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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-21
(45)【発行日】2023-03-02
(54)【発明の名称】距離計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/489 20060101AFI20230222BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20230222BHJP
【FI】
G01S7/489
G01S7/481 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021076182
(22)【出願日】2021-04-28
(62)【分割の表示】P 2017178246の分割
【原出願日】2017-09-15
(65)【公開番号】P2021107832
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2021-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寛
(72)【発明者】
【氏名】松本 展
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 早紀
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03182159(EP,A1)
【文献】特開2007-316016(JP,A)
【文献】特開2015-155855(JP,A)
【文献】特開平7-98381(JP,A)
【文献】特開2000-56018(JP,A)
【文献】特開2017-72532(JP,A)
【文献】特開2016-142571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射面の角度を周期的に可変させるミラーを介して受光したレーザ光の計測対象物からの反射光を電気信号に変換する複数の受光素子が前記反射光の光束の中心線が移動する第1方向と前記第1方向に直交する第2方向にマトリクス状に配置され、前記第2方向に並んだ受光素子がそれぞれ受光素子群を構成するセンサと、
前記レーザ光の発光タイミングからの時間経過にしたがい距離計測に使用する受光素子群を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出された受光素子群から出力される電気信号に基づいて、測定用信号を生成するAD変換部であって、複数のAD変換器群を有し、前記複数のAD変換器群はそれぞれ複数の前記受光素子群に接続されるAD変換部と、
前記複数のAD変換器群にそれぞれ接続される調整器群を有し、接続されたAD変換器から出力された出力信号の大きさを、前記レーザ光の発光タイミングからの時間経過にしたがい変更される調整ゲインに応じて調整可能である調整部と、
前記レーザ光の発光タイミングと、前記調整部で調整された前記測定用信号に基づくタイミングとの時間差に基づき、前記計測対象物までの距離を計測する距離計測部と、
を備える距離計測装置。
【請求項2】
前記抽出部は、前記ミラーにより反射された前記反射光が入射される前記センサの受光面上の位置に対応する前記受光素子に対応するゲインを上げる、請求項1に記載の距離計測装置。
【請求項3】
前記抽出部は、前記レーザ光の発光タイミングからの時間経過だけでなく、前記ミラーの角度あるいは角速度に基づいて距離計測に使用する前記受光素子群を抽出する、請求項1に記載の距離計測装置。
【請求項4】
入射面の角度を周期的に可変させるミラーを介して受光したレーザ光の計測対象物からの反射光を電気信号に変換する複数の受光素子が前記反射光の光束の中心線が移動する第1方向と前記第1方向に直交する第2方向にマトリクス状に配置され、前記第2方向に並んだ受光素子がそれぞれ受光素子群を構成するセンサを備える距離計測装置の距離計測方法であって、
前記レーザ光の発光タイミングからの時間経過にしたがい距離計測に使用する複数の受光素子群を抽出する抽出工程と、
複数のAD変換器群を有し、前記複数のAD変換器群はそれぞれ複数の前記受光素子群に接続されるAD変換部において、前記抽出工程で抽出された受光素子群から出力される電気信号に基づいて、測定用信号を生成する信号変換工程と、
前記複数のAD変換器群にそれぞれ接続される調整器群において、接続されたAD変換器から出力された出力信号の大きさを、前記レーザ光の発光タイミングからの時間経過にしたがい変更される調整ゲインに応じて調整する調整工程と、
前記レーザ光の発光タイミングと、前記調整工程で調整された前記測定用信号に基づくタイミングとの時間差に基づき、前記計測対象物までの距離を計測する距離計測工程と、
を備える距離計測装置の距離計測方法。
【請求項5】
前記抽出部は、前記レーザ光の発光タイミングからの時間経過だけでなく、前記ミラーの角度あるいは角速度に基づいて距離計測に使用する前記受光素子群を抽出する、請求項1に記載の距離計測装置。
【請求項6】
入射面の角度を周期的に可変させるミラーを介して受光したレーザ光の計測対象物からの反射光を電気信号に変換する複数の受光素子が前記反射光の光束の中心線が移動する第1方向と前記第1方向に直交する第2方向にマトリクス状に配置され、前記第2方向に並んだ受光素子がそれぞれ受光素子群を構成するセンサと、
前記レーザ光の発光タイミングからの時間経過にしたがい距離計測に使用する受光素子群を抽出する抽出部と、
前記複数の受光素子群にそれぞれ接続される調整器群を有し、接続された受光素子群から出力される出力信号の大きさを、前記レーザ光の発光タイミングからの時間経過にしたがい変更される調整ゲインに応じて調整可能である調整部と、
前記複数の調整器群から出力される電気信号に基づいて、測定用信号を生成するAD変換部であって、複数のAD変換器群を有し、前記複数のAD変換器群はそれぞれ複数の前記調整器群に接続されるAD変換部と、
前記レーザ光の発光タイミングと、前記調整部で調整された前記測定用信号に基づくタイミングとの時間差に基づき、前記計測対象物までの距離を計測する距離計測部と、
を備える距離計測装置。
【請求項7】
入射面の角度を周期的に可変させるミラーを介して受光したレーザ光の計測対象物からの反射光を電気信号に変換する複数の受光素子が前記反射光の光束の中心線が移動する第1方向と前記第1方向に直交する第2方向にマトリクス状に配置され、前記第2方向に並んだ受光素子がそれぞれ受光素子群を構成するセンサを備える距離計測装置の距離計測方法であって、
前記レーザ光の発光タイミングからの時間経過にしたがい距離計測に使用する複数の受光素子を抽出する抽出工程と、
