(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-16
(45)【発行日】2023-02-27
(54)【発明の名称】情報処理装置、特定方法、及び特定プログラム
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20230217BHJP
E01C 23/00 20060101ALI20230217BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01C23/00 A
(21)【出願番号】P 2021551678
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(86)【国際出願番号】 JP2020037939
(87)【国際公開番号】W WO2021070842
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/039792
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083840
【氏名又は名称】前田 実
(72)【発明者】
【氏名】小林 翔一
(72)【発明者】
【氏名】永野 隆文
(72)【発明者】
【氏名】倉田 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】辻田 亘
(72)【発明者】
【氏名】岩波 光保
(72)【発明者】
【氏名】審良 善和
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-140608(JP,A)
【文献】特開平8-44421(JP,A)
【文献】特開2008-297764(JP,A)
【文献】特開2014-164322(JP,A)
【文献】特開2006-63537(JP,A)
【文献】湯舟広海、審良善和、小林翔一、佐野恵美子、岩波光保,橋梁の劣化進行過程を考慮した二次元マルコフ連鎖による劣化予測,第37回建設マネジメント問題に関する研究発表・討論会講演集,日本,公益社団法人土木学会,2019年12月02日,pp. 131 - 134
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
E01C 23/00
G06Q 50/00-50/34
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過去に点検された土木構造物の複数の部分のそれぞれの複数の変状に対応する複数の損傷度と前記複数の部分に対応する複数の供用期間とを示す点検結果情報と、前記複数の変状のそれぞれの損傷度の組合せに応じて補修するか否かを示す補修判定情報と
、将来の供用時期に複数の前記組合せのそれぞれの状態である確率を示す存在確率行列の情報と、将来の供用時期に複数の前記組合せのそれぞれの状態が他の組合せの状態に遷移する確率を示す第1の遷移確率行列の情報とを取得する取得部と、
前記点検結果情報に基づいて、前記第1の遷移確率行列が調整された第2の遷移確率行列を算出する算出部と、
前記第2の遷移確率行列と前記存在確率行列とに基づいて、前記複数の変状のそれぞれにおける将来の供用時期の損傷度を示す第1の予測情報を生成する生成部と、
前記補修判定情報と前記第1の予測情報とに基づいて、補修タイミングを特定する特定部と、
を有
する情報処理装置。
【請求項2】
前記第1の遷移確率行列は、複数の前記組合せのそれぞれの状態が遷移する方向が定められており、かつ将来の供用時期に複数の前記組合せのそれぞれの状態が他の組合せの状態に遷移する確率を示す、
請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記特定部は、
前記補修判定情報と前記第1の予測情報とに基づいて、予め決められた期間内の将来の供用時期に補修するか否かを特定し、
前記期間内の将来の供用時期に補修するか否かを示す情報を用いて、予め定められた制約条件を満たし、かつ目的関数によって前記期間におけるライフサイクルコストが最小になるときの補修タイミングを特定する、
請求項1
又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記補修タイミングの補修工法を示す補修工法情報を取得し、
前記特定部は、前記補修工法情報に基づいて、前記補修工法を特定する、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
過去に点検された土木構造物の複数の部分のそれぞれの複数の変状に対応する複数の損傷度と前記複数の部分に対応する複数の供用期間とを示す点検結果情報と、前記複数の変状のそれぞれの損傷度の組合せに応じて補修するか否かを示す補修判定情報と、補修費用を算出するための情報が対応付けられている補修タイミングの補修工法を示す補修工法情報
とを取得する取得部と、
前記補修費用を算出するための情報に基づいて、前記補修費用を算出する算出部
と、
前記点検結果情報に基づいて得られた、前記複数の変状のそれぞれにおける将来の供用時期の損傷度を導くための情報を用いて、前記複数の変状のそれぞれにおける将来の供用時期の損傷度を示す第1の予測情報を生成する生成部と、
前記補修判定情報と前記第1の予測情報とに基づいて、前記補修タイミングを特定する特定部と、
を有する情報処理装置。
【請求項6】
前記補修タイミングを示す情報を出力する出力部をさらに有する、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
過去に点検された土木構造物の複数の部分のそれぞれの複数の変状に対応する複数の損傷度と前記複数の部分に対応する複数の供用期間とを示す点検結果情報と、劣化過程で発生する複数の変状に対応する複数の損傷度と変換後損傷度との対応関係を示す変換情報
と、前記複数の変状のそれぞれの損傷度のうち、前記変換後損傷度に変換されていない損傷度と、前記変換後損傷度との組合せに応じて補修するか否かを示す補修判定情報とを取得する取得部と、
前記複数の変状のうち、前記劣化過程で発生する複数の変状に対応する複数の損傷度を、前記変換情報に基づいて前記変換後損傷度に変換
する変換部と、
前記点検結果情報に基づいて得られた、前記変換後損傷度に変換されていない損傷度に対応する変状と前記劣化過程で発生する複数の変状である第1の変状とにおける将来の供用時期の損傷度を導くための情報を用いて、前記変換後損傷度に変換されていない損傷度に対応する変状における将来の供用時期の損傷度と、前記第1の変状における将来の供用時期の前記変換後損傷度とを示す第2の予測情報を生成
する生成部と、
前記第2の予測情報と
前記補修判定情報とに基づいて、補修タイミングを特定する特定部と、
を有する情報処理装置。
【請求項8】
前記取得部は、特定された補修タイミングの補修工法を示す補修工法情報を取得し、
前記特定部は、前記補修工法情報に基づいて、前記補修工法を特定する、
請求項
7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記劣化過程で発生する複数の変状は、ひび割れ、うき、及び剥離であり、
前記変換後損傷度に変換されていない損傷度に対応する変状は、漏水である、
請求項
7又は
8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記複数の供用期間と前記変換後損傷度に変換されていない損傷度と前記変換後損傷度とに基づいて、複数の近似関数を算出する算出部をさらに有し、
前記生成部は、前記複数の近似関数に基づいて、前記第2の予測情報を生成する、
請求項
7から
9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
算出部をさらに有し、
前記取得部は、将来の供用時期に複数の前記組合せのそれぞれの状態である確率を示す存在確率行列の情報と、将来の供用時期に複数の前記組合せのそれぞれの状態が他の組合せの状態に遷移する確率を示す第1の遷移確率行列の情報とを取得し、
