(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-08
(45)【発行日】2023-02-16
(54)【発明の名称】運転支援方法及び運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230209BHJP
【FI】
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2020528527
(86)(22)【出願日】2018-07-04
(86)【国際出願番号】 IB2018000950
(87)【国際公開番号】W WO2020008227
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】平松 真知子
(72)【発明者】
【氏名】山村 智弘
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/002984(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/013748(WO,A1)
【文献】特開2012-014629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車が走行する軌跡である自車軌跡と第1の他車が走行する軌跡である第1の他車軌跡とが交錯点で交わり、前記第1の他車が前記交錯点に到達するまでの前記第1の他車軌跡上の地点であり、且つ、前記第1の他車軌跡と前記第1の他車とは異なる第2の他車が走行する軌跡である第2の他車軌跡とが交錯する前記地点に前記第1の他車よりも先に前記第2の他車が到達する走行シーンにおいて、前記自車の運転を支援する
運転支援装置の運転支援方法であって、
前記運転支援装置は、
前記第1の他車軌跡を遮蔽する時の前記第2の他車の車速を推定し、前記第2の他車と前記第2の他車軌跡とが重なっている時間、又は、前記第2の他車と、前記第1の他車軌跡を含み且つ前記第2の他車が走行する車線の道幅を有する領域とが重なっている時間を算出することにより、前記交錯点までの前記第1の他車軌跡を前記第2の他車が遮蔽する時間である遮蔽時間
を推定し、
前記自車の少なくとも一部分が前記第1の他車軌跡と重なり始めた時から、前記自車の位置が前記第1の他車軌跡に重なる時までの時間を算出することにより、前記自車が前記交錯点に進入し始めてから進入し終わるまでの時間である進入所要時間
を推定し、
前記遮蔽時間と前記進入所要時間とを比較し、前記遮蔽時間が前記進入所要時間よりも長い場合、前記自車が前記交錯点に進入可能である
と判断する運転支援方法。
【請求項2】
前記遮蔽時間に基づいて、前記第1の他車が前記交錯点に到達するまでの時間である到達時間を予測し、
前記到達時間に予め定めた余裕時間を加算した合計時間が前記進入所要時間よりも長い場合、前記自車は前記交錯点に進入可能であると判断する
請求項1に記載の運転支援方法。
【請求項3】
前記遮蔽時間を、前記第2の他車の進行方向の車体長さ、前記第1の他車が走行する車線の道幅、及び前記第2の他車が走行する車線の道幅を用いて予測することを特徴とする請求項1
または2のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項4】
前記遮蔽時間を、前記第2の他車の進路を妨げる障害物に基づいて予測することを特徴とする請求項1~
3のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項5】
前記第2の他車が前記第1の他車軌跡を遮蔽し始めた後に、前記自車は前記交錯点に進入可能であると判断することを特徴とする請求項1~
4のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項6】
前記第2の他車が前記第1の他車軌跡を遮蔽し始め、且つ前記自車は前記交錯点に進入可能であると判断した時、前記自車は走行し始めることを特徴とする請求項
5に記載の運転支援方法。
【請求項7】
前記交錯点へ進入することについて、前記第1の他車の優先順位は、前記自車の優先順位よりも高いことを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項8】
前記第2の他車軌跡は、前記自車軌跡から離間していることを特徴とする請求項1~
7の何れか一項に記載の運転支援方法。
【請求項9】
前記第2の他車軌跡と前記自車軌跡の距離が所定値以下である場合、前記距離が所定値よりも長くなるように前記自車軌跡を補正することを特徴とする請求項
8に記載の運転支援方法。
【請求項10】
自車が走行する軌跡である自車軌跡と第1の他車が走行する軌跡である第1の他車軌跡とが交錯点で交わり、前記第1の他車が前記交錯点に到達するまでの前記第1の他車軌跡上の地点であり、且つ、前記第1の他車軌跡と前記第1の他車とは異なる第2の他車が走行する軌跡である第2の他車軌跡とが交錯する前記地点に前記第1の他車よりも先に前記第2の他車が到達する走行シーンにおいて、前記自車の運転を支援する運転支援装置であって、
前記第1の他車軌跡を遮蔽する時の前記第2の他車の車速を推定し、前記第2の他車と前記第2の他車軌跡とが重なっている時間、又は、前記第2の他車と、前記第1の他車軌跡を含み且つ前記第2の他車が走行する車線の道幅を有する領域とが重なっている時間を算出することにより、前記交錯点までの前記第1の他車軌跡を前記第2の他車が遮蔽する時間である遮蔽時間
を推定する遮蔽時間推定部と、
前記自車の少なくとも一部分が前記第1の他車軌跡と重なり始めた時から、前記自車の位置が前記第1の他車軌跡に重なる時までの時間を算出することにより、前記自車が前記交錯点に進入し始めてから進入し終わるまでの時間である進入所要時間
を推定する進入時間推定部と
、
前記遮蔽時間と前記進入所要時間とを比較し、前記遮蔽時間が前記進入所要時間よりも長い場合、前記自車が前記交錯点に進入可能である
と判断する
進入判断部と、