前記複数の受光素子群にそれぞれ接続される調整器群を有し、接続された受光素子群から出力される出力信号の大きさを調整ゲインに応じて調整可能である調整部において、前記レーザ光の発光タイミングからの時間経過にしたがい前記調整ゲインを調整する工程と、
複数のAD変換器群を有し、前記複数のAD変換器群はそれぞれ複数の前記調整器群に接続されるAD変換部において、前記複数の調整器群から出力される電気信号に基づいて、測定用信号を生成する工程と、
前記レーザ光の発光タイミングと、前記調整部で調整された前記測定用信号に基づくタイミングとの時間差に基づき、前記計測対象物までの距離を計測する距離計測工程と、
を備える距離計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、距離計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LIDAR(Light Detection and Ranging、 Laser Imaging Detection and Ranging)と称される距離計測装置が知られている。この装置では、計測対象物に回転するミラーを介してレーザ光を間欠照射し、計測対象物により反射された反射光を、このミラーを介してセンサで検出する。光の往復時間は、距離計測装置から計測対象物までの距離、即ち光路長が長いほど長くなる。そのため、光源がレーザ光を出射したタイミングと反射光が検出されたタイミングとの時間差を用いて、距離を測定できる。
【0003】
一方で、ミラーの回転により、レーザ光を照射したタイミングのミラーの回転角と反射光がミラーに入射したタイミングのミラーの回転角との角度差が生じる。この角度差に合わせて、センサへ入射させる反射光のミラーに対する入射角の範囲を広げる必要がある。
【0004】
ところが、入射角の範囲を広げるにしたがい、多くの環境光を受けてしまうので、距離の計測精度が低下してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-215005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ミラーの回転速度を上げても安定的に距離計測が可能な距離計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る距離計測装置は、光源と、照射光学系と、受光光学系と、センサと、抽出部と、調整部と、信号生成部と、距離計測部と、を備える。光源は、間欠的にレーザ光を発光する。照射光学系は、光源が発光するレーザ光をレーザ光に対する入射面の角度を周期的に可変させるミラーで反射させて計測対象に照射する。受光光学系は、ミラーを介してレーザ光の反射光を受光する。センサは、受光光学系を介して受光した反射光を電気信号に変換する複数の受光素子を有する。抽出部は、複数の受光素子のうち、計測対象物との距離計測に使用する受光素子を抽出する。調整部は、抽出部で抽出された受光素子に応じた増幅率にて、受光素子の電気信号の信号値を調整する。信号生成部は、調整部で調整された電気信号に基づいて、時系列な測定用信号を生成する。距離計測部は、レーザ光の発光タイミングと、時系列な測定用信号の信号値のピーク位置のタイミングとの時間差に基づき、計測対象までの距離を計測する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る距離計測装置1の概略的な全体構成を示す図。
図2】一施形態に係る距離計測装置の構成例を示す図。
図3】光源の発光パターンを模式的に示している図。
図4】計測対象物上に照射されるレーザ光L1の水平方向の位置と照射時間との関係を模式的に示す図。
図5】複数の受光素子がマトリクス状に配置されたセンサの構成例を示す図。
図6】生成部の詳細な構成示すブロック図。
図7】水平方向に一次元列に配置された複数の受光素子と、調整器との関係で示す図。
図8】反射光に基づく電気信号のAD変換部によるサンプリング値の一例を示す図。
図9】測定距離と受光素子の組合せとの関係をミラーの角速度毎にまとめた図。
図10】受光素子とAD変換器との接続の関係をミラーの角速度毎にまとめた図。
図11A】反時計回りに角速度大でミラーが回転する場合にAD変換器に主として入力する受光素子を表した図。
図11B】反時計回りに角速度中でミラーが回転する場合のゲインの調整例を示す図。
図12】経過時間に応じて主として使用する受光素子の出力信号の変更の流れを示すフローチャート。
図13】レーザ光の水平方向の位置をミラーの回転周期毎に徐々にずらした場合を模式的に示す図。
図14】レーザ光の水平方向の位置をミラーの回転方向に応じてずらした場合を模式的に示す図。
図15】変形例2に係る生成部の詳細な構成を示すブロック図。
図16】変形例2に係る一次元列に配置された複数の受光素子と、調整器との関係で示す図。
図17】時計回りに角速度中でミラーが回転する場合のゲインの調整例を示す図。
図18】変形例3に係る生成部の詳細な構成を示すブロック図。
図19】変形例3に係る一次元列に配置された複数の受光素子と、調整器との関係で示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る距離計測装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0010】
(一実施形態)
図1は、一実施形態に係る距離計測装置1の概略的な全体構成を示す図である。この図1に示すように距離計測装置1は、走査方式及びTOF(Time Of Flight)方式を用いて、計測対象物10の距離画像を生成する。より具体的には、この距離計測装置1は、出射部100と、機構光学系200と、計測部300と、画像処理部400と、を備えて構成されている。
【0011】
出射部100は、レーザ光L1を間欠的に出射する。光学機構系200は、出射部100が出射するレーザ光L1を計測対象物10に照射するとともに、計測対象物10上で反射されたレーザ光L1の反射光L2を計測部300に入射させる。ここで、レーザ光とは、位相および周波数が揃った光を意味する。
【0012】
計測部300は、光学機構系200の受光光学系を介して受光した反射光L2に基づき、計測対象物10までの距離を計測する。すなわち、この計測部300は、出射部100がレーザ光L1を計測対象物10に照射したタイミングと、反射光L2が計測されたタイミングとの時間差に基づき、計測対象物10までの距離を計測する。
【0013】
画像処理部400は、ノイズの除去、歪み補正、及び補間処理を行い、計測対象物10上の複数の測定点までの距離に基づき、最終的な距離画像データを出力する。画像処理部400は、距離計測装置1の筐体内に組み込んでもよい。
