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特許7227188識別装置、識別システム、識別方法、および識別用プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】識別装置、識別システム、識別方法、および識別用プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/08 20060101AFI20230214BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230214BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20230214BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
A61C13/08
G06T7/00 350C
A61C19/04
A61C13/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020113848
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012196
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000138185
【氏名又は名称】株式会社モリタ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍛治 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】西村 巳貴則
(72)【発明者】
【氏名】橋本 学
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-096691(JP,A)
【文献】特開2017-084320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0180443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/08
G06T 7/00
A61C 19/04
A61C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯牙の種類を識別する識別装置であって、
複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データが入力される入力部と、
前記入力部から入力された三次元データに基づき、前記隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する識別部と、
前記識別部による識別結果を出力する出力部とを備え、
前記識別部は、
複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワークを含む第1推定モデルとに基づき、当該第1隣接歯牙と同一の数または当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙を識別する第1識別部と、
前記第1識別部による識別結果と、第2ニューラルネットワークを含む第2推定モデルとに基づき、前記第2隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する第2識別部とを含む、識別装置。
【請求項2】
前記第1識別部は、前記第1隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、前記第1推定モデルとに基づき、前記第2隣接歯牙として複数の第2隣接歯牙のそれぞれを識別し、
前記複数の第2隣接歯牙は、互いに重複する歯牙を含み、
前記第2識別部は、前記第1識別部による識別結果と、前記第2推定モデルとに基づき、前記複数の第2隣接歯牙のそれぞれに含まれる前記重複する歯牙の種類を識別する、請求項1に記載の識別装置。
【請求項3】
前記識別部は、前記入力部から入力された三次元データに対応する複数の点ごとに生成された法線にさらに基づき、前記隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する、請求項1または請求項2に記載の識別装置。
【請求項4】
前記第1推定モデルは、前記第1隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データに対応付けられた前記第2隣接歯牙と、当該三次元データを用いた当該第2隣接歯牙の推定結果とに基づき学習されたものであり、
前記第2推定モデルは、前記第2隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データに対応付けられた当該第2隣接歯牙に含まれる歯牙の種類と、当該三次元データを用いた当該第2隣接歯牙に含まれる歯牙の種類の推定結果とに基づき学習されたものである、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の識別装置。
【請求項5】
前記入力部から入力された三次元データは、口腔内の歯牙および歯肉を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の識別装置。
【請求項6】
前記出力部は、色、文字、数字、および記号の少なくともいずれか1つを用いて前記第2識別部による識別結果を出力する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の識別装置。
【請求項7】
歯牙の種類を識別する識別システムであって、
三次元カメラを用いて、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データを取得する三次元スキャナと、
前記三次元スキャナによって取得された三次元データに基づき、前記隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する識別装置とを備え、
前記識別装置は、
前記三次元スキャナによって取得された三次元データが入力される入力部と、
前記入力部から入力された三次元データに基づき、前記隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する識別部と、
前記識別部による識別結果を出力する出力部とを含み、
前記識別部は、
複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワークを含む第1推定モデルとに基づき、当該第1隣接歯牙と同一の数または当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙を識別する第1識別部と、
前記第1識別部による識別結果と、第2ニューラルネットワークを含む第2推定モデルとに基づき、前記第2隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する第2識別部とを有する、識別システム。
【請求項8】
コンピュータによる歯牙の種類を識別する識別方法であって、
前記識別方法は、前記コンピュータが実行する処理として、
複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データが入力されるステップと、
前記入力されるステップによって入力された三次元データに基づき、前記隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別するステップと、
前記識別するステップによる識別結果を出力するステップとを含み、
前記識別するステップは、
複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワークを含む第1推定モデルとに基づき、当該第1隣接歯牙と同一の数または当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙を識別する第1識別ステップと、
前記第1識別ステップによる識別結果と、第2ニューラルネットワークを含む第2推定モデルとに基づき、前記第2隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する第2識別ステップとを有する、識別方法。
【請求項9】
歯牙の種類を識別する識別用プログラムであって、
前記識別用プログラムは、コンピュータに、
複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データが入力されるステップと、
前記入力されるステップによって入力された三次元データに基づき、前記隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別するステップと、
前記識別するステップによる識別結果を出力するステップとを実行させ、
前記識別するステップは、
複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワークを含む第1推定モデルとに基づき、当該第1隣接歯牙と同一の数または当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙を識別する第1識別ステップと、
前記第1識別ステップによる識別結果と、第2ニューラルネットワークを含む第2推定モデルとに基づき、前記第2隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する第2識別ステップとを含む、識別用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、識別装置、識別システム、識別方法、および識別用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯科分野において、補綴物などをコンピュータ上でデジタル設計するために、歯牙の三次元形状を取得する三次元カメラを内蔵した三次元スキャナが公知である。たとえば、特許文献1には、三次元カメラを用いて歯牙を撮像することで、歯牙の形状を記録する技術が開示されている。歯科医師などの術者は、特許文献1に開示された三次元カメラを用いることで、撮像対象となった歯牙の三次元形状を記録することができ、さらに記録された歯牙の三次元形状が示された三次元画像を確認しながら、自身の知見によって当該歯牙の種類を識別することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-74635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来から、術者は、三次元カメラによって取得された歯牙を含む三次元画像に基づき、自身の知見によって当該歯牙の種類を識別していたが、知見のレベルは術者ごとに異なるため、術者の知見のレベルに応じて識別結果の精度がばらつくという問題があった。たとえば、中切歯と側切歯、犬歯と第一小臼歯、第一小臼歯と第二小臼歯、第二小臼歯と第一大臼歯、第一台臼歯と第二大臼歯など、形状が類似する歯牙同士では特に識別精度は高くない。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、精度良く歯牙の種類を識別することができる識別装置、当該識別装置を備える識別システム、識別方法、および識別用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、歯牙の種類を識別する識別装置が提供される。識別装置は、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データが入力される入力部と、入力部から入力された三次元データに基づき、隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する識別部と、識別部による識別結果を出力する出力部とを備え、識別部は、複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワークを含む第1推定モデルとに基づき、当該第1隣接歯牙と同一の数または当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙を識別する第1識別部と、第1識別部による識別結果と、第2ニューラルネットワークを含む第2推定モデルとに基づき、第2隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する第2識別部とを含む。
【0007】
本開示に従えば、歯牙の種類を識別する識別システムが提供される。識別システムは、三次元カメラを用いて、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データを取得する三次元スキャナと、三次元スキャナによって取得された三次元データに基づき、隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する識別装置とを備え、識別装置は、三次元スキャナによって取得された三次元データが入力される入力部と、入力部から入力された三次元データに基づき、隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する識別部と、識別部による識別結果を出力する出力部とを含み、識別部は、複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワークを含む第1推定モデルとに基づき、当該第1隣接歯牙と同一の数または当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙を識別する第1識別部と、第1識別部による識別結果と、第2ニューラルネットワークを含む第2推定モデルとに基づき、第2隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する第2識別部とを有する。
【0008】
本開示に従えば、コンピュータによる歯牙の種類を識別する識別方法が提供される。識別方法は、コンピュータが実行する処理として、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データが入力されるステップと、入力されるステップによって入力された三次元データに基づき、隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別するステップと、識別するステップによる識別結果を出力するステップとを含み、識別するステップは、複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワークを含む第1推定モデルとに基づき、当該第1隣接歯牙と同一の数または当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙を識別する第1識別ステップと、第1識別ステップによる識別結果と、第2ニューラルネットワークを含む第2推定モデルとに基づき、第2隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する第2識別ステップとを有する。
【0009】
本開示に従えば、歯牙の種類を識別する識別用プログラムが提供される。識別用プログラムは、コンピュータに、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データが入力されるステップと、入力されるステップによって入力された三次元データに基づき、隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別するステップと、識別するステップによる識別結果を出力するステップとを実行させ、識別するステップは、複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワークを含む第1推定モデルとに基づき、当該第1隣接歯牙と同一の数または当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙を識別する第1識別ステップと、第1識別ステップによる識別結果と、第2ニューラルネットワークを含む第2推定モデルとに基づき、第2隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する第2識別ステップとを含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データに基づいて、精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る識別装置の適用例を示す模式図である。
図2】本実施の形態に係るシステムの全体構成を示す模式図である。
図3】本実施の形態に係る識別装置のハードウェア構成を示す模式図である。
図4】本実施の形態に係るサーバ装置のハードウェア構成を示す模式図である。
図5】本実施の形態に係る識別装置の機能構成を示す模式図である。
図6】本実施の形態に係る識別装置に入力される三次元データの内容を説明するための模式図である。
図7】本実施の形態に係る識別処理における識別対象となる歯牙の一例を示す模式図である。
図8】本実施の形態に係る識別装置が有する識別部の具体例を示す模式図である。
図9】本実施の形態に係る学習用データの生成を説明するための模式図である。
図10】本実施の形態に係る学習用データの一例を説明するための模式図である。
