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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-01
(45)【発行日】2023-03-09
(54)【発明の名称】架橋微粒子ならびにその分散体
(51)【国際特許分類】
   C08F 265/06 20060101AFI20230302BHJP
   C08F 2/22 20060101ALI20230302BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230302BHJP
【FI】
C08F265/06
C08F2/22
C08F2/44 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018101577
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019206617
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-02-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木太 純子
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-173965(JP,A)
【文献】特許第5559555(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/06
C08F 2/22
C08F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部とシェル部で構成される架橋微粒子であって、
前記コア部および前記シェル部は、メタクリル酸メチル及びメタクリル酸エチルから選ばれるメタクリル酸エステル単量体に由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位を有する共重合体を含み、
前記コア部は、前記メタクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を91~99質量部、および前記架橋性単量体に由来する構造単位を1~9質量部含有し、
前記シェル部は、前記メタクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を70質量部より大きく90質量部以下含有し、
前記シェル部の架橋性単量体に由来する構造単位は、前記シェル部のメタクリル酸エステル単量体に由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して10質量部以上30質量部未満であり、
体積平均粒子径が0.005~0.8μmである架橋微粒子。
【請求項2】
前記コア部の架橋性単量体に由来する構造単位が、前記シェル部のメタクリル酸エステル単量体に由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して1~10質量部である請求項1に記載の架橋微粒子。
【請求項3】
粒子径の変動係数(CV値)が体積基準で30%以下である請求項1又は2のいずれか1項に記載の架橋微粒子。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の架橋微粒子を含む分散体。
【請求項5】
メタクリル酸エステル単量体および架橋性単量体を含有する単量体組成物を乳化重合させる工程(第1工程)と、
メタクリル酸エステル単量体および架橋性単量体を含有する単量体組成物を乳化重合させる工程(第2工程)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の架橋微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋微粒子ならびにその分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、(メタ)アクリル系単量体を含む単量体組成物と、該単量体組成物と共重合可能である架橋性単量体とを重合してなる(メタ)アクリル系架橋微粒子を分散媒に分散させてなる架橋微粒子分散体が知られている。そして、該架橋微粒子分散体の製造方法として、前記単量体組成物と架橋性単量体とを乳化重合させることにより、(メタ)アクリル系の架橋微粒子分散体を得る方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような架橋微粒子分散体は、樹脂フィルムや各種成形品について、光拡散性、耐ブロッキング性、滑り性および表面形状制御などの物性向上や更なる特性の付与を目的として、用いられている。また、架橋微粒子分散体中の架橋微粒子は、電子機器類の微小部位間のスペーサーや電気的接続を担う導電性微粒子の基材粒子として利用されている。このような用途に用いられる架橋微粒子には、樹脂フィルムの薄膜化や電子機器類の小型化等に伴い、小粒径化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-182313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
