(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-24
(45)【発行日】2023-03-06
(54)【発明の名称】圧入構造及びバッテリー状態検知装置
(51)【国際特許分類】
F16B 4/00 20060101AFI20230227BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230227BHJP
H01M 50/543 20210101ALI20230227BHJP
H01R 4/10 20060101ALI20230227BHJP
【FI】
F16B4/00 D
H01M10/48 P
H01M50/543
H01R4/10
(21)【出願番号】P 2020080426
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】東海 啓之
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-247736(JP,A)
【文献】特開2018-096856(JP,A)
【文献】特開2005-282679(JP,A)
【文献】特開2007-308080(JP,A)
【文献】特開昭58-207510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 4/00
H01M 10/48
H01M 50/543
H01R 4/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属から構成され、貫通孔が形成される板状部材と、
前記貫通孔に、当該貫通孔の軸方向一側から他側に向かって圧入され、前記板状部材から当該他側に向かって突出する、金属から構成される圧入部材と、
を備え、
前記貫通孔は、
前記圧入によって前記圧入部材に結合する第1孔部と、
前記第1孔部に対して、前記圧入部材が前記板状部材から突出する側に隣接して配置され、前記第1孔部の孔径よりも大きい孔径を有する第2孔部と、
を備え、
前記第1孔部は、前記板状部材の一側の面に開口し、
前記第2孔部は、前記板状部材において、前記第1孔部の開口とは反対側の面に開口し、
前記圧入部材は、
前記板状部材に対して、圧入方向と反対側に位置するフランジ部と、
前記圧入方向と同じ側に前記フランジ部から突出するように設けられた突起部と、
を備え、
前記突起部は、前記圧入によって、前記第1孔部の開口の周囲において前記板状部材に食い込むことを特徴とする圧入構造。
【請求項2】
請求項
1に記載の圧入構造を備えるバッテリー状態検知装置であって、
バッテリーポストに接続されるポスト接続端子と、
ハーネスに接続されるハーネス接続端子と、
前記ポスト接続端子及び前記ハーネス接続端子のそれぞれに接続されるシャント抵抗と、
前記シャント抵抗に接続される回路基板と、
前記回路基板に接続されるコネクタと、
前記回路基板が設けられるケーシングと、
を更に備え、
前記シャント抵抗が前記板状部材であり、前記ハーネス接続端子が前記圧入部材であることを特徴とするバッテリー状態検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧入構造及びバッテリー状態検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧入部材が板状部材等の貫通孔に圧入される構造が知られている。特許文献1は、この種の圧入構造を備えるバッテリー端子を開示する。特許文献2は、この種の圧入構造を備えるバッテリー状態検知装置を開示する。
【0003】
特許文献1のバッテリー端子は、貫通孔を有する金属製の板状部材と、金属製のボルト(圧入部材)と、を備える。ボルトは、板状部材の貫通孔に差し込まれながら圧入され、これにより板状部材に取り付けられる。このボルトには、電流センサ及び端子がナット等により取り付けられる。電流センサ及び端子は、板状部材にボルトを介して電気的に接続される。
【0004】