図11】本実施の形態に係る色分類データの一例を示す模式図である。
図12】本実施の形態に係る学習用データセットに基づく学習済モデルの生成を説明するための模式図である。
図13】本実施の形態に係る推定モデルのうちの1段目の推定モデルの学習を説明するための模式図である。
図14】本実施の形態に係る推定モデルのうちの2段目の推定モデルの学習を説明するための模式図である。
図15】本実施の形態に係る推定モデルのうちの3段目の推定モデルの学習を説明するための模式図である。
図16】本実施の形態に係る識別装置が実行する学習処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図17】本実施の形態に係るサーバ装置が実行する学習処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図18】本実施の形態に係る識別装置が実行するサービス提供処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図19】変形例に係る識別装置が実行するサービス提供処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図20】変形例に係る学習用データセットに基づく学習済モデルの生成を説明するための模式図である。
図21】変形例に係る識別装置が実行するサービス提供処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図22】変形例に係る学習用データセットの一例を説明するための模式図である。
図23】変形例に係る識別装置が実行するサービス提供処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[適用例]
図1および図2を参照しながら、本実施の形態に係る識別装置100の適用例を説明する。図1は、本実施の形態に係る識別装置100の適用例を示す模式図である。図2は、本実施の形態に係るシステムの全体構成を示す模式図である。
【0014】
図1に示すように、ユーザ1は、識別システム10を用いることで、対象者2の隣接する複数の歯牙(以下、「隣接歯牙」とも称する)および歯肉の三次元形状のデータ(以下、「三次元データ」とも称する)を取得することができる。なお、「ユーザ」は、歯科医師などの術者、歯科助手、歯科大学の先生または生徒、歯科技工士、メーカの技術者、製造工場の作業者など、識別システム10を用いる者であればいずれであってもよい。「対象者」は、歯科医院の患者、歯科大学における被験者など、識別システム10の対象となる者であればいずれであってもよい。また、「隣接歯牙」とは、隣接する複数の歯牙群であり、後述する「第1隣接歯牙」および「第2隣接歯牙」も同様である。
【0015】
本実施の形態に係る識別システム10は、三次元スキャナ200と、識別装置100と、ディスプレイ300と、スピーカ400とを備える。三次元スキャナ200は、内蔵された三次元カメラによってスキャン対象の三次元データを取得する。具体的には、三次元スキャナ200は、口腔内をスキャンすることで、三次元データとして、スキャン対象の歯牙および歯肉を構成する複数の点のそれぞれの位置情報(たとえば、縦方向に沿ったX軸,横方向に沿ったY軸,高さ方向に沿ったZ軸の座標)を、光学センサなどを用いて取得する。あるいは、三次元スキャナ200は、口腔内の印象採得によって作成された模型に対してスキャンすることで、三次元データとして、スキャン対象部分を構成する複数の点のそれぞれの位置情報(たとえば、縦方向に沿ったX軸,横方向に沿ったY軸,高さ方向に沿ったZ軸の座標)を、光学センサなどを用いて取得する。識別装置100は、三次元スキャナ200によって取得された三次元データに基づき、任意の視点からの歯牙などの像を含む二次元画像、またはホログラムなどによる立体的な歯牙などの画像を含む三次元画像を生成し、生成した三次元画像をディスプレイ300に表示する。三次元スキャナ200および識別装置100の少なくともいずれか一方は、移動可能なポータブル型のものであってもよいし、固定された据え置き型のものであってもよい。たとえば、三次元スキャナ200および識別装置100が据え置き型のデスクトップスキャナである場合、スキャン対象は石膏模型や義歯などの人工的に生成された歯牙であってもよい。
【0016】
たとえば、ユーザ1は、対象者2の歯牙の欠損部分を補う補綴物などをコンピュータ上でデジタル設計するために、三次元スキャナ200によって対象者2の口腔内を撮像することで、隣接歯牙および歯肉を含む口腔内の三次元データを取得する。三次元データは、歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を少なくとも含む。ユーザ1が口腔内を撮像するたびに三次元データが順次取得され、口腔内の三次元画像がディスプレイ300に表示される。ユーザ1は、ディスプレイ300に表示された三次元画像を確認しながら三次元データの不足部分を重点的にスキャンしていく。
【0017】
従来であれば、ユーザ1は、三次元スキャナ200によって取得された歯牙を含む三次元データが可視化された三次元画像に基づき、自身の知見によってスキャン中またはスキャンが完了した歯牙の種類を識別する。しかし、知見のレベルはユーザ1ごとに異なるため、ユーザ1の知見に頼っていると識別結果の精度がばらつくことがあった。また、矯正歯科などにおいては、矯正用の器具を設計する際に、取得された隣接する複数の歯牙を含む三次元データにおける、歯牙と歯肉とを区別しながら、歯牙をその種類ごとに分類(セグメント化)することも要求される。
【0018】
そこで、本実施の形態に係る識別システム10は、識別装置100が有するAI(人工知能:Artificial Intelligence)を利用して、三次元スキャナ200によって取得された三次元データに基づき歯牙の種類を自動的に識別する処理を実行するように構成されている。なお、識別装置100による歯牙の種類を識別する処理を「識別処理」とも称する。
【0019】
なお、「歯牙の種類」は、上顎右側の中切歯、側切歯、犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、および第3大臼歯、上顎左側の中切歯、側切歯、犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、および第3大臼歯、下顎右側の中切歯、側切歯、犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、および第3大臼歯、下顎左側の中切歯、側切歯、犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、および第3大臼歯といったような各歯牙の種類を意味する。
【0020】
具体的には、ユーザ1が三次元スキャナ200を用いて対象者2の口腔内の歯牙をスキャンすると、歯牙および歯肉を少なくとも含む口腔内の三次元データが識別装置100に入力される。識別装置100は、入力された歯牙の特徴を含む三次元データとニューラルネットワークを含む推定モデルとに基づき、当該歯牙の種類を識別する識別処理を実行する。
【0021】
「推定モデル」は、ニューラルネットワークと当該ニューラルネットワークによって用いられるパラメータとを含み、三次元データに関連付けられた歯牙の種類に対応する歯牙情報と、当該三次元データを用いた当該歯牙の種類の識別結果とに基づき学習されることで最適化(調整)される。
【0022】
具体的には、推定モデルは、隣接歯牙を構成する複数の点に対応する三次元データが入力されると、当該三次元データに基づきニューラルネットワークによって歯牙の特徴を抽出し、抽出した歯牙の特徴に基づき歯牙の種類を推定する。そして、推定モデルは、自身が推定した歯牙の種類と、入力された三次元データに関連付けられた歯牙の種類(歯牙情報)とに基づき、両者が一致すればパラメータを更新しない一方で、両者が一致しなければ両者が一致するようにパラメータを更新することで、パラメータを最適化する。このように、推定モデルは、入力データである三次元データと、正解データである歯牙の種類(歯牙情報)とを含む教師データを利用して、パラメータが最適化されることで学習される。
【0023】
なお、このような推定モデルを学習する処理を「学習処理」とも称する。また、学習処理によって最適化された推定モデルを、特に「学習済モデル」とも称する。つまり、本実施の形態においては、学習前の推定モデルおよび学習済みの推定モデルをまとめて「推定モデル」と総称する一方で、特に、学習済みの推定モデルを「学習済モデル」とも称する。
【0024】
「歯牙情報」は、上顎右側の中切歯、側切歯、犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、および第3大臼歯、上顎左側の中切歯、側切歯、犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、および第3大臼歯、下顎右側の中切歯、側切歯、犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、および第3大臼歯、下顎左側の中切歯、側切歯、犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯、第1大臼歯、第2大臼歯、および第3大臼歯といったような各歯牙の名称を含む。また、「歯牙情報」は、中切歯に割り当てられた1番、側切歯に割り当てられた2番、犬歯に割り当てられた3番、第1小臼歯に割り当てられた4番、第2小臼歯に割り当てられた5番、第1大臼歯に割り当てられた6番、第2大臼歯に割り当てられた7番、第3大臼歯に割り当てられた8番といったような各歯牙に割り当てられた番号(たとえば、歯科分野において一般的に用いられている歯牙の番号)を含む。その他、「歯牙情報」は、各歯牙に割り当てられた色の情報を含んでいてもよいし、各歯牙に割り当てられた記号の情報を含んでいてもよい。
【0025】
識別装置100によって学習済モデルを用いて識別処理が実行されると、その識別結果が、ディスプレイ300、およびスピーカ400に出力される。
【0026】
ディスプレイ300は、識別結果に対応する画像、文字、数字、アイコン、および記号の少なくともいずれか1つを表示する。たとえば、ディスプレイ300は、三次元スキャナ200によって下顎右側の7番に対応する第2大臼歯のスキャンが完了した後において、識別装置100による歯牙の識別結果を利用して、「右下7番のスキャンが完了しました。」というように、下顎右側の7番に対応する第2大臼歯のスキャンが完了した旨の画像を表示する。
【0027】
スピーカ400は、識別結果に対応する音声を出力する。たとえば、スピーカ400は、三次元スキャナ200によって下顎右側の7番に対応する第2大臼歯のスキャンが完了した後において、識別装置100による歯牙の識別結果を利用して、「右下7番完了」というように、下顎右側の7番に対応する第2大臼歯のスキャンが完了した旨の音声を出力する。
【0028】
さらに、識別装置100による識別結果は、識別処理時に用いられた三次元データとともに、スキャン情報として歯科技工所および管理センターに配置されたサーバ装置500に出力される。
【0029】
たとえば、図2に示すように、識別システム10は、複数のローカルA~Cのそれぞれに配置されている。たとえば、ローカルAおよびローカルBは歯科医院であり、当該歯科医院の院内において、ユーザ1である術者や歯科助手は、識別システム10を利用して対象者2である患者の歯牙を構成する複数の点に対応する三次元データを取得する。また、ローカルCは歯科大学であり、当該歯科大学において、ユーザ1である先生や生徒は、対象者2である被験者の口腔内の三次元データを取得する。ローカルA~Cのそれぞれで取得されたスキャン情報(三次元データ,識別結果)は、ネットワーク5を介して、ローカルDである歯科技工所および管理センターに配置されたサーバ装置500に出力される。
【0030】
歯科技工所においては、歯科技工士などが、ローカルA~Cのそれぞれから取得したスキャン情報に基づき、対象者2の歯牙の欠損部分を補う補綴物などを作成する。管理センターにおいては、サーバ装置500が、ローカルA~Cのそれぞれから取得したスキャン情報を蓄積して記憶し、ビッグデータとして保持する。
【0031】
なお、サーバ装置500は、歯科医院にローカルとは異なる管理センターに配置されるものに限らず、ローカル内に配置されてもよい。たとえば、ローカルA~Cのうちのいずれかのローカル内にサーバ装置500が配置されてもよい。また、1つのローカル内に複数の識別装置100が配置されてもよく、さらに、当該1つのローカル内に当該複数の識別装置100と通信可能なサーバ装置500が配置されてもよい。また、サーバ装置500は、クラウドサービスの形態で実現されてもよい。
【0032】
歯科技工所においては、ローカルA~Cのように、様々な所からスキャン情報が集約される。このため、歯科技工所で保持されているスキャン情報は、ネットワーク5を介して管理センターに送信されてもよいし、あるいは、CD(Compact Disc)およびUSB(Universal Serial Bus)メモリなどのリムーバブルディスク550を介して管理センターに送られてもよい。
【0033】
なお、ネットワーク5を介さずに、ローカルA~Cのそれぞれからも、リムーバブルディスク550を介してスキャン情報が管理センターに送られてもよい。また、ローカルA~Cのそれぞれの間においても、ネットワーク5またはリムーバブルディスク550を介してスキャン情報を互いに送り合ってもよい。
【0034】
各ローカルA~Cの識別装置100は、各自で推定モデルを保持しており、識別処理時に各自が保持する推定モデルを使用して歯牙の種類を識別する。各ローカルA~Cの識別装置100は、各自の学習処理によって各自の推定モデルを学習することで、学習済モデルを生成する。さらに、本実施の形態においては、サーバ装置500も推定モデルを保持している。サーバ装置500は、各ローカルA~Cの識別装置100および歯科技工所から取得したスキャン情報を用いた学習処理によって推定モデルを学習することで、学習済モデルを生成し、各ローカルA~Cの識別装置100に当該学習済モデルを配布する。
【0035】
なお、本実施の形態においては、各ローカルA~Cの識別装置100およびサーバ装置500のいずれも学習処理を実行する形態であるが、各ローカルA~Cの識別装置100のみが学習処理を実行する形態、あるいはサーバ装置500のみが学習処理を実行する形態であってもよい。なお、サーバ装置500のみが学習処理を実行する形態である場合、各ローカルA~Cの識別装置100が保持する推定モデル(学習済モデル)は、各ローカルA~Cの識別装置100間で共通化される。
【0036】
また、サーバ装置500が識別装置100における識別処理の機能を有していてもよい。たとえば、各ローカルA~Cは、取得した三次元データをサーバ装置500に送信し、サーバ装置500は、各ローカルA~Cから受信したそれぞれの三次元データに基づき、それぞれにおける歯牙の種類の識別結果を算出してもよい。そして、サーバ装置500は、それぞれの識別結果を各ローカルA~Cに送信し、各ローカルA~Cは、サーバ装置500から受信した識別結果をディスプレイなどに出力してもよい。このように、各ローカルA~Cとサーバ装置500とがクラウドサービスの形態で構成されてもよい。このようにすれば、サーバ装置500が推定モデル(学習済モデル)を保持してさえいれば、各ローカルA~Cは、推定モデル(学習済モデル)を保持することなく識別結果を得ることができる。
【0037】
このように、本実施の形態に係る識別システム10によれば、識別装置100が有するAIを利用して、三次元スキャナ200によって取得された三次元データに基づき歯牙の種類が自動的に識別される。AIを利用することで、ユーザ1が抽出することができる歯牙の特徴に限らずユーザ1では抽出できない歯牙の特徴をも見出すこともでき、見出された歯牙の特徴に基づき歯牙の種類が識別されるため、ユーザ1は、自身の知見に頼ることなく、精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0038】
[識別装置のハードウェア構成]
図3を参照しながら、本実施の形態に係る識別装置100のハードウェア構成の一例を説明する。図3は、本実施の形態に係る識別装置100のハードウェア構成を示す模式図である。識別装置100は、たとえば、汎用コンピュータで実現されてもよいし、識別システム10専用のコンピュータで実現されてもよい。
【0039】
図3に示すように、識別装置100は、主なハードウェア要素として、スキャナインターフェース102と、ディスプレイインターフェース103と、スピーカインターフェース104と、周辺機器インターフェース105と、ネットワークコントローラ106と、メディア読取装置107と、PCディスプレイ108と、メモリ109と、ストレージ110と、演算装置130とを備える。
【0040】
スキャナインターフェース102は、三次元スキャナ200を接続するためのインターフェースであり、識別装置100と三次元スキャナ200との間のデータの入出力を実現する。
【0041】
ディスプレイインターフェース103は、ディスプレイ300を接続するためのインターフェースであり、識別装置100とディスプレイ300との間のデータの入出力を実現する。ディスプレイ300は、たとえば、LCD(Liquid Crystal Display)または有機ELD(Electroluminescence)ディスプレイなどで構成される。
【0042】
