(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】モータユニット及び電動自転車
(51)【国際特許分類】
B62M 23/02 20100101AFI20230227BHJP
B62M 6/55 20100101ALI20230227BHJP
【FI】
B62M23/02 150
B62M6/55
(21)【出願番号】P 2018107864
(22)【出願日】2018-06-05
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】川上 将史
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-225648(JP,A)
【文献】特開2012-250580(JP,A)
【文献】特開昭63-254254(JP,A)
【文献】特開2016-203932(JP,A)
【文献】特開2013-086562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/40- 6/75,9/02,11/02,23/02
F16H 37/06-37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一スプロケットが取り付けられたクランク軸を介して連結された一対のクランクアームのそれぞれのペダルからの踏力による人力駆動力に、モータにより発生する補助駆動力を加えて走行可能である電動自転車に用いられるモータユニットであって、
前記クランク軸が貫通したケースと、
前記ケースに収容されるモータと、
前記モータの正方向の第一回転を減速して伝達する減速機構と、
少なくとも一部が前記ケースの内部に配置され、前記減速機構によって伝達された前記第一回転に基づく前記補助駆動力を出力する第一出力部と、
少なくとも一部が前記ケースの内部に配置され、前記モータの負方向の第二回転に基づく副駆動力を前記ケースの外部に出力する第二出力部と、を有し、
前記第二出力部は、前記一対のクランクアームの間に収まる位置に配置されており、
前記第二出力部は、前記減速機構に含まれる減速回転軸に設けられている
モータユニット。
【請求項2】
第一スプロケットが取り付けられたクランク軸を介して連結された一対のクランクアームのそれぞれのペダルからの踏力による人力駆動力に、モータにより発生する補助駆動力を加えて走行可能である電動自転車に用いられるモータユニットであって、
前記クランク軸が貫通したケースと、
前記ケースに収容されるモータと、
前記モータの正方向の第一回転を減速して伝達する減速機構と、
少なくとも一部が前記ケースの内部に配置され、前記減速機構によって伝達された前記第一回転に基づく前記補助駆動力を出力する第一出力部と、
少なくとも一部が前記ケースの内部に配置され、前記モータの負方向の第二回転に基づく副駆動力を前記ケースの外部に出力する第二出力部と、を有し、
前記第二出力部は、前記一対のクランクアームの間に収まる位置に配置されており、
前記第二出力部は、
前記ケースを貫通する出力回転軸と、
前記出力回転軸に設けられた歯車とを備え、
前記歯車は、前記減速機構に含まれる減速用歯車に噛み合っている
モータユニット。
【請求項3】
第一スプロケットが取り付けられたクランク軸を介して連結された一対のクランクアームのそれぞれのペダルからの踏力による人力駆動力に、モータにより発生する補助駆動力を加えて走行可能である電動自転車に用いられるモータユニットであって、
前記クランク軸が貫通したケースと、
前記ケースに収容されるモータと、
前記モータの正方向の第一回転を減速して伝達する減速機構と、
少なくとも一部が前記ケースの内部に配置され、前記減速機構によって伝達された前記第一回転に基づく前記補助駆動力を出力する第一出力部と、
少なくとも一部が前記ケースの内部に配置され、前記モータの負方向の第二回転に基づく副駆動力を前記ケースの外部に出力する第二出力部と、を有し、
前記第二出力部は、前記一対のクランクアームの間に収まる位置に配置されており、
前記第二出力部は、前記モータの回転軸からな
り、前記ケースを貫通する出力回転軸を有する
モータユニット。
【請求項4】
前記出力回転軸は、一端部のみが前記ケースを貫通している
請求項2または3に記載のモータユニット。
【請求項5】
前記第二出力部は、前記モータにおける前記クランク軸とは反対側の端部と、前記クランク軸との間に収まる位置に配置されている
請求項1~
4のいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項6】
前記第二出力部は、前記ケースにおける前記第一スプロケットとは、前記クランク軸の軸方向の反対側に配置されている
請求項1~
5のいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項7】
前記第二出力部は、前記クランク軸を基準として前記モータ側に配置されている
請求項1~
6のいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項8】
前記第二出力部は、前記モータの回転軸方向に見て、前記モータと重なる位置に配置されている
請求項1~
7のいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項9】
前記第一出力部は、前記クランク軸に対して前記補助駆動力を出力する
請求項1~
7のいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項10】
前記第一出力部は、前記第一スプロケットとは別の第二スプロケットに対して前記補助駆動力を出力する
請求項1~
7のいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項11】
前記第二出力部は、前記モータの回転軸に設けられている
請求項
8~1
0のいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項12】
前記第二出力部は、
出力回転軸と、
前記出力回転軸に設けられた歯車とを備え、
前記歯車は、前記モータの回転軸に設けられたモータ歯車に噛み合っている
請求項
8~1
0のいずれか一項
のうちの請求項3を引用する請求項を除く請求項に記載のモータユニット。
【請求項13】
前記第二出力部は、前記副駆動力を、前記電動自転車の変速機を動作させるための動力、前記電動自転車のスタンドを動作させるための動力、前記電動自転車のブレーキを動作させるための動力及び、盗難防止機構を動作させるための動力の少なくとも一つとして出力する
請求項1~1
2のいずれか一項に記載のモータユニット。
