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特許7227216卵母細胞等の関心対象要素の機械的特性を評価する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-13
(45)【発行日】2023-02-21
(54)【発明の名称】卵母細胞等の関心対象要素の機械的特性を評価する装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/40 20060101AFI20230214BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230214BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
G01N3/40 A
C12M1/34 A
C12Q1/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020501848
(86)(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 FR2018050670
(87)【国際公開番号】W WO2018172688
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】1752330
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】501455677
【氏名又は名称】サントル・ナシオナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シアンティフィーク
(73)【特許権者】
【識別番号】519341647
【氏名又は名称】エコール ナシオナル スュペリユール ドゥ メカニック エ デ ミクロテクニク
(73)【特許権者】
【識別番号】519341636
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ドゥ フランシュ・コント
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】アバディ ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ガナ ラシャ
(72)【発明者】
【氏名】ピア エマニュエル
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-179018(JP,A)
【文献】特開昭62-152680(JP,A)
【文献】特開平05-322716(JP,A)
【文献】特開2011-193771(JP,A)
【文献】特表2011-516060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0216184(US,A1)
【文献】国際公開第2008/105919(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00-3/62
C12M 1/34
C12Q 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心対象要素(E)、有利には、おそらくは生物学的な性質の微小な関心対象要素、又はさらには細胞の機械的特徴を評価するための装置であって、
前記機械的特性評価装置(1)は、
-液体媒質を収容するのに適した容器(C)を受けるための支持手段(2)と、
-前記液体媒質内に前記関心対象要素(E)を保持するための保持手段(3)と、
-長さ方向軸(4’)を有し、前記液体媒質の液中に、前記長さ方向軸(4’)が水平に向けられた状態で浮遊したままであることが意図される押込み部材(4)であって、少なくとも1つの永久磁石(45)と、前記関心対象要素(E)を押し込むための1つの近位端(42)を含む押込み部材(4)と、
-前記押込み部材(4)がその中で移動されるように意図された磁場であって、前記容器(C)内の前記液体媒質の液中における該押込み部材(4)の浮遊に関与する磁場を生成するための磁気手段(5)と、ここで前記押込み部材(4)は、前記長さ方向軸(4’)と共軸方向に向けられた水平可動方向(x)に移動できるようにされており、
-前記磁気手段(5)を、前記押込み部材(4)を前記水平可動方向(x)に沿って並進移動させるようになされた前記磁場の変化を生じさせるように導くことが意図された制御手段(6)と、
-前記押込み部材(4)の前記近位端(42)が前記関心対象要素(E)への圧縮力を生成したときに、前記磁場の特性と前記水平可動方向(x)に沿った前記押込み部材(4)の並進移動の値(D)を考慮して、前記関心対象要素(E)の機械的特性を特定するための手段(7)と、
を含む関心対象要素(E)の機械的特性を評価する装置。
【請求項2】
前記押込み部材(4)は、
-相互に同軸で同じ方向NS-NSの磁場を有して、
-浮力中心が重力中心と一致するように意図される水平平衡位置に
配置された少なくとも2つの永久磁石(45)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の関心対象要素(E)の機械的特性を評価する装置。
【請求項3】
前記押込み部材(4)は、空気で満たされ、前記少なくとも1つの永久磁石(45)を収容する密封チャンバ(44)を画定する毛細管からなる本体(41)を含むことを特徴とする、請求項1又は2の何れか1項に記載の関心対象要素(E)の機械的特性を評価する装置。
【請求項4】
