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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】結合装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/56 20060101AFI20230217BHJP
【FI】
H04B3/56
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018233481
(22)【出願日】2018-12-13
(65)【公開番号】P2020096293
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】水田 友昭
(72)【発明者】
【氏名】上村 光央
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 祐介
(72)【発明者】
【氏名】梅田 直樹
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-212836(JP,A)
【文献】特開2008-187636(JP,A)
【文献】特開2008-028817(JP,A)
【文献】特開2008-131212(JP,A)
【文献】特開2004-032585(JP,A)
【文献】特開2009-284467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に電力を供給するための電力線と、通信装置との間で信号を伝送可能な信号線とに磁気的な結合を生じさせる誘導結合部と、
前記通信装置から前記誘導結合部を経由して延びる前記信号線を前記電力線に接続する電力線接続部と、
を備え、
前記通信装置からの前記信号線は、前記誘導結合部の一端側に延びるとともに、前記誘導結合部の他端側から前記電力線接続部に延びて、前記電力線接続部において終端されることを特徴とする結合装置。
【請求項2】
前記電力線接続部は、前記信号線を介して前記通信装置に給電することを特徴とする請求項1に記載の結合装置。
【請求項3】
前記誘導結合部と前記電力線接続部との間との距離は、前記信号線において伝送される信号の最短波長の1/2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の結合装置。
【請求項4】
前記誘導結合部は、磁性体のコアを含み、
前記コアにおいて、前記信号線が複数回巻き付けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の結合装置。
【請求項5】
前記電力線は、第1電力線と第2電力線とを含み、
前記信号線は、第1信号線と第2信号線とを含み、
前記誘導結合部は、前記第1電力線と前記第1信号線とに磁気的な結合を生じさせる第1誘導結合部と、前記第2電力線と前記第2信号線とに磁気的な結合を生じさせる第2誘導結合部とを含み、
前記電力線接続部は、前記通信装置から前記第1誘導結合部を経由して延びる前記第1信号線を前記第1電力線に接続する第1電力線接続部と、前記通信装置から前記第2誘導結合部を経由して延びる前記第2信号線を前記第2電力線に接続する第2電力線接続部とを含み、
前記通信装置からの前記第1信号線は、前記第1電力線接続部において終端され、
前記通信装置からの前記第2信号線は、前記第2電力線接続部において終端されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の結合装置。
【請求項6】
前記電力線は、第1電力線と第2電力線とを含み、
前記信号線は、第1信号線と第2信号線とを含み、
前記誘導結合部は、前記第1電力線と前記第1信号線とに磁気的な結合を生じさせる第1誘導結合部と、前記第2電力線と前記第2信号線とに磁気的な結合を生じさせる第2誘導結合部とを含み、
前記電力線接続部は、前記通信装置から前記第2誘導結合部を経由して延びる前記第2信号線を前記第1電力線に接続する第1電力線接続部と、前記通信装置から前記第1誘導結合部を経由して延びる前記第1信号線を前記第2電力線に接続する第2電力線接続部とを含み、
前記通信装置からの前記第1信号線は、前記第2電力線接続部において終端され、