を備える運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援方法及び運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自車が走行するための規範となる運転支援を行なう運転支援装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1は、自車の周囲状況に対する自車の規範的な運転行動の候補(規範行動候補)について、規範行動候補に係わる運転行動により自車が走行した場合における他車との接触リスクを予測し、予測結果に基づいて自車の規範行動を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、現在検出できている周囲状況から予測される全ての他車との接触リスクを判断している。よって、他車の数が増えるほど、処理すべき情報量が多くなり、自車の規範行動を決定する迄の時間が長くなるため、自車の運転支援が遅延してしまうという課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、処理すべき情報量が軽減され、自車の運転支援の遅延を抑制できる運転支援方法及び運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、自車が走行する自車軌跡と第1の他車が走行する第1の他車軌跡とが交錯点で交わり、第1の他車が交錯点に到達するまでの第1の他車軌跡上の地点であり、且つ、第1の他車軌跡と第1の他車とは異なる第2の他車が走行する軌跡である第2の他車軌跡とが交錯する地点に第1の他車よりも先に第2の他車が到達する走行シーンにおいて自車の運転を支援する運転支援装置の運転支援方法であって、運転支援装置は、第1の他車軌跡を遮蔽する時の第2の他車の車速を推定し、第2の他車と第2の他車軌跡とが重なっている時間、又は、第2の他車と、第1の他車軌跡を含み且つ第2の他車が走行する車線の道幅を有する領域とが重なっている時間を算出することにより、交錯点までの第1の他車軌跡を第2の他車が遮蔽する遮蔽時間を推定し、自車の少なくとも一部分が第1の他車軌跡と重なり始めた時から、自車の位置が第1の他車軌跡に重なる時までの時間を算出することにより、自車が交錯点に進入し始めてから進入し終わるまでの進入所要時間を推定し、遮蔽時間と進入所要時間とを比較し、遮蔽時間が進入所要時間よりも長い場合、自車が交錯点に進入可能であると判断する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、処理すべき情報量が軽減され、自車の運転支援の遅延を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1
実施形態に係わる運転支援装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1の運転支援装置の動作の一例である、第1実施形態に係わる運転支援方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係わる運転支援装置の動作の一例である、第2実施形態に係わる運転支援方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態に係わる運転支援装置は、自車の運転を支援する装置であって、例えば、
図4A~
図4E、
図5A、
図5Bに示す走行シーンにおいて、自車20の運転を支援する。即ち、運転支援装置は、自車20が走行する軌跡である自車軌跡30と、第1の他車(21、21a~21c)が走行する軌跡である第1の他車軌跡(31、31a~31c)とが交錯点(P、P1~P3)で交わる走行シーンを想定している。運転支援装置は、このような走行シーンにおいて、自車20が交錯点(P、P1~P3)に進入可能であるか否かを判断することにより、自車20の運転を支援する。
【0011】
自車軌跡30とは、現在から近い将来(例えば、1秒~30秒先)までの間に、自車が走行するであろう地図上の軌跡、又は自車が走行することが予想される地図上の軌跡であって、例えば、自車20の駆動輪の車軸中心が通る軌跡である。第1の他車軌跡(31、31a~31c)についても、自車軌跡30と同様に定義される。
【0012】
自車軌跡30と第1の他車軌跡(31、31a~31c)とが交わるという上位の概念には、
図4A~
図4Dに示すように自車軌跡30と第1の他車軌跡(31)とが合流するという下位の概念と、
図4Eに示すように自車軌跡30と第1の他車軌跡(31a~31c)とが交差するという下位の概念とが含まれる。換言すれば、運転支援装置は、交錯点(P)に合流できるか否か、又は、交錯点(P1~P3)を通過できるか否かを判断する。
【0013】
なお、
図4A~
図4E、
図5A、
図5Bに示す走行シーンの詳細、及び、これらの走行シーンにおける運転支援装置の具体的な動作は、後述する。
【0014】
図1を参照して、第1実施形態に係わる運転支援装置の構成を説明する。ここでは、
図4Aに示す走行シーンの例を参照して、運転支援装置の構成を説明する。運転支援装置は、自車20が進入する道路上に第1の他車21と交錯する交錯点Pが存在する走行シーンにおいて、自車20が交錯点Pへ
進入可能か否かを判断する。
【0015】
運転支援装置は、自車20周囲の道路環境及び自車20の周囲状況を取得するセンサユニット1と、取得した道路環境及び周囲状況に基づいて交錯点Pへの進入可否を判断するコントローラ2と、コントローラ2の判断結果に基づき、自車20の走行を制御する走行制御部3とを備える。
【0016】
センサユニット1は、自車20周囲の道路環境を検出する道路環境検出部11と、自車20の周囲に存在する他車を含む周囲状況を検出する周囲状況検出部12とを備える。
【0017】
道路環境検出部11は、自車20周囲の道路構造を示すデータを取得する。具体的には、自車20の現在位置に基づき、外部記憶装置4に記憶された道路地図データを参照して、自車20周囲の道路構造を示すデータを取得する。道路構造には、複数の道路が交差する交差点の構造、2つ以上の道路が合流する合流点の構造、道路の幅、道路に含まれる各車線の幅、及び道路に隣接する施設へ車両が出入りする出入り口の位置が含まれる。
【0018】
道路構造を示すデータは、道路地図データの一部として外部記憶装置4に記憶されていてもよい。また、自車20の現在位置(自己位置)は、自車20に搭載されたGPS衛星からの電波を受信するGPS受信機を用いて求めてもよい。或いは、GPS、オドメトリ、デッドレコニング、及び周囲画像を用いたマップマッチングを、単独で或いは組み合わせて使用して、自己位置を検出してもよい。或いは、道路地図データ及び自己位置検出を用いずに、自車20に搭載されたレーダー、ソナー、カメラ、又はLIDAR(ライダー:Laser Imaging Detection and Ranging)を含む各種センサーから取得されるデータに基づいて、自車20周囲の道路構造を示すデータを取得することもできる。
