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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-14
(45)【発行日】2023-02-22
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
A01C11/02 303C
A01C11/02 301Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020111501
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010774
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】大久保 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 昭雄
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-089650(JP,A)
【文献】特開2009-131154(JP,A)
【文献】特開2001-095325(JP,A)
【文献】特開2006-304630(JP,A)
【文献】特開2009-171926(JP,A)
【文献】特開2020-031612(JP,A)
【文献】特開2011-019501(JP,A)
【文献】実開昭54-110539(JP,U)
【文献】特開2001-269018(JP,A)
【文献】特開2012-005460(JP,A)
【文献】特開2010-068781(JP,A)
【文献】特開2000-333515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02 -11/02
11/04 -14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体と、走行車体の後部に設けられた圃場に苗を植え付ける苗植付装置と、苗供給装置に供給された苗を前記苗植付装置に案内する苗案内装置を備えた苗移植機において、
前記苗案内装置が、前記苗供給装置から供給された苗を受け入れて、前記苗植付装置に向けて、下方に案内する苗供給ガイドを備え、
前記苗植付装置が、その上部に前記苗供給ガイドを支持し、その下部に一対の植付ホッパを開閉可能に支持するホルダと、左右に開閉可能で、前記ホルダから苗を受け入れるときには閉じ、苗を植え付けるときは開くように構成された左右一対の植付ホッパを備え、
前記左右一対の植付ホッパが、前記走行車体の前後方向に傾斜可能に構成され、
かつ、回動支点まわりに、前記走行車体の後方に向けて傾斜するように回動可能であり、前記回動支点の前方に、前記左右一対の植付ホッパの傾斜姿勢を保持する傾斜姿勢保持部が設けられており、
前記回動支点が、前記ホルダおよび前記左右一対の植付ホッパのそれぞれの後部に設けられるとともに、前記傾斜姿勢保持部が、前記ホルダおよび前記左右一対の植付ホッパのそれぞれの前部に設けられ、前記傾斜姿勢保持部が、前記ホルダに形成された長穴と、前記一対の植付ホッパの前部に設けられ、前記長穴に係合するホッパ固定部材を備えていることを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記ホッパ固定部材が、前記長穴と、前記左右一対の植付ホッパに設けられ、前記長孔に係合するボルトによって構成されたことを特徴とする請求項に記載の苗移植機。
【請求項3】
前記左右一対の植付ホッパがそれぞれ、ホッパ本体と、前記ホッパ本体の前側に形成され、上下方向に延びるブレードを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の苗移植機。
【請求項4】
前記苗供給ガイドの上部に、苗を前記苗供給ガイドに導く補助ガイドが設けられ、前記補助ガイドが前後方向に長い略楕円形横断面を有し、軟質プラスチックによって形成されたことを特徴とする請求項に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甘薯を含む作物を移植可能な苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
甘薯は、圃場面に対して垂直に近い角度で植付けられる(垂直植え)だけでなく、圃場面に対して傾斜姿勢で植え付けられたり(斜め植え)、船底のように、土中に埋没させて、植え付けられている(船底植え)。
【0003】
甘薯は、種芋から殖えるのではなく蔓苗により植えられ、その苗(慣行苗)は通常、約30cm以上の長さを有しているため、汎用の苗移植機の植付ホッパに収まらず、また、甘薯の可食部が発生する側に土がついておらず、茎葉部の発生している上部側の重量が重いため、汎用の苗移植機によって、植え付けることができず、たとえば、特許文献1に示されているように、専用の植付爪を備えた苗移植機によって移植されている。
【0004】
したがって、甘薯の苗を植え付ける従来の移植機は、一般の作物の苗の植え付けに用いることができず、別途、一般の作物の移植機を購入する必要があり、不経済であった。
【0005】
また、特許文献2に記載された苗移植機においても、特許文献3に記載された苗移植機においても、苗を圃場面に対して垂直に近い角度で、植付けられるように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-158426号公報
【文献】特開2016-123359号公報
【文献】特許第4696386号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、セルトレイに培土を詰め、セルトレイに切り分けた苗を差し込み、たとえば、25cm程度に成長させた小苗を植え付けることにより、甘薯の苗を汎用の苗移植機を用いて、植え付けることが提案されている。
【0008】
この方法によれば、苗の全長が植付ホッパに収まり、また、大きい茎葉部が地表側に発生していても、培土により下方の重量が大きくなるため、植付ホッパによって、甘薯を植付けることができ、一般の作物を植え付ける汎用の苗移植機を使用して、甘薯の苗を圃場に植え付けることが可能になる。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された移植機においては、苗の植え方が斜め植えか、船底植えに固定されており、伝動系を分解して、部品を大幅に取り換えなければ、苗の植え方を変更することができないという問題があり、特許文献2に記載された苗移植機および特許文献3に記載された苗移植機においては、苗を圃場面に対して垂直に近い角度で、植付けることしかできなかった。
