(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-20
(45)【発行日】2023-03-01
(54)【発明の名称】二重硬化性シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20230221BHJP
C08L 83/08 20060101ALI20230221BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20230221BHJP
【FI】
C08L83/06
C08L83/08
C09D183/06
(21)【出願番号】P 2020505137
(86)(22)【出願日】2018-07-24
(86)【国際出願番号】 US2018043361
(87)【国際公開番号】W WO2019027717
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-12
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、ジュンイン
(72)【発明者】
【氏名】リュウ、ナングオ
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド、ジョエル
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-043215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのエポキシ基を含むシリコーン樹脂であって、前記シリコーン樹脂が、式(I)
(I) [R
1R
2R
3SiO
1/2]
a[R
4R
5SiO
2/2]
b[R
6SiO
3/2]
c[SiO
4/2]
d
[式中、各R
1~6は独立して、ヒドロカルビル基、H基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、又はエポキシ含有基であり、R
1~6のうちの少なくとも1つは、エポキシ含有基であり、a+b+c+d=1であり、c+d>0である]に従う、シリコーン樹脂と、
(b)少なくとも1つのエポキシ基及び少なくとも1つの加水分解性基を含むシリコーンポリマーであって、前記シリコーンポリマーが、式(II)
(II) [R
7R
8R
9SiO
1/2]
e[R
10R
11SiO
2/2]
f
[式中、各R
7~11は独立して、ヒドロカルビル基、H基、ヒドロキシル基、加水分解性基、又はエポキシ含有基であり、R
7~11基のうちの少なくとも1つは加水分解性基であり、1つのR
7~11基のうちの少なくとも1つはエポキシ含有基であり、e>0であり、f>0である]に従う、シリコーンポリマーと、
(c)触媒量のオニウム塩光触媒と、
(d)触媒量の縮合触媒と、
を含み、
(a)シリコーン樹脂と(b)シリコーンポリマーとの質量比が、4:1~2:3の範囲であり、
紫外線、H
2O、又は紫外線及びH
2Oに曝露された場合に硬化する、二重硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂及び前記シリコーンポリマーの前記エポキシ基の各々が、独立して、1~18個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビルであり、前記置換基がエポキシ基又はエポキシエーテル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記エポキシ基が、グリシドキシプロピル、グリシジル、ヘキセニルオキシド、ヘキセンオキシアルキルオキシド、[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル]、[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]、又は[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル]である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記加水分解性基が、C
1~8アルコキシ又はハロゲンである、請求項
1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記オニウム塩光触媒が、ハロニウム光触媒である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記縮合触媒が、スズ、チタン、アルミニウム、亜鉛、又はジルコニウムの金属錯体である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
