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特許7228765乗り物酔い推定システム、乗物、乗り物酔い推定方法、乗り物酔い推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】乗り物酔い推定システム、乗物、乗り物酔い推定方法、乗り物酔い推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230217BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20230217BHJP
   B60W 40/08 20120101ALI20230217BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20230217BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALI20230217BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20230217BHJP
【FI】
G08G1/16 F
A61B10/00 H
B60W40/08
G16Y10/40
G16Y40/10
G16Y40/20
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020506589
(86)(22)【出願日】2019-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2019010203
(87)【国際公開番号】W WO2019177002
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2018047188
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森浦 祐太
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉孝
(72)【発明者】
【氏名】河井 康史
(72)【発明者】
【氏名】半田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】森下 陽平
(72)【発明者】
【氏名】沖野 徹
(72)【発明者】
【氏名】萩野 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】櫻川 徹
(72)【発明者】
【氏名】森下 智史
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-299569(JP,A)
【文献】特開2005-326962(JP,A)
【文献】特開2006-027510(JP,A)
【文献】特開2017-223591(JP,A)
【文献】特開2017-099846(JP,A)
【文献】特開2007-236644(JP,A)
【文献】特開2006-027347(JP,A)
【文献】特開2018-032339(JP,A)
【文献】特開2007-212421(JP,A)
【文献】特開2012-059274(JP,A)
【文献】特開2006-034576(JP,A)
【文献】特開2017-132364(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024269(WO,A1)
【文献】藤澤 智 Satoru FUJISAWA,システムインテグレーション最前線,計測自動制御学会論文集 第48巻 第1号 Transactions of the Society of Instrument and Control Engineers,日本,公益社団法人計測自動制御学会 The Society of Instrument and Control Engineers,第48巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
A61B 10/00
B60W 40/08
G16Y 10/40
G16Y 40/10
G16Y 40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に乗っている人物の状態を示す人物情報に基づいて前記人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行う推定部と、
前記推定部での前記推定処理の結果を出力する出力部と、
を備え
前記推定部は、前記推定処理では、前記人物情報に加えて、前記乗物の状態を示す乗物情報を利用するように構成され、
前記人物情報は、前記人物の姿勢を示す姿勢情報を含み、
前記人物の姿勢は、前記人物の頭部の中心軸の体幹の中心軸からの傾き、及び、水平方向からの前記人物の体幹の中心軸の傾きで表され、
前記乗物情報は、前記乗物の挙動を示す挙動情報を含み、
前記推定処理は、前記乗物の挙動と前記人物の姿勢とのずれの大きさに基づいて前記人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する、
乗り物酔い推定システム。
【請求項2】
前記乗物情報は、前記乗物の内部空間の雰囲気を示す雰囲気情報を含む、
請求項1の乗り物酔い推定システム。
【請求項3】
前記人物情報は、前記人物の属性を示す属性情報と、前記人物の生体情報の変化を示す経過情報と、前記人物の感情を示す感情情報とのいずれか一つを含む、
請求項1又は2の乗り物酔い推定システム。
【請求項4】
前記推定部は、前記人物の重心位置と前記乗物が前記人物から受ける圧力の分布との少なくとも一方を検出する圧力センサに通信可能に接続され、
前記推定部は、前記圧力センサからの出力に基づいて、前記人物の姿勢を判定するように構成される、
請求項の乗り物酔い推定システム。
【請求項5】
前記出力部から前記推定処理の結果を受け取る報知システムを備え、
前記報知システムは、前記推定処理の結果が前記人物が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合、前記人物に乗り物酔いの可能性を報知する報知処理を行うように構成される、
請求項1~4のいずれか一つの乗り物酔い推定システム。
【請求項6】
前記出力部から前記推定処理の結果を受け取る予防システムを備え、
前記予防システムは、前記推定処理の結果が前記人物が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合、前記人物の乗り物酔いを予防する予防処理を行うように構成される、
請求項1~5のいずれか一つの乗り物酔い推定システム。
【請求項7】
前記出力部から前記推定処理の結果を受け取る報知システムと、
前記出力部から前記推定処理の結果を受け取る予防システムと、
を備え、
前記報知システムは、前記推定処理の結果が前記人物が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合、前記人物に乗り物酔いの可能性を報知する報知処理を行うように構成され、
前記予防システムは、前記報知システムが前記報知処理を実行した後でも前記推定処理の結果が前記人物が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合、前記人物の乗り物酔いを予防する予防処理を行うように構成される、
請求項1~のいずれか一つの乗り物酔い推定システム。
【請求項8】
前記予防システムは、前記乗物の座席に設置され、前記座席の表面の形状を変化させる駆動装置を含む、
請求項6又は7の乗り物酔い推定システム。
【請求項9】
前記駆動装置は、前記座席の座部と背もたれ部との少なくとも一方に設置される1以上のアクチュエータを有する、
請求項8の乗り物酔い推定システム。
【請求項10】
前記予防システムは、前記乗物内のにおいを調整する成分を有するにおい調整装置を含む、
請求項6~9のいずれか一つの乗り物酔い推定システム。
【請求項11】
前記予防システムは、前記人物にリラクゼーション効果を与えるリラクゼーション装置を含む、
請求項~10のいずれか一つの乗り物酔い推定システム。
【請求項12】
前記予防システムは、前記乗物の走行を制御する走行制御装置を含む、
請求項~11のいずれか一つの乗り物酔い推定システム。
【請求項13】
前記走行制御装置は、前記予防処理では、前記人物の負担が少なくなるように前記乗物の走行を制御するように構成される、
請求項12の乗り物酔い推定システム。
【請求項14】
前記走行制御装置は、前記予防処理では、前記乗物の目的地までの残り時間に応じて、前記乗物の制御内容を変更するように構成される、
請求項12又は13の乗り物酔い推定システム。
【請求項15】
前記予防システムは、前記人物の身体の一部を冷却する冷却装置を含む、
請求項6~14のいずれか一つの乗り物酔い推定システム。
【請求項16】
乗り物酔いに関する情報を収集するデータセンタと通信する通信部を更に備える、
請求項~15のいずれか一つの乗り物酔い推定システム。
【請求項17】
前記推定処理の内容を決定する推定アルゴリズムを記憶する記憶部を備え、
前記推定部は、前記記憶部に記憶された前記推定アルゴリズムを、前記データセンタから得た情報に基づいて補正するように構成される、
請求項16の乗り物酔い推定システム。
【請求項18】
前記推定部は、前記乗物に複数の人物が乗っている場合、前記複数の人物のそれぞれに対して個別に前記推定処理を行うように構成される、
請求項1~17のいずれか一つの乗り物酔い推定システム。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一つの乗り物酔い推定システムと、
前記乗り物酔い推定システムが搭載される本体と、
を備える、
乗物。
【請求項20】
1以上のプロセッサにおいて、乗物に乗っている人物の状態を示す人物情報に基づいて、前記人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行う第1ステップと、
前記1以上のプロセッサにおいて、前記推定処理の結果を出力する第2ステップと、
を含み、
前記推定処理は、前記人物情報に加えて、前記乗物の状態を示す乗物情報を利用し、
前記人物情報は、前記人物の姿勢を示す姿勢情報を含み、
前記人物の姿勢は、前記人物の頭部の中心軸の体幹の中心軸からの傾き、及び、水平方向からの前記人物の体幹の中心軸の傾きで表され、
前記乗物情報は、前記乗物の挙動を示す挙動情報を含み、
前記推定処理は、前記乗物の挙動と前記人物の姿勢とのずれの大きさに基づいて前記人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する、
乗り物酔い推定方法。
【請求項21】
1以上のプロセッサにより実行されると、前記1以上のプロセッサに、