【0019】
道路環境検出部11は、自車20が走行する道路及び車線、当該道路及び車線の終端において交差する他の道路及び車線、これらの道路により形成される交差点の構造、及びこれらの道路及び車線の幅を示すデータを取得する。
【0020】
周囲状況検出部12は、自車20に搭載されたレーダー、ソナー、カメラ、LIDAR(3次元LIDARを含む)を含む各種センサーを用いて、自車20の周囲に存在する他車の相対位置、他車の大きさ、他車の進行方向を含む自車20の周囲状況を示すデータを取得する。周囲状況検出部12は、自車20に搭載されたセンサーのみならず、自車20の周囲に存在する他車、或いは、道路上に設置されたセンサーにより取得された周囲状況を示すデータを、車車間通信又は車路間通信により受信しても構わない。
【0021】
周囲状況検出部12は、自車20が走行する道路と交差する他の道路を走行する第1の他車21及び第2の他車22の自車20に対する相対位置、第1の他車21及び第2の他車22の進行方向の車体長さ、及び車幅方向の車体長さを示すデータを取得する。
【0022】
コントローラ2は、制御部の一例であるCPU(中央処理装置)、メモリ(主記憶装置)、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。マイクロコンピュータをコントローラ2として機能させるためのコンピュータプログラム(運転支援プログラム)を、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータのCPUは、コントローラ2が備える複数の情報処理部(13、14、15、16)として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによってコントローラ2を実現する例を示すが、もちろん、各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、コントローラ2を構成することも可能である。専用のハードウェアには、第1実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。また、コントローラ2に含まれる複数の情報処理部(13、14、15、16)を個別のハードウェアにより構成してもよい。コントローラ2は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。コントローラ2は、例えば、センサユニット1内の演算装置又は走行制御部3と兼用してもよい。コントローラ2は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ、等の補助記憶装置(外部記憶装置4)と、センサユニット1と、走行制御部3に接続されている。
【0023】
コントローラ2は、複数の情報処理部として、交錯点推定部13と、遮蔽時間推定部14と、進入時間推定部15と、進入判定部16とを備える。
【0024】
交錯点推定部13は、自車軌跡30と第1の他車軌跡31とが交わる交錯点Pを推定する。具体的には、センサユニット1から取得した周囲状況を示すデータには、第1の他車21に関するデータが含まれる。交錯点推定部13は、第1の他車21に関するデータから、第1の他車軌跡31を予測する。例えば、交錯点推定部13は、第1の他車21の位置、進行方向及び速度から、第1の他車21は、交差点において現在走行する車線をそのまま直進するであろうことを予測する。交錯点推定部13は、周囲状況検出部12により検出された自車20の周囲に存在する全ての他車について、他車軌跡を予測する。
【0025】
交錯点推定部13は、一方で、自車軌跡30を予測する。自車20は、予め設定された目的地までのルートに沿って走行している。このため、自己位置及び目的地までのルートに基づいて、自車軌跡30を予測することができる。或いは、自己位置及び自車20のターンシグナルの状態から、交差点を左折する自車軌跡30を予測してもよい。
【0026】
交錯点推定部13は、地図上において、自車軌跡30と他車軌跡31が交わるか否かを判断する。つまり、予測した他車軌跡の中に、自車軌跡30と交わる他車軌跡があるか否かを判断する。ここで、「交わる」には、「合流する」及び「交差する」が含まれる。自車軌跡30と他車軌跡31とが交わる場合、交錯点推定部13は、交錯点Pを特定する。「交差する」場合の交錯点は、自車軌跡30と他車軌跡が交差する点である。「合流する」場合の交錯点は、
図4Aに示すように、自車軌跡30と第1の他車軌跡31とが最初に重複する点(合流点)である。交錯点推定部13は、自車軌跡30と交錯する全ての他車軌跡について、その交錯点Pを特定する。
【0027】
遮蔽時間推定部14は、例えば
図4Aに示す走行シーンにおいて、第1の他車21から交錯点Pまでの第1の他車軌跡31を、第1の他車21とは異なる第2の他車22が遮蔽するか否かを判断する。つまり、遮蔽時間推定部14は、周囲状況検出部12により検出された自車20の周囲に存在する他車の中に、交錯点Pまでの第1の他車軌跡31を遮蔽する他車が有るか否かを判断する。
【0028】
具体的に、遮蔽時間推定部14は、第1の他車21以外の他車(第2の他車22)の軌跡(第2の他車軌跡32)が、交錯点Pまでの第1の他車軌跡31と交錯するか否かを判断する。つまり、他車同士(21、22)の間で、軌跡(31、32)の交錯があるか否かを判断する。軌跡(31、32)の交錯がある場合、遮蔽時間推定部14は、交錯する双方の他車について、軌跡(31、32)が交錯する地点に到達するまでの時間を推定する。遮蔽時間推定部14は、軌跡(31、32)が交錯する地点に早く到達する他車(第2の他車22)が、遅く到達する他車(第1の他車21)の軌跡(第1の他車軌跡31)を遮蔽する、と判断する。
図4Aの走行シーンで、遮蔽時間推定部14は、交錯点Pまでの第1の他車軌跡31を、第1の他車21以外の他車(第2の他車22)が遮蔽すると判断する。遮蔽時間推定部14は、検出された全ての他車同士の交錯の組合せについて、他車軌跡の遮蔽があるか否かを判断する。
【0029】
