IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーエムエル3ディー・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-3D金属部品を製造する方法及び装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】3D金属部品を製造する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/04 20060101AFI20230214BHJP
   B23K 10/02 20060101ALI20230214BHJP
   B23K 9/16 20060101ALI20230214BHJP
   B23K 31/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
B23K10/02 501Z
B23K9/16 M
B23K31/00 J
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020531121
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 AU2019050269
(87)【国際公開番号】W WO2019195877
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】2018901257
(32)【優先日】2018-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520183287
【氏名又は名称】エーエムエル3ディー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】セールス、アンドリュー・マイケル・クレイトン
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-336304(JP,A)
【文献】特開平05-192767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0173692(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0108095(US,A1)
【文献】特開昭64-022470(JP,A)
【文献】特開平01-315603(JP,A)
【文献】特開平02-055674(JP,A)
【文献】特表2004-503386(JP,A)
【文献】特許第6289713(JP,B2)
【文献】米国特許第06274839(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32、10/00 - 10/02
B23K 31/00 - 31/02、31/10 - 33/00、37/00 - 37/08
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイズが制限されず、周囲大気に対して開放された固体自由形状成形によって溶接可能素材で金属部品を製造する方法であって、
前記部品のコンピュータ生成3次元モデルを生成し、前記コンピュータ生成3次元モデルをコンピュータ生成平行スライス層のセットにスライスし、次いで、各層をコンピュータ生成仮想1次元片のセットに分割し、層状溶接ビードジオメトリデータを参照して、前記部品のコンピュータ生成方向特定層状モデルを形成することと、
高エネルギータングステンアーク溶接トーチ、プラズマ移行型アーク溶接トーチ、及び/又は、ガス金属アーク溶接トーチによって送り出されるアーク放電の、支持基板に対するポジション及び活性化を制御できる溶接制御システムに、並びに、サイズが制限されず、周囲大気に対して開放された基板に関連する開放エリア構築スペースに配置された消耗ワイヤを供給するためのシステムに、前記部品の前記方向特定層状モデルをアップロードすることと、
前記溶接制御システムに、前記溶接可能素材の1次元溶接ビードのシーケンスを、前記部品の前記コンピュータ生成方向特定層状モデルの第1の層を形成するのに必要とされるパターンで前記支持基板上に堆積させるように指示することと、