物品に保護コーティングを提供する方法であって、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物を前記物品に適用することを含む、方法。
【請求項8】
請求項
7に記載の方法により形成された保護物品。
【請求項9】
(a)少なくとも1つのエポキシ基を含むシリコーン樹脂であって、前記シリコーン樹脂が、式(I)
(I) [R
1R
2R
3SiO
1/2]
a[R
4R
5SiO
2/2]
b[R
6SiO
3/2]
c[SiO
4/2]
d
[式中、各R
1~6は独立して、ヒドロカルビル基、H基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、又はエポキシ含有基であり、R
1~6のうちの少なくとも1つは、エポキシ含有基であり、a+b+c+d=1であり、c+d>0である]に従う、シリコーン樹脂と、
(b)少なくとも1つのエポキシ基及び少なくとも1つの加水分解性基を含むシリコーンポリマーであって、前記シリコーンポリマーが、式(II)
(II) [R
7R
8R
9SiO
1/2]
e[R
10R
11SiO
2/2]
f
[式中、各R
7~11は独立して、ヒドロカルビル基、H基、ヒドロキシル基、加水分解性基、又はエポキシ含有基であり、R
7~11基のうちの少なくとも1つは加水分解性基であり、1つのR
7~11基のうちの少なくとも1つはエポキシ含有基であり、e>0であり、f>0である]に従う、シリコーンポリマーと、
(c)触媒量のオニウム塩光触媒と、
(d)触媒量の縮合触媒と、
を、(a)シリコーン樹脂と(b)シリコーンポリマーとの質量比4:1~2:3の範囲で組み合わせることを含む、二重硬化性組成物の作製方法であって、
前記組成物が、紫外線又は加水分解条件に曝露された場合に硬化する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、少なくとも1つのエポキシ基を含むシリコーン樹脂と、少なくとも1つのエポキシ基及び少なくとも1つの加水分解性基を含むシリコーンポリマーと、触媒量のオニウム塩光触媒と、縮合触媒と、を含む、二重硬化性シリコーン組成物であって、紫外線、H2O、又は紫外線及びH2Oに曝露された場合に硬化する、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーンは、他の特性の中でも、耐湿性及び熱安定性を提供する保護コーティング及び封止材として使用されてきた。これらのシリコーンは、異なる機構によって硬化し得る。例えば、紫外光(UV)硬化及び湿気硬化が教示されている。UV硬化性シリコーンとしては、例えば、アクリレート硬化、チオール-エン硬化、及びカチオン硬化などのラジカル硬化が挙げられる。UV硬化系は、一般に、高い硬化速度のための高い処理量を提供し、系中に溶媒を含まずに作製することができる。湿気硬化組成物は加水分解性基の加水分解及び縮合を経て硬化する。
【0003】
組成物が湿気硬化機構及びUV硬化機構の両方によって硬化する、二重硬化系も開発されている。これらの二重硬化系は、UV硬化系が適切に硬化しない影になる領域を有する用途に適している。二重硬化系では、湿気硬化成分は、影になる領域内で硬化し、UV硬化成分は、適切なUV曝露を有する領域内で硬化する。例えば、シリコーンポリマーがエポキシ基及び加水分解性基の両方を有する二重硬化シリコーン組成物が開発されており、そのため、組成物は紫外線及び湿気の両方への曝露によって硬化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の単一硬化及び二重硬化組成物は、欠点を有する。これらの組成物は、不快な臭気を有し、製造又は使用に費用がかかり、不活性条件下を除いて酸素により阻害されて硬化が不十分になる可能性があるか、又は得られるコーティングに適切な硬度及び可撓性を提供しない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)少なくとも1つのエポキシ基を含むシリコーン樹脂と、(b)少なくとも1つのエポキシ基及び少なくとも1つの加水分解性基を含むシリコーンポリマーと、(c)触媒量のオニウム塩光触媒と、(d)触媒量の縮合触媒と、を含み、紫外線、H2O、又は紫外線及びH2Oに曝露された場合に硬化する、二重硬化性シリコーン組成物に関する。
【0006】
本発明は、良好な可撓性を有する高い硬度のフィルムを製造し、製造するのが経済的であり、酸素への曝露によって阻害されない組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(a)少なくとも1つのエポキシ基を含むシリコーン樹脂と、
