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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-22
(45)【発行日】2023-03-03
(54)【発明の名称】一体型膜モジュールラック
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/04 20060101AFI20230224BHJP
【FI】
B01D63/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020521868
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 IB2018058099
(87)【国際公開番号】W WO2019077546
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】17197377.9
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】セルツァー,ノーバート
(72)【発明者】
【氏名】リヒテリッヒ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ルータリング,マーティン
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05034125(US,A)
【文献】実開平06-029604(JP,U)
【文献】特開2003-334429(JP,A)
【文献】特開平09-313896(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0045552(US,A1)
【文献】特開2006-082034(JP,A)
【文献】特表2002-524227(JP,A)
【文献】特表平01-500649(JP,A)
【文献】特表2014-528352(JP,A)
【文献】特表平05-508801(JP,A)
【文献】国際公開第2008/101816(WO,A1)
【文献】特開平11-309348(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0307965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 27/00-14、29/00-96、63/00-16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の垂直に配置された円筒形濾過モジュールからなる少なくとも1つの列を備える流体処理システムであって、
各円筒形濾過モジュールは、上端部、下端部、及びシェル内部を備える円筒形シェルと、前記円筒形シェルの前記上端部及び前記下端部にそれぞれ結合された上部ヘッダ及び下部ヘッダとを有し、
中空糸膜の束が前記円筒形シェル内部に配置されており、前記中空糸膜の端部は、前記中空糸膜がそれら端部で開放されるようにして上部チューブシート及び下部チューブシートに埋め込まれており、
前記上部チューブシート及び前記下部チューブシートは、外部濾液スペースが前記中空糸膜の周囲に形成され、前記外部濾液スペースが、上部チューブシート、下部チューブシート及び前記円筒形シェルの内側表面の間に広がるように前記円筒形シェルの前記内側表面に液密に封着されており、
上部ヘッドスペースが、上部チューブシートと上部ヘッダとの間に形成されており、下部ヘッドスペースが、下部チューブシートと下部ヘッダとの間に形成されており、
各中空糸膜は、管腔及び壁部を有し、前記中空糸膜の前記管腔は、上部ヘッドスペース及び下部ヘッドスペースと流体連通しており、
前記円筒形シェルは、出口ポートを備え、前記出口ポートは、前記円筒形シェルに取り付けられており、前記外部濾液スペースと流体連通し、かつ濾液分岐パイプに接続されており、
前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダ同士が互いに流体接続されており、それにより、上部収集ダクトが形成され、前記上部収集ダクトは、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッドスペースへの流体の流入を可能にし、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダと同じ高さ以上で前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、
前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダ同士が互いに流体接続されており、それにより、下部収集ダクトが形成され、前記下部収集ダクトは、前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッドスペースへの流体の流入を可能にし、前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダの高さ以下で前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、
各円筒形濾過モジュールの前記濾液分岐パイプは、前記円筒形濾過モジュールの前記上端部において、前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びている濾液収集パイプに接続されており、かつ前記濾液収集パイプに開口しており、
前記上部収集ダクト及び前記濾液収集パイプは、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダにおいて、前記円筒形シェルの断面中心に対して偏心して、前記断面中心に対し互いに異なる側に配置されており、かつ同じ高さで並んで互いに平行に配置されており
前記上部収集ダクト及び前記下部収集ダクトは、前記円筒形シェルの断面中心に対して偏心して、前記断面中心に対し互いに異なる側に配置されている、
流体処理システム。
【請求項2】
前記上部収集ダクトは、前記上部ヘッダに一体化されており、
各円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダは、前記円筒形シェルの前記上端部に接続されている下部と、前記少なくとも1つの列の長さ方向に向けられた水平側部ポートとを備えるT字形状を有し、
互いに向き合う隣接した円筒形濾過モジュールの前記水平側部ポート同士が、前記上部収集ダクトを形成するように接続されている、請求項1に記載の流体処理システム。
【請求項3】
