(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】誘導加熱調理器
(51)【国際特許分類】
H05B 6/12 20060101AFI20230217BHJP
F24C 15/10 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
H05B6/12 318
H05B6/12 305
F24C15/10 B
(21)【出願番号】P 2022010219
(22)【出願日】2022-01-26
(62)【分割の表示】P 2018179235の分割
【原出願日】2018-09-25
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】野口 新太郎
(72)【発明者】
【氏名】林中 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】武平 高志
(72)【発明者】
【氏名】富永 博
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅志
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-211984(JP,A)
【文献】特開2016-157545(JP,A)
【文献】特開2007-323887(JP,A)
【文献】特開2011-216323(JP,A)
【文献】特開2010-262865(JP,A)
【文献】特開2017-216191(JP,A)
【文献】国際公開第2010/106765(WO,A1)
【文献】特開2016-154076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
C03C 1/00-14/00
G01J 5/00- 5/62
H05B 6/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が載置される
、非結晶化ガラスで形成されたトッププレート、
前記トッププレートの直下に配置され、前記トッププレートに載置された被加熱物を誘導加熱するための加熱コイル、および
前記トッププレートに載置された被加熱物の温度を検知する複数の赤外線センサ、
を備え
、
前記複数の赤外線センサは、検知温度帯が異なるように構成された第1の赤外線センサと、第2の赤外線センサと、を有し、
前記第1の赤外線センサは、前記第2の赤外線センサよりも低い検出温度範囲を検知し、
前記第2の赤外線センサは前記第1の赤外線センサよりも数が多い、誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記トッププレートは、載置された被加熱物から放射された光を前記第1の赤外線センサに入射するための低い温度帯用の透過窓と、前記第2の赤外線センサに入射するための高い温度帯用の透過窓と、を有し、
前記低い温度帯用の透過窓は、前記高い温度帯用の透過窓に比して透過度が高く構成された、請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記トッププレートにおける前記高い温度帯用の透過窓が着色された、請求項2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記
複数の赤外線センサは、前記加熱コイルにより誘導加熱する加熱領域の中心を含む線分により2分割した前記加熱領域の両側の領域直下に配置された、請求項1
から3のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記トッププレートの表面圧縮応力値が、1MPa以上60MPa以下で形成された請求項
1から4のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記トッププレートは、ホウケイ酸ガラスで形成された請求項
1から5のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
加熱領域の直下において
、前記第1の赤外線センサが
前記第2の赤外線センサより中心側に配置された、請求項1から6のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記第2の赤外線センサは、複数設けられ、加熱領域の直下において略同心円上に配置された、請求項
1から7のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項9】
前記第1の赤外線センサと前記第2の赤外線センサは、平面視において前記加熱コイルを構成するコイル部群を挟んで配置された、請求項
1から8のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項10】
前記第2の赤外線センサは、平面視において前記加熱コイルの最外周コイルより内側に配置された、請求項
1から9のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項11】
前記第2の赤外線センサによる検知温度帯が、起動時における前記加熱コイルの到達温度より高く設定された、請求項
1から
10のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項12】
前記第2の赤外線センサにおける少なくとも1つの赤外線センサが、前記加熱コイルのコイル部群におけるコイル線間のスリットの直下に設けられた、請求項
1から
11のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項13】
前記トッププレートに載置された被加熱物の温度を検知するために、加熱領域の直下に感熱素子が設けられた、請求項1から
12のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理容器などの被加熱物を誘導加熱する誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱調理器は、加熱調理時において調理容器が載置されたトッププレート(天板)を介して渦電流が誘導され、加熱する調理容器の底面の温度を検出し、検出温度が目標温度と一致するように、加熱コイルに流す高周波電流を制御する構成を有する。調理容器の底面温度を検出する手段としては、サーミスタなどの感熱素子などが用いられている。温度検出手段として感熱素子を用いた場合には、調理容器が載置されたトッププレートの温度を検出して、調理容器の底面温度を検知する構成であるため、調理容器の底面温度が急激に上昇したときには、調理容器の底面温度を感熱素子がすぐに検出できず、感熱素子の検出温度が実際の調理容器の底面温度を示していないという問題を有する。即ち、このような感熱素子を用いた検出温度は、調理容器の底面温度を常に正確に示すものではなかった。
【0003】
また、調理容器の底面温度を検出する手段としては、赤外線センサを用いたものがある(特許文献1参照)。赤外線センサは、調理容器の底面から放射され、トッププレートを透過した赤外線を受光して、受光した赤外線量に基づいて調理容器の底面温度を検知する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
誘導加熱調理器において温度検出手段として赤外線センサを用いた構成においては、加熱コイルの直下に配設されて、トッププレートを透過した調理容器の底面から放射された赤外線を受光する構成である。誘導加熱調理器は、赤外線センサが受光した波長に基づいて当該調理容器の底面温度を検知している。
【0006】
誘導加熱調理器は、調理容器を誘導加熱により加熱調理する構成であり、火力調整を火炎の目視により行うガス調理とは異なり、特に、調理容器が異常高温となる状況であっても目視により判断することができないという課題を有する。また、誘導加熱調理器においては、誘導加熱する調理容器として鉄鍋、ステンレス鍋の他に、表面加工した鍋や、多層鍋などがあり、更には、アルミ鍋、銅鍋などの非磁性金属鍋などがあり、このような多種多様な調理容器が存在する。このため、そのような調理容器においては耐熱温度を超える異常高温となることは絶対に避けるべき状況である。
【0007】
しかしながら、従来の誘導加熱調理器においては、調理容器が異常高温となったときにはその異常高温を確実に検知することができる構成、特に調理容器が所定の加熱領域から位置ずれ状態で誘導加熱されて、当該調理容器が異常高温になったときには、そのような異常高温を検知できない場合が起こる構成であった。
【0008】
本発明は、誘導加熱された被加熱物(調理容器)が異常高温になったときには、その異常高温を確実に検知し、加熱コイルの電流を制御して被加熱物の温度上昇を抑えることができる安全性および信頼性の高い誘導加熱調理器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る一態様の誘導加熱調理器は、
被加熱物が載置されるトッププレートと、
前記トッププレートの直下に配置され、前記トッププレートに載置された被加熱物を誘導加熱するための加熱コイルと、
前記トッププレートに載置された被加熱物の温度を検知する複数の赤外線センサと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、誘導加熱された被加熱物が異常高温になったときには、その異常高温を確実に検知できる安全性および信頼性の高い誘導加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器の斜視図
【
図2】実施の形態1の誘導加熱調理器におけるトッププレートの平面図
【
図3】実施の形態1の誘導加熱調理器における本体内に配設された第1の加熱コイル、第2の加熱コイル、および第3の加熱コイルの配置を示す平面図
【
図4】実施の形態1の誘導加熱調理器における第1の中温検知センサおよび高温検知センサの特性の一例を示すグラフ
【
図5】物体の熱放射エネルギーに対する第1の中温検知センサおよび高温検知センサの受光感度の一例を示すグラフ
【
図6】第1の加熱領域の直下に設けられた第1の加熱コイルに対する、第1の中温検知センサと高温検知センサの配置を示す平面図
【
図7】第2の加熱領域の直下に設けられた第2の加熱コイルに対する、中温検知センサと高温検知センサの配置を示す平面図
【
図8】実施の形態1の誘導加熱調理器における第1のコイル部と第5の高温検知センサとの位置関係を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の誘導加熱調理器に係る実施形態として添付の図面を参照しながら説明する。なお、本発明の誘導加熱調理器は、以下の実施の形態に記載した誘導加熱調理器の構成に限定されるものではなく、以下の実施の形態において説明する技術的思想と同等の技術的思想に基づいて、誘導加熱を用いる各種加熱装置の構成にも適用可能である。
【0013】
先ず始めに、本発明の誘導加熱調理器における各種態様を例示する。
本発明に係る第1の態様の誘導加熱調理器は、
被加熱物が載置されるトッププレート、
前記トッププレートの直下に配置され、前記トッププレートに載置された被加熱物を誘導加熱するための加熱コイル、および
前記トッププレートに載置された被加熱物の温度を検知する複数の赤外線センサ、を備えている。
【0014】
本発明に係る第2の態様の誘導加熱調理器は、前記の第1の態様において、前記赤外線センサが前記加熱コイルにより誘導加熱する加熱領域の中心を含む線分により2分割した前記加熱領域の両側の領域直下に配置されてもよい。
【0015】
本発明に係る第3の態様の誘導加熱調理器は、前記の第1または第2の態様において、前記赤外線センサは検知できる温度帯が異なる複数種類の赤外線センサで構成してもよい。
