(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-09
(45)【発行日】2023-02-17
(54)【発明の名称】加工工具の組立中央位置決め構造
(51)【国際特許分類】
B23C 5/00 20060101AFI20230210BHJP
【FI】
B23C5/00 A
(21)【出願番号】P 2020549028
(86)(22)【出願日】2019-03-04
(86)【国際出願番号】 CN2019076867
(87)【国際公開番号】W WO2019174488
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】201810214725.9
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505280299
【氏名又は名称】益壯企業有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 立誠
【審査官】永田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-136413(JP,A)
【文献】中国実用新案第201997731(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0166198(US,A1)
【文献】特表平8-507003(JP,A)
【文献】特開昭63-278735(JP,A)
【文献】特表2008-534305(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107457440(CN,A)
【文献】台湾特許出願公開第201742700(TW,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/00,5/10,5/22;
B23B 31/00-31/39,51/00-51/14;
B23D 79/00-79/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランプハンドルと、加工ヘッドと、前記クランプハンドル及び前記加工ヘッドを接続し固定させる固定部材と、を備える加工工具の組立中央位置決め構造であって、
前記クランプハンドルは収容溝を有し、前記収容溝は、前記クランプハンドルの一端の端面に位置すると共に、前記収容溝の開口部に隣接する凹部と壁面が円形の直円筒面であるように各断面の大きさが同じである中央位置決め穴が形成されており、
前記凹部は、複数の円弧面を含み、前記凹部の前記円弧面の曲率半径は同じであるが曲率中心は異なり、前記中央位置決め穴は、前記凹部よりも前記収容溝の前記開口部から離れており、前記凹部の前記複数の円弧面の壁面は前記中央位置決め穴に向かって先細りの錐状面になり、
前記凹部と前記中央位置決め穴との間に位置するクランプハンドルの階段面を有し、
前記加工ヘッドは、ワークを加工可能な加工部と、前記クランプハンドルの前記収容溝内に収容可能な組立部とを有し、前記組立部は、前記加工部に固設されると共に、前記凹部とマッチングし前記凹部内に収容可能な凸部と、前記中央位置決め穴とマッチングし前記中央位置決め穴内に収容可能な中央位置決め柱とが形成されており、
前記凸部は、複数の円弧面を含み、前記凸部の前記円弧面の数は前記凹部の前記円弧面の数と等しく、前記加工ヘッドの各前記円弧面の曲率半径は同じであるが曲率中心は異なり、前記中央位置決め柱の壁面も円形の直円筒面であるように各断面の大きさが同じであり、前記中央位置決め柱は前記凸部よりも前記加工部から離れており、前記凸部の前記複数の円弧面の壁面は前記中央位置決め柱に向かって先細りの錐状面になり、
前記凸部と前記中央位置決め柱との間に位置する加工ヘッドの階段面を有し、
前記組立部が前記収容溝に収容されると、前記凸部の各円弧面が前記凹部の円弧面のいずれかに当接
し、前記中央位置決め柱の壁面が前記中央位置決め穴の内周面に当接
し、前記クランプハンドルの回転中心軸は前記加工ヘッドの回転中心軸と一直線にな
