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特許7225124陰圧療法のための剥がして貼るドレッシング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-10
(45)【発行日】2023-02-20
(54)【発明の名称】陰圧療法のための剥がして貼るドレッシング
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20230213BHJP
   A61M 27/00 20060101ALI20230213BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
A61F13/02 310M
A61M27/00
A61F13/02 310D
A61F13/02 310Z
A61F13/00 301C
A61F13/02 310H
A61F13/02 345
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2019567267
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 US2018036132
(87)【国際公開番号】W WO2018226746
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】62/516,566
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/516,550
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/516,540
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/592,950
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/565,754
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/613,494
(32)【優先日】2018-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/615,821
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/623,325
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/576,498
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/625,704
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/616,244
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/650,572
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/633,438
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ティモシー,マーク
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0175156(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0119833(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0305490(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0030304(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0282309(US,A1)
【文献】国際公開第2015/193257(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/02
A61M 27/00
A61F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰圧を用いて組織部位を治療するためのドレッシングにおいて、
治療アパーチャと前記治療アパーチャの周囲の複数の穿孔とを備える封止層であって、前記複数の穿孔は前記治療アパーチャよりも小さい、封止層と、
前記治療アパーチャと整列したフィルム及び複数の流体制限部を備える流体制御層であって、前記流体制限部が前記フィルムにスリットを備える、流体制御層と、
前記流体制限部に隣接するマニホールドと、
フィルム及び感圧接着剤を備えるカバーであって、前記フィルムが、前記マニホールドの上に配置され且つ前記マニホールドの周囲で前記封止層に結合され、前記感圧接着剤が前記複数の穿孔に隣接して配置されている、カバーと、
を備えることを特徴とするドレッシング。
【請求項2】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、前記流体制御層がポリウレタンのフィルムを備えることを特徴とするドレッシング。
【請求項3】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、前記スリットが、各々、約2ミリメートル~約5ミリメートルの範囲の長さを有することを特徴とするドレッシング。
【請求項4】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、前記スリットが、各々、約3ミリメートルの長さを有することを特徴とするドレッシング。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のドレッシングにおいて、前記封止層がゲルから形成されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のドレッシングにおいて、前記封止層が、シリコーンゲルから形成されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のドレッシングにおいて、
前記マニホールドが、前記流体制御層に隣接するマニホールド面を画定する第1縁部を有し、
前記流体制御層が、第2縁部を有し、前記第2縁部が、前記マニホールド面に隣接する流体制御面を画定し、且つ前記マニホールド面と同様の形状を有し、
前記マニホールド面が、少なくとも前記流体制御面と同程度の大きさであることを特徴とするドレッシング。
【請求項8】
請求項7に記載のドレッシングにおいて、前記流体制御面が前記治療アパーチャより大きいことを特徴とするドレッシング。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載のドレッシングにおいて、前記マニホールド及び前記流体制御層のうちの少なくとも一方が、前記治療アパーチャの周囲の外縁部に結合されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項10】
請求項9に記載のドレッシングにおいて、前記外縁部が、約2ミリメートル~約3ミリメートルの範囲の幅を有することを特徴とするドレッシング。
【請求項11】
請求項1に記載のドレッシングにおいて、前記治療アパーチャが、約90ミリメートル~約110ミリメートルの範囲の幅と、約150ミリメートル~約160ミリメートルの範囲の長さとを有することを特徴とするドレッシング。
【請求項12】
陰圧を用いて組織部位を治療するためのドレッシングにおいて、
マニホールドと、
フィルム及び前記マニホールドに隣接する複数の流体制限部を備える流体制御層であって、前記流体制限部は、圧力勾配に応答して通常の制限位置から開放位置に移動するように構成されたスリットを前記フィルムに備える、流体制御層と、
複数の穿孔を備えるゲル層であって、前記穿孔のうちの少なくともいくつかが、前記流体制限部のうちの2つ以上と整列している、ゲル層と、
無孔フィルム及び感圧接着剤を備えるカバーであって、前記無孔フィルムが、前記マニホールドの上に配置され且つ前記マニホールドの周囲で前記ゲル層に結合され、前記感圧接着剤が、前記複数の穿孔に隣接して配置されている、カバーと、
を備えることを特徴とするドレッシング。
【請求項13】
請求項12に記載のドレッシングにおいて、前記穿孔が、円形であり、約7ミリメートル~約9ミリメートルの範囲の直径を有することを特徴とするドレッシング。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のドレッシングにおいて、前記流体制御層がポリウレタンのフィルムを備えることを特徴とするドレッシング。
【請求項15】
請求項12に記載のドレッシングにおいて、前記スリットが、各々、約2ミリメートル~約5ミリメートルの範囲の長さを有することを特徴とするドレッシング。
【請求項16】
請求項15に記載のドレッシングにおいて、前記スリットが、各々、約3ミリメートルの長さを有することを特徴とするドレッシング。
【請求項17】
請求項12に記載のドレッシングにおいて、前記穿孔が円形であり、約7ミリメートル~約9ミリメートルの範囲の直径を有することを特徴とするドレッシング。
【請求項18】
陰圧を用いて組織部位を治療するためのドレッシングにおいて、
接着剤を有するカバーと、
マニホールドと、
穿孔ポリマーフィルムであって、穿孔は、前記ポリマーフィルムにスリットを備える、穿孔ポリマーフィルムと、
治療アパーチャと前記治療アパーチャの周囲の複数の穿孔を有する穿孔シリコーンゲルであって、前記複数の穿孔は前記治療アパーチャよりも小さい、穿孔シリコーンゲルと、
を備え、
前記カバー、前記マニホールド、前記穿孔ポリマーフィルム及び前記穿孔シリコーンゲルが、前記カバー及び前記穿孔シリコーンゲルが前記マニホールドを封入した状態で、積層関係で組み立てられ、前記穿孔ポリマーフィルムが、前記治療アパーチャを通して少なくとも部分的に露出され、前記接着剤の少なくとも幾分かが、前記治療アパーチャの周囲で前記穿孔シリコーンゲルを通して露出されていることを特徴とするドレッシング。
【請求項19】
請求項18に記載のドレッシングにおいて、前記治療アパーチャが前記マニホールドの表面に対応することを特徴とするドレッシング。
【請求項20】
請求項18又は19に記載のドレッシングにおいて、前記治療アパーチャが前記マニホールドの周囲に枠を形成していることを特徴とするドレッシング。
【請求項21】
請求項18乃至20の何れか一項に記載のドレッシングにおいて、前記治療アパーチャが、約90ミリメートル~約110ミリメートルの範囲の幅と、約150ミリメートル~約160ミリメートルの範囲の長さとを有することを特徴とするドレッシング。
【請求項22】
陰圧を用いて組織部位を治療するためのドレッシングにおいて、
マニホールドと、
開放中心窓と前記開放中心窓の周囲の複数の開口部とを備えるゲル層であって、前記複数の開口部は前記開放中心窓よりも小さい、ゲル層と、
前記開放中心窓にわたって延在し且つ複数の流体制限部を含むフィルムを備える流体制御層であって、前記流体制限部は前記フィルムにスリットを備える、流体制御層と、
無孔フィルム及び感圧接着剤を備えるカバーであって、前記無孔フィルムが、前記マニホールドの上に配置され且つ前記マニホールドの周囲で前記ゲル層に結合され、前記感圧接着剤が、前記複数の穿孔に隣接して配置されている、カバーと、
を備えることを特徴とするドレッシング。
【請求項23】
請求項22に記載のドレッシングにおいて、前記開放中心窓が、前記ゲル層において約20%~約80%の開口部を備えることを特徴とするドレッシング。
【請求項24】
請求項22又は23に記載のドレッシングにおいて、前記開放中心窓が、約90ミリメートル~約110ミリメートルの範囲の幅と、約150ミリメートル~約160ミリメートルの範囲の長さとを有することを特徴とするドレッシング。
【請求項25】
請求項22乃至24の何れか一項に記載のドレッシングにおいて、前記開放中心窓が、前記流体制御層を通る流体の侵入を可能にする開口部を備えることを特徴とするドレッシング。
【請求項26】
請求項22乃至25の何れか一項に記載のドレッシングにおいて、前記開放中心窓が、前記開放中心窓に近接する前記マニホールドの表面積の20%以内の面積を有することを特徴とするドレッシング。
【請求項27】
陰圧を用いて組織部位を治療するためのドレッシングにおいて、
陰圧の通過及び創傷流体の通過のためのフォームマニホールドと、