乗物に乗っている人物の状態を示す人物情報に基づいて、前記人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行う第1指示と、
前記推定処理の結果を出力する第2指示と、
を与え、
前記推定処理は、前記人物情報に加えて、前記乗物の状態を示す乗物情報を利用し、
前記人物情報は、前記人物の姿勢を示す姿勢情報を含み、
前記人物の姿勢は、前記人物の頭部の中心軸の体幹の中心軸からの傾き、及び、水平方向からの前記人物の体幹の中心軸の傾きで表され、
前記乗物情報は、前記乗物の挙動を示す挙動情報を含み、
前記推定処理は、前記乗物の挙動と前記人物の姿勢とのずれの大きさに基づいて前記人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する、
乗り物酔い推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、乗り物酔い推定システム、乗物、乗り物酔い推定方法、及び乗り物酔い推定プログラムに関する。本開示は、特に、乗物に乗っている人物の乗り物酔い(動揺病)の発症に関する推定を行う乗り物酔い推定システム、乗物、乗り物酔い推定方法、及び乗り物酔い推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、動揺病低減装置を開示する。特許文献1の動揺病低減装置は、乗物の乗員に運転者類似頭部運動を誘発させる刺激を与える刺激手段を備える。刺激手段は、乗物の旋回時に、乗員の遠心側に位置する体の一部を押すことで、乗員に運転者類似頭部運動を誘発させ、同乗者にも運転者類似頭部運動をさせる。
【0003】
特許文献1の動揺病低減装置は、乗員が動揺病(乗り物酔い)を発症しているかどうかにかかわらず、運転者類似頭部運動を誘発させる。そのため、乗員が動揺病(乗り物酔い)を発症していない場合には、逆に、運転者類似頭部運動が乗り物酔いを誘発するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-131269号公報
【発明の概要】
【0005】
課題は、乗り物酔いの発症の可能性を低減できる乗り物酔い推定システム、乗物、乗り物酔い推定方法、及び乗り物酔い推定プログラムを提供することである。
【0006】
本開示の一態様の乗り物酔い推定システムは、乗物に乗っている人物の状態を示す人物情報に基づいて前記人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行う推定部と、前記推定部での前記推定処理の結果を出力する出力部と、を備える。前記推定部は、前記推定処理では、前記人物情報に加えて、前記乗物の状態を示す乗物情報を利用するように構成されている。前記人物情報は、前記人物の姿勢を示す姿勢情報を含む。前記人物の姿勢は、前記人物の頭部の中心軸の体幹の中心軸からの傾き、及び、水平方向からの前記人物の体幹の中心軸の傾きで表される。前記乗物情報は、前記乗物の挙動を示す挙動情報を含む。前記推定処理は、前記乗物の挙動と前記人物の姿勢とのずれの大きさに基づいて前記人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する。
【0007】
本開示の一態様の乗物は、前記乗り物酔い推定システムと、前記乗り物酔い推定システムが搭載される本体と、を備える。
【0008】
本開示の一態様の乗り物酔い推定方法は、1以上のプロセッサにおいて、乗物に乗っている人物の状態を示す人物情報に基づいて、前記人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行う第1ステップと、前記1以上のプロセッサにおいて、前記推定処理の結果を出力する第2ステップと、を含む。前記推定処理は、前記人物情報に加えて、前記乗物の状態を示す乗物情報を利用する。前記人物情報は、前記人物の姿勢を示す姿勢情報を含む。前記人物の姿勢は、前記人物の頭部の中心軸の体幹の中心軸からの傾き、及び、水平方向からの前記人物の体幹の中心軸の傾きで表される。前記乗物情報は、前記乗物の挙動を示す挙動情報を含む。前記推定処理は、前記乗物の挙動と前記人物の姿勢とのずれの大きさに基づいて前記人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する。
【0009】
本開示の一態様の乗り物酔い推定プログラムは、1以上のプロセッサにより実行されると、前記1以上のプロセッサに、第1指示と第2指示とを与える。前記第1指示は、乗物に乗っている人物の状態を示す人物情報に基づいて、前記人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行う指示である。前記第2指示は、前記推定処理の結果を出力する指示である。前記推定処理は、前記人物情報に加えて、前記乗物の状態を示す乗物情報を利用する。前記人物情報は、前記人物の姿勢を示す姿勢情報を含む。前記人物の姿勢は、前記人物の頭部の中心軸の体幹の中心軸からの傾き、及び、水平方向からの前記人物の体幹の中心軸の傾きで表される。前記乗物情報は、前記乗物の挙動を示す挙動情報を含む。前記推定処理は、前記乗物の挙動と前記人物の姿勢とのずれの大きさに基づいて前記人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態の乗り物酔い推定システムのブロック図である。
図2図2は、乗物の説明図である。
図3図3は、乗物の座席の説明図である。
図4図4は、上記乗り物酔い推定システムによる推定処理の説明図である。
図5図5は、上記乗り物酔い推定システムの動作のフローチャートである。
図6図6は、一変形例の乗り物酔い推定システムの動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.実施形態
1.1 概要
図1は、一実施形態の乗り物酔い推定システム10を示す。乗り物酔い推定システム10は、推定部412と出力部413と、を備える。推定部412は、図2に示すように、乗物(自動車100)に乗っている人物200の状態を示す人物情報に基づいて人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行うように構成される。出力部413は、推定部412での推定処理の結果を出力するように構成される。
【0012】
乗り物酔い推定システム10では、人物が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する。ここで、人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかの推定は、人物200の乗り物酔いの発症の可能性の推定であって、人物200が現時点で乗り物酔いをしているかどうかの推定ではない。換言すれば、人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかの推定は、現在の状況が継続すれば人物200が所定時間(例えば、10分後)経過後に乗り物酔いをすることになるかどうかを推定することといってよい。つまり、推定処理は、人物200が乗り物酔いを発症する前に、乗り物酔いになる可能性を推定する。そして、乗り物酔い推定システム10では、この推定処理の結果が出力部413により出力される。これにより、人物200に乗り物酔いを予防するような行動を促す処理や、人物200の乗り物酔いを予防するような処理が可能となる。よって、乗り物酔い推定システム10によれば、乗り物酔いの発症の可能性を低減できる。
【0013】
1.2 構成
以下、図1図5を参照して、乗り物酔い推定システム10について更に詳細に説明する。乗り物酔い推定システム10は、図1に示すように、センシングシステム20と、デバイスシステム30と、制御装置40と、を備える。図2は、乗り物酔い推定システム10が適用される乗物である自動車100を示す。自動車100は、本体101に、乗り物酔い推定システム10が搭載される。また、本体101は、座席110、ダッシュボード120、及び天井130を含む。
【0014】
センシングシステム20は、図1に示すように、加速度センサ21aと、角速度センサ21bと、においセンサ22と、圧力センサ23と、カメラ24と、赤外線センサ25と、ミリ波センサ26と、テラヘルツ波センサ27と、呼気センサ28と、を備える。
【0015】
加速度センサ21a、角速度センサ21b及びにおいセンサ22は、乗物(自動車100)の状態を示す乗物情報を取得するために利用される。乗物情報は、乗物(自動車100)の挙動を示す挙動情報と、乗物(自動車100)の内部空間(本体101内)の雰囲気を示す雰囲気情報とを含む。
【0016】
加速度センサ21aは、図2に示すように、本体101に設置され、自動車100の加速度を測定する。加速度センサ21aは、挙動情報を取得するために利用される。挙動情報が示す自動車100の挙動は、自動車100の進行方向と推進力とを含む。自動車100の進行方向と推進力とは、加速度センサ21aで測定された自動車100の加速度に基づいて算出される。
【0017】
角速度センサ21bは、図2に示すように、本体101に設置され、自動車100の角速度を測定する。角速度センサ21bは、挙動情報を取得するために利用される。挙動情報が示す自動車100の挙動は、自動車100の旋回方向と旋回速度とを含む。自動車100の旋回方向と旋回速度とは、角速度センサ21bで測定された自動車100の角速度に基づいて算出される。
【0018】
においセンサ22は、雰囲気情報を取得するために利用される。雰囲気情報が示す自動車100の内部空間の雰囲気としては、におい、明るさ、温度が挙げられる。本実施形態では、雰囲気情報は、自動車100の内部空間のにおいを示す。においセンサ22は、においに影響するガスの濃度を測定するガスセンサである。においに影響するガスの例としては、人物200の乗り物酔いを誘発しやすいガスが挙げられる。その具体例は、揮発性有機化合物(ホルムアルデヒド、トルエン、ガソリン)である。
【0019】
圧力センサ23と、カメラ24と、赤外線センサ25と、ミリ波センサ26と、テラヘルツ波センサ27と、呼気センサ28とは、乗物(自動車100)に乗っている人物200の状態を示す人物情報を取得するために利用される。人物情報は、人物200の姿勢を示す姿勢情報と、人物200の生体情報の変化を示す経過情報と、人物200の感情(の瞬時値又は変化値)を示す感情情報とを含む。人物200の生体情報の例としては、呼気、体温(特に鼻の温度)、顔色、心拍、呼吸、まばたきが挙げられる。
【0020】
