(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 37/28 20060101AFI20230303BHJP
D06F 37/18 20060101ALI20230303BHJP
D06F 39/14 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
D06F37/28
D06F37/18
D06F39/14 Z
(21)【出願番号】P 2019096477
(22)【出願日】2019-05-23
【審査請求日】2021-05-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】山本 将平
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 徹
(72)【発明者】
【氏名】廣畑 賢
(72)【発明者】
【氏名】坂本 拓海
【審査官】遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-038467(JP,A)
【文献】特開2004-351114(JP,A)
【文献】実開平06-056438(JP,U)
【文献】特開2006-255012(JP,A)
【文献】特開2014-144070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/28
D06F 37/18
D06F 39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体の上部に配設されたトップカバーと、前記トップカバーに形成された投入口と、前記投入口の上部を開閉自在に覆うように配設された蓋体と、前記蓋体を回動自在に支持
し、軸穴が形成された軸受体と、
前記蓋体の回動運動を減衰させるダンパーと、を備え、
前記トップカバーの上面には、前記軸受体が挿入される空間が形成されており、
前記軸受体は、前記空間に挿入される側の面である第一の面と、前記第一の面よりも高い位置に形成された第二の面と、を有し、
前記軸受体は、前記第一の面および前記第二の面のそれぞれにおいて、前記トップカバーに対してネジ止めされ、
前記第一の面と前記第二の面との間には、段差が設けられ
、
前記蓋体は、後部の左右両側部で軸支されており、
前記左右両側部の一方には前記ダンパーが設けられ、他方には前記軸穴に貫入される回動軸が設けられ、
前記ダンパーに設けられた軸は、前記軸穴に嵌合され、
前記空間には、前記ダンパーが設けられた側と、前記回動軸が設けられた側と、で異なる位置にリブが形成されており、
前記ダンパーが設けられた側の前記軸受体、及び前記回動軸が設けられた側の前記軸受体は、前記リブと対応する位置に、溝が形成されている、洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋を備えた洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、衣類投入口の上部を開閉自在に覆うように配設された蓋体を備えた洗濯機を開示する。
【0003】
特許文献1における洗濯機は、筐体と、筐体の上部に配設されたトップカバーと、前記トップカバーに形成された衣類投入口と、衣類投入口の上部を開閉自在に覆うように配設された蓋体と、蓋体を回動自在に支持する蓋蝶番軸受と、一端を蓋蝶番軸受に軸支された蓋体の回転を減衰する回転式の衝撃緩和ダンパーを備える。蓋蝶番軸受は、ネジにてトップカバーに締結固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の蓋蝶番軸受では、蓋体回転時に、蓋蝶番軸受を締結固定するネジ止め周辺に応力が集中し、トップカバーおよび蓋蝶番軸受が破損する虞があった。
【0006】
本開示は、蓋体回転時に発生する応力に対する耐久性が高い洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における洗濯機は、筐体と、前記筐体の上部に配設されたトップカバーと、前記トップカバーに形成された投入口と、前記投入口の上部を開閉自在に覆うように配設された蓋体と、前記蓋体を回動自在に支持し、軸穴が形成された軸受体と、前記蓋体の回動運動を減衰させるダンパーと、を備える。また、前記トップカバーの上面には、前記軸受体が挿入される空間が形成されており、前記軸受体は、前記空間に挿入される側の面である