スピーカインターフェース104は、スピーカ400を接続するためのインターフェースであり、識別装置100とスピーカ400との間のデータの入出力を実現する。
【0043】
周辺機器インターフェース105は、キーボード601およびマウス602などの周辺機器を接続するためのインターフェースであり、識別装置100と周辺機器との間のデータの入出力を実現する。
【0044】
ネットワークコントローラ106は、ネットワーク5を介して、歯科技工所に配置された装置、管理センターに配置されたサーバ装置500、および他のローカルに配置された他の識別装置100のそれぞれとの間でデータを送受信する。ネットワークコントローラ106は、たとえば、イーサネット(登録商標)、無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)などの任意の通信方式に対応する。
【0045】
メディア読取装置107は、記憶媒体であるリムーバブルディスク550に格納されているスキャン情報などの各種データを読み出す。
【0046】
PCディスプレイ108は、識別装置100専用のディスプレイである。PCディスプレイ108は、たとえば、LCDまたは有機ELディスプレイなどで構成される。なお、本実施の形態においては、PCディスプレイ108は、ディスプレイ300と別体であるが、ディスプレイ300と共通化されてもよい。
【0047】
メモリ109は、演算装置130が任意のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ109は、たとえば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)などの揮発性メモリデバイスで構成される。
【0048】
ストレージ110は、識別処理および学習処理などに必要な各種のデータを格納する記憶領域を提供する。ストレージ110は、たとえば、ハードディスクまたはSSD(Solid State Drive)などの不揮発性メモリデバイスで構成される。
【0049】
ストレージ110は、スキャン情報112と、推定モデル114(学習済モデル)と、学習用データセット116と、色分類データ118と、プロファイルデータ119と、識別用プログラム120と、学習用プログラム121と、OS(Operating System)127とを格納する。
【0050】
スキャン情報112は、三次元スキャナ200によって取得された三次元データ122と、当該三次元データ122に基づき実行された識別処理による識別結果124とを含む。識別結果124は、識別処理に用いられた三次元データ122に関連付けられてストレージ110に格納される。学習用データセット116は、推定モデル114の学習処理に用いられる一群の学習用データである。色分類データ118は、学習用データセット116の生成および学習処理に用いられるデータである。プロファイルデータ119は、対象者2に関する属性情報であって、当該対象者2の年齢、性別、人種、身長、体重、および居住地などのプロファイルがまとめられたデータ(たとえば、カルテの情報)である。識別用プログラム120は、識別処理を実行するためのプログラムである。学習用プログラム121は、推定モデル114の学習処理を実行するためのプログラムであり、その一部には識別処理を実行するためのプログラムも含まれる。
【0051】
演算装置130は、各種のプログラムを実行することで、識別処理および学習処理などの各種の処理を実行する演算主体であり、コンピュータの一例である。演算装置130は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)132、FPGA(Field-Programmable Gate Array)134、およびGPU(Graphics Processing Unit)136などで構成される。
【0052】
なお、演算装置130は、CPU132、FPGA134、およびGPU136のうちの少なくともいずれか1つで構成されてもよいし、CPU132とFPGA134、FPGA134とGPU136、CPU132とGPU136、あるいはCPU132、FPGA134、およびGPU136から構成されてもよい。また、演算装置130は、演算回路(processing circuitry)と称されてもよい。
【0053】
[サーバ装置のハードウェア構成]
図4を参照しながら、本実施の形態に係るサーバ装置500のハードウェア構成の一例を説明する。図4は、本実施の形態に係るサーバ装置500のハードウェア構成を示す模式図である。サーバ装置500は、たとえば、汎用コンピュータで実現されてもよいし、識別システム10専用のコンピュータで実現されてもよい。
【0054】
図4に示すように、サーバ装置500は、主なハードウェア要素として、ディスプレイインターフェース503と、周辺機器インターフェース505と、ネットワークコントローラ506と、メディア読取装置507と、メモリ509と、ストレージ510と、演算装置530とを備える。
【0055】
ディスプレイインターフェース503は、ディスプレイ350を接続するためのインターフェースであり、サーバ装置500とディスプレイ350との間のデータの入出力を実現する。ディスプレイ350は、たとえば、LCDまたは有機ELDディスプレイなどで構成される。
【0056】
周辺機器インターフェース505は、キーボード651およびマウス652などの周辺機器を接続するためのインターフェースであり、サーバ装置500と周辺機器との間のデータの入出力を実現する。
【0057】
ネットワークコントローラ506は、ネットワーク5を介して、ローカルに配置された識別装置100、および歯科技工所に配置された装置のそれぞれとの間でデータを送受信する。ネットワークコントローラ506は、たとえば、イーサネット(登録商標)、無線LAN、Bluetooth(登録商標)などの任意の通信方式に対応してもよい。
【0058】
メディア読取装置507は、リムーバブルディスク550に格納されているスキャン情報などの各種データを読み出す。
【0059】
メモリ509は、演算装置530が任意のプログラムを実行するにあたって、プログラムコードやワークメモリなどを一時的に格納する記憶領域を提供する。メモリ509は、たとえば、DRAMまたはSRAMなどの揮発性メモリデバイスで構成される。
【0060】
ストレージ510は、学習処理などに必要な各種のデータを格納する記憶領域を提供する。ストレージ510は、たとえば、ハードディスクまたはSSDなどの不揮発性メモリデバイスで構成される。
【0061】
ストレージ510は、スキャン情報512と、推定モデル514(学習済モデル)と、学習用データセット516と、色分類データ518と、プロファイルデータ519と、学習用プログラム521と、OS527とを格納する。
【0062】
スキャン情報512は、ネットワーク5を介してローカルに配置された識別装置100および歯科技工所から取得した三次元データ522と、当該三次元データ522に基づき実行された識別処理による識別結果524とを含む。識別結果524は、識別処理に用いられた三次元データ522に関連付けられてストレージ510に格納される。学習用データセット516は、推定モデル514の学習処理に用いられる一群の学習用データである。色分類データ518は、学習用データセット516の生成および学習処理に用いられるデータである。プロファイルデータ519は、対象者2に関する属性情報であって、対象者2の年齢、性別、人種、身長、体重、および居住地などのプロファイルがまとめられたデータ(たとえば、カルテの情報)である。学習用プログラム521は、推定モデル514の学習処理を実行するためのプログラムであり、その一部には識別処理を実行するためのプログラムも含まれる。
【0063】
なお、推定モデル514(学習済モデル)は、ローカルの識別装置100に送信されることで、識別装置100によって、推定モデル114(学習済モデル)として保持される。
【0064】
演算装置530は、各種のプログラムを実行することで、学習処理などの各種の処理を実行する演算主体であり、コンピュータの一例である。演算装置530は、たとえば、CPU532、FPGA534、およびGPU536などで構成される。
【0065】
なお、演算装置530は、CPU532、FPGA534、およびGPU536のうちの少なくともいずれか1つで構成されてもよいし、CPU532とFPGA534、FPGA534とGPU536、CPU532とGPU536、あるいはCPU532、FPGA534、およびGPU536から構成されてもよい。また、演算装置530は、演算回路(processing circuitry)と称されてもよい。
【0066】
[識別装置による識別処理]
図5図8を参照しながら、本実施の形態に係る識別装置100による識別処理の一例を説明する。図5は、本実施の形態に係る識別装置100の機能構成を示す模式図である。図6は、本実施の形態に係る識別装置に入力される三次元データの内容を説明するための模式図である。図7は、本実施の形態に係る識別処理における識別対象となる歯牙の一例を示す模式図である。図8は、本実施の形態に係る識別装置が有する識別部の具体例を示す模式図である。なお、図7においては、三次元スキャナ200のスキャン対象となる歯牙が線図によって表されている。
【0067】
図5に示すように、識別装置100は、識別処理に係る機能部として、入力部1102と、プロファイル取得部1119と、識別部1101と、出力部1103とを有する。これらの各機能は、識別装置100の演算装置130がOS127および識別用プログラム120を実行することで実現される。
【0068】
入力部1102には、三次元スキャナ200によって取得された隣接歯牙を構成する複数の点に対応する三次元データが入力される。プロファイル取得部1119は、対象者2のプロファイルデータ119を取得する。
【0069】
識別部1101は、複数の識別部を含む多段式の識別部である。本実施形態においては、識別部1101は、第1識別部1131と、第2識別部1132とを有する。
【0070】
第1識別部1131は、入力部1102に入力された隣接歯牙(第1隣接歯牙)を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1推定モデル1141(第1学習済モデル)とに基づき、当該第1隣接歯牙と同一の数または当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する隣接歯牙(第2隣接歯牙)を識別する。第2隣接歯牙は、第1隣接歯牙に含まれる複数の歯牙のうちから選択された隣接する複数の歯牙であり、予めグルーピングによって設定されている。また、本実施の形態においては、第1識別部1131は、入力部1102に入力された三次元データと、プロファイル取得部1119によって取得された対象者2のプロファイルデータ119とに基づき、第1推定モデル1141(第1学習済モデル)を用いて第2隣接歯牙を識別する。なお、第1識別部1131は、識別処理においてプロファイルデータ119を用いなくてもよい。
【0071】
第1推定モデル1141は、第1ニューラルネットワーク1151と、当該第1ニューラルネットワーク1151によって用いられる第1パラメータ1161とを含む。第1パラメータ1161は、第1ニューラルネットワーク1151による計算に用いられる重み付け係数と、識別の判定に用いられる判定値とを含む。
【0072】
第2識別部1132は、第1識別部1131による第2隣接歯牙の識別結果と、第2推定モデル1142とに基づき、当該第2隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する。
【0073】
第2推定モデル1142は、第2ニューラルネットワーク1152と、当該第2ニューラルネットワーク1152によって用いられる第2パラメータ1162とを含む。第2パラメータ1162は、第2ニューラルネットワーク1152による計算に用いられる重み付け係数と、識別の判定に用いられる判定値とを含む。
【0074】
なお、上述した第1推定モデル1141および第2推定モデル1142は、図3に示した推定モデル114に対応する。
【0075】
出力部1103は、第2識別部1132による歯牙の種類の識別結果を、ディスプレイ300、スピーカ400、およびサーバ装置500に出力する。
【0076】
ここで、図6に示すように、入力部1102に入力される三次元データには、歯牙の各点における三次元の位置情報と、歯牙の各点における色情報とが含まれる。位置情報は、予め定められた位置を基準とした三次元における絶対位置の座標を含む。たとえば、位置情報は、歯牙の各点における中心位置を原点として、X軸(たとえば、歯牙の横方向に沿った軸)、Y軸(たとえば、歯牙の縦方向に沿った軸)、およびZ軸(たとえば、歯牙の高さ方向に沿った軸)の各軸における絶対位置の座標を含む。なお、位置情報は、予め定められた位置を原点とした三次元における絶対位置の座標に限らず、たとえば、隣接する点からの距離および方向(ベクトル)を示す三次元における相対位置の座標を含んでいてもよい。
【0077】
ここで、図7に示すように、三次元スキャナ200のスキャン対象となる歯牙が上顎の切歯である場合、得られる三次元画像が、上唇側の部位、口蓋側の部位、および切縁側の部位の画像を少なくとも含むように、ユーザ1によって対象者2の口腔内がスキャンされる。また、三次元スキャナ200のスキャン対象となる歯牙が上顎の犬歯および臼歯である場合、得られる三次元画像が、頬側の部位、口蓋側の部位、および咬合する部位の画像を少なくとも含むように、ユーザ1によって対象者2の口腔内がスキャンされる。三次元スキャナ200のスキャン対象となる歯牙が下顎の切歯である場合、得られる三次元画像が、下唇側の部位、舌側の部位、および切縁側の部位の画像を少なくとも含むように、ユーザ1によって対象者2の口腔内がスキャンされる。三次元スキャナ200のスキャン対象となる歯牙が下顎の犬歯および臼歯である場合、得られる三次元画像が、頬側の部位、舌側の部位、および咬合する部位の画像を少なくとも含むように、ユーザ1によって対象者2の口腔内がスキャンされる。
【0078】
一般的に、対象者2の歯牙は、その種類によって形状および大きさが異なる。たとえば、上顎の切歯の場合、上唇側の面は一般的にU字形であるのに対して、上顎の犬歯の場合、頬側の面は一般的に五角形である。各歯牙は、形状および大きさがその種類に応じて特徴的であり、識別部1101は、これらの特徴的な形状および大きさが数値化された三次元データに基づき、推定モデル114を用いて当該三次元データに対応する歯牙の種類を識別する。
【0079】
第1ニューラルネットワーク1151においては、入力部1102に入力された三次元データに含まれる位置情報の値が入力層に入力される。そして、第1ニューラルネットワーク1151においては、たとえば、中間層によって、入力された位置情報の値に対して重み付け係数が乗算されたり所定のバイアスが加算されたりするとともに所定の関数による計算が行われ、その計算結果が判定値と比較される。そして、第1ニューラルネットワーク1151においては、その計算および判定の結果が識別結果として出力層から出力される。なお、第1ニューラルネットワーク1151による計算および判定については、いずれの手法が用いられてもよい。
【0080】
第2ニューラルネットワーク1152においては、第1識別部1131による識別結果に対応する値が入力層に入力される。そして、第2ニューラルネットワーク1152においては、たとえば、中間層によって、入力された識別結果に対応する値に対して重み付け係数が乗算されたり所定のバイアスが加算されたりするとともに所定の関数による計算が行われ、その計算結果が判定値と比較される。そして、第2ニューラルネットワーク1152においては、その計算および判定の結果が識別結果として出力層から出力される。なお、第2ニューラルネットワーク1152による計算および判定については、いずれの手法が用いられてもよい。
【0081】
第1ニューラルネットワーク1151および第2ニューラルネットワーク1152においては、中間層が多層構造になることで、ディープラーニングによる処理が行われる。本実施の形態においては、3次元画像に特化した識別処理を行う識別用プログラム120として、たとえば、VoxNet、3D ShapeNets、Multi-View CNN、RotationNet、OctNet、FusionNet、PointNet、PointNet++、SSCNet、およびMarrNetなどが用いられるが、その他のプログラムが用いられてもよい。また、第1ニューラルネットワーク1151および第2ニューラルネットワーク1152の仕組みには既存のものが適用されてもよい。
【0082】
なお、サーバ装置500が保持する推定モデル514に含まれるニューラルネットワークは、第1ニューラルネットワーク1151および第2ニューラルネットワーク1152と同様の構成を有する。
【0083】
図8を参照しながら、識別部1101の具体例を説明する。なお、図8においては、下顎左側の3番~7番の隣接歯牙および歯肉を構成する複数の点に対応する三次元データが、識別部1101に入力される例が示されている。なお、3番~7番の隣接歯牙は、「第1隣接歯牙」の一例である。識別部1101に入力される三次元データは、3番~7番の隣接歯牙について色加工されていない色情報(すなわち、歯牙の色そのものの色を示す色情報)を含んでいてもよいし、3番~7番の隣接歯牙についてグレースケール化された色情報を含んでいてもよい。識別部1101は、入力された三次元データに基づき、下顎左側の3番~7番の隣接歯牙を識別する。
【0084】