り、前記凸部の回転中心軸方向に沿う厚みは前記凹部の回転中心軸方向に沿う深さよりも小さく、前記クランプハンドルの階段面は前記加工ヘッドの階段面に向かい合っており、前記クランプハンドルの階段面と前記加工ヘッドの階段面との間に隙間が形成されることを特徴とする加工工具の組立中央位置決め構造。
【請求項2】
前記加工ヘッドは、前記加工部と前記組立部との間に位置する接続部をさらに有し、前記組立部は前記接続部を介して前記加工部に固設され、前記接続部の断面の形状及び大きさは前記クランプハンドルの断面の形状及び大きさと同じであることを特徴とする請求項
1に記載の加工工具の組立中央位置決め構造。
【請求項3】
前記クランプハンドルには、前記クランプハンドルの回転中心軸を軸方向に貫通するスルーホールがさらに形成され、
前記加工ヘッドは、前記加工ヘッドの前記クランプハンドルに面する側に窪んで凹溝がさらに形成され、前記凹溝は前記クランプハンドルの前記スルーホールに向かい合って連通され、
前記固定部材は前記スルーホール及び凹溝内に挿通して螺合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工工具の組立中央位置決め構造。
【請求項4】
前記クランプハンドルは、前記クランプハンドルの前記加工ヘッドに面する側に窪んで凹溝がさらに形成され、
前記加工ヘッドには、前記加工ヘッドの回転中心軸を軸方向に貫通するスルーホールがさらに形成され、前記スルーホールは前記クランプハンドルの前記凹溝に向かい合って連通され、
前記固定部材は前記スルーホール及び凹溝内に挿通して螺合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の加工工具の組立中央位置決め構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工工具に関し、特に、加工ヘッドの組み立て及び組み合わせ位置決めに関する組立中央位置決め構造に係る。
【背景技術】
【0002】
機械加工では、工具機械でバイトを駆動してワークを加工するのが一般的である。バイトは、静止タイプ又は回転タイプであってもよい。例えば、フライス、ドリル、旋削工具、又はパンチ等の加工工具によってワークを切削、切断又はスタンピング成形する。
【0003】
従来技術の加工工具として、米国特許第4,834,597号、中国特許第101155655号、及び中国特許第107457440号の特許出願、並びに中国台湾特許第201742700号の特許出願を参照すればよい。中国台湾特許第201742700号の「加工工具の組立構造」という特許出願を例とすると、主にクランプハンドルと、加工ヘッドと、固定部材と、を備える。当該加工ヘッドは固定部材を介して当該クランプハンドルに取り付けられる。具体的に、当該クランプハンドルの一端の端面には収容溝が形成され、当該収容溝の内周壁には曲率半径が同じで曲率円心の位置が異なる複数の円弧面が形成され、当該加工ヘッドはクランプハンドルに向かって突出する組立部を有し、当該組立部は当該クランプハンドルの収容溝内にちょうど嵌装することができる。換言すれば、当該収容溝の内周壁に対応して、当該組立部の外周壁にも曲率半径が同じで曲率円心の位置が異なる複数の円弧面が形成されている。
【0004】
従って、長期間の使用でバイトが摩耗した後は、損傷した部分のみを交換してリソースの浪費を回避しコストを節約することができるが、上記の組立構造を有する加工工具を組み立てる場合、
図9に示すように、組立時の過失や製造時のミスによって当該加工ヘッドの軸心と当該クランプハンドルの軸心を一直線にすることができない場合が多い。そのため、加工時にワークの所定の品質に影響を与え、軸心が大きくずれると加工工具の破損を引き起こす可能性もあるため、組立時に当該加工ヘッド91の軸心と当該クランプハンドル92の軸心を一軸線に位置させることは非常に重要な課題である。
【0005】
一方、
