシエタノールホスフェート、フェノキシジグリコールホスフェート、(メトキシフェノキシ)エタノールホスフェート、メチルフェノキシエタノールホスフェート、ビス(β-ヒドロキシエチル)ヒドロキノンエーテルホスフェート、ビス(β-ヒドロキシエチル)ヒドロキノンエーテルジホスフェート、及び、ノニルフェノールホスフェート等が挙げられる。
中でも好ましくは、フェノキシエタノールホスフェート、フェノキシジグリコールホスフェート、ビス(β-ヒドロキシエチル)ヒドロキノンエーテルジホスフェートであり、より好ましくは、フェノキシエタノールホスフェートである。
上記芳香族アルコール類及びキノン類のリン酸化には、リン酸(塩)やポリリン酸(塩)等のリン酸化合物を用いることが好ましい。
【0077】
上記化合物(B)がリン酸エステル基を有する単量体由来の構造単位を有する重合体である場合、更に(ポリ)アルキレングリコール鎖と芳香環族基及び/又は複素環式芳香族基とを有する単量体(以下、(ポリ)アルキレングリコール鎖含有単量体ともいう)由来の構造単位を有するものであることが好ましい。
(ポリ)アルキレングリコール鎖含有単量体として具体的には上述の芳香族アルコール;アニリン等の芳香族アミンにアルキレンオキシドを付加させた化合物が挙げられる。好ましくは、フェノール、クレゾール、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ナフトール、及び、フルフリルアルコール等の芳香族アルコール類にアルキレンオキシドを付加させた化合物である。
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖含有単量体由来の構造単位の中でも、下記式(12);
【0078】
【0079】
(式中、Q2は、直接結合又は2価の連結基を表す。R11は、水素原子、又は、リン酸塩基及びリン酸エステル基以外の置換基を表す。R12Oは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。R13は、水素原子又は炭素数1~30の炭化水素基を表す。mは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~300の数である。)で表される構造単位を有するものであることが好ましい。
【0080】
上記Q2における2価の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、-NH-、ヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基等が挙げられる。ヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基は、上記式(11)のQ1におけるヘテロ原子を有していてもよい2価の炭化水素基と同様である。Q2として好ましくは酸素原子、-NH-であり、より好ましくは酸素原子である。
R13における炭素数1~30の炭化水素基は、後述する式(13)のR17における炭素数1~30の炭化水素基と同様である。
R13としては水素原子が好ましい。
R12Oで表されるオキシアルキレン基の好ましい形態は後述する式(13)のAOにおけるオキシアルキレン基と同様である。
mとして好ましくは5~280であり、より好ましくは5~160であり、更に好ましくは9~120である。
【0081】
上記(ポリ)アルキレングリコール鎖と芳香環族基及び/又は複素環式芳香族基とを有する単量体としては、例えば2-フェノキシエタノール、フェノキシポリエチレングリコール等が好ましい。
【0082】
上記リン酸エステル基を有する単量体由来の構造単位を有する重合体は、上記式(11)で表される構造単位と式(12)で表される構造単位とを有するものであることが好ましい。この場合、式(11)で表される構造単位と式(12)で表される構造単位とのモル比(式(11)/式(12))は、0.3~4であることが好ましい。より好ましくは0.4~3.5であり、更に好ましくは0.45~3である。
【0083】
上記リン酸エステル基を有する単量体由来の構造単位を有する重合体は、上記式(11)及び(12)で表される構造単位がアルデヒド化合物由来の2価の連結基により結合していることが好ましい。単量体由来の構造単位がアルデヒド化合物由来の2価の連結基により結合した縮合物である。
上記アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール等の炭素数1~5のアルキル基とアルデヒド基とを有する化合物:グリオキシル酸、ベンズアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。好ましくはホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、パラホルムアルデヒドであり、最も好ましくはホルムアルデヒドである。
【0084】
上記リン酸系単量体(B3)由来の構造単位を有する重合体は、構造中に芳香族基又は複素環式芳香族基を有しないものであってもよく、例えば、リン酸(塩)基及び/又はリン酸エステル基とエチレン性不飽和炭化水素基(不飽和基)とを有する不飽和リン酸系単量体(B3-2)由来の構造単位を有するものであってもよい。不飽和リン酸系単量体(B3-2)としては、例えば、不飽和カルボン酸と1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物とのエステル化物と、リン酸とのエステル化物が好適である。具体的には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートとリン酸とのエステル化物;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとリン酸とのエステル化物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0085】