図8に示すように、識別部1101は、識別部1130aと、識別部1130bと、識別部1130cと、推定モデル1140aと、推定モデル1140bと、推定モデル1140cとを有する。
【0085】
1段目の識別部1130aは、図5に示した第1識別部1131の一例であり、入力された隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、推定モデル1140aとに基づき、当該隣接歯牙と同一の数または当該隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を識別する。推定モデル1140aは、図5に示した第1推定モデル1141の一例であり、図示しないニューラルネットワークと、当該ニューラルネットワークによって用いられる図示しないパラメータとを含む。なお、図8においては、1段目の識別部1130aが、入力された三次元データに対応する隣接歯牙よりも少ない数の隣接歯牙を識別する例を説明する。
【0086】
具体的には、識別部1130aは、下顎左側の3番~7番の隣接歯牙および歯肉を構成する複数の点に対応する三次元データが入力されると、推定モデル1140aを用いて、3番~7番の歯牙のうちの複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を識別する。たとえば、識別部1130aは、3番~7番の歯牙のうち、4番~7番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応するとともにそれらの指標である色aを推定する。色aは、4番~7番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応付けられたラベルである。また、識別部1130aは、3番~7番の歯牙のうち、3番~6番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応するとともにそれらの指標である色bを推定する。色bは、3番~6番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応付けられたラベルである。あるいは、識別部1130aは、いずれか1つの歯牙群(隣接歯牙)に対応する色を推定してもよい。識別部1130aによる識別結果は、2段目の識別部1130bに入力される。なお、4番~7番の隣接歯牙および3番~6番の隣接歯牙は、「第2隣接歯牙」の一例である。
【0087】
このように、1段目の識別部1130aは、入力された3番~7番の隣接歯牙および歯肉を構成する複数の点に対応する三次元データと、推定モデル1140aとに基づき、4番~7番の歯牙がセットになった隣接歯牙と、3番~6番の歯牙がセットになった隣接歯牙とを識別する。あるいは、識別部1130aは、いずれか1つの隣接歯牙を識別する。
【0088】
2段目の識別部1130bは、図5に示した第1識別部1131の一例であり、入力された隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、推定モデル1140bとに基づき、当該隣接歯牙と同一の数または当該隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を識別する。推定モデル1140bは、図5に示した第1推定モデル1141の一例であり、図示しないニューラルネットワークと、当該ニューラルネットワークによって用いられる図示しないパラメータとを含む。なお、2段目の識別部1130bは、1段目の識別部1130aの後段に接続され、当該識別部1130aによって識別された隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データが、識別部1130bに入力される。なお、図8においては、2段目の識別部1130bが、入力された三次元データに対応する隣接歯牙よりも少ない数の隣接歯牙を識別する例を説明する。
【0089】
具体的には、識別部1130bは、識別部1130aによって出力された4番~7番の隣接歯牙の識別結果(たとえば、色aの推定結果、4番~7番の隣接歯牙に対応する三次元データ)に基づき、推定モデル1140bを用いて、4番~7番の隣接歯牙のうちの複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を識別する。たとえば、識別部1130bは、4番~7番の隣接歯牙のうち、6番および7番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応するとともにそれらの指標である色c、5番および6番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応するとともにそれらの指標である色d、4番および5番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応するとともにそれらの指標である色eを推定する。色cは、6番および7番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応付けられたラベルであり、色dは、5番および6番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応付けられたラベルであり、色eは、4番および5番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応付けられたラベルである。あるいは、識別部1130bは、いずれか1つの歯牙群(隣接歯牙)に対応する色を推定してもよい。識別部1130bによる識別結果は、3段目の識別部1130cに入力される。なお、4番および5番の隣接歯牙、5番および6番の隣接歯牙、6番および7番の隣接歯牙は、「第2隣接歯牙」の一例である。
【0090】
また、2段目の識別部1130bは、識別部1130aによって出力された3番~6番の隣接歯牙の識別結果(たとえば、色bの推定結果、3番~6番の隣接歯牙に対応する三次元データ)に基づき、推定モデル1140bを用いて、3番~6番の隣接歯牙のうちの複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を識別する。たとえば、識別部1130bは、3番~6番の隣接歯牙のうち、5番および6番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応するとともにそれらの指標である色d、4番および5番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応するとともにそれらの指標である色e、3番および4番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応するとともにそれらの指標である色fを推定する。色fは、3番および4番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対応付けられたラベルである。あるいは、識別部1130bは、いずれか1つの歯牙群(隣接歯牙)に対応する色を推定してもよい。識別部1130bによる識別結果は、3段目の識別部1130cに入力される。なお、3番および4番の隣接歯牙、4番および5番の隣接歯牙、4番および6番の隣接歯牙は、「第2隣接歯牙」の一例である。
【0091】
第2隣接歯牙のうち、4番~7番の隣接歯牙の識別結果に基づき識別部1130bによって識別された第2隣接歯牙(4番および5番の隣接歯牙、5番および6番の隣接歯牙、6番および7番の隣接歯牙)と、3番~6番の隣接歯牙の識別結果に基づき識別部1130bによって識別された第2隣接歯牙(3番および4番の隣接歯牙、4番および5番の隣接歯牙、4番および6番の隣接歯牙)とでは、4番~6番の各歯牙が重複している。
【0092】
このように、2段目の識別部1130bは、入力された4番~7番の隣接歯牙の識別結果と、3番~6番の隣接歯牙の識別結果と、推定モデル1140bとに基づき、6番および7番の歯牙がセットになった隣接歯牙と、5番および6番の歯牙がセットになった隣接歯牙と、4番および5番の歯牙がセットになった隣接歯牙と、3番および4番の歯牙がセットになった隣接歯牙とを識別する。あるいは、識別部1130bは、いずれか1つの隣接歯牙を識別する。なお、識別部1130bは、入力された4番~7番の隣接歯牙の識別結果と、3番~6番の隣接歯牙の識別結果とのうち、少なくともいずれか1つの識別結果と、推定モデル1140bとに基づき、6番および7番の歯牙がセットになった隣接歯牙と、5番および6番の歯牙がセットになった隣接歯牙と、4番および5番の歯牙がセットになった隣接歯牙と、3番および4番の歯牙がセットになった隣接歯牙とのうち、少なくともいずれか1つの隣接歯牙を識別してもよい。
【0093】
3段目の識別部1130cは、図5に示した第2識別部1132の一例であり、識別部1130bによる隣接歯牙(第2隣接歯牙)の識別結果と、推定モデル1140cとに基づき、当該隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する。推定モデル1140cは、図5に示した第2推定モデル1142の一例であり、図示しないニューラルネットワークと、当該ニューラルネットワークによって用いられる図示しないパラメータとを含む。なお、3段目の識別部1130cは、2段目の識別部1130bの後段に接続され、当該識別部1130bによって識別された隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データが、識別部1130cに入力される。
【0094】
具体的には、識別部1130cは、識別部1130bによって出力された6番および7番の隣接歯牙の識別結果(たとえば、色cの推定結果、6番および7番の隣接歯牙に対応する三次元データ)に基づき、推定モデル1140cを用いて、6番および7番の隣接歯牙のうちの各々の歯牙の種類を識別する。たとえば、識別部1130cは、6番および7番の隣接歯牙のうち、6番の指標である色hおよび7番の指標である色gを推定する。色hは、6番の歯牙に対応付けられたラベルであり、色gは、7番の歯牙に対応付けられたラベルである。あるいは、識別部1130cは、いずれか1つの歯牙に対応する色(種類)を推定してもよい。
【0095】
また、3段目の識別部1130cは、識別部1130bによって出力された5番および6番の隣接歯牙の識別結果(たとえば、色dの推定結果、5番および6番の隣接歯牙に対応する三次元データ)に基づき、推定モデル1140cを用いて、5番および6番の隣接歯牙のうちの各々の歯牙の種類を識別する。たとえば、識別部1130cは、5番および6番の隣接歯牙のうち、5番の指標である色iおよび6番の指標である色hを推定する。色iは、5番の歯牙に対応付けられたラベルである。あるいは、識別部1130cは、いずれか1つの歯牙に対応する色(種類)を推定してもよい。
【0096】
また、3段目の識別部1130cは、識別部1130bによって出力された4番および5番の隣接歯牙の識別結果(たとえば、色eの推定結果、4番および5番の隣接歯牙に対応する三次元データ)に基づき、推定モデル1140cを用いて、4番および5番の隣接歯牙のうちの各々の歯牙の種類を識別する。たとえば、識別部1130cは、4番および5番の隣接歯牙のうち、4番の指標である色jおよび5番の指標である色iを推定する。色jは、4番の歯牙に対応付けられたラベルである。あるいは、識別部1130cは、いずれか1つの歯牙に対応する色(種類)を推定してもよい。
【0097】
さらに、3段目の識別部1130cは、識別部1130bによって出力された3番および4番の隣接歯牙の識別結果(たとえば、色fの推定結果、3番および4番の隣接歯牙に対応する三次元データ)に基づき、推定モデル1140cを用いて、3番および4番の隣接歯牙のうちの各々の歯牙の種類を識別する。たとえば、識別部1130cは、3番および4番の隣接歯牙のうち、3番の指標である色kおよび4番の指標である色jを推定する。色kは、3番の歯牙に対応付けられたラベルである。あるいは、識別部1130cは、いずれか1つの歯牙に対応する色(種類)を推定してもよい。
【0098】
このように、3段目の識別部1130cは、入力された6番および7番の隣接歯牙の識別結果と、5番および6番の隣接歯牙の識別結果と、4番および5番の隣接歯牙の識別結果と、3番および4番の隣接歯牙の識別結果と、推定モデル1140cとに基づき、3番~7番のそれぞれの歯牙の種類を識別する。あるいは、識別部1130cは、いずれか1つの歯牙の種類を識別する。なお、識別部1130cは、入力された6番および7番の隣接歯牙の識別結果と、5番および6番の隣接歯牙の識別結果と、4番および5番の隣接歯牙の識別結果と、3番および4番の隣接歯牙の識別結果とのうち、少なくともいずれか1つの識別結果と、推定モデル1140cとに基づき、3番~7番の歯牙のうち、少なくともいずれか1つの歯牙の種類を識別してもよい。
【0099】
このような構成において、識別装置100は、隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データが入力されると、当該三次元データに基づいて、複数の歯牙のそれぞれの特徴を多段式の複数の推定モデル1141(1140a,1140b),1142(1140c)を用いて抽出し、抽出した複数の歯牙のそれぞれの特徴に基づき、当該複数の歯牙のそれぞれの種類を識別することができる。識別装置100は、一般的に認識されている歯牙の特徴に限らず、一般的に認識されていない歯牙の特徴についても抽出することができ、それによって精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0100】
また、識別装置100は、多段式になった複数の推定モデル1141(1140a,1140b),1142(1140c)を用いて隣接する歯牙の数を段階的に絞りながら歯牙を識別するため、数多くの歯牙が隣接する隣接歯牙に対応する三次元データに基づき各歯牙の種類を一度に識別するよりも、精度良く歯牙の種類を識別することができる。より具体的には、1つの歯牙を一度に識別する場合、当該歯牙(または当該歯牙に隣接する歯牙)の特徴のみで識別する必要がある。歯牙の種類は16種類あるため、16種類からなる各歯牙の種類を一度に識別する場合、各歯牙(または各歯牙に隣接する歯牙)の特徴のみで識別する必要があり、識別の精度はなかなか上がらない。一方、複数の歯牙を識別する場合は、その特徴が1つの歯牙を識別する場合よりも増えるため、識別の精度が向上する。さらに、複数の歯牙の識別を多段式にすることで、2段目以降は、1段目で識別した複数の歯牙の中のみで識別を行うため、より精度が向上する。たとえば、1段目で4つ歯牙(4番、5番、6番、7番)を識別し、2段目で2つの歯牙を識別する場合、2段目では3種類の歯牙(4番および5番、5番および6番、6番および7番)を識別するだけでよいため、より精度が向上する。
【0101】
さらに、識別装置100は、段階的に隣接歯牙を推定するにあたって、複数の第2隣接歯牙において重複する歯牙(4番~6番の各歯牙)については複数回に亘って識別されるため、より精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0102】
以上、説明した図8に示す例では、2段目の識別部1130bが、入力された三次元データに対応する隣接歯牙よりも少ない数の隣接歯牙を識別していたが、2段目の識別部1130bが、入力された三次元データに対応する隣接歯牙と同一の数の隣接歯牙を識別してもよい。
【0103】
たとえば、2段目の識別部1130bは、識別部1130aによって出力された3番~6番の隣接歯牙の識別結果に基づき、推定モデル1140bを用いて、3番~6番の隣接歯牙を識別する。そして、3段目の識別部1130cは、識別部1130bによって出力された3番~6番の隣接歯牙の識別結果に基づき、推定モデル1140cを用いて、3番~6番の隣接歯牙のうちの各々の歯牙の種類を識別してもよい。
【0104】
また、2段目の識別部1130bは、識別部1130aによって出力された4番~7番の隣接歯牙の識別結果に基づき、推定モデル1140bを用いて、4番~7番の隣接歯牙を識別する。そして、3段目の識別部1130cは、識別部1130bによって出力された4番~7番の隣接歯牙の識別結果に基づき、推定モデル1140cを用いて、4番~7番の隣接歯牙のうちの各々の歯牙の種類を識別してもよい。
【0105】
[学習用データの生成]
図9図11を参照しながら、学習用データセット116の生成の一例を説明する。図9は、本実施の形態に係る学習用データの生成を説明するための模式図である。図10は、本実施の形態に係る学習用データの一例を説明するための模式図である。図11は、本実施の形態に係る色分類データの一例を示す模式図である。
【0106】
図9に示すように、まず、三次元スキャナ200によって三次元データが取得される(STEP1)。三次元スキャナ200によって取得された三次元データは、当該三次元データに対応する歯牙および歯肉を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報と、当該複数の点のそれぞれにおける色情報(RGB値)とを含む。三次元スキャナ200によって取得された三次元データに基づき三次元画像が生成されると、図9(a)に示すように実際の色が付された歯牙および歯肉を含む三次元画像が生成される。
【0107】
