IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 伊藤 憲秀の特許一覧

<>
  • 特許-弾性バフ環体とこの加工方法 図1
  • 特許-弾性バフ環体とこの加工方法 図2
  • 特許-弾性バフ環体とこの加工方法 図3
  • 特許-弾性バフ環体とこの加工方法 図4
  • 特許-弾性バフ環体とこの加工方法 図5
  • 特許-弾性バフ環体とこの加工方法 図6
  • 特許-弾性バフ環体とこの加工方法 図7
  • 特許-弾性バフ環体とこの加工方法 図8
  • 特許-弾性バフ環体とこの加工方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】弾性バフ環体とこの加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 13/12 20060101AFI20230210BHJP
   B24D 13/18 20060101ALI20230210BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20230210BHJP
【FI】
B24D13/12
B24D13/18
B24B55/02 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019125575
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020203369
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】519193965
【氏名又は名称】伊藤 憲秀
(72)【発明者】
【氏名】松原 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】松原 成希
(72)【発明者】
【氏名】松原 光作
(72)【発明者】
【氏名】日下部 篤史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 憲秀
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-098295(JP,U)
【文献】特開平01-159179(JP,A)
【文献】特公昭50-006676(JP,B1)
【文献】登録実用新案第3160335(JP,U)
【文献】特開2017-001172(JP,A)
【文献】登録実用新案第3162200(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00 - 99/00
B24B 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被削材の表面に対し、グラインディング及びホーニング及びポリシングを行う弾性バフ環体のバフ材は薄円形弾性体であって、上記薄円形弾性体は、フエルト、織布、不織布、皮、紙、人工又は天然の樹脂、ゴムの何れかのみ又は混成の薄円形積層環体からなり、上記薄円形積層環体の全体に砥粒を固着させるか又は薄円形積層環体の外周表面に砥粒を固着させた弾性バフ環体であり、上記弾性バフ環体を円形に成形した円形バフ材となし、上記円形バフ材と同型でクーラント液の通路溝を両側面に放射状に形成した紙又は樹脂板又は金属板からなるクーラント誘導板と、上記クーラント誘導板と同型でクーラント液の通路溝を片側面に形成した紙又は樹脂板又は金属板からなる2枚の側壁誘導板とからなり、上記円形バフ材とクーラント誘導板とを積層させるとともに、上記円形バフ材に対して両端2枚の側壁誘導板を円形バフ材に向けて挟み積層させてなる弾性バフ環体において、