【0010】
したがって、本発明は、一般の作物の苗のみならず、甘薯の苗を圃場に植え付けることができ、苗を垂直植え、斜め植えおよび船底植えのいずれでも圃場に植え付け可能な苗移植機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のかかる目的は、
走行車体と、走行車体の後部に設けられた圃場に苗を植え付ける苗植付装置と、苗供給装置に供給された苗を前記苗植付装置に案内する苗案内装置を備えた苗移植機において、
前記苗案内装置が、前記苗供給装置から供給された苗を受け入れて、前記苗植付装置に向けて、下方に案内する苗供給ガイドを備え、
前記苗植付装置が、その上部に前記苗供給ガイドを支持し、その下部に一対の植付ホッパを開閉可能に支持するホルダと、左右に開閉可能で、前記ホルダから苗を受け入れるときには閉じ、苗を植え付けるときは開くように構成された左右一対の植付ホッパを備え、
前記左右一対の植付ホッパが、前記走行車体の前後方向に傾斜可能に構成されたことを特徴とする苗移植機によって達成される。
【0012】
本発明によれば、左右一対の植付ホッパが、走行車体の前後方向に傾斜可能に構成されているから、圃場環境や作物の種類に合わせて、作物の苗の植付角度を設定することができ、1台の苗移植機によって、様々な条件に対応することが可能になる。
【0013】
本発明の好ましい実施態様においては、前記左右一対の植付ホッパが、回動支点まわりに、前記走行車体の後方に向けて傾斜するように回動可能であり、前記回動支点の前方に、前記左右一対の植付ホッパの傾斜姿勢を保持する傾斜姿勢保持部が設けられている。
【0014】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、左右一対の植付ホッパを後方に傾斜させた状態で、苗を植え付けることができ、苗が甘薯の苗である場合には、甘薯の苗を垂直植え、斜め植えおよび船底植えのいずれの植え方でも圃場に植え付けることが可能になる。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記回動支点が、前記ホルダおよび前記左右一対の植付ホッパのそれぞれの後部に設けられるとともに、前記傾斜姿勢保持部が、前記ホルダおよび前記左右一対の植付ホッパのそれぞれの前部に設けられ、前記傾斜姿勢保持部が、前記ホルダに形成された長穴と、前記一対の植付ホッパの前部に設けられ、前記長穴に係合するホッパ固定部材を備えている。
【0016】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、容易に、かつ、所望のように、左右一対植付ホッパを後方に傾斜した状態で固定し、苗を植え付けることができるから、苗が甘薯の苗である場合には、甘薯の苗を垂直植え、斜め植えおよび船底植えのいずれの植え方でも圃場に植え付けることが可能になる。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記ホッパ固定部材が、前記長穴と、前記左右一対の植付ホッパに設けられ、前記長孔に係合するナットによって構成されている。
【0018】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、容易に、かつ、所望のように、左右一対植付ホッパを後方に傾斜した状態で固定し、苗を植え付けることができるから、苗が甘薯の苗である場合には、甘薯の苗を垂直植え、斜め植えおよび船底植えのいずれの植え方でも圃場に植え付けることが可能になる。
【0019】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記左右一対の植付ホッパがそれぞれ、ホッパ本体と、前記ホッパ本体の前側に形成され、上下方向に延びるブレードを備えている。
【0020】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、左右一対の植付ホッパがそれぞれ、ホッパ本体と、ホッパ本体の前側に形成され、上下方向に延びるブレードを備えているから、左右一対の植付ホッパを畝内に貫入する際、それ、ブレードが土を左右に切り分けるから、左右一対の植付ホッパを低い抵抗で畝内に貫入させることができ、苗を適切な深さで畝に植え付けることが可能になる。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記苗供給ガイドの上部に、苗を前記苗供給ガイドに導く補助ガイドが設けられ、前記補助ガイドが前後方向に長い略楕円形横断面を有し、軟質プラスチックによって形成されている。
【0022】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、前後方向に長い略楕円形横断面を有する補助ガイドを設けることによって、長尺の苗が前後傾斜姿勢になっていても、補助ガイドを介して、苗供給ガイドに供給することができ、また、補助ガイドが軟質プラスチックによって形成されているから、補助ガイドを弾性変形をさせて、苗供給ガイドの内面に接触させることによって、補助ガイドと苗供給ガイドの間に、苗の落下を妨げる段差などが形成されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、一般の作物の苗のみならず、甘薯の苗を圃場に植え付けることができ、苗を垂直植え、斜め植えおよび船底植えのいずれでも圃場に植え付け可能な苗移植機を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる苗移植機の略左側面図である。
図2図2は、図1に示された苗移植機の略平面図である。
図3図3は、苗供給ガイドと補助ガイドの略斜視図である。
図4図4は、図3の略縦断面図である。
図5図5は、昇降リンク機構の略側面図である。
図6図6は、植付装置の略平面図である。
図7図7は、植付装置の略背面図である。
図8図8は、植付具の略左側面図である。
図9図9は、植付具の略背面図である。
図10図10は、図8のA-A線に沿った略横断面図である。
図11図11は、昇降リンク機構の略側面図である。
