(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】基板搬送システムおよび基板搬送方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230227BHJP
【FI】
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2019082469
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥根 充弘
(72)【発明者】
【氏名】稲本 吉将
(72)【発明者】
【氏名】三宅 清郎
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-045543(JP,A)
【文献】特開2003-059998(JP,A)
【文献】特開平11-124675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を有するトレイと、前記トレイの前記各貫通孔に対応する位置に複数の突出ピンを有する搬送アームとを準備する工程と、
前記トレイに基板を載置する載置工程と、
前記各突出ピンが対応する前記貫通孔を貫通して前記基板を支持するように前記搬送アームと前記搬送アームの上方に配置された前記トレイとを近づけて前記基板および前記トレイを前記搬送アームで支持する支持工程と、
前記搬送アームで支持された前記基板および前記トレイをチャンバへ搬送する搬送工程と、
前記トレイを前記チャンバ内の所定位置に載置するために、前記突出ピンが前記基板から離れて、前記トレイが前記基板を支持するように前記搬送アームと前記トレイとを離間させる離間工程と、を備えた基板搬送方法。
【請求項2】
前記基板は、前記トレイに載置される側の面に、外縁部と、前記外縁部の内側に設けられた凹部とを有し、
前記支持工程は、前記各突出ピンが対応する前記貫通孔を貫通して前記基板の前記外縁部を支持するように前記搬送アームを前記トレイに近づけ、
前記離間工程は、前記突出ピンが前記基板の前記外縁部から離れて前記トレイが前記基板を支持するように前記搬送アームを前記トレイから離間させる、
請求項1に記載の基板搬送方法。
【請求項3】
前記チャンバは、予備チャンバおよび処理チャンバを含み、
前記搬送工程は、
前記トレイを大気圧状態にある前記予備チャンバへ搬送し、
前記予備チャンバを減圧し、
前記トレイを前記予備チャンバから減圧状態にある前記処理チャンバへ搬送する、
請求項1または2に記載の基板搬送方法。
【請求項4】
複数の貫通孔を有するトレイと、
基板が載置された前記トレイを格納する基板格納部と、
前記トレイの前記各貫通孔に対応する位置に複数の突出ピンを有する搬送アームを備えた搬送部と、
減圧可能なチャンバと、を備え、
前記搬送部は、
前記各突出ピンが対応する前記貫通孔を貫通して前記基板を支持するように前記搬送アームと前記搬送アームの上方に配置された前記トレイとを近づけて前記基板および前記トレイを前記搬送アームで支持し、
前記トレイを前記基板格納部から前記チャンバへ搬送し、
前記チャンバ内の所定位置に前記トレイを載置するために、前記突出ピンが前記基板から離れて、前記トレイが前記基板を支持するように前記搬送アームと前記トレイを離間させる、
基板搬送システム。
【請求項5】
前記基板は、前記トレイに載置される側の面に、外縁部と、前記外縁部の内側に設けられた凹部とを有し、
前記搬送部は、
前記各突出ピンが対応する前記貫通孔を貫通して前記基板の前記外縁部を支持するように前記搬送アームを前記トレイに近づけ、
前記突出ピンが前記基板の前記外縁部から離れて前記トレイが前記基板の前記外縁部を支持するように前記搬送アームを前記トレイから離間させる、
請求項4に記載の基板搬送システム。
【請求項6】
前記チャンバは、予備チャンバおよび処理チャンバを含み、
前記搬送部は、前記トレイを大気圧状態にある前記予備チャンバへ搬送し、前記予備チャンバが減圧された後、前記トレイを前記予備チャンバから減圧状態にある前記処理チャンバへ搬送する、
請求項4または5に記載の基板搬送システム。
【請求項7】
前記突出ピンの外径は前記貫通孔の内径より小さく、前記突出ピンの長さは前記トレイの厚みより大きい、