次に、後述する各歯牙の色分け処理の準備として、ノイズ除去処理が行われる。たとえば、本実施の形態においては、三次元データに対応する3次元画像がグレースケール化される(STEP2)。3次元画像のグレースケール化は、ユーザ1(この場合、学習用データを生成するメーカの技術者または製造工場の作業者、歯科医師、歯科技工士などの歯科の知識を有する者など)によって行われる。三次元画像がグレースケール化されると、図9(b)に示すようにグレースケール化された歯牙を含む三次元画像が生成される。また、三次元画像のグレースケール化に応じて、三次元データに対応する歯牙の各点における色情報(RGB値)がグレースケールに対応する値(たとえば、192192192)に変更される。
【0108】
次に、三次元データに対応する三次元画像に含まれる各歯牙に対して予め定められた色が塗布されることで各歯牙が色分けされる(STEP3)。
【0109】
たとえば、図10に示すように、4番~7番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対して色aが塗布されることで、4番~7番の隣接歯牙と色aとが対応付けられた学習用データが生成される。この学習用データは、図8に示した推定モデル1140aの学習に用いられる。すなわち、推定モデル1140aは、図9(a)または図9(b)に示すような4番~7番の隣接歯牙を含む3番~7番の隣接歯牙に対応する三次元データに基づき、4番~7番の隣接歯牙を推定して色情報として出力し、その推定結果と正解データである色情報(色a)との比較結果に基づき学習する。
【0110】
また、図10に示すように、6番および7番の歯牙がセットになった歯牙群(隣接歯牙)に対して色cが塗布されることで、6番および7番の隣接歯牙と色cとが対応付けられた学習用データが生成される。この学習用データは、図8に示した推定モデル1140bの学習に用いられる。すなわち、推定モデル1140bは、6番および7番の隣接歯牙を含む4番~7番の隣接歯牙に対応する三次元データに基づき、6番および7番の隣接歯牙を推定して色情報として出力し、その推定結果と正解データである色情報(色c)との比較結果に基づき学習する。
【0111】
さらに、図10に示すように、7番の歯牙に対して色gが塗布されることで、7番の歯牙と色gとが対応付けられた学習用データが生成される。この学習用データは、図8に示した推定モデル1140cの学習に用いられる。すなわち、推定モデル1140cは、7番の歯牙を含む6番および7番の隣接歯牙に対応する三次元データに基づき、7番の歯牙を推定して色情報として出力し、その推定結果と正解データである色情報(色g)との比較結果に基づき学習する。
【0112】
図11に示すように、1つの歯牙または複数の歯牙からなる隣接歯牙ごとに色分けするための色分類データ118は、下顎左側、下顎右側、上顎左側、および上顎右側といったように口腔内の各部位ごとに設けられている。図11においては、下顎左側に対応する色分類データ118が示されている。各色分類データ118においては、歯牙の種類ごとに、歯科分野において一般的に用いられている歯牙の番号と、予め定められた色情報とが割り当てられている。
【0113】
たとえば、第二大臼歯は、歯牙の番号として7番が割り当てられ、色情報として色gが割り当てられている。第一大臼歯は、歯牙の番号として6番が割り当てられ、色情報として色hが割り当てられている。第二小臼歯は、歯牙の番号として5番が割り当てられ、色情報として色iが割り当てられている。このように、各色分類データ118においては、1つの歯牙または複数の歯牙からなる隣接歯牙ごとに色情報が予め割り当てられている。
【0114】
各歯牙に対する色の塗布は、ユーザ1(特に、歯科医師、歯科技工士などの歯科の知識を有する者など)によって行われる。具体的には、ユーザ1は、自身の知見に基づき三次元画像に含まれる各歯牙の種類を識別し、識別した歯牙の種類に対応する色を、色分類データ118を参照しながら特定し、特定した色を当該歯牙の画像に塗布する。
【0115】
たとえば、ユーザ1は、三次元画像に含まれる歯牙が7番の歯牙であると識別すると、当該歯牙の画像に色gを塗布する。また、三次元画像に含まれる歯牙が6番の歯牙であると識別すると、当該歯牙の画像に色hを塗布する。なお、図9および図10においては、分かり易いように、各色がハッチングで表されている。
【0116】
また、1つの歯牙または複数の歯牙からなる隣接歯牙の色分けに応じて、三次元データに対応する歯牙の各点における色情報(RGB値)が各歯牙に塗布された色に対応する値に変更される。たとえば、色a(赤色)に塗布された4番~7番の隣接歯牙の各位置座標に対しては、色情報(RGB値)が“255000000”となり、色c(緑色)に塗布された6番および7番の隣接歯牙の各位置座標に対しては、色情報(RGB値)が“000255000”となり、色g(青色)に塗布された7番の歯牙の各位置座標に対しては、色情報(RGB値)が“00000255”となる。つまり、三次元データに対応する歯牙の各点に対して、予め定められた色情報(RGB値)が関連付けられる。
【0117】
各歯牙に対して予め定められた色情報が関連付けられると、三次元データには、位置情報と、塗布された色に対応する色情報とが含まれるようになり、このような三次元データが学習用データとして採用される。つまり、本実施の形態に係る学習用データにおいては、識別処理で参照される位置情報に対して、歯牙の種類に対応する色情報が関連付けられる(ラベリングされる)。さらに、三次元データに対応する複数の歯牙のそれぞれの範囲を特定可能に当該三次元データに色情報が関連付けられる。具体的には、各歯牙に対応する位置情報ごとに、同じ色情報が関連付けられる。このような学習用データの集まりが学習用データセット116として、識別装置100に保持される。
【0118】
このように、学習用データを生成する際に、ユーザ1が三次元画像に含まれる各歯牙に色を塗布して正解データをラベリングすることにおいては、多くの利点がある。たとえば、単なる文字または記号を用いてラベリングした場合、ユーザ1は、各歯牙の範囲を認識し難いが、色分けによってラベリングした場合、ユーザ1は、ラベリング対象である歯牙と当該歯牙に隣接する歯牙との間の境界、およびラベリング対象である歯牙と歯肉との間の境界を色の塗布によって容易に認識することができる。また、ユーザ1は、ラベリング時に様々な角度から三次元画像を確認しながら色を塗布するが、視点の角度を変更した場合でも、ラベリング作業中の歯牙に対してどの範囲まで塗布が完了したのかを認識し易くなる。
【0119】
なお、本実施の形態においては、ユーザ1が自身の知見に基づき手作業で三次元画像に含まれる各歯牙に色を塗布しているが、一部の作業をソフトウェアで補うことも可能である。たとえば、ラベリング対象である歯牙と当該歯牙に隣接する歯牙との間の境界、およびラベリング対象である歯牙と歯肉との間の境界を、エッジ検出によって特定してもよく、このようにすれば、ラベリング対象である歯牙のみを抽出することができる。
【0120】
なお、図9および図10に示す学習用データセット116の生成は、サーバ装置500が保持する学習用データセット516の生成についても適用可能である。たとえば、図10に示す学習用データセット116を、サーバ装置500が保持する学習用データセット516に適用してもよいし、図11に示す色分類データ118を、サーバ装置500が保持する色分類データ518に適用してもよい。
【0121】
[学習済モデルの生成]
図12を参照しながら、学習済モデルの生成の一例を説明する。図12は、本実施の形態に係る学習用データセット116に基づく学習済モデルの生成を説明するための模式図である。
【0122】
図12に示すように、学習用データセット116は、当該学習用データセット116を生成する際にスキャン対象となった対象者2のプロファイルに基づきカテゴリごとに分類することができる。たとえば、年齢(未成年者,現役世代,高齢者)、性別(男性,女性)、人種(アジア人,欧米人,アフリカ系)、身長(150cm未満,150以上)、体重(50kg未満,50kg以上)、および居住地(日本在住,日本以外に在住)のそれぞれに対して、該当する対象者2の歯牙を含む三次元データから生成された学習用データセットを割り当てることができる。なお、各カテゴリの層別は、適宜設定可能である。たとえば、年齢に関しては、所定の年齢差ごと(この場合は3歳ごと)、具体的には、0歳~3歳、4歳~6歳、7歳~9歳、…といったように、より詳細に層別することができる。
【0123】
識別装置100は、カテゴリごとに分類することができる複数の学習用データセット116a~116oを用いて推定モデル114を学習させることで、学習済モデルを生成する。なお、学習用データは、カテゴリの分類の仕方によっては重複することがあるが、学習用データが重複する場合には、いずれかの学習用データのみを用いて推定モデル114を学習させればよい。
【0124】
一般的に歯牙の形状は、年齢、性別、人種、身長、体重、および居住地など、遺伝または生活環境などに依存してその特徴が異なる。たとえば、一般的に、大人の永久歯は、子供の乳歯よりも大きく、両者でその形状が異なる。また、一般的に、男性の歯牙は、女性の歯牙よりも大きく、両者でその形状が異なる。また、一般的に、欧米人の歯牙は、硬い肉やパンを噛み切り易いように先端が尖る傾向があるのに対して、日本人の歯牙は、柔らかい米や野菜をすり潰し易いように先端が滑らかになる傾向がある。このため、本実施の形態のように、プロファイルデータに基づき学習処理を実行すれば、遺伝または生活環境などを考慮して歯牙の種類を識別することができる学習済モデルを生成することができる。
【0125】
なお、図12に示す学習済モデルの生成は、サーバ装置500が保持する学習済モデルの生成についても適用可能である。たとえば、図12に示す学習用データセット116a~116oを、サーバ装置500が保持する学習用データセット516に適用してもよいし、図10に示す推定モデル114を、サーバ装置500が保持する推定モデル514に適用してもよい。
【0126】
[推定モデルの学習]
図13図15を参照しながら、推定モデルの学習について説明する。識別部1101によって実行される推定アルゴリズムとしては、たとえば、4本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズム、2本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズム、および1本の歯牙を推定するための推定アルゴリズムがある。
【0127】
4本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズムは、たとえば、下顎の場合は、左下4番~7番の隣接歯牙、左下3番~6番の隣接歯牙、左下2番~5番の隣接歯牙、左下1番~4番の隣接歯牙、右下1番と左下1番~3番の隣接歯牙、右下1番および2番と左下1番および2番の隣接歯牙、右下1番~3番と左下1番の隣接歯牙、右下1番~4番の隣接歯牙、右下2番~5番の隣接歯牙、右下3番~6番の隣接歯牙、右下4番~7番の隣接歯牙といった4本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための全てのパターンの推定アルゴリズムを含む。さらに、4本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズムは、上顎の場合も同様に、全てのパターンの推定アルゴリズムを含む。
【0128】
2本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズムは、たとえば、左下4番~7番の隣接歯牙の場合は、左下4番および5番の隣接歯牙、左下5番および6番の隣接歯牙、左下6番および7番の隣接歯牙といった2本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための全てのパターンの推定アルゴリズムを含む。さらに、2本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズムは、左下3番~6番の隣接歯牙、左下2番~5番の隣接歯牙、左下1番~4番の隣接歯牙、右下1番と左下1番~3番の隣接歯牙、右下1番および2番と左下1番および2番の隣接歯牙、右下1番~3番と左下1番の隣接歯牙、右下1番~4番の隣接歯牙、右下2番~5番の隣接歯牙、右下3番~6番の隣接歯牙、右下4番~7番の隣接歯牙、上顎の場合も同様に、全てのパターンの推定アルゴリズムを含む。
【0129】
1本の歯牙を推定するための推定アルゴリズムは、たとえば、左下6番および7番の隣接歯牙の場合は、左下6番および7番の各歯牙といった1本の歯牙を推定するための全てのパターンの推定アルゴリズムを含む。さらに、1本の歯牙を推定するための推定アルゴリズムは、左下5番および6番の隣接歯牙、左下4番および5番の隣接歯牙、左下3番および4番の隣接歯牙、左下2番および3番の隣接歯牙、左下1番および2番の隣接歯牙、右下1番および左下1番の隣接歯牙、右下1番および右下2番の隣接歯牙、右下2番および右下3番の隣接歯牙、右下3番および右下4番の隣接歯牙、右下4番および5番の隣接歯牙、右下5番および6番の隣接歯牙、右下6番および7番の隣接歯牙、上顎の場合も同様に、全てのパターンの推定アルゴリズムを含む。
【0130】
識別部1101は、まず、三次元スキャナ200によって所定周期(数msecごと)でスキャンされた3次元データに基づいて、4本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズムを実行する。具体的には、三次元スキャナ200によって1本の歯牙のみスキャンされた場合、識別部1101は、未だ識別のためのデータが揃っていないために、隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズムを実行せず、識別結果を出力しない、または、識別結果を出力できない旨の情報を出力する。三次元スキャナ200によるスキャンが進み、やがて4本以上の歯牙がスキャンされた場合、または、5本の歯牙の80%程度がスキャンされた場合、あるいは、4本以上の歯牙分のデータ量を取得したと推定できる所定の累積データ量が入力された場合、識別部1101は、上述したような4本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズムを実行し、識別結果を出力する。その後、識別部1101は、4本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズムの実行によって得られた識別結果に基づき、上述したような2本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズムを実行し、識別結果を出力する。その後、識別部1101は、2本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズムの実行によって得られた識別結果に基づき、上述したような1本の歯牙を推定するための推定アルゴリズムを実行し、識別結果を出力する。
【0131】
図13は、本実施の形態に係る推定モデル114のうちの1段目の推定モデル1140aの学習を説明するための模式図である。図13に示すように、識別部1130aは、学習用データセット116に含まれる学習用データのうち、3番~7番の隣接歯牙および歯肉を構成する複数の点の三次元データが入力されると、当該三次元データに基づき、学習処理によって推定モデル1140aを学習する。
【0132】
具体的には、識別部1130aは、3番~7番の隣接歯牙および歯肉を構成する複数の点の三次元データが入力されると、当該三次元データに対してノイズ除去などの前処理を行う。次に、識別部1130aは、4本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズムを実行することで、3番~7番の隣接歯牙のうち、4本の隣接歯牙(たとえば、4番~7番の隣接歯牙、3番~6番の隣接歯牙)の特徴を抽出する。次に、識別部1130aは、識別処理によって、特徴が抽出された4本の隣接歯牙を識別する。次に、識別部1130aは、識別処理によって得られた識別結果(たとえば、推定された色情報)と、学習用データに含まれる正解データである色情報(たとえば、4番~7番の隣接歯牙に対応する色a、3番~6番の隣接歯牙に対応する色b)とが一致するか否かを判定し、その判定結果に基づき推定モデル1140aに含まれるパラメータを調整する。
【0133】
なお、識別部1130aは、3番~7番以外の5本の歯牙からなる隣接歯牙(たとえば、2番~6番の隣接歯牙や1番~5番の隣接歯牙)を構成する複数の点の三次元データが入力された場合も、上記と同様の学習処理を実行することで、推定モデル1140aに含まれるパラメータを調整する。
【0134】
図14に示すように、識別部1130bは、学習用データセット116に含まれる学習用データのうち、4番~7番の隣接歯牙を構成する複数の点の三次元データが入力されると、当該三次元データに基づき、学習処理によって推定モデル1140bを学習する。
【0135】
識別部1130bは、4番~7番の隣接歯牙を構成する複数の点の三次元データが入力されると、当該三次元データに対してノイズ除去などの前処理を行う。次に、識別部1130bは、2本の歯牙からなる隣接歯牙を推定するための推定アルゴリズムを実行することで、4番~7番の隣接歯牙のうち、2本の隣接歯牙(たとえば、6番および7番の隣接歯牙、5番および6番の隣接歯牙、4番および5番の隣接歯牙)の特徴を抽出する。次に、識別部1130bは、識別処理によって、特徴が抽出された2本の隣接歯牙を識別する。次に、識別部1130bは、識別処理によって得られた識別結果(たとえば、推定された色情報)と、学習用データに含まれる正解データである色情報(たとえば、6番および7番の隣接歯牙に対応する色c、5番および6番の隣接歯牙に対応する色d、4番および5番の隣接歯牙に対応する色e)とが一致するか否かを判定し、その判定結果に基づき推定モデル1140bに含まれるパラメータを調整する。