前記容器(C)は、その自由上縁(C21)が上開口(C22)を画定する側壁(C2)に接続された底(C1)を含む、例えばペトリ皿であることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の関心対象要素(E)の機械的特性を評価する装置。
【請求項5】
前記磁気手段(5)は、
-水平軸(A)に沿って同軸に、同じ方向NS-NSに配置された少なくとも2つの永久磁石(51、52)と、
-前記永久磁石(51、52)を並進移動させるための手段(53)と、
を含むことを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の関心対象要素(E)の機械的特性を評価する装置。
【請求項6】
前記少なくとも2つの永久磁石(51、52)は、各々が電磁コイル(54、55)の中に配置され、
前記電磁コイル(54、55)は前記水平軸(A)に沿って同軸に配置され、前記電磁コイル(54、55)に電源供給する電流を導くための手段(56)に接続されることを特徴とする、請求項5に記載の関心対象要素(E)の機械的特性を評価する装置。
【請求項7】
前記少なくとも2つの永久磁石(51、52)と、場合に応じて、前記少なくとも2つの電磁コイル(54、55)は、前記容器(C)のそれぞれの側に、相互に一定の距離dで配置されることを特徴とする、請求項6に記載の関心対象要素(E)の機械的特性を評価する装置。
【請求項8】
前記保持手段(3)は吸引ピペット(31)を含むことを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載の関心対象要素(E)の機械的特性を評価する装置。
【請求項9】
前記関心対象要素の前記機械的特性を特定するための前記手段(7)は、前記水平可動方向(x)に沿った前記押込み部材(4)の並進移動の値(D)を特定するための手段(71、72)を含むことを特徴とする、請求項1~8の何れか1項に記載の関心対象要素(E)の機械的特性を評価する装置。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の装置を備える、生殖補助医療用注入ステーション。
【請求項11】
関心対象要素(E)、有利には、おそらくは生物学的性質の微小な関心対象要素(E)、又はさらには細胞の機械的特性を、請求項1~9の何れか1項に記載の装置(1)を実装することによって調査する方法であって、
a)一方で、前記関心対象要素(E)が前記保持手段(3)により前記容器(C)の前記液体媒質中に保持され、他方で、前記磁気手段(5)が、前記押込み部材(4)を前記関心対象要素(E)から離れた初期位置で、前記容器(C)内の前記液体媒質の液中に浮遊しての静止状態に保持できる初期磁場(P1)を生成する準備工程と、
b)前記磁気手段(5)が、磁場を前記初期磁場(P1)から変調磁場(P2)へと変調させるように導かれて、前記押込み部材(4)を前記水平可動方向(x)に沿って移動するように操作されて、前記容器(C)内の前記液体媒質の液中に浮遊している前記押込み部材(4)の前記近位端(42)が前記保持手段(3)により保持される前記関心対象要素(E)に対して圧縮力を生成する荷重付与方向に並進移動される荷重付与工程と、
c)前記磁気手段(5)が、前記押込み部材(4)が前記水平可動方向(x)に沿って、前記容器(C)内の前記液体媒質の液中に浮遊している前記押込み部材(4)の前記近位端(42)が前記保持手段(3)により保持される前記関心対象要素(E)から離れるように移動する荷重除去方向に並進移動される前記初期磁場(P1)を回復するように導かれる荷重除去工程と、
を含み、
前記方法は、少なくとも前記荷重付与工程中に、前記水平可動方向(x)に沿った前記押込み部材(4)の並進移動の値(D)を収集するステップを含み、
前記方法は、前記関心対象要素(E)の機械的特性を、前記磁場(P2)の特性と、前記水平可動方向(x)に沿った前記押込み部材(4)の並進移動の値(D)を考慮して特定するステップを含む方法。
【請求項12】
前記磁場の前記特性は、
-前記磁気手段(5)の移動の値及び/又は
-前記電磁コイル(54、55)に注入される電流の値
に応じることを特徴とする、請求項6と組み合わせられた、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記関心対象要素(E)は、
-卵母細胞、又は
-がん細胞
から選択される細胞であることを特徴とする、請求項11又は12の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、関心対象要素の機械的特性評価の分野に関する。
【0002】
それはより詳しくは、おそらくは生物学的性質の微小な関心対象要素、さらには細胞、好ましくは卵母細胞の機械的特性を評価するのに適した装置に関する。
【背景技術】
【0003】
関心対象要素の機械的特性評価は、機械的試験及びトライアルに基づいて、その内在特性(ヤング係数、ポアソン比、その他)を分析することにある。
【0004】
現在の試験のほとんどは、肉眼レベルで金属及びポリマーの特性を評価することが意図されている。
【0005】
これらは一般に、有機的性質の要素の特性評価には適しておらず、顕微鏡レベルではさらに適さない。
【0006】
現在、生体細胞の機械的特性評価は、特に生殖医療分野において大きな問題である。
【0007】
実際に、このような機械的特性評価はおそらく、卵母細胞、特に受精能力を有するそれらの選択において考慮すべき重要な基準である。
【0008】
したがって、特に生体細胞の機械的特性評価のための新しい技術が開発されてきた。これらの技術は一般に、既知の荷重又はストレスをそれに加えることによって細胞を変形させ、その結果の変形を測定することにある。
【0009】
最も使用されている技術には、マイクロインデンテーション及びピペットを使った吸引が含まれる。