第一の面と、前記第一の面よりも高い位置に形成された第二の面と、を有し、前記軸受体は、前記第一の面および前記第二の面のそれぞれにおいて、前記トップカバーに対してネジ止めされ、前記第一の面と前記第二の面との間には、段差が設けられ、前記蓋体は、後部の左右両側部で軸支されており、前記左右両側部の一方には前記ダンパーが設けられ、他方には前記軸穴に貫入される回動軸が設けられ、前記ダンパーに設けられた軸は、前記軸穴に嵌合され、前記空間には、前記ダンパーが設けられた側と、前記回動軸が設けられた側と、で異なる位置にリブが形成されており、前記ダンパーが設けられた側の前記軸受体、及び前記回動軸が設けられた側の前記軸受体は、前記リブと対応する位置に、溝が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示における洗濯機は、蓋体回転時に発生する応力に対する耐久性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1における洗濯機の蓋体が閉じた状態の外観斜視図
【
図5】同洗濯機の蓋体の軸受体周囲の構造を示す縦断面図
【
図6】同洗濯機の蓋体の軸受体周囲の構造を示す下から見た横断面図
【
図7】同洗濯機の蓋体の軸受体周囲で発生する応力を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における洗濯機の蓋体が閉じた状態の外観斜視図、
図2は、同洗濯機の蓋体が開いた状態の外観斜視図である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、洗濯機本体1の上部にはトップカバー2が配設されており、トップカバー2の上面には衣類投入口5が形成されている。衣類投入口5から投入された衣類は、洗濯機本体1の内部に配設された洗濯槽6に収容される。蓋体3は、衣類投入口5の上方を覆うように開閉自在に設けられている。蓋体3周りの詳細構造は、後述する。
【0013】
蓋体3の後方には、各種の入力設定を行ない、設定内容を表示する操作表示部4が配設されている。操作表示部4の下方には、洗濯機の運転制御を行う制御装置(図示せず)が配設されている。
【0014】
続いて、蓋体3周りの詳細構造を説明する。
【0015】
図3は、実施の形態1における洗濯機の蓋体の開閉状態を示す側面図である。
【0016】
図3に示すように、蓋体3の後方左右端部で軸支されている。蓋体3は、蓋ヒンジ軸を回動中心として、閉塞状態LOの位置から略垂直に開いた位置である開放状態LHの位置まで、回動可能に構成されている。蓋体3を開放状態LHから閉じる時には、L1の位置を過ぎてから、後述するダンパー構造により回転動作を緩和させ、急激な衝撃を蓋体3に与えないでLO位置に閉じる。
【0017】
図4は、実施の形態1における洗濯機の蓋体周りの構造を示す分解斜視図である。
【0018】
図4に示すように、蓋体3の後方右部には、右方向に延伸するように形成された回動軸21が形成されている。また、蓋体3の後方左部にはダンパー構造が配設されている。ダンパー構造は、蓋体3に形成された蓋体空間13と、蓋体空間13に収容されるダンパー保持体10と、ダンパー保持体10により保持されるダンパー9により構成されている。ダンパー9は、左方向に延伸するように形成された略四角柱形状のダンパー軸9aと、回転動作を緩和させる内部構造を備えている。また、ダンパー構造の前面はカバー体11により覆われており、外部から蓋体空間13の内部構造が見えないようになっている。
【0019】
また、トップカバー空間14a及びトップカバー空間14bは、トップカバー2の後方上面の左右に窪みとして形成されている。トップカバー空間14aはトップカバー2の後方左部に、トップカバー空間14bはトップカバー2の後方右部にそれぞれ配置されており、それぞれ対応する軸受体8a又は軸受体8bが挿入される。軸受体8aはダンパー9と係合し、軸受体8bは回動軸21と遊嵌することで、蓋体3を回動自在に支持する。
【0020】
図5は、実施の形態1における洗濯機の蓋体の軸受体周囲の構造を示す縦断面図である。
【0021】