前記算出部は、前記点検結果情報に基づいて、前記第1の遷移確率行列が調整された第2の遷移確率行列を算出し、
前記生成部は、前記第2の遷移確率行列と前記存在確率行列とに基づいて、前記第2の予測情報を生成する、
請求項
7から
9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記特定部は、
前記補修判定情報と前記第2の予測情報とに基づいて、予め決められた期間内の将来の供用時期に補修するか否かを特定し、
前記期間内の将来の供用時期に補修するか否かを示す情報を用いて、予め定められた制約条件を満たし、かつ目的関数によって前記期間におけるライフサイクルコストが最小になるときの補修タイミングを特定する、
請求項
7から
11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
情報処理装置が、
過去に点検された土木構造物の複数の部分のそれぞれの複数の変状に対応する複数の損傷度と前記複数の部分に対応する複数の供用期間とを示す点検結果情報
と、前記複数の変状のそれぞれの損傷度の組合せに応じて補修するか否かを示す補修判定情報と、将来の供用時期に複数の前記組合せのそれぞれの状態である確率を示す存在確率行列の情報と、将来の供用時期に複数の前記組合せのそれぞれの状態が他の組合せの状態に遷移する確率を示す第1の遷移確率行列の情報とを取得し、
前記点検結果情報に基づいて、前記第1の遷移確率行列が調整された第2の遷移確率行列を算出し、
前記第2の遷移確率行列と前記存在確率行列とに基づいて、前記複数の変状のそれぞれにおける将来の供用時期の損傷度を示す第1の予測情報を生成し、
前
記補修判定情報と前記第1の予測情報とに基づいて、補修タイミングを特定
する、
特定方法。
【請求項14】
情報処理装置に、
過去に点検された土木構造物の複数の部分のそれぞれの複数の変状に対応する複数の損傷度と前記複数の部分に対応する複数の供用期間とを示す点検結果情報
と、前記複数の変状のそれぞれの損傷度の組合せに応じて補修するか否かを示す補修判定情報と、将来の供用時期に複数の前記組合せのそれぞれの状態である確率を示す存在確率行列の情報と、将来の供用時期に複数の前記組合せのそれぞれの状態が他の組合せの状態に遷移する確率を示す第1の遷移確率行列の情報とを取得し、
前記点検結果情報に基づいて、前記第1の遷移確率行列が調整された第2の遷移確率行列を算出し、
前記第2の遷移確率行列と前記存在確率行列とに基づいて、前記複数の変状のそれぞれにおける将来の供用時期の損傷度を示す第1の予測情報を生成し、
前
記補修判定情報と前記第1の予測情報とに基づいて、補修タイミングを特定する、
処理を実行させ
る特定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、特定方法、及び特定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
土木構造物の補修工事計画を立案する場合、土木構造物の点検により得た点検データに基づいて補修の要否が決定される場合がある。
例えば、土木構造物は、橋梁である。ここで、非特許文献1には、日本における橋梁の点検要領が記載されている。土木構造物を点検することで、複数の部分に対する複数の変状のそれぞれの損傷度が得られる。しかし、損傷度に基づいて、一意に補修の要否を決定することはできない。理由は、高度な専門性を有する管理者が構造形式、材料、交通量、劣化速度などの条件を基に補修の要否を判断する必要があるからである。また、土木構造物は、様々な環境に設置されている。そのため、判断手順及び判断基準を予め決めることも、困難である。このように、補修の要否を判断することは、難しい。
【0003】
そこで、補修の要否を判定するシステムが提案されている(特許文献1を参照)。特許文献1の構造物補修施工計画支援システムは、補修の要否を示す教師値を含む情報に基づいて作成された学習データを用いて、判別境界線を構築する。構造物補修施工計画支援システムは、判別境界線を用いて補修工事の必要度を演算し、補修工事の必要度に基づいて補修の要否を判定する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「橋梁定期点検要領」国土交通省、平成26年6月
【文献】「道路トンネル定期点検要領」国土交通省、平成31年3月
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のシステムでは、学習データが作成されることで、補修の要否が判定される。補修が判定されることは、補修タイミングが特定されると考えてもよい。
ここで、補修の要否を示す教師値を含む情報は、教師データと呼ぶ。例えば、学習データを作成するための教師データは、管理者によって作成される。教師データを作成することは、管理者の負担を大きくする。そのため、教師データを作成しないで、補修タイミングを特定することが、望ましい。しかし、教師データを作成しないで、補修タイミングをどのように特定するのかが問題である。
【0007】
本開示の目的は、教師データを作成しないで、補修タイミングを特定することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る情報処理装置が提供される。情報処理装置は、過去に点検された土木構造物の複数の部分のそれぞれの複数の変状に対応する複数の損傷度と前記複数の部分に対応する複数の供用期間とを示す点検結果情報と、前記複数の変状のそれぞれの損傷度の組合せに応じて補修するか否かを示す補修判定情報と、将来の供用時期に複数の前記組合せのそれぞれの状態である確率を示す存在確率行列の情報と、将来の供用時期に複数の前記組合せのそれぞれの状態が他の組合せの状態に遷移する確率を示す第1の遷移確率行列の情報とを取得する取得部と、前記点検結果情報に基づいて、前記第1の遷移確率行列が調整された第2の遷移確率行列を算出する算出部と、前記第2の遷移確率行列と前記存在確率行列とに基づいて、前記複数の変状のそれぞれにおける将来の供用時期の損傷度を示す第1の予測情報を生成する生成部と、前記補修判定情報と前記第1の予測情報とに基づいて、補修タイミングを特定する特定部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、教師データを作成しないで、補修タイミングを特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1の情報処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】実施の形態1の情報処理装置が有するハードウェアの構成を示す図である。
【
図3】実施の形態1の点検結果情報の例を示す図である。
【
図4】(A),(B)は、実施の形態1の補修判定情報の例を示す図である。
【
図5】実施の形態1の補修工法情報の例を示す図である。
【
図6】実施の形態1の情報処理装置が実行する処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】(A),(B)は、実施の形態1の複数の近似関数を算出する方法を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1の近似関数を補正する場合の例を示す図である。
【
図9】(A),(B)は、実施の形態1の供用年数と将来の損傷度との対応関係を特定する方法を説明するための図である。
【
図10】実施の形態1の予測情報の例を示す図である。
【
図11】実施の形態1の補修計画情報の例を示す図である。
【
図12】実施の形態2の情報処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図13】実施の形態2の補修判定情報の例を示す図である。
【
図14】実施の形態2の存在確率行列N(x)を示す図である。
【
図15】実施の形態2の遷移確率行列Mを示す図である。
【
図17】実施の形態2の遷移方向が考慮された遷移確率行列Mを示す図である。
【
図18】実施の形態2の情報処理装置が実行する処理の例を示すフローチャートである。
