(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-17
(45)【発行日】2023-02-28
(54)【発明の名称】増幅装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/00 20110101AFI20230220BHJP
H03F 3/62 20060101ALI20230220BHJP
H03G 3/20 20060101ALI20230220BHJP
H04N 21/61 20110101ALI20230220BHJP
【FI】
H04N5/00 101
H03F3/62
H03G3/20 B
H04N21/61
(21)【出願番号】P 2019140694
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000227892
【氏名又は名称】日本アンテナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】100199820
【氏名又は名称】西脇 博志
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】岡元 達哉
(72)【発明者】
【氏名】上田 剛士
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-029204(JP,A)
【文献】特開2013-005058(JP,A)
【文献】特開平08-251336(JP,A)
【文献】特開2002-232859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/00
H03F 3/62
H03G 3/20
H04N 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数帯域の信号を増幅する増幅ユニットと、
該増幅ユニットに設定されているパラメータが保存され、該パラメータを前記増幅ユニットに設定できる制御部と、
データ送出端子とデータ受信端子と制御端子とを少なくとも備えるマスター端子と、
データ送出端子とデータ受信端子と制御端子とを少なくとも備えるスレーブ端子と、
を備える増幅装置であって、
前記増幅装置を交換する際に、前記増幅装置のマスター端子と、交換する第2増幅装置のスレーブ端子とをケーブルで接続することにより、前記増幅装置のデータ送出端子と前記第2増幅装置のデータ受信端子とが接続されると共に、前記増幅装置の制御端子と前記第2増幅装置の制御端子とが接続され、前記増幅装置の制御端子の状態を検知した前記増幅装置の制御部が、前記増幅装置のデータ送出端子から前記パラメータを送出すると共に、前記第2増幅装置の制御端子の状態を検知した前記第2増幅装置の制御部が、前記第2増幅装置のデータ受信端子から前記パラメータを受信し、前記第2増幅装置の制御部は、受信した前記パラメータを前記第2増幅装置における増幅ユニットに設定することを特徴とする増幅装置。
【請求項2】
伝送線路を伝送される共聴信号を増幅する増幅装置であって、
前記共聴信号を構成する複数の周波数帯域の信号を、周波数帯域別にそれぞれ増幅する複数の増幅ユニットと、
前記増幅装置における複数の増幅ユニットにそれぞれ設定されているパラメータが保存され、該パラメータを前記複数の増幅ユニットのそれぞれに設定できる制御部と、
データ送出端子とデータ受信端子と制御端子とを少なくとも備えるマスター端子と、
データ送出端子とデータ受信端子と制御端子とを少なくとも備えるスレーブ端子と、
を備え、
交換対象の第1増幅装置を交換する際に、前記第1増幅装置のマスター端子と、交換する第2増幅装置のスレーブ端子とをケーブルで接続することにより、前記第1増幅装置のデータ送出端子と前記第2増幅装置のデータ受信端子とが接続されると共に、前記第1増幅装置の制御端子と前記第2増幅装置の制御端子とが接続され、前記第1増幅装置の制御端子の状態を検知した前記第1増幅装置の制御部が、前記第1増幅装置のデータ送出端子から前記パラメータを送出すると共に、前記第2増幅装置の制御端子の状態を検知した前記第2増幅装置の制御部が、前記第2増幅装置のデータ受信端子から前記パラメータを受信し、前記第2増幅装置の制御部は、受信した前記パラメータを前記第2増幅装置における複数の増幅ユニットのそれぞれに設定することを特徴とする増幅装置。
【請求項3】
前記増幅装置の前記マスター端子に外部機器を接続して、該外部機器から前記パラメータの調整や設定を行えることを特徴とする請求項1または2に記載の増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナで受信した放送信号やCATV局からの伝送信号などを棟内において分岐・分配する棟内共聴装置の増幅装置に適用して好適な増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この明細書で云う「棟内共聴装置」とは、ビルや集合住宅,共同住宅などの建物に設置する共聴装置、および、戸建の建物に設置する共聴装置などの棟内に設置する共聴装置を云うものとする。