第1実施形態では、更に、遮蔽時間推定部14は、交錯点Pまでの第1の他車軌跡31を遮蔽する第2の他車22の中から、軌跡(第2の他車軌跡32)が自車軌跡30と交錯しない第2の他車22を絞り込む。つまり、軌跡(第2の他車軌跡32)が自車軌跡30から離間している第2の他車22を絞り込む。軌跡(第2の他車軌跡32)が自車軌跡30から離間している第2の他車22は、自車20と接触するリスクが無いと判断できる。よって、遮蔽時間推定部14は、交錯点Pまでの第1の他車軌跡31を遮蔽する第2の他車22であって、且つ、自車20と接触するリスクが無い第2の他車22を抽出することができる。
【0030】
自車20と接触するリスクが無い第2の他車22の絞り込みは付加的なものである。遮蔽時間推定部14は、交錯点Pまでの第1の他車軌跡31を遮蔽する第2の他車22であれば、自車20との接触リスクの有無に係わらず、次に示す遮蔽時間を推定してもよい。自車20と第2の他車22とが接触するリスクがある場合、後述するように、自車20の自車軌跡30を補正してもよい。これにより、自車軌跡30と第2の他車軌跡32の距離を所定値よりも長くして、接触リスクを無くすことができる。
【0031】
そして、遮蔽時間推定部14は、第2の他車22が第1の他車軌跡31を遮蔽する時間(遮蔽時間)を推定する。例えば、
図4Aに示すように、遮蔽時間推定部14は、第2の他車22の進行方向の車体長さ(L1)、第1の他車21が走行する車線の道幅(D1)、及び第2の他車22が走行する車線の道幅(D2)を用いて、遮蔽時間を推定する。長さ(L1)、道幅(D1)及び道幅(D2)は、道路環境検出部11により検出された道路環境、及び周囲状況検出部12により検出された周囲状況から取得すればよい。遮蔽時間推定部14は、長さ(L1)、道幅(D1)、及び道幅(D2)と第2の他車軌跡32の曲率とから、第1の他車軌跡31を遮蔽する時の第2の他車22の車速を推定することができる。また、「遮蔽時間」は、第2の他車22と第1の他車軌跡31とが重なっている時間、又は、第2の他車22と、第1の車線領域41とが重なっている時間である。「第1の車線領域41」とは、第1の他車軌跡31を含み、且つ車線の道幅(D2)を有する領域である。遮蔽時間推定部14は、抽出された全ての第2の他車22について、遮蔽時間を推定する。
【0032】
進入時間推定部15は、自車20が交錯点Pに進入し始めてから進入し終わるまでの時間(進入所要時間)を推定する。進入所要時間とは、自車20が交錯点Pに進入し始める時から交錯点Pに進入し終わる時までの時間である。具体的には、進入時間推定部15は、道路環境検出部11により検出された道路環境、周囲状況検出部12により検出された周囲状況、及び自車軌跡30から、進入所要時間を推定する。例えば、自車20が進入する車線の道幅(D2)、障害物の有無、自車軌跡30の曲率、自車20の進行方向の車体長さから、自車20が交錯点Pに進入するまでの車速を推定することができる。自車軌跡30と他車軌跡31とが交錯点Pで合流する
図4Aの走行シーンにおいて、「交錯点Pに進入し始める時」は、例えば、平面視において自車20の少なくとも一部分(前端部分)が第1の他車軌跡31と重なり始めた時である。「交錯点Pに進入し終わる時」は、自車20の位置が第1の他車軌跡31に重なる時、即ち、自車20が交錯点Pに到達する時である。自車20の少なくとも一部分が第1の他車軌跡31と重なり始めた時の代わりに、自車20の少なくとも一部分が第1の車線領域41と重なり始めた時であってもよい。「自車20の位置」とは、自車20を代表する位置であって、例えば、自車20の駆動輪の車軸中心である。他車の位置についても同様である。
【0033】
進入判定部16は、第2の他車22が第1の他車軌跡31を遮蔽する遮蔽時間と、自車20が交錯点Pに進入し始めてから進入し終わるまでの進入所要時間とに基づいて、自車20が交錯点Pに進入可能であるか否かを判断する。具体的には、進入判定部16は、第2の他車22が第1の他車軌跡31を遮蔽する遮蔽時間と、自車20が交錯点Pに進入し始めてから進入し終わるまでの進入所要時間とを比較する。遮蔽時間が進入所要時間よりも長い場合、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断する。遮蔽時間が進入所要時間以下である場合、自車20は交錯点Pに進入可能ではないと判断する。
【0034】
第2の他車22が交錯点Pまでの第1の他車軌跡31を遮蔽している時、第1の他車21は、第1の他車軌跡31を走行して交錯点Pまで到達できない。このため、遮蔽している時、交錯点Pにおける自車20と第1の他車21との接触リスクは低くなる。そこで、第2の他車22が第1の他車軌跡31を遮蔽する遮蔽時間が、自車20が交錯点Pに進入し始めてから進入し終わるまでの進入所要時間以上である場合、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断することができる。
【0035】
走行制御部3は、自車20の走行を制御する装置であって、且つ、自動運転機能を実現する装置である。第1実施形態に係わる運転支援装置は、自動運転機能を有する自車20に適用してもよく、自動運転機能を有しない自車20に適用してもよい。また、運転支援装置は、自動運転と手動運転とを切り替えることが可能な自車20に適用してもよい。なお、本実施形態における自動運転とは、例えば、ブレーキ、アクセル、ステアリングなどのアクチュエータの内、少なくとも何れかのアクチュエータが自車20の乗員の操作なしに制御されている状態のことを指す。そのため、その他のアクチュエータが乗員の操作により作動していたとしても構わない。また、自動運転とは、加減速制御、横位置制御などのいずれかの制御が実行されている状態であればよい。また、本実施形態における手動運転とは、例えば、ブレーキ、アクセル、ステアリングを乗員が操作している状態のことを指す。
【0036】
走行制御部3は、進入判定部16による判断結果に基づき、自車20の走行を自律的に制御する。進入判定部16が交錯点Pに進入可能であると判断した場合、ブレーキ、アクセル、ステアリングを操作して、自車20を自車軌跡30に沿って移動させ、交錯点Pに自車20を進入させる。
【0037】