【
図19】実施の形態2の集計方法の例を示す図である。
【
図21】実施の形態3の情報処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図22】実施の形態3の計画情報の例を示す図である。
【
図23】実施の形態3の情報処理装置が実行する処理の例を示すフローチャートである。
【
図24】実施の形態4の情報処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図25】実施の形態4の点検結果情報の例を示す図である。
【
図26】実施の形態4の変換情報の例を示す図である。
【
図27】実施の形態4の予測情報と補修判定情報の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら実施の形態を説明する。以下の実施の形態は、例にすぎず、本開示の範囲内で種々の変更が可能である。また、以下の説明では、土木構造物は、コンクリート橋梁とする。しかし、土木構造物は、鋼橋、トンネル、舗装面などでもよい。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1の情報処理装置の構成を示す機能ブロック図である。情報処理装置100は、特定方法を実行する装置である。情報処理装置100は、記憶部110、取得部120、算出部130、生成部140、特定部150、及び出力部160を有する。
【0013】
ここで、情報処理装置100が有するハードウェアについて説明する。
図2は、実施の形態1の情報処理装置が有するハードウェアの構成を示す図である。情報処理装置100は、プロセッサ101、揮発性記憶装置102、及び不揮発性記憶装置103を有する。
【0014】
プロセッサ101は、情報処理装置100全体を制御する。例えば、プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)などである。プロセッサ101は、マルチプロセッサでもよい。情報処理装置100は、処理回路によって実現されてもよく、又は、ソフトウェア、ファームウェア若しくはそれらの組み合わせによって実現されてもよい。なお、処理回路は、単一回路又は複合回路でもよい。
【0015】
揮発性記憶装置102は、情報処理装置100の主記憶装置である。例えば、揮発性記憶装置102は、RAM(Random Access Memory)である。不揮発性記憶装置103は、情報処理装置100の補助記憶装置である。例えば、不揮発性記憶装置103は、HDD(Hard Disk Drive)、又はSSD(Solid State Drive)である。
【0016】
図1に戻って、情報処理装置100が有する機能ブロックを説明する。
記憶部110は、揮発性記憶装置102又は不揮発性記憶装置103に確保した記憶領域として実現してもよい。
取得部120、算出部130、生成部140、特定部150、及び出力部160の一部又は全部は、プロセッサ101によって実現してもよい。取得部120、算出部130、生成部140、特定部150、及び出力部160の一部又は全部は、プロセッサ101が実行するプログラムのモジュールとして実現してもよい。例えば、プロセッサ101が実行するプログラムは、特定プログラムとも言う。例えば、特定プログラムは、記録媒体に記録されている。
【0017】
記憶部110は、点検結果情報111、補修判定情報112、及び補修工法情報113を記憶する。点検結果情報111は、点検結果データベースと呼んでもよい。補修判定情報112は、補修判定データベースと呼んでもよい。補修工法情報113は、補修工法データベースと呼んでもよい。まず、点検結果情報111を説明する。
【0018】
図3は、実施の形態1の点検結果情報の例を示す図である。点検結果情報111は、過去に点検された土木構造物の複数の部分のそれぞれの複数の変状に対応する複数の損傷度と複数の部分に対応する複数の供用期間とを示す。また、点検結果情報111は、過去に点検された複数の土木構造物の複数の部分のそれぞれの複数の変状に対応する複数の損傷度と複数の部分に対応する複数の供用期間とを示してもよい。
【0019】
詳細には、点検結果情報111は、架設年、点検年、供用年数、管理番号、部分、及び変状毎の損傷度の項目を有する。
架設年の項目は、架設された年を示す。点検年の項目は、点検された年を示す。供用年数の項目は、架設年から、点検が行われた時点である点検実施年までの期間を示す。供用年数の項目は、供用月数の項目又は供用日数の項目に変更されてもよい。ここで、供用年数、供用月数、又は供用日数は、供用期間とも言う。
【0020】
管理番号の項目は、点検された部分の識別子を示す。また、管理番号の項目には、径間の識別子が含まれてもよい。部分の項目は、点検された部分の名称を示す。
変状毎の損傷度の項目は、点検結果を示す。
図3は、変状の例として、ひび割れ、及び剥離鉄筋露出を示している。例えば、変状は、うき、腐食などでもよい。損傷度は、非特許文献1の付録-1の2頁に記載されている損傷度で表される。すなわち、損傷度は、a~eの5段階で表される。損傷度の表現方法は、これに限らない。例えば、損傷度は、数字で表されてもよい。また、例えば、損傷度は、各種センサ、カメラ画像、画像処理技術を用いることで得られる損傷度の区分でもよい。
【0021】
例えば、点検結果情報111は、管理番号“1001-1”に対応する部分“床版”が2015年に点検されたことを示す。そして、点検結果情報111は、点検結果として、ひび割れ損傷度がb、剥離鉄筋露出損傷度がaであることを示している。
【0022】
また、点検結果には、諸元データが含まれてもよい。諸元データとは、土木構造物の設計情報、環境情報などである。例えば、諸元データとは、橋梁長さ、幅員、材料、構造形式、塩害環境区分、交差物、交通量などである。また、諸元データは、点検結果に含まれていなくてもよい。すなわち、諸元データは、独立したデータとして、記憶部110に格納されてもよい。また、諸元データは、土木構造物と対応関係を有してもよい。また、情報処理装置100は、諸元データを検索条件として、点検結果情報111の中の情報を検索する機能、及び点検結果情報111の中から当該検索条件に合致する情報を抽出する機能を有してもよい。
【0023】
次に、補修判定情報112を説明する。
図4(A),(B)は、実施の形態1の補修判定情報の例を示す図である。補修判定情報112は、複数の変状のそれぞれの損傷度の組合せに応じて補修するか否かを示す。補修判定情報112は、次のように表現してもよい。補修判定情報112は、複数の変状のそれぞれの損傷度の組合せに応じて対象部分を補修するか否かを示す。具体的には、
図4(A)の補修判定情報112は、ひび割れ損傷度と剥離鉄筋露出損傷度との対応関係を示している。すなわち、
図4の補修判定情報112は、2つの変状の損傷度の対応関係を示している。補修判定情報112は、3つ以上の変状の損傷度の対応関係を示してもよい。
【0024】
補修判定情報112は、2つの変状のそれぞれの損傷度の組合せに応じて補修するか否かを示す。例えば、ひび割れ損傷度がa、剥離鉄筋露出損傷度がcである場合、補修判定情報112は、補修不要を示す。また、例えば、ひび割れ損傷度がe、剥離鉄筋露出損傷度がaである場合、補修判定情報112は、補修が必要であることを示す。
【0025】
情報処理装置100は、補修判定情報112を用いて、補修の要否を判定できる。すなわち、情報処理装置100は、2つの変状の損傷度の対応関係に基づいて、補修の要否を判定できる。
なお、補修判定情報112は、予め作成される。例えば、高度な専門性を有する管理者は、コンピュータを用いて、補修判定情報112を作成する。また、例えば、管理者は、土木構造物の種類、構造形式、材料の特性などに基づく劣化プロセスの知見、及び補修計画を作成する目的を考慮して、補修判定情報112を作成する。
【0026】
ここで、補修判定情報112は、補修判定マトリクスと呼んでもよい。そのため、補修判定情報112は、複数のセルを含んでいると考えてもよい。