【請求項14】
前記第二出力部は、前記クランク軸の近傍であって、前記モータよりも前記クランク軸に近い位置に配置されている
請求項1
または2に記載のモータユニット。
【請求項15】
前記第二出力部は、前記減速機構に含まれる減速回転軸に設けられている
請求項
2に記載のモータユニット。
【請求項16】
前記第二出力部は、
出力回転軸と、
前記出力回転軸に設けられた歯車とを備え、
前記歯車は、前記減速機構に含まれる減速用歯車に噛み合っている
請求項1
または3に記載のモータユニット。
【請求項17】
請求項1~1
6のいずれか一項に記載のモータユニットを備える
電動自転車。
【請求項18】
前記第二出力部は、前記クランク軸の後方に配置されている
請求項1
7に記載の電動自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペダルからの踏力による人力駆動力に、モータにより発生する補助駆動力を加えて走行可能なモータユニット及び電動自転車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バッテリなどの蓄電器から給電されるモータを有し、ペダルに加えられる踏力からなる人力駆動力をトルクセンサにより検出し、人力駆動力に対応したモータの補助駆動力(アシスト力)を加えることで、上り坂等でも楽に走行できる電動自転車が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、モータユニットには、アシスト力を発生するためのモータ以外にも別の駆動源が搭載される場合がある。この別の駆動源は、電動自転車に搭載されたアクセサリー部品(補助部品)に対する動力(副駆動力)を生成する。
【0005】
ところが、アシスト力発生用のモータと補助部品用のモータとが搭載されているとモータユニット自体が大型化してしまう。
【0006】
このため、本発明は、アシスト力及び補助部品に対する副駆動力を発生しつつも、大型化を抑制することができるモータユニット及び電動自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第一スプロケットが取り付けられたクランク軸を介して連結された一対のクランクアームのそれぞれのペダルからの踏力による人力駆動力に、モータにより発生する補助駆動力を加えて走行可能である電動自転車に用いられるモータユニットであって、クランク軸が貫通したケースと、ケースに収容されるモータと、モータの正方向の第一回転を減速して伝達する減速機構と、少なくとも一部がケースの内部に配置され、減速機構によって伝達された第一回転に基づく補助駆動力を出力する第一出力部と、少なくとも一部がケースの内部に配置され、モータの負方向の第二回転に基づく副駆動力をケースの外部に出力する第二出力部と、を有し、第二出力部は、一対のクランクアームの間に収まる位置に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アシスト力及び補助部品に対する副駆動力を発生しつつも、大型化を抑制可能なモータユニット及び電動自転車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る電動自転車の全体側面図である。
【
図2】実施の形態に係る電動自転車の部分切欠側面図である。
【
図3】実施の形態に係る電動自転車のモータユニットの側面図である。
【
図4】実施の形態に係るモータユニットの断面図である。
【
図5】変形例1に係るモータユニットの断面図である。
【
図6】変形例2に係るモータユニットの断面図である。
【
図7】変形例3に係るモータユニットの断面図である。
【
図8】変形例4に係るモータユニットの断面図である。
【
図9】変形例5に係るモータユニットの断面図である。
【
図10】変形例6に係るモータユニットの断面図である。
【
図11】変形例7に係るモータユニットの断面図である。
【
図12】変形例8に係るモータユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施の形態に係るモータユニット及び電動自転車について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する趣旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
以下の説明における左右方向及び前後方向は、進行方向に向って当該電動自転車1に使用者が搭乗した状態での方向を言う。
【0013】
[構成]
図1は、実施の形態に係る電動自転車1の全体側面図である。
図2は、実施の形態に係る電動自転車1の部分切欠側面図である。
図1及び
図2に示すように、電動自転車1は、フレーム2と、前輪3と、後輪4と、ハンドル5と、サドル6と、クランク7と、ペダル8と、モータユニット20と、バッテリ12と、第一スプロケット13と、後スプロケット14と、チェーン15と、チェーンカバー17と、スタンド16と、を備えている。
【0014】
フレーム2は、金属により形成されたフレームであり、ヘッドパイプ2a、前フォーク2b、メインパイプ2c、立パイプ2d、チェーンステー2e、シートステー2fなどを備えている。
【0015】
前輪3は、前フォーク2bの下端に回転自在に取り付けられている。後輪4は、チェーンステー2eの後端に回転自在に取り付けられている。ハンドル5は、前輪3の向きを変更するための部位であり、ヘッドパイプ2aに対して連結されている。ハンドル5には、ブレーキを動作させるためのブレーキレバー55と、使用者などが操作可能な手元操作部(図示省略)などが取り付けられている。サドル6は、前フォーク2bに取り付けられている。
【0016】
クランク7は、左右にそれぞれ設けられるクランクアーム7bと、左右のクランクアーム7b同士を連結するクランク軸7aとからなる。各クランクアーム7bにはペダル8が取り付けられている。ペダル8には、踏力からなる人力駆動力がかけられる。
【0017】
モータユニット20は、補助駆動力(アシスト力)を発生させる駆動源としての電動のモータ21(
図3等参照)及びこのモータ21を含めた各種の電気的制御を行う制御部24(
図4参照)などが設けられている。モータユニット20の詳細については、後述する。
【0018】
バッテリ12は、モータ21に駆動用の電力を供給する蓄電器である。蓄電器としては、例えば、二次電池、キャパシタなどが挙げられる。
【0019】
第一スプロケット13は、クランク軸7aと同軸心で一体的に回転するように、当該クランク軸7aに取り付けられ、人力駆動力及び補助駆動力が合わされた合力を出力する駆動力出力輪体である。第一スプロケット13は、前スプロケット、クランクスプロケットまたは前ギヤとも称せられる。後スプロケット14は、後輪4のハブ9に取り付けられた後部輪体である。後スプロケット14は、後ギヤとも称せられることがある。