【0016】
本発明に係る第4の態様の誘導加熱調理器は、前記の第1から第3の態様のいずれかの態様において、前記トッププレートが非結晶化ガラスで形成されてもよい。
【0017】
本発明に係る第5の態様の誘導加熱調理器は、前記の第4の態様において、前記トッププレートの表面圧縮応力値が、1MPa以上60MPa以下で形成されてもよい。
【0018】
本発明に係る第6の態様の誘導加熱調理器は、前記の第5の態様において、前記トッププレートは、ホウケイ酸ガラスで形成されてもよい。
【0019】
本発明に係る第7の態様の誘導加熱調理器は、前記の第1から第6の態様のいずれかの態様において、前記赤外線センサが、低い検出温度範囲を検知する第1の赤外線センサと、高い検出温度範囲を検知する第2の赤外線センサと、を有し、
加熱領域の直下において第1の赤外線センサが第2の赤外線センサより中心側に配置されてもよい。
【0020】
本発明に係る第8の態様の誘導加熱調理器は、前記の第7の態様において、前記第2の赤外線センサが、複数設けられ、加熱領域の直下において略同心円上に配置されてもよい。
【0021】
本発明に係る第9の態様の誘導加熱調理器は、前記の第7または第8の態様において、前記第1の赤外線センサと前記第2の赤外線センサが、平面視において前記加熱コイルを構成するコイル部群を挟んで配置されてもよい。
【0022】
本発明に係る第10の態様の誘導加熱調理器は、前記の第7から第9の態様のいずれかの態様において、前記第2の赤外線センサが平面視において前記加熱コイルの最外周コイルより内側に配置されてもよい。
【0023】
本発明に係る第11の態様の誘導加熱調理器は、前記の第7から第10の態様のいずれかの態様において、前記トッププレートが、載置された被加熱物から放射された光を前記第1の赤外線センサに入射するための低い温度帯用の透過窓と、前記第2の赤外線センサに入射するための高い温度帯用の透過窓と、を有してもよい。
【0024】
本発明に係る第12の態様の誘導加熱調理器は、前記の第11の態様において、前記低い温度帯用の透過窓は、前記高い温度帯用の透過窓に比して透過度が高く構成してもよい。
【0025】
本発明に係る第13の態様の誘導加熱調理器は、前記の第11または第12の態様において、前記トッププレートにおける前記高い温度帯用の透過窓が着色されてもよい。
【0026】
本発明に係る第14の態様の誘導加熱調理器は、前記の第7から第13の態様のいずれかの態様において、前記第2の赤外線センサによる検知温度帯が、起動時における前記加熱コイルの到達温度より高く設定されてもよい。
【0027】
本発明に係る第15の態様の誘導加熱調理器は、前記の第7から第14の態様において、前記第2の赤外線センサにおける少なくとも1つの赤外線センサが、前記加熱コイルのコイル部群におけるコイル線間のスリットの直下に設けられてもよい。
【0028】
本発明に係る第16の態様の誘導加熱調理器は、前記の第1から第15の態様のいずれかの態様において、前記トッププレートに載置された被加熱物の温度を検知するために、加熱領域の直下に感熱素子が設けられてもよい。
【0029】
(実施の形態1)
以下に、本発明に係る実施の形態1の誘導加熱調理器について添付の図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器1の斜視図である。なお、
図1において、X軸方向は誘導加熱調理器1の幅方向(長手方向)を示し、Y軸方向は奥行き方向(短手方向)を示し、Z軸方向は高さ方向を示す。また、X軸の正の方向を右方、負の方向を左方とする。また、Y軸の正の方向を後方、負の方向を前方とし、Z軸の正の方向を上方、負の方向を下方とする。
【0030】
図1に示す誘導加熱調理器1は、本体3の上部にトッププレート5を備えた構成であり、トッププレート5には3つの加熱領域A、B、Cが表示されている。加熱領域A、B、Cは、リング状のマーカ11、12、13がトッププレート5に印刷されて表示されている。トッププレート5における加熱領域A、B、Cの直下となる本体3内部には加熱部として後述する加熱コイル(7、8、9:
図3参照)がそれぞれ配置されている。実施の形態1に係る誘導加熱調理器1においては、3つの加熱領域A、B、Cの全てで誘導加熱を行う構成で説明するが、本発明の誘導加熱調理器の構成としては、実施の形態1の構成に限定されるものではなく、少なくとも1つの加熱領域が誘導加熱を行うものであれば含まれる。本発明の誘導加熱調理器は、1つの加熱部が誘導加熱を行う、所謂1口形式の誘導加熱調理器の構成の他に、2口形式以上の誘導加熱調理器の構成における他の加熱部としては、抵抗加熱手段、例えばラジエントヒータ、ハロゲンヒータなどを設けた構成を含むものである。
【0031】
図2は、誘導加熱調理器1におけるトッププレート5の平面視を示す図(平面図)である。
図2に示すように、実施の形態1の誘導加熱調理器1においては、トッププレート5における第1の加熱領域A、第2の加熱領域B、および第3の加熱領域Cを、ユーザが認識できるように、円形の第1のマーカ11、第2のマーカ12、および第3のマーカ13が表示されている。また、ユーザが鍋やフライパンなどの被加熱物を第1の加熱領域Aあるいは第2の加熱領域Bに載置し、第1の加熱領域Aあるいは第2の加熱領域Bで被加熱物を加熱調理中は、第1のマーカ11および第2のマーカ12の周りにリング状に設けている第1の発光部15あるいは第2の発光部16(
図1参照)がそれぞれの加熱領域に対応して光る。ユーザが被加熱物を第1の加熱領域Aおよび第2の加熱領域Bの両方に載置し、被加熱物を加熱調理しているときは、第1の発光部15および第2の発光部16の両方が光る。第1の発光部15および第2の発光部16は、トッププレート5の直下にある第1の加熱コイル7および第2の加熱コイル8のそれぞれの周りに配設された発光体、例えばLED発光基板により構成される。第1の発光部15および第2の発光部16は、対応する第1の加熱コイル7および/または第2の加熱コイル8に電流が流れているときに発光する構成である。
