(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】レーザ溶接機
(51)【国際特許分類】
B23K 26/082 20140101AFI20230209BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20230209BHJP
【FI】
B23K26/082
B23K26/21 A
(21)【出願番号】P 2019109669
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鍵和田 義人
(72)【発明者】
【氏名】小野 育康
(72)【発明者】
【氏名】神崎 大輔
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-39593(JP,A)
【文献】特開平5-245680(JP,A)
【文献】特開昭63-235073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/082
B23K 26/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にレーザ光の光路の一部が形成されたウィービングハウジングと、
前記ウィービングハウジングの内部に設けられ、基端側の揺動軸心回りに揺動可能に構成された揺動ケースと、
前記揺動ケースを揺動させる揺動アクチュエータと、
前記揺動ケースの基端側の内部に回転可能に設けられた主動ギアと、
前記主動ギアを回転させる回転アクチュエータと、
前記揺動ケースの先端側の内部に回転可能に設けられ、上部及び下部が前記ウィービングハウジングの内部空間側に向かって開放され、外周部に前記主動ギアに噛合した環状の従動ギアが形成された筒状の従動回転体と、
前記従動回転体の内側に設けられ、前記揺動ケースの揺動によって、レーザ光の光路上においてウィービング溶接を行うためのウィービング位置と、前記ウィービング位置から退避した退避位置との間で移動するように構成され、レーザ光の光軸を偏心させる透過板と、を備えたことを特徴とするレーザ溶接機。
【請求項2】
前記揺動ケースの基端側の下部又は上部に設けられ、前記ウィービングハウジングの下部又は上部に回転可能に支持された中空状の第1サポート部材と、
前記揺動ケースの基端側の上部又は下部に設けられ、前記第1サポート部材と同軸上に位置し、前記ウィービングハウジングの上部又は下部に回転可能に支持された中空状の第2サポート部材と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接機。
【請求項3】
前記揺動アクチュエータの出力軸が前記第1サポート部材に連結され、
前記主動ギアの回転軸が前記揺動ケースの基端側に回転可能に支持されかつ前記第2サポート部材を同軸上に貫通し、
前記回転アクチュエータの出力軸が前記回転軸に連結されていることを特徴とする請求項2に記載のレーザ溶接機。
【請求項4】
前記従動回転体の上部側及び下部側に、前記ウィービングハウジングの内部空間側への異物の流出を抑えるためのラビリンス構造がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載のレーザ溶接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のワークに対して通常のレーザ溶接とウィービング溶接を選択して行うレーザ溶接機に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のレーザ溶接とウィービング溶接を選択して行うレーザ溶接機として、特許文献1に示すものがある。その先行技術は、ウィービング溶接を行うためのウィービング装置を備えており、ウィービング装置は、レーザ溶接機の加工ヘッドの一部を構成している。そして、先行技術に係るウィービング装置の構成等について簡単に説明すると、次の通りである。
【0003】
ウィービング装置は、ウィービングハウジングを備えており、ウィービングハウジングの内部には、レーザ光の光路の一部が形成されている。ウィービングハウジングの内部には、揺動アームが設けられており、揺動アームは、その基端側の揺動軸心回りに揺動可能に構成されている。揺動アームの先端側には、環状の支持部が形成されている。ウィービングハウジングの外壁部には、揺動アームを回転させる揺動アクチュエータが設けられている。
【0004】
ウィービンハウジングの内部におけるレーザ光の光路上には、主動ギアが回転可能に設けられており、主動ギアは、揺動アームに対してレーザ光の光軸方向に位置をずらしている。ウィービングハウジングの外壁部には、主動ギアを回転させる回転アクチュエータが設けられている。また、揺動アームの支持部の内側には、筒状の従動回転体が回転可能に設けられており、従動回転体の外周部には、主動ギアに噛合した環状の従動ギアが形成されている。
【0005】