【0014】
次に、図2に基づき、出射部100、機構光学系200、及び計測部300のより詳細な構成例を説明する。図2は、第1実施形態に係る距離計測装置1の構成例を示す図である。
【0015】
この図2に示すように、距離計測装置1は、走査方式及びTOF(Time Of Flight)方式を用いて、計測対象物10の距離画像を生成する。上述のように、この距離計測装置1は、出射部100と、機構光学系200と、計測部300と、画像処理部400とを備えて構成されている。
【0016】
出射部100は、光源11と、発振器11aと、第1駆動回路11bと、制御部16と、第2駆動回路16aとを、有する。
【0017】
機構光学系200は、照射光学系202と、受光光学系204とを有する。照射光学系202は、レンズ12と、第1光学素子13と、レンズ13a、ミラー(反射デバイス)15とを有する。
【0018】
受光光学系204は、第2光学素子14と、ミラー15とを有する。すなわち、これら照射光学系202、及び受光光学系204は、ミラー15を共有している。
【0019】
計測部300は、レンズ14aと、光検出器17と、センサ18と、第1増幅器19と、生成部20と、距離計測部21とを有する。なお、光を走査する既存方法としては、距離計測装置1を回転させる方法(以下、回転方法と呼ぶ)がある。また、別の走査する既存方法として、OLA(Optical Phased Array)方法がある。本実施形態は、光を走査する方法に依存しないため、回転方法やOLAにより光を走査してもよい。
【0020】
図2に示すように、照明光学系202の光軸O1上には、光源11、レンズ12、第1光学素子13、第2光学素子14、及びミラー15がこの順番に配置されている。出射部100の発振器11aは、制御部16の制御信号に基づき、パルス信号を生成する。第1駆動回路11bは、パルス信号に基づいて光源11を駆動する。光源11は、例えば面発光レーザであり、第1駆動回路11bによる駆動に応じてレーザ光L1を間欠的に発光する。このレーザ光L1は進行方向に対する指向性が高いので、光学部材で光の幅を変更しない限り、照射範囲を維持した状態で進行する。
【0021】
図3は、光源11の発光パターンを模式的に示している図である。図3において、横軸は時間を示し、縦線は光源11の発光タイミングを示している。下側の図は、上側の図における部分拡大図である。この図3に示すように光源11は、例えばT=4~5マイクロ秒の間隔で、レーザ光L1(n)(0≦n<N)を間欠的に繰り返し発光する。ここで、n番目に発光されるレーザ光L1をL1(n)と表記する。例えばNは、一枚分の距離画像を生成するために照射されるレーザ光L1の照射回数である。
【0022】
図2に示すように、レンズ12は、例えばシリンドリカルレンズであり、光軸O1に直交する垂直方向にレーザ光L1を広げ、第1光学素子13に導いている。
【0023】
第1光学素子13は、レーザ光L1を透過すると共に、レーザ光L1の一部を光軸O3に沿って光検出器17に入射させる。第1光学素子13は、例えばビームスプリッタである。
【0024】
第2光学素子14は、第1光学素子13を透過したレーザ光L1を更に透過して、レーザ光L1をミラー15に入射させる。第2光学素子14は、例えばハーフミラーである。
【0025】
第2駆動回路16aは、制御部16から供給された駆動信号に従って、ミラー15を駆動する。これにより、ミラー15は、レーザ光L1に対する入射面の角度を回転周期Fにより可変させる。ミラー15で反射したレーザ光L1は光軸O1aに沿って進行する。制御部16は、第2駆動回路16aを制御するとともに、距離計測装置1の全体の処理動作を制御する。ミラー15は、時計回りの回転と、反時計回りの回転とを交互に繰り返しており、ここでの回転周期Fは、時計回りの回転を開始した時点から反時計回りの回転が終了した時点までの時間差を意味する。
【0026】
図4は、ミラー15を介して計測対象物10上に照射されるレーザ光L1の水平方向の位置を模式的に示す図である。なお、本明細書では、所定の基準面の法線方向にミラー15の回転軸RA1を配置し、基準面の面方向を水平方向とし、基準面の法線方向を垂直方向とする。縦軸は計測対象物10上の水平方向の位置を示し、横軸は時間を示す。この図4に示すようにミラー15の回転周期Fに応じて、計測対象物10上に間欠的に照射されるレーザ光L1(n)(0≦n<N)の照射される水平方向の位置が周期的に変動する。
ミラー15の角速度は、反時計回りの回転から時計回りの回転に切り替わる時点で0となり、同様に、時計回りの回転から反時計回りの回転に切り替わる時点で0となる。一方で、これらの角速度が0になる時点間の中間時点で角速度は最大となる。
【0027】
図2に示すように、受光光学系204の光軸O2軸上には、反射光L2が入射する順に、ミラー15の反射面15a、第2光学素子14、レンズ14a、センサ18が配置されている。
ここで、光軸O1とは、レンズ12の中心位置を通過するレンズ12の焦点軸である。光軸O2とは、レンズ14aの中心位置を通過するレンズ14aの焦点軸である。
【0028】
第2光学素子14は、反射面15aで反射された反射光の進行方向を変えて、光軸O2に沿って計測部300のレンズ14aに入射させる。レンズ14aは、光軸O2に沿って入射した反射光L2をセンサ18上に集光させる。一方で、光軸O2と異なる方向に反射された光は、反射面15aに入射しないので、センサ18の入射面に到達しない。
【0029】
図5は、複数の受光素子がマトリクス状に配置されたセンサ18の構成例を示す図である。ここでは、ミラー15の角速度が0、すなわちミラー15が停止している場合の反射光L2のセンサ上の位置を模式的に示している。この図5に示すように、照射光学系204の光軸O2は、センサ18の受光面の中央部と交差している。また、例えば受光素子群181では、受光素子181が垂直方向に一次元列に6つ配置されている。すなわち、センサ18は、センサ18の受光面の垂直方向にそれぞれ一次元列に受光素子が配置された受光素子群181~185で構成されている。さらにまた、受光素子群183~185のうち受光素子群183、184、185の順に光軸O2から離れた位置に配置されている。同様に、受光素子群183、182、181の順に光軸O2から離れた位置に配置されている。なお、以下の説明で受光素子群181~185の中の単一の受光素子を説明する場合、受光素子181~185と表記する。例えば、受光素子群181の中の一つの受光素子を受光素子181と表記する。
【0030】