土木構造物毎に補修判定情報が、存在してもよい。例えば、土木構造物が鋼橋である場合、補修判定情報は、劣化の損傷度と腐食の損傷度との対応関係を示す。また、例えば、土木構造物がコンクリート壁面である場合、補修判定情報は、ひび割れの損傷度と漏水の損傷度との対応関係を示す。
【0027】
土木構造物毎の補修判定情報では、土木構造物の構造形式、使用材料、使用環境などの条件により、補修の要否がそれぞれ異なってもよい。例えば、
図4(B)は、剥離鉄筋露出が生じることでコンクリート片の落下によって第3者に被害が発生する可能性がある跨道橋の補修判定情報112aを示している。補修判定情報112aは、剥離鉄筋露出損傷度が小さい場合でも、ひび割れが存在する場合は補修することを示している。
【0028】
次に、補修工法情報113を説明する。
図5は、実施の形態1の補修工法情報の例を示す図である。補修工法情報113は、補修タイミングの補修工法を示す。具体的には、
図5の補修工法情報113は、ひび割れ損傷度と剥離鉄筋露出損傷度との対応関係を示している。補修工法情報113は、補修工法マトリクスと呼んでもよい。そのため、補修工法情報113は、複数のセルを含んでいると考えてもよい。
【0029】
例えば、ひび割れ損傷度がa、剥離鉄筋露出損傷度がcである場合、補修判定情報112が補修不要を示しているので、補修工法情報113には、補修工法が示されていない。また、例えば、ひび割れ損傷度がe、剥離鉄筋露出損傷度がaである場合、ひび割れが進んでいるので、補修工法情報113は、ひび割れ注入工法を示している。また、例えば、ひび割れ損傷度がe、剥離鉄筋露出損傷度がeである場合、ひび割れ及び剥離鉄筋露出が進んでいるので、補修工法情報113は、打替えを示している。
【0030】
補修工法情報113が示す各補修工法には、補修単価、補修効果、所要期間などの情報が対応付けられてもよい。例えば、ひび割れ損傷度がe、剥離鉄筋露出損傷度がaに対応する補修工法に対応付けられている補修効果には、ひび割れ注入工法を実施することで、ひび割れ損傷度がa、剥離鉄筋露出損傷度がaである状態に戻ることが示される。
また、補修工法情報113が示す各セルは、効果の異なる複数の工法を示してもよい。情報処理装置100は、複数の工法の中から1つの補修工法を選択してもよい。
【0031】
取得部120は、点検結果情報111、補修判定情報112、及び補修工法情報113を取得する。例えば、取得部120は、点検結果情報111、補修判定情報112、及び補修工法情報113を記憶部110から取得する。ここで、例えば、点検結果情報111、補修判定情報112、及び補修工法情報113は、クラウドサーバなどの外部装置に格納されてもよい。点検結果情報111、補修判定情報112、及び補修工法情報113が、外部装置に格納されている場合、取得部120は、点検結果情報111、補修判定情報112、及び補修工法情報113を外部装置から取得する。
【0032】
算出部130の機能は、後で説明する。
生成部140は、点検結果情報111に基づいて得られた、複数の変状のそれぞれにおける将来の供用時期の損傷度を導くための情報を用いて、予測情報を生成する。なお、予測情報は、複数の変状のそれぞれにおける将来の供用時期の損傷度を示す。また、生成された予測情報は、第1の予測情報とも言う。
【0033】
特定部150は、補修判定情報112と予測情報とに基づいて、補修タイミングを特定する。また、特定部150は、補修工法情報113に基づいて、補修タイミングの補修工法を特定する。
出力部160は、補修タイミングを示す情報を出力する。
【0034】
次に、情報処理装置100が実行する処理について、フローチャートを用いて説明する。
図6は、実施の形態1の情報処理装置が実行する処理の例を示すフローチャートである。
(ステップS11)取得部120は、点検結果情報111を記憶部110から取得する。
(ステップS12)算出部130は、点検結果情報111に含まれている複数の供用年数と複数の変状に対応する複数の損傷度とに基づいて、複数の近似関数を算出する。ここで、複数の近似関数は、劣化モデルとも言う。また、複数の近似関数は、点検結果情報111に基づいて得られた、複数の変状のそれぞれにおける将来の供用時期の損傷度を導くための情報と考えてもよい。具体的に複数の近似関数を算出する方法を説明する。
【0035】
図7(A),(B)は、実施の形態1の複数の近似関数を算出する方法を説明するための図である。
図7(A)の縦軸は、ひび割れ損傷度を示している。説明の便宜上、
図7(A)の縦軸は、a~eを示している。しかし、
図7(A)の縦軸は、1~5に変形してもよい。
図7(A)の横軸は、供用年数を示している。
【0036】
図7(A)は、点検結果情報111に含まれている供用年数とひび割れ損傷度との対応関係を示している。すなわち、
図7(A)の各点は、点検結果情報111の各レコードに対応している。算出部130は、各点に近似する近似関数を算出する。算出部130は、公知の手法を用いて、近似関数を算出してもよい。例えば、算出部130は、最小二乗近似による1次近似直線を算出する。
【0037】
図7(B)の縦軸は、剥離鉄筋露出損傷度を示している。説明の便宜上、
図7(B)の縦軸は、a~eを示している。しかし、
図7(B)の縦軸は、1~5に変形してもよい。
図7(B)の横軸は、供用年数を示している。
図7(B)は、点検結果情報111に含まれている供用年数と剥離鉄筋露出損傷度との対応関係を示している。すなわち、
図7(B)の各点は、点検結果情報111の各レコードに対応している。算出部130は、各点に近似する近似関数を算出する。
【0038】
このように、算出部130は、点検結果情報111に含まれている供用年数とひび割れ損傷度とに基づいて、式(1)を算出する。なお、xは、供用年数を示す。y1は、ひび割れ損傷度を示す。
【0039】
【0040】
また、算出部130は、点検結果情報111に含まれている供用年数と剥離鉄筋露出損傷度とに基づいて、式(2)を算出する。なお、y2は、剥離鉄筋露出損傷度を示す。
【0041】
【0042】
また、算出部130は、近似関数が点上に存在するように、近似関数を補正してもよい。
【0043】
図8は、実施の形態1の近似関数を補正する場合の例を示す図である。算出部130は、式(1)が点上に存在するように、式(1)の傾きと切片とのうちの少なくとも1つを補正する。
【0044】
次の処理を実行する前に、取得部120は、以下の処理の対象である土木構造物を示す情報を取得してもよい。例えば、取得部120は、ユーザの入力操作により、当該情報を取得する。また、情報処理装置100は、点検結果情報111に含まれている管理番号順に以下の処理を実行してもよい。以下の説明では、管理番号順に処理される場合を説明する。
【0045】
(ステップS13)生成部140は、複数の近似関数に基づいて、予測情報を生成する。予測情報の生成方法を具体的に説明する。
まず、生成部140は、複数の近似関数を用いて、供用年数と将来の損傷度との対応関係を特定する。
【0046】
図9(A),(B)は、実施の形態1の供用年数と将来の損傷度との対応関係を特定する方法を説明するための図である。
図9(A)は、供用年数と将来のひび割れ損傷度との対応関係を特定する方法を説明するための図である。生成部140は、式(1)を用いて、供用年数と将来のひび割れ損傷度との対応関係を特定する。
【0047】
図9(B)は、供用年数と将来の剥離鉄筋露出損傷度との対応関係を特定する方法を説明するための図である。生成部140は、式(2)を用いて、供用年数と将来の剥離鉄筋露出損傷度との対応関係を特定する。
【0048】
図9(A),(B)の点線が示すように、生成部140は、切り上げ、四捨五入などを行い、近似直線によって得られる損傷度の区分を1つの区分に決定してもよい。例えば、
図9(B)の場合、供用年数“25”~“40”が損傷度aに決定される。
【0049】
このように、生成部140は、複数の近似関数を用いて、供用年数と将来の損傷度との対応関係を特定する。生成部140は、供用年数と将来の損傷度との対応関係を用いて、予測情報を生成する。
【0050】
