(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】干渉時間比率出力装置、稼働可否情報出力装置、干渉時間比率出力方法、稼働可否情報出力方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20230217BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20230217BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20230217BHJP
B66C 23/88 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
B66C13/00 Z
G05B19/418 Z
B66C15/00 E
B66C23/88 E
(21)【出願番号】P 2019175604
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【氏名又は名称】尾形 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166981
【氏名又は名称】砂田 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 敏治
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 厳彦
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-222380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0009531(US,A1)
【文献】特開平07-179293(JP,A)
【文献】特開平11-255478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00
G05B 19/418
B66C 15/00
B66C 23/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物流シミュレーションにおいて複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在した領域を記録した記録情報を取得する記録情報取得手段と、
複数の領域の組み合わせに対して前記複数の搬送設備がそれぞれ当該複数の領域に存在する場合に当該複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報を設定した設定情報を取得する設定情報取得手段と、
前記複数の時間の各時間について、前記記録情報取得手段により取得された前記記録情報
に記録された前記複数の搬送設備がそれぞれ存在した複数の領域に基づいて、前記設定情報取得手段により取得された前記設定情報
を検索することにより、
当該各時間に
当該複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を評価した評価値を導出する評価値導出手段と、
前記評価値導出手段により導出された前記評価値の前記物流シミュレーションの時間についての合計を当該物流シミュレーションの時間で除することにより、前記複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率である干渉時間比率を導出する干渉時間比率導出手段と、
前記干渉時間比率導出手段により導出された前記干渉時間比率を出力する出力手段と
を備えたことを特徴とする干渉時間比率出力装置。
【請求項2】
前記設定情報は、前記複数の領域の組み合わせに対して、前記複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報として、当該複数の搬送設備の干渉の発生の有無を設定した情報であることを特徴とする請求項1に記載の干渉時間比率出力装置。
【請求項3】
前記設定情報は、前記複数の領域の組み合わせに対して、前記複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報として、当該複数の搬送設備の干渉が発生する確率を設定した情報であることを特徴とする請求項1に記載の干渉時間比率出力装置。
【請求項4】
前記設定情報は、前記複数の領域の組み合わせに対して、前記複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報として、当該複数の搬送設備の干渉の発生の有無又は当該複数の搬送設備の干渉が発生する確率を求める関数を設定した情報であることを特徴とする請求項1に記載の干渉時間比率出力装置。
【請求項5】
前記関数は、前記複数の搬送設備の各搬送設備が搬送している製品の属性を変数として用いることを特徴とする請求項4に記載の干渉時間比率出力装置。
【請求項6】
物流シミュレーションにおいて複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在した領域を記録した記録情報を取得する記録情報取得手段と、
複数の領域の組み合わせに対して前記複数の搬送設備がそれぞれ当該複数の領域に存在する場合に当該複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報を設定した設定情報を取得する設定情報取得手段と、
前記記録情報取得手段により取得された前記記録情報と、前記設定情報取得手段により取得された前記設定情報とに基づいて、前記複数の時間の各時間に前記複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を評価した評価値を導出する評価値導出手段と、
前記評価値導出手段により導出された前記評価値の前記物流シミュレーションの時間についての合計を当該物流シミュレーションの時間で除することにより、前記複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率である干渉時間比率を導出する干渉時間比率導出手段と、
前記干渉時間比率導出手段により導出された前記干渉時間比率と、前記複数の搬送設備の稼働率の合計との和を、当該複数の搬送設備の稼働率の上限の合計と比較することにより、当該複数の搬送設備の稼働可否を判定する判定手段と、