前記溶接可能素材の1次元溶接ビードを、前記部品の前記コンピュータ生成方向特定層状モデルの第2の層と同じ構成で、前に堆積された層上に配列することによって、第2の溶接層を堆積させることと、
部品全体が完成するまで、前記部品の前記コンピュータ生成方向特定層状モデルの各連続溶接ビード層を繰り返すこととを含み、
前記方法は、
熱源のすぐ近くの大気を、必要とされる流量を生成する不活性ガス大気と置換することと、その不活性大気は、最大酸素濃度を含み、前記不活性ガスは、個々のガスディフューザ及び/又はフィルタのマトリクスを通して装置によって送り出され、
溶接可能タイプの素材に関して、溶接制御システムに相乗的に誘導加熱及び閉ループ冷却装置を係合し、堆積した溶接ビードを含む基板素材を予熱することと、誘導加熱及び冷却サイクルは、第1の層から最終層まで一定に又はパルスで適用され、溶接可能素材の最適な加熱及び/又は冷却サイクルは、最終の所望の部品形状及び微細構造に関連する、をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記溶接可能素材は、鉄又は非鉄の性質の溶接可能金属又は溶接可能合金金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶接可能素材は、炭素鋼又は炭素マンガン合金、ニッケル又はニッケル合金、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金、鉄又は非鉄、あるいは、異なる溶接可能素材の混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、水素、窒素、又は、これらの混合物のうちの1つである、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記アーク放電及び熱影響素材を遮蔽する前記不活性ガスは、アルゴン又はアルゴン混合物であり、前記アルゴン又はアルゴン混合物の流量は、一定又はパルス状であり、毎分20又は25リットルを上回り、前記不活性ガスの分配は、一連のガスディフューザを通して送り出される、請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記必要とされる流量は、20 l/分より大きい、請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
最大酸素濃度は500ppm未満の酸素、又は、100ppm未満の酸素である、請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
25個未満の個々のガスディフューザがある、請求項1から7のうちのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
固体自由形状成形によって溶接可能素材で作られる部品の製造装置であって、エンクロージャ又はリアクタを必要とせず、前記部品は、不活性ガス流を分配する装置によって周囲大気に開放された非制限構築環境中で構築され、前記製造装置は、
固定支持体上に配置された静止支持基板に対するワイヤ送給装置を有する溶接トーチのポジションと移動を制御するロボット多軸機構と、前記溶接トーチは、アーク放電溶接プロセス、タングステンアーク溶接トーチ、ガス金属アーク溶接トーチ、又はプラズマ移行型アーク溶接トーチであり、
前記支持基板に対する前記溶接トーチ及びワイヤ送給装置のポジション及び移動を制御する支持機構と、前記支持機構に対する前記ポジション及び移動を制御するアクチュエータと、
前記部品のコンピュータ生成3次元方向特定層状モデルを読み取り、前記コンピュータ生成モデルを用いて、前記ロボットのポジション及び移動を、並びに、前記溶接トーチ及びワイヤ送給装置の動作を制御でき、前記部品の前記コンピュータ生成3次元方向特定層状モデルに一致して前記支持基板上に前記溶接可能素材の1次元スライスにしたがう層ごとのシーケンスで溶接することによって部品を構築する制御システムと、を備え、
前記装置は、局所パージ装置及び誘導加熱閉ループ冷却装置を含む、装置。
【請求項10】