請求項4~6のいずれか1項に記載の基板搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送システムおよび基板搬送方法に関し、半導体素子の製造工程において半導体基板を搬送するための基板搬送システムおよび基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などのモバイル通信機器には複数の高機能な半導体素子(半導体チップ)が1つのパッケージ内に封止されるSiP(system in package)モジュールが用いられている。こうした半導体素子には薄型化が求められ、例えば100μm以下の厚みを有する半導体基板(半導体ウェーハ)を歩留まりよく実現する薄仕上げ研削技術が注目されている。
【0003】
しかし、半導体基板が薄肉化するほど、基板の剛性が低くなり、例えば半導体基板を保管するローダとプラズマ処理するための処理チャンバとの間で、剛性の低い半導体基板を搬送ロボットアームで直接搬送することは困難であり、一般に、半導体基板を載置したトレイをロボットアームで搬送することにより、処理チャンバへの搬入および搬出を実現している。
【0004】
具体的には、半導体基板の裏面外縁部をわずかに残して、その裏面内側部のみを研磨するバックグラインディング技術が提案され、例えば径方向の幅3mmの裏面外縁部のみを厚くすることにより半導体基板に剛性を与えて反りによる割れや欠けを防止するTAIKO(登録商標)半導体基板が実用化されている。本願では、こうした薄肉化した半導体基板を単に「薄肉化基板」ともいう。
【0005】
例えば特許文献1には、TAIKO(登録商標)半導体基板にスパッタリング処理を施す際、半導体基板の反りを防止し、糊残りなく保護テープを剥離することができる処理方法が記載されている。
【0006】
具体的に、特許文献1に記載の処理方法は、外縁部を残して内側の領域のみが研削された薄肉化基板の研削されていない側の面に基材と硬化型粘着剤を含有する硬化型粘着剤層を有するウエハ保護テープを貼り付けるテープ貼りつけ工程と、ウエハ保護テープに刺激を与えてウエハ保護テープを硬化させるテープ硬化工程と、ウエハ保護テープが貼付された薄肉化基板にスパッタリング処理を施すスパッタリング工程と、スパッタリング処理後の薄肉化基板からウエハ保護テープを剥離するテープ剥離工程とを有する。
【0007】
一方、こうした薄肉化した半導体基板は、裏面の内側部(中央部)が裏面外縁部より凹んでいるため、裏面外縁部を下向きにしてトレイに載置したときに、特許文献1に記載された問題(反りおよび糊残りの防止)以外に別の解決すべき課題がある。
【0008】
すなわち薄肉化基板は、肉厚の外縁部、肉薄の内側部の裏面、およびトレイの表面との間に形成された閉空間を有し、大気圧下においては通常、この空間には空気が満たされているが、薄肉化基板が載置されたトレイが収容された処理チャンバが大気圧環境からプラズマ処理するために減圧(真空引き)されたとき、上記閉空間に満たされた空気が薄肉化基板の外縁部から勢いよく流出して、薄肉化基板がトレイから浮き上がる(跳ね上がる)ことがある。このとき薄肉化基板は、大気圧下において元あったトレイ内の所定位置に着地するとは限らず、所定位置から逸脱して着地する(位置ずれが生じる)ことがしばしばある。
【0009】
これまで、こうした位置ずれを防止するため、一般的にはオペレータが板バネなどのジグを用いて、基板をトレイに固定していたが、生産効率が低減し(作業工数が増大し)、処理チャンバ内のジグの存在が基板に対するプラズマ処理に不均一性(例えば不均一なプラズマエッチング)をもたらすこともあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明の態様は、薄肉化基板が搬入された処理チャンバを減圧(真空引き)したとき、基板とトレイの間に残留している空気が薄肉化基板の外縁部から流出することを防止することにより、トレイに載置される基板の位置ずれを回避し、基板搬送の安定性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る第1の態様は、基板搬送方法に関し、この基板搬送方法は、複数の貫通孔を有するトレイと、前記トレイの前記各貫通孔に対応する位置に複数の突出ピンを有する搬送アームとを準備する工程と、前記トレイに基板を載置する載置工程と、前記各突出ピンが対応する前記貫通孔を貫通して前記基板を支持するように前記搬送アームと前記アームの上方に配置された前記トレイとを近づけて前記基板および前記トレイを前記搬送アームで支持する支持工程と、前記搬送アームで支持された前記基板および前記トレイをチャンバへ搬送する搬送工程と、前記トレイを前記チャンバ内の所定位置に載置するために、前記突出ピンが前記基板から離れて、前記トレイが前記基板を支持するように前記搬送アームと前記トレイとを離間させる離間工程と、を備える。