前記上部ヘッダは、前記少なくとも1つの列に沿って見たときに、前記上部収集ダクト側にある高い部分と、前記濾液収集パイプ側にある低い部分とを備えた非対称の輪郭を有し、
前記濾液収集パイプが、前記濾液収集パイプが前記上部収集ダクトと同じ高さになるように、前記低い部分の上に配置されている、請求項2に記載の流体処理システム。
【請求項4】
各上部ヘッダは、その内部を通る濾液通路を有し、前記濾液通路は、前記濾液収集パイプの一部であり、前記濾液通路は、前記濾液通路が前記上部ヘッダの外壁を通る点において、前記上部ヘッダの前記外壁に液密に封着されており、
前記濾液通路は、前記複数の垂直に配置された円筒形濾過モジュールからなる前記少なくとも1つの列の伸長方向に平行に配置されており、
隣接する円筒形濾過モジュール同士からなる前記濾液通路は、互いに接続されて、前記濾液収集パイプを形成している、請求項2に記載の流体処理システム。
【請求項5】
各円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダは、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッドスペースを、前記上部収集ダクトを形成している上部収集パイプのそれぞれの側部ポートに接続するポートを有し、
前記上部収集パイプは、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダの上方で前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッドスペース同士を接続している、請求項1に記載の流体処理システム。
【請求項6】
各円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダは、前記円筒形シェルの前記下端部に接続されている上部と、前記少なくとも1つの列の長さ方向に向けられた水平側部ポート、を備えるT字形状を有し、
互いに向き合う隣接した円筒形濾過モジュールの前記水平側部ポート同士が、前記上部収集ダクトを形成するように接続されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の流体処理システム。
【請求項7】
各円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダは、それぞれの前記下部ヘッドスペースを、前記下部収集ダクトを形成している下部収集パイプに接続するポートを有し、
前記下部収集パイプは、前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダの下方で前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッドスペース同士を接続している、請求項1~6のいずれか一項に記載の流体処理システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの列内の前記円筒形濾過モジュールの前記濾液分岐パイプは、前記少なくとも1つの列に沿って見たときに、前記濾液分岐パイプが前記円筒形濾過モジュールを越えて延びないようにして前記円筒形濾過モジュール同士の間に配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の流体処理システム。
【請求項9】
前記上部ヘッダ及び/又は前記上部収集ダクト及び前記下部収集ダクトは、前記少なくとも1つの列に沿って見たときに、前記円筒形濾過モジュールの前記円筒形シェルの外径に関して、前記円筒形シェルの前記外径を最大で20%だけ越えて延びている、請求項1~8のいずれか一項に記載の流体処理システム。
【請求項10】
各円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダは、それぞれの前記上部ヘッドスペースを、前記上部収集ダクトを形成している上部収集パイプに接続するポートを有し、
前記上部収集パイプは、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッドスペース同士を接続しており、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダの上方で前記濾液収集パイプと同じ高さで前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、かつ/又は、
各円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダは、それぞれの前記下部ヘッドスペースを、前記下部収集ダクトを形成している下部収集パイプに接続するポートを有し、
前記下部収集パイプは、前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダの下方で前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッドスペース同士を接続している、請求項1に記載の流体処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書
本発明は、複数の垂直に配置された円筒形濾過モジュールからなる少なくとも1つの列を備える流体処理システムに関し、
各円筒形濾過モジュールは、上端部、下端部、及びシェル内部を備える円筒形シェルと、円筒形シェルの上端部及び下端部にそれぞれ結合された上部ヘッダ及び下部ヘッダとを有し、
中空糸膜の束がシェル内部に配置されており、中空糸膜の端部は、上部チューブシート及び下部チューブシート内に埋め込まれており、上部チューブシート及び下部チューブシートは、外部濾液スペースが中空糸膜の周囲に形成され、外部濾液スペースが、上部チューブシート、下部チューブシート及び円筒形シェルの内側表面の間に広がるように円筒形シェルの内側表面に液密に封着されている。
【0002】
この種の流体処理システムは、例えば、水及び廃水処理のための施設、又は工業プラントにおいて使用される。膜の種類に応じて、液体、特に水は、膜壁を通して濾過することによって粒子及び溶解物質が除去される。塩などの溶解物質を分離することも可能である。濾過プロセスは、単純かつ安全であり、化学物質を添加することがなく、エネルギー消費はほとんどない。通常、ハウジングとしての細長い中空円筒シェルと、この円筒形シェルの内側に配置され、この中空円筒の長さに沿って延びている中空糸膜の束とを含む濾過モジュールが使用される。液体の濾過に使用される中空糸膜は、多孔質半透過性壁構造を有してもよく、濾過対象液体は、膜の種類及び特定の用途に応じて、中空糸膜の管腔から外側又はその逆のいずれかで膜壁を通過する。
【0003】