(b)少なくとも1つのエポキシ基及び少なくとも1つの加水分解性基を含むシリコーンポリマーと、
(c)触媒量のオニウム塩光触媒と、
(d)触媒量の縮合触媒と、
を含む、二重硬化性シリコーン組成物であって、
紫外線、H2O、又は紫外線及びH2Oに曝露された場合に硬化する、組成物。
【0008】
シリコーン樹脂は、少なくとも1つのエポキシ基を含み、あるいは、シリコン樹脂は、式(I)
(I) [R1R2R3SiO1/2]a[R4R5SiO2/2]b[R6SiO3/2]c[SiO4/2]d
[式中、各R1~6は独立して、ヒドロカルビル基、H基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、又はエポキシ含有基であり、R1~6のうちの少なくとも1つは、エポキシ含有基であり、a+b+c+d=1であり、c+d>0である]に従う。
【0009】
R1~6で表わされるヒドロカルビル基は、典型的には、1~18個、あるいは1~10個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子を有する。非環式のヒドロカルビル基は少なくとも3個の炭素原子を含有し、分枝状構造であっても非分枝状構造であってもよい。R1~3で表されるヒドロカルビル基の例としては、アルキル基(メチルエチル基、プロピル基、1-メチルエチル基、ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基など);シクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びメチルシクロヘキシル基など);アリール基(フェニル基及びナフチル基など);アルカリール基(トリル基及びキシリル基など);アラルキル基(ベンジル基及びフェネチル基など);アルケニル基(ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、及びオクテニル基など);アリールアルケニル基(スチリル基及びシンナミル基など)、並びにアルキニル基(エチニル基及びプロピニル基など)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、R4はメチルであり、R5はフェニルであり、R6基の45~55モル%、あるいは約50モル%は、エポキシ基であり、R6基の45~55モル%、あるいは約50モル%は、イソブチル基である。
【0010】
R1~6で表されるアルコキシ基は、式-Oalk[式中、Oは酸素であり、alkは、1~10個の炭素原子、あるいは1~6個の炭素原子、あるいは1~4個の炭素原子を有するアルキルである]を有する。alkで表されるアルキル基の例としては、R1~6について例示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0011】
R1~6で表されるエポキシ含有基は、各々独立して、2~18個、あるいは2~12個、あるいは3~10個の炭素原子を有する置換ヒドロカルビルである。置換ヒドロカルビルの置換基は、エポキシド又はエポキシエーテル、あるいはエポキシド、あるいはエポキシエーテルである。置換基がエポキシドである場合、ヒドロカルビルの2つの隣接する炭素原子の間に形成されるのであれば、エポキシドである。置換基がエポキシエーテルである場合、置換ヒドロカルビルは、典型的には、式-L-O-Ep[式中、Lは、1~8個、あるいは1~4個、あるいは1~3個の炭素原子を有するヒドロカルビレンであり、Oは酸素原子であり、Epは、1~10個、あるいは1~7個、あるいは3~6個の炭素原子を有するエポキシヒドロカルビルである]に従い、エポキシドは、EPのヒドロカルビルの2つの隣接する炭素原子の間に形成される。
【0012】
エポキシ基は、ヒドロシリル化反応、縮合反応、グリニャール反応によってシリコーン樹脂中に形成されてもよく、あるいはエポキシ基は、既にエポキシ基を含むシランモノマーと反応させることにより、ポリマー又は樹脂に組み込まれてもよく、例えば、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又はシクロヘキセンオキシドトリメトキシシランを、他のシランモノマー又はシロキサンポリマー又は樹脂と反応させてもよい。エポキシ基は、オニウム塩光触媒の存在下で紫外線曝露することで他のエポキシ官能基と反応することができ、加水分解条件下で安定である。
【0013】