クーラント供給装置からのクーラント液は、エマルジョンにして加工機の主軸に明けたセンタースルーから上記弾性バフ環体の軸芯部内に送り込み、上記弾性バフ環体を両側から挟む側壁誘導板の各通路溝内を通過時に、上記円形バフ材に浸透させることで該円形バフ材を微増径させ、その後、上記弾性バフ環体内から被削材の表面に噴射し、研削点を冷却、潤滑しながらグラインディング、ホーニング乃至ポリシングすることを特徴とする弾性バフ環体による加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被削材の内外径や平面に対して砥石外径を増減径制御させながら研磨するゴム素材、特殊繊維素材、特殊革素材を弾性素材化させ、この弾性素材を円盤又は棒状・板状の表面に固着した特殊な弾性バフ環体(弾性バフ)となした弾性バフ環体に関する。
更には、被削材である鉄、非鉄の表面仕上の形状精度や粗度向上を目的とし、被削材の研削・研磨からホーニング及びラッピング仕上げに至る迄、高精度加工が可能なホーニング砥石に要求される増減径する特性性能を、砥石内部の特殊な弾性バフに供給するクーラント液の静圧及び圧力制御で、微細実施を可能としたグラインディング、ホーニング、ポリシング加工方法である。
【背景技術】
【0002】
近年、被削材の内径をグラインディング、ホーニングやポリシングの磨き作業を行うには、内径を増減径するホーニング砥石、バフ砥石や風船状のゴム砥石で被削材の3次元形状の表面磨きをする砥石が提供されている。上記砥石の中心から加工点にクーラント液を砥石内に供給・通過させるクーラント通過砥石が提供されている。
【0003】
先ず、ホーニング工具の径方向の制御を可能としてホーニング砥石の摩耗等による影響を受けることなく高精度の穴加工を行なうものがある。
その構成は、ホーニングユニットを、先端部にホーニングユニットを装着して回転する主軸と、この主軸に貫通して設けられた制御軸に、数値制御によって主軸と相対的な回転を与えるホーニングユニット制御機構とを有し、前記ホーニングユニットが、前記制御軸と係合し、前記制御軸とともに回転する連結軸、この連結軸の先端に形成されたねじとかみ合い連結軸の回転によって軸方向に移動を行なうナット、このナットと連接し軸方向に移動を行なう径方向制御軸、この径方向制御軸の周面に配設され、径方向制御軸の軸方向への移動によってホーニング砥石が径方向に移動するホーニング工具とからなり、前記主軸の回転中であってもホーニング工具の径方向の制御を可能とした数値制御ホーニング装置である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
次に、研削研磨装置となる風船状のゴム砥石で、被削材の3次元形状の表面を磨きするには、表面に砥石や砥粒を含有し、又は固定した三次元形状の中空体内に、圧力制御機構からの一定圧の圧力媒体を加えて該中空体を密閉してなる研削研摩装置である。上記中空体は、ゴム、織布、合成樹脂などの可撓性物質とし、更に中空体には微細な穴を有し、液体浸透性を有するものである(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
更に、クーラント液の砥石内通過性を持つ砥石は、クーラントガイド台金付き金網研削砥石であって、金網材は円筒に形成されるとともにドーナツ状に巻き込まれた外周面に砥粒を固着させた金網輪体と、上記金網輪体の内周面側を嵌合固定する凹状の嵌合部と工具ホルダに保持される支持部とを具備したクーラントガイドからなり、上記クーラントガイドの支持部にあけた通孔は、上記嵌合部の外周面にあけた多数の放出口と連通されているものである(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
更に、クーラント液の砥石内通過性を持つ砥石は、芯線内部に通孔を有する芯線を筒状に形成した金網体、上記金網体の先端表面に砥粒を焼成又は電着させた鳥の巣状研削砥石において、上記鳥の巣状研削砥石を構成する金網体の後端芯線内の通孔から圧入される研削液又はクーラント液を、金網体の芯線先端に開口する通孔から刃先砥粒に供給する構成としたものである(例えば、特許文献4参照。)。
【0007】
