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特許7235887仮想イメージを生成するための光学システムと、スマートグラス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】仮想イメージを生成するための光学システムと、スマートグラス
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021552734
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 EP2020055052
(87)【国際公開番号】W WO2020182472
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】102019106020.6
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516087698
【氏名又は名称】トーツ・テクノロジーズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TOOZ TECHNOLOGIES GMBH
【住所又は居所原語表記】Turnstrasse 27, 73430 Aalen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100170597
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ユルゲン ドフシャル
(72)【発明者】
【氏名】マシアス ヒルエンブランド
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-164545(JP,A)
【文献】特表2017-534352(JP,A)
【文献】特開2018-163252(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017111607(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0357093(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011007811(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0149073(US,A1)
【文献】特開平08-240786(JP,A)
【文献】特開2010-224479(JP,A)
【文献】特開2006-091041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージャ装置(12)により提供される原画像の仮想画像を生成する光学システムにおいて、1つのライトガイド(18)であって、眼(19)の正面に装着されることになり、前記原画像から発せられ、前記1つのライトガイド(18)へと結合される光ビームを、光伝搬方向に、前記光ビームを前記1つのライトガイド(18)から前記眼(19)に向かって出力結合するように設計された反射出力結合装置(24)へと案内するように設計された1つのライトガイド(18)を含み、前記原画像は、それぞれの場合に、前記イメージャ装置(12)の第一のイメージャ領域(16)と、前記第一のイメージャ領域(16)に隣接する少なくとも1つの第二のイメージャ領域(14)により提供されることと、前記1つのライトガイド(18)は、前記第一のイメージャ領域(16)から発せられる光ビームと前記第二のイメージャ領域(14)から発せられる光ビームとを、前記光伝搬方向に前記反射出力結合装置(24)へ案内し、前記出力結合装置(18)は、それぞれの場合に、前記光伝搬方向に相互に離して配置される複数の個別ミラー(26~26)を含み、個別ミラー(26、26、26、26)の第一の群は前記第一のイメージャ領域(14)から発せられる第一の光ビームを前記1つのライトガイド(18)から前記眼に向かって出力結合し、個別ミラー(26、26、26)の少なくとも1つの第二の群は前記少なくとも1つの第二のイメージャ領域(16)から発せられる第二の光ビームを前記1つのライトガイド(18)から前記眼に向かって出力結合すること、及び前記第一の群の前記個別ミラー(26、26、26、26)と前記少なくとも1つの第二の群の前記個別ミラー(26、26、26)が前記光伝搬方向に交互に配置されることを特徴とする光学システム。
【請求項2】