走行制御部3は、進入判定部16が進入可能でないと判断した場合、第1の車線領域41の手前、或いは、所定の停止線の手前で自車20を停車させる。そして、センサユニット1から取得したデータに基づき、自らの判断ロジックに基づき、交錯点Pへの進入可能性を判断する。走行制御部3の判断アルゴリズムは、既知のものを使用してもよい。
【0038】
第1実施形態では、走行制御部3が自律的に自車20の走行を制御する例を示す。しかし、これに限らず、自車20が自動運転機能を有しない場合、又は、自動運転及び手動運転のうち手動運転が選択されている状態においても、自車20の運転を支援することができる。例えば、運転支援装置は、コントローラ2による、交錯点Pに進入可能であるか否かの判断結果を、自車20の乗員に対して音声、画像、映像により通知することができる。
【0039】
図2のフローチャートを参照して、
図1の運転支援装置の動作の一例である、第1実施形態に係わる運転支援方法を説明する。ここでは、
図4Aに示す走行シーンの例を参照して、運転支援装置の動作を説明する。
【0040】
まず、ステップS01において、センサユニット1は、自車20周囲の道路環境及び自車20の周囲状況を取得する。具体的には、道路環境検出部11は、自車20の現在位置に基づき、外部記憶装置4に記憶された道路地図データを参照して、自車20周囲の道路構造を示すデータを取得する。周囲状況検出部12は、自車20に搭載されたレーダー、ソナー、カメラ、LIDARを含む各種センサーを用いて、自車20の周囲に存在する他車の相対位置、他車の大きさ、他車の進行方向を含む自車20の周囲状況を示すデータを取得する。
【0041】
ステップS02に進み、コントローラ2は、自車20と接触するリスクがある他車を想定または検出する。具体的には、交錯点推定部13は、第1の他車21の位置、進行方向及び速度から、第1の他車21の第1の他車軌跡31を予測する。交錯点推定部13は、周囲状況検出部12により検出された自車20の周囲に存在する全ての他車について、第1の他車軌跡31を予測する。一方、交錯点推定部13は、自車軌跡30を予測する。そして、交錯点推定部13は、地図上において、自車軌跡30と他車軌跡31が交錯するか否かを判断する。コントローラ2は、第1の他車軌跡31が自車軌跡30と交錯する第1の他車21を、自車20と接触するリスクがある他車と判断する。
【0042】
ステップS03に進み、交錯点推定部13は、自車軌跡30と、接触リスクがある第1の他車21の第1の他車軌跡31とが交わる交錯点Pを推定する。
【0043】
ステップS04に進み、コントローラ2は、第1の他車軌跡31を遮蔽する第2の他車22であって、且つ、自車20と接触するリスクが無い第2の他車22が居るか否かを判断する。遮蔽時間推定部14は、第1の他車軌跡31を、第1の他車21とは異なる第2の他車22が遮蔽するか否かを判断する。第1の他車軌跡31を遮蔽する第2の他車22が居る場合、遮蔽時間推定部14は、第2の他車22の軌跡(第2の他車軌跡32)が自車軌跡30と交錯するか否かを判断する。遮蔽時間推定部14は、第1の他車軌跡31を遮蔽する第2の他車22であって、且つ、自車20と接触するリスクが無い第2の他車22を抽出する。
【0044】
ステップS04で少なくとも1台の第2の他車22が抽出された場合、第2の他車22が第1の他車軌跡31を遮蔽する時間(遮蔽時間)を基に、自車20の交錯点Pへの進入可否を判断するため、ステップS05へ進む。一方、第2の他車22が抽出されない場合、第1の他車21が交錯点Pに到達するまで時間を基に、自車20の交錯点Pへの進入可否を判断するため、ステップS09へ進む。
【0045】
ステップS05に進み、遮蔽時間推定部14は、第2の他車22が第1の他車軌跡31を遮蔽する時間(遮蔽時間Tab)を推定する。
【0046】
ステップS06に進み、進入時間推定部15は、自車20が交錯点Pに進入し始めてから進入し終わるまでに必要な時間(進入所要時間Tp)を推定する。
【0047】
ステップS07に進み、進入判定部16は、第2の他車22が第1の他車軌跡31を遮蔽する遮蔽時間(Tab)と、自車20が交錯点Pに進入し始めてから進入し終わるまでの進入所要時間(Tp)とを比較する。
【0048】
進入判定部16は、遮蔽時間(Tab)が進入所要時間(Tp)よりも長い場合(S07でYES)、ステップS08に進み、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断する。進入判定部16は、遮蔽時間(Tab)が進入所要時間(Tp)以下である場合(S07でNO)、ステップS12に進み、自車20は交錯点Pに進入可能ではないため、交錯点Pの手前で停止すべきと判断する。
【0049】
一方、ステップS09において、進入判定部16は、第1の他車21が交錯点Pに到達するまでの時間(到着時間:Tbp)を予測する。具体的には、第1の他車21の地図上の位置及び現在の車速から、到達時間(Tbp)を予測することができる。ステップS10に進み、ステップS06と同様に、進入時間推定部15は、自車20が交―点Pに進入し始めてから進入し終わるまでに必要な時間(進入所要時間Tp)を推定する。
【0050】
ステップS11に進み、進入判定部16は、到達時間(Tbp)に予め定めた余裕時間(Tm)を加算した合計時間(Tbp+Tm)と、進入所要時間(Tp)とを比較する。
【0051】
進入判定部16は、合計時間(Tbp+Tm)が進入所要時間(Tp)よりも長い場合(S11でYES)、ステップS08に進み、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断する。進入判定部16は、合計時間(Tbp+Tm)が進入所要時間(Tp)以下である場合(S11でNO)、ステップS12に進み、自車20は交錯点Pに進入可能ではないため、交錯点Pの手前で停止すべきと判断する。
【0052】
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
【0053】
交錯点Pまでの第1の他車軌跡31を第2の他車22が遮蔽している間、第1の他車21は、第1の他車軌跡31を走行して交錯点Pまで到達できない。このため、第2の他車22が遮蔽している間、交錯点Pにおける自車20と第1の他車21との接触リスクは低くなる。そこで、遮蔽時間(Tab)と進入所要時間(Tp)とに基づいて、自車20が交錯点Pに進入可能であるか否かを判断できる。これにより、第1の他車21との接触リスクの判断処理が不要となり、処理すべき情報量が軽減され、自車20の運転支援の遅延を抑制できる。第1の他車21を検出できない状況であっても、自車20が交差点へ進入可能であると判断ができる。例えば、第1の他車21が走行する道路形状がカーブ等で見通しが悪い場合でも、交差点へ進入可能であると判断ができる。