【0013】
本発明に係る第2の態様は、基板搬送システムに関し、この基板搬送システムは、複数の貫通孔を有するトレイと、基板が載置された前記トレイを格納する基板格納部と、前記トレイの前記各貫通孔に対応する位置に複数の突出ピンを有する搬送アームを備えた搬送部と、減圧可能なチャンバと、を備え、前記搬送部は、前記各突出ピンが対応する前記貫通孔を貫通して前記基板を支持するように前記搬送アームと前記アームの上方に配置された前記トレイとを近づけて前記基板および前記トレイを前記搬送アームで支持し、前記トレイを前記基板格納部から前記チャンバへ搬送し、前記チャンバ内の所定位置に前記トレイを載置するために、前記突出ピンが前記基板から離れて、前記トレイが前記基板を支持するように前記搬送アームと前記トレイを離間させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る態様によれば、トレイに載置される基板の位置ずれを抑制し、基板搬送の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)および(d)は、薄肉化基板の断面図および平面図であり、(b)および(e)は、本発明の実施形態に係る基板搬送システムを構成するトレイの断面図および平面図であり、(c)および(f)は、本発明の実施形態に係る基板搬送システムを構成する搬送アームの断面図および平面図である。
【
図2】(a)は、薄肉化基板がトレイに載置された状態を示す断面図であり、(b)は、トレイに載置された薄肉化基板、および上昇している搬送アームを示す断面図であり、(c)は、薄肉化基板の外縁部が搬送アームで支持されている状態を示す断面図であり、(d)は、搬送アーム下降して再び薄肉化基板がトレイに載置された状態を示す断面図である。
【
図3】(a)~(k)は、本発明の実施形態に係る基板搬送方法の各工程を示す概念図であって、薄肉化基板、トレイ、ならびに搬送アームの位置、および処理チャンバの圧力状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して本発明に係る基板搬送システムおよび基板搬送方法の実施形態について以下説明する。実施形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「水平」、「上下」および「左右」等)を適宜用いるが、これらの用語は図中の方向を説明するためのものであって、本発明を限定するものでない。なお各図面において、基板搬送システムの各構成部品の形状または特徴を明確にするため、これらの寸法を相対的なものとして図示し、必ずしも同一の縮尺比で表したものではない。また、各図面において同一の構成部品には同一の符号を用いて示す。
【0017】
[基板搬送システムの構成]
図1(a)~
図1(f)は、本発明に係る基板搬送システム1の実施形態を示す概略図である。具体的には、
図1(a)および
図1(d)は、薄肉化基板10の断面図および平面図であり、
図1(b)および
図1(e)は、本発明の実施形態に係る基板搬送システム1を構成するトレイ20の断面図および平面図であり、
図1(c)および
図1(f)は、本発明の実施形態に係る基板搬送システム1を構成する搬送アーム30の断面図および平面図である。
【0018】
なお薄肉化基板10は、本発明を理解しやすくするために、例えば径方向の幅3mmの裏面外縁部12のみを厚くすることにより基板に剛性を与えて反りによる割れや欠けを防止する半導体基板であるものとして以下説明するが、これに限定されるものではなく、外縁部を含む全体が薄肉化された半導体基板であってもよい。また薄肉化基板は、任意の半導体(Si、SiC、GaN)からなる基板であってもよいし、ガラスエポキシ樹脂等の半導体以外の材料からなる基板であってもよい。
【0019】