不飽和カルボン酸系単量体(B1)、スルホン酸系単量体(B2)及びリン酸系単量体(B3)の中でも好ましくは不飽和カルボン酸系単量体(B1)である。上記化合物(B)は、不飽和カルボン酸系単量体(B1)由来の構造単位(b1)を有する重合体であることが好ましい。
【0086】
上記化合物(B)が不飽和カルボン酸系単量体(B1)、不飽和スルホン酸系単量体(B2-1)及び不飽和リン酸系単量体(B3-2)からなる群より選択する少なくとも1種由来の構造単位(b)を有する場合、更に下記式(13);
【0087】
【0088】
(式中、R14、R15及びR16は、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。R17は、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。(AO)は、同一又は異なって、オキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~500の数である。pは、0~4の数を表す。qは、0又は1を表す。)で表される(ポリ)アルキレングリコール系単量体(C)由来の構造単位(c)を有することが好ましい。
【0089】
上記式(13)中、AOは、「同一又は異なって、」オキシアルキレン基を表すが、これは、ポリアルキレングリコール中にn個存在するAOのオキシアルキレン基が全て同一であってもよく、異なっていてもよいことを意味する。
上記式(13)におけるnは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1~500の数であり、好ましくは2~300であり、より好ましくは3~250であり、更に好ましくは10~150であり、特に好ましくは20~80である。
オキシアルキレン基を構成するアルキレン基の炭素数は2~18であることが好ましい。より好ましくは2~10であり、更に好ましくは2~8であり、特に好ましくは2~4である。
【0090】
上記(AO)nで表される(ポリ)オキシアルキレン基は、アルキレンオキシド付加物であり、アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。中でも好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2~4のアルキレンオキシドであり、より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
【0091】
上記(ポリ)オキシアルキレン基が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物である場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、ポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン基として、オキシエチレン基を必須成分として有することが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましい。
【0092】
上記式(13)におけるR14~R16は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。好ましくはR14、R15が水素原子であって、R16が水素原子又はメチル基である。より好ましくは、R14、R15が水素原子であって、R16がメチル基である。
【0093】
上記式(13)中、pは、0~4の数を表し、qは、0又は1を表すが、qが0の場合には、pは1又は2であることが好ましい。この場合、R16はメチル基であることがより好ましい。
上記qが1の場合には、pは0であることが好ましい。この場合、R16は水素原子、又は、メチル基であることがより好ましい。
上記pが0、qが0の場合、炭素-炭素2重結合に結合している酸素原子に最初に結合するAOは炭素数が4であるオキシアルキレン基が好ましい。
上記pは、0であることが好ましく、pが0であり、かつ、qが1である形態は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0094】
上記式(13)におけるR17は、水素原子、又は、炭素数1~30の炭化水素基を表す。好ましくは炭素数1~20の炭化水素基又は水素原子であり、より好ましくは、水素原子又は炭素数1~18の炭化水素基、更に好ましくは、水素原子又は炭素数1~12の炭化水素基、特に好ましくは、水素原子又は炭素数1~8の炭化水素基、最も好ましくは、炭素数1~3の炭化水素基である。
【0095】
上記炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、3-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イソオクチル基、2,3,5-トリメチルヘキシル基、4-エチル-5-メチルオクチル基及び2-エチルヘキシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖または分岐鎖のアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチル等の環状のアルキル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、o-,m-若しくはp-トリル基、2,3-若しくは2,4-キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ベンズヒドリル基、トリチル基及びピレニル基等のアリール基等が挙げられる。これらの中でも、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が好ましい。