前記個別ミラー(26~26)は、湾曲した光学イメージングミラー表面を有する、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記個別ミラー(26~26)の前記ミラー表面はフリーフォーム表面として具現化される、請求項2に記載の光学システム。
【請求項4】
前記個別ミラー(26~26)の焦点は、前記第一又は前記少なくとも1つの第二のイメージャ領域(14、16)の前記原画像が提供される平面内にある、請求項2又は3に記載の光学システム。
【請求項5】
前記第一の群の、前記光伝搬方向に相互に前後に配置されるそれぞれ2つの個別ミラー(26、26;26、26;26、26)の原画像側視野領域は分離され、前記少なくとも1つの第二の群の、前記光伝搬方向に相互に前後に配置されるそれぞれ2つの個別ミラー(26、26;26、26)の原画像側視野領域は分離される、請求項1~4の何れか1項に記載の光学システム。
【請求項6】
前記第一の群のある個別ミラー(26)の原画像側視野領域と前記少なくとも1つの第二の群に属し、この個別ラーに直接隣接する個別ミラー(26)の原画像側視野領域との間に重複部がある、請求項1~5の何れか1項に記載の光学システム。
【請求項7】
前記第一の群の連続する個別ミラー(26、26;26、26;26、26)間の距離は、前記光伝搬方向に3mm~5mmの範囲である、請求項1~6の何れか1項に記載の光学システム。
【請求項8】
前記第一の群のある個別ミラー(26)と、前記少なくとも1つの第二の群に属し、この個別ミラーに直接隣接する個別ミラー(26)との間の距離は1~3mmの範囲である、請求項1~7の何れか1項に記載の光学システム。
【請求項9】
前記個別ミラー(26~26)の各々の前記光伝搬方向への縁辺寸法は0.5~2mmの範囲である、請求項1~8の何れか1項に記載の光学システム。
【請求項10】
前記個別ミラー(26~26)は全面が反射性を有する、請求項1~9の何れか1項に記載の光学システム。
【請求項11】
前記個別ミラーは(26~26)一部が反射性及び一部が透過性を有する、請求項1~9の何れか1項に記載の光学システム。
【請求項12】
前記出力結合装置(24)は個別ミラー(26~26、27~27)の複数の行を有し、各行は前記光伝搬方向に延び、前記第一の群の個別ミラー(26、26、26、26、27、27、27、27)と前記少なくとも1つの第二の群の個別ミラー(26、26、26;27、27、27)は各行内で交互に配置される、請求項1~11の何れか1項に記載の光学システム。
【請求項13】
前記1つのライトガイド(18)が眼鏡レンズである、請求項1~12の何れか1項に記載の光学システム。
【請求項14】
前記眼鏡レンズは湾曲している、請求項13に記載の光学システム。
【請求項15】
請求項1~14の何れか1項に記載の光学システム(10)を含むスマートグラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージャ装置により提供される原画像の仮想画像を生成するための光学システムに関し、これは少なくとも1つのライトガイドを含み、これは片眼の正面に装着されることになり、原画像から発せられ、ライトガイドへと結合される光ビームを光伝搬方向に、ライトガイドからの光ビームを眼へと出力結合するように設計された反射出力結合装置へと案内するように設計される。
【0002】
本発明はさらに、このような光学システムを含むスマートグラスに関する。
【背景技術】
【0003】
冒頭に記した種類の光学システムとスマートグラスは、国際公開第2016/102190 A1号パンフレットの文献から知られている。
【0004】
冒頭に記した種類の光学システムは、いわゆるヘッドマウントディスプレイ(HMD)、すなわち頭部に装着される表示装置で使用できる。HMDsの1つの従来の形態は、眼の正面に装着されるスクリーンを使用し、ユーザに対し、コンピュータで生成された画像又はカメラにより撮影された画像を提示する。このようなHMDsは嵩張ることが多く、周囲を直接認識できない。ユーザがHMDを通じて注視できるようにすることにより、周囲の直接認識を妨害せずに、ユーザにカメラにより記録された画像又はコンピュータ生成画像を提示できるHMDsが開発されたのは最近になってからのことである。このようなHMDsは、スマートグラスとも呼ばれ、それによりこの技術の日常生活での使用が可能となる。
【0005】