前記マニホールドを介する陰圧の送達及び創傷流体の通過のための開放領域を有する下面であって、前記開放領域が、組織に封止するためにドレープ領域によって包囲され、前記ドレープ領域が、接着剤を有し、且つ前記マニホールドを介する前記陰圧の通路のための開口部を含まない、下面と、
前記下面の前記開放領域にわたって延在し、前記フォームマニホールド内へ陰圧及び創傷流体の通過のためにポリマーフィルムにスリットを含む、ポリマーフィルム創傷接触層と、
を備え
前記スリットは、圧力勾配に応答して通常の制限位置から開放位置に移動するように構成された複数の流体制限部を形成することを特徴とするドレッシング。
【請求項28】
請求項27に記載のドレッシングにおいて、前記ドレッシングがカバーをさらに備え、前記カバーが、前記マニホールドの上に配置され且つ前記マニホールドの周囲で前記ドレープ領域に結合されたドレープを備えることを特徴とするドレッシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2018年3月30日に出願された、「ASSEMBLY FEATURES AND METHODS FOR A PEEL-AND-PLACE DRESSING FOR USE WITH NEGATIVE-PRESSURE TREATMENT」と題する米国仮特許出願第62/650,572号明細書、2018年2月21日に出願された、「COMPOSITE DRESSINGS FOR IMPROVED GRANULATION AND REDUCED MACERATION WITH NEGATIVE-PRESSURE TREATMENT」と題する米国仮特許出願第62/633,438号明細書、2018年1月29日に出願された、「METHODS FOR MANUFACTURING AND ASSEMBLING DUAL MATERIAL TISSUE INTERFACE FOR NEGATIVE-PRESSURE THERAPY」と題する米国仮特許出願第62/623,325号明細書、2018年2月2日に出願された、「CUSTOMIZABLE COMPOSITE DRESSINGS FOR IMPROVED GRANULATION AND REDUCED MACERATION WITH NEGATIVE-PRESSURE TREATMENT」と題する米国仮特許出願第62/625,704号明細書、2018年1月11日に出願された、「COMPOSITE DRESSINGS FOR IMPROVED GRANULATION AND REDUCED MACERATION WITH NEGATIVE-PRESSURE TREATMENT」と題する米国仮特許出願第62/616,244号明細書、2018年1月10日に出願された、「METHODS FOR MANUFACTURING AND ASSEMBLING DUAL MATERIAL TISSUE INTERFACE FOR NEGATIVE-PRESSURE THERAPY」と題する米国仮特許出願第62/615,821号明細書、2018年1月4日に出願された、「PEEL AND PLACE DRESSING FOR THICK EXUDATE AND INSTILLATION」と題する米国仮特許出願第62/613,494号明細書、2017年11月30日に出願された、「MULTI-LAYER WOUND FILLER FOR EXTENDED WEAR TIME」と題する米国仮特許出願第62/592,950号明細書、2017年10月24日に出願された、「SYSTEMS,APPARATUSES,AND METHODS FOR NEGATIVE-PRESSURE TREATMENT WITH REDUCED TISSUE IN-GROWTH」と題する米国仮特許出願第62/576,498号明細書、2017年9月29日に出願された、「COMPOSITE DRESSINGS FOR IMPROVED GRANULATION AND REDUCED MACERATION WITH NEGATIVE-PRESSURE TREATMENT」と題する米国仮特許出願第62/565,754号明細書、2017年6月7日に出願された、「TISSUE CONTACT INTERFACE」と題する米国仮特許出願第62/516,540号明細書、2017年6月7日に出願された、「COMPOSITE DRESSINGS FOR IMPROVED GRANULATION AND REDUCED MACERATION WITH NEGATIVE-PRESSURE TREATMENT」と題する米国仮特許出願第62/516,550号明細書、及び2017年6月7日に出願された、「COMPOSITE DRESSINGS FOR IMPROVED GRANULATION AND REDUCED MACERATION WITH NEGATIVE-PRESSURE TREATMENT」と題する米国仮特許出願第62/516,566号明細書の出願の利益を主張し、これらの出願の各々は、すべての目的に対して参照により本明細書に援用される。
【0002】
添付の特許請求の範囲に示す本発明は、概して組織治療システムに関し、より詳細には、ただし限定なしに、組織治療用のドレッシングと陰圧を用いた組織治療のためにドレッシングを使用する方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
臨床試験及び診療により、組織部位に近接して減圧することにより、組織部位における新たな組織の増殖を高め加速させることができることが示された。この現象の適用は多数あるが、この現象は創傷の処置に特に有利であることが分かった。外傷であるか、手術であるか、又は別の原因であるか、創傷の病因に関わらず、創傷の適切なケアは、転帰に対して重要である。創傷又は他の組織の減圧による治療は、一般に、「陰圧療法」と呼ぶことができるが、たとえば、「陰圧創傷療法」、「減圧療法」、「真空療法」、「真空補助閉鎖」及び「局所陰圧」を含む他の名称によっても知られている。陰圧療法は、上皮組織及び皮下組織の移動、血流の改善、並びに創傷部位における組織の微小変形を含む、多くの利点を提供することができる。これらの利点により、合わせて、肉芽組織の発生を増大させ、治癒時間を短縮することができる。
【0004】
組織部位を洗浄することは、新たな組織の増殖のために非常に有益であり得るということも広く受け入れられている。たとえば、治療目的で、創傷又は腔を液体溶液で洗うことができる。これらの行為は、一般にそれぞれ「灌注」及び「洗浄(lavage)」と呼ばれる。「滴下」は、一般に、組織部位に徐々に流体を導入し、流体を除去する前に指示された期間、流体を放置するプロセスを指す、別の行為である。たとえば、創傷床の上への局所治療溶液の滴下を陰圧療法と組み合わせて、創傷床内の可溶性汚染物質を緩めて感染性物質を除去することにより、創傷治癒をさらに促進することができる。その結果、可溶性細菌負荷を低減させ、汚染物質を除去し、創傷を洗浄することができる。
【0005】
陰圧療法及び/又は滴下療法の臨床的利益は広く知られているが、治療システム、構成要素及びプロセスの改善は、医療提供者及び患者に利益をもたらすことができる。
【発明の概要】
【0006】
添付の特許請求の範囲において、陰圧療法環境において組織を治療する新たな且つ有用なシステム、装置及び方法を示す。当業者が請求項に係る主題を作成し使用することができるように、例示的な実施形態も提供する。
【0007】
たとえば、いくつかの実施形態では、組織を治療するためのドレッシングは、封止層、流体制御層、マニホールド及びカバーを含むドレッシング層の複合物であり得る。いくつかの例では、封止層は、シリコーンゲル等の穿孔ゲルの層を備えるか又はそうした層から本質的に構成され得る。ゲルの中心領域を除去して、治療アパーチャを画定することができる。流体制御層は、フィルムにおける開窓等、流体制限部を有するポリウレタンフィルムを備えるか又はそうしたポリウレタンフィルムから本質的に構成され得る。いくつかの実施形態では、フィルムの裏にアクリル接着剤を付すことができる。マニホールドは、いくつかの例では網状フォームとすることができ、ポリウレタンフィルムは、マニホールドに貼り合わせることができ、又は、ポリウレタンフィルム上のアクリル接着剤が2つを合わせて接着することができる。いくつかの例では、ポリウレタンフィルムは、マニホールドに貼り付け、その後、所望のサイズ及び形状に切断することができ、これにより、製造プロセスを簡略化することができる。
【0008】
いくつかの例では、マニホールド及び流体制御層は、治療アパーチャより大きい直径を有することができ、その結果、マニホールドの縁は、組み立てられ組織部位に適用されるときに露出しない。流体制御層は、実質的な数の流体制御部が治療アパーチャと整列するように、治療アパーチャの上に配置することができる。たとえば、マニホールド及び流体制御層は、治療アパーチャと実質的に整列することができるが、広い許容差が許容可能であり得る。マニホールド及び流体制御層は、治療アパーチャの周囲の封止層の領域の上に重なることができ、封止層は、マニホールド、流体制御層又は両方を固定するために重ね合わせ領域に接着剤を有することができる。カバーは、組み立てられたマニホールド及び流体制御層の上に位置決めし、マニホールドを封入するように封止層に付着させることができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、封止層は、封止層にわたって連続的に分散された穿孔を有する、シリコーンゲル等の穿孔ゲルの層を備えるか又はそうした層から本質的に構成され得る。流体制御層における流体制限部は、穿孔内に配置することができ、それにより、封止層の表面積を増大させながら、治療アパーチャに同様の機能を提供することができる。
【0010】
より全体的に、陰圧を用いて組織部位を治療するためのドレッシングは、治療アパーチャと治療アパーチャの周囲の複数の穿孔とを有する封止層と、治療アパーチャと整列した複数の流体制限部を備える流体制御層とを備えることができる。流体制限部に隣接してマニホールドを配置することができ、無孔フィルムを備えるカバーを、マニホールドの上に配置し、マニホールドの周囲で前記封止層に結合することができる。カバーは、複数の穿孔に隣接して配置された感圧接着剤をさらに有することができる。より詳細な実施形態では、流体制御層は、ポリウレタンのフィルムを備えるか又はポリウレタンフィルムから本質的に構成され得る。封止層は、いくつかの実施形態ではシリコーンゲル等、ゲルから形成することができる。
【0011】
いくつかの例では、マニホールドは、流体制御層に隣接するマニホールド面を画定する第1縁部を有することができ、流体制御層は、マニホールド面に隣接する流体制御面を画定する第2縁部を有することができる。流体制御面及びマニホールド面は、いくつかの実施形態では同様の形状を有することができる。マニホールド面は、少なくとも流体制御面と同程度の大きさとすることができ、流体制御面は、治療アパーチャより大きくすることができる。より具体的な例では、マニホールド及び流体制御層のうちの少なくとも一方は、治療アパーチャの周囲の外縁部に結合することができる。
【0012】
別法として、陰圧を用いて組織部位を治療するためのドレッシングの他の実施形態例は、マニホールドと、マニホールドに隣接する複数の流体制限部を備える流体制御層とを備えることができる。流体制御層に隣接して、複数の穿孔を備える封止層を配置することができ、穿孔のうちの少なくともいくつかは、流体制限部のうちの2つ以上と整列することができる。無孔フィルムを備えるカバーを、マニホールドの上に配置し、マニホールドの周囲で封止層に結合することができる。カバーは、複数の穿孔に隣接して配置された感圧接着剤をさらに有することができる。より詳細な実施形態では、流体制御層は、ポリウレタンフィルムを備えるか又はポリウレタンフィルムから本質的に構成され得る。封止層は、いくつかの実施形態ではシリコーンゲル等、ゲルから形成することができる。
【0013】
より詳細な例では、流体制限部は、約2ミリメートル~約5ミリメートルの長さを有することができるスリットを備えることができる。封止層における穿孔は、円形であり、流体制限部のうちの2つ以上と整列するのに十分大きい直径を有することができる。たとえば、約7ミリメートル~約9ミリメートルの範囲の直径が、いくつかの構成に対して好適であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、陰圧を用いて組織部位を治療するためのドレッシングは、接着剤を有するカバーと、マニホールドと、穿孔ポリマーフィルムと、治療アパーチャを有する穿孔シリコーンゲルとを備えることができる。カバー、マニホールド、穿孔ポリマーフィルム及び穿孔シリコーンゲルは、カバー及び穿孔シリコーンゲルがマニホールドを封入した状態で、積層関係で組み立てることができる。穿孔ポリマーフィルムは、治療アパーチャを通して少なくとも部分的に露出させることができ、接着剤の少なくとも幾分かは、治療アパーチャの周囲で穿孔シリコーンゲルを通して露出させることができる。