前記判定手段により判定された前記稼働可否を示す情報を出力する出力手段と
を備えたことを特徴とする稼働可否情報出力装置。
【請求項7】
コンピュータの記録情報取得手段が、物流シミュレーションにおいて複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在した領域を記録した記録情報を取得するステップと、
コンピュータの設定情報取得手段が、複数の領域の組み合わせに対して前記複数の搬送設備がそれぞれ当該複数の領域に存在する場合に当該複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報を設定した設定情報を取得するステップと、
コンピュータの評価値導出手段が、
前記複数の時間の各時間について、取得された前記記録情報
に記録された前記複数の搬送設備がそれぞれ存在した複数の領域に基づいて、取得された前記設定情報
を検索することにより、
当該各時間に
当該複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を評価した評価値を導出するステップと、
コンピュータの干渉時間比率導出手段が、導出された前記評価値の前記物流シミュレーションの時間についての合計を当該物流シミュレーションの時間で除することにより、前記複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率である干渉時間比率を導出するステップと、
コンピュータの出力手段が、導出された前記干渉時間比率を出力するステップと
を含むことを特徴とする干渉時間比率出力方法。
【請求項8】
コンピュータの記録情報取得手段が、物流シミュレーションにおいて複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在した領域を記録した記録情報を取得するステップと、
コンピュータの設定情報取得手段が、複数の領域の組み合わせに対して前記複数の搬送設備がそれぞれ当該複数の領域に存在する場合に当該複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報を設定した設定情報を取得するステップと、
コンピュータの評価値導出手段が、取得された前記記録情報と、取得された前記設定情報とに基づいて、前記複数の時間の各時間に前記複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を評価した評価値を導出するステップと、
コンピュータの干渉時間比率導出手段が、導出された前記評価値の前記物流シミュレーションの時間についての合計を当該物流シミュレーションの時間で除することにより、前記複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率である干渉時間比率を導出するステップと、
コンピュータの判定手段が、導出された前記干渉時間比率と、前記複数の搬送設備の稼働率の合計との和を、当該複数の搬送設備の稼働率の上限の合計と比較することにより、当該複数の搬送設備の稼働可否を判定するステップと、
コンピュータの出力手段が、判定された前記稼働可否を示す情報を出力するステップと
を含むことを特徴とする稼働可否情報出力方法。
【請求項9】
コンピュータに、
物流シミュレーションにおいて複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在した領域を記録した記録情報を取得する機能と、
複数の領域の組み合わせに対して前記複数の搬送設備がそれぞれ当該複数の領域に存在する場合に当該複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報を設定した設定情報を取得する機能と、
前記複数の時間の各時間について、取得された前記記録情報
に記録された前記複数の搬送設備がそれぞれ存在した複数の領域に基づいて、取得された前記設定情報
を検索することにより、
当該各時間に
当該複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を評価した評価値を導出する機能と、
導出された前記評価値の前記物流シミュレーションの時間についての合計を当該物流シミュレーションの時間で除することにより、前記複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率である干渉時間比率を導出する機能と
を実現させるためのプログラム。
【請求項10】
コンピュータに、
物流シミュレーションにおいて複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在した領域を記録した記録情報を取得する機能と、
複数の領域の組み合わせに対して前記複数の搬送設備がそれぞれ当該複数の領域に存在する場合に当該複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報を設定した設定情報を取得する機能と、
取得された前記記録情報と、取得された前記設定情報とに基づいて、前記複数の時間の各時間に前記複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を評価した評価値を導出する機能と、
導出された前記評価値の前記物流シミュレーションの時間についての合計を当該物流シミュレーションの時間で除することにより、前記複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率である干渉時間比率を導出する機能と、
導出された前記干渉時間比率と、前記複数の搬送設備の稼働率の合計との和を、当該複数の搬送設備の稼働率の上限の合計と比較することにより、当該複数の搬送設備の稼働可否を判定する機能と、
判定された前記稼働可否を示す情報を出力する機能と
を実現させるための
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉時間比率出力装置、稼働可否情報出力装置、干渉時間比率出力方法、稼働可否情報出力方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