前記通信装置からの前記第2信号線は、前記第1電力線接続部において終端されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の結合装置。
【請求項7】
前記誘導結合部から、前記電力線接続部とは反対側に、前記通信装置の通信対象とする他の通信装置が配置されることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の結合装置。
【請求項8】
前記誘導結合部と前記負荷との間に配置される低インピーダンス素子をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の結合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力線に信号線を結合する結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力線通信では、家庭内に引き込まれている電力線に高周波信号を重畳させる。電力線に高周波信号を重畳させるために、容量結合方式あるいは誘導結合方式が使用される。容量結合方式では、電力線のインピーダンスが低い場合に高周波信号の注入効率が低下し、誘導結合方式では、電力線のインピーダンスが高い場合に高周波信号の注入効率が低下する。インピーダンスが変化しても高周波信号の注入効率を安定させるために、信号線に流れる高周波信号を電力線に注入する管状の電力線インジェクション部に加えて、信号線に流れる高周波信号を容量素子の端子線を介して電力線に注入する管状の容量インジェクション部が備えられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-212836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイパスする容量素子の端子線を介して高周波信号を電力線に注入するために、端子線をコアに貫通させるだけでは、容量結合が弱く、トランスとしての通過損失が大きい。電力線に高周波信号を効率的に注入することが求められる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、電力線のインピーダンスの影響を低減しながら、電力線に信号を効率的に注入する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の結合装置は、負荷に電力を供給するための電力線と、通信装置との間で信号を伝送可能な信号線とに磁気的な結合を生じさせる誘導結合部と、通信装置から誘導結合部を経由して延びる信号線を電力線に接続する電力線接続部と、を備える。通信装置からの信号線は、誘導結合部の一端側に延びるとともに、誘導結合部の他端側から電力線接続部に延びて、電力線接続部において終端される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電力線のインピーダンスの影響を低減しながら、電力線に信号を効率的に注入できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る配電システムの構成を示す図である。
図2図2(a)-(b)は、図1の機器の構成を示す図である。
図3図3(a)-(b)は、変形例に係る配電システムの構成を示す図である。
図4】実施例2に係る機器の構成を示す図である。
図5】実施例3に係る機器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例1)
本開示の実施例を具体的に説明する前に、実施例の基礎となった知見を説明する。本実施例は、集合住宅、家庭内等の施設に引き込まれた電力線を介して当該施設に電力を供給する配電システムに関する。配電システムにおいて、電力線に信号を伝送させる電力線通信がなされる。この信号は、例えば、1MHzから30MHzの周波数帯を有しており、電力が有する50Hzあるいは60Hzの商用電源周波数とは異なる。電力線通信は、電力線の分岐、電力線のインピーダンス、住宅分電盤、家電機器などの負荷の雑音の影響を受けやすいので、電力線通信における通信の信頼性の確保が重要になる。通信の信頼性を向上させるためには、これらの影響を低減しなければならない。前述のごとく、電力線通信において電力線に信号を重畳させるために、容量結合方式あるいは誘導結合方式が使用される。電力線への信号の注入効率は電力線のインピーダンスの影響を受け、インピーダンスが低い場合に容量結合方式による信号の注入効率が低くなり、インピーダンスが高い場合に誘導結合方式による信号の注入効率が低くなる。