棟内共聴装置にCATV(ケーブルテレビジョン)を導入する場合の一例の構成を
図6に示す。
図6に示す棟内共聴装置2100は、棟内に設置され、CATV信号伝送ライン中に挿入されている双方向分岐増幅装置2101により分岐された下り方向のCATV信号が、タップオフ(TAP OFF )2102および保安器SBを介して棟内に引き込まれ、双方向増幅装置2105の第1入力端子に入力されると共に、BS/CSアンテナ2103よりのBS-IFあるいはCS-IF信号が、双方向増幅装置2105の第2入力端子に入力される。これらの第1入力端子および第2入力端子に入力された信号が共聴信号となり、共聴信号は双方向増幅装置2105により増幅されて出力端子から混合されて出力される。
【0003】
双方向増幅装置2105の出力は分岐器2106に供給され、分岐器2106において分岐された1つの信号は、分配器2107により複数に分配される。この分配された信号は双方向増幅装置2108により増幅されて、さらに分配器2109により複数に分配される。分配器2109により分配された1つの分配出力は、複数個縦続に接続された直列ユニット2110~2115に供給される。この直列ユニット2115の終端にはインピーダンス整合用の終端抵抗2116が接続されている。
この直列ユニット2110~2115は宅内の各部屋等に設けられており、この直列ユニット2110~2115から共聴信号が出力され、直列ユニット2110~2115にせつぞくされた同軸ケーブルを介してテレビジョン受像機等に共聴信号が供給される。下り方向のCATV信号には地上デジタル放送信号が含まれており、テレビジョン受像機は地上デジタル放送信号やBS/CS衛星放送を視聴できるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の棟内共聴装置2100において、CATV信号の上り方向の伝送帯域は、例えば10~55MHzとされ、下り方向の伝送帯域は70~770MHzとされている。また、BS/CS-IFの伝送帯域は1000MHz~3224MHzとされている。双方向増幅装置2105,2108は、上り信号、下り信号およびBS/CS-IF信号をそれぞれ増幅する複数の増幅器を備えており、上記伝送帯域の各伝送信号の減衰を補償するため、上り信号、下り信号、BS/CS-IF信号をそれぞれ増幅する増幅器により増幅される。そして、上記伝送帯域の各伝送信号をそれぞれ増幅する複数の増幅器は棟内の壁面等に設置される双方向増幅装置2105および双方向増幅装置2108の筐体内に収納されている。
【0006】
従来の棟内共聴装置2100では、双方向増幅装置2105,2108の内部には上り信号、下り信号、BS/CS-IF信号をそれぞれ増幅する複数の増幅器が収納されており、複数の増幅器のそれぞれは所定の増幅レベルになるよう調整されている。ここで、一部の増幅器に不具合が発生した場合には双方向増幅装置を交換する必要がある。しかしながら、交換した双方向増幅装置に設けられている複数の増幅器は初期設定状態とされているため、複数の増幅器をそれぞれ所定の増幅レベルとするためには、増幅レベルを確認しながら複数の増幅器をそれぞれ調整する必要がある。すなわち、棟内共聴装置2100を保守する作業員が増幅レベル等を測定できる測定器を携えて双方向増幅装置が設定されている現場へ赴き、双方向増幅装置の交換および調整を行わなければならず、交換作業が繁雑で長い時間を要するという問題点があった。そして、交換の際には、交換して設置する時間と、交換前と増幅するレベルが同一になるよう調整を行っている時間との長い時間の間は共聴信号が停波してしまうという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明は、増幅装置を交換する際に、交換前と増幅するレベルが同一になるよう短時間で作業者が再設定を行えることのできる増幅装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施例の増幅装置は、所定の周波数帯域の信号を増幅する増幅ユニットと、該増幅ユニットに設定されているパラメータが保存され、該パラメータを前記増幅ユニットに設定できる制御部と、データ送出端子とデータ受信端子と制御端子とを少なくとも備えるマスター端子と、データ送出端子とデータ受信端子と制御端子とを少なくとも備えるスレーブ端子とを備える増幅装置であって、前記増幅装置を交換する際に、前記増幅装置のマスター端子と、交換する第2増幅装置のスレーブ端子とをケーブルで接続することにより、前記増幅装置のデータ送出端子と前記第2増幅装置のデータ受信端子とが接続されると共に、前記増幅装置の制御端子と前記第2増幅装置の制御端子とが接続され、前記増幅装置の制御端子の状態を検知した前記増幅装置の制御部が、前記増幅装置のデータ送出端子から前記パラメータを送出すると共に、前記第2増幅装置の制御端子の状態を検知した前記第2増幅装置の制御部が、前記第2増幅装置のデータ受信端子から前記パラメータを受信し、前記第2増幅装置の制御部は、受信した前記パラメータを前記第2増幅装置における増幅ユニットに設定することを最も主要な特徴としている。
