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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
H01L21/304 643Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019048424
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020150203
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田邊 万奈
(72)【発明者】
【氏名】高居 康介
(72)【発明者】
【氏名】増井 健二
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 華織
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-077596(JP,A)
【文献】特開2018-160615(JP,A)
【文献】特開2012-212758(JP,A)
【文献】特開2013-074232(JP,A)
【文献】特開2008-135557(JP,A)
【文献】特開2018-026436(JP,A)
【文献】特開2014-017280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の洗浄面となる第1面に処理液を滴下して、前記第1面を覆う液膜を形成し、
前記第1面に対向する前記基板の第2面に前記処理液の凝固点以下となる冷却媒体を接触させて前記基板を冷却することで、前記第1面において前記処理液の前記液膜から凝固層を形成し、
前記第1面上の異物の位置を示す異物位置情報にしたがって、前記凝固層の前記異物の位置に前記処理液の液滴を滴下し、
前記凝固層に、前記液滴によって溶解した部分と前記液滴が凍結した液滴凍結部を形成し、
前記液滴凍結部を融解して除去する、
基板処理方法。
【請求項2】
前記液滴凍結部の形成を複数回繰り返す請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板の冷却の前に、前記異物位置情報を取得することをさらに含請求項1または2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
基板の洗浄面となる第1面に対向する第2面に処理液の凝固点以下となる冷却媒体を接触させて前記基板を冷却し、
前記第1面上の異物の位置に前記処理液の液滴を滴下し、前記液滴が凍結した液滴凍結部を形成し、
前記液滴凍結部を除去し、
前記基板の冷却前に、前記第1面上の全面に、前記処理液の液膜を形成することをさらに含み、
前記基板の冷却では、前記第1面上の全面に形成された前記処理液の液膜が凝固した凝固層が形成され、
前記液滴凍結部の除去では、前記液滴凍結部と前記凝固層とを融解して除去する基板処理方法。
【請求項5】
前記液滴凍結部の形成を複数回繰り返す請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板の冷却の前に、前記基板の前記第1面上の前記異物の位置を含む異物位置情報を取得することをさらに含み、
前記液滴凍結部の形成では、前記異物位置情報にしたがって前記液滴を滴下する請求項4または5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
第1面を上にして基板を保持する基板保持部と、
処理液を前記第1面上に供給するノズルを含む処理液供給部と、
前記第1面上に供給された前記処理液を凝固させる凝固部と、
前記ノズルを前記基板保持部に対して相対的に移動させる駆動部と、
前記基板保持部、前記処理液供給部、前記凝固部、及び前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記処理液供給部により前記第1の面に前記処理液を滴下させて、前記第1面を覆う液膜を形成し、
前記凝固部により前記第1面に対向する前記基板の第2面に前記処理液の凝固点以下となる冷却媒体を接触させて前記基板を冷却することで、前記第1面において前記処理液の前記液膜から凝固層を形成し、
前記第1面上の異物の位置を示す異物位置情報にしたがって、前記ノズルが前記異物の位置上に配置されるように前記駆動部を制御し、前記凝固層の前記異物の位置に前記処理液の液滴を滴下させて、前記凝固層に、前記液滴によって溶解した部分と前記液滴が凍結した液滴凍結部とを形成し、
前記凝固部による前記第2面への前記冷却媒体の供給を停止させて、前記液滴凍結部を融解して除去する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却媒体を基板の裏面に接触させ、基板のおもて面の全面に形成した液膜を凍結させて凍結膜を形成し、凍結膜を除去することによって、基板のおもて面に付着した異物を除去する洗浄技術が知られている。