図10に示すように、製造・加工時に必然的に誤差が生じるため、各部の寸法や位置が理論値からずれてしまい、ずれが大きすぎると加工工具を使用した時に作成される製品にも大きな誤差が発生したり、工作機械のクランプハンドルにバイトを組み付けることができない可能性もある。従来技術では、円筒体93の加工精度は非常に高く、いくらかの誤差は避けられないが、誤差は組立又は使用に影響を与えるのに十分ではない。ただし、非円筒体94の加工において、明らかに精度が悪く、例えば、上記の曲率半径が同じで曲率円心の位置が異なる複数の円弧面を有する内周壁及び外周壁を製造する時、各円弧面の位置で誤差が発生しやすい。例えば、米国特許第2008/0166198号の特許出願に開示した加工工具では、バイトにおける非円筒体の素子47の位置に大きな誤差があるため、スムーズに取り付けられず、貫通孔の開口部に引っ掛ける恐れがある。他方、柱状の素子47が空間33に配置できるようにするために、素子47の寸法を空間33の寸法よりも若干大きくする必要があるため、組立後の素子47と空間33の壁面との間に隙間が生じる。素子47と空間33の壁面との間に隙間が存在すると、加工工具が交互に正逆回転する時、素子47とクランプハンドルの位置がずれ、それに伴って固定ネジが緩んでしまう。
【0006】
上記のことに鑑みて、より良い改善策を提案することが本分野で緊急の問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、組立時に加工工具の精確な位置決めを補助して、組み立てが完了した後の加工工具の軸心を一直線に維持できる加工工具の組立構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、クランプハンドルと、加工ヘッドと、前記クランプハンドル及び前記加工ヘッドを接続し固定させる固定部材と、を備える加工工具の組立中央位置決め構造であって、
前記クランプハンドルは収容溝を有し、前記収容溝は、前記クランプハンドルの一端の端面に位置すると共に、前記収容溝の開口部に隣接する凹部と壁面が円形の直円筒面である中央位置決め穴が形成されており、
前記凹部は、複数の円弧面を含み、前記凹部の前記円弧面の曲率半径は同じであるが曲率中心は異なり、
前記中央位置決め穴は、前記凹部よりも前記収容溝の前記開口部から離れており、前記凹部の壁面は前記中央位置決め穴に向かって先細りの錐状面になり、
前記加工ヘッドは、
ワークを加工可能な加工部と、
前記クランプハンドルの前記収容溝内に収容可能な組立部と、を有し、前記組立部は、前記加工部に固設されると共に、前記凹部とマッチングし前記凹部内に収容可能な凸部と、前記中央位置決め穴とマッチングし前記中央位置決め穴内に収容可能な中央位置決め柱とが形成されており、
前記凸部は、複数の円弧面を含み、前記凸部の前記円弧面の数は前記凹部の前記円弧面の数と等しく、前記加工ヘッドの各前記円弧面の曲率半径は同じであるが曲率中心は異なり、
前記中央位置決め柱の壁面も円形の直円筒面であり、前記中央位置決め柱は前記凸部よりも前記加工部から離れており、前記凸部の壁面は前記中央位置決め柱に向かって先細りの錐状面になり、
前記組立部が前記収容溝に収容されると、前記凸部の各円弧面が前記凹部の円弧面のいずれかに当接して貼り合わせされ、前記中央位置決め柱の壁面が前記中央位置決め穴の内周面に当接して貼り合わせされ、前記クランプハンドルの回転中心軸は前記加工ヘッドの回転中心軸と一直線になる加工工具の組立中央位置決め構造を提供する。
【0009】
本発明の利点は次の通りである。クランプハンドルの収容溝内に凹部及び中央位置決め穴を配置し、凹部に対応する凸部及び中央位置決め穴に対応する中央位置決め柱を加工ヘッドの組立部に配置することで、クランプハンドルと加工ヘッドを組み立てる時、2段階で加工ヘッドの組立部をクランプハンドルの収容溝に挿入させる。また、この2段階の挿入過程により、加工ヘッドの回転軸心をクランプハンドルの回転軸心と一直線にすることができると共に、加工ヘッドが正しい角度まで回転するとクランプハンドルに嵌合できるようにする。従って、加工ヘッドはどの方向や角度にも偏りがなく、クランプハンドルに強固に固定することができ、ワークの加工中に過度の振動により加工ヘッドが滑ったり緩んだりしてクランプハンドルに確実に嵌合できないことも発生しない。一方、凹部の壁面が中央位置決め穴に向かって先細りの錐状面になり、凸部の壁面が中央位置決め柱に向かって先細りの錐状面になることで、製造時に凹部又は凸部のいずれかに誤差が発生しても、加工ヘッドはクランプハンドルにスムーズに装着でき、誤差の影響を受けずに取り付けることができ、正回転と逆回転が交互に行われる時でも円弧面は当接を維持することができ、誤差がないかのように、加工ヘッドとクランプハンドルはずれて移動することがない。