シリコーン樹脂のエポキシ基の例としては、グリシジル、グリシドキシプロピル、エポキシペンチル、グリシドキシブチル、グリシドキシヘキシル、グリシドキシオクチル、シクロヘキサン環の水素原子の1つを除去することにより環の3、4、5、若しくは6位を介して、又は1~6個の炭素原子を有し、ヘキサン環とケイ素原子の間を連結するアルキレン連結基、例えば[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]基などを介して、ケイ素に結合しているエポキシシクロヘキサン(シクロヘキセンオキシド)、1~6個の炭素原子を有し、炭素環の3、4、5、又は6位に結合しているオキシアルキル連結基を介してケイ素原子に結合しているシクロヘキセンオキシアルキルオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、グリシジルは、-CH2CHOCH2を意味することを意図し、グリシドキシは、-OCH2CHOCH2[式中、CHOCH2はエポキシ基である]を意味することを意図し、シクロヘキセンオキシアルキルオキシドは、
-Alk-O-C6H9O[式中、Alkは、1~6個の炭素原子を有するヒドロカルビレン連結基であり、C6H9Oは、シクロヘキセニルオキシドである]を意味することを意図する。当業者であれば、シリコン-エポキシ官能基の形成方法を知っているであろう。
【0014】
シリコーン樹脂の式(I)において、下付き文字a、b、c、及びdは、樹脂中の各単位の平均数を表す。下付き文字aは、0~0.9、あるいは0~0.5、あるいは0の値を有する。下付き文字bは、0~0.9、あるいは0.1~0.50、あるいは0.28~0.37の値を有する。下付き文字cは、0~0.9、あるいは0.2~0.85、あるいは0.5~0.75の値を有する。下付き文字dは、0~0.9、あるいは0~0.15、あるいは0の値を有する。下付き文字c+d>0であり、a+c+b+d=1である。一実施形態では、式(I)において、下付き文字a=d=0であり、下付き文字b=0.28~0.37、あるいは0.33~0.35であり、下付き文字c=0.65~0.80、あるいは0.72~0.77であり、R4はメチルであり、R5はフェニルであり、R6基の50モル%はエポキシ基であり、R6基の45~50モル%はイソブチル基である。
【0015】
当業者であれば、シリコーン樹脂の作製方法を知っているであろう。例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、及びトリメチルトリメトキシシランなどのアルキルアルコキシシランを、NaOH、KOH、又はCsOHなどの金属水酸化物、水、及びグリシジルトリメトキシシランなどのエポキシ官能性シランと組み合わせて反応させ、続いて分離及び中和してもよい。当業者であれば、シリコーン樹脂の製造に使用する条件及び反応器を知っているであろう。
【0016】
シリコーンポリマーは、少なくとも1つのエポキシ基及び少なくとも1つの加水分解性基を含み、あるいはシリコーンポリマーは、式(II)
(II) [R7R8R9SiO1/2]e[R10R11SiO2/2]f
[式中、各R7~11は独立して、ヒドロカルビル基、H基、ヒドロキシル基、加水分解性基、又はエポキシ含有基であり、R7~11基のうちの少なくとも1つは加水分解性基であり、R7~11基のうちの少なくとも1つ、あるいは少なくとも2つはエポキシ含有基であり、下付き文字e>0であり、下付き文字f>0である]
に従う。
【0017】
R7~11で表されるヒドロカルビル基、アルコキシ基、及びエポキシ基は、R1~6について上述したとおりである。R7~11で表される加水分解性基は、水の存在下で加水分解してヒドロキシル官能基を脱離する任意の基を含む。好ましい加水分解性脱離基は、メトキシ、プロポキシ、オクチルオキシなどのアルコキシ、及びアセトキシなどのアシルオキシである、最も一般的に用いられるものである。しかしながら、他の既知の加水分解性脱離基も知られている。これらの基としては、アミド、アミノ、カルバメート、エノキシ、イミダト、イソシアナト、オキシマト、チオイソシアナト、及びウレイドが挙げられる。これらの加水分解性基は周知である。2つ以上の加水分解性基が存在する場合、加水分解性基は、上記の基の組み合わせであってもよい。一実施形態では、加水分解性基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、又はブトキシ、あるいはメトキシである。
【0018】