バックワードシミュレーションで決定した最遅作業時刻の早い順に、フォワードシミュレーションで干渉を回避する搬送設備割当と各設備の作業時刻を決定する2段階解法において、搬送設備割当に遺伝アルゴリズム(GA)を用いる解法は、知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】谷崎隆士他、「干渉するクレーンを有する生産プロセスにおけるスケジューリング問題へのGA法の適用」、第59回自動制御連合講演会、平成28年11月10日-12日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の搬送設備の干渉が発生しないように物流シミュレーションを行う構成を採用した場合、複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在する領域を記録した記録情報から、複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率を導出できるようにはならない。
【0005】
本発明の目的は、複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在する領域を記録した記録情報から、複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率を導出できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、物流シミュレーションにおいて複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在した領域を記録した記録情報を取得する記録情報取得手段と、複数の領域の組み合わせに対して複数の搬送設備がそれぞれ複数の領域に存在する場合に複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報を設定した設定情報を取得する設定情報取得手段と、記録情報取得手段により取得された記録情報と、設定情報取得手段により取得された設定情報とに基づいて、複数の時間の各時間に複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を評価した評価値を導出する評価値導出手段と、評価値導出手段により導出された評価値の物流シミュレーションの時間についての合計を物流シミュレーションの時間で除することにより、複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率である干渉時間比率を導出する干渉時間比率導出手段と、干渉時間比率導出手段により導出された干渉時間比率を出力する出力手段とを備えた干渉時間比率出力装置を提供する。
【0007】
設定情報は、複数の領域の組み合わせに対して、複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報として、複数の搬送設備の干渉の発生の有無を設定した情報であってよい。
【0008】
設定情報は、複数の領域の組み合わせに対して、複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報として、複数の搬送設備の干渉が発生する確率を設定した情報であってよい。
【0009】
設定情報は、複数の領域の組み合わせに対して、複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報として、複数の搬送設備の干渉の発生の有無又は複数の搬送設備の干渉が発生する確率を求める関数を設定した情報であってよい。その場合、関数は、複数の搬送設備の各搬送設備が搬送している製品の属性を変数として用いる、ものであってよい。
【0010】
また、本発明は、物流シミュレーションにおいて複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在した領域を記録した記録情報を取得する記録情報取得手段と、複数の領域の組み合わせに対して複数の搬送設備がそれぞれ複数の領域に存在する場合に複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報を設定した設定情報を取得する設定情報取得手段と、記録情報取得手段により取得された記録情報と、設定情報取得手段により取得された設定情報とに基づいて、複数の時間の各時間に複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を評価した評価値を導出する評価値導出手段と、評価値導出手段により導出された評価値の物流シミュレーションの時間についての合計を物流シミュレーションの時間で除することにより、複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率である干渉時間比率を導出する干渉時間比率導出手段と、干渉時間比率導出手段により導出された干渉時間比率と、複数の搬送設備の稼働率の合計との和を、複数の搬送設備の稼働率の上限の合計と比較することにより、複数の搬送設備の稼働可否を判定する判定手段と、判定手段により判定された稼働可否を示す情報を出力する出力手段とを備えた稼働可否情報出力装置も提供する。
【0011】
更に、本発明は、コンピュータの記録情報取得手段が、物流シミュレーションにおいて複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在した領域を記録した記録情報を取得するステップと、コンピュータの設定情報取得手段が、複数の領域の組み合わせに対して複数の搬送設備がそれぞれ複数の領域に存在する場合に複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報を設定した設定情報を取得するステップと、コンピュータの評価値導出手段が、取得された記録情報と、取得された設定情報とに基づいて、複数の時間の各時間に複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を評価した評価値を導出するステップと、コンピュータの干渉時間比率導出手段が、導出された評価値の物流シミュレーションの時間についての合計を物流シミュレーションの時間で除することにより、複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率である干渉時間比率を導出するステップと、コンピュータの出力手段が、導出された干渉時間比率を出力するステップとを含む干渉時間比率出力方法も提供する。