圧力センサ23は、姿勢情報を取得するために利用される。圧力センサ23は、自動車100の各座席110に設けられる。例えば、圧力センサ23は、図3に示すように、第1圧力センサ231と、第2圧力センサ232と、第3圧力センサ233と、を含む。第1圧力センサ231は、人物200の重心位置を検出するために座席110の座部111に設置される。このように、第1圧力センサ231は、人物200の重心位置と乗物100が人物200から受ける圧力の分布を検出する。第1圧力センサ231からの出力は、図4に示す、人物200の頭部210の中心軸P11の体幹220の中心軸P12からの傾きθ1、及び、水平方向からの中心軸P12の傾きθ2の算出に利用される。人物200の傾きθ1,θ2が人物の姿勢の評価に利用される。第2圧力センサ232及び第3圧力センサ233は、乗物100が人物200から受ける圧力の分布を検出するために、背もたれ部112及びヘッドレスト113に設置される。特に、第2圧力センサ232は、人物200の体幹220の中心軸P12(図4参照)の測定の精度の向上に利用される。また、第3圧力センサ233は、人物200の頭部210の中心軸P11(図4参照)の測定の精度の向上に利用される。
【0021】
カメラ24、赤外線センサ25、ミリ波センサ26、及びテラヘルツ波センサ27は、センサユニット29を構成する。センサユニット29は、図2に示すように、自動車100の天井130に設置される。なお、センサユニット29は、天井310ではなくダッシュボード120に設置されていてもよい。なお、ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27は、別途、乗員(自動車100に乗っている人物200)に対して見通し環境となる場所に設置してもよい。このとき、ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27においてアンテナを含む高周波回路部のみを乗員に対して見通し環境となる場所に設置してもよい。
【0022】
カメラ24は、人物200の画像(特に、人物200の頭部210の画像)を生成するために利用される。カメラ24で生成された人物200の画像は、姿勢情報を取得するために利用される。つまり、カメラ24で生成された画像は、人物200の傾きθ1,θ2の算出に利用される。また、カメラ24は、感情情報を取得するために利用される。つまり、カメラ24で生成された人物200の画像は、人物200の感情の判定に利用される。
【0023】
赤外線センサ25は、特に、赤外線イメージセンサであり、人物200の熱画像を生成する。赤外線センサ25の出力(熱画像)は、経過情報の一つである体温(特に鼻の温度)の変化の取得に利用される。また、赤外線センサ25で生成された熱画像は、姿勢情報を取得するためにも利用される。つまり、熱画像は、人物200の傾きθ1,θ2の算出に利用される。また、赤外線センサ25は、感情情報の取得にも利用される。つまり、熱画像は、人物200の感情の判定に利用される。
【0024】
ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27は、人物200の体動に起因する周波数を検出する。ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27の出力から心拍変動スペクトル(心拍ゆらぎのスペクトル)が得られる。この心拍変動スペクトルは、約0.05~0.15[Hz]の帯域に含まれる低周波成分と、約0.15~0.8[Hz]に含まれる高周波成分とに分離できる。低周波成分は、血圧のフィードバック調節による交感神経と副交感神経系の活動の変調に影響される。心拍変動スペクトルの低周波成分は、血圧の変動に由来する成分(血圧成分)を含む。一方、心拍変動スペクトルの高周波成分は、呼吸に由来する成分(呼吸成分)を含む。この呼吸成分のピークの周波数が、呼吸周波数であると考えられる。以上の点から、ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27は、経過情報を取得するために併用される。ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27で取得される経過情報は、心拍及び呼吸の変化である。ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27については、指向性を有するものを利用できる。この場合、ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27は、人物200のいる空間からの周波数成分と人物200のいない空間からの周波数成分とを取得できる。人物200のいる空間からの周波数成分と人物200のいない空間からの周波数成分との差分をとることで、乗物(自動車100)の揺れ等に起因する雑音を低減できる。これによって、ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27による周波数成分の測定精度の向上が図れる。なお、ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27の指向性の制御は、アンテナの向きを機械的に制御してもよいし、アレーアンテナを用いて電子的に行ってもよい。なお、ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27の代わりにマイクロ波センサを用いてもよい。要するに、適宜の周波数センサが利用できる。
【0025】
呼気センサ28は、人物200の呼気に含まれるガスを検出するガスセンサである。呼気センサ28は、経過情報を取得するために利用される。呼気センサ28で取得される経過情報は、呼気の変化である。呼気センサ28で検出するガスの例としては、乗り物酔いに関連があるガス(二酸化炭素)が挙げられる。呼気中の二酸化炭素濃度の減少は、乗り物酔いの発症の予兆と考えられている。また、呼気センサ28で検出するガスの例としては、感情(ストレス)に関連があるガス(アルデヒド系及びピロール系ガス)が挙げられる。アルデヒド系やピロール系ガスの濃度と感情(ストレス)との間には正の相関があると考えられている。例えば、アルデヒドの濃度が増加した場合、ストレスが増加していると判断できる。呼気センサ28は、図2に示すように、前側の座席110のヘッドレスト113の前側及び後ろ側にそれぞれ設けられる。ヘッドレスト113の前側の呼気センサ28は、前側の座席110に座る人物200の呼気の検出に利用される。ヘッドレスト113の後ろ側の呼気センサ28は、後ろ側の座席110に座る人物200の呼気の検出に利用される。
【0026】
デバイスシステム30は、図1に示すように、スピーカ31と、カーナビゲーションシステム32と、空調装置33と、パワーウインドウ34と、駆動装置35と、におい調整装置36と、リラクゼーション装置37と、走行制御装置38と、冷却装置39と、を備える。スピーカ31と、カーナビゲーションシステム32と、空調装置33と、パワーウインドウ34と、駆動装置35と、におい調整装置36と、リラクゼーション装置37と、走行制御装置38と、冷却装置39とは、本体101に設置されている。
【0027】
スピーカ31、カーナビゲーションシステム32、空調装置33、及びパワーウインドウ34は、自動車100に備わっている。スピーカ31は、音声や音楽等を再生するための装置である。カーナビゲーションシステム32は、目的地までの案内等をするための装置である。カーナビゲーションシステム32は、3Dヘッドアップディスプレイ(HUD)等を有し、人物200の視界に虚像を投影することで、情報を表示するものもある。このような虚像は、液晶ディスプレイに表示される画像よりも人物200の乗り物酔いを引き起こす可能性がある。空調装置33は、自動車100内の温度を調整するための装置である。パワーウインドウ34は、自動車100の窓の開閉を行う装置である。なお、スピーカ31、カーナビゲーションシステム32、空調装置33、及びパワーウインドウ34の機能自体はよく知られているため、詳細な説明は省略する。
【0028】
駆動装置35は、乗物(自動車100)の座席110に設置され座席110の表面の形状を変化させる機能を有する。これによって、駆動装置35は、座席110に座る人物200の姿勢の変化を促す。駆動装置35は、図3に示すように、一対の第1アクチュエータ351と、一対の第2アクチュエータ352と、一対の第3アクチュエータ353と、を備える。一対の第1アクチュエータ351は、座席110の座部111に、座部111の左右に並べて配置されている。各第1アクチュエータ351は、動力源(例えばエアパック、モータ)によりアームを駆動して座部111を内側から外側へ押圧することで、座部111の表面の形状を変化させる。一対の第1アクチュエータ351は個別に制御可能であり、これにより、座部111の表面を左右に傾斜させることができる。加えて、一対の第1アクチュエータ351は個別に前後方向の傾斜制御が可能であり、座部111の表面を前後に傾斜させることもできる。一対の第2アクチュエータ352は、座席110の背もたれ部112に、背もたれ部112の左右に並べて配置されている。各第2アクチュエータ352は、動力源(例えばエアパック、モータ)によりアームを駆動して背もたれ部112を内側から外側へ押圧することで、背もたれ部112の表面の形状を変化させる。一対の第2アクチュエータ352は個別に制御可能であり、これにより、背もたれ部112の表面を左右に傾斜させることができる。加えて、一対の第2アクチュエータ352は個別に上下方向の傾斜制御が可能であり、背もたれ部112を上下に傾斜させることもできる。一対の第3アクチュエータ353は、座席110のヘッドレスト113に、ヘッドレスト113の左右に並べて配置されている。各第3アクチュエータ353は、動力源(例えばエアパック、モータ)によりアームを駆動してヘッドレスト113を内側から外側へ押圧することで、ヘッドレスト113の表面の形状を変化させる。一対の第3アクチュエータ353は個別に制御可能であり、これにより、ヘッドレスト113の表面を左右に傾斜させることができる。加えて、一対の第3アクチュエータ353は個別に上下方向の傾斜制御が可能であり、ヘッドレスト113の表面を上下に傾斜させることもできる。また、駆動装置35は、座席110の背もたれ部112の座部111に対する角度を調整する機能を有する。本実施形態では、駆動装置35は、座席110を駆動するための装置である。本実施形態では、駆動装置35は、自動車100の各座席110に設置される。
【0029】
におい調整装置36は、自動車100内のにおいを調整する成分を有する。本実施形態では、におい調整装置36は、自動車100内のにおいを調整する成分を放出するように構成される。においを調整する成分の例としては、消臭成分(消臭剤)及び芳香成分(芳香剤)が挙げられる。におい調整装置36は、例えば、空調装置33の吹き出し口に、においを調整する成分を放出して、においを調整する成分を自動車100内に拡散させてもよい。あるいは、におい調整装置36は、においを調整する成分を直接的に人物200に向けて放出してもよい。直接的に人物200に向けてにおいを調整する成分を放出すれば、乗り物酔いしそうな人物200の周囲のにおいのみを制御できる。あるいは、におい調整装置36は、消臭成分として、においを吸着する成分を有していてもよい。この場合、におい調整装置36は、必ずしも消臭成分を放出する必要はなく、においを調整する際に、消臭成分が自動車100内の空気に接触するようにすればよい。