【0010】
上記の加工工具の組立中央位置決め構造において、前記クランプハンドルの前記収容溝は、前記凹部と前記中央位置決め穴との間に位置する階段面をさらに有し、前記加工ヘッドの前記組立部も前記凸部と前記中央位置決め柱との間に位置する階段面を有し、前記凸部の回転中心軸方向に沿う厚みは前記凹部の回転中心軸方向に沿う深さよりも小さく、前記クランプハンドルの前記階段面は前記加工ヘッドの前記階段面に向かい合っており、前記クランプハンドルの前記階段面と前記加工ヘッドの前記階段面との間に隙間が形成される。
【0011】
上記の加工工具の組立中央位置決め構造において、前記加工ヘッドは、前記加工部と前記組立部との間に位置する接続部をさらに有し、前記組立部は前記接続部を介して前記加工部に固設され、前記接続部の断面形状及び大きさは前記クランプハンドルの断面形状及び大きさと同じである。
【0012】
上記の加工工具の組立中央位置決め構造において、
前記クランプハンドルには、前記クランプハンドルの回転中心軸を軸方向に貫通するスルーホールがさらに形成され、
前記加工ヘッドは、前記加工ヘッドの前記クランプハンドルに面する側に窪んで凹溝がさらに形成され、前記凹溝は前記クランプハンドルの前記スルーホールに向かい合って連通され、
前記固定部材は前記スルーホール及び凹溝内に挿通して螺合される。
【0013】
上記の加工工具の組立中央位置決め構造において、
前記クランプハンドルは、前記クランプハンドルの前記加工ヘッドに面する側に窪んで凹溝がさらに形成され、
前記加工ヘッドには、前記加工ヘッドの回転中心軸を軸方向に貫通するスルーホールがさらに形成され、前記スルーホールは前記クランプハンドルの前記凹溝に向かい合って連通され、
前記固定部材は前記スルーホール及び凹溝内に挿通して螺合される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施例の分解後の斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施例の分解後の断面図である。
【
図3】本発明の第1実施例において、誤差がない場合の組立後の断面図である。
【
図4】本発明の第1実施例において、誤差がある場合の組立後の断面図である。
【
図5】本発明の第1実施例において、誤差がある場合の組立後の切断線A-Aにおける断面図である。
【
図6A】本発明の第1実施例の加工ヘッドの一態様の上面図である。
【
図6B】本発明の第1実施例の加工ヘッドの一態様の断面図である。
【
図7A】本発明の第1実施例の加工ヘッドの別の一態様の上面図である。
【
図7B】本発明の第1実施例の加工ヘッドのさらに別の一態様の断面図である。
【
図8】本発明の第2実施例の分解後の断面図である。
【
図9】従来技術において加工ヘッドがクランプハンドルに組み立てる時に発生する偏りの模式図である。
【
図10】従来技術において誤差のために加工ヘッドをクランプハンドルに組み立てることができない場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面及び本発明の好ましい実施例を参照しながら、所定の発明目的を達成するために本発明によって採用される技術的手段をさらに説明する。
【0016】
図1及び
図2を参照すると、本発明の第1実施例に係るものである。本発明による加工工具の組立構造は、クランプハンドル10と、加工ヘッド20と、固定部材30とを備えている。
【0017】
クランプハンドル10は、収容溝100を有し、スルーホール14が選択的に形成されている。収容溝100は、クランプハンドル10の一端の端面に位置すると共に、凹部11及び中央位置決め穴12が形成されており、且つ、階段面13が選択的に形成されている。凹部11は収容溝100の開口部に隣接している。具体的に、クランプハンドル10の当該端面の内縁は凹部11に隣接している。凹部11は、複数の円弧面を含み、その曲率半径は同じであるが曲率中心は異なり、各円弧面の円弧長は同じであり、凹部11を周回して均等に分割する。
