(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】ねじ締め装置用のサーボアンプ
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20230217BHJP
G01L 5/24 20060101ALI20230217BHJP
B25B 23/14 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
H02P29/00
G01L5/24
B25B23/14 630N
(21)【出願番号】P 2020515596
(86)(22)【出願日】2019-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2019017882
(87)【国際公開番号】W WO2019208759
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2018086092
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 則明
(72)【発明者】
【氏名】三島 雅史
(72)【発明者】
【氏名】池内 慶成
(72)【発明者】
【氏名】今田 裕介
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-20243(JP,A)
【文献】特開昭58-51084(JP,A)
【文献】特開昭61-279472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
G01L 5/24
B25B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータの位置情報を検出するモータ位置検出部と、
指令生成装置の出力が供給されるフィルタと、
前記フィルタを通過した指令信号と前記位置情報とに基づいて設定された動作トルクで、前記サーボモータをサーボ制御するサーボ制御部と、
前記動作トルクを測定するトルク検出部と、
前記フィルタと前記サーボ制御部との間に設けられ、前記トルク検出部で測定された前記動作トルクが規定の目標トルクを超えた際に、前記モータ位置検出部で検出された位置情報を前記指令信号として前記サーボ制御部へ供給するサーボ制御入力信号切替部と、を有した、
ねじ締め装置用のサーボアンプ。
【請求項2】
トルク検出信号の入力を検知した際に、制御信号を前記サーボ制御入力信号切替部に供給する操作部を、さらに有し、
前記トルク検出部は、測定された前記動作トルクが前記目標トルクを超えた場合に前記トルク検出信号を生成する、
請求項1記載のねじ締め装置用のサーボアンプ。
【請求項3】
前記サーボ制御入力信号切替部は、前記操作部からの前記制御信号によって、前記指令信号と前記位置情報とのいずれかを前記サーボ制御部へ出力する、
請求項2記載のねじ締め装置用のサーボアンプ。
【請求項4】
前記サーボ制御部は、指令信号と前記位置情報との差に基づいて前記サーボモータを制御する、
請求項1~3のいずれか1項に記載のねじ締め装置用のサーボアンプ。
【請求項5】
前記モータ位置検出部で検出した位置情報を格納するメモリをさらに有し、
前記操作部は、前記トルク検出信号を検知した場合、前記動作トルクが前記目標トルクに達した際の前記位置情報を、前記メモリから前記サーボ制御入力信号切替部へと供給する、
請求項2又は3に記載のねじ締め装置用のサーボアンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は目標トルクでねじ締めを行うねじ締め装置用のサーボアンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のねじ締め装置は、指令生成装置とサーボアンプとねじ締め機を有している。なお、ねじ締め機は、サーボモータを含み、サーボアンプからの指示信号によって回転駆動されている。さらに、サーボアンプは、トルク検出装置とサーボ制御部を含んでいる。また、サーボアンプと指令生成装置の間には、フィルタを含んでいる。
【0003】
そして、指令生成装置が出力する指令は、フィルタを介してサーボ制御部へ供給されている。これによって、サーボ制御部は、整形後の指令に基づいてサーボモータを駆動制御する。そしてトルク検出装置が目標のトルクを達したことを検出した際に、サーボ制御部はサーボアンプに対して駆動停止を指令する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、前記従来のねじ締め装置用のサーボアンプは、指令生成装置からの指令をフィルタで整形している。一般的にフィルタは、コンデンサなどのような遅延素子を含んで構成されている。したがって、