前記局所パージ装置は、不活性ガスとしてアルゴン又はアルゴン混合物が充填されたマニホールドを含み、ガス入口は、ガス流量を調節する手段を備える、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
誘導加熱装置は、前記基板及び後続の溶接ビード層に電気的に取り付けられる、請求項9又は10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、固体自由形状成形(solid freeform fabrication)によって溶接可能金属物体を製造する方法及び装置に関する。
【発明の背景】
【0002】
[0002] 設計使用のための任意の素材タイプから作られる機械及び構造コンポーネントを含む金属部品は、通常、インゴット又はビレットから、鋳造、鍛造、圧延、及び機械加工することによって作られる。これらの方法は、通常、部品をその最終形状に仕上げるときの素材の無駄の割合が高いことから不利である。さらに、これらの方法は、完成した部品の配送のための配送時間を増大させる。
【0003】
[0003] 物理的形状が完全に密な金属部品は、積層製造、ラピッドプロトタイピング、ラピッドマニュファクチャリング、層状製造、又は積層成形として識別されるテクノロジーを使用して製造することもできる。この製造方法は、コンピュータ支援設計ソフトウェア(CAD)を使用して、最初に、製造される部品のコンピュータ生成モデルを開発し、次いで、コンピュータ生成モデルを、通常は水平面にある薄い平行な層に変換することを包含する。次いで、金属部品は、CADモデルに類似する最終形状が形成されるまで、各層をともに連続して融合する消耗粉末の形態の連続素材を層状化することによって製造される。この方法は、一般に、3Dプリント、固体自由形状成形、ラピッドプロトタイピング、又はワイヤアーク積層製造とも呼ばれる。
【0004】
[0004] 前の段落で説明した方法は、各金属部品のサイズに依存して製造時間が増加するという利点を有する、ほぼあらゆる形状の金属部品の製造を可能にする。この方法は、通常、プロトタイプ、少容量生産及び少量生産工程に限定されるが、大きな部品及び大量生産にはあまり適していない。
【0005】
[0005] 本発明によって提供される解決法の概要に移る前に、本明細書における任意の先行技術への言及は、この先行技術が任意の国における共通の一般知識の一部を形成することの認定又は任意の形態の示唆ではなく、またそのように解釈すべきではないことを認識すべきである。
【発明の概要】
【0006】
[0006] 1つの態様では、本発明は、サイズが制限されず、周囲大気に対して開放された固体自由形状成形によって溶接可能素材で金属部品を製造する方法を提供し、方法は、部品のコンピュータ生成3次元モデルを生成し、コンピュータ生成3次元モデルをコンピュータ生成平行スライス層のセットにスライスし、次いで、各層をコンピュータ生成仮想1次元片のセットに分割し、層状溶接ビードジオメトリデータを参照して、部品のコンピュータ生成方向特定層状モデルを形成することと、高エネルギータングステンアーク溶接トーチ、プラズマ移行型アーク溶接トーチ、及び/又は、ガス金属アーク溶接トーチによって送り出されるアーク放電の、支持基板に対するポジション及び活性化を制御できる溶接制御システムに、並びに、サイズが制限されず、周囲大気に対して開放された基板に関連する開放エリア構築スペースに配置された消耗ワイヤを供給するためのシステムに、部品の方向特定層状モデルをアップロードすることと、溶接制御システムに、溶接可能素材の1次元溶接ビードのシーケンスを、部品のコンピュータ生成方向特定層状モデルの第1の層を形成するのに必要とされるパターンで支持基板上に堆積させるように指示することと、溶接可能素材の1次元溶接ビードを、部品のコンピュータ生成方向特定層状モデルの第2の層と同じ構成で、前に堆積された層上に配列することによって、第2の溶接層を堆積させることと、部品全体が完成するまで、部品のコンピュータ生成方向特定層状モデルの各連続溶接ビード層を繰り返すこととを含み、方法は、熱源のすぐ近くの大気を、必要とされる流量を生成する不活性ガス大気と置換することと、不活性大気は、最大酸素濃度を含み、不活性ガスは、個々のガスディフューザ及び/又はフィルタのマトリクスを通して装置によって送り出され、溶接可能タイプの素材に関して、溶接制御システムに相乗的に誘導加熱及び閉ループ冷却装置を係合し、堆積した溶接ビードを含む基板素材を予熱することと、誘導加熱及び冷却サイクルは、第1の層から最終層まで一定に又はパルスで適用され、溶接可能素材の最適な加熱及び/又は冷却サイクルは、最終の所望の部品形状及び微細構造に関連する、をさらに含む。