【0020】
チェーン15は、第一スプロケット13と後スプロケット14とにわたって回転可能な状態で無端状に巻回された無端状駆動力伝達体である。チェーンカバー17は、チェーン15などを側方から覆うカバーである。
【0021】
電動自転車1には、クランク軸7aの略後方など、前輪3と後輪4との間の中間位置(より詳しくは中間位置の下部)にモータユニット20が配置されている。このような配置構成にすることで、重量が比較的大きいモータユニット20が、電動自転車1の前後方向中央に配置される。このため、前輪3や後輪4を持ち上げ易くて、走行路に段差があっても容易に乗り越えることができるなど、電動自転車1の車体(フレーム2など)の取り回しがよく、また、走行安定性も良好となる。
【0022】
図3は、実施の形態に係るモータユニット20の側面図である。
図4は、実施の形態に係るモータユニット20の断面図である。なお、
図3では、第一スプロケット13の図示を省略している。また、
図4は、
図3におけるIV-IV切断線を含む切断面を見た断面図である。
【0023】
図3及び
図4に示すように、モータユニット20は、ケース22と、モータ21と、減速機構25とを備えている。
【0024】
ケース22は、モータケース22aと、左側ケース22bと、右側ケース22cとを備えており、このケース22の前部をクランク軸7aが左右に貫通している。また、クランク軸7aの外周には、人力伝達体28と、中間筒体23と、連動体29とが配設されている。さらに、ケース22の前後方向中央部には減速機構25が配設され、ケース22内の後部左側にはモータ21が配設され、ケース22内の後部右側には制御部24が配設されている。制御部24は、各種の電気的制御を行う電子部品及び各種情報を記憶する記憶部などが設けられた制御用プリント基板24aを備えている。制御部24は、モータ21の駆動制御を行う。
【0025】
ケース22内の構成について詳細に説明する。
【0026】
図4に示すように、クランク軸7aは、モータユニット20の前部を左右に貫通した状態で軸受26、27により回転自在に配設されている。クランク軸7aにおける左側寄り部分の外周には、セレーション部7cを介して、筒状の人力伝達体28が一体的に回転する状態で嵌め込まれている。
【0027】
人力伝達体28は、クランク軸7aからの人力駆動力が伝達される略筒状の部材である。人力伝達体28の内周におけるクランク軸7aのセレーション部7cに対応する箇所には、セレーション部28bが形成されている。このセレーション部28bは、クランク軸7aのセレーション部7cと噛み合っている。
【0028】
人力伝達体28の外周表面には、磁気異方性を付与した磁歪発生部31bが形成されている。人力伝達体28の外周には、一定の隙間を介してコイル31aが配設されている。この磁歪発生部31b及びコイル31aにより磁歪式のトルクセンサ31が構成されている。これにより、クランク軸7aからの人力駆動力が人力伝達体28に伝達されるとともに、トルクセンサ31により人力駆動力が検出される。また、この磁歪式のトルクセンサ31では、磁歪発生部31bが、人力伝達体28の軸心方向に対して例えば+45度と-45度とをなす螺旋形状に形成されており、人力伝達体28に人力駆動力が伝達されると人力伝達体28の表面の磁歪発生部31bに歪みが発生して透磁率の増加部分と減少部分とが発生するため、コイル31aのインダクタンス差を測定することでトルク(人力駆動力)の大きさを検出できるように構成されている。なお、この実施の形態では、上記構成により、クランク軸7aが反対方向に回転されたことをも検出可能に構成されているがこれに限るものではない。
【0029】
中間筒体23は、人力伝達体28からの人力駆動力が伝達される略筒状の部材である。中間筒体23は、クランク軸7aの外周における人力伝達体28の右側に隣接した箇所で、クランク軸7aに対して回転自在の状態で配設されている。中間筒体23は、人力伝達体28の右端部外周に形成されたセレーション部28aと、中間筒体23の左端部内周に形成されたセレーション部23aとで嵌合されている。なお、この実施の形態では、人力伝達体28のセレーション部28aに、中間筒体23の左端部内周に形成されたセレーション部23aが外側から嵌合されている。
【0030】
連動体29は、中間筒体23からの人力駆動力が一方向クラッチ30を介して伝達される部材である。また、連動体29は、人力伝達体28などを介して伝達された人力駆動力とモータ21からの補助駆動力とを合成する合力体として機能する。
【0031】
具体的には、中間筒体23と連動体29との間に、一方向クラッチ30が配設されている。一方向クラッチ30の内側には中間筒体23が取り付けれ、一方向クラッチ30の外側には連動体29が取り付けられている。連動体29は、クランク軸7aの外周において、クランク軸7aに対して回転自在の状態で配設されている。連動体29は、モータ21からの補助駆動力をクランク軸7aに伝達する。つまり、連動体29は、モータ21からの補助駆動力をクランク軸7aに出力する第一出力部の一例である。
【0032】
一方、一方向クラッチ30は、中間筒体23からの前進方向への人力駆動力は連動体29に伝達するが、連動体29からの前進方向への補助駆動力は中間筒体23を介してクランク軸7aやペダル8側に伝達されないように構成されている。つまり、この電動自転車1でも、使用者がペダル8を漕ぐことを止めても、しばらくの間だけ、モータ21が回転し続けるように、いわゆる遅れ制御を行うが、一方向クラッチ30により補助駆動力を切断させて、クランク軸7aやペダル8が勝手に回転し続けることが阻止されている。
【0033】
また、モータユニット20には、クランク軸7aと一体的に回転する部材である中間筒体23、ひいては、クランク軸7aやペダル8の回転を検出する光学式の回転検出器10が設けられている。回転検出器10は発光部と受光部とからなる光センサである。中間筒体23における左端部の外周には、発光部の光を遮断したり通過させたりする回転体11が取り付けられている。この回転体11が通過させた発光部の光を、受光部が受光することで、回転検出器10により中間筒体23、ひいては、クランク軸7aやペダル8の回転数(回転量)を検出する。回転検出器10は、ケース22の前端部内側から後方に延びる支持部材18を介して、回転体11が配設される箇所に向けて取り付けられている。
【0034】
また、連動体29の左寄り箇所外周にはモータ21からの補助駆動力を入力するための大径歯車部29bが一体形成されている。連動体29の右端部は、ケース22から突出している。このように、連動体29は少なくとも一部がケース22の内部に配置されている。なお、連動体29の全体がケース22の内部に配置されていてもよい。