【0010】
しかし、現実には、これらの現在の技術はごく限定的な特性評価の可能性しか提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、微小な関心対象要素(特に生体細胞)に加えられる力を測定する、押込みによる機械的特性評価を、効率的で、信頼でき、校正された方法で可能にするような装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これに関して、本発明は、関心対象要素、有利には、おそらくは生物学的性質の微小な関心対象要素、又はさらには細胞、好ましくは卵母細胞の機械的特性を評価する装置を提案する。
【0013】
より詳しくは、本発明によれば、
-液体媒質を収容するのに適した容器を受けるための支持手段と、
-前記液体媒質内に前記関心対象要素を保持するための保持手段と、
-長さ方向軸を有し、前記液体媒質内に前記長さ方向軸が水平に向けられた状態で浮遊されたままとされる押込み部材であって、少なくとも1つの永久磁石と、前記関心対象要素に押し込まれる1つの近位端を含む押込み部材と、
-前記押込み部材がその中で移動されるように意図され、水平可動方向(有利には、前記長さ方向軸と同軸に向けられる)で前記押込み部材の浮遊に関与する磁場を生成するための磁気手段と、
-前記水平可動方向に沿って前記押込み部材を並進移動させるのに適した前記磁場の変化を生じさせるように前記磁気手段を導くための制御手段と、
-前記押込み部材の前記近位端が前記関心対象要素への圧縮力を生成したときに、前記磁場の特性と前記水平可動方向に沿った前記押込み部材の並進移動の値を考慮して、前記関心対象要素の機械的特性を特定するための手段と、
を含む。
【0014】
現実には、磁気手段により、既知の荷重を関心対象要素に押込み部材を通じて加えることができる。
【0015】
その目的のために、この押込み部材は、制御された方法で変化することが意図される磁場内に保持される。
【0016】
すると、生じた磁場は、以下の特性を有する:
-押込み部材の水平可動方向を保持し、
-測定方向の外で押込み部材を安定に保持し、及び
-前記水平可動方向に沿った押込み部材に対して負の剛性(又は、場合によっては正の剛性)を有する磁気ばねとして作用し、関心対象要素への荷重付与を行う。
【0017】
磁気ばねの剛性は水平可動方向において負(又は、場合に応じて正)であり、すると、関心対象要素はそれを圧縮する押込み部材を安定させる。
【0018】
したがって、系は、特性評価を行う関心対象要素により安定化され、これは最適な簡素さと効率を提供する。
【0019】
このような技術により、10-3N/mの剛性を実装でき、したがって荷重を10nN未満で制御でき、その一方で、加えられた力の測定に高い直線性を提供する。
【0020】
このような機械的特性評価装置はさらに、そのコストの安さ、堅牢さ、実装の容易さによっても興味深い。
【0021】
本発明による機械的特性評価装置の、個別に、又は技術的に可能なあらゆる組合せにより得られるその他の非限定的で有利な特徴は以下のとおり:
-押込み部材は、一方で、磁場が相互同軸で同じ方向NS-NSであり、他方で、浮力中心が重力中心と一致することが意図される水平平衡位置にある少なくとも2つの永久磁石を含み、有利には、液体媒質により押込み部材に対して生成される浮力は、押込み部材の重量と等しく、反対方向である。
-前記押込み部材は以下の特徴を有する:1cm~3cmの間の長さ、0.5~1.5mmの間の直径、及び1mg~15mgの間の質量
-前記押込み部材は、例えばガラス製で、空気で満たされ、前記少なくとも1つの永久磁石を含む密封チャンバを画定する毛細管からなる本体を含む。
-容器は、その自由上縁が上開口を画定する横壁に接続された底を含む、例えばペトリ皿である。
-磁気手段は、水平軸に沿って同軸に、同じ方向NS-NSに配置された少なくとも2つの永久磁石と、前記永久磁石を並進移動させるための手段を含み、好ましくは、前記少なくとも2つの永久磁石は各々、電磁コイル内に配置され、前記電磁コイルは水平軸に沿って同軸に配置され、前記電磁コイルに電源供給する電流を導くための手段に接続され、前記少なくとも2つの永久磁石と、場合に応じて、前記少なくとも2つの電磁コイルは、有利には、容器のそれぞれの側に相互から一定距離dで配置され、例えば、動作手段はマイクロトランスレーションプレートからなる。
-保持手段は吸引ピペットを含む。
-前記関心対象要素の機械的特性を評価するための手段は、前記水平可動方向に沿った押込み部材の並進移動の値を特定するための手段を含み、これらの特定手段は、有利には、押込み部材の近位端と協働する関心対象要素を含む画像を撮影するのに適した光学手段と、前記水平可動方向に沿った前記押込み部材の並進移動の値を特定するのに適した、前記撮影された画像を解析するための手段と、を含む。
-支持手段は、前記容器を加熱するための手段を含む。
【0022】
本発明はまた、本発明による装置を備える、生殖補助医療用注入ステーションも提案する。
【0023】
本発明はまた、関心対象要素、有利には、おそらくは生物学的性質の微小な関心対象要素、又はさらには細胞、好ましくは卵母細胞の機械的特性を、本発明による装置を実装することによって調査する方法にも関する。
【0024】
この方法は、
a)一方で、前記関心対象要素が前記保持手段により容器の液体媒質中に保持され、他方で、磁気手段が、前記押込み部材を前記関心対象から離れた初期位置に静止状態に保持できる初期磁場を生成する準備工程と、
b)磁気手段が、磁場を前記初期磁場から変調磁場(有利には、これは一定又は変化し、例えば磁気手段を並進移動させることによる、及び/又は注入される電流を電磁コイル内へと導くことによる)へと(おそらくは漸進的に)変調させるように導かれて、前記押込み部材を前記水平可動方向に沿って、前記押込み部材の前記近位端が前記保持手段により保持される前記関心対象要素に対して圧縮力を生成する荷重付与方向に並進移動させる荷重付与工程と、