【0018】
また、中央位置決め穴12は、凹部11よりも収容溝100の開口部から離れている。中央位置決め穴12の断面形状は円形である。本実施例において、凹部11の壁面は中央位置決め穴12に向かって先細りの錐状面になっている。中央位置決め穴12において各断面の大きさは同じであるため、中央位置決め穴12の壁面は円形の直円筒面である。
【0019】
スルーホール14は、クランプハンドル10の中心軸を軸方向に貫通し、スルーホール14の一端は収容溝100に連通される。
【0020】
加工ヘッド20は、加工部21及び組立部22を有し、接続部23及び凹溝24を選択的に有している。加工部21はワークを加工することができる。換言すれば、加工部21は加工ヘッド20の刃部であってもよい。組立部22は、加工部21に固設されると共に、クランプハンドル10の収容溝100に収容できる。加工ヘッド20の組立部22は当該階段面13に当接しない。組立部22をクランプハンドル10の収容溝100内に収容することにより、加工ヘッド20をクランプハンドル10に正しい角度で固設するのに役立つ。組立部22が収容溝100に収容されると、クランプハンドル10の回転中心軸は加工ヘッド20の回転中心軸と一直線になる。
【0021】
具体的に、組立部22は、凸部221及び中央位置決め柱222を有し、且つ、階段面223を選択的に有している。凸部221は凹部11とマッチングし、中央位置決め柱222は中央位置決め穴12とマッチングする。そのため、凸部221も同様に複数の円弧面を含んでもよく、凸部221の円弧面の数は凹部11の円弧面の数と等しい。凸部221の各円弧面の曲率半径は同じであるが曲率中心は異なる。中央位置決め柱222は凸部221よりも加工部21から離れている。本実施例において、凹部11の錐状面に対応して、凸部221の壁面は中央位置決め柱222に向かって先細りの錐状面になり、中央位置決め穴12に対応して、中央位置決め柱222の壁面も円形の直円筒面となっている。組立部22の階段面223は凸部221と中央位置決め柱222との間に位置しており、クランプハンドル10の階段面13に対応して向かい合い、階段面13は凹部11と中央位置決め穴12との間に位置している。凸部221の回転中心軸方向に沿う厚みは凹部11の回転中心軸方向に沿う深さよりも小さい。従って、組立状態では、クランプハンドル10の階段面13は加工ヘッド20の階段面223に向かい合い、クランプハンドル10の階段面13と加工ヘッドの階段面223との間には隙間が形成され、当該凸部221を凹部11に完全に挿入させることができる。これにより、クランプハンドル10を加工ヘッド20に確実に結合することができる。
【0022】
次に、
図3乃至
図5を参照されたい。理想的な状態では、
図3に示すように、クランプハンドル10及び加工ヘッド20の各表面がいずれも目標位置にあるため、組立後の組立部22では、中央位置決め柱222の外壁面は中央位置決め穴12の内壁面に完全に貼り合わせされ、凸部221の各円弧面も凹部11の各円弧面に完全に貼り合わされる。
【0023】
しかし、実際の状況では、
図4及び
図5に示すように、製造及び加工に必然的に誤差が発生する。円形の断面である中央位置決め柱222及び中央位置決め穴12は高精度であり、両者の軸心をクランプハンドル10及び加工ヘッド20の軸心に保持することができるが、断面が非円形である凹部11及び凸部221の軸心はクランプハンドル10及び加工ヘッド20の軸心にないことが多い。例えば、クランプハンドル10、凹部11、及び中央位置決め穴12の軸心がちょうど同一の軸線Xにあり、且つ、加工ヘッド20及び中央位置決め柱222の軸心もちょうど前記同一の軸線Xにあると仮定する。ただし、凸部221の軸心は軸線Xではなく軸線Yにあり、オフセットしている。凹部11及び凸部221の先細りの錐状面によって、凹部11及び凸部221の軸心のオフセット程度(即ち、軸線Xと軸線Yとの間の距離)は凸部221が凹部11に入る深さのみに影響を与える。しかし、凸部221の円弧面は依然として凹部11の円弧面に当接することができるため、クランプハンドル10は依然として加工ヘッド20を駆動することができる。