図4に示すように、指令生成装置からの指令Y1と、フィルタを通過後の指令Y2との間にはずれが生じる。よって、モータの回転位置は、指令生成装置からの指令信号で本来的に回転する位置よりも遅れる。したがって、モータの実際の停止は指令信号による本来の停止時間よりも遅れて停止する。すなわち、トルクが規定値に達したと検出した位置(回転角)よりもオーバーシュートした位置(角度)で停止する。したがって、ねじ山等に所定以上の力がかかり、その結果ねじ山等の破損につながる可能性を有するという課題を有している。
【0006】
本開示は、この課題を解決するもので、目標トルクを検出した位置にサーボモータを停止しやすいサーボアンプを提供することを目的とする。
【0007】
この目的を達成するために、本開示の一態様に係るねじ締め装置用サーボアンプは、モータ位置検出部と、フィルタと、サーボ制御部と、トルク検出部と、サーボ制御入力信号切替部とを有している。モータ位置検出部は、サーボモータの位置情報を検出する。フィルタには、指令生成装置の出力(指令情報)が供給される。サーボ制御入力信号切替部は、フィルタとサーボ制御部との間に設けられている。
【0008】
サーボ制御部は、フィルタを通過した指令情報と位置情報とに基づいて設定された動作トルクで、サーボモータをサーボ制御する。トルク検出部は、動作トルクを測定する。
【0009】
そして、サーボ制御入力信号切替部は、トルク検出部で測定された動作トルクが規定の目標トルクを超えた際に、モータ位置検出部で検出された位置情報を指令信号としてサーボ制御部へ供給する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態1におけるサーボアンプを用いたねじ締め装置の回路ブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態1における操作部の動作アルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態1におけるサーボ制御部の指令とモータ位置との関係を示す説明図である。
【
図4】
図4は、指令生成装置からの指令信号とフィルタ後の指令との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本実施の形態におけるねじ締め装置について説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1によるサーボアンプを用いたねじ締め装置の回路ブロック図である。
図1において、ねじ締め装置1は、指令生成装置100と、サーボアンプ10と、ねじ締め部を含んでいる。指令生成装置100は、生成した指令信号をサーボアンプ10へと出力している。ねじ締め部は、サーボモータ104を含み、サーボモータ104はサーボアンプ10の出力によって駆動制御される。そしてねじ締め部は、サーボモータ104の回転によってねじなどを締め付ける。なお、ねじ締め部は、たとえばトルクドライバである。
【0013】
サーボモータ104には、エンコーダ105が付設されている。エンコーダ105は、サーボモータ104と一体化されている。エンコーダ105は、サーボモータ104の位置情報を検出している。エンコーダ105は、インクリメントタイプであり、可動子(図示せず)の角度を検知している。
【0014】
サーボアンプ10は、フィルタ101と、切替スイッチ(サーボ制御入力信号切替部)102と、サーボ制御部103と、モータ位置検出部106と、トルク検出部107とを有している。フィルタ101には、指令生成装置100で生成された指令信号S1が入力される。指令信号S1は、フィルタ101を通過することにより、フィルタ101の減衰帯域の周波数の外乱ノイズなどが減衰する。トルク検出部107は、サーボモータ104の動作トルクを取得する。
【0015】
切替スイッチ102は、フィルタ101とサーボ制御部103との間に設けられている。そして切替スイッチ102は、トルク検出部107で検出されたサーボモータ104のトルクがあらかじめ設定された目標トルクに達するまでの間、指令信号S2をサーボ制御部103へと供給する。
【0016】
モータ位置検出部106は、エンコーダ105からサーボモータ104の位置情報を取得して、サーボ制御部103へと出力している。そして、サーボ制御部103は、入力された指令信号S2とモータ位置検出部106で検出された位置情報とをもとに、サーボモータ104を駆動する動作トルクを算出する。この結果、サーボ制御部103は、算出された動作トルクでサーボモータ104が駆動されるように、サーボモータ104のトルクを制御する。