図10は、実施の形態1の予測情報の例を示す図である。予測情報200は、管理番号、年度、供用年数、ひび割れ損傷度、及び剥離鉄筋露出損傷度の項目を有する。また、供用年数の項目は、将来の供用時期と表現してもよい。
予測情報200は、管理番号“1001-1”の部分の将来の損傷度を示している。予測情報200は、5年毎の損傷度を示している。しかし、予測情報200は、1年毎の損傷度を示してもよい。予測情報200の供用年数は、現時点の年度(
図10では、2015年)を0年と表記し、計画最終年(例えば、2070年)から現時点の年度を減算した年までの損傷度を示してもよい。
【0051】
(ステップS14)特定部150は、補修判定情報112と予測情報200とに基づいて、補修タイミングを特定する。例えば、特定部150は、補修判定情報112と予測情報200とに基づいて、2035年が補修タイミングであることを特定する。
【0052】
(ステップS15)特定部150は、補修タイミングにおける、ひび割れ損傷度及び剥離鉄筋露出損傷度と、補修工法情報113とに基づいて、補修工法を特定する。例えば、特定部150は、2035年における、ひび割れ損傷度“c”及び剥離鉄筋露出損傷度“c”と、補修工法情報113とに基づいて、断面修復(小)を特定する。
このように、情報処理装置100は、補修工法情報113を用いることで、補修タイミングの補修工法を特定できる。
(ステップS16)生成部140は、特定部150が特定した情報に基づいて、補修計画情報を生成する。ここで、補修計画情報を例示する。
【0053】
図11は、実施の形態1の補修計画情報の例を示す図である。補修計画情報210は、管理番号、補修実施年、部分、補修工法、補修費用、補修実施時のひび割れ損傷度、及び補修実施時の剥離鉄筋露出損傷度の項目を有する。
図11の補修計画情報210は、管理番号“1001-1”の部分の補修タイミングが2035年であることを示している。
【0054】
補修単価、補修効果、所要期間などの情報が、補修工法情報113が示す各補修工法に対応付けられている場合、生成部140は、補修費用、所要期間などを補修計画情報210に含めてもよい。言い換えれば、補修工法情報113が示す補修タイミングの補修工法に、補修費用を算出するための情報が対応付けられている場合、生成部140は、補修費用などを補修計画情報210に含めてもよい。また、費用は、補修費用に限らない。例えば、損傷が生じた状態で供用を継続する場合に、損傷により生じうる損害の大きさと確率に基づいて、対策のための費用、損害の補償のための費用などが発生するとしてもよい。
【0055】
補修費用の算出方法を説明する。算出部130は、補修費用を算出するための情報に基づいて、補修費用を算出する。詳細には、算出部130は、式(3)を用いて補修費用を算出する。
【0056】
【0057】
なお、例えば、補修単価は、1平方メートル当たりの補修に要する費用である。数量は、1平方メートル当たりの補修対象数である。補修単価には、足場架設などの経費が含まれてもよい。数量は、面積(=土木構造物の幅×長さ)でもよい。損傷が土木構造物の面積に占める割合を示す情報が記憶部110に格納されている場合、生成部140は、数量に当該割合を乗じても良い。
【0058】
(ステップS17)出力部160は、補修計画情報210を出力する。例えば、出力部160は、補修計画情報210をディスプレイに出力する。また、例えば、出力部160は、情報処理装置100に接続可能な外部装置に補修計画情報210を出力する。また、例えば、出力部160は、印刷装置を介して、紙媒体に補修計画情報210を出力する。
このように、情報処理装置100は、補修計画情報210を出力することで、ユーザに補修タイミングを知らせることができる。また、補修費用が算出された場合、情報処理装置100は、補修費用もユーザに知らせることができる。
【0059】
このように、実施の形態1によれば、情報処理装置100は、教師データを作成しないで、補修タイミングを特定できる。
また、情報処理装置100は、上記の技術を用いて、補修を実行した後の将来の再劣化を補修するタイミング及び補修工法を特定してもよい。さらに、補修前の劣化速度と補修後の劣化速度が異なる場合、情報処理装置100は、劣化モデルのパラメータを調整してもよい。
【0060】
実施の形態2.
次に、実施の形態2を説明する。実施の形態2では、実施の形態1と相違する事項を主に説明する。そして、実施の形態2では、実施の形態1と共通する事項の説明を省略する。実施の形態2は、
図1~5を参照する。
図12は、実施の形態2の情報処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示される構成と同じ
図12の構成は、
図1に示される符号と同じ符号を付している。情報処理装置100aは、算出部130a、生成部140a、及び特定部150aを有する。算出部130a、生成部140a、及び特定部150aの機能については、後で説明する。
【0061】
図13は、実施の形態2の補修判定情報の例を示す図である。実施の形態2の補修判定情報112は、変状マトリクスと呼んでもよい。補修判定情報112は、複数のセルを含んでいると考えてもよい。
図13では、補修判定情報112が示す内容は、省略している。
ここで、例えば、ひび割れ損傷度と剥離鉄筋露出損傷度との対応関係を示すセルは、(a,a)と表現する。
【0062】
次に、存在確率を説明する。存在確率は、x年後に、あるセルに存在している確率である。例えば、x+1年後に、(c,c)に存在する存在確率は、式(4)を用いて表現される。
【0063】
【0064】
Pは、存在確率を示している。P(cc,x+1)の“cc”は、(c,c)を簡略化したものである。また、P(cc,x+1)の“cc”は、状態を示している。P(cc,x+1)の“x+1”は、年を示している。よって、例えば、P(cc,x+1)は、x+1年後に、(c,c)に存在する存在確率を示している。また、例えば、P(ca,x)は、x年後に、(c,a)に存在する存在確率を示している。
【0065】
pは、遷移確率を示している。遷移確率は、隣接するセルに遷移する確率である。p(cc,dc)の“cc”は、遷移元状態を示している。p(cc,dc)の“dc”は、遷移先状態を示している。よって、例えば、p(cc,dc)は、(c,c)から(d,c)に遷移する確率を示している。また、例えば、p(cc,ce)は、(c,c)から(c,e)に遷移する確率を示している。
【0066】
次に、変状マトリクスの各セルのx年における存在確率の集合である存在確率行列N(x)を説明する。存在確率行列N(x)は、将来の供用時期に、複数の変状のそれぞれの損傷度の複数の組合せのそれぞれの状態である確率を示す。存在確率行列N(x)は、次のように表現してもよい。存在確率行列N(x)は、将来の供用時期に、複数の変状のそれぞれの損傷度の複数の組合せのそれぞれの状態が遷移せずに変わらない確率を示す。存在確率行列N(x)を具体的に示す。
【0067】
図14は、実施の形態2の存在確率行列N(x)を示す図である。
次に、変状マトリクスの各セルに対応する状態の遷移確率の集合である遷移確率行列Mを説明する。遷移確率行列Mは、将来の供用時期に、複数の変状のそれぞれの損傷度の複数の組合せのそれぞれの状態が他の組合せの状態に遷移する確率を示す。遷移確率行列Mを具体的に示す。
【0068】
図15は、実施の形態2の遷移確率行列Mを示す図である。
x+1年の存在確率行列N(x+1)は、存在確率行列N(x)と遷移確率行列Mとを用いて、式(5)のように表現される。
【0069】
【0070】
式(5)を変形することで、式(6)が得られる。式(6)は、劣化モデルと表現してもよい。
【0071】
【0072】
このように、遷移確率行列と存在確率行列の初期値を用いることで、任意の供用年数の存在確率行列が算出できる。
ここで、一般的に、損傷は、補修がされない限り自然に回復しない。そのため、変状マトリクスにおける遷移方向は、決まっている。
【0073】
図16は、実施の形態2の遷移方向を示す図である。
図16で示すように、遷移方向は、決まっている。そこで、
図16が示す遷移方向が考慮された遷移確率行列Mを示す。
【0074】