【0032】
また、実施の形態1の誘導加熱調理器1においては、トッププレート5の奥側に配置された第3の加熱領域Cをユーザが認識できるように、円形の第3のマーカ13のユーザ側(手前側)に起動時に円弧状に光る第3の発光部17が形成されている。
【0033】
トッププレート5におけるユーザ側である手前側には、それぞれの加熱領域(A、B、C)の火力および加熱時間などを設定操作するための操作部19が設けられている。操作部19には電源スイッチ21が含まれる。また、トッププレート5においては、操作部19の近くに表示部20が設けられており、それぞれの加熱領域(A、B、C)における火力および加熱時間などが表示される。
【0034】
トッププレート5は、矩形状のガラスプレートで構成されている。トッププレート5は、表面圧縮応力値が1MPa以上60MPa以下の非結晶化ガラスで形成されている。表面圧縮応力値が1MPa以上60MPa以下の非結晶化ガラスは、結晶化ガラスよりも物理的強度が高く、割れにくい特性を有する。
【0035】
トッププレート5は、例えば、熱で強化されたホウケイ酸ガラスなどのガラスで形成されている。ホウケイ酸ガラスは、結晶化ガラスよりも物理的強度が強く、クリア(透明)であり光透過率が非常に高い特性を有する。したがって、トッププレート5の裏面に種々の色のインクを印刷した場合には、トッププレート5を上方から見ると、インク自体の色を綺麗に発色させることができる。このため、トッププレート5をホウケイ酸ガラスで構成することによって、種々の色を用いることが可能となり、外観のデザイン性を向上させつつ、視認性、および安全性を向上させた誘導加熱調理器を構築することができる。
【0036】
ホウケイ酸ガラスは、SiO2、Al2O3,B2O2、及びNa2O3などによって組成され、これらの組成成分率が所定の範囲を有するガラスである。ホウケイ酸ガラスは、所定の熱処理を施して、表面圧縮応力を強化する。例えば、ホウケイ酸ガラスを最大700℃程度の温度で焼成し、急冷させる処理を行うことによって、物理強化処理を施すことができる。
【0037】
実施の形態1の誘導加熱調理器1においては、トッププレート5に形成された第1の加熱領域Aおよび第3の加熱領域Cが、被加熱物としての調理容器として鉄鍋、ステンレス鍋などの「磁性金属鍋」を誘導加熱する構成を有し、第2の加熱領域Bが調理容器として銅鍋、アルミ鍋などの「非磁性金属鍋」も誘導加熱する構成を有する。
【0038】
図3は、実施の形態1の誘導加熱調理器1における本体3内に配設された第1の加熱コイル7、第2の加熱コイル8、および第3の加熱コイル9の配置を示す平面図である。即ち、
図3は、トッププレート5を取り除いた場合の第1の加熱コイル7、第2の加熱コイル8、および第3の加熱コイル9の配置を平面視で示している。トッププレート5における第1の加熱領域Aの直下に対応して第1の加熱コイル7が配設され、第2の加熱領域Bの直下に対応して第2の加熱コイル8が配設され、第3の加熱領域Cの直下に対応して第3の加熱コイル9が配設される。
【0039】
図3に示すように、第1の加熱コイル7と第3の加熱コイル9は、コイル径が異なり消費電力が異なるが、基本的には同様の構成を有しており、「磁性金属鍋」を誘導加熱する構成である。第1の加熱コイル7と第3の加熱コイル9は、絶縁処理が施された複数の細線、例えば銅線、アルミニウム線などを撚ることにより作製されたコイル線を略同心円状に巻回されて構成されている。第1の加熱コイル7は、内コイル部7a、中コイル部7b、および外コイル部7cの3つのコイル部群で構成され、略同心円状に3分割されている。内コイル部7a、中コイル部7b、および外コイル部7cの3つのコイル部群は、直列接続されて第1の加熱コイル7が構成されている。
【0040】
第2の加熱コイル8は、第1の加熱コイル7とは異なるコイル構成を有しており、「非磁性金属鍋」も誘導加熱可能な構成である。第2の加熱コイル8は、「非磁性金属鍋」を誘導加熱するために巻回数(ターン数)を多くした構成を有している。実施の形態1における第2の加熱コイル8は、絶縁処理が施された複数の細線、例えば銅線、アルミニウム線などを撚ることにより作製されたコイル線を、更に高さ方向(Z軸方向:
図1参照)に一列に複数段に重ねて帯状形成された帯状コイル線が用いられている。具体的には、実施の形態1における第2の加熱コイル8は、複数の細線の撚り線で作製されたコイル線を帯状となるように、例えば高さ方向に一列に5段重ねて帯状コイル線を形成し、その帯状コイル線を複数回、例えば9回、巻回して形成されている。
【0041】
実施の形態1における第2の加熱コイル8は、第2の加熱領域Bを2つのコイル部(8a、8b)で誘導加熱する構成である。第1のコイル部8aおよび第2のコイル部8bは、それぞれが平面視でD字形状を有しており、それぞれが背中合わせに配置されて略円形形状となるように配設されている。実施の形態1の第2の加熱コイル8は、上記のように2分割された構成で説明するが、本発明は、この構成に限定されず、分割されない略同心円状に巻回された構成や、3分割以上の複数のコイル部を有する構成を含むものである。
【0042】
[温度検出部]
上記のように構成された実施の形態1の誘導加熱調理器1は、トッププレート5の所定の加熱領域(A、B、C)に載置された被加熱物である調理容器に対する温度検出部として複数の赤外線センサが設けられている。
【0043】
(第1の加熱領域Aに対する温度検出部)
以下、第1の加熱領域Aに対する温度検出部の構成および配置について説明する。第1の加熱領域Aに対する温度検出部としては、4つの赤外線センサが設けられている。4つの赤外線センサとしては、第1の赤外線センサとして1つの中温検知センサ24が設けられており、第2の赤外線センサとして3つの高温検知センサ(25、26、27)が設けられている。なお、実施の形態1の誘導加熱調理器1においては、温度検出部として感熱素子として第1のサーミスタ34が設けられている。