c)磁気手段が、前記押込み部材が前記水平可動方向に沿って、前記押込み部材の前記近位端が前記保持手段により保持される前記関心対象要素から離れるように移動する荷重除去方向に並進移動する前記初期磁場を(有利には漸進的に)回復するように導かれる荷重除去工程と、
を含み、
前記方法は、少なくとも荷重付与工程中に、前記水平可動方向に沿った前記押込み部材の並進移動の値を収集するステップを含み、
前記方法は、前記関心対象要素の機械的特性を、前記水平可動方向に沿った前記押込み部材の並進移動の値と前記磁場の特性(すなわち、場合によっては、磁気コイルに注入される電流の値及び/又は磁気手段の移動の値)を考慮して特定するステップを含む。
【0025】
好ましくは、荷重付与及び荷重除去ステップは、0.1~50マイクロメートル毎秒の間の非常に低速で行われる。
【0026】
例示的実施形態の詳細な説明
添付の図面に関する以下の説明は、非限定的な例として記されており、それによって本発明が何からなるか、及びそれがどのように実装できるかをよく理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による機械的特性評価装置の一部の全体的な概略図である。
図2】特に準備工程(図2A)と荷重付与工程(図2B)において、関心対象要素、有利な態様では卵母細胞の機械的特性を、図1による機械的特性評価装置を実装することにより調査する方法の主要ステップを示す。
図3図1及び2による機械的特性評価装置の全体的な概略斜視図である(単純にするために、支持手段と保持手段はこの図3には示されていない)。
図4図2による方法の中で測定される卵母細胞の機械的応答の例を示す(縦軸:力(ニュートン)、横軸:荷重付与、その後、荷重除去工程中の押込み部材の並進移動の値)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
機械的特性評価装置
図1及び2に示される本発明による装置1は、関心対象要素の機械的特性を評価するための装置からなる。
【0029】
「機械的特性評価」とは、機械的な試験とトライアルによる関心対象要素の内在的な機械的特性の分析を意味する。
【0030】
本発明による機械的特性評価装置1は、特に関心対象要素の機械的応答を特定できるようにすることが意図される。
【0031】
これによって特に、この関心対象要素への押込み(荷重付与/荷重除去)動作中の圧縮力(押込み)
【数1】
(例えば、単位、nN)に応じた圧縮距離D(例えば、単位、μm)の変化の立証が可能となる(図4に関して後述する例により示される)。
【0032】
その目的のために、本発明によれば、機械的特性評価装置1は微弱磁力センサを有し、これは、パッシブ型磁気ばねの利用と、機械的特性評価測定を実行するためのこのパッシブ型磁気ばねの不安定方向の利用に基づく。
【0033】
「磁気ばね」とは、遠隔動作から生じる復元力による、そのために磁石の運動を妨害する乾燥摩擦のない安定平衡状態に保持された磁石を含む装置を意味する。これらの動作は、一方でその磁石に、他方で固定参照点に接続された非磁化ばねにより生成されるものと等しい。
【0034】
いわゆる「パッシブ型」磁気ばねは、エネルギーの付加もフィードバック制御も行わずに押込み装置を安定化させる。
【0035】
この機械的特性評価装置1において、測定は、磁気的に前記水平可動方向xに、測定方向を安定化させるために関心対象要素Eの反発反応を利用して行われる。
【0036】
その目的のために、図1及び2に示されるように、機械的特性評価装置1は:
-液体媒質を収容するのに適した容器Cを受けるための支持手段2と、
-液体媒質内に関心対象要素Eを保持するための保持手段3と、
-長さ方向軸4’を有し、液体媒質内に前記長さ方向軸4’が水平に向く状態で浮遊されたままとされることが意図される押込み部材4(センサのトランスデューサ)と、
-前記押込み部材4がその中で移動することが意図され、前記押込み部材4の浮遊に関与し、前記水平可動方向x(図1~3の参照軸
【数2】
により実体化される)を画定する磁場を生成するための磁気手段5と、
-前記水平可動方向に沿った押込み部材4の並進動作を制御するための制御手段6と、
-関心対象要素Eの機械的特性を特定するための特定手段7と、
を含む。
【0037】
一般に、単純にするために、上記の前記水平可動方向と参照軸は同じ符号
【数3】
により示されることがある。
【0038】
支持手段
支持手段2は、従来通りであり、例えばプレートである。
【0039】
これらの支持手段2は、有利には、容器Cを加熱するための手段21、例えばサーマルプレートを含む。
【0040】
それに関して、容器Cは、その自由上端C21が上開口C22を画定する側壁C2に接続された底C1を含む。
【0041】
したがって、このような容器Cは、有利な点として、ガラス又はプラスチック製のペトリ皿からなる。
【0042】
液体媒質は、それに関して、有利には、関心対象要素に合わせて調整された水性媒質からなる。
【0043】
例えば、卵母細胞の場合、水性媒質は、有利には、従来通りの胚培養媒質からなる。
【0044】
保持手段
図2に示されるように、保持手段3は、液体媒質(図示せず)内に関心対象要素Eを保持するのに適している。
【0045】
これらの保持手段3は、本明細書では、吸引ピペット31を含み、その自由端311は液体媒質内に浸漬されることが意図される。
【0046】
この自由端311は、有利には、前記水平可動方向
【数4】
に垂直に延びることが意図された垂直面を画定する。
【0047】