従動回転体の内側には、レーザ光の光軸を偏心させる透過板としてのガラス板が一体的に設けられている。ガラス板は、揺動アームの揺動によって、レーザ光の光路上においてウィービング溶接を行うためのウィービング位置と、ウィービング位置から退避した退避位置との間で移動するように構成されている。
【0006】
従って、揺動アクチュエータの駆動により揺動アームを揺動させることにより、ガラス板を退避位置からウィービング位置に移動させる。そして、回転アクチュエータの駆動により主動ギアを回転させることにより、従動回転体(従動ギア)を連動して回転させて、ガラス板を従動回転体と一体的に回転させる。これにより、レーザ光の光軸を偏心回転させて、溶接幅を拡大したウィービング溶接を行うことができる。
【0007】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1の他に、特許文献2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-58452号公報
【文献】特開2013-39593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年、レーザ溶接機の高出力化に伴い、従動回転体の回転速度が高速化する傾向にある。また、従動回転体の回転速度が高速化すると、主動ギアと従動ギアの間からの摩耗粉、従動回転体を支持するベアリングからのグリース(油)等が異物としてウィービングハウジングの内部空間に流入し易くなる。一方、ウィービングハウジングの内部空間に流入した摩耗粉等の異物がガラス板に付着すると、ウィービング溶接の不良を招くことになる。つまり、レーザ溶接機の高出力化を図りつつ、ウィービング溶接を安定的に行うことが困難であるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、前述の問題を解決するために、従動回転体の回転速度が高速化しても、ウィービングハウジングの内部空間への異物の流入を抑制できる、新規な構成からなるレーザ溶接機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施態様に係るレーザ溶接機は、内部にレーザ光の光路の一部が形成されたウィービングハウジングと、前記ウィービングハウジングの内部に設けられ、基端側の揺動軸心回りに揺動可能に構成された揺動ケースと、前記揺動ケースを揺動させる揺動アクチュエータと、前記揺動ケースの基端側の内部に回転可能に設けられた主動ギアと、前記主動ギアを回転させる回転アクチュエータと、を備えている。本発明の実施態様に係るレーザ溶接機は、前記揺動ケースの先端側の内部に回転可能に設けられ、上部及び下部が前記揺動ケースの外側(前記ウィービングハウジングの内部空間側)に向かって開放され、外周部に前記主動ギアに噛合した環状の従動ギアが形成された筒状(環状)の従動回転体と、前記従動回転体の内側に設けられ、前記揺動ケースの揺動によって、レーザ光の光路上においてウィービング溶接を行うためのウィービング位置と、前記ウィービング位置から退避した退避位置との間で移動するように構成され、レーザ光の光軸を偏心させる透過板と、を備えている。
【0012】
本発明の実施態様に係るレーザ溶接機は、前記揺動ケースの基端側の下部又は上部に設けられ、前記ウィービングハウジングの下部又は上部に回転可能に支持された中空状の第1サポート部材と、前記揺動ケースの基端側の上部又は下部に設けられ、前記第1サポート部材と同軸上に位置し、前記ウィービングハウジングの上部又は下部に回転可能に支持された中空状の第2サポート部材と、を備えてもよい。この場合に、前記揺動アクチュエータの出力軸が前記第1サポート部材に連結され、前記主動ギアの回転軸が前記揺動ケースの基端側に回転可能に支持されかつ前記第2サポート部材を同軸上に貫通し、前記回転アクチュエータの出力軸が前記回転軸に連結されてもよい。
【0013】
本発明の実施態様では、前記従動回転体の上部側及び下部側に、前記ウィービングハウジングの内部空間側(前記揺動ケースの外側)への異物の流出を抑えるためのラビリンス構造がそれぞれ形成されてもよい。
【0014】
本発明の実施態様によると、前述のように、前記ウィービングハウジングの内部に前記揺動ケースが設けられている。前記揺動ケースの基端側の内部に前記主動ギアが回転可能に設けられている。前記揺動ケースの先端側の内部に筒状の前記従動回転体が回転可能に設けられ、前記従動回転体の外周部に前記主動ギアに噛合した環状の前記従動ギアが形成されている。そのため、前記主動ギア、及び前記従動ギアを含む前記従動回転体を前記揺動ケースによって前記ウィービングハウジングの内部空間から隔離することができる。これにより、前記従動回転体の回転速度が高速化しても、前記主動ギアと前記従動ギアの間からの摩耗粉、前記従動回転体を支持するベアリングからのグリース等が異物として前記ウィービングハウジングの内部空間に流入することを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記レーザ溶接機の高出力化を図りつつ、前記透過板への異物の付着を十分に防止して、ウィービング溶接を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る溶接ロボットの一部を示す図であり、
