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特許7236604管理装置および実装基板製造システムならびに生産順番決定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】管理装置および実装基板製造システムならびに生産順番決定方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20230303BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230303BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20230303BHJP
   B23K 1/008 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
G05B19/418 Z
B23K1/00 330E
B23K1/008 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018164104
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020038857
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】丸田 晟央
(72)【発明者】
【氏名】竹原 裕起
(72)【発明者】
【氏名】相良 博喜
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-159160(JP,A)
【文献】特開2014-056901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/04
G05B 19/418
B23K 1/00
B23K 1/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともリフロー装置と部品実装装置とを含む実装基板製造ラインの管理装置であって、
前記実装基板製造ラインで製造される生産機種をある生産機種から別の生産機種へと切り替える組合せについて、前記リフロー装置内の設定温度を変更してから所定の温度に到達するまでのリフロー段取り時間と前記部品実装装置での部品段取り時間とを含むデータを記憶するデータ記憶手段と、
前記データ記憶手段に記憶されたデータを基に、前記実装基板製造ラインで製造する複数の前記生産機種の生産順番を決定する生産順番決定手段と、を備え
前記生産順番決定手段は、前記生産機種の切り替えの際に前記リフロー段取り時間と前記部品段取り時間の差が小さくなるように前記生産順番を決定する、管理装置。
【請求項2】
前記生産順番決定手段は、生産順番が割り当てられていない生産機種について、前記部品実装装置における直前の生産機種からの切り替えが所定数以内のフィーダ交換で済むか否かを判断し、前記所定数以内のフィーダ交換で済む生産機種が存在する場合には、その生産機種をグループ化して、そのグループ内で生産順番を決定する、請求項に記載の管理装置。
【請求項3】
前記生産順番決定手段は、前記所定数以内のフィーダ交換で済む生産機種が存在しない場合には、生産順番が割り当てられていない生産機種のうち、納期までが所定時間以内で、生産順番が割り当てられた直前の生産機種から切り替える際の前記リフロー段取り時間と前記部品段取り時間の差が最小の生産機種を次の生産機種として割り当てる、請求項に記載の管理装置。
【請求項4】
前記生産順番決定手段は、前記複数の生産機種の中で納期が一番近い生産機種を最初に生産する生産機種として割り当てる、請求項1からのいずれかに記載の管理装置。
【請求項5】
前記生産順番決定手段は、前記複数の生産機種の中で前記リフロー装置内の設定温度が最も低い生産機種を最初に生産する生産機種として割り当てる、請求項1からのいずれかに記載の管理装置。
【請求項6】
前記部品段取り時間は、前記部品実装装置でのフィーダ交換にかかる時間である、請求項1からのいずれかに記載の管理装置。
【請求項7】
少なくともリフロー装置と部品実装装置とを含む実装基板製造ラインと、前記実装基板製造ラインの管理装置と、を備えた実装基板製造システムであって、
前記管理装置は、