濾過モジュールは、濾過対象液体が通過するパイプラインに一体化されている。流体処理システムの所望の処理能力を達成するために、いくつかの濾過モジュールが列に接続され、濾過モジュールのいくつかの列が並列に配置されている。流体処理システムの濾過モジュールは、ラック内で縦に並べて配置され、各濾過モジュールの端部は、端部キャップ又はヘッダによって閉じられ、接続パイプが、そこから分岐して、濾過モジュールからなる列に沿って延びている収集パイプに開口している。既知のシステムの欠点は、濾過設備の設計に非常に大きなスペースが必要であり、接続パイプを関連する収集パイプに接続するために、多くの場合、パイプ連結具などの多数の接続構成要素が必要となることである。
【0004】
国際公開第2013/048801号は、収集ダクト又はマニホールドによって互いに流体接続された複数の濾過モジュールを備える流体処理システムに関し、ここでは、濾過モジュールが、大きなアレイを形成するバンク又は列になるように配置されている。国際公開第2013/048801号は、一般的な濾液移送マニホールド、流体移送マニホールド、及び流体制御マニホールドが、濾過モジュールからなる列同士の間に配置されていることを開示している。米国特許出願公開第2003/003875号は、濾過モジュール構成に関し、この構成では、逆洗によって使用中に本構成の中空繊維モジュール内に堆積した原水の懸濁物を除去することが可能となる。米国特許出願公開第2003/003875号の濾過モジュール構成は、原水供給パイプ、空気供給パイプ、排水パイプ、及び吐出パイプが濾過モジュールからなる列同士の間に配置された状態で列に構成された複数の濾過モジュールを備える。
【0005】
欧州特許第0525096号は、膜フィルタカートリッジ及びフィルタカートリッジアセンブリを開示しており、カートリッジは、クロスフロー濾過に適用するために列に配置されている。本文書に開示されたカートリッジは、カートリッジの端部に技術的に複雑なヘッダを有しており、このヘッダは、原料の供給と濃縮物及び濾液の排出とを組み合わせてフィルタカートリッジに対してそれぞれ入れたり出したりするためのものであり、このヘッダを用いて、フィルタカートリッジ同士を接続して列を形成する。
【0006】
米国特許第5094750号は、ケーシング内に中空繊維の束を有する流体フィルタに関する。ケーシングの一端に、移送ヘッダが存在しており、この移送ヘッダは、その内部を通るように原料供給通路を有し、またケーシングに及び繊維の外部に原料供給するための排出ポートを有する。移送ヘッダはまた、その内部を通り、繊維の開放端と連通した濾液通路を有する。移送ヘッダは、そのヘッダの側部にオフセット部分を有し、このオフセット部分はフィルタのケーシングを越えて延びており、オフセット部分は上記原料供給通路を収容している。上記濾液通路は、ヘッダの上部分の内部を通って延びている。複数の流体フィルタが一緒に組み立てられ、フィルタユニット列を形成し、フィルタユニットはそれらの移送ヘッドを介して互いに接続されている。
【0007】
ドイツ実用新案第202004002835号は、濾過モジュールからなる平行な列を備える濾過システムを示し、接続パイプが、濾過モジュールの面上に同軸で配置され、それらの接続パイプは、屈曲部を越えて、濾過モジュールからなる列同士の間の中央収集ラインにそれぞれつながる。濾過モジュールとより小径の同軸出力接続管との間の移送のために、漏斗状のエンドキャップが設けられており、これは、パイプ継手を介して濾過モジュールに取り付けられている。この接続法は、かなりの多数の個別の構成要素を必要とし、設置が複雑である。
【0008】
欧州特許第1743690号は、フィルタモジュールからなる列を含む水濾過システムを開示している。各列のフィルタモジュールは、濾過対象液体及び濃縮物用の水平液体収集パイプによって上下において連結されている。各フィルタモジュールは、上部に濾液用の分岐パイプを有し、それらの分岐パイプが、隣接する列の隣接するモジュール同士の間で延びている。フィルタモジュールからなる列同士の間のこれらの分岐パイプは、2つの隣接する列に共通の、2つの隣接する上部液体収集パイプの上方でこれらのパイプと平行に延びている濾液収集パイプに接続されている。その設計により、欧州特許第1743690号の濾過システムは比較的高さがあり、列同士の間の接続分岐パイプのために列同士の間の距離が必要となる。
【0009】
本発明の目的は、省スペース構造を実現するように上記の種類の濾過システムを更に改善することである。更に、設置のための構成部品の数を削減し、組み立てが簡単な少数の構成部品を使用すべきである。
【0010】
この課題は、以下の流体処理システムであって、
-複数の垂直に配置された円筒形濾過モジュールからなる少なくとも1つの列を備える流体処理システムであって、各円筒形濾過モジュールが、上端部、下端部、及びシェル内部を備える円筒形シェルと、円筒形シェルの上端部及び下端部にそれぞれ結合された上部ヘッダ及び下部ヘッダとを有し、
-中空糸膜の束がシェル内部に配置されており、中空糸膜の端部は、中空糸膜がそれら端部で開放されるようにして中空糸膜の端部が上部チューブシート及び下部チューブシートに埋め込まれており、上部チューブシート及び下部チューブシートが、中空糸膜の周囲に形成され、外部濾液スペースが、上部チューブシート、下部チューブシート及び円筒形シェルの内側表面の間に広がるように円筒形シェルの内側表面に流密に封着されており、
-上部ヘッドスペースが、上部チューブシートと上部ヘッダとの間に形成されており、下部ヘッドスペースが、下部チューブシートと下部ヘッダとの間に形成されており、
-各中空糸膜が、管腔及び壁部を有し、中空糸膜の管腔は、上部ヘッドスペース及び下部ヘッドスペースと流体連通しており、
-円筒形シェルが、出口ポートを備え、出口ポートは、円筒形シェルに取り付けられており、外部濾液スペースと流体連通し、かつ濾液分岐パイプに接続されており、
-円筒形濾過モジュールの上部ヘッダ同士が互いに流体接続されており、それにより、上部収集ダクトが形成され、上部収集ダクトは、円筒形濾過モジュールの上部ヘッドスペースへの流体の流入を可能にし、円筒形濾過モジュールの上部ヘッダと同じ高さ以上で少なくとも1列の長さ方向に延びており、
-円筒形濾過モジュールの下部ヘッダ同士が互いに流体接続されており、それにより、下部収集ダクトが形成され、下部収集ダクトは、円筒形濾過モジュールの下部ヘッドスペースへの流体の流入を可能にし、円筒形濾過モジュールの下部ヘッダの高さ以下で少なくとも1列の長さ方向に延びており、
-各円筒形濾過モジュールの濾液分岐パイプは、円筒形濾過モジュールの上端部において、少なくとも1列の長さ方向に延びている濾液収集パイプに開口しており、
上部収集ダクト及び濾液収集パイプが、濾過モジュールの上部ヘッダにおいて、円筒形シェルの断面中心に対して偏心して、断面中心に対し互いに異なる側に配置されており、かつ同じ高さで並んで互いに平行に配置されている、流体システム、によって解決される。