【0044】
第1の中温検知センサ24は、第1の加熱領域Aに載置された調理容器の底面の温度を検出して、当該調理容器における現在の調理状態を判断するために用いられる。第1の赤外線センサとしての第1の中温検知センサ24による検出温度範囲としては、例えば、約120℃~300℃の中間温度領域を検知するよう設定されている。第1の中温検知センサ24としては、例えば、InGaAsフォトダイオードで構成された赤外線センサが用いられ、特に約140℃~280℃の中間温度領域を高精度に検知できる構成であり、揚げ物や焼き物などの調理時の温度制御に用いるのに適している。
【0045】
第2の赤外線センサとしての3つの高温検知センサ(25、26、27)は、同様の仕様を有し、第1の加熱領域Aに載置された調理容器の底面において分散された3カ所の温度が、異常温度である高温度となったことを検知する赤外線センサである。高温検知センサ(25、26、27)としては、例えば、Siフォトダイオードで構成された赤外線センサが用いられている。高温検知センサ(25、26、27)は、例えば、約300℃~450℃の高温度領域を高精度に検知できる構成であり、異常な温度上昇を検知するのに適している。従って、第1の赤外線センサとしての第1の中温検知センサ24が低い検出温度範囲を検知し、第2の赤外線センサとしての3つの高温検知センサ(25、26、27)が高い検出温度範囲を検知している。
【0046】
図4は、第1の中温検知センサ24および高温検知センサ(25、26、27)の特性の一例を示すグラフである。
図4のグラフにおいて、縦軸が赤外線センサの出力[V]を示し、横軸が温度検出対象である調理容器の底面温度[℃]を示す。
図4において、第1の中温検知センサ24の特性例を破線で示し、高温検知センサ(25、26、27)の特性例を実線で示す。
【0047】
それぞれの赤外線センサ(24、25、26、27)においては、フォトダイオードにおいて発生した電流を増幅して温度検出対象(調理容器)の温度を示す赤外線検出信号として出力する。
図4のグラフで示すように、第1の中温検知センサ24および高温検知センサは、増幅率を切り替えることにより、検知温度帯に適した感度としており、感度1、感度2、または感度3に切り替えて、温度検出対象(調理容器)に対する温度検知を高精度に行うことができる。
【0048】
図5は、物体の熱放射エネルギーに対する第1の中温検知センサ24および高温検知センサ(25、26、27)の受光感度の一例を示すグラフである。
図5のグラフにおいて、縦軸が赤外線センサの受光感度と、物体の熱放射エネルギーとを示し、横軸が波長[nm]を示している。
【0049】
図5において破線で示す第1の中温検知センサ24の受光感度は、ピーク波長が約1500nm程度であるため、約140℃からの温度検知が可能であることが理解できる。一方、実線で示す高温検知センサ(25、26、27)の受光感度は、ピーク波長が約900nm程度であるため、約300℃からの温度検知が可能であることが理解できる。
【0050】
図6は、第1の加熱領域Aの直下に設けられた第1の加熱コイル7に対する、第1の中温検知センサ24と3つの高温検知センサ(25、26、27)の配置を平面視で示す図である。
図6においては、理解を容易とするために、第1の加熱コイル7、第1の中温検知センサ24、および3つの高温検知センサ(25、26、27)のみを示し、第1の加熱コイル7を模式的に記載している。
図6に示すように、実施の形態1の誘導加熱調理器1においては、第1の加熱コイル7が、最内周部分に配置された内コイル部7a、中間部分に配置された中コイル部7b、および最外周部分に配置された外コイル部7cの略同心円状に3分割されたコイル部群で構成されている。
【0051】
図6に示すように、3つの高温検知センサである第1の高温検知センサ25、第2の高温検知センサ26、および第3の高温検知センサ27は、第1の加熱コイル7の配置領域の直下において略同心円上となるように配設されている。具体的には、第1の高温検知センサ25、第2の高温検知センサ26、および第3の高温検知センサ27は、中コイル部7bの外側であり、外コイル部7cの内側となる位置の直下に配設されている。即ち、第1の高温検知センサ25と第2の高温検知センサ26と第3の高温検知センサ27との3つの赤外線センサは、第1の加熱コイル7の中コイル部7bと外コイル部7cとコイル部群間に形成された第1のコイル部間開口36の直下に配設されている。
【0052】
第1の高温検知センサ25は第1の加熱コイル7の巻回中心である加熱領域中心P1より左側(X軸の負の方向側)に設けられている。第2の高温検知センサ26は第1の加熱コイル7の加熱領域中心P1より奥行き側に設けられており、第3の高温検知センサ27は第1の加熱コイル7の加熱領域中心P1より右側(X軸の正の方向側)に設けられている。なお、実施の形態1において、左側/右側とは当該誘導加熱調理器1を使用するユーザから見ての左側/右側を表し、X軸における負の方向側が左側であり、正の方向側が右側である。
【0053】
実施の形態1の誘導加熱調理器1の構成においては、第1の高温検知センサ25と第3の高温検知センサ27の各センサ位置は、加熱領域中心P1を挟んだ両側の位置に配置されている。第1の高温検知センサ25のセンサ位置と、加熱領域中心P1の位置と、第3の高温検知センサ27のセンサ位置とは実質的に同一直線上に配設されている。また、第2の高温検知センサ26は、第2の高温検知センサ26のセンサ位置と加熱領域中心P1の位置とを結ぶ線分(R)が、第1の高温検知センサ25のセンサ位置と加熱領域中心P1の位置と第3の高温検知センサ27のセンサ位置とを結ぶ線分(Q)と略直交するように、配置されている。
