(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-02
(45)【発行日】2023-03-10
(54)【発明の名称】車両支援システム、車両支援方法およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20230303BHJP
B60R 99/00 20090101ALI20230303BHJP
B60W 30/06 20060101ALI20230303BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230303BHJP
【FI】
G08G1/09 H
B60R99/00 340
B60R99/00 360
B60W30/06
G08G1/16 A
(21)【出願番号】P 2018244474
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】張 天寿
【審査官】稲垣 彰彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0229719(US,A1)
【文献】特開2016-7920(JP,A)
【文献】特開2018-97536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車車間通信によって、自車両近傍の他車両から、他車両の経路情報を受け付ける受付部と、
前記受付部により受け付けられた他車両の経路情報が示す他車両の走行経路と、自車両の走行経路とが重なるか否かに応じて、入庫時の自車両の挙動を決定する決定部と、
を備え、
前記受付部により受け付けられる他車両の経路情報は、他車両の入庫の所要時間を含み、
入庫時における自車両の駐車枠と他車両の駐車枠が同じ場合に、前記決定部は、他車両の走行経路と自車両の走行経路とが重なる場合であって、かつ、自車両の入庫の所要時間が他車両の入庫の所要時間未満の場合、自車両の入庫を優先するよう自車両の挙動を決定
し、
他車両の走行経路と自車両の走行経路とが重なる場合であって、かつ、自車両の入庫の所要時間が他車両の入庫の所要時間より大きい場合、他車両の入庫を優先するよう自車両の挙動を決定し、
前記他車両の入庫を優先することが決定された場合、前記決定部は、HMI(Human Machine Interface)装置に、自動入庫処理を中断して手動運転モードに切り替えたことを表示させる、
車両支援システム。
【請求項2】
入庫時の車両の向きが、前記自車両と前記他車両とで異なる場合において、前記決定部は、自車両の挙動を決定し、
前記車両の向きは、前向き、または、後ろ向きのいずれかである、
請求項1に記載の車両支援システム。
【請求項3】
自車両と他車両とが、駐車枠に対し互いに異なる側から入庫する場合において、前記決定部は、自車両の挙動を決定する、
請求項1に記載の車両支援システム。
【請求項4】
車車間通信によって、自車両近傍の他車両から、他車両の経路情報を受け付け、
前記他車両の経路情報が示す他車両の走行経路と、自車両の走行経路とが重なるか否かに応じて、入庫時の自車両の挙動を決定し、
前記他車両の経路情報は、他車両の入庫の所要時間を含み、
入庫時における自車両の駐車枠と他車両の駐車枠が同じ場合に、他車両の走行経路と自車両の走行経路とが重なる場合であって、かつ、自車両の入庫の所要時間が他車両の入庫の所要時間未満の場合、自車両の入庫を優先するよう自車両の挙動を決定
し、
他車両の走行経路と自車両の走行経路とが重なる場合であって、かつ、自車両の入庫の所要時間が他車両の入庫の所要時間より大きい場合、他車両の入庫を優先するよう自車両の挙動を決定し、
前記他車両の入庫を優先することが決定された場合、HMI(Human Machine Interface)装置に、自動入庫処理を中断して手動運転モードに切り替えたことを表示させる、
車両支援方法。
【請求項5】
車車間通信によって、自車両近傍の他車両から、他車両の経路情報を受け付け、
前記他車両の経路情報が示す他車両の走行経路と、自車両の走行経路とが重なるか否かに応じて、入庫時または出庫時の自車両の挙動を決定する、
ことをコンピュータに実行させ、
前記他車両の経路情報は、他車両の入庫の所要時間を含み、
