(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】電動工具の製造方法及びモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20230217BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
H02K15/02 D
H02K1/18 D
(21)【出願番号】P 2020570380
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 JP2019045650
(87)【国際公開番号】W WO2020161989
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2019021091
(32)【優先日】2019-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江阪 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 暁斗
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健治
(72)【発明者】
【氏名】水野 光政
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-240259(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0024031(US,A1)
【文献】特許第2763647(JP,B2)
【文献】特開2004-242444(JP,A)
【文献】国際公開第2017/175508(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0169104(US,A1)
【文献】特開2002-010539(JP,A)
【文献】国際公開第2018/008475(WO,A1)
【文献】特許第2875497(JP,B2)
【文献】特開2012-170295(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0324285(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
H02K 3/34
H02K 3/46
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアと、
出力軸を有し前記ステータコアに対して回転するロータと、を備えるモータを備える電動工具の製造方法であって、
前記ステータコアは、
内側に前記ロータが配置された円筒状の内筒部と、
前記内筒部から前記内筒部の径方向において外向きに突出した胴部を含む複数のティースと、
前記複数のティースに取り付けられ前記複数のティースを囲む円筒状の外筒部と、を有し、
前記外筒部は、前記複数のティースと一対一で対応する複数の嵌合部を有し、
前記製造方法は、
前記複数の嵌合部の各々と、前記複数のティースのうちこの嵌合部に対応するティースとを、少なくとも一方を前記径方向に移動させることで嵌め合う工程を含む、
電動工具の製造方法。
【請求項2】
ステータコアと、
出力軸を有し前記ステータコアに対して回転するロータと、を備えるモータの製造方法であって、
前記ステータコアは、
内側に前記ロータが配置された円筒状の内筒部と、
前記内筒部から前記内筒部の径方向において外向きに突出した胴部を含む複数のティースと、
前記複数のティースに取り付けられ前記複数のティースを囲む円筒状の外筒部と、を有し、
前記外筒部は、前記複数のティースと一対一で対応する複数の嵌合部を有し、
前記製造方法は、
前記複数の嵌合部の各々と、前記複数のティースのうちこの嵌合部に対応するティースとを、少なくとも一方を前記径方向に移動させることで嵌め合う工程を含む、
モータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電動工具の製造方法及びモータの製造方法に関し、より詳細には、ステータコアとロータとを備えるモータの製造方法、及びこのモータを備える電動工具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の電動工具は、ブラシレスモータを備える。ブラシレスモータは、ステータコアと、ロータと、複数のコイルと、を含む。ステータコアは、コイルが巻かれる複数のティースに分割されている。一態様において、隣接する2つのティースの2つの突出端の間に、両突出端をつなぐ繋ぎ部を設けて、全てのティースを突出端同士で固定して一体化してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ティースに巻かれたコイルがティースから脱落する可能性を低減できる電動工具及びモータの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係る電動工具の製造方法は、モータを備える電動工具の製造方法である。前記モータは、ステータコアと、ロータと、を備える。前記ロータは、出力軸を有し前記ステータコアに対して回転する。前記ステータコアは、円筒状の内筒部と、複数のティースと、外筒部と、を有する。前記内筒部は、内側に前記ロータが配置されている。前記複数のティースは、胴部を含む。前記胴部は、前記内筒部から前記内筒部の径方向において外向きに突出している。前記外筒部は、前記複数のティースに取り付けられ前記複数のティースを囲む。前記外筒部は、円筒状である。前記外筒部は、前記複数のティースと一対一で対応する複数の嵌合部を有する。前記製造方法は、前記複数の嵌合部の各々と、前記複数のティースのうちこの嵌合部に対応するティースとを、少なくとも一方を前記径方向に移動させることで嵌め合う工程を含む。
本開示の一態様に係るモータの製造方法は、ステータコアと、ロータと、を備えるモータの製造方法である。前記ロータは、出力軸を有し前記ステータコアに対して回転する。前記ステータコアは、円筒状の内筒部と、複数のティースと、外筒部と、を有する。前記内筒部は、内側に前記ロータが配置されている。前記複数のティースは、胴部を含む。前記胴部は、前記内筒部から前記内筒部の径方向において外向きに突出している。前記外筒部は、前記複数のティースに取り付けられ前記複数のティースを囲む。前記外筒部は、円筒状である。前記外筒部は、前記複数のティースと一対一で対応する複数の嵌合部を有する。前記製造方法は、前記複数の嵌合部の各々と、前記複数のティースのうちこの嵌合部に対応するティースとを、少なくとも一方を前記径方向に移動させることで嵌め合う工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るモータの要部の分解図である。
【
図2】
図2は、同上のモータを備える電動工具の概略図である。
【
図3】
図3は、同上のモータのロータの平面図である。
【
図4】
図4は、同上のモータのロータとの比較例に係るロータの平面図である。
【
図6】
図6は、同上のモータの中央コア及びコイル巻枠の分解図である。