【0136】
なお、識別部1130bは、4番~7番以外の4本の歯牙からなる隣接歯牙(たとえば、3番~6番の隣接歯牙)を構成する複数の点の三次元データが入力された場合も、上記と同様の学習処理を実行することで、推定モデル1140bに含まれるパラメータを調整する。
【0137】
図15に示すように、識別部1130cは、学習用データセット116に含まれる学習用データのうち、6番および7番の隣接歯牙を構成する複数の点の三次元データが入力されると、当該三次元データに基づき、学習処理によって推定モデル1140cを学習する。
【0138】
識別部1130cは、6番および7番の隣接歯牙を構成する複数の点の三次元データが入力されると、当該三次元データに対してノイズ除去などの前処理を行う。次に、識別部1130cは、1本の歯牙を推定するための推定アルゴリズムを実行することで、6番および7番の隣接歯牙のうち、1本の歯牙(たとえば、7番の歯牙、6番の歯牙)の特徴を抽出する。次に、識別部1130cは、識別処理によって、特徴が抽出された1本の歯牙の種類を識別する。次に、識別部1130cは、識別処理によって得られた識別結果(たとえば、推定された色情報)と、学習用データに含まれる正解データである色情報(たとえば、7番の歯牙に対応する色g、6番の歯牙に対応する色h)とが一致するか否かを判定し、その判定結果に基づき推定モデル1140cに含まれるパラメータを調整する。
【0139】
なお、識別部1130cは、6番および7番以外の2本の歯牙からなる隣接歯牙(たとえば、5番および6番の隣接歯牙、4番および5番の隣接歯牙)を構成する複数の点の三次元データが入力された場合も、上記と同様の学習処理を実行することで、推定モデル1140cに含まれるパラメータを調整する。
【0140】
このようにして、第1識別部1131(本実施形態では識別部1130a,1130b)による第1推定モデル1141(本実施形態では推定モデル1140a,1140b)の学習、および第2識別部1132(本実施形態では識別部1130c)による第2推定モデル1142(本実施形態では推定モデル1140c)の学習が行われる。
【0141】
なお、上述した例では、「第1識別部」として識別部1130aおよび識別部1130bを例示したが、識別装置100は、識別部1130aを有しなくてもよい。たとえば、識別装置100は、「第1識別部」として入力部1102に接続された識別部1130bを有し、「第2識別部」として識別部1130bに接続された識別部1130cを有していてもよい。この場合、識別部1130bに入力される三次元データに対応する4番~7番の隣接歯牙および3番~6番の隣接歯牙は、「第1隣接歯牙」に対応する。また、識別部1130cに入力される三次元データに対応する3番および4番の隣接歯牙、4番および5番の隣接歯牙、4番および6番の隣接歯牙、6番および7番の隣接歯牙は、「第2隣接歯牙」に対応する。
【0142】
[識別装置の学習処理]
図16を参照しながら、識別装置100が実行する学習処理について説明する。図16は、本実施の形態に係る識別装置100が実行する学習処理の一例を説明するためのフローチャートである。図16に示す各ステップは、識別装置100の演算装置130がOS127および学習用プログラム121を実行することで実現される。なお、図16に示す学習処理は、複数の推定モデル1140a,1140b,1140cの各々に対して行われる。
【0143】
図16に示すように、識別装置100は、学習用データセット116の中から、学習に用いる学習用データを選択する(S1)。具体的には、識別装置100は、図12に示す学習用データセット群に含まれる学習用データセット116の中から、一または複数の学習用データを選択する。なお、識別装置100は、学習用データを自動で選択するものに限らず、ユーザ1が選択した学習用データを学習処理に用いてもよい。
【0144】
識別装置100は、選択した学習用データに含まれる三次元データ、および当該学習用データを生成する際にスキャン対象となった対象者2のプロファイルデータを推定モデル114に入力する(S2)。このとき、識別装置100には、三次元データにラベリングされた正解データは入力されない。識別装置100は、三次元データに対応する1つの歯牙の特徴または複数の歯牙を含む隣接歯牙の特徴に基づき、推定モデル114を用いて当該1つの歯牙または隣接歯牙を識別する識別処理を実行する(S3)。識別処理において、識別装置100は、三次元データに加えてプロファイルデータに基づき、推定モデル114を用いて1つの歯牙または隣接歯牙を識別する。
【0145】
識別装置100は、識別処理による識別結果と、学習処理に用いた学習用データに対応する正解データとの誤差に基づき、推定モデル114のパラメータ1144を更新する(S4)。
【0146】
たとえば、識別装置100は、特定の1つの歯牙を構成する複数の点の位置情報に基づき識別した結果、当該特定の1つの歯牙に対応する色情報を推定する。そして、識別装置100は、学習用データに含まれる当該特定の1つの歯牙に対応する色情報(正解データ)と、自身が推定した色情報とを比較し、一致すれば推定モデル114のパラメータを維持する一方で、不正解であれば両者が一致するように推定モデル114のパラメータを更新する。あるいは、識別装置100は、特定の複数の歯牙を含む隣接歯牙を構成する複数の点の位置情報に基づき識別した結果、当該特定の隣接歯牙に対応する色情報を推定する。そして、識別装置100は、学習用データに含まれる当該特定の隣接歯牙に対応する色情報(正解データ)と、自身が推定した色情報とを比較し、一致すれば推定モデル114のパラメータを維持する一方で、不正解であれば両者が一致するように推定モデル114のパラメータを更新する。
【0147】
なお、識別装置100は、特定の歯牙の位置情報に基づき識別した結果、当該特定の歯牙に対応する色情報を推定し、色分類データ118に基づき当該色情報に対応する歯牙の種類や歯牙の番号(正解データ)を特定してもよい。識別装置100は、学習用データに含まれる当該特定の歯牙に対応する色情報に割り当てられた歯牙の種類や歯牙の番号(正解データ)と、自身が推定した歯牙の種類や歯牙の番号とを比較し、一致すれば推定モデル114のパラメータを維持する一方で、不正解であれば両者が一致するように推定モデル114のパラメータを更新してもよい。
【0148】
次に、識別装置100は、全ての学習用データに基づき学習したか否かを判定する(S5)。識別装置100は、全ての学習用データに基づき学習していない場合(S5でNO)、S1の処理に戻る。
【0149】
一方、識別装置100は、全ての学習用データに基づき学習した場合(S5でYES)、学習済みの推定モデル114を学習済モデルとして記憶し(S6)、本処理を終了する。
【0150】
このように、識別装置100は、学習用データに含まれる三次元データに関連付けられた1つの歯牙の種類に対応する歯牙情報(色情報、歯牙の名称、または歯牙の番号など)、および複数の歯牙を含む隣接歯牙に対応する歯牙情報(色情報、歯牙の名称、または歯牙の番号など)を正解データとして、識別処理による当該三次元データを用いた歯牙の識別結果に基づき、推定モデル114を学習することで、学習済モデルを生成することができる。
【0151】
さらに、識別装置100は、学習処理において、学習用データに加えてプロファイルデータを考慮して推定モデル114を学習するため、対象者2のプロファイルを考慮した学習済モデルを生成することができる。なお、識別装置100は、プロファイルデータを用いることなく、各推定モデル114(1140a,1140b,1140c)に対して学習処理を実行してもよい。
【0152】
[サーバ装置の学習処理]
図17を参照しながら、サーバ装置500が実行する学習処理について説明する。図17は、本実施の形態に係るサーバ装置500が実行する学習処理の一例を説明するためのフローチャートである。図17に示す各ステップは、サーバ装置500の演算装置530がOS527および学習用プログラム521を実行することで実現される。なお、図17に示す学習処理は、複数の推定モデルの各々に対して行われる。
【0153】
図17に示すように、サーバ装置500は、学習用データセットの中から、学習に用いる学習用データを選択する(S501)。ここで、学習用データは、サーバ装置500によって蓄積して記憶されたビッグデータを利用して生成されたものであってもよい。たとえば、サーバ装置500は、各ローカルA~Cの識別装置100および歯科技工所から取得したスキャン情報に含まれる三次元データを利用して学習用データを生成しておき、生成した当該学習用データを用いて学習処理を実行してもよい。なお、サーバ装置500は、学習用データを自動で選択するものに限らず、ユーザ1が選択した学習用データを学習処理に用いてもよい。
【0154】
サーバ装置500は、選択した学習用データに含まれる三次元データ、および当該学習用データを生成する際にスキャン対象となった対象者2のプロファイルデータを推定モデル514に入力する(S502)。このとき、サーバ装置500には、三次元データにラベリングされた正解データは入力されない。サーバ装置500は、三次元データに対応する1つの歯牙の特徴または複数の歯牙を含む隣接歯牙の特徴に基づき、推定モデル514を用いて当該1つの歯牙または隣接歯牙を識別する識別処理を実行する(S503)。識別処理において、サーバ装置500は、三次元データに加えてプロファイルデータに基づき、推定モデル514を用いて1つの歯牙または隣接歯牙を識別する。
【0155】
サーバ装置500は、識別処理による識別結果と、学習に用いた学習用データに対応する正解データとの誤差に基づき、推定モデル514のパラメータを更新する(S504)。
【0156】
たとえば、サーバ装置500は、特定の歯牙の位置情報に基づき識別した結果、当該特定の歯牙に対応する色情報を推定する。サーバ装置500は、学習用データセットに含まれる当該特定の歯牙に対応する色情報(正解データ)と、自身が推定した色情報とを比較し、一致すれば推定モデル514のパラメータを維持する一方で、不正解であれば両者が一致するように推定モデル514のパラメータを更新する。
【0157】
あるいは、サーバ装置500は、特定の1つの歯牙を構成する複数の点の位置情報に基づき識別した結果、当該特定の1つの歯牙に対応する色情報を推定する。そして、サーバ装置500は、学習用データに含まれる当該特定の1つの歯牙に対応する色情報(正解データ)と、自身が推定した色情報とを比較し、一致すれば推定モデル514のパラメータを維持する一方で、不正解であれば両者が一致するように推定モデル514のパラメータを更新する。あるいは、サーバ装置500は、特定の複数の歯牙を含む隣接歯牙を構成する複数の点の位置情報に基づき識別した結果、当該特定の隣接歯牙に対応する色情報を推定する。そして、サーバ装置500は、学習用データに含まれる当該特定の隣接歯牙に対応する色情報(正解データ)と、自身が推定した色情報とを比較し、一致すれば推定モデル514のパラメータを維持する一方で、不正解であれば両者が一致するように推定モデル514のパラメータを更新する。
【0158】
なお、サーバ装置500は、特定の歯牙の位置情報に基づき識別した結果、当該特定の歯牙に対応する色情報を推定し、色分類データ518に基づき当該色情報に対応する歯牙の種類や歯牙の番号(正解データ)を特定してもよい。サーバ装置500は、学習用データに含まれる当該特定の歯牙に対応する色情報に割り当てられた歯牙の種類や歯牙の番号(正解データ)と、自身が推定した歯牙の種類や歯牙の番号とを比較し、一致すれば推定モデル514のパラメータを維持する一方で、不正解であれば両者が一致するように推定モデル514のパラメータを更新してもよい。
【0159】
次に、サーバ装置500は、全ての学習用データに基づき学習したか否かを判定する(S505)。サーバ装置500は、全ての学習用データに基づき学習していない場合(S505でNO)、S501の処理に戻る。
【0160】
一方、サーバ装置500は、全ての学習用データに基づき学習した場合(S505でYES)、学習済みの推定モデル514を学習済モデルとして記憶する(S506)。その後、サーバ装置500は、生成した学習済モデルを各ローカルの識別装置100に送信し(S507)、本処理を終了する。
【0161】
このように、サーバ装置500は、学習用データに含まれる三次元データに関連付けられた1つの歯牙の種類に対応する歯牙情報(色情報、歯牙の名称、または歯牙の番号など)、および複数の歯牙を含む隣接歯牙に対応する歯牙情報(色情報、歯牙の名称、または歯牙の番号など)を正解データとして、識別処理による当該三次元データを用いた当該歯牙の識別結果に基づき、推定モデル514を学習することで、学習済モデルを生成することができる。
【0162】
また、サーバ装置500は、学習処理において、学習用データに加えてプロファイルデータを考慮して推定モデル514を学習するため、対象者2のプロファイルを考慮した学習済モデルを生成することができる。なお、サーバ装置500は、プロファイルデータを用いることなく、各推定モデル514に対して学習処理を実行してもよい。
【0163】
さらに、サーバ装置500は、学習処理に用いる学習用データとして、各ローカルA~Cの識別装置100および歯科技工所から取得したスキャン情報に含まれる三次元データを利用しているため、識別装置100ごとに実行される学習処理よりも、より多くの学習用データに基づいて学習処理を実行することができ、より精度良く歯牙の種類を識別することができる学習済モデルを生成することができる。
【0164】
[識別装置のサービス提供処理]
図18を参照しながら、識別装置100が実行するサービス提供処理について説明する。図18は、本実施の形態に係る識別装置100が実行するサービス提供処理の一例を説明するためのフローチャートである。図18に示す各ステップは、識別装置100の演算装置130がOS127および識別用プログラム120を実行することで実現される。
【0165】
図18に示すように、識別装置100は、三次元データが入力されたか否かを判定する(S41)。たとえば、識別装置100は、識別処理を実行するのに十分な量の三次元データが入力されたか否かを判定する。識別装置100は、十分な量の三次元データが入力されていない場合(S41でNO)、本処理を終了する。
【0166】
一方、識別装置100は、十分な量の三次元データが入力された場合(S41でYES)、ユーザ1によって対象者2のプロファイルデータが入力されているか否かを判定する(S42)。識別装置100は、プロファイルデータが入力されていない場合(S42でNO)、三次元データを1段目の学習済モデル(たとえば、学習済みの推定モデル1140a)に入力する(S43)。一方、識別装置100は、プロファイルデータが入力されている場合(S42でYES)、三次元データおよびプロファイルデータを1段目の学習済モデルに入力する(S44)。なお、このとき使用する学習済モデルは、図16に示す学習処理で識別装置100によって生成された学習済モデルに限らず、図17に示す学習処理でサーバ装置500によって生成された学習済モデルであってもよい。
【0167】
S43およびS44の後、識別装置100は、入力された三次元データに対応する複数の歯牙の特徴に基づき、1段目の学習済モデルを用いた識別処理によって、入力された三次元データに対応する複数の歯牙のうち、一部の複数の歯牙を含む隣接歯牙を識別する(S45)。このとき、S42でプロファイルデータが1段目の学習済モデルに入力されていた場合、識別装置100は、三次元データに加えてプロファイルデータに基づき、学習済モデルを用いて当該歯牙の種類を識別する。この場合、三次元データのみに基づき学習済モデルを用いて歯牙の種類を識別するよりも、より精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0168】
次に、識別装置100は、1段目の学習済みモデルによる識別結果を2段目の学習済モデル(たとえば、学習済みの推定モデル1140b)に入力する(S46)。識別装置100は、1段目の学習済モデルによる識別結果に基づき、2段目の学習済モデルを用いた識別処理によって、1段目の学習済みモデルによって識別された複数の歯牙のうち、一部の複数の歯牙を含む隣接歯牙を識別する(S47)。
【0169】
次に、識別装置100は、2段目の学習済みモデルによる識別結果を3段目の学習済モデル(たとえば、学習済みの推定モデル1140c)に入力する(S48)。識別装置100は、2段目の学習済モデルによる識別結果に基づき、3段目の学習済モデルを用いた識別処理によって、2段目の学習済みモデルによって識別された複数の歯牙のうち、一部の歯牙の種類を識別する(S49)。
【0170】
その後、識別装置100は、3段目の学習済モデルを用いた識別処理によって得られた識別結果を、ディスプレイ300、スピーカ400、およびサーバ装置500などに出力し(S50)、本処理を終了する。
【0171】
このように、識別装置100は、入力された三次元データに対応する複数の歯牙の特徴に基づき、学習済モデルを用いて当該歯牙の種類を識別するため、ユーザ自身の知見に頼って歯牙の種類を識別するよりも、精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0172】
また、識別装置100は、多段式になった複数の推定モデル(学習済みモデル)を用いて隣接する歯牙の数を段階的に絞りながら歯牙を識別するため、数多くの歯牙が隣接する隣接歯牙に対応する三次元データに基づき各歯牙の種類を識別するよりも、精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0173】