前記実装基板製造ラインで製造される生産機種をある生産機種から別の生産機種へと切り替える組合せについて、前記リフロー装置内の設定温度を変更してから所定の温度に到達するまでのリフロー段取り時間と前記部品実装装置での部品段取り時間とを含むデータを記憶するデータ記憶手段と、
前記データ記憶手段に記憶されたデータを基に、前記実装基板製造ラインで製造する複数の前記生産機種の生産順番を決定する生産順番決定手段と、を備え
前記生産順番決定手段は、前記生産機種の切り替えの際に前記リフロー段取り時間と前記部品段取り時間の差が小さくなるように前記生産順番を決定する、実装基板製造システム。
【請求項8】
少なくともリフロー装置と部品実装装置とを含む実装基板製造ラインにおける生産順番決定方法であって、
前記実装基板製造ラインで製造される生産機種をある生産機種から別の生産機種へと切り替える組合せについて、前記リフロー装置内の設定温度を変更してから所定の温度に到達するまでのリフロー段取り時間と前記部品実装装置での部品段取り時間とを含むデータを記憶し、
記憶された前記データを基に、前記実装基板製造ラインで製造する複数の前記生産機種の生産順番を、前記生産機種の切り替えの際に前記リフロー段取り時間と前記部品段取り時間の差が小さくなるように決定する、生産順番決定方法。
【請求項9】
生産順番が割り当てられていない生産機種について、前記部品実装装置における直前の生産機種からの切り替えが所定数以内のフィーダ交換で済むか否かを判断し、
前記所定数以内のフィーダ交換で済む生産機種が存在する場合には、その生産機種をグループ化して、そのグループ内で生産順番を決定する、請求項に記載の生産順番決定方法。
【請求項10】
前記所定数以内のフィーダ交換で済む生産機種が存在しない場合には、生産順番が割り当てられていない生産機種のうち、納期までが所定時間以内で、生産順番が割り当てられた直前の生産機種から切り替える際の前記リフロー段取り時間と前記部品段取り時間の差が最小の生産機種を次の生産機種として割り当てる、請求項に記載の生産順番決定方法。
【請求項11】
前記複数の生産機種の中で納期が一番近い生産機種を最初に生産する生産機種として割り当てる、請求項から10のいずれかに記載の生産順番決定方法。
【請求項12】
前記複数の生産機種の中で前記リフロー装置内の設定温度が最も低い生産機種を最初に生産する生産機種として割り当てる、請求項から10のいずれかに記載の生産順番決定方法。
【請求項13】
前記部品段取り時間は、前記部品実装装置でのフィーダ交換にかかる時間である、請求項から12のいずれかに記載の生産順番決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフロー装置と部品実装装置を含む実装基板製造ラインで製造する生産機種の生産順番を決定する管理装置および実装基板製造システムならびに生産順番決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置、部品実装装置、リフロー装置などを含む実装基板製造ラインでは、複数の生産機種(実装基板)が製造される。実装基板製造ラインで製造する生産機種を切り替える際、部品実装装置では部品を供給するフィーダを交換する部品実装段取りが実行され、リフロー装置では切り替え後の生産機種に応じて装置内の設定温度を変更するリフロー段取りが実行される。特許文献1には、生産順番を決定するにあたり、重複する部品の種類が多い条件、リフロー炉温度が近い条件などのいずれか優先順位が高い条件でソートして、ソートレベルが同じ生産機種がある場合は、それらの生産機種をさらに下位の条件でソートすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-159160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、部品実装装置の部品実装段取り時間とリフロー装置のリフロー段取り時間の間に相関関係はないため、特許文献1を含む従来技術では、部品実装装置の段取り時間は短くなるものの、部品実装装置の段取り替えが終了してもリフロー装置が設定温度になるまで待機する時間が発生するなど異なる装置間で段取り時間のバランスが悪い場合があり、生産順番を決定するにあたりさらなる改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、生産機種を切り替える際の段取り