更に、砥石表面での凹凸が発生し難く、寿命が長く、かつ研摩研削力の強い弾性砥石がある。その構成は、重量で50~80%の量の砥粒が混練混入されかつ150℃以上の融点を有する所定の長さの繊維状ないし針状のナイロンからなる砥粒入り樹脂体と、2g/d以上の強度を有し繊維径1.0mm以下の短繊維との混合体が、硬化後40%以上の伸びを持つゴム弾性を示す接着剤を介してロール状に固められてなる弾性砥石である(例えば、特許文献5参照。)。
【0008】
更に、研磨用砥石は、板状被削材を研磨するための研磨用砥石であり、研磨ムラが発生せず、かつ良好な圧力応答性を有する研磨用砥石である。その構成は、円筒状の芯材1上に多孔質弾性体2を設け、多孔質弾性体2の外周上に研磨層4を設けた研磨用砥石であって、前記多孔質弾性体2がゴムスポンジである研磨用砥石を提供する。ゴムスポンジ2は、ゴム硬度がゴム硬度計Cスケールで5~40であり、かつ反発弾性率が50~9%であることが好ましいものである(例えば、特許文献6参照。)。
【0009】
更に、加工体を切削する切削砥石の外周と加工体間の加工点へクーラントを的確に供給し、切削砥石に構成された砥石等の切刃部の磨耗を抑制すると共に加工体の品質向上を図る切削砥石がある。その構成は、台金17の外周部に砥石18を固着した切削砥石において、台金17の回転中心部にクーラント供給口23を設け、台金17の外周部や砥石18にはクーラントを噴出するクーラント噴出口21を設ける。これらクーラント噴出口21とクーラント供給口23とを連通する密閉されたクーラント通路20を切削砥石2内に設ける。クーラント通路20を通じてクーラント噴出口21からクーラントを噴出することができるので、切削砥石2を回転して加工体を切削するに際し、切削砥石2の外周と加工体間の摩擦熱の発生する加工点へ的確にクーラントを供給でき冷却及び遊離粉の除去を確実に行うことができるものである(例えば、特許文献7参照。)。
【0010】
更に、ゴム砥石よりも硬く熱硬化性樹脂を含んだ従来のポリビニルアセタール系砥石よりも柔らかく目詰まりし難いという性質を有し、高速回転研磨にも耐えて、被研磨面の形状に倣った研磨を可能とする高弾性砥石がある。その構成は、少なくともポリビニルアセタール樹脂を含む結合剤、砥粒及び気孔からなる高弾性砥石であって、その結合剤には、さらにゴム質ポリマーを含むことを特徴とするものであり、好ましくは、ポリビニルアセタール樹脂30~60重量%、ゴム質ポリマー10~50重量%及び熱硬化性樹脂0~40重量%の範囲で含むことができる(例えば、特許文献8参照。)。
【文献】
【0011】
【文献】特開平8-216015号公報
【文献】特開昭61-230857号公報
【文献】特許第6041248号公報
【文献】特許第6041249号公報
【文献】特開平10-156725号公報
【文献】特開2006-326795号公報
【文献】特開2012-143836号公報
【文献】特開2014-136267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特開平8-216015号公報は、ホーニングヘッド本体に収容したテーパコーンがテーパコーンと独立に軸方向に移動することにより、加工穴の止り側に移動するにつれて砥石台の止り側部を半径方向に強制拡張させるように構成した有底穴加工用ホーニングヘッド他では、メカ手段によりホーニング砥石の外径を増減する加工用増径ホーニング砥石である。これが為に、機械的な摩擦部が存在し、しかもテーパコーンを機械的に強制的に回転主軸の軸心方向に微動制御するから、硬い砥石をワーク内壁面に強い力で押し付ける結果、砥石のひび割れを起こす他、砥石に機械的ストレスを与え、高精度な研削面が得られ難いと言う問題点が指摘される。
【0013】
上記特開昭61-230857号公報は、砥石となる中空体は、ゴム、織布、合成樹脂などの可撓性物質とし、更に中空体には微細な穴を有し、液体浸透性を有するものなど多彩であるが、砥石作用時に研削面に押し当てると中空体が過剰に変形するから、精密な研削は保証されない。