【0007】
[0007] 別の態様では、本発明は、固体自由形状成形によって溶接可能素材で作られる部品の製造装置を提供して、エンクロージャ又はリアクタを必要とせず、部品は、不活性ガス流を分配する装置によって周囲大気に開放された非制限構築環境中で構築され、製造装置は、固定支持体上に配置された静止支持基板に対するワイヤ送給装置を有する溶接トーチのポジションと移動を制御するロボット多軸機構と、溶接トーチは、アーク放電溶接プロセス、タングステンアーク溶接トーチ、ガス金属アーク溶接トーチ、又はプラズマ移行型アーク溶接トーチであり、支持基板に対するワイヤ送給装置を備えた溶接トーチのポジション及び移動を制御する支持機構と、支持機構に対するポジション及び移動を制御するアクチュエータと、部品のコンピュータ生成3次元方向特定層状モデルを読み取り、コンピュータ生成モデルを用いて、ロボットのポジション及び移動を、並びに、溶接トーチ及びワイヤ送給装置の動作を制御でき、部品のコンピュータ生成3次元方向特定層状モデルに一致して支持基板上に溶接可能素材の1次元スライスにしたがう層ごとのシーケンスで溶接することによって部品を構築する制御システムと、を備え、装置は、局所パージ装置及び誘導加熱閉ループ冷却装置を含む。
【0008】
[0008] 好ましい形態では、上述の必要とされる流量は20 l/分より大きい。別の好ましい形態では、上述の最大酸素濃度は、500ppm未満の酸素、又は、代替的に100ppm未満の酸素である。さらに別の好ましい形態では、上述した個々のガスディフューザは25個未満である。
【0009】
[0009] したがって、本発明は、部品の構築サイズに制限されない、溶接可能鉄及び非鉄金属の合金を含む、これらの製造金属部品の堆積を増加させるための方法及び装置を提供する。
【0010】
[0010] 本発明は、溶接ゾーン及び溶融金属を取り囲む大気酸素を含む現在の実施の代替として、表面汚染を最小限にするために、溶接ゾーン及び溶融金属に関連して局所的ガス流分配を含むことができる。
【0011】
[0011] 本発明はまた、誘導加熱及び閉ループ冷却システムを使用する一定の又は断続的な温度制御を通して制御された加熱及び冷却を含むことができ、これは、構築プロセスの間維持することができ、部品の制御された加熱及び冷却を提供し、加えて、歪みを低減し、したがって、構築された部品の歪みに対する何らかの制御を提供する。
【0012】
[0012] 上記から明らかなように、本発明は、部品サイズが制限されない固体自由形状成形によって溶接可能素材において、有限次元でスライスされた層を含む、コンピュータ生成モデルから生成した部品の3D金属プリント製造のための方法及び装置であり、これは、(a)アーク放電を取り囲み、続いて溶融金属を冷却する保護不活性ガスシールドと、(b)連続層状溶接ビード動作の間の基板と層状3Dプリント部品の両方の温度制御のための誘導加熱及び閉ループ冷却装置を利用する。
【0013】
[0013] 局所的な不活性ガスディフューザ装置、及び誘導加熱冷却装置としても説明することができる保護不活性ガスシールドの使用は、特に、炭素マンガン合金、アルミニウム合金、ニッケル合金、並びに、チタン又はチタン合金及びチタン合金物のような溶接可能金属に対して層ごとに体積堆積を増加させることを可能にする。
【0014】
[0014] 3Dプリントされる部品の全体構築エンベロープは、完全に密閉されたチャンバを作動させる必要なく、又は、溶融溶接金属の新たに堆積された連続層又は関係付けられている溶融エリアを酸化させることを回避するための含有密閉保護手順を使用する必要なく、同様の基板金属を使用して、最終部品を形成する最初の及び後続の溶接ビード層を堆積させることができる。
【0015】