【0003】
しかしながら、従来技術では、基板のおもて面の除去したい異物の数が数個の場合であっても、おもて面の全面に凍結膜を形成し、この凍結膜を融解する処理を繰り返して実行することによって、洗浄が行われていた。そのため、異物が存在しない領域に配置されるパターンにダメージを与えてしまう虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4906418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの実施形態は、異物が存在しない領域に配置されるパターンへのダメージを抑制することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態によれば、基板の洗浄面となる第1面に処理液を滴下して、前記第1面を覆う液膜を形成し、前記第1面に対向する前記基板の第2面に前記処理液の凝固点以下となる冷却媒体を接触させて前記基板冷却することで、前記第1面において前記処理液の前記液膜から凝固層が形成される。ついで、前記第1面上の異物の位置を示す異物位置情報にしたがって、前記凝固層の前記異物の位置に前記処理液の液滴が滴下され、前記凝固層に、前記液滴によって溶解した部分と前記液滴が凍結した液滴凍結部が形成される。そして、前記液滴凍結部が除去される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態による基板処理方法の手順の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、第1の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図3図3は、第1の実施形態による基板処理装置の構成の他の例を模式的に示す図である。
図4図4は、第2の実施形態による基板処理方法の手順の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる基板処理方法および基板処理装置を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態による基板処理方法の手順の一例を模式的に示す図である。図1(a)に示されるように、ステージ11上に処理対象の基板200を載置する。このとき、基板200は、洗浄面を上側にして載置される。基板200には、異物220が付着している。ステージ11と基板200の下面との間に空隙ができるように、基板200はステージ11の支持部111上に支持される。基板200は、インプリント処理で使用されるテンプレート、露光処理で使用されるマスク、あるいは半導体基板などである。ついで、基板200の上面に処理液膜210を形成する。例えば、スピンコーティング法によって、基板200上に滴下した処理液を基板200の上面の全面に広げ、処理液膜210とすることができる。処理液として、純水、脱イオン水などを使用することができる。
【0010】
その後、図1(b)に示されるように、基板200の下面側に処理液の凝固温度よりも低い温度の冷却媒体130を供給し、処理液膜210を凍結(凝固)させる。これによって、処理液膜210の基板200側から凝固層である凍結層210aが形成される。凍結層210aは、後の工程で、異物220の位置に滴下される処理液の液滴によって、凍結層210aの下面まで凍結層210aが融解することができる厚さとされる。凍結層210aは、異物220の位置以外の領域では、保護膜としての機能を有する。冷却媒体として、処理液の凝固点よりも低い温度に冷やした窒素ガスなどの気体、あるいは液体窒素、液体フロンなどの液体が使用される。
【0011】
ついで、図1(c)に示されるように、異物220の位置に処理液の液滴215を滴下する。異物220の位置は、図1(a)の前にマスクのパターン検査装置などによって異物位置情報として取得されている。滴下する処理液の液滴215の温度は、例えば常温(室温)である。この処理液の液滴215を滴下すると、滴下した異物220の位置とその周辺の凍結層210aが一時的に融解する。このときも、冷却媒体130は、基板200の下面側に供給され続けた状態である。そのため、図1(d)に示されるように、処理液の液滴215および融解した処理液(以下、まとめて処理液滴ともいう)が再度凍結する。以下では、凍結した処理液滴を、処理液滴凍結部215aという。さらに、冷却を続けると、図1(e)に示されるように、処理液滴凍結部215aに亀裂215bが入る。
【0012】