特許文献2のバッテリー状態検知装置は、シャント抵抗(板状部材)と、ハーネス接続端子(圧入部材)と、を備える。シャント抵抗は、第1導体、第2導体、及び抵抗体から構成される。第1導体、第2導体、及び抵抗体は、それぞれ平板状に形成される。第2導体は貫通孔を有する。ハーネス接続端子は、導電性を有するボルトとして構成される。ハーネス接続端子は、第2導体の貫通孔に差し込まれながら圧入されることで、当該第2導体に固定される。第2導体に固定されたハーネス接続端子がハーネスの端子の貫通孔に通されて、ハーネス接続端子に対してハーネスが電気的及び機械的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5675750号公報
【文献】国際公開第2017/002356号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成においては、板状部材へのボルトの貫通孔への圧入により、板状部材において当該貫通孔の周囲にバリが発生することがある。この場合、バリは、貫通孔に対してボルトが圧入される方向へ、板状部材から突出する。特許文献2の構成においても、圧入に伴って、シャント抵抗(第2導体)において当該貫通孔の周囲にバリが発生することがある。この場合、バリは、貫通孔に対してハーネス接続端子が圧入される方向へ、板状部材から突出する。
【0007】
板状部材又はシャント抵抗と端子との間にバリが介在すると、板状部材又はシャント抵抗と端子との電気的接続が不適切なものになることがあった。また、ナットの緩み等、バリに起因する他の不具合が発生する懸念があった。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、良好な電気的接続を実現できる圧入構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の圧入構造が提供される。即ち、この圧入構造は、板状部材と、圧入部材と、を備える。前記板状部材は金属から構成される。前記板状部材には、貫通孔が形成される。前記圧入部材は、前記貫通孔に、当該貫通孔の軸方向一側から他側に向かって圧入され、前記板状部材から当該他側に向かって突出する。前記圧入部材は金属から構成される。前記貫通孔は、第1孔部と、第2孔部と、を備える。前記第1孔部は、前記圧入によって前記圧入部材に結合する。前記第2孔部は、前記第1孔部に対して、前記圧入部材が前記板状部材から突出する側に隣接して配置され、前記第1孔部の孔径よりも大きい孔径を有する。前記第1孔部は、前記板状部材の一側の面に開口する。前記第2孔部は、前記板状部材において、前記第1孔部の開口とは反対側の面に開口している。前記圧入部材は、フランジ部と、突起部と、を備える。前記フランジ部は、前記板状部材に対して、圧入方向と反対側に位置する。前記突起部は、前記圧入方向と同じ側に前記フランジ部から突出するように設けられる。前記突起部は、前記圧入によって、前記第1孔部の開口の周囲において前記板状部材に食い込む。
【0011】
これにより、板状部材における圧入部分付近に、圧入部材の圧入に伴ってバリが生じた場合でも、このバリを、第2孔部に相当する空間に収容することができる。よって、圧入部材を介して板状部材に他の部材を取り付ける場合に、板状部材と他の部材との間にバリが介在することを防止できる。この結果、板状部材と他の部材との良好な電気的接続を実現できる。貫通孔の簡素な構成を実現できる。
【0014】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成のバッテリー状態検知装置が提供される。このバッテリー状態検知装置は、前記の圧入構造を備える。前記バッテリー状態検知装置は、ポスト接続端子と、ハーネス接続端子と、シャント抵抗と、回路基板と、コネクタと、ケーシングと、を更に備える。前記ポスト接続端子は、バッテリーポストに接続される。前記ハーネス接続端子は、ハーネスに接続される。前記シャント抵抗は、前記ポスト接続端子及び前記ハーネス接続端子のそれぞれに接続される。前記回路基板は、前記シャント抵抗に接続される。前記コネクタは、前記回路基板に接続される。前記ケーシングには、前記回路基板が設けられる。前記シャント抵抗が前記板状部材である。前記ハーネス接続端子が前記圧入部材である。
【0015】
これにより、板状部材に関して良好な電気的接続を確保することができるバッテリー状態検知装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圧入構造が適用されたバッテリー状態検知装置の全体的な構成を示す斜視図。
【
図2】(a)シャント抵抗の構成を示す斜視図。(b)(a)のシャント抵抗の一部拡大断面図。
【