【0012】
更に、本発明は、コンピュータの記録情報取得手段が、物流シミュレーションにおいて複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在した領域を記録した記録情報を取得するステップと、コンピュータの設定情報取得手段が、複数の領域の組み合わせに対して複数の搬送設備がそれぞれ複数の領域に存在する場合に複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報を設定した設定情報を取得するステップと、コンピュータの評価値導出手段が、取得された記録情報と、取得された設定情報とに基づいて、複数の時間の各時間に複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を評価した評価値を導出するステップと、コンピュータの干渉時間比率導出手段が、導出された評価値の物流シミュレーションの時間についての合計を物流シミュレーションの時間で除することにより、複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率である干渉時間比率を導出するステップと、コンピュータの判定手段が、導出された干渉時間比率と、複数の搬送設備の稼働率の合計との和を、複数の搬送設備の稼働率の上限の合計と比較することにより、複数の搬送設備の稼働可否を判定するステップと、コンピュータの出力手段が、判定された稼働可否を示す情報を出力するステップとを含む稼働可否情報出力方法も提供する。
【0013】
更にまた、本発明は、コンピュータに、物流シミュレーションにおいて複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在した領域を記録した記録情報を取得する機能と、複数の領域の組み合わせに対して複数の搬送設備がそれぞれ複数の領域に存在する場合に複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報を設定した設定情報を取得する機能と、取得された記録情報と、取得された設定情報とに基づいて、複数の時間の各時間に複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を評価した評価値を導出する機能と、導出された評価値の物流シミュレーションの時間についての合計を物流シミュレーションの時間で除することにより、複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率である干渉時間比率を導出する機能とを実現させるためのプログラムも提供する。
【0014】
更にまた、本発明は、コンピュータに、導出された干渉時間比率と、複数の搬送設備の稼働率の合計との和を、複数の搬送設備の稼働率の上限の合計と比較することにより、複数の搬送設備の稼働可否を判定する機能と、判定された稼働可否を示す情報を出力する機能とを更に実現させるためのプログラムも提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在する領域を記録した記録情報から、複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率を導出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態で前提とする2基のクレーンが同じ軌道上に配置されているヤードの例を示した図である。
【
図2】本発明の実施の形態で前提とするヤード内の置場の配置の例を示した図である。
【
図3】本発明の実施の形態における物流成立判定装置の機能構成例を示したブロック図である。
【
図4】本発明の実施の形態で記憶されるシミュレーション結果の具体例を示した図である。
【
図5】本発明の実施の形態で記憶される指し合い設定情報の第1の具体例を示した図である。
【
図6】本発明の実施の形態で記憶される指し合い設定情報の第2の具体例を示した図である。
【
図7】(a),(b)は、本発明の実施の形態で記憶される指し合い設定情報の第3の具体例を示した図である。
【
図8】本発明の実施の形態で用いられる関数について説明するためのクレーンと置場との関係を示した図である。
【
図9】本発明の実施の形態で記憶される指し合い評価情報の第1の具体例を示した図である。
【
図10】本発明の実施の形態で記憶される指し合い評価情報の第2の具体例を示した図である。
【
図11】本発明の実施の形態における物流成立判定装置が指し合い評価情報を生成する際の動作例を示したフローチャートである。
【
図12】本発明の実施の形態における物流成立判定装置が指し合い時間比率を導出する際の動作例を示したフローチャートである。
【
図13】本発明の実施の形態における物流成立判定装置を実現するコンピュータのハードウェア構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
[本実施の形態の背景及び概要]
物流シミュレーション(以下、単に「シミュレーション」という)により、天井クレーン(以下、単に「クレーン」という)の能力の十分性を検討する場合を考える。
【0019】
当然ながら、各クレーンの稼働率は100%未満でなければならない(実際は、休憩、点検等もあるため、約80%以下である必要がある)。
【0020】
ところで、工場によっては、複数基のクレーンが同じ軌道上に配置されている場合がある。
図1は、その一例として、2基のクレーンが同じ軌道上に配置されている場合を示す。
図1では、ヤードαの天井の同じ軌道上にクレーン#1,#2が配置されていることが想定されている。また、設備#1からヤードαへコンベア#2を介して製品が搬入され、ヤードαから設備#2,#3へそれぞれコンベア#1,#3を介して製品が搬出されることが想定されている。
【0021】
さて、このようにクレーン#1,#2を配置した場合、クレーン#1,#2の指し合いを考慮する必要がある。以下、指し合いについて説明する。
【0022】
図1では、ヤードαにおいて、クレーン#1が西に位置し、クレーン#2が東に位置するものとしている。クレーン#1,#2は同じ軌道上を走行するため、クレーン#1はクレーン#2よりも東に位置することはできない。