【0054】
遮蔽時間(Tab)と進入所要時間(Tp)よりも長い場合、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断できる。これにより、第1の他車21との接触リスクの判断処理が不要となり、処理すべき情報量が軽減され、自車の運転支援の遅延を抑制できる。
【0055】
遮蔽時間推定部14は、遮蔽時間(Tab)を、第2の他車22の進行方向の車体長さ(L1)、第1の他車21が走行する車線の道幅(D1)、及び第2の他車22が走行する車線の道幅(D2)を用いて予測する。第2の他車22の大きさと道路形状に応じて遮蔽時間(Tab)を予測できる。
【0056】
第2の他車22が走行する第2の他車軌跡32は、自車軌跡30から離間している。これにより、自車20との接触リスクが無い第2の他車22の動作を利用して、第1の他車21との接触リスクを下げることができる。
【0057】
(第2実施形態)
第2実施形態では、第1実施形態と同様にして、コントローラ2が、遮蔽時間と進入所要時間とに基づいて、自車20が交錯点Pに進入可能であるか否かを判断する。ただし、第2実施形態では、具体的な判断方法が、第1実施形態と異なる。
【0058】
第2実施形態に係わる運転支援装置の構成は、進入判定部16を除き、
図1と同じである。第2実施形態に係わる進入判定部16は、遮蔽時間(Tab)に基づいて、第1の他車21が交錯点Pに到達するまでの時間(到達時間Tabp)を予測する。例えば、遮蔽時間(Tab)に所定の基準時間を加算して到達時間(Tabp)を算出してもよい。或いは、遮蔽時間(Tab)に所定の係数(1.1~1.5)を乗算して到達時間(Tabp)を算出してもよい。
【0059】
そして、進入判定部16は、到達時間(Tabp)に予め定めた余裕時間(Tm)を加算した合計時間(Tall)が進入所要時間(Tp)よりも長い場合、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断する。
【0060】
図3のフローチャートを参照して、第2実施形態に係わる運転支援装置の動作の一例である、第2実施形態に係わる運転支援方法を説明する。ここでは、
図4Aに示す走行シーンの例を参照して、運転支援装置の動作を説明する。また、
図2と共通する点については適宜省略し、相違点を主として説明する。
【0061】
ステップS01~S06、ステップS08~S12は、
図2のそれらと同じ処理である。
図3のフローチャートでは、ステップS05とS06の間で更にステップS21を実施し、ステップS07の代わりにステップS22を実施する点が相違する。
【0062】
ステップS21では、進入判定部16が、遮蔽時間(Tab)に基づいて、第1の他車21が交錯点Pに到達するまでの時間(到達時間Tabp)を予測する。
【0063】
ステップS22では、進入判定部16が、合計時間(Tall)が進入所要時間(Tp)よりも長い場合(S22でYES)、ステップS08に進み、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断する。進入判定部16は、合計時間(Tall)が進入所要時間(Tp)以下である場合(S22でNO)、ステップS12に進み、自車20は交錯点Pに進入可能ではないため、交錯点Pの手前で停止すべきと判断する。
【0064】
以上説明したように、第2実施形態によれば、進入判定部16が、遮蔽時間(Tab)から第1の他車21が交錯点Pに到達するまでの時間(到達時間Tabp)を予測できる。よって、到達時間(Tabp)に所定の余裕時間(Tm)を加算した合計時間(Tall)が、進入所要時間(Tp)より長い場合、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断できる。これにより、第1の他車21との接触リスクの判断処理が不要となり、処理すべき情報量が軽減され、自車20の運転支援の遅延を抑制できる。
【0065】
(第1の変形例)
第1の変形例では、進入判定部16が進入可能か否かを判断する時期(タイミング)の具体例を説明する。実際には、第2の他車22が、途中で判断を変更する場合も考えられる。具体的には、第2の他車22が、第1の他車軌跡を遮断し始める前に、第1の他車21を先に通過させる為に一次停止する場合がある。このような第2の他車22の判断の変更に対応するために、進入判定部16は、第2の他車22が第1の他車軌跡31を遮蔽し始めた後に、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断する。すなわち、進入判定部16は、第2の他車22が第1の他車軌跡31を遮蔽し始める前に、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断しない。第2の他車22が途中で判断を変更しても、安全な進入判断を行うことができる。
【0066】
例えば、第2の他車22の少なくとも一部が第1の他車軌跡31と重複し始めた後に、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断する。又は、第2の他車22の少なくとも一部が第1の他車軌跡31を含む第1の車線領域41と重複し始めた後に、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断する。換言すれば、第2の他車22の少なくとも一部が道路の中央線を越えた後に判断する。また或いは、第1の他車21が通過できない位置まで、第2の他車22が到達した後に、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断する。第1の他車軌跡31を遮蔽しようとしていた第2の他車22が、第1の他車軌跡31を遮蔽する前に停止する場合に、対応することができる。つまり、第2の他車22が第1の他車軌跡31を遮蔽し始める前に第1の他車軌跡31の遮蔽を中断した場合、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断しない。第2の他車22が途中で判断を変更しても、安全な進入判断を行うことができる。