【0009】
本発明の他の実施例の増幅装置は、伝送線路を伝送される共聴信号を増幅する増幅装置であって、前記共聴信号を構成する複数の周波数帯域の信号を、周波数帯域別にそれぞれ増幅する複数の増幅ユニットと、前記増幅装置における複数の増幅ユニットにそれぞれ設定されているパラメータが保存され、該パラメータを前記複数の増幅ユニットのそれぞれに設定できる制御部と、データ送出端子とデータ受信端子と制御端子とを少なくとも備えるマスター端子と、データ送出端子とデータ受信端子と制御端子とを少なくとも備えるスレーブ端子とを備え、交換対象の増幅装置を交換する際に、交換対象の増幅装置のマスター端子と、交換する増幅装置のスレーブ端子とをケーブルで接続することにより、前記交換対象の増幅装置のデータ送出端子と前記交換する増幅装置のデータ受信端子とが接続されると共に、前記交換対象の増幅装置の制御端子と前記交換する増幅装置の制御端子とが接続され、前記交換対象の増幅装置の制御端子の状態を検知した前記交換対象の増幅装置の制御部が、前記交換対象の増幅装置のデータ送出端子から前記パラメータを送出すると共に、前記交換する増幅装置の制御端子の状態を検知した前記交換する増幅装置の制御部が、前記交換する増幅装置のデータ受信端子から前記パラメータを受信し、前記交換する増幅装置の制御部は、受信した前記パラメータを前記交換する増幅装置における複数の増幅ユニットのそれぞれに設定することを最も主要な特徴としている。
上記した本発明の増幅装置において、前記増幅装置の前記マスター端子に外部機器を接続して、該外部機器から前記パラメータの調整や設定を行えるようにしている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の増幅装置は、交換対象の増幅装置のマスター端子と交換する増幅装置のスレーブ端子とを接続することにより、交換対象の増幅装置の複数の増幅ユニットに設定されていたパラメータが、自動的に、交換する増幅装置の複数の増幅ユニットに設定されるようになる。これにより、増幅装置を交換する際に、交換前と増幅するレベルが同一になるよう短時間で作業者が再設定を行えることができるようになる。従って、増幅装置の交換時において、共聴信号が停波する時間を極力少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例である双方向増幅装置を備える棟内共聴装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施例である棟内共聴装置の双方向増幅装置の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明にかかる双方向増幅装置を交換する際の接続状態を示す図である。
【
図4】本発明にかかる双方向増幅装置を交換する際の接続状態の詳細を示す図である。
【
図5】本発明にかかる双方向増幅装置を交換する際の他の接続状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施例>
本発明の実施例の増幅装置を備える棟内共聴装置の構成を
図1に示す。
図1においては、双方向増幅装置17,19,22,24が本発明にかかる増幅装置とされている。
本発明にかかる「棟内共聴装置」には、ビルや集合住宅,共同住宅などの建物に設置する共聴装置、および、戸建の建物に設置する共聴装置などの棟内に設置される共聴装置が含まれているものとする。
図1に示す本発明の棟内共聴装置1は、屋上などに設置されたBS・CSアンテナ10を備え、混合器15と双方向増幅装置17と分岐・分配器18と双方向増幅装置19と分岐・分配器20とが縦続接続された伝送線路と、双方向増幅装置22と分岐・分配器23とが縦続接続された第1系統と、双方向増幅装置24と分岐・分配器25とが縦続接続された第2系統との伝送線路から構成されている。伝送線路で伝送される伝送信号は、伝送線路損失や分配や分岐されることで減衰され、この減衰を補償するために、双方向増幅装置17,19,22,24が所定の位置に設けられている。
棟内共聴装置1には、CATV局1010から幹線に設置されている増幅装置や分岐・分配装置などの幹線機器1011を介してCATV信号の下り信号(以下、「CATV下り信号」という)がCATVの幹線に送出されている。このCATV下り信号は、幹線に挿入されている分岐・分配装置などにより分岐され、さらに、タップオフ1012および保安器1013を介して棟内共聴装置1が設置されている棟内に引き込まれている。そして、保安器1013までのメンテナンスはCATV局1010が行うが、保安器1013以降のメンテナンスは加入者が行うこととされている。
【0013】