【0014】
また、特許第6041248号公報と特許第6041249号公報とは、共にクーラント液の砥石内通過性を持つ砥石である。この砥石は、クーラントガイド台金付き金網研削砥石で、この金網材は円筒に形成され、又は芯線内部に通孔を有する芯線を筒状に形成した金網体研削砥石である。従って、クーラント液の浸透性に優れているものの、砥石作用時に研削面に強く押し当てると中空体が過剰に変形し、精密な研削加工は保証されない。
【0015】
また、特開平10-156725号公報の弾性砥石は、砥石表面での凹凸が発生し難く、寿命が長く、かつ研摩研削力の強い弾性砥石が得られると言われる。しかし、繊維同士の絡み合いが弱いため、実際の研磨作用において、繊維の解け作用が有り、これにより、研削砥石を強く研削面に押し付けて研磨・ホーニング作用すると、立ち所に弾性砥石を短命にする欠点が指摘される。
【0016】
また、特開2006-326795号公報の研磨用砥石は、円筒状の芯材1上に多孔質弾性体2を設け、多孔質弾性体2の外周上に研磨層4を設けた研磨用砥石であって、前記多孔質弾性体2がゴムスポンジである。従って、研削面に対する強い押し付け力で研削すると、剛性の弱い多孔質弾性体2のゴムスポンジが大きく歪み、高精度な研磨・ホーニング面が得られない。
【0017】
また、特開2012-143836号公報の切削砥石及びこの切削加工方法は、加工体を切断するもので、薄手の砥石カッターであるから本願発明の弾性バフ環体とは全く異なる。
【0018】
また、特開2014-136267号公報の高弾性砥石は、少なくともポリビニルアセタール樹脂を含む結合剤、砥粒及び気孔からなる高弾性砥石であるにも係わらず、砥石内にクーラント液を通して研削・研磨面をクーラント液で潤滑させるその具体的用途が明記されていない。
【0019】
上記従来の各ゴム系砥石は、総じて、図9(a)に図示するような、概ねの構造を呈している。即ち、(1)ゴム系砥石1は、伸縮性はあるが総じて親水性が悪い。これがために、ゴム2内にクーラント液CKは浸透せず、また、ゴム内からクーラント液は抽出しないから磨き作用性に劣り、外部ノズルNを配置して剥がれた砥粒13を排出するホーニング・ポリシングに止まっている。
(2)そこで、図9(b)に示すように、ゴム系砥石3のゴム2内に中心から外周方向に明けた水路孔hを設けても、ゴム内2へのクーラント液CKの浸透性は全く望めない。
(3)更に、図9(c)に示すように、ゴム2を薄くスライスし、これを積層したゴム砥石4としても、クーラント液CKがゴム内への浸透性は全く望めない。即ち、ゴムの親水性は改善されないから、この種のゴム砥石はほとんど膨張しない。ただ、クーラント液が通過するだけである。従って、従来の公知例の弾性ゴム砥石は、ゴムの硬度選択などに終始していた。その為に、従来の弾性ゴム砥石は、単なる材質変更に開発テーマが止まっていた。
【0020】
そこで、本願発明者は、この種の弾性バフ環体には、(1)弾性素材に、水分・油分との親和性の高い素材が望まれる。(2)弾性素材には、親水性が高い上に耐摩耗性に優れていること。(3)砥粒との固着機能に優れており、被削材と砥粒と弾性素材との親和性に優れていること。(4)気孔からなる弾性バフ環体内にクーラント液をその回転中心から供給するに当たり、ありふれたクーラント供給方法に留まらない新規な供給方法の開発が望まれていることを認識した。
【0021】
即ち、この種の上記弾性バフ環体(バフ)には、気孔からなる弾性バフ内にクーラント液をその回転中心から供給するに当たり、ありふれたクーラント供給方法に留まらない新規な供給方法の開発が望まれている。
【0022】
本願発明者は、上記の如く従来技術による弾性バフや弾性ゴム砥石における各種の問題点に鑑み、新規な、特に、弾性バフ環体に要求される特性性能をバフ内部に供給するクーラント液の圧力&波形制御することにより、研磨からホーニング・ラッピング加工まで実施可能な弾性バフ環体とこの加工方法を研究開発した。
【0023】