吸引ピペット31はまた、吸引手段32とも関連付けられ、これは関心対象要素Eをその自由端311で把持するための把持力を提供するのに適している。
【0048】
押込み部材
押込み部材4は、一方で、液体媒質内にその長さ方向軸4’が水平に向いた状態で浮遊されたままとされ、他方で、それを前記水平可動方向x(図1~3では水平参照軸
【数5】
で実体化される)に移動させることのできる磁力を受けることが意図される。
【0049】
好ましくは、実際に、押込み部材4の長さ方向軸4’は前記水平可動方向x及び水平参照軸
【数6】
と同軸に(又は少なくとも平行に)向けられることが意図される。
【0050】
本明細書において、押込み部材4は長い円筒形状を有する本体41を含む。
【0051】
本体41は、長さ方向軸4’上に配置された2つの端、すなわち関心対象要素Eにを押込みを行うための近位端42と、反対の遠位端43を有する。
【0052】
近位端42の形状は、行われる試験と調査されている関心対象要素Eの形状に合わせて調整される。
【0053】
本体41は、例えばガラス製の毛細管により形成され、空気で満たされた密封チャンバ44を画定する。この特徴は、液体媒質中の押込み部材4の浮遊に関与する。
【0054】
好ましくは、押込み部材4の製造は、その重量
【数7】
と等しく(又は少なくともほとんど等しく)、それと反対方向の浮力
【数8】
を有することを可能にする。
【0055】
したがって、押込み部材4は水平参照軸
【数9】
に関して一定の、又は少なくともほぼ一定の姿勢で支持されたままとなる。
【0056】
押込み部材4はまた、少なくとも1つの永久磁石45(内部)も含み、これは、一方で、液体媒質中の浮遊に、他方で、その長さ方向軸4’を水平参照軸
【数10】
と同軸に(又は、少なくとも平行に)保持することに関与する。
【0057】
「永久磁石」とは、電流を介入させずに、磁場を生成し、保持する強磁性体を意味する。永久磁石は、例えばネオジム-鉄-ボロン磁石からなる。このような永久磁石は従来、北(N)極と南(S)極を有する。
【0058】
より正確には、前記少なくとも1つの永久磁石45により、押込み部材4はパッシブ型磁気ばねに接続された系として動作することができる。
【0059】
本明細書において、押込み部材4の本体41は、密封チャンバ44内に配置された2つの永久磁石451(例えば、円柱形)を含む。
【0060】
永久磁石451、452は、同軸磁場で、同じ方向NS-NSに配置される。
【0061】
換言すれば、永久磁石451、452は、本明細書において、相互に関して、及び押込み部材4の長さ方向軸4’に関して同軸に配置される。さらに、永久磁石451、452のうちの一方の南極は永久磁石451、452の他方の北極の反対に配置される。
【0062】
永久磁石451、452はまた、浮力中心が押込み部材4の重力中心Gと一致する(又は少なくともほとんど一致する)ことが意図される水平平衡位置にしたがって配置される。
【0063】
表示のみのために、一切限定せずに、押込み部材4は以下の特徴を有する:
-1cm~3cmの間の長さ(その本体41の2つの端42、43間の距離)、
-0.5~1.5mmの間の直径(長さ方向軸4’に垂直な断面)、及び
-1mg~15mgの間の質量。
【0064】
磁気手段
押込み部材4に連結される磁気手段5は、パッシブ型磁気ばねを形成するように設計される。
【0065】
その目的のために、磁気手段5は磁場を生成し、その中で押込み部材4が移動することが意図される。この磁場は、押込み部材4の浮遊、前記水平可動方向xに沿った案内、及び向き付けに関与する。
【0066】
特に、磁気手段5は、方向
【数11】
及び
【数12】
に沿って、非常に低い復元力を生成することができ、これは押込み部材4を水平参照軸
【数13】
の周囲で(位置及び向きにおいて)平衡状態に保持する。
【0067】
方向y及びzは、前記水平可動方向xに垂直で、それぞれ水平及び縦に向く方向である点に留意されたい。
【0068】
これらの磁気手段5はさらに、前記水平可動方向xと同軸に向けられた押込み部材4に制御された磁力
【数14】
を加えることが意図される(図2)。
【0069】
磁力
【数15】
は、前記水平可動方向xへの押込み部材4の移動と平衡状態を条件付ける。
【0070】
本明細書において、不安定な磁力
【数16】
は、押込み部材4の重力中心Gにもたらされる磁力の合力に対応する。
【0071】
その目的のために、磁気手段5は、本明細書において、水平軸Aに沿って同軸に、同じ方向NS-NSで配置された、例えば円柱型の2つの永久磁石51、52(外部)を含む。
【0072】
これら2つの永久磁石51、52の水平軸Aは、水平参照軸
【数17】
と一致する。換言すれば、永久磁石51、52の磁化は水平軸Aと同軸である。
【0073】
これら2つの永久磁石51、52の水平軸Aはしたがって、水平参照軸
【数18】
前記水平可動方向xを画定する。
【0074】
永久磁石51、52は、容器Cの各々の側に、相互に関して一定の距離dで配置される。
【0075】
2つの永久磁石51、52は、本明細書において、各々電磁コイル54、55の中に配置される。
【0076】
2つの電磁コイル54、55は、2つの関連付けられる永久磁石51、52の上述の水平軸Aに関して同軸に配置される。
【0077】
これらの2つの電磁コイル54、55は、有利には、直列にSN-NSの向きで接続される。
【0078】
したがって、2つの永久磁石51、52及び2つの電磁コイル54、55は、容器Cのそれぞれの側に、相互に関して一定の距離dで配置される。
【0079】
磁気手段5はまた、これら2つの永久磁石51、52を、及び電磁コイル54、55を、水平軸Aと同軸に向けられた水平方向Tに沿って並進移動させるための手段53も含む。
【0080】