基準線LO2は、光軸O2方向を進行する反射光L2の光束の中心線である。この基準線LO2は、ミラー15の角速度が0であればセンサ18の受光面の水平方向の中心位置を通過する。一方でミラー15の角速度が0でない場合、基準線LO2は、レーザ光L1が発光されたタイミングから反射光L2がミラー15に到達するまでの経過時間に応じて、センサ18の受光面の水平方向の中心位置から185、又はセンサ18の受光面の水平方向の中心位置から181に向けて移動する。すなわち、ミラー15の回転方向が時計回りであれば、基準線LO2は、レーザ光L1が発光されたタイミングからの経過時間に応じて、受光素子群183から181に向けて移動する。一方で、ミラー15の回転方向が反時計回りであれば、基準線LO2は、レーザ光L1が発光されたタイミングからの経過時間に応じて、受光素子群183から185に向けて移動する。これらから分かるように、レーザ光L1が発光されたタイミングからの経過時間とミラー15の角速度とに応じて、反射光L2の検出に主として用いる受光素子を抽出すれば、環境光の影響が低減可能となる。
【0031】
また、本実施形態に係るレンズ14a(図2)は、反射光L2の水平方向の幅が受光素子の開口の幅よりも狭くなるように反射光L2を集光している。このため、反射光L2は、水平方向に連続して配置される3つの受光素子に同時に入射することはない。例えば、受光素子群181、183、185に反射光L2は同時に入射しない。同様に、受光素子群182、184に反射光L2は同時に入射しない。
【0032】
図2に示すように、生成部20は、レーザ光L1の発光開始タイミングから次のレーザ光L1の発光開始タイミングまでの期間Tにおける時系列な測定用信号を生成する。この生成部20は、受光素子群181~185のうち、水平方向に一次元列に並んだ受光素子181~185毎に測定用信号を生成する。例えば、図5に示すセンサ18では垂直方向に6つの受光素子が一次元列に配置されているので、生成部20では6つの測定用信号が生成される。
【0033】
図2に示すように、距離計測部21は、第1増幅器19の出力信号を用いてレーザ光L1の発光タイミングと、生成部20の生成した時系列な測定用信号毎の信号値のピーク位置のタイミングとの時間差に基づき、計測対象物10までの距離を計測する。すなわち、距離計測部21は、計測対象物10の垂直方向6点の距離を計測する。なお、本実施形態に係る垂直方向の測定点数は、6点であるがこれに限定されない。
【0034】
次に図6に基づき、生成部20の詳細な構成を説明する。図6は生成部20の詳細な構成を示すブロック図である。この図6に示すように、生成部20は、抽出部22と、調整部23と、AD変換部24と、記憶部25と、信号生成部26とを備えて構成されている。
【0035】
抽出部22は、センサ18の受光素子群181~185(図5)の中の受光素子のうち、計測対象物10との距離計測に使用する受光素子を抽出する。例えば、抽出部22は、ミラー15により反射された反射光L2が入射すべきセンサ18の受光面上の位置に対応する受光素子を抽出する。より具体的には、抽出部22は、レーザ光L1の発光タイミングからの経過時間とミラー15の角速度とに応じて、受光素子群181~185(図5)の中から計測対象物10との距離計測に使用する受光素子群を抽出する。すなわち、抽出部22は、レーザ光L1の発光タイミングからの経過時間が長くなるにしたがい、受光光学系204の光軸中心O2からより離れた位置の受光素子群を抽出する。また、抽出部22は、ミラー15の角速度が速くなるにしたがい、レーザ光L1の発光タイミングから所定の時間が経過したときに抽出する受光素子群の位置を受光光学系204の光軸中心O2からより離れた位置とする。
【0036】
調整部23は、抽出部22で抽出された受光素子に応じた増幅率にて、この受光素子の電気信号の信号値を調整する。例えば、調整部23は、受光素子群181~185(図5)の中から抽出部22で抽出された受光素子群の電気信号それぞれの大きさを調整して、AD変換部24に出力する。より具体的には、調整部23は、抽出部22により抽出された受光素子の増幅率をセンサ18が有する受光素子の中の他の受光素子の増幅率よりも大きくする。
【0037】
AD変換部24は、調整部23の出力する電気信号に基づき、センサ18が有する受光素子群181~185(図5)の中の受光素子から入力された電気信号それぞれを所定のサンプリング間隔でサンプリングする。調整部23及びAD変換部24の詳細な構成は後述する。
【0038】
記憶部25は、AD変換部24が変換したデジタル信号を時系列に記憶する。記憶部は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。
【0039】
信号生成部26は、記憶部25に記憶される受光素子群181~185(図5)それぞれの出力信号に基づくデジタル信号を、水平方向に一次元列に配置される受光素子毎に加算して時系列な測定用信号を生成する。これにより、水平方向に一次元列に配置される受光素子181~185毎に測定信号が生成される。
【0040】
次に図7に基づき、調整部23及びAD変換部24のより詳細な構成を説明する。図7は、受光素子群181~185と、調整部23の調整器群212A~212Eとの関係で示す図である。ここでは、センサ18の受光面上における反射光L2の光束の一部を計測対象物10までの距離に対応させて模式的に示している。すなわち、計測対象物10までの距離が遠くなるにしたがい、反射光L2の入射位置は、受光光学系204の光軸中心から離れた位置に移動する。
【0041】
図7に示すように、調整部23は、垂直方向に一次元列に配置された受光素子群181~185にそれぞれ接続される調整器群212A~212Eを有する。例えば、受光素子群181の中の受光素子181のそれぞれは、調整器群212Aの中の対応するそれぞれの調整器212Aに接続されている。これにより、調整器群212Aの中の調整器212Aのそれぞれは、受光素子群181の中の対応する受光素181それぞれの出力信号の大きさを調整可能である。
【0042】
同様に受光素子群182の中の受光素子182それぞれは、対応する調整器群212Dのそれぞれに接続され、受光素子群183の中の受光素子183それぞれは、対応する調整器群212Bの中の対応するそれぞれの調整器212Bに接続され、受光素子群184の中の受光素子184それぞれは、対応する調整器群212Eの中の対応するそれぞれの調整器212Eに接続され、受光素子群185の中の受光素子185それぞれは、対応する調整器群212Cの中の対応するそれぞれの調整器212Cに接続されている。これにより、例えば調整部23は、受光素子群181~185の中から抽出部22が抽出した受光素子群に応じて、調整器群212A~212Eの増幅率を変更して、センサ18の複数の受光素子の出力する電気信号それぞれの大きさを調整する。調整器群212A~212Eの中の調整器の増幅率を0にした場合には、その調整器に接続される受光素子の電気信号はAD変換部24に出力されない。