図3】シャント抵抗にハーネス接続端子が取り付けられた状態を示す斜視図。
【
図5】シャント抵抗にハーネス接続端子が取り付けられた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る圧入構造1が適用されたバッテリー状態検知装置3の全体的な構成を示す斜視図である。
図2(a)は、シャント抵抗15の構成を示す斜視図である。
図2(b)は、
図2(a)のシャント抵抗15の一部拡大断面図である。
【0018】
本実施形態の圧入構造1は、バッテリー状態検知装置3に適用される。このバッテリー状態検知装置3は、例えば、自動車等に搭載されたバッテリーのバッテリーポストに取り付けられる。
【0019】
バッテリー状態検知装置3は、電流の大きさ等を検出することにより、バッテリーの状態を検知することができる。バッテリー状態検知装置3は、検出結果を、図示しない外部装置に出力する。出力先の外部装置としては、例えば、自動車のエンジンを制御するエンジンコントロールユニット(ECU)を挙げることができる。
【0020】
図1に示すように、バッテリー状態検知装置3は、ポスト接続端子5と、ハーネス接続端子(圧入部材)9と、コネクタ11と、ケーシング13と、シャント抵抗(板状部材)15と、回路基板17と、を主要な構成として備えている。
【0021】
ポスト接続端子5は、図示しないバッテリーのバッテリーポストに接続される。ポスト接続端子5は、金属板をプレス、折曲げ加工、又は鍛造加工することにより形成されている。ポスト接続端子5には、バッテリーポストに接続するポスト接続部21と、ポスト接続部21から延びる板状の連結部23と、が設けられている。
【0022】
ポスト接続部21は、上下方向に伸びる略筒状に形成されている。ポスト接続部21は、バッテリーポストを保持することができる。ポスト接続部21は、バッテリーポストを内部に挿入した状態で締付ボルト等により締め付けられる。これにより、ポスト接続部21は、バッテリーポストに対して電気的及び機械的に接続される。
【0023】
連結部23は、ポスト接続部21の外周面下端部から当該ポスト接続部21と離れる向きに延びるように設けられている。連結部23は、シャント抵抗15(突出部25)と接続されており、当該シャント抵抗15との接続部として機能する。
【0024】
ハーネス接続端子9は、導電性を有するボルト(例えば、スタッドボルト)から構成されている。ハーネス接続端子9は、ハーネス7に電気的に接続される。ハーネス接続端子9は、その軸方向を上下方向に向けて配置され、下側でシャント抵抗15に取り付けられる。また、ハーネス接続端子9は、上側でハーネス7と接続される。
【0025】
図1においてハーネス7は簡略的に描かれているが、ハーネス7は例えば電線により構成されている。ハーネス7の端部には、端子27が設けられている。この端子27に、ハーネス接続端子9が通過可能な孔29が形成されている。端子27の孔29にハーネス接続端子9が差し込まれ、この状態で、ナット31等がハーネス接続端子9に締め付けられる。これにより、シャント抵抗15とハーネス7の端子27(シャント抵抗15とは別の部材)とを、ハーネス接続端子9を介して、電気的及び機械的に接続することができる。
【0026】
コネクタ11は、バッテリー状態検知装置3の検知結果をECU等へ出力するためのインタフェースとして構成されている。その内部には、回路基板17と接続された出力端子が設けられている。
【0027】
ケーシング13は、細長い略直方体状に形成された部材である。ケーシング13は、例えば合成樹脂から構成される。ケーシング13には、回路基板17等が設けられる。本実施形態では、ケーシング13は、下側が開放された中空状に形成されている。そして、ケーシング13の内部に、シャント抵抗15の一部及び回路基板17等が収容されている。シャント抵抗15には、ケーシング13からポスト接続端子5側へ突出する突出部25が備えられている。突出部25は、ポスト接続端子5の連結部23と接続されている。
【0028】
シャント抵抗15は、
図2(a)に示すように、第1導体33と、第2導体35と、抵抗値が既知である抵抗体37と、から構成されている。第1導体33、第2導体35、及び抵抗体37は、それぞれ平板状に形成されている。第1導体33には、前述の突出部25が形成されている。
図1に示すように、第2導体35の一部が、ケーシング13の外部に露出している。第2導体35における露出部分に、ハーネス接続端子9が取り付けられている。この構成の詳細は後述する。