【0096】
上記(ポリ)アルキレングリコール系単量体(C)としては、具体的には例えば、(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等;ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オールのいずれかにアルキレンオキシドを1~500モル付加した化合物であり、より好ましくは、3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)、(メタ)アリルアルコールにアルキレンオキシドを1~500モル付加した化合物である。なお、上記例示中の「アルキレンオキシド」は、好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。中でも好ましくは、3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)、(メタ)アリルアルコールにアルキレンオキシドを1~500モル付加した化合物である。
【0097】
上記化合物(B)は、構造単位(b)の割合が、全構造単位100質量%に対して1~90質量%であることが好ましい。より好ましくは3~80質量%であり、更に好ましくは5~50質量%であり、特に好ましくは7~20質量%である。
【0098】
上記化合物(B)は、構造単位(c)の割合が、全構造単位100質量%に対して10~99質量%であることが好ましい。より好ましくは20~97質量%であり、更に好ましくは50~95質量%であり、特に好ましくは80~93質量%である。
【0099】
上記化合物(B)は、重量平均分子量が1000~100万であることが好ましい。より好ましくは5000~10万であり、更に好ましくは7500~7万であり、特に好ましくは1万~4万である。化合物(B)がリン酸系単量体(B3)由来の構造単位を有する重合体である場合、重量平均分子量は3000~10万であることが好ましい。
上記重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0100】
上記化合物(B)がカルボキシル基及び/又はこの塩の基を有する化合物である場合、上記不飽和カルボン酸系単量体(B1)由来の構造単位(b1)と(ポリ)アルキレングリコール系単量体(C)由来の構造単位(c)とを有する共重合体が好ましい。
【0101】
上記化合物(B)がスルホン酸基及び/又はこの塩の基を有する化合物である場合、具体的には、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸塩系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸塩系化合物;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系化合物;ポリスチレンスルホン酸塩系化合物等が挙げられる。
【0102】
上記化合物(B)が、リン酸基、この塩の基及びリン酸エステル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する化合物である場合、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、リン酸モノエステル系単量体、及び、リン酸ジエステル系単量体から得られる共重合体等の、分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とリン酸エステル基とを有する共重合体;(ポリ)オキシアルキレン基と芳香環族基及び/又は複素環式芳香族基とを有する単量体、リン酸(塩)基及び/又はリン酸エステル基と芳香環族基及び/又は複素環式芳香族基とを有する単量体、およびアルデヒド化合物からなる重縮合生成物;芳香族トリアジン構造単位、ポリアルキレングリコール構造単位、およびリン酸エステル構造単位を有する重合体等が挙げられる。
【0103】
本発明の水硬性材料用添加剤は、上記窒素含有化合物(A)及び化合物(B)を含むものであり、これらの含有割合は特に制限されないが、化合物(B)100質量%に対して窒素含有化合物(A)の割合は、0.1~200質量%であることが好ましい。これにより水硬性材料組成物の粘着性をより向上させることができる。より好ましくは0.1~100質量%であり、更に好ましくは0.5~50質量%であり、一層好ましくは1~20質量%であり、特に好ましくは2~10質量%である。
上記化合物(B)がカルボキシル基及び/又はこの塩の基を有する化合物、及び/又は、リン酸基、この塩の基及びリン酸エステル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する化合物である場合、化合物(B)100質量%に対して窒素含有化合物(A)の割合は、0.1~180質量%であることが好ましい。より好ましくは0.3~100質量%であり、更に好ましくは0.5~40質量%であり、一層好ましくは1~30質量%であり、特に好ましくは2~20質量%である。
上記化合物(B)がスルホン酸基及び/又はこの塩の基を有する化合物である場合、化合物(B)100質量%に対して窒素含有化合物(A)の割合は、1~100質量%であることが好ましい。より好ましくは5~50質量%であり、更に好ましくは10~30質量%である。