【0043】
図7に示すように水平方向に一次元列に並ぶ受光素子181~185の中の受光素子181に調整器212Aが接続され、受光素子183に調整器212Bが接続され、受光素子185に調整器212Cが接続されている。これら調整器212A、調整器212B、および調整器212CにはAD変換器210Aが接続されている。同様に、水平方向に一次元列に並ぶ受光素子181~185の中の受光素子182に調整器212Dが接続され、受光素子184に調整器212Eが接続されている。これら調整器212D、および調整器212EにはAD変換器210Bが接続されている。
【0044】
すなわち、AD変換部24が有するAD変換器群210Aは、調整器群212A~212Cを介して受光素子群181、183、185に接続されている。同様に、AD変換器群210Bは、調整器群212D、212Eを介して受光素子群182、184に接続されている。
【0045】
このような接続により、調整器群212A~212Cは、AD変換器群210Aへの入力を受光素子群181、183、185のなかのいずれかの受光素子群に切り替える、又は受光素子群181、183、185の出力に重みをつけることが可能となる。同様に、調整器群212D、212Eは、AD変換器群210Bへの入力を受光素子群182、184のなかのいずれかの受光素子群に切り替える、又は受光素子群182、184の出力に重みを付けることが可能となる。
【0046】
また、図5で示したように反射光L2の水平方向の幅は、受光素子の開口の範囲よりも狭いので、水平方向に連続して配置され3つの受光素子に同時に入射することはない。このため、AD変換器群210Aを受光素子群181、183、185に接続しても、それぞれの受光素子群181、183、185には同時に反射光L2は入射しない。このため、受光素子群181、183、185の中で反射光L2を受光している受光素子群に対応する調整器群の増幅率を上げ、他の調整器群の増幅率を0としてもよい。これにより、受光素子群181、183、185の中で反射光L2を受光していない受光素子群により環境光などが電気信号に変換されることが回避可能となる。同様に、受光素子群182、184の中で反射光L2を受光している受光素子群に対応する調整器群の増幅率を上げ、他の調整器群の増幅率を0としてもよい。これにより、受光素子群182、184の中で反射光L2を受光していない受光素子群により環境光などが電気信号に変換されることが回避可能となる。
【0047】
図8は、反射光L2に基づく電気信号のAD変換部24によるサンプリング値の一例を示す図である。図8の横軸はAD変換部24によるサンプリングタイミングを示し、縦軸はサンプリングにより得られたデジタル信号の信号値(輝度)を示す。原点の0は、光検出器17がレーザ光L1を検出したタイミングを示している。
【0048】
ここでは、距離計測装置1から近距離にある計測対象物10を測定した時系列な測定用信号の信号値と、計測装置1から中距離にある計測対象物10を測定した時系列な測定用信号の信号値と、計測装置1から遠距離にある計測対象物10を測定した時系列な測定用信号の信号値と、を重ねて表示している。信号値のピークの位置は計測対象物10から反射光L2が戻ってきたタイミングを示している。また、下側の矢印は、受光素子群181~185の出力信号の内の測定に主として使用した出力信号を示している。
【0049】
図8に示すように、距離計測装置1から計測対象物10までの距離が長くなるにしたがい、レーザ光L1の発光のタイミングと、時系列なデジタル信号の信号値のピークの位置のタイミングとの時間差が大きくなる。すなわち、距離=光速×(信号値のピーク位置のタイミング-光検出器17がレーザ光L1を検出したタイミング)/2なる式で距離が求められる。また、サンプリングタイミング、つまり計測対象物10間での測定距離に応じて測定に主として使用する受光素子群が、183、184、185の順に変更されている。
【0050】
図7及び図8を参照にしつつ図9に基づき、測定距離と受光素子の組合せとの関係を説明する。図9は、測定距離と受光素子の組合せとの関係をミラー15の角速度毎にまとめた図である。
【0051】
例えば、距離計測装置1と計測対象物10との距離が例えば50メートルの場合、光の往復時間は0.33マイクロ秒である。ミラー15の振動数は、例えば2000ヘルツであるので、ミラー15は、0.33マイクロ秒の間に、最大で0.25度回転する。換言すると、50メール離れた位置の計測対象物10を測定する場合、レーザ光L1が発光したタイミングから、反射光L2がミラー15に到達するまでに、ミラー15は最大で0.25度回転している。
【0052】
このように、ミラー15の振動数が定まっている場合、ミラー15の角速度は、レーザ光L1が出射したタイミングにおけるミラー角度と振動数により定めることができる。また、角速度をミラーの変位センサから測定することも考えられる。また、距離計測装置1と計測対象物10との距離に基づき、測定レーザ光L1が発光したタイミングから反射光L2がミラー15に到達するまでの時間も定めることが可能である。したがって、レーザ光L1の照射を開始したタイミングからの経過時間に応じて、センサ18上のどの位置に反射光L2が受光されるかを求めることが可能となる。
【0053】
また、距離計測装置1の測定限界時間はレーザ光L1の照射間隔T(図3)に対応する。すなわち、測定限界時間は、レーザ光L1の発光が開始されたタイミングから次のレーザ光L1の発光が開始されまでの時間Tに対応する。
【0054】
例えば、角速度が小の場合、時間Tが経過してもミラー15の回転角は、反射光L2のセンサ18上の受光位置を受光素子183から変更するほど大きくならない。このため、全測定範囲において、受光素子183を用いることが可能である。
【0055】
一方で角速度が大である場合、時間Tが経過したタイミングでのミラー15の回転角は、反射光L2のセンサ18上の受光位置を受光素子181又は185まで変更させる。このため、レーザ光L1の照射を開始したタイミングからの経過時間にしたがい、反射光L2のセンサ18上の受光位置は、受光素子183から受光素子185まで、或いは、受光素子183から受光素子181まで順に変更される。つまり、ミラー15が反時計回り(+)である場合に受光素子183から受光素子185までを順に使用し、時計回り(-)である場合に受光素子183から受光素子181までを順に使用する。
【0056】
図7を参照にしつつ図10に基づき、受光素子とAD変換器との接続の関係について説明する。図10は、受光素子とAD変換器との接続の関係をミラー15の角速度毎にまとめた図である。角速度が小の場合、時間Tが経過してもミラー15の回転角は、反射光L2のセンサ18上の受光位置を受光素子183から変更するほど大きくならない。このため、AD変換器210Aへは受光素子183からの電気信号が主として入力されるように、調整器212A、212B、212Cの出力を調整する。