図12図12は、植付装置の略平面図である。
図13図13は、植付具の略左側面図である。
図14図14は、植付具の略背面図である。
図15図15は、本発明の別の実施態様にかかる苗移植機の植付具の左側植付ホッパと右側植付ホッパの略横断面図であり、図10に対応する図面である。
図16図16Aは、クリップの略正面図であり、図16Bは、苗搬送装置の略側面図である。
図17図17Aは、クリップの略正面図であり、図17Bは、苗搬送装置の略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施態様につき、詳細に説明を加える。
【0026】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる苗移植機の略左側面図であり、図2は、図1に示された苗移植機の略平面図である。
【0027】
本明細書において、「前」または「後」というときは、操縦ハンドルが配置された側を「後」といい、エンジンが配置された側を「前」という。一方、「右」または「左」というときは、機体後部から機体前方向を見て、右手側を「右」といい、左手側を「左」という。
【0028】
本実施態様にかかる苗移植機は、蔓状苗である甘薯の苗を移植するものであり、その長さは15cm程度である。
【0029】
このような甘薯の苗は、たとえば、特開2016-123359号公報に記載されているように、以下のようにして、生育される。
【0030】
苗トレイに縦横に形成された複数のセルに、根鉢形成用の植物となる水稲の種子を播種し、温度管理された育苗ハウスなどで発芽する程度にまで水稲苗を育苗する。その後、各セルに1本ずつ挿苗用の甘薯苗を挿苗する。
【0031】
育苗ハウス内において同じセル内で水稲苗と甘薯苗とを育苗し、水稲苗の根の伸長により根鉢が形成され、かつ、甘薯苗の根が少し伸長し、15cm程度になった状態で、育苗が完了する。
【0032】
この育苗方法によれば、根鉢形成用の水稲苗を所定量又は所定期間育苗した後、同じセル内で甘薯の苗を育苗するので、甘薯の苗の根をあまり伸長させないうちに、セルから甘薯の苗を取り出して、圃場に移植することができ、圃場で栽培される甘薯が小型になったり変形したりすることを抑制でき、生食用に適正な甘薯を栽培することができる。
【0033】
図1に示されるように、本実施態様にかかる苗移植機1は走行車体10を備え、走行車体10は、エンジン11と、主伝動ケース12と、走行車輪としての左右一対の前輪13と、走行車輪であり、走行推進体としての左右一対の後輪14と、植付装置19と、苗供給部31と、倒伏具として機能する倒伏ローラ86と、鎮圧具として機能する鎮圧輪15と、操縦ハンドル16を備えている。
【0034】
本実施態様にかかる苗移植機10は、走行機体が圃場内の畝Uを跨ぐように、前輪13と後輪14が畝Uの間を走行し、畝Uの上面の左右幅方向における中央位置に、植付装置19により苗を植付けていくように構成されている。
【0035】
図2に示されるように、主伝動ケース12の左右端部にはそれぞれ、主伝動ケース12に対して上下に回動可能な延長ケース40が設けられ、左右の延長ケース40のそれぞれの端部に走行伝動ケース20が取り付けられている。したがって、原動機11から入力される主伝動ケース12内の動力が走行伝動ケース20内に伝動するように構成されている。 図1および図2に示されるように、走行伝動ケース20の回動先端部には、左右の後輪14が取り付けられ、左右の後輪14の駆動によって、機体が走行されるように構成されており、主伝動ケース12と延長ケース40と走行伝動ケース20は、走行車輪としての後輪14に伝動する伝動装置として機能している。
【0036】
一方、図1および図2に示されるように、エンジン載置台91の下部には、左右方向に延びる前輪支持フレーム41が、前後方向のローリング軸18回りに、回動可能に設けられ、前輪支持フレーム41の左右両端部に、左右の前輪13が取り付けられている。
【0037】
また、図1および図2に示されるように、主伝動ケース12の後端には、左右方向に延びる後フレーム21が固着され、後フレーム21の後端面の右端部の機体の右寄りの位置に、前後方向に延びる主フレーム22が設けられている。主フレーム22の後端部には、操縦ハンドル16が設けられ、操縦ハンドル16が、主フレーム22および後フレーム21を介して、主伝動ケース12に支持されるように構成されている。後フレーム21の右寄りの上面には、植付伝動ケース26の前下端部が載せられ、植付伝動ケース26が固着されている。
【0038】
さらに、図1および図2に示されるように、主伝動ケース12の後側でかつ左右方向の中央部には、油圧昇降シリンダ23が設けられている。油圧昇降シリンダ23は、主伝動ケース12に取り付けられた油圧切替バルブ部24に固着され、油圧昇降シリンダ23は、主伝動ケース12に取り付けられた油圧ポンプ92からの油路を油圧切替バルブ部24によって切り替えることにより作動される。
【0039】
また、図2に示されるように、油圧昇降シリンダ23のシリンダロッドの後端には左右に延びる横杆43が設けられ、横杆43の左右端部には、それぞれ、ロッドとなる左側の後輪昇降ロッド44および右側の後輪昇降ロッド45の一端部が連結され、左側の後輪昇降ロッド44および右側の後輪昇降ロッド45の他端部は、それぞれの延長ケース40に取り付けられた上側ア-ム40aに枢着され、横杆43と延長ケース40とが連結されている。したがって、油圧昇降シリンダ23の伸縮により、横杆43、左側の後輪昇降ロッド44および右側の後輪昇降ロッド45を介して、走行伝動ケース20が、主伝動ケース12の左右の出力軸回りに回動され、走行伝動ケース20の回動によって、後輪14が上下して、走行機体が昇降するように構成されている。なお、油圧昇降シリンダ23のシリンダロッド、横杆43、左側の後輪昇降ロッド44および右側の後輪昇降ロッド45は、シリンダロッドの進出位置によっては、機体側面視で後述する昇降リンク機構29の下方に位置するように構成されており、スペースが有効利用され、機体のコンパクト化が図られている。
【0040】
また、図2に示されるように、左側の後輪昇降ロッド44が伸縮するように、左側の後輪昇降ロッド44の中途部に、油圧ポンプ92からの油圧により作動する左右傾斜用油圧シリンダ25が設けられており、左右傾斜用油圧シリンダ25の伸縮により、右側の後輪14の上下位置に対して、左側の後輪14が上下動され、畝Uの谷部の凹凸に関係なく、走行機体が所望の左右傾斜姿勢に制御されるように構成されている。なお、主伝動ケース12の右側には振り子式の左右傾斜センサ42が設けられており、左右傾斜センサ42の検出結果に基づき、油圧切替バルブ部24に備えられた左右傾斜用切替バルブを介して、左右傾斜用油圧シリンダ25が作動され、走行機体が所望の左右傾斜姿勢に制御されるようの構成されている。