図17は、実施の形態2の遷移方向が考慮された遷移確率行列Mを示す図である。例えば、
図15のp(ac,aa)の場合、状態は、(a,c)から(a,a)に遷移しない。そのため、
図17のp(ac,aa)は、0になる。
このように、遷移確率行列Mには、遷移方向が考慮される。よって、遷移確率行列Mは、次のように表現できる。遷移確率行列Mは、複数の変状のそれぞれの損傷度の複数の組合せのそれぞれの状態が遷移する方向が定められており、かつ将来の供用時期に複数の組合せのそれぞれの状態が他の組合せの状態に遷移する確率を示す。
【0075】
なお、劣化モデルは、未来の挙動は現在の値だけで決定され、過去の挙動とは関係しないという性質であるマルコフ性を保つと仮定してよい。すなわち、劣化モデルは、供用年数によらず遷移確率行列Mを用いることができる。
【0076】
ここで、存在確率行列N(x)の情報と遷移確率行列Mの情報とは、記憶部110に格納されている。また、存在確率行列N(x)の情報と遷移確率行列Mの情報は、クラウドサーバなどの外部装置に格納されてもよい。
【0077】
次に、情報処理装置100aが実行する処理について、フローチャートを用いて説明する。
図18は、実施の形態2の情報処理装置が実行する処理の例を示すフローチャートである。
(ステップS21)取得部120は、点検結果情報111を記憶部110から取得する。また、取得部120は、存在確率行列N(x)の情報と遷移確率行列Mの情報を記憶部110から取得する。ここで、当該遷移確率行列Mは、第1の遷移確率行列とも言う。
(ステップS22)算出部130aは、ひび割れ損傷度と剥離鉄筋露出損傷度との組合せを、予め決められた期間単位に集計する。集計の例を示す。
【0078】
図19は、実施の形態2の集計方法の例を示す図である。集計表300は、ひび割れ損傷度と剥離鉄筋露出損傷度との組合せと、期間単位との関係を示している。
図19の期間単位は、5年である。理由は、5年周期で点検するからである。期間単位は、5年に限らない。
算出部130aは、期間単位毎に、横方向の合計が1になるように、件数に基づいて割合を算出する。例えば、供用年数が0~5年である場合、ひび割れ損傷度“a”と剥離鉄筋露出損傷度“a”との組合せの件数の割合は、0.8である。
【0079】
算出部130aは、点検結果情報111のレコードを増やして、ひび割れ損傷度と剥離鉄筋露出損傷度との組合せを期間単位に集計してもよい。例えば、算出部130aは、管理番号“1001-1”のレコードを10件、複製する。算出部130aは、複製されたレコードを含めて、集計処理を実行する。
【0080】
(ステップS23)算出部130aは、点検結果情報111に基づいて遷移確率行列Mが調整された遷移確率行列Mを算出する。詳細には、算出部130aは、ステップS22で算出された割合の値と、式(6)の存在確率行列N(x)の値とが近似するように、式(6)の遷移確率行列Mの値を調整する。なお、遷移確率行列Mは、
図17の遷移確率行列Mである。
【0081】
例えば、算出部130aは、行列演算及び演算ライブラリを用いて、遷移確率行列Mの値を調整できる。また、例えば、算出部130aは、制約条件の下で最小二乗法を用いて二乗誤差の総和を最小とすることで、遷移確率行列Mの値を調整できる。なお、例えば、制約条件は、“それぞれの遷移確率は0以上1以下、かつ、遷移を許していない方向の遷移確率は0、かつ、あるセルから遷移する確率と残留する確率の合計が1”である。
【0082】
また、遷移確率行列Mの値は、Microsoft(登録商標)のExcelで提供されている機能であるソルバによって、調整されてもよい。例えば、ソルバを用いて、最小二乗誤差が最小となるように遷移確率行列Mの値が調整される。
【0083】
ここで、調整された遷移確率行列Mは、第2の遷移確率行列とも言う。また、調整された遷移確率行列Mは、点検結果情報111に基づいて得られた、複数の変状のそれぞれにおける将来の供用時期の損傷度を導くための情報と考えてもよい。
【0084】
(ステップS24)算出部130aは、式(7)を用いて、供用年数毎の存在確率を算出する。なお、式(7)のMは、ステップS23で調整された遷移確率行列である。また、x(0)は、現在の年を示している。すなわち、x(0)は、ステップS24の処理を実行している年を示している。よって、N(x(0))は、現時点の存在確率行列を示している。
【0085】
【0086】
(ステップS25)生成部140aは、予測情報を生成する。予測情報を例示する。
図20は、実施の形態2の予測情報を示す図である。予測情報310は、算出部130aの算出結果を示す情報である。供用年数は、現時点の年度を0年と表記し、0年から、計画最終年から現時点の年度を減算した年までの損傷度を示してもよい。
このように、生成部140aは、調整された遷移確率行列Mと存在確率行列N(x)とに基づいて、予測情報310を生成する。
【0087】
(ステップS26)特定部150aは、予測情報310を用いて、供用年数毎の状態を特定する。例えば、特定部150aは、最大値の状態を特定する。例えば、特定部150aは、供用年数“35年”で最大値の(d,c)を特定する。
また、特定部150aは、最大値が閾値以上である場合、当該最大値の状態を特定してもよい。さらに、特定部150aは、存在確率行列の平均値又は中央値に基づいて状態を特定してもよい。
【0088】
(ステップS27)特定部150aは、補修判定情報112と予測情報310とに基づいて、補修タイミングを特定する。例えば、特定部150aは、補修判定情報112と予測情報310とに基づいて、供用年数“35年”が補修タイミングであることを特定する。
(ステップS28)特定部150aは、補修タイミングにおける、ひび割れ損傷度及び剥離鉄筋露出損傷度と、補修工法情報113とに基づいて、補修工法を特定する。
【0089】
(ステップS29)生成部140aは、特定部150aが特定した情報に基づいて、補修計画情報210を生成する。
(ステップS30)出力部160は、補修計画情報210を出力する。
【0090】
ここで、例えば、管理者は、予測情報310を参考にして、コンピュータを用いて、補修判定情報112及び補修工法情報113を作成してもよい。例えば、右方向の遷移確率が大きい、かつ剥離鉄筋露出による被害を抑制しなければならない環境である場合、管理者は、軽微な損傷段階を補修必要とした補修判定情報112を作成する。また、例えば、管理者は、予測情報310を参考にして、剥離鉄筋露出の急速な進行を抑制するための補修判定情報112を作成する。また、例えば、ひとたび損傷が発生することで、劣化の進行速度が著しく速くなる土木構造物が存在する。管理者は、予測情報310を参考にして、当該土木構造物に対応する補修判定情報112を作成してもよい。
複数の変状のそれぞれの劣化の進行速度は、土木構造物の劣化要因の違いにより変わる。そのため、管理者は、複数の変状のそれぞれの劣化の進行速度を考慮して、補修判定情報112及び補修工法情報113を作成してもよい。
【0091】
また、例えば、出力部160は、下方向の遷移確率が大きい場合、コンクリートの疲労が大きいことを出力してもよい。また、例えば、出力部160は、右方向の遷移確率が大きい場合、アルカリ骨材反応の影響が大きいことを出力してもよい。
【0092】
このように、実施の形態2によれば、情報処理装置100aは、教師データを作成しないで、補修タイミングを特定できる。
遷移確率行列Mには、遷移方向が考慮されている。情報処理装置100aは、遷移確率行列Mを用いることで、予防保全の効果が高い補修計画情報210を生成できる。
【0093】
また、算出部130aは、存在確率行列N(x)の各セルの値に土木構造物数を乗じてもよい。そして、出力部160は、各セルに存在する構造物の数を劣化状態の予測結果として出力してもよい。これにより、ユーザは、劣化状態の予測結果を参照することで、任意の供用年数で補修が必要となる土木構造物の数を認識できる。
【0094】
また、生成部140aは、複数の土木構造物の幅及び長さの平均値に、補修工法情報113に対応付けられている補修単価を乗じることで得られる補修費用を補修計画情報210に含めてもよい。
【0095】
実施の形態3.