棟内共聴装置1では、混合器15の第2入力端子に保安器1013が接続され、第1入力端子にBS・CSアンテナ10よりのBS・CS-IF信号が入力されている。保安器1013を介して棟内共聴装置1に入力されたCATV下り信号は、混合器15の第2入力端子に入力され、混合器15の第1入力端子に入力されたBS・CS-IF信号と、第2入力端子に入力されたCATV下り信号とが混合されて共聴信号とされて混合器15の出力端子から出力される。
なお、
図1に示す棟内共聴装置1においては、CATV下り信号とBS・CS-IF信号とが混合されて共聴信号とされているが、本発明においてはこれに限ることはなく、地上デジタル放送信号を受信するUHFアンテナやFM放送を受信するFMアンテナを棟内共聴装置1に設けて、UHFアンテナで受信された地上デジタル放送信号やFMアンテナで受信されたFM放送信号とBS・CS-IF信号とを混合して共聴信号としてもよい。
【0014】
混合器15の出力端子から出力された共聴信号は双方向増幅装置17に入力されて所定のレベルになるよう増幅される。双方向増幅装置17の出力は分岐・分配器18に供給され、分岐・分配器18において複数に分岐・分配される。分岐・分配器18を通過した共聴信号は、双方向増幅装置19に入力されて所定のレベルになるよう増幅される。双方向増幅装置19の出力は分岐・分配器20に供給され、分岐・分配器20において複数に分岐・分配される。分岐・分配器20を通過した共聴信号は、さらに、分岐・分配器21で第1系統と第2系統の共聴信号に分配される。第1系統に分配された共聴信号は、双方向増幅装置22に入力されて所定のレベルになるよう増幅されて、双方向増幅装置22の出力は分岐・分配器23に供給されて複数に分岐・分配される。分岐・分配器23で分岐・分配された共聴信号は宅内の各部屋等に設けられている直列ユニットにそれぞれ供給され、直列ユニットにはテレビジョン受像機等に接続される同軸ケーブルが接続される。また、第2系統に分配された共聴信号は、双方向増幅装置24に入力されて所定のレベルになるよう増幅されて、双方向増幅装置24の出力は分岐・分配器25に供給されて複数に分岐・分配される。分岐・分配器25で分岐・分配された共聴信号は宅内の各部屋等に設けられている直列ユニットにそれぞれ供給され、直列ユニットにはテレビジョン受像機等に接続される同軸ケーブルが接続される。
【0015】
また、第1系統の直列ユニットから送出された上り信号は分岐・分配器23を介して双方向増幅装置22で所定のレベルになるよう増幅されて、分岐・分配器21に供給される。さらに、第2系統の直列ユニットから送出された上り信号は分岐・分配器25を介して双方向増幅装置24で所定のレベルになるよう増幅されて、分岐・分配器21に供給される。分岐・分配器21から出力された上り信号は、分岐・分配器20-双方向増幅装置19-分岐・分配器18-双方向増幅装置17の経路で上っていき、混合器15を介して保安器1013に入力される。保安器1013を通過した上り信号は、タップオフ1012、CATVの幹線および幹線機器1011を介してCATV局1010に上っていき受信される。
【0016】
上記したように、共聴信号が、CATV下り信号とCATV信号の上り信号(以下、「CATV上り信号」という)およびBS・CS-IF信号から構成されるときは、双方向増幅装置17,19,22,24は後述するように、CATV下り信号を増幅する増幅ユニットとCATV上り信号を増幅する増幅ユニットおよびBS・CS-IF信号を増幅する増幅ユニットとを有している。それぞれの増幅ユニットの供給電圧および供給電流や温度などの機器の状態情報と、入力レベル、出力レベル、C/Nなどの伝送信号の状態情報からなる動作データはモニタ信号とされてモニタされている。モニタされるモニタ信号に異常があり、いずれかの増幅ユニットに不具合が生じている時や生じる予兆が見られた場合は、当該増幅ユニットを有している棟内共聴装置1が設置されている建物にメンテナンス要員を派遣して当該増幅ユニットを交換することができ、障害からの復旧あるいは障害の発生を予防することができるようになる。
【0017】
<双方向増幅装置の詳細>
次に、本発明の実施例とされる双方向増幅装置の詳細構成を示す機能ブロック図を
図2に示す。ここでは、双方向増幅装置17と双方向増幅装置19,22,24の構成が同じ構成とされることから、代表として双方向増幅装置17の詳細構成を示す機能ブロック図を
図2に示している。