基板搬送システム1は、概略、薄肉化基板10が載置されたトレイ20を格納する基板格納部と、真空ポンプ(ともに図示せず)を用いて減圧可能な処理チャンバ40と、薄肉化基板10が載置されたトレイ20を基板格納部から処理チャンバ40へ搬入するとともに、処理チャンバ40から別の基板格納部に搬出する搬送部(図示せず)とを備える。すなわち搬送部は搬送アーム30を含み、搬送アーム30は、薄肉化基板10および/またはトレイ20を支持して、処理チャンバ40へ搬入するとともに、処理チャンバ40から搬出するように構成されている。
【0020】
薄肉化基板10は、例えば4インチ、5インチ、6インチまたは8インチ等の任意の径を有し、薄肉化基板10に剛性与えて反りによる割れや欠けを防止する裏面外縁部12を有し(
図1(a))、裏面外縁部12は、例えば径方向に約3mmの幅を有する。薄肉化基板10の裏面外縁部12は、図中、下方に突出し、その内側に中央凹部14を形成する。すなわち薄肉化基板10は、肉厚の裏面外縁部12、肉薄の中央凹部14、およびトレイ20の表面との間に形成された閉空間を有する。
【0021】
トレイ20は、略円形の平面形状を有し(
図1(e))、上方に突出する表面外周部22を有する(
図1(b))。トレイ20の表面外周部22の内径は、薄肉化基板10の裏面外縁部12の外径より大きく、トレイ20および薄肉化基板10が同心円上に配置された場合、薄肉化基板10の裏面外縁部12とトレイ20の表面外周部22との間に、例えば約1mm~2mmの円環状のギャップが形成されてもよい。トレイ20の表面外周部22の内径は、薄肉化基板10の外径の公差を考慮した最大寸法よりも大きく設定されることが好ましい。これにより、薄肉化基板10の外径がばらついても、確実に薄肉化基板10をトレイ20に載置できる。
【0022】
また、薄肉化基板10が裏面外縁部12を備える場合、トレイ20の表面外周部22の内径は、薄肉化基板10の外径との差が裏面外縁部12の径方向の幅よりも小さく設定されることが好ましい。これにより、トレイ20に載置された薄肉化基板10がトレイ20内でずれても、突出ピン34を薄肉化基板10の裏面外縁部12において接触させることが可能となり、突出ピン34が肉薄の中央凹部14に接触して薄肉化基板10を破損することを防止できる。
【0023】
また、トレイ20の表面外周部22の内径側の高さは、突出ピン34の高さとトレイ20の表面外周部22よりも内側の厚さとの差よりも大きいことが好ましい。これにより薄肉化基板10が突出ピン34に支持されてトレイ20から離間した状態で、例えば、搬送中に薄肉化基板10に対して何等かの横方向の力が加わったとしても、表面外周部22によって薄肉化基板がトレイ20の外側に飛び出すのを防止できる。
【0024】
また本実施形態に係るトレイ20は、図示のように、薄肉化基板10の裏面外縁部12に対応する位置に複数の貫通孔24を有する。
図1(d)は、トレイ20の貫通孔24に対応する薄肉化基板10の裏面外縁部12上の領域(位置)を破線小円24’で示す。なお、トレイ20の貫通孔24は、図示のように4つあることが好ましいが、これに限定されず、5つ以上であってもよい。
【0025】
本実施形態に係る搬送アーム30は、
図1(a)~
図1(f)に示すように、薄肉化基板10の裏面外縁部12およびトレイ20の貫通孔24に対応する位置に複数の突出ピン34を有する。各突出ピン34は略円柱形状を有し、その外径はトレイ20の貫通孔24の内径より小さく、その長さは同一で、トレイ20の厚みより大きくなるように構成されている。すなわち搬送アーム30は、薄肉化基板10が載置されたトレイ20に対して昇降(上下移動)するとき、突出ピン34はトレイ20の貫通孔24を自在に貫通(挿通)し、薄肉化基板10の水平状態を維持したまま裏面外縁部12を押し上げ(薄肉化基板10をトレイ20から離間させ)、薄肉化基板10を支持することができる。
【0026】
[基板搬送方法]
図2(a)~
図2(d)は、本発明に係る基板搬送方法の実施形態を示す概略断面図である。具体的には、
図2(a)は、薄肉化基板10がトレイ20に載置された状態を示す断面図であり、
図2(b)は、トレイ20に載置された薄肉化基板10、および上昇している搬送アーム30を示す断面図であり、
図2(c)は、薄肉化基板10の裏面外縁部12が搬送アーム30で支持されている状態を示す断面図であり、
図2(d)は、搬送アーム30が下降して、再び薄肉化基板10がトレイ20に載置された状態を示す断面図である。