次に、実施の形態3を説明する。実施の形態3では、実施の形態1と相違する事項を主に説明する。そして、実施の形態3では、実施の形態1と共通する事項の説明を省略する。実施の形態3は、
図1~20を参照する。
図21は、実施の形態3の情報処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示される構成と同じ
図21の構成は、
図1に示される符号と同じ符号を付している。情報処理装置100bは、生成部140b、特定部150b、及び出力部160bを有する。生成部140b、特定部150b、及び出力部160bの機能については、後で説明する。
【0096】
実施の形態1,2では、補修タイミングが特定された。実施の形態3では、生成部140bは、補修の有無に関わらず、計画期間終了年までの計画を示す計画情報を生成する。そのため、特定部150bは、補修判定情報112と予測情報とに基づいて、予め決められた期間内の将来の供用時期に補修するか否かを特定する。なお、予め決められた期間は、上記の計画期間である。また、期間内の将来の供用時期に補修するか否かを示す情報は、計画情報である。計画情報を例示する。
【0097】
図22は、実施の形態3の計画情報の例を示す図である。計画情報400は、補修計画1次リストと呼んでもよい。
図22の計画情報400は、管理番号“1001-1”の計画を示す。
例えば、生成部140bは、予測情報200と補修判定情報112と補修工法情報113とに基づいて、計画情報400を生成する。また、例えば、生成部140bは、予測情報310と補修判定情報112と補修工法情報113とに基づいて、計画情報400を生成する。
【0098】
次に、情報処理装置100bが実行する処理について、フローチャートを用いて説明する。
図23は、実施の形態3の情報処理装置が実行する処理の例を示すフローチャートである。
(ステップS31)生成部140bは、複数の土木構造物の計画情報を生成する。生成方法は、上述の通りである。生成部140bは、複数の土木構造物の計画情報を記憶部110に格納する。
【0099】
(ステップS32)特定部150bは、1つの土木構造物の計画情報を取得する。特定部150bは、計画情報を用いて、予め定められている制約条件を満たし、かつ目的関数によって計画期間におけるライフサイクルコストが最小になるときの補修タイミングを特定する。例えば、制約条件は、1年当たりの予算の上限、許容可能な損傷度の上限などである。また、特定するための演算アルゴリズムとして、特定部150bは、最急降下法、遺伝的アルゴリズムなどの最適化手法を用いてもよい。
特定部150bは、同様に、全ての土木構造物に対して、補修タイミングを特定する。
(ステップS33)出力部160bは、全ての土木構造物の補修タイミングを出力する。
【0100】
実施の形態3によれば、情報処理装置100bは、制約条件が考慮された補修タイミングを特定できる。例えば、実施の形態1では、2035年が補修タイミングに特定された。しかし、実施の形態3では、制約条件が考慮されることで、2035年以降の年が補修タイミングに特定される。
【0101】
実施の形態4.
次に、実施の形態4を説明する。実施の形態4では、実施の形態1~3と相違する事項を主に説明する。そして、実施の形態4では、実施の形態1~3と共通する事項の説明を省略する。実施の形態4は、
図1~23を参照する。
【0102】
図24は、実施の形態4の情報処理装置の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示される構成と同じ
図24の構成は、
図1に示される符号と同じ符号を付している。情報処理装置100cは、記憶部110c、取得部120c、算出部130c、生成部140c、特定部150c、及び変換部170を有する。
【0103】
取得部120c、算出部130c、生成部140c、特定部150c、及び変換部170の一部又は全部は、プロセッサ101又は処理回路によって実現してもよい。取得部120c、算出部130c、生成部140c、特定部150c、及び変換部170の一部又は全部は、プロセッサ101が実行するプログラムのモジュールとして実現してもよい。
【0104】
記憶部110cは、補修判定情報112cを記憶してもよい。補修判定情報112cは、後で例示される。
記憶部110cは、変換情報114を記憶してもよい。変換情報114の詳細については、後で説明する。なお、変換情報114は、変換データベースと呼んでもよい。
【0105】
取得部120cは、変換情報114を取得する。例えば、取得部120cは、変換情報114を記憶部110cから取得する。ここで、変換情報114は、外部装置に格納されてもよい。変換情報114が外部装置に格納されている場合、取得部120cは、変換情報114を外部装置から取得する。
算出部130c、生成部140c、及び特定部150cの機能については、後で説明する。
【0106】
変換部170は、点検結果情報111が示す複数の変状のうち、劣化過程で発生する複数の変状に対応する複数の損傷度を、1つの損傷度(以下、変換後損傷度)に変換する。言い換えれば、変換部170は、点検結果情報111が示す複数の変状のうち、同一の劣化過程で時系列に沿って発生する複数の変状に対応する複数の損傷度を変換後損傷度に変換する。
【0107】
ここで、劣化過程で発生する複数の変状について、説明する。例えば、土木構造物が無筋覆工コンクリートである場合、劣化過程で発生する複数の変状は、ひび割れ、うき、及び剥離である。ひび割れ、うき、及び剥離が発生する過程を詳細に説明する。最初にひび割れが発生する。ひび割れが徐々に拡大し、亀甲状になる。うきが、ひびが閉合した領域に発生する。地震などが原因で、うきの状態から剥離が発生する。なお、非特許文献2には、ひび割れ、うき、剥離のそれぞれの損傷度を調査することが記載されている。
【0108】
さらに、劣化過程で発生する複数の変状の具体例を説明する。例えば、土木構造物が鋼橋である場合、劣化過程で発生する複数の変状は、防食機能の劣化、及び腐食である。また、例えば、土木構造物がコンクリート橋である場合、劣化過程で発生する複数の変状は、腐食、ひび割れ、うき、はく離、及び鉄筋露出である。
【0109】
次に、変換部170が実行する処理を具体的に説明する。
図25は、実施の形態4の点検結果情報の例を示す図である。点検結果情報111には、ひび割れ、うき、剥離、及び漏水の損傷度が含まれている。変換部170は、ひび割れ、うき、及び剥離の損傷度を変換後損傷度に変換する。変換処理では、変換情報114が用いられる。ここで、変換情報114の具体例を示す。
【0110】
図26は、実施の形態4の変換情報の例を示す図である。変換情報114は、取得部120cにより取得された情報である。変換情報114は、劣化過程で発生する複数の変状に対応する複数の損傷度と変換後損傷度との対応関係を示す情報である。言い換えれば、変換情報114は、劣化過程で発生する複数の変状に対応する複数の損傷度を1つの損傷度に変換する際に用いられる情報である。
【0111】
変換情報114は、劣化過程の観点に基づいて作成される。例えば、うきの損傷度b及び剥離の損傷度bは、ひび割れの損傷度bよりも劣化が進んだ状態を示している。そのため、うきの損傷度及び剥離の損傷度が、損傷度bである場合、変換後損傷度は、損傷度cに対応させる。また、複数の変状に対応する複数の損傷度のうち最も劣化が進んでいる損傷度が、変換後損傷度に対応すると考えてもよい。
【0112】