【0057】
一方で角速度が大である場合、時間Tが経過したタイミングでのミラー15の回転角は、反射光L2のセンサ18上の受光位置を受光素子181又は185まで変更させる。このため、レーザ光L1の照射を開始したタイミングからの経過時間にしたがい、AD変換器210Aへの入力が受光素子183から受光素子181又は受光素子183から受光素子185に変更されるように、調整器212A、212B、212Cの出力を調整する。同様に、AD変換器210Bへの入力が受光素子182又は184となるように、調整器212D、212Eの出力を調整する。
【0058】
図11Aは、反時計回り(+)に角速度大でミラー15が回転する場合にAD変換器210A、AD変換器210Bに主として入力する受光素子を表した図である。横軸が計測対象物10までの距離であり経過時間に対応する。この図11Aに示すように、計測対象物10が近距離である場合、受光素子183の出力を主としてAD変換器210Aによりデジタル信号に変換する。更に計測対象物10迄の距離が長くなると、受光素子183の出力を主としてAD変換器210Aによりデジタル信号に変換し、受光素子184の出力を主としてAD変換器210Bによりデジタル信号に変換する。
【0059】
更に計測対象物10迄の距離が長くなると、受光素子184の出力を主としてAD変換器210Bによりデジタル信号に変換する。更に計測対象物10迄の距離が長くなると、受光素子184の出力を主としてAD変換器210Aによりデジタル信号に変換し、受光素子185の出力を主としてAD変換器210Bによりデジタル信号に変換する。更に計測対象物10迄の距離が長くなると、受光素子185の出力を主としてAD変換器210Bによりデジタル信号に変換する。
【0060】
図11Bは、反時計回り(+)に角速度中でミラー15が回転する場合の受光素子183、184、185(図7)の調整ゲイン例を示す図である。横軸が経過時間であり計測対象物10までの距離に対応する。図7に示すように、調整器212Bが受光素子183に対応し、調整器212Eが受光素子184に対応し、調整器212Cが受光素子185に対応する。また、調整ゲインBが調整器212Bのゲインに対応し、調整ゲインEが調整器212Eのゲインに対応し、調整ゲインCが調整器212Cのゲインに対応している。
【0061】
この図11Bに示すように、受光素子183に対応する調整ゲインBは、時間経過にしたがい下がっていき、T1が経過すると一定値になる。受光素子184に対応する調整ゲインEは、時間経過にしたがい上がり、T2が経過すると時間経過にしたがい下がっていく。受光素子185に対応する調整ゲインCは、T2が経過すると時間経過にしたがいあがっていく。
【0062】
これらのことから分かるように、ミラー15の角速度とレーザ光L1の発光が開始されたタイミングからの経過時間に基づき、主として使用する電気信号を受光素子の位置に応じて変更させるので、反射光L2に対応しない光に基づく電気信号を測定に用いることが抑制され、ノイズを低減させることが可能となる。換言すると、ミラー15により反射された反射光L2が入射すべきセンサ18の受光面上の位置に対応する受光素子の出力する電気信号を主として測定に用いることで、ノイズを低減させることが可能となる。
【0063】
図12は、反時計回り(+)に角速度中でミラー15が回転する場合に経過時間に応じて主として使用する受光素子の出力信号の変更の流れを示すフローチャートである。まず、制御部16の制御にしたがい光源11がレーザ光L1を照射する(ステップS100)。
【0064】
次に、抽出部22は、受光素子183を抽出する。調整部23は、受光素子183群の入力が主としてAD変換器群210Aに入力されるように、調整器群212A、212B、212Cの増幅率を調整する(ステップ102)。AD変換器群210Aは電気信号をそれぞれデジタル信号に変換し記憶部25に時系列にデジタル信号を記憶させる。
【0065】
次に、抽出部22は、レーザ光L1の発光を開始してからの時間TがT0を超えたか否かを判定し(ステップ104)、超えていなければ(ステップ104:NO)、ステップ102からの処理を繰り返す。
【0066】
一方で、超えていれば(ステップ104:YES)、抽出部22は、受光素子群183と184を抽出する。調整部23は、受光素子群183の出力を主としてAD変換器群210Aに入力させた状態で、AD変換器群210Bへの入力が主として受光素子群184となるように、調整器群212D、212Eの増幅率を調整する(ステップ106)。AD変換器群210Aのそれぞれは電気信号をデジタル信号に変換し記憶部25に時系列にデジタル信号を記憶させる。同様に、AD変換器群210Bは電気信号をデジタル信号に変換し記憶部25に時系列にデジタル信号を記憶させる。
【0067】
次に、抽出部22は、レーザ光L1の照射を開始してからの時間TがT1を超えたか否かを判定し(ステップ108)、超えていなければ(ステップ108:NO)、ステップ106からの処理を繰り返す。
【0068】
一方で、超えていれば(ステップ108:YES)、抽出部22は、受光素子群184を抽出する。調整部23は、AD変換器群210Bへの入力が受光素子群184となるように、調整器群212D、212Eの出力を調整する(ステップ110)。AD変換器群210Bのそれぞれは電気信号をデジタル信号に変換し記憶部25に時系列にデジタル信号を記憶させる。
【0069】
次に、制御部16は、レーザ光L1の照射を開始してからの時間TがTfinishを超えたか否かを判定し(ステップ112)、超えていなければ(ステップ112:NO)、ステップ110からの処理を繰り返す。一方で、超えていれば(ステップ112:YES)、レーザ光L1の一発光分の処理を終了する。
【0070】
信号生成部26は、AD変換器群210A、210Bがそれぞれ生成したデジタル信号を一次元列ごとに加算して時系列な測定用信号を複数生成する。このように抽出部22は、レーザ光L1の発光タイミングからの経過時間とミラー15の角速度に応じて、計測に用いる受光素子を抽出する。調整部23は、抽出部22に抽出された受光素子の出力信号がAD変換器群210A、210Bに主として入力されるように、調整器群212A~212Eの増幅率を調整する。
【0071】