図1の大部分は、断面図になっている。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るウィービング装置を含む加工ヘッドの部分断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るウィービング装置の主要部の断面図である。
【
図4A】
図4Aは、
図2におけるIV-IV線に沿った断面図であり、ガラス板がウィービング位置に位置した状態を示している。
【
図4B】
図4Bは、
図2におけるIV-IV線に沿った断面図であり、ガラス板が退避位置に位置した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について
図1から
図5を参照して説明する。
【0018】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられることを含む意である。「加工ヘッドにおける上部、上側、上端、又は上面」とは、加工ヘッドのノズルを鉛直下方に向けた状態において、上部、上側、上端、又は上面であることをいう。「加工ヘッドにおける下部、下側、下端、又は下面」とは、加工ヘッドのノズルを鉛直下方に向けた状態において、下部、下側、下端、又は下面であることをいう。換言すれば、「加工ヘッドにおける上下方向の向き」は、加工ヘッドのノズルを鉛直下方に向けた状態を基準とする。図面中、「U」は上方向、「D」は下方向をそれぞれ指している。
【0019】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る溶接ロボット10は、金属製のワークWに対して通常のレーザ溶接とウィービング溶接を選択して行うレーザ溶接機である。溶接ロボット10は、多関節のロボットアーム12(一部のみ図示)を備えており、ロボットアーム12の先端部には、ワークWに対してレーザ光LBを照射する加工ヘッド14が連結具16を介して設けられている。また、溶接ロボット10の構成のうち加工ヘッド14を除く構成は、特許文献2に示すような公知の構成からなり、加工ヘッド14を除く構成の詳細の説明を省略する。
【0020】
続いて、加工ヘッド14の全体的な構成について説明する。
【0021】
図1及び
図2に示すように、加工ヘッド14は、ロボットアーム12の先端部に連結具16を介して設けられた筒状の加工ヘッド本体18を備えている。加工ヘッド14は、加工ヘッド本体18の基端部(上端部)の近傍に配設された支持筒20を備えており、支持筒20には、伝送ファイバ22を保持するファイバホルダ24が設けられている。伝送ファイバ22は、レーザ光LBを発振するファイバレーザ発振器等のレーザ発振器(図示省略)に光学的に接続されている。換言すれば、加工ヘッド14は、伝送ファイバ22を介してレーザ発振器に光学的に接続されている。
【0022】
加工ヘッド本体18の先端部(下端部)には、レーザ光LBを照射するためのノズル26が設けられている。加工ヘッド本体18内には、環状の上部レンズホルダ28が設けられている。上部レンズホルダ28の内側には、伝送ファイバ22から射出されたレーザ光LBをコリメートするコリメートレンズ30が設けられている。また、加工ヘッド本体18内における上部レンズホルダ28の下側には、下部レンズホルダ32が設けられている。下部レンズホルダ32の内側には、コリメートされたレーザ光LBをワークWに向かって集束させる集束レンズ34が設けられている。ここで、加工ヘッド14の内部における伝送ファイバ22の射出端からノズル26にかけて、レーザ光LBの光路が形成される。
【0023】
加工ヘッド14は、ワークWに対してウィービング溶接を行うためのウィービング装置36を備えている。ウィービング装置36は、加工ヘッド本体18と支持筒20との間に配設されている。
【0024】
続いて、加工ヘッド14の一部を構成するウィービング装置36の具体的な構成について説明する。
【0025】
図2から
図4Bに示すように、ウィービング装置36は、加工ヘッド本体18と支持筒20との間に配設されたウィービングハウジング38を備えている。ウィービングハウジング38は、加工ヘッド本体18と支持筒20を一体的に連結する。ウィービングハウジング38の上部には、上開口部38aが形成されており、ウィービングハウジング38の下部には、下開口部38bが上開口部38aに整合するように形成されている。ウィービングハウジング38の上開口部38aの周縁部は、支持筒20の一端部(下端部)に接合されている。ウィービングハウジング38の下開口部38bの周縁部は、加工ヘッド本体18の基端部(上端部)に接合されている。ウィービングハウジング38の内部には、上開口部38a及び下開口部38bによってレーザ光LBの光路の一部が形成される。