【0010】
電力線にはさまざまな電気製品が接続されるので、電力線のインピーダンスは大きく変化する。インピーダンスが大きく変化する状況下において、容量結合方式あるいは誘導結合方式が使用される場合、信号の注入効率が変化して、通信の安定性が確保されない。これに対応するために、特許文献1では、信号線に流れる高周波信号を電力線に注入する電力線用のコアと、両極から伸びる端子線により電力線間を接続して高周波信号をバイパスする容量素子と、信号線に流れる高周波信号を容量素子の端子線を介して電力線に注入する容量用のコアとが備えられる。特に、バイパスする容量素子の端子線を介して高周波信号を電力線に注入するために、端子線が容量用のコアに貫通されている。しかしながら、端子線が容量用のコアに貫通されているだけでは、容量結合が弱く、トランスとしての通過損失が大きい。そのため、電力線のインピーダンスの影響を低減しながら、電力線に信号を効率的に注入することが求められる。また、容量用のコアが電力線用のコアに追加すると、部品数が増加する。しかしながら、部品数は少ない方が望ましい。
【0011】
図1は、配電システム1000の構成を示す。配電システム1000は、高圧配電線10、分岐配電線12と総称される第1分岐配電線12a、第2分岐配電線12b、第3分岐配電線12c、変圧器14、低圧配電線20と総称される第1低圧配電線20a、第2低圧配電線20b、中性線22、接地線24、主幹ブレーカ26、電力線30と総称される第1電力線30a、第2電力線30b、住宅分電盤50と総称される第1住宅分電盤50a、第2住宅分電盤50b、第3住宅分電盤50c、第4住宅分電盤50dを含む。住宅分電盤50の数は「4」に限定されない。変圧器14は、1次コイル16、2次コイル18を含む。
【0012】
高圧配電線10は、主幹電力線とも呼ばれ、線間電圧6600[V]の三相交流電力を3本の配電線を使用して供給する。分岐配電線12は、高圧配電線10から分岐する配電線である。第1分岐配電線12aから第3分岐配電線12cは、一端側において、高圧配電線10の異なった配電線に接続される。第1分岐配電線12aから第3分岐配電線12cは、他端側において、変圧器14の1次コイル16に接続される。変圧器14は、例えば、需要家施設の屋上、又は電気室内などに設置される。需要家施設は、商用電力を消費する施設であり、一例として、集合住宅、住宅、オフィスビルであるが、他にも例えば、商業施設、工場、病院などの建物であってもよい。
【0013】
変圧器14は、1次コイル16と対向して配置される2次コイル18を備え、6600[V]の交流電圧を200[V](あるいは100[V])の交流電圧に変圧(降圧)する。2次コイル18には、第1低圧配電線20a、第2低圧配電線20b、中性線22が接続され、中性線22は接地線24を介して接地される。そのため、第1低圧配電線20aと第2低圧配電線20bとの間の電圧は200Vであるが、第1低圧配電線20aと中性線22との間の電圧、中性線22と第2低圧配電線20bとの間の電圧は、それぞれ100Vである。このような電圧を有する電力は、商用電力とも呼ばれ、前述の商用電源周波数を有する。
【0014】
低圧配電線20および中性線22は、需要家施設に設置された主幹ブレーカ26に接続される。主幹ブレーカ26は、例えば、集合住宅等の需要家施設の中で最も変圧器14側に接続されるブレーカである。主幹ブレーカ26は、電力線30を介して複数の住宅分電盤50に電力を供給する。この電力は、前述の商用電力に相当する。住宅分電盤50は、各家庭に設置される分電盤である。各住宅分電盤50は、電力線通信の機能を有しており、電力線30を介して他の住宅分電盤50との間において電力線通信を実行する。
【0015】
図2(a)-(b)は、住宅分電盤50の構成を示す。特に、図2(a)は、電力線30に接続される住宅分電盤50のうち、電力線通信に関する構成を示す。住宅分電盤50は、信号線60と総称される第1信号線60a、第2信号線60b、結合装置100、負荷130、通信装置200を含む。また、結合装置100は、誘導結合部110と総称される第1誘導結合部110a、第2誘導結合部110b、電力線接続部120と総称される第1電力線接続部120a、第2電力線接続部120bを含む。
【0016】