このようなスマートグラスの光学システムは典型的に、イメージャ装置と、ライトガイドと、出力結合装置と、を含む。ライトガイド内を伝搬する光の結合は、典型的にはライトガイドの外面におけるライトガイドからユーザの眼に向かう全内部反射によるが、例えば反射、回折、屈折、ホログラフによる方式又はその組合せ等、様々な方法によって実現できる。スマートグラスは、比較的広い視野を持ちながら高いイメージング品質が要求されることで知られている。同時に、このような頭部装着システムの場合、軽量及び小型(小さい設置スペース)に主眼が置かれ、仮想画像を生成するために原画像をできるだけ少ない光学表面でイメージングする必要があり、しかしながら、その結果、今度は光学収差を補償するのに利用できる表面がわずかしかないことになる。このようなスマートグラスに対しては、ユーザによる受入れの面における要求もあり、これはスマートグラスの外観により少なからず影響を受ける。特に、スマートグラスの外観が従来の眼鏡と実質的に変わらないようにするために、ライトガイドの厚さには小さい数値が望ましい。
【0006】
冒頭で引用した文献から知られている光学システムの場合、ライトガイド内を伝搬する光は、複数の反射フレネルセグメントを有する連続的なフリーフォームフレネル表面での反射によって出力結合される。同文献に記載されているように、光学システムの光学イメージング品質は、光学システムの射出瞳に近く、眼の入射瞳に近い出力結合装置の相対位置から、フリーフォームフレネル表面の表面真度及び表面品質に非常に強く依存する。しかしながら、このようなフリーフォームフレネル表面の欠点は、フレネルセグメントのフレネル表面の限定的な光学イメージング機能と縮小された視野範囲、すなわちアイボックスにある。アイボックスとは、イメージングビーム経路内のライトチューブの、画像のビネットを生じさせずに眼の瞳孔が移動できる三次元領域である。眼のスマートグラスからの距離は実質的に一定であるため、アイボックスは眼の回旋運動のみを考慮した2次元アイボックスへと単純化することができる。この場合、アイボックスは実質的に眼の入射瞳の位置におけるスマートグラスの射出瞳に対応する。眼の入射瞳は一般に、眼の瞳孔によって得られる。
【0007】
ミラー表面のフリーフォームフレネルセグメントの最適ではないイメージング特性は、眼の視線方向における個々のフレネル表面の相互に不連続なオフセットに起因する。このような視線方向における個々のフレネルセグメントの相互に不連続なオフセットにより、個々のフレネルセグメントは、原画像の同じ視点のイメージングに貢献する2つの隣接するフレネルセグメントにより十分に良好なイメージングを実現できるような方法で設計できない。その結果、個々のフレネル表面を平面ミラーとしてしか、又はせいぜい平面ミラーからわずかに逸脱したものとしてしか具現化せざるを得ない。フレネルセグメントの別の欠点は、直接隣接するフレネルセグメント間にあり、使用される光の出力結合用として提供されていない影領域が複数の反射を起こし、ゴースト画像を生成しかねないという点にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、仮想画像を原画像からより高いイメージング品質で生成できるような冒頭に記した種類の光学システムを開発することであり、できるだけ大きい視野を実現しながらシステムの取付サイズは小さく保たれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この目的は、原画像がそれぞれの場合に、イメージャ装置の第一のイメージャ領域と、第一のイメージャ領域に隣接する少なくとも1つの第二のイメージャ領域により提供されることと、それぞれ光伝搬方向に相互に離して配置される複数の個別ミラーを含み、個別ミラーの第一の群は第一のイメージャ領域から発せられる第一の光ビームをライトガイドから眼に向かって出力結合し、個別ミラーの少なくとも1つの第二の群は少なくとも1つの第二のイメージャ領域から発せられる第二の光ビームをライトガイドから眼に向かって出力結合するような出力結合装置によって、及び第一の群の個別ミラーと少なくとも1つの第二の群の個別ミラーが光伝搬方向に交互に配置されることによって実現される。
【0010】
その結果、本発明による光学システムの出力結合装置は複数の個別ミラーを含み、これらは各々イメージャ装置から出力結合装置へと続くライトガイドの光伝搬方向に相互から離して配置される。光伝搬方向は、光学システムが所期の通りに頭部に装着されたときに水平方向となり得る。個別ミラーは好ましくは、別々のミラー、特にミニミラーとして具現化される。連結された隣接する複数のフレネルセグメントからなるフリーフォームフレネルミラー表面とは対照的に、離間された個別ミラーを用いた出力結合装置の構成は、個別ミラーが高いイメージング品質に必要な光学的イメージングパワーを有するように具現化できるという点で有利である。光学システムのイメージング機能全体が個別ミラーによって提供されるようにすることさえも可能である。その結果、追加のイメージング光学ユニットを、例えばイメージャ装置の領域からなくすことができる。