架橋微粒子分散体は、例えば各種フィルム膜改質剤や光拡散板、各種ディスプレイのプラスチック基板などの光学用途に用いる場合など、用途によっては光学特性に及ぼす影響を下げるため、透明性に優れ、ヘイズを生じさせず、着色のないものが望まれる。そのため、架橋微粒子には架橋性単量体が含まれることが望ましい。しかしながら、(メタ)アクリル酸エステル単量体、および架橋性単量体を含有する単量体組成物から架橋微粒子分散体を製造した場合、重合安定性が悪いという問題が生じることがあった。具体的には、前記単量体組成物に含まれる架橋性単量体の含有量が多いと、重合中に架橋微粒子同士が凝集して沈降し、また反応釜への付着物が多く、付着物が硬くなり洗浄し難くなる等、重合安定性が悪くなった。また、架橋微粒子分散体中の架橋微粒子の粒子径が小さくなるほど、分散体中の粒子は凝集し易くなり、分散性は悪化する傾向となった。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、前記単量体組成物に含まれる架橋性単量体の含有量が多い場合でも、架橋微粒子同士が凝集することなく、安定的に重合することができ、さらに架橋微粒子として使用する際、加熱乾燥時に該架橋微粒子が変形することを抑制することができる該架橋微粒子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために鋭意検討する中で、架橋微粒子をコアシェル構造とし、コア部のみならず、シェル部に特定の架橋性単量体を用いた。そうすると、コア部が形成される段階での凝集が抑制され、かつシェル部が形成される段階において微小粒子が発生することなく、重合安定性が確保された。その結果、凝集物の発生を防ぎ、且つ耐熱性有する架橋粒子が得られることを見出だして、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下の通りである。
[1] コア部とシェル部で構成される架橋微粒子であって、
前記コア部および前記シェル部は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位を有する共重合体を含み、
前記シェル部の架橋性単量体に由来する構造単位は、前記シェル部の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して30質量部未満であり、
体積平均粒子径が0.005~0.8μmである架橋微粒子。
[2] 前記コア部の架橋性単量体に由来する構造単位が、前記シェル部の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位の合計100質量部に対して1~10質量部である請求項1又は2に記載の架橋微粒子。
[3] 粒子径の変動係数(CV値)が体積基準で30%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の架橋微粒子。
[4] 請求項1~3のいずれか1項に記載の架橋微粒子を含む分散体。
[5] (メタ)アクリル酸エステル単量体および架橋性単量体を含有する単量体組成物を乳化重合させる工程(第1工程)と、
(メタ)アクリル酸エステル単量体および架橋性単量体を含有する単量体組成物を乳化重合させる工程(第2工程)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の架橋微粒子の製造方法。
【0009】
前記架橋微粒子は、前記架橋微粒子を含む分散体であることが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の架橋微粒子は、架橋性単量体を含む単量体組成物から得られる架橋微粒子であり、粒子径が小さく均一な架橋微粒子でありながら、さらに架橋微粒子同士が凝集することなく、重合安定性および耐熱性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.架橋微粒子

本発明の架橋微粒子は、コア部とシェル部で構成される。コア部およびシェル部は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位と架橋性単量体に由来する構造単位を含有する。
【0012】
本発明において、架橋性単量体とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体と共重合可能な重合性官能基を2個以上有する単量体であればよく、このような重合性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。
【0013】
前記架橋性単量体としては、1種または2種以上を使用でき、多官能アクリル単量体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート;エチレンオキシドの付加モル数が2~50のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシドの付加モル数が2~50のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの炭素数2~4のアルキレンオキシド基の付加モル数が2~50であるアルキルジ(メタ)アクリレート;エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのテトラ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのペンタ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの炭素数1~10の多価アルコールのヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0014】
さらに架橋性単量体としては、上記多官能アクリル単量体以外の単量体を使用してもよく、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、および、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物、N,N-ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等の架橋剤、ポリブタジエン、等が挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0015】
特に、粒子径の揃った架橋微粒子樹脂粒子を得やすいという観点からは、前記架橋性単量体としては、多官能アクリル単量体や芳香族ビニル化合物を含むことが好ましく、ジビニルベンゼンおよびエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが最も好ましい。重合安定性に優れ、凝集物の少ない架橋微粒子分散体を得ることができる。