さらに、識別装置100は、識別処理において、入力された三次元データに加えてプロファイルデータを考慮して歯牙の種類を識別するため、より精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0174】
[主な開示]
以上のように、本実施の形態では以下のような開示を含む。
【0175】
識別装置100は、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データが入力される入力部1102と、入力部1102から入力された三次元データに基づき、隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する識別部1101と、識別部1101による識別結果を出力する出力部1103とを備え、識別部1101は、複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙(たとえば、3番~6番の歯牙を含む隣接歯牙、4番~7番の歯牙を含む隣接歯牙)を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワーク1151を含む第1推定モデル1141とに基づき、当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙(たとえば、6番および7番の隣接歯牙、5番および6番の隣接歯牙、4番および5番の隣接歯牙、3番および4番の隣接歯牙)を識別する第1識別部1131と、第1識別部1131による識別結果と、第2ニューラルネットワーク1152を含む第2推定モデル1142とに基づき、第2隣接歯牙に含まれる歯牙(たとえば、3番~6番の各歯牙、4番~7番の各歯牙)の種類を識別する第2識別部1132とを含む。
【0176】
なお、第1識別部1131は、複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙(たとえば、3番~6番の歯牙を含む隣接歯牙、4番~7番の歯牙を含む隣接歯牙)を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワーク1151を含む第1推定モデル1141とに基づき、当該隣接歯牙と同一の数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙(たとえば、3番~6番の隣接歯牙、4番~7番の隣接歯牙)を識別するものであってもよい。
【0177】
これにより、識別装置100は、多段式の複数の推定モデル114(第1推定モデル1141,第2推定モデル1142、第1学習済モデル,第2学習済モデル)を用いて、隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データに基づき、当該隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別することができるため、ユーザ自身の知見に頼って歯牙の種類を識別するよりも、精度良く歯牙の種類を識別することができる。さらに、識別装置100は、多段式になった複数の推定モデル114を用いて隣接する歯牙の数を段階的に絞りながら歯牙を識別するため、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙に対応する三次元データに基づき各歯牙の種類を一度に識別するよりも、精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0178】
なお、識別装置の識別部は、第1識別部および第2識別部の2段の識別部であってもよいし、第1識別部および第2識別部以外の識別部を含んだ3段以上の多段式の識別部であってもよい。たとえば、第1識別部は、入力部1102の直後で当該入力部1102に接続された識別部に限らず、入力部1102の直後の他の識別部(たとえば、図8に示す識別部1130a)に接続された識別部(たとえば、図8に示す識別部1130b)を指すものであってもよい。
【0179】
第1識別部1131は、第1隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1推定モデル1141とに基づき、第2隣接歯牙として複数の第2隣接歯牙(たとえば、6番および7番の隣接歯牙、5番および6番の隣接歯牙、4番および5番の隣接歯牙、3番および4番の隣接歯牙)のそれぞれを識別し、複数の第2隣接歯牙は、互いに重複する歯牙(たとえば、4番~6番の各歯牙)を含み、第2識別部1132は、第1識別部1131による識別結果と、第2推定モデル1142とに基づき、複数の第2隣接歯牙のそれぞれに含まれる重複する歯牙の種類を識別する。
【0180】
これにより、識別装置100は、複数の第2隣接歯牙において重複する歯牙(4番~6番の各歯牙)については第2識別部1132を用いて複数回に亘って識別するため、より精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0181】
第1推定モデル1141は、第1隣接歯牙(たとえば、4番~7番の隣接歯牙)を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データに対応付けられた第2隣接歯牙(たとえば、4番および5番の隣接歯牙)と、当該三次元データを用いた当該第2隣接歯牙の推定結果とに基づき学習されたものであり、第2推定モデル1142は、第2隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データに対応付けられた当該第2隣接歯牙に含まれる歯牙の種類と、当該三次元データを用いた当該第2隣接歯牙に含まれる歯牙(たとえば、4番および5番の各歯牙)の種類の推定結果とに基づき学習されたものである。
【0182】
なお、推定モデル114の学習は、サーバ装置500によって実行される推定モデル514の学習によって実現されるものであってもよい。
【0183】
入力部1102から入力された三次元データは、口腔内の歯牙および歯肉を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む。
【0184】
これにより、識別装置100は、口腔内において隣接する複数の歯牙および歯肉に対応する三次元データを、推定モデル114(学習済モデル)に入力することで、当該複数の歯牙のそれぞれの種類を識別することができるため、ユーザ自身の知見に頼って歯牙の種類を1つ1つ識別するよりも、精度良くかつスムーズに歯牙の種類を識別することができる。
【0185】
出力部1103は、色、文字、数字、および記号の少なくともいずれか1つを用いて第2識別部1132による識別結果を出力する。
【0186】
これにより、推定モデル114(学習済モデル)による識別結果が、色、文字、数字、および記号の少なくともいずれか1つを用いて出力されるため、ユーザ1は、直感的に識別結果を認識することができ、利便性が向上する。
【0187】
出力部1103は、識別部1101による識別結果をサーバ装置500に出力し、サーバ装置500は、識別部1101による識別結果を蓄積して記憶する。
【0188】
これにより、サーバ装置500によって識別結果が蓄積して記憶されることでビッグデータが形成されるため、ユーザ1は、たとえば、このようなビッグデータを用いて学習処理をサーバ装置500に実行させることで、より精度良く歯牙の種類を識別することができる学習済モデルを生成することができる。
【0189】
歯牙情報は、三次元データに対応する歯牙の種類に対応付けられた色、文字、数字、および記号のうちの少なくともいずれか1つの情報を含む。
【0190】
これにより、識別装置100は、歯牙の種類に対応付けられた色、文字、数字、および記号などに基づいて、より精度良く歯牙の種類を識別することができる学習済モデルを生成することができる。
【0191】
図9に示すように、歯牙情報は、三次元データに対応する複数の歯牙のそれぞれの範囲を特定可能に当該三次元データに関連付けられる。
【0192】
これにより、ユーザ1は、歯牙情報によって、複数の歯牙のそれぞれの範囲を特定することができるため、ラベリング時の利便性が向上する。
【0193】
図9に示すように、歯牙情報は、三次元データに対応する歯牙を構成する複数の点のそれぞれに関連付けられる。
【0194】
これにより、三次元データに対応する歯牙を構成する複数の点のそれぞれに対して歯牙情報が関連付けられるため、ユーザ1は、歯牙に対して細かく歯牙情報を関連付けることができ、ラベリング時の利便性が向上する。
【0195】
推定モデル114は、歯牙情報および識別部1101による識別結果に加えて、歯牙を有する対象者2に関する属性情報に基づき、学習される。
【0196】
これにより、識別装置100は、学習用データに加えて対象者2に関する属性情報に基づいて推定モデル114を学習させることができるため、対象者2の属性情報を考慮した学習済モデルを生成することができる。
【0197】
図12に示すように、属性情報は、対象者の年齢、性別、人種、身長、体重、および居住地のうちの少なくともいずれか1つの情報を含む。
【0198】
これにより、識別装置100は、学習用データに加えて、対象者の年齢、性別、人種、身長、体重、および居住地のうちの少なくともいずれか1つに基づいて推定モデル114を学習させることができるため、これら対象者2のプロファイルを考慮した学習済モデルを生成することができる。
【0199】
識別システム10は、三次元カメラを用いて、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データを取得する三次元スキャナ200と、三次元スキャナ200によって取得された三次元データに基づき、隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する識別装置100とを備え、識別装置100は、三次元スキャナによって取得された三次元データが入力される入力部1102と、入力部1102から入力された三次元データに基づき、隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別する識別部1101と、識別部1101による識別結果を出力する出力部1103とを含み、識別部1101は、複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙(たとえば、3番~6番の歯牙を含む隣接歯牙、4番~7番の歯牙を含む隣接歯牙)を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワーク1151を含む第1推定モデル1141とに基づき、当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙(たとえば、6番および7番の隣接歯牙、5番および6番の隣接歯牙、4番および5番の隣接歯牙、3番および4番の隣接歯牙)を識別する第1識別部1131と、第1識別部1131による識別結果と、第2ニューラルネットワーク1152を含む第2推定モデル1142とに基づき、第2隣接歯牙に含まれる歯牙(たとえば、3番~6番の各歯牙、4番~7番の各歯牙)の種類を識別する第2識別部1132とを有する。
【0200】
なお、第1識別部1131は、複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙(たとえば、3番~6番の歯牙を含む隣接歯牙、4番~7番の歯牙を含む隣接歯牙)を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワーク1151を含む第1推定モデル1141とに基づき、当該隣接歯牙と同一の数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙(たとえば、3番~6番の隣接歯牙、4番~7番の隣接歯牙)を識別するものであってもよい。
【0201】
これにより、識別システム10は、多段式の複数の推定モデル114(第1推定モデル1141,第2推定モデル1142、第1学習済モデル,第2学習済モデル)を備える識別装置100を用いて、隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データに基づき、当該隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別することができるため、ユーザ自身の知見に頼って歯牙の種類を識別するよりも、精度良く歯牙の種類を識別することができる。さらに、識別装置100は、多段式になった複数の推定モデル114を用いて隣接する歯牙の数を段階的に絞りながら歯牙を識別するため、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙に対応する三次元データに基づき各歯牙の種類を一度に識別するよりも、精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0202】
識別方法は、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データが入力されるステップ(S41)と、入力されるステップ(S41)によって入力された三次元データに基づき、隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別するステップ(S45~S49)と、識別するステップ(S45~S49)による識別結果を出力するステップ(S50)とを含み、識別するステップ(S45~S49)は、複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙(たとえば、3番~6番の歯牙を含む隣接歯牙、4番~7番の歯牙を含む隣接歯牙)を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワーク1151を含む第1推定モデル1141とに基づき、当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙(たとえば、6番および7番の隣接歯牙、5番および6番の隣接歯牙、4番および5番の隣接歯牙、3番および4番の隣接歯牙)を識別する第1識別ステップ(S45,S47)と、第1識別ステップ(S45,S47)による識別結果と、第2ニューラルネットワーク1152を含む第2推定モデル1142とに基づき、第2隣接歯牙に含まれる歯牙(たとえば、3番~6番の各歯牙、4番~7番の各歯牙)の種類を識別する第2識別ステップ(S49)とを有する。
【0203】
なお、第1識別ステップ(S45,S47)は、複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙(たとえば、3番~6番の歯牙を含む隣接歯牙、4番~7番の歯牙を含む隣接歯牙)を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワーク1151を含む第1推定モデル1141とに基づき、当該隣接歯牙と同一の数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙(たとえば、3番~6番の隣接歯牙、4番~7番の隣接歯牙)を識別するものであってもよい。
【0204】
これにより、識別方法は、多段式の複数の推定モデル114(第1推定モデル1141,第2推定モデル1142、第1学習済モデル,第2学習済モデル)を用いて、隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データに基づき、当該隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別することができるため、ユーザ自身の知見に頼って歯牙の種類を識別するよりも、精度良く歯牙の種類を識別することができる。さらに、識別方法は、多段式になった複数の推定モデル114を用いて隣接する歯牙の数を段階的に絞りながら歯牙を識別するため、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙に対応する三次元データに基づき各歯牙の種類を一度に識別するよりも、精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0205】
識別用プログラム120は、演算装置130に、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データが入力されるステップ(S41)と、入力されるステップ(S41)によって入力された三次元データに基づき、隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別するステップ(S45~S49)と、識別するステップ(S45~S49)による識別結果を出力するステップ(S50)とを実行させ、識別するステップ(S45~S49)は、複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙(たとえば、3番~6番の歯牙を含む隣接歯牙、4番~7番の歯牙を含む隣接歯牙)を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワーク1151を含む第1推定モデル1141とに基づき、当該第1隣接歯牙よりも少ない数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙(たとえば、6番および7番の隣接歯牙、5番および6番の隣接歯牙、4番および5番の隣接歯牙、3番および4番の隣接歯牙)を識別する第1識別ステップ(S45,S47)と、第1識別ステップ(S45,S47)による識別結果と、第2ニューラルネットワーク1152を含む第2推定モデル1142とに基づき、第2隣接歯牙に含まれる歯牙(たとえば、3番~6番の各歯牙、4番~7番の各歯牙)の種類を識別する第2識別ステップ(S49)とを含む。