時間が短くなる生産順番を決定することができる管理装置および実装基板製造システムならびに生産順番決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の管理装置は、少なくともリフロー装置と部品実装装置とを含む実装基板製造ラインの管理装置であって、前記実装基板製造ラインで製造される生産機種をある生産機種から別の生産機種へと切り替える組合せについて、前記リフロー装置内の設定温度を変更してから所定の温度に到達するまでのリフロー段取り時間と前記部品実装装置での部品段取り時間とを含むデータを記憶するデータ記憶手段と、前記データ記憶手段に記憶されたデータを基に、前記実装基板製造ラインで製造する複数の前記生産機種の生産順番を決定する生産順番決定手段と、を備え、前記生産順番決定手段は、前記生産機種の切り替えの際に前記リフロー段取り時間と前記部品段取り時間の差が小さくなるように前記生産順番を決定する。
【0007】
本発明の実装基板製造システムは、少なくともリフロー装置と部品実装装置とを含む実装基板製造ラインと、前記実装基板製造ラインの管理装置と、を備えた実装基板製造システムであって、前記管理装置は、前記実装基板製造ラインで製造される生産機種をある生産機種から別の生産機種へと切り替える組合せについて、前記リフロー装置内の設定温度を変更してから所定の温度に到達するまでのリフロー段取り時間と前記部品実装装置での部品段取り時間とを含むデータを記憶するデータ記憶手段と、前記データ記憶手段に記憶されたデータを基に、前記実装基板製造ラインで製造する複数の前記生産機種の生産順番を決定する生産順番決定手段と、を備え、前記生産順番決定手段は、前記生産機種の切り替えの際に前記リフロー段取り時間と前記部品段取り時間の差が小さくなるように前記生産順番を決定する。
【0008】
本発明の生産順番決定方法は、少なくともリフロー装置と部品実装装置とを含む実装基板製造ラインにおける生産順番決定方法であって、前記実装基板製造ラインで製造される生産機種をある生産機種から別の生産機種へと切り替える組合せについて、前記リフロー装置内の設定温度を変更してから所定の温度に到達するまでのリフロー段取り時間と前記部品実装装置での部品段取り時間とを含むデータを記憶し、記憶された前記データを基に、前記実装基板製造ラインで製造する複数の前記生産機種の生産順番を、前記生産機種の切り替えの際に前記リフロー段取り時間と前記部品段取り時間の差が小さくなるように決定する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産機種を切り替える際の段取り時間が短くなる生産順番を決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態の実装基板製造システムの構成説明図
図2】本発明の一実施の形態の実装基板製造ラインが備える部品実装装置の構成説明図
図3】本発明の一実施の形態の実装基板製造ラインが備えるリフロー装置の構成説明図
図4】本発明の一実施の形態の実装基板製造ラインが備えるリフロー装置の切り替え前後の温度差とリフロー段取り時間の関係を説明する図
図5】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(管理装置)の構成を示すブロック図
図6】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(管理装置)で作成された段取り時間データの一例の説明図
図7】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(管理装置)で決定された生産順番データの一例の説明図
図8】本発明の一実施の形態の生産順番決定方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、実装基板製造システム、実装基板製造ライン、部品実装装置、リフロー装置などの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図2では、基板搬送方向のX方向(図2における左右方向)、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(図2における上下方向)が示される。Z方向は、部品実装装置が水平面上に設置された場合の上下方向または直交方向である。