[0015] 部品のコンピュータ生成モデルは、有限次元を有する平行な層状スライスのセットに分離されてもよく、各層状スライスは、連続仮想1次元片のセットに分割されてもよい。ここで使用されるような、用語「仮想1次元片」は、モデルに固有の方向にしたがって特定の連続パターンで並んで堆積されるか又は互いに積み重ねられるときに、製造される部品を形成する溶接ビード素材ジオメトリの片に似た長手方向ビードを意味する。ここで使用される「部品のコンピュータ生成方向特定層状モデル」という用語は、成形される部品の3次元コンピュータ化図を意味する。
【0016】
[0016] コンピュータ生成モデルは、全方向の次元及び溶接ビードジオメトリデータを含み、製造される金属部品の3次元設計に似た3次元設計を与えられてもよい。次いで、コンピュータ生成方向特定の層状モデルを、物理的金属部品を構築するテンプレートとして自由形状成形機器に適用できる。すなわち、コンピュータ生成モデルは、ワイヤを基板上に連続する線で溶接することによって金属部品を連続して製造するように、固体自由形状成形機器の制御システムによって実現される特定の命令のセットに変形することができ、各溶接層は、コンピュータ生成方向特定層状モデルのスライスに対応する。本発明は、コンピュータ生成方向特定層状モデルを生成するために、コンピュータ支援設計のための任意の既知の又は信頼できるソフトウェアに適用することができる。
【0017】
[0017] アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル又はニッケル合金、チタン又はチタン合金あるいは他の反応性金属部品の溶接の間、保護酸化物層の鋭敏化又は破壊を防止するために不活性ガス保護が必要とされ、保護酸化物層が酸化され、したがって最終成形部品の最終物理的及び機械的特性に影響を及ぼすことができる。したがって、ガスマニホールド区画の底部において、一連の多数のガスディフューザ出口を通して、及び/又は、焼結青銅フィルタのようなフィルタを通して、層又は他の何らかの適切な流れを与える予め定められた流量設定で、安定した連続モードでアルゴン又はアルゴン混合ガスの流れを適用することによって、あるいは、区画への他の何らかの供給オプションによって、典型的には、区画の体積と同じ量の不活性ガスのみを挿入し、典型的には、500ppm未満の酸素又は100ppm未満の酸素の不活性アルゴン大気中の酸素含有量を得ることによって、アーク放電及び後続の溶融素材を取り囲む酸素は完全に置換されてもよい。典型的には、ガスマニホールド区画は、80から180mmの幅及び180から400mmの長さであってもよく、又は、直径400mm未満の円筒形状であってもよい。
【0018】
[0018] ガスマニホールド区画へのガス流は、パージ装置内に位置付けられたマニホールドを介してもよく、ガスはマニホールドを通って流れ、それに応じてガスディフューザノズル及び/又はフィルタを通って分配され、溶接ゾーン中の酸素を置換する。入口管は、ガスの流量、圧力及び体積を連続的又は周期的に制御する能力を有する電子制御弁を介して、マニホールドへのガスの流れを分配及び制御し、溶接ゾーンへの不活性ガスのパルス送出を生成してもよい。パージ装置のこの特徴は、高価な不活性ガスをより少ない量使用するという利点を与える。
【0019】
[0019] ガスマニホールド区画はまた、別個の不活性ガスが熱交換器を通過して、マニホールドを通して流れる不活性ガスの温度を低下させる閉冷却回路を含んでもよく、このガスは、溶接ゾーンに局所的遮蔽を提供するマニホールド管を通って流れる再循環分配ループを介して循環されてもよい。この特徴は、局所パージ装置の過熱を回避し、限られた範囲で溶接トーチの過熱も回避するのに有利である。
【0020】
[0020] 6軸以上のロボットを使用して、溶接可能素材のワイヤ消耗品を供給するためのワイヤ送給装置を有する溶接トーチのポジション及び移動を制御することができ、理想的には、製造される部品の構築エンベロープの上方に位置付けられる。ロボットはまた、基板のサイズによって管理されてもよい。局所パージ装置は、溶接トーチ及び関連するワイヤ送給装置保持デバイスを搭載するブラケットアーム構造に搭載されることができ、これは、ロボットに機械的に取り付けられている。局所パージ装置は、溶接ゾーンから酸素を置換し、このガスを制御された周囲の不活性ガスと置き換えるために、少なくとも閉鎖可能なガスディフューザ出口と管マニホールドに接続された少なくとも5つの閉鎖可能なガス入口とを備えてもよい。パージ装置は、溶接トーチ装置を交換可能な方法で組み込むことができる。