入庫時における自車両の駐車枠と他車両の駐車枠が同じ場合に、他車両の走行経路と自車両の走行経路とが重なる場合であって、かつ、自車両の入庫の所要時間が他車両の入庫の所要時間未満の場合、自車両の入庫を優先するよう自車両の挙動を決定
し、
他車両の走行経路と自車両の走行経路とが重なる場合であって、かつ、自車両の入庫の所要時間が他車両の入庫の所要時間より大きい場合、他車両の入庫を優先するよう自車両の挙動を決定し、
前記他車両の入庫を優先することが決定された場合、HMI(Human Machine Interface)装置に、自動入庫処理を中断して手動運転モードに切り替えたことを表示させる、
ことを前記コンピュータにさらに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はデータ処理技術に関し、特に車両支援システム、車両支援方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラやレーダ装置等を利用して、自車両周辺の他車両の行動を判断し、駐車支援制御を継続するかを決定する駐車支援システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
往来の多い駐車場では、自車両周辺に、入庫途中または出庫途中の多くの他車両が存在するため、自動駐車処理の中断が多発することがある。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みてなされたものであり、1つの目的は、車両の入庫時または出庫時における乗員の利便性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両支援システムは、車車間通信によって、自車両近傍の他車両から、他車両の経路情報を受け付ける受付部と、受付部により受け付けられた他車両の経路情報が示す他車両の走行経路と、自車両の走行経路とが重なるか否かに応じて、入庫時または出庫時の自車両の挙動を決定する決定部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、車両支援方法である。この方法は、車車間通信によって、自車両近傍の他車両から、他車両の経路情報を受け付け、他車両の経路情報が示す他車両の走行経路と、自車両の走行経路とが重なるか否かに応じて、入庫時または出庫時の自車両の挙動を決定する。
【0008】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を、装置、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを記録した記録媒体、車両支援システムを搭載した車両などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、車両の入庫時または出庫時における乗員の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(a)と
図1(b)は、入庫時の衝突可能性を示す図である。
【
図2】入庫時および出庫時の衝突可能性を示す図である。
【
図4】実施例の車両の機能ブロックを示すブロック図である。
【
図5】実施例の車両支援システムの動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図5に続く動作を示すフローチャートである。
【
図7】実施例の車両支援システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、実施例の概要を説明する。これまでの自動駐車処理では、他車両の挙動が分からないため他車両との衝突が起こりえた。また、他車両との衝突を回避するため自動駐車処理が中断し、運転者の介入が必要になる場面が多かった。本実施例における自動駐車処理は、駐車枠への入庫と、駐車枠からの出庫の両方を含む。また、駐車枠は、駐車区画とも言え、駐車スペースとも言える。
【0012】
図1から
図3の10a、10b、10c、10d、10eはそれぞれ車両を示す。車両10a等における「前」と「後」は、車両の前部と後部を示す。
図1は、入庫時の衝突可能性を示す。