【0015】
陰圧を用いて組織部位を治療するためのドレッシングは、いくつかの実施形態では、マニホールド、ゲル層、流体制御層及びカバーを備えることができる。ゲル層は、開放中心窓と開放中心窓の周囲の複数の開口部とを備えることができる。流体制御層は、開放中心窓にわたって延在し、複数の流体制限部を備えることができる。カバーは、無孔フィルム及び感圧接着剤を備えることができ、無孔フィルムは、マニホールドの上に配置し、マニホールドの周囲でゲル層に結合することができ、感圧接着剤は、複数の穿孔に隣接して配置することができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、陰圧を用いて組織部位を治療するためのドレッシングは、陰圧の通過及び創傷流体の通過のためのフォームマニホールドと、マニホールドを介する陰圧の送達及び創傷流体の通過のための開放領域を有する下面であって、開放領域が、組織に封止するためにドレープ領域によって包囲され、ドレープ領域が、接着剤を有し、且つマニホールドを介する陰圧の通路のための開口部を含まない、下面と、下面の開放領域にわたって延在し、フォームマニホールド内へ陰圧及び創傷流体の通過のための開口部を有する、ポリマーフィルム創傷接触層とを備えることができる。ドレッシングは、いくつかの実施形態ではカバーをさらに備えることができ、カバーは、マニホールドの上に配置され且つマニホールドの周囲でドレープ領域に結合したドレープを備える。
【0017】
請求項に係る主題を作成し使用する他の目的、利点及び好ましい形態は、例示的な実施形態の以下の詳細な説明と併せて添付図面を参照することにより最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本明細書による、陰圧治療及び滴下治療を提供することができる治療システムの実施形態例の機能ブロック図である。
図2図2は、図1の治療システムのいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す、ドレッシングの例の組立図である。
図3図3は、図2のドレッシング例の上面図である。
図4図4は、図2のドレッシング例の底面図である。
図5図5は、図1の治療システムの何らかの実施形態例に関連付けることができるさらなる詳細を示す、ドレッシングの別の例の組立図である。
図6図6は、図2又は図5のドレッシングのいくつかの実施形態に関連付けることができる、1つの層における流体制限部の構成例の概略図である。
図7図7は、図5のドレッシングのいくつかの実施形態に関連付けることができる、1つの層におけるアパーチャの構成例の概略図である。
図8図8は、図7の層例の上に重ね合わされた図6の層例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施形態例の以下の説明は、当業者が、添付の特許請求の範囲に示す主題を作成し使用することを可能にする情報を提供するが、当技術分野においてすでに周知のいくつかの詳細は省略している場合がある。したがって、以下の詳細な説明は、限定的ではなく例示的なものとして解釈されるべきである。
【0020】
本明細書では、添付図面に示すさまざまな要素間の空間的な関係又はさまざまな要素の空間的な向きに関連して、実施形態例を記載している場合もある。概して、こうした関係又は向きは、処置を受けるために適所にある患者に一致するか又はそうした患者に対する基準系を想定する。しかしながら、当業者であれば認識されるはずであるように、この基準系は、厳密な規定ではなく、単に説明上の好都合な手段である。
【0021】
図1は、本明細書による、組織部位に対し局所処置溶液の滴下とともに陰圧療法を提供することができる治療システム100の実施形態例の簡易機能ブロック図である。
【0022】
この文脈において「組織部位」という用語は、限定されないが、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱又は靭帯を含む、組織上に又は組織内に位置する創傷、欠損又は他の処置標的を広く指す。創傷としては、たとえば、慢性、急性、外傷性、亜急性及び離開した創傷、中間層熱傷、潰瘍(糖尿病潰瘍、圧迫潰瘍又は静脈不全潰瘍等)、弁及びグラフトを挙げることができる。「組織部位」という用語はまた、必ずしも創傷及び欠損していないが、代わりに、さらなる組織を追加するか又はその増殖を促進することが望ましい可能性がある領域である、任意の組織の領域を指す場合もある。たとえば、採取し移植することができるさらなる組織を増殖させるために、組織部位に陰圧を印加することができる。
【0023】
治療システム100は、陰圧源105等の陰圧の供給源又は供給部と、1つ又は複数の分配構成要素とを含むことができる。分配構成要素は、好ましくは着脱可能であり、使い捨て、再使用可能又はリサイクル可能であり得る。ドレッシング110等のドレッシング及び容器115等の流体容器が、治療システム100のいくつかの例に関連付けることができる分配構成要素の例である。図1の例に示すように、ドレッシング110は、いくつかの実施形態では、組織インタフェース120、カバー125又は両方を備えるか又はそれから本質的に構成され得る。
【0024】
流体伝導体が、分配構成要素の別の例示的な例である。この文脈における「流体伝導体」は、広義に、チューブ、パイプ、ホース、導管、又は、2つの端部の間で流体を搬送するように適合された1つ又は複数の内腔若しくは開放経路を備えた他の構造体を含む。通常、チューブは、幾分かの可撓性がある長尺状の円筒状構造体であるが、幾何学的形状及び剛性は変更することができる。さらに、いくつかの流体伝導体を他の構成要素内にはめ込むか又は他の構成要素と他の方法で一体的に結合することができる。分配構成要素はまた、他の構成要素の結合及び分離を容易にするインタフェース又は流体ポートも含むか又は備えることができる。いくつかの実施形態では、たとえば、ドレッシングインタフェースは、ドレッシング110への流体伝導体の結合を容易にすることができる。たとえば、こうしたドレッシングインタフェースは、San Antonio、TexasのKinetic Concepts,Inc.から入手可能なSENSAT.R.A.C.(商標)パッドであり得る。
【0025】
治療システム100は、コントローラ130等の調節器又はコントローラもまた含むことができる。さらに、治療システム100は、センサを含むことができ、センサは、動作パラメータを測定し、動作パラメータを示すフィードバック信号をコントローラ130に提供する。図1に示すように、たとえば、治療システム100は、コントローラ130に結合された第1センサ135及び第2センサ140を含むことができる。
【0026】
治療システム100は生理食塩水等の滴下溶液の供給源も含むことができる。たとえば、溶液源145は、図1の実施形態例に示すように、ドレッシング110に流体的に結合することができる。溶液源145は、いくつかの実施形態では、陽圧源150等の陽圧源、陰圧源105等の陰圧源又は両方に、流体的に結合することができる。組織部位への滴下溶液(たとえば生理食塩水)の適切な投与量を確実にするために、滴下調節器155等の調節器もまた、溶液源145及びドレッシング110に流体的に結合することができる。たとえば、滴下調節器155はピストンを備えることができ、ピストンは、陰圧間隔中に溶液源から滴下溶液を引き出し、排出間隔中に溶液をドレッシングに滴下するように、陰圧源105によって空気圧式に作動させることができる。さらに又は別法として、コントローラ130は、組織部位への滴下溶液の投与量を制御するために、陰圧源105、陽圧源150又は両方に結合することができる。いくつかの実施形態では、滴下調節器155はまた、図1の例に示すように、ドレッシング110を通して陰圧源105に流体的に結合することも可能である。
【0027】
治療システム100のいくつかの構成要素は、センサ、処理装置、アラームインジケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示装置、又は治療をさらに容易にするユーザインタフェース等、他の構成要素内に収容し、又は他の構成要素とともに使用することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、陰圧源105は、溶液源145、コントローラ130及び他の構成要素と結合して治療ユニットにすることができる。
【0028】
概して、治療システム100の構成要素は、直接結合される場合もあれば間接的に結合される場合もある。たとえば、陰圧源105は、容器115に直接結合することができ、容器115を通してドレッシング110に間接的に結合することができる。結合としては、文脈により、流体結合、機械的結合、熱的結合、電気的結合若しくは化学的結合(化学結合等)、又は結合の何らかの組合せも挙げることができる。たとえば、陰圧源105は、コントローラ130に電気的に結合することができ、組織部位に流体路を提供する1つ又は複数の分配構成要素に、流体的に結合することができる。いくつかの実施形態では、構成要素はまた、物理的に近接し、単一構造体に一体化されており、又は同じ材料片から形成されることによって、結合することも可能である。
【0029】
陰圧源105等の陰圧供給部は、陰圧での空気の貯蔵部であり得るか、又は、たとえば、真空ポンプ、吸引ポンプ、多くの医療施設で利用可能な壁面吸込みポート、又はマイクロポンプ等、手動又は電動式の装置であり得る。「陰圧」は、一般に、密閉された治療環境の外部の局所環境における周囲圧力等、局所的な周囲圧力を下回る圧力を指す。多くの場合、局所的な周囲圧力はまた、組織部位が位置する場所の大気圧でもあり得る。別法として、圧力は、組織部位における組織に関連する静水圧未満であり得る。別段の指示がない限り、本明細書で述べる圧力の値はゲージ圧である。陰圧の上昇と言及する場合、それは、一般に絶対圧の低下を指し、一方、陰圧の低下は、一般に絶対圧の上昇を指す。陰圧源105によりもたらされる陰圧の量及び性質は、治療要件に従って変更することができるが、圧力は、概して、-5mmHg(-667Pa)~-500mmHg(-66.7kPa)の一般に低真空(rough vacuum)とも呼ばれる低真空(low vacuum)である。一般的な治療範囲は、-50mmHg(-6.7kPa)~-300mmHg(-39.9kPa)である。
【0030】
容器115は、組織部位から引き出される滲出物及び他の流体を管理するために使用することができる、容器、キャニスタ、パウチ又は他の貯蔵構成要素を表す。多くの環境では、流体の収集、貯蔵及び廃棄のために、剛性容器が好ましいか又は望まれる可能性がある。他の環境では、剛性容器貯蔵なしに流体を適切に廃棄することができ、再使用可能な容器が、陰圧療法に関連する廃棄物を低減させコストを削減ことができる。
【0031】
コントローラ130等のコントローラは、陰圧源105等、治療システム100の1つ又は複数の構成要素を動作させるようにプログラムされたマイクロプロセッサ又はコンピュータであり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、コントローラ130はマイクロコントローラとすることができ、マイクロコントローラは、一般に、治療システム100の1つ又は複数の動作パラメータを直接又は間接的に制御するようにプログラムされた、プロセッサコア及びメモリを含む集積回路を備える。動作パラメータは、たとえば、陰圧源105に印加される電力、陰圧源105によって生成される圧力、又は組織インタフェース120に分配される圧力を含むことができる。コントローラ130はまた、好ましくは、フィードバック信号等の1つ又は複数の入力信号を受け取るように構成され、入力信号に基づいて1つ又は複数の動作パラメータを変更するようにプログラムされる。
【0032】