第1電力線30a、第2電力線30bを介して、前述のごとく住宅分電盤50に電力が供給される。第1電力線30a、第2電力線30bは、後述する結合装置100を介して負荷130に接続されており、負荷130に電力を供給する。そのため、負荷130は、負荷130に接続され、電力が供給される機器であるといえる。このような負荷130は、電力線30の分岐、電力線30のインピーダンス、家電機器を含む。また、親機となる通信装置(通信親機)と、複数の子機となる通信装置(通信子機)とが接続された通信システムの場合は、親機および子機が結合点となり、各結合点に接続されたすべての部材が「負荷」といえる。このような負荷130の変動により、電力線30のインピーダンスが変化する。ここで、電力線30の左側には、図1の主幹ブレーカ26が配置される。そのため、電力線30の左側に他の住宅分電盤50が配置される。
【0017】
通信装置200は、電力線通信を実行するモデムであり、その構成は図2(b)に示される。通信装置200は、送信回路210、受信回路212、1次コイル220、2次コイル222、コンデンサ224と総称される第1コンデンサ224a、第2コンデンサ224b、電源部226を含む。送信回路210は、電力線通信における送信処理を実行し、受信回路212は、電力線通信における受信処理を実行する。送信回路210と受信回路212は、1次コイル220に並列に接続される。1次コイル220は2次コイル222と対向して配置され、これらは変圧器を構成する。2次コイル222は、第1コンデンサ224aを介して第1信号線60aに接続されるとともに、第2コンデンサ224bを介して第2信号線60bに接続される。このように通信装置200には、信号線60が電気的に接続される。
【0018】
送信回路210は、1次コイル220、2次コイル222、コンデンサ224を介して、信号線60に出力する電流の大きさを変化させることによって、通信のための信号を信号線60に出力する。一例として、信号には振幅変調がなされており、信号は1MHzから30MHzの周波数帯を有する。この信号の周波数帯における最小の周波数は、電力線30における交流電圧の周波数よりも高くされる。このような信号の周波数帯は一例であり、これに限定されない。一方、受信回路212は、1次コイル220、2次コイル222、コンデンサ224を介して、信号線60に出力された信号を受信する。さらに、信号線60には電源部226が接続される。電源部226には、後述の電力線接続部120から、信号線60を介して給電がなされる。図2(a)に戻る。
【0019】
第1信号線60a、第2信号線60bの一端側は、通信装置200に接続される。第1信号線60a、第2信号線60bの他端側は、通信装置200から誘導結合部110、電力線接続部120の方に向かって延びる。第1信号線60a、第2信号線60bは、通信装置200との間で信号を伝送可能であり、通信装置200からの信号を伝送したり、通信装置200への信号を伝送したりする。第1信号線60a、第2信号線60bのうち、誘導結合部110と通信装置200との間の部分が撚り合わされてもよい。この撚り合わせによって、信号線60が短くなり、信号のS/N(Signal to Noise ratio)が高くなる。
【0020】
第1誘導結合部110a、第2誘導結合部110bは、例えばフェライトなどの磁性材料により円環状に形成されたコア112である。コア112の中央には円形の貫通孔が設けられる。貫通孔には、電力線30および信号線60が通される。具体的に説明すると、第1誘導結合部110aの貫通孔には、第1電力線30aと第1信号線60aが通され、第2誘導結合部110bの貫通孔には、第2電力線30bと第2信号線60bが通される。第1誘導結合部110aは、第1電力線30aと第1信号線60aとに磁気的な結合を生じさせ、第2誘導結合部110bは、第2電力線30bと第2信号線60bとに磁気的な結合を生じさせる。つまり、電力線30、信号線60、コア112によって誘導結合方式のカプラが構成される。ここで、コア112は、電力線30に流れる電流により飽和しない磁束密度を発生可能な程度の大きさにされる。
【0021】