【0041】
図1および図2に示されるように、苗が1つずつ、圃場の畝Uに植付けられるように、主伝動ケース12内からの動力が、主伝動ケース12の後側に設けた植付伝動ケース26と植付伝動ケース26に取り付けられた植付装置駆動ケース27を介して、植付装置19に伝達され、植付装置19が作動するように構成されている。
【0042】
図1に示されるように、植付装置19は、下方の先端が尖ったカップ状の植付具28と、植付具28を昇降させる昇降リンク機構29を備えている。植付具28の先端部(下端部)は、植付具28の昇降動作によって、前側で下降し、後側で上昇するとともに、前後方向の幅が上部よりも下部の方が大きいループ状の軌跡Tを描いて、繰り返し作動されるように構成されている。
【0043】
植付装置19に苗を供給する苗供給部は、植付具28に苗を供給する苗供給ガイドと、苗供給ガイドに苗を導く補助ガイドを備えている。
【0044】
図3は、苗供給ガイド33と補助ガイド34の略斜視図であり、図4は、図3の略縦断面図である。
【0045】
図3および図4に示されるように、苗供給ガイド33は硬質プラスチック製の筒部材によって構成され、楕円状の横断面を有し、その横断面積は上部の上部開口33Aが最大で、下方に向かって徐々に減少し、植付具28に対向する下部開口33Bの断面積が最小になるような形状を有している。補助ガイド34は、上部に、作業者によって苗が投入される上部開口34Aを有し、下部に、苗供給ガイド33の上部開口33Aに連なる下部開口34Bを有する軟質プラスチック製の筒状部材であり、その横断面は前後方向に長い楕円形状で、その断面積が上部開口34Aにおいて最大で、下部開口34Bにおいて最小になるように、徐々に小さくなるように構成されている。
【0046】
図3および図4に示されているように、補助ガイド34の下部開口34Bの断面積は、苗供給ガイド33の上部開口33Aの断面積よりも小さく、補助ガイド34の下部開口34Bの下端部の外壁が苗供給ガイド33の上部開口33Aの上端部の内壁に面接触するように構成されている。したがって、作業者が苗を補助ガイド34に投入したときに、苗をスムーズに苗供給ガイド33内に送ることができる。
【0047】
このように、前後方向に長い略楕円形横断面を有する補助ガイド34を設けることによって、長尺の苗が前後傾斜姿勢になっていても、補助ガイド34を介して、苗供給ガイド33に供給することができ、また、補助ガイド34が軟質プラスチックによって形成されているから、補助ガイド34を弾性変形をさせて、苗供給ガイド33の内面に接触させることによって、補助ガイド34と苗供給ガイド33の間に、苗の落下を妨げる段差などが形成されることを防止することができる。
【0048】
図5は、昇降リンク機構の略側面図である。
【0049】
図5に示されるように、リンク機構である昇降リンク機構29は、その上端部がそれぞれ、植付装置駆動ケース27の揺動カム駆動軸62および上後軸60に回動自在に連結され、その下端部がそれぞれ、連結支持板68によって、下前軸63および下後軸65に回動自在に連結されて前後に平行に設けられた前揺動アーム50と後揺動アーム51を備えている。また、連結支持板68の上軸64と下後軸65にそれぞれ、その前端が回動自在に連結され、その後端がそれぞれ、植付具28の支持板72に設けられた回動上軸73および回動下軸74に回動自在に連結された平行な上アーム52および下アーム53が設けられている。
【0050】
図5に示されるように、昇降リンク機構29は、さらに、植付装置駆動ケース27の左右一方側(左側)の側面から突出するクランクアーム駆動軸61に、その基部が固着されて回転されるクランクアーム55と、クランクアーム55の先端部に設けられた第一の連結軸66に回動自在に一端部が枢支され、その他端部が下アーム53の前後方向の途中部分に設けられた第二の連結軸67に回動自在に連結された連結アーム56を備えている。
【0051】
図5に示されるように、昇降リンク機構29はまた、揺動カム駆動軸62に固定されて回転する揺動駆動カム54を備え、揺動駆動カム54の周縁部に当接するように、後揺動アーム51の上後軸60寄りの途中部分に回動ローラ57が回動自在に設けられている。
【0052】
昇降リンク機構29は、さらに、図5に示されるように、植付装置駆動ケース27に設けられた支持ピンと後揺動アーム51の下端部の間に設けられ、前揺動アーム50および後揺動アーム51を前側へ向けて付勢し、揺動駆動カム54と回動ローラ57とを当接させる引張バネを備えている。
【0053】
図6は、植付装置19の略平面図であり、図7は、植付装置19の略背面図である。
【0054】
図6および図7に示されるように、くちばし状をなした植付具28の下部は、くちばし状の左側植付ホッパ70Lとくちばし状の右側植付ホッパ70Rによって構成されており、後述するように、左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rが閉じた状態にあるとき、植付具28は内部に苗を保持し、左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rが左右に開くと、畝U内に苗を植付けるように構成されている。
【0055】
ここに、植付具28の左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rは、以下のようにして開閉され、植付具28が苗供給ガイド33から苗を受け入れ、所定の位置で、開かれて、畝Uに苗を植え付けるように構成されている。
【0056】
本実施態様においては、図5に示されるように、植付具28の開閉動作のためのカウンターアーム79が、上アーム52の一端部(後端部)に設けられた回動上軸73に回動自在に設けられている。また、上アーム52の他端部(前端部)に設けられた上軸64に、開閉アーム76が回動自在に設けられており、開閉アーム76とカウンターアーム79が連結ロッド78により連結されている。さらに、カウンターアーム79には、ピン80が設けられている。また、揺動駆動カム54とともに、揺動カム駆動軸62に固定されて回転する開閉駆動カム75が設けられており、開閉駆動カム75の周縁部に接触する開閉用ローラ77が、開閉アーム76に回動自在に設けられている。揺動カム駆動軸62の回転にともなって、開閉駆動カム75が回転することにより、開閉用ローラ77を介して、開閉アーム76が作動される。