【0035】
連動体29の右端部外周には、駆動力出力輪体としての第一スプロケット13が嵌め込まれている。これにより、連動体29と第一スプロケット13とは一体的に回転する。クランク軸7aは、連動体29に外嵌された軸受27により、連動体29を介して回転自在に支持されている。ここで、連動体29とクランク軸7aとの間、中間筒体23とクランク軸7aとの間及び人力伝達体28の右側内周面とクランク軸7aとの間には、それぞれ薄肉の軸受などを配設してもよい。
【0036】
モータ21は、軸受32、33によりその回転軸21a及びロータ部21bが回転自在に支持されている。また、モータ21の回転軸21aが右側方に突出され、この突出部の外周に歯部21cが形成されている。モータ21は、制御部24の制御に基づいて、異なる回転方向で回転軸21aを回転させる。ここで、補助駆動力を発生するための回転方向を正方向とし、その反対の回転方向を負方向とする。モータ21は、負方向の回転(第二回転)では補助駆動力とは異なる副駆動力を発生する。副駆動力は、クランク軸7aを駆動させるための部材以外の部材を動作させるために用いられる。副駆動力の用途例については、後述する。
【0037】
減速機構25は、モータ21の正方向の回転(第一回転)を減速して連動体29に伝達する減速機構である。減速機構25は減速用歯車36を備えている。減速機構25は、減速用歯車36を介することにより、モータ21の回転トルクが増幅されて連動体29の大径歯車部29bに伝達するよう構成されている。ここで、減速用歯車36の支持軸には、軸受34、35により回転自在に支持された小径支持軸部36aと、これよりも大径の大径支持軸部36bとが一体形成されている。また、小径支持軸部36aの外周には、小径支持軸部36aとは別体の小径歯車部36cが、圧入またはセレーション部などを介して、一体的に回転するように組みつけられている。そして、小径歯車部36cが連動体29の大径歯車部29bに噛み合わされている。一方、減速用歯車36の大径支持軸部36bの外周には、大径歯車部36dが配設されているととともに、この大径歯車部36dの外歯がモータ21の回転軸21aの歯部21cに噛み合わされている。減速用歯車36における大径支持軸部36bと大径歯車部36dとの間には、連動体29からの回転駆動力をモータ21側に伝達しないための、人力駆動力切断用の一方向クラッチ37が配設されている。
【0038】
一方向クラッチ37は、モータ21が正方向に回転(第一回転)している際には、減速用歯車36の大径歯車部36dに伝達された補助駆動力を、そのまま大径支持軸部36bに伝達するように動作する。具体的には、一方向クラッチ37は、走行中に出力されたある程度の補助駆動力に基づいて、減速用歯車36の大径歯車部36dの内周部分が、これに対向する大径支持軸部36bの外周部分に対して、相対的に第一スプロケット13を前進させる方向に回転する場合に、補助駆動力をそのまま大径支持軸部36bに伝達する。この場合には、減速用歯車36の大径歯車部36dの内周の前進方向への回転数が、これに対向する大径支持軸部36bの外周の前進方向への回転数よりも大きい場合が含まれる。そして、補助駆動力が、小径支持軸部36aと小径歯車部36cとを介して、連動体29の大径歯車部29bに伝達される。これにより、連動体29において、人力駆動力と補助駆動力とが合成され、これらの合成された合力がクランク軸7aに出力される。この合力は、クランク軸7aから第一スプロケット13及びチェーン15を介して、後輪4に伝達される。
【0039】
一方、バッテリ12の残容量が無くなって、モータ21から補助駆動力が出力されない状態でペダル8を漕いだ場合など、減速用歯車36の大径歯車部36dの内周部分が、これに対向する大径支持軸部36bの外周部分に対して、相対的に第一スプロケット13を前進させる方向とは逆方向に回転する場合には、補助駆動力の伝達経路が一方向クラッチ37により切断される。この場合には、減速用歯車36の大径歯車部36dの内周の前進方向への回転数が、これに対向する大径支持軸部36bの外周の前進方向への回転数よりも小さい場合が含まれる。
【0040】
これにより、バッテリ12の残容量が無くなって、モータ21から補助駆動力が出力されない状態でペダル8を漕いだ場合などには、人力駆動力によって小径歯車部36c及び小径支持軸部36aや大径支持軸部36bは回転されるが、大径歯車部36dやモータ21の回転軸21a及びロータ部21bは回転されない。
【0041】
上記構成において、前進走行時にペダル8を踏み込むと、このペダル8にかけられた踏力に基づく人力駆動力が、クランク軸7aから人力伝達体28及び中間筒体23、連動体29に伝達され、前記人力駆動力が、人力伝達体28に設けられたトルクセンサ31により検出される。そして、前記人力駆動力に対応する補助駆動力が減速機構25の減速用歯車36などを介して、連動体29に伝達され、連動体29で合わされた合力が、第一スプロケット13から、チェーン15を介して、後輪4に伝達される。これにより、人力駆動力に対応したモータ21の補助駆動力(アシスト力)を加えることで、上り坂等でも楽に走行できる。
【0042】
一方、走行中に使用者がペダル8を漕ぐことを止めると、これに伴ってクランク軸7a及び中間筒体23の回転も停止するため、この停止状態が回転検出器10により検出され、モータ21が停止または制動される。このように、走行中に使用者がペダル8を漕ぐことを止めると、モータ21が直ぐに停止または制動されるので、無駄にモータ21が駆動されて、バッテリ12の消耗を抑えることができる。
【0043】
また、モータ21が負方向に回転している際には、一方向クラッチ37は、減速用歯車36の大径歯車部36dに伝達された副駆動力を大径支持軸部36bには伝達しないように動作する。つまり、副駆動力は、連動体29、クランク軸7aには伝達されない。
【0044】
モータユニット20は、副駆動力をケース22の外部に出力するための第二出力部60を備えている。本実施の形態では、第二出力部60は、少なくとも一部がケース22の内部に配置されているが、第二出力部60の全体がケース22の内部に配置されていてもよい。
【0045】
具体的には、第二出力部60は、一対のクランクアーム7bの間に収まる位置に配置されている。つまり、第二出力部60は、一対のクランクアーム7bが回転したとしても当該クランクアーム7bに干渉しない位置に配置されている。また、第二出力部60は、モータ21におけるクランク軸7aとは反対側の端部(本実施の形態では後端部)と、クランク軸7aとの間に収まる位置に配置されている。より詳細には、第二出力部60は、クランク軸7aの後方であって、当該クランク軸7aとモータ21との間に配置されている。また、第二出力部60は、ケース22における第一スプロケット13とは反対側(本実施の形態では左側)に配置されている。