【0011】
さらに、本発明による光学システムは2つ以上のサブシステムに細分される。原画像はイメージャ装置の2つのイメージャ領域又は、サブシステムの数に対応して3つ以上のイメージャ領域により提供される。本発明の意味において、2つ以上のイメージャ領域とは、原画像が1つのイメージャの、隣接して配置される2つ以上のイメージャ領域により、又は隣接して配置される独立した2つ以上のイメージャにより提供されると理解されたい。ここで、原画像の全体が利用可能なイメージャ領域の各々によって提供でき、すなわち、原画像はイメージャ領域の数に応じて複数回提供され、又は各イメージャ領域は原画像の個々のセクションのみを提供し、これらが合体して全体の原画像を形成する。
【0012】
光学システムの2つ以上のサブシステムへの分割にしたがって、出力結合装置の個別ミラーは2つ以上の群に細分される。個別ミラーの各群は、複数のイメージャ領域のそれぞれのイメージャ領域に割り当てられ、このイメージャ領域から発せられた光ビームだけをライトガイドから眼に向かって出力結合する。さらに、個別ミラーの2つ以上の群の個別ミラーは、光伝搬方向に交互に配置される。これは、光伝搬方向において直に隣接する2つの個別ミラーは個別ミラーの2つの異なる群に属することを意味し、したがって、直に隣接する2つの個別ミラーは2つの異なるイメージャ領域から発せられるライトガイドからのライトビームを出力結合する。直に隣接する2つの個別ミラーは一般にユーザの眼で同時に見ることができるため、その結果として、原画像の仮想画像におけるギャップが確実に回避される。認識される光が一方のイメージャ領域か他方のイメージャ領域の何れから発せられるかに関係なく、ユーザにおいて常に同じ画像の印象が得られることだけを確実にすればよい。これは、イメージャ領域の1つ又は複数において、原画像の同じ視野地点から発せられる光ビームが、二重像及びスケール歪みを回避するために網膜上に確実に理想的に重なるようにするソフトウェアに記憶することによって実現できる。
【0013】
本発明による光学システムはさらに、個別ミラーの複数の群の各個別ミラーの持つ光学イメージングの自由度が非常に高く、例えばそのフリーフォーム多項式の係数及び/又は個別ミラーの個々の傾きの数が多く、それによって非常に良好なイメージング品質と歪みがないことが本発明による光学システムを使用すれば達成できるという点で有利である。
【0014】
光学的イメージングパワーの全てを個別ミラーに伝送でき、さらに、個別ミラーの配列によってライトガイド内での光の案内方向を個別に適応させることができるため、最小限のコストで、広い視野範囲を有するごく狭小で小型のHMDを提供することが可能となる。前述のように、理想的なケースでは、例えばイメージャの付近のライトガイドの外側の隅に、先行技術から知られているようなHMDsに必要となるその他のイメージング用光学コンポーネントを必要としない。
【0015】
ライトガイド内の光の伝搬は、ライトガイドの対向する表面での反射により実装できる。しかしながら、本発明の範囲内で、反射を経ずに個別ミラーに直接入射させることも可能である。
【0016】
本発明による光学システムの好ましい構成を以下に説明する。
【0017】
好ましくは、個別ミラーの全部又は一部は湾曲した光学的イメージングミラー表面を有する。高い光学的自由度は、個別ミラーの湾曲した光学的イメージングミラーの形状及び個別ミラーの表面の傾斜に利用できるため、最適な光学イメージング品質を達成できる。それゆえ、個別ミラーの一部又は全部のミラー表面をフリーフォーム表面として具現化することができる。
【0018】
個別ミラーの焦点は好ましくは、原画像が第一又は少なくとも1つの第二のイメージャ領域によって提供される平面内にある。別の表現をすれば、原画像はこの構成において、個別ミラーの焦点により画定される出力結合装置の焦点面内にある。その結果、原画像から発せられる光のライトガイドへの入力結合位置における光ビームの直径全体を小さく保持できる。原画像の個々の視野地点から発せられ、ライトガイド内へと入力結合される光ビームはしたがって、個別ミラーによって平行光ビームに変換される。すると、平行光ビームの全体が光学システムの射出瞳内で重なる。
【0019】
好ましくは、それぞれ光伝搬方向において前後に続く第一の群の2つの個別ミラーの原画像側の視野領域は分離され、それぞれ光伝搬方向において前後に続く少なくとも1つの第二の群の2つの個別ミラーの原画像側の視野領域も好ましくは同様に分離される。
【0020】