【
図7】
図7は、同上のモータの中央コアの要部の平面図である。
【
図8】
図8は、同上のモータのステータの要部の平面図である。
【
図9】
図9は、同上のモータの中央コアの別の構成例を示す平面図である。
【
図10】
図10は、同上のモータの中央コアの更に別の構成例を示す平面図である。
【
図11】
図11は、同上のモータの中央コアの更に別の構成例を示す平面図である。
【
図12】
図12は、同上のモータの中央コアの更に別の構成例を示す断面図である。
【
図13】
図13は、同上のモータの中央コアの更に別の構成例を示す断面図である。
【
図14】
図14は、同上のモータのロータコアの断面図である。
【
図15】
図15は、同上のモータのロータコアの別の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る電動工具と、この電動工具に備えられるモータとについて、図面を用いて説明する。ただし、下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の1つに過ぎない。下記の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、下記の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0009】
(1)電動工具
図1、
図2に示すように、電動工具10は、モータ1を備えている。
図2に示すように、電動工具10は、電源101と、駆動伝達部102と、出力部103と、チャック104と、先端工具105と、トリガボリューム106と、制御回路107とを更に備えている。電動工具10は、先端工具105をモータ1の駆動力で駆動する工具である。
【0010】
モータ1は、先端工具105を駆動する駆動源である。モータ1は、例えばブラシレスモータである。電源101は、モータ1を駆動する電流を供給する直流電源である。電源101は、例えば、1又は複数の2次電池を含む。駆動伝達部102は、モータ1の出力(駆動力)を調整して出力部103に出力する。出力部103は、駆動伝達部102から出力された駆動力で駆動(例えば回転)される部分である。チャック104は、出力部103に固定されており、先端工具105が着脱自在に取り付けられる部分である。先端工具105(ビットとも言う)は、例えば、ドライバ、ソケット又はドリル等である。各種の先端工具105のうち用途に応じた先端工具105が、チャック104に取り付けられて用いられる。
【0011】
トリガボリューム106は、モータ1の回転を制御するための操作を受け付ける操作部である。トリガボリューム106を引く操作により、モータ1のオンオフが切替可能である。また、トリガボリューム106を引き込む操作の操作量で、出力部103の回転速度、つまりモータ1の回転速度が調整可能である。制御回路107は、トリガボリューム106に入力された操作に応じて、モータ1を回転又は停止させ、また、モータ1の回転速度を制御する。この電動工具10では、先端工具105がチャック104に取り付けられる。そして、トリガボリューム106への操作によってモータ1の回転速度が制御されることで、先端工具105の回転速度が制御される。
【0012】
なお、実施形態の電動工具10はチャック104を備えることで、先端工具105が、用途に応じて交換可能であるが、先端工具105が交換可能である必要は無い。例えば、電動工具10は、特定の先端工具105のみ用いることができる電動工具であってもよい。
【0013】
(2)モータ
(2-1)概要
次に、
図1等を参照して、モータ1の構成を説明する。モータ1は、ステータ2と、ロータ5とを備えている。ロータ5は、出力軸51を有している。ステータ2は、ステータコア20と、複数(
図1では9つ)のコイル23とを有している。ロータ5は、ステータ2に対して回転する。すなわち、ステータコア20に巻かれた複数のコイル23から発生する磁束により、ロータ5を回転させる電磁気力が発生する。モータ1は、ロータ5の回転力(駆動力)を出力軸51から駆動伝達部102(
図2参照)へ伝達する。
【0014】
ステータコア20は、中央コア21と、外筒部22とを有している。外筒部22は、中央コア21に取り付けられる。中央コア21は、円筒状の内筒部3と、複数(
図1では9つ)のティース4とを有している。内筒部3の内側には、ロータ5が配置されている。複数のティース4の各々は、胴部41と、2つの先端片42とを含む。胴部41は、内筒部3から内筒部3の径方向において外向きに突出している。2つの先端片42は、胴部41の先端側の部位から、胴部41の突出方向と交差する方向に延びている。胴部41には、後述するコイル巻枠8(
図6参照)を介してコイル23が巻かれる。
【0015】
2つの先端片42は、コイル23が胴部41から脱落することを抑制する抜止めとして設けられている。すなわち、胴部41の先端側にコイル23が移動しようとする場合に、コイル23が2つの先端片42に引っ掛かることで、コイル23の脱落を抑制できる。
【0016】
ロータ5は、円筒状のロータコア6と、複数(
図1では6つ)の永久磁石7と、出力軸51と、を有している。出力軸51は、ロータコア6の内側に保持されている。複数の永久磁石7は、ロータコア6の中心C1(
図3参照)を中心としてスポーク状(放射状)に配置されている。
【0017】
ここで、ロータコア6の形状は、ロータコア6の軸方向から見て円状であり、ロータコア6の中心C1とは、当該円の中心に相当する。各永久磁石7の形状は直方体状である。ロータコア6の軸方向から見て、各永久磁石7の形状は長方形状である。複数の永久磁石7がロータコア6の中心C1を中心としてスポーク状に配置されるとは、ロータコア6の軸方向から見て、各永久磁石7の長手方向がロータコア6の径方向に沿い、かつ、複数の永久磁石7がロータコア6の周方向に並ぶように配置されることである。
【0018】
複数の永久磁石7がロータコア6の中心C1を中心としてスポーク状に配置されるので、ロータ5の直径を短くしやすい。特に、永久磁石7の個数が比較的多い場合に、各永久磁石7の長手方向の長さL1(
図3参照)を維持しつつ、ロータ5の直径を短くしやすい。
【0019】
例えば、
図4に示す比較例のロータ5Pでは、ロータコア6Pの中心C2の周りに、複数(
図4では6つ)の永久磁石7が多角形状(6角形状)に配置されている。そのため、ロータコア6Pの直径が一定の場合、永久磁石7の個数が多いほど、永久磁石7の長手方向の長さL2を短くする必要がある。また、永久磁石7の長手方向の長さL2を一定とする場合、永久磁石7の個数が多いほど、ロータコア6Pの直径を長くする必要がある。この場合、ロータコア6Pの直径が長いほど、ロータコア6Pが回転を開始するとき及び回転を停止するときに必要なモーメント力が大きくなる。さらに、ロータコア6Pの直径を長くし複数の永久磁石7と中心C2との間の距離を長くするほど、複数の永久磁石7に加わる遠心力が大きくなるので、複数の永久磁石7からの力によりロータコア6Pが変形する可能性が高くなる。そのため、ロータコア6Pの直径を長くすることが好ましくない場合がある。
【0020】