【0023】
図2は、ヤードα内の置場の配置の例を示した図である。
図2では、ヤードαにおいて、コンベア#1の西に置場#1が、コンベア#1の東でコンベア#2の西に置場#2が、コンベア#2の東でコンベア#3の西に置場#3が、コンベア#3の東に置場#4が、それぞれ配置されていることが想定されている。置場#1~#4がこのように配置されている場合、例えば、クレーン#1が置場#3に存在し、クレーン#2が置場#2に存在することはできない。このように複数のクレーンが干渉し合う状況を指し合いと呼ぶ。
【0024】
物流シミュレータ(以下、単に「シミュレータ」という)は、複数のクレーンの指し合いも考慮し、指し合いが発生しないように、即ち、シミュレーション時間に対する指し合いが発生している時間の比率(以下、「指し合い時間比率」という)が「0」となるように実行されるのが理想的である。そのようなシミュレータの研究は行われているが、高い汎用性があるとは言えず、問題によってとるべき手法が異なる。従って、異なるシミュレーションを実施するごとに高度なシステムを構築することになるが、そのような異なるシミュレーションごとの高度なシステムの構築は現実的ではない。
【0025】
そのため、複数基のクレーンの指し合いは許容し、指し合い時間比率及びクレーンの稼働率の両方を考慮して、シミュレーションの結果を評価することが行われる。例えば、クレーン#1の稼働率が50%、クレーン#2の稼働率が55%であり、クレーン#1,#2の指し合い時間比率は10%であったとする。その10%の時間は、どちらかのクレーンが停止していた、例えばクレーン#1が退避領域西で停止していたと考えれば、指し合いはなかったと考えることができる。しかし、その代わり、クレーン#1の稼働率は60%(=50%+10%)となる。クレーン#1,#2の稼働率上限を80%とすると、クレーン#1,#2の稼働率の和は105%(=60%+55%)となり、クレーン#1,#2の稼働率上限の和160%(=80%+80%)を超えない。従って、クレーン#1,#2は稼動可能であり、物流として成立していると言える。
【0026】
逆に、「Σ{クレーン稼働率上限}<Σ{クレーン稼働率}+指し合い時間比率」が成り立てば、シミュレーション結果は、クレーン負荷が高すぎて稼働できず、物流として成立していないことを示していると言える。
【0027】
上記の例で、指し合い時間比率が60%であったとすると、クレーン#1,#2の稼働率の和は165%(=50%+55%+60%)となり、クレーン#1,#2の稼働率上限の和160%(=80%+80%)を超える。従って、クレーン#1,#2は稼動できず、物流として成立していないと言える。
【0028】
このように、指し合い時間比率の導出はクレーンのシミュレーションにおいて重要である。本実施の形態は、シミュレーション結果から、指し合い時間比率を容易に導出する方法を提案するものである。
【0029】
尚、クレーンの稼働率は、シミュレータ内で各クレーンの稼働時間に基づいて容易に集計できるものとする。ここで、クレーンの稼働時間についても定義は種々考えられるが、荷を持たずに静止している時間だけを停止時間とし、それ以外を稼働時間とするとよい。つまり、上記停止時間を集計し、シミュレーション時間からそれを減算することにより、稼働時間は導出可能である。
【0030】
尚、以上のことは、クレーンに限らず、搬送設備一般に当てはまるが、以下でも、搬送設備としてクレーンを例にとり説明する。
【0031】
[物流成立判定装置の構成]
図3は、本実施の形態における物流成立判定装置10の機能構成例を示したブロック図である。図示するように、物流成立判定装置10は、シミュレーション結果記憶部11と、指し合い設定情報記憶部12と、指し合い評価情報生成部13と、指し合い評価情報記憶部14と、指し合い時間比率導出部15と、稼働可否判定部16と、稼働可否出力部17とを備える。
【0032】
シミュレーション結果記憶部11は、シミュレータによるシミュレーション結果を記憶する。具体的には、シミュレーションにおいて各クレーンがヤードのどの領域に存在したかを時刻ごとに記録したシミュレーション結果を記憶する。本実施の形態では、物流シミュレーションにおいて複数の搬送設備の各搬送設備が複数の時間の各時間に存在した領域を記録した記録情報の一例として、シミュレーション結果を用いている。
【0033】
指し合い設定情報記憶部12は、各クレーンが存在する領域の組み合わせに対して指し合いの発生の可能性を示す情報を設定した指し合い設定情報を記憶する。ここで、指し合いの発生の可能性を示す情報としては、例えば、指し合い発生有無、指し合い発生確率、指し合い発生確率を導出する関数がある。尚、ここでは関数を、指し合い発生確率を導出するものとして説明するが、指し合い発生有無を導出するものとしてもよい。本実施の形態では、複数の領域の組み合わせに対して複数の搬送設備がそれぞれ複数の領域に存在する場合に複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を示す情報を設定した設定情報の一例として、指し合い設定情報を用いている。また、複数の搬送設備の干渉の発生の有無の一例として、指し合い発生有無を用いており、複数の搬送設備の干渉が発生する確率の一例として、指し合い発生確率を用いており、複数の搬送設備の干渉の発生の有無又は複数の搬送設備の干渉が発生する確率を求める関数の一例として、指し合い発生有無又は指し合い発生確率を導出する関数を用いている。
【0034】
指し合い評価情報生成部13は、シミュレーション結果記憶部11からシミュレーション結果を取得し、指し合い設定情報記憶部12から指し合い設定情報を取得する。そして、シミュレーション結果と指し合い設定情報とに基づいて、各時刻における指し合いの発生の可能性を評価した指し合い評価値からなる指し合い評価情報を生成する。まず、指し合い設定情報記憶部12に記憶された指し合い設定情報が、指し合い発生有無を設定したものであるとする。この場合、指し合い評価情報生成部13は、シミュレーション結果記憶部11に記憶された時刻ごとの各クレーンが存在する領域と、指し合い設定情報記憶部12に記憶された指し合い発生有無とに基づいて、各時刻における指し合い発生有無からなる指し合い評価情報を生成する。また、指し合い設定情報記憶部12に記憶された指し合い設定情報が、指し合い発生確率又はこれを導出する関数を設定したものであるとする。この場合、指し合い評価情報生成部13は、シミュレーション結果記憶部11に記憶された時刻ごとの各クレーンが存在する領域と、指し合い設定情報記憶部12に記憶された指し合い発生確率又はこれを導出する関数とに基づいて、各時刻における指し合い発生確率からなる指し合い評価情報を生成する。本実施の形態では、複数の時間の各時間に複数の搬送設備の干渉が発生する可能性を評価した評価値の一例として、指し合い評価値を用いている。また、記録情報を取得する記録情報取得手段、設定情報を取得する設定情報取得手段、記録情報と設定情報とに基づいて評価値を導出する評価値導出手段の一例として、指し合い評価情報生成部13を設けている。