【0046】
第二出力部60は、ギアボックス61と、出力回転軸62と、歯車63と、一方向クラッチ64とを備えている。
【0047】
ギアボックス61は、ケース22の外部に設けられたアクセサリー部品(補助部品)に対して動力を出力するためのギアボックスである。本実施の形態では、補助部品の一例であるスタンド16の駆動部に対してギアボックス61が動力を出力するものとする。つまり、ギアボックス61は、図示しない動力伝達機構を介してスタンド16の駆動部に連結されている。
【0048】
出力回転軸62は、軸体であり、ケース22のモータケース22aを貫通して設けられている。出力回転軸62は、図示しない軸受によって回転自在にモータケース22aに支持されている。出力回転軸62は、その先端部に歯車63が設けられている。歯車63は、大径歯車部36dの内歯に対して噛み合っている。一方向クラッチ64は、出力回転軸62の基端部と、ギアボックス61との間に配置されている。一方向クラッチ64は、減速用歯車36の大径歯車部36dに伝達された副駆動力をギアボックス61に伝達するが、大径歯車部36dに伝達された補助駆動力はギアボックス61に伝達しないように構成されている。つまり、モータ21が負方向に回転し副駆動力を出力した場合には、当該補助駆動力は一方向クラッチ64によってギアボックス61には伝達される。一方、モータ21が正方向に回転し補助駆動力を出力した場合には、一方向クラッチ64によって出力回転軸62が空転するので、補助駆動力はギアボックス61には伝達されない。なお、一方向クラッチ64は、ギアボックス61の内部に設けられていてもよい。
【0049】
使用者は、スタンド16を立てるときには、ハンドル5に設けられた手元操作部(図示省略)を操作する。この操作に基づいて、手元操作部は制御部24に対して補助駆動力の出力指示を出力する。制御部24は、出力指示を受け付けると、モータ21を負方向に回転させる。これにより、モータ21は副駆動力を発生する。副駆動力は、モータ21から減速用歯車36、歯車63、出力回転軸62及びギアボックス61などを介してスタンド16の駆動部に伝達されるので、当該駆動部に対して副駆動力を作用させることができる。したがって、使用者は、容易にスタンド16を立てることができる。なお、制御部24は、モータ21が補助駆動力を出力している場合、つまり、モータ21が正方向に回転している場合には、補助駆動力の出力指示が入力されたとしても、それを受け付けないものとする。
【0050】
[効果など]
以上のように、本実施の形態によれば、第一スプロケット13が取り付けられたクランク軸7aを介して連結された一対のクランクアーム7bのそれぞれのペダル8からの踏力による人力駆動力に、モータ21により発生する補助駆動力を加えて走行可能である電動自転車1に用いられるモータユニット20であって、クランク軸7aが貫通したケース22と、ケース22に収容されるモータ21と、モータ21の正方向の第一回転を減速して伝達する減速機構25と、少なくとも一部がケース22の内部に配置され、減速機構25によって伝達された第一回転に基づく補助駆動力を出力する連動体29(第一出力部)と、少なくとも一部がケース22の内部に配置され、モータ21の負方向の第二回転に基づく副駆動力をケース22の外部に出力する第二出力部60と、を有し、第二出力部60は、一対のクランクアーム7bの間に収まる位置に配置されている。
【0051】
また、電動自転車1は、上記モータユニット20を備えている。
【0052】
これによれば、第二出力部60が一対のクランクアーム7bの間に収まる位置に配置されているので、副駆動力を発生しつつもモータユニット20の大型化を抑えることができる。
【0053】
まだ、第二出力部60と一対のクランクアーム7bとの干渉も抑制することができる。
【0054】
また、第二出力部60は、モータ21におけるクランク軸7aとは反対側の端部と、クランク軸7aとの間に収まる位置に配置されている。
【0055】
これによれば、モータ21におけるクランク軸7aとは反対側の端部と、クランク軸7aとの間に収まる位置に第二出力部60が配置されているので、クランク軸7aとモータ21との並び方向(本実施の形態では前後方向)で第二出力部60が張り出すことを抑制することができる。つまり、クランク軸7aとモータ21との並び方向におけるモータユニット20の大型化を抑制することができる。
【0056】
また、第二出力部60は、ケース22における第一スプロケット13とは反対側に配置されている。
【0057】
ここで、ケース22における第一スプロケット13側においては、第一スプロケット13と干渉を防ぐためにスペース上の制約が多い。つまり、ケース22における第一スプロケット13とは反対側は制約が少ない。この制約の少ない箇所に、第二出力部60が配置されているので、第二出力部60を比較的容易に配置することができる。
【0058】
また、第二出力部60は、クランク軸7aを基準としてモータ21側に配置されている。
【0059】
これによれば、第二出力部60がクランク軸7aを基準としてモータ21側に配置されているので、クランク軸7aを基準としてモータ21側に配置された補助部品に対して、第二出力部60を連結する際にクランク軸7aが邪魔にならない。したがって、容易に第二出力部60を連結することができる。
【0060】
また、第二出力部60は、クランク軸7aの後方に配置されている。
【0061】
これによれば、第二出力部60がクランク軸7aの後方に配置されているので、電動自転車1の後部にある補助部品(例えばスタンド16など)に対して、容易に第二出力部60を連結することができる。
【0062】
また、第二出力部60は、クランク軸7aの近傍に配置されているので、クランク軸7a近傍の余剰空間に対して第二出力部60を配置することができる。余剰空間を有効活用することができれば、モータユニット20の大型化を抑制することができる。
【0063】
また、第一出力部は、クランク軸7aに対して補助駆動力を出力する連動体29である。
【0064】
これによれば、クランク軸7aに対して補助駆動力を出力する、いわゆる一軸タイプの電動自転車1に対して、本開示の特徴的な構成を適用することが可能である。
【0065】
また、第二出力部60は、出力回転軸62と、出力回転軸62に設けられた歯車63とを備え、歯車63は、減速機構25に含まれる減速用歯車36に噛み合っている。
【0066】
これによれば、第二出力部60の歯車63を、減速用歯車36に噛み合わせることで、補助駆動力をケース22の外部に出力することができる。
【0067】