第1電力線接続部120aは第1誘導結合部110aと負荷130との間に配置され、第2電力線接続部120bは第2誘導結合部110bと負荷130との間に配置される。第1電力線接続部120aの一端側には、第1電力線30aと第1信号線60aとが接続される。つまり、第1電力線接続部120aは、一端側において、第1電力線30aに第1信号線60aを電気的に接続する。また、第1電力線接続部120aの他端側には、負荷130が電気的に接続される。一方、第2電力線接続部120bの一端側には、第2電力線30bと第2信号線60bとが接続される。つまり、第2電力線接続部120bは、一端側において、第2電力線30bに第2信号線60bを電気的に接続する。また、第2電力線接続部120bの他端側には、負荷130が電気的に接続される。このように、電力線接続部120は、通信装置200から誘導結合部110を経由して延びる信号線60を電力線30に接続する。負荷130には、電力線30によって電力が供給される。
【0022】
ここで、誘導結合部110と負荷130との間に低インピーダンス素子(図示せず)が配置されてもよい。例えば、低インピーダンス素子としては、コンデンサが挙げられ、電力線接続部120に接続される。また、図2(a)の第1電力線30aと第2電力線30bをさらに左側に延ばした位置に、通信装置200の通信対象とする他の通信装置(図示せず)が、別の誘導結合部110(図示せず)と別の電力線接続部120(図示せず)と介して接続される。つまり、他の通信装置は、誘導結合部110から、電力線接続部120とは反対側に配置される。
【0023】
以下では、このような構成における、(1)電力線30のインピーダンスが小さい場合における通信装置200による信号の送信動作、(2)電力線30のインピーダンスが小さい場合における通信装置200による信号の受信動作を説明する。さらに、これらに続いて、(3)電力線30のインピーダンスが大きい場合における通信装置200の動作を説明する。
【0024】
(1)電力線30のインピーダンスが小さい場合における通信装置200による信号の送信動作
通信装置200が信号線60に信号を出力すると、信号が各誘導結合部110を通過するときに各誘導結合部110に磁束が発生する。各誘導結合部110で発生した磁束によって、電力線30に流れる交流電流に信号が重畳される。したがって、発生した磁束を介した磁気結合により、一対の電力線30に供給される交流電力に信号が重畳される。
【0025】
(2)電力線30のインピーダンスが小さい場合における通信装置200による信号の受信動作
他の住宅分電盤50に含まれる他の通信装置200(図示せず)によって送信された信号も、(1)の場合と同様に、電力線30に流れる交流電流に重畳されている。交流電流に重畳された信号が、住宅分電盤50の各誘導結合部110を通過するときに各誘導結合部110に磁束が発生する。その磁束によって信号線60に信号が出力され、信号線60に出力された信号は通信装置200によって受信される。
【0026】
(3)電力線30のインピーダンスが大きい場合における通信装置200の動作
電力線30のインピーダンスが大きければ、通信装置200が信号線60に信号を出力しても、各誘導結合部110には磁束が発生しない。そのため、各誘導結合部110において交流電流に信号が重畳されない。しかしながら、各電力線接続部120において電力線30と信号線60とが接続されているので、通信装置200は電力線接続部120において電力線30に電力を直接印加可能である。そのため、通信装置200が信号線60に出力した信号は、電力線接続部120において一対の電力線30に供給される交流電力に重畳される。通信装置200が信号を受信する場合も同様に、電力線接続部120において一対の電力線30に供給される交流電力から信号が受信される。
【0027】
負荷130が小さい場合、第1電力線接続部120aにおいて重畳された交流電流は、第1電力線接続部120aから負荷130に入力された後、負荷130を経由して第2電力線接続部120bから第2電力線30bに出力される。一方、第2電力線接続部120bにおいて重畳された交流電流は、第2電力線接続部120bから負荷130に入力された後、負荷130を経由して第1電力線接続部120aから第1電力線30aに出力される。つまり、第1電力線30aにおける第1誘導結合部110aと第1電力線接続部120aとの間には、複数種類の経路を流れてくる交流電流が存在する。第2電力線30bにおいても同様である。
【0028】