なお、化合物(B)が、(i)カルボキシル基及びこの塩の基、(ii)スルホン酸基及びこの塩の基、(iii)リン酸基、この塩の基及びリン酸エステル基において、(i)~(iii)の2種以上の基を有する場合、例えば、カルボキシル基とスルホン酸基とを有する場合、これらの基の割合が多い方の化合物に分類するものとする。
【0104】
上記カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びこれらの塩の基並びにリン酸エステル基からなる群より選択される少なくとも1種を有する単量体由来の構造単位を有する重合体の製造方法は特に制限されないが、これらの単量体を含む単量体成分を通常用いられる方法により重合することにより得ることができる。
【0105】
<水硬性材料用添加剤及び水硬性材料組成物>
本発明の水硬性材料用添加剤は、上記窒素含有化合物(A)及び化合物(B)を含むものであり、化合物(A)及び化合物(B)をそれぞれ2種以上含んでいてもよい。上記水硬性材料用添加剤における上記化合物(A)の含有量(2種以上の化合物(A)及び化合物(B)を含む場合は、その総含有量)は、特に制限されないが、水硬性材料用添加剤中の固形分(すなわち不揮発分)100質量%中、5~90質量%であることが好ましい。より好ましくは20~90質量%、更に好ましくは30~75質量%である。
なお、本明細書中、「水硬性材料用添加剤」とは、セメントペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性材料組成物へ添加される添加剤のことをいい、上記窒素含有化合物(A)のみからなる剤であってもよいし、また、上記窒素含有化合物(A)及び化合物(B)だけでなく、必要に応じて更に後述するその他の添加剤等を含む剤であってもよい。
なお、本発明の水硬性材料用添加剤において、下記(1)、(2)のいずれも含まない形態も本発明の実施形態の1つである。
(1)ポリジメチルアンモニウムクロライド(製品コード522376 SIGMA-ALDRICH社製)をセメントに対して0.01重量%含み、減水剤としてポリカルボン酸共重合体(3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール:アクリル酸=87:13(質量比)、重量平均分子量19000)を含むもの。
(2)ポリ-2ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロライド(四日市合成(株)製)をセメントに対して0.01重量%含み、減水剤としてポリカルボン酸共重合体(3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキサイドを50モル付加した不飽和アルコール:アクリル酸=87:13(質量比)、重量平均分子量19000)を含むもの。
【0106】
本発明の水硬性材料用添加剤は、水硬性材料を含む水硬性材料組成物に用いられることが好ましい。すなわち、水硬性材料用添加剤と水硬性材料とを含む水硬性材料組成物もまた、本発明の1つである。上記水硬性材料組成物が更に骨材を含む形態もまた、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0107】
上記水硬性材料組成物において、本発明の水硬性材料用添加剤の配合割合としては、例えば、本発明の必須成分である窒素含有化合物(A)及び化合物(B)の合計の割合が、固形分換算で、水硬性材料の全量100質量%に対して、0.005~10質量%となるように設定することが好ましい。より好ましくは0.01~5質量%であり、更に好ましくは0.02~3質量%である。なお、本明細書中、固形分含量は、以下のようにして測定することができる。
<固形分測定方法>
1.アルミ皿を精秤する。
2.1で精秤したアルミ皿に固形分測定物を精秤する。
3.窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に2で精秤した固形分測定物を1.5時間入れる。
4.1時間後、乾燥機から取り出し、室温のデシケーター内で15分間放冷する。
5.15分後、デシケーターから取り出し、アルミ皿+測定物を精秤する。
6.5で得られた質量から1で得られたアルミ皿の質量を差し引き、2で得られた固形分測定物の質量で除することで固形分を測定する。
【0108】
上記水硬性材料としては、水硬性又は潜在水硬性を有するものであれば特に限定されず、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメントや、シリカセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、アルミナセメント、ビーライト高含有セメント、各種混合セメント;珪酸三カルシウム、珪酸二カルシウム、アルミン酸三カルシウム、鉄アルミン酸四カルシウム等のセメントの構成成分;潜在水硬性を有するフライアッシュ、シリカヒューム、スラグ、石灰微粉等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、普通ポルトランドセメントが通常よく使用され、好適に適用することができる。
【0109】
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材等が挙げられる。
【0110】
本発明の水硬性材料用添加剤は、水硬性材料組成物において、本発明の水硬性材料用添加剤以外のその他の添加剤と併用してもよく、その他の添加剤としては、水溶性高分子物質、遅延剤、急結剤、早強剤・促進剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤、AE剤、界面活性剤、防水剤、防錆剤、防腐剤、ひび割れ低減剤、膨張材、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、コロイダルシリカ、繊維、石膏、等のセメント添加剤(材)が挙げられる。