【0067】
(第2の変形例)
第2の変形例では、自車20が走行し始める時期(タイミング)について説明する。第2の他車22が第1の他車軌跡31を遮蔽し始め、且つ自車20は交錯点Pに進入可能であると判断した時、自車20は走行し始める。これにより、自車20が交錯点Pに進入し始めてから進入し終わるまでの時間(進入所要時間)を短縮することができる。また、自車20の発進意図を第1の他車21に見せることで第1の他車21との接触リスクを下げることができる。例えば、第2の他車22の少なくとも一部が道路の中央線を越えた時に、自車20は交錯点Pに進入可能であると判断し、自車20は徐行を開始することで交差点への進入意思を第1の他車21に対して表すことができる。
【0068】
(第3の変形例)
上記した実施例及び変形例において、交差点(交錯点P)へ進入することについて、道路の間での優先順位は述べていない。しかし、実際には、交差する道路の間において、優先順位に違いがある。交錯点Pへ進入することについて、第1の他車21の優先順位が、自車20の優先順位よりも高い場合であっても、実施例及び変形例を適用することにより、安全な進入判断を行うことができる。
【0069】
(第1の走行シーン)
図4Aは、第1の走行シーンを示す上面図である。自車20が走行する道路の終端が、他の道路の途中に接続している。自車20が、T字型の交差点に接近している。自車20は、交差点において、左折して他の道路に合流するルートを設定している。或いは、自車20は、交差点において左折する意思表示として、左側のターンシグナルを点滅させている。一方、第1の他車21が他の道路を走行し、交差点に接近している。第1の他車21が走行する方向は、自車20が左折した後に走行する方向と同じである。第1の他車21は、その速度及びターンシグナルの状態などから交差点を直進することが予測される。よって、自車20が走行する自車軌跡30と、第1の他車21が走行する第1の他車軌跡31とは交差点において交わる。換言すれば、自車軌跡30と第1の他車軌跡31とは交錯点Pで合流している。
【0070】
一方、第1の他車21とは異なる第2の他車22が、他の道路を第1の他車21とは異なる方向に走行している。第2の他車22は交差点を右折して、自車20が走行する道路に進入しようとしている。よって、第2の他車軌跡32が、交錯点Pまでの第1の他車軌跡31と交錯している。
【0071】
上記した第1の走行シーンにおいて、第1及び第2実施形態の運転支援装置は、第2の他車22が第1の他車軌跡31を遮蔽する遮蔽時間と、自車20が交錯点Pに進入し始めてから進入し終わるまでの時間である進入所要時間とに基づいて、自車20が交錯点P(交差点)に進入可能であるか否かを判断することができる。
【0072】
(第2の走行シーン)
図4Bは、第2の走行シーンを示す上面図である。第1の走行シーンと異なり、第
1の他車2
1が検出されていない。自車20が交差点に接近している場合に、運転支援装置は、交差点から所定距離だけ離れた位置に所定速度で交差点に接近する第
1の他車2
1を仮定してもよい。そして、第
1の他車2
1を検出できない状況であっても、仮定した第
1の他車2
1に基づいて、自車20の進入可否を判断することができる。
【0073】
(第3の走行シーン)
図4Cは、第3の走行シーンを示す上面図である。第3の走行シーンでは、第2の他車22の進路を妨げる障害物が存在する。障害物の一例として、横断歩道上の歩行者35が第2の他車22の進路を遮蔽している。第2の他車22は、第1の他車21と同じ車線上を、第1の他車21に先行している。第2の他車22は、交差点において左折する進路32を取る。進路32上の横断歩道に歩行者35が居るため、横断歩道の手前で一時停止する必要がある。第2の他車22が一時停止している間、
図4Cに示すように、第2の他車22は、第
1の他車軌跡31を遮蔽し続けてしまう。
【0074】
そこで、遮蔽時間推定部14は、遮蔽時間を、第2の他車22の進路32を妨げる障害物(歩行者35)に基づいて予測する。例えば、遮蔽時間推定部14は、進路32と歩行者35との位置関係、歩行者35の移動速度から、第2の他車22が横断歩道を通過するまでに必要な時間(横断時間)を遮蔽時間として予測すればよい。道路を横断する歩行者35等が第2の他車22の進路32を妨げる場合は、その横断時間に基づいて遮蔽時間を予測できる。
【0075】
(第4の走行シーン)
図4Dは、第4の走行シーンを示す上面図である。第4の走行シーンでは、第2の他車22が、道路に隣接する施設36の出入り口から道路に右折にて進入しようとしている。第2の他車22は、道路への進入時に、第1の他車軌跡31を遮蔽する。遮蔽時間推定部14は、道路への進入時の第2の他車軌跡32の曲率、第2の他車22が進入する車線の道幅、第2の他車22の進行方向の車体長さを用いて、遮蔽時間を推定する。なお、道路に隣接する施設36の出入り口の位置は、道路環境検出部11によって取得される。
【0076】
(第5の走行シーン)
図4Eは、第5の走行シーンを示す上面図である。第5の走行シーンでは、自車20が走行する道路の途中が他の道路の途中と接続している交差点である。自車20が走行する道路が他の道路と交差している。自車軌跡30は、交差点を直進する進路である。他の道路上には、第1の他車(21a、21b)が存在する。自車20と同じ道路の対向車線上には、第1の他車21cが存在する。第1の他車(21a、21b、21c)は全て交差点に接近している。第1の他車(21a、21b、21c)は、その速度及びターンシグナルの状態などから交差点を直進することが予測される。よって、交差点を直進する自車軌跡30と、第1の他車(21a、21b)が走行する第1の他車軌跡(31a、31b)とは交錯点(P1、P2)において交差している。
【0077】
自車軌跡30と第1の他車軌跡(31a、31b)とが交錯点(P1、P2)で交差する
図4Eの走行シーンにおいて、「交錯点(P1、P2)に進入し始める時」は、例えば、平面視において自車20の少なくとも一部分(前端部分)が第1の他車軌跡(31a、31b)と重なり始めた時である。「交錯点(P1、P2)に進入し終わる時」は、例えば、平面視において自車20の後端部分が第1の他車軌跡(31a、31b)と重ならなくなる時である。上記した「進入し始める時」及び「進入し終わる時」の定義において、「第1の他車軌跡(31a、31b)」の代わりに「第1の車線領域(41a、41b)」であってもよい。換言すれば、「進入所要時間」は、自車20の少なくとも一部が第1の他車軌跡(31a、31b)と重なっている時間、又は、自車20の少なくとも一部が第1の車線領域(41a、41b)と重なっている時間である。