本発明の目的となる被削材の内外径や平面に対して研磨からホーニング及びラッピング仕上げに至る弾性バフは、砥石外径を増減径制御させながら研磨するゴム素材、特殊繊維素材、特殊革素材、紙部材、人工樹脂材などを弾性素材化させた弾性バフ材となし、この弾性バフ材を円盤又は棒状・板状に成形したものである。
【0024】
更には、被削材である鉄、非鉄の表面仕上の形状精度や粗度向上を目的とし、被削材の研磨からホーニング及びラッピング仕上げに至る迄、高精度加工が可能な内径加工増減径ホーニングに係わる。更には、バフに要求される増減径する特性性能を、バフ内部の特殊な弾性バフに供給するクーラント液の静圧及び圧力制御で、微細実施を可能としたグラインディング、ホーニング・ポリシング加工方法である。
【課題を解決するための手段】
【0030】
請求項1の弾性バフ環体による加工方法は、被削材の表面に対し、グラインディング及びホーニング及びポリシングを行う弾性バフ環体のバフ材は薄円形弾性体であって、上記薄円形弾性体は、フエルト、織布、不織布、皮、紙、人工又は天然の樹脂、ゴムの何れかのみ又は混成の薄円形積層環体からなり、上記薄円形積層環体の全体に砥粒を固着させるか又は薄円形積層環体の外周表面に砥粒を固着させた弾性バフ環体であり、上記弾性バフ 環体を円形に成形した円形バフ材となし、上記円形バフ材と同型でクーラント液の通路溝を両側面に放射状に形成した紙又は樹脂板又は金属板からなるクーラント誘導板と、上記クーラント誘導板と同型でクーラント液の通路溝を片側面に形成した紙又は樹脂板又は金属板からなる2枚の側壁誘導板とからなり、上記円形バフ材とクーラント誘導板とを積層させるとともに、上記円形バフ材に対して両端2枚の側壁誘導板を円形バフ材に向けて挟み積層させてなる弾性バフ環体において、
クーラント供給装置からのクーラント液は、エマルジョンにして加工機の主軸に明けたセンタースルーから上記弾性バフ環体の軸芯部内に送り込み、上記弾性バフ環体を両側から挟む側壁誘導板の各通路溝内を通過時に、上記円形バフ材に浸透させることで該円形バフ材を微増径させ、その後、上記弾性バフ環体内から被削材の表面に噴射し、研削点を冷却、潤滑しながらグラインディング、ホーニング乃至ポリシングすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
請求項の弾性バフ環体による加工方法は、クーラント液CKが多層化した各円形バフ材の隙間へ浸透性良く供給されると、円形バフ材を微量外径方向へ増径膨張させる。この増径膨張により、被切削材の内穴に対する研削作用が増強される。即ち、上記クーラント液は、円形バフ材を微量外径方向へ増径膨張させながらバフ布内に浸透し、グラインディング、ホーニング乃至ポリシングが従来の研削方法よりも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】 本発明の第1実施の形態を示し、ホーニング加工方法の系統図である。
図2】 本発明の各弾性バフ環体とこの全体構成図である。
図3】 本発明の各弾性バフ環体の全体構成図である。
図4】 本発明の各弾性バフ環体の展開図である。
図5】 本発明の各弾性バフ環体の展開図と組付図である。
図6】 本発明の各弾性バフ環体の変形実施図である。
図7】 本発明の弾性バフ環体の作用図である。
図8】 本発明の弾性バフ環体の作用図である。
図9】 従来の弾性砥石の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図1図8により、本発明の各弾性バフ環体とこのホーニング加工方法を順次に説明する。特に、図1図7により、本発明の新規性の有る技術内容を開示する。
【実施例
【0041】