【0030】
リラクゼーション装置37は、人物200にリラクゼーション効果を与える装置である。本実施形態では、リラクゼーション装置37は、スピーカ31、空調装置33、パワーウインドウ34、駆動装置35、及びにおい調整装置36を利用して、リラクゼーション効果を発生させる。リラクゼーション装置37は、スピーカ31により音楽を再生することでリラクゼーション効果を発生させる。音楽は、リラクゼーション効果のある音楽や、人物200の好きな音楽であるとよい。また、リラクゼーション装置37は、空調装置33により自動車100の内部空間の快適さを向上させることでリラクゼーション効果を発生させる。例えば、リラクゼーション装置37は、空調装置33により、自動車100の内部空間を人物200にとって心地よい暖かさにする。つまり、リラクゼーション装置37は、人物200の状態(体温)等に合わせて、自動車100内の空調を制御する。また、リラクゼーション装置37は、パワーウインドウ34により窓を開けて外気を取り込むことでリラクゼーション効果を発生させる。また、リラクゼーション装置37は、駆動装置35により座席110に座る人物200にマッサージを施して筋肉を弛緩させることでリラクゼーション効果を発生させる。また、リラクゼーション装置37は、駆動装置35により背もたれ部112を倒すことでリラクゼーション効果を発生させる。また、リラクゼーション装置37は、におい調整装置36により芳香成分を放出させることでリラクゼーション効果を発生させる。
【0031】
走行制御装置38は、自動車100の走行を制御する装置である。走行制御装置38は、自動車100の速度を自動的に調節する機能を有する。したがって、走行制御装置38によれば、自動車100のドライバーの操作に関係なく、自動車100の速度を低下させたり、自動車100を停止させたりすることが可能である。
【0032】
冷却装置39は、人物200の身体の一部を冷却するように構成される。身体の一部の例としては、首及び股間が挙げられる。冷却装置39は、例えば、座席110の座部111及びヘッドレスト113に設けられるペルチェ素子を有する。また、冷却装置39は、この他、水冷や空冷などの周知の冷却方法によって人物200の身体の一部を冷却してもよい。また、空調装置33を冷却装置39として利用することも可能である。また、座席110に設けられた空冷ファンを冷却装置39として利用することも可能である。更に、冷却装置39は、単独の冷却装置ではなく、複数の冷却装置で構成されるシステムであってよい。一例として、冷却装置39は、ペルチェ素子、空冷ファン、及び空調装置を含んでいてよい。この場合、人物200の身体を冷却する速度の向上が図れる。
【0033】
制御装置40は、図1に示すように、処理部41と、通信部42と、を備える。
【0034】
通信部42は、外部装置からの情報を取得するために設けられている。本実施形態では、外部装置は、データセンタ50及び情報端末60を含む。つまり、制御装置40は、通信部42により、データセンタ50及び情報端末60と通信可能に接続され得る。通信部42は、通信インタフェースであり、通信ネットワークを介した通信を実現する。通信部2は、通信ネットワークを介した通信に対応する通信プロトコルに準拠している。通信ネットワークは、単一の通信プロトコルに準拠したネットワークだけではなく、異なる通信プロトコルに準拠した複数のネットワークで構成されていてもよい。通信プロトコルは、周知の様々な有線及び無線通信規格から選択され得る。ただし、通信部42と外部装置との間の通信は、移動体通信により行われることが好ましい。なお、通信ネットワークは、必要に応じて、リピータハブ、スイッチングハブ、ブリッジ、ゲートウェイ、ルータ等のデータ通信機器を含み得る。
【0035】
ここで、データセンタ50は、乗り物酔いに関する情報を収集する装置である。データセンタ50は、例えば、複数の乗物から乗り物酔いに関する情報を収集するサーバ、及び、乗物自体に設置され当該乗物から乗り物酔いに関する情報を収集する装置を含み得る。データセンタ50で収集された乗り物酔いに関する情報は、推定処理の精度向上に利用され得る。
【0036】
情報端末60は、例えば、自動車100に乗っている人物200の所有するスマートフォンやタブレット端末等である。
【0037】
処理部41は、例えば、1以上のプロセッサ(マイクロプロセッサ)と1以上のメモリとにより実現され得る。つまり、1以上のプロセッサが1以上のメモリに記憶された1以上のプログラムを実行することで、処理部41として機能する。1以上のプログラムは、メモリに予め記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0038】
処理部41は、図1に示すように、入力部411と、推定部412と、出力部413と、報知部414と、制御部415と、記憶部416と、を有している。入力部411と、推定部412と、出力部413と、報知部414と、制御部415と、記憶部416と、は実体のある構成を示しているわけではなく、処理部41によって実現される機能を示している。
【0039】
入力部411は、センシングシステム20からの出力を受け取るように構成される。センシングシステム20からの出力は、センシングシステム20に含まれる加速度センサ21a、角速度センサ21b、においセンサ22、圧力センサ23、カメラ24、赤外線センサ25、ミリ波センサ26、テラヘルツ波センサ27、及び呼気センサ28の出力を含む。
【0040】
推定部412は、乗物(自動車100)に乗っている人物200の状態を示す人物情報に基づいて人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行うように構成される。推定部412は、推定処理では、人物情報に加えて、乗物(自動車100)の状態を示す乗物情報を利用するように構成される。つまり、推定部412は、上述した人物情報及び乗物情報に基づいて、人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行う。
【0041】
推定部412は、推定処理を行うに先立って、人物情報及び乗物情報を取得する。
【0042】
推定部412は、圧力センサ23、カメラ24、赤外線センサ25、ミリ波センサ26、テラヘルツ波センサ27、及び呼気センサ28からの出力に基づいて、人物情報を取得する。人物情報は、上述したように、姿勢情報と、経過情報と、感情情報とを含む。
【0043】
姿勢情報の取得には、圧力センサ23と、カメラ24と、赤外線センサ25とが利用される。つまり、推定部412は、圧力センサ23と、カメラ24と、赤外線センサ25との出力に基づいて、姿勢情報を取得する。本実施形態では、姿勢情報が示す人物200の姿勢は、人物200の傾きθ1,θ2で表される。推定部412は、圧力センサ23で検出された人物200の重心位置と乗物100が人物200から受ける圧力の分布とから、傾きθ1,θ2を求める。本実施形態では、推定部412は、カメラ24及び赤外線センサ25の出力を利用して、求めた傾きθ1,θ2を補正して、傾きθ1,θ2を最終的に決定する。
【0044】
感情情報の取得には、カメラ24と、赤外線センサ25と、が利用される。つまり、推定部412は、カメラ24と、赤外線センサ25との出力に基づいて、感情情報を取得する。本実施形態では、感情情報が示す人物200の感情をストレスの値で表す。推定部412は、カメラ24の出力(画像)に写る人物200の表情から推定される人物200の感情に応じてストレスの値を決定する。例えば、推定部412は、人物200の表情を5つの表情(喜び、驚き、怒り、悲しみ、真顔)に分類する。例えば、ストレスの値は、驚き及び真顔の場合に基準値に設定され、怒り及び悲しみの場合に基準値より高く、喜びの場合に基準値より低く設定される。また、推定部412は、赤外線センサ25の出力(熱画像)に写る人物200の顔の温度から人物200の感情を推定する。例えば、人物200の顔の温度が高ければ、ストレスの値を増加させ、人物200の顔の温度が低ければ、ストレスの値を減少させる。このようにして、推定部412は、人物200の感情を示すストレスの値を決定する。
【0045】
経過情報の取得には、赤外線センサ25と、ミリ波センサ26と、テラヘルツ波センサ27と、呼気センサ28とが利用される。つまり、推定部412は、赤外線センサ25と、ミリ波センサ26と、テラヘルツ波センサ27と、呼気センサ28との出力に基づいて、経過情報を取得する。経過情報は、赤外線センサ25の出力から得られる体温(特に鼻の温度)の変化と、ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27の出力から得られる心拍及び呼吸の変化と、呼気センサ28の出力から得られる呼気の変化と、を含む。
【0046】
本実施形態では、人物情報を得るための圧力センサ23、カメラ24、赤外線センサ25、ミリ波センサ26、テラヘルツ波センサ27、及び呼気センサ28が、自動車100の座席110毎に、設けられている。よって、推定部412は、自動車100に複数の人物200が乗っている場合、複数の人物200のそれぞれに対して個別に推定処理を行う。
【0047】
推定部412は、加速度センサ21a、角速度センサ21b及びにおいセンサ22からの出力に基づいて、乗物情報を取得する。乗物情報は、上述したように、挙動情報と、雰囲気情報とを含む。挙動情報は、自動車100の挙動として、自動車100の旋回方向、旋回速度、進行方向、及び推進力を含む。雰囲気情報は、自動車100の内部空間の雰囲気として、においを含む。においは、においセンサ22で検出されたガスの濃度で表される。
【0048】
このようにして、推定部412は、姿勢情報(傾きθ1,θ2)、感情情報(第1及び第2ストレスの値)、及び経過情報(体温、心拍、呼吸、及び呼気の変化)を含む状態情報を取得する。また、推定部412は、挙動情報(自動車100の進行方向及び推進力)及び 雰囲気情報(ガスの濃度)を含む乗物情報を取得する。
【0049】
推定部412は、推定処理において、人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを乗り物酔いの推定値に基づいて判定する。推定部412は、乗り物酔いの推定値が予め設定された閾値以上になれば、人物200が乗り物酔いをする状況下にあると判定する。一方、推定部412は、乗り物酔いの推定値が予め設定された閾値未満の間は、人物200が乗り物酔いをする状況下にないと判定する。
【0050】
乗り物酔いの推定値は、以下の要因(1)~(6)により決定され得る。
【0051】