【0111】
上記急結剤としては公知の急結剤であれば良く特に限定されない。用いる急結剤は粉体急結剤、液体急結剤でも、スラリータイプの急結剤でも良い。液体急結剤としては例えば硫酸アルミニウム、フッ素、及びアルカリ金属、さらに、これらとアルカノールアミンを含有するものが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。また本発明で使用する液体急結剤には、既知の水溶性の水和促進剤を使用することが可能である。水和促進剤としては、例えば、ギ酸又はその塩、酢酸又はその塩、及び乳酸又はその塩等の有機系の水和促進剤や、水ガラス、硝酸塩、亜硝酸塩、チオ硫酸塩、及びチオシアン酸塩等の無機系の水和促進剤を使用することが可能である。粉体急結剤としては例えば、カルシウムアルミネート類、硫酸塩類、アルカリ金属アルミン酸塩類、アルカリ金属炭酸塩類、及びオキシカルボン酸類を含有してなるもの等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0112】
前記消泡剤としては、公知の消泡剤であれば良く特に限定されない。例えば、燈油、流動パラフィン等の鉱油系消泡剤;動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等の油脂系消泡剤;オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等の脂肪酸系消泡剤;ジエチレングリコールモノラウレート、グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノラウレート、天然ワックス等の脂肪酸エステル系消泡剤;オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類、ポリオキシアルキレングリコール等のアルコール系消泡剤;ポリオキシアルキレンアミド、アクリレートポリアミン等のアミド系消泡剤;リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等の金属石鹸系消泡剤;シリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変成ポリシロキサン、フルオロシリコーン油等のシリコーン系消泡剤;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン付加物等のオキシアルキレン系消泡剤;等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。上記例示の消泡剤の中でも特に、オキシアルキレン系消泡剤が最も好ましい。本発明のセメント混和剤用共重合体とオキシアルキレン系消泡剤とを組み合わせて用いると、消泡剤使用量が少なくて済み、さらに消泡剤と共重合体との相溶性にも優れるからである。オキシアルキレン系消泡剤としては、分子内にオキシアルキレン基を有しかつ水性液体中の気泡を減少させる作用を有する化合物であれば特に制限はないが、その中でも下記も下記式(14)で表わされる特定のオキシアルキレン系消泡剤が好ましい。
R17{-W-(R18O)u1-R19}u2 (14)
上記式(14)中、R17、R19は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~22のアルキル基、炭素数1~22のアルケニル基、炭素数1~22のアルキニル基、フェニル基またはアルキルフェニル基(アルキルフェニル基中のアルキル基の炭素数は1~22である)を表わす。R18Oは、炭素数2~4のオキシアルキレン基の1種または2種以上の混合物を表わし、2種以上の場合はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。u1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、0~300の数を表わす。u1が0のとき、R17、R19が同時に水素原子であることはなく、Wは-O-、-CO2-、-SO4-、-PO4-又は-NH-の基を表わす。u2は、1又は2の整数を表わし、R17が水素原子のとき、u2は1である。
【0113】
上記式(14)で表されるオキシアルキレン系消泡剤の例としては、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン-2-エチルヘキシルエーテル、炭素数12~14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、3-メチル-1-ブチン-3-オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0114】
上記水硬性材料組成物においては、その1m3あたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比は特に限定されず、例えば、単位水量100~300kg/m3、使用セメント量300~500kg/m3、水/セメント比(重量比)=0.35~0.6であることが好ましい。より好ましくは、単位水量140~240kg/m3、使用セメント量350~480kg/m3、水/セメント比(重量比)=0.4~0.5である。
【0115】
本発明の水硬性材料用添加剤は、水硬性材料組成物に用いられる限り特に制限されず、レディーミクストコンクリート、吹付けコンクリート等に用いることができる。好ましくは吹付けコンクリート用途に用いることである。本発明の水硬性材料用添加剤の吹付けコンクリートへの使用方法もまた、本発明の1つである。本発明は更に、本発明の水硬性材料用添加剤を水硬性材料とともに施工面に吹き付けて使用する方法でもある。