図1(a)では、車両10aは、2番の駐車枠12に後ろ向きに入庫するよう自動走行する。一方、車両10bは、2番の駐車枠12に前向きに入庫するよう自動走行する。その結果、車両10aと車両10bの経路が重なり、衝突の可能性が生じる。また、衝突を回避するために、車両10aと車両10bのどちらも自動入庫できない状態になる。
【0013】
図1(b)では、車両10aと車両10bは、互いに異なる側から、3番の駐車枠12に前向きで入庫するよう自動走行する。その結果、3番の駐車枠12内で車両10aと車両10bが衝突する可能性が生じる。また、衝突を回避するために、車両10aと車両10bのどちらも自動入庫を中止する。車両10aと車両10bの少なくとも一方が、3番の駐車枠12に後ろ向きで入庫するよう自動走行する場合も同様である。
【0014】
図2は、入庫時および出庫時の衝突可能性を示す。車両10aは、1番の駐車枠12に前向きに駐車するよう自動走行する。一方、車両10bは、2番の駐車枠12から後ろ向きに出庫するよう自動走行する。その結果、車両10aと車両10bの経路が重なり、衝突の可能性が生じる。また、衝突を回避するために、車両10aは自動入庫できず、車両10bも自動出庫できない状態になる。
【0015】
図3は、出庫時の衝突可能性を示す。車両10aは、1番の駐車枠12から前向きに出庫するよう自動走行する。また、他車両である車両10bは、2番の駐車枠12から前向きに出庫するよう自動走行する。その結果、車両10aと車両10bの経路が重なり、衝突の可能性が生じる。また、衝突を回避するために、車両10aと車両10bのどちらも自動出庫できない状態になる。
【0016】
また、自動バレーパーキングシステムでは、駐車場に設置された監視カメラの撮像画像により駐車枠の空き状況を把握して、空いている駐車枠に車両を誘導することがある。しかし、駐車枠の空き状況を把握して、空いている駐車枠に車両を誘導するためのインフラ(サーバシステム等)が必要となり、多額の費用が掛かる。また、サーバの処理負荷がかかる。
【0017】
そこで、実施例の車両支援システムでは、複数の車両間で、各車両の入庫および出庫の経路に関する情報を車車間通信により共有する。そして、複数の車両の経路が重なる場合、いずれかの車両の走行を優先するように調停(言い換えれば調整)する。これにより、自動入庫および自動出庫が中断する頻度を低減し、乗員の利便性を高める。また、車車間通信を利用することで、駐車場全体に亘る大規模なインフラ(サーバシステム等)は不要になり、コストを抑制できる。以下、特に断らない限り、経路は、駐車枠12内部の停車位置までの経路、および、駐車枠12内部の停車位置からの経路を含む。また、車車間通信を利用することで、
図1(b)に示すように、競合する車両が互いに検知できない状況でも、情報交換を行うことができる。
【0018】
図4は、実施例の車両14の機能ブロックを示すブロック図である。本開示のブロック図において示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPU・メモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0019】
車両14は、駆動機構20と車両支援システム22を備える。駆動機構20は、車両14の走行(言い換えれば挙動)を制御する機械装置である。駆動機構20は、アクセル30、ブレーキ32、シフトギア34、ステアリング36を含む。
【0020】
車両支援システム22は、駆動機構20を制御することにより車両14の自動走行を実現する情報処理システムである。車両支援システム22は、検知部40、通信部42、判断部44、走行制御部46を備える。
【0021】
検知部40は、不図示のカメラやセンサ装置(例えばレーダ装置)、GPS装置等を含む。検知部40は、車両14(言い換えれば自車)の現在の状態、および、車両14周辺の環境に関する情報を取得する。通信部42は、公知の車車間通信(例えば700MHz帯の電波を用いた無線通信)を使用して、各種データを他車両と直接送受信する。
【0022】
判断部44は、検知部40により検知された情報と、通信部42を介して他車から受け付けた情報とに応じて、車両14の挙動(走行経路等)を決定する。走行制御部46は、判断部44による決定内容にしたがって駆動機構20を制御する。