要因(1)は、傾きθ1,θ2及び自動車100の進行方向及び推進力である。自動車100の挙動(進行方向及び推進力)に後れて人の姿勢(傾きθ1,θ2)が変化することは、乗り物酔いの推定値の増加の要因になる。特に、推定部412は、傾きθ1,θ2がこれらの基準値を超えるか、自動車100の進行方向及び推進力がこれらの基準値を超えた場合に、自動車100の挙動と人の姿勢とのずれの大きさを求め、ずれの大きさに応じて推定値を増加させる。したがって、この自動車100の挙動と人の姿勢とのずれの大きさが累積されて、乗り物酔いの推定値が閾値以上になった場合には、人物200が乗り物酔いをする状況下にあると判定される。
【0052】
要因(2)は、体温の変化である。人が乗り物酔いすると体温(特に鼻の温度)が下がることが知られている。そのため、体温の低下の兆候は、乗り物酔いの推定値の増加の要因になる。
【0053】
要因(3)は、ガスの濃度である。本実施形態では、ガスの濃度は、人物200の乗り物酔いを誘発しやすいガスの濃度である。よって、ガスの濃度が基準値以上であることは、乗り物酔いの推定値の増加の要因になる。
【0054】
要因(4)は、呼気の変化である。本実施形態では、呼気の変化は、呼気に含まれる二酸化炭素の濃度の変化を示す。乗り物酔いの症状が軽い人は、呼気中の二酸化炭素の濃度が高いことが知られている。よって、呼気に含まれる二酸化炭素の濃度が基準値以下であることは、乗り物酔いの推定値の増加の要因になる。
【0055】
要因(5)は、第1及び第2ストレスの値である。人はストレスが高くなっている状態では、乗り物酔いしやすいと考えられる。よって、ストレスの値の増加は、乗り物酔いの推定値の増加の要因になる。
【0056】
要因(6)は、心拍及び呼吸の変化である。人が乗り物酔いすると呼吸周波数が高くなることが知られている。そのため、呼吸周波数が高くなることは、乗り物酔いの推定値の増加の要因になる。例えば、呼吸周波数が高くなったかどうかの判定は、呼吸周波数が閾値以上となったかどうかにより行える。また、呼吸周波数が高くなったかどうかの判定は、心拍成分が増加せずに心拍周波数が基準値以上となったかどうかにより行える。また、呼吸周波数が高くなったかどうかの判定は、心拍変動スペクトルの低周波成分に対する高周波成分の割合が基準値以上となったかどうかにより行える。
【0057】
このように推定部412は、推定処理において、人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを乗り物酔いの推定値に基づいて判定する。ここで、乗り物酔いの推定値に対する閾値は、人物200によって異なり得る。閾値は、実験等によって適宜設定される。また、閾値を適切に設定することによって、推定処理による推定の精度の向上が図れる。また、要因(3)、(4)、(6)で利用される基準値は、人物200によって異なり得る。これらの基準値は、実験等によって適宜設定される。また、これらの基準値を適切に設定することによって、推定処理による推定の精度の向上が図れる。
【0058】
出力部413は、推定部412による推定処理の結果を、報知部414及び制御部415に出力する。
【0059】
報知部414は、出力部413から推定処理の結果を受け取る。報知部414は、推定処理の結果が人物200が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合、人物200に乗り物酔いの可能性を報知する報知処理を行う。また、報知部414は、報知処理の実行後に受け取った推定処理の結果が人物200が乗り物酔いをする状況下にないことを示している場合、報知処理を終了する。
【0060】
報知部414は、デバイスシステム30に含まれる特定の装置と協働して報知システムを構築する。報知システムは、自動車100に乗る人物200に乗り物酔いの可能性があることを報知するためのシステムである。本実施形態では、報知システムは、報知部414に加えて、スピーカ31と、カーナビゲーションシステム32とを含む。報知部414は、スピーカ31及びカーナビゲーションシステム32を利用して報知処理を行う。報知処理では、報知部414は、スピーカ31及びカーナビゲーションシステム32により、乗り物酔いの発症の可能性があることを音声メッセージ(音声アナウンス)により報知する。音声メッセージ(音声アナウンス)の一例としては、現状の活動(読書、ゲーム、PC作業等)の中止を促すメッセージ(アナウンス)であってよい。これにより、目を閉じる、横になる等の乗り物酔いにならないための対処を促すことが可能となる。報知部414は、音声メッセージの代わりに、あるいは加えて、ブザー等の報知音や、文字メッセージ(文字アナウンス)を利用してもよい。
【0061】
制御部415は、出力部413から推定処理の結果を受け取る。制御部415は、推定処理の結果が人物200が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合、人物200の乗り物酔いを予防する予防処理を行う。制御部415は、予防処理の実行後に受け取った推定処理の結果が人物200が乗り物酔いをする状況下にないことを示している場合、予防処理を終了する。本実施形態では、推定部412は、自動車100に複数の人物200が乗っている場合、複数の人物200のそれぞれに対して個別に推定処理を行う。そのため、制御部415は、複数の人物200それぞれの推定処理の結果に基づき、複数の人物200のそれぞれについて予防処理を実行するかどうかを判断する。よって、制御部415は、自動車100に複数の人物200が乗っている場合、複数の人物200のそれぞれに対して個別に予防処理を行う。
【0062】
制御部415は、デバイスシステム30に含まれる特定の装置と協働して予防システムを構築する。予防システムは、自動車100に乗る人物200に乗り物酔いの発症を予防するためのシステムである。本実施形態では、予防システムは、制御部415に加えて、スピーカ31と、カーナビゲーションシステム32と、空調装置33と、パワーウインドウ34と、駆動装置35と、におい調整装置36と、リラクゼーション装置37と、走行制御装置38と、冷却装置39と、を含む。制御部415は、スピーカ31と、カーナビゲーションシステム32と、空調装置33と、パワーウインドウ34と、駆動装置35と、におい調整装置36と、リラクゼーション装置37と、走行制御装置38と、冷却装置39と、を利用して予防処理を行う。
【0063】
スピーカ31は、予防処理では、人物200に積極的に休憩を勧める音声メッセージ(音声アナウンス)を出力する。
【0064】
カーナビゲーションシステム32は、予防処理では、人物200の負担が少なくなるように自動車100の目的地までのルートを変更する。つまり、予防処理では、自動車100の目的地までのルートが、人物200が乗り物酔いを発症する可能性が低いルートに変更する。例えば、自動車100の目的地までのルートが、山道を通過するルートから、市街地を通過するルートに変更する。カーナビゲーションシステム32は、予防処理では、人物200の負担が少なくなるようにカーナビゲーションシステム32のディスプレイやHUDに表示する画像を調整する。例えば、カーナビゲーションシステム32は、人物200の体の動きに合わせて、画像を移動(前後左右上下移動)又は回転させる。また、カーナビゲーションシステム32は、圧力センサ23を利用して人物200の身長や体重を算出して、適切な酔い止め薬とその服用を勧める表示を行ってもよい。これにより、子供用の酔い止め薬か大人用の酔い止め薬かの決定、並びに、服用量の決定が可能になる。
【0065】
空調装置33とパワーウインドウ34とは、予防処理では、リラクゼーション装置37によるリラクゼーション効果の発生に利用される。
【0066】
駆動装置35は、予防処理では、人物200の負担が少なくなるように座席110の表面の形状を変化させる。例えば、駆動装置35は、第1、第2、及び第3アクチュエータ351,352,353を駆動して、人物200の頭部210と体幹220の傾きを自動車100の加速度と角速度との少なくとも一方に合わせて制御する。具体的には、駆動装置35は、自動車100の挙動と人の姿勢とのずれが小さくなるように、第1、第2、及び第3アクチュエータ351,352,353を駆動する。
【0067】
におい調整装置36は、予防処理では、消臭成分(消臭剤)を放出する。これによって、人物200の乗り物酔いを誘発しやすいガスの濃度を低下させて、人物200が乗り物酔いを発症する可能性を低減させる。
【0068】
リラクゼーション装置37は、予防処理では、人物200にリラクゼーション効果を与える。リラクゼーション効果の発生の方法としては、上述のとおりである。
【0069】
走行制御装置38は、予防処理では、人物200の負担が少なくなるように自動車100の走行を制御する。例えば、走行制御装置38は、自動車100の速度を低下させる。これによって、自動車100の挙動に起因する人物200の負担を軽減する。あるいは、走行制御装置38は、自動車100を安全な場所(例えば、サービスエリアやパーキングエリア等)に停止させてもよい。また、走行制御装置38は、予防処理では、乗物(自動車100)の目的地までの残り時間に応じて、乗物(自動車100)の制御内容を変更する。一例としては、走行制御装置38は、目的地までの残り時間が所定時間以上であれば、人物200が乗り物酔いにかかる前に目的地に到着できないと判断して、乗物(自動車100)の速度を低下させる。一方、走行制御装置38は、目的地までの残り時間が所定時間未満であれば、人物200が乗り物酔いにかかる前に目的地に到着できと判断して、乗物(自動車100)の速度を変更しない。
【0070】
冷却装置39は、予防処理では、人物200の身体の一部を冷却する。例えば、冷却装置39は、座席110の座部111及びヘッドレスト113に設けられたペルチェ素子によって、人物200の首及び股間を急激に冷やす。特に、首の後ろを急速に冷却することが好ましい。この場合、副交感神経の働きを抑え、副交感神経と交換神経との間のバランスを整えるという作用が期待できる。これによって、人物200が乗り物酔いを発症する可能性を低減させる。ここで、冷却装置39が、人物200の身体の一部の温度をどの程度下げるのかは、人物の乗り物酔いに関する臨床データ等に基づいて決定され得る。
【0071】
制御部415は、予防処理では、スピーカ31と、カーナビゲーションシステム32と、空調装置33と、パワーウインドウ34と、駆動装置35と、におい調整装置36と、リラクゼーション装置37と、走行制御装置38と、冷却装置39との全てを利用する必要はない。制御部415は、乗り物酔いの推定値に応じて、予防処理の内容を変更する。例えば、乗り物酔いの推定値が閾値以上、設定値未満の場合は、走行制御装置38によって自動車100の速度を低下させ、乗り物酔いの推定値が設定値以上になると、走行制御装置38によって自動車100を停止させてよい。つまり、制御部415は、予防処理では、乗り物酔いの予防効果の低い処理から実行し、乗り物酔いの予防の効果が見られない場合には、より予防効果の高い処理を実行してよい。