この水平方向Tはしたがって、前記水平可動方向xと同軸か、又は少なくともそれに平行である。
【0081】
2つの永久磁石51、52及び電磁コイル54、55の水平方向Tに沿ったこの並進移動は、制御され、特定された距離xPIにわたって行われることが意図される(図2)。
【0082】
例えば、これらの動作手段53はマイクロトランスレーションプレートからなる。
【0083】
磁気手段5はまた、電磁コイル54、55に電源供給する電流を、前記水平可動方向xに沿った押込み部材4の並進移動を行わせる(又は少なくともそれに関与する)ことが意図された磁場の変化を生じさせるように導くための手段56も含む。
【0084】
例えば、これらの誘導手段56は、電磁コイル54、55内に所定の値の電流を発生させるのに適した、従来通りの電力回路からなる。
【0085】
制御手段
制御手段6は、磁場の変化を生じさせるように磁気手段5を導くことが意図される。すると、この磁場の変化は、前記水平可動方向
【数19】
に沿った押込み部材4の並進移動を起こさせる。
【0086】
これらの制御手段6は、有利には、産業用プログラマブルオートメーションシステムの制御部分にある。これらは特に、コンピュータにより実行されることが意図されたプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムを含む。
【0087】
これらの制御手段6は特に、本明細書においては以下を導くように設計される:
-これら2つの永久磁石51、52及び関連する電磁コイル54、55を並進移動させるための手段53、及び/又は
-電磁ボイル54、55に印加される電流を導くための手段56。
【0088】
前述のように、2つの永久磁石51、52及び関連する電磁コイル54、55の水平方向Tに沿った並進移動は、有利には、制御された所定の距離xPIにわたって行われる(図2)。
【0089】
特定手段
特定手段7は、以下を考慮して、関心対象要素Eの機械的特性を特定するように構成される:
-磁気手段5により生成される磁場の特性(例えば、磁気ばねの剛性定数)及び
-押込み部材4が関心対象要素Eに対する圧縮力を生成したときの、前記水平可動方向xに沿った押込み部材4の並進移動の値D(図2B)。
【0090】
特定手段7は、前記水平可動方向xに沿った押込み部材4の並進移動の値Dを特定するための手段71、72を含む。
【0091】
この移動値Dを特定するために、特定手段7は例えば、押込み部材4の近位端42と協働する関心対象要素Eを含む画像を撮影するのに適した光学手段71を含む(図2B)。
【0092】
これらの光学手段71は、例えば容器C上に設置されたカメラ/チューブ/レンズ系を含む。
【0093】
これらの光学手段71により、関心対象要素Eの変形を追跡することだけでなく、押込み部材4の位置を自動画像処理により計算することも可能となる。
【0094】
さらにこの移動値Dを特定するために、特定手段7はまた、有利には、光学手段71により撮影された画像から、前記水平可動方向xに沿った押込み部材4の並進移動の値Dを特定するのに適した分析手段72を含む。
【0095】
換言すれば、この移動値Dは、一方で押込み部材4の初期位置
【数20】
と、他方で押込み部材4の最終位置
【数21】
との間の距離(有利には、磁気手段5の永久磁石51、52及び2つの電磁コイル54、55の移動xPIにより、及び/又は2つの関連する電磁コイル54、55内に注入される電流により起こされる)に対応する。
【0096】
一般に、この値Dはまた、卵母細胞型の関心対象要素の場合、「doo」とも示される。
【0097】
分析手段72はまた、有利には、コンピュータにより実行されることが意図されるプログラムコード手段を含む画像解析ソフトウェア型のコンピュータプログラムも含む。
【0098】
これらのプログラムコード手段は例えば、正規化相互相関(NCC)方式に基づく画像処理アルゴリズムを使用する。
【0099】
実際には、関心対象要素Eに加えられる荷重は、移動値Dの測定(「圧縮距離」とも呼ばれる)から、2つの永久磁石51、52の並進移動の距離xp1から、及び/又は関連する電磁ボイル54、55に注入される電流から変調される。
【0100】
特定手段7はまた、計算手段73(例えば、コンピュータプログラム)も含み、これは前述の収集データから、関心対象要素Eの機械的特性を特定するように構成される。
【0101】
これらの機械的特性は、有利には、この関心対象要素Eに対する押込み工程中(荷重付与中、又はさらには荷重除去中)の力の値
【数22】
(関心対象要素Eにより押込み部材4に加えられる力)に関する移動値Dの変化(圧縮)を示す曲線を含む。
【0102】
最大圧縮距離Dmax(ある試験で関心対象要素に加えられる)は固定されていても(事前に決定されていても)よい。
【0103】

【数23】
は、以下について得られる力の値
【数24】
である:
-所定の距離xPIにわたる外部永久磁石51、52の移動、及び/又は
-2つの関連する電磁コイル54、55に注入される電流の所定の値。
【0104】
この装置の特殊性は、水平参照軸xに沿った押込み部材4の可動性が、関心対象要素E(例えば、卵母細胞)を押込み部材4と反対に設置することにより、可変な磁力
【数25】
と等しく、かつ反対の力を作ることによって回避されることである。
【0105】
したがって、平衡状態で、次式が得られる:
【数26】
式中、
【数27】
(卵母細胞の場合は
【数28】
とも呼ばれる)は、関心対象要素Eによって押込み部材4に加えられる力である。
【0106】
押込み部材4と外部永久磁石51、52及び/又は2つの関連する電子コイル54、55に注入される電流との間に適用される相対的クリアランスは各々、所定の範囲内に配置される。
【0107】