【0027】
基板格納部には、薄肉化基板10が載置された複数のトレイ20が格納されている(
図2(a))。搬送部は、搬送アーム30を基板格納部から処理チャンバ40(またはロードロック室42)まで移動させることができる。また搬送部は、各突出ピン34がトレイ20の対応する貫通孔24に正確に位置合わせされるように、搬送アーム30をトレイ20の真下に配置することができる(
図2(b))。また搬送部は、搬送アーム30を上方に移動させることにより、各突出ピン34がトレイ20のそれぞれの貫通孔24を貫通し、薄肉化基板10の水平状態を維持しつつ、薄肉化基板10の裏面外縁部12を押し上げて、薄肉化基板10をトレイ20から離間させることができる(
図2(c))。このときトレイ20は、搬送アーム30の上面36で支持されている。さらに搬送部は、搬送アーム30を下方に移動させることにより、各突出ピン34を各貫通孔24から退出させ、
図2(b)と同様、薄肉化基板10をトレイ20に当接させ、支持させることができる(
図2(d))。
【0028】
すなわち搬送アーム30は、その上面36でトレイ20を支持しながら、突出ピン34で薄肉化基板10を水平に支持することができ(
図2(c))、搬送部は、この状態の搬送アーム30を基板格納部からロードロック室42(「予備チャンバ」ともいう。)まで搬送してもよい。
【0029】
図3(a)~
図3(k)は、薄肉化基板10が載置されたトレイ20をロードロック室42に搬入した後、処理チャンバ40でプラズマ処理するまでの一連の搬送アーム30および真空ポンプの動作(減圧状態)を示す概念図である。図中、薄肉化基板10を小円で示し、トレイ20を大円で示し、搬送アーム30をU字で示す。また図中、搬送アーム30が上方に移動して、押し上げられた状態にある薄肉化基板10をアルファベット文字Uで示し、搬送アーム30が下方に移動して、下方位置にあってトレイ20に支持されている状態にある薄肉化基板10をアルファベット文字Dで示す。
【0030】
さらに図中、開閉可能な第1ゲートバルブ44(左側)および第2ゲートバルブ46(右側)を有するロードロック室42を示し、処理チャンバ40は、第2ゲートバルブ46を介してロードロック室42と開閉可能に連通している。第1ゲートバルブ44および第2ゲートバルブ46は、図示しないアクチュエータを用いて独立して開閉することができる。またロードロック室42および処理チャンバ40は、同様に図示しない真空ポンプを用いて独立して減圧することができる。
【0031】
図3(a)は、薄肉化基板10がトレイ20に支持された状態(D)で、基板格納部に配置されている状態を示す。このとき、トレイ20および薄肉化基板10は、ロードロック室42の外部にあって大気圧下にあり、第1ゲートバルブ44および第2ゲートバルブ46は閉位置にあって、ロードロック室42および処理チャンバ40は真空状態にある。
【0032】
第1ゲートバルブ44が開位置に移動し、ロードロック室42を大気圧状態に開放する(
図3(b))。このとき、薄肉化基板10はトレイ20に支持された状態(D)のままであり、薄肉化基板10とトレイ20の表面との間には閉空間が形成され、空気が満たされている。
【0033】
次に、搬送部は、搬送アーム30をトレイ20の下方に移動させる。このとき、薄肉化基板10はトレイ20に支持された状態(D)のままである。次に、搬送部は、搬送アーム30を上方に移動させて、各突出ピン34がトレイ20のそれぞれの貫通孔24を貫通し、薄肉化基板10の水平状態を維持しつつ、裏面外縁部12を押し上げて、薄肉化基板10をトレイ20から離間させる(U)(
図3(c))。これにより、
図2(c)を参照して説明したように、薄肉化基板10とトレイ20の表面との間の閉空間が解消される。
【0034】
搬送部は、薄肉化基板10をトレイ20から離間させた状態で(U)、搬送アーム30を用いて、トレイ20および薄肉化基板10を大気圧状態にあるロードロック室42に搬入する(
図3(d))。
【0035】
そして第1ゲートバルブ44が閉位置に移動し(
図3(e))、真空ポンプが作動して、ロードロック室42が減圧される(