【0016】
架橋性単量体の含有量は、前記単量体組成物100質量部に対して30質量部以下が好ましく、より好ましくは25質量部、さらに好ましくは20質量部以下であり、5質量部以上が好ましく、より好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上である。前記架橋性単量体の含有量が上記範囲内であれば、架橋微粒子を製造する際の重合反応中における粒子同士の凝集を抑制し、安定的に重合することができる。また、架橋微粒子として使用する際、加熱乾燥時に該架橋微粒子が変形することを抑制することができる。
【0017】
本発明において、(メタ)アクリル酸エステル単量体とは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのうち、前記架橋性単量体に該当しないものを意味する。前記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、この(メタ)アクリル酸エステル単量体の1種または2種以上からなる。
【0018】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸3-フェニルプロピル、(メタ)アクリル酸n-アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどのアルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。
【0019】
特に、粒子径の揃った架橋微粒子樹脂粒子を得やすいという観点からは、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体として、(メタ)アクリル酸メチルまたは(メタ)アクリル酸エチルを含むことが好ましく、より好ましくはメタクリル酸メチルを含むのがよい。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、特に制限されないが、前記単量体組成物100質量部に対して70~95質量部であることが好ましい。より好ましくは75~82質量部、さらに好ましくは80~90質量部である。
【0021】
前記単量体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した必須の単量体((メタ)アクリル酸エステル単量体、および架橋性単量体)のほかに、その他の単量体を含んでもよい。その他の単量体としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、イソプロペニルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;ビニルトルエン;アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有単量体、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;等が挙げられる。なお、その他の単量体は、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0022】
前記単量体組成物が上記その他の単量体を含有する場合、その含有量は、前記単量体組成物100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましく、より好ましくは 10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0023】
なお、本明細書において「単量体組成物100質量部に対して」との記載は、必須の単量体((メタ)アクリル酸エステル単量体、および架橋性単量体)のみが用いられる場合には必須の単量体の合計質量を100質量部とする意味であり、必須の単量体とともに上記他の単量体も用いられる場合には、他の単量体を含めた総質量を100質量部とする意味である。
【0024】
前記シェル部はコア部の表面に設けられることが好ましい。コア部は架橋微粒子の最内層であることが好ましく、シェル部はコア部の外部に設けられることが好ましい。シェル部の外部に別のシェル部を設けることも可能であり、この場合はシェル部が複数の層構造を形成することとなる。
【0025】
前記コア部は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位90~99質量部、および架橋性単量体に由来する構造単位1~10質量部を含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位の含有量はより好ましくは98~91質量部、さらに好ましくは97~92質量部である。架橋性単量体に由来する構造単位の含有量はより好ましくは2~9質量部、さらに好ましくは3~8質量部である。
【0026】
前記シェル部は、(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を70質量部より大きく90質量部以下含有することが好ましく、より好ましくは70質量部より大きく85質量部以下含有する。また、架橋性単量体に由来する構造単位を10質量部以上30質量部未満含有することが好ましく、より好ましくは15質量部以上30質量部未満含有する。この含有量とすることにより、重合安定性に優れ、凝集物の少ない架橋微粒子分散体を得ることができる。
【0027】
架橋微粒子全体の単量体組成物に由来する構造単位に対するシェル部の単量体組成物に由来する構造単位の質量比は、0.10~0.99が好ましく、より好ましくは0.30~0.95、さらに好ましくは0.50~0.90である。単量体組成物に由来する構造単位の質量比が上記範囲内であれば、架橋微粒子を製造する際の重合反応中における粒子同士の凝集を抑制し、安定的に重合することができる。また、架橋微粒子として使用する際、加熱乾燥時に該架橋微粒子が変形することを抑制することができる。
【0028】