【0011】
上方収集ダクトと濾液収集パイプとを同じ高さで並べて互いに平行に配置することにより、高さが比較的小さい流体処理システムを得ることができ、省スペース設計を実現することができる。更に、垂直に配置された円筒形濾過モジュールからなる各列は、各列がそれ自身の供給ライン及び排出ラインを有し、したがって個別に取り扱うことができるという点で、独自のユニットを形成する。
【0012】
処理対象流体は、適用中に、上部収集ダクトを介して、垂直に配置された濾過モジュールからなる少なくとも1つの列の濾過モジュールに供給されることができ、上部収集ダクトからこの流体が濾過モジュールに分配され、濾過モジュールの上部ヘッドスペース内に導入されることができる。そこから、処理対象流体は、濾過モジュールのシェル内部に配置された中空糸膜の管腔に入り、管腔を通って流れる。処理対象流体の一部は、濾液として、中空糸膜の壁面を流れ、中空糸膜の周囲に形成された、上部チューブシート、下部チューブシート、及び円筒形シェルの内側表面の間に広がる外部濾液スペースに流入する。外部濾液スペース内に収集された濾液は、濾過モジュールの円筒形シェルに取り付けられた出口ポートを介して外部濾液空間を出て、濾液分岐パイプを通って流れ、円筒形濾過モジュールの上端部において少なくとも1つの列の長さ方向に延びている濾液収集パイプに収集される。
【0013】
中空糸膜の管腔内に残っている残余分又は濃縮物は、濾過モジュールの下部チューブシートと下部ヘッダとの間に形成された下部ヘッドスペースに流入し、下部収集ダクトを介して排出される。
【0014】
当然ながら、処理対象流体が、下部収集ダクトを介して濾過モジュール内に供給され、濾過モジュールを通って上向きに流れ、濃縮物が、上部ヘッダ内に収集され、上部収集ダクトを介して排出される適用も可能である。
【0015】
流体処理システムの用途に応じて、濾過モジュールに含まれる中空糸膜は、好ましくは、限外濾過又は精密濾過用の膜とし得る。中空糸膜の数、濾過モジュール当たりの必要な濾過面積、及び濾過モジュールの数は、適用中の被濾過流体の流量に依存する。流量要件に適応するために、流体処理システムは、垂直に配置された円筒形濾過モジュールを2列以上並列接続することが必要となることもある。
【0016】
円筒形濾過モジュール及びそれらの円筒形シェルのそれぞれについては、それらの長さ軸線に沿って見たときに、様々な断面が可能である。断面は、円形、楕円形、正方形、矩形などであってもよい。好ましくは、断面は、例えば、モジュールの高圧安定性を得るために円形とすることができる。
【0017】
有利な実施形態では、中空糸膜の束は、この中空糸膜の束、上部チューブシート、及び下部チューブシートを含むカートリッジに組み込まれることができ、このカートリッジの中に、チューブシートを貫通し、端部で開口するようにして中空部が埋め込まれている。カートリッジは、好ましくは、カートリッジの中空糸膜の漏れの場合などにカートリッジの交換が可能であるように、取り外し可能にシェル内部に配置されることができる。各チューブシートと円筒形シェルの内側表面との間の封止は、接着剤によって、又はポッティング材によって、又は、例えば、取り外し可能なカートリッジの場合には封止リングによって達成され得る。
【0018】
上部ヘッダ及び/又は下部ヘッダは、円筒形シェルに恒久的に又は解放可能に接続され得る。恒久的な接続の場合、上部ヘッダ及び/又は下部ヘッダは、接着剤を介して、又は溶接によって円筒形シェルと接合され得る。具体的には、中空糸膜の束がカートリッジに組み込まれている場合、解放可能又は着脱可能な接続が好ましい。解放可能又は着脱可能な接続の場合、上部ヘッダ及び/又は下部ヘッダは、ねじ山、フランジ継手、又はビクトリック継手などによって接合されてもよい。上部ヘッダ及び/又は下部ヘッダの円筒形シェルへの解放可能又は着脱可能な接続は、例えば、中空繊維の束の損傷、漏出などの場合に、シェル又はモジュール内部の利点を提供し得る。
【0019】
本流体処理システムでは、好ましくは、下部収集ダクトもまた、円筒形シェルの断面中心に対して偏心して配置され得る。より好ましくは、上部収集ダクト及び下部収集ダクトは、円筒形シェルの断面中心に対して互いに異なる側に配置される。濾過モジュールの両側における上部収集ダクト及び下部収集ダクトのそのような配置は、濾過モジュールを通して被濾過流体の均質な流れ分布を支援するものである。
【0020】
容易で柔軟な組み立てを強化するために、流体処理システムの好ましい実施形態では、上部収集ダクトが上部ヘッダに一体化されている。この実施形態では、各円筒形濾過モジュールの上部ヘッダは、好ましくは、少なくとも1列を垂直に見たときに、上部収集ダクトが配置されている側からT字形状を有しており、このT字形状は、円筒形シェルの上端部に接続された下部と、少なくとも1つの列の長さ方向に向けられた水平側部ポートとを有する。1つの列内の隣接する濾過モジュールの、互いに対向する水平側部ポート同士が接続され、上部収集ダクトを形成する。
【0021】
更なる好ましい実施形態では、各円筒形濾過モジュールの下部ヘッダは、少なくとも1列を垂直に見たときに、T字形状を有しており、このT字形状は、円筒形シェルの下端部に接続された上部と、少なくとも1つの列の長さ方向に向けられた水平側部ポートとを有する。流体処理システムの更なる好ましい実施形態では、各円筒形濾過モジュールの上部ヘッダ及び各円筒形濾過モジュールの下部ヘッダが、T字形状を有する。
【0022】
互いに対向した隣接する濾過モジュールの水平側部ポート同士は、接続管又は短い連結具によって接続され、それぞれ上部及び/又は収集ダクトを形成することができる。代替的に、T字形の上部ヘッダ及び/又は下部ヘッダの水平アームは、それぞれ濾過モジュールを越えて延びてもよく、隣接する濾過モジュールのアーム同士が互いに接続され、上部収集ダクト及び/又は下部収集ダクトをそれぞれ形成してもよい。隣接する濾過モジュールの側部ポート同士、接続管同士、短い連結具同士、及び/又は水平アーム同士の接続は、例えば、接着剤又は溶接継手による液密な恒久的接合であってもよい。好ましい実施形態では、この接続は、着脱可能な液密継手、例えば、カップリングリングの形態のねじ継手、フランジ継手、又はビクトリック継手などとすることができる。
【0023】
特定の実施形態では、上部ヘッダ及び/又は下部ヘッダがT字形状を有し、上部収集ダクト及び下部収集ダクトの少なくとも一部が、それぞれ上部ヘッダ及び下部ヘッダに一体化されており、幅方向だけでなく高さ方向にもコンパクトな設計を可能にする。更に、他の設計で必要とされ得る多数の接続要素及び連結具を回避することができる。
【0024】