【0023】
走行制御部46は、経路記憶部50、走行管理部52、速度制御部54、ステアリング制御部56を含む。経路記憶部50は、判断部44により生成された車両14の走行経路(言い換えれば走行予定経路)を記憶する。走行管理部52は、経路記憶部50に記憶された走行経路にしたがって車両14を走行させるための、車両14の速度、ギア比および操舵角を決定し、管理する。
【0024】
速度制御部54は、走行管理部52により決定された速度とギア比にしたがって、アクセル30、ブレーキ32およびシフトギア34を制御する。ステアリング制御部56は、走行管理部52により決定された操舵角にしたがって、ステアリング36を制御する。
【0025】
判断部44は、地図記憶部60、位置推定部62、経路生成部64、調停部66、判定部68、挙動決定部70を含む。判断部44は、ECU(Electronic Control Unit)として実装されてもよい。また、判断部44の複数の機能ブロックの機能を実装した複数のモジュールを含むコンピュータプログラムが、ECU内のストレージに記憶されてもよい。ECU内のCPUは、このコンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することにより、判断部44の各機能ブロックの機能を発揮してもよい。また、判断部44の複数の機能は、1つの装置に集約して実現されてもよく、複数個の装置がシステムとして連携することにより実現されてもよい。
【0026】
地図記憶部60は、地図データを記憶する。実施例の地図データには、少なくとも、駐車場内部の構成(例えば通路の位置や大きさ、駐車枠の位置や大きさ、停止線の位置等)が記録されている。位置推定部62は、検知部40による検知内容に基づいて、公知の手法により、自車の現在位置(例えば駐車場内での現在位置)を推定する。
【0027】
経路生成部64は、不図示のHMI(Human Machine Interface)装置に対して入庫支援を指示するユーザ操作が入力された場合、車両14の現在位置から駐車枠12までの車両14の走行経路を生成する。また、経路生成部64は、HMI装置に対して出庫支援を指示するユーザ操作が入力された場合、車両14の現在位置(典型的には駐車枠12内)から駐車場出口まで(もしくは乗員により指定された最終目的地まで)の車両14の走行経路を生成する。
【0028】
調停部66は、通信部42を介して、他車との調停処理を実行する。また、調停部66は、車車間通信によって、自車両近傍の他車両から、他車両の経路情報を受け付ける受付部としての機能を含む。実施例では、調停部66は、車車間通信によって、自車両の経路情報をブロードキャストする。調停部66は、車車間通信によって、上記ブロードキャストに対する返信として、自車両の近傍に存在する他車両から送信された他車両の経路情報を取得する。なお、調停部66は、自車両の経路情報をブロードキャストしていないときに、他車両からブロードキャストされた他車両の経路情報を受け付けた場合、当該他車両に対して自車両の経路情報を返信する。
【0029】
経路情報は、以下の項目を含む。
(1)入庫と出庫のいずれであるかを示す情報。
(2)入庫の場合、その目的地となる駐車枠12の識別情報。出庫の場合、その出発地となる駐車枠12の識別情報。
(3)駐車場内での走行経路を示す情報。具体的には、入庫の走行経路(例えば駐車枠12の外から駐車枠12内の停止位置までの移動経路)を示す情報、または、出庫の走行経路(例えば駐車枠12内の停止位置から駐車場出口までの移動経路)を示す情報。
(4)入庫の所要時間(例えば駐車枠12の外から駐車枠12内の停止位置までの移動に要する時間)、または、出庫の所要時間(例えば駐車枠12内の停止位置から駐車場出口までの移動に要する時間)。
【0030】
また、調停部66は、後述の判定部68による判定結果に応じて、調停結果を示す許可情報または拒否情報を他車両へ送信する。許可情報は、他車両の走行を優先する場合に送信される情報である。許可情報は、他車両で決定された走行経路を許可することを示す情報であり、言い換えれば、当該走行経路による走行を促す情報である。拒否情報は、自車両の走行を優先する場合に送信される情報である。拒否情報は、他車両で決定された走行経路を拒否することを示す情報であり、言い換えれば、当該走行経路による走行の中断を指示する情報である。