また、第二出力部60は、副駆動力を、電動自転車1のスタンド16を動作させるための動力として出力する。
【0068】
これによれば、スタンド16を立てる動作を副駆動力で補助することができる。
【0069】
[変形例]
なお、モータユニットの構成は、上記実施の形態で説明された構成に限定されない。そこで、以下に、モータユニットについての変形例を上記実施の形態との差分を中心に説明する。以降の説明では、上記実施の形態と同一部分については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0070】
(変形例1)
図5は、変形例1に係るモータユニット20Aの断面図である。
図5に示すように、変形例1に係るモータユニット20Aでは、第二出力部60Aの設置箇所が、実施の形態に係るモータユニット20の第二出力部60とは異なっている。
【0071】
具体的には、第二出力部60Aは、第一スプロケット13の後方であってモータ21の右側に配置されている。この場合においても、第二出力部60Aは、一対のクランクアーム7bの間に収まる位置に配置されている。また、第二出力部60Aは、モータ21におけるクランク軸7aとは反対側の端部(本変形例では後端部)と、クランク軸7aとの間に収まる位置に配置されている。
【0072】
第二出力部60Aは、モータ21の回転軸21aaに対して設けられている。つまり、モータ21の回転軸21aa方向に見て、第二出力部60Aの少なくとも一部はモータ21に重なる位置に配置されている。第二出力部60Aは、ギアボックス61aと、一方向クラッチ64aとを備えている。
【0073】
回転軸21aaは、その先端部がケース22の右側ケース22cを貫通した状態で、軸受91により回転自在に支持されている。回転軸21aaの先端部は、一方向クラッチ64aを介してギアボックス61aに連結されている。つまり、回転軸21aaは、第二出力部60Aの出力回転軸である。
【0074】
一方向クラッチ64aは、モータ21の回転軸21aaから伝達された副駆動力をギアボックス61aに伝達するが、回転軸21aaに伝達された補助駆動力はギアボックス61aに伝達しないように構成されている。
【0075】
このように、第二出力部60Aは、モータ21の回転軸21aaに設けられているので、この回転軸21aaを第二出力部60Aの出力回転軸とすることができる。したがって部品点数を削減することができ、これにより大型化も抑制することが可能である。
【0076】
また、モータ21の回転軸21aa方向に見て、第二出力部60Aの少なくとも一部がモータ21に重なっているので、当該方向視における小型化を図ることができる。
【0077】
(変形例2)
図6は、変形例2に係るモータユニット20Bの断面図である。
図6に示すように、変形例2に係るモータユニット20Bでは、第二出力部60Bの設置箇所が、実施の形態に係るモータユニット20の第二出力部60とは異なっている。
【0078】
具体的には、第二出力部60Bは、モータ21の左側に配置されている。この場合においても、第二出力部60Bは、一対のクランクアーム7bの間に収まる位置に配置されている。また、第二出力部60Bは、モータ21におけるクランク軸7aとは反対側の端部(本変形例では後端部)と、クランク軸7aとの間に収まる位置に配置されている。
【0079】
第二出力部60Bは、モータ21の回転軸21abに対して設けられている。第二出力部60Bは、ギアボックス61bと、一方向クラッチ64bとを備えている。
【0080】
回転軸21abは、その基端部がケース22の左側ケース22bを貫通した状態で、軸受32により回転自在に支持されている。回転軸21abの基端部は、一方向クラッチ64bを介してギアボックス61bに連結されている。つまり、回転軸21abは、第二出力部60Bの出力回転軸である。
【0081】
一方向クラッチ64bは、モータ21の回転軸21abから伝達された副駆動力をギアボックス61bに伝達するが、回転軸21abに伝達された補助駆動力はギアボックス61bに伝達しないように構成されている。
【0082】
このように、第二出力部60Bは、モータ21の回転軸21abに設けられているので、この回転軸21abを第二出力部60Bの出力回転軸とすることができる。したがって部品点数を削減することができ、これにより大型化も抑制することが可能である。
【0083】
なお、変形例1及び変形例2では、モータ21の回転軸21aa、21abが第二出力部60A、60Bの出力回転軸である場合を例示した。しかし、モータの回転軸と、第二出力部の出力回転軸が別体であってもよい。この場合、モータの回転軸に設けられたモータ歯車と、第二出力部の出力回転軸に設けられた歯車とを噛み合わせればよい。
【0084】
(変形例3)
図7は、変形例3に係るモータユニット20Cの断面図である。
図7に示すように、変形例3に係るモータユニット20Cでは、第二出力部60Cの設置箇所が、実施の形態に係るモータユニット20の第二出力部60とは異なっている。
【0085】
具体的には、第二出力部60Cは、減速用歯車36の右側に配置されている。この場合においても、第二出力部60Cは、一対のクランクアーム7bの間に収まる位置に配置されている。また、第二出力部60Cは、モータ21におけるクランク軸7aとは反対側の端部(本変形例では後端部)と、クランク軸7aとの間に収まる位置に配置されている。
【0086】
第二出力部60Cは、ギアボックス61cと、出力回転軸62cと、歯車63cと、一方向クラッチ64cとを備えている。
【0087】
出力回転軸62cは、軸体であり、ケース22の右側ケース22cを貫通して設けられている。出力回転軸62cは、図示しない軸受によって回転自在に右側ケース22cに支持されている。出力回転軸62cは、その先端部に歯車63cが設けられている。歯車63cは、大径歯車部36dの円筒軸体36eの外周面に設けられた歯車36fに対して噛み合っている。このように、第二出力部60Cは、減速機構25に含まれる減速回転軸としての円筒軸体36eに設けられている。
【0088】
一方向クラッチ64cは、出力回転軸62cの基端部と、ギアボックス61cとの間に配置されている。一方向クラッチ64cは、減速用歯車36の大径歯車部36dに伝達された副駆動力をギアボックス61cに伝達するが、大径歯車部36dに伝達された補助駆動力はギアボックス61cに伝達しないように構成されている。
【0089】
このように、第二出力部60Cが、減速機構25に含まれる減速回転軸(円筒軸体36e)に設けられているので、減速機構25から副駆動力を出力することができる。
【0090】
なお、第二出力部60Cは、減速機構25に含まれる他の減速回転軸(小径支持軸部36aまたは大径支持軸部36b)に設けられていてもよい。
【0091】
(変形例4)