【0072】
記憶部416は、推定部412での推定処理の内容を決定する推定アルゴリズム(乗り物酔い推定プログラム)を記憶する。本実施形態では、制御装置40は、データセンタ50から乗り物酔いに関する情報を取得することができる。そのため、推定部412は、記憶部416に記憶された推定アルゴリズムを、データセンタ50から得た情報(乗り物酔いに関する情報)に基づいて補正する。乗り物酔いに関する情報には、自動車100が走行する道路についての道路情報(路面の荒れの程度、カーブの程度等)が挙げられる。自動車100が走行する道路の路面の荒れの程度が大きければ、乗り物酔いを発症する可能性が高くなると考えられる。この場合、推定部412は、推定処理で用いられる乗り物酔い推定値の閾値を低下させることで、推定処理の結果を、人物が乗り物酔いをする状況下にあるという結果になりやすくする。
【0073】
以上述べた乗り物酔い推定システム10では、制御装置40が、推定部412と出力部413とを備える。そして、制御装置40は、1以上のプロセッサと1以上のメモリとにより実現されている。つまり、制御装置40は、1以上のプロセッサがプログラム(乗り物酔い推定プログラム)を実行することにより実現される。乗り物酔い推定プログラムは、1以上のプロセッサにより実行されると、1以上のプロセッサに、第1指示と、第2指示と、を与える。第1指示は、乗物(自動車100)に乗っている人物200の状態を示す人物情報に基づいて、人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行う指示である。第2指示は、推定処理の結果を出力する指示である。このような乗り物酔い推定プログラムによれば、乗り物酔い推定システム10と同様に、乗り物酔いの発症の可能性を低減できる。
【0074】
換言すれば、制御装置40は、下記の乗り物酔い推定方法を実行しているといえる。乗り物酔い推定方法は、第1ステップと、第2ステップと、を含む。第1ステップは、乗物(自動車100)に乗っている人物200の状態を示す人物情報に基づいて、人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行うステップである。第2ステップは、推定処理の結果を出力するステップである。このような乗り物酔い推定方法によれば、乗り物酔い推定システム10と同様に、乗り物酔いの発症の可能性を低減できる。
【0075】
1.3 動作
次に、乗り物酔い推定システム10の動作の一例について、図5に示すフローチャートを参照して簡単に説明する。
【0076】
まず、推定部412が、入力部411を通じて得たセンシングシステム20の出力から、人物情報及び乗物情報を取得する(S11,S12)。次に、推定部412は、人物情報及び乗物情報に基づいて、人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行う(S13)。推定処理の結果は、出力部413により報知部414及び制御部415に送られる。そして、推定処理の結果が人物200が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合(S14:Yes)、報知システムによって報知処理が実行され(S15)、また、予防システムによって予防処理が実行される(S16)。一方、推定処理の結果が人物200が乗り物酔いをする状況下にあることを示していない場合に(S14:No)、報知処理及び予防処理が実行中であれば(S17:Yes)、報知処理及び予防処理を終了する(S18)。一方、報知処理及び予防処理が実行中でなければ(S17:No)、ステップS11へ戻る。
【0077】
このように、本実施形態の乗り物酔い推定システム10では、人物200が乗り物酔いをする状況下にあると推定された場合には、乗り物酔い推定システム10が報知処理及び予防処理を実行する。そのため、乗り物酔い推定システム10によれば、乗り物酔いの発症の可能性を低減できる。しかも、報知処理及び予防処理は、人物200が乗り物酔いをする状況下にあると推定された場合にだけ実行される。したがって、報知や予防の必要のない場合に報知や予防が行われることで人物200に不快感を与えてしまったり、逆に乗り物酔いを誘発してしまったりする可能性を低減できる。
【0078】
2.変形例
本開示の実施形態は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態の変形例を列挙する。
【0079】
一変形例では、予防システムは、報知システムが報知処理を実行した後でも推定処理の結果が人物200が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合、予防処理を行うように構成されてよい。
【0080】
次に、当該変形例の乗り物酔い推定システム10の動作の一例について、図6に示すフローチャートを参照して簡単に説明する。
【0081】
まず、推定部412が、入力部411を通じて得たセンシングシステム20の出力から、人物情報及び乗物情報を取得する(S21,S22)。次に、推定部412は、人物情報及び乗物情報に基づいて、人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行う(S23)。推定処理の結果は、出力部413により報知部414及び制御部415に送られる。そして、推定処理の結果が人物200が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合(S24:Yes)、報知処理が実行中かどうかが判定される(S25)。報知処理が実行中でなければ(S25:No)、報知システムによって報知処理が実行され(S26)、ステップS21へ戻る。一方、報知処理が実行中であれば(S25:Yes)、予防システムによって予防処理が実行され(S27)、ステップS21へ戻る。一方、推定処理の結果が人物200が乗り物酔いをする状況下にあることを示していない場合にも(S24:No)、報知処理が実行中かどうかが判定される(S28)。報知処理が実行中でなければ(S28:No)、ステップS21へ戻る。一方、報知処理が実行中であれば(S28:Yes)、更に、予防処理が実行中かどうかが判定される(S29)。予防処理が実行中であれば(S29:Yes)、報知処理及び予防処理を終了し(S30)、ステップS21へ戻る。一方、予防処理が実行中でなければ(S29:No)、報知処理を終了し(S31)、ステップS21へ戻る。
【0082】
このように、乗り物酔い推定システム10では、人物200が乗り物酔いをする状況下にあると推定された場合には、まず、乗り物酔い推定システム10が報知処理を実行する。そして、報知処理を実行しても、依然として人物200が乗り物酔いをする状況下にあると推定された場合には、乗り物酔い推定システム10が予防処理を実行する。そのため、乗り物酔い推定システム10によれば、乗り物酔いの発症の可能性を低減できる。しかも、予防処理は、報知処理を実行しても人物200が乗り物酔いをする状況下にあると推定された場合にだけ実行される。したがって、予防の必要のない場合に予防が行われることで人物200に不快感を与えてしまったり、逆に乗り物酔いを誘発してしまったりする可能性を低減できる。
【0083】
センシングシステム20は、必ずしも、加速度センサ21a、角速度センサ21b、においセンサ22、圧力センサ23、カメラ24、赤外線センサ25、ミリ波センサ26、テラヘルツ波センサ27、及び呼気センサ28の全てを含む必要はない。また、センシングシステム20は、これら以外の装置を含んでいてもよい。センシングシステム20は、少なくとも、人物200の人物情報の取得を可能とする構成であればよい。また、圧力センサ23は、人物200の重心位置と乗物(自動車100)が人物200から受ける圧力の分布との少なくとも一方を検出すればよく、上記実施形態のようにこれら両方を検出する必要は必ずしもない。圧力センサ23は、単一のセンシング素子で構成されていてもよいし、アレイ状に並ぶ複数のセンシング素子で構成されていてもよい。
【0084】
デバイスシステム30は、必ずしも、スピーカ31、カーナビゲーションシステム32、空調装置33、パワーウインドウ34、駆動装置35、におい調整装置36、リラクゼーション装置37、走行制御装置38、及び冷却装置39の全てを含む必要はない。また、デバイスシステム30は、これら以外の装置を含んでいてもよい。デバイスシステム30は、例えば、エチケット袋を自動的に供給する袋供給装置を含んでいてもよい。この場合、予防処理では、袋供給装置から自動的にエチケット袋を人物200に供給することができる。なお、エチケット袋の中のにおいを乗り物酔いの予防に効果があるにおい(芳香剤の香り等の酔いをやわらげられる香り)にしておくことが好ましい。また、デバイスシステム30は、例えば、飲食物を自動的に供給する飲食物供給装置を含んでいてもよい。この場合、予防処理では、飲食物給装置から自動的に飲食物を人物200に供給することができる。なお、飲食物の例としては、乗り物酔いの予防に効果がある飲料及び飴が挙げられる。例えば、飲食物供給装置は、乗り物酔いに効果があるハーブティーを提供してよい。
【0085】
デバイスシステム30を利用した予防処理の例としては、更に、過去の記憶の惹起、三半規管の刺激、及び、睡眠誘導が挙げられる。過去の記憶の惹起の例としては、過去の記憶(過去の人物200の状態・雰囲気)と現在の人物200の状態・雰囲気を一致させることが挙げられる。具体的には、におい調整装置36により過去と同じにおい成分を放出すること、視覚情報(カーナビゲーションシステムのディスプレイの画面の振動)を過去と同じにすること、空調装置33により温度を過去と同じにすること、が挙げられる。三半規管の刺激としては、視覚的な刺激、嗅覚的な刺激、触覚的な刺激、体温感、聴覚的な刺激、味覚的な刺激、及び、薬効が挙げられる。視覚的な刺激を与える例としては、人物200に短時間に光を当てることが挙げられる。嗅覚的な刺激を与える例としては、人物200に向けて強烈なにおい成分を放出することが挙げられる。触覚的な刺激を与える例としては、駆動装置35によって人物200に微小な振動を与えることが挙げられる。体温感を与える例としては、空調装置33や冷却装置39によって人物200の身体を冷やすことが挙げられる。聴覚的な刺激を与える例としては、スピーカ31により低周波な音や高周波な音を出力することが挙げられる。味覚的な刺激を与える例としては、味覚を刺激する飲食物(ハーブ及びワサビ等)を提供することが挙げられる。薬効を与える例としては、あらかじめ用意してある酔い止め薬を提供することや、酔い止め薬を気化させて空調装置33を利用して人物200に向けて供給することが考えられる。睡眠誘導の例としては、薬による睡眠誘導、振動による睡眠誘導、音楽による睡眠誘導、自動車100内を温かくすることによる睡眠誘導、自動車100内の照明による睡眠誘導、におい(リラクゼーション効果のあるアロマのにおい)による睡眠誘導、及び満腹感による睡眠誘導が挙げられる。音楽による睡眠誘導としては、単調な音楽による睡眠誘導及び聞き取りにくい文言を朗読した音源を発することによる睡眠誘導が挙げられる。なお、満腹感による睡眠誘導では、例えば、食べ物を食べるようにアナウンスことによって間接的に睡眠を誘導すればよい。