図2に示すように双方向増幅装置17は、第1増幅ユニット52と第2増幅ユニット53と第3増幅ユニット54、および、制御部とされるMCU100と通信I/F105と測定部106とを備えている。通信I/F105と測定部106とはMCU100のバス104に接続されている。MCU100はマイクロコントローラーであり、MCU100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103を備え、これらをバス104で接続して構成されている。CPU101は、ROM102に記憶された制御処理プログラムを実行することにより、後述する制御処理を行うようにMCU100が動作する。また、電源投入時には、CPU101がROM102に格納されている初期設定プログラムを実行して初期状態とする。通信I/F105はUART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)のインタフェースとされている。測定部106には5本のRFラインが接続されており、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54からの5つのモニタ信号が5本のRFラインからそれぞれ入力されている。測定部106では、CPU101の制御の基で5つのモニタ信号を受信して、各チャンネル毎のレベルを検出してデジタルのレベル信号としている。双方向増幅装置17は、マスター端子107、スレーブ端子108と、端子201、端子202と端子203とを備えている。マスター端子107およびスレーブ端子108は通信I/F105に接続されており、後述するが、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54にそれぞれ設定されているパラメータまたは設定されるパラメータの受け渡しを行える端子とされている。
【0018】
また、端子201はCATV上り信号が出力されると共にCATV下り信号が入力できる端子であり、端子202はCATV上り信号が出力されると共にCATV下り信号およびBS・CS-IF信号が入力できる端子である。入力切換スイッチ210は、端子201にCATV下り信号が入力され、端子202にBS・CS-IF信号が入力された時に、端子201側に切り換えて第1フィルタ(Fil1)にCATV下り信号を供給し、端子202にCATV下り信号およびBS・CS-IF信号が入力された時に、端子202側に切り換えて第3フィルタ(Fil3)で分波されたCATV下り信号をFil1に供給している。Fil1は、CATV下り信号を分波して第2増幅ユニット53に供給し、第2分岐器(Sp2)から供給された所定レベルに調整されたCATV上り信号を分波して入力切換スイッチ210に供給する。入力切換スイッチ210では、端子201側に切り換えられている時は所定レベルに調整されたCATV上り信号を端子201から出力し、端子202側に切り換えられている時はCATV上り信号をFil3に供給して、Fil3を通じて所定レベルに調整されているCATV上り信号が端子202から出力される。
【0019】
端子203は、棟内共聴装置1における直列ユニットから送出されたCATV上り信号が入力されると共に、所定レベルに調整されたCATV下り信号およびBS・CS-IF信号が出力される端子である。端子203に入力されたCATV上り信号は、第5分岐器(Sp5)を通過して第4フィルタ(Fil4)に供給されて分波され、第2フィルタ(Fil2)に供給される。Fil2は、CATV上り信号を分波して第1増幅ユニット52に供給する。第1増幅ユニット52は、入力レベル調整部211と第1分岐器(Sp1)と第1増幅器(Amp1)と出力レベル調整部212と第2増幅器(Amp2)とSp2とが縦続接続されて構成されている。そして、Sp1で分岐されたAmp1の入力信号を分岐したモニタ出力(MIn1)と、Sp2で分岐されたAmp2の出力信号を分岐したモニタ出力(MO1)とは測定部106に送られて入力レベルと出力レベルが検出されて、第1増幅ユニット52のIDが付加されてMCU100内に格納される。この入力レベルと出力レベルが所定の値となるように、入力レベル調整部211および出力レベル調整部212に、MCU100からパラメータA,Bがそれぞれ設定される。パラメータA,Bはパーソナルコンピュータのような外部機器を双方向増幅装置17に接続して調整することができる。これにより、所定レベルに調整されたCATV上り信号がSp2に供給されるようになる。
【0020】
Fil1で分波されたCATV下り信号は、第2増幅ユニット53に供給される。第2増幅ユニット53は、入力レベル調整部213と第3分岐器(Sp3)と第3増幅器(Amp3)と出力レベル調整部214と第4増幅器(Amp4)とが縦続接続されて構成されている。そして、Sp3で分岐されたAmp3の入力信号を分岐したモニタ出力(MIn2)と、Sp5で分岐されたFil4からの出力信号を分岐したモニタ出力(MO2)とは測定部106に送られて各チャンネル毎の入力レベルと出力レベルが検出されて、第2増幅ユニット53のIDが付加されてMCU100内に格納される。CATV下り信号の各チャンネル毎の入力レベルと出力レベルが所定の値となるように、入力レベル調整部213および出力レベル調整部214に、MCU100からパラメータC,Dがそれぞれ設定される。パラメータC,Dはパーソナルコンピュータのような外部機器を双方向増幅装置17に接続して調整することができる。これにより、所定レベルに調整されたCATV下り信号が端子203から出力されるようになる。
【0021】