第1センサ135又は第2センサ140等のセンサは、一般に、当技術分野において、物理現象又は特性を検出又は測定し、概して、検出又は測定される現象又は特性を示す信号を提供するように動作可能な、任意の装置として知られている。たとえば、第1センサ135及び第2センサ140は、治療システム100の1つ又は複数の動作パラメータを測定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、第1センサ135は、空気圧経路における圧力を測定し、測定値を、測定された圧力を示す信号に変換するように構成された、トランスデューサであり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、第1センサ135は、ピエゾ抵抗ひずみゲージであり得る。第2センサ140は、任意選択的に、いくつかの実施形態では、電圧又は電流等、陰圧源105の動作パラメータを測定することができる。好ましくは、第1センサ135及び第2センサ140からの信号は、コントローラ130への入力信号として好適であるが、いくつかの実施形態ではいくつかの信号調節が適切であり得る。たとえば、信号は、コントローラ130によって処理することが出来る前に、フィルタリングするか又は増幅させる必要がある場合がある。典型的には、信号は電気信号であるが、光信号等、他の形態で表すことができる。
【0033】
組織インタフェース120は、概して、組織部位と部分的に又は完全に接触するように適合させることができる。組織インタフェース120は、多くの形態をとることができ、実施されている治療のタイプ又は組織部位の性質及びサイズ等、種々の要素に応じて、多くのサイズ、形状又は厚さを有することができる。たとえば、組織インタフェース120のサイズ及び形状は、深く且つ不規則な形状の組織部位の輪郭に適合させることができる。組織インタフェース120の表面のうちの任意のもの又はすべてが、不均一な、粗い又はぎざぎざの輪郭を有することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、組織インタフェース120は、マニホールドを備えるか又はマニホールドから構成され得る。この文脈におけるマニホールドは、圧力下で組織インタフェース120にわたり流体を収集するか又は分配する手段を備えるか又はそうした手段から本質的に構成され得る。たとえば、マニホールドは、陰圧源から陰圧を受け取り、組織インタフェース120にわたって複数のアパーチャを通して陰圧を分配するように適合させることができ、それには、組織部位から流体を収集し、陰圧源に向かって流体を引き込むという効果があり得る。いくつかの実施形態では、組織部位にわたる、滴下流体源等からの流体等の流体の送達を容易にするために、流体路を反転させることができ、又は第2流体路を設けることができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、カバー125は、細菌バリア及び身体的外傷からの保護を提供することができる。カバー125はまた、蒸発損失を低減させ、2つの構成要素、又は治療環境と局所外部環境との間等、2つの環境の間に流体シールを提供することができる材料から、構成することも可能である。カバー125は、たとえば、所与の陰圧源に対して組織部位において陰圧を維持するのに適切なシールを提供することができる、エラストマーフィルム又は膜を備えるか又はそれから構成され得る。カバー125は、いくつかの応用では、高水蒸気透過率(MVTR)を有することができる。たとえば、MVTRは、いくつかの実施形態では、38℃及び10%相対湿度(RH)でASTM E96/E96M Upright Cup Methodによる直立カップ技法を使用して測定された、少なくとも250グラム/平方メートル/24時間であり得る。いくつかの実施形態では、最大5,000グラム/平方メートル/24時間のMVTRが、有効な通気性及び機械的特性を提供することができる。
【0036】
いくつかの実施形態例では、カバー125は、水蒸気には透過性であるが液体には不透過性である、ポリウレタンフィルム等の無孔ポリマードレープ又はフィルムであり得る。こうしたドレープは、通常、25~50ミクロンの範囲の厚さを有する。透過性材料の場合、透過率は、概して、所望の陰圧を維持することができるのに十分低くなければならない。カバー125は、たとえば、以下の材料のうちの1つ又は複数を含むことができる。すなわち、親水性ポリウレタン等のポリウレタン(PU)、セルロース誘導体、親水性ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、親水性アクリル樹脂、親水性シリコーンエラストマー等シリコーン、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、エチレンビニルアセテート(EVA)、コポリエステル及びポリエーテルブロックポリミドコポリマーである。こうした材料は、たとえば、3M Company、Minneapolis Minnesotaから市販されているTegaderm(登録商標)ドレープ、Avery Dennison Corporation、Pasadena、Californiaから市販されているポリウレタン(PU)ドレープ、たとえば、Arkema S.A.、Colombes、Franceのポリエーテルブロックポリアミドコポリマー(PEBAX)、並びにExpopack Advanced Coatings、Wrexham、United Kingdomから市販されているInspire2301及びInpsire2327ポリウレタンフィルムとして市販されている。いくつかの実施形態では、カバー125は、2600g/m/24時間のMVTR(直立カップ技法)及び約30ミクロンの厚さを有するINSPIRE2301を含むことができる。
【0037】
取付デバイスを使用して、無傷の表皮、ガスケット又は別のカバー等の取付面に、カバー125を取り付けることができる。取付デバイスは、多くの形態をとることができる。たとえば、取付デバイスは、組織部位の周囲の表皮にカバー125を接着するように構成された、医学的に許容可能な感圧接着剤であり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、カバー125の一部又はすべてを、約25~65グラム/平方メートル(g.s.m.)の付着量を有することができるアクリル接着剤等の接着剤でコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、密閉性を向上させ漏れを低減させるように、より厚い接着剤、又は接着剤の組合せを付与することができる。取付デバイスの他の実施形態例としては、両面テープ、糊、親水コロイド、ヒドロゲル、シリコーンゲル又はオルガノゲルを挙げることができる。
【0038】
溶液源145はまた、滴下療法のための溶液を提供することができる、容器、キャニスタ、パウチ、バッグ又は他の貯蔵構成要素も表すことができる。溶液の組成は、指示される療法に従って変更することができるが、いくつかの指示に対して好適であり得る溶液の例としては、次亜塩素酸塩系溶液、硝酸銀(0.5%)、硫黄系溶液、ビグアニド、陽イオン溶液及び等張液が挙げられる。
【0039】
動作時、組織インタフェース120は、組織部位内に、組織部位にわたり、組織部位の上に、又は他の方法で組織部位に近接して配置することができる。たとえば、組織部位が創傷である場合、組織インタフェース120は、損傷を部分的に又は完全に充填することができ、又は、創傷の上に配置することができる。カバー125は、組織インタフェース120の上に配置し、組織部位の近くで取付面に封止することができる。たとえば、カバー125は、組織部位の周囲の無傷の表皮に封止することができる。したがって、ドレッシング110は、外部環境から実質的に隔離された、組織部位に近接する密閉された治療環境を提供することができ、陰圧源105は、密閉された治療環境において減圧することができる。
【0040】
密閉された治療環境内等、別の構成要素又は場所において減圧するために陰圧源を使用する流体力学は、数学的に複雑である可能性がある。しかしながら、陰圧療法及び滴下に適用可能な流体力学の基本原理は、一般に、当業者には周知であり、本明細書では、減圧するプロセスは、たとえば、陰圧を「送達する」、「分配する」又は「発生させる」として例示的に記載するものとする。
【0041】
概して、滲出物及び他の流体は、流体路に沿って圧力の低い方に向かって流れる。したがって、「下流」という用語は、通常、流体路において、相対的に陰圧源により近いか又は陽圧源からより離れることを意味する。逆に、「上流」という用語は、相対的に陰圧源からより離れるか又は陽圧源により近いことを意味する。同様に、こうした基準系における流体「入口」又は「出口」に関していくつかの特徴を記載することが好都合である場合がある。この向きは、概して、本明細書におけるさまざまな特徴及び構成要素を説明する目的で想定されている。しかしながら、流体路は、いくつかの応用では(陰圧源の代わりに陽圧源を用いること等により)反転させることも可能であり、この説明的な慣例は限定的な慣例として解釈されるべきではない。
【0042】
密閉された治療環境において組織インタフェース120を通して組織部位にわたって印加される陰圧により、組織部位にマクロひずみ及びマイクロひずみを引き起こすことができる。陰圧はまた、組織部位から滲出物及び他の流体を除去することも可能であり、それは、容器115に収集することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、コントローラ130は、第1センサ135等の1つ又は複数のセンサからデータを受け取り且つ処理することができる。コントローラ130はまた、組織インタフェース120に送達される圧力を管理するように、治療システム100の1つ又は複数の構成要素の動作も制御することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ130は、所望の目標圧力を受け取る入力を含むことができ、組織インタフェース120に印加すべき目標圧力の設定及び入力に関連するデータを処理するようにプログラムすることができる。いくつかの実施形態では、目標圧力は、組織部位において療法に対して望まれる目標陰圧としてオペレータによって設定され、その後、コントローラ130に対して入力として提供される、固定圧力値であり得る。目標圧力は、組織部位を形成する組織のタイプ、負傷又は創傷(あるとすれば)のタイプ、患者の医学的状態、及び付き添う医師の選好に基づいて、組織部位毎に変更することができる。所望の目標圧力を選択した後、コントローラ130は、目標圧力に基づいて1つ又は複数の制御モードで陰圧源105を動作させることができ、組織インタフェース120において目標圧力を維持するように1つ又は複数のセンサからフィードバックを受け取ることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、コントローラ130は連続圧力モードを有することができ、そこでは、陰圧源105は、治療の時間、又は手動で停止されるまで、一定の目標陰圧を提供するように動作する。さらに又は別法として、コントローラは、間欠圧力モードを有することができる。たとえば、コントローラ130は、目標圧力と周囲圧力との間で循環するように陰圧源105を動作させることができる。たとえば、目標圧力を、指定された期間(たとえば、5分間)、135mmHgの値で設定し、それに続き、指定された期間(たとえば、2分間)、動作を停止させることができる。サイクルは、陰圧源105を作動させることによって繰り返すことができ、それにより、目標圧力と周囲圧力との間の矩形波パターンを形成することができる。
【0045】
いくつかの実施形態例では、周囲圧力から目標圧力までの陰圧の上昇は、瞬間ではない可能性がある。たとえば、陰圧源105及びドレッシング110は、初期立上り時間を有する可能性がある。初期立上り時間は、使用されているドレッシング及び治療機器のタイプに応じて変化する可能性がある。たとえば、1つの治療システムに対する初期立上り時間は、約20~30mmHg/秒の範囲であり、別の治療システムの場合は約5~10mmHg/秒の範囲であり得る。治療システム100が間欠モードで動作している場合、繰返しの立上り時間は、初期立上り時間と実質的に等しい値であり得る。
【0046】