【0012】
まず図1を参照して、実装基板製造システム1の構成を説明する。実装基板製造システム1は、実装基板製造ラインL1を通信ネットワーク2によって接続し、管理コンピュータ3によって管理する構成となっている。実装基板製造ラインL1は、基板搬送方向の上流側(紙面左側)から下流側(紙面右側)に向けて、基板供給装置M1、スクリーン印刷装置M2、部品実装装置M3~M6、リフロー装置M7、基板回収装置M8などの生産作業を実行する生産設備を直列に連結して構成されている。
【0013】
基板供給装置M1、スクリーン印刷装置M2、部品実装装置M3~M6、リフロー装置M7、基板回収装置M8は、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。実装基板製造ラインL1は、基板に部品を実装した実装基板の種類(生産機種)を切り替えながら複数の生産機種を生産する機能を有している。なお、実装基板製造ラインL1は通信ネットワーク2を介して接続される生産設備群であって、物理的に生産設備同士が連結されていなくてもよい。
【0014】
図1において、基板供給装置M1は、複数の基板を収納するラック等の収納部を備え、収納部から取り出した基板を下流側の装置に供給する基板供給作業を実行する。スクリーン印刷装置M2は、印刷作業部に装着されたスクリーンマスクを介して上流側から搬入された基板に半田を印刷する半田印刷作業を実行する。生産機種を切り替える際、スクリーン印刷装置M2では、装着されている元の生産機種のスクリーンマスクを別の生産機種のスクリーンマスクに交換する印刷段取り作業が行われる。
【0015】
部品実装装置M3~M6は、半田が印刷された基板に部品供給装置が供給する部品を実装ヘッドで実装する部品実装作業を実行する。各部品実装装置M3~M6には、生産機種に対応した部品を供給する複数の部品供給装置が装着されている。生産機種を切り替える際、部品実装装置M3~M6では、元の生産機種の部品を供給する部品供給装置を別の生産機種の部品を供給する部品供給装置に交換する部品段取り作業が行われる。なお、実装基板製造ラインL1は、部品実装装置M3~M6が4台の構成に限定されることなく、部品実装装置M3~M6が1~3台であっても5台以上であってもよい。
【0016】
リフロー装置M7は、装置内に搬入された基板を基板加熱部によって加熱して基板上の半田を融解させた後に硬化させ、基板の電極部と部品の電極とを接合する基板加熱作業を実行する。生産機種を切り替える際、リフロー装置M7では、基板加熱部内の設定温度を元の生産機種用から別の生産機種用に変更するリフロー段取り作業が行われる。基板回収装置M8は、複数の基板を収納するラック等の収納部を備え、上流側の装置が搬出する基板を受け取って収納部に回収する基板回収作業を実行する。
【0017】
次に図2を参照して、部品実装装置M3~M6の構成について説明する。部品実装装置M3~M6は同様の構成であり、ここでは部品実装装置M3について説明する。部品実装装置M3の前面中央の上方には、基板に部品を実装する実装ヘッド4、実装ヘッド4を水平移動させるヘッド移動機構(図示省略)などの可動部に作業者が誤って触れないように保護する安全カバー5が設置されている。部品実装装置M3の前面中央の下方(安全カバー5の下方)には、部品供給部6が設けられている。
【0018】
部品供給部6には、上部に部品供給装置である複数のテープフィーダ7を並列に保持する台車8が装着されている。台車8において、テープフィーダ7の下方には、部品を格納する部品供給テープを巻回収納する複数のリール9が並列に保持されている。テープフィーダ7は、リール9から引き出された部品供給テープを内部で搬送しながら部品供給テープに格納された部品を順に部品実装装置M3に供給する。部品段取り作業では、テープフィーダ7とリール9を交換するフィーダ交換が行われる。
【0019】
生産機種を切り替える際、交換するテープフィーダ7とリール9が少ない場合は(フィーダ交換が所定数以内)、該当するテープフィーダ7とリール9が装着されている台車8から直接交換される。交換するテープフィーダ7とリール9が多い場合は、予め予備の台車8に次の生産機種用にテープフィーダ7とリール9をセットして、装着されている台車8を予備の台車8と交換する台車交換作業が行われる。すなわち、フィーダ交換が所定数より多い場合は、台車8を予備の台車8と交換する台車交換作業が行われる。部品段取り作業に要する部品段取り時間Tdは、台車交換を含む部品実装装置M3でのフィーダ交換にかかる時間である。