このような状況下において、これらの交流電流の位相が異なることによって、これらの交流電流が互いに打ち消し合わないようにしなければならない。そのため、誘導結合部110と電力線接続部120との間との距離は、信号線60において伝送される信号の最短波長の1/2以下にされる。例えば、誘導結合部110と電力線接続部120との間との距離は、信号線60において伝送される信号の最短波長の1/4にされる。信号の最大周波数を28MHzとする場合、誘導結合部110と電力線接続部120との間との距離は2.68mとされる。
【0029】
図2(a)に示されるように、誘導結合部110、電力線接続部120、負荷130がこの順に並んで配置される。つまり、電力線接続部120は、誘導結合部110と負荷130の間に配置される。これは、仮に、電力線接続部120と負荷130との間に誘導結合部110を配置させると、誘導結合部110の配置によってインダクタンスが増加し、負荷130に印加される電圧が低下してしまうからである。
【0030】
以下では、図2(a)の変形例を説明する。図3(a)-(b)は、配電システム1000の構成を示す。図3(a)は、図1において第1変圧器14a、第2変圧器14bが配置される場合の構成を示す。第1変圧器14aには第1低圧配電線20a、第2低圧配電線20b、第1中性線22aが接続され、第2変圧器14bには第3低圧配電線20c、第4低圧配電線20d、第2中性線22bが接続される。また、第1低圧配電線20a、第2低圧配電線20b、第1中性線22aは図1と同様に主幹ブレーカ26(図示せず)に接続され、第3低圧配電線20c、第4低圧配電線20d、第2中性線22bも主幹ブレーカ26(図示せず)に接続される。
【0031】
ここで、第1変圧器14aと第1低圧配電線20aとの間には、第1誘導結合部110a、第1電力線接続部120aとが配置され、第1変圧器14aと第1中性線22aとの間には、第2誘導結合部110b、第2電力線接続部120bとが配置される。また、第2変圧器14bと第3低圧配電線20cとの間には、第3誘導結合部110c、第3電力線接続部120cとが配置され、第2変圧器14bと第2中性線22bとの間には、第4誘導結合部110d、第4電力線接続部120dとが配置される。第1誘導結合部110aから第4誘導結合部110dは誘導結合部110と総称され、第1電力線接続部120aから第4電力線接続部120dは電力線接続部120と総称され、誘導結合部110と電力線接続部120は結合装置100に含まれる。さらに、第1変圧器14a側の誘導結合部110と電力線接続部120と、第2変圧器14b側の誘導結合部110と電力線接続部120とをまたぐように第1信号線60a、第2信号線60bが配置される。
【0032】
図3(b)は、結合装置100の構成を示す。これは、図2(a)に合わせるように示される。第1負荷130aは、図3(a)の第1変圧器14aに相当し、第2負荷130bは、図3(a)の第2変圧器14bに相当する。第1信号線60aは、第1電力線接続部120aにおいて第1低圧配電線20aに接続される。また、第1信号線60aは、第1誘導結合部110aの貫通孔に通されるとともに、第3誘導結合部110cの貫通孔に通される。さらに、第1信号線60aは、第3電力線接続部120cにおいて第3低圧配電線20cに接続される。一方、第2信号線60bは、第2電力線接続部120bにおいて第1中性線22aに接続される。また、第2信号線60bは、第2誘導結合部110bの貫通孔に通されるとともに、第4誘導結合部110dの貫通孔に通される。さらに、第2信号線60bは、第4電力線接続部120dにおいて第2中性線22bに接続される。
【0033】
このような接続によって、第1低圧配電線20aと第1中性線22aとの組合せと、第3低圧配電線20cと第2中性線22bとの組合せの間における信号の伝送が可能になる。つまり、異なった変圧器14をまたいだ信号の伝送が可能になる。このような構成は、通信装置200が含まれない場合の構成であるといえる。
【0034】
本実施例によれば、電力線30と信号線60とに磁気的な結合を生じさせるともに、電力線30に信号線60を接続するので、負荷130のインピーダンスが小さい場合に、磁気的な結合によって電力線に信号を重畳できる。また、電力線30と信号線60とに磁気的な結合を生じさせるともに、電力線30に信号線60を接続するので、負荷130のインピーダンスが大きい場合に、信号線60を介して電力線30に信号を出力することによって電力線に信号を重畳できる。また、負荷130のインピーダンスが大きくても小さくても電力線に信号が重畳されるので、負荷130のインピーダンスによらず電力線に信号を重畳できる。また、電力線30に信号線60を接続するので、電力線30のインピーダンスの影響を低減しながら、電力線30に信号を効率的に注入できる。