【0021】
[0021] 本発明は、アーク放電溶接トーチ、局所ガスパージ装置、及びワイヤストック送給装置の動作運動のための任意の既知の又は考えられる制御システムを適用することができる。動作運動は、6軸ロボット制御システム(X、Y、Z、及び3以上の回転軸点)を有利に備えることができる。動作運動はまた、任意の既知の又は考えられるガントリ搭載システム(X、Y、Z)の形態であってもよく、搭載テーブルは、搭載されたアーク放電溶接トーチに対して静止しているか、又はX、Y、Z方向に移動してもよい。本発明は、タングステン不活性ガス溶接(GTAW)、ガス金属アーク溶接(GMAW)及びプラズマ移行型アーク溶接(PTAW)として知られる溶接プロセスによって金属部品の溶接層状製造を行うことができる任意の既知の又は考えられる溶接トーチ及びワイヤストック送給装置システムを適用することができる。
【0022】
[0022] 基板及び溶接層を予熱するための誘導要素は、溶接及びロボット制御システムにより相乗的に制御されてもよい。(3つの制御装置の)相乗的な閉ループ制御は、溶接ビードジオメトリを増加させ、その中で金属堆積を増加させ、その中で溶接速度を増加させる方法で、溶接パラメータが事前設定データから線形に変更されてもよいように、基板及び堆積された溶接ビード層の温度の増加を可能にする。
【0023】
[0023] 誘導加熱装置は、本質的に電磁的な任意の市販のシステムであってもよく、好ましくは、溶接ビード層状プロセスの前に誘導が開始される基板に接続される。予熱の適用は、溶接ビードサイズ及び堆積スピードを増加させるだけでなく、最終3Dプリント部品の歪み及び内部残留応力も減少させる。これは、他の既知の3D金属プリントプロセスに対する利点を提供する。溶接プロセスパラメータに対する制御された相乗誘導加熱の適用は、溶接ビード層状プロセスの間の増分適用を最適化する既知のデータによってさらに強化することができ、その結果、好ましい物理的及び機械的特性を最終3Dプリント部品に対して達成することができる。
【0024】
[0024] 冷却装置は、本質的に閉ループであり、好ましくは、基板内の冷却チャネルを通して冷却剤を循環させる入口及び出口取り付け具を介して基板に接続される、任意の市販のシステムであってもよい。流量は、金属素材のタイプに依存して変化できる。冷却の適用は、3Dプリント部品の所望の機械的特性がより急速な冷却によって向上するケースで支援する。急速冷却は、層間の時間を減少させ、したがって全体の構築時間を減少させるという利点を提供する。
【0025】
[0025] 溶接ビード層状プロセスの間の物理的部品の温度は、任意の溶接可能素材について、軟化点まで上昇させることができる。例えば、チタン又はその合金の3D金属層状化のケースでは、温度は、部品の層状製造の間に800℃もの高さになることがある。しかしながら、これは、アーク放電の熱源パラメータ及び溶融ワイヤのその送出に対応する変化を有し、アーク放電パラメータは、溶接ビード堆積を向上させる。有益なことに、これは、本発明にしたがって製造される部品の製造時間の大幅な短縮をもたらすことができる。
【0026】
[0026] 本発明の製造方法及び装置の1つの実施形態を図1の概略図に示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、溶接ビード層状技術を使用して溶接可能素材のワイヤ消耗品を溶融して自由形状成形を提供するアーク放電溶接プロセスによって、溶接可能素材の一片を第1の層上に溶接することによる金属部品10の構造を示す。
【好ましい実施形態の詳細の説明】
【0028】