【0086】
制御装置40は、少なくとも、推定部412と出力部413を有していればよく、報知部414、制御部415、及び記憶部416は必須ではない。
【0087】
上記実施形態では、推定部412は、乗物(自動車100)に複数の人物200が乗っている場合、複数の人物200のそれぞれに対して個別に推定処理を行う必要は必ずしもなく、特定の座席110に座る人物200に対して推定処理を行ってもよい。
【0088】
推定部412は、推定処理において、「車酔い」の程度を推定する数理モデル(参考:http://www.ritsumei.ac.jp/research/radiant/robot_ai/story9.html)を利用してもよい。ただし、推定処理は、人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する処理であるから、各種パラメータ等の調整が必要である。
【0089】
人物200の生体情報として顔色を利用する場合、顔色の変化により、人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定し得る。人物200の顔色の悪化は、乗り物酔いの兆候であると考えられる。よって、人物200の顔色が悪化したかどうかを、乗り物酔いの推定値を決定する要因として利用できる。人物200の生体情報としてまばたきを利用する場合、まばたきの回数(単位時間当たりのまばたきの回数)の変化により、人物200が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定し得る。乗り物酔いの初期状態及び軽度の乗り物酔いの場合、表情が「うつろ」と呼ばれる状態となるということが報告されている。この「うつろ」の表情では、通常に比べて、まばたきの回数が少なくなりやすい。これにより、まばたきの回数の減少は、乗り物酔いの兆候であると考えられる。よって、まばたきの回数の変化を、乗り物酔いの推定値を決定する要因として利用できる。人物200の生体情報としての顔色及びまばたきは、カメラ24等を利用して検出できる。
【0090】
上記実施形態では、人物情報は、姿勢情報と、経過情報と、感情情報とを、含むが、更に、人物200の属性を示す属性情報を含んでいてもよい。人物200の属性の例としては、体格、年齢、性別、体質、体調が挙げられる。属性情報は、カーナビゲーションシステム32を利用して人物200が自己申告により入力可能である。このように入力される人物200の属性情報は、乗り物酔い推定システム10の記憶部416に記憶されてよい。例えば、乗り物酔い推定システム10は、人物200の自動車100の利用記録に、人物200の属性情報を含めることができる。また、人物200によって情報端末60に入力された属性情報を、通信部42を通じて、乗り物酔い推定システム10が取得してもよい。また、属性情報は、人物200の住居の家電と連動して照明の消灯時間やエアコンを利用していた時間で推測してもよいし、エアコンの赤外線センサの監視などで入手してもよい。属性情報を利用すれば、推定処理の内容を、より人物200に適した内容に設定することが可能になる。例えば、属性情報によって、推定処理で用いる、乗り物酔いの推定値の閾値を調整することができる。そのため、推定処理の精度を向上できる。なお、人物情報は、少なくとも姿勢情報を含んでいればよく、経過情報と、感情情報と、属性情報とは必須ではない。
【0091】
また、推定部412は、推定処理の結果を人物200毎に記憶部416に記憶させてもよい。推定部412は、人物200毎の推定処理の結果に対するフィードバックを受け付けてもよい。このようなフィードバックは、カーナビゲーションシステム32等を利用して入力可能である。推定部412は、フィードバックに基づいて、推定処理で用いられる閾値や基準値等を人物200に応じて適宜修正してもよい。また、推定部412は、乗り物酔いに関する情報として、データセンタ50や情報端末60に通信部42を通じて送信してもよい。これによって、人物200は、自身の乗り物酔いのし易さや、乗り物酔いの履歴を確認することができるようになる。
【0092】
また、記憶部416は、人物200ごとに乗り物酔いの履歴を記憶してもよい。乗り物酔いの履歴は、例えば、推定部412による乗り物酔いの推定結果の履歴等を含んでいてよい。乗り物酔いの履歴により、人物200の何の要素で乗り物酔いをし易いのかを把握することが可能になる。例えば、推定部412は、人物200ごとの乗り物酔いの履歴に従って、人物200ごとに、推定処理で用いられる閾値や基準値等を補正することができる。例えば、乗り物酔いの履歴からにおいに弱いと判断される人物200の場合、においに関する要因(3)の基準値を低くして、においについては推定値が高くなりやすいようにしてもよい。例えば、乗り物酔いの履歴から三半規管が弱いと判断される人物200の場合、姿勢に関する要因(1)の基準値を低くして、姿勢については推定値が高くなりやすいようにしてもよい。これによって、人物200に適した推定処理が可能になり、推定精度の向上が期待できる。例えば、制御部415は、人物200ごとの乗り物酔いの履歴に従って、人物200ごとに、予防処理を異ならせてもよい。例えば、乗り物酔いの履歴からにおいに弱いと判断される人物200の場合、におい調整装置36による予防処理を優先的に行うようにしてもよい。例えば、乗り物酔いの履歴から三半規管が弱いと判断される人物200の場合、駆動装置35による予防処理を優先的に行うようにしてもよい。これによって、人物200に適した予防処理が可能になり、乗り物酔いの予防効果の向上が期待できる。
【0093】
上記実施形態では、呼吸周波数が高くなっているかどうかの評価に、心拍変動スペクトルの低周波成分に対する高周波成分の割合を利用しているが、この割合は、相対的なストレスの値を表すことが知られている。以上の点から、ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27は、感情情報を取得するために併用されてよい。つまり、この相対的なストレスの値を、乗り物酔いの推定値を決定する要因として利用してよい。なお、心拍変動スペクトルを得るには、ミリ波センサ26及びテラヘルツ波センサ27は少なくとも一方を用いればよく、必ずしも両方を用いる必要はない。
【0094】
上記実施形態では、雰囲気情報が示す乗物(自動車100)の内部空間の雰囲気は、においであるが、明るさ及び温度を含んでいてもよい。乗物の内部空間の明るさは、明るさセンサにより取得できる。また、乗物の内部空間の温度は、温度センサにより取得できる。明るさ及び温度は、人物200の状態に影響を与え得るから、雰囲気情報として、明るさ及び温度を利用することで、推定処理の更なる精度の向上が図れる。ただし、推定処理において、雰囲気情報は必ずしも必要ではない。
【0095】
制御装置40は、複数のコンピュータにより構成されていてもよく、制御装置40の機能(特に、入力部411、推定部412、出力部413、報知部414、制御部415、及び記憶部416の機能)は、複数のコンピュータに分散されていてもよい。例えば、報知部414は、制御装置40ではなく、報知システムを構成する他の装置(例えばカーナビゲーションシステム32)のいずれかに設けられていてもよい。また、報知部414は、報知システムを構成する装置に分散して設けられていてもよい。また、制御部415も、制御装置40ではなく、予防システムを構成する他の装置(例えば走行制御装置38等)のいずれかに設けられていてもよい。また、制御部415は、予防システムを構成する装置に分散して設けられていてもよい。更に、制御装置40の少なくとも一部が、例えば、クラウド(クラウドコンピューティング)によって実現されていてもよい。
【0096】
このように、乗り物酔い推定システム10の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを有する。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における乗り物酔い推定システム10の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0097】
上記実施形態では、乗り物酔い推定システム10が設けられる乗物は、自動車100に限定されず、自動車100以外の車両、船舶、航空機等であってもよい。また、乗り物酔い推定システム10は、アミューズメント施設のアトラクション(ローラーコースタ等)に用いられる乗物に設けられてもよい。また、乗り物酔い推定システム10は、現実の画面(スクリーン、映画等)や、仮想環境(ゴーグルなどを用いたAR、VR等)を使用したシステム(の主として座席)に設けられてもよい。
【0098】
3.態様
上記実施形態及び変形例から明らかなように、本開示は、下記の第1~第22の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0099】
第1の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、推定部(412)と、出力部(413)と、を備える。前記推定部(412)は、乗物(100)に乗っている人物(200)の状態を示す人物情報に基づいて前記人物(200)が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行うように構成される。前記出力部(413)は、前記推定部(12)での前記推定処理の結果を出力するように構成される。第1の態様によれば、乗り物酔いの発症の可能性を低減できる。
【0100】
第2の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様では、前記推定部(412)は、前記推定処理では、前記人物情報に加えて、前記乗物(100)の状態を示す乗物情報を利用するように構成される。第2の態様によれば、推定処理の精度を向上できる。
【0101】
第3の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様では、前記乗物情報は、前記乗物(100)の挙動を示す挙動情報と、前記乗物(100)の内部空間の雰囲気を示す雰囲気情報とのいずれか一つを含む。第3の態様によれば、推定処理の精度を向上できる。
【0102】
第4の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第1~第3の態様のいずれか一つとの組み合わせにより実現され得る。第4の態様では、前記人物情報は、前記人物(200)の姿勢を示す姿勢情報と、前記人物(200)の属性を示す属性情報と、前記人物(200)の生体情報の変化を示す経過情報と、前記人物(200)の感情を示す感情情報とのいずれか一つを含む。第4の態様によれば、推定処理の精度を向上できる。