【0035】
指し合い評価情報記憶部14は、指し合い評価情報生成部13により導出された指し合い評価情報を記憶する。
【0036】
指し合い時間比率導出部15は、指し合い評価情報記憶部14に記憶された指し合い評価情報を参照して、各時刻における指し合い評価値をシミュレーション時間について合計し、それをシミュレーション時間で除することで指し合い時間比率を導出する。本実施の形態では、複数の搬送設備の干渉が発生する時間の比率である干渉時間比率の一例として、指し合い時間比率を用いており、評価値の物流シミュレーションの時間についての合計を物流シミュレーションの時間で除することにより干渉時間比率を導出する干渉時間比率導出手段の一例として、指し合い時間比率導出部15を設けている。
【0037】
稼働可否判定部16は、指し合い時間比率導出部15により導出された指し合い時間比率と、クレーン稼働率の全てのクレーンについての合計との和が、クレーン稼働率上限の全てのクレーンについての合計を超えているかどうかを調べることにより、クレーンの稼働可否を判定する。具体的には、指し合い時間比率とクレーン稼働率の合計との和が、クレーン稼働率上限の合計を超えていれば、稼働可否の情報として、クレーンは稼働できない旨を稼働可否出力部17に伝える。また、指し合い時間比率とクレーン稼働率の合計との和が、クレーン稼働率上限の合計以下であれば、稼働可否の情報として、クレーンは稼働できる旨を稼働可否出力部17に伝える。本実施の形態では、干渉時間比率と複数の搬送設備の稼働率の合計との和を複数の搬送設備の稼働率の上限の合計と比較することにより、複数の搬送設備の稼働可否を判定する判定手段の一例として、稼働可否判定部16を設けている。
【0038】
稼働可否出力部17は、稼働可否判定部16により伝えられた稼働可否の情報を、例えば表示機構95に出力する。本実施の形態では、稼働可否を示す情報を出力する出力手段の一例として、稼働可否出力部17を設けている。
【0039】
[具体例」
まず、シミュレーション結果記憶部11に記憶されたシミュレーション結果について説明する。
【0040】
図4は、シミュレーション結果の具体例を示した図である。図示するように、シミュレーション結果は、1分ごとに、クレーン#1,#2が、置場#1~#4及びコンベア#1~#3のどの場所に存在したかを示すものとなっている。
【0041】
次に、指し合い設定情報記憶部12に記憶された指し合い設定情報について説明する。
【0042】
図5は、指し合い設定情報の第1の具体例を示した図である。図示するように、指し合い設定情報の第1の具体例は、横軸に示したクレーン#1が存在する場所と、縦軸に示したクレーン#2が存在する場所とに対応するセルに、指し合い発生有無を設定したものとなっている。図中、セルに「1」が設定されている場合は、指し合い発生が「有」であることを示し、セルに「0」が設定されている場合は、指し合い発生が「無」であることを示す。例えば、クレーン#1が置場#2に存在する場合を考える。この場合、クレーン#2が置場#1、コンベア#1、置場#2に存在すれば、セルには全て「1」が設定されているので、指し合い発生は「有」となる。クレーン#2がコンベア#2、置場#3、コンベア#3、置場#4に存在すれば、セルには全て「0」が設定されているので、指し合い発生は「無」となる。
【0043】
図6は、指し合い設定情報の第2の具体例を示した図である。図示するように、指し合い設定情報の第2の具体例は、横軸に示したクレーン#1が存在する場所と、縦軸に示したクレーン#2が存在する場所とに対応するセルに、指し合い発生確率を設定したものとなっている。図中、セルに「1」が設定されている場合は、指し合い発生確率が1であることを示し、セルに「0」が設定されている場合は、指し合い発生確率が0であることを示し、セルにx(0<x<1)が設定されている場合は、指し合い発生確率がxであることを示す。例えば、クレーン#1,#2が同じ置場#1に存在する場合の指し合い発生確率は「1」である。これは、置場#1にクレーン#1,#2が同時に存在できないことを意味する。また、クレーン#1が置場#1に、クレーン#2がコンベア#1に存在する場合の指し合い発生確率は0.3である。これは、クレーン#2がコンベア#1に存在する場合でも、クレーン#1は置場#1の西側であれば同時に置場#1に存在できることを意味する。
【0044】
図7(a),(b)は、指し合い設定情報の第3の具体例を示した図である。
【0045】
図7(a)に示すように、指し合い設定情報の第3の具体例は、横軸に示したクレーン#1が存在する場所と、縦軸に示したクレーン#2が存在する場所とに対応するセルに、指し合い発生確率を導出する関数を設定したものとなっている。関数は、fij(C1,C2)で表される。ここで、iは縦軸の場所のインデックスであり、jは横軸の場所のインデックスである。また、C1はクレーン#1がその時又は直近に搬送したコイルの種類であり、C2はクレーン#2がその時又は直近に搬送したコイルの種類である。即ち、コイルの種類によって置場内での位置が異なる場合があるので、それを反映させている。関数fij(C1,C2)は、0以上1以下の値をとる。
【0046】
図7(b)に関数fij(C1,C2)の設定例を示す。図中、セルに「1」が設定されている場合は、関数fij(C1,C2)の値が「1」、つまり、指し合い発生確率が「1」であることを示す。セルに「0」が設定されている場合は、関数fij(C1,C2)の値が「0」、つまり、指し合い発生確率が「0」であることを示す。セルに関数fij(C1,C2)が設定されている場合は、関数fij(C1,C2)の値がx(0<x<1)、つまり、指し合い発生確率がxであることを示す。