【0017】
トルク検出部107は、動作トルクを取得し、取得値が目標トルクを超えた場合に後述の操作部108にトルク検出信号を出力する。
【0018】
ここで、切替スイッチ102は、トルク検出部107で測定されたサーボモータ104のトルクが目標トルクを超えた際に、モータ位置検出部106で検出された位置情報を指令信号S2としてサーボ制御部103へと供給する。この構成により、サーボ制御部103へ供給される指令信号S2とモータ位置検出部106で検出された位置情報とは同一の値となる。したがって、トルク検出部107で測定されたサーボモータ104のトルクが目標トルクを超えたことが検知されると、サーボ制御部103はモータ位置検出部106で検出した位置を保持するように、サーボモータ104を駆動する。
【0019】
以上の構成により、指令生成装置100の指令がフィルタ101を通過することによるサーボモータ104の制御の遅れの影響を抑制できる。したがって、目標トルクを検出した位置にサーボモータ104を停止しやすい。
【0020】
次に、サーボアンプ10についてさらに詳しく説明する。サーボアンプ10は、さらに操作部108を有している。トルク検出部107は、測定したサーボモータ104の回転トルクが目標トルクを超えたことを検出した場合に、トルク検出信号を生成して、操作部108にトルク検出信号を出力している。そして、操作部108は、トルク検出信号を検知した際に、制御信号を切替スイッチ102へと供給する。そして、切替スイッチ102は、この制御信号が入力されると、モータ位置検出部106で検出された位置情報を指令信号S2としてサーボ制御部103へ供給する。
【0021】
以上のようにして、サーボ制御部103はサーボモータ104を制御するが、サーボモータ104の回転トルクが目標トルクに到達した位置に、サーボモータ104を停止するためには、その位置を保持する必要がある。そのため、サーボアンプ10は、さらにメモリ109を有している。そして、操作部108は、トルク検出信号を検知すると、メモリ109にモータ位置検出部106からの位置情報を停止目標位置として記憶する。さらに操作部108は、メモリ109に記憶された停止目標位置を読み出して、切替スイッチ102へと供給している。
【0022】
この構成により、切替スイッチ102は、操作部108からの制御信号によって、メモリ109に記憶された停止目標位置を指令信号S2としてサーボ制御部103へと供給する。したがって、サーボ制御部103は、メモリ109に保存されたサーボモータ104の停止目標位置による指令信号S2と、現在のサーボモータ104の位置情報とが異なる場合、停止目標位置と現在の位置情報とをもとに算出した動作トルクでサーボモータ104をさらに駆動する。そしてサーボモータ104を駆動した結果、サーボ制御部103は、モータ位置検出部106から出力された位置情報によって、サーボモータ104が停止目標位置に到達したことを検知すると、サーボモータ104の駆動を停止する。なお、サーボ制御部103は、モータ位置検出部106から出力された位置情報が停止目標位置の近傍にまで到達したことを検知した場合に、サーボモータ104が停止目標位置に到達したと判定してもよい。この場合、サーボ制御部103は、モータ位置検出部106から出力された位置情報が停止目標位置から規定の範囲内であると判定した場合に、サーボモータ104が停止目標位置の近傍に到達したと判定する。
【0023】
以上の構成により、サーボアンプ10は、目標トルクの検出によりサーボモータ104の位置情報を停止目標位置としてメモリ109に記憶し、その位置(停止目標位置)を目標位置としてサーボモータ104を駆動し停止させる。これにより、指令生成装置100の指令がフィルタ101を通過することによるサーボモータ104の制御の遅れの影響を抑制でき、目標トルクを検出した位置にサーボモータ104を停止しやすい。
【0024】
図2は、サーボアンプ10の動作アルゴリズムの一例を示すフローチャートである。すなわち、サーボアンプ10は、
図2に示すように、まずトルク検出信号の有無を判断し(S11)、トルク検出信号が無ければ(S11:信号無し)、切替スイッチ102にフィルタ101後の指令を指定する(S12)。トルク検出信号が有れば(S11:信号有)、モータ位置情報を停止目標位置としてメモリ109に格納する(S13)。そして、切替スイッチ102にメモリ109内の停止目標位置(メモリ位置情報)を指定し(S14)、サーボモータ104の位置情報が停止目標位置近辺か否かを判断する(S15)。サーボモータ104の位置情報が停止目標位置近辺でなければ(S15:No)、処理S15を継続し、サーボモータ104の位置情報が停止目標位置近辺であれば(S15:Yes)、サーボモータ104を停止する(S16)。