前記架橋微粒子の平均粒子径は、0.005~0.8μmが好ましい。下限としては、0.01μm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.05μm以上であり、より一層好ましくは0.15μm以上である。上限としては、0.6μm以下がより好ましい。一般に、粒子径が小さくなると重合時に凝集し易くなるところ、本発明の架橋微粒子分散体においては優れた凝集抑制効果を発揮しうるので、架橋微粒子の粒子径を上記のように非常に小さい範囲に設定することが可能になる。架橋微粒子の平均粒子径を上記範囲内とすることにより、例えば、各種の薄層フィルムの滑り剤やアンチブロッキング剤として用いた場合、薄層フィルムをより薄くすることができる。また、各種スペーサーや導電性微粒子の基材粒子として用いた場合、電子機器の小型化等に貢献することができる。なお、本発明における架橋微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定される体積平均粒子径を意味するものである。
【0029】
前記架橋微粒子の変動係数(CV値)としては、30%以下が好ましく、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
2.架橋微粒子分散体
本発明の架橋微粒子は、前記架橋微粒子を含む分散体である。
架橋微粒子分散体中の架橋微粒子の含有量は、用途に応じて適宜設定すればよく、特に制限されないが、例えば、架橋微粒子分散体100質量部に対して、5~30質量部が好ましく、より好ましくは10~25質量部、さらに好ましくは15~25質量部である。前記架橋微粒子の含有量が架橋微粒子分散体100質量部に対して5質量部よりも少ないと、経済的ではない。一方、前記架橋微粒子の含有量が架橋微粒子分散体100質量部に対して30質量部より多いと、該架橋微粒子を安定的に製造できない場合がある。
【0030】
前記分散体は、さらに、溶剤や界面活性剤などのその他の化合物を含んでもよい。
溶剤としては、例えば、水;メタノールやエタノール、イソプロパノールなどのアルコールなどが挙げられる。溶剤は、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。溶剤は、特に限定されないが、水を含むことが好ましい。溶剤の含有量としては、架橋微粒子分散体100質量部に対して70~95質量部が好ましい。また、水の含有量としては、溶剤100質量部に対して50~100質量部が好ましく、80~100質量部がより好ましい。
【0031】
界面活性剤としては、公知の界面活性剤を用いることが可能だが、アニオン系界面活性剤が好ましい。これにより、粒子径が小さく、かつ粒度分布の狭い粒子重合体を得ることができる。アニオン系界面活性剤(アニオン性乳化剤)としては、例えば、ドデシル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ドデシルスルホン酸アンモニウム、ドデシルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸-ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられ、これらの中でも特に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。架橋微粒子分散体中の界面活性剤の量としては、架橋微粒子分散体100質量部に対して、0.001~20質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好まししい。界面活性剤が少なすぎると、架橋微粒子の分散性が低くなる傾向があり、一方、多すぎると、架橋微粒子分散体が発泡しやすくなる虞がある。
3.架橋微粒子の製造方法
本発明の架橋微粒子の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステル単量体、および架橋性単量体を含有する単量体組成物を乳化重合させる工程(第1工程)と、(メタ)アクリル酸エステル単量体および架橋性単量体を含有する単量体組成物を乳化重合させる工程(第2工程)により得ることができる。乳化重合法を採用することが、粒子径の小さい粒子が得られやすい点で好ましい。以下、単量体組成物を重合する際の好ましい乳化重合の態様を説明する。
【0032】
好ましい乳化重合の態様は、前記単量体組成物とともに重合開始剤と界面活性剤(乳化剤)を含む重合性組成物を乳化重合させる乳化重合工程と、該乳化重合工程の後さらに界面活性剤を添加して、あるいは界面活性剤を添加せずに、乳化重合工程で得られた反応液を熟成する熟成工程とを含む。乳化重合は、通常、水性分散媒中で行う。
前記乳化重合工程は、第1工程と第2工程を含むことが好ましく、第1工程に続いて第2工程をおこなうことがより好ましい。第1工程によりコア部は構成され、続いて第2工程をおこなうことで、コア部の表面にシェル部が形成される。なお、第2工程は繰り返し行ってもよく、例えば2回目の第2工程をおこなった場合は、1回目の第2工程によって形成されたシェル部の表面に新たにシェル部が形成される。
【0033】
第1工程は、(メタ)アクリル酸エステル単量体90~99質量部、および架橋性単量体1~10質量部を含有する単量体組成物を乳化重合させることが好ましい。第2工程は、(メタ)アクリル酸エステル単量体70質量部より大きく90質量部以下が好ましく、より好ましくは70質量部より大きく85質量部以下、および架橋性単量体10質量部以上30質量部未満が好ましく、より好ましくは15質量部以上30質量部未満を含有する単量体組成物を乳化重合させることが好ましい。これにより、重合安定性に優れ、凝集物の少ない架橋微粒子分散体を得ることができる。
【0034】
全工程に用いる単量体組成物に対する第2工程に用いる単量体組成物の質量比は、0.10~0.99が好ましく、より好ましくは0.30~0.95、さらに好ましくは0.50~0.90である。単量体組成物の質量比が上記範囲内であれば、架橋微粒子を製造する際の重合反応中における粒子同士の凝集を抑制し、安定的に重合することができる。また、架橋微粒子として使用する際、加熱乾燥時に該架橋微粒子が変形することを抑制することができる。