Fil3で分波されたBS・CS-IF信号は、第3増幅ユニット54に供給される。第3増幅ユニット54は、入力レベル調整部215と第4分岐器(Sp4)と第5増幅器(Amp5)と出力レベル調整部216と第6増幅器(Amp6)とが縦続接続されて構成されている。そして、Sp4で分岐されたAmp5の入力信号を分岐したモニタ出力(MIn3)と、Sp5で分岐されたFil4からの出力信号を分岐したモニタ出力(MO2)とは測定部106に送られて各チャンネル毎の入力レベルと出力レベルが検出されて、第2増幅ユニット53のIDが付加されてMCU100内に格納される。BS・CS-IF信号の各チャンネル毎の入力レベルと出力レベルが所定の値となるように、入力レベル調整部215および出力レベル調整部216に、MCU100からパラメータE,Fがそれぞれ設定される。パラメータE,Fはパーソナルコンピュータのような外部機器を双方向増幅装置17に接続して調整することができる。これにより、所定レベルに調整されたBS・CS-IF信号が端子203から出力されるようになる。
第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に設定されているパラメータA~Fは、MCU100のRAM103に一時保存されると共に、フラッシュメモリで構成されるROM102に保存される。なお、入力レベル調整部211,213,215および出力レベル調整部212,214,216はアッテネータ、イコライザ、ゲインコントロール回路、チルト回路などのレベルや周波数特性を調整可能な回路を組み合わせて構成することができ、いずれの回路も電子制御により調整可能とされている。
【0022】
上記したように、測定部106には、第1増幅ユニット52の入力と出力を分岐したMIn1,MO1と、第2増幅ユニット53および第3増幅ユニット54の入力を分岐したMIn2,MIn3と、双方向増幅装置の出力を分岐したMO2からなるモニタ出力のRF信号が入力される。そして、各モニタ信号における各チャンネル毎のレベルを検出してデジタルのレベル信号としている。また、測定部106は、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54における電圧、電流、温度等の図示しないセンサーからのセンサー信号を取り込んでデジタル信号に変換している。デジタルのレベル信号とデジタルのセンサー信号とは、ID付きのモニタ信号とされて、MCU100内に保存される。モニタ信号に異常があった場合は、いずれかの増幅ユニットに不具合が生じているか、不具合が生じる予兆とされる。
【0023】
<双方向増幅装置の交換>
次に、メンテナンスのために双方向増幅装置を交換する場合や、双方向増幅装置に不具合が生じているか、不具合が生じる予兆がある場合は、双方向増幅装置は交換される。また、双方向増幅装置のメンテンナンスや耐用年数に該当していたり、グレードアップする場合にも双方向増幅装置は交換される。双方向増幅装置を交換する場合について説明すると、双方向増幅装置を交換する場合は、交換する前に交換したい対象の双方向増幅装置と交換する双方向増幅装置との両者を接続する。双方向増幅装置同士を接続することにより、交換したい対象の双方向増幅装置の複数の増幅ユニットに設定されていたパラメータが、交換する双方向増幅装置の複数の増幅ユニットにそれぞれ自動的に送られて設定されて、複数の増幅ユニットにおける増幅するレベルが交換前と同一になる。
【0024】
ここでは交換対象の双方向増幅装置を双方向増幅装置17とし、交換する双方向増幅装置を双方向増幅装置17aとした場合の両者の接続状態を
図3に示す。
図3において、交換対象の双方向増幅装置17はCATV上り信号、CATV下り信号およびBS/CS-IF信号が入/出力される前述した端子201,202,203と、マスター端子107とスレーブ端子108とを備え、交換する双方向増幅装置17aはCATV上り信号、CATV下り信号およびBS/CS-IF信号が入/出力される前述した端子201,202,203と、マスター端子107aとスレーブ端子108aとを備えている。交換する双方向増幅装置17aの構成は、交換対象の双方向増幅装置17と同じ構成とされている。交換する双方向増幅装置17aにパラメータを自動設定する際には、
図3に示すように交換対象の双方向増幅装置17のマスター端子107と交換する双方向増幅装置17aのスレーブ端子108aとをケーブルで接続する。
【0025】
図3に示す接続状態の詳細を
図4に示す。