いくつかの動的圧力制御モード例では、目標圧力は経時的に変化させることができる。たとえば、目標圧力は、三角波形の形態で変化し、+25mmHg/分の速度で設定された立上り時間と-25mmHg/分の速度で設定された立下り時間とにより、50~135mmHgの陰圧で変化することができる。治療システム100の他の実施形態では、三角波形は、+30mmHg/分の速度で設定された立上り時間と-30mmHg/分の速度で設定された立下り時間とにより、25~135mmHgの陰圧で変化することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、コントローラ130は、動的圧力モードで可変目標圧力を制御するか又は求めることができ、可変目標圧力は、所望の陰圧の範囲としてオペレータによって指示される入力として設定することができる、最大圧力値と最小圧力値との間で変化することができる。可変目標圧力はまた、コントローラ130によって処理し且つ制御することができ、コントローラ130は、三角波形、正弦波形又は鋸歯状波形等、所定波形に従って目標圧力を変更することができる。いくつかの実施形態では、波形は、療法に望まれる所定の又は時間変化する陰圧としてオペレータによって設定することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、コントローラ130は、組織インタフェース120に提供される滴下溶液に関連するデータ等のデータを受け取り且つ処理することができる。こうしたデータとしては、臨床医によって処方される滴下溶液のタイプ、組織部位に滴下すべてき流体又は溶液の容量(「充填容量」)、及び組織部位に陰圧を印加する前に組織部位において溶液を放置する指示された時間の量(「滞留時間」)を挙げることができる。充填容量は、たとえば、10~500mLとすることができ、滞留時間は、1秒間~30分間とすることができる。コントローラ130はまた、溶液を滴下するように治療システム100の1つ又は複数の構成要素の動作も制御することができる。たとえば、コントローラ130は、溶液源145から組織インタフェース120に分配された流体を管理することができる。いくつかの実施形態では、組織部位における圧力を低下させるように陰圧源105からの陰圧を印加し、組織インタフェース120内に溶液を引き込むことにより、組織部位に流体を滴下することができる。いくつかの実施形態では、溶液を溶液源145から組織インタフェース120に移動させるように陽圧源160からの陽圧を印加することにより、組織部位に溶液を滴下することができる。さらに又は別法として、重力が組織インタフェース120内に溶液を移動させるのを可能にするのに十分な高さまで、溶液源145を持ち上げることができる。
【0049】
コントローラ130はまた、溶液の連続流又は溶液の間欠流を提供することにより、滴下の流体力学も制御することができる。溶液の連続流又は間欠流の何れかを提供するように陰圧を印加することができる。陰圧の印加は、組織インタフェース120を通して滴下溶液の連続流量を達成するように、動作の連続圧力モードを提供するように実施することができ、又は、組織インタフェース120を通して滴下溶液の流量を変更するように、動作の動的圧力モードを提供するように実施することができる。別法として、陰圧の印加は、滴下溶液が組織インタフェース120において滞留するのを可能にするように、動作の間欠モードを提供するように実施することができる。間欠モードでは、たとえば、治療されている組織部位のタイプ及び利用されているドレッシングのタイプに応じて、所定の充填容量及び滞留時間を提供することができる。溶液の滴下の後又は滴下中、陰圧治療を適用することができる。コントローラ130を利用して、別の滴下サイクルを開始する前に、動作のモード及び陰圧治療の持続時間を選択することができる。
【0050】
図2は、図1のドレッシング110の例の組立図であり、組織インタフェース120が2つ以上の層を備えるいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す。図2の例では、組織インタフェース120は、第1層205、第2層210及び第3層215を備える。いくつかの実施形態では、第1層205は、第2層210に隣接して配置することができ、第3層215は、第1層205とは反対側で第2層210に隣接して配置することができる。たとえば、第1層205及び第2層210は、第1層205が第2層210と接触するように積層することができる。いくつかの実施形態では、第1層205はまた、第2層210に接合することも可能である。いくつかの実施形態では、第2層210は、第1層205の面と同一の広がりを有することができる。いくつかの実施形態では、第3層215の少なくとも幾分かの部分は、第2層210に接合することができる。
【0051】
第1層205は、圧力下で組織インタフェース120にわたり流体を収集するか又は分配する手段を提供する、マニホールド又はマニホールド層を備えるか又はマニホールド又はマニホールド層から本質的に構成さる。たとえば、第1層205は、陰圧源から陰圧を受け取り、組織インタフェース120にわたって複数のアパーチャを通して陰圧を分配するように適合させることができ、これには、組織部位から流体を収集し、陰圧源に向かって流体を引き込む効果があり得る。いくつかの実施形態では、組織インタフェース120にわたる滴下溶液源等からの流体の送達を容易にするために、流体路を反転させることができ、又は第2流体路を設けることができる。
【0052】
いくつかの例示的な実施形態では、第1層205の経路を相互接続して、流体の分配又は収集を促進することができる。いくつかの例示的な実施形態では、第1層205は、相互接続された流体経路を有する多孔質材料を含むか又はそうした多孔質材料から本質的に構成され得る。相互接続された流体経路(たとえば、流路)を備えるか又はそうした流体経路を形成するように適合させることができる、好適な多孔質材料の例としては、網状フォーム等の連続気泡フォームを含む気泡フォーム、多孔質組織集合体、並びに概して細孔、縁及び/又は壁を含むガーゼ又はフェルトマット等の他の多孔質材料を挙げることができる。液体、ゲル及び他のフォームもまた、アパーチャ及び流体経路を含むか又は含むように硬化させることができる。いくつかの実施形態では、第1層205は、さらに又は別法として、相互接続された流体経路を形成する突出部を備えることができる。たとえば、第1層205は、相互接続された流体経路を画定する表面突出部を提供するように成形することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1層205は、指示される療法の必要に従って変更することができる細孔径及び自由体積を有する網状フォームを含むか又はそうした網状フォームから本質的に構成され得る。たとえば、少なくとも90%の自由体積を有する網状フォームは、多くの治療の応用に対して好適である可能性があり、400~600ミクロンの範囲の平均細孔径を有するフォームが、いくつかのタイプの療法に対して特に好適である可能性がある。第1層205の引張強度もまた、指示される療法の必要に従って変更することができる。たとえば、フォームの引張強度は、局所治療溶液の滴下のために増大させることができる。第1層205の25%圧縮荷重たわみは、少なくとも0.35ポンド/平方インチとすることができ、65%圧縮荷重たわみは、少なくとも0.43ポンド/平方インチとすることができる。いくつかの実施形態では、第1層205の引張強度は、少なくとも10ポンド/平方インチであり得る。第1層205は、少なくとも2.5ポンド/インチの引裂強度を有することができる。いくつかの実施形態では、第1層205は、ポリエステル又はポリエーテル等のポリオール、トルエンジイソシアネート等のイソシアネート、並びにアミン及び錫化合物等の重合調整剤から構成されたフォームであり得る。いくつかの例では、第1層205は、ともにSan Antonio、TexasのKCIから入手可能なGRANUFOAM(商標)ドレッシング又はV.A.C.VERAFLO(商標)ドレッシング等の網状ポリウレタンフォームであり得る。
【0054】
第1層205に対する他の好適な材料としては、たとえば、不織布(Libeltex、Freudenberg)、3次元(3D)ポリマー構造体(成形ポリマー、エンボス加工され形成されたフィルム、及び融着フィルム[Supracore])及びメッシュを挙げることができる。
【0055】
いくつかの例では、第1層205は、Baltex、Muller、and Heathcoatesから市販されているさまざまなテキスタイル等の3Dテキスタイルを含むことができる。ポリエステル繊維の3Dテキスタイルが、いくつかの実施形態に対して特に有利であり得る。たとえば、第1層205は、ポリエステル繊維の3次元織物を備えるか又はそうした3次元織物から本質的に構成され得る。いくつかの実施形態では、繊維は、少なくとも2つの方向において弾性であり得る。約650グラム/平方メートルの重量及び約1~2ミリメートルの厚さを有するポリエステル及び綿繊維の耐穿刺性生地が、いくつかの実施形態に対して特に有利であり得る。こうした耐穿刺性生地は、いくつかの実施形態では、約330~340キログラムの縦方向引張強度と、約270~280キログラムの横方向引張強度とを有することができる。別の特に好適な材料は、いくつかの実施形態では、約4~5ミリメートルの厚さを有することができる、約470グラム/平方メートルの重量を有するポリエステルスペーサファブリックであり得る。こうしたスペーサファブリックは、(40%圧縮で)約20~25キロパスカルの圧縮強度を有することができる。さらに又は別法として、第1層205は、2方向伸縮及び約380グラム/平方メートルの重量を有するポリエステルスペーサファブリック等、実質的に線形伸縮特性を有する材料を含むか又はそうした材料から構成され得る。好適なスペーサファブリックは、約3~4ミリメートルの厚さを有することができ、いくつかの実施形態では、約30~40キログラムの縦方向及び横方向引張強度を有することができる。生地は、いくつかの例では、1つ又は複数の対向する面にポリエステルの織目の細かい層を有することができる。いくつかの実施形態では、組織部位に面するように第1層205の上に織布層を有利に配置することができる。
【0056】
第1層205は、概して、第1平坦面と、第1平坦面とは反対側の第2平坦面とを有する。第1平坦面と第2平坦面との間の第1層205の厚さもまた、指示される療法の必要に従って変更することができる。たとえば、他の層に対する応力を緩和するように、且つ周囲組織への張力を低減させるように、第1層205の厚さを低減させることができる。第1層205の厚さはまた、第1層205の快適さにも影響を与える可能性がある。いくつかの実施形態では、好適なフォームは、約5ミリメートル~10ミリメートルの範囲の厚さを有することができる。好適な3Dテキスタイル及びスペーサファブリックを含む生地は、約2ミリメートル~約8ミリメートルの範囲の厚さを有することができる。
【0057】
第2層210は、流体流を制御するか又は管理する手段を備えるか又はそうした手段から本質的に構成され得る。いくつかの実施形態では、第2層210は、液体不透過性、エラストマー材料を含むか又はそうした材料から構成される流体制御層であり得る。たとえば、第2層210は、ポリウレタンフィルム等のポリマーフィルムを備えるか又はポリマーフィルムから本質的に構成され得る。いくつかの実施形態では、第2層210は、カバー125と同じ材料を含むか又はそうした材料から構成され得る。いくつかの実施形態では、第2層210はまた、平滑又は艶消しの表面性状も有することができる。いくつかの応用に対して、SPI(米国プラスチック産業協会)標準規格による等級B3より優れた又はそれに等しい艶出し又は光沢仕上げが特に有利であり得る。いくつかの実施形態では、表面高さのばらつきを許容可能な許容差に制限することができる。たとえば、第2層の表面は、実質的に平坦な面を有することができ、高さのばらつきが1センチメートルに対して0.2ミリメートルに制限される。
【0058】
いくつかの実施形態では、第2層210は疎水性であり得る。第2層210の疎水性は、変更することができ、いくつかの実施形態では少なくとも90度の水接触角を有することができる。いくつかの実施形態では、第2層210は、150度以下の水接触角を有することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、第2層210の接触角は、少なくとも90度~約120度の範囲、又は、少なくとも120度~150度の範囲であり得る。水接触角は、任意の標準装置を使用して測定することができる。接触角を視覚的に近似するために手動のゴニオメータを使用することができるが、接触角測定器具は、多くの場合、特に、水平ステージ、シリンジ等の液体滴下器、カメラ、及び接触角をより正確に且つ精密に計算するように設計されたソフトウェアを必要とする一体化システムを含む可能性がある。こうした一体化システムの非限定的な例としては、すべてPortsmouth、VAのFirst Ten Angstroms、Inc.,から市販されているFTÅ125、FTÅ200、FTÅ2000及びFTÅ4000システムと、すべてHamburg、GermanyのKruss GmbHから市販されているDTA25、DTA30及びDTA100システムとを挙げることができる。別段の指定がない限り、本明細書における水接触角は、20~25℃及び20~50%の相対湿度の空気中で5cm以下の高さから追加された静滴に対して、水平サンプル面上の脱イオン・蒸留水を使用して測定される。本明細書の接触角は、最高測定値及び最低測定値をともに捨てた、5~9の測定値の平均を表す。第2層210の疎水性は、液体からコーティングされるか又はプラズマコーティングされるものとして、シリコーン及びフルオロカーボン等の他の材料の疎水性コーティングによってさらに強化することができる。