図8は、変形例4に係るモータユニット20Dの断面図である。
図8に示すように、変形例4に係るモータユニット20Dでは、第二出力部60Dの設置箇所が、実施の形態に係るモータユニット20の第二出力部60とは異なっている。また、人力駆動力切断用の一方向クラッチ37dの設置箇所も実施の形態に係るモータユニット20の一方向クラッチ37とは異なっている。つまり、変形例4では、減速用歯車36における大径支持軸部36bと大径歯車部36dとの間には、一方向クラッチ37が設けられていない。
【0092】
ここで、連動体29dの左寄り箇所外周には、回転部291dと、歯車部292dとが一方向クラッチ37dを介して連結されている。回転部291dは、円板状に形成されており、連動体29dの左寄り箇所外周に一体形成されている。また、一方向クラッチ37dは、環状の一方向クラッチであり、回転部291dの全周を囲んでいる。歯車部292dは、環状の歯車であり、一方向クラッチ37dの全周を囲んでいる。歯車部292dの外周部には、減速用歯車36に噛み合う外歯が形成されており、歯車部292dにおける内周面には、第二出力部60Dの歯車63dに噛み合う内歯が形成されている。
【0093】
一方向クラッチ37dは、モータ21が正方向に回転(第一回転)している際には、減速用歯車36を介して歯車部292dに伝達された補助駆動力を、そのまま回転部291dに伝達するように動作する。
【0094】
また、モータ21が負方向に回転(第二回転)している際には、一方向クラッチ37dは、減速用歯車36を介して歯車部292dに伝達された副駆動力を、回転部291dに伝達しないように動作する。つまり、副駆動力が伝達された場合には、歯車部292dは回転するものの回転部291dは回転しない。
【0095】
第二出力部60Dは、クランク軸7aの前方に配置されている。この場合においても、第二出力部60Dは、一対のクランクアーム7bの間に収まる位置に配置されている。また、第二出力部60Dは、クランク軸7aの近傍に配置されている。
【0096】
第二出力部60Dは、ギアボックス61dと、出力回転軸62dと、歯車63dと、一方向クラッチ64dとを備えている。
【0097】
出力回転軸62dは、軸体であり、その先端部に歯車63dが設けられている。歯車63dは、歯車部292dの内歯に対して噛み合っている。
【0098】
一方向クラッチ64dは、出力回転軸62dの基端部と、ギアボックス61dとの間に配置されている。一方向クラッチ64dは、連動体29dの歯車部292dに伝達された副駆動力をギアボックス61dに伝達するが、歯車部292dに伝達された補助駆動力はギアボックス61dに伝達しないように構成されている。
【0099】
このように、第二出力部60Dがクランク軸7aの前方であって、クランク軸7aの近傍に設けられているので、ケース22内におけるクランク軸7aの前方の余剰空間に対して第二出力部60を配置することができる。余剰空間を有効活用することができれば、モータユニット20Dの大型化を抑制することができる。
【0100】
また、第二出力部60Dがクランク軸7aの前方に配置されているので、電動自転車1の前部にある補助部品に対して、容易に第二出力部60Dを連結することができる。
【0101】
(変形例5)
上記実施の形態では、人力駆動力と補助駆動力とを1つの軸から出力する、いわゆる一軸式のモータユニット20を例示した。しかし、変形例5では、クランク軸7aの一端部に配設された第一スプロケット13とは別に、モータ21からの補助駆動力を出力するための第二スプロケット51を備えた、いわゆる二軸式とも称せられるモータユニット20Eについて例示する。
【0102】
図9は、変形例5に係るモータユニット20Eの断面図である。
図9に示すように、モータユニット20Eでは、モータ21の後方に、減速機構25の減速用歯車36と、一方向クラッチ37と、第二出力部60Eが配置されている。
【0103】
減速用歯車36の大径支持軸部36bは、右側ケース22cを貫通して外部に突出している。この大径支持軸部36bの先端部には、第二スプロケット51が嵌め込まれている。チェーン15は、第二スプロケット51及び連動体29に嵌め込まれた第一スプロケット13に噛み合うように巻き回される。このため、モータ21からの補助駆動力が、減速機構25を介して、第二スプロケット51から出力され、補助駆動力がチェーン15で合成されて後輪4に伝達される。
【0104】
第二出力部60Eは、一対のクランクアーム7bの間に収まる位置に配置されている。つまり、第二出力部60Eは、一対のクランクアーム7bが回転したとしても当該クランクアーム7bに干渉しない位置に配置されている。また、第二出力部60Eは、クランク軸7aの後方であって、ケース22における第一スプロケット13及び第二スプロケット51とは反対側に配置されている。
【0105】
第二出力部60Eは、ギアボックス61eと、出力回転軸62eと、歯車63eと、一方向クラッチ64eとを備えている。
【0106】
出力回転軸62eは、軸体であり、ケース22の左側ケース22bを貫通して設けられている。出力回転軸62eは、図示しない軸受によって回転自在に左側ケース22bに支持されている。出力回転軸62eは、その先端部に歯車63eが設けられている。歯車63eは、大径歯車部36dの内歯に対して噛み合っている。一方向クラッチ64eは、出力回転軸62eの基端部と、ギアボックス61eとの間に配置されている。一方向クラッチ64eは、減速用歯車36の大径歯車部36dに伝達された副駆動力をギアボックス61eに伝達するが、大径歯車部36dに伝達された補助駆動力はギアボックス61eに伝達しないように構成されている。
【0107】
このように、いわゆる二軸式のモータユニット20Eに対しても、副駆動力を発生しつつもモータユニット20Eの大型化を抑えることができる。
【0108】
(変形例6)
図10は、変形例6に係るモータユニット20Fの断面図である。
図10に示すように、変形例6に係るモータユニット20Fでは、第二出力部60Fの設置箇所が、変形例5に係るモータユニット20Eの第二出力部60Eとは異なっている。
【0109】
具体的には、第二出力部60Fは、第一スプロケット13の後方であってモータ21の右側に配置されている。この場合においても、第二出力部60Fは、一対のクランクアーム7bの間に収まる位置に配置されている。また、第二出力部60Fは、モータ21におけるクランク軸7aとは反対側の端部(本変形例では後端部)と、クランク軸7aとの間に収まる位置に配置されている。
【0110】
第二出力部60Fは、モータ21の回転軸21afに対して設けられている。第二出力部60Fは、ギアボックス61fと、一方向クラッチ64fとを備えている。
【0111】