一方で、実施形態のロータ5では、永久磁石7の個数が比較的多い場合に、比較例のロータコア6Pと比較してロータコア6の直径が長くなることを抑制できる。すなわち、永久磁石7の個数が多いほどロータコア6の周方向における複数の永久磁石7の間隔を狭くすれば、複数の永久磁石7をロータコア6の中心C1を中心としてスポーク状に配置できるので、ロータコア6の直径を長くすることを抑制しつつ複数の永久磁石7を配置できる。
【0021】
すなわち、実施形態のロータ5は、永久磁石7の個数を比較的多い個数(例えば、6つ以上)にすることでモータ1のトルクを大きくする場合に、ロータコア6の直径が長くなることを抑制することができる。
【0022】
(2-2)中央コア
次に、ステータ2の構成の詳細について説明する。
図5に示すように、ステータ2のステータコア20の中央コア21は、複数の鋼板210を含む。中央コア21は、複数の鋼板210を厚さ方向に積層して形成されている。各鋼板210は、磁性材料により形成されている。各鋼板210は、例えば、ケイ素鋼板である。
【0023】
図6に示すように、内筒部3の形状は、円筒状である。内筒部3の軸方向は、複数の鋼板210の厚さ方向と一致している。内筒部3は、周方向において連続している。言い換えると、内筒部3は、周方向において途切れることなくつながっている。
【0024】
複数のティース4の胴部41の形状は、
図6に示すように直方体状である。胴部41は、内筒部3から内筒部3の径方向において外向きに突出している。複数のティース4の胴部41は、内筒部3の周方向において等間隔に設けられている。
【0025】
2つの先端片42は、胴部41の先端側の部位から、胴部41の突出方向と交差する方向に延びている。より詳細には、2つの先端片42は、胴部41の先端側の部位において、内筒部3の周方向の両側に設けられている。そして、2つの先端片42は、内筒部3の周方向に延びている。
【0026】
図6、
図7に示すように、各先端片42のうち、内筒部3の径方向において外側の面は、曲面421を含む。内筒部3の軸方向から見て、曲面421の形状は、内筒部3と同心の円に沿った円弧状である。
【0027】
各先端片42は、胴部41とつながった部位に、湾曲部422を有している。湾曲部422は、内筒部3の径方向において外側ほど、内筒部3の周方向において胴部41から離れるように湾曲している。つまり、各先端片42のうち基端側(胴部41側)の部分である湾曲部422は、面取りされていてR状になっている。
【0028】
図7、
図8に示すように、内筒部3は、2つのティース4を連結している部位である連結部31を複数(本実施形態では9つ)有している。連結部31は、内筒部3の軸方向から見て円弧状に形成されている。
【0029】
別の一例として、
図9に示すように、内筒部3は、高磁気抵抗部R1を有していてもよい。高磁気抵抗部R1は、内筒部3のうち高磁気抵抗部R1の周囲の部位よりも磁気抵抗が高い。
図9に示す一例では、高磁気抵抗部R1は、1つの連結部31に設けられている。高磁気抵抗部R1を設けたことにより、コイル23で発生する磁束に関して、連結部31への漏れ磁束を低減できる。これにより、内筒部3が高磁気抵抗部R1を有していない場合と比較して、モータ1のトルクを大きくできる。なお、高磁気抵抗部R1は複数個所に設けられていてもよい。例えば、高磁気抵抗部R1は、全ての連結部31に設けられていてもよい。あるいは、高磁気抵抗部R1は、内筒部3の周方向において一定間隔で設けられていてもよい。
【0030】
図9に示す一例では、高磁気抵抗部R1は、迂回部301を有している。内筒部3の軸方向から見て、内筒部3の基本形状は円環形であるが、内筒部3は、迂回部301においてこの円環に対して径方向に突出するように湾曲した形状を有している。また、内筒部3は、周方向において連続している。
【0031】
内筒部3に迂回部301が設けられていることにより、迂回部301が無い場合と比較して磁路が長く、迂回部301における磁気抵抗が高い。
【0032】
別の一例として、
図10に示すように、高磁気抵抗部R1は、貫通部302を有している。ここでは、高磁気抵抗部R1は、貫通部302を1つのみ有している。貫通部302は、内筒部3を軸方向に貫通している。これにより、
貫通部302は、内筒部3を周方向において複数個に分割している。例えば、
図10のように貫通部302が1つ設けられている場合は、内筒部3は貫通部302を境界として2つに分割されている。すなわち、
図10において内筒部3は、周方向において不連続である。貫通部302は例えば、複数の鋼板210(
図5参照)が積層されてから内筒部3の一部を切り離すことで形成される。あるいは、複数の鋼板210の各々に、貫通部302に相当する孔を設けてから、複数の鋼板210を積層してもよい。
【0033】
更に別の一例として、
図11に示すように、高磁気抵抗部R1は、9つ(
図11では5つのみを図示)の貫通部302を有している。つまり、高磁気抵抗部R1は、ティース4と同数の貫通部302を有している。9つの貫通部302は、複数のティース4を互いに分離している。つまり、複数のティース4は、内筒部3によりつながっておらず、互いに分離している。すなわち、
図11において内筒部3は、周方向において不連続である。この態様では、複数のティース4がコイル巻枠8に保持されることで、複数のティース4間の間隔が保たれる。
図11において、複数の貫通部302に相当する部位を含む内筒部3を図示する2点鎖線は、実体を伴わない。
【0034】
更に別の一例について、
図12を参照して説明する。
図12は、内筒部3の断面の一部を平面状に引き延ばして示した図である。高磁気抵抗部R1は、複数の鋼板210のうち2つ以上の鋼板210の各々に設けられている。
図12では、全ての鋼板210にそれぞれ高磁気抵抗部R1が設けられている。すなわち、内筒部3は、複数の高磁気抵抗部R1を有している。
【0035】
各高磁気抵抗部R1は、複数の空洞部303を有している。複数の空洞部303の各々は、鋼板210を軸方向に貫通している。各空洞部303は、例えば、鋼板210が切欠かれることで形成されている。複数の空洞部303は、鋼板210のうち、内筒部3の連結部31(
図7、
図8参照)に相当する部位に設けられている。複数の空洞部303は、鋼板210の周方向において等間隔に設けられている。
【0036】
複数の鋼板210は、互いに隣り合う鋼板210の高磁気抵抗部R1(空洞部303)が鋼板210の厚さ方向に重ならないように積層されている。ここで、9つの連結部31を、内筒部3の周方向において並んでいる順にそれぞれ第1の連結部、第2の連結部、……、第9の連結部と称する。また、複数の鋼板210を、鋼板210の厚さ方向において並んでいる順に第1の鋼板、第2の鋼板、……、と称する。例えば、第1の鋼板では、第1の連結部、第4の連結部及び第7の連結部に相当する部位にそれぞれ空洞部303が設けられている。第2の鋼板では、第2の連結部、第5の連結部及び第8の連結部に相当する部位にそれぞれ空洞部303が設けられている。第3の鋼板では、第3の連結部、第6の連結部及び第9の連結部に相当する部位にそれぞれ空洞部303が設けられている。内筒部3において、空洞部303と、鋼板210の厚さ方向においてこの空洞部303と重なる位置に形成された別の空洞部303との間には、1つ以上(