その後、図1(c)に処理が戻り、図1(c)~(e)の工程が所定の回数、実行される。図1(c)~(e)の工程を繰り返す場合には、異物220の位置に処理液の液滴215を滴下してから処理液滴凍結部215aに亀裂215bが入るまでの時間を予め実験によって求めておき、求めた時間よりも若干長い時間を亀裂生成時間とする。図1(c)で異物220の位置に処理液の液滴215を滴下してから亀裂生成時間が経過した後に、再び異物220の位置に処理液の液滴215を滴下すればよい。なお、図1(b)で基板200の上面の全面に凍結層210aを形成せずに、基板200の上面にそのまま処理液の液滴215を滴下する場合には、処理液の液滴215が基板200上に広がってしまい、異物220の位置にだけ処理液滴凍結部215aを形成することが困難になる。しかし、第1の実施形態では、図1(b)で基板200の上面の全面に凍結層210aを形成しているので、滴下した処理液の液滴215は、異物220の位置を含む周辺領域を融解させ、すぐに処理液滴凍結部215aになる。つまり、凍結層210aの存在によって、処理液の液滴215を濡れ広がらないように所望の位置に滴下することが可能になる。
【0013】
このように、異物220の位置で、処理液の液滴215を凍結させると、異物220と基板200との間に存在する処理液が凍結によって膨張し、異物220が上方に向かう力を受ける。この状態で異物220の周囲の処理液を融解させると、異物220が上方に移動する確率が高くなる。基板200上の異物220について、図1(c)~(e)の工程の実行回数と異物220の除去率との関係を求め、異物220の除去率が所定値(例えば100%)となる実行回数だけ繰り返すことで、基板200上の異物220を除去することができる。なお、実行回数は、異物220の種類(例えば、有機物であるのか、無機物であるのか、あるいは金属であるのか)ごとに求めておき、異物220の種類に応じて変更してもよい。例えば、処理工程に応じて、付着しやすい異物220の種類が決まっている場合に、処理工程に応じて実行回数を変えればよい。また、実行回数が1回で異物220の除去率が100%となる場合には、図1(c)~(e)の工程を繰り返さなくてもよい。
【0014】
その後、図1(f)に示されるように、基板200の下面への冷却媒体130の供給を停止し、基板200上に常温の処理液217を供給して、凍結層210aを融解する。これによって、基板200の上面を上方向に移動した異物220が処理液217によって洗い流され、除去されることになる。上述した凍結を利用した異物除去処理を「凍結洗浄」と称する。
【0015】
つぎに、上記した基板処理方法を実行する基板処理装置の構成について説明する。図2は、第1の実施形態による基板処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。第1の実施形態による基板処理装置10は、ステージ11と、処理液供給部12と、冷却媒体供給部13と、制御部14と、を備える。
【0016】
ステージ11は、凍結洗浄の処理対象である基板200を保持する部材である。ステージ11は、基板保持部に対応する。ステージ11には、ステージ11の上面よりも高い位置で基板200を支持する支持部111が設けられる。支持部111は、基板200の下面全体に後述する冷却媒体が接触するように、ステージ11の上面から距離を開けて基板200を支持するものである。また、ステージ11の水平方向の中心付近には、鉛直方向に貫通する貫通孔112が設けられている。貫通孔112がステージ11の上面と交わる部分は、後述する冷却媒体の供給口113となる。なお、ステージ11は、基板載置面の中心を通る基板載置面に垂直な軸を中心に回転可能な構成としてもよい。この場合には、支持部111には、ステージ11の回転によって基板200の水平方向への移動を抑制するストッパが設けられる。
【0017】
処理液供給部12は、凍結洗浄に使用される処理液を供給する。処理液供給部12は、処理液を貯蔵する処理液貯蔵部121と、処理液を基板200の上面に滴下するノズル122aを有するノズルヘッド122と、ノズルヘッド122をステージ11に対して水平方向に移動させる駆動機構123と、を備える。また、処理液供給部12は、ノズルヘッド122と処理液貯蔵部121との間を接続する配管124と、配管124を介して処理液を処理液貯蔵部121からノズル122aまで送るポンプ125と、処理液貯蔵部121からノズル122aへの処理液の供給の切り替えを行うバルブ126と、を備える。
【0018】
冷却媒体供給部13は、凍結洗浄時に基板200を処理液の凝固点以下に冷却する冷却媒体を供給する。冷却媒体供給部13は、冷却媒体を貯蔵する冷却媒体貯蔵部131と、冷却媒体貯蔵部131をステージ11の貫通孔112に接続する配管132と、冷却媒体の供給の切り替えを行うバルブ133と、を備える。冷却媒体として、処理液の凝固点よりも低い温度に冷やした窒素ガスなどの気体、あるいは液体窒素、液体フロンなどの液体を使用することができる。貫通孔112に接続される側の配管132の端部は、冷却媒体の供給口113となる。冷却媒体供給部13は、凝固部に対応する。
【0019】