この構成では、それぞれのイメージャ領域で原画像の離散的に離間された原画像領域だけが必要であり、そのため、原画像全体が各イメージャ領域上に提供されなくてよい。個別ミラーの距離、したがって焦点距離はイメージャ領域ごとに異なるため、これらの焦点距離の差がそれぞれのイメージャ領域上のソフトウェアに保存されれば有利である。
【0021】
さらに好ましくは、第一の群の個別ミラーの原画像側視野領域と少なくとも1つの第二の群に属し、この個別ミラーに磁気に隣接する個別ミラーの原画像側視野領域との間に重複部がある。
【0022】
前述のように、イメージャ領域の少なくとも1つにおけるソフトウェアへの記憶によって、原画像の同じ視野地点からの2つのイメージャ領域から発せられる光ビームは確実に理想的に網膜上に重なり、それによって二重像及びスケール歪みが回避される。
【0023】
第一の群の連続する個別ミラー間の好ましい距離は、光伝搬方向に3mm~5mmの範囲であり、例えば4mmとすることができる。
【0024】
このような距離は、人の成人の眼の瞳孔の典型的な大きさである約3mmとよく一致する。指定された範囲内の距離によって、眼は常に一度に各群の1つの個別ミラーのみを見る。
【0025】
第一の群の個別ミラーと、少なくとも1つの第二の群に属し、この個別ミラーに直に隣接する個別ミラーとの間の光伝搬方向への距離は、好ましくは1~3mmの範囲である。
【0026】
その結果、典型的な眼の瞳孔の大きさが3mmである場合、ライトガイドのある領域内の複数の異なる群の各々からの1つの個別ミラーが、ユーザの眼により固視方向に常に同時に捕捉され、そのため、全てのイメージャ領域からの光ビームが同じ視野地点の原画像から眼への伝送に同時に寄与する。
【0027】
個別ミラーは好ましくは小型化された実施形態を有し、各々の光伝搬方向への縁辺寸法は0.5~2mmの範囲である。個別ミラーは長方形、より具体的には正方形、又は丸形とすることができる。後者の場合、縁辺寸法とは個別ミラーの直径を意味すると理解すべきである。個別ミラーは、光伝搬方向に垂直でライトガイドの外面に平行な方向に2mmより大きい寸法を有することができ、すなわち個別ミラーはストライプ状の実施形態を有することができる。
【0028】
画像表現の十分に高い解像度は、上に明記した個別ミラーの寸法設定により得られる。第二に、個別ミラーは光学システムの「シースルー」機能をほとんど損なわず、そのため、ユーザはライトガイドを通して容易に凝視し、周囲を認識することができる。
【0029】
個別ミラーは全面が反射性を有するものとすることができ、それには仮想イメージ内のコントラストが高いという利点がある。しかしながら、個別ミラーはまた、一部が反射性、一部が透過性を有することもでき、これは個別ミラーがライトガイドを通した周囲の認識を損なう程度がさらに大きく低減されるという点で有利である。
【0030】
個別ミラーは、ライトガイドの材料の屈折率の局所的ジャンプにより実現でき、これらの部分的な反射性及び部分的な透過性が得られる。しかしながら、個別ミラーはまた、ライトガイド内に埋め込まれた反射板様の要素によっても実現できる。
【0031】
出力結合装置は個別ミラーの群列を有することができ、群列は個別ミラーの複数の行を有し、各行は光伝搬方向に延び、第一の群の個別ミラーと少なくとも1つの第二の群の個別ミラーは、各行内で交互に配置される。前述のように、ストライプ状個別ミラーの1行の配置もまた、複数の行の配置の代わりに選択できる。
【0032】
好ましくは、ライトガイドは眼鏡レンズである。このような眼鏡レンズはプラスチックでも製作されてよいと理解されたい。
【0033】
眼鏡レンズは典型的に湾曲している。限定することなく、本発明による光学システムでは、前述のような個別ミラーの出力結合装置の構成から、湾曲したライトガイドを使用することができる。その結果、本発明による光学システムは、非常に審美性が高く、ユーザの受入れに貢献している点でも優れている。
【0034】
さらに、本発明によれば、前述の構成の1つ又は複数による光学システムを有するスマートグラスも提供される。
【0035】
本発明によるスマートグラスは、本発明による前述の光学システムと同じ利点及び特徴を有する。
【0036】
その他の利点と特徴は、以下の説明と添付の図面から明らかとなる。
【0037】
言うまでもなく、前述の特徴及び以下でさらに説明する特徴は、それぞれ具体的に記された組合せにおいてだけでなく、その他の組合せにおいても、又は独自にも使用でき、これらも本発明の範囲から逸脱しない。
【0038】
本発明の例示的な実施形態を図面に示し、それを参照しながら以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】原画像から仮想画像を生成するための光学システムの上から見た図を示す。