【0057】
植付具28の左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rを開閉させるにあたっては、カウンターアーム79を、連結ロッド78を介して、開閉アーム76と並行して動作させ、開閉アーム76を、開閉用ローラ77を介して、開閉駆動カム75によって動作させる。このように構成されているので、簡易な形状の開閉駆動カム75によって、開閉タイミングと開閉量を高精度で設定することができる。
【0058】
図7に示されるように、植付具28には、左ホルダ71Lおよび右ホルダ71Rが設けられており、左ホルダ71Lは左側植付ホッパ70Lに一体的に固着され、右ホルダ71Rは右側植付ホッパ70Rに一体的に固着されている。左ホルダ71Lは前後方向の左支点軸125回りに回動され、右ホルダ71Rは前後方向の右支点軸126回りに回動されるように構成され、植付具28の左右方向の中央位置に設けられた連動用軸127により、左ホルダ71Lと右ホルダ71Rとが連結されている。また、左ホルダ71Lと一体的に設けられた回動操作アーム128に、上下方向に延びる開閉ロッド131が連結され、カウンターアーム79のピン80が開閉ロッド131に連結されている。左ホルダ71Lと右ホルダ71Rの間には、開閉用スプリング130が設けられており、開閉用スプリング130のスプリング力により、左側くちばし部材70Lと右側くちばし部材70Rが互いに左右方向内側に押圧され、植付具28の下部(左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70R)が閉じるように構成されている。また、開閉用スプリング130のスプリング力により、開閉用ローラ77が、さらには、開閉アーム76が開閉駆動カム75側(上側)に押し付けられている。
【0059】
図5および図6に示されるように、揺動カム駆動軸62の回転とともに、開閉駆動カム75が回転すると、開閉用ローラ77が開閉駆動カム75の周縁形状に沿って移動し、開閉アーム76が揺動される。開閉アーム76の揺動にともなって、連結ロッド78が後方向に移動し、カウンターアーム79が回動して、開閉ロッド131が上下方向に移動し、回動操作アーム128を介して、左ホルダ71Lが回動されるとともに、連動用軸127を介して、右ホルダ71Rが回動され、左ホルダ71Lと右ホルダ71Rが互いに左右対称位置に回動されて、植付具28の下部(左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70R)が開閉される。具体的には、連結ロッド78の前側への移動に伴って、開閉ロッド131が上側へ移動され、植付具28の下部(左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70R)が開かれる。なお、植付具28の上昇時、開閉駆動カム75の外周の局所的な突起部により、植付具28の下部を一時的に大きく開いて、別途設けた清掃用のスクレーパが植付具28内を上下方向に通過できるように構成されている。
【0060】
本実施態様にかかる苗移植機においては、昇降リンク機構29によって、以下のように、植付具28の下端部が軌跡Tを描いて移動される。
【0061】
揺動カム駆動軸62がB方向に回転することにより、揺動カム駆動軸62に固定されている揺動駆動カム54がB方向に回転し、揺動駆動カム54に当接する回動ローラ57を介して、前揺動アーム50および後揺動アーム51が前後に揺動する。
【0062】
一方、クランクアーム駆動軸61が回転することにより、クランクアーム駆動軸61に固定されているクランクアーム55がC方向に回動し、連結アーム56を介して、下アーム53および上アーム52が上下に揺動する。
【0063】
ここに、前揺動アーム50および後揺動アーム51と、上アーム52および下アーム53は、いずれも平行リンク機構であるから、植付具28は垂直方向を向いた姿勢を維持して、その下端が植付け軌跡Tを描いて作動し、植付具28内に受け入れられた苗を適正な姿勢で畝Uに植付けることができる。
【0064】
このようにして、軌跡Tの上死点付近から下降する場合には、植付具28の左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rが閉じた状態となり、下死点で、植付具28の左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rが開かれ、下死点から上昇する場合には、植付具28の左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rが開いた状態となる。
【0065】
苗が植付具28に供給される位置の付近、すなわち、植付具28が作動する軌跡Tの上死点付近にある場合に、揺動駆動カム54が回動ローラ57と当接している位置における揺動駆動カム54の径の変化が小さくなるように、また、苗を植え付ける位置の付近、すなわち植付具28が下死点付近にある場合に、揺動駆動カム54が回動ローラ57と当接している位置における揺動駆動カム54の径の変化が大きくなるように、揺動駆動カム54の形状および揺動駆動カム54が揺動カム駆動軸62に固定される向きが設定されている。
【0066】
揺動駆動カム54の形状および揺動カム駆動軸62に固定される向きをこのように構成することにより、植付具28の先端の移動速度を、苗を植え付けるときよりも、苗を供給するときをきわめて遅くすることができる。
【0067】
また、本実施態様においては、軌跡Tの上死点および下死点では、クランクアーム55と連結アーム56が、鉛直方向で直線状に重なる位置となり、かつ、前揺動アーム50および後揺動アーム51と平行になるように構成されている。したがって、苗が植付具28に供給されるとき、すなわち、植付具28が上死点付近にあるときと、種芋を植え付ける位置、すなわち、植付具28が下死点付近にあるときのクランクアーム55の回転による連結アーム56の上下方向の位置の変化が小さくなるように、クランクアーム55の向きが設定されている。このように構成されることにより、植え付け動作時に、植付具28の先端がループ状の軌跡Tを描くように、植付具28を動作させ、上死点付近(苗が供給される位置)における植付具28の移動速度が、下死点(苗が植え付けられる位置)における移動速度よりも遅くなるように構成されている。