【0031】
判定部68は、調停部66により取得された他車両の経路情報が示す他車両の走行経路と、経路生成部64により生成された自車両の走行経路の少なくとも一部が重なるか否かを判定する。言い換えれば、判定部68は、自車両と他車両の両方が、同じ位置または所定範囲内(例えば2メートル以内)の近傍位置を通過するか否かを判定する。
【0032】
また、判定部68は、他車両の走行経路と自車両の走行経路の少なくとも一部が重なる場合に、自車両の入庫または出庫の所要時間と、他車両の入庫または出庫の所要時間とを比較する。判定部68は、他車両の走行経路と自車両の走行経路の少なくとも一部が重なる場合であって、かつ、自車両の入庫または出庫の所要時間が他車両の入庫または出庫の所要時間未満(実施例では以下)の場合、自車両の入庫または出庫を優先することを決定する。一方、判定部68は、他車両の走行経路と自車両の走行経路の少なくとも一部が重なる場合であって、かつ、自車両の入庫または出庫の所要時間が他車両の入庫または出庫の所要時間より大きい場合、他車両の入庫または出庫を優先することを決定する。
【0033】
挙動決定部70は、判定部68による判定結果に応じて、入庫時または出庫時の自車両の挙動を決定する。例えば、挙動決定部70は、判定部68によって自車両の入庫または出庫を優先することが決定された場合、自車両の入庫または出庫を優先するよう車両14の挙動を決定する。例えば、挙動決定部70は、経路生成部64により生成された走行経路に沿って車両14を自動走行させるよう走行制御部46に指示してもよい。
【0034】
一方、判定部68によって他車両の入庫または出庫を優先することが決定された場合、挙動決定部70は、他車両の入庫または出庫を優先するよう車両14の挙動を決定する。例えば、挙動決定部70は、車両14の自動走行を中断するよう走行制御部46に指示してもよい。
【0035】
以上の構成による車両支援システム22の動作を説明する。
図5は、実施例の車両支援システム22の動作を示すフローチャートである。
図5は、駐車枠12への車両14の自動入庫を制御する際の車両支援システム22の動作を示している。車両14の運転手は、駐車場にて空いている駐車枠12の近傍位置(例えば
図2の車両10aの位置)まで車両14を運転後、自動駐車(入庫支援)を指示する操作を不図示のHMI装置に入力する。この操作が車両支援システム22に受け付けられると、
図5に示す一連の処理が開始される。
【0036】
検知部40は、空いている駐車枠12(言い換えれば入庫すべき駐車枠12)をカメラにより撮像し、その駐車枠12に示されている駐車枠12の識別情報(実施例では枠番号)を検知する(S10)。経路生成部64は、位置推定部62により推定された自車の現在位置から、入庫すべき駐車枠12への走行経路(「入庫経路」とも呼ぶ。)を生成する(S12)。経路生成部64は、所定のアルゴリズムで入庫速度を決定し、入庫経路の長さを入庫速度で割ることにより、駐車枠12への入庫に要する時間(「入庫所要時間」とも呼ぶ。)を導出する(S14)。以下、出庫時の走行経路を「出庫経路」、出庫に要する時間を「出庫所要時間」と呼ぶ。
【0037】
調停部66は、入庫であることを示す識別情報、駐車枠番号、入庫経路、入庫所要時間を含む自車両の経路情報を、車車間通信により近傍に存在する他車両へブロードキャストする(S16)。調停部66は、自車両の経路情報を受け付けた他車両から返信された他車両の経路情報を受信する(S18)。自車の周囲に複数台の他車が存在する場合、調停部66は、複数台の他車両から送信された複数の経路情報を受信し得る。他車両の経路情報は、他車両が入庫の場合、入庫であることを示す識別情報、駐車枠番号、入庫経路、入庫所要時間を含む。一方、他車両が出庫の場合、他車両の経路情報は、出庫であることを示す識別情報、出庫経路、出庫所要時間を含む。
【0038】
なお、調停部66は、自車両の経路情報をブロードキャストしてから、予め定められた許容時間、他車両から経路情報が送信されてくるのを待ち受ける。この許容時間は、通信遅延時間や、他車両側での応答処理に要する時間を考慮して適切な長さに設定されればよい。
図7に関連して後述する出庫時の場合も同様である。
【0039】