【0026】
ウィービングハウジング38の内部には、密閉型の揺動ケース40が設けられており、揺動ケース40は、レーザ光LBの光軸に直交する方向に延びている。揺動ケース40の先端側の上部には、上開口部40aが形成されており、揺動ケース40の先端側の下部には、下開口部40bが上開口部40aに整合するように形成されている。
【0027】
揺動ケース40の基端側の下部には、中空状(スリーブ状)の第1サポート部材42の基端部が一体的に設けられており、第1サポート部材42の先端部は、ウィービングハウジング38の下部にベアリング44を介して回転可能に支持されている。揺動ケース40の基端側の上部には、中空状の第2サポート部材46の基端部が一体的に設けられており、第2サポート部材46は、第1サポート部材42と同軸上に位置している。第2サポート部材46の先端部は、ウィービングハウジング38の上部にベアリング48を介して回転可能に支持されている。換言すれば、揺動ケース40は、第1サポート部材42及び第2サポート部材46等によって揺動ケース40の基端側の揺動軸心回りに揺動可能に構成されている。そして、ウィービングハウジング38の外壁部の下部には、揺動ケース40を揺動させる揺動アクチュエータとして揺動モータ50が設けられている。揺動モータ50の出力軸52は、連結部材54によって第1サポート部材42に同軸上に一体的に連結されている。
【0028】
なお、第1サポート部材42の先端部がウィービングハウジング38の下部の代わりに上部に回転可能に支持され、かつ第2サポート部材46の先端部がウィービングハウジング38の上部の代わりに下部に回転可能に支持されるようにしてもよい。この場合には、第1サポート部材42の基端部がウィービングハウジング38の上部に回転可能に支持され、かつ第2サポート部材46の先端部がウィービングハウジング38の下部に回転可能に支持される。
【0029】
揺動ケース40の基端側の内部には、主動ギア56が回転可能に設けられている。主動ギア56の回転軸58は、揺動ケース40の基端側に複数のベアリング60を介して回転可能に支持されており、回転軸58は、第2サポート部材46を同軸上に貫通している。そして、ウィービングハウジング38の外壁部の上部には、主動ギア56を回転させる回転アクチュエータとして回転モータ62が設けられている。回転モータ62の出力軸64は、カップリング66によって回転軸58に同軸上に一体的に連結されている。
【0030】
揺動ケース40の先端側の内部には、筒状(環状)の従動回転体68が複数の接触ゴムシール形のベアリング70を介して回転可能に設けられている。従動回転体68の上部は、揺動ケース40の上開口部40aからウィービングハウジング38の内部空間IS側(揺動ケース40の外側)に向かって開放されている。従動回転体68の下部は、揺動ケース40の下開口部40bからウィービングハウジング38の内部空間IS側に向かって開放されている。また、従動回転体68の外周部には、主動ギア56に噛合した環状の従動ギア72が形成されており、従動回転体68は、主動ギア56の回転に連動して回転する。
【0031】
従動回転体68の内側には、筒状のガラスホルダ74が一体的に設けられている。ガラスホルダ74の内側には、レーザ光LBの光軸を偏心させる透過板としてのガラス板76がガラス押え78等を介して設けられている。換言すれば、従動回転体68の内側には、ガラス板76がガラスホルダ74等を介して一体的に設けられている。ガラス板76は、レーザ光LBの光軸に対して傾斜しており、従動回転体68と一体的に回転する。
【0032】
なお、ガラス板76がレーザ光LBの光軸を偏心させる機能を有していれば、ガラス板76全体をレーザ光LBの光軸に対して傾斜させる代わりに、ガラス板76の上面又は下面をレーザ光LBの光軸に直交する方向に対して僅かに傾斜させてもよい。また、透過板としてガラス板76を用いる代わりに、例えば石英、フッ化カルシウム等の透過性材料からなる他の透過板を用いてもよい。
【0033】
ガラス板76は、揺動ケース40の揺動によって、レーザ光LBの光路上においてウィービング溶接を行うためのウィービング位置(
図4Aに示す位置)と、ウィービング位置から退避した退避位置(
図4Bに示す位置)との間で移動するように構成されている。ここで、揺動ケース40は、ガラス板76がウィービング位置に位置すると、ウィービングハウジング38の内部の適宜位置に設けた第1ストッパ部材(図示省略)に当接する。揺動ケース40は、ガラス板76が退避位置に位置すると、ウィービングハウジング38の内部の適宜位置に設けた第2ストッパ部材(図示省略)に当接する。
【0034】
図3及び