図12では2つ)の鋼板210の、空洞部303以外の部分が配置されている。
【0037】
空洞部303は、例えば、複数の鋼板210が積層される前に、各鋼板210に形成される。複数の鋼板210は、厚さ方向から見て同じ形に形成されて、隣り合う鋼板210間で向き(角度)が異なるように積層されている。より詳細には、第1の鋼板に対して40度回転した向きで第2の鋼板が重ねられており、第2の鋼板に対して40度回転した向きで第3の鋼板が重ねられている。第4の鋼板以降も同様に、隣り合う鋼板に対して40度(所定角度)回転した向きで重ねられている。なお、複数の鋼板210のうち一部の鋼板210の厚さと、別の一部の鋼板210の厚さとが、異なっていてもよい。
【0038】
更に別の一例について、
図13を参照して説明する。
図13は、内筒部3の断面の一部を平面状に引き延ばして示した図である。
図13に示すように、各鋼板210の高磁気抵抗部R1は、空洞部303に代えて、肉薄部304を含んでいてもよい。肉薄部304は、内筒部3のうち肉薄部304の周囲の部位よりも、内筒部3の軸方向における長さが短い。すなわち、鋼板210のうち肉薄部304の厚さL5は、鋼板210のうち肉薄部304の周囲の部位の厚さL6よりも小さい。肉薄部304は、鋼板210の一部をプレス加工することにより形成されている。そのため、鋼板210の一部を削り取って肉薄部304を形成する場合と比較して、鋼板210の強度を大きくすることができる。
【0039】
以上、高磁気抵抗部R1の一例を列挙したが、これらの一例のうち2つ以上を組み合わせてもよい。
【0040】
(2-3)コイル及びコイル巻枠
図1に示すように、コイル23は、9つのティース4に対応して9つ備えられている。9つのコイル23は、互いに電気的に接続されている。各コイル23を構成する巻線は、例えば、エナメル線である。この巻線は、線状の導体と、導体を覆う絶縁被覆と、を有している。
【0041】
モータ1は、コイル巻枠8を更に備えている。コイル巻枠8は、例えば、合成樹脂を材料として形成されている。コイル巻枠8は、電気絶縁性を有している。コイル巻枠8は、複数のティース4の少なくとも1つ(ここでは、各々のティース4)の、少なくとも一部を覆っている。
【0042】
図6に示すように、コイル巻枠8は、2つの部材81を含む。2つの部材81は、互いに同じ形状である。2つの部材81は、内筒部3の軸方向に並んでいる。2つの部材81は、別体に形成されている。各部材81は、内筒部3の軸方向から複数のティース4を嵌め込み可能な形状に形成されている。すなわち、2つの部材81のうち一方は、中央コア21に取り付けられて、内筒部3の軸方向の第1端から複数のティース4を覆い、他方は、内筒部3の軸方向の第2端から複数のティース4を覆っている。各部材81は、内筒部3と重なる筒体811と、複数のティース4を覆う複数(
図6では9つ)のティース被覆部812とを有している。筒体811は、内筒部3と同心の円筒状に形成されている。各ティース被覆部812は、筒体811から筒体811の径方向において外向きに突出している。各ティース4のうち、内筒部3側とは反対側の先端は、コイル巻枠8に覆われておらず、外筒部22に接している。
【0043】
図5、
図8に示すように、2つの部材81が中央コア21に取り付けられて複数のティースの少なくとも一部を覆った状態で、コイル23は、2つの部材81(コイル巻枠8)を介して胴部41に巻かれている。ここで、コイル23は、胴部41と、この胴部41と隣り合う2つの胴部41それぞれとの間のスロット(空洞)を通るように胴部41に巻かれている。
【0044】
2つの部材81は、内筒部3の軸方向において互いに離れている。そのため、中央コア21のうち厚さ方向における中心付近の部位では、各ティース4は中央コア21の厚さ方向と直交する方向に露出している。モータ1の設計変更等により中央コア21を構成する鋼板210の個数が変更された場合等には、中央コア21の厚さが変わる。そして、中央コア21の厚さの変更に伴って2つの部材81間の距離が変わる。
【0045】
(2-4)外筒部
図5に示すように、外筒部22は、複数の鋼板220を含む。外筒部22は、複数の鋼板220を厚さ方向に積層して形成されている。各鋼板220は、磁性材料により形成されている。各鋼板220は、例えば、ケイ素鋼板である。
【0046】
図1、
図8に示すように、外筒部22の形状は、円筒状である。外筒部22は、複数のティース4に取り付けられ複数のティース4を囲んでいる。
【0047】
外筒部22は、複数(9つ)の嵌合部221を有している。つまり、外筒部22は、ティース4と同数の嵌合部221を有している。複数の嵌合部221の各々は、外筒部22の内周面に設けられた窪みである。複数の嵌合部221は、複数のティース4と一対一で対応している。複数の嵌合部221の各々と、複数のティース4のうちこの嵌合部221に対応するティース4とは、少なくとも一方が内筒部3の径方向に移動することで嵌まり合う。これにより、外筒部22が複数のティース4に取り付けられる。
【0048】
各嵌合部221には、ティース4のうち2つの先端片42を含む部位が嵌め込まれる。そのため、外筒部22の周方向における各嵌合部221の長さは、胴部41から突出した2つの先端片42のうち一方の先端片42の突出先端と、他方の先端片42の突出先端との間の長さと等しい。なお、本明細書において「等しい」とは、複数の値が互いに完全に一致する場合に限定されず、許容される誤差の範囲内で異なっている場合をも含む。例えば、3%以内、5%以内、又は10%以内の誤差がある場合をも含む。
【0049】
中央コア21にコイル巻枠8が装着されコイル23が巻かれた状態で、外筒部22は、例えば、焼嵌めにより複数のティース4に取り付けられる。すなわち、外筒部22を加熱して径方向に膨張させた状態で、外筒部22の内側に中央コア21を配置する。これにより、外筒部22の内面は、複数のティース4との間に僅かに隙間を空けて内筒部3の径方向における複数のティース4の先端に対向する。その後、外筒部22の温度が低下して外筒部22が収縮すると、外筒部22の内面が複数のティース4の先端に接する。つまり、外筒部22の収縮に伴って複数の嵌合部221が外筒部22の径方向内向きに移動することにより、複数の嵌合部221と複数のティース4とが嵌まり合う。外筒部22は、複数のティース4に対して外筒部22の径方向内向きの接圧を加えている。
【0050】
(2-5)ロータ
次に、ロータ5の構成の詳細について説明する。
図5に示すように、ロータ5のロータコア6は、複数の鋼板600を含む。ロータコア6は、複数の鋼板600を厚さ方向に積層して形成されている。各鋼板600は、磁性材料により形成されている。各鋼板600は、例えば、ケイ素鋼板である。
【0051】
ロータコア6は、ステータコア20の内筒部3と同心の円筒状に形成されている。ロータコア6の軸方向において、ロータコア6の両端の位置は、ステータコア20の両端の位置と揃っている。すなわち、ロータコア6の軸方向及びステータコア20の内筒部3の軸方向におけるロータコア6の第1端(
図5では紙面上側の端)とステータコア20の第1端(