図6は、
図5に続く動作を示すフローチャートである。他車両の経路情報が入庫であることを示し(S20のY)、自車両の駐車枠12と他車両の駐車枠12が同じ場合(S22のY)、すなわち、自車両の入庫経路と他車両の入庫経路の少なくとも一部が確実に重なる場合、判定部68は、自車両の入庫所要時間と他車両の入庫所要時間とを比較する。自車両の入庫所要時間が他車両の入庫所要時間以下であれば(S24のY)、判定部68は、他車両より自車両の入庫を優先することを決定する。調停部66は、他車両に対して拒否情報を送信する(S26)。挙動決定部70は、自車両の入庫を優先するよう車両14の挙動を決定し、経路生成部64により生成された入庫経路に沿った自動運転を走行制御部46に実行させる(S28)。
【0040】
自車両の入庫所要時間が他車両の入庫所要時間より大きければ(S24のN)、判定部68は、自車両より他車両の入庫を優先することを決定する(S30)。調停部66は、他車両に対して許可情報を送信する(S32)。判定部により他車の入庫を優先することが決定された場合(S34のY)、挙動決定部70は、自動入庫処理を中断し、手動運転モードに切り替える(S36)。例えば、挙動決定部70は、不図示のHMI装置に、自動入庫処理を中断して手動運転モードに切り替えたことを表示させてもよい。この場合、運転者は、車両14を手動で運転し、空いている別の駐車枠12を探すことになる。
【0041】
変形例として、車両支援システム22は、再度同じ駐車枠12への自動入庫を試行してもよい。この場合、所定時間(例えば10秒等)待機後、
図5のS16(自車の経路情報をブロードキャスト)から処理を繰り返してもよい。
【0042】
他車両の経路情報が出庫であることを示し(S20のN)、または、他車両の経路情報が入庫であることを示すが、他車両の駐車枠が自車両の駐車枠と異なる場合(S22のN)、判定部68は、他車両の入庫経路または出庫経路と、自車両の入庫経路の少なくとも一部が重なるか否かを判定する。他車両の入庫経路または出庫経路と、自車両の入庫経路の少なくとも一部が重なる場合(S38のY)、S24へ進む。すなわち、判定部68は、自車両の入庫所要時間と、他車両の入庫所要時間または出庫所要時間とを比較し、以降、説明済みの動作となる。
【0043】
他車両の入庫経路または出庫経路と、自車両の入庫経路が重ならない場合(S38のN)、自車両と他車両はそれぞれの走行経路を進んでも衝突は生じないため、調停部66は、他車両に対して許可情報を送信する(S32)。ここでは、判定部により他車両の入庫を優先することが決定されていない(S34のN)。そのため、挙動決定部70は、経路生成部64により生成された入庫経路に沿った自動運転を走行制御部46に実行させる(S28)。
【0044】
上記の許容時間内に複数台の他車両から複数の経路情報を受信した場合、判断部44は、複数の経路情報のそれぞれに基づいて、自車両の入庫を優先すべきか(
図6のS28となるか)、または、他車両の入庫を優先すべきか(
図6のS36となるか)を判断する。言い換えれば、判断部44は、受信した経路情報の個数分、
図6のS28またはS36の前までの処理を繰り返す。受信した複数の経路情報のいずれでも自車両を優先すべきと判断される場合、S28へ進み、挙動決定部70は、自車両の入庫を優先するよう自車両の挙動を決定する。一方、受信した複数の経路情報の少なくとも1つに基づき他車両を優先すべきと判断される場合、S36へ進み、挙動決定部70は、他車両の入庫または出庫を優先するよう自車両の挙動を決定する。
【0045】
図7は、実施例の車両支援システム22の動作を示すフローチャートである。
図7は、駐車枠12からの車両14の自動出庫を制御する際の車両支援システム22の動作を示している。
図7に示す一連の処理は、車両14が駐車枠12の中から発進する際に、ユーザが不図示のHMI装置に出庫支援を指示する操作を入力した場合に開始される。経路生成部64は、駐車場内での車両14の走行経路であり、車両14の現在位置である駐車枠12からの出庫経路を生成する(S40)。経路生成部64は、所定のアルゴリズムで出庫速度を決定し、出庫経路の長さを出庫速度で割ることにより、駐車枠12からの出庫に要する時間(「出庫所要時間」とも呼ぶ。)を導出する(S42)。
【0046】