制御部14は、レシピにしたがって基板処理装置10全体の動作を制御する。制御部14は、異物位置情報取得部141と、冷却制御部142と、処理液滴下制御部143と、を有する。
【0020】
異物位置情報取得部141は、処理対象の基板200の洗浄面の異物位置情報を取得する。異物位置情報は、例えば、マスクのパターン検査装置によって取得される。異物位置情報は、基板200の洗浄面上での異物220の位置を示す情報を含む。
【0021】
冷却制御部142は、凍結洗浄時に冷却媒体の供給のオン/オフの切り替えを制御する。この制御は、例えば冷却媒体供給部13のバルブ133の開閉を制御することによって行われる。
【0022】
処理液滴下制御部143は、凍結洗浄時の基板200上の処理液の滴下位置および滴下量を制御する。処理液滴下制御部143は、基板200上の全面に所定の厚さの凍結層210aが形成されるように処理液を滴下して処理液膜210を形成し、処理液膜210が凍結した後に、異物位置情報にしたがって異物220の位置にノズル122aを移動させるように駆動機構123を制御し、異物220の位置に所定量の処理液の液滴を滴下する。このとき、異物位置情報の基準となる座標とステージ11上に配置された基板200の基準となる位置とが対応付けられた後、異物位置情報の異物220の位置にノズル122aが配置されるように、処理液滴下制御部143は、駆動機構123に指示を与える。異物220の位置に処理液の液滴を滴下する処理は、1回以上行われる。なお、処理液の液滴の滴下が複数回実行されるようにレシピが構成されている場合には、処理液の液滴を滴下してから上記した亀裂生成時間が経過した後に処理液の液滴を滴下する処理を繰り返して実行する。
【0023】
図2では、凍結層210aを形成する処理液の供給と、異物220の位置への処理液滴の滴下と、を同じノズルヘッド122を用いて行っているが、それぞれ異なるノズルヘッドを用いて行ってもよい。
【0024】
図3は、第1の実施形態による基板処理装置の構成の他の例を模式的に示す図である。ここでは、図2と異なる部分について説明する。この基板処理装置10の処理液供給部12は、第1の実施形態の構成に加えて、凍結層210aとなる処理液膜210を形成する際の処理液を基板200の上面に供給するノズル162aを有するノズルヘッド162と、ノズルヘッド162を水平面内で揺動させる駆動機構163と、を備える。また、処理液供給部12は、ノズルヘッド162と処理液貯蔵部121との間を接続する配管164と、配管164を介して処理液を処理液貯蔵部121からノズル162aまで送るポンプ165と、処理液貯蔵部121からノズル162aへの処理液の供給の切り替えを行うバルブ166と、を備える。
【0025】
すなわち、図3では、ノズルヘッド162は、処理液膜210を形成する際に使用され、ノズルヘッド122は、凍結層210a中の異物220の位置に処理液を滴下する際に使用される。
【0026】
図2および図3では、ノズル122aがステージ11上の所定の位置に配置されるように、ノズルヘッド122を駆動機構123によって駆動する場合を例に挙げたが、ノズル122aとステージ11とが相対的に移動可能な構成であれば、実施形態がこれに限定されるものではない。例えば、ノズル122aの位置を固定し、ステージ11を図示しない駆動機構によって水平方向に移動可能な構成としてもよいし、ノズル122aとステージ11とを駆動機構によって水平方向に移動可能な構成としてもよい。
【0027】
第1の実施形態では、基板200の上面に処理液膜210を形成し、基板200の下面を冷却媒体130で冷却して処理液膜210を凍結させて凍結層210aを形成する。ついで、凍結層210aの異物220の位置に処理液の液滴を滴下し、滴下された位置の凍結層210aを融解させた後、処理液滴215を凍結させた処理液滴凍結部215aを形成する処理を所定の回数実行する。その後、冷却媒体130による冷却を停止した後、処理液滴凍結部215aを含む凍結層210aを融解して、洗い流す。これによって、基板200の上面の異物220を除去しながら、異物220が存在しない領域に基板200の上面に配置されるパターンへの凍結洗浄によるダメージを抑制することができる。
【0028】
また、基板200の上面全体で凍結層210aの形成および融解を繰り返す場合に比して、使用する処理液の量を抑制することができ、半導体装置の製造に要する費用を低減させることができる。さらに、基板200の上面全体で凍結層210aの形成および融解を繰り返す場合に比して、凍結洗浄に要する時間を短縮することもできる。
【0029】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、異物の位置への処理液の液滴の滴下の際に、液滴が濡れ広がらないように基板の上面の全面に凍結層を形成していた。第2の実施形態では、基板の上面の全面に凍結層を形成せずに、液滴を所望の位置に滴下し、処理液滴凍結部を形成することができる基板処理方法について説明する。