【0029】
抵抗体37は、第1導体33と第2導体35との間に配置されている。第1導体33、第2導体35及び抵抗体37は、略同一平面内に配置されている。抵抗体37は、第1導体33と接合されるとともに、第2導体35と接合されている。こうして、第1導体33、抵抗体37、第2導体35が並べて接続され、シャント抵抗15全体が細長い板状に構成されている。第1導体33、抵抗体37及び第2導体35が並べられる方向は、シャント抵抗15の長手方向と一致している。
【0030】
図示しないが、シャント抵抗15の第1導体33及び第2導体35のそれぞれには、回路基板17に接続する基板接続端子が設けられている。これらの基板接続端子を介して、シャント抵抗15は、回路基板17に対して機械的及び電気的に接続される。
【0031】
回路基板17は、ケーシング13の内部においてシャント抵抗15の下方に配置されている。回路基板17には、電子回路が実装されている。この電子回路により、前記の基板接続端子を介して第1導体33と第2導体35との電位差を測定することができる。測定された電位差の情報は、シャント抵抗15の抵抗体37に流れる電流の大きさ等を取得するために用いられる。
【0032】
回路基板17は、コネクタ11の内部に備えられた出力端子に接続されている。回路基板17は、シャント抵抗15に発生する電位差に基づいて、抵抗体37における電流の大きさを計算する。回路基板17は、電位差及び電流の大きさ等に基づいて、バッテリーの状態を検知する。回路基板17は、得られた検知結果を、コネクタ11の出力端子を介してECU等へ出力する。
【0033】
次に、ハーネス接続端子9をシャント抵抗15に取り付ける構成について説明する。
図3は、シャント抵抗15にハーネス接続端子9が取り付けられた状態を示す斜視図である。
図4は、ハーネス接続端子9の構成を示す斜視図である。
図5は、シャント抵抗15にハーネス接続端子9が取り付けられた状態を示す断面図である。
【0034】
図1に示すように、ハーネス接続端子9は、シャント抵抗15における第2導体35に取り付けられている。
図2に示すように、第2導体35には貫通孔41が形成されている。貫通孔41は、板状に形成された第2導体35を厚み方向に貫通する。この貫通孔41に、ハーネス接続端子9が厚み方向一側(貫通孔41の軸方向一側)から他側に向かって圧入される。貫通孔41に圧入されたハーネス接続端子9は、第2導体35から前記の他側に向かって突出する。ハーネス接続端子9及び第2導体35は、それぞれ、金属製の部材から構成されている。
【0035】
ハーネス接続端子9は、貫通孔41への圧入により、第2導体35に固定される。これにより、ハーネス接続端子9の長手方向一端部が、第2導体35に接続される。この接続部分以外の部分が、第2導体35から突出するように配置されている。貫通孔41へハーネス接続端子9を圧入する方向は、圧入後に第2導体35からハーネス接続端子9が突出する方向と一致する。
【0036】
図2(a)及び(b)に示すように、貫通孔41は、その軸方向が第2導体35の厚み方向と一致するように配置されている。貫通孔41は、円状に形成される。貫通孔41は、段付き孔として形成され、その深さ方向の一側と他側とで、その内径が異なる。具体的には、貫通孔41は、
図2(a)のように貫通孔41の向きを上下に向けた状態で、下側の孔径に比べて上側の孔径が大きくなるように形成されている。
【0037】
本実施形態では、貫通孔41は、第1孔部43と、第2孔部45と、から構成されている。第1孔部43と第2孔部45とは、貫通孔41の軸方向で隣接している。第1孔部43の孔径D1よりも、第2孔部45の孔径D2が大きい(D2>D1)。なお、第2孔部45の孔径D2は、第1孔部43の孔径D1と比べて約1.2倍以上大きいことが好ましい。
【0038】
第1孔部43は、第2導体35に開口を形成している。ハーネス接続端子9は、貫通孔41に対し、この開口から差し込まれて圧入される。ハーネス接続端子9の長手方向一端に形成された大径部分が、第1孔部43の内壁に圧接するように差し込まれる。このような圧入により、第1孔部43がハーネス接続端子9に結合する。また、第1孔部43が第2導体35に形成する開口の周囲には、ハーネス接続端子9の一部(後述の突起部53)が、圧入に伴って食い込む。
【0039】