【0047】
ここで、関数fij(C1,C2)について、クレーン#2が置場#3に存在し、クレーン#1が置場#2に存在する場合の関数f53(C1,C2)を例にとって説明する。
【0048】
図8は、関数f53(C1,C2)について説明するためのクレーンと置場との関係を示した図である。図示するように、置場#2,#3は、コイルの重量によって置場内での位置が異なるように構成されているとする。クレーン#1が小型コイルを置場#2に、クレーン#2が大型コイルを置場#3に置く場合に、2基のクレーンの指し合いが発生する可能性がある。この場合の指し合い確率を0.6とし、これを式で表すと「f53(C1,C2)=0.6」となる。一方で、それ以外の組み合わせの場合、指し合いは発生しない。つまり、クレーン#1が大型コイルを置場#2に、クレーン#2が小型コイルを置場#3に置く場合、クレーン#1が大型コイルを置場#2に、クレーン#2が大型コイルを置場#3に置く場合、クレーン#1が小型コイルを置場#2に、クレーン#2が小型コイルを置場#3に置く場合、指し合いは発生しない。これを式で表すと「f53(C1,C2)=0」となる。
【0049】
尚、ここでは、コイルの種類を関数の変数として用いたが、この限りではない。搬送設備が搬送している製品の如何なる属性を関数の変数として用いてもよい。
【0050】
次に、指し合い評価情報記憶部14に記憶された指し合い評価情報について説明する。
【0051】
図9は、指し合い評価情報の第1の具体例を示した図である。これは、
図5の指し合い設定情報の第1の具体例が指し合い設定情報記憶部12に記憶されている場合の指し合い評価情報の具体例である。図示するように、指し合い評価情報の第1の具体例は、
図4のシミュレーション結果に対し、1分ごとに、クレーンが存在する領域の組み合わせに応じて
図5に設定された指し合い発生有無を追加したものとなっている。
【0052】
図10は、指し合い評価情報の第2の具体例を示した図である。これは、
図6の指し合い設定情報の第2の具体例又は
図7(a),(b)の指し合い設定情報の第3の具体例が指し合い設定情報記憶部12に記憶されている場合の指し合い評価情報の具体例である。図示するように、指し合い評価情報の第2の具体例は、
図4のシミュレーション結果に対し、1分ごとに、クレーンが存在する領域の組み合わせに応じて
図6に設定された指し合い発生確率、又は、クレーンが存在する領域の組み合わせに応じて
図7(a),(b)に設定された関数により導出された指し合い発生確率を追加したものとなっている。
【0053】
[物流成立判定装置の動作]
物流成立判定装置10では、まず、指し合い評価情報生成部13が、シミュレーション結果記憶部11からシミュレーション結果を取得し、指し合い設定情報記憶部12から指し合い設定情報を取得する。そして、シミュレーション結果と、指し合い設定情報とから、指し合い評価情報を生成する。
【0054】
図11は、指し合い評価情報生成部13が指し合い評価情報を生成する際の動作例を示したフローチャートである。尚、この動作に先立ち、シミュレーション結果記憶部11に記憶されたシミュレーション結果のコピーに指し合い評価値の行を追加してその行を空欄としたものが指し合い評価情報として指し合い評価情報記憶部14に記憶されているものとする。
【0055】
図示するように、まず、指し合い評価情報生成部13は、時刻tを1に設定する(ステップ101)。そして、Nにシミュレーション時間を代入する(ステップ102)。
【0056】
次に、指し合い評価情報生成部13は、時刻tをNまで1ずつ増加させながらステップ103乃至ステップ108の処理を実行する。
【0057】
即ち、指し合い評価情報生成部13は、シミュレーション結果を参照して、時刻tにクレーン#1が存在する領域を変数R1に代入し(ステップ103)、時刻tにクレーン#2が存在する領域を変数R2に代入する(ステップ104)。そして、指し合い設定情報を参照して、ステップ103で変数R1に代入された領域を横軸の領域とし、ステップ104で変数R2に代入された領域を縦軸の領域とするセルに設定された指し合いの発生の可能性を示す情報を取得する(ステップ105)。
【0058】
次いで、指し合い評価情報生成部13は、動作に先立って用意していた指し合い評価情報において、ステップ105で取得された指し合いの発生の可能性を示す情報に基づく評価値を、時刻tの指し合い評価値とする(ステップ106)。例えば、指し合いの発生の可能性を示す情報が指し合い発生有無である場合は、指し合い発生有無を示す「0」又は「1」をそのまま指し合い評価情報の時刻tの欄にセットすればよい。指し合いの発生の可能性を示す情報が指し合い発生確率である場合は、指し合い発生確率をそのまま指し合い評価情報の時刻tの欄にセットすればよい。指し合いの発生の可能性を示す情報が指し合い発生確率を導出する関数である場合は、その関数から導出された指し合い発生確率を指し合い評価情報の時刻tの欄にセットすればよい。
【0059】
その後、指し合い評価情報生成部13は、時刻tに1を加算し(ステップ107)、時刻tがN以下であるかどうかを判定する(ステップ108)。そして、時刻tがN以下であると判定すれば、処理をステップ103へ戻し、時刻tがNを超えたと判定すれば、処理を終了する。
【0060】
指し合い評価情報生成部13は、このように指し合い評価情報を生成すると、生成した指し合い評価情報を指し合い評価情報記憶部14に記憶する。
【0061】
次に、物流成立判定装置10では、指し合い時間比率導出部15が、指し合い評価情報記憶部14から指し合い評価情報を取得する。そして、指し合い評価情報から、指し合い時間比率を導出する。
【0062】
図12は、指し合い時間比率導出部15が指し合い時間比率を導出する際の動作例を示したフローチャートである。
【0063】
図示するように、まず、指し合い時間比率導出部15は、時刻tを1に設定し(ステップ151)、指し合い時間の合計値を格納する変数Sumを0に設定する(ステップ152)。そして、Nにシミュレーション時間を代入する(ステップ153)。
【0064】
次に、指し合い時間比率導出部15は、時刻tをNまで1ずつ増加させながらステップ154乃至ステップ157の処理を実行する。
【0065】