図5では紙面上側の端)とは、軸方向と直交する方向に重なる位置にある。さらに、ロータコア6の軸方向及び内筒部3の軸方向におけるロータコア6の第2端(
図5では紙面下側の端)とステータコア20の第2端(
図5では紙面下側の端)とは、軸方向と直交する方向に重なる位置にある。ロータコア6の厚さとステータコア20の厚さとは等しい。ここで、ロータコア6の第1端とステータコア20の第1端とがちょうど重なっていなくてもよく、許容される誤差の範囲内でずれていてもよい。また、ロータコア6の第2端とステータコア20の第2端とがちょうど重なっていなくてもよく、許容される誤差の範囲内でずれていてもよい。例えば、ロータコア6の厚さの3%以内、5%以内又は10%以内のずれがあってもよい。
【0052】
ロータコア6の内側には、出力軸51が保持されている。
図3に示すように、ロータコア6は、出力軸51が通される軸孔611を有する軸保持部61と、軸保持部61の周囲のロータ本体62とを有している。軸保持部61の形状は、円筒状である。軸保持部61の内側の空間が、軸孔611である。ロータ本体62の形状は、軸保持部61と同心の円筒状である。ロータコア6は、軸保持部61とロータ本体62との間に、複数(
図3では12個)の貫通部63と、軸保持部61とロータ本体62とを連結している複数(
図3では6つ)のブリッジ部64とを有している。
【0053】
ロータ本体62は、複数(
図3では6つ)の磁石収容部621を含んでいる。複数の磁石収容部621は、複数の永久磁石7がロータコア6の中心C1を中心としてスポーク状(放射状)に配置されるように複数の永久磁石7を収容する。複数の磁石収容部621の各々は、ロータ本体62を軸方向に貫通する貫通孔である。複数の永久磁石7の各々は、接着剤を付着させた状態で磁石収容部621に挿入されることで、磁石収容部621に保持されている。なお、複数の永久磁石7の各々は、接着剤を用いることなく、ロータコア6との間の磁気吸着力により磁石収容部621に保持されていてもよい。
【0054】
複数の磁石収容部621は、ロータコア6の周方向において等間隔に設けられている。これにより、複数の永久磁石7がロータコア6の周方向において等間隔に配置されている。また、複数の永久磁石7の各々の長手方向は、ロータコア6の径方向に沿っている。
【0055】
各永久磁石7は、例えば、ネオジム磁石である。各永久磁石7の2つの磁極は、ロータコア6の周方向に並んでいる。ロータコア6の周方向において隣り合う2つの永久磁石7は、それぞれ同極を対向させている。ロータコア6の周方向において隣り合う2つの永久磁石7で発生する磁束の一部は、ロータ本体62のうち、これら2つの永久磁石7の間の部位622からステータ2(
図1参照)に向かう(矢印A1参照)。つまり、ロータコア6の径方向に沿った磁束が部位622とステータ2との間に生じる。
【0056】
ロータコア6は、高磁気抵抗部R2を有している。高磁気抵抗部R2は、ロータコア6のうち高磁気抵抗部R2の周囲の部位よりも磁気抵抗が高い。高磁気抵抗部R2は、複数の永久磁石7で発生する磁束の磁路に設けられている。複数の永久磁石7で発生する磁束の磁路は、例えば、いずれかの永久磁石7の2つの磁極のいずれかに対向する領域、及び、いずれかの永久磁石7に隣接する領域であってこの永久磁石7の2つの磁極の間を結ぶ曲線上の領域を含む。高磁気抵抗部R2を設けたことにより、複数の永久磁石7で発生する磁束に関して、漏れ磁束を低減できる。すなわち、ロータコア6の周方向において隣り合う2つの永久磁石7間の部位622から、ステータ2(
図1参照)に向かう磁束を増加させることができる。これにより、モータ1のトルクを大きくできる。
【0057】
高磁気抵抗部R2は、例えば、上述の複数の貫通部63を含む。複数の貫通部63の各々は、ロータコア6を軸方向に貫通している。また、高磁気抵抗部R2は、複数の貫通部63とは別の位置に、複数(
図3では12個)の貫通部65を含む。各貫通部65は、ロータコア6を軸方向に貫通している。複数の貫通部63及び複数の貫通部65の各々は、磁石収容部621につながっている。
【0058】
ここで、ロータコア6は、第1部位601と第2部位602とを有している。第1部位601及び第2部位602はそれぞれ、複数の永久磁石7と一対一で対応するように複数(6つ)設けられている。以下では、1つの永久磁石7と、この永久磁石7に対応する第1部位601及び第2部位602に着目して説明する。
【0059】
第1部位601及び第2部位602はそれぞれ、ロータコア6の径方向において永久磁石7に隣接している。第1部位601は、軸保持部61の一部を含む。第1部位601は、ロータコア6の径方向における永久磁石7の両側のうちロータコア6の中心C1側の部位である。より詳細には、第1部位601は、永久磁石7と軸孔611との間の部位である。
【0060】
第1部位601には、2つの貫通部63の各々の少なくとも一部が設けられている。2つの貫通部63は、ロータコア6の周方向に並んでいる。2つの貫通部63の各々は、ロータコア6の周方向に延びる部位と、ロータコア6の径方向に延びる部位とを含む。また、2つの貫通部63の間には、軸保持部61から突出した突起部66が設けられている。すなわち、ロータコア6は突起部66を有している。突起部66は、ロータコア6の径方向において永久磁石7に接している。
【0061】
第2部位602は、ロータ本体62の一部を含む。第2部位602は、ロータコア6の径方向における永久磁石7の両側のうちロータコア6の外周側の部位である。より詳細には、第2部位602は、永久磁石7とロータコア6の外縁との間の部位である。
【0062】
第2部位602には、2つの貫通部65が設けられている。2つの貫通部65は、ロータコア6の周方向に並んでいる。2つの貫通部65の各々の長手方向は、ロータコア6の周方向に沿っている。2つの貫通部65の間には、ロータコア6の径方向において永久磁石7に接している突起部67が設けられている。すなわち、ロータコア6は突起部67を有している。突起部66と突起部67との間に永久磁石7が挟まれることで、永久磁石7がロータコア6の径方向に移動することが規制されている。
【0063】
すなわち、高磁気抵抗部R2の少なくとも一部(貫通部63、65)は、第1部位601及び第2部位602のうち少なくとも一方に設けられている。
【0064】
第1部位601における高磁気抵抗部R2の長さL3(ロータコア6の径方向における長さ)は、第2部位602における高磁気抵抗部R2の長さL4(ロータコア6の径方向における長さ)とは異なる。長さL3は長さL4よりも長い。第1部位601における長さL3は、ロータコア6の径方向における貫通部63の長さである。第2部位602における長さL4は、ロータコア6の径方向における貫通部65の長さである。
【0065】
複数の永久磁石7のうち任意の1つの永久磁石7に隣接して設けられた貫通部63と、当該永久磁石7に隣り合う永久磁石7に隣接して設けられた貫通部63との間には、ブリッジ部64が設けられている。このようにして、複数(6つ)のブリッジ部64が、ロータコア6の周方向において等間隔に設けられている。また、ロータ本体62のうちロータコア6の径方向においてブリッジ部64と対向する領域には、貫通部68が設けられている。貫通部68は、高磁気抵抗部R2に含まれている。貫通部68は、ロータコア6を軸方向に貫通している。ロータコア6の軸方向から見て、貫通部68の形状は円状である。貫通部68は、複数のブリッジ部64と一対一で対応するように複数(