加水分解性基は、加水分解された場合にシラノール基を直接脱離するケイ素原子に結合していてもよく、あるいは加水分解性基は、加水分解された場合に連結基上でヒドロキシル基を脱離するアルキレンなどの別の連結基を介してケイ素原子に結合しており、あるいは加水分解性基は、加水分解性基で置換された、あるいはトリ(C1~8アルコキシ)シランで置換されたC1~12ヒドロカルビル基である。アルキレン連結基を介してケイ素原子に結合している加水分解性基の例としては、トリメトキシシリル、トリアセトキシシリル、及びトリスケトキシモシリル(trisketoximosilyl)が挙げられるがこれらに限定されず、ここで、連結基は、エチレン、プロピレン、又はブチレンであり得る。
【0019】
基R7~11は、基の組み合わせであってもよく、あるいはR7~9は、1~6個の炭素原子を有するアルコキシとエポキシ含有基との組み合わせであり、R10~11は、1~6個の炭素原子を有するアルキルと、エポキシ含有基と、1~10個、あるいは1~6個の炭素原子を有するアルコキシ基との組み合わせであり、あるいはR7~8は、両方ともメトキシであり、R9は、グリシジル、グリシドキシプロピル、シクロヘキセノキシプロピルオキシド、[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、又はシクロヘキセニルオキシドであり、R10~11は、95~99モル%、あるいは97~99モル%のメチル基と、0.25~2.5モル%、あるいは0.8~1.2モル%のメトキシ基と、0.25~2.5モル%、あるいは0.8~1.2モル%のグリシジル、グリシドキシプロピル、シクロヘキセノキシプロピルオキシド、[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、又はエポキシシクロヘキセニル基との組み合わせであり、あるいはR10R11SiO2/2単位は、2つのモノマーを表し、ここで1つのモノマーは、R10=R11=メチル及び1つのモノマーを有し、R10はメトキシであり、R-11はエポキシ含有基、あるいはグリシジル、あるいはエポキシヘキシル、又はエポキシシクロヘキシル、あるいはグリシドキシプロピル、あるいはエポキシヘキサンアルキルオキシド、あるいは[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]である。
【0020】
シリコーンポリマーの式(II)において、下付き文字e及びfは、シリコーンポリマーの平均繰り返し単位を表す。下付き文字eは、約2、あるいは2の値を有する。下付き文字fは、10~3000、あるいは10~200の値を有する。
【0021】
当業者であれば、シリコーンポリマーの作製方法を知っているであろう。例えば、シラノール流体及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを高温で酢酸と反応させ、生成物を回収してもよい。当業者であれば、シリコーンポリマーの製造に使用する条件及び反応器を知っているであろう。
【0022】
シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーは、両方とも、(気相クロマトグラフィー(GPC)及びケイ素核磁気共鳴(Si NMR)によって特性評価される。当業者であれば、GPC及びSi NMRを使用してシリコーン樹脂及びシリコーンポリマーを特性評価する方法を知っているであろう。
【0023】
オニウム塩光触媒は、特にエポキシ官能性材料と共に使用することに関して周知されている。一般に、オニウム塩光触媒は、3つの部類、すなわち、ハロニウム光触媒、スルホニウム光触媒、及びホスホニウム光触媒に分類され得る。
【0024】
ハロニウム塩は、一般式:
[(R12)e(R13)fX]g
+[MQh]-(h-i)
[式中、R12は、一価芳香族有機基あり;R13は、二価芳香族有機基あり;Xは、I、Br、Clなどのハロゲンであり;Mは、金属又はメタロイドであり;Qは、Cl、F、Br、Iなどのハロゲン基であり;eは、0又は2に等しい整数であり;fは、0又は1に等しい整数であり;e+f=2であるか、又はXの価数であり;g=h-iであり;iはMの価数であり、2~7の整数であり(両端の値を含む);hはiより大きく、最大8を含む値を有する]
で表される。好ましいハロニウム塩はヨードニウム塩であり、3-メトキシフェニル-フェニル-フェニル-I+BF4
-、2-ニトロフェニル-フェニル-I+BF4
-、(C12H25-フェニル)2I+SbF6
-などが例示される。ハロニウム塩は周知であり、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,026,705号、及び同第3,981,897号に更に記載されている。
【0025】
スルホニウム塩は、一般式:
[(R14)j(R15)k(R16)lX’]m
+[M’Q’n]-(m-p)