各円筒形濾過モジュールの上部ヘッダがT字形状を有する場合、少なくとも1つの列に沿って見たときに、上部ヘッダが、上部収集ダクト側にある高い部分及び濾液収集パイプ側にある低い部分を有する非対称の輪郭を有すると好ましい。この場合、濾液収集パイプは、好ましくは、上部収集ダクトと同じ高さになるように、低い部分の上に配置されることができる。この場合、少なくとも1列の方向に見たときに、上部収集ダクトは、上部ヘッダの高い部分において上部ヘッダに一体化されており、一方、濾液収集パイプは上部ヘッダの外側かつ上部で延びている。濾過モジュールの濾液分岐パイプを介した濾過モジュールへの濾液収集パイプの取り付けに加えて、濾液収集パイプは、例えば、ヘッダに取り付けられたクランプを介して上部ヘッダに固定され得る。
【0025】
濾液収集パイプはまた、上部ヘッダに一体化されてもよく、濾過モジュールの上部ヘッダを貫通してもよい。したがって、流体処理システムの更なる好ましい実施形態では、各上部ヘッダは、その内部を通る濾液通路を有し得、濾液通路が、濾液収集パイプの一部であり、
-濾液通路は、濾液通路が上部ヘッダの外壁を通る点において、上部ヘッダの外壁に液密に封着されており、
-濾液通路は、複数の垂直に配置された濾過モジュールからなる少なくとも1つの列の伸長方向に平行に配置されており、
-隣接する濾過モジュール同士からなる濾液通路が、互いに接続されて、濾液収集パイプを形成している。
【0026】
濾液通路は、濾液通路を接続して濾液収集パイプを形成する接続要素又はパイプセグメントに接合され得る。更なる実施形態では、濾液通路は、それぞれのヘッダを越えて延びてもよく、好ましくは、隣接する濾過モジュールの濾液通路同士が、それらの隣接する端部同士において密封して互いに取り付けられ得るように、十分な長さを有することができる。隣接する端部同士の取り付けは、例えば、カップリングリングの形態のねじ継手、又はフランジ継手若しくはビクトリック継手、又は溶接若しくははんだ付けによって達成され得る。上部ヘッダ及び接続要素又はパイプセグメントをそれぞれ越えて延びた通路部分は、濾液分岐パイプに接続するための側部ポートを有し得る。少なくとも1つの列の隣接する濾過モジュールの通路同士もまた、Tフィッティングの側部分岐部によって互いに接続されることができ、Tフィッティングの90°分岐部は、それぞれの濾液分岐パイプに接続されている。この場合も、接続は、例えば、カップリングリングによって、フランジ継手若しくはビクトリック継手によって、又は溶接若しくははんだ付けによって達成されることができる。
【0027】
流体処理システムの更に好ましい実施形態では、各円筒形濾過モジュールの上部ヘッダは、濾過モジュールの上部ヘッドスペースを、上部収集ダクトを形成している上部収集パイプのそれぞれの側部ポートに接続するポートを有することができる。上部収集パイプは、円筒形濾過モジュールの上部ヘッダの上方で少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、円筒形濾過モジュールの上部ヘッドスペース同士を接続している。同様に、濾過モジュールの上部ヘッダは、上部収集ダクトを形成する上部収集パイプの一体的部分とし得る。この場合、上部収集パイプは、上部ヘッダとして形成される側部ポートを有する。
【0028】
更に、本流体処理システムでは、各円筒形濾過モジュールの下部ヘッダは、好ましくは、濾過モジュールの下部ヘッドスペースを下部収集ダクトを形成している下部収集パイプのそれぞれの側部ポートに接続するポートを有することができる。下部収集パイプは、円筒形濾過モジュールの下部ヘッダの下方で少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、円筒形濾過モジュールの下部ヘッドスペースに接続している。同様に、濾過モジュールの下部ヘッダは、下部収集ダクトを形成する下部収集パイプの一体的部分とし得る。この場合、下部収集パイプは、下部ヘッダとして形成される側部ポートを有する。
【0029】
流体処理システムの更なる有利な実施形態では、
-各円筒形濾過モジュールの上部ヘッダが、それぞれの上部ヘッドスペースを、上部収集ダクトを形成している上部収集パイプに接続するポートを有し得、上部収集パイプが、円筒形濾過モジュールの上部ヘッドスペース同士を接続しており、円筒形濾過モジュールの上部ヘッダの上方で濾液収集パイプと同じ高さで少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、かつ/又は、
-各円筒形濾過モジュールの下部ヘッダが、それぞれの下部ヘッドスペースを、下部収集ダクトを形成している下部収集パイプに接続するポートを有し、下部収集パイプが、円筒形濾過モジュールの下部ヘッダの下方で少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、円筒形濾過モジュールの下部ヘッドスペース同士を接続している。
【0030】
この場合、好ましくは、上部収集パイプ及び/又は下部収集パイプが、個々の円筒形濾過モジュールの個々のヘッダに割り当てられた個々のTピースから形成されており、このTピースは、90°分岐部を用いて個々の円筒形濾過モジュールのヘッダに接続されており、かつ、水平分岐部を用いて互いに接続されており、上部収集パイプ及び下部収集パイプをそれぞれ形成している。
【0031】
好ましくは、濾液収集パイプもまた、個々のTピースから形成されており、この個々のTピースは、個々の円筒形濾過モジュールに割り当てられ、その水平分岐部を用いて互いに水平に接続されて濾液収集パイプを形成しており、Tピースの90°分岐部は、関連する円筒形濾過モジュールの濾液分岐パイプに接続されている。この種の流体処理システムの場合、システムの容易な組み立てが可能である。
【0032】
T字形ヘッダの場合、個々のTピース同士は、例えば、接着剤又は溶接継手によって恒久的に液密に接合されてもよく、又は、好ましい実施形態では、例えば、カップリングリングの形態のねじ継手、フランジ継手、又はビクトリック継手などによって、着脱可能に接合されることができる。また、90°分岐部は、各ヘッダのポートにそれぞれ恒久的又は着脱可能に接合され得る。
【0033】
好ましくは、上部収集パイプ、下部収集パイプ、及び/又は濾液収集パイプは、円形の断面を有することができる。
【0034】
組み立てに必要なスペースに関して本流体処理システムを更に最適化するために、少なくとも1つの列内の円筒形濾過モジュールの濾液分岐パイプは、好ましくは、少なくとも1つの列に沿って見たときに、濾液分岐パイプが円筒形濾過モジュールを越えて延びないようにして濾過モジュール同士の間に配置されることができる。この場合であっても、少なくとも1つの列の濾過モジュール同士は、互いに近接して配置され得る。したがって、円筒形濾過モジュールの濾液分岐パイプは、好ましくは、上部から見たときに、少なくとも1つの列の隣接する濾過モジュール同士の間に形成された楔状隙間内に配置され得る。