図3では6つ)設けられている。
【0066】
ロータコア6は、複数(
図3では6つ)の空所69(貫通孔)を有している。複数の空所69の各々は、ロータコア6を軸方向に貫通している。複数の空所69は、例えば、複数の永久磁石7で発生する磁束の磁路とは異なる部位に設けられている。複数の空所69は、軸保持部61の内縁に沿って設けられている。複数の空所69は、ロータコア6の周方向において等間隔に設けられている。複数の空所69は、軸孔611につながっている。複数の空所69を設けたことにより、ロータコア6の軽量化を図ることができる。
【0067】
なお、各空所69は、高磁気抵抗部R2に含まれていてもよい。つまり、各空所69は、複数の永久磁石7で発生する磁束の磁路に設けられていてもよい。
【0068】
図14は、
図3の曲線X1に対応する断面を平面状に引き延ばして示した図である。ロータコア6の複数の鋼板600の各々には、高磁気抵抗部R3が設けられている。すなわち、ロータコア6は、複数の高磁気抵抗部R3を有している。
【0069】
各高磁気抵抗部R3は、複数の空洞部603を有している。複数の空洞部603の各々は、鋼板600を軸方向に貫通している。複数の空洞部603は、鋼板600のうち、ブリッジ部64に相当する部位に設けられている。すなわち、複数の空洞部603の各々は、ブリッジ部64に相当する部位を2つの部分に切り離すように形成されている。ここでは、1つの鋼板600につき空洞部603は1つ設けられている。なお、
図14以外の図では、複数の空洞部603の図示を省略している。
【0070】
複数の鋼板600は、互いに隣り合う鋼板600の高磁気抵抗部R3(空洞部603)が鋼板600の厚さ方向に重ならないように積層されている。ここで、6つのブリッジ部64を周方向において並んでいる順にそれぞれ第1のブリッジ部、第2のブリッジ部、……、第6のブリッジ部と称し、複数の鋼板600を厚さ方向において並んでいる順に第1の鋼板、第2の鋼板、……、と称する。一例として、第1の鋼板、第7の鋼板、第13の鋼板、……、では、第1のブリッジ部に相当する部位に空洞部603が設けられている。第2の鋼板、第8の鋼板、第14の鋼板、……、では、第2のブリッジ部に相当する部位に空洞部603が設けられている。第3の鋼板、第9の鋼板、第15の鋼板、……、では、第3のブリッジ部に相当する部位に空洞部603が設けられている。ロータコア6において、空洞部603と、鋼板600の厚さ方向においてこの空洞部603と重なる位置に形成された別の空洞部603との間には、1つ以上(
図14では5つ)の鋼板600の、空洞部603以外の部分が配置されている。
【0071】
空洞部603は、例えば、複数の鋼板600が積層される前に、各鋼板600に形成される。複数の鋼板600は、厚さ方向から見て同じ形に形成されて、隣り合う鋼板600間で向き(角度)が異なるように積層されている。より詳細には、第1の鋼板に対して60度回転した向きで第2の鋼板が重ねられており、第2の鋼板に対して60度回転した向きで第3の鋼板が重ねられている。第4の鋼板以降も同様に、隣り合う鋼板に対して60度(所定角度)回転した向きで重ねられている。なお、空洞部603は、1つの鋼板600に複数設けられていてもよい。例えば、複数の空洞部603は、鋼板600の周方向において等間隔に設けられていてもよい。また、複数の鋼板600のうち一部の鋼板600の厚さと、別の一部の鋼板600の厚さとが、異なっていてもよい。
【0072】
別の一例として、
図15に示すように、各鋼板600の高磁気抵抗部R3は、空洞部603に代えて、肉薄部604を含んでいてもよい。肉薄部604は、ロータコア6のうち肉薄部604の周囲の部位(例えば、軸保持部61に相当する部位)よりも、ロータコア6の軸方向における長さが短い。すなわち、鋼板600のうち肉薄部604の厚さL7は、鋼板600のうち肉薄部604の周囲の部位の厚さL8よりも小さい。肉薄部604は、鋼板600の一部をプレス加工することにより形成されている。そのため、鋼板600の一部を削り取って肉薄部604を形成する場合と比較して、鋼板600の強度を大きくすることができる。
【0073】
なお、空洞部603及び肉薄部604は、ロータコア6のブリッジ部64に相当する部位に設けられることに限定されない。空洞部603及び肉薄部604は、例えば、ロータコア6の第1部位601に相当する部位及び第2部位602に相当する部位のうち少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0074】
(2-6)ベース及びベアリング
図1、
図5に示すように、モータ1は、ベース9と、2つのベアリング52とを更に備えている。ベース9には、有底筒状のカバーが取り付けられている。ステータ2及びロータ5は、ベース9とカバーとに囲まれた空間に収容されている。2つのベアリング52のうち一方は、カバーに固定されており、他方は、ベース9に固定されている。2つのベアリング52は、ロータ5の出力軸51を回転可能に保持している。
【0075】
(2-7)利点
モータ1の製造工程では、ステータ2の中央コア21と外筒部22とが分離された状態で、中央コア21の複数のティース4の胴部41に、コイル巻枠8を介してコイル23が巻かれる。その後、複数のティース4に外筒部22が取り付けられる。
【0076】
コイル23は、例えば、各ティース4の先端側に配置した器具を用いてティース4に巻かれる。複数のティース4は、内筒部3から径方向において外向きに突出しているので、複数のティース4が内向きに突出している場合と比較して、各ティース4の先端側のスペースを広くすることができる。そのため、各ティース4にコイル23を容易に巻くことができ、場合によっては、コイル23の占積率を増加させることが可能である。
【0077】
また、各ティース4はコイル23が胴部41から脱落することを抑制する2つの先端片42を含むので、各ティース4にコイル23をより容易に巻くことができる。さらに、各ティース4に加わる応力を、2つの先端片42に分散させることができるので、ティース4が変形する可能性を低減できる。さらに、先端片42は曲面421を含み、曲面421は外筒部22に接する。そのため、先端片42の表面が平面状に形成されている場合と比較して、複数のティース4に外筒部22が取り付けられる場合に、外筒部22から各ティース4に加わる応力が曲面421に沿って分散されやすい。
【0078】
また、各先端片42は、胴部41とつながった部位に、湾曲部422を有している。そのため、各ティース4を通る磁束の一部は、胴部41と湾曲部422とを通り、さらに、隣接するティース4の湾曲部422と胴部41とを通る(
図7の矢印A2参照)。このように、磁束の一部は、内筒部3の径方向に対して湾曲部422に沿って曲がった磁路を通ってティース4の外へ引き出されるので、磁束が内筒部3の径方向に沿った磁路を通ってティース4の外へ引き出される場合と比較して、磁路が短くなる。すなわち、この磁路の磁気抵抗が小さくなる。