【0035】
以下、乳化重合工程において、第1工程と第2工程に共通の好ましい形態を記載する。
【0036】
前記乳化重合に用いる重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の重合開始剤を用いることができる。例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2-アゾビス(2―ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)などのアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化アンモニウムなどの過酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。好ましくはレドックス系重合開始剤を用いるのがよい。例えば、過酸化水素と、アスコルビン酸、酒石酸およびソルビン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種類の還元剤とを組合せてなるレドックス系重合開始剤を用いることが好ましい。これにより、粒子径が小さく、かつ粒度分布の狭い粒子重合体を得ることができる。かかるレドックス系重合開始剤を用いる場合、重合開始剤の添加方法としては、過酸化水素水と還元剤とをそれぞれ水溶液とした後、各水溶液をそれぞれ連続的もしくは断続的に反応容器内に添加してもよいし、また、過酸化水素水の全量を反応容器内に前もって添加しておき、還元剤の水溶液を連続的に添加してもよい。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。なお、重合開始剤の分解を促進するために、例えば、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤、硫酸第一鉄などの遷移金属塩などの重合開始剤の分解剤を反応系内に適量で添加してもよい。
【0037】
重合開始剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、単量体組成物100質量部あたり、重合速度を高め、未反応の単量体の残存量を低減させる観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、重合安定性の観点から好ましくは5質量部以下である。
【0038】
乳化重合工程で用いられる界面活性剤としては、前記架橋微粒子分散体を構成する界面活性剤を用いることが好ましい。したがって、具体的には、アニオン系界面活性剤を用いることが好ましいが、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン性界面活性剤を用いることも可能である。例えば、アニオン系界面活性剤(アニオン性乳化剤)としては、ドデシル硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩;ドデシルスルホン酸アンモニウム、ドデシルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルアリールスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸-ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレートなどの脂肪酸塩などが挙げられ、これらの中でも特に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0039】
乳化重合工程において用いる界面活性剤の量としては、単量体組成物100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部である。
【0040】
乳化重合工程で用いられる水性分散媒としては、前記架橋微粒子分散体を構成する溶剤を好ましく用いることができ、特に好ましくは水が用いられる。水性分散媒の使用量は、重合で形成される架橋微粒子の含有量が所望の割合となるように、適宜設定することができる。
【0041】
前記乳化重合は、公知の乳化重合法で行えばよく、例えば、モノマー滴下法、プレエマルジョン法、一括仕込み重合法などを採用することができるが、安定的に重合することができ、凝集物が少ない架橋微粒子重合体を得るうえでは、プレエマルジョン法を採用するのが好ましい。
【0042】
前記乳化重合に際し、前記単量体組成物、重合開始剤、界面活性剤の仕込み方法などは、特に制限はなく適宜設定すればよいが、好ましくは、予め前記単量体組成物総量の一部と重合開始剤の一部と界面活性剤とからなる重合用混合液を用いて乳化重合を開始した後、残りの前記単量体組成物、乳化剤、および重合開始剤を別々にあるいは混合して滴下するのがよい。
【0043】
前記乳化重合における重合温度は、用いる重合開始剤等に応じて適宜設定すればよいが、例えば30~90℃が好ましい。重合時間は、前記単量体組成物の仕込み量と反応液中の残存量とから求められる反応率に応じて適宜設定すればよいが、通常1~12時間、好ましくは2~8時間程度である。
【0044】
次に、前記熟成工程は、前記乳化重合工程の後で、未反応の単量体組成物を減少させたり、または、乳化重合で得られた重合体粒子(架橋微粒子)を含む分散液を安定化させたりする目的で行われる。このとき、界面活性剤を添加すると、熟成時の架橋微粒子の凝集を抑制し易くなる。
【0045】
前記熟成工程で使用される界面活性剤としては、前記架橋微粒子分散体を構成する界面活性剤を用いることが好ましい。したがって、具体的には、アニオン系界面活性剤を用いることが好ましいが、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのノニオン性界面活性剤を用いることも可能である。特に好ましくは、熟成工程で用いる界面活性剤には、乳化重合工程で使用したものと同じ界面活性剤を使うことがよい。