図3(f))。このとき、薄肉化基板10はトレイ20から離間しており(U)、薄肉化基板10とトレイ20の表面との間の閉空間が解消されているので、従来技術の欄で説明したように、減圧時に閉空間に満たされた空気により薄肉化基板10がトレイ20から浮き上がって、所定位置から逸脱して着地する(位置ずれが生じる)ことはない。したがって本実施形態によれば、基板固定用のジグを備えたトレイを準備したり、オペレータがジグを用いて薄肉化基板10をトレイ20に固定する作業を行ったりすることなく、基板の位置ずれを抑制し、基板搬送の安定性を向上することができる。
【0036】
次に、搬送部は、トレイ20を支持する搬送アーム30を水平面内で180度回転させる。また、第1ゲートバルブ44が閉位置を維持したまま、第2ゲートバルブ46が開位置に移動する(
図3(g))。このとき、ロードロック室42および処理チャンバ40はともに減圧され、真空状態にある。
【0037】
搬送部は、搬送アーム30を用いて、薄肉化基板10およびトレイ20を処理チャンバ40に搬入するとともに(
図3(h))、処理チャンバ40内に設けられた昇降機構(図示せず)にトレイ20を受け渡した後、ロードロック室42に戻り(
図3(i))、
図2(d)に示すように搬送アーム30を下降させて、トレイ20と離間させる。このとき、
図2(d)を参照して説明したように、薄肉化基板10はトレイ20に支持された状態(D)となり(
図3(j))、薄肉化基板10とトレイ20の表面との間の閉空間が再び形成されるが、処理チャンバ40はすでに真空状態に維持されているので、閉空間内の圧力が処理チャンバ40内の圧力よりも高くなることはなく、閉空間に滞留する空気に起因して薄肉化基板10の位置ずれが起こることはない。
【0038】
最後に、処理チャンバ40にプロセスガスを導入し、高周波電圧を印加することにより、プロセスガスをプラズマ化して薄肉化基板10の表面に対してプラズマ処理を行う(
図3(k))。
【0039】
上記説明したように、搬送部は、搬送アーム30の各突出ピン34が対応する貫通孔24を貫通して薄肉化基板10を支持するように搬送アーム30と搬送アーム30の上方に配置されたトレイ20とを近づけて薄肉化基板10およびトレイ20を搬送アーム30で支持し、トレイ20を基板格納部から処理チャンバ40へ搬送するとともに、処理チャンバ40内の所定位置にトレイ20を載置するために、突出ピン34が薄肉化基板10から離れて、トレイ20が薄肉化基板10を支持するように搬送アーム30とトレイ20を離間させるように構成されている。
したがって本実施形態によれば、ロードロック室42の減圧時、薄肉化基板10とトレイ20との間に形成される閉空間に満たされた空気により薄肉化基板10がトレイ20から浮き上がって、トレイ20の位置ずれを回避して、基板搬送の安定性を向上させるとともに、基板に対するプラズマ処理の加工精度を改善することができる。
【0040】
プラズマ処理を行った薄肉化基板10は、
図3(a)~
図3(k)で示す一連の動作を逆の順序で行うことにより、基板格納部に格納してもよい。
【0041】
なお上記説明では、搬送部は、
図2(c)に示す状態の搬送アーム30を基板格納部からロードロック室42まで搬送するものとしたが、処理チャンバ40がロードロック室42の機能を併せ持つものであってもよい。この場合、搬送部は、上記一連の動作のうち、
図3(a)~(f)の動作を行った後、
図3(k)のプラズマ処理を行い、同様に、
図3(a)~(f)の動作を逆の順序で行って、プラズマ処理済みの薄肉化基板10を順次、別の基板格納部に格納してもよい。
【0042】
また、上述の通り、トレイ20に載置される基板は、薄肉化基板に限定されず、トレイ20と基板との間に閉空間を形成し、減圧時、閉空間に残留した空気により基板がトレイ20から浮き上がって、位置ずれが生じる可能性のあるものであれば、任意の形状を有する基板であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、半導体素子の製造工程において半導体基板を搬送するための基板搬送システムおよび基板搬送方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1…基板搬送システム
10…基板(薄肉化基板)
12…裏面外縁部
14…中央凹部
20…トレイ
22…表面外周部
24…貫通孔
30…搬送アーム
34…突出ピン
36…上面
40…処理チャンバ
42…ロードロック室(予備チャンバ)
44…第1ゲートバルブ
46…第2ゲートバルブ