図4に示すように、交換対象の双方向増幅装置17および交換する双方向増幅装置17aが備えているマスター端子107,107aとスレーブ端子108,108aは、それぞれ4ピンの端子とされている。この4ピンの端子は、データ送出端子Txとデータ受信端子Rxとグランド(GND)端子とGPIO端子とされている。データ送出端子Txは制御部とされるMCU100,100aの制御の基で第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に設定されているパラメータA~Fを送出する端子であり、データ受信端子RxはMCU100,100aの制御の基で第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に設定されているパラメータA~Fが受信される端子である。GND端子はアースに接続される端子であり、GPIO端子は制御端子として用いられ、マスター端子107,107aのGPIO端子がハイレベルの時にMCU100,100aがデータ受信端子RxからパラメータA~Fを受信し、マスター端子107,107aのGPIO端子がローレベルの時にMCU100,100aがデータ送出端子TxにパラメータA~Fを送出する。双方向増幅装置17,17aにおいて、マスター端子107,107aとスレーブ端子108,108aにおけるデータ送出端子Tx、データ受信端子RxとGND端子は、それぞれ同じ端子同士が接続されている。この場合、スレーブ端子108,108aのデータ送出端子Txとデータ受信端子Rxとの配置位置が、マスター端子107,107aのデータ送出端子Txとデータ受信端子Rxとの配置位置と入れ替えられて配置されている。また、マスター端子107,107aのGPIO端子は抵抗Rで電源Vccにプルアップされ、スレーブ端子108,108aのGPIO端子はグランドにアースされている。
【0026】
交換対象の双方向増幅装置17を双方向増幅装置17aに交換する際には、
図3,
図4に示すように交換対象の双方向増幅装置17のマスター端子107と、交換する双方向増幅装置17aのスレーブ端子108aとを4芯のケーブルで接続する。これにより、交換対象の双方向増幅装置17のマスター端子107におけるデータ送出端子Txと、交換する双方向増幅装置17aのスレーブ端子108aにおけるデータ受信端子Rxとが接続されると共に、GND端子同士が接続される。また、プルアップされた交換対象の双方向増幅装置17のマスター端子107のGPIO端子が、アースされた交換する双方向増幅装置17aのスレーブ端子108aのGPIO端子に接続されることから、交換対象の双方向増幅装置17におけるマスター端子107のGPIO端子がアースされて、そのレベルがローレベルとなる。
すると、交換対象の双方向増幅装置17のMCU100はマスター端子107のGPIO端子がローレベルになったことを検知して、MCU100はデータ送出端子Txに保存されていたパラメータA~Fを送出する。また、交換する双方向増幅装置17aではマスター端子107aはどこにも接続されておらずマスター端子107aのGPIO端子がハイレベルであることをMCU100aが検知して、MCU100aは交換対象の双方向増幅装置17のデータ送出端子Txに接続されたデータ受信端子RxからパラメータA~Fを受信する。MCU100aが受信したパラメータA~FはMCU100aに保存されると共に、MCU100aの制御の基で交換する双方向増幅装置17aにおける第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54のそれぞれにパラメータA~Fが設定される。これにより、交換対象の双方向増幅装置17と交換する双方向増幅装置17aにおける第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54におけるそれぞれの増幅レベルが同一になる。
【0027】
次に、交換対象の双方向増幅装置17のマスター端子107と、交換する双方向増幅装置17aのスレーブ端子108aとを接続しているケーブルを取り外し、次いで、交換対象の双方向増幅装置17に接続されていた伝送線路を取り外して設置されていた場所から取り外す。そして、交換する双方向増幅装置17aを所定の場所に設置して、伝送線路を接続する。設置した双方向増幅装置17aにおける第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54の増幅するレベルは交換前と同一となる。これにより、双方向増幅装置を交換する際に、交換前と増幅するレベルが同一になるよう短時間で作業者が再設定を行えることができるようになる。従って、双方向増幅装置の交換時において、共聴信号が停波する時間を極力少なくすることができる。
なお、双方向増幅装置には図示していないが非常用電源端子が備えられており、非常用電源端子から電源を供給すると双方向増幅装置におけるMCU100と通信I/F105とにだけ電源が供給される。交換対象の双方向増幅装置に障害が発生して、双方向増幅装置に正常に電源が供給できない場合でも、非常用電源端子からMCU100と通信I/F105とに電源を供給して設定されているパラメータA~Fを送出することができる。また、パラメータA~FはROM102に保存されることから、交換対象の双方向増幅装置および交換する双方向増幅装置の電源をオフしても設定されているパラメータが消去される恐れはない。
【0028】
<双方向増幅装置のパラメータ設定>
本発明にかかる双方向増幅装置では、第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に設定されているパラメータA~Fを外部機器である設定用端末300から調整して設定することができる。設定用端末300は、パーソナルコンピュータ(PC)とすることができ、パラメータ設定用のアプリケーションがインストールされている。