[式中、R14は、一価芳香族有機基あり;R15は、アルキル、シクロアルキル、及び置換アルキルから選択される一価有機脂肪族基であり;R16は、脂肪族基及び芳香族基から選択される複素環構造又は縮合環構造を形成する多価有機基であり;X’は、硫黄、セレン、及びテルルから選択される第VIa族元素であり;M’は、金属又はメタロイドであり;Q’は、ハロゲン基であり、jは、0、1、2、又は3の整数であり;kは、0、1、又は2の整数であり;lは、0又は1の整数であり;j+k+1=3であるか、又はXの価数であり;m=n-pであり;pはM’の価数であり、2~7の整数であり(両端の値を含む)、nはpより大きく、最大8の値を有する整数である]
で表され得る。本明細書に記載の名称と一致して、X’は硫黄であることが好ましい。好適なスルホニウム塩としては、トリフェニル-S+SbF6
-;4-チオフェノキシフェニル-ジフェニル-S+SbF6
-、トリシクロジフェニレンフェニル-S+BF4
-、ベンゾイルメチル-シクロ-ブチレンS+PF6
-が挙げられる。更なるスルホニウム塩は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,161,478号に開示されている。
【0026】
ホスホニウム塩は、式:
[(R17)q(R18)r(R19)sX”]t
+[M”Q”u]-(u-v)
[式中、R17は、炭素環式基及び複素環式基から選択される一価芳香族有機基であり;R18は、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、及びこれらの置換誘導体から選択される一価有機脂肪族基であり;R19は、X”を有する芳香族複素環構造又は縮合環構造を形成する多価有機基であり;X”は、N、P、As、Sb、及びBiから選択される第V族元素であり;M”は、金属又はメタロイドであり;Q”は、ハロゲン基であり;qは、0~4に等しい整数であり(両端の値を含む);rは、0~2に等しい整数であり(両端の値を含む);sは、0~2に等しい整数であり(両端の値を含む);q+r+sは、4に等しい値又はX”の価数であり;t=u-vであり;vはM”の価数であり、2~7の整数であり(両端の値を含む);uはvより大きく、最大8の値を有する整数である]
で表され得る。X”は、好ましくは、ホスホニウム塩という用語から理解されるようにリンである。ホスホニウム塩は、例えば、テトラフェニル-P+BF4
-、トリフェニル-ベンゾイルメチル-P+AsF6-、ジメチル-フェニル-ベンゾイルメチル-N+BF4
-で表される。ホスホニウム塩は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,069,055号に更に記載されている。
【0027】
多くのオニウム塩光触媒が市販されている。当業者であればオニウム塩光触媒の選択方法を知っているであろう。
【0028】
縮合触媒は、組成物の縮合硬化を引き起こすように機能する任意の既知の縮合触媒であり得る。縮合硬化触媒は周知である。これらの触媒は、スズ、チタン、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウムなどの金属錯体、又は酢酸、アンモニウムカルボキシレートなどの非金属化合物のブレンステッド酸である。使用してもよいスズ化合物は、例えばジブチルスズジラウレート;ジブチルスズジアセテート;ジブチルスズジメトキシド;カルボメトキシフェニルスズトリスベレート、スズオクトエート;イソブチルスズトリセロエート;ジメチルスズジブチレート;ジメチルスズジネオデカノエート;トリエチルスズタートレート;ジブチルスズジベンゾエート;オレイン酸スズ;ナフテン酸スズ;ブチルスズトリ-2-エチルヘキソエート;酪酸スズである。好ましい縮合触媒は、スズ化合物であり、ジブチルスズジアセテート(dibutyltindacetate)が特に好ましい。使用可能なチタン化合物は、例えば、1,3-プロパンジオキシチタンビス(エチルアセトアセテート);1,3-プロパンジオキシチタンビス(アセチルアセトネート);ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトネート);ナフテン酸チタン;テトラブチルチタネート;テトラ-2-エチルヘキシルチタネート;テトラフェニルチタネート;テトラオクタデシルチタネート;エチルトリエタノールアミンチタネートである。加えて、Weyenbergの米国特許第3,334,067号に示されるβ-ジカルボニルチタン化合物は、本発明において縮合触媒として使用することができる。ジルコニウム化合物、例えばジルコニウムオクトエートも使用することができる。金属縮合触媒の更なる例は、例えば、鉛2-エチルオクトエート;鉄2-エチルヘキソエート;コバルト2-エチルヘキソエート;マンガン2-エチルヘキソエート;亜鉛2-エチルヘキソエート;アンチモンオクトエート;ナフテン酸ビスマス;ナフテン酸亜鉛;ステアリン酸亜鉛である。非金属縮合触媒の例は、ヘキシルアンモニウムアセテート及びベンジルトリメチルアンモニウムアセテートである。