図2】光学システムの正から見た図を示す。
図3】光ビーム経路を含めた図1の光学システムの別の上から見た図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、イメージャ装置12により提供される原画像の仮想画像を生成するための光学システムを示し、全体的な参照符号10が付されている。光学システム10は、所期のとおりに使用される際、ユーザの頭部に装着される。図1は、頭部に装着された場合の光学システム10の上から見た図を示す。
【0041】
イメージャ装置12は、第一のイメージャ領域14及び第二のイメージャ領域16を含む。第一及び第二のイメージャ領域14及び16は相互に隣り合わせに配置され、2つの別々のディスプレイとすることも、又は2つのイメージャ領域14及び16は1つのディスプレイの2つの隣接して配置された領域とすることもできる。図1の線15は、2つのイメージャ領域14及び16間の分離線を示す。
【0042】
原画像はイメージャ領域14及び16上に、カメラ(図示せず)により生成される画像若しくはビデオとして、又はコンピュータ生成画像若しくはビデオとして提供できる。原画像は、それぞれの場合に全体として、すなわち全面画像で両方のイメージャ領域14及び16上に提供でき、又は個々の原画像領域だけが2つのイメージャ14及び16上に提供されて、これらの原画像領域の合体により全面原画像を得られる。
【0043】
光学システム10はライトガイド18をさらに含み、その中にイメージャ領域14及び16により提供される原画像から発せられる光が入力結合される。イメージャ14及び16から発せられ、ユーザの眼までの光ビーム経路について、図3を参照しながら以下にさらに説明する。
【0044】
ライトガイド18は眼鏡レンズとして具現化され、これはガラス又はプラスチックで製造されてよい。所期のとおりに使用される場合、ライトガイド18はユーザの眼19の正面に装着される。図の例示的な実施形態ではこれはユーザの左眼である。図のように、ライトガイド18は特に湾曲させることができ、これは従来の眼鏡レンズの場合と同様である。
【0045】
図1は、ライトガイド18の上面図、すなわち眼鏡レンズの狭い上側を示す。説明を容易にするために、z軸、x軸、及びy軸の座標系が図1に示されており、y軸は図1の図面の表面に垂直に延びる。x軸はライトガイド18内の光の光伝搬方向であり、光学システム10がユーザの頭部に装着されたときに水平方向に延びる。z方向はライトガイド18を通じた眼19の視線方向である。したがって、y方向は縦方向を示す。
【0046】
ライトガイド18は第一の外面20と第二の外面22を有する。光学システム10がユーザの頭部に装着されると、外面20はライトガイド18の、眼19とは反対に面する前側外面を形成し、外面22はライトガイド18の、ユーザの眼19に面する後側外面を形成する。
【0047】
イメージャ14及び16から発せられた光は、ライトガイド18に入力結合され、2つの外面20及び22間で、任意選択により外面20及び22での全反射の結果として、又は反射せずにライトガイド18内を伝搬できる。光の主な伝搬方向(x方向)は、この説明の中ではライトガイド18の光伝搬と呼ばれる。
【0048】
さらに、光学システム10は、イメージャ領域14及び16から発せられ、ライトガイド18に入力結合される光ビームをライトガイド18から眼19に向かって出力結合する役割を果たす出力結合装置24を含み、これについては後でさらに説明する。
【0049】
出力結合装置24はまず、図2をさらに参照しながら説明する。イメージャ装置12は図2には示されていない。
【0050】
図1及び2によれば、出力結合装置24は複数の個別ミラー26~26及び27~27を含む。この説明では、「ミラー」という用語は、ミラーのミラー表面と同義であると理解すべきであり、これは、個別ミラーがフレームもマウントも持たないからである。個別ミラー26~26及び個別ミラー27~27は、それぞれの場合にライトガイド18の光伝搬方向に相互に離間されている。個別ミラー26~26は個別ミラーの第一の行を形成し、これはライトガイド18の光伝搬方向に延び、個別ミラー27~27は個別ミラーの第二の行を形成し、これも同様にライトガイド18の光伝搬方向に延び、個別ミラー26~26の第一の行から光伝搬方向に垂直に(y方向に)離間されている。個別ミラーの全体の数と個別ミラーの行の数はどちらも、ここでは単に例であると理解すべきであり、個別ミラーの全体の数は図面に示されている全体の数より多く、又は少なくすることもでき、個別ミラーの行が2より多く、又は少なくなるようにすることができる。例えば、個別ミラー27~27の第二の行の代わりに、個別のミラー26~26の1行しか存在しなくてもよく、個別ミラー26~26はすると、好ましくはy方向に図に示されているものより広い範囲を有する。例えば、図の例示的な実施形態では、個別ミラー26~26はy方向に、個別ミラー27~27の(y方向の)下辺のある地点まで延びることができる。