【0035】
本流体処理システムの好ましい実施形態では、濾過モジュールの円筒形シェルに取り付けられた出口ポートは、濾過モジュールの上部から見たときに、濾液収集パイプに対して直下にある又はせいぜいわずかにオフセットされ得る。これにより、不要な逸脱なしに、濾液分岐パイプを介して、出口ポートを濾液収集パイプと直接接続するという利点が提供される。
【0036】
本流体処理システムの省スペース設計に関して、上部ヘッダ並びに/又は上部収集ダクト及び濾液収集ダクト、並びに下部ヘッダ及び下部収集ダクトは、少なくとも1つの列に沿って見たときに、濾過モジュールの円筒形シェルの外径に関して、好ましくは、最大で20%だけ濾過モジュールの円筒形シェルの外径を越えて延びていてもよい。より好ましい実施形態では、上部ヘッダ及び下部ヘッダは、濾過モジュールの円筒形シェルの外径を最大で20%だけ越えて延びていてもよく、上部収集ダクト及び濾液収集ダクトは、上部ヘッダを越えて延びておらず、下部収集ダクトは下部ヘッダを越えて延びていない。上部収集ダクトが上部ヘッダに一体化された好ましい一体型上部ヘッダの場合、上部ヘッダは、少なくとも1つの列に沿って見たときに、非対称の輪郭を有し、濾液収集ダクトは非対称の輪郭の低い部分の上に配置され、濾液収集パイプは、好都合には、少なくとも1つの列に沿って見たときに、濾過モジュールの円筒形シェルの外径に関して、濾過モジュールの円筒形シェルの外径を最大で20%だけ越えて延びることができる。
【0037】
本濾過システムは、1つの列内で濾過モジュール同士を近接配置することを可能にするが、濾過モジュールからなる複数の列同士を並べて近接配置することも可能にする。したがって、設置後濾過システムの高さ要件に関する改善に加えて、上部収集ダクトと濾液収集パイプとを同じ高さで並べて互いに平行に配置することにより、本濾過システムは、比較的小さな特定の設置面積、すなわち、被濾過流体の濾過に利用可能な設置後膜表面積に関して小さな設置面積という利点も提供する。したがって、本発明の濾過システムは、非常にコンパクトな設計で構築することができる。
【0038】
機械的安定性を改善するために、複数の濾過モジュールを備える本流体処理システムは、例えば、濾過モジュールを取り付けるためのフレームアセンブリを備える支持ラックに組み込まれ得る。当技術分野において既知の支持ラックを本発明の流体処理システムに使用することができる。
【0039】
本流体処理システムは、以下の図に基づいてより詳細に説明される。図面は、本発明の流体システムの好ましい実施形態を示しているが、これらの実施形態は限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明による流体処理システムで使用する1つの円筒形濾過モジュールの斜視図である。
図2図1の濾過モジュールの側面図である。
図3図1の濾過モジュールの、図2に示した側面図とは反対側の側面図である。
図4】本発明による流体処理システムで使用する、1列の円筒形濾過モジュールの斜視図である。
【0041】
図1は、本発明による流体処理システムで使用する1つの円筒形濾過モジュール1の斜視図を示す。円筒形濾過モジュール1は、上端部3及び下端部4を備える円筒形シェル2を有する。上部ヘッダ5が円筒形シェル2の上端部3に結合され、下部ヘッダ6が下端部4に結合されている。円筒形シェル2の内側では、シェル内部に中空糸膜の束が配置されており、中空糸膜は、その端部が上部チューブシート及び下部チューブシート(図示せず)に埋め込まれている。円筒形シェル2は、外部濾液スペースと流体連通している出口ポートを備える。出口ポートには、濾液分岐パイプ7が接続されている。
【0042】
円筒形濾過モジュール1の下部ヘッダ6はT字形状を有し、このT字形状は、円筒形シェル2の下端部4に接続された上部8と、側部ポート9、10を備える水平側部アームとを有し、この水平側部アームは、下部収集ダクトセグメント11を形成し、本発明の流体処理システムを形成する濾過モジュールからなる少なくとも1つの列の長さ方向に向けられている。下部ヘッダ6の水平アームは、ビクトリック継手であり得るコネクタ12を介して、1つの列内の隣接する濾過モジュールのヘッダの対応するアームと接続可能である。隣接する濾過モジュール同士の接続された下部収集ダクトセグメント11は、下部収集ダクトを形成する。
【0043】
上部ヘッダ5は、下部ヘッダ6の意匠に対応するT字形状の意匠を有するが、濾過モジュールを介して中心面に対して左右反転に配置されている。T字形上部ヘッダは、円筒形シェル2の上端部3(見えない)に接続されている下部分と、側部ポート13、14を備える水平側部アームとを有する。水平側部アームは、上部収集ダクトセグメント15を形成しており、本発明の流体処理システムの列を形成する、濾過モジュールからなる少なくとも1つの列の長さ方向に向けられている。上部ヘッダ6の水平アームは、ビクトリック継手であり得るコネクタ12を介して、1つの列内の隣接する濾過モジュールの上部ヘッダの対応するアームと接続可能である。T字形上部ヘッダ又は上部収集ダクトセグメント15のそれぞれの接続されたアームが、上部収集ダクトを形成する。
【0044】
上部収集ダクトセグメント15と平行かつ同じ高さで、パイプセグメント16が上部ヘッダ5の上に配置される。上部ヘッダ5は、上部ヘッダ5のT字形部分を形成している高い部分と、上部ヘッダ5の上にパイプセグメント16の配置を可能にする低い部分とを備え非対称に設計されている。パイプセグメント16は、パイプセグメント16に開口している濾液分岐パイプ7に接続されている。パイプセグメント16の端部17、18は、本発明の流体処理システムを形成する1列の濾過モジュールのうちの隣接する濾液モジュールのパイプセグメントの端部に接続されることにより、濾液収集パイプを形成する。パイプセグメント同士の接続は、やはり、例えば、ビクトリック継手12によって実施され得る。
【0045】
図2は、上部収集ダクトセグメント15、パイプセグメント16、及び下部収集ダクトセグメント11の伸長方向における、図1の濾過モジュール1の概略側面図である。同じ構成要素は同じ参照番号で示し、対応する要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0046】