【0059】
第2層210はまた、第1層205を含む他の層に溶接するのにも好適であり得る。たとえば、第2層210は、熱、高周波(RF)溶接、又は超音波溶接等、熱を発生させる他の方法を使用して、ポリウレタンフォームに溶接されるように適合させることができる。ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル及びアクリル酸塩等、より極性の高い材料に対して、RF溶接は特に好適であり得る。ポリエチレン等のより極性の低いフィルム材料のRF溶接を容易にするために、犠牲極性インタフェースを使用することができる。
【0060】
第2層210の面密度は、指示される療法又は応用に従って変更することができる。いくつかの実施形態では、40グラム/平方メートル未満の面密度が好適である可能性があり、いくつかの応用に対して、約20~30グラム/平方メートルの面密度が特に有利であり得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、たとえば、第2層210は、ポリエチレンフィルム等の疎水性ポリマーを含むか又はそうした疎水性ポリマーから構成され得る。ポリエチレンの単純且つ不活性構造は、生体組織及び流体とあるとしてもごくわずかに相互作用する面を提供し、液体の自由な流れと低い付着力とを促進することができる表面を提供することができ、これは、多くの応用に対して特に有利であり得る。他の好適なポリマーフィルムとしては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン(環状オレフィンコポリマー等)、ポリアセテート、ポリアミド、ポリエステル、コポリエステル、PEBAXブロックコポリマー、熱可塑性エラストマー、熱可塑性加硫物、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、スチレン系、シリコーン、フルオロポリマー及びアセテートが挙げられる。多くの応用に対して、20ミクロン~100ミクロンの厚さが好適であり得る。フィルムは、透明であるか、着色されているか、又は印刷されている場合がある。ポリエチレンフィルムに貼り合わせるのに好適なより極性の高いフィルムとしては、ポリアミド、コポリエステル、イオノマー及びアクリル樹脂が挙げられる。ポリエチレンと極性フィルムとの接合に役立つために、エチレンビニルアセテート又は変性ポリウレタン等の層を使用することができる。エチルメチルアクリレート(EMA)フィルムもまた、いくつかの構成に対して好適な疎水性及び溶接特性を有することができる。
【0062】
図2の例に示すように、第2層210は、1つ又は複数の流体制限部220を有することができ、流体制限部220は、第2層210にわたって均一に又はランダムに分散させることができる。流体制限部220は、双方向であり且つ感圧式であり得る。たとえば、各流体制限部220は、概して、液体流を実質的に低減させるように通常は歪んでいない弾性通路を備えるか又はそうした弾性通路から本質的に構成することができ、圧力勾配に応答して拡張する又は開くことができる。いくつかの実施形態では、流体制限部220は、第2層210に穿孔を備え又は穿孔から本質的に構成され得る。穿孔は、第2層210から材料を除去することによって形成することができる。たとえば、穿孔は、第2層210を切り込むことによって形成することができ、そうした切込みにより、いくつかの実施形態では、穿孔の縁も変形させることができる。穿孔にわたって圧力勾配がないとき、通路は、シール又は流体制限を形成するのに十分小さくすることができ、それにより、液体流を実質的に低減させるか又は防止することができる。さらに又は別法として、流体制限部220のうちの1つ又は複数はエラストマー弁とすることができ、それは、歪んでいないときは液体流を実質的に防止するために通常閉鎖されており、圧力勾配に応じて開放することができる。いくつかの応用に対して、第2層210における開窓が、好適な弁であり得る。開窓もまた、第2層210から材料を除去することによって形成することができるが、除去される材料の量と開窓の結果としての寸法とは、穿孔より桁が小さいものとすることができ、縁を変形させる可能性はない。
【0063】
たとえば、流体制限部220のいくつかの実施形態は、第2層210に1つ又は複数のスリット、スロット又はスリットとスロットの組合せを備え、又はそうしたものから本質的に構成され得る。いくつかの例では、流体制限部220は、4ミリメートル未満の長さと1ミリメートル未満の幅とを有する直線状スロットを備え又はそうした直線状スロットから構成され得る。いくつかの実施形態では、長さは、少なくとも2ミリメートルとすることができ、幅は、少なくとも0.4ミリメートルとすることができる。約3ミリメートルの長さ及び約0.8ミリメートルの幅は、多くの応用に対して特に好適である可能性があり、約0.1ミリメートルの許容差も許容可能であり得る。約0.1ミリメートルの許容差もまた許容可能であり得る。こうした寸法及び許容差は、たとえば、レーザカッタを用いて達成することができる。こうした構成のスロットは、通常は閉鎖した又は休止状態で液体流を実質的に低減させる不完全な弁として機能することができる。たとえば、こうしたスロットは、完全に閉鎖又は封止されることなく流体制限部を形成することができる。スロットは、圧力勾配に応答してより広く拡張又は開放して、液体流の増大を可能にすることができる。
【0064】
第3層215は、好適なゲル材料等、組織部位と流体シールを提供するために好適な軟質の柔軟な材料から形成された封止層を備えるか又はそうした封止層から本質的に形成することができ、実質的に平坦な面を有することができる。たとえば、第3層215は、限定なしに、シリコーンゲル、軟質シリコーン、親水コロイド、ヒドロゲル、ポリウレタンゲル、ポリオレフィンゲル、水素化スチレンコポリマーゲル、発泡ゲル、接着剤、ポリウレタン、ポリオレフィン又は水素化スチレンコポリマーでコーティングされた、ポリウレタン及びポリオレフィン等の軟質独立気泡フォームを含むことができる。いくつかの実施形態では、第3層215は、約200ミクロン(μm)~約1000ミクロン(μm)の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、第3層215は、約5ショアOO~約80ショアOOの硬度を有することができる。さらに、第3層215は、疎水性又は親水性材料から構成することができる。たとえば、第3層215は、疎水性材料又は親水性材料から構成することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、第3層215は、疎水性のコーティングされた材料であり得る。たとえば、第3層215は、たとえば、織布、不織布、成形又は押出メッシュ等の間隔の空いた材料を疎水性材料でコーティングすることによって形成することができる。コーティングのための疎水性材料は、たとえば、軟質シリコーンであり得る。
【0066】
第3層215は、治療アパーチャ230を包囲するか又はその周囲の周縁部225と、治療アパーチャ230の周囲に配置された、周縁部225におけるアパーチャ235とを有することができる。治療アパーチャ230は、いくつかの例では、第1層205の表面領域に相補的であるか又は対応することができる。たとえば、治療アパーチャ230は、第1層205の表面の周囲に枠、窓又は他の開口部を形成することができる。第3層215はまた、角部240及び縁部245も有することができる。角部240及び縁部245は、周縁部225の一部であり得る。第3層215は、図2の例に示すように、内側境界部250を有することができ、それは治療アパーチャ230の周囲に実質的にアパーチャ235がないものであり得る。いくつかの例では、図2に示すように、治療アパーチャ230は、対称であり、第3層215において中心に配置され、開放中心窓を形成することができる。
【0067】
アパーチャ235は、たとえば、切断により、穿孔により、若しくは局所RF若しくは超音波エネルギーの印加により、又は、開口部を形成するための又は第3層215の穿孔のための他の好適な技法により、形成することができる。アパーチャ235は、均一分布パターンを有することができ、又は第3層215の上でランダムに分散させることができる。第3層215におけるアパーチャ235は、たとえば、円形、正方形、星形、卵形、多角形、スリット、複雑な曲線、直線形状、三角形を含む、多くの形状を有することができ、又はこうした形状の何らかの組合せを有することができる。
【0068】
アパーチャ235の各々は、一様の又は同様の幾何学的特性を有することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、アパーチャ235の各々は、実質的に同じ直径を有する円形アパーチャであり得る。いくつかの実施形態では、アパーチャ235の各々の直径は、約1ミリメートル~約50ミリメートルであり得る。他の実施形態では、アパーチャ235の各々の直径は、約1ミリメートル~約20ミリメートルであり得る。
【0069】
他の実施形態では、アパーチャ235の幾何学的特性は、変更することができる。たとえば、アパーチャ235の直径は、第3層215におけるアパーチャ235の位置に応じて変更することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、周縁部225に配置されたアパーチャ235は、約5ミリメートル~約10ミリメートルの直径を有することができる。いくつかの例に対して、約7ミリメートル~約9メートルの範囲が好適であり得る。いくつかの実施形態では、角部240に配置されたアパーチャ235は、約7ミリメートル~約8ミリメートルの直径を有することができる。
【0070】
第3層215の周縁部225におけるアパーチャ235のうちの少なくとも1つは、周縁部225の縁部245に位置決めすることができ、縁部245と横方向に流体連通している、縁部245において開放した又は露出された内部切取部を有することができる。横方向は、縁部245に向かう、第3層215と同じ平面における方向を指すものとする。図2の例に示すように、周縁部225におけるアパーチャ235は、縁部245に近接して又は縁部245に、縁部245と横方向に流体連通して位置決めすることができる。縁部245に近接して又は縁部245に位置決めされるアパーチャ235は、図2の例に示すように、周縁部225の周囲に実質的に等距離に間隔を空けて配置することができる。別法として、縁部245に近接する又は縁部245におけるアパーチャ235の間隔は、不規則であり得る。
【0071】
図2の例にて示すように、ドレッシング110は、接着剤255等の取付デバイスをさらに含むことができる。接着剤255は、たとえば、カバー125の周縁部、一部又はカバー125の表面全体に延在する医学的に許容可能な感圧接着剤であり得る。いくつかの実施形態では、たとえば、接着剤255は、25~65グラム/平方メートル(g.s.m.)の付着量を有するアクリル接着剤であり得る。いくつかの実施形態では、密閉性を向上させ漏れを低減させるように、より厚い接着剤、又は接着剤の組合せを付与することができる。いくつかの実施形態では、接着剤255のこうした層は、連続的である場合もあれば不連続である場合もある。接着剤255における不連続性は、接着剤255におけるアパーチャ又は孔(図示せず)によって提供することができる。接着剤255におけるアパーチャ又は孔は、接着剤255の付与の後に、又は、たとえばカバー125の一方の側等、キャリア層の上にいくつかのパターンで接着剤255をコーティングすることにより、形成することができる。接着剤255におけるアパーチャ又は孔は、いくつかの実施形態例では、ドレッシング110のMVTRを向上させるようなサイズとすることも可能である。
【0072】
図2の例に示すように、いくつかの実施形態では、ドレッシング110は、使用前に接着剤255を保護するリリースライナ260を含むことができる。リリースライナ260はまた、たとえば、ドレッシング110の展開に役立つスチフネスも提供することができる。リリースライナ260は、たとえば、工程紙、フィルム又はポリエチレンであり得る。さらに、いくつかの実施形態では、リリースライナ260は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル材料、又は同様の極性半結晶性ポリマーであり得る。リリースライナ260に対する極性半結晶ポリマーの使用により、ドレッシング110のしわ又は他の変形を実質的に排除することができる。たとえば、極性半結晶ポリマーは、高配向性であり、ドレッシング110の構成要素と接触したとき、又は温度若しくは環境の変動又は滅菌を受けたときに発生する可能性がある軟化、膨張又は他の変形に耐性があり得る。さらに、リリースライナ260の、第2層210と接触するように構成される側に、剥離剤を配置することができる。たとえば、剥離剤は、シリコーンコーティングとすることができ、手で、ドレッシング110に損傷を与えることもドレッシング110を変形させることもなく、リリースライナ260の除去を容易にするのに好適な剥離因子を有することができる。いくつかの実施形態では、剥離剤は、たとえば、フルオロカーボン又はフルオロシリコーンであり得る。他の実施形態では、剥離ライナ260は、コーティングされず、又は他の方法で剥離剤なしに使用することができる。