【0035】
また、信号線60を介して通信装置200に給電がなされるので、通信装置200を動作させることができる。また、誘導結合部110と電力線接続部120との間との距離は、信号線60において伝送される信号の最短波長の1/2以下にされるので、複数種類を経由した信号が位相の違いにより打ち消されることを防止できる。また、電力線接続部120は、誘導結合部110と負荷130の間に配置されるので、負荷130に流れる電流を誘導結合部110にも流すことにより、結合量を増加できる。また、結合量が増加するので、損失を減少できる。また、誘導結合部110から、電力線接続部120とは反対側に、通信装置200の通信対象とする他の通信装置が配置されるので、負荷130に流れる電流を誘導結合部110にも流すことができる。また、負荷130に流れる電流を誘導結合部110にも流すので、結合量が増加し、損失を減少させることができる。また、誘導結合部110と負荷130との間に低インピーダンス素子が配置されるので、住宅分電盤50に接続された家電機器などからのノイズを低減できる。また、誘導結合部110と負荷130との間に低インピーダンス素子が配置されるので、誘導結合部110の結合効率を向上できる。
【0036】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の結合装置100は、負荷130に電力を供給するための電力線30と、通信装置200との間で信号を伝送可能な信号線60とに磁気的な結合を生じさせる誘導結合部110と、通信装置200から誘導結合部110を経由して延びる信号線60を電力線30に接続する電力線接続部120と、を備える。
【0037】
電力線接続部120は、信号線60を介して通信装置200に給電してもよい。
【0038】
誘導結合部110と電力線接続部120との間との距離は、信号線60において伝送される信号の最短波長の1/2以下であってもよい。
【0039】
電力線30は、第1電力線30aと第2電力線30bとを含んでもよい。信号線60は、第1信号線60aと第2信号線60bとを含んでもよい。誘導結合部110は、第1電力線30aと第1信号線60aとに磁気的な結合を生じさせる第1誘導結合部110aと、第2電力線30bと第2信号線60bとに磁気的な結合を生じさせる第2誘導結合部110bとを含んでもよい。電力線接続部120は、通信装置200から第1誘導結合部110aを経由して延びる第1信号線60aを第1電力線30aに接続する第1電力線接続部120aと、通信装置200から第2誘導結合部110bを経由して延びる第2信号線60bを第2電力線30bに接続する第2電力線接続部120bとを含んでもよい。
【0040】
誘導結合部110から、電力線接続部120とは反対側に、通信装置200の通信対象とする他の通信装置が配置されてもよい。
【0041】
誘導結合部110と負荷130との間に配置される低インピーダンス素子をさらに備えてもよい。
【0042】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2は、実施例1と同様に電力線通信に使用される結合装置に関する。実施例1では、誘導結合部のコアに設けられた貫通孔に信号線が通されている。負荷が容量性である場合、誘導結合部と負荷によって共振回路が形成され、共振周波数においてインピーダンスが低くなる。共振周波数が信号の周波数帯域に含まれる場合、信号の減衰が発生する。実施例2は、負荷が容量性である場合に共振の影響を低減することを目的とする。実施例2に係る配電システム1000は図1と同様のタイプである。ここでは、実施例1との差異を中心に説明する。
【0043】
図4は、住宅分電盤50の構成を示す。住宅分電盤50は、図2(a)と同様に示されるが、負荷130は容量性であるとする。また、誘導結合部110のコア112における貫通孔と外縁部とに沿って、信号線60がコア112に複数回巻き付けられる。信号線60をコア112に複数回巻き付けられることによって、誘導結合部110のインダクタンスLが大きくなる。誘導結合部110と負荷130が共振する場合の共振周波数は、インダクタンスLが大きくなると小さくなる。信号の周波数帯域の下限よりも共振周波数が小さくなれば、共振の影響が小さくなる。そのため、信号の周波数帯域の下限よりも共振周波数が小さくなるように、信号線60の巻数が決定される。