先ず、図2において、本発明の各弾性バフ環体10,20,30のバフ材(後記する)の構成を説明する。上記各弾性バフ環体10,20,30は、加工機のセンタースルー付主軸の先端にホルダー(各部材は図示なし)を介して締付ける軸部1は、センタースルーSと各弾性バフ環体10,20,30と嵌る取付部1aと、各弾性バフ環体10,20,30の中心穴10a,20a,30aと嵌り、センタースルーSと各弾性バフ環体の中心穴とを繋ぐ放射状の連絡孔S1,S2・・が開けられている。そして、上記各弾性バフ環体10,20,30は、軸部1の取付部1aに嵌めた状態に、先端螺子部1bに座金KとナットNにより締結される。
【0042】
そして、上記弾性バフ環体10は、図2図3に示すように、ゴム弾性体11の単体、織布や不織布や皮や紙等の積層体12、人工樹脂の積層体13等で構成されている。また、弾性バフ環体20は、ゴム弾性体11の単体に砥粒13が全体に練混したもの。砥粒13がゴム弾性体11他の表面にのみ固着したもの。更に、弾性バフ環体30は、ゴム弾性体11の単体が気泡K0で形成された積層体14や、この積層体14において、中心穴30aから外周面に向けて放射状の通孔hを明けた積層体15等からなる。
【0043】
即ち、上記弾性バフ環体10,20,30は、バフ材が薄円形弾性体、織布、不織布、皮、紙、合成又は天然の樹脂、ゴム系の何れかの積層環体からなり、上記積層環体20に砥粒を混練・固着させたり、弾性バフ環体のバフ材は、積層環体の表面にのみ砥粒13を固着させたから、無駄な砥粒を使用しなくても効率良く、高精度なグラインディング、ホーニングからポリシング加工が実施出来る。
【0044】
ここから、上記弾性バフ環体10,20,30において、本発明の中枢となる弾性バフ環体40,45を図4図5により、詳細に説明する。その構成は、先ず、図3において、(a)に図示する弾性バフ環体40は、バフ材(フエルト、織布、不織布、皮、紙、ゴム他)41を円形に成形した円形バフ材41aと、上記円形バフ材41aと同型でクーラント液CKの通路溝42aを両側面に放射状に形成した紙又は樹脂板又は金属板からなるクーラント誘導板(砥石間溝板)42と、上記誘導板と同型でクーラント液CKの通路溝43aを片側面に形成した紙又は樹脂板又は金属板からなる両端2枚の側壁誘導板(側板)43とからなる。そして、上記円形バフ材41aと誘導板42とを交互又は不規則に積層させるとともに、上記円形バフ材41aに対して2枚の側壁誘導板43をこの通路溝43aを円形バフ材41aに向けて積層させてなる。
【0045】
次に弾性バフ環体45を図4(b)により説明する。その構成は、バフ材(フエルト、織布、不織布、皮、紙、ゴム他)41を円形に成形した円形バフ材41aと、上記円形バフ材41aと同型でクーラント液CKの通路溝43aを片側面に放射状に形成した紙又は樹脂板又は金属板からなる2枚の側壁誘導板(側板)43とからなり、上記円形バフ材41aを複数枚積層すると共に、上記円形バフ材に対して2枚の誘側壁誘導板(側板)43を円形バフ材に向けて積層させてなる。
【0046】
上記弾性バフ環体40,45におけるバフ材(フエルト、織布、不織布、皮、ゴム他)41を円形に成形して円形バフ材41aとする工程図と、円形バフ材41aと同型でクーラント液CKの通路溝42aを両側面に放射状に形成した紙又は樹脂板又は金属板からクーラント誘導板(砥石間溝板)42とする工程図と、この組立図と、バフ内クーラント液CKの流通作用図を図5図8で説明する。
【0047】
図5図8において、バフ材(フエルト、織布、不織布、皮、紙、ゴム他)41の種類と、クーラント誘導板(砥石間溝板)42と、バフ内液(バフ内気体)クーラント液CKとの製造工程を説明する。先ず、弾性バフ環体40において、バフ材41は、天然、人工の繊維を織った布(織布)41とし、これを円形バフ材41aに裁断する。図示では、3種類のバフ材41とこの円形バフ材41aを図示する。そして、通路溝42aを両側面に放射状に形成したクーラント誘導板(砥石間溝板)42は、金属削出し、板金成形樹脂削出し又は成形硬化段ボール等の回転中心から放射状に水路溝を凹設した薄板からなる。上記円形バフ材41aとクーラント誘導板(砥石間溝板)42とを交互に積層し、両端は、2枚の側壁誘導板43をこの通路溝43bを円形バフ材41aに向けて積層させてなる。また、弾性バフ環体45は、弾性バフ環体40において、誘導板(砥石間溝板)42を省略したものである。