[0027] 図1を参照すると、ロボット電源14、溶接機電源16、活性化ソレノイド弁36、誘導加熱装置32、及びソレノイド制御装置18を制御するためのフィードバック信号A、B、C、D、Eを提供するコンピュータ12が図示されている。溶接機電源16はまた、ワイヤ送給装置20のための電力及び制御を提供する。ワイヤは、Fを介して、ロボット24の一部である溶接トーチ22に供給され、この形態では放電アークプラズマ移行型アーク溶接である。代替的に、アーク放電は、同様の溶接可能素材のワイヤ送給装置20により、タングステン不活性ガス溶接トーチを介して移行されてもよい。さらに、アーク放電は、ガス金属不活性溶接トーチを使用して、ワイヤ消耗品を介して移行されてもよい。
【0029】
[0028] ガス供給システムは、さらなるソレノイドスプリッタ弁38を介してパージ装置30に向かうガスを活性化するために8/2ソレノイド弁36に供給するシールドガス供給シリンダ40を含む。フィードバック信号は、ソレノイド制御装置18を介して適切な制御を提供する。
【0030】
[0029] 上述の層ごとのプロセスで溶接される金属部品10は、基板冷却ベッド28によって支持される適切な基板26上で層状にされる。パージ装置30は、金属部品10の上方に位置付けられ、概して上述した方法で堆積溶接部を遮蔽する。ロボット24及びトーチのための、並びに、パージ装置30のためのアクチュエータは、構築エリア、基板26、及び高エネルギー熱源32の境界限界の外側に位置付けて示されている。
【0031】
[0030] 基板26及び後続の金属層状化は、誘導加熱装置32を使用して予熱及び維持され、誘導加熱装置は、金属層状化動作の間に相乗的に制御される。プロセスの間の誘導加熱は、金属堆積の増加を促進し、最終部品10に対する歪み制御手段を提供する。
【0032】
[0031] この実施形態における基板26は、金属部品10の温度をさらに制御するための冷却チャネル(図示せず)を含む。冷却装置34は、本質的に閉ループであり、冷却チャネルを通して冷却剤を循環させる取り付け具を介して基板に接続される。冷却は、層間の時間を短縮し、したがって、完成した3Dプリント部品の全体的な構築時間を短縮するという利点を提供する。
【0033】
[0032] 本発明の方法及び装置のこの実施形態は、3D金属部品を製造するための高堆積方法及び装置を提供し、これは、特に、炭素マンガン合金、アルミニウム合金、ニッケル合金、ステンレス鋼及びチタン合金から作製される部品の製造のための、サイズが制限されず、周囲大気に対して開放された、局所的な大気保護及び固体自由形状成形を含む。
【0034】
[0033] 上述のように、装置は、構築又は部品サイズ、又はエリアサイズに対する制限を有さず、周囲大気に対して開放され、溶融溶接プール及び隣接エリアは、豊富であるが制御された層状不活性ガス流を分配するために使用される局所化装置によって遮蔽される。ガス流分配は、構築エリアの上方に位置付けられ、ガス分配が溶接プールエリアの周りを均一かつ均等に流れ、溶融金属を凝固させるように設計される。
【0035】
[0034] 本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、図1に関連して説明した本発明の実施形態に多くの変更を行うことができる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] サイズが制限されず、周囲大気に対して開放された固体自由形状成形によって溶接可能素材で金属部品を製造する方法であって、
前記部品のコンピュータ生成3次元モデルを生成し、前記コンピュータ生成3次元モデルをコンピュータ生成平行スライス層のセットにスライスし、次いで、各層をコンピュータ生成仮想1次元片のセットに分割し、層状溶接ビードジオメトリデータを参照して、前記部品のコンピュータ生成方向特定層状モデルを形成することと、
高エネルギータングステンアーク溶接トーチ、プラズマ移行型アーク溶接トーチ、及び/又は、ガス金属アーク溶接トーチによって送り出されるアーク放電の、支持基板に対するポジション及び活性化を制御できる溶接制御システムに、並びに、サイズが制限されず、周囲大気に対して開放された基板に関連する開放エリア構築スペースに配置された消耗ワイヤを供給するためのシステムに、前記部品の前記方向特定層状モデルをアップロードすることと、