【0068】
さらに、植付具28の先端によって描かれる軌跡Tが、植え付けるときの前後の幅が最大となるように、すなわち、植付具28の上下動する幅の中心よりも下部で前後の幅が最大となるように構成されている。
【0069】
図1に示されるように、主フレーム22には、上下回動自在な上下回動フレーム87が設けられており、上下回動フレーム87には、植付具28によって植え付けられた苗を傾斜姿勢に倒伏させる倒伏ローラ86と、植え付けた苗の周囲の土壌を鎮圧する鎮圧輪15とが、回転自在に設けられている。ここに、図1に示されるように、植付具28の直ぐ後に単一の倒伏ローラ86が配置され、倒伏ローラ86の後に左右一対の鎮圧輪15が配置されているから、機体の前進により、植付具28によって圃場に直立姿勢で植え付けられた苗が、倒伏ローラ86によって後側から押されて、前側に倒伏させて傾斜姿勢にされる。その結果、苗の土中に入る部分が大きくなり、土中に位置する甘薯苗の節部が多くなるので、一株の苗から多数の甘薯を栽培することができ、収量向上を図ることができ、さらに、鎮圧輪15により、苗の左右から、苗の周囲の土壌を鎮圧するので、移植した苗の上方の土壌が崩れないようにして、移植姿勢を安定させ、移植精度を向上させることが可能になる。
【0070】
上述のように、甘薯は、通常、圃場面に対して垂直に近い角度で植付けられる(垂直植え)だけでなく、圃場面に対して傾斜姿勢で植え付けられたり(斜め植え)、船底のように、土中に埋没させて、植え付けられている(船底植え)。
【0071】
そこで、本実施態様においては、植付具28の圃場(畝U)面に対する角度が調整可能で、苗を圃場面に対して種々の角度で植付け可能に構成されている。
【0072】
図8は植付具28の略左側面図であり、図9は植付具28の略背面図、図10図8のA-A線に沿った略横断面図である。
【0073】
図6図7図8および図9に示されるように、植付具28の下部は、くちばし状の左側植付ホッパ70Lとくちばし状の右側植付ホッパ70Rによって構成され、左側植付ホッパ70Lは図示しない支点まわりに左方に揺動可能で、右側植付ホッパ70Rはその支点まわりに右方に揺動可能であって、植付具28の左側植付ホッパ70Lが左方に揺動されるともに、右側植付ホッパ70Rが右方に揺動されると、左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rが開かれ、植付具28が開かれるように構成されている。
【0074】
図8および図9に示されるように、左側植付ホッパ70Lは、ホッパ本体145Lと、ホッパ本体145Lの前面に、左右方向中央部に沿って下方に延び、前方に突出するように形成されたヘラ状のブレード146Lによって構成され、右側植付ホッパ70Rは、ホッパ本体145Rと、ホッパ本体145Rの前面に、左右方向中央部に沿って下方に延び、前方に突出するように形成されたヘラ状のブレード146Rによって構成されている。ブレード146Lおよびブレード146Rはそれぞれ、たとえば溶接によって、ホッパ本体145Lおよびホッパ本体145Rに形成することができる。本実施態様においては、ブレード146Lおよびブレード146Rはそれぞれ、その厚さが一定になるように形成されている。
【0075】
図10に示されるように、ホッパ本体145Lおよびホッパ本体145Rはシェル状をなし、左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rが閉じた状態にあるときは、ホッパ本体145Lおよびホッパ本体145Rの間に苗保持空間150が形成され、苗を苗保持空洞150内に保持可能に構成されている。一方、図7において、左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rが図示しない支点まわりに揺動されたときは、左側植付ホッパ70Lの下端部と右側植付ホッパ70Rの下端部とが、図7および図9において左右に開き、苗保持空間150内に保持されている苗が放出されるように構成されている。
【0076】
図8および図9に示されるように、植付具28の左側の支持部材140Lには、左側植付ホッパ70Lの取付け部141LF、141LRが設けられており、支持部材140Lの取り付け部141LF、141LRには、ボルト穴142LF、142LRが形成され、ボルトを挿通し、ナット(図示せず)に係合させることによって、左側植付ホッパ70Lを固定することができるように構成されている。同様にして、植付具28の右側の支持部材140Rには、右側植付ホッパ70Rの取付け部141RF、141RRが設けられており、支持部材140Rの取り付け部141RF、141RRには、ボルト穴142RF、142RRが形成され、ボルトを挿通し、ナット(図示せず)に係合させることによって、右側植付ホッパ70Rを固定することができるように構成されている。
【0077】
図5および図8に示されるように、左側植付ホッパ70Lの機体後方の取り付け部141LRには、円形のボルト穴142LRが形成され、左側植付ホッパ70Lの機体前方の取り付け部141LFには、長孔状のボルト穴142LFが形成されている。同様にして、右側植付ホッパ70Rの機体後方の取り付け部141RRには、円形のボルト穴142RRが形成され、右側植付ホッパ70Rの機体前方の取り付け部141RFには、長孔上のボルト穴142RFが形成されている。したがって、左側植付ホッパ70Lの長孔状のボルト穴142LFの上端部より下方部分に、左側植付ホッパ70Lのボルト143LFをねじ込んで、左側植付ホッパ70Lを固定し、右側植付ホッパ70Rの長孔状のボルト穴142RFの上端部より下方の、左側植付ホッパ70Lのボルト143LFがねじ込まれている位置と対応する部分に、右側植付ホッパ70Rのボルト143RFをねじ込んで、右側植付ホッパ70を固定することによって、植付具28を圃場に対して垂直方向から後方に傾斜した位置に固定することが可能になる。
【0078】
ここに、ボルト143LFおよびボルト143RFを、長孔状のボルト穴142LF、142RFの下方にねじ込んで固定すればするほど、左側植付ホッパ70Lおよび右側植付ホッパ70Rを、すなわち、植付具28を垂直方向から後方への傾斜角度が大きくなるように固定することができる。
【0079】