【0046】
前記熟成工程で用いる界面活性剤の量としては、前記乳化重合工程で使用した単量体組成物100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.3質量部以上であり、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部である。
【0047】
前記熟成工程における熟成温度としては、50~90℃が好ましく、70~85℃がより好ましい。熟成温度を前記範囲内とすることにより、粒子の凝集を抑えながら、未反応の単量体組成物の量を減少させることができる。熟成時間は、単量体組成物の仕込み量と反応液中の残存量とから求められる反応率に応じて適宜設定すればよいが、通常1~12時間、好ましくは2~8時間程度である。
【0048】
前記熟成工程後には、架橋微粒子分散体に塩基性物質を添加してもよい。前記塩基性物質としては、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピコリン、アニリン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、N-メチルアニリン、トルイジン、N,N-ジメチル-p-トルイジンなどのアミン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシドなどの金属アルコキシドなどを挙げることができる。これらのうち、弱塩基性物質であるアンモニア、モノエタノールアミン等のアミン類が好ましい。これら弱塩基性物質を用いることで、塩基添加時に凝集をおこすことなく、貯蔵安定性に優れた架橋微粒子分散体を得ることができる。
4.架橋微粒子の用途
本発明の架橋微粒子ならびにその分散体は、各種フィルム用の耐ブロッキング剤や滑り剤、各種成形品の表面形状制御剤、導電性微粒子の基材粒子、絶縁被膜材料などの絶縁材料、トナー用外添剤などの帯電制御材料、各種フィルム膜の改質材料等に利用できる。その他、光拡散板(光拡散シート)、導光板、各種ディスプレイのプラスチック基板、タッチパネル用基板などの光学的用途;複写機またはプリンターの帯電防止コーティング剤、電荷保持体、トナー転写用部材、定着ベルト、中間転写ベルト、被膜型抵抗体、導電ペースト、リチウムイオン電池などの電池用材料(電極材料、バインダー等)、帯電防止性樹脂、コンデンサ用導電性接着層、導電性摺動部材、回路基板用基材、耐熱半導電性材料、自己温度制御通電発熱体、サーマルヘッド用発熱抵抗体、記録用通電発熱シート、電線ケーブルの被覆体、面状発熱体電磁波遮蔽シート、フレキシブル配線シート、電磁波吸収シート、熱線吸収シート、紫外線吸収シートなどの電子部材用途;紫外線遮光性材料、カラーフィルター用ブラックマトリックスなどの遮光用途;低騒音歯車の表面処理剤、摩擦材用成型体などの摺動用途;等においても、本発明の架橋微粒子ならびにその分散体を利用することができる。その他にも、電子機器の基板(例えば、光センサー用基板や光スイッチ用基板等の光変換装置の基板、プリント配線用基板、サーマルヘッド基板など)、インクジェットインク、水分散型塗料添加剤、研磨剤、潤滑液用添加剤など、従来から架橋微粒子が使用されている公知の用途への適用が可能である。
【実施例
【0049】
以下に、実施例および比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
各種物性の測定および評価は、以下の方法で行った。
〔架橋微粒子の平均粒子径および変動係数(CV値)の測定〕
得られた架橋微粒子分散体をイオン交換水で希釈して光散乱粒度分布測定機(Particle Sizing Systems社製「NicompMODEL380」)にて
測定して、体積平均粒子径(μm)を求め、この値を架橋微粒子の平均粒子径とした。ま
た上記装置により得られた体積平均粒子径と粒子径とを基に標準偏差算を算出し、下式よ
り変動係数(CV値:%)を求めた。
変動係数(CV値:%)=100×(標準偏差/体積平均粒子径)
〔耐熱性評価〕
得られた架橋微粒子分散液をスライドガラス上に滴下し、180℃で10分加熱した。
乾燥した粒子の状態を目視とSEMで観察し、下記の基準にて評価した。
【0051】
◎ 目視:白色、SEM観察:粒子形状を維持
○ 目視:半透明、SEM観察:粒子形状を部分的に維持
× 目視:透明、SEM観察:粒子形状を維持していない
〔重合安定性評価〕
得られた架橋微粒子分散体の重合安定性を以下の項目にて評価した。その結果を表1に
示す。なお、評価結果に一つでも「不良」があるものは、重合安定性が悪いと判定される

(1)メッシュパス性
得られた架橋微粒子分散液を500メッシュ(JISメッシュ)の金網を用いて濾過を行い、濾過したメッシュを100℃で1時間乾燥した。メッシュ乾燥重量からメッシュ風袋を引いた重量を残渣重量とし、以下の式で凝集物量を算出した。
凝集物量(ppm)=(残渣重量)/(単量体組成物の重量)×10^-6
その際の濾過性能を下記の基準にて評価した。
【0052】
◎ 100ppm未満
○ 100以上、300ppm未満
× 300ppm以上
(2)反応釜の洗浄性
反応溶液を抜き出した後の反応釜へ15質量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、90℃まで昇温後、2時間保持した。その後冷却し、前記水酸化ナトリウム水溶液を除いた後、水洗することで、反応釜の洗浄性を確認し、下記の基準で評価した。
【0053】
◎ 付着物が殆どない
○ 柔らかい付着物がわずかにある
× 硬い付着物がある
実施例1
〔第1工程〕
攪拌機、温度計および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水820質量
部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.11質量部(有効成分65質量%;