【0073】
図2はまた、流体伝導体265及びドレッシングインタフェース270の一例も示す。図2の例に示すように、流体伝導体265は、一端においてドレッシングインタフェース270に流体的に結合することができる可撓性チューブであり得る。ドレッシングインタフェース270は、図2の例に示すように、流体伝導体265と組織インタフェース120との間に流体路を提供するようにカバー125のアパーチャ275の上に配置することができる、エルボコネクタであり得る。
【0074】
ドレッシング110の構成要素のうちの1つ又は複数は、いくつかの実施形態では抗菌剤でさらに処理することができる。たとえば、第1層205は、抗菌剤でコーティングされた、フォーム、メッシュ又は不織布であり得る。いくつかの実施形態では、第1層は、抗菌剤でコーティングされた繊維等、抗菌剤要素を含むことができる。さらに又は別法として、第2層210のいくつかの実施形態は、抗菌剤でコーティングされたか又は抗菌剤が混合されたポリマーであり得る。他の例では、流体伝導体265は、さらに又は別法として、1種又は複数種の抗菌剤で処理することができる。好適な抗菌剤としては、たとえば、金属銀、PHMB、ヨウ素又はその錯体、及びポビドンヨード、銅金属化合物、クロルヘキシジン又はこれらの物質の何らかの組合せ等の混合物を挙げることができる。
【0075】
さらに又は別法として、構成要素のうちの1つ又は複数に対して、バイオフィルム及び感染を低減させることができる、クエン酸及びコラーゲンを含むことができる混合物でコーティングすることができる。たとえば、第1層205は、こうした混合物でコーティングされたフォームであり得る。
【0076】
図3は、組み立てられた、図2の例におけるドレッシング110の上面図であり、いくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す。図2の例に示すように、カバー125及び第3層215は、いくつかの例では同一の広がりを有するように、実質的に同じ外周形状及び寸法を有することができる。カバー125は、いくつかの実施形態では、実質的に透明であり、アパーチャ235が見えるようにすることができる。第1層205は、治療アパーチャ230(図3では不可視)の上等、第3層215の上で中心に配置することができる。接着剤255のうちの少なくとも幾分かをアパーチャ235に隣接して配置することができるように、カバー125を、第1層205の上に配置し、第1層205の周囲で第3層215に結合することができる。
【0077】
図4は、組み立てられた、図2の例におけるドレッシング110の底面図であり、いくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す。図4の例に示すように、実質的な数の流体制限部220を、治療アパーチャ230を通して整列させるか又は他の方法で露出させることができ、第1層205の少なくとも幾分かの部分は、治療アパーチャ230とは反対側で流体制限部220に隣接して配置することができる。いくつかの実施形態では、第1層205及び第2層210は、治療アパーチャ230と実質的に整列することができ、又は、治療アパーチャ230にわたって延在することができる。
【0078】
さらに、第1層205は第1縁部405を有することができ、第2層210は第2縁部410を有することができる。いくつかの例では、第1縁部405及び第2縁部410は、第1層205及び第2層210の隣接面が幾何学的に同様であるように、実質的に同じ形状を有することができる。いくつかの例では、第1層205及び第2層210の隣接面が、実質的に同一の広がりを有し、且つ実質的に同じ表面積を有するように、第1縁部405及び第2縁部410はまた合致するものであり得る。図4の例では、第1縁部405は、第2縁部410によって画定される第2層210の面より大きい第1層205の面を画定し、第1層205の大きい方の面が、第2縁部410の小さい方の面を越えて延在する。
【0079】
第1縁部405、第2縁部410又は両方によって画定される面はまた、図4の例に示すように、いくつかの実施形態では治療アパーチャ230と幾何学的に同様とすることができ、治療アパーチャ230より大きくすることができる。第3層215は、内部に配置された追加の接着剤を有することができる、治療アパーチャ230の周囲に重ね合わせ外縁部415を有することができる。図4の例に示すように、治療アパーチャ230は、いくつかの実施形態では楕円形又はスタジアム状(stadium)であり得る。治療アパーチャ230は、いくつかの例では第3層215の面積の約20%~約80%に等しい面積を有することができる。治療アパーチャ230はまた、第1層205の第1縁部405によって画定される面の面積の約20%~約80%に等しい面積も有することができる。約90ミリメートル~約110ミリメートルの幅と、約150ミリメートル~約160ミリメートルの長さとが、治療アパーチャ230のいくつかの実施形態に対して好適であり得る。たとえば、治療アパーチャ230の幅は約100ミリメートルとすることができ、長さは約155ミリメートルとすることができる。いくつかの実施形態では、重ね合わせ外縁部415に対する好適な幅は、約2ミリメートル~約3ミリメートルであり得る。たとえば、重ね合わせ外縁部415は、治療アパーチャ230と第1縁部405との間に画定された領域と同一の広がりを有することができ、接着剤は、第1層205、第2層210又は両方を第3層215に固定することができる。
【0080】
図5は、図1のドレッシング110の別の例の組立図であり、いくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す。図5に示すように、第3層215のいくつかの例では、治療アパーチャ230を有していないものとすることができ、アパーチャ235は、第3層215にわたって均一のパターンで分散させることができる。
【0081】
図6は、第2層210の例の概略図であり、いくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す。図6の例に示すように、流体制限部220は、各々、長さLを有する1つ又は複数のスリットから本質的に構成され得る。約3ミリメートルの長さが、いくつかの実施形態に対して特に好適であり得る。図6は、流体制限部220の均一な分散パターンの例をさらに示す。図6において、流体制限部220は、第2層210と実質的に同一の広がりを有し、平行な行及び列の格子で第2層210にわたって分散されており、そこでは、スリットもまた、互いに対して相互に平行である。いくつかの実施形態では、行は、距離D1間隔を空けて配置することができる。中心における約3ミリメートルの距離が、いくつかの実施形態に対して好適であり得る。行の各々における流体制限部220は、いくつかの例では中心において約3ミリメートルであり得る距離D2間隔を空けて配置することができる。隣接する行における流体制限部220は、いくつかの実施形態では整列する場合もあればずれている場合もある。たとえば、図6に示すように、隣接する行をずらすことができ、その結果、流体制限部220は、一つおきの行で整列し、いくつかの実施形態では約6ミリメートルであり得る距離D3分離される。流体制限部220の間隔は、いくつかの実施形態では、治療要件に従って流体制限部220の密度を増大させるように変更することができる。
【0082】
図7は、アパーチャ235の構成例の概略図であり、第3層215のいくつかの実施形態に関連付けることができるさらなる詳細を示す。図7の例では、アパーチャ420は、概して円形であり、いくつかの実施形態では約6ミリメートル~約8ミリメートルであり得る直径D4を有する。約7ミリメートルの直径D4は、いくつかの実施形態に対して特に好適であり得る。図7はまた、アパーチャ235の均一な分散パターンの例も示す。図7において、アパーチャ235は、平行な行及び列の格子で第3層215にわたって分散されている。各行及び列において、アパーチャ235は、図7の例に示すように、互いから等距離であり得る。図7は、多くの応用に対して特に好適であり得る1つの構成例を示し、そこでは、アパーチャ235は、各列及び行に沿って距離D5間隔を空けて配置され、D6のずれがある。いくつかの例では、距離D5は、約9ミリメートル~約10ミリメートルとすることができ、ずれD6は、約8ミリメートル~約9ミリメートルとすることができる。
【0083】
図8は、図6の第2層210の上に重ね合わされた図7の例のアパーチャ235の概略図であり、組織インタフェース120のいくつかの実施形態例に関連付けることができるさらなる詳細を示す。たとえば、図8に示すように、幾つかの実施形態では、流体制限部220のうちの1つ又は複数は、アパーチャ235と整列し、アパーチャ235にオーバーラップし、アパーチャ235と位置合わせされ、又は他の方法でアパーチャ235に流体結合することができる。いくつかの実施形態では、流体制限部220のうちの1つ又は複数は、アパーチャ235と部分的にのみ位置合わせすることができる。図8の例におけるアパーチャ235は、概して、流体制限部220のうちの少なくとも4つが各アパーチャ235のうちの1つのみと位置合わせされるようなサイズにされ構成される。他の例では、流体制限部220のうちの1つ又は複数は、アパーチャ235のうちの2つ以上と位置合わせすることができる。たとえば、流体制限部220のうちの任意の1つ又は複数は、アパーチャ235のうちの2つ以上にわたって延在する穿孔又は開窓であり得る。さらに又は別法として、流体制限部220のうちの1つ又は複数は、アパーチャ235のうちの任意のものと位置合わせされない場合もある。
【0084】
図8の例に示すように、アパーチャ235は、第2層210、流体制限部220又は両方の一部を、第3層215を通して露出させるようなサイズであり得る。図8の例におけるアパーチャ235は、概して、流体制限部220のうちの2つ以上を露出させるようなサイズである。アパーチャ235のうちのいくつか又はすべてを、流体制限部220のうちの2つ又は3つを露出させるようなサイズとすることができる。いくつかの例では、流体制限部220の各々の長さは、実質的に、アパーチャ235の各々の直径より小さくすることができる。概して、流体制限部220の平均寸法は、アパーチャ235の平均寸法より実質的に小さい。いくつかの例において、アパーチャ235は、楕円形とすることができ、流体制限部220の各々の長さは、長軸又は短軸と実質的より小さくすることができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、流体制限部220の寸法は、アパーチャ235の寸法を超えることができ、アパーチャ235のサイズは、ドレッシング110の下面に露出された流体制限部220の有効サイズを制限することができる。
【0085】
図2~8の例におけるドレッシング110の個々の構成要素は、たとえば、溶剤接着剤若しくは非溶剤接着剤で、又は熱溶接で、流体管理に悪影響を与えることなく、互いに接合し又は他の方法で固定することができる。さらに、第2層210又は第1層205は、たとえば、溶接又は接着剤による等、任意の好適な方法で、第3層215の内側境界部250又は重ね合わせ外縁部415に結合することができる。
【0086】
カバー125、第1層205、第2層210、第3層215又はさまざまな組合せは、適用前に又はインサイチュで組み立てることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、第2層210は第1層205に貼り合わせることができる。いくつかの実施形態では、カバー125は、第1層205の上に配置し、第1層205の周囲で第3層215に結合することができる。いくつかの実施形態では、組織インタフェース120の1つ又は複数の層は、同一の広がりを有することができる。たとえば、第2層210は、第1層205の縁部と同一平面で切断することができる。いくつかの実施形態では、ドレッシング110は、単一の複合ドレッシングとして提供することができる。たとえば、第3層215は、第1層205及び第2層210を封入するように、カバー125に結合することができ、そこでは、第3層215は、組織部位に面するように構成することができる。