【0054】
上記のように、誘導加熱調理器1においては、3つの高温検知センサである第1の高温検知センサ25、第2の高温検知センサ26、および第3の高温検知センサ27が、第1の加熱コイル7の配置領域の直下において分散されて配置されており、第1の加熱コイル7に対応する第1の加熱領域Aに載置された調理容器の底面温度を確実に検出できる構成である。特に、被加熱物である調理容器が、第1の加熱領域Aに対して位置ずれの状態で載置されたとしても調理容器の底面温度を確実に検出できる構成である。
【0055】
誘導加熱調理器1においては、高温検知センサ(25、26、27)の他に第1の中温検知センサ24が第1の加熱コイル7の配置領域に設けられている。
図6に示したように、第1の中温検知センサ24は、第1の加熱コイル7の内コイル部7aと中コイル部7bのコイル部群間に形成された第2のコイル部間開口37の直下に設けられている。このように配設された第1の中温検知センサ24は、第1の加熱領域Aに対して底面直径が小さい調理容器が載置されたとしても、確実に当該調理容器の底面温度を検出することができ、加熱調理中における加熱制御を適切に行うことが可能となる。
【0056】
前述のように、高温検知センサ(25、26、27)は、異常温度である高温度(例えば、280℃以上)を検知する目的で設けられており、調理中の温度帯(例えば、140℃~280℃)を検出するために設けられた第1の中温検知センサ24とは検出する波長帯が異なっている。トッププレート5においては、高温検知センサ(25、26、27)に対して被加熱物である調理容器の底面から放射された光が入射するように、高温検知センサ(25、26、27)の直上に高温検知センサ(25、26、27)用の透過窓43が形成されている。また、トッププレート5においては、中温検知センサ24に対して調理容器の底面から放射された光が入射するように、中温検知センサ24の直上に中温検知センサ24用の透過窓42が形成されている。
【0057】
次に、透過窓42および透過窓43の構成について説明する。ユーザが調理中は、中温検知センサ24で検知した温度に基づいて揚げ物などの調理が行われており、例えば10℃刻みの細かい温度制御に対応するためには、第1の中温検知センサ24は、高精度な温度検知が必要とされる。そのため、第1の中温検知センサ24用の透過窓42は、検出すべき波長の光が確実に透過するように透明度を高くする必要がある。本実施の形態の透過窓42は、ものづくり上のばらつきを抑えるために、透過窓42には着色を施さない構成としている。それによって、第1の中温検知センサ24で被加熱物から放射される光を確実に検出することができ、高精度な温度検知を実現することができる。一方、高温検知センサ(25、26、27)用の透過窓43は、検出すべき波長が高温度(例えば、280℃以上)の被加熱物から放射される光であり、その光がトッププレート5を透過すればよい。そのため、トッププレート5に着色されているインクに近い色に透過窓43を着色することができ、それによってトッププレート5の全体としてユーザに美感を起こさせることができる。
【0058】
このように第1の中温検知センサ24と高温検知センサ(25、26、27)とは特性が異なっているため、前述の
図2に示したトッププレート5に形成された透過窓(42、43)の構成(透明度)が異なっている。即ち、中温検知センサ24用の透過窓42は、高温検知センサ(25、26、27)用の透過窓43に比べて透明度が高くなっている。
【0059】
上記のように、実施の形態1におけるトッププレート5は、載置された調理容器の底面から放射された光を第1の赤外線センサである中温検知センサ24に入射するための低い温度帯用の透過窓42と、第2の赤外線センサである高温検知センサ(25、26、27)に入射するための高い温度帯用の透過窓43と、を有する。低い温度帯用の透過窓42は、高い温度帯用の透過窓43に比して透過度が高く、高い温度帯用の透過窓43においてはトッププレート5の全体としてユーザに美感を起こさせる着色を施すことができる。
【0060】
なお、実施の形態1においては、1つの第1の中温検知センサ24と3つの高温検知センサ(25、26、27)とを配設した構成について説明したが、本発明においては、このような構成に限定されるものではなく、例えば、更に高温検知センサを加熱領域中心P1の位置より手前側設けて、4つの高温検知センサを略同心円上に等間隔に配置してもよい。また、中温検知センサを複数設けて、加熱調理中における調理容器の底面温度をより確実に検出する構成としてもよい。
【0061】
また、実施の形態1の誘導加熱調理器1においては、トッププレート5の第1の加熱領域Aに載置された調理容器に対する温度検出部として、第1のサーミスタ34が設けられている。第1のサーミスタ34は、第1の加熱コイル7の内コイル部7aと中コイル部7bとのコイル部群間に形成された第2のコイル部間開口37に配設されている。第2のサーミスタ34の配設位置は、第1の中温検知センサ24の配設位置に対して第1の加熱コイル7の巻回中心である加熱領域中心P1を挟んで反対側の位置である。
【0062】
(第2の加熱領域Bに対する温度検出部)
以下、被加熱物の調理容器として「非磁性金属鍋」も誘導加熱可能な第2の加熱領域Bに対する温度検出部の構成および配置について説明する。第2の加熱領域Bに対する温度検出部としては、前述の第1の加熱領域Aに対する温度検出部と同様に、4つの赤外線センサと1つのサーミスタが設けられている。4つの赤外線センサとしては、1つの中温検知センサ28、および3つの高温検知センサ(29、30、31)である。
【0063】
第2の加熱領域Bに対する温度検出部としての第2の中温検知センサ28および高温検知センサ(29、30、31)は、第1の加熱領域Aに対する温度検出部において説明した第1の中温検知センサ24および高温検知センサ(25、26、27)と同じ仕様、特性を有するため、ここではその説明を省略する。