以上、一の実施形態によれば、抽出部22が、受光素子群181~185の中から計測対象物10との距離計測に使用する受光素子を抽出し、調整部23が、抽出された受光素子に応じた増幅率にて、これら受光素子の電気信号の信号値を調整することとした。これにより、ミラー15により反射された反射光L2が入射すべきセンサ18の受光面上の位置に対応する受光素子の出力信号を主な成分とする時系列な測定用信号を生成することが可能となり、環境光の影響を低減できる。このため、ミラー15の回転速度を上げても環境光の影響を低減でき、安定的に距離計測が可能となる。
(変形例1)
【0072】
一実施形態では、図4に示すように、制御部16は、ミラー15の回転開始タイミングからコヒーレントL1の発光が開始されるように発振器11aを制御していたに対し、変形例1では、ミラー15の回転開始タイミングからコヒーレントL1の発光の開始タイミングが各周期でずれるように発振器11aを制御することで相違する。以下では相違する点を説明する。
【0073】
図13は、ミラー15の回転開始タイミングからコヒーレントL1の発光の開始タイミングが各周期でずれるように発振器11aを制御した場合の測定点を示した図である。図13に示すように、計測対象物10上に照射されるレーザ光L1の水平方向の位置が、ミラー15の回転周期毎に徐々にずれる。このように、測定点の位置がずれるので、距離画像内の測定点の数が増加し、画像処理部400で生成される距離画像の解像度を上げることが可能となる。
【0074】
図14は、計測対象物10上に照射されるレーザ光L1の水平方向の位置をミラー15の回転方向に応じてずらした場合を模式的に示す図である。縦軸は計測対象物10上の水平方向の位置を示し、横軸は時間を示す。図13に示すように、制御部16は、一方向に回転している場合のミラー15の回転角に対する光源11の発光タイミングと、他方向に回転している場合のミラー15の回転角に対する光源の発光タイミングと、をT/2(図3)ずらす制御を行う。これにより、スキャン1における測定点間の中間点に、スキャン2における測定点が配置される。このように、スキャン1における測定点間の中間点に、スキャン2における測定点が配置されるので、距離画像の解像度をより効率的に上げることが可能となる。
【0075】
(変形例2)
一実施形態では、複数の受光素子から出力される電気信号の大きさを変更した後にAD変換したのに対し、変形例2では、複数の受光素子から出力される電気信号をAD変換した後に、信号の大きさを変更することで相違する。以下では相違する点を説明する。
【0076】
図15は、変形例2に係る生成部20Aの詳細な構成を示すブロック図である。この図15に示すように、変形例2に係る生成部20Aは、抽出部22と、調整部23Aと、AD変換部24Aと、記憶部25と、信号生成部26とを備えて構成されている。一実施形態と同等の構成には同一の番号を付して説明を省略する。
【0077】
AD変換部24Aは、センサ18が有する受光素子群181~185(図5)の中の受光素子から入力された電気信号それぞれを所定のサンプリング間隔でサンプリングし、測定用信号を生成する。
【0078】
調整部23Aは、抽出部22で抽出された受光素子に応じた増幅率にて、AD変換部24Aで生成された測定用信号の大きさを調整する。より具体的には、調整部23は、抽出部22により抽出された受光素子に対応するAD変換器の増幅率をより大きくする。
【0079】
図16は、受光素子群181~185と、AD変換部24AのAD変換器210A~210Eと、調整部23の調整器群212A~212Eとの関係で示す図である。ここでは、センサ18の受光面上における反射光L2の光束の一部を計測対象物10までの距離に対応させて模式的に示している。すなわち、計測対象物10までの距離が遠くなるにしたがい、反射光L2の入射位置は、受光光学系204の光軸中心から離れた位置に移動する。
【0080】
図16に示すように、AD変換部24Aは、垂直方向に一次元列に配置された受光素子群181~185にそれぞれ接続されるAD変換器群210A~210Eを有する。また、調整部23Aは、垂直方向に一次元列に配置されたAD変換器群210A~210Eにそれぞれ接続される調整器群212A~212Eを有する。例えば、AD変換器群210Aの中のAD変換器群210Aのそれぞれは、調整器群212Aの中の対応するそれぞれの調整器212Aに接続されている。これにより、調整器群212Aの中の調整器212Aのそれぞれは、AD変換器群210Aの中の対応するAD変換器それぞれの出力信号の大きさを調整可能である。
【0081】
図17は、時計回り(-)に角速度中でミラー15が回転する場合の受光素子181、182、183(図7)の調整ゲイン例を示す図である。横軸が経過時間であり計測対象物10までの距離に対応する。図7に示すように、調整器212Aが受光素子181に対応し、調整器212Dが受光素子182に対応し、調整器212Bが受光素子183に対応する。また、調整ゲインBが調整器212Bのゲインに対応し、調整ゲインDが調整器212Dのゲインに対応し、調整ゲインAが調整器212Aのゲインに対応している。
【0082】
この図17に示すように、受光素子183に対応する調整ゲインBは、時間経過にしたがい下がっていき、T1が経過すると一定値になる。受光素子182に対応する調整ゲインDは、時間経過にしたがい上がり、T2が経過すると時間経過にしたがい下がっていく。受光素子181に対応する調整ゲインAは、T2が経過すると時間経過にしたがいあがっていく。
【0083】
これらのことから分かるように、ミラー15の角速度とレーザ光L1の発光が開始されたタイミングからの経過時間に基づき、主として使用する測定用信号を受光素子の位置に応じて変更させるので、反射光L2に対応しない光に基づく測定用信号を測定に用いることが抑制され、ノイズを低減させることが可能となる。換言すると、ミラー15により反射された反射光L2が入射すべきセンサ18の受光面上の位置に対応する受光素子の出力する測定用信号を主として測定に用いることで、ノイズを低減させることが可能となる。
(変形例3)
変形例2では、複数の受光素子から出力される電気信号をAD変換した後に、測定用信号を記憶部に記憶させることで変形例2と相違する。以下では相違する点を説明する。
【0084】
図18は、変形例2に係る生成部20Aの詳細な構成を示すブロック図である。この図18に示すように、変形例2に係る生成部20Bは、抽出部22と、調整部23Bと、AD変換部24Aと、記憶部25Bと、信号生成部26とを備えて構成されている。変形例2と同等の構成には同一の番号を付して説明を省略する。
【0085】
記憶部22Bは、AD変換部24Aが生成した測定用信号を記憶する。調整部23Bは、抽出部22で抽出された受光素子に応じた増幅率にて、記憶部22Bに記憶されたAD変換部24Aで生成された測定用信号の大きさを調整する。
【0086】