理想的な荷重付与では、押込み部材4の一定で低振幅の速さを保つように努められる。
【0108】
このような条件では:
【数29】
となり、
【数30】
は、関心対象要素に加えられる力(単位、N)、
Kは、単位、N/mでの磁気ばねの剛性(例えば、装置の実際のパラメータで行われたシミュレーションから得られる)、
PIは、磁気手段5の永久磁石51、52に適用される移動、
は、押込み部材のすべての位置、
elecは、電磁コイル54、55の電気的剛性(単位、N/A)、
Iは、電磁コイル54、55に注入される電流(単位、A)で、これらの電磁コイル54、55は直列に接続され、SN-NSの方向にされ、
【数31】

【数32】
はそれぞれ、磁気手段5に属する永久磁石51、52及び電磁コイル54、55の初期位置と、押込み部材4の初期位置である。
【0109】
それに関して、圧縮距離Dmaxは、最大所定距離xPIにわたる移動及び/又は所定の最大電流Iについて得られる圧縮距離の値Dである。
【0110】
関心対象要素E(関心対象要素が卵母細胞型である場合は「doo」とも示される)のこの圧縮距離Dは、次式により得られる:
【数33】
式中、
【数34】
は、ビジョンシステムにより提供される移動測定値(単位、ピクセル)と押込み部材4の実際の移動(単位、m)との間の変換利得、
pxは、ピクセルの単位で測定される押込み部材4のすべての位置、
【数35】
は、ピクセルの単位で測定される押込み部材の初期位置である。
【0111】
これらの値に基づいて、特定手段7は関心対象要素の機械的応答曲線をグラフにすることができる(図4の例参照)。
【0112】
一般に、圧縮距離Dは、光学手段以外に、何れの適当な手段によっても測定できる。
【0113】
関心対象要素の機械的特性の調査方法
機械的特性評価装置1の実装を、図2に関して以下に説明する。この実装方法は、以下の連続的工程を含む。
【0114】
まず、この方法は準備工程から始まり(図2A)、そこでは関心対象要素Eは容器C内の液体媒質内に位置付けられ、保持手段3により保持される。
【0115】
本明細書において、関心対象要素Eは保持ピペット31を使った吸引により保持される。
【0116】
一般に、磁気手段5に連結された押込み部材4は、容器Cの液体媒質内の液中で支持される。
【0117】
この構成において、押込み部材4には磁気手段5の永久磁石51、52を通じた磁力を受ける。電磁コイル54、55に注入される電流Iはゼロである。
【0118】
さらにこの構成では、押込み部材4は、長さ方向軸4’に垂直な水平y及び縦zの方向に安定している。
【0119】
その反面、押込み部材4は前記長さ方向軸4’と同軸に向けられた前記水平可動方向xにおいて移動可能である。すると、力の測定は、この前記水平可動方向xに沿って行われることが意図される。
【0120】
この準備工程中、磁気手段5は初期磁場P1を生成し、これによって押込み部材4を初期位置に静止した状態で、関心対象要素Eから離して保持できる。
【0121】
より正確には、不安定な磁力
【数36】
図2では左方向)が発せられ、これは押込み部材4を関心対象要素Eに関して反対に移動させる傾向がある。
【0122】
すると、押込み部材4の遠位端43は、容器Cの側壁C2と接触した状態に保持され、押込み部材4の近位端42は関心対象要素Eから離れて(例えば、数十マイクロメートル)配置される。
【0123】
準備工程に、不安定性傾斜工程が続く(近位端42が関心対象要素Eと接触し、その際、後者に何れの力も加えられない
【数37】
)。
【0124】
不安定な磁力
【数38】
のモジュラスが押込み部材4と容器Cとの間の接着力を超えると、押込み部材4は容器Cと接触しなくなる。
【0125】
動作手段53は、磁石51及び52の位置を調整して、荷重付与工程の開始直前に、押込み部材4が関心対象要素Eと接触しているときに確実に
【数39】
となるようにするために使用される。
【0126】
方法は、荷重付与工程が続き、その中では、押込み部材4は並進移動して、その近位端42が保持手段3により担持される関心対象要素Eに圧縮力を生成する(図2B)。
【0127】
その目的のために、磁気手段5は、磁場を初期磁場P1から変調磁場P2(一定又は進展する)へと変調させるように導かれ、押込み部材4は、前記水平可動方向xに沿って荷重付与方向S1に並進移動する。
【0128】
本明細書において、初期磁場P1から変調磁場P2への磁場の変調は以下によって得られる:
-2つの永久磁石51、52を水平Tに沿って第一の方向T1に(図2では左に)並進移動させること、及び/又は
-電磁コイル54、55に制御された所定の電流Iを印加すること。
【0129】
場合に応じて、水平Tに沿った2つの永久磁石51、52の並進移動は、制御された所定の距離xPIにわたって行われる。
【0130】
実際には、この荷重付与ステップは、有利には、例えば0.1~50マイクロメートル毎秒という非常に低い押込み部材4の速度で行われる(ほぼ静的荷重付与)。
【0131】
すると、関心対象要素Eに加えられる力
【数40】
のモジュラスは、有利には、不安定な磁力
【数41】
のモジュラスと等しい。
【0132】
実際には、すると、関心対象要素Eに加えられる荷重は以下の制御に基づいて変調される:
-2つの永久磁石51、52の並進移動の距離xPI、及び/又は
-電磁コイル54、55に印加される電流I。
【0133】
この荷重付与工程に続いて荷重除去工程が実行され、その中では、押込み部材4の近位端42は、依然として保持手段3により保持されている関心対象要素Eから離れるように移動される(図2Bから図2Aへの移行)。
【0134】
その目的のために、磁気手段5は初期磁場P1に戻るように導かれ、その中で押込み部材4は前記水平可動方向xに沿って荷重除去方向S2へと並進移動される。