【0020】
次に図3図4を参照して、リフロー装置M7の構成について説明する。図3において、リフロー装置M7は、内部に基板加熱部10を備えており、基板加熱部10は基板搬送機構11を有している。基板加熱部10では、上流側の部品実装装置M6から搬出された基板12が基板搬送機構11によって一定の搬送速度で順に搬送される。基板加熱部10から搬出された基板12は、下流側の基板回収装置M8で回収される。基板加熱部10は、製造する生産機種に応じて設定温度を変更することができる。
【0021】
図4は、リフロー装置M7内(基板加熱部10)の設定温度を変更してから所定の温度に到達するまでのリフロー段取り時間Trと、設定温度の変更前後の温度差ΔHとの関係を示している。横軸において、原点の右側は変更後の設定温度が変更前より高い加熱条件であり、原点の左側は変更後の設定温度が変更前より低い冷却条件である。リフロー段取り時間Trは、温度差ΔHが大きくなると長くなる。また、この例では冷却条件が加熱条件よりリフロー段取り時間Trが長くなっている。
【0022】
次に図5を参照して、管理コンピュータ3の構成について説明する。管理コンピュータ3は、処理部20、記憶装置である生産計画記憶部24、ライン情報記憶部25の他、入力部26、表示部27を備えている。処理部20はCPUなどのデータ処理装置であり、内部処理部として部品段取り時間算出部21、リフロー段取り時間算出部22、生産順番決定部23を備えている。なお、管理コンピュータ3は、ひとつのコンピュータで構成する必要はなく、複数のデバイスで構成してもよい。例えば、記憶装置の全てもしくは一部をサーバを介してクラウドに備えてもよい。
【0023】
入力部26は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部27は液晶パネルなどの表示装置であり、各記憶部が記憶する各種データを表示する他、入力部26による操作のための操作画面などの各種情報を表示する。
【0024】
図5において、生産計画記憶部24には、生産計画情報24a、生産機種情報24b、段取り時間データ24c、生産順番データ24dなどが記憶されている。生産計画情報24aには、生産される実装基板のロット毎に、生産する生産機種を特定する情報、生産枚数、生産納期などを含む生産計画が記憶されている。生産機種情報24bには、生産機種毎に、基板12に実装される部品の部品種、実装位置、リフロー装置M7の設定温度など実装基板の製造に必要な情報が記憶されている。なお、同一の生産機種が複数のロットで生産される場合もある。
【0025】
ライン情報記憶部25には、部品段取りデータ25a、リフロー段取りデータ25bなどが記憶されている。部品段取りデータ25aは、部品実装装置M3~M6における部品段取り作業の部品段取り時間Tdを算出するために必要なデータが記憶されている。具体的には、部品段取りデータ25aには、1つのフィーダ交換に要する部品段取り時間Tdの予想値、台車交換作業に要する部品段取り時間Tdの予想値などが記憶されている。
【0026】
リフロー段取りデータ25bには、リフロー装置M7におけるリフロー段取り作業に要するリフロー段取り時間Trを算出するために必要なデータが記憶されている。具体的には、リフロー段取りデータ25bには、リフロー装置M7内の設定温度が変更されてから所定の温度に到達するまでのリフロー段取り時間Trと設定温度の差(温度差ΔH)との関係を示すデータが記憶されている。図4に示す例では、リフロー段取りデータ25bは、加熱条件と冷却条件の数式として記憶されている。
【0027】
図5において、部品段取り時間算出部21は、内部処理部としてフィーダ交換数算出部21aを備えている。フィーダ交換数算出部21aは、生産計画情報24a、生産機種情報24bに基づいて、実装基板製造ラインL1で製造される生産機種を切り替える組合せについて、部品実装装置M3~M6における部品段取り作業で発生するフィーダ交換の数を算出する。部品段取り時間算出部21は、算出されたフィーダ交換の数と部品段取りデータ25aに基づいて、部品実装装置M3~M6における部品段取り時間Tdを算出する。
【0028】