【0079】
また、複数のティース4は、一端側において内筒部3により互いにつながっており、他端側が外筒部22に接している。すなわち、複数のティース4の一端には内筒部3が設けられており、他端には外筒部22が設けられている。これにより、内筒部3と外筒部22とのうちいずれか一方のみが設けられている場合と比較して、ステータコア20の強度の向上を図ることができる。また、ステータコア20の寸法公差のロバスト性を高くすることができる。また、モータ1のコギングの抑制を図ることができる。
【0080】
また、複数の永久磁石7がロータコア6の中心C1を中心としてスポーク状に配置されているので、ロータ5の直径を短くしやすい。
【0081】
(実施形態の変形例)
次に、実施形態の変形例を列挙する。以下の変形例は、適宜組み合わせて実現されてもよい。
【0082】
ロータ5の構成は、任意に変更が可能である。例えば、複数の永久磁石7は、スポーク状に配置されていることに限定されず、多角形状に配置されていてもよい。また、ロータコア6は、高磁気抵抗部R2、R3を有していなくてもよい。
【0083】
ロータコア6の軸方向から見たロータコア6の形状は、完全な円形に限定されず、例えば、円状又は楕円状であって、円周上に突起及び窪みが設けられた形状であってもよい。
【0084】
ステータコア20の貫通部302及びロータコア6の貫通部63、65、68にはそれぞれ、非磁性材料により形成されたスペーサが挿入されていてもよい。つまり、高磁気抵抗部R2は、貫通部63、65、68のみならず、スペーサを含んでいてもよい。
【0085】
永久磁石7の個数は、6つに限定されず、2つ以上であればよい。
【0086】
モータ1は、電動工具10に備えられることに限定されない。モータ1は、例えば、電動自転車又は電動アシスト自転車に備えられてもよい。
【0087】
モータ1は、ロータ5に取り付けられた調整部を更に有していてもよい。調整部の形状は、例えば、円筒状の重りであって、調整部は、ロータ5の出力軸51に取り付けられる。調整部の一部を削り調整部の重さ及び重心を変えることで、ロータ5の重量バランスを調整することができる。これにより、ロータコア6に貫通部63、65、68及び空洞部603等を設けたことによるロータ5の重量バランスのずれを補正できる。あるいは、ロータコア6の一部を削ることで、ロータ5の重量バランスを調整してもよい。あるいは、ロータ5に付着させる接着剤の位置と量とを調整することで、ロータ5の重量バランスを調整してもよい。
【0088】
複数の鋼板210(又は600)において、空洞部303(又は603)の配置については変更が可能である。複数の鋼板210(又は600)の強度を確保するために、2つ以上の空洞部303(又は603)が、複数の鋼板210(又は600)の厚さ方向に互いに隣り合わないことが好ましい。
【0089】
空洞部303(又は603)は、複数の鋼板210(又は600)の厚さ方向において周期的に設けられていてもよい。例えば、任意の空洞部303(又は603)と、複数の鋼板210(又は600)の厚さ方向においてこの空洞部303(又は603)と重なる空洞部303(又は603)との間に、一定数の鋼板210(又は600)が配置されていてもよい。あるいは、任意の空洞部303(又は603)と、複数の鋼板210(又は600)の厚さ方向においてこの空洞部303(又は603)と重なる空洞部303(又は603)との間の距離が一定距離であってもよい。
【0090】
複数の鋼板210(又は600)において、肉薄部304(又は604)の配置についても、空洞部303(又は603)と同様の変更が可能である。また、複数の鋼板210(又は600)には、空洞部303(又は603)と肉薄部304(又は604)との両方が設けられていてもよい。
【0091】
また、複数の鋼板210のうち一部の鋼板210にのみ、空洞部303及び肉薄部304のうち少なくとも一方が形成されていてもよい。また、複数の鋼板600のうち一部の鋼板600にのみ、空洞部603及び肉薄部604のうち少なくとも一方が形成されていてもよい。
【0092】
複数の鋼板210及び複数の鋼板600の各々は、各部分がつながった1つの部材であることが好ましい。これにより、各鋼板210(又は600)が複数の部材からなる場合と比較して、モータ1の部品点数を削減できる。
【0093】
また、空所69は、軸保持部61以外の部位に設けられていてもよい。また、空所69は、ロータコア6の軸方向に窪んだ窪みであってもよい。
【0094】
外筒部22の複数の嵌合部221の各々は、突起であってもよい。そして、複数のティース4の各々は、嵌合部221が嵌められる窪みを有していてもよい。
【0095】
(まとめ)
以上説明した実施形態等から、以下の態様が開示されている。
【0096】
第1の態様に係る電動工具10は、モータ1を備える。モータ1は、ステータコア20と、ロータ5と、を備える。ロータ5は、出力軸51を有しステータコア20に対して回転する。ステータコア20は、円筒状の内筒部3と、複数のティース4と、を有する。内筒部3は、内側にロータ5が配置されている。複数のティース4は、胴部41と、先端片42と、を含む。胴部41は、内筒部3から内筒部3の径方向において外向きに突出している。先端片42は、胴部41の先端側の部位から、胴部41の突出方向と交差する方向に延びている。
【0097】
上記の構成によれば、胴部41の先端側の部位には先端片42があるので、先端片42が無い場合と比較して、胴部41にコイル23が巻かれる場合に、胴部41の先端側にコイル23が移動してコイル23が胴部41から脱落する可能性を低減できる。
【0098】
また、第2の態様に係る電動工具10では、第1の態様において、ステータコア20は、円筒状の外筒部22を更に有する。外筒部22は、複数のティース4に取り付けられ複数のティース4を囲む。
【0099】
上記の構成によれば、外筒部22を、磁束が通る磁路の一部として用いることができる。
【0100】
また、第3の態様に係る電動工具10では、第2の態様において、外筒部22は、複数の嵌合部221を有する。複数の嵌合部221は、複数のティース4と一対一で対応する。複数の嵌合部221の各々と、複数のティース4のうちこの嵌合部221に対応するティース4とは、少なくとも一方が径方向に移動することで嵌まり合う。
【0101】
上記の構成によれば、複数の嵌合部221と複数のティース4とが内筒部3の軸方向に移動して嵌まり合う場合と比較して、軸方向における外筒部22と複数のティース4との位置ずれを抑制しやすい。
【0102】
また、第4の態様に係る電動工具10は、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、コイル巻枠8を更に備える。コイル巻枠8は、電気絶縁性を有する。コイル巻枠8は、複数のティース4の少なくとも1つの、少なくとも一部を覆う。
【0103】
上記の構成によれば、コイル巻枠8にコイル23を巻くことにより、複数のティース4とコイル23との電気絶縁性を向上させることができる。
【0104】