【0103】
第5の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第4の態様との組み合わせにより実現され得る。第5の態様では、前記人物情報は、前記姿勢情報を含む。前記推定部(412)は、前記人物(200)の重心位置と前記乗物(100)が前記人物(200)から受ける圧力の分布との少なくとも一方を検出する圧力センサ(23)に通信可能に接続される。前記推定部(412)は、前記圧力センサ(23)からの出力に基づいて、前記人物(200)の姿勢を判定するように構成される。第5の態様によれば、推定処理の精度を向上できる。
【0104】
第6の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第1~第5の態様のいずれか一つとの組み合わせにより実現され得る。第6の態様では、前記乗り物酔い推定システム(10)は、前記出力部(413)から前記推定処理の結果を受け取る報知システム(414,31,32)を備える。前記報知システム(414,31,32)は、前記推定処理の結果が前記人物(200)が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合、前記人物(200)に乗り物酔いの可能性を報知する報知処理を行うように構成される。第6の態様によれば、乗り物酔いの発症の予防が図れる。
【0105】
第7の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第1~第6の態様のいずれか一つとの組み合わせにより実現され得る。第7の態様では、前記乗り物酔い推定システム(10)は、前記出力部(413)から前記推定処理の結果を受け取る予防システム(415,32~39)を備える。前記予防システム(415,32~39)は、前記推定処理の結果が前記人物(200)が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合、前記人物(200)の乗り物酔いを予防する予防処理を行うように構成される。第7の態様によれば、乗り物酔いの発症の予防が図れる。
【0106】
第8の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第1~第5の態様のいずれか一つとの組み合わせにより実現され得る。第8の態様では、前記乗り物酔い推定システム(10)は、前記出力部(413)から前記推定処理の結果を受け取る報知システム(414,31,32)と、前記出力部(413)から前記推定処理の結果を受け取る予防システム(415,32~39)を備える。前記報知システム(414,31,32)は、前記推定処理の結果が前記人物(200)が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合、前記人物(200)に乗り物酔いの可能性を報知する報知処理を行うように構成される。前記予防システム(415,32~39)は、前記報知システム(414,31,32)が前記報知処理を実行した後でも前記推定処理の結果が前記人物(200)が乗り物酔いをする状況下にあることを示している場合、前記人物(200)の乗り物酔いを予防する予防処理を行うように構成される。第8の態様によれば、乗り物酔いの発症の予防が図れる。
【0107】
第9の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第7又は第8の態様との組み合わせにより実現され得る。第9の態様では、前記予防システム(415,32~39)は、前記乗物(100)の座席(110)に設置され前記座席(110)の表面の形状を変化させる駆動装置(35)を含む。第9の態様によれば、人物(200)の姿勢に起因する乗り物酔いの発症の予防が図れる。
【0108】
第10の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第9の態様との組み合わせにより実現され得る。第10の態様では、前記駆動装置(35)は、前記座席(110)の座部(111)と背もたれ部(112)との少なくとも一方に設置される1以上のアクチュエータ(351,352,353)を有する。第10の態様によれば、人物(200)の姿勢に起因する乗り物酔いの発症の予防が図れる。
【0109】
第11の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第7~第10の態様のいずれか一つとの組み合わせにより実現され得る。第11の態様では、前記予防システム(415,32~39)は、前記乗物(100)内のにおいを調整する成分を有するにおい調整装置(36)を含む。第11の態様によれば、乗物(100)内のにおいに起因する乗り物酔いの発症の予防が図れる。
【0110】
第12の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第7~第11の態様のいずれか一つとの組み合わせにより実現され得る。第12の態様では、前記予防システム(415,32~39)は、前記人物(200)にリラクゼーション効果を与えるリラクゼーション装置(37)を含む。第12の態様によれば、乗り物酔いの発症の予防が図れる。
【0111】
第13の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第7~第12の態様のいずれか一つとの組み合わせにより実現され得る。第13の態様では、前記予防システム(415,32~39)は、前記乗物(100)の走行を制御する走行制御装置(38)を含む。第13の態様によれば、乗り物酔いの発症の予防が図れる。
【0112】
第14の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第13の態様との組み合わせにより実現され得る。第14の態様では、前記走行制御装置(38)は、前記予防処理では、前記人物(200)の負担が少なくなるように前記乗物(100)の走行を制御するように構成される。第14の態様によれば、乗り物酔いの発症の予防が図れる。
【0113】
第15の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第13又は第14の態様との組み合わせにより実現され得る。第15の態様では、前記走行制御装置(38)は、前記予防処理では、前記乗物(100)の目的地までの残り時間に応じて、前記乗物(100)の制御内容を変更するように構成される。第15の態様によれば、乗り物酔いの発症の予防が図れる。
【0114】
第16の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第7~第15の態様のいずれか一つとの組み合わせにより実現され得る。第16の態様では、前記予防システム(415,32~39)は、前記人物(200)の身体の一部を冷却する冷却装置(39)を含む。第16の態様によれば、乗り物酔いの発症の予防が図れる。
【0115】
第17の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第1~第16の態様のいずれか一つとの組み合わせにより実現され得る。第17の態様では、前記乗り物酔い推定システム(10)は、乗り物酔いに関する情報を収集するデータセンタ(50)と通信する通信部(42)を更に備える。第17の態様によれば、推定処理の精度を向上できる。
【0116】
第18の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第17の態様との組み合わせにより実現され得る。第18の態様では、前記乗り物酔い推定システム(10)は、前記推定処理の内容を決定する推定アルゴリズムを記憶する記憶部(416)を備える。前記推定部(412)は、前記記憶部(416)に記憶された前記推定アルゴリズムを、前記データセンタ(50)から得た情報に基づいて補正するように構成される。第18の態様によれば、推定処理の精度を向上できる。
【0117】
第19の態様の乗り物酔い推定システム(10)は、第1~第18の態様のいずれか一つとの組み合わせにより実現され得る。第19の態様では、前記推定部(412)は、前記乗物(100)に複数の人物(200)が乗っている場合、前記複数の人物(200)のそれぞれに対して個別に前記推定処理を行うように構成される。第19の態様によれば、同じ乗物(100)に乗っている複数の人物(200)の乗り物酔いの発症の可能性を低減できる。
【0118】
第20の態様の乗物(100)は、第1~第19の態様のいずれか一つの乗り物酔い推定システム(10)と、前記乗り物酔い推定システム(10)が搭載される本体(101)と、を備える。第20の態様によれば、乗り物酔いの発症の可能性を低減できる。
【0119】
第21の態様の乗り物酔い推定方法は、第1ステップと第2ステップとを含む。前記第1ステップは、乗物(100)に乗っている人物(200)の状態を示す人物情報に基づいて、前記人物(200)が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行うステップである。前記第2ステップは、前記推定処理の結果を出力するステップである。第21の態様によれば、乗り物酔いの発症の可能性を低減できる。
【0120】
第22の態様の乗り物酔い推定プログラムは、1以上のプロセッサにより実行されると、前記1以上のプロセッサに、第1指示と第2指示とを与える。前記第1指示は、乗物(100)に乗っている人物(200)の状態を示す人物情報に基づいて、前記人物(200)が乗り物酔いをする状況下にあるかどうかを推定する推定処理を行う指示である。前記第2指示は、前記推定処理の結果を出力する指示である。第22の態様によれば、乗り物酔いの発症の可能性を低減できる。
【符号の説明】
【0121】
10 乗り物酔い推定システム
21a 加速度センサ
21b 角速度センサ
22 においセンサ
23 圧力センサ
24 カメラ
25 赤外線センサ
26 ミリ波センサ
27 テラヘルツ波センサ
28 呼気センサ
29 センサユニット
31 スピーカ
32 カーナビゲーションシステム
33 空調装置
34 パワーウインドウ
35 駆動装置
351 第1アクチュエータ
352 第2アクチュエータ
353 第3アクチュエータ
36 におい調整装置
37 リラクゼーション装置
38 走行制御装置
39 冷却装置
412 推定部
413 出力部
414 報知部
415 制御部
416 記憶部
42 通信部
50 データセンタ
100 自動車(乗物)
110 座席
111 座部
112 背もたれ部
200 人物
図1
図2
図3
図4
図5
図6