リフロー段取り時間算出部22は、内部処理部として温度差算出部22aを備えている。温度差算出部22aは、実装基板製造ラインL1で製造される生産機種を切り替える組合せについて、リフロー段取り作業で発生するリフロー装置M7内の設定温度の切り換え前後の温度差ΔHを算出する。リフロー段取り時間算出部22は、リフロー段取りデータ25bに基づいて、リフロー装置M7におけるリフロー段取り時間Trを算出する。
【0029】
なお、リフロー装置M7の基板加熱部10が個別に設定温度を設定可能な複数のゾーンを有しており、リフロー段取り作業でゾーン毎に設定温度が変更される場合は、リフロー段取り時間Trが最大のゾーンのリフロー段取り時間Trをリフロー装置M7のリフロー段取り時間Trとしてもよい。具体的には、ゾーン毎にリフロー段取りデータ25bを記憶し、温度差算出部22aはゾーン毎に切り替え前後の温度差ΔHを算出し、リフロー段取り時間算出部22はゾーン毎にリフロー段取り時間Trを算出し、最大のリフロー段取り時間Trをリフロー装置M7のリフロー段取り時間Trとしてもよい。
【0030】
部品段取り時間Tdとリフロー段取り時間Trは、所定の期間に製造される生産機種(ロット)の全ての組合せについて算出される。算出された部品段取り時間Tdとリフロー段取り時間Trは、段取り時間データ24cとして生産計画記憶部24に記憶される。すなわち、生産計画記憶部24は、実装基板製造ラインL1で製造される生産機種(ロット)をある生産機種から別の生産機種へと切り替える組合せについて、リフロー装置M7内の設定温度を変更してから所定の温度に到達するまでのリフロー段取り時間Trと部品実装装置M3~M6での部品段取り時間Tdとを含む段取り時間データ24cを記憶するデータ記憶手段である。
【0031】
ここで図6を参照して、段取り時間データ24cの例について説明する。図6では、ロットA~ロットDの全ての組合せについて、「部品」で示す部品段取り時間Tdと「リフロー」で示すリフロー段取り時間Trが行列の表に表示されている。部品段取り時間Tdは、台車交換作業を行わない条件で算出されている。ロットA~ロットDは、生産納期が早い順に並べられている。例えば、ロットAとロットBの組合せにおいて、切り替え前がロットAで切り替え後がロットBの場合(ロットA→ロットB)、部品段取り時間Tdは600秒、リフロー段取り時間Trは1200秒である。
【0032】
一方、切り替え前がロットBで切り替え後がロットAの場合(ロットB→ロットA)、部品段取り時間Tdは同じ600秒であるが、リフロー段取り時間Trは240秒と短くなっている。これは、フィーダ交換の数は順番を入れ替えても変わらないが、温度差ΔHは順番を入れ替えると正負が変わるためである。すなわち、ロットA→ロットBの場合は冷却条件であるが、ロットB→ロットAの場合は加熱条件となるためリフロー段取り時間Trが短くなっている。ロットBとロットCは、設定温度が同じであるためリフロー段取り時間Trは0秒である。
【0033】
図5において、生産順番決定部23は、内部処理部としてグループ作成部23aを備えている。生産順番決定部23は、データ記憶手段(生産計画記憶部24)に記憶された段取り時間データ24cを基に、実装基板製造ラインL1で製造する複数のロット(生産機種)の生産順番を決定する生産順番決定手段である。決定された生産順番は、生産順番データ24dとして生産計画記憶部24に記憶させる。以下、図7に示す生産順番データ24dを参照しながら、生産順番決定部23、グループ作成部23aのデータ処理について説明する。図7において、縦軸は生産時刻Tであり、ロットA~ロットHが決定された生産順番で並んでいる。横軸は、各ロットA~ロットHを生産する際のリフロー装置M7内の設定温度Hである。
【0034】
グループ作成部23aは、フィーダ交換数算出部21aによって算出されたフィーダ交換の数に基づいて、複数のロット(生産機種)をグループ化する。具体的には、グループ作成部23aは、生産機種の切り替えにおけるフィーダ交換の数が所定数以内の生産機種を同じグループとしてグループ化する。所定数は、台車交換をする場合の部品段取り作業の部品段取り時間Tdと、台車8を交換しないフィーダ交換のみの部品段取り作業の部品段取り時間Tdとを比較して決められる。
【0035】