【0048】
上記弾性バフ環体40,45によると、バフ内液(バフ内気体)と研磨機構(グラインディング、ホーニング・ポリシング機構)が構成される。即ち、弾性バフ環体40,45の回転中心からクーラント誘導板(砥石間溝板)42の水路(通路溝42a)を通過して被削材Wと接触する外周の加工点をクーラント液CKが噴射されて直接冷却・潤滑する研磨方法が実施される。上記弾性バフ環体40,45の組立手順の斜視図と、組付後のクーラント液CKが噴射される作用図とを、以上のように、図5図8に図示した。
【0049】
続いて、上記弾性バフ環体40,45において、クーラント液CKを供給する加工方法の系統関係を図1に示す。その概要構成は、クーラント供給装置50がNC制御装置60からのNCプログラムPGで制御された静圧P0乃至脈動圧P1,P2,P3のクーラント液CKを加工機の主軸に明けたセンタースルーSから弾性バフ環体40,45の軸芯部内を通過時に各円形バフ材41aを浸透させて僅かながら外径方向に膨張させ、弾性バフ環体40,45の外周面から被削材Wに噴射し冷却、潤滑しつつグラインディング、ホーニング乃至ポリシングする。
【0050】
上記クーラント供給装置50は、NC制御装置60からのNCプログラムPGで制御された静圧P0乃至脈動圧P1,P2,P3のクーラント液CKを加工機の主軸に明けたセンタースルー穴Sから弾性バフ環体40,45の軸芯部内(軸支される中心穴)に送り込む。その詳細構成は、クーラント供給装置50において、駆動源のモーターMOによりタンクT内のクーラント液CKを供給する2気筒プランジャーポンプP(単筒AC、BC)と、該プランジャーポンプPから吐出する脈動圧のクーラント液CKを多種多様に切替える逆止弁V1~V5と切替弁V6、V7を備えている。上記逆止弁V1~V5の切り替えで、4種類のクーラント液CKを内径加工増減径ホーニング砥石10まで配管・供給する経路を形成している。尚、吐出されるクーラント液CKは、NC制御装置60からのNCプログラムPGの制御により、単筒ACの圧力P1、単筒BCの圧力P2、両方の合成圧力(P1+P2)P3と、該合成圧力(P1+P2)P3をアキュームレーターAQに入れて一定圧P0とする4種類に切替えられる。
【0051】
更に、クーラント液CKを冷却気体OKとするには、図1に図示するように、大気中の空気Eを-40℃以下の冷風とする冷気供給装置70から供給される。
【0052】
以上の構成からなる弾性バフ環体40、45のバフ材41aは、以下のような作用効果が発揮される。先ず、薄弾性体40、45は、織布、不織布、皮、紙、合成又は天然の樹脂、ゴムの何れかの積層環体からなり、上記積層環体に砥粒を混練・固着させている。これにより、クーラント液CKはバフ材41aへの浸透性に優れ、わずかに外径方向へ膨張させるから、効率良く高精度なホーニングからポリシング加工が実施出来る。
【0053】
また、弾性バフ環体40、45のバフ材41aは、この積層環体の表面にのみ砥粒13を固着させれば、無駄な砥粒を使用しなくても効率良く、高精度なホーニングからポリシング加工が実施出来る。
【0054】
更に、弾性バフ環体40、45は、円形バフ材41aと誘導板42とを交互に積層させるとともに、上記円形バフ材に対して2枚の側壁誘導板43をこの通路溝43aを円形バフ材41aに向けて積層させたから、弾性バフ環体の軸部からクーラント液(エマルジョン)が多層化した各バフ材の隙間への浸透性が良く、弾性バフ環体の外周面から噴出するクーラント液により被削材Wを効率良く潤滑させての高精度なグラインディング、ホーニングからポリシング加工が実施出来る。
【0055】