図11図12図13および図14はそれぞれ、左側植付ホッパ70Lおよび右側植付ホッパ70Rが垂直方向から後方への傾斜角度が大きくなるように固定されたときの昇降リンク機構の略側面図、植付装置19の略平面図、植付具28の略左側面図および植付具28の略背面図である。
【0080】
以上のように構成された本実施態様にかかる苗移植機においては、以下のようにして、苗が圃場の畝Uに移植される。
【0081】
まず、作業者によって、苗を移植すべき角度に応じて、ねじ穴142LFの所定部分に143LFをねじ込むとともに、ねじ穴142RFの所定部分にねじ143RFをねじ込んで、左側植付ホッパ70Lおよび右側植付ホッパ70Rが所定の位置に固定される。
【0082】
次いで、作業者によって、エンジン11が始動され、操縦ハンドル16が操作されて、苗移植機10が圃場内を走行され、苗の植付が開始される。
【0083】
移植すべき苗は、作業者によって、補助ガイド34の上部開口34Aから投入される。
【0084】
ここに、補助ガイド34は、その横断面積が上部開口34Aにおいて最大で、下部開口34Bにおいて最小になるように、徐々に小さくなるように構成されているから、作業者は容易に苗を補助ガイド34内に投入することができる。
【0085】
補助ガイド34の上部開口34Aから投入された移植すべき苗は、補助ガイド34から苗供給ガイド33内に送られ、苗供給ガイド33から植付装置19内に送られる。
【0086】
この時点では、植付装置19のカップ状の植付具28は上死点に位置しており、左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rは閉じられているから、苗は植付具28のホッパ本体145Lおよびホッパ本体145Rの間に形成された苗保持空間150内に保持される。
【0087】
昇降リンク機構29を作動させると、揺動カム駆動軸62が図5のB方向に回転し、揺動カム駆動軸62に固定されている揺動駆動カム54がB方向に回転し、揺動駆動カム54に当接する回動ローラ57を介して、前揺動アーム50および後揺動アーム51が前後に揺動する。
【0088】
昇降リンク機構29を作動させた場合には、クランクアーム駆動軸61が回転し、クランクアーム駆動軸61に固定されているクランクアーム55がC方向に回動し、連結アーム56を介して、下アーム53および上アーム52が上下に揺動する。
【0089】
こうして、植付具28の先端部がループ状の軌跡Tを描いて、移動され、植付具28の先端部が下死点に達すると、植付具28は、畝U中に 所定深さまで貫入するとともに、植付具28の左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rが開いて、植付具28内に保持されていた苗が畝U内に植え付けられる。
【0090】
ここに、前揺動アーム50および後揺動アーム51と上アーム52および下アーム53は、いずれも平行リンク機構であるから、植付具28は垂直方向を向いた姿勢を維持して、その下端が植付け軌跡Tを描いて作動し、植付具28内に受け入れられた苗が適正な姿勢で畝に植付けられる。
【0091】
甘薯の苗は、圃場面に対して垂直に近い角度で植付けられる(垂直植え)だけでなく、圃場面に対して傾斜姿勢で植え付けられたり(斜め植え)、船底のように、土中に埋没させて、植え付けられる(船底植え)ため、甘薯の苗の移植機としては、このように、垂直植え、斜め植えおよび船底植えのいずれでも、苗を植え付けられることが望ましい。しかしながら、従来の甘薯の苗移植機においては、苗を圃場面に対して垂直に近い角度で、植付けることしかできなかったり、あるいは、苗の植え方が斜め植えか、船底植えに固定されており、伝動系を分解して、部品を大幅に取り換えなければ、苗の植え方を変更することができないという問題があった。しかし、本実施態様においては、左側植付ホッパ70Lの取り付け部141LFに形成されたボルト穴142LFの上端部よりも下方部分に、左側植付ホッパ70Lのボルト143LFをねじ込み、右側植付ホッパ70Rの取り付け部141LRに形成されたボルト穴142LRの上端部よりも下方部分に、右側植付ホッパ70Rのボルト143RFをねじ込んで、左側植付ホッパ70Lおよび右側植付ホッパ70Rを固定することによって、左側植付ホッパ70Lおよび右側植付ホッパ70Rを垂直方向から後方への傾斜角度が大きくなるように設定することができるから、作業者は、ボルト143LFをボルト穴142LFにねじ込む位置およびボルト143RFをボルト穴142LRにねじ込む位置を選択することによって、きわめて容易に植付具28の傾きを決定して、植付具28を固定することが可能になる。
【0092】
また、本実施態様においては、左側植付ホッパ70Lのホッパ本体145Lには、その前面に、中央部に沿って下方に延び、前方に突出するようにブレード146Lが形成され、右側植付ホッパ70Rのホッパ本体145Rには、その前面に、中央部に沿って下方に延び、前方に突出するようにブレード146Rが形成されており、したがって、植付具28を畝U内に貫入する際、ブレード146Lおよびブレード146Rが土を左右に切り分けるから、植付具28を低い抵抗で畝U内に貫入させることができ、苗を適切な深さで畝に植え付けることが可能になる。
【0093】
図15は本発明の別の実施態様にかかる苗移植機の植付具28の左側植付ホッパ70Lと右側植付ホッパ70Rの略横断面図であり、図10に対応する図面である。
【0094】
図15に示されるように、本実施態様にかかる苗移植機の左側植付ホッパ70Lのブレード146Lおよび右側植付ホッパ70Rのブレード146Rには、それぞれ、補強部材148Lおよび補強部材148Rが取り付けられている。補強部材148Lおよび148Rは、平板状の部材であり、2つの長い側部の一方が左側植付ホッパ70Lおよび右側植付ホッパ70Rのブレード146Lおよびブレード146Rに固定され、2つの長い側部の他方がホッパ本体145Lおよびホッパ本体145Rに固定されており、左側植付ホッパ70Lのホッパ本体145L、ブレード146Lおよび補強部材148Lによって、トラス構造が形成され、右側植付ホッパ70Rのホッパ本体145R、ブレード146Rおよび補強部材148Rによって、トラス構造が形成されている。
【0095】
本実施態様においては、このように、左側植付ホッパ70Lのホッパ本体145L、ブレード146Lおよび補強部材148Lによって、トラス構造が形成され、右側植付ホッパ70Rのホッパ本体145R、ブレード146Rおよび補強部材148Rによって、トラス構造が形成されているから、左側植付ホッパ70Lおよび右側植付ホッパ70Rの強度を大幅に向上させることが可能になる。