【0029】
二重硬化組成物は、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーの重量に基づいて、5~95%(w/w)、あるいは20~90%(w/w)、あるいは30~85%(w/w)、あるいは40~80%(w/w)のシリコーン樹脂を含む。
【0030】
二重硬化組成物は、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーの重量に基づいて、5~95%(w/w)、あるいは10~80%(w/w)、あるいは15~70%(w/w)のシリコーンポリマーを含む。
【0031】
二重硬化組成物は、触媒量のオニウム塩光触媒、あるいはシリコーン樹脂及びシリコーンポリマーの重量に基づいて、0.005~5%(w/w)、あるいは0.1~2.5%(w/w)のオニウム塩光触媒を含む。
【0032】
二重硬化組成物は、触媒量の縮合触媒、あるいはシリコーン樹脂及びシリコーンポリマーの重量に基づいて、0.005~5%(w/w)、あるいは0.1~2.5%(w/w)、あるいは0.5~1.5%(w/w)の縮合触媒を含む。
【0033】
組成物は、二重硬化組成物の重量に基づいて、最大20%(w/w)、あるいは10%(w/w)、あるいは5%(w/w)の、染料、染料増感剤、充填剤、及び反応性希釈剤などの硬化性シリコーン組成物に一般的に含まれる他の成分を含有してもよい。当業者であれば、硬化性組成物に典型的に使用される成分及び添加剤を知っているであろう。
【0034】
光触媒の有効性を高めるための染料増感剤は、触媒への影響をほとんど又は全く有さないスペクトルの光を吸収し、光触媒に作用する形態で吸収された光を放出することによって一般的に機能することが理解される。したがって、染料増感剤の使用は、光源から入手可能なエネルギーのより良好な利用をもたらし得る。上記のオニウム塩と組み合わせて使用することができる染料は、例えば、the Kirk-Othmer Encyclopedia,2nd Edition,1965,John Wiley & Sons,New YorkのVol.20,p.194-7に示されるようなカチオン性染料である。使用することができるカチオン性染料の一部は、例えば、アクリジンオレンジ;C.I.46005;アクリジンイエロー;C.I.46035;ホスフィンR;C.I.46045;ベンゾフラビン;C.I.46065;セトフラビンT;C.I.49005である。上記に加えて、塩基性染料も使用することができる。これらの塩基性染料の一部は、上記で引用されるとおり、Kirk-Othmer EncyclopediaのVol.7,p.532-4に示されており、ヘマトポルフィリン;4,4’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、及び4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノンが挙げられる。また、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、及びアミノキサンテンなどのキサントンが好適である。
【0035】
二重硬化組成物を作製するために使用される反応容器は、同様の粘度の硬化性シリコーン組成物を作製するために典型的に使用される任意の容器であってもよい。
【0036】
成分を組み合わせて二重硬化組成物を作製するための特定の添加順序、添加速度、温度、又は時間は存在しない。例えば、シリコーンポリマー、シリコーン樹脂、光触媒、及び縮合触媒を一緒に添加し、二重硬化組成物の粘性組成物を混合するための適切なミキサーで混合してもよい。一度組み合わせた組成物は、組成物が完全に混合されるまで混合される。
【0037】
二重硬化性組成物は、少なくとも100、あるいは400~2000、あるいは500~1500psiの引張強度まで硬化する。引張強度については、ASTM D412に従って測定してもよい。
【0038】
二重硬化性組成物は、硬化して、2~40%、あるいは5~30%の伸びを有するコーティングをもたらす。伸びは、ASTM D412に従って測定する。
【0039】
二重硬化性組成物は、硬化して、少なくとも50、あるいは60~100、あるいは65~90、あるいは70~85のショアA硬度を有するコーティングをもたらす。ショアA硬度は、ASTM D2240に従って測定する。