図5に示すように双方向増幅装置17のマスター端子107に接続されたケーブルを設定用端末300に接続すると、設定用端末300により双方向増幅装置17における第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に設定されているパラメータA~Fを調整することができる。双方向増幅装置17のマスター端子107に設定用端末300が接続され、設定用端末300がマスター端子107のGPIO端子をハイレベルの状態に維持すると、MCU100はデータ受信端子Rxからパラメータを受信できるようになる。設定用端末300では、双方向増幅装置17のモニタ信号を観察しながらパラメータA~Fを調整し、調整が完了すると起動されたパラメータ設定用のアプリケーションからパラメータA~Fを送出する。設定用端末300から送出されたパラメータA~Fは、双方向増幅装置17のマスター端子107のデータ受信端子RxとUARTの通信I/F105を介してMCU100で受信されて取り込まれ、MCU100に保存される。保存されたパラメータA~FはMCU100が双方向増幅装置17の第1増幅ユニット52ないし第3増幅ユニット54に設定する。
【0029】
設定用端末300により双方向増幅装置17に設定されているパラメータA~Fを調整することは、棟内共聴装置1に設置されている双方向増幅装置17,19,22,24のいずれでも行うことができると共に、交換する双方向増幅装置に所定のパラメータA~Fを設定用端末300から設定することもできる。
また、設定用端末300で起動されたパラメータ設定用のアプリケーションでは、GPIO端子をローレベルに設定することができ、GPIO端子をローレベルに設定すると双方向増幅装置に設定されているパラメータA~Fを読み出して設定用端末300内に保存することができる。そして、この設定用端末300をパラメータA~Fを設定したい双方向増幅装置のマスター端子に接続することにより、接続された双方向増幅装置に保存されているパラメータA~Fを設定することができる。これにより、所望の双方向増幅装置において増幅するレベルが同一になるよう短時間で設定を行えるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上の説明において、CATVにはMATV(Master Antenna Television)が含まれており、本発明にかかる増幅装置を備える棟内共聴装置において、共聴信号はCATV信号と衛星放送信号とを混合した信号や、地上デジタル放送信号と衛星放送信号とを混合した信号、さらに、FM放送信号を混合した信号とすることができ、少なくとも放送信号を含む信号とされている。また、棟内共聴装置にはCATV下り信号やBS・CS-IF信号がそれぞれ入力されると説明したが、CATV下り信号とBS・CS-IF信号とを混合した信号が入力されてもよい。
以上説明した本発明の増幅装置においては、通信I/F105はUARTのインタフェースとされていたが、これに限ることはなく、シリアル通信のSPI(Serial Peripheral Interface)やI2C(Inter-Integrated Circuit)とすることができ、また、パラレル通信を用いてもよい。さらに、本発明の増幅装置においては、複数の増幅ユニットを備えているとしたが、これに限ることはなく1つの周波数帯域を増幅する1つの増幅ユニットだけを備えるようにしてもよい。
本発明にかかる「棟内共聴装置」には、ビルや集合住宅,共同住宅などの建物に設置する共聴装置、および、戸建の建物に設置する共聴装置などの棟内に設置される共聴装置が含まれているが、双方向増幅装置や分岐・分配器の数は上記説明した数に限らず、棟内の規模や設備等に応じた任意の数とすることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 棟内共聴装置、10 BS・CSアンテナ、15 混合器、17,17a,19,22,24 双方向増幅装置、18,20,21,23,25 分岐・分配器、52 第1増幅ユニット、53 第2増幅ユニット、54 第3増幅ユニット、100,100a MCU、104 バス、105 通信I/F、106 測定部、107,107a マスター端子、108,108a スレーブ端子、201,202,203 端子、210 入力切換スイッチ、212,214,216 出力レベル調整部、211,213,215 入力レベル調整部、300 設定用端末、1010 CATV局、1011 幹線機器、1012 タップオフ、1013 保安器、2100 棟内共聴装置、2101 双方向分岐増幅装置、2103 アンテナ、2105 双方向増幅装置、2105,2108 双方向増幅装置、2106 分岐器、2107 分配器、2108 双方向増幅装置、2109 分配器、2110~2115 直列ユニット、2116 終端抵抗