即ち、指し合い時間比率導出部15は、指し合い評価情報を参照して、時刻tに対応する指し合い評価値を変数Tempに代入する(ステップ154)。そして、変数Tempに代入された指し合い評価値を変数Sumに加算する(ステップ155)。
【0066】
その後、指し合い時間比率導出部15は、時刻tに1を加算し(ステップ156)、時刻tがN以下であるかどうかを判定する(ステップ157)。そして、時刻tがN以下であると判定すれば、処理をステップ154へ戻し、時刻tがNを超えたと判定すれば、処理をステップ158へ進める。
【0067】
最後に、指し合い時間比率導出部15は、この時点での変数Sumの値をNで除することにより、指し合い時間比率を導出する(ステップ158)。例えば、指し合いの発生の可能性を示す情報が指し合い発生有無である場合に、
図9の指し合い評価情報が生成されたとすると、各時刻の指し合い有無の合計は5となり、それを時間10で割った値は0.5となる。即ち、50%が指し合い時間比率となる。指し合いの発生の可能性を示す情報が指し合い発生確率又はこれを導出する関数である場合に、
図10の指し合い評価情報が生成されたとすると、各時刻の指し合い確率の合計は5.3となり、それを時間10で割った値は0.53となる。即ち、53%が指し合い時間比率となる。
【0068】
指し合い時間比率導出部15は、このように指し合い時間比率を導出すると、導出した指し合い時間比率を稼働可否判定部16に出力する。
【0069】
次いで、稼働可否判定部16は、指し合い時間比率導出部15から取得した指し合い時間比率と、予め保持していた各クレーンの稼働率の合計との和を、予め保持していた各クレーンの稼働率上限の合計と比較することにより、各クレーンの稼働可否を判定する。具体的には、指し合い時間比率と各クレーンの稼働率の合計との和が、各クレーンの稼働率上限の合計を超えていれば、各クレーンは稼働不可と判定する。一方、指し合い時間比率と各クレーンの稼働率の合計との和が、各クレーンの稼働率上限の合計以下であれば、各クレーンは稼働可能と判定する。そして、稼働可否判定部16は、この稼働可否の情報を稼働可否出力部17に伝える。
【0070】
最後に、稼働可否出力部17は、稼働可否判定部16から取得した稼働可否の情報を、例えば表示機構95に出力する。
【0071】
[物流成立判定装置のハードウェア構成]
本実施の形態における物流成立判定装置10は、例えば、汎用のコンピュータにより実現してよい。そこで、物流成立判定装置10がコンピュータ90により実現されるものとして、このコンピュータ90のハードウェア構成について説明する。
【0072】
図13は、コンピュータ90のハードウェア構成例を示す図である。
【0073】
図示するように、コンピュータ90は、例えば汎用のPC(Personal Computer)等により実現され、演算手段であるCPU91と、記憶手段であるメインメモリ92及び磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)93とを備える。ここで、CPU91は、OS(Operating System)やアプリケーションソフトウェア等の各種プログラムを実行し、上述した各処理部を実現する。また、メインメモリ92は、各種プログラムやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、HDD93は、各種プログラムに対する入力データ(例えば、注文情報)や各種プログラムからの出力データ(例えば、スケジュール情報)等を記憶する記憶領域である。
【0074】
また、コンピュータ90は、外部との通信を行うための通信I/F94と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構95と、キーボードやマウス等の入力デバイス96と、記憶媒体に対してデータの読み書きを行うためのドライバ97とを備える。
【0075】
[変形例]
上記では、本実施の形態を、シミュレーション結果が物流として成立するかどうかを判定する物流成立判定装置10として捉えた。この場合、物流成立判定装置10は、稼働可否情報出力装置の一例である。
【0076】
しかしながら、本実施の形態は、指し合い時間比率を導出する指し合い時間比率導出装置として捉えてもよい。指し合い時間比率導出装置は、物流成立判定装置10の構成要素のうち、シミュレーション結果記憶部11、指し合い設定情報記憶部12、指し合い評価情報生成部13、指し合い評価情報記憶部14、及び、指し合い時間比率導出部15を備えるものである。そして、指し合い時間比率導出部15は、導出した指し合い時間比率を、例えば表示機構95に出力するようにしてよい。この場合、指し合い時間比率導出装置は、干渉時間比率出力装置の一例であり、指し合い時間比率導出部15は、干渉時間比率を出力する出力手段の一例である。尚、指し合い時間比率導出装置を実現するコンピュータのハードウェア構成例も、
図13に示したものと同様である。
【0077】
[本実施の形態の効果]
以上述べたように、本実施の形態では、各クレーンが各時間に存在した領域を記録したシミュレーション結果と、複数の領域の組み合わせに対して複数のクレーンがそれぞれ複数の領域に存在する場合に複数のクレーンの指し合いの発生の可能性を示す情報を設定した指し合い設定情報とに基づいて、各時間における複数のクレーンの指し合いの発生の可能性を評価した評価値を導出し、導出された評価値のシミュレーション時間についての合計をシミュレーション時間で除することにより、複数のクレーンの指し合い時間比率を導出するようにした。これにより、各クレーンが各時間に存在する領域を記録したシミュレーション結果から、複数のクレーンの指し合い時間比率を導出できるようになった。
【0078】
また、本実施の形態では、導出された指し合い時間比率と、複数のクレーンの稼働率の合計との和を、複数のクレーンの稼働率の上限の合計と比較することにより、複数のクレーンの稼働可否を判定するようにした。これにより、シミュレーション結果が物流として成立するかどうかを判定することができるようになった。
【符号の説明】
【0079】
10…物流成立判定装置、11…シミュレーション結果記憶部、12…指し合い設定情報記憶部、13…指し合い評価情報生成部、14…指し合い評価情報記憶部、15…指し合い時間比率導出部、16…稼働可否判定部、17…稼働可否出力部