【0206】
なお、第1識別ステップ(S45,S47)は、複数の歯牙が隣接する第1隣接歯牙(たとえば、3番~6番の歯牙を含む隣接歯牙、4番~7番の歯牙を含む隣接歯牙)を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データと、第1ニューラルネットワーク1151を含む第1推定モデル1141とに基づき、当該隣接歯牙と同一の数の複数の歯牙が隣接する第2隣接歯牙(たとえば、3番~6番の隣接歯牙、4番~7番の隣接歯牙)を識別するものであってもよい。
【0207】
これにより、識別方法は、多段式の複数の推定モデル114(第1推定モデル1141,第2推定モデル1142、第1学習済モデル,第2学習済モデル)を用いて、隣接歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおける三次元の位置情報を含む三次元データに基づき、当該隣接歯牙に含まれる歯牙の種類を識別することができるため、ユーザ自身の知見に頼って歯牙の種類を識別するよりも、精度良く歯牙の種類を識別することができる。さらに、識別方法は、多段式になった複数の推定モデル114を用いて隣接する歯牙の数を段階的に絞りながら歯牙を識別するため、複数の歯牙が隣接する隣接歯牙に対応する三次元データに基づき各歯牙の種類を一度に識別するよりも、精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0208】
[変形例]
本開示は、上記の実施例に限られず、さらに種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な変形例について説明する。
【0209】
(サービス提供処理時学習処理)
本実施の形態に係る識別装置100は、図18に示すように、サービス提供処理において学習処理を実行するものではないが、図19に示すように、変形例に係る識別装置100aは、サービス提供処理において学習処理を実行するものであってもよい。識別装置100は、所謂、協調学習(Federated Learning)を行うものであってもよい。図19は、変形例に係る識別装置100aが実行するサービス提供処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、図19に示すS41~S50の処理は、図18に示すS41~S50の処理と同じであるため、図19においては、S50以降の処理についてのみ説明する。
【0210】
図14に示すように、識別装置100aは、S41~S50の処理によって識別結果を出力した後、サービス提供時学習処理を実行する。具体的には、識別装置100aは、S50の後、誤り訂正のための正解データが入力されたか否かを判定する(S61a)。たとえば、識別装置100aは、S50において出力された識別結果である歯牙の種類が、実際にスキャン対象であった歯牙の種類と異なる場合において、実際にスキャン対象であった歯牙の種類をユーザ1が入力することで誤りを訂正したか否かを判定する。
【0211】
識別装置100aは、誤り訂正のための正解データが入力されなかった場合(S61aでNO)、本処理を終了する。一方、識別装置100aは、誤り訂正のための正解データが入力された場合(S61aでYES)、識別結果と正解データとに基づき報酬を付与する(S62)。
【0212】
たとえば、識別結果と正解データとの解離度が小さければ小さいほど、付与する報酬として値の小さいマイナスポイントを与え、両者の解離度が大きければ大きいほど、付与する報酬として値の大きいマイナスポイントを与えればよい。具体的には、識別装置100aは、識別結果として出力した歯牙と、正解データとして入力された歯牙とが隣接していれば、値の小さいマイナスポイントを与え、両者が離れていれば、値の大きいマイナスポイントを与える。このように、識別装置100aは、識別結果と正解データとの解離度に応じて異なる値の報酬を付与する。なお、報酬はマイナスポイントに限らず、プラスポイントであってもよい。
【0213】
識別装置100aは、付与した報酬に基づき、学習済モデルのパラメータ(たとえば、第1パラメータ1161,第2パラメータ1162の少なくともいずれか一方)を更新する(S63)。たとえば、識別装置100aは、報酬として付与したマイナスポイントが0に近づくように学習済モデルのパラメータを更新する。その後、識別装置100aは、本処理を終了する。
【0214】
このように、変形例に係る識別装置100aは、サービス提供処理においても学習処理を実行するため、ユーザ1が使用すればするほど識別処理の精度が向上し、より精度良く歯牙の種類を識別することができる。このような処理は、所謂、協調学習の一種である。
【0215】
(カテゴリごとの学習済モデルの生成)
本実施の形態に係る識別装置100は、図12に示すように、カテゴリごとに分類された複数の学習用データセット116a~116oが含まれる学習用データセット群を用いて推定モデル114を学習させることで、1つの学習済モデルを生成するものであったが、図20に示すように、変形例に係る識別装置100bは、カテゴリごとに分類された複数の学習用データセットのそれぞれをカテゴリごとに用いて推定モデル114を学習させることで、カテゴリごとの学習済モデルを生成してもよい。図20は、変形例に係る学習用データセットに基づく学習済モデルの生成を説明するための模式図である。
【0216】
図20に示すように、学習用データセット116は、当該学習用データセット116を生成する際にスキャン対象となった対象者2のプロファイルに基づきカテゴリごとに分類されて保持される。たとえば、年齢(未成年者,現役世代,高齢者)、および性別(男性,女性)に基づき、6個のカテゴリに対して、学習用データセットが割り当てられる。
【0217】
識別装置100bは、カテゴリごとに分類された複数の学習用データセット116p~116uのそれぞれをカテゴリごとに用いて推定モデル114を学習させることで、カテゴリごとの学習済モデル114p~114uを生成する。
【0218】
このように、変形例に係る識別装置100bは、カテゴリごとに分類された複数の学習済モデル114p~114uを生成することができるため、対象者2のプロファイルに応じたより詳細な分析によって、より精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0219】
なお、図20に示す学習済モデル114p~114uの生成は、サーバ装置500が保持する学習済モデルの生成についても適用可能である。たとえば、図20に示す学習用データセット116p~116uを、サーバ装置500が保持する学習用データセット516に適用してもよいし、図20に示す学習済モデル114p~114uを、サーバ装置500が保持する学習済モデルに適用してもよい。
【0220】
(カテゴリごとの学習済モデルを用いたサービス提供処理)
図21を参照しながら、カテゴリごとの学習済モデル114p~114uを用いて識別装置100が実行するサービス提供処理について説明する。図21は、変形例に係る識別装置100bが実行するサービス提供処理の一例を説明するためのフローチャートである。図21に示す各ステップは、識別装置100bの演算装置130がOS127および識別用プログラム120を実行することで実現される。
【0221】
図21に示すように、識別装置100bは、三次元データが入力されたか否かを判定する(S41)。たとえば、識別装置100bは、識別処理を実行するのに十分な量の三次元データを取得したか否かを判定する。識別装置100bは、十分な量の三次元データを取得していない場合(S41でNO)、本処理を終了する。
【0222】
一方、識別装置100bは、十分な量の三次元データが入力された場合(S41でYES)、ユーザ1によって対象者2のプロファイルデータが入力されているか否かを判定する(S42)。その後、識別装置100bは、図20に示す学習済モデル群の中からプロファイルデータに対応する学習済モデルを選択する(S61b)。たとえば、対象者2が高齢者の女性であれば、識別装置100bは、学習済モデル114uを選択する。
【0223】
その後、識別装置100bは、三次元データを1段目の学習済モデル(たとえば、学習済みの推定モデル1140a)に入力する(S62b)。識別装置100は、入力された三次元データに対応する複数の歯牙の特徴に基づき、1段目の学習済モデルを用いた識別処理によって、入力された三次元データに対応する複数の歯牙のうち、一部の複数の歯牙を含む隣接歯牙を識別する(S45)。その後、S46~S50に示す処理は、図18に示したS46~S50に示す処理と同様の処理を実行する。
【0224】
このように、変形例に係る識別装置100bは、対象者2のプロファイルに最も適した学習済モデルを用いて識別処理を実行することができるため、対象者2のプロファイルに応じたより詳細な分析によって、より精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0225】
(プロファイルの出力)
本実施の形態に係る識別装置100は、識別処理によって、歯牙の種類を識別するものであった。しかし、図12および図20に示すように、対象者2のプロファイルを考慮した学習用データセットに基づき学習済モデルが生成されることに鑑みると、識別処理において三次元データが学習済モデルに入力されることで、当該三次元データに対応する歯牙の特徴に基づき、当該歯牙の所有者のプロファイルが識別結果として出力されてもよい。このようにすれば、災害や事件などで発見された身元不明の対象者2について、歯牙を含む三次元データからプロファイルを特定することができる。
【0226】
(学習処理)
本実施の形態に係る識別装置100は、学習処理によって推定モデル114のパラメータ(第1パラメータ1161,第2パラメータ1162)を更新するものであったが、パラメータを更新するものに限らず、学習処理によってニューラルネットワーク(第1ニューラルネットワーク1151,第2ニューラルネットワーク1152)が更新される(たとえば、ニューラルネットワークのアルゴリズムが更新される)ものであってもよい。また、本実施の形態に係るサーバ装置500は、学習処理によって推定モデル514のパラメータを更新するものであったが、パラメータを更新するものに限らず、学習処理によってニューラルネットワークが更新される(たとえば、ニューラルネットワークのアルゴリズムが更新される)ものであってもよい。
【0227】
(法線および/または色情報を用いた識別)
図22は、変形例に係る学習用データセットの一例を説明するための模式図である。変形例に係る識別装置100cは、三次元スキャナ200によって取得された三次元データに含まれる位置情報に加えて、歯牙の実際の色情報を推定モデル114に入力することで、推定モデル114を学習してもよい。
【0228】
たとえば、図9を用いて説明したように、学習用データセットには、推定モデル114に対する入力データである位置情報と、正解データである歯牙の種類に対応付けられた色分け後の色情報とが含まれているが、これに加えて、図22に示すように、色分け前の歯牙の色情報が含まれてもよい。そして、学習処理においては、推定モデル114に対して位置情報に加えて色分け前の歯牙の色情報が入力されることで、歯牙の実際の色情報も考慮して、学習済モデルが生成されてもよい。
【0229】
さらに、学習用データセットには、推定モデル114に対する入力データである位置情報と、正解データである歯牙の種類に対応付けられた色分け後の色情報とに加えて、図22に示すように、位置情報に基づき算出可能な法線情報が含まれてもよい。そして、学習処理においては、推定モデル114に対して位置情報に加えて法線情報が入力されることで、法線情報も考慮して、学習済モデルが生成されてもよい。
【0230】
法線情報は、たとえば、以下のようにして算出することができる。たとえば、歯牙を構成する複数の点のうち、一の点に注目し、その注目点の近傍の所定範囲内に属する複数の点に基づいて、注目点の法線を生成する。具体的には、注目点の法線は、注目点の近傍の所定範囲内に属する複数の点に対し、主成分分析を用いて生成することができる。主成分分析は、一般的に、分散共分散行列を計算することで実施することができる。この分散共分散行列の計算において固有ベクトルを計算し、主成分方向を注目点の法線として生成すればよい。なお、点群におけるある点に対する法線の生成方法は公知であるため、一般的に知られているその他の技術を用いてもよい。
【0231】
このように、学習用データセットに法線情報を加えることで、歯牙を構成する複数の点のそれぞれにおいて、各点が構成する歯牙のどちら側が表面なのかについても識別装置が学習することができる。また、注目点の近傍の所定範囲内に属する少数の点群のみに基づいて窪みなどの形状の特徴を識別装置が学習することができる。
【0232】
なお、学習用データセットには、色分け前の歯牙の色情報と法線情報との両方が含まれてもよいし、一方のみが含まれてもよい。
【0233】
次に、色分け前の歯牙の色情報および法線情報を含む学習用データセットに基づき学習された学習済モデルを用いて識別処理を実行するサービス提供処理について、図18を参照しながら説明する。図23は、変形例に係る識別装置100cが実行するサービス提供処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【0234】
図23に示すように、変形例に係る識別装置100cは、図18に示した識別装置100が実行するサービス提供処理と異なり、S61cの処理を追加で実行する。すなわち、識別装置100cは、三次元データが入力された後(S41でYES)、入力された三次元データに含まれる位置情報に基づき、歯牙を構成する複数の点における法線を生成する(S61c)。なお、入力された三次元データには、位置情報に加えて色分け前の歯牙の色情報が含まれている。
【0235】
その後、識別装置100cは、プロファイルデータが入力されていないと判定した場合(S42でNO)、三次元データ(位置情報,色情報)に加えて法線情報を1段目の学習済モデルに入力する(S62c)。一方、識別装置100cは、プロファイルデータが入力されたと判定した場合(S42でYES)、三次元データ(位置情報,色情報)およびプロファイルデータに加えて法線情報を学習済モデルに入力する(S63c)。そして、S62cおよびS63cの後、識別装置100cは、1段目の学習済モデルを用いて隣接歯牙を識別する識別処理を実行する(S45)。
【0236】
このように、変形例に係る識別装置100cは、色分け前の歯牙の色情報、および三次元データに対応する歯牙を構成する複数の点のそれぞれについて生成された法線にさらに基づき、歯牙の種類を識別してもよい。なお、識別装置100cには、色分け前の歯牙の色情報が入力される一方で、法線情報が入力されない場合であってもよい。あるいは、識別装置100cには、法線情報が入力される一方で、色分け前の歯牙の色情報が入力されない場合であってもよい。
【0237】
このように、識別装置100cは、色分け前の歯牙の色情報、および/または複数の点のそれぞれについて生成された法線に基づき歯牙の種類を識別することができるため、より精度良く歯牙の種類を識別することができる。
【0238】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。なお、本実施の形態で例示された構成および変形例で例示された構成は、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0239】
1 ユーザ、2 対象者、5 ネットワーク、10 識別システム、100,100a,100b,100c 識別装置、102 スキャナインターフェース、103,503 ディスプレイインターフェース、104 スピーカインターフェース、105,505 周辺機器インターフェース、106,506 ネットワークコントローラ、107,507 メディア読取装置、108 PCディスプレイ、109,509 メモリ、110,510 ストレージ、112,512 スキャン情報、114,514,1140a,1140b,1140c 推定モデル、116,516 学習用データセット、118,518 色分類データ、119,519 プロファイルデータ、120 識別用プログラム、121,521 学習用プログラム、122,522 三次元データ、124,524 識別結果、127,527 OS、130,530 演算装置、200 三次元スキャナ、300,350 ディスプレイ、400 スピーカ、500 サーバ装置、550 リムーバブルディスク、601,651 キーボード、602,652 マウス、1101,1130a,1130b,1130c 識別部、1102 入力部、1103 出力部、1119 プロファイル取得部、1131 第1識別部、1132 第2識別部、1141 第1推定モデル、1142 第2推定モデル、1144 パラメータ、1151 第1ニューラルネットワーク、1152 第2ニューラルネットワーク、1161 第1パラメータ、1162 第2パラメータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23