変換部170は、変換情報114に基づいて、劣化過程で発生する複数の変状に対応する複数の損傷度を変換後損傷度に変換する。例えば、ひび割れの損傷度が損傷度cであり、うきの損傷度が損傷度bであり、剥離の損傷度が損傷度bである場合(すなわち、点検結果情報111の管理番号1001-1のレコードの場合)、変換部170は、変換情報114に基づいて、ひび割れ、うき、及び剥離の損傷度を損傷度c(すなわち、変換後損傷度)に変換する。
【0113】
また、変換部170は、点検結果情報111が示す複数の変状の損傷度のうち、劣化過程で発生する複数の変状に含まれない変状の損傷度を、変換後損傷度に変換しない。例えば、変換部170は、漏水の損傷度を変換後損傷度に変換しない。
このように、劣化過程で発生する複数の変状に対応する複数の損傷度が変換後損傷度に変換される。
【0114】
次に、補修タイミングの特定処理を説明する。
例えば、算出部130cは、点検結果情報111に含まれている複数の供用年数と、変換後損傷度に変換されていない損傷度と、変換後損傷度とに基づいて、複数の近似関数を算出する。例えば、当該複数の近似関数の算出では、
図7(A)の縦軸が変換後損傷度に置き換わり、
図7(B)の縦軸が漏水の損傷度に置き換わると考えてもよい。
【0115】
生成部140cは、複数の近似関数に基づいて、予測情報を生成する。複数の近似関数は、点検結果情報111に基づいて得られた、変換後損傷度に変換されていない損傷度に対応する変状と劣化過程で発生する複数の変状とにおける将来の供用時期の損傷度を導くための情報である。ここで、劣化過程で発生する複数の変状は、第1の変状と呼ぶ。当該予測情報は、変換後損傷度に変換されていない損傷度に対応する変状における将来の供用時期の損傷度と、第1の変状における将来の供用時期の変換後損傷度とを示す。また、当該予測情報は、第2の予測情報とも言う。
【0116】
次に、生成された予測情報と補修判定情報112cを例示する。
図27は、実施の形態4の予測情報と補修判定情報の例を示す図である。予測情報200cは、生成部140cにより生成された予測情報である。
例えば、補修判定情報112cは、記憶部110cに格納される。補修判定情報112cは、点検結果情報111が示す複数の変状のそれぞれの損傷度のうち、変換後損傷度に変換されていない損傷度と、変換後損傷度との組合せに応じて補修するか否かを示す。例えば、
図27の補修判定情報112cは、漏水の損傷度と変換後損傷度との組合せに応じて補修するか否かを示している。
【0117】
特定部150cは、予測情報200cと補修判定情報112cとに基づいて、補修タイミングを特定する。
このように、情報処理装置100cは、複数の変状に対応する複数の損傷度が変換後損傷度に変換された後、実施の形態1と同様の処理により、補修タイミングを特定することができる。
【0118】
また、補修工法情報113は、補修判定情報112cと同様に、変換後損傷度と漏水の損傷度との組合せに応じた補修工法を示してもよい。特定部150cは、補修工法情報113に基づいて、補修工法を特定することができる。
【0119】
実施の形態4によれば、情報処理装置100cは、複数の変状に対応する複数の損傷度を変換後損傷度に変換し、変換後損傷度を用いて、劣化モデル(すなわち、近似関数)を算出する。当該劣化モデルは、複数の変状に対応する複数の損傷度に基づく劣化モデルよりも次元が小さい。次元が多次元から2次元に縮小されることで、補修判定情報及び補修工法情報が、容易に定められる。また、次元が多次元から2次元に縮小されることで、補修判定情報及び補修工法情報が、紙媒体又は画面に表示されることも容易である。
【0120】
また、情報処理装置100cは、複数の変状に対応する複数の損傷度が変換後損傷度に変換された後、実施の形態2と同様の処理により、補修タイミングを特定することもできる。例えば、取得部120cは、存在確率行列N(x)の情報と遷移確率行列Mの情報とを取得する。存在確率行列N(x)は、将来の供用時期に複数の組合せのそれぞれの状態である確率を示す。遷移確率行列Mは、将来の供用時期に複数の組合せのそれぞれの状態が他の組合せの状態に遷移する確率を示す。遷移確率行列Mは、第1の遷移確率行列と呼んでもよい。なお、複数の組合せは、変換後損傷度に変換されていない損傷度と、変換後損傷度との組合せである。算出部130cは、点検結果情報111に基づいて、当該遷移確率行列Mが調整された遷移確率行列を算出する。調整された遷移確率行列は、第2の遷移確率行列と呼んでもよい。なお、当該点検結果情報111に含まれる、劣化過程で発生する複数の変状に対応する複数の損傷度は、変換後損傷度に変換される。例えば、変換部170は、変換情報114を用いて、当該変換を実行する。生成部140cは、調整された遷移確率行列と存在確率行列N(x)とに基づいて、予測情報を生成する。生成された予測情報は、第2の予測情報と呼んでもよい。特定部150cは、生成された予測情報と補修判定情報112cとに基づいて、補修タイミングを特定する。
【0121】
このように、実施の形態2と同様の処理により、補修タイミングが特定される。複数の変状に対応する複数の損傷度が変換後損傷度に変換されることで、変状マトリクスの次元が縮小される。ここで、3次元以上の変状マトリクスの各セルに含まれているデータ数が、少ない場合がある。また、3次元以上の変状マトリクスの各セルには、データが含まれていない場合がある。このような状態の変状マトリクスに基づく遷移確率行列と、十分なデータ数を含む変状マトリクスに基づく遷移確率行列とには、大きな差異がある。実施の形態4のように、変状マトリクスの次元が縮小されることで、データ数の確保が容易になる。そのため、次元が縮小された変状マトリクスに基づく遷移確率行列Mには、多くのデータが含まれる。
【0122】
情報処理装置100cは、主成分分析などのように、大量の点検結果を統計的に解析して次元の縮小を行わない。情報処理装置100cは、複数の変状に対応する複数の損傷度を変換後損傷度に変換することで、容易に、次元を縮小できる。
【0123】
情報処理装置100cは、複数の変状に対応する複数の損傷度が変換後損傷度に変換され、かつ生成部140cが予測情報を生成した後、実施の形態3と同様の処理により、補修タイミングを特定することもできる。例えば、特定部150cは、補修判定情報112cと予測情報200cとに基づいて、予め決められた期間内の将来の供用時期に補修するか否かを特定する。特定部150cは、当該期間内の将来の供用時期に補修するか否かを示す情報を用いて、予め定められた制約条件を満たし、かつ目的関数によって当該期間におけるライフサイクルコストが最小になるときの補修タイミングを特定する。このように、実施の形態3と同様の処理により、補修タイミングが特定される。
【0124】
以上に説明した各実施の形態における特徴は、互いに適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0125】
100,100a,100b 情報処理装置、 101 プロセッサ、 102 揮発性記憶装置、 103 不揮発性記憶装置、 110,110c 記憶部、 111 点検結果情報、 112,112a,112c 補修判定情報、 113 補修工法情報、 114 変換情報、 120,120c 取得部、 130,130a,130c 算出部、 140,140a,140b,140c 生成部、 150,150a,150b,150c 特定部、 160,160b 出力部、 170 変換部、 200,200c 予測情報、 210 補修計画情報、 300 集計表、 310 予測情報、 400 計画情報。