回転軸21afは、その先端部がケース22の右側ケース22cを貫通した状態で、図示しない軸受により回転自在に支持されている。回転軸21afの先端部は、一方向クラッチ64fを介してギアボックス61fに連結されている。つまり、回転軸21afは、第二出力部60Fの出力回転軸である。
【0112】
一方向クラッチ64fは、モータ21の回転軸21afから伝達された副駆動力をギアボックス61fに伝達するが、回転軸21afに伝達された補助駆動力はギアボックス61fに伝達しないように構成されている。
【0113】
このように、第二出力部60Fは、モータ21の回転軸21afに設けられているので、この回転軸21afを第二出力部60Fの出力回転軸とすることができる。したがって部品点数を削減することができ、これにより大型化も抑制することが可能である。
【0114】
(変形例7)
図11は、変形例7に係るモータユニット20Gの断面図である。
図11に示すように、変形例7に係るモータユニット20Gでは、第二出力部60Gの設置箇所が、変形例5に係るモータユニット20Eの第二出力部60Eとは異なっている。
【0115】
具体的には、第二出力部60Gは、モータ21の左側に配置されている。この場合においても、第二出力部60Gは、一対のクランクアーム7bの間に収まる位置に配置されている。また、第二出力部60Gは、モータ21におけるクランク軸7aとは反対側の端部(本変形例では後端部)と、クランク軸7aとの間に収まる位置に配置されている。
【0116】
第二出力部60Gは、モータ21の回転軸21agに対して設けられている。第二出力部60Gは、ギアボックス61gと、一方向クラッチ64gとを備えている。
【0117】
回転軸21agは、その基端部がケース22の左側ケース22bを貫通した状態で、軸受32により回転自在に支持されている。回転軸21agの基端部は、一方向クラッチ64gを介してギアボックス61gに連結されている。つまり、回転軸21agは、第二出力部60Bの出力回転軸である。
【0118】
一方向クラッチ64gは、モータ21の回転軸21agから伝達された副駆動力をギアボックス61gに伝達するが、回転軸21agに伝達された補助駆動力はギアボックス61gに伝達しないように構成されている。
【0119】
このように、第二出力部60Gは、モータ21の回転軸21agに設けられているので、この回転軸21agを第二出力部60Gの出力回転軸とすることができる。したがって部品点数を削減することができ、これにより大型化も抑制することが可能である。
【0120】
(変形例8)
図12は、変形例8に係るモータユニット20Hの断面図である。
図12に示すように、変形例8に係るモータユニット20Hでは、第二出力部60Hの設置箇所が、変形例5に係るモータユニット20Eの第二出力部60Eとは異なっている。
【0121】
具体的には、第二出力部60Hは、第二スプロケット51の後方であって、一対のクランクアーム7bの間に収まる位置に配置されている。
【0122】
第二出力部60Hは、ギアボックス61hと、出力回転軸62hと、歯車63hと、一方向クラッチ64hとを備えている。
【0123】
出力回転軸62hは、軸体であり、ケース22の右側ケース22cを貫通して設けられている。出力回転軸62hは、図示しない軸受によって回転自在に左側ケース22bに支持されている。出力回転軸62hは、その先端部に歯車63hが設けられている。歯車63hは、大径歯車部36dの内歯に対して噛み合っている。一方向クラッチ64hは、出力回転軸62hの基端部と、ギアボックス61hとの間に配置されている。一方向クラッチ64hは、減速用歯車36の大径歯車部36dに伝達された副駆動力をギアボックス61hに伝達するが、大径歯車部36dに伝達された補助駆動力はギアボックス61hに伝達しないように構成されている。
【0124】
このように、いわゆる二軸式のモータユニット20Hに対しても、副駆動力を発生しつつもモータユニット20Hの大型化を抑えることができる。
【0125】
[その他]
以上、本発明に係るモータユニット及び電動自転車について、上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0126】
例えば、上記実施の形態では、種々のセレーション部を例示したが、当該セレーション部をスプライン部に変更することも可能である。
【0127】
また、モータユニット20は、変速機を備えていてもよい。
【0128】
また、上記実施の形態では、第二出力部60が電動自転車1のスタンド16を動作させるための動力として副駆動力を出力する場合を例示した。しかし、第二出力部60は、他の補助部品を駆動させるための動力として副駆動力を出力してもよい。その他の補助部品としては、モータユニット20に備わる変速機が挙げられる。この場合、変速機のワイヤーを牽引する動力として副駆動力を用いることができる。
【0129】
その他の補助部品としては、電動自転車1に備わるブレーキが挙げられる。この場合、ブレーキを動作させるための動力として副駆動力を用いることができ、よりブレーキ力を高めることも可能である。
【0130】
その他の補助部品としては、電動自転車に備わるキャパシタが挙げられる。この場合、キャパシタを充電する際の動力として副駆動力を用いることができる。
【0131】
その他の補助部品としては、サドル6を昇降させる昇降機構が挙げられる。この場合、昇降機構を動作させるための動力として副駆動力を用いることができる。
【0132】
その他の補助部品としては、電動自転車に備わる錠前などの盗難防止機構が挙げられる。この場合、盗難防止機構を動作させるための動力として副駆動力を用いることができる。
【0133】
その他の補助部品としては、電動自転車に備わる油圧ポンプが挙げられる。この場合、油圧ポンプを駆動させるための動力として副駆動力を用いることができる。
【0134】
その他の補助部品としては、前照灯の方向を変更するための方向変換機構が挙げられる。この場合、方向変換機構を駆動させるための動力として副駆動力を用いることができる。
【0135】
なお、ここで例示した補助部品に対しても副駆動力を出力することが可能である。
【0136】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0137】
1 電動自転車
7a クランク軸
7b クランクアーム
8 ペダル
13 第一スプロケット
16 スタンド
20、20A、20B、20C、20D、20E、20F、20G、20H モータユニット
21 モータ
21a、21aa、21ab、21af、21ag 回転軸
22 ケース
25 減速機構
29、29d 連動体(第一出力部)
36 減速用歯車
51 第二スプロケット
60、60A、60B、60C、60D、60E、60F、60G、60H 第二出力部