【0051】
個別ミラー26~26及び27~27は、ライトガイド18に埋め込まれ、ライトガイド18の材料の屈折率のジャンプとして、又は、例えば、ライトガイド18の材料に埋め込まれたきわめて薄い金属板等の反射板として具現化できる。
【0052】
イメージャの数、この場合は2つのイメージャ領域14及び16に応じて、個別ミラー26~26及び個別ミラー27~27は群、この場合は2つの群に分割される。個別ミラー26、26、26、及び26並びに個別ミラー27、27、27、及び27の第一の群は、2つのイメージャ領域14又は16のうちの一方から発せられた光ビームだけをライトガイド18から眼19へと出力結合し、個別ミラー26、26、26及び個別ミラー27、27、27の第二の群は、2つのイメージャ領域14及び16の他の一方から発せられ光ビームだけを眼に向かって出力結合するように設計される。区別しやすくするために、第一の群の個別ミラー26、26、26、26及び個別ミラー27、27、27、27は斜線付きで示され、第二の群の個別ミラー26、26、26及び27、27、27は白で示されている。
【0053】
図2からわかるように、個別ミラーの第一の群の個別ミラーはライトガイド18の光伝搬方向(x方向)に個別ミラーの第二の群の個別ミラーと交互に配置される。したがって、直に隣接する個別ミラー、例えば個別ミラー26及び26はそれぞれの場合に個別ミラーの2つの異なる群に属する。
【0054】
ライトガイド18の光伝搬方向への第一の群の連続する個別ミラー27、27、27、27間の間隔dは、個別ミラー27及び27について示されているように、3mm~5mmの範囲であり、例えば4mmである。この間隔dは、約3mmである人の成人の眼の瞳孔の大きさと同じかそれより大きい。ライトガイド18の光伝搬方向への第二の群の連続する個別ミラー26、26、26、又は27、27、27間の間隔dは、個別ミラー26及び26について示されているように、同様に3mm~5mmの範囲、例えば4mmである。
【0055】
第一の群のそれぞれの個別ミラーと、少なくとも1つの第二の群に属し、この個別ミラーに直接隣接する個別ミラーとの間の光伝搬方向への距離dは、個別ミラー26及び26について示されているように、1~3mmの範囲、例えば2mmである。
【0056】
図2の円形の線28は、固視方向(z方向)の場合に約3mmの瞳孔の大きさの眼19により同時に捕捉される出力結合装置24の領域を示す。その結果、円形の線28により示されるこの領域の直径は、同じ群の隣接する個別ミラー間の距離d又はdより小さい。それゆえ、眼19にはライトガイド18の光伝搬方向に同じ群の連続する2つの個別ミラーが同時に見えないが、基本的に、異なる群からの直に隣接する2つの個別ミラーは同時に見え、見ることになる。
【0057】
図2では、個別ミラー26~26及び27~27は四角の個別ミラーとして示されているが、これは例にすぎない。一般に、個別ミラーは多角形又は丸い実施形態も有することができる。個別ミラーの大きさは小さくすることができ、例えば0.5~2mmの範囲であるが、これは光伝搬方向への個別ミラーの縁辺寸法を意味すると理解されたい。例えば、個別ミラー26~26及び27~27の各々の縁辺寸法は光伝搬方向に1mmである。これらは特に個別ミラーが1行のみ存在する場合、y方向により大きい寸法を有することができる。
【0058】
追加的に、光学システム10のさらに詳細な事柄を図3を参照しながら説明する。図3は、イメージャ領域14及び16から発せられてから光学システム10の射出瞳30までの光ビーム経路全体を示している。光学システム10がユーザの頭部に装着されると、射出瞳30はユーザの眼19(図1)の入射瞳又はアイボックスとほぼ一致する。ユーザには、原画像の仮想画像がライトガイド18の外面20を超えて実際に認識された周囲と重なって見える。
【0059】
図3は、7つの光ビームを例として示しており、イメージャ領域16から発せられた光ビーム32、32、及び32は破線により表現され、イメージャ領域14から発せられた光ビーム34、34、34、34は実線を使って示されている。
【0060】