図5に示すように、軸受体8の下部はトップカバー空間14と緩く嵌合するように形成されている。ここでは、ダンパー構造側に配置される軸受体8aについて説明する。軸受体8aの上部には略四角形状の軸受穴20aが形成されており、軸受穴20aにはダンパー軸9aが挿入されている。なお、回動軸21側に配置される軸受体8bは、軸受穴20aの代わりに円形の貫通孔である軸受孔20bが形成されており、軸受孔20bには回動軸21が遊嵌している。
【0022】
軸受体8aの下部は、後方の面である第一の面22が、前方の面である第二の面23よりも低くなるように段差状に形成されている。第一の面22と第二の面23の段差である第三の面24は、第一の面22及び第二の面23に対して垂直に形成されている。なお、軸受体8bの下部も、軸受体8aと同様に段差状に形成される。
【0023】
第一の面22の側面下部には係合凹部17が形成されており、トップカバー空間14aにおいて係合凹部17と嵌合する位置には係合爪15が形成されている。係合爪15は、軸受体8aがトップカバー空間14に挿入される際に係合凹部17と係合し、軸受体8aをトップカバー空間14aに対して仮固定する。また、第二の面23及び第一の面22にはネジ穴19がそれぞれ形成されており、軸受体8aはネジ穴19においてネジ12により下方からネジ止めされている。なお、軸受体8bの下部も、軸受体8aと同様に係合爪15により仮止めされ、第二の面23及び第一の面22において下方よりネジ止めされている。
【0024】
図6は、実施の形態1における洗濯機の蓋体の軸受体周囲の構造を示す下から見た横断面図である。
【0025】
図6に示すように、トップカバー空間14a及びトップカバー空間14bの側面には、上下に形成されたリブ16が設けられており、軸受体8a及び軸受体8bには、リブ16が挿入されるように形成された溝18が設けられている。トップカバー2の後方左部に形成されたトップカバー空間14aには、
右側側面にリブ16が形成されている一方、トップカバー2の後方右部に形成されたトップカバー空間14bは、
左側側面にリブ16が形成されている。従って、回動軸21側に配置される軸受体8bをダンパー構造側のトップカバー空間14aに挿入しようとしても嵌合しない。これにより、軸受体8をトップカバー空間14に取り付ける際に、ダンパー構造側の軸受体8aと回動軸21側の軸受体8bを取り違えることを抑止できるため、取り付け工程における作業性を向上できる。
【0026】
また、本実施の形態のように、軸受体8bの右側側面に第2の溝25を設けてもよい。これにより、ダンパー構造を設けない機種を製造する際に、軸受体8aの代わりに軸受体8bをトップカバー空間14aに挿入することが可能となるため、部品の共通化を実現することができる。ただし、第2の溝25を設けない方が、ダンパー構造側の軸受体8aと回動軸21側の軸受体8bを取り違えることを抑止する効果は高い。
【0027】
以上の構成について、以下、動作を説明する。
【0028】
図7は、実施の形態1における洗濯機の蓋体の軸受体周囲で発生する応力を示す模式図である。
【0029】
図7に示すように、蓋体3が重力により閉じる向きに動く際、矢印A向きの回転モーメントが生じる。この時、ダンパー軸9aが非円形形状であるため、軸受体8aに対して固定点であるネジ12の締結部を中心に大きな応力が発生する。
【0030】
しかしながら、本実施の形態における軸受体8aは、高さの異なる第一の面22及び第二の面23にネジ12による締結部を設けているため、応力が蓋体落下荷重の作用面26(破線)の全体に分散する。
【0031】
また、本実施の形態における軸受体8aは、トップカバー2と別部品で構成されているため、材料を自由に選定することができる。従って、蓋体の自然落下による回転モーメントが大きい時は剛性の高い材料を選定したり、円柱状の回転軸を有する時は剛性の低い材
料を選定したりできる。
【0032】
以上のように、実施の形態1における洗濯機は、洗濯機本体1と、洗濯機本体1の上部に配設されたトップカバー2と、トップカバー2に形成された衣類投入口5と、衣類投入口5の上部を開閉自在に覆うように配設された蓋体3と、蓋体3を回動自在に支持する軸受体8と、を備える。トップカバー2の上面には、軸受体8が挿入されるトップカバー空間14が形成されており、軸受体8は、トップカバー空間14に挿入される側の第一の面22と、空間に挿入される側の面よりも高い位置に形成された第二の面23と、において、トップカバー2に対してネジ止めされる。