【0064】
図7は、第2の加熱領域Bの直下に設けられた第2の加熱コイル8に対する、第2の中温検知センサ28と3つの高温検知センサ(29、30、31)の配置を平面視で示す図である。
図7においては、理解を容易とするために、第2の加熱コイル8、第2の中温検知センサ28、および3つの高温検知センサ(29、30、31)のみを示している。
図7に示すように、実施の形態1の誘導加熱調理器1における第2の加熱コイル8は、平面視でD字形状を有する第1のコイル部8aおよび第2のコイル部8bが、背中合わせに配置されて略円形形状となるように配設されている。実施の形態1の構成においては、第1のコイル部8aが奥側に配置され、第2のコイル部8bが手前側に配置されている。第1のコイル部8aおよび第2のコイル部8bに流す電流は、インバータ回路(図示省略)の駆動を制御することにより、それぞれに供給する構成を有している。なお、第1のコイル部8aおよび第2のコイル部8bが背中合わせに配置されて略円形形状となる第2の加熱コイル8の中心を加熱領域中心P2(
図7参照)として、以後の説明に用いる。即ち、第2の加熱コイル8の加熱領域中心P2は、第2の加熱コイル8の配置領域の中心位置であり、配置領域を厚みが同じ平板な板材で構成した場合の重心位置となる。また、加熱領域中心P2を通り、第1のコイル部8aと第2のコイル部8bとを2分割する線分を分割線Q(
図7参照)として、以後の説明において用いる。
【0065】
図7に示すように、分割線Qの奥側に配置された略D字形状に巻回された第1のコイル部8aには、その巻回中央に略D字形状の開口である第1のコイル部中央開口38が形成されている。同様に、分割線Qの手前側(ユーザ側)に配置された略D字形状に巻回された第2のコイル部8bには、その巻回中央に略D字形状の開口である第2のコイル部中央開口39が形成されている。第2の加熱コイル8における第2の中温検知センサ28は、第2のコイル部8bの第2のコイル部中央開口39の直下に設けられている。具体的には、第2の中温検知センサ28のセンサ位置は、第2のコイル部8bにおける第2のコイル部中央開口39の略中心位置の直下に配設されており、第2の加熱コイル8の加熱領域中心P2から手前側に延びるY軸の線分の直下である。このように配設された第2の中温検知センサ28は、第2の加熱領域Bに対して底面直径が小さい小型調理容器が載置されたとしても、確実に当該調理容器の底面温度を検出することができ、加熱調理中における加熱制御を適切に行うことが可能となる。
【0066】
第2の加熱領域Bに対する第2の加熱コイル8においても、第4の高温検知センサ29、第5の高温検知センサ30、および第6の高温検知センサ31の3つの高温検知センサが、第2の加熱コイル8の配置領域の直下において略同心円上となるように配設されている。
【0067】
第4の高温検知センサ29は、第1のコイル部8aと第2のコイル部8bの間における左側の開口部分に配置されており、前述の分割線Qの略線上に設けられている。第6の高温検知センサ31は、第2の加熱コイル8の加熱領域中心P2を挟んで第4の高温検知センサ29と対向するように配置されており、分割線Qの略線上において、第1のコイル部8aと第2のコイル部8bの間における右側の開口部分に配置されている。実施の形態1の構成においては、第4の高温検知センサ29のセンサ位置と、加熱領域中心P2の位置と、第6の高温検知センサ31の位置とは、実質的に同一直線上に配設されている。
【0068】
図7に示すように、第5の高温検知センサ30は、第2の加熱コイル8の奥側に配置された第1のコイル部8aの直下に設けられている。
図8は、第1のコイル部8aと第5の高温検知センサ30との位置関係を示す縦断面図である。
図8においては、それぞれの位置関係を明確に示すために、第1のコイル部8aおよび第5の高温検知センサ30のみを示しており、第1のコイル部8aと第5の高温検知センサ30とを装置に固定するための固定部材などは図示を省略している。
【0069】
図7および
図8に示すように、第1のコイル部8aは高さ方向(Z軸方向)に一列に複数段(例えば、5段)に重ねた帯状の帯状コイル線を巻回した構成であり、隣接する帯状コイル線間には高さ方向に光が通り抜けることが可能なスリットを有する構成である。特に、第1のコイル部8aにおいては、奥側で隣接して配置された帯状コイル線のコイル部群40(
図7参照)には温度検知用のスリット41(以下単にスリット41と称する)が形成されている。スリット41の形成位置は、第5の高温検知センサ30のセンサ位置に対応している。第5の高温検知センサ30のセンサ位置は、加熱領域中心P2を通り、分割線Qとは直交する線分(R)の直下である。スリット41の幅としては、第5の高温検知センサ30に対して調理容器からの光が入射可能な間隔があればよく、帯状コイル線の巻回状態に応じて適宜設定されるが、例えば、他のコイル部群におけるスリットに比して2倍~4倍の幅があればよい。
【0070】
上記のように、第5の高温検知センサ30は、第1のコイル部8aにおいて隣接する帯状コイル線間のスリット41の直下に配設されており、被加熱物である調理容器の底面からの光をガイドするような構成は設けられていない。第5の高温検知センサ30が高温度(例えば、280℃以上)となった異常温度の加熱コイルの巻き線が密な部分の上方の温度上昇が大きい調理容器底面から放射された光を検知する構成であり、第1のコイル部8aにおいてはそのような高温度まで上昇しないためである。このように、第2の赤外線センサである高温検知センサ30による検知温度帯としては、起動時において第2の加熱コイル8の到達温度より高く設定されている。従って、第5の高温検知センサ30は、光ガイドなどの特別の部材を設けることなく簡単な構成で、調理容器の底面が異常温度となったときを確実に検出することが可能となる。
【0071】