更に、弾性バフ環体40、45は、図7に見るように、円形バフ材41aを積層すると共に、上記円形バフ材に対して2枚の側壁誘導板43をこの通路溝43aを円形バフ材に向けて積層させたから、弾性バフ環体の軸部からクーラント液が誘導板の通路溝から多層化したバフ材の両側隙間へ効率よく浸透させる。これで、浸透性の良いバフ材全体に浸透し、弾性バフ環体の外周面から噴出する。しかして、クーラント液により被削材を効率良く潤滑させての高精度なグラインディング、ホーニングからポリシング加工が実施出来る。
【0056】
更に、バフ材を円形に成形した多数の円形バフ材と、上記円形バフ材と同型でクーラント液の通路溝を両側面に放射状に形成した紙又は樹脂板又は金属板からなる多数の誘導板42とを、積層すると共に、上記円形バフ材に対して両端2枚の側壁誘導板43をこの通路溝を円形バフ材に向けて積層させたホーニング加工方法は、図6に図示するように、被削材Wの表面に対するホーニングからポリシング加工は、弾性バフ環体40、45の軸部からクーラント液CKが多層化した各バフ材の隙間への浸透性良く供給されて、円形バフ材を微量外径方向へ増径膨張させる。これと同時に、弾性バフ環体の外周面から噴出するクーラント液CKにより、被削材Wを効率良く潤滑させての高精度なグラインディング、ホーニングからポリシング加工が実施できる。
【0057】
即ち、クーラント供給装置50からのNCプログラムで制御された静圧乃至脈動圧のクーラント液を加工機の主軸に明けたセンタースルー穴Sから弾性バフ環体の軸芯部内に送り込み、このクーラント液は弾性バフ環体内の各誘導板の各通路溝内を通過時に各円形バフ材に浸透しながら弾性バフ環体の外周面から被削材に効率良く、集中噴射し、ホーニング乃至ポリシングするから、磨きの状況に対応してクーラント液を静圧乃至脈動圧に制御して最適条件での加工が実施できる。
【0058】
更に追記すれば、弾性バフ環体による加工方法は、各弾性バフ環体において、クーラント供給装置50はNCプログラムで制御された静圧乃至脈動圧のクーラント液CKを加工機の主軸に明けたセンタースルーから弾性バフ環体の軸芯部内に送り込み、このクーラント液は、弾性バフ環体を両側から挟む誘導板の各通路溝内を通過時に円形バフ材の中までも浸透させながら微増径させた弾性バフ環体40、45の外周面から被削材Wに噴射して冷却、潤滑しつつグラインディング、ホーニング乃至ポリシングするから、磨きの状況に対応してクーラント液を静圧乃至脈動圧に制御して最適条件での加工が実施できる。
【0059】
上記弾性バフ環体による加工方法において、クーラント液は全て、エマルジョンであるから、このエマルジョンにより、微小な油の粒を乳化剤、界面活性剤が包み込み、水に溶けたまま水面上に集まらないから、水の冷却効果と油の潤滑効果が相乗効果となり、これがバフ布表面に浸透してグラインディング、ホーニング乃至ポリシングが効率良く・弊害なく実施できる。
言い換えれば、クーラント液CKが多層化した各バフ材の隙間へ浸透性良く供給すると、円形バフ材を微量外径方向へ増径膨張させる。この増径膨張により、被切削材の内穴に対する研削作用が増強される。」即ち、上記クーラント液は、円形バフ材を微量外径方向へ増径膨張させながらバフ布内に浸透し、グラインディング、ホーニング乃至ポリシングが従来の研削方法よりも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、上記弾性バフ環体40,45とこの加工方法に限定されない。例えば、図6に示すように、(a)円盤Hの他、(b)のホルダ棒B0に一対の棒状バフB,Bを付設したもの、(c)の波状板Pのバフ材にも利用可能である。更に図示の物に限定されず、各種実施形態にも適用されること、勿論である。
【符号の説明】
【0062】
10,20,30,40,45 弾性バフ環体
41 バフ材
41a 円形バフ材
CK クーラント液
42a 通路溝
42 クーラント誘導板(砥石間溝板)
43 側壁誘導板
43a 通路溝
40、45 弾性バフ環体
50 クーラント供給装置
60 NC制御装置
P0 静圧
P1,P2,P3 脈動圧
OK 冷却気体
70 冷気供給装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9