【0024】
図6A及び
図6Bを一緒に参照すると、本発明の第1実施例の加工ヘッド20の異なる態様を示している。具体的に、凸部221は3つの円弧面を有してもよい。各円弧面間の接続部は面取りされることにより、各円弧面は加工ヘッド20の中心軸に対応して120度延ばされ、クランプハンドルの凹部とマッチングすべきである(図示せず)。次に、
図7A及び
図7Bを参照すると、本発明の第1実施例の加工ヘッド20のさらに他の一態様を示しており、凸部221は4つの円弧面を有してもよい。従って、各円弧面は加工ヘッド20の中心軸に対応して90度延ばされ、クランプハンドルの凹部とマッチングすべきである(図示せず)。しかし、凸部221及び凹部の形状はこれに限定されない。
【0025】
再び
図1及び
図2を参照されたい。接続部23は加工部21と組立部22との間に位置し、組立部22は接続部23を介して加工部21に固設され、本実施例では、加工部21、組立部22、及び接続部23が一体成形される。接続部23の断面の形状及び大きさはクランプハンドル10の断面の形状及び大きさと同じである。そのため、組立後、接続部23の側面はクランプハンドル10の収容溝100が形成された端面に当接し、接続部23の外壁面はクランプハンドル10の外壁面と接続されて円筒面を形成する。接続部23によって、加工部21はクランプハンドル10から遠く離れて、稼働時にクランプハンドル10を傷付ける可能性を低減することができる。
【0026】
凹溝24は、加工ヘッド20のクランプハンドル10に面する側に窪んで形成される。換言すれば、凹溝24は組立部22に形成される。正確には、凹溝24は加工ヘッド20の中心軸に窪んで形成されるため、凹溝24はクランプハンドル10のスルーホール14に向かい合うと共に連通される。凹溝24の内壁にはネジ山が形成されてもよい。
【0027】
固定部材30はクランプハンドル10及び加工ヘッド20を接続して固定することができる。本実施例では、固定部材30をクランプハンドル10の加工ヘッド20から離れた一端からクランプハンドル10のスルーホール14に入れ、固定部材30をスルーホール14の内壁のネジ山と螺合させる。固定部材30の一部はクランプハンドル10の収容溝100に延出し、それにより、加工ヘッド20の凹溝24に延出して凹溝24の内壁のネジ山と螺合することができる。これにより、クランプハンドル10及び加工ヘッド20を接続して固定することができる。
【0028】
以上の構造により、加工ヘッド20をクランプハンドル10に固定する過程では、まず、加工ヘッド20の組立部22をクランプハンドル10の収容溝100内に挿入する。組立部22を収容溝100に挿入する時、まず、組立部22の中央位置決め柱222が収容溝100の中央位置決め穴12に延出する。中央位置決め穴12が収容溝100の開口部から遠く離れているため、中央位置決め柱222が中央位置決め穴12に延出して当接すると、加工ヘッド20の回転中心軸をクランプハンドル10の回転中心軸に一致させて、2つの回転中心軸それぞれが互いの延長線上にあるように補助することができる。換言すれば、中央位置決め柱222が中央位置決め穴12に当接することによって、組立時に加工ヘッド20の回転中心軸とクランプハンドル10の回転中心軸とが偏ることを防止することができる。中央位置決め柱222及び中央位置決め穴12の断面は円形であるため、加工ヘッド20を任意の方向角でクランプハンドル10に入れることができる。
【0029】
そして、組立部22がさらに収容溝100に挿入されると、凸部221は凹部11に延出して当接することができる。凸部221及び凹部11の断面が円形ではなく、凸部221の回転中心軸方向における厚みが凹部11の回転中心軸方向における深さよりも小さいことで、加工ヘッド20が回転中心軸を回転軸として回転すると、正しい位置から凹部11内に容易に延出することができるため、加工ヘッド20を正しい角度でクランプハンドル10に固設することができる。従って、上記の2段階で組立部22を収容溝100に挿入させることによって、加工ヘッド20がクランプハンドル10に対して偏ることなく、正しい角度で位置するように確保することができる。また、凹部11と凸部221がいずれも先細りであるため、組立中に、凸部221が凹部11に延出して当接すると、加工ヘッド20の回転中心軸上での回転角度が多少ずれても、凸部221は依然として先細りの凹部11に沿って入りながら正しい角度まで回転することができるので、組み立てがより便利である。