図2は、上部ヘッダ5及び下部ヘッダ6が、上部収集ダクトセグメント15、パイプセグメント16、及び下部収集ダクトセグメント11の伸長方向(これは、流体処理システムの少なくとも1つの列に沿った方向でもある)で見たときに、非対称の輪郭を有することを示す。上部ヘッダ5は、上部収集ダクト又は上部収集パイプセグメント15側にある高い部分と、濾液収集パイプ又は濾液収集パイプセグメント16側にある低い部分とを有する。濾液収集パイプセグメント16は、上部収集ダクトセグメント15と同じ高さになるように、上部ヘッダ5の低い部分の上に配置される。これにより、図1及び図2に示された濾過モジュールで構築された流体処理システムでは、上部収集ダクトと濾液収集パイプとが、同じ高さで並んで配置される。図2に示される実施形態では、上部収集ダクトセグメント15が上部ヘッダ5に一体化されており、一方で、濾液収集パイプセグメント16が、上部ヘッダ5の外側かつ上部で延びている。
【0047】
上部収集ダクトセグメント15及び濾液収集パイプセグメント16は、濾過モジュール1の上部ヘッダ5において、円筒形シェル2の断面中心A-Aに対して偏心して、かつ断面中心A-Aの両側に配置されている。下部ヘッダ6は、同様に、非対称の輪郭を有しており、下部収集ダクトセグメント11は、下部ヘッダ6の高い部分において下部ヘッダ6に一体化されている。下部ヘッダ6は、下部収集ダクトセグメント11もまた円筒形シェル2の断面中心A-Aに対して偏心して配置されるように、円筒形シェル2に取り付けられている。上部収集ダクトセグメント15及び下部収集ダクトセグメント11、ひいては上部収集ダクト及び下部収集ダクトは、円筒形シェル2の断面中心A-Aの両側に配置される。濾過モジュールの両側における上部収集ダクト及び下部収集ダクトの配置は、濾過モジュールを通して被濾過流体の均質な流れ分布を支援するものである。
【0048】
図2に示されるように、上部ヘッダ5、上部収集ダクトセグメント15、及び濾液収集ダクトセグメント16、並びに下部ヘッダ6及び下部収集ダクトセグメント11は、ダクトセグメントに沿って見たときに、濾過モジュール1の円筒形シェル2の外径に関して、濾過モジュール1の円筒形シェル2の外径を20%未満だけ超えて延びている。これにより、本発明による流体処理装置内の濾過モジュールの省スペース化が可能となる。
【0049】
図3は、図2に示した側面図とは反対側の側面図における、図1及び図2の濾過モジュール1の概略図である。やはり、同じ構成要素は同じ参照番号で示し、対応する要素の詳細な説明は繰り返さない。この図では、濾液分岐パイプ7が見えており、濾液分岐パイプ7は、濾過モジュール1の円筒形シェル2と濾液分岐パイプ7が開口する濾液収集パイプセグメント16との間で延びている。濾液分岐パイプ7は、濾液パイプセグメント11と同じ方向に延びるようにして濾液パイプセグメント11の伸長に関して配置され、したがって、流体処理システムの1つの列において隣接する濾過モジュール同士の間に配置されることになる。この配置により、濾液分岐パイプ7は、濾液収集パイプセグメントの方向に見たときに、円筒形濾過モジュール1を越えて延びておらず、その結果、本発明の流体処理システムの1つの列の濾過モジュールの濾液分岐パイプは、この列の濾過モジュールを越えて延びていない。
【0050】
図4は、図1図3に示される種類の垂直に配置された濾過モジュール1からなる1つの列20を斜視図で示す。この例では、5つの濾過モジュール1が直列に接続されている。隣接する濾過モジュール1同士の上部収集ダクトセグメント、下部収集ダクトセグメント、及び濾液パイプセグメントは、例えば、ビクトリック継手の形態の連結要素21によって互いに接続され、それぞれ、上部収集ダクト22、下部収集ダクト23、及び濾液パイプ24を形成している。上部収集ダクト22及び濾液収集パイプ24は、濾過モジュール1の上部ヘッダにおいて、円筒形シェルの断面中心に対して偏心して、濾過モジュールの断面中心に対して互いに異なる側に配置されており、かつ同じ高さで並んで互いに平行に延びている。濾過モジュール1の濾液分岐パイプ7は、濾液パイプ24を形成する濾液パイプセグメントに開口しており、列に沿って見たときに、濾過モジュールを越えて延びないようにして濾過モジュール1同士の間に配置されている。以下、例示的実施形態を挙げる。
[1]
複数の垂直に配置された円筒形濾過モジュールからなる少なくとも1つの列を備える流体処理システムであって、
各円筒形濾過モジュールは、上端部、下端部、及びシェル内部を備える円筒形シェルと、前記円筒形シェルの前記上端部及び前記下端部にそれぞれ結合された上部ヘッダ及び下部ヘッダとを有し、
中空糸膜の束が前記シェル内部に配置されており、前記中空糸膜の端部は、前記中空糸膜がそれら端部で開放されるようにして上部チューブシート及び下部チューブシートに埋め込まれており、
前記上部チューブシート及び前記下部チューブシートは、外部濾液スペースが前記中空糸膜の周囲に形成され、前記外部濾液スペースが、上部チューブシート、下部チューブシート及び前記円筒形シェルの内側表面の間に広がるように前記円筒形シェルの前記内側表面に液密に封着されており、
上部ヘッドスペースが、上部チューブシートと上部ヘッダとの間に形成されており、下部ヘッドスペースが、下部チューブシートと下部ヘッダとの間に形成されており、
各中空糸膜は、管腔及び壁部を有し、前記中空糸膜の前記管腔は、上部ヘッドスペース及び下部ヘッドスペースと流体連通しており、
前記円筒形シェルは、出口ポートを備え、前記出口ポートは、前記円筒形シェルに取り付けられており、前記外部濾液スペースと流体連通し、かつ濾液分岐パイプに接続されており、
前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダ同士が互いに流体接続されており、それにより、上部収集ダクトが形成され、前記上部収集ダクトは、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッドスペースへの流体の流入を可能にし、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダと同じ高さ以上で前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、
前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダ同士が互いに流体接続されており、それにより、下部収集ダクトが形成され、前記下部収集ダクトは、前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッドスペースへの流体の流入を可能にし、前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダの高さ以下で前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、
各円筒形濾過モジュールの前記濾液分岐パイプは、前記円筒形濾過モジュールの前記上端部において、前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びている濾液収集パイプに接続されており、かつ前記濾液収集パイプに開口しており、