【0135】
本明細書において、初期磁場P1への回帰は以下によって得られる:
-2つの永久磁石51、52を方向Tに沿って、距離xPIにわたり、第二の方向T2(第一の方向T1の反対)に並進移動(回帰)させること、及び/または
-電磁コイル54、55に制御された所定の電流Iを印加すること。
【0136】
この方法の中で、特定手段7は、前記水平可動方向xに沿った押込み部材4の並進移動の値Dと、場合に応じて、電磁コイル54、55に印加される電流Iの値を収集するステップを実行する。
【0137】
この収集ステップは、荷重付与工程及び、有利には、荷重除去工程中も行われる。
【0138】
取集されたデータに基づき、特定手段7は関心対象要素Eの機械的特性を特定するステップを実行し、これは関心対象要素Eの機械的応答を可視化するステップとも呼ばれる。
【0139】
前述のように、この特定(又は可視化)ステップは、有利には、磁場の特性(特に剛性定数K及びKelec)、前記水平可動方向xに沿った押込み部材4の並進移動の値D、及び電磁コイル54、55に注入される電流Iの値を考慮に入れる。
【0140】
得られたデータは、例えば、一定速度での荷重付与/荷重除去試験中に測定される関心対象要素Eの機械的応答の特性曲線の形式であってよい。
【0141】
この曲線は例えば、一方で、関心対象要素に加えられる力の値と、他方で、押込み部材による前記関心対象要素の圧縮距離の値との間の相関関係を示す。
【0142】
このような曲線は例えば、ヒトの卵母細胞からなる関心対象要素Eについて図4に示されている。
【0143】
利用分野
したがって、本発明による特定装置1は関心対象要素Eの機械的特性に合わせて調整される。
【0144】
「関心対象要素」とは、有利には、微小な大きさを有する関心対象要素、すなわち、1mm未満、好ましくは10μm~1mmの大きさを有する要素を意味する。
【0145】
この微小な関心対象要素は、有利には、生物学的な性質であり、すなわち、例えば細胞、好ましくは卵母細胞である。
【0146】
「細胞」とは、膜で取り囲まれた細胞質から形成された、核を収容する役割の、あらゆる生物を構成する構造的単位である。
【0147】
「卵母細胞」とは、後生動物の雌の性細胞、好ましくはヒトの卵母細胞を意味する。
【0148】
この場合、使用される構成部品は、卵母細胞及びその培養媒質と接触し、有利には、配偶子有毒性がなく、使い捨てである。
【0149】
したがって、機械的特性評価装置1は好ましくは、生殖補助医療用注入ステーションに装備されるようになされる。
【0150】
このようなステーションは従来、保持シリンジと、注入シリンジと、倒立顕微鏡を含む。
【0151】
より一般的に、本発明によるこの特定装置1は、何れかの種類の細胞の機械的特性を測定することに関心が持たれる利用分野において興味深いかもしれない。
【0152】
以下の分野が挙げられる:
-広い意味での(ヒトと動物)における生殖及び配偶子の分野
-がん細胞の研究(がん細胞の特性の測定により、特にその細胞が浸潤性であるか否かの測定が可能となる)
-獣医学分野
-細菌学分野
-動物学及び単細胞界の分野
-植物学分野
-ナノトライボロジの分野
【実施例
【0153】
材料
特性評価装置1の例を以下に説明する。
【0154】
磁気手段5の永久磁石51、52の直径と長さは10mmと等しく、荷重密度は1.25A/mと等しい。
【0155】
これらを軸xに沿って水平に配置し、その長さ軸(軸x)に沿って10.4cmと等しい距離dだけ分離された磁気構成N-S N-Sとなるようにする。
【0156】
押込み部材4は、水平に設置された、長さが1mmと等しく、直径が0.5mmと等しい2つの永久磁石45を含む。この磁化もまた水平であり、軸xに沿って同じ方向に向かう。それは3.10A/mと等しい。
【0157】
押込み部材4の2つの永久磁石45間の距離は1.5cmと等しい。
【0158】
押込み部材4の重力中心Gは、永久磁石45を分離するセグメントの中心に画定される。
【0159】
方向zは押込み部材4の垂直線を表し、重量が加わる方向である。
【0160】
磁気ばねの剛性
卵母細胞の測定を行うために、加えられる力の範囲は0~約1μNである。
【0161】
押込み部材4と外部永久磁石51、52との間に適用される相対クリアランスは、[-2mm、2mm]の範囲内に位置付けられる。
【0162】
実際に、G=2mmの場合、
【数42】
となる。
【0163】
このような力により、生殖補助医療の枠組みにおけるヒトの卵母細胞のすべてに荷重を付与できる。
【0164】
[-2mm、2mm]の間隔にアフィン関数を重畳させた曲線により、Gに関する
【数43】
の直線性を検証できる:
【数44】
式中、Kは方向xに沿った磁気ばねの剛性である。
【0165】
保持された構成において、磁気ばねの剛性は0.0013N/mと等しい。これは、例えばその最も柔軟なレバーが約10倍硬い原子力顕微鏡のレバーの剛性に関して非常に低い値である。
【0166】
結果
図4は、未熟卵母細胞の機械的応答を示す。
【0167】
卵母細胞は、144μmと等しい直径と106μmの細胞質直径を有する。
【0168】

【数45】
の変化の曲線は、荷重付与工程(上側部分-V1)を示す。
【0169】
この工程では、卵母細胞は押込み部材によって圧縮距離
【数46】
が14μmと等しくなるまで圧縮され、これは150nNの力
【数47】
に対する卵母細胞の最大変形に対応する(図4の四角Z1)。
【0170】
曲線の下側部分(V2)は、荷重除去工程を示す。これは押込み部材を図4の四角Z2に戻すことに対応する。
【0171】
この曲線では、卵母細胞の粘性によるヒステリシスが強調されている。荷重除去の終わりに卵母細胞の残留変形(d)が見られる。
図1
図2
図3
図4