図8は、駐車場の内部を模式的に示す。駐車場80は24個の駐車枠12を備え、また、駐車場80における車両の通路には停止線82a、停止線82b、停止線82c(総称する場合「停止線82」と呼ぶ。)が設けられている。既述したが、駐車場80における駐車枠12および停止線82の位置は、地図記憶部60の地図データに予め記録されている。実施例における出庫所要時間は、車両14が駐車された駐車枠12(言い換えれば出庫の起点となる駐車枠12)から、駐車場80における駐車枠12の位置に応じて決定される危険エリア88の出口まで走行することに要する時間である。
【0047】
ここでは、自車両が駐車した駐車枠12を2番の駐車枠12とする。危険エリア88は、自車両の出庫において他車両と衝突する危険性が相対的に高いエリアであり、
図8では点線で囲んだ領域となる。例えば、判定部68は、2番の駐車枠12と、その近傍範囲(例えば車両用の通路を挟まない範囲)に位置する他の駐車枠12(
図8では1番、3番~12番の駐車枠12)をグループとし、そのグループから所定距離(例えば4メートル)の範囲を危険エリア88として検出してもよい。危険エリア88の出口は、危険エリア88の内部と、危険エリア88の外部との境界とも言える。
【0048】
実施例では、判定部68は、自車両が駐車した駐車枠12(例えば2番の駐車枠12)からの走行経路上に最初に現れる停止線を、危険エリア88の出口として検出する。例えば、経路生成部64は、出庫経路が経路84の場合、2番の駐車枠12から停止線82aまでの距離を出庫速度で割ることにより出庫所要時間を導出する。また、経路生成部64は、出庫経路が経路86の場合、2番の駐車枠12から停止線82bまでの距離を出庫速度で割ることにより出庫所要時間を導出する。
【0049】
図7に戻り、調停部66は、出庫であることを示す識別情報、出庫経路、出庫所要時間を含む自車両の経路情報を、車車間通信により近傍に存在する他車両へブロードキャストする(S44)。調停部66は、自車両の経路情報を受け付けた他車両から返信された、他車両の経路情報を受信する(S46)。自車の周囲に複数台の他車両が存在する場合、調停部66は、複数台の他車両から送信された複数の経路情報を受信し得る。
【0050】
判定部68は、他車両の入庫経路または出庫経路と、自車両の出庫経路の少なくとも一部が重なるか否かを判定する。他車両の入庫経路または出庫経路と、自車両の出庫経路の少なくとも一部が重なる場合(S48のY)、判定部68は、自車両の出庫所要時間と、他車両の入庫または出庫の所要時間とを比較する。自車両の出庫所要時間が他車両の入庫または出庫の所要時間以下であれば(S50のY)、判定部68は、他車両より自車両を優先することを決定する。調停部66は、他車両に対して拒否情報を送信する(S52)。挙動決定部70は、自車両の出庫を優先するよう車両14の挙動を決定し、経路生成部64により生成された出庫経路に沿った自動運転を走行制御部46に実行させる(S54)。
【0051】
自車両の出庫所要時間が他車両の入庫または出庫の所要時間より大きければ(S50のN)、判定部68は、自車両より他車両を優先することを決定する。調停部66は、他車両に対して許可情報を送信する(S56)。挙動決定部70は、自動出庫処理を中断し、次の出庫タイミングを待つことを決定する(S58)。この場合、車両支援システム22は、所定時間(例えば10秒等)待機後、
図7のS44(自車の経路情報をブロードキャスト)から処理を繰り返してもよい。または、車両支援システム22は、
図7のS40から処理を繰り返し、S40では、それまでとは異なる出庫経路を生成してもよい。
【0052】
他車両の入庫経路または出庫経路と、自車両の出庫経路とが重ならない場合(S48のN)、S54へ進み、挙動決定部70は、自車両の出庫を優先するよう車両14の挙動を決定する。なお、他車に許可情報を送信後(S56)に、S54へ進んでもよい。
【0053】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0054】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本開示の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【0055】