イメージャ領域14及び16により提供される原画像から発せられた後でライトガイド18へと結合されると、光ビーム32~32及び34~34は、図の例示的な実施形態においては、外面20及び22での反射、特に全内部反射によりライトガイド18の光伝搬方向に出力結合装置24へと案内される。イメージャ領域16から発せられた光ビーム32、32、32はその後、個別ミラーの第二の群の個別ミラー26、26、26に入射する。イメージャ領域14から発せられた光ビーム34、34、34、34は、個別ミラーの第一の群の個別ミラー26、26、26、26に入射する。個別ミラー27~27図3では見えないが、個別ミラー26~26と同じことが当てはまる。他の実施形態の変形型において、個々の光ビーム又は全ての光ビーム32~32及び34~34は、ライトガイド18に入力結合された後、反射による1つ又は複数の偏向を経ずに、個別ミラーに直接入射できる。
【0061】
イメージャ領域14から及びイメージャ領域16からの原画像のほぼ同じ視野地点から発せられる光ビーム32及び34を考えた場合、これらの光ビームは直に隣接する個別ミラー26及び26に入射し、これらは前述のように個別ミラーの異なる群に属する。これら2つの個別ミラー26及び26は、図2の円形の線28に関して既に説明したように、ユーザの眼19により同時に捕捉されるライトガイド18の領域内にある。イメージャ領域14又は16の一方又は両方においてソフトウェアに記憶することによって、原画像の同じ視野地点から発せられた光ビームがユーザの網膜上で理想的に重なり、二重像及びスケール歪みが回避されるのを確実にすることができる。
【0062】
図3に示されているように、個別ミラー26~26(個別ミラー27~27と全く同様に)の各々は、湾曲した光学イメージングミラー表面を有する。特に、全ての個別ミラーは湾曲した光学イメージングミラー表面を有するように具現化できる。個別ミラー26~26及び27~27の個々のミラー又は全部のミラー表面は、フリーフォーム表面として具現化できる。個別ミラーを用いた出力結合装置24の構成により、個別ミラーの光学設計における光学イメージングの自由度の範囲が非常に広くなり、そのため、原画像から生成された仮想画像の品質を最適化できる。
【0063】
さらに図3からわかるように、個別ミラー26~26の焦点は原画像の平面36内にある(個別ミラー27~27についても同じことが当てはまる)。個別ミラーの距離及びしたがって焦点距離はイメージャ領域14及び16に関して異なるため、これらの焦点距離の差がそれぞれのイメージャ領域14及び/又は16上のソフトウェアに保存されれば有利である。
【0064】
眼の瞳孔の瞳孔大きさと等しいか、それより長く選択された、同じ群の連続する個別ミラー間の光伝搬方向への距離d又はdにより、それぞれの場合に同じ群の、光伝搬方向に続く2つの個別ミラーの原画像側視野領域は分離される。それに対して、第一及び第二の群に属する直に隣接する個別ミラーの原画像側視野領域間には重複部分がある。前述のように、イメージャ14及び16の一方のソフトウェアに記憶することにより、ユーザの眼19により同時に捕捉されるこれらの視野領域が射出瞳30上で最適に重なるのを確実にできる。
【0065】
複数の個別ミラー26~26及び27~27による出力結合装置24の構成により、これらの個別ミラーは好ましくは、原画像から仮想画像を生成するための光学イメージング効果全体を発展させる。
【0066】
個別ミラー26~26及び27~27は、可視スペクトルの光に対して全面的に反射性を有することも、一部が反射性/一部が透過性を有するものとすることができる。光学システム10の「シースルー」機能は、個別ミラーの全面が反射性を有する場合と一部が反射性/一部が透過性を有する構成の場合のどちらにおいても確保される。
【0067】
一例では、ライトガイド18は、眼鏡レンズとして具現化でき、その厚さ(z方向)は約5mmである。例えば、ライトガイド18の曲率半径は100mmとすることができる。これらのパラメータによって、水平方向に45°の光学システム10の視野を達成でき、これはすでに非常に優れている。
【0068】
図1、2、及び3の図は実質的に拡大されていると理解されたい。実際には、ライトガイド18全体の範囲は通常の眼鏡レンズの範囲に対応する。
【0069】
さらに、光学システム10は、図中に示されているように2つのイメージャ領域と2つの個別ミラーの群を有する2つの部分的システムに細分されてよいだけでなく、対応する数のイメージャ領域及び個別ミラーの群を有する3つ以上の部分的システムにも細分されてよい。
【0070】
光学システム10は好ましくはスマートグラスとして具現化され、又はスマートグラスはこのようなシステム10を含む。
図1
図2
図3