このように、グループ作成部23aは、生産順番が割り当てられていない生産機種(ロット)について、部品実装装置M3~M6における直前の生産機種からの切り替えが所定数以内のフィーダ交換で済むか否かを判断し、所定数以内のフィーダ交換で済む生産機種が存在する場合には、その生産機種(ロット)をグループ化する。図7において、ロットA,ロットB,ロットDはグループU、ロットC,ロットE,ロットGはグループV、ロットF,ロットHはグループWとしてグループ化されている。なお、グループは、予め決定しておいて生産計画情報24aに含めて記憶するようにしてもよい。
【0036】
図5において、生産順番決定部23は、複数のロット(生産機種)の中で生産納期が一番近いロットを最初に生産するロットとして割り当てる。図7では、ロットAが一番早く生産納期となる(生産納期が一番近い)。または、生産順番決定部23は、複数のロット(生産機種)の中でリフロー装置M7内の設定温度Hが最も低いロットを最初に生産するロットとして割り当てる。図7では、グループUの中で、ロットBが最も設定温度Hが低く、最初に生産する先頭ロットに割り当てられている。
【0037】
また、生産順番決定部23は、ロット(生産機種)の切り替えの際にリフロー段取り時間Trと部品段取り時間Tdの差が小さくなるように生産順番を決定する。図7では、グループUの中での生産順番がロットB→ロットA→ロットDに決定されている。また、生産順番決定部23は、所定数以内のフィーダ交換で済む生産機種が存在しない場合には、生産順番が割り当てられていない生産機種のうち、納期までが所定時間以内で、生産順番が割り当てられた直前の生産機種から切り替える際のリフロー段取り時間Trと部品段取り時間Tdの差が最小の生産機種を次の生産機種(ロット)として割り当てる。図7では、グループUの最後のロットDの次のロットとして、ロットCが割り当てられている。
【0038】
このように、管理コンピュータ3は、リフロー段取り時間Trと部品段取り時間Tdとを含む段取り時間データ24cを記憶するデータ記憶手段(生産計画記憶部24)と、段取り時間データ24cを基に、実装基板製造ラインL1で製造する複数の生産機種(ロット)の生産順番を決定する生産順番決定部23(生産順番決定手段)とを備えた、少なくともリフロー装置M7と部品実装装置M3~M6を含む実装基板製造ラインL1の管理装置である。また、実装基板製造システム1は、実装基板製造ラインL1と管理コンピュータ3(管理装置)を備えている。
【0039】
次に図8のフローに沿って、図7を参照しながら実装基板製造ラインL1におけるロットA~ロットH(生産機種)の生産順番を決定する生産順番決定方法について説明する。図8において、まず、部品段取り時間算出部21は、実装基板製造ラインL1で製造される生産機種をある生産機種から別の生産機種へと切り替える組合せについて、生産計画情報24a、生産機種情報24b、部品段取りデータ25aに含まれる部品実装装置M3~M6でのフィーダ交換にかかる時間、フィーダ交換数算出部21aが算出するフィーダ交換の数に基づいて、部品段取り時間Tdを算出する(ST1:部品段取り時間算出工程)。
【0040】
また、リフロー段取り時間算出部22は、実装基板製造ラインL1で製造される生産機種をある生産機種から別の生産機種へと切り替える組合せについて、生産計画情報24a、生産機種情報24b、リフロー段取りデータ25bに含まれる温度差ΔHとリフロー段取り時間Trの関係、温度差算出部22aが算出する切り替え前後の温度差ΔHに基づいて、リフロー段取り時間Trを算出する(ST2:リフロー段取り時間算出工程)。部品段取り時間算出工程(ST1)において算出された部品段取り時間Tdとリフロー段取り時間Trは、段取り時間データ24c(図6参照)として生産計画記憶部24に記憶される(ST3:段取り時間記憶工程)。
【0041】
図8において、次いで生産順番決定部23は、複数のロット(生産機種)の中で納期が一番近いロット、または、納期が近くてリフロー装置M7内の設定温度Hが最も低いロットを最初に生産するロットとして割り当てる(ST4:先頭ロット決定工程)。図7の例では、ロットA~ロットHのうちロットBが先頭ロットに決定されている。次いでグループ作成部23aは、生産順番が割り当てられていないロット(生産機種)について、部品実装装置M3~M6における直前のロットからの切り替えが所定数以内のフィーダ交換で済むか否かを判断する(ST5:グループ化判断工程)。
【0042】