【0030】
最後に、固定部材30により加工ヘッド20をクランプハンドル10に固定させる。
【0031】
次に、
図8を参照されたい。本発明の第2実施例において、技術的特徴は第1実施例と同様であるが、クランプハンドル10Aがスルーホールを有さず、凹溝14Aを有し、且つ、加工ヘッド20Aが凹溝を有さず、スルーホール24Aを有する点で異なる。換言すれば、上記の実施例と比較すると、クランプハンドル及び加工ヘッドにおけるスルーホール及び凹溝が逆に配置されて第2実施例を形成する。詳しくは、凹溝14Aはクランプハンドル10Aの加工ヘッド20Aに面する側に窪んで形成され、且つ、収容溝100内に位置し、クランプハンドル10Aの中心に沿って内側に延びている。スルーホール24Aは加工ヘッド20Aの中心軸を軸方向に沿って貫通し、内壁にはネジ山が形成されてもよい。これにより、加工ヘッド20Aをクランプハンドル10Aに接続して固定させる場合、固定部材30を加工ヘッド20Aのクランプハンドル10Aから離れた側から加工ヘッド20Aのスルーホール24A内に入れ、且つ、固定部材30の一部をクランプハンドル10Aの凹溝14A内に延出させることによって、固定部材30はクランプハンドル10A及び加工ヘッド20Aと同時に螺合することができる。
【0032】
要約すると、本発明はクランプハンドル10の収容溝100内に大きさの異なる凹部11及び中央位置決め穴12を配置し、凹部11に対応する凸部221及び中央位置決め穴12に対応する中央位置決め柱222を加工ヘッド20の組立部22に配置することで、クランプハンドル10と加工ヘッド20を組み立てる時、2段階で加工ヘッド20の組立部22をクランプハンドル10の収容溝100に挿入させる。そして、この2段階の挿入過程により、加工ヘッド20の回転軸心をクランプハンドル10の回転軸心と一直線にすることができると共に、加工ヘッド20が正しい角度まで回転するとクランプハンドル10に嵌合できるようにする。従って、加工ヘッド20はどの方向や角度にも偏りがなく、クランプハンドル10に強固に固定することができ、加工過程に過度の振動により緩むことがない。一方、凹部11の壁面が中央位置決め穴12に向かって先細りの錐状面になり、凸部221の壁面が中央位置決め柱222に向かって先細りの錐状面になることで、製造時に凹部11又は凸部221のいずれかに誤差が発生しても、加工ヘッド20はクランプハンドルにスムーズに装着でき、誤差の影響を受けずに取り付けることができ、正回転と逆回転が交互に行われる時でも円弧面は当接を維持することができ、誤差がないかのように、加工ヘッド20とクランプハンドル10はずれて移動することがない。
【0033】
上記は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明をいかなる形で限定するものではない。本発明は、好ましい実施例により上記のように開示されているが、本発明を限定することを意図するものではない。当業者であれば、本発明の技術的解決策の範囲から逸脱することなく、上記に開示された技術的内容を使用して、同等の変更を伴う等価的実施例にわずかな変更または修正を加えることができるが、本発明の技術的解決策から逸脱しない任意の内容、本発明の技術によって上記の実施例に対して行われた任意の単純な変更、同等の変更および変更の技術的本質は、依然として本発明の技術的解決策の範囲内にある。
【符号の説明】
【0034】
10 クランプハンドル
100 収容溝
11 凹部
12 中央位置決め穴
13 階段面
14 スルーホール
20 加工ヘッド
21 加工部
22 組立部
221 凸部
222 中央位置決め柱
223 階段面
23 接続部
24 凹溝
30 固定部材
10A クランプハンドル
14A 凹溝
20A 加工ヘッド
24A スルーホール
X 軸線
Y 軸線