また、第5の態様に係る電動工具10では、第4の態様において、コイル巻枠8は、2つの部材81を含む。2つの部材81は、内筒部3の軸方向に並んでいる。2つの部材81は、互いに別体に形成されている。
【0105】
上記の構成によれば、コイル巻枠8が1つの部材からなる場合と比較して、複数のティース4へのコイル巻枠8の取付けが容易となる。
【0106】
また、第6の態様に係る電動工具10では、第5の態様において、2つの部材81は、内筒部3の軸方向において互いに離れている。
【0107】
上記の構成によれば、ステータコア20の軸方向における複数のティース4の寸法が互いに異なる複数のステータコア20について、各ステータコア20に装着されるコイル巻枠8の構成を共通化できる。すなわち、ステータコア20ごとにコイル巻枠8の2つの部材81間の距離が異なるようにして、共通のコイル巻枠8を各ステータコア20に装着できる。
【0108】
また、第7の態様に係る電動工具10では、第1~6の態様のいずれか1つにおいて、複数のティース4の各々は、先端片42を2つ含む。2つの先端片42は、胴部41の先端側の部位において、内筒部3の周方向の両側に設けられている。
【0109】
上記の構成によれば、先端片42が1つの場合と比較して、胴部41にコイル23が巻かれる場合に、胴部41の先端側にコイル23が移動してコイル23が胴部41から脱落する可能性を更に低減できる。
【0110】
また、第8の態様に係る電動工具10では、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、先端片42のうち、内筒部3の径方向において外側の面は、曲面421を含む。
【0111】
上記の構成によれば、内筒部3の径方向において外側の面の全体が平面状の場合と比較して、この面に加わる圧力が分散されやすい。
【0112】
また、第9の態様に係る電動工具10では、第1~8の態様のいずれか1つにおいて、先端片42は、胴部41とつながった部位に、湾曲部422を有する。湾曲部422は、内筒部3の径方向において外側ほど内筒部3の周方向において胴部41から離れるように湾曲している。
【0113】
上記の構成によれば、互いに隣り合う2つのティース4をつなぐ磁路の一部として、各ティース4の胴部41と湾曲部422とを通る磁路が形成される(
図7の矢印A2参照)。これにより、互いに隣り合う2つのティース4をつなぐ磁路が短くなる、すなわち、この磁路の磁気抵抗が小さくなる。
【0114】
また、第10の態様に係る電動工具10では、第1~9の態様のいずれか1つにおいて、内筒部3は、高磁気抵抗部R1を有する。高磁気抵抗部R1は、内筒部3のうち高磁気抵抗部R1の周囲の部位よりも磁気抵抗が高い。
【0115】
上記の構成によれば、内筒部3からの漏れ磁束を低減できる。
【0116】
また、第11の態様に係る電動工具10では、第10の態様において、高磁気抵抗部R1は、貫通部302を有する。貫通部302は、内筒部3を軸方向に貫通し内筒部3を周方向において複数個に分割している。
【0117】
上記の構成によれば、内筒部3からの漏れ磁束を低減できる。
【0118】
また、第12の態様に係る電動工具10では、第11の態様において、高磁気抵抗部R1は、貫通部302を複数有している。複数の貫通部302は、複数のティース4を互いに分離している。
【0119】
上記の構成によれば、複数のティース4のうち一部のティース4が他のティース4とつながっている場合と比較して、内筒部3からの漏れ磁束を更に低減できる。
【0120】
また、第13の態様に係る電動工具10では、第10の態様において、内筒部3は、周方向において連続している。
【0121】
上記の構成によれば、内筒部3が周方向において複数個に分割されている場合と比較して、モータ1の組立てが容易である。
【0122】
また、第14の態様に係る電動工具10では、第10~13の態様のいずれか1つにおいて、高磁気抵抗部R1は、肉薄部304を含む。肉薄部304は、内筒部3のうち肉薄部304の周囲の部位よりも、内筒部3の軸方向における長さが短い。
【0123】
上記の構成によれば、内筒部3からの漏れ磁束を低減できる。
【0124】
また、第15の態様に係る電動工具10では、第10~14の態様のいずれか1つにおいて、ステータコア20は、複数の鋼板210を厚さ方向に積層して形成されている。高磁気抵抗部R1は、複数の鋼板210のうち2つ以上の鋼板210の各々に設けられている。2つ以上の鋼板210は、互いに隣り合う鋼板210の高磁気抵抗部R1が厚さ方向に重ならないように積層されている。
【0125】
上記の構成によれば、互いに隣り合う鋼板210の高磁気抵抗部R1が厚さ方向に重なる場合と比較して、ステータコア20の強度の向上を図ることができる。
【0126】
第1の態様以外の構成については、電動工具10に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0127】
また、第16の態様に係るモータ1は、ステータコア20と、ロータ5と、を備える。ロータ5は、出力軸51を有しステータコア20に対して回転する。ステータコア20は、円筒状の内筒部3と、複数のティース4と、を有する。内筒部3は、内側にロータ5が配置されている。複数のティース4は、胴部41と、先端片42と、を含む。胴部41は、内筒部3から内筒部3の径方向において外向きに突出している。先端片42は、胴部41の先端側の部位から、胴部41の突出方向と交差する方向に延びている。
【0128】
上記の構成によれば、胴部41の先端側の部位には先端片42があるので、先端片42が無い場合と比較して、胴部41にコイル23が巻かれる場合に、胴部41の先端側にコイル23が移動してコイル23が胴部41から脱落する可能性を低減できる。
【0129】
また、次の第17の態様に係る構成は、第1の態様の構成を必須とすることなく実現されてもよい。第17の態様に係る電動工具10は、モータ1を備える。モータ1は、ステータコア20と、ロータ5と、を備える。ロータ5は、出力軸51を有しステータコア20に対して回転する。ステータコア20は、円筒状の内筒部3と、複数のティース4と、円筒状の外筒部22と、を有する。内筒部3は、内側にロータ5が配置されている。複数のティース4は、胴部41を含む。胴部41は、内筒部3から内筒部3の径方向において外向きに突出している。外筒部22は、複数のティース4に取り付けられ複数のティース4を囲む。外筒部22は、複数の嵌合部221を有する。複数の嵌合部221は、複数のティース4と一対一で対応する。複数の嵌合部221の各々と、複数のティース4のうちこの嵌合部221に対応するティース4とは、少なくとも一方が内筒部3の径方向に移動することで嵌まり合う。
【0130】
上記の構成によれば、複数の嵌合部221と複数のティース4とが内筒部3の軸方向に移動して嵌まり合う場合と比較して、軸方向における外筒部22と複数のティース4との位置ずれを抑制しやすい。
【符号の説明】
【0131】
1 モータ
10 電動工具
20 ステータコア
210 鋼板
22 外筒部
221 嵌合部
3 内筒部
302 貫通部
304 肉薄部
4 ティース
41 胴部
42 先端片
421 曲面
422 湾曲部
5 ロータ
51 出力軸
8 コイル巻枠
81 部材
R1 高磁気抵抗部