以下「DBSNa」と称する)を加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。他方、上記反応釜とは異なる反応容器で、メタクリル酸メチル(以下「MMA」と称する)114質量部とエチレングリコールジメタクリレート(以下「EGDMA」と称する)6質量部を混合して、単量体組成物120質量部を調製した。
【0054】
上記反応釜内を窒素ガスで置換した後、上記単量体組成物5質量部、過酸化水素水(
過酸化水素濃度0.67質量%)6.25質量部、およびL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度1.0質量%)6.25質量部を上記反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。
【0055】
次いで、上記反応釜とは異なる容器にDBSNa1.74質量部と脱イオン水111.9質量部を溶解し、残りの単量体組成物115質量部を加えてT.K.ホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製)により4000rpmで5分間撹拌して均一な懸濁液を得た。上記均一な懸濁液を227.7質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度0.67質量%)81.3質量部、およびL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度1.0質量%)81.3質量部を、各々異なる投入口より反応釜へ1時間20分かけて均一に滴下した。
〔第2工程〕
滴下終了後、75℃で30分間維持し、引き続いて、上記反応釜とは異なる容器にDBSNa4.31質量部と脱イオン水200.8質量部を溶解し、MMA210質量部とEGDMA70質量部を混合した単量体組成物を加えてT.K.ホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製)により4000rpmで5分間撹拌して均一な懸濁液を得た。上記均一な懸濁液を482.9質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度0.67質量%)162.5質量部、およびL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度1.0質量%)162.5質量部を、各々異なる投入口より反応釜へ2時間40分かけて均一に滴下した。
その後、DBSNa6.15質量部と脱イオン水55.4質量部の混合溶液を添加し、内温を85℃まで昇温し、同温度で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、架橋微粒子(1)が分散した架橋微粒子分散体を得た。得られた架橋微粒子を構成する単量体組成および各評価結果を表1に示した。
実施例2
実施例1の第2工程のMMA210質量部を224質量部、EGDMA70質量部を56質量部にした以外は同じにして、架橋微粒子(2)が分散した架橋微粒子分散体を得た。
実施例3
実施例1の第2工程のMMA210質量部を238質量部、EGDMA70質量部を42質量部にした以外は同じにして、架橋微粒子(3)が分散した架橋微粒子分散体を得た。
実施例4
実施例1のエチレングリコールジメタクリレートをジビニルベンゼン810(ジビニルベンゼン含有率81%)(以下「DVB」と称する)にした以外は同じにして、第一工程を行った。
【0056】
実施例1の第二工程のMMA210質量部を210.9質量部、EGDMA70質量部をDVB810 69.1質量部にした以外は同じにして、架橋微粒子(4)が分散した架橋微粒子分散体を得た。
比較例1
実施例1の第2工程のMMA210質量部を196質量部、EGDMA70質量部を84質量部にした以外は同じにして、架橋微粒子(5)が分散した架橋微粒子分散体を得た。
比較例2
攪拌機、温度計および冷却機を備えたステンレス製の反応釜に、脱イオン水873質量
部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.15質量部(有効成分65質量%;
以下「DBSNa」と称する)を加え、内温を75℃まで昇温し、同温度に保った。
別の容器で、MMA352質量部とEGDMA48質量部を混合して、単量体組成物400質量部を調製した。
【0057】
上記反応釜内を窒素ガスで置換した後、上記単量体組成物5質量部、過酸化水素水(
過酸化水素濃度0.67質量%)6.25質量部、およびL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度1.0質量%)6.25質量部を上記反応釜内に添加して、初期重合反応を行った。
【0058】
引き続いて、上記反応釜とは異なる容器にDBSNa6.1質量部と脱イオン水259.5質量部を溶解し、残りの単量体組成物395質量部を混合した単量体組成物を加えてT.K.ホモジナイザー(特殊機化工業株式会社製)により4000rpmで5分間撹拌して均一な懸濁液を得た。上記均一な懸濁液を660.6質量部、過酸化水素水(過酸化水素濃度0.67質量%)243.8質量部、およびL-アスコルビン酸水溶液(L-アスコルビン酸濃度1.0質量%)243.75質量部を、各々異なる投入口より反応釜へ4時間かけて均一に滴下した。
【0059】
その後、DBSNa6.15質量部と脱イオン水55.4質量部の混合溶液を添加し、内温を85℃まで昇温し、同温度で2時間保持して熟成した後、反応溶液を冷却して、架橋微粒子(6)が分散した架橋微粒子分散体を得た。
比較例3
比較例2のMMA352質量部を280質量部、EGDMA48質量部をDVB810 120質量部にする以外は同じにして、架橋微粒子(7)が分散した架橋微粒子分散体を得た。
【0060】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の架橋微粒子分散体は、フィルム用滑り剤、マット剤、コーティング剤添加剤、塗料添加剤など各種フィルム膜、塗工膜の改質剤に利用できる。