【0078】
一方、第2の他車(22a、22b)が、道路に隣接する施設(36、38)の出入り口から道路に進入しようとしている。第2の他車(22a、22b)は、道路への進入時に、第1の他車軌跡(31a、31b)をそれぞれ遮蔽する。遮蔽時間推定部14は、道路への進入時の第2の他車軌跡の曲率、第2の他車(22a、22b)が進入する車線の道幅、第2の他車(22a、22b、22c)の進行方向の車体長さを用いて、遮蔽時間の各々を推定する。進入判定部16は、交錯点(P1、P2)の各々について、遮蔽時間と進入所要時間とに基づいて、自車20が(P1、P2)に進入可能であるか否かを判断する。具体的には、交錯点(P1、P2)の全てについて進入可能であると判断された場合に限り、自車20が交差点に進入可能であると判断する。交錯点(P1、P2)の少なくとも1つで、進入不可能であると判断された場合、自車20が交差点に進入可能であると判断しない。
【0079】
なお、自車軌跡30が、交差点を右折する進路である場合、
図4Eに示すように、自車軌跡30は、第1の他車(21a、21b、21c)が走行する第1の他車軌跡(31a、31b、31c)と交錯点(P1、P3)において交わっている。一方、第2の他車(22c)が、道路から施設(37)の出入り口へ進入しようとしている。第2の他車(22c)は、施設(37)への進入時に、第1の他車軌跡(31c)を遮蔽する。進入判定部16は、交錯点(P1、P3)の各々について、遮蔽時間と進入所要時間とに基づいて、自車20が(P1、P3)に進入可能であるか否かを判断する。
【0080】
(第6の走行シーン)
第1及び第2実施形態において、遮蔽時間推定部14は、交錯点Pまでの第1の他車軌跡31を遮蔽する第2の他車22の中から、第2の他車軌跡32が自車軌跡30と交錯しない第2の他車22を絞り込んだ。これに対して、第6の走行シーンでは、第2の他車22を絞り込まずに、自車軌跡30aを補正する。
【0081】
図5Aは、第6の走行シーンを示す上面図である。第2の他車軌跡32と自車軌跡30aの距離が所定値以下である場合、自車20と第2の他車22とが接触するリスクがある。第6の走行シーンでは、第2の他車22と自車20との接触リスクを無くすために、自車軌跡30と第2の他車軌跡32の距離が所定値
よりも長くなるように自車軌跡30aを補正する。
【0082】
自車20が走行する道路の途中が、他の道路の終端に接続している。自車20が、T字型の交差点に接近している。自車20は、交差点において、右折して他の道路に進入するルートを設定している。一方、第1の他車21は自車20と同じ道路の対向車線を走行し、交差点に接近している。自車20が走行する自車軌跡30aと、第1の他車21が走行する第1の他車軌跡31とは交差点において交わる。
【0083】
一方、第1の他車21とは異なる第2の他車22が、他の道路から交差点に進入し、交差点を右折しようとしている。第2の他車軌跡32が、第1の他車軌跡31と交錯している。第2の他車22は、第1の他車軌跡31を遮蔽している。
【0084】
自車20が交錯点(交差点)に進入可能であると判断した場合、走行制御部3は、第2の他車軌跡32と自車軌跡30aの距離が所定値以下であるか否かを判断する。距離が所定値以下であると判断した場合、走行制御部3は、自車軌跡30aを、自車軌跡30と第2の他車軌跡32の距離が所定値よりも長くなる自車軌跡30bへ補正する。走行制御部3は、補正後の自車軌跡30bに沿って自車20を走行させる。これにより、第2の他車22と自車20との接触リスクを低減することができる。
【0085】
(第7の走行シーン)
図5Bは、第7の走行シーンを示す上面図である。第7の走行シーンも、第6の走行シーンと同様にして、第2の他車22と自車20との接触リスクを無くすために、自車軌跡30と第2の他車軌跡32の距離が所定値
よりも長くなるように自車軌跡30aを補正する。
【0086】
自車20は、交差点を右折するルートを設定している。自車20と同じ道路の対向車線を第1の他車21が、交差点に向かって走行している。第1の他車21には、交差点を直進する第1の他車軌跡31が予測されている。自車20と並走する第3の他車39が交差点に接近し、横断歩道上を歩行者35が歩行している。第1の他車21と同一車線には、第1の他車21の前方を第2の他車22が走行している。第2の他車22は、交差点において右折する進路32を取る。進路32上の横断歩道に歩行者35が居る。また、進路32上の対向車線を第3の他車39が走行する。このため、第2の他車22は、交差点内で、一時停止する必要がある。第2の他車22が一時停止している間、
図5Bに示すように、第2の他車22は、第
1の他車軌跡31を遮蔽し続けてしまう。そこで、遮蔽時間推定部14は、遮蔽時間を、第2の他車22の進路32を妨げる障害物(歩行者35及び第3の他車39)に基づいて予測する。
【0087】
自車20が交錯点(交差点)に進入可能であると判断した場合、走行制御部3は、第2の他車軌跡32と自車軌跡30aの距離が所定値以下であるか否かを判断する。距離が所定値以下であると判断した場合、走行制御部3は、自車軌跡30aを、自車軌跡30と第2の他車軌跡32の距離が所定値よりも長くなる自車軌跡30bへ補正する。走行制御部3は、補正後の自車軌跡30bに沿って自車20を走行させる。これにより、第2の他車22と自車20との接触リスクを低減することができる。
【0088】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0089】
2 コントローラ(運転支援装置)
20 自車
21、21a、21b、21c 第1の他車
22、22a、22b、22c 第2の他車
30、30a、30b 自車軌跡
31、31a、31b、31c 第1の他車軌跡
32 第2の他車軌跡
35、39 障害物
D1 第1の他車が走行する車線の道幅
D2 第2の他車が走行する車線の道幅
L1 第2の他車の進行方向の車体長さ
P、P1、P2、P3 交錯点
Tab 遮蔽時間
Tabp 到達時間
Tm 余裕時間
Tp 進入所要時間