前記上部収集ダクト及び前記濾液収集パイプは、前記濾過モジュールの前記上部ヘッダにおいて、前記円筒形シェルの断面中心に対して偏心して、前記中心に対し互いに異なる側に配置されており、かつ同じ高さで並んで互いに平行に配置されている、流体処理システム。
[2]
前記上部収集ダクトは、前記上部ヘッダに一体化されており、
各円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダは、前記円筒形シェルの前記上端部に接続されている下部と、前記少なくとも1つの列の長さ方向に向けられた水平側部ポートとを備えるT字形状を有し、
互いに向き合う隣接した濾過モジュールの前記水平側部ポート同士が、前記上部収集ダクトを形成するように接続されている、[1]に記載の流体処理システム。
[3]
前記上部ヘッダは、前記少なくとも1つの列に沿って見たときに、前記上部収集ダクト側にある高い部分と、前記濾液収集パイプ側にある低い部分とを備えた非対称の輪郭を有し、
前記濾液収集パイプが、前記濾液収集パイプが前記上部収集ダクトと同じ高さになるように、前記低い部分の上に配置されている、[2]に記載の流体処理システム。
[4]
各上部ヘッダは、その内部を通る濾液通路を有し、前記濾液通路は、前記濾液収集パイプの一部であり、前記濾液通路は、前記濾液通路が前記上部ヘッダの外壁を通る点において、前記上部ヘッダの前記外壁に液密に封着されており、
前記濾液通路は、前記複数の垂直に配置された濾過モジュールからなる前記少なくとも1つの列の伸長方向に平行に配置されており、
隣接する濾過モジュール同士からなる前記濾液通路は、互いに接続されて、前記濾液収集パイプを形成している、[2]に記載の流体処理システム。
[5]
各円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダは、前記濾過モジュールの前記上部ヘッドスペースを、前記上部収集ダクトを形成している上部収集パイプのそれぞれの側部ポートに接続するポートを有し、
前記上部収集パイプは、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダの上方で前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッドスペース同士を接続している、[1]に記載の流体処理システム。
[6]
各円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダは、前記円筒形シェルの前記下端部に接続されている上部と、前記少なくとも1つの列の長さ方向に向けられた水平側部ポート、を備えるT字形状を有し、
互いに向き合う隣接した濾過モジュールの前記水平側部ポート同士が、前記上部収集ダクトを形成するように接続されている、[1]~[5]のいずれか一項に記載の流体処理システム。
[7]
各円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダは、それぞれの前記下部ヘッドスペースを、前記下部収集ダクトを形成している下部収集パイプに接続するポートを有し、
前記下部収集パイプは、前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダの下方で前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッドスペース同士を接続している、[1]~[6]のいずれか一項に記載の流体処理システム。
[8]
前記少なくとも1つの列内の前記円筒形濾過モジュールの前記濾液分岐パイプは、前記少なくとも1つの列に沿って見たときに、前記濾液分岐パイプが前記円筒形濾過モジュールを越えて延びないようにして前記濾過モジュール同士の間に配置されている、[1]~[7]のいずれか一項に記載の流体処理システム。
[9]
前記上部ヘッダ及び/又は前記上部収集ダクト及び前記濾液収集ダクトは、前記少なくとも1つの列に沿って見たときに、前記濾過モジュールの前記円筒形シェルの外径に関して、前記円筒形シェルの前記外径を最大で20%だけ越えて延びている、[1]~[8]のいずれか一項に記載の流体処理システム。
[10]
各円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダは、それぞれの前記上部ヘッドスペースを、前記上部収集ダクトを形成している上部収集パイプに接続するポートを有し、
前記上部収集パイプは、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッドスペース同士を接続しており、前記円筒形濾過モジュールの前記上部ヘッダの上方で前記濾液収集パイプと同じ高さで前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、かつ/又は、
各円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダは、それぞれの前記下部ヘッドスペースを、前記下部収集ダクトを形成している下部収集パイプに接続するポートを有し、
前記下部収集パイプは、前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッダの下方で前記少なくとも1つの列の長さ方向に延びており、前記円筒形濾過モジュールの前記下部ヘッドスペース同士を接続している、[1]に記載の流体処理システム。
[11]
上部収集パイプ及び/又は下部収集パイプは、個々の前記円筒形濾過モジュールの個々の前記ヘッダに割り当てられた個々のTピースから形成されており、
前記Tピースは、90°分岐部を用いて個々の前記円筒形濾過モジュールの前記ヘッダに接続されており、かつ、水平分岐部を用いて互いに接続されており、上部収集パイプ及び下部収集パイプをそれぞれ形成している、[10]に記載の流体処理システム。
[12]
上部ヘッダ及び/又は下部ヘッダは、前記円筒形シェルに取り外し可能に接続されている、[1]~[11]のいずれか一項に記載の流体処理システム。
[13]
前記中空糸膜の束は、前記中空糸膜の束と、前記上部チューブシートと、前記下部チューブシートとを備えるカートリッジに組み込まれており、前記カートリッジは、前記シェル内部に取り外し可能に配置されている、[1]~[12]のいずれか一項に記載の流体処理システム。
[14]
前記下部収集ダクトは、前記円筒形シェルの断面中心に対して偏心して配置されており、
上部収集ダクト及び下部収集ダクトは、前記円筒形シェルの前記断面中心に対し互いに反対側に配置されている、[1]~[13]のいずれか一項に記載の流体処理システム。
図1
図2
図3
図4