上記使用方法は、本発明の水硬性材料用添加剤を水硬性材料とともに施工面に吹き付ける限り特に制限されないが、水硬性材料用添加剤と水硬性材料とを混合したものを施工面に吹き付けることが好ましい。上記使用方法としては、水硬性材料用添加剤と水硬性材料とを混合する工程と、混合工程により得られた水硬性材料組成物を圧縮空気又はポンプ等で圧送する工程と、圧送された水硬性材料組成物を吹き付ける工程とを含むことがより好ましい。
上記水硬性材料組成物の好ましい形態等は、上述のとおりである。
【実施例】
【0116】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0117】
<化合物(B)の重量平均分子量の測定>
重量平均分子量は、以下の測定条件により測定した。
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empower2プロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー(株)製、TSKguardcolumnsSWXL+TSKgel G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:水10999g、アセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの。
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、12600、7100、4250、1470)
較正曲線:上記標準物質のMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成した。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
標準物質試料液注入量:100μL(重合体濃度0.1質量%の溶離液溶液)
重合体試料液注入量:100μL(重合体濃度0.5質量%の溶離液溶液)
【0118】
<GPC解析条件(重合体の分析)>
得られたRIクロマトグラムにおいて、重合体溶出直前・溶出直後のベースラインにおいて平らに安定している部分を直線で結び、重合体を検出・解析した。ただし、単量体や単量体由来の不純物のピークが重合体ピークに一部重なって測定された場合、それらと重合体の重なり部分の最凹部において垂直分割して重合体部と単量体部や不純物部とを分離し、重合体部のみの分子量・分子量分布を計算した。凹部が無い場合はまとめて計算した。
重合体純分は、RI検出器によるピーク面積の比より、下記のようにして計算した。
重合体純分=(重合体ピーク面積)/(重合体ピーク面積+単量体や不純物のピーク面積)
【0119】
<テクスチャーアナライザーによる粘着性評価>
(1)装置:英光精機株式会社製 テクスチャーアナライザーTA.XT Plus
(2)装置の概要:プローブ、試料台、応力検出器からなり、一定荷重を一定時間与えることができる機構、及び、モルタルとプローブとの接触及び引き剥がしを一定速度で行えるように当該速度を制御できる機構を有する。
粘着性試験用プローブ:つきさし、圧縮用円柱プローブ P/35(材質:アルミニウム、直径35mm)
(3)評価方法:下記のとおり調製した(練り上げた)モルタル試料を200mLデスカップに移し試料台に置いた。次に毎秒1mmの速度でプローブを試料の表面から20mmの深さまで貫入させ、その後直ちに1mm/sec.の速度でプローブを引き抜き、プローブがモルタルから剥がれる際に要する最大荷重を求め、プローブタック試験の値とした。単位はN/cm2で表記した。比較例の系の最大荷重を100%としたときの各々の系の最大荷重比を、粘着性と定義した。最大荷重比が110%以上である場合に、粘着性が高いとみなした。
【0120】
<分散性(ワーカビリティ)評価>
モルタル試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±15%の環境下で行った。モルタル配合は、実施例及び比較例(1)、(4)ではC/S/W=560/1350/250(g)、実施例及び比較例(2)、(3)ではC/S/W=690/1600/331.2(g)とした。
ただし、
C:セメント(普通ポルトランドセメント、太平洋セメント社製)
S:細骨材(大井川産陸砂)
W:試料と消泡剤のイオン交換水溶液
とし、Wについては下記表1~3に記載の水硬性材料用添加剤及び消泡剤を含み、イオン交換水中充分に均一溶解させた。
モルタルミキサー(ホバート社製ミキサー、型番:N-50)を用い、混練容器へCおよびSを投入し、1速で10秒間混練した。さらに1速で混練しながら、Wを10秒かけて投入した。混練を始めてから60秒後にミキサーを停止し、30秒間モルタルの掻き落としを行った。その後、さらに2速で60秒間混練を行い、モルタルを調製した。上記のようにして得られたモルタルを、フロー測定板(60cm×60cm)に置かれたミニスランプコーン(JISマイクロコンクリートスランプコーン、上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mm)に半量詰めて15回突き棒で突き、さらにモルタルをミニスランプコーンのすりきりいっぱいまで詰めて15回突き棒で突いた後、ミニスランプコーンの表面をならした。その後、最初にミキサーを始動させてから3分30秒後にミニスランプコーンを垂直に引き上げ、広がったモルタルの直径(最も長い部分の直径(長径)および該長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値をモルタルフロー値とした。空気量は消泡剤であるオキシアルキレン系消泡剤を添加して3.0%未満となるように調整した。
【0121】