【0096】
一方、特開2014-158426号公報に開示された従来の甘薯などの苗の移植機においては、当該公報の図18に示されているように、正面(背面)視で三角形となるよう無端状に搬送ベルトを巻回し、この搬送ベルトに、ブラシ毛やスポンジなどによって苗を挟持するクリップを所定間隔で設け、植付位置まで、苗を搬送するようにした苗搬送装置が設けられている。かかる苗搬送装置は、機体下部側の苗植付供給位置まで、苗を搬送する必要があるため、苗を機体上側から下側に向かって略垂直方向に搬送する領域を備えているが、この略垂直方向に苗を搬送する領域において、クリップによる苗の挟持力が弱いと、苗が落下し、苗を植え付けるべき位置に、苗を植え付けることができないという問題がある。
【0097】
かかる問題は、クリップの苗を挟持する力を強くすることによって解決可能であるが、クリップの挟持力を強くしすぎると、苗植付供給位置で、苗を供給することができず、苗を植え付けるべき位置に、苗を植え付けることができないという問題が生じる。
【0098】
そこで、一つの態様にかかる苗供給装置においては、図16Aに示されるように、クリップ160内に、クリップ160の開放端部に向くように、ブラシが植毛された苗を挟持するブラシ毛161を配置し、図16Bに示されるように、正面(背面)視で三角形となるように無端状に巻回された搬送ベルト162に、かかる構造のクリップ160を所定間隔で設けている。
【0099】
この態様によれば、クリップ162に苗をセットする際に、苗はブラシ毛161の最下部またはその近傍まで押し込まれ、クリップ162によって保持されるので、苗を機体上側から下側に向かって略垂直方向に搬送する領域において、苗が落下しそうになっても、複数のブラシ毛161に押し戻され、脱落しにくく、したがって、クリップ160の挟持力をあまり強く設定しなくても、略垂直方向に苗を搬送する領域において、苗がクリップ160から落下することを効果的に防止することができる。
【0100】
また、他の態様にかかる苗供給装置においては、図17Aに示されるように、クリップ170内に、クリップ160の開放端部から内側に向けて、ブラシが植毛された苗を挟持するブラシ毛171を配置し、図17Bに示されるように、正面(背面)視で三角形となるように無端状に巻回された搬送ベルト172に、かかる構造のクリップ170を所定間隔で設けている。
【0101】
この態様によれば、クリップ170に苗を挟持させやすいから、略垂直方向に苗を搬送する領域において、苗がクリップ170から落下することを防止するため、クリップ170の挟持力を強く設定しても、苗をクリップ170から容易に取り出すことができる。
【0102】
以上、本発明の好ましい実施態様につき説明を加えたが、本発明は、かかる実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0103】
たとえば、前記実施態様においては、苗移植機1は、15cm程度の甘薯の苗を移植するように構成されているが、特開2016-123359号公報に記載されている方法にしたがって苗育された15cm程度の甘薯の苗を植え付けるように構成されているが、本発明にかかる苗移植機は、特開2016-123359号公報に記載されている方法にしたがって苗育された15cm程度の甘薯の苗を植え付けるものに限定されず、約25cm程度の長さの甘薯の苗を植え付ける場合にも、甘薯の苗以外の一般の野菜の苗を植え付ける場合にも用いることができる。
【0104】
また、前記実施態様においては、左側植付ホッパ70Lにおいても右側植付ホッパ70Rにおいても、ブレード146Lおよびブレード146Rはそれぞれ、ホッパ本体145Lおよびホッパ本体145Rと一体的に形成されているが、一体的に形成することは必ずしも必要がなく、ブレード146Lおよびブレード146Rをそれぞれ、溶接によって、ホッパ本体145Lおよびホッパ本体145Rに設けることもできる。
【符号の説明】
【0105】
1 苗移植機
10 走行車体
11 エンジン
12 伝動ケース
13 一対の前輪
14 一対の後輪
15 鎮圧輪
16 操縦ハンドル
18 ローリング軸
19 植付装置
20 走行伝動ケース
21 後フレーム
22 主フレーム
23 油圧昇降シリンダ
24 油圧切替バルブ部
25 左右傾斜用油圧シリンダ
26 植付伝動ケース
27 植付装置駆動ケース
28 植付具
29 昇降リンク機構
31 苗供給部
33 苗供給ガイド
33A 苗供給ガイドの上部開口
33B 苗供給ガイドの下部開口
34 補助ガイド
34A 補助ガイドの上部開口
34B 補助ガイドの下部開口
40 延長ケース
40a 上側ア-ム
41 前輪支持フレーム
42 左右傾斜センサ
43 横杆
44 左側の後輪昇降ロッド
45 右側の後輪昇降ロッド
50 前揺動アーム
51 後揺動アーム
52 上アーム
54 揺動駆動カム
55 クランクアーム
60 上後軸
53 下アーム
54 揺動駆動カム
56 連結アーム
57 回動ローラ
60 上後軸
61 クランクアーム駆動軸
62 揺動カム駆動軸
63 下前軸
64 上軸
65 下後軸
66 第一の連結軸
67 第二の連結軸
68 連結支持板
70L 左側植付ホッパ
70R 右側植付ホッパ
71L 左ホルダ
71R 右ホルダ
72 支持板
73 回動上軸
74 回動下軸
75 開閉駆動カム
76 開閉アーム
77 開閉用ローラ
78 連結ロッド
79 カウンターアーム
80 ピン
86 倒伏ローラ
87 上下回動フレーム
91 エンジン載置台
92 油圧ポンプ
125 左支点軸
126 右支点軸
127 連動用軸
128 回動操作アーム
130 開閉用スプリング
131 開閉ロッド
140L、140R 支持部材
141LF、141LR、141RF、141RR 取り付け部
142LF、142LR、142RF、142RR ボルト穴
143LF、143LR、143RF、143RR ボルト
145L、145R ホッパ本体
146L、146R ブレード
148L、148R 補強部材
150 苗保持空間
160 クリップ
161 ブラシ毛
162 搬送ベルト
170 クリップ
171 ブラシ毛
172 搬送ベルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17