【0044】
本実施例によれば、コア112において、信号線60が複数回巻き付けられるので、誘導結合部110のインダクタンスを大きくできる。また、誘導結合部110のインダクタンスが大きくなるので、共振周波数を通信帯域よりも低域側にシフトできる。また、共振周波数が通信帯域よりも低域側にシフトされるので、信号減衰の発生を抑制できる。
【0045】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。誘導結合部110は、磁性体のコア112を含んでもよい。コア112において、信号線60が複数回巻き付けられてもよい。
【0046】
(実施例3)
次に、実施例3を説明する。実施例3は、これまでと同様に電力線通信に使用される結合装置に関する。しかしながら、実施例3では、これまでと比較して、信号線の配線が異なる。実施例3に係る配電システム1000は図1と同様のタイプである。ここでは、これまでとの差異を中心に説明する。
【0047】
図5は、住宅分電盤50の構成を示す。住宅分電盤50は、図2(a)と同様に示されるが、前述のごとく、信号線60の配線が異なる。第1誘導結合部110aの貫通孔には、第1電力線30aと第1信号線60aが通され、第2誘導結合部110bの貫通孔には、第2電力線30bと第2信号線60bが通される。第1誘導結合部110aは、第1電力線30aと第1信号線60aとに磁気的な結合を生じさせ、第2誘導結合部110bは、第2電力線30bと第2信号線60bとに磁気的な結合を生じさせる。
【0048】
第1電力線接続部120aの一端側には、第1電力線30aと第2信号線60bとが接続される。つまり、第1電力線接続部120aは、一端側において、第1電力線30aに第2信号線60bを電気的に接続する。また、第1電力線接続部120aの他端側には、負荷130が電気的に接続される。一方、第2電力線接続部120bの一端側には、第2電力線30bと第1信号線60aとが接続される。つまり、第2電力線接続部120bは、一端側において、第2電力線30bに第1信号線60aを電気的に接続する。また、第2電力線接続部120bの他端側には、負荷130が電気的に接続される。
【0049】
本実施例によれば、第1電力線接続部120aは第1電力線30aに第2信号線60bを接続し、第2電力線接続部120bは第2電力線30bに第1信号線60aを接続するので、インダクタンスによる位相の進みとキャパシタンスによる位相の遅れを調整できる。また、インダクタンスによる位相の進みとキャパシタンスによる位相の遅れが調整されるので、通信帯域における信号減衰の発生を抑制できる。
【0050】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。電力線30は、第1電力線30aと第2電力線30bとを含んでもよい。信号線60は、第1信号線60aと第2信号線60bとを含んでもよい。誘導結合部110は、第1電力線30aと第1信号線60aとに磁気的な結合を生じさせる第1誘導結合部110aと、第2電力線30bと第2信号線60bとに磁気的な結合を生じさせる第2誘導結合部110bとを含んでもよい。電力線接続部120は、通信装置200から第2誘導結合部110bを経由して延びる第2信号線60bを第1電力線30aに接続する第1電力線接続部120aと、通信装置200から第1誘導結合部110aを経由して延びる第1信号線60aを第2電力線30bに接続する第2電力線接続部120bとを含んでもよい。
【0051】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0052】
実施例1から3において、電力線30には負荷130が接続される。しかしながらこれに限らず例えば、分電盤の1つの分岐ブレーカに電力線30が接続されてもよい。その際、負荷130がなくてもよい。本変形例によれば、実施例の適用範囲を拡大できる。
【符号の説明】
【0053】
10 高圧配電線、 12 分岐配電線、 14 変圧器、 16 1次コイル、 18 2次コイル、 20 低圧配電線、 22 中性線、 24 接地線、 26 主幹ブレーカ、 30 電力線、 50 住宅分電盤、 60 信号線、 100 結合装置、 110 誘導結合部、 112 コア、 120 電力線接続部、 130 負荷、 200 通信装置、 1000 配電システム。
図1
図2
図3
図4
図5