合成例
<化合物(B-1)の製造>
L-アスコルビン酸0.4部、3-メルカプトプロピオン酸0.8部を水50.0部に溶解させた水溶液(B1a)を調整した。
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水90.4部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN-50)191.0部、アクリル酸(AA)0.3部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、過酸化水素35%水溶液を0.9部投入した。
30分後、上述の混合溶液(B1a)を3.5時間かけて、アクリル酸(AA)25.5部を3.0時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は60℃で一定とした。
混合溶液(B1a)の滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=6.3まで中和した。このようにして、共重合体(B-1)を含む重合体水溶液を得た。得られた共重合体(B―1)の重量平均分子量Mwは32000であった。
【0122】
<化合物(B-2)の製造>
L-アスコルビン酸0.2部、3-メルカプトプロピオン酸0.6部を水140.2部に溶解させた溶液(a)を調製した。温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水43.6部、2-プロパノール43.6部、2-メチル-2-プロペン-1-オールにエチレンオキシドが平均150モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体の80%水溶液を193.5部、パラトルエンスルホン酸1水和物の70%水溶液0.8部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、過酸化水素2%水溶液を5.4部投入した。30分後、上述の混合溶液(a)を3.5時間かけて、アクリル酸の90%水溶液17.0部を3時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は60℃で一定とした。
混合溶液(a)の滴下終了後、1時間引き続き60℃を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=5.0まで中和し、重量平均分子量52,000の重合体水溶液からなる本発明のポリカルボン酸共重合体を得た。
【0123】
<化合物(B-3)の製造>
過流酸アンモニウム3.3部を水107.3部に溶解させた溶液(a)を調製した。メタクリル酸19.7部を混合した溶液(b)を調製した。メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数23)123.8部、3-メルカプトプロピオン酸1.2部を水53.6部に溶解させた溶液(c)を調製した。温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えた反応容器に水70.6部を仕込み、続いて撹拌下に反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃に昇温した後、上述の混合溶液(a)を5時間かけて、上述の混合溶液(b)及び(c)を4時間かけて、それぞれ一定速度で計量滴下した。この間の温度は80℃で一定とした。混合溶液(a)の滴下終了後、1時間引き続き80℃を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=5.0まで中和し重量平均分子量20,000の重合体水溶液からなる本発明のポリカルボン酸共重合体を得た。
【0124】
実施例(1)-1及び比較例(1)-1、(1)-2
ポリエチレンイミン((株)日本触媒製、エポミンP-1000)を窒素含有化合物(A)とし、上記合成例で合成した共重合体(B-1)を化合物(B)として、表1に記載の割合で配合して水硬性材料用添加剤を調製した。調製した水硬性材料用添加剤について、上述した方法で分散性、粘着性を評価した。粘着性は、比較例(1)-1の粘着性を100%として実施例(1)-1及び比較例(1)-2の粘着性を算出した。結果を表1に示す。
【0125】
【0126】
実施例(2)-1及び比較例(2)-1
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(SIGMA-ALDRICH社製、製品コード522376)を窒素含有化合物(A)とし、リグニンスルホン酸(BASF社製、ポゾリスNo.8)を化合物(B)として、表2に記載の割合で配合して水硬性材料用添加剤を調製した。調製した水硬性材料用添加剤について、上述した方法で分散性、粘着性を評価した。粘着性は、比較例(2)-1の粘着性を100%として実施例(2)-1の粘着性を算出した。結果を表2に示す。
【0127】
【0128】
実施例(3)-1~19及び比較例(3)-1~4
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(SIGMA-ALDRICH社製)またはポリ―2-ヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロライド(四日市合成(株)製)を窒素含有化合物(A)とし、上記合成例で合成した共重合体(B-1)~(B-3)を化合物(B)として、表3に記載の割合で配合して水硬性材料用添加剤を調製した。調製した水硬性材料用添加剤について、上述した方法で分散性、粘着性を評価した。粘着性は、比較例(3)-1の粘着性を100%として算出した。結果を表3に示す。
【0129】