【0033】
これにより、軸受体8の剛性が向上し、かつトップカバー空間14と軸受体8の接触する表面積が増加し、蓋体3の回転時に発生する応力を分散させることができる。そのため応力集中によるトップカバー2及び軸受体8の破損を防ぐことができる。
【0034】
本実施の形態のように、蓋体3の回動運動を減衰させるダンパー9を備え、ダンパー9に設けられたダンパー軸9aは、軸受体8aに形成された非円形状の軸受穴20aに嵌合されているようにしてもよい。
【0035】
これにより、蓋体3の自然落下による回転モーメントが発生した際に、軸受体8aのネジ締結部近傍において発生する応力を分散させることができる。そのため、応力集中によるトップカバー2及び軸受体8の破損を防ぐことができる。
【0036】
本実施の形態のように、蓋体3は、後方の左右両側部で支持されており、左右両側部の一方にはダンパー9が設けられ、他方には軸受穴20aと遊嵌する回動軸21が設けられているようにしてもよい。
【0037】
本実施の形態のように、トップカバー空間14a及びトップカバー空間14bは、ダンパー9が設けられた側と、回動軸21が設けられた側と、で異なる位置にリブ16が形成されており、ダンパー9が設けられた側の軸受体8a、及び回動軸21が設けられた側の軸受体8bは、リブ16と対応する位置に、溝18が形成されているようにしてもよい。
【0038】
これにより、ダンパー9が設けられた側の軸受体8aはトップカバー空間14bに挿入することができず、回動軸21が設けられた側の軸受体8bはトップカバー空間14aに挿入することができない。そのため、ダンパー9と係合する軸受体8aと、回動軸21と遊嵌する軸受体8bと、を左右取り違えて固定することを抑止できるので、取り付け工程における作業性を向上できる。
【0039】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されない。
【0040】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0041】
実施の形態1では、洗濯機の一例として、縦型洗濯機を説明した。洗濯機は、上方に開口する衣類投入口を備えた洗濯機であればよいので、縦型洗濯機に限定せず、二槽式洗濯機であってもよい。また、筐体とトップカバーは一体成型であってもよい。
【0042】
実施の形態1では、回動軸21の一例として、蓋体3と一体成型で形成された回動軸21を説明した。回動軸21は、軸受孔20bと遊嵌していればよいので、一体成型であっても別部品であってもよい。
【0043】
実施の形態1では、ダンパー構造の配置の一例として、蓋体3の後方左部に設けられたダンパー構造を説明した。ダンパー構造は、蓋体3の回動運動を減衰させる構成であればよいので、配置は後方左部に限定しない。例えば、蓋体3の後方右部に設けてもよいし、蓋体3の後方両側部に設けてもよい。
【0044】
実施の形態1では、トップカバー空間14a及びトップカバー空間14bにリブ16を形成し、軸受体8a及び軸受体8bに溝18を形成する構成を説明した。リブ16と溝18は、配置関係を逆にしてもよく、トップカバー空間14a及びトップカバー空間14bに溝18を形成し、軸受体8a及び軸受体8bにリブ16を形成してもよい。ただし、トップカバー空間14a及びトップカバー空間14bにリブ16を形成する構成の方が、トップカバー空間14a及びトップカバー空間14bの壁面を肉薄に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本開示は、開閉自在な蓋体を備えた機器に適用可能である。具体的には、縦型洗濯機、二槽式洗濯機などに、本開示は適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 洗濯機本体
2 トップカバー
3 蓋体
4 操作表示部
5 衣類投入口
6 洗濯槽
8 軸受体
8a 軸受体
8b 軸受体
9 ダンパー
9a ダンパー軸
10 ダンパー保持体
12 ネジ
13 蓋体空間
14 トップカバー空間
14a トップカバー空間
14b トップカバー空間
15 係合爪
16 リブ
17 係合凹部
18 溝
19 ネジ穴
20a 軸受穴
20b 軸受孔
21 回動軸
22 第一の面
23 第二の面
24 第三の面
25 第2の溝
26 蓋体落下荷重の作用面