前記溶接制御システムに、前記溶接可能素材の1次元溶接ビードのシーケンスを、前記部品の前記コンピュータ生成方向特定層状モデルの第1の層を形成するのに必要とされるパターンで前記支持基板上に堆積させるように指示することと、
前記溶接可能素材の1次元溶接ビードを、前記部品の前記コンピュータ生成方向特定層状モデルの第2の層と同じ構成で、前に堆積された層上に配列することによって、第2の溶接層を堆積させることと、
部品全体が完成するまで、前記部品の前記コンピュータ生成方向特定層状モデルの各連続溶接ビード層を繰り返すこととを含み、
前記方法は、
熱源のすぐ近くの大気を、必要とされる流量を生成する不活性ガス大気と置換することと、その不活性大気は、最大酸素濃度を含み、前記不活性ガスは、個々のガスディフューザ及び/又はフィルタのマトリクスを通して装置によって送り出され、
溶接可能タイプの素材に関して、溶接制御システムに相乗的に誘導加熱及び閉ループ冷却装置を係合し、堆積した溶接ビードを含む基板素材を予熱することと、誘導加熱及び冷却サイクルは、第1の層から最終層まで一定に又はパルスで適用され、溶接可能素材の最適な加熱及び/又は冷却サイクルは、最終の所望の部品形状及び微細構造に関連する、のうちの1つ又は両方をさらに含む、方法。
[2] 前記溶接可能素材は、鉄又は非鉄の性質の溶接可能金属又は溶接可能合金金属である、[1]に記載の方法。
[3] 前記溶接可能素材は、炭素鋼又は炭素マンガン合金、ニッケル又はニッケル合金、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金、鉄又は非鉄、あるいは、異なる溶接可能素材の混合物である、[2]に記載の方法。
[4] 前記不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、水素、窒素、又は、これらの混合物のうちの1つである、[1]から[3]のうちのいずれか1項に記載の方法。
[5] 前記アーク放電及び熱影響素材を遮蔽する前記不活性ガスは、アルゴン又はアルゴン混合物であり、前記アルゴン又はアルゴン混合物の流量は、一定又はパルス状であり、毎分20又は25リットルを上回り、前記不活性ガスの分配は、一連のガスディフューザを通して送り出される、[1]から[3]のうちのいずれか1項に記載の方法。
[6] 前記必要とされる流量は、20 l/分より大きい、[1]から[5]のうちのいずれか1項に記載の方法。
[7] 最大酸素濃度は500ppm未満の酸素、又は、100ppm未満の酸素である、[1]から[6]のうちのいずれか1項に記載の方法。
[8] 25個未満の個々のガスディフューザがある、[1]から[7]のうちのいずれか1項に記載の方法。
[9] 固体自由形状成形によって溶接可能素材で作られる部品の製造装置であって、エンクロージャ又はリアクタを必要とせず、前記部品は、不活性ガス流を分配する装置によって周囲大気に開放された非制限構築環境中で構築され、前記製造装置は、
固定支持体上に配置された静止支持基板に対するワイヤ送給装置を有する溶接トーチのポジションと移動を制御するロボット多軸機構と、前記溶接トーチは、アーク放電溶接プロセス、タングステンアーク溶接トーチ、ガス金属アーク溶接トーチ、又はプラズマ移行型アーク溶接トーチであり、
前記支持基板に対する前記溶接トーチ及びワイヤ送給装置のポジション及び移動を制御する支持機構と、前記支持機構に対する前記ポジション及び移動を制御するアクチュエータと、
前記部品のコンピュータ生成3次元方向特定層状モデルを読み取り、前記コンピュータ生成モデルを用いて、前記ロボットのポジション及び移動を、並びに、前記溶接トーチ及びワイヤ送給装置の動作を制御でき、前記部品の前記コンピュータ生成3次元方向特定層状モデルに一致して前記基板構造上に前記溶接可能素材の1次元スライスにしたがう層ごとのシーケンスで溶接することによって部品を構築する制御システムと、を備え、
前記装置は、局所パージ装置及び誘導加熱閉ループ冷却装置のうちの1つ又は両方を含む、装置。
[10] 前記局所パージ装置は、不活性ガスとしてアルゴン又はアルゴン混合物が充填されたマニホールドを含み、ガス入口は、ガス流量を調節する手段を備える、[9]に記載の装置。
[11] 誘導加熱装置は、前記基板及び後続の溶接ビード層に電気的に取り付けられる、[9]又は[10]に記載の装置。

図1