【0040】
二重硬化性組成物は、UV照射に曝露された場合に硬化する。二重硬化組成物を硬化させるための特定の紫外線の量はない。強度の低い放射線への曝露は、硬化に時間がかかる。
【0041】
二重硬化性組成物を硬化させるのに必要な特定の水分の量はない。より少ない量の水への曝露されることにより、より多くの水に曝露される組成物よりも長い時間をかけて硬化する。
【0042】
二重硬化組成物を硬化させる方法であって、二重硬化組成物を紫外線、水分、又は紫外線及び水分に曝露することを含む、方法。
【0043】
物品に保護コーティングを提供する方法であって、
二重硬化組成物を物品に適用して、コーティングされた物品を形成することを含む、方法。方法は、コーティングされた物品を紫外線、水分、又は紫外線及び水分に曝露することを更に含んでもよい。
【0044】
硬化した二重硬化組成物のコーティング又は部分コーティングを有する物品。
【0045】
本明細書で使用される全ての範囲は、範囲の最も外側の値を含むことが意図される。
【0046】
二重硬化性組成物は、紫外線、H2O、又は紫外線及びH2Oに曝露された場合に硬化する。二重硬化性組成物は、硬化して、ショアA硬度によって測定した場合に、他のUV及び湿気硬化シリコーン組成物と比較して、優れた硬質コーティングを提供する一方で、可撓性も提供する。
【実施例】
【0047】
下記の実施例は、本発明の方法をよりよく説明するために示されるものであり、添付の特許請求の範囲内において示される発明を制限するものと考えられるべきではない。別途記載がない限り、実施例において記載される全ての部及び百分率は重量に基づくものである。次の表1において、実施例で使用される略語を説明する。
【表1】
【0048】
実施例1:シリコン樹脂の調製
MeSi(OMe)3(119g)、105gのMe2Si(OMe)2、及び39gのMe3Si(OMe)を、丸底フラスコに添加した。フラスコを窒素でパージし、撹拌した。次いで、1.1gのCsOHを水に溶解し、フラスコに移し、続いて92.25gのグリシドキシプロピルトリメトキシシランを添加した。次いで、水を室温でフラスコにゆっくりと添加した。水の添加後、フラスコ内容物を50~60℃に加熱し、この温度で反応物を1時間撹拌した。次に、200gのトルエンを添加し、内容物を還流させた。メタノール水相をDean-Starkトラップから除去した。1~3時間後、反応温度をゆっくりと上昇させてトルエン還流を行い、全ての水を流した。全ての水を除去した後、加熱を止め、反応温度を60~80℃に下げ、反応物をオクチルシリルホスホネートで中和した。反応生成物を、ガスクロマトグラフィー及びSi NMRにより測定した。
【0049】
実施例2:シリコーンポリマーの調製
シラノール流体(206.7g;平均ジメチルシロキシ繰り返し単位18.4)を丸底フラスコに充填した。次に、117gの3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び2.6gの酢酸(氷状)をフラスコに添加し、窒素ブランケット下でフラスコを撹拌し、110~120℃まで5時間加熱した。Dean-Starkトラップでメタノールを回収した。揮発物(シラノール流体及び残留メタノールからの環)及び未反応の3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を、減圧下(<3mmHg)下で120℃にて1時間除去した。生成物の収率は264.2gであった。
【0050】
実施例3:二重硬化組成物の調製
個々の成分を混合で組み合わせることで組成物を形成した。組成物の成分は以下のとおりであった:
SR-式[PhMeSiO
2/2]
0.35[EpSiO
3/2]
0.16[iBuSiO
3/2]
0.49を有するシリコーン樹脂
SP-式[
(MeO)
2EpSiO
1/2]
2[Me
2SiO
2/2]
18[
(MeO)EpSiO
2/2]
0.4を有するシリコーンポリマー
PC-光触媒:(3-メチルフェニル)((C
12~13分枝状)フェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート
CC-縮合触媒:ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)。
成分を混合し、次いで紫外線及び水分を用いて、並びに組成物の一部を紫外線に曝露しながら、組成物の別の部分を紫外線から遮蔽することによる紫外線単独を用いた硬化について試験した。配合物及び試験結果を、以下の表2に示す。
【表1】
結果は、シリコーン樹脂及びシリコーンポリマーの両方を含有する配合物の硬度及び可撓性及び硬化における利益を示す。