所定数以内のフィーダ交換で済むロット(生産機種)が存在する場合には(ST5においてYes)、そのロットをグループ化して、そのグループ内で生産順番を決定する(ST6:グループ作成工程)。その際、グループ作成部23aは、ロットの切り替えの際にリフロー段取り時間Trと部品段取り時間Tdの差が小さくなるように生産順番を決定する。図7の例では、先頭のロットBを含むグループUとして、ロットA,ロットB,ロットDがグループ化され、生産順番はロットB→ロットA→ロットDに決定されている。
【0043】
図8において、次いでグループ化判断工程(ST5)に戻り、フィーダ交換が所定数以内のロット(生産機種)があるか否かが判断される。ここでは、該当するロットが存在しないため(ST5においてNo)、全てのロットで割り当てが終了したか否かが判断される(ST7:割り当て終了判断工程)。ここでは、生産順番が割り当てられていないロットがあるため(ST7においてNo)、生産順番決定部23は、台車交換作業を伴う部品段取り作業の後に最初に生産するロットを次のロットとして割り当てる(ST8:台車交換後決定工程)。
【0044】
すなわち、所定数以内のフィーダ交換で済むロット(生産機種)が存在しない場合には(ST5においてNo)、生産順番決定部23は、生産順番が割り当てられていないロットのうち、納期までが所定時間以内で、生産順番が割り当てられた直前のロットから切り替える際のリフロー段取り時間Trと部品段取り時間Tdの差が最小のロットを次のロットとして割り当てる(ST8)。図7の例では、グループUの最後のロットDの次のロットとしてロットCが割り当てられており、ロットDの生産終了後に台車交換作業が行われる。
【0045】
次いで(ST5)に戻り、グループ化判断工程(ST5)とグループ作成工程(ST6)が実行される。図7の例では、台車交換後の先頭のロットCを含むグループVとして、ロットC,ロットE,ロットGがグループ化され、生産順番はロットC→ロットE→ロットGに決定されている。以下同様に、台車交換後決定工程(ST8)、グループ化判断工程(ST5)、グループ作成工程(ST6)が実行される。これにより、図7の例では、台車交換後の先頭のロットFを含むグループWとして、ロットF,ロットHがグループ化され、生産順番はロットF→ロットHに決定されている。これで全てのロットの割り当てが終了する(ST7においてYes)。
【0046】
このように、本実施の形態の生産順番決定方法では、リフロー段取り時間Trと部品段取り時間Tdを含む段取り時間データ24cを基に、実装基板製造ラインL1で製造する複数のロット(生産機種)の生産順番が決定される(ST4~ST8)。これによって、部品段取り時間Tdとリフロー段取り時間Trを考慮して部品実装装置M3~M6およびリフロー装置M7の段取り作業の待ち時間を削減して、実装基板製造ラインL1における生産機種(ロット)を切り替える際の段取り時間が短くなる生産順番を決定することができる。
【0047】
上記説明したように、本実施の形態の管理コンピュータ3は、実装基板製造ラインL1の管理装置であって、実装基板製造ラインL1で製造される生産機種(ロット)をある生産機種から別の生産機種へと切り替える組合せについて、リフロー装置M7内の設定温度Hを変更してから所定の温度に到達するまでのリフロー段取り時間Trと部品実装装置M3~M6での部品段取り時間Tdとを含むデータ(段取り時間データ24c)を記憶するデータ記憶手段(生産計画記憶部24)と、記憶されたデータを基に、実装基板製造ラインL1で製造する複数の生産機種の生産順番を決定する生産順番決定手段(生産順番決定部23)と、を備えている。
【0048】
これによって、部品実装装置M3~M6およびリフロー装置M7の段取り作業の待ち時間を削減して、実装基板製造ラインL1における生産機種を切り替える際の段取り時間が短くなる生産順番を決定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の管理装置および実装基板製造システムならびに生産順番決定方法は、生産機種を切り替える際の段取り時間が短くなる生産順番を決定することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 実装基板製造システム
3 管理コンピュータ(管理装置)
H 設定温度
L1 実装基板製造ライン
M3~M6 部品実装装置
M7 リフロー装置
ΔH 温度差
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8