第2孔部45は、第1孔部43に対して上側(ハーネス接続端子9がシャント抵抗15から突出する側)に隣接して配置されている。第2孔部45は、第1孔部43よりも大きい。ハーネス接続端子9を貫通孔41へ取り付けた状態では、第2孔部45の内壁と、ハーネス接続端子9と、の間に空間47が形成される。言い換えれば、第1孔部43と異なり、第2孔部45の内壁はハーネス接続端子9に接触しない。第2孔部45は、第2導体35に開口を形成している。第2孔部45が第2導体35に開口を形成する面は、第1孔部43が第2導体35に開口を形成する面と、貫通孔41の軸方向で反対側に位置する。第2孔部45は、例えばザグリ加工により形成することができる。
【0040】
詳細は後述するが、ハーネス接続端子9は、
図3に示すようにネジ軸部55を有する。第1孔部43の孔径D1も、第2孔部45の孔径D2も、ネジ軸部55の最大の直径D3より大きい。従って、ネジ軸部55を貫通孔41に問題なく差し込むことができる。
【0041】
図4に示すように、ハーネス接続端子9は、フランジ部51と、突起部53と、ネジ軸部55と、を備える。フランジ部51、突起部53、及びネジ軸部55は、ハーネス接続端子9の軸方向において順に並べられている。
【0042】
フランジ部51は、ハーネス接続端子9の軸方向(長手方向)一側に配置されている。フランジ部51は、円板状に形成されている。フランジ部51の直径は、第1孔部43の孔径D1よりも大きく、第2孔部45の孔径D2よりも大きい。
【0043】
突起部53は、フランジ部51において、ネジ軸部55と接続する側の面に形成されている。突起部53は、ハーネス接続端子9の軸方向で見たときに、星形に形成されている。突起部53は、中心がフランジ部51の中心と略一致した状態で、フランジ部51からハーネス接続端子9の軸方向他側へ突出するように設けられている。
【0044】
ネジ軸部55は、フランジ部51の一側の面から突出するように配置されている。ネジ軸部55の中心軸は、フランジ部51の中心と一致する。ネジ軸部55には、オネジが形成されている。これにより、ナット31をネジ軸部55にネジ結合させることができる。
【0045】
この構成で、ハーネス接続端子9は、ネジ軸部55が貫通孔41に第1孔部43側から差し込まれた状態で、所定の工具により第1孔部43に圧入される。このとき、突起部53が、第1孔部43の開口の周囲において、第2導体35に食い込む。フランジ部51が第2導体35に接触した状態で、貫通孔41へのハーネス接続端子9の圧入が終了する。この結果、ハーネス接続端子9が
図1、
図3及び
図5に示す圧入状態となる。
【0046】
この圧入状態では、ハーネス接続端子9が有する突起部53が第1孔部43の内壁と強力に接触して結合する。従って、ハーネス接続端子9と第2導体35との間で、機械的な固定及び電気的な接続を実現できる。また、星形の突起部53が第2導体35に食い込むので、ハーネス接続端子9が軸を中心として回転するのを阻止できる。
【0047】
ハーネス接続端子9の圧入により、第2導体35における貫通孔41の周囲にバリが発生することがある。このバリは、ハーネス接続端子9が圧入される方向に突出するように生じる。
【0048】
しかしながら、本実施形態では、貫通孔41が段付き孔として形成され、ハーネス接続端子9の圧入方向が、小径の第1孔部43から大形の第2孔部45へ向かう方向である。言い換えれば、第2導体35からハーネス接続端子9が突出する根元部分の周囲に、第2導体35の表面63からリング状に窪んだ部分(段差部59)が形成されている。この窪んだ部分が、第2孔部45に相当する。
【0049】
従って、バリが発生した場合でも、
図5に示すように、当該バリ61の発生起点を、第2導体35の表面63ではなく、そこから窪んだ段差部59とすることができる。従って、バリ61を、第2孔部45に相当する空間47に収容することができる。この結果、バリ61が第2導体35の表面63から突出するのを防止することができる。
【0050】
なお、本実施形態の圧入構造1においては、シャント抵抗15の厚み(上下方向の長さ)が2mm以上2.5mm以下である場合、これに対して、第2孔部45の深さ(上下方向の長さ)が、0.8mm以上1.5mm以下であることが好ましい。この構成によれば、バリ61が発生した場合に、バリ61を空間47に確実に収容することが可能となる。
【0051】