【0087】
使用時、リリースライナ260(含まれる場合)を除去して第3層215を露出させることができ、第3層215は、組織部位、特に表面組織部位及び隣接する表皮内に、それにわたり、その上に、又は他の方法でそれに近接して配置されるように、ドレッシング110の下面を提供することができる。第2層210、第3層215又は両方は、第1層205と組織部位との間に挿入することができ、それにより、第1層205と組織部位との間の不都合な相互作用を実質的に低減させるか又はなくすことができる。たとえば、第1層215は、第1層205との直接的な接触を防止するように、表面創傷(創傷の縁を含む)及び無傷の表皮の上に配置することができる。いくつかの実施形態では、第3層215の治療アパーチャ230は、組織部位に隣接して、近接して、又は組織部位を覆って位置決めすることができる。いくつかの応用では、第2層210の少なくとも幾分かの部分、流体制限部220又は両方は、治療アパーチャ230、アパーチャ235又は両方を通して組織部位に露出させることができる。第3層215の周縁部225は、組織部位の周囲の又は組織部位を包囲する組織に隣接して又は近接して位置決めすることができる。第3層215は、ドレッシング110を適所に保持するために十分粘着性であり得る一方で、組織部位に対する外傷なしに、ドレッシング110が除去され又は再配置されるのも可能にする。
【0088】
リリースライナ260を除去することにより、接着剤255もまた露出させることができ、周縁部225、又は治療アパーチャ235及び第1層205の周囲の他の領域等、取付面にカバー125を取り付けることができる。接着剤255はまた、第1層205及び第2層210の周囲で、組織部位の周辺の表皮にも取り付けることができる。たとえば、接着剤255は、第3層215の少なくとも周縁部225において、アパーチャ235を通して取付面と流体連通することができる。接着剤255はまた、縁部245において露出されたアパーチャ235を通して縁部245と流体連通することも可能である。
【0089】
ドレッシング110が所望の位置になると、接着剤255をアパーチャ235に押し通して、ドレッシング110を取付面に接着することができる。縁部245におけるアパーチャ235により、縁部245の取付面への付着を促進するために、接着剤255は縁部245の周囲を流れることができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、アパーチャ235は、アパーチャ235を介して露出する接着剤255の量を制御するようなサイズとすることができる。角部240の所与の幾何学的形状に対して、アパーチャ235の相対的なサイズは、露出した、且つ角部240においてアパーチャ235を通して連通する接着剤255の表面積を最大化するように構成することができる。たとえば、縁部245は、実質的に直角すなわち約90度で交差して、角部240を画定することができる。いくつかの実施形態では、角部240は、約10ミリメートルの半径を有することができる。さらに、いくつかの実施形態では、アパーチャ235のうちの3つを、角部240において三角形構成で位置決めして、接着剤255に対する露出した表面積を最大化することができる。他の実施形態では、角部240の選択された幾何学的形状に応じて、接着剤255の露出した表面積を最大化するように、角部240におけるアパーチャ235のサイズ及び数を必要に応じて調整することができる。さらに、角部240におけるアパーチャ235は、第3層215内に完全に収容することができ、角部240の外側への横方向の流体連通を実質的に妨げる。角部240においてアパーチャ235が第3層215内に完全に収容されることにより、角部240の外側の接着剤255の流体連通を実質的に妨げることができ、組織部位における展開中のドレッシング110の取扱いを改善することができる。さらに、角部240の外側に実質的に接着剤255がないことにより、快適さを向上させるように角部240の可撓性を増大させることができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、接着剤255の接着強度は、第3層215の構成に基づいて変更することができる。たとえば、接着強度は、アパーチャ235のサイズに基づいて変更することができる。いくつかの例では、接着強度は、アパーチャ235のサイズに反比例することができる。さらに又は別法として、接着強度は、たとえば、アパーチャ235のサイズが変化する場合、異なる位置で変更することができる。たとえば、相対的に大きいアパーチャ235と組み合わされる相対的に低い接着強度は、相対的に小さいアパーチャ235を有する場所における相対的に高い接着強度に匹敵する接着を提供することができる。
【0092】
組織インタフェース120、カバー125又は両方の幾何学的形状及び寸法は、特定の応用又は解剖学的構造に適合するように変更することができる。たとえば、組織インタフェース120及びカバー125の幾何学的形状又は寸法は、組織部位における且つ組織部位の周囲の、肘又は踵等、封止が困難な解剖学的構造に対して有効且つ確実なシールを提供するように適合させることができる。さらに又は別法として、組織部位における上皮細胞の移動及び増殖を促進し、肉芽組織の内部成長の可能性を低減させるように、第3層215に対する表面積を増大させるように寸法を変更することができる。
【0093】
したがって、ドレッシング110は、外部環境から実質的に隔離された、組織部位に近接する密閉された治療環境を提供することができ、陰圧源105は、密閉された治療環境において減圧することができる。治療アパーチャ230は、第2層210及び第1層205を通して陰圧の送達及び創傷流体の通過のための開放領域を提供することができる。第3層215は、組織部位における且つ組織部位の周囲の肘又は踵等、封止が困難な解剖学的面に対して有効且つ確実なシールを提供することができる。さらに、ドレッシング110は、たとえば、再適用又は再配置により、ドレッシング110の折目及び他の不連続性によってもたらされる空気漏れを修正するのを可能にすることができる。漏れを修正することができることにより、いくつかの実施形態では、治療の効力を増大させ、電力消費量を低減させることができる。
【0094】
まだ構成されていない場合、ドレッシングインタフェース270は、アパーチャ275の上に配置し、カバー125に取り付ける。流体伝導体265は、ドレッシングインタフェース270に且つ陰圧源105に流体的に結合することができる。
【0095】
組織インタフェース120を通して印加される陰圧により、第2層210における流体制限部220にわたって負の差圧をもたらすことができ、それにより、流体制限部220を開放又は拡張することができる。たとえば、流体制限部220が第2層210を通る実質的に閉鎖された開窓を備えることができるいくつかの実施形態では、開窓にわたる圧力勾配により、ダックビル弁の動作と同様に、第2層210の隣接材料をひずませ、開窓の寸法を増大させて、そこを通る液体の移動を可能にすることができる。流体制限部220を開放することにより、滲出物及び他の液体の流体制限部220を通る第1層205内への移動を可能にすることができる。第1層205は、陰圧及び創傷流体の通過を可能にすることができ、創傷流体は容器115内に収集することができる。圧力の変化によってまた、第1層205は拡張及び収縮することができ、第2層210、第3層215又は両方は、第1層205の拡張、収縮又は他の移動によってもたらされる可能性のある炎症から表皮を保護することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、重ね合わせ外縁部415は、第1層205と組織部位の周囲の表皮との間に配置することができる。第2層210及び第3層215はまた、組織部位の第1層205への露出を実質的に低減させるか又は防止することも可能であり、それにより、第1層205内への組織の成長を阻止することができる。たとえば、第2層210は、第1層205と組織部位との間の直接的な接触を防止するように治療アパーチャ230を覆うことができる。
【0096】
陰圧源105が除去されるか又はオフにされると、流体制限部220にわたる差圧は消失することができ、それにより、流体制限部220は閉鎖し、滲出物又は他の液体が第2層210を通って組織部位まで戻るのを防止することができる。
【0097】
いくつかの応用では、組織部位と第3層215との間に充填材も配置することができる。たとえば、組織部位が表面創傷である場合、創傷周囲の内側に創傷充填材を適用することができ、創傷周囲及び創傷充填材の上に第3層215を配置することができる。幾つかの実施形態では、充填材は、連続気泡フォーム等のマニホールドであり得る。いくつかの実施形態では、充填材は、第1層205と同じ材料を含むか又は同じ材料から本質的に構成され得る。
【0098】
さらに又は別法として、ドレッシング110に滴下溶液又は他の流体を分配することができ、それにより、組織インタフェース120内の圧力を上昇させることができる。組織インタフェース120内の圧力の上昇により、第2層210における流体制限部220にわたる正の差圧をもたらすことができ、それにより、流体制限部220を開放し、滴下溶液又は他の流体が組織部位に分配されるのを可能にすることができる。
【0099】
本明細書に記載するシステム、装置及び方法は著しい利点を提供することができる。たとえば、陰圧療法用のいくつかのドレッシングは、良好なフィット及び封止を達成するように適切にサイズを決め且つ適用するために時間及び技能が必要である可能性がある。対照的に、ドレッシング110のいくつかの実施形態は、簡単に適用することができ、適用し除去する時間を短縮する、陰圧ドレッシングを提供する。いくつかの実施形態では、たとえば、ドレッシング110は、あるサイズに切断することなく1回のステップで組織部位(創傷周囲上を含む)に適用することができ、一方で、サイジングを必要とする他の陰圧療法ドレッシングの多くの利点を依然として提供するか又は改善する、完全に一体化された陰圧療法ドレッシングであり得る。こうした利点としては、優れたマニホールド化、有利な肉芽形成、浸軟からの周囲組織の保護、脱落材料からの組織部位の保護、並びに低外傷及び高封止結合を挙げることができる。これらの特徴は、適度な深さ及び中~高レベルの滲出物を有する表面創傷に対して特に有利であり得る。ドレッシング110のいくつかの実施形態は、少なくとも5日知間、組織部位の上に残ることができ、いくつかの実施形態は少なくとも7日間残ることができる。ドレッシング110における抗菌剤は、長期の使用、特に、感染した又は大量に滲出している創傷での使用に関連する可能性がある感染のリスクを低減させるか又はなくすことにより、ドレッシング110の使用可能な寿命を延長することができる。
【0100】
いくつかの例示的な実施形態で示したが、当業者は、本明細書に記載したシステム、装置及び方法が、添付の請求項の範囲内にあるさまざまな変形及び変更が可能であることを理解するであろう。さらに、「又は」等の用語を使用するさまざまな代替例の記載は、文脈から明らかに必要でない限り、相互排他性を必要とせず、「1つの(a)」又は「1つの(an)」という冠詞は、文脈から明らかに必要でない限り、対象を単一の例に限定するものではない。販売、製造、組立又は使用の目的で、構成要素をさまざまな構成で組み合わせるか又はなくすことも可能である。たとえば、いくつかの構成では、ドレッシング110、容器115又は両方を、製造又は販売のためになくすか又は他の構成要素から分離することができる。他の構成例では、コントローラ130もまた、他の構成要素から独立して製造し、構成し、組み立て又は販売することができる。
【0101】
添付の特許請求の範囲は、上述した主題の新規性のある且つ進歩性のある態様を示すが、具体的に詳細に記載していないさらなる主題も包含することができる。たとえば、当業者には既知であることから新規性のある且つ進歩性のある特徴を識別するために必要ではない場合、いくつかの特徴、要素又は態様を特許請求の範囲から省略している場合がある。いくつかの実施形態に関連して記載した特徴、要素及び態様はまた、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、省略し、組み合わせ、又は、同じ、等価の又は同様の目的にかなう代替的な特徴に置き換えることも可能である。
図1
図2
図3
図4
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図8