【0030】
図4は、第2の実施形態による基板処理方法の手順の一例を模式的に示す図である。図4(a)に示されるように、ステージ11上に処理対象の基板200を載置する。このとき、洗浄面が疎水化された基板200がステージ11上に載置される。基板200は、洗浄面を上側にして載置される。基板200には、異物220が付着している。基板200は、例えば空気中に置くことで、表面が空気中の有機物によって汚染され、自然と疎水化される。しかし、凍結洗浄を行う基板200の洗浄面を積極的に疎水化処理してもよい。例えば、基板200の表面に覆われた親水基を疎水基で置換するヘキサメチルジシラザン(HMDS)処理を実行することによって基板200の洗浄面を疎水化する。
【0031】
また、基板200の下面側に処理液の凝固温度よりも低い温度の冷却媒体を供給し、基板200を冷却する。冷却媒体として、処理液の凝固点よりも低い温度に冷やした窒素ガスなどの気体、あるいは液体窒素、液体フロンなどの液体を使用することができる。
【0032】
ついで、図4(b)に示されるように、異物220の位置に処理液の液滴215を滴下する。異物220の位置は、第1の実施形態と同様に、マスクのパターン検査装置などによって洗浄前に取得されている。基板200の上面は疎水化処理がなされているので、基板200上に滴下された液滴215は広がらずに異物220を包むような形状を有する。
【0033】
その後、図4(c)に示されるように、基板200は冷却媒体によって冷却されている状態であるので、液滴215は凍結し、処理液滴凍結部215aが形成される。そして、図4(d)に示されるように、処理液滴凍結部215aに亀裂215bが入る。
【0034】
その後、図4(b)に処理が戻り、図4(b)~(d)の工程を所定の回数、実行する。この工程を繰り返す場合には、第1の実施形態と同様に、処理液の液滴215を滴下してから処理液滴凍結部215aに亀裂が入るまでの時間よりも若干長い亀裂生成時間が経過した後に、再び液滴215を異物220の位置に滴下する。なお、2回目以降に滴下される液滴215は、異物220の周辺の処理液滴凍結部215aを融解し、その後融解した処理液と滴下された液滴215とによる処理液滴によって、新たな処理液滴凍結部215aが形成される。
【0035】
この場合も、第1の実施形態で説明したように、異物220の位置で処理液滴の凍結および融解を繰り返すことによって、異物220が上方に移動する確率が高くなる。また、図4(b)~(d)の工程の実行回数は、異物220の種類(例えば、有機物であるのか、無機物であるのか、あるいは金属であるのか)ごとに求めておき、異物220の種類に応じて変更してもよい。さらに、実行回数が1回で異物220の除去率が100%となる場合には、図4(b)~(d)の工程を繰り返さなくてもよい。
【0036】
その後、図1(f)と同様に、基板200の下面への冷却媒体130の供給を停止し、基板200上に常温の処理液を供給して、処理液滴凍結部215aを融解する。これによって、基板200の上面を上方向に移動した異物220が処理液217によって洗い流され、除去されることになる。
【0037】
第2の実施形態による基板処理方法を実行する基板処理装置10は、第1の実施形態の図2と同様の構成を有する。ただし、この場合、処理液滴下制御部143は、基板200上の全面に所定の厚さの凍結層210aを形成する処理を実行しない。また、図3に示される基板処理装置10を用いる場合には、処理液供給部12のノズルヘッド162は、凍結洗浄処理の最後の融解および洗浄時の基板200の上面への処理液の供給に使用される。
【0038】
第2の実施形態では、洗浄面を疎水化した基板200を冷却した状態で、異物220の位置にのみ処理液を滴下して処理液滴の凍結および融解を実行する。これによって、異物220を除去する共に、異物220が存在しない領域に基板200の上面に配置されるパターンへの凍結洗浄によるダメージを抑制することができる。また、基板200の上面の全面に凍結層210aを形成しないので、第1の実施形態の場合に比して、処理液の使用量をさらに低減することができる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
10 基板処理装置、11 ステージ、12 処理液供給部、13 冷却媒体供給部、14 制御部、111 支持部、112 貫通孔、113 供給口、121 処理液貯蔵部、122,162 ノズルヘッド、122a,162a ノズル、123,163 駆動機構、124,132,164 配管、125,165 ポンプ、126,133,166 バルブ、130 冷却媒体、131 冷却媒体貯蔵部、141 異物位置情報取得部、142 冷却制御部、143 処理液滴下制御部、200 基板、210 処理液膜、210a 凍結層、215 液滴(処理液滴)、215a 処理液滴凍結部、215b 亀裂、217 処理液、220 異物。
図1
図2
図3
図4