よって、ハーネス接続端子9の圧入後、ハーネス接続端子9にナット31を用いてハーネス7の端子27を組み付ける場合に、第2導体35の表面63とハーネス7の端子27との間にバリ61が介在することを阻止することができる。従って、第2導体35とハーネス7の端子27との間に隙間が生じるのを防止して、両者を電気的に良好に接続することができる。また、バリ61がネジ結合部に噛み込んでナット31の締付けが不十分となるのを防止できるので、ナット31の緩みを回避することができる。
【0052】
以上に説明したように、本実施形態の圧入構造1は、シャント抵抗15と、ハーネス接続端子9と、を備える。シャント抵抗15には、貫通孔41が形成される。ハーネス接続端子9は、貫通孔41に、当該貫通孔41の軸方向一側(下側)から他側(上側)に向かって圧入され、シャント抵抗15から当該他側に向かって突出する。貫通孔41は、第1孔部43と、第2孔部45と、から構成される。第1孔部43は、前記圧入によってハーネス接続端子9に結合する。第2孔部45は、第1孔部43に対して、ハーネス接続端子9がシャント抵抗15から突出する側(上側)に隣接して配置される。第2孔部45の孔径D2は、第1孔部43の孔径D1よりも大きい。
【0053】
これにより、シャント抵抗15における圧入部分付近に、ハーネス接続端子9の圧入に伴ってバリ61が生じた場合でも、このバリ61を、第2孔部45に相当する空間47に収容することができる。よって、ハーネス接続端子9を介してシャント抵抗15にハーネス7の端子27を取り付ける場合に、シャント抵抗15と端子27との間にバリ61が介在することを防止できる。この結果、両者の良好な電気的接続を実現できる。
【0054】
また、本実施形態の圧入構造1において、第1孔部43は、シャント抵抗15の一側の面に開口している。第2孔部45は、シャント抵抗15において、第1孔部43の開口とは反対側の面に開口している。
【0055】
これにより、貫通孔41の簡素な構成を実現できる。
【0056】
また、本実施形態のバッテリー状態検知装置3は、前述の圧入構造1を備える。バッテリー状態検知装置3は、ポスト接続端子5と、ハーネス接続端子9と、シャント抵抗15と、回路基板17と、コネクタ11と、ケーシング13と、を更に備える。ポスト接続端子5は、バッテリーポストに接続される。ハーネス接続端子9は、ハーネス7に接続される。シャント抵抗15は、ポスト接続端子5及びハーネス接続端子9のそれぞれに接続される。回路基板17は、シャント抵抗に接続される。コネクタ11は、回路基板17に接続される。ケーシング13には、回路基板17が設けられる。
【0057】
これにより、シャント抵抗15に関して良好な電気的接続を確保することができるバッテリー状態検知装置3を得ることができる。
【0058】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0059】
第1孔部43及び第2孔部45の形状は任意であり、例えば円状に代えて多角形状に形成することができる。第1孔部43及び第2孔部45のうち少なくとも一方を、テーパ状に形成することもできる。第2孔部45は、ハーネス接続端子9の全周を取り囲むように形成されることが好ましい。
【0060】
突起部53の形状を変更することもできる。突起部53を星形にすることに代えて、多角形状にしたり、円状にしたりすることができる。フランジ部51の形状も任意であり、例えば矩形状に形成することもできる。
【0061】
圧入構造1の向きは任意である。ハーネス接続端子9を、例えば、
図3とは上下逆に配置したり、水平に配置したりすることができる。
【0062】
上記の実施形態では、圧入構造1は、バッテリー状態検知装置3に適用されているが、他の装置に適用することもできる。
【0063】
上述の教示を考慮すれば、本発明が多くの変更形態及び変形形態をとり得ることは明らかである。従って、本発明が、添付の特許請求の範囲内において、本明細書に記載された以外の方法で実施され得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0064】
1 圧入構造
3 バッテリー状態検知装置
5 ポスト接続端子
7 ハーネス
9 ハーネス接続端子(圧入部材)
11 コネクタ
13 ケーシング
15 シャント抵抗(板状部材)
17 回路基板
41 貫通孔
43 第1孔部
45 第2孔部
D1 第1孔部の孔径
D2 第2孔部の孔径