図19は、受光素子群181~185と、AD変換部24AのAD変換器210A~210Eと、記憶部22Bの記憶器群214A~214Eと、調整部23Bの調整器群212A~212Eとの関係で示す図である。ここでは、センサ18の受光面上における反射光L2の光束の一部を計測対象物10までの距離に対応させて模式的に示している。すなわち、計測対象物10までの距離が遠くなるにしたがい、反射光L2の入射位置は、受光光学系204の光軸中心から離れた位置に移動する。
【0087】
図19に示すように、AD変換部24Aは、垂直方向に一次元列に配置された受光素子群181~185にそれぞれ接続されるAD変換器群210A~210Eを有する。また、記憶部22Bは、垂直方向に一次元列に配置されたAD変換器群210A~210Eにそれぞれ接続される記憶器群214A~214Eを有する。例えば、AD変換器群210Aの中のAD変換器群210Aのそれぞれは、記憶器群214Aの中の対応するそれぞれの調整器212Aに接続されている。これにより、記憶器群214Aの中の記憶器2124のそれぞれは、AD変換器群210Aの中の対応するAD変換器それぞれの測定用信号を記憶する。
【0088】
また、調整部23Aは、垂直方向に一次元列に配置された記憶器群214A~210Eにそれぞれ接続される調整器群212A~212Eを有する。例えば、記憶器群214Aの中の記憶器214Aのそれぞれは、調整器群212Aの中の対応するそれぞれの調整器212Aに接続されている。これにより、調整器群212Aの中の調整器212Aのそれぞれは、記憶器群214Aの中の対応するAD変換器それぞれの測定用信号の大きさを調整可能である。
【0089】
以上、変形例3によれば、抽出部22が、受光素子群181~185の中から計測対象物10との距離計測に使用する受光素子を抽出し、調整部23が、抽出された受光素子に応じた増幅率にて、記憶部に記憶される測定用信号の信号値を調整することとした。これにより、ミラー15により反射された反射光L2が入射すべきセンサ18の受光面上の位置に対応する受光素子の出力信号を主な成分とする時系列な測定用信号を生成することが可能となり、環境光の影響を低減できる。このため、ミラー15の回転速度を上げても環境光の影響を低減でき、安定的に距離計測が可能となる。
【0090】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0091】
以下に、本願原出願の特許出願時の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
間欠的にレーザ光を発光する光源と、
前記光源が発光する前記レーザ光を当該レーザ光に対する入射面の角度を周期的に可変させるミラーで反射させて計測対象物に照射する照射光学系と、
前記ミラーを介して前記レーザ光の反射光を受光する受光光学系と、
前記受光光学系を介して受光した反射光を電気信号に変換する複数の受光素子を有するセンサと、
前記複数の受光素子のうち、前記計測対象物との距離計測に使用する受光素子を抽出する抽出部と、
前記抽出部で抽出された受光素子に応じた増幅率にて、当該受光素子の電気信号の信号値を調整する調整部と、
前記調整部で調整された電気信号に基づいて、時系列な測定用信号を生成する信号生成部と、
前記レーザ光の発光タイミングと、前記測定用信号のピーク位置のタイミングとの時間差に基づき、前記計測対象物までの距離を計測する距離計測部と、
を備える距離計測装置。
[2]
前記抽出部は、前記ミラーにより反射された前記反射光が入射される前記センサの受光面上の位置に対応する前記受光素子を抽出する、[1]に記載の距離計測装置。
[3]
前記抽出部は、前記ミラーの前記角度と前記レーザ光の発光タイミングからの経過時間とに応じて、前記距離計測に使用する受光素子を変更して抽出する、[1]又は[2]に記載の距離計測装置。
[4]
前記抽出部は、前記ミラーの角速度に基づき、前記受光素子を抽出する、[1]乃至[3]のいずれかに記載の距離計測装置。
[5]
前記抽出部は、前記レーザ光の発光タイミングからの経過時間が長くなるにしたがい、受光光学系の光軸中心からより離れた位置の受光素子を抽出する、[1]乃至[4]のいずれかに記載の距離計測装置。
[6]
前記抽出部は、前記ミラーの角速度が速くなるにしたがい、前記レーザ光の発光タイミングから所定の時間が経過したときに抽出する受光素子の位置を前記受光光学系の光軸中心からより離れた位置とする、[1]乃至[5]のいずれかに記載の距離計測装置。
[7]
前記調整部は、前記抽出部により抽出された受光素子の増幅率を前記センサが有する受光素子の中の前記抽出部により抽出されなかった受光素子の増幅率よりも大きくする、[1]乃至[6]のいずれかに記載の距離計測装置。
[8]
前記調整部は、前記抽出部で抽出されなかった受光素子の増幅率を0にする、[1]乃至[7]のいずれかに記載の距離計測装置。
[9]
前記ミラーは一軸の回転ミラーであって、
前記センサは、前記回転ミラーの回転に応じて、当該センサの受光面上の前記反射光の移動方向に沿って配置された3以上の受光素子を有し、
前記調整部は、前記3以上の受光素子それぞれに対応し、当該対応する受光素子の出力信号の大きさを調整する複数の調整器を有し、
前記3以上の受光素子の中の一つ置きに並んだ受光素子それぞれに対応する2以上の前記調整器に接続される少なくとも一つのAD変換器を更に備える、[1]乃至[8]のいずれかに記載の距離計測装置。
[10]
前記ミラーは一方向への回転と、当該一方向と逆向きである他方向への回転と交互に繰り返しており、一方向に回転している場合の前記光源の発光タイミングと、他方向に回転している場合の前記光源の発光タイミングと、をずらす[1]乃至[9]のいずれかに記載の距離計測装置。
[11]
所定の時間間隔でレーザ光をレーザ発光する光源と、
回転軸に対して一方向への回転と、当該一方向と逆向きである他方向への回転とをするミラーと、
前記ミラーを介して前記光源が発光する前記レーザ光を計測対象物に照射する照射光学系と
前記一方向に回転している場合の前記光源の発光タイミングと、前記他方向に回転している場合の前記光源の発光タイミングと、をずらす制御を行う制御部と、
を備える距離計測装置。
【符号の説明】
【0092】
1:距離計測装置、10:計測対象物、11:光源、15:ミラー、18:センサ、20:生成部、21:距離計測部、22:抽出部、23:調整部、24:AD変換部、25:記憶部、26:信号生成部、181~185:受光素子群、202:照射光学系、204:受光光学系
図1
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図8
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図11B
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