実施例および変形例に記載の技術は、以下の項目によって特定されてもよい。
[項目1]
車車間通信によって、自車両近傍の他車両から、他車両の経路情報を受け付ける受付部と、
前記受付部により受け付けられた他車両の経路情報が示す他車両の走行経路と、自車両の走行経路とが重なるか否かに応じて、入庫時または出庫時の自車両の挙動を決定する決定部と、
を備える車両支援システム。
この車両支援システムによると、車両の自動入庫または自動出庫時の他車両への衝突の発生を抑制できる。また、複数の車両間で走行経路が重なるかに応じて入庫または出庫に関する調停を行うことで、車両の自動入庫または自動出庫が中断する頻度を抑制できる。
[項目2]
前記受付部により受け付けられる他車両の経路情報は、他車両の入庫または出庫の所要時間を含み、
前記決定部は、他車両の走行経路と自車両の走行経路とが重なる場合であって、かつ、自車両の入庫または出庫の所要時間が他車両の入庫または出庫の所要時間未満の場合、自車両の入庫または出庫を優先するよう自車両の挙動を決定する、
項目1に記載の車両支援システム。
この車両支援システムによると、入庫または出庫の所要時間が短い方の車両を優先することにより、走行経路が重なった複数台の車両全体としての、入庫または出庫の効率を高めることができる。
[項目3]
前記受付部により受け付けられる他車両の経路情報は、他車両の入庫または出庫の所要時間を含み、
前記決定部は、他車両の走行経路と自車両の走行経路とが重なる場合であって、かつ、自車両の入庫または出庫の所要時間が他車両の入庫または出庫の所要時間より大きい場合、他車両の入庫または出庫を優先するよう自車両の挙動を決定する、
項目1または2に記載の車両支援システム。
この車両支援システムによると、入庫または出庫の所要時間が短い方の車両を優先することにより、走行経路が重なった複数台の車両全体としての、入庫または出庫の効率を高めることができる。
[項目4]
駐車場の地図を記憶する記憶部をさらに備え、
前記出庫の所要時間は、前記駐車場における駐車枠から、前記駐車場における駐車枠の位置に応じて決定される危険エリアの出口まで走行する所要時間である、
項目2または3に記載の車両支援システム。
この車両支援システムによると、出庫の所要時間として、危険エリアの出口に達する所要時間を適用することにより、安全性を維持しつつ、走行経路が重なった複数台の車両全体としての、入庫または出庫の効率を高めることができる。
[項目5]
前記危険エリアの出口は、前記駐車枠からの走行経路上に最初に現れる停止線である、
項目4に記載の車両支援システム。
この車両支援システムによると、安全性を維持しつつ、走行経路が重なった複数台の車両全体としての、入庫または出庫の効率を高めることができる。また、駐車場ごとに異なり得る停止線の位置に応じて、危険エリアの出口を駐車場ごとに適切に設定しやすくなる。
[項目6]
車車間通信によって、自車両近傍の他車両から、他車両の経路情報を受け付け、
前記他車両の経路情報が示す他車両の走行経路と、自車両の走行経路とが重なるか否かに応じて、入庫時または出庫時の自車両の挙動を決定する、
車両支援方法。
この車両支援方法によると、車両の自動入庫または自動出庫時の他車両への衝突の発生を抑制できる。また、複数の車両間で走行経路が重なるかに応じて入庫または出庫に関する調停を行うことで、車両の自動入庫または自動出庫が中断する頻度を抑制できる。
[項目7]
車車間通信によって、自車両近傍の他車両から、他車両の経路情報を受け付け、
前記他車両の経路情報が示す他車両の走行経路と、自車両の走行経路とが重なるか否かに応じて、入庫時または出庫時の自車両の挙動を決定する、
ことをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
このコンピュータプログラムによると、車両の自動入庫または自動出庫時の他車両への衝突の発生を抑制できる。また、複数の車両間で走行経路が重なるかに応じて入庫または出庫に関する調停を行うことで、車両の自動入庫または自動出庫が中断する頻度を抑制できる。
【符号の説明】
【0056】
14 車両、 22 車両支援システム、 60 地図記憶部、 64 経路生成部、 66 調停部、 68 判定部、 70 挙動決定部。