上記のように、第2の加熱領域Bに対して、1つの中温検知センサ(28)、3つの高温検知センサ(29、30、31)が分散されて配置されており、第2の加熱領域Bに載置された被加熱物であり調理容器の底面温度を確実に検出できる構成である。特に、調理容器が、第2の加熱領域Bに対して位置ずれ状態で載置されたとしても、いずれかのセンサが調理容器の底面温度を確実に検出できる構成である。また、調理中の温度制御に用いられる中温検知センサ(28)が第2の加熱領域Bにおける加熱領域中心P2の近くに配設されているため、第2の加熱領域Bに底面直径が小さい小型調理容器が載置されたとしても、確実に当該調理容器の底面温度を検出することができ、加熱調理中における加熱制御を適切に行うことが可能となる。
【0072】
なお、実施の形態1の誘導加熱調理器1においては、第2の加熱領域Bに載置された調理容器に対する温度検出部として、感熱素子の第2のサーミスタ35が設けられている。第2のサーミスタ35は、第2の加熱コイル8の第1のコイル部8aにおける第1のコイル部中央開口38に配設されている。第2のサーミスタ35の配設位置は、第2の中温検知センサ28の配設位置に対して加熱領域中心P2を挟んで反対側の位置である。
【0073】
なお、実施の形態1の誘導加熱調理器1には第3の加熱コイル9がトッププレート5の奥側に設けられた構成であり、第3の加熱コイル9は第1の加熱コイル7と基本的には同様の「磁性金属鍋」を誘導加熱する構成ある。実施の形態1の構成においては、第3の加熱コイル9は第1の加熱コイル7に比して消費電力が小さく、小型であるため、2つの高温検知センサ(32、33)を設けた構成である。2つの高温検知センサ(32、33)は、略同心円状の2つのコイル部群間の間に設けており、第3の加熱コイル9の中心においてZ軸の方向に延びる線分の直下に配置されている(
図3参照)。但し、本発明としては、第3の加熱コイル9は、第1の加熱コイル7と同様の構成を有して、複数の温度検知センサを設けた構成としてもよい。
【0074】
実施の形態1の誘導加熱調理器1には、温度検出部として赤外線センサの他に感熱素子(例えば、サーミスタ)が設けられた構成について説明したが、これらの感熱素子は、被加熱物が載置されたトッププレートの温度を検出して、他の温度センサの温度検知の補助として用いられる。
【0075】
以上のように、実施の形態1の誘導加熱調理器1においては、複数の赤外線センサが設けられており、特性(検出波長、検出温度)が異なる赤外線センサが用いられている。1つの加熱領域に関して、低い温度を検知する調理温度制御用の赤外線センサ(24、28)が、高い温度を検知する異常温度検知用の赤外線センサ(25、26、27、29、30、31)より内側に設けられている。調理温度制御用の赤外線センサが加熱領域における手前側(ユーザ側)となる位置に配設され、異常温度検知用の赤外線センサは加熱領域において左右対称の位置に配設されている。加熱領域における異常温度検知用の複数の赤外線センサは、略同心円上に配置され、最外周の加熱コイルより内側となる位置に配置されている。さらに、異常温度検知用の赤外線センサは、調理温度制御用の赤外線センサとの間に加熱コイルのコイル部群が配置された構成である。このように構成された、実施の形態1の誘導加熱調理器1は、複数の赤外線センサが加熱領域に分散配置された構成となり、加熱領域に載置された被加熱物に対する温度検知を確実に行える構成となる。
【0076】
実施の形態1の誘導加熱調理器1において、複数の赤外線センサを用いた構成であり、赤外線センサとしては、例えば、InGaAsフォトダイオード、またはSiフォトダイオードで構成した例で説明したが、熱型や量子型のその他の赤外線センサを用いて構成してもよい。
【0077】
以上のように、本発明の誘導加熱調理器においては、それぞれの加熱領域(A、B、C)に複数の温度検知センサ(赤外線センサ)が分散して配置されており、特に、主となる加熱領域である第1の加熱領域Aおよび第2の加熱領域Bに対して、加熱領域中心(P1、P2)を含む線により2つに分割したいずれの加熱領域においても、実質的に温度検知センサ(赤外線センサ)が配置される構成となる。この結果、被加熱物である調理容器が加熱領域に対して位置ずれ状態が生じていても、当該調理容器の底面温度を確実に検出できる構成となる。このため、被加熱物である調理容器において異常温度(例えば、280℃以上)の状態が発生したときには、瞬時に確実に検出することが可能となり、安全性および信頼性の高い調理機器となる。
【0078】
本発明をある程度の詳細さをもって実施の形態および変形例において説明したが、実施の形態の開示内容は構成の細部において変化してしかるべきものであり、実施の形態における要素の置換、組合せ、および順序の変更は請求された本発明の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、トッププレートにおいて載置された被加熱物における異常温度を確実に検出できる構成を有するため、調理器具として安全性および信頼性が高く、市場価値が高い構成である。
【符号の説明】
【0080】
1 誘導加熱調理器
3 本体
5 トッププレート
7 第1の加熱コイル
8 第2の加熱コイル
9 第3の加熱コイル
19 操作部
20 表示部
24 第1の中温検知センサ(第1の赤外線センサ)
25 第1の高温検知センサ(第2の赤外線センサ)
26 第2の高温検知センサ(第2の赤外線センサ)
27 第3の高温検知センサ(第2の赤外線センサ)
28 第2の中温検知センサ(第1の赤外線センサ)
29 第4の高温検知センサ(第2の赤外線センサ)
30 第5の高温検知センサ(第2の赤外線センサ)
31 第6の高温検知センサ(第2の赤外線センサ)
40 コイル部群
41 温度検知用のスリット
42 中温検知用の透過窓
43 高温検知用の透過窓
A 第1の加熱領域
B 第2の加熱領域
C 第3の加熱領域
P1、P2 加熱領域中心