図5に示すように、従動回転体68の上部には、環状の外フランジ80が形成されている。揺動ケース40の上開口部40aの周縁には、環状の内フランジ82が形成されており、内フランジ82は、外フランジ80の上側に微小な間隔を置いて重なっている。外フランジ80と内フランジ82との間には、ウィービングハウジング38の内部空間IS側(揺動ケース40の外側)へのグリース等の異物の流出を抑えるためのラビリンス構造84が形成されている。換言すれば、従動回転体68の上部側には、屈曲した通路であるラビリンス構造84が形成されている。
【0035】
同様に、従動回転体68の下部には、環状の外フランジ86が形成されている。揺動ケース40の下開口部40bの周縁には、環状の内フランジ88が形成されており、内フランジ88は、外フランジ86の下側に微小な間隔を置いて重なっている。外フランジ86と内フランジ88との間には、ウィービングハウジング38の内部空間IS側へのグリース等の異物の流出を抑えるためのラビリンス構造90が形成されている。換言すれば、従動回転体68の下部側には、屈曲した通路であるラビリンス構造90が形成されている。
【0036】
図3に示すように、ウィービングハウジング38の上開口部38aの内側には、ガラス板76にパージエアを供給する環状のエア供給部材92が設けられている。
【0037】
続いて、本発明の実施形態の作用効果について説明する。
【0038】
揺動モータ50の駆動により揺動ケース40を一方向へ揺動させることにより、ガラス板76を退避位置からウィービング位置に移動させる(
図4A参照)。そして、回転モータ62の駆動により主動ギア56を回転させることにより、従動回転体68(従動ギア72)を連動して回転させ、ガラス板76を従動回転体68と一体的に回転させる。これにより、伝送ファイバ22から射出されたレーザ光LBの光軸を偏心回転させて、溶接幅を拡大したウィービング溶接を行うことができる。
【0039】
ウィービング溶接後に通常のレーザ溶接を行う場合には、揺動モータ50の駆動により揺動ケース40を他方向へ揺動させることにより、ガラス板76をウィービング位置から退避位置からウィービング位置に移動させる(
図4B参照)。
【0040】
そして、本発明の実施形態によると、前述のように、ウィービングハウジング38の内部に密閉型の揺動ケース40が設けられ、揺動ケース40の基端側の内部に主動ギア56が回転可能に設けられている。揺動ケース40の先端側の内部に筒状の従動回転体68が回転可能に設けられ、従動回転体68の外周部に主動ギア56に噛合した環状の従動ギア72が形成されている。そのため、主動ギア56、従動ギア72を含む従動回転体68を揺動ケース40によってウィービングハウジング38の内部空間ISから隔離することができる。これにより、従動回転体68の回転速度が高速化しても、主動ギア56と従動ギア72の間からの摩耗粉、従動回転体68を支持する接触ゴムシール形のベアリング70からのグリース等が異物としてウィービングハウジング38の内部空間ISに流入することを抑制できる。特に、前述のように、従動回転体68が複数の接触ゴムシール形のベアリング70によって回転可能に支持され、従動回転体68の上部側及び下部側にそれぞれラビリンス構造84,90が形成されているため、従動回転体68の回転速度が高速化しても、ウィービングハウジング38の内部空間ISへの異物の流入を十分に抑制することができる。
【0041】
従って、本発明の実施形態によれば、レーザ溶接機の高出力化を図りつつ、ガラス板76への異物の付着を十分に防止して、ウィービング溶接を安定的に行うことができる。
【0042】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、ウィービング装置36において、コリメートされる前のレーザ光LBの光軸を偏心回転させているが、コリメートされたレーザ光LBの光軸を偏心回転させる等、その他、種々の態様で実施可能である。そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0043】
10 溶接ロボット(レーザ溶接機)
12 ロボットアーム
14 加工ヘッド
16 連結具
18 加工ヘッド本体
20 支持筒
22 伝送ファイバ
24 ファイバホルダ
26 ノズル
28 上部レンズホルダ
30 コリメートレンズ
32 下部レンズホルダ
34 集束レンズ
36 ウィービング装置
38 ウィービングハウジング
38a 上開口部
38b 下開口部
40 揺動ケース
40a 上開口部
40b 下開口部
42 第1サポート部材
44 ベアリング
46 第2サポート部材
48 ベアリング
50 揺動モータ(揺動アクチュエータ)
52 出力軸
54 連結部材
56 主動ギア
58 回転軸
60 ベアリング
62 回転モータ(回転アクチュエータ)
64 出力軸
66 カップリング
68 従動回転体
70 接触ゴムシール形のベアリング
72 従動ギア
74 ガラスホルダ
76 ガラス板(透過板)
78 ガラス押え
80 外フランジ
82 内フランジ
84 ラビリンス構造
86 外フランジ
88 内フランジ
90 ラビリンス構造
92 エア供給部材
IS 内部空間
LB レーザ光
W ワーク