【0025】
図3は、サーボ制御部103の指令とサーボモータ104の位置情報(モータ位置)との関係を示す説明図である。すなわち、サーボアンプ10によれば、動作トルクが目標トルクに達してトルク検出信号が発生すると、サーボ制御部103への指令X1は、そのときのサーボモータ104の位置X2に保持される。これにより、目標トルクを検出した位置にサーボモータ104を停止しやすい。
【0026】
以上のように、本開示における技術の例示として、上記の実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、上記に限定されず、適宜、変更、置換、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、実施の形態で説明する各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0027】
以上説明したように、第1の態様に係るねじ締め装置用のサーボアンプ(10)は、モータ位置検出部(106)と、フィルタ(101)と、サーボ制御部(103)と、トルク検出部(107)と、サーボ制御入力信号切替部(切替スイッチ102)と、を有する。モータ位置検出部(106)は、サーボモータ(104)の位置情報を検出する。フィルタ(101)には、指令生成装置(100)の出力が供給される。サーボ制御部(103)は、フィルタ(101)を通過した指令信号(S2)と位置情報とに基づいて設定された動作トルクで、サーボモータ(104)をサーボ制御する。トルク検出部(107)は、動作トルクを測定する。サーボ制御入力信号切替部は、フィルタ(101)とサーボ制御部(103)との間に設けられる。サーボ制御入力信号切替部は、トルク検出部(107)で測定された動作トルクが規定の目標トルクを超えた際に、モータ位置検出部(106)で検出された位置情報を指令信号(S2)としてサーボ制御部(103)へ供給する。
【0028】
この態様によれば、サーボ制御部(103)は、サーボモータ(104)のトルクが規定値に到達したことを検出し、その際のサーボモータ(104)の位置情報が指令信号(S2)として供給されて、サーボモータ(104)を駆動、停止する。したがって、サーボモータ(104)は、フィルタ整形による影響を含む指令信号ではなく、サーボモータ(104)のトルクによって停止できる。したがって、サーボモータ(104)は、指令信号に対する制御の遅れの影響を受けにくくなる。その結果、サーボ制御部(103)は、正確な停止位置でサーボモータ(104)の回転を停止させやすくなる。
【0029】
第2の態様に係るねじ締め装置用のサーボアンプ(10)は、第1の態様において、トルク検出信号の入力を検知した際に、制御信号をサーボ制御入力信号切替部に供給する操作部(108)を、さらに有する。トルク検出部(107)は、測定された動作トルクが目標トルクを超えた場合にトルク検出信号を生成する。
【0030】
第3の態様に係るねじ締め装置用のサーボアンプ(10)では、第2の態様において、サーボ制御入力信号切替部は、操作部(108)からの制御信号によって、指令信号(S2)と位置情報とのいずれかをサーボ制御部(103)へ出力する。
【0031】
第4の態様に係るねじ締め装置用のサーボアンプ(10)では、第1~3のいずれかの態様において、サーボ制御部(103)は、指令信号(S2)と位置情報との差に基づいてサーボモータ(104)を制御する。
【0032】
第5の態様に係るねじ締め装置用のサーボアンプ(10)は、第2又は3の態様において、モータ位置検出部(106)で検出した位置情報を格納するメモリ(109)をさらに有する。操作部(108)は、トルク検出信号を検知した場合、動作トルクが目標トルクに達した際の位置情報を、メモリ(109)からサーボ制御入力信号切替部へと供給する。
【0033】
第2~5の態様に係る構成は、ねじ締め装置用のサーボアンプ(10)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本開示のねじ締め装置用アンプは、精度良くサーボモータの位置を停止制御することができるので、トルク法で停止位置を決定する自動ねじ締め装置や自動線処理機等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0035】
10 サーボアンプ
100 指令生成装置
101 フィルタ
102 切替スイッチ(サーボ制御入力信号切替部)
103 サーボ制御部
104 サーボモータ
105 エンコーダ
106 モータ位置検出部